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特許7478805新規な低オイルブリードサーマルギャップパッド材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】新規な低オイルブリードサーマルギャップパッド材料
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20240425BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240425BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240425BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20240425BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240425BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240425BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H01L23/36 M
C08L83/04
C08K3/22
C08K3/28
C08K3/34
H01L23/36 D
C08L101/00
【請求項の数】 30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022209916
(22)【出願日】2022-12-27
(65)【公開番号】P2023099513
(43)【公開日】2023-07-13
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】202111675574.5
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】18/080,975
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522504042
【氏名又は名称】ティエンジン レアード テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TIANJIN LAIRD TECHNOLOGIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ホー ランディ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ ジンチ
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/200486(WO,A1)
【文献】特開2016-124908(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131486(WO,A1)
【文献】特開2012-021131(JP,A)
【文献】特開2020-167667(JP,A)
【文献】国際公開第2020/202939(WO,A1)
【文献】特開2020-004805(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0296264(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/373
C08L 83/04
C08K 3/22
C08K 3/28
C08K 3/34
H01L 23/36
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス材料及び熱伝導性フィラーを含むサーマルインターフェース材料であって、前記熱伝導性フィラーは、走査型電子顕微鏡を使用して観察したときにほぼ球形の形状、2μm~120μmの平均粒径(D50)、及び70%~90%の平均球形度である粒子を有し、前記熱伝導性フィラー粒子は、前記マトリックス材料からグリースを吸着するように構成されていることにより、前記サーマルインターフェース材料からの油漏れの発生を低減又は防止する、サーマルインターフェース材料。
【請求項2】
前記マトリックス材料は有機ケイ素樹脂である、請求項1に記載のサーマルインターフェース材料。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラーは、水酸化アルミニウム(ATH)、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び炭化ケイ素のうちの1つ以上から選択される、請求項1に記載のサーマルインターフェース材料。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラーは0.01m/g~1.3m/gの比表面積(SSA)を有する、請求項1に記載のサーマルインターフェース材料。
【請求項5】
前記熱伝導性フィラーは、前記サーマルインターフェース材料の総重量に対して75重量%~96重量%の量で含まれている、請求項1に記載のサーマルインターフェース材料。
【請求項6】
前記マトリックス材料は、前記サーマルインターフェース材料の総重量に対して3重量%~25重量%の量で含まれている、請求項1に記載のサーマルインターフェース材料。
【請求項7】
カップリング剤をさらに含む、請求項1に記載のサーマルインターフェース材料。
【請求項8】
1.0W/m・K以上の熱伝導率を有するように構成されている、請求項1に記載のサーマルインターフェース材料。
【請求項9】
前記サーマルインターフェース材料は、
導電性フィラー;
電磁波吸収フィラー;
誘電吸収フィラー;及び
熱伝導性、導電性、誘電吸収性、及び電磁波吸収性のうちの2つ以上の特性を有するフィラー
の1つ以上をさらに含む、請求項1に記載のサーマルインターフェース材料。
【請求項10】
有機ケイ素樹脂であるマトリックス材料、及び、水酸化アルミニウム(ATH)、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び炭化ケイ素のうちの1つ以上から選択される熱伝導性フィラーを含むサーマルインターフェース材料であって、
前記熱伝導性フィラーは、走査型電子顕微鏡を使用して観察したときにほぼ球形の形状、2μm~120μmの平均粒径(D50)、及び70%~90%の平均球形度である粒子を有し、
前記熱伝導性フィラーは0.01m/g~1.3m/gの比表面積(SSA)を有し、
