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特許7478802固定ハイブリッド歯科アタッチメントアセンブリおよびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】固定ハイブリッド歯科アタッチメントアセンブリおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022199573
(22)【出願日】2022-12-14
(62)【分割の表示】P 2021021195の分割
【原出願日】2015-07-22
(65)【公開番号】P2023039999
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】62/027,780
(32)【優先日】2014-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/028,314
(32)【優先日】2014-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510126243
【氏名又は名称】ゼスト、アイピー、ホールディングス、リミテッド、ライアビリティー、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ZEST IP HOLDINGS,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】リチャード、ロバート、アレン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー、マイケル、ジャーベイス
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05092770(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第02647347(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0162211(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0105770(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0305621(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0020405(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0105005(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科アタッチメントアセンブリであって、
歯科装置を固定するための、内部空洞を画定する開口末端を有するキャップと、
ソケットを有する上部開口部を備えたアバットメントと、
第1の末端で前記キャップにしっかりと取り付けられるねじ部分、および、第2の末端で前記アバットメントの前記ソケットに取り外し可能なように摩擦的に取り付けられる、圧縮性材料から形成された圧縮可能な球状頭部を備え、前記球状頭部と前記ソケットとの間に摩擦嵌合を形成し、前記歯科装置および前記アバットメントをしっかりと保持する保持部材と、を含み、
前記保持部材の前記球状頭部が、外面と、前記外面の周方向に間隔を置いて前記外面に配置された複数の平坦部分であって、減少した保持力を提供するように構成された複数の平坦部分と、を含む、前記歯科アタッチメントアセンブリ。
【請求項2】
前記保持部材が、前記アバットメントに対して0度~20度の範囲の角度傾いて前記アバットメントに取り付けられる、請求項1に記載の歯科アタッチメントアセンブリ。
【請求項3】
前記保持部材が、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から形成される、請求項1に記載の歯科アタッチメントアセンブリ。
【請求項4】
前記ソケットは、前記上部開口部内において、内側に突出した突起を有し、