前記熱伝導性フィラーは、前記サーマルインターフェース材料の総重量に対して75重量%~96重量%の量で含まれ、
前記マトリックス材料は、前記サーマルインターフェース材料の総重量に対して3重量%~25重量%の量で含まれ、かつ
前記サーマルインターフェース材料は1.0W/m・K以上の熱伝導率を有する、サーマルインターフェース材料。
【請求項11】
熱伝導性ガスケットの形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載のサーマルインターフェース材料。
【請求項12】
熱伝導性パッドの形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載のサーマルインターフェース材料。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載のサーマルインターフェース材料を調製する方法であって:有機ケイ素樹脂及び熱伝導性フィラーを均一に撹拌及び混合すること、次いで、得られた混合物を加熱硬化させて、特定の厚さを有するサーマルインターフェース材料を得ることを含み、前記熱伝導性フィラーは、2μm~120μmの平均粒径(D50)及び70%~90%の平均球形度を有する、方法。
【請求項14】
前記有機ケイ素樹脂は、ビニルシリコーンオイルと水素含有シリコーンオイルとを反応させることによって得られる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
マトリックス材料と、走査型電子顕微鏡を使用して観察したときにほぼ球形の形状、2μm~120μmの平均粒径(D50)、及び70%~90%の平均球形度である粒子を有する熱伝導性フィラーを含む複合材であって、前記熱伝導性フィラー粒子は、前記マトリックス材料からグリースを吸着するように構成されていることにより、前記複合材からの油漏れの発生を低減又は防止する、複合材。
【請求項16】
前記マトリックス材料は有機ケイ素樹脂である、請求項15に記載の複合材。
【請求項17】
前記熱伝導性フィラーは、水酸化アルミニウム(ATH)、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び炭化ケイ素のうちの1つ以上から選択される、請求項15に記載の複合材。
【請求項18】
前記熱伝導性フィラーは0.01m/g~1.3m/gの比表面積(SSA)を有する、請求項15に記載の複合材。
【請求項19】
前記熱伝導性フィラーは、前記複合材の総重量に対して75重量%~96重量%の量で含まれる、請求項15に記載の複合材。
【請求項20】
前記複合材の総重量に対して3重量%~25重量%の量の前記マトリックス材料を含む、請求項15に記載の複合材。
【請求項21】
カップリング剤をさらに含む、請求項15に記載の複合材。
【請求項22】
1.0W/m・K以上の熱伝導率を有するように構成されている、請求項15に記載の複合材。
【請求項23】
前記複合材は、
導電性フィラー;
電磁波吸収フィラー;
誘電吸収フィラー;及び
熱伝導性、導電性、誘電吸収性、及び電磁波吸収性のうちの2つ以上の特性を有するフィラー
の1つ以上をさらに含む、請求項15に記載の複合材。
【請求項24】
前記複合材は、有機ケイ素樹脂である前記マトリックス材料を、前記複合材の総重量に対して3重量%~25重量%の量で含み、
前記熱伝導性フィラーは、水酸化アルミニウム(ATH)、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び炭化ケイ素のうちの1つ以上から選択され、
前記熱伝導性フィラーは0.01m/g~1.3m/gの比表面積(SSA)を有し、
前記熱伝導性フィラーは、前記複合材の総重量に対して75重量%~96重量%の量で含まれ、かつ
前記複合材は1.0W/m・K以上の熱伝導率を有する、請求項15に記載の複合材。
【請求項25】
デバイス又はシステムの熱特性及び/又は電磁特性を管理するために使用可能であるように構成されている、請求項1524のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項26】
熱管理及び/又は電磁干渉(EMI)軽減材料である、請求項1524のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項27】
前記複合材は、サーマルインターフェース材料、EMI吸収体、熱伝導性吸収体、導電性エラストマー、導電性複合材、熱伝導性パッド、熱伝導性ガスケット、又はそれらの2つ以上の組み合わせである、請求項1524のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項28】
デバイス又はシステムの熱特性及び/又は電磁特性を管理するために使用される、請求項1524のいずれか1項に記載の複合材を含む前記デバイス又はシステム。
【請求項29】
請求項1524のいずれか1項に記載の複合材を含む熱管理及び/又は電磁干渉(EMI)軽減材料を調製する方法であって:有機ケイ素樹脂及び熱伝導性フィラーを均一に撹拌及び混合すること、次いで、得られた混合物を加熱硬化させて、特定の厚さを有する熱管理及び/又は電磁干渉(EMI)軽減材料を得ることを含み、前記熱伝導性フィラーは、2μm~120μmの平均粒径(D50)及び70%~90%の平均球形度を有する、方法。
【請求項30】
前記有機ケイ素樹脂は、ビニルシリコーンオイルと水素含有シリコーンオイルとを反応させることによって得られる、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルインターフェース用の熱伝導性有機材料に関し、より詳細には、オイルブリードが少ないか又は全くないサーマルギャップパッド材料に関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、必ずしも先行技術ではない本開示に関連する背景情報を提供する。
半導体やトランジスタなどの電気部品は、一般に周囲温度で最適に動作する。しかし、電気部品の動作によって熱が発生し、この熱が放散されなければ、通常の又は所望の動作温度よりも著しく高い温度で電気部品が動作することになり得、そのような過度に高い温度は、電気部品の動作特性及びそれに関連する任意の機器の動作に悪影響を及ぼす可能性がある。熱を除去するために、熱は、電気部品とヒートシンクとの間の直接表面接触によって、及び/又は電気部品とヒートシンクとの間の中間媒体又はサーマルインターフェース材料(TIM)の接触によって、動作中の電気部品からヒートシンクに伝達される。
【0003】
このようなサーマルインターフェース材料に関して、通常、ヒートシンクと発熱電子部品との間に、サーマルシリコーングリース、熱伝導性ガスケット、相変化材料、硬化型サーマルペーストなどのサーマルインターフェース材料を挿入することで、ヒートシンクと電子部品との間の空隙を充填し、界面接触熱抵抗を低減し、熱放散性を向上させる。したがって、様々な分野において、このようなサーマルインターフェース材料は、サーマルギャップパッド材料とも呼ばれる。
【0004】
一般的な熱伝導性材料の一つである熱伝導性ガスケットがより好ましく、その理由は、サーマルシリコーングリースなどの他の材料に比べて、厚さの選択範囲がより柔軟であること、寸法安定性に優れること、及び、材料の柔軟性及び圧縮性にも優れることにある。ここで、シリコーン樹脂は、多くの熱伝導性フィラーとの良好な界面濡れ性を維持するため、熱伝導性ガスケットの主な樹脂成分として用いられることが多い。
【0005】
しかし、シリコーン樹脂を含有する熱伝導性ガスケット材料では、シリコーン熱伝導性ガスケットは、長期間の室温を超える温度で、又は、高温、高湿度又は低温もしくは熱衝撃などの他の過酷な条件下で、ヒートシンク又は機器の表面上に油のような物質を「分泌」することがあり、これは「オイルブリード」現象として知られている。このような熱伝導性材料は、高度で複雑な電子・電気製品に主に使用されるため、オイルブリードの問題が発生すると、機器や設備の汚染や洗浄の困難さにつながる可能性があり、また、光学モジュール分野の一部の製品では直接的な視覚干渉を引き起こす可能性がある。加えて、ブリードしたオイルは、デバイス内で短絡を引き起こす可能性もあり、周囲の不純物及び粒子がブリードしたオイルに吸着され又は付着する可能性があり、機器や設備の動作及び寿命に潜在的な脅威をもたらす。
【0006】
このように、オイルブリードの問題は、様々な電子部品メーカーからますます注目されており、したがってサーマルギャップパッド材料メーカーにとってビジネス損失のリスクが高くなっている。そのため、電子部品メーカーの機能及び性能要求を満たす低オイルブリードサーマルギャップパッド材料を製造することは、緊急かつ重要な問題である。
【0007】
特許文献1は、サーマルインターフェース材料からサーマルインターフェース材料の表面方向に沿ったシリコーンオイルブリードを抑制するために、サーマルインターフェース材料の少なくとも1つの表面に沿った表面処理層を含むサーマルインターフェース材料を提案している。しかし、このような表面処理層を有するサーマルインターフェース材料は、オイルブリードの問題を根本的に解決するものではなく、熱伝導率が低下する可能性があるという問題がある。
【0008】
特許文献2はゲルタイプのサーマルインターフェース材料を提案しており、この材料は、複数の熱伝導性フィラーを配置し、熱伝導性フィラーの表面積を増加させることによってより多くのグリースを吸着することで、オイルブリードを抑制する目的を達成する。しかし、溶媒を使用するゲルタイプのサーマルインターフェース材料とは異なり、ギャップパッド材料の製造において、熱伝導性フィラーの表面積を単純に増加させると、製造過程における混合物の粘度が大幅に増加し、操作が困難になる。さらに、製品特性の観点から、フィラーの粒径を小さくすることにより比表面積を増加させることでオイルブリード率を低下させるという解決方法には以下の問題がある:粒径の小さいフィラーの割合が増加するため、フィラーの全体の充填密度が増加し、これは、材料の圧縮性の大幅な低下をもたらし、最終的に製品の全体性能が低下する。
【0009】
したがって、当技術分野では、様々な熱伝導率係数を有するサーマルギャップパッド材料が製造され得るように、高い熱伝導率及び操作の容易性を確保しながら、オイルブリードの発生を効果的に防止することができるサーマルインターフェース材料又はサーマルギャップパッド材料を開発する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】中国特許出願公開第111592863号明細書
【文献】中国特許出願公開第111868206号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このセクションは、本開示の全般的な概要を提供するものであり、その全範囲又はその特徴の全ての包括的な開示ではない。
上記に鑑みて、本開示は、熱伝導性フィラーの形態及び充填度を設計し、かつ様々な粘度を有する高純度シリコーン樹脂を合理的に組み合わせることによって、熱伝導性及び操作の容易性を確保し、かつ材料の柔軟性及び圧縮性などの機械的特性を維持しながら、オイルブリードを防止、低減又は緩和するという技術的効果を達成することができるサーマルギャップパッド材料(広義には、サーマルインターフェース材料)を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様は、マトリックス材料及び熱伝導性フィラーを含むサーマルギャップパッド材料(広義には、サーマルインターフェース材料)を提供し、前記熱伝導性フィラーは、走査型電子顕微鏡を使用して観察したときにほぼ球形の形状、2~120μmの平均粒径(D50)、及び70%~90%の平均球形度である粒子を有する。本開示のサーマルギャップパッド材料は、熱伝導性ガスケットの形態であり得る。
【0013】
本開示の一実施形態によれば、マトリックス材料はシリコーン樹脂であり、樹脂の粘度は、最終製品の熱伝導率係数についての様々な要求に応じて合理的に選択することができる。例えば、樹脂の粘度は100~10000mPa・s(100~10000cps)であり得る。
【0014】
本開示の一実施形態によれば、熱伝導性フィラーは、水酸化アルミニウム(ATH)、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム、及び炭化ケイ素(SiC)のうちから選択される1種以上であり得る。
【0015】
本開示の特定の実施形態によれば、熱伝導性フィラーの比表面積(SSA)は0.01~1.3m/gであり得る。
本開示の特定の実施形態によれば、前記熱伝導性フィラーの平均球形度は好ましくは75~90%であり得る。
【0016】
本開示の一実施形態によれば、熱伝導性フィラーは、サーマルギャップパッド材料の総重量に対して75~96重量%の量で含まれ得る。
さらに、マトリックス材料は、サーマルギャップパッド材料の総重量に対して3~25重量%の量で含まれ得る。
【0017】
本開示の一実施形態によれば、サーマルギャップパッド材料は、カップリング剤、トナー、又は顔料ペーストなどの他の添加剤をさらに含んでもよい。