前記ソケットの前記突起が、前記球状頭部の対向する部分を圧縮し、前記球状頭部に食い込む、請求項1に記載の歯科アタッチメントアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で提供するデバイスおよび方法は、歯科装置を歯根またはデンタルインプラントといった基盤構造に固定するための歯科アタッチメントアセンブリに関し、より具体的には、当該歯科装置を基盤構造に調節可能なように取り付ける、摩擦保持式圧縮性ボールおよびソケットのアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用固定アセンブリは、歯科装置をデンタルインプラントまたは歯根に固定するために用いられ、通常は、2つ以上の部分的に移動可能な構成要素を嵌合することで固定され、向上した嵌合および快適さをもたらす。いくつかのアセンブリでは、雄雌部品は、雄部品を雌部品に取り外し可能なように固定するスナップ係合可能なかみ合い構造を有する。たとえば、雌部品はソケットを有し、雄部品はソケット内でのスナップ係合用の頭部を有する。しかし、繰り返されるソケットと頭部との衝突は、雄部品の保持用の頭部を損傷し、動くたびに部品の摩擦による摩耗を引き起こし得るため、摩擦力を吸収するために圧縮性環状リングが設けられる場合があり、ソケットと頭部との間のクッションとして機能し得る。しかし、リングも一定の時間を経過すると摩耗して交換が必要になる場合があり、歯科用固定アセンブリの定期的なメンテナンスを必要とし、患者にとっては不快かつ不便である。さらに、圧縮性環状リングの簡単な取り外しおよび交換を可能にするために、リングには、(ねじ部分といった)ソケットとのかみ合い面に固定機構が設けられる場合があり、このことは、歯科用固定アセンブリのコストおよび複雑性をさらに増大する。
【0003】
したがって、持続的なメンテナンスの必要性を回避し、歯科用固定アセンブリのデザインを簡潔にすることが望まれている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載される実施形態は、歯科装置を歯根またはインプラントに調節可能なように取り付けるための、摩擦保持式取り外し可能歯科用固定デバイスを提供する。歯科用固定デバイスは、歯科装置に固定されるキャップと、歯根またはインプラントに取り付けられるアバットメントと、第1の末端が当該キャップに固定式で取り付けられ、第2の末端が、当該アバットメントの空洞内に固定される摩擦保持式ボールによってアバットメントとスナップ係合する、圧縮性保持部材と、を含む。保持部材は、圧縮性材料を用いて形成され、ボールの圧縮、および、ボールが空洞内に挿入される際に保持部材の屈曲を可能にする。歯科用固定デバイスのさらなる摩擦保持式かつ固定式アタッチメント構成が提供され、また、摩擦保持式かつ固定式アタッチメントの歯科用固定デバイスを用いて、歯科装置を対象の口の中に固定する方法も一緒に提供される。
【0005】
本発明の一態様では、歯科アタッチメントアセンブリは、歯科装置と固定するための、内部空洞を画定する開口末端を有するキャップと;ソケットを有する上部開口部を備えたアバットメントと;第1の末端でキャップにしっかりと取り付けられるねじ部分、および、第2の末端でアバットメントのソケットに取り外し可能なように摩擦的に取り付けられる球状頭部を備え、頭部とソケットとの間に摩擦嵌合を形成し、歯科装置およびアバットメントをしっかりと保持する保持部材と、を含んでいる。
【0006】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面に接した当業者にはより容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施形態に従った歯科アタッチメントアセンブリのアバットメント、保持部材およびキャップを例示する側面断面図である。
図1B図1Bは、本発明の一実施形態に従った、表面が平坦な保持頭部を例示する側面図である。
図1C図1Cは、本発明の一実施形態に従った、表面が平坦な保持頭部を例示する側面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に従った歯科アタッチメントアセンブリの、角度をなして取り付けられていない構成を例示する側面断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に従った歯科アタッチメントアセンブリの、取り付けられて角度をなす構成を例示する側面断面図である。
図4A図4Aは、本発明の実施形態に従った、保持部材をアバットメントに取り付けるプロセスを側面断面で例示しており、保持部材のボールおよびシャフト部分の圧縮を示している。
図4B図4Bは、本発明の実施形態に従った、保持部材をアバットメントに取り付けるプロセスを側面断面で例示しており、保持部材のボールおよびシャフト部分の圧縮を示している。
図4C図4Cは、本発明の実施形態に従った、保持部材をアバットメントに取り付けるプロセスを側面断面で例示しており、保持部材のボールおよびシャフト部分の圧縮を示している。
図5図5は、本発明の実施形態に従った、ねじ保持式歯科アタッチメントアセンブリを例示する側面断面図である。
図6A図6Aは、本発明の実施形態に従った歯科アタッチメントアセンブリの、外面保持構成の義歯キャップ、保持キャップおよびアバットメントを例示する分解図である。