本開示の一実施形態によれば、サーマルギャップパッド材料の熱伝導率は、1.0W/m・K以上、例えば、1.0W/m・K~3.0W/m・Kである。
【0018】
本開示によれば、サーマルギャップパッド材料は、設計された熱伝導率係数値を確保しながら、低オイルブリード又は無オイルブリードであるという機能特性を有し、かつ、優れた材料柔軟性及び圧縮性の両方の機械的特性を有する。
【0019】
本開示の別の態様は、サーマルギャップパッド材料(広義には、サーマルインターフェース材料)を調製する方法を提供し、この方法は:シリコーン樹脂及び熱伝導性フィラーを均一に撹拌及び混合すること、次いで、得られた混合物を加熱硬化させて、特定の厚さを有するサーマルギャップパッド材料を得ることを含む。前記熱伝導性フィラーは、2~120μmの平均粒径(D50)及び70~90%の平均球形度を有する。
【0020】
本開示の一実施形態の調製方法によれば、熱伝導性フィラーは、サーマルギャップパッド材料の総重量に対して75~96重量%の量で含まれ、マトリックス材料は、サーマルギャップパッド材料の総重量に対して3~25重量%の量で含まれる。
【0021】
本開示の一実施形態の調製方法によれば、最終製品の熱伝導率係数の基本要求に従って適切な粘度を有するシリコーン樹脂が選択される。いくつかの実施形態において、シリコーン樹脂は、ビニルシリコーンオイルと水素含有シリコーンオイルとを反応させることによって調製される。
【0022】
本開示の一実施形態の調製方法によれば、シリコーン樹脂と熱伝導性フィラーとを混合するステップにおいて、シリコーン樹脂、熱伝導性フィラー、及び任意選択でカップリング剤などの他の添加剤を、撹拌により一緒に均一に混合することができる。
【0023】
本開示の一実施形態の調製方法によれば、前記加熱硬化は、熱成形機で行われてもよい。また、前記加熱硬化は、100℃~150℃の温度で15分~50分間の加熱により行われてもよい。
【0024】
本開示の一実施形態の調製方法によれば、加熱硬化後のサーマルギャップパッド材料の厚さは0.25~8mmであり得る。本開示の調製方法により調製されたサーマルギャップパッド材料は、熱伝導性ガスケットの形態であってもよい。
【0025】
本開示によれば、特定の形態(又は特定の球形度)を有する準球形の熱伝導性フィラーを用いることにより、混合スラリーの粘度を作業性を損なうほど高くすることなく、より多くの充填量でフィラーをマトリックス材料樹脂と混合することができる。このため、得られる熱伝導性混合物の粘度を低くして作業や成形を容易にするとともに、真球状や不規則な形状(繊維状、ブロック状、三角形状等)の熱伝導性フィラーを用いる場合に比べて、同じ質量分率でより多くのフィラーを充填することにより、熱伝導率係数を向上させることができる。一方、特定の球形度を有する熱伝導性フィラーは、比表面積が大きいため、真球状や不規則な形状の熱伝導性フィラーと比較して、マトリックス材料由来のグリースをより多く吸着することができるので、オイルブリードの発生を抑制することができる。
【0026】
適用可能性のさらなる領域は、本明細書に提供される説明から明らかになるであろう。この概要における説明及び具体例は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本開示における図面は、全ての可能な実施形態ではなく、選択された実施例を説明するためのみに提供されており、本開示の範囲を限定することを意図していない。
図1A】約100%の平均球形度を有する熱伝導性フィラー粒子の形態を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図1B】約85%の平均球形度を有する熱伝導性フィラー粒子の形態を示すSEM写真である。
図1C】約65%の平均球形度を有する熱伝導性フィラー粒子の形態を示すSEM写真である。
図2A】本開示の比較例1の円形ガスケットからのオイルブリードの概略写真である。
図2B】本開示の比較例2の円形ガスケットからのオイルブリードの概略写真である。
図3A】本開示の実施例1の円形ガスケットからのオイルブリードの概略写真である。
図3B】本開示の実施例2の円形ガスケットからのオイルブリードの概略写真である。
図3C】本開示の実施例3の円形ガスケットからのオイルブリードの概略写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示を詳細に説明する。
本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語は、発明者がそれらの用語を適切に定義することができる原理に基づいて、関連する分野の背景及び本開示の技術的思想と一致する意味として解釈できると理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、例示的な実施形態を説明するためのものに過ぎず、本開示を限定することを意図していない。
【0029】
さらに、本明細書で使用される場合、「含む」、「備える」又は「有する」という用語は、記載された特徴、数、ステップ、要素又はそれらの組合せの存在を示すが、1つ以上の他の特徴、数、ステップ、要素又はそれらの組合せの存在又は追加を除外しないことを理解すべきである。
【0030】
本明細書において、「重量%」又は「wt%」は、重量百分率を意味する。また、単位のない「%」は、含有量を示す場合、特に断りのない限り「重量%」を意味する。また、「部」は、通常「重量部」を意味する。
【0031】
オイルブリードの問題は、現在のサーマルギャップパッド材料に存在する。したがって、電子部品メーカーの機能及び性能要件を満たす低オイルブリードのサーマルギャップパッド材料を製造することは、緊急かつ重要な問題である。
【0032】
上述したように、従来技術では、熱伝導性フィラーの表面積を増加させることでより多くのグリースを吸着させることにより、オイルブリードを抑制する技術的解決策が存在する。しかし、本開示の発明者らは、熱伝導性フィラーの表面積を増加させることのみに着目すると、ガスケットの形態のサーマルギャップパッド材料を製造する際に混合物の粘度が高くなりすぎ、これは操作に不利になることを見出した。さらに、吸着のための表面積を増加させるために不規則な形状(例えば、ブロック、フレーク、デンドライト形状)を有するフィラーを使用する場合、得られるサーマルギャップパッド材料において、より深刻なオイルブリード又は柔軟性の低下の問題が生じ得る。
【0033】
さらに、混合物の粘度上昇はプレス成形を困難にし、製品の最終的な特性の面では、フィラーの形態を考慮せずにオイルブリードを低減するために粒径の小さいフィラーのみを使用した場合、材料の機械的特性が急激に低下することがあり、不利である。