図6B図6Bは、本発明の実施形態に従った歯科アタッチメントアセンブリの、外面保持構成の義歯キャップ、保持キャップおよびアバットメントを例示する分解図である。
図7A図7Aは、本発明の一実施形態に従った外面保持構成の保持キャップを例示する底部側斜視図である。
図7B図7Bは、本発明の一実施形態に従った外面保持構成の保持キャップを例示する上部側斜視図である。
図7C図7Cは、本発明の一実施形態に従った外面保持構成の保持キャップを例示する側面図である。
図7D図7Dは、本発明の実施形態に従った外面保持構成の保持キャップを図7Cの線C-Cに沿って例示する側面断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に従った保持キャップの側面図である。
図9図9は、本発明の実施形態に従った保持キャップの内側の球状保持面を例示する、図8の線A-Aに沿った保持キャップの側面断面図である。
図10A図10Aは、本発明の実施形態に従った義歯キャップのアクリルピックアップキャップの実施形態を例示する側面図である。
図10B図10Bは、本発明の実施形態に従った義歯キャップのアクリルピックアップキャップの実施形態を例示する側面断面図である。
図11A図11Aは、本発明の実施形態に従った義歯キャップのバーンアウトキャップの実施形態を例示する側面図である。
図11B図11Bは、本発明の実施形態に従った義歯キャップのバーンアウトキャップの実施形態を例示する側面断面図である。
図12A図12Aは、本発明の実施形態に従った外面保持構成のアバットメントを例示する側面図である。
図12B図12Bは、本発明の実施形態に従った外面保持構成のアバットメントを例示する側面断面図である。
図13A図13Aは、本発明の実施形態に従った外面保持構成のねじ保持式実施形態を例示する側面図である。
図13B図13Bは、本発明の実施形態に従った外面保持構成のねじ保持式実施形態を例示する側面断面図である。
図14A図14Aは、本発明の実施形態に従った外面保持構成のねじ保持式実施形態のアクリルピックアップアセンブリを例示する側面図である。
図14B図14Bは、本発明の実施形態に従った外面保持構成のねじ保持式実施形態のアクリルピックアップアセンブリを例示する側面断面図である。
図15A図15Aは、本発明の実施形態に従った、角度をなす配向の外面保持構成のアクリルピックアップアセンブリを例示する側面図である。
図15B図15Bは、本発明の実施形態に従った、角度をなす配向の外面保持構成のアクリルピックアップアセンブリを例示する側面断面図である。
図16A図16Aは、本発明の実施形態に従った、角度をなす配向の外面保持構成を例示する側面図である。
図16B図16Bは、本発明の実施形態に従った、角度をなす配向の外面保持構成を例示する側面断面図である。
図17図17は、本発明の実施形態に従った、歯科装置を少なくとも1つの歯科アタッチメントアセンブリに取り付ける方法のフロー図である。
図18A図18Aは、本発明の一実施形態に従った、歯科アタッチメントアセンブリを取り外すための折り込まれた構成である除去工具の一実施形態を例示する。
図18B図18Bは、本発明の一実施形態に従った、開いた構成である除去工具の一実施形態を例示する。
図19A図19Aは、本発明の一実施形態に従った、患者の歯茎とインプラントで保持される義歯との間のスペースに部分的に挿入された除去工具を例示する前面斜視図である。
図19B図19Bは、本発明の一実施形態に従った、患者の歯茎とインプラントで保持される義歯との間のスペースに部分的に挿入された除去工具を例示する上面図である。
図20A図20Aは、一実施形態に従った、患者の歯茎とインプラントで保持される義歯との間のスペースに完全に挿入された除去工具の側面斜視図である。
図20B図20Bは、一実施形態に従った、患者の歯茎とインプラントで保持される義歯との間のスペースに完全に挿入され、除去ペンでねじ込まれた除去工具の上面斜視図である。
図21A図21Aは、一実施形態に従った、インプラントで保持される義歯を取り外すプロセスを開始する前の、インプラントで保持される義歯に近接して配置された、一体型格納式除去工具が備わる除去ペンの側面斜視図である。
図21B図21Bは、一実施形態に従った、除去ペンの上面斜視図であり、一体型格納式除去工具が除去ペンから延び、患者の歯茎とインプラントで保持される義歯との間のスペースに挿入されている図である。
図22A図22Aは、一実施形態に従った、歯科アタッチメントアセンブリを取り外すための除去工具およびペンの、一体型格納式除去工具が除去ペンから延び、患者の歯茎とインプラントで保持される義歯との間のスペースに挿入されている実施形態の側面斜視図である。
図22B図22Bは、本発明の一実施形態に従った、歯科アタッチメントアセンブリの取り外し中に除去ペンから外側に向かって延び、てこの作用を提供する格納式延長ロッドの上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の構造および作用は、以下の詳細な説明および添付の図面に接することで理解される。ここで、同様の参照符号は同様の部品を指す。