【0034】
本発明者らは、鋭意研究の結果、サーマルギャップパッド材料において、特定の球形度を有する準球形状の熱伝導性フィラー(例えば、アルミナや水酸化アルミニウム)を選択することにより、フィラーの比表面積を大きくすることで、サーマルギャップパッド材料から発生するグリースがブリードすることなくその中に吸着されることを見出した。それと同時に、準球形熱伝導性フィラーは、球形状フィラーの充填度も高く維持することで、高い熱伝導率を達成する。
【0035】
具体的には、本発明者らは、様々な熱伝導率係数の下で低オイルブリードの機能特性を達成するために、通常、フィラーをより小さい粒径を有するフィラーに置き換えることで熱伝導性フィラーの全体的な比表面積を増加させる方法が容易かつ実行可能と考えられており、理論的には、これらのより小さい粒径を有するフィラーはより多くのオイルを吸収し、低分子量樹脂の沈殿を防止することができるが、この方法は、配合された材料の粘度を劇的に増加させる可能性があり、製造プロセスにおける作業性が低下し、最終製品の機械的特性が低下して圧縮性が失われることを見出した。別の従来の方法は、フィラーの粒径を変化させずに、フィラーの形態を球状から不規則な形状(繊維状やフレーク状など)に変化させることである。これもオイルブリードを減少させ得るが、不規則な形状を有するフィラーは、配合された材料の粘度を劇的に増加させる傾向もあり、したがって、スラリー中のフィラーの含有量を減少させる傾向があり、このことは、この方法を、球形フィラーと比較して、低い熱伝導率係数を有する熱伝導性製品の調製に限定する。さらに、最終製品は、球形フィラーの場合と比較して、著しく高い圧縮ひずみ力、例えば、低下した柔軟性を有する。
【0036】
この問題を解決するため、上述したように、本開示は準球形の熱伝導性フィラーを使用する。これは、より多くのグリースを吸着することが可能なより増大した比表面積を有するため、オイルブリードを防止するとともに、より多くの充填量を達成して高い熱伝導率を確保することができる。さらに、得られるサーマルギャップパッド材料は優れた柔軟性も有する。
【0037】
ここで、柔軟性又は圧縮性は、サーマルギャップパッド材料の主要な特性の1つであり、材料の柔軟性が良好であるほど、加圧下での変形、すなわち圧縮性が高い。このことは、サンプルがより良好な圧縮性を有すること、及びガスケットの嵌合を達成するために嵌合中に加えられる締め付け力がより小さくてもよいことを示唆し、これは、嵌合中の締め付け力が高すぎることに起因する他の繊細な部品の損傷を回避するのに有利である。加えて、サーマルギャップパッド材料のより良好な柔軟性は、材料表面とそれに接触するデバイスの表面との間のより良好な濡れ性を示し、材料は、平坦でないデバイス表面に、材料とデバイスとの間の空気を追い出すようにより大きな程度まで「フィット」することができ、材料とデバイスとの間の接触熱抵抗を大幅に低減する。好ましくは、138kPa(20psi)における変形値として表される柔軟性は、20%~40%であり得る。
【0038】
本開示のサーマルギャップパッド材料は、マトリックス材料と熱伝導性フィラーとを含み、前記熱伝導性フィラーは、走査型電子顕微鏡を使用して観察したときにほぼ球形の形状、2~120μmの平均粒径(D50)、及び70~90%の平均球形度である粒子を有する。具体的には、本開示のサーマルギャップパッド材料は、熱伝導性ガスケットの形態である。
【0039】
まず、熱伝導性フィラーについて説明する。熱伝導性フィラーの種類は、サーマルギャップパッド材料又はサーマルインターフェース材料に通常使用されるフィラーであれば特に限定されない。一例として、熱伝導性フィラーは、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素などから選択することができる。好ましくは、高い熱伝導率を得る観点から、熱伝導性フィラーは水酸化アルミニウム又は酸化アルミニウムから選択され得る。
【0040】
上述したように、本開示の熱伝導性フィラーは粒子状であり、走査型電子顕微鏡で観察したときに、熱伝導性フィラーの粒子はほぼ球形の形状である。具体的には、熱伝導性フィラーは70%~90%の平均球形度の準球形の熱伝導性フィラーである。本発明者らは、熱伝導性フィラーの粒子形態を制御することにより、高い熱伝導率を確保しつつ、オイルブリードを防止することが可能であり、かつ、調製中の取り扱いが容易であることを見出した。さらに、準球形の熱伝導性フィラーを用いることにより、球形粒子の充填度を維持されるため、得られるサーマルギャップパッド材の柔軟性が確保される。
【0041】
熱伝導性フィラーの形状を表すパラメータである球形度は、粒子が球に近い度合いとしても知られている。球形度が1(100%)に近いほど、その粒子が幾何学的な球に近いことを示す。粒子の形態は走査型電子顕微鏡で測定することができ、球形度は計算によって求めることができる。粒子の平均球形度については、当該技術分野における従来の方法を用いて計算によって求めることができる。特定の平均球形度を有する熱伝導性フィラーが市場で市販されており、例えば、70%~95%の平均球形度を有する熱伝導性フィラーが一般的である。
【0042】
これに関して、図1Aを参照すると、ほぼ真球である、すなわち100%に近い平均球形度を有する粒子の形態が示されている。また、図1Bを参照すると、約85%の平均球形度を有する準球形粒子の形態が示されている。
【0043】
また、平均球形度が低いほど、球形から外れていることを意味する。例えば、平均球形度が65%である場合、熱伝導性フィラーは、不規則な形状又はブロック状(立方体状)であるとみなすことができる。図1Cを参照すると、約65%の平均球形度を有する立方体状の粒子の形態が示されている。
【0044】
本開示の熱伝導性フィラーは、好ましくは75%~90%、より好ましくは75%~85%の平均球形度を有する。熱伝導性フィラーの平均球形度が上記範囲を満たす場合、フィラー粒子が表面に凹凸を有しながらも球形に近くなるため、比表面積が大きくなる。これにより、より多くのグリースを吸着することができ、オイルブリードの発生を防止することができると考えられる。平均球形度が上記範囲を超えて高すぎる場合、熱伝導性フィラーの比表面積が減少する。これは、オイルブリードを防止するのに好ましくない。また、平均球形度が上記範囲を超えて低すぎる場合、熱伝導性フィラーの充填度が著しく減少してスラリーの粘度の急激な増加をもたらす。これは、調製プロセスの作業性及び高い熱伝導性の材料の調製には好ましくない。