【0009】
本明細書に開示される特定の実施形態は、歯科装置を歯根またはインプラントに調節可能なように取り付けるための、摩擦保持式取り外し可能歯科用固定デバイスを提供する。歯科用固定デバイスは、歯科装置に固定されるキャップと、歯根またはインプラントに取り付けられるアバットメントと、第1の末端が当該キャップに固定式で取り付けられ、第2の末端が、当該アバットメントの空洞内に固定される摩擦保持式ボールによってアバットメントとスナップ係合する、圧縮性保持部材と、を含む。保持部材は、圧縮性材料を用いて形成され、ボールの圧縮、および、ボールが空洞内に挿入される際に保持部材の屈曲を可能にする。歯科用固定デバイスのさらなる摩擦保持式かつ固定式アタッチメント構成が提供され、また、摩擦保持式かつ固定式アタッチメントの歯科用固定デバイスを用いて、歯科装置を対象の口の中に固定する方法も一緒に提供される。
【0010】
本明細書を読むと、どのように本発明を異なる代替実施形態および代替適用で実行するかが当業者に明らかになる。しかし、本発明の様々な実施形態が本明細書で記載されるものの、これらの実施形態は、例であるに過ぎず、限定ではないことを理解されたい。よって、この、異なる代替実施形態の詳細な説明は、特許請求の範囲で説明される本発明の範囲または幅を限定すると解釈されるべきでない。
【0011】
本明細書に記載する歯科アタッチメントデバイスは、固定式歯科アタッチメントシステムと類似しているが、特別な工具を用いて歯科専門家によってより容易に取り外しができる。本明細書に記載する歯科アタッチメントデバイスは、義歯といった歯科装置をインプラントに取り付けるために有用であり、約10~75ポンドの保持力を提供すると同時に、使用される材料の圧縮特性およびボールおよびソケット構成要素の摩擦保持式スナップ嵌合によって、保持部材とアバットメントとの係合の容易性も提供する。
【0012】
以下で詳細を説明する通り、保持部材は、ポリマーまたは軟質金属といった圧縮性材料から形成され、保持部材がインプラントに固定されたアバットメントに取り付けられる際または当該アバットメントから取り外される際に圧縮および屈曲することを可能にする。圧縮性および柔軟性保持部材は次いで、様々な角度でアバットメントに固定されてもよく、このことは、対象となる人の上顎または下顎全体で異なる角度で延びる複数のインプラントに歯科装置を固定する際にしばしば必要なことである。さらに、圧縮性ボールによって、保持部材と内部のアバットメント壁との間でアバットメントのソケット内に配置される別体の圧縮性環状リングの必要性がなくなり、また、環状リングをアバットメント壁に固定する固定機構の必要性もなくなる。よって、歯科用固定デバイスは製造することがより容易であり、挿入されてからのメンテナンスの必要性が低減される。
【0013】
歯科アタッチメントアセンブリ
図1は、骨または歯根といった他の基盤構造(図示せず)に固定され得るインプラント(図示せず)に取り付けられ得る、歯科用固定デバイス100の一実施形態を例示する。アセンブリは、インプラントに固定されるアバットメント102と、歯科装置のくぼみに固定されるキャップ104と、を含む。保持部材106は、キャップとアバットメントとの間に、摩擦保持式連結を提供する機能を有する。このために、保持部材は、第1の末端110がねじ式になっており、キャップとねじ式に連結しているシャフト108を含む。アバットメントと結合するシャフトの第2の末端は、形状が実質的に球状である頭部112を含む。この頭部112は、アバットメントの上部開口部116にあるソケット114と摩擦嵌合を行うよう構成されている。頭部は、ソケットの対応するくぼみ面120と摩擦嵌合するよう構成された湾曲面118を含む。具体的には、くぼみ面の領域には頭部112と係合するアンダーカット(undercut)があり、しかし、ソケットは必ずしも頭部112の湾曲面118と一致するように湾曲している必要はない。図1の実施形態では、頭部112の側壁は凸状である一方で、頭部の頂部は、頭部112とアバットメントのより緊密な嵌合を提供するために、平坦である。アバットメントの開口部116の内面は、ソケット114の口において、対応する直径の頭部112としっかり嵌合する位置まで、直径が狭まっている。
【0014】
保持部材106の圧縮性材料の1つの利点として、頭部112の直径を変えて、頭部112およびソケット114の摩擦嵌合によって提供される保持力を増大または低下するように変更してもよいという点がある。直径が大きいほど大きな保持力が提供され、一方で、頭部112の直径が小さいほど、提供する保持力も小さくなる。上記の通り、保持力は、約10~約75ポンドの間のいずれかで変化してもよいが、いくつかの実施形態では、歯科装置および歯科用固定デバイスの最初の位置における使用に対し、わずかに約1ポンドの保持力が提供され得る。