【0045】
また、比表面積を増加させるために不規則な形状の熱伝導性フィラーを使用する場合、オイルブリードがさらに深刻化することや、柔軟性が低下するという問題がある。さらに、不規則な形状の熱伝導性フィラーを使用して比表面積を増加させる方法は、混合物の粘度の急激な増加も引き起こし得る。本開示の比較例に示されるように、フィラーの充填量が約80重量%である場合、混合物の粘度は既に成形可能な上限に近い。その上、ブロック状フィラーの形態も製品の機械的特性を低下させる。加えて、ブロック状フィラーの使用は、80重量%を超える高い充填量を達成することができないという点で制限され、したがって、高い熱伝導率を有する製品を得ることができない。
【0046】
本開示の熱伝導性フィラーは粒子状であり、その平均粒径はD50値で特徴付けることができる。具体的には、D50値は、マルバーン(Malvern)粒径分析器又はHoribaレーザー粒径分析器を用いて測定される値である。上述したように、熱伝導性フィラーの平均粒径は、2μm~120μm、好ましくは5μm~70μm、より好ましくは10μm~50μm、例えば、20μm、30μm、または40μmである。熱伝導性フィラーの平均粒径が上記範囲を満たす場合、熱伝導性と吸油性との最適化された組み合わせを達成することができる。平均粒径が上記範囲を下回るほど小さい場合、より小さい粒径のフィラーは、配合された材料の粘度を劇的に増加させることにより作業性を低下させ、最終製品の機械的特性を低下させる。
【0047】
上述したように、準球形の熱伝導性フィラーは、球状表面の凹凸のある形態に起因してより大きな比表面積を有する。具体的には、図1A及び図1Bを参照すると、本開示の準球形の熱伝導性フィラーの比表面積は、真球状の表面の比表面積と比較して大幅に増加させることができる。具体的には、本開示の準球形の熱伝導性フィラーの比表面積は、各粒子について0.01m/g~1.3m/g、好ましくは0.2m/g~1.1m/g、例えば、0.25m/g、0.3m/g、0.4m/g等であり得る。比表面積が上記範囲を満たすことにより、サーマルギャップパッド材料中に存在する過剰なグリースを吸着することができるため、オイルブリードを防止することができる。本開示において、熱伝導性フィラーの比表面積は、従来のBET比表面積試験方法によって決定することができる。
【0048】
熱伝導性粒子の充填量(含有量)は、サーマルギャップパッド材料の総重量に対して、75重量%~96重量%、好ましくは80重量%~95重量%、より好ましくは85重量%~95重量%であり得る。フィラーの具体的な充填量は、要求される熱伝導率係数に依存する。充填量が上記範囲を満たす場合、高い熱伝導率を有するサーマルギャップパッド材料を容易に得ることができるため、様々な熱伝導率を有するサーマルギャップパッド材料製品を製造することができる。
【0049】
下記では、マトリックス材料について説明する。サーマルギャップパッド材のマトリックス材料は、樹脂マトリックス材料であり得る。具体的には、樹脂マトリックス材料は、シリコーン樹脂、オイルゲル樹脂等を含み得る。シリコーン樹脂を使用する場合、公知の高性能ペースト状サーマルインターフェース材料であるシリコーンオイルをキャリアとするシリコーンサーマルグリースを形成することができる。
【0050】
総じて、シリコーン樹脂は室温で液体状態を維持するSi-O-Si骨格を有するポリシロキサン生成物を指し、通常、以下の化学式1によって表される一般構造を有する。
【0051】
【化1】
【0052】
式中、Rはアルキル又はアリールであり;R’はアルキル、アリール、アルケニル、水素、炭素官能基、ポリエーテルセグメントなどであり;Xはアルキル、アリール、アルケニル、水素、塩素、ヒドロキシル、アルコキシ、アセトキシ、炭素官能基、ポリエーテル鎖セグメントなどであり;m及びnは1より大きい整数、例えば1~1000である。
【0053】
さらに、本開示のマトリックス材料は、液状シリコーンゴム系も含む。このような系のシリコーンゴムは、分子量が小さく、重合度が中程度であり、粘度が低く、適切な高温で架橋反応を起こしてエラストマーを形成することができる。液状シリコーンゴムは、縮合型と付加型に分類することができる。このうち、付加型熱伝導性シリコーンゴムは、付加型シリコーンゴム成分と無機フィラーとを混合することにより調製される熱伝導性シリコーンゴムである。この場合、ビニルシリコーンオイルや水素含有シリコーンオイルを使用することができ、これらはPt系触媒の触媒作用により架橋されて熱伝導性シリコーンゴムマトリックスを形成する。
【0054】
この場合、塩化白金酸(HPtCl・6HO)錯体化合物などをヒドロシリル化触媒として使用することができる。ビニルシリコーンオイル及び水素含有シリコーンオイルは、付加型加硫シリコーンゴムエラストマーを調製するための必須原料である。この場合、水素含有シリコーンオイルは、総じて、2つ以上のSi-H基を含有する低粘度直鎖メチル水素含有シリコーンオイルであり、ヒドロシリル化反応における架橋剤とみなされる。これは白金触媒の作用下で、異なるビニルシロキサン鎖上のビニル基と架橋することができるため、分散したビニルシロキサン鎖を互いに架橋してネットワーク構造を形成することができる。
【0055】
しかしながら、ビニルシリコーンオイルや水素含有シリコーンオイルを用いた場合、未反応のビニルシリコーンオイル原料が、この原料中に存在する不純物成分と共に、最終製品中に残存することが判明した。ネットワーク構造を形成するように架橋されていないこれらの小分子物質(又は未架橋高分子物質の一部)は、製品中のグリースの大部分を構成し、従来のサーマルギャップパッド材料中に容易に維持されず、使用中に製品の表面からブリードして汚染につながる。
【0056】
本発明者らは、特定の球形度を有する準球形の形態を有する熱伝導性フィラーを選択することによって、熱伝導性フィラーの比表面積を増加させることができ、未架橋グリースをより良好に吸着することができ、それによってオイルブリードの発生を防止できることを見出した。
【0057】
ビニルシリコーンオイルとしては、粘度が200mPa・s~10000mPa・s(200cps~10000cps)、好ましくは1000mPa・s~5000mPa・s(1000cps~5000cps)のビニルシリコーンオイルが一般的であり、水素含有シリコーンオイルとしては、粘度が200mPa・s~10000mPa・s(200cps~10000cps)、好ましくは1000mPa・s~5000mPa・s(1000cps~5000cps)の水素含有シリコーンオイルが一般的である。これらのうち、ビニルシリコーンオイル及び水素含有シリコーンオイルの具体的な粘度は、製品の熱伝導率係数に対する設計要求に応じた粘度範囲内で合理的に選択することができる。例えば、製品に対して設計された比較的高い熱伝導率係数は、より多くの熱伝導性フィラーを充填する必要があることを意味し、この場合、過度に高い粘度を回避するために、より低い全体粘度を有するシリコーンオイルが好ましく、この場合、フィラーに対する湿潤効果がなく、均一な混合が達成できない。