【0015】
図1Bおよび図1Cに例示される別の実施形態では、湾曲面118の1つ以上の面は平坦部分119を有し、頭部の湾曲面118と、ソケットの対応する湾曲面120との間の摩擦の量を低下し得る。
【0016】
キャップ104は、アバットメントの対応する湾曲外面124と係合するよう湾曲し得る環状面122を備えており、歯科アタッチメントアセンブリにさらなる摩擦嵌合を提供する。
【0017】
一実施形態では、ボールフランジ126が、シャフト108の軸方向から直角に延びてキャップ104と接触するよう構成される1つ以上の突起物として提供されてもよい。ボールフランジ126は、ボール112をソケット114およびキャップ104内に配置するのを促し、アセンブリの垂直の移動を防止する機能を有する。
【0018】
本明細書に記載する実施形態では、保持部材は、ポリマーまたは軟質金属といった圧縮性またはエラストマー性材料から形成されてもよく、その非制限的な例として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ニッケルチタン(ニチノール)、淡紅色のTiCNコーティングまたはチタンが挙げられる。一実施形態では、その表面は、摩擦を減らすために、窒化金でコーティングされてもよい。
【0019】
図2は、歯科用固定デバイスの、角度をなして取り付けられていない構成を例示する断面図あり、保持部材106がアバットメント内にスナップ嵌合され得る異なる角度を例示している。実際の適用では、インプラントは、骨の構造または手術の際のインプラントの配置によって、理想である垂直な角度とは異なる角度で、骨または歯根から突出してもよい。よって、歯科用固定デバイスは、ソケット114における頭部112の回転により、あらゆる角変位を補正する。一実施形態では、保持用の頭部がアバットメントに対して近づく角度は、図1で例示する垂直に配列された配向からあらゆる方向に最大約20度まで変化し得る。したがって、同様の角度でずれている他のインプラントとも組み合わせると、歯科用固定デバイスは、約40度もの角度補正を提供し得る。
【0020】
図3は、図2で示す角度をなす配向にある歯科アタッチメントアセンブリを例示する側面断面図であるが、保持部材106は、アバットメント102のソケット114にスナップ嵌合している。図3で例示する通り、頭部112は、異なる角度にも関わらず、ソケット114内に固定され得る。さらに、キャップ104の環状面122も、アバットメントの外側の湾曲面124の周囲に嵌合したままである。
【0021】
図4A~4Cは、本発明の実施形態に従って、図2および図3で既に例示した角度で保持部材をアバットメントに取り付けるプロセスの間における、保持部材106の頭部112およびシャフト108の屈曲および圧縮を例示する側面断面図である。図4Bで具体的に例示される通り、保持部材106のシャフト108および頭部112は、アバットメントの保持部材106に対する角度のために、屈曲および圧縮されている。しかし、図4Cで示すとおり、保持部材106がソケット114内に摩擦的にスナップ嵌合すると、保持部材への余分な量の応力を引き起こさずに保持部材106およびアバットメント102がしっかりとした嵌合を提供するように、屈曲および圧縮は減少する。
【0022】
ねじ保持式構成
図5は、本発明の実施形態に従った、ねじ保持式歯科アタッチメントアセンブリを例示する側面断面図であり、ボールおよびソケット構成の代わりに、片持ちねじ128がアバットメント102内の空洞116を通って突出しており、アバットメント102とねじ式連結130を形成し、固定された連結を作成する。図1に関して上記した通り、キャップ104の環状面122は、アバットメントの外側の湾曲面124にスライド保持面を設け、ねじ128およびキャップ104のアバットメントに対する回転を最小にすることを可能にする。
【0023】
この実施形態は、インプラントと歯科装置との間で強く固定された嵌合を得るために有用であり、顕著な保持力を提供する。さらに以下で説明するが、この構成は、対象の人の口の表面全体で歯科装置を固定するために、複数のインプラントが用いられる状況で1つのインプラントのために必要とされるだけである。
【0024】
外面保持構成
他の代替実施形態では、アバットメント132は、保持キャップ134および義歯キャップ136と用いられ、頭部およびソケット構成を伴わずに、アバットメントの外面に保持力を提供し得る。図6Aおよび6Bは、本発明の実施形態に従った歯科アタッチメントアセンブリの外面保持構成の、義歯キャップ136、保持キャップ134およびアバットメント132を例示する分解図である。本明細書および図1でも記載する通り、アバットメント130の外面124は、保持キャップ132の対応する湾曲面122とかみ合い、摩擦嵌合を形成する湾曲面を形成する。保持キャップ134は次いで、保持キャップ134のねじ面138および義歯キャップ136の対応するねじ面140を用いて義歯キャップ136にねじ込まれ得る。
【0025】
図7A~7Dは、ねじ面138を示す、本発明の実施形態に従った外面保持構成の保持キャップ134の例示である。図8は、本発明の実施形態に従った、周囲の義歯からのアクリルが義歯キャップと滑らかな仕上がりを作成し得るアクリルフィニッシュライン142を示す保持キャップ134を例示する側面図である。図9は、本発明の実施形態に従った保持キャップ134の内部の球状保持面122を例示する、図8の線A-Aに沿った断面側面図である。図9は、周囲に配置する保持特徴としての機能を有する垂直面144を含む保持キャップ134も例示する。
【0026】
図10Aおよび10Bは、それぞれ、本発明の実施形態に従った義歯キャップ136のアクリルピックアップキャップ146の実施形態を例示する側面図および側面断面図である。図11Aおよび11Bは、それぞれ、本発明の実施形態に従った義歯キャップのバーンアウトキャップ148の実施形態を例示する側面図および側面断面図である。アクリルピックアップキャップ146は、アクリルが流れてキャップ146を有する義歯といった歯科装置を保持する、複数の保持チャンネル150を含む。バーンアウトキャップ148は、鋳造バーの状況で用いられる。
【0027】
図12Aおよび12Bは、それぞれ、本発明の実施形態に従った外面保持構成のアバットメントを例示する側面図および側面断面図である。アバットメントは、ヒーリングカラー、インプレッションコーピングねじ、片持ちねじといった、ねじ式構成要素を固定する内部ねじ152を有する。さらに、内部駆動機能154が見られ、これは、アバットメントをインプラント内に締める機能を有する。
【0028】
図13Aおよび13Bは、それぞれ、本発明の実施形態に従った外面保持構成のねじ保持式実施形態を例示する側面図および側面断面図であり、ここで、片持ちねじ128は、保持キャップ134の開口を介してアバットメント132とねじ式連結し、固定されている。図14Aおよび14Bは、それぞれ、本発明の実施形態に従った外面保持構成のねじ保持式実施形態のアクリルピックアップアセンブリを例示する側面図および側面断面図である。図15Aおよび15Bは、それぞれ、本発明の実施形態に従った、角度をなす配向の外面保持構成のアクリルピックアップアセンブリを例示する側面図および側面断面図である。図16Aおよび16Bは、それぞれ、本発明の実施形態に従った、角度をなす配向の外面保持構成を例示する側面図および側面断面図である。
【0029】
使用方法
図17は、本明細書に記載する様々な歯科アタッチメントアセンブリを用いて、歯科装置を複数のインプラントに取り付ける方法の一実施形態を例示する。たとえば、患者に上顎総義歯または下顎総義歯を装着する場合、義歯が配置される領域全体に、複数のインプラントが骨構造内に挿入されるであろう。いくつかの実施形態では、わずか2つ、または、6つものインプラントが用いられてもよい。本明細書に記載する実施形態では、摩擦保持式歯科アタッチメントアセンブリは大部分のインプラントに対して用いられてもよく、一方で、より少ない数(1つのみも)のインプラントは、固定された、つまりねじ保持式の歯科アタッチメントアセンブリを利用するであろう。これは、あらゆる量の保持力に対して歯科装置全体の保持を確実にする固定された連結を一のインプラントに提供しながら、大部分のインプラントの歯科装置の取り付けには順応性を提供する。
【0030】
第1の工程1302では、アバットメントをインプラントまたは歯科装置を支持する他の根構造に固定する。次に、摩擦保持式保持部材を少なくとも1つのアバットメントに嵌合し(工程1304)、少なくとも1つの固定式保持部材を少なくとも1つのアバットメントに取り付ける(工程1306)。工程1308では、摩擦保持式保持部材をそれぞれのキャップに取り付け、工程1310で、固定式保持部材をそれぞれのキャップに取り付ける。工程1312で、非旋回式保持部材をキャップから外し、旋回式保持部材をキャップ内に挿入する。工程1312で、保持部材のアバットメントへのスナップ係合によって、歯科装置をアバットメントに係合し得て、および、キャップと保持部材との間の旋回ジョイントを利用して定位置に旋回または回転し得て、このことは、キャップ内の凹形のくぼみによってさらに向上する。
【0031】
歯科除去工具およびペン