【0058】
マトリックス材料の含有量は、サーマルギャップパッド材料の総重量に対して3重量%~25重量%、好ましくは4重量%~25重量%、より好ましくは5重量%~20重量%、さらに好ましくは5重量%~15重量%であり得る。具体的な含有量は、製品の設計熱伝導率係数に応じて決定される。
【0059】
本開示によれば、サーマルギャップパッド材料は、上述のマトリックス材料及び熱伝導性フィラーを含み得る。ただし、サーマルギャップパッド材料は、カップリング剤、トナー又は顔料ペーストなどの他の添加剤を含んでもよく、カップリング剤の例としては、フタラートカップリング剤、エトキシカップリング剤又はメトキシカップリング剤が挙げられる。
【0060】
他の添加剤の含有量は、サーマルギャップパッド材料の総重量に対して0.05%~5%、好ましくは1%~2%、例えば1.5%であり得る。
本開示の他の態様は、上記サーマルギャップパッド材料を調製する方法を提供し、この方法は、シリコーン樹脂及び熱伝導性フィラーを均一に撹拌及び混合すること、次いで、得られた混合物を加熱硬化させて、特定の厚さを有するサーマルギャップパッド材料を得ることを含む。前記熱伝導性フィラーは、2~120μmの平均粒径(D50)及び70~90%の平均球形度を有する。得られたサーマルギャップパッド材料は、熱伝導性ガスケットの形態である。
【0061】
ゲルタイプのサーマルインターフェース材料の調製とは異なり、本開示のサーマルギャップパッド材料の調製において溶媒は使用されない。したがって、製造プロセスの作業性及び最終製品の性能のために、得られた混合物の適切な粘度を維持することが重要である。
【0062】
本開示の一実施形態によれば、熱伝導性フィラーの含有量は、サーマルギャップパッド材料の総重量に対して75重量%~96重量%であり、マトリックス材料の含有量は、サーマルギャップパッド材料の総重量に対して3重量%~25重量%である。熱伝導性フィラー及びマトリックス材料の選択については、上記で詳細に説明したので、ここでは繰り返さない。
【0063】
シリコーン樹脂と熱伝導性フィラーとを混合するステップにおいて、最終製品の熱伝導性に対する基本的な要求に応じて、適切な粘度を有するシリコーン樹脂を選択することができる。例えば、シリコーン樹脂の粘度は、様々な種類又は粒径の熱伝導性フィラーに適合するように、200mPa・s~10000mPa・s(200cps~10000cps)、好ましくは1000mPa・s~5000mPa・s(1000cps~5000cps)とすることができる。
【0064】
シリコーン樹脂がビニルシリコーンオイルと水素含有シリコーンオイルとを反応させることによって調製される場合、本開示の調製方法は、熱伝導性フィラーとマトリックス材料とを混合する前に、ビニルシリコーンオイルと水素含有シリコーンオイルと任意選択の触媒とを均一に混合するステップをさらに含む。さらに、この場合、本開示の調製方法は、熱伝導性フィラーとマトリックス材料とを混合した後に、架橋ステップをさらに含む。架橋ステップは、当技術分野で従来使用されている架橋ステップを使用することができる。
【0065】
サーマルギャップパッド材料に他の添加剤が含まれる場合、シリコーン樹脂と熱伝導性フィラーとを混合するステップにおいて、シリコーン樹脂と熱伝導性フィラーと、カップリング剤等の任意選択の他の添加剤とを、撹拌しながら均一に混合することができる。
【0066】
加熱硬化するステップは、100℃~150℃の温度で15~50分間加熱することにより行うことができる。具体的には、加熱硬化は120℃~130℃の温度で20~30分間行われ得る。加熱硬化は熱成形機で行われてもよく、熱成形機は、得られた混合物を加熱硬化することができ、混合物をガスケットにプレスすることができるものである限り限定されない。加熱硬化されたサーマルギャップパッド材料の厚さは、0.25mm~8mm、例えば0.5mm~5mmであり得る。
【0067】
本開示の特定の球形度を有する熱伝導性フィラーは市販されている場合がある。例えば、平均球形度が70%~95%であるアルミナ粒子は、Ya’an Bestry Performance Materials社から購入することができる。加えて、ビニルシリコーンオイル及び水素含有シリコーンオイルも市販されている場合があり、例えば、米国のNuisl社によって販売されているシリコーンオイル製品である。
【0068】
本開示の上記調製方法によれば、柔軟で圧縮可能な低オイルブリードサーマルギャップパッド材料を調製することができる。
本開示のサーマルギャップパッド材料は、自動車制御ユニット、電源及び半導体、プロセッサ、フラットパネルディスプレイ、並びに家庭用電化製品などの様々な分野に適用することができる。
【0069】
実施例
以下、実施例を挙げて本開示をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではないことが理解されるべきである。
【0070】
以下の実施例で使用される原料の供給源を、以下のとおり開示する:
ビニルシリコーンオイル及び水素含有シリコーンオイル:Nuisl社、米国;
水酸化アルミニウム:Chinalco Henan Aluminum Fabrication社;
アルミナ:Ya’an Bestry Performance Materials社;
チタナートカップリング剤:Kenich社、米国。
【0071】
試験方法
熱伝導率試験方法:
ASTM D5470-12標準試験方法に従って、サンプルサイズが26mm×26mmであり、厚さが5mm未満であり、平坦な表面を有する熱伝導性ガスケットを選択し、安定した熱伝達の設定状態下で、圧力を設定することができる高温端と低温端との間に配置した。サンプルを通るモニタリングされた熱流ならびに高温表面及び低温表面の温度からサンプルの熱伝導率を計算した。
【0072】
オイルブリード試験方法1:
直径28.6mm及び厚さ2.5mmの円形ガスケット(以下の実施例及び比較例で得られた円形試験品)をA4紙の上に置き、オイルブリード治具に一体的に置き、圧縮率を50%に調整した。160℃のオーブンで3日間焼いた後、治具を取り外して室温まで3時間冷却し、材料ガスケットの直径D1及び最大オイルリングの直径D2を測定した。