一実施形態では、除去工具を用いて、摩擦保持式歯科装置の簡単な取り外しを可能にしてもよい。除去工具は、2つの部品、除去ループおよび除去ペンを含んでいてもよい。除去ループは、患者の歯茎と歯科装置との間の隙間に部分的に挿入され、隙間のいずれかの側(すなわち、装置の外面および装置の内面)に半ループを作成する、薄い環状のループであってもよく、また、除去ペンは、環状のループが部分的に挿入されたときに歯茎のいずれかの側に現れる各半ループに挿入される長い円筒状のシャフトであってもよい。次いで、除去ペンは、歯科装置の一部分を引いて、または、歯科装置の一部分に対して押し込み、歯科装置を歯茎から分離するレバーとして用いられる。
【0032】
図18Aおよび図18Bは、除去ループ202の一実施形態を例示し、当該除去ループは、以下で示す通り、患者の歯茎と歯科装置との間の隙間の間にねじ込まれ得る薄い環状のループである。ループ202は、摩擦カバーまたは直径がより大きい部分204を、ループ202の第1の末端202Aに含んでもよく、ここは、除去ペン206(図19Bで以下で示す)がループ202と接触する場所であり、ループの除去ペン206の長さに沿った移動を最小にし得る。図18Aは、折り込まれた構成にある除去ループ202を例示し、これは、歯茎と歯科装置との間の隙間に部分的に挿入されたときの様子を示し、一方で図18Bは、隙間に挿入される前の平坦で折り込まれていない構成のループ202を例示する。図18Bで示すように、除去ループは、隙間への挿入を容易にするため、直径がより小さい第2の末端202Bを有してもよい。
【0033】
図19Aは、本発明の一実施形態に従って、除去ループ202第2の末端202Bが患者の歯茎210と歯科装置212との間の隙間208に挿入されていることを例示する側面斜視図である。図19Bは、始めに隙間内にねじ込まれ、口および歯科装置の内部にさらされた、直径がより小さい第2の末端202Bを例示する上部斜視図である。図20Aでは、ループ202は、第1の末端202Aが位置するループの半分が口の外部に見られ、第2の末端202Bが位置するループ202の半分が口の内部に見られるように、隙間内に部分的に挿入されている。ループ202が図20Aで示すように折り込まれた構成に移動した場合、除去ペン206は、図20Bに示す通り、口の外部にあるループの半分および内部にあるループの半分を通るように挿入され得る。一実施形態では、除去ペン206はまた、歯科装置の上部面と接触するように設計される柔軟性末端ピース214を含み、ここに、ユーザーは歯科装置212を除去ペン206で取り外す際に圧力をかける。双方の半ループと係合すると、ユーザーは上向き(または下向き、装置が口の下部か上部にあるかによる)に引っ張り、柔軟性末端ピース214によって歯科装置に適用された力をてこに、ループ202を隙間208から離れるように持ち上げ、こうして、てこの作用を利用し、歯科装置を強く引っ張ったり、または患者に不快感を引き起こしたりする必要なく、歯科装置212を簡単に取り外し得る。
【0034】
除去工具200の代替実施形態を図21Aに例示しており、ここで、ループ202は、除去ペン206の近接末端216内に組み込まれ、また、除去ペン206は、除去ペン206の近接末端216または遠位末端220のいずれかから延びて取り外し操作を実行し得る延長可能アーム218を覆うハウジングである。操作において、図21Bで示すように、ループ202は、上記した通り、近接末端216から延びて歯茎と歯科装置との間の隙間に入る。ループ202は、ペン206のハウジングにおけるスライドバー222または他の前進機構を用いて、ペン206から延び得る。ループ202の第2の202Bが図22Aに示すように隙間に部分的に挿入されると、ユーザーは次いで、図22Bで示すように、遠位末端220の延長された位置から延長可能アーム218を作動して内部半ループおよび歯科装置の上面を越えて延ばし得る。ループ202はペン206内に組み込まれているため、アームは既に外側部分のループと連結しているので、口の外側部分の半ループを通って延びる必要はないことに留意されたい。こうして、延長可能アーム218および柔軟性末端ピース214は歯科装置の上に配置され、同一のてこのアームの動きをペン206の遠位末端で適用し、歯科装置の歯科アタッチメントアセンブリからの取り外しを実行し得る。
【0035】
上記の開示された実施形態の説明は、あらゆる当業者が本発明をなす、または使用することを可能にするよう提供される。これら実施形態に対する様々な修正が当業者には容易に明らかであり、本明細書で記載する一般的な原則は、本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく他の実施形態に適用され得る。よって、提示される明細書および図面は現時点で好ましい本発明の実施形態を表し、よって、本発明によって広く企図される主題を代表することが理解されたい。本発明の範囲は、当業者に明らかになり得る他の実施形態を完全に包含し、したがって、本発明の範囲は限定的ではないことをさらに理解されたい。
図1
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B