【0073】
D1及びD2を用いて、次式によりオイルブリード率を算出した。
オイルブリード率=(D2-D1)/D1×100%。
この方法では、オイルブリード率が20%未満である試験結果を合格と評価した。オイルブリード性能に対する要求が高い適用分野では、この試験方法はオイルブリード制御に主に使用されることに留意されたい。
【0074】
オイルブリード試験方法2:
直径28.6mm及び厚さ2.5mmの円形ガスケット(以下の実施例及び比較例で得られた円形試験品)を秤量して重量M1とした。ガスケットの上下を1層のガラス繊維布で巻き、ガラス繊維に巻かれた円形ガスケットの上下にそれぞれ3層の濾紙を足した。次いで、これをオイルブリード治具に入れ、ガスケットの圧縮率が50%になるように制御した。125℃のオーブンで3日間焼いた後、取り出して室温まで冷却し、ガラス繊維付きガスケットを秤量して重量M2とした。
【0075】
重量減少率を、以下の式に従いM1及びM2を用いて算出した。
重量減少率=(M2-M1)/M1×100%。
この方法では、重量減少率が3%未満の試験結果を合格と評価する。
【0076】
混合物粘度試験方法:
ブルックフィールド-8536224回転粘度計を、十分に撹拌された混合物の粘度の試験のために選択し、適切なローター及び回転速度を選択することによってトルクを40%~80%の範囲内に制御し、粘度データが2分後に実質的に安定した値に留まった時点で、そのデータを最終粘度試験データとして得た。
【0077】
変形試験装置:
変形を、MTS System Corporation製のMTS変形テスターモデル(Deformation Tester Model)10257169によって試験した。直径28.6mm及び厚さ2.5mmのサンプル寸法を有する円形ガスケットについて、試験速度254μm/分(10ミル/分)で、試験圧力138kPa(20psi)下での変形値を記録した。
【0078】
比表面積試験方法:
Micromeritics比表面積テスター、モデルGemini 2390を用いて、BET法により比表面積を測定した。
【0079】
比較例1
この例では、粘度500mPa・s(500cps)のビニルシリコーン樹脂15部、粘度500mPa・s(500cps)の水素含有シリコーン樹脂5部、及びD50が20μmのブロック状(平均球形度:65%)の水酸化アルミニウム79部、及びチタナートカップリング剤1部を用いた。
【0080】
ビニルシリコーン樹脂と水素含有シリコーン樹脂を撹拌ポットに入れ、40rpmの速度で10分間撹拌した後、水酸化アルミニウム79部とチタナートカップリング剤1部を加え、30rpmで5分間撹拌を再開した。その後、真空ポンプを稼働させて真空度が-98Mpaになるまで排気し、15分間撹拌を再開した。撹拌終了後、撹拌パドルを持ち上げ、撹拌ポットまわりの残留粉末をへらで削り取り、-98Mpa、20rpmで10分間撹拌を再開した後、混合物を成形機に投入し、プレスして焼成した。得られたものを、試験用に直径28.6mm及び厚さ2.5mmの円形ガスケットに加工した。
【0081】
撹拌後の混合物の粘度、及び熱伝導率係数、オイルブリード率及び重量減少率(それぞれオイルブリード試験方法1及び2による)、ならびに比較例1の円形ガスケットの製品の138kPa(20psi)での変形を、上記の試験方法を使用することによって試験した。結果を下記の表1に示す。
【0082】
比較例2
この例では、粘度500mPa・s(500cps)のビニルシリコーン樹脂15部、粘度500mPa・s(500cps)の水素含有シリコーン樹脂5部、及びD50が20μmの平均球形度97%(真球)のアルミナ79部、及びチタナートカップリング剤1部を用いた。
【0083】
ビニルシリコーン樹脂と水素含有シリコーン樹脂を撹拌ポットに入れ、40rpmの速度で10分間撹拌した後、アルミナ79部とチタナートカップリング剤1部を加え、30rpmで5分間撹拌を再開した。その後、真空ポンプを稼働させて真空度が-98Mpaになるまで排気し、15分間撹拌を再開した。撹拌終了後、撹拌パドルを持ち上げ、撹拌ポットまわりの残留粉末をへらで削り取り、-98Mpa、20rpmで10分間撹拌を再開した後、混合物を成形機に投入し、プレスして焼成した。得られたものを、試験用に直径28.6mm及び厚さ2.5mmの円形ガスケットに加工した。
【0084】
撹拌後の混合物の粘度、及び熱伝導率係数、オイルブリード率及び重量減少率(それぞれオイルブリード試験方法1及び2による)、ならびに比較例2の円形ガスケットの製品の138kPa(20psi)での変形を、上記の試験方法を使用することによって試験した。結果を下記の表1に示す。
【0085】
実施例1
この例では、粘度500mPa・s(500cps)のビニルシリコーン樹脂15部、粘度500mPa・s(500cps)の水素含有シリコーン樹脂5部、及びD50が20μmの平均球形度90%のアルミナ79部、及びチタナートカップリング剤1部を用いた。
【0086】
ビニルシリコーン樹脂と水素含有シリコーン樹脂を撹拌ポットに入れ、40rpmの速度で10分間撹拌した後、アルミナ79部とチタナートカップリング剤1部を加え、30rpmで5分間撹拌を再開した。その後、真空ポンプを稼働させて真空度が-98Mpaになるまで排気し、15分間撹拌を再開した。撹拌終了後、撹拌パドルを持ち上げ、撹拌ポットまわりの残留粉末をへらで削り取り、-98Mpa、20rpmで10分間撹拌を再開した後、混合物を成形機に投入し、プレスして焼成した。得られたものを、試験用に直径28.6mm及び厚さ2.5mmの円形ガスケットに加工した。
【0087】
撹拌後の混合物の粘度、及び熱伝導率係数、オイルブリード率及び重量減少率(それぞれオイルブリード試験方法1及び2による)、ならびに実施例1の円形ガスケットの製品の138kPa(20psi)での変形を、上記の試験方法を使用することによって試験した。結果を下記の表1に示す。
【0088】
実施例2
この例では、粘度500mPa・s(500cps)のビニルシリコーン樹脂9部、粘度500mPa・s(500cps)の水素含有シリコーン樹脂3部、及びD50が50μmの平均球形度75%のアルミナ87部、及びチタナートカップリング剤1部を用いた。
【0089】
ビニルシリコーン樹脂と水素含有シリコーン樹脂を撹拌ポットに入れ、40rpmの速度で10分間撹拌した後、アルミナ87部とチタナートカップリング剤1部を加え、30rpmで5分間撹拌を再開した。その後、真空ポンプを稼働させて真空度が-98Mpaになるまで排気し、15分間撹拌を再開した。撹拌終了後、撹拌パドルを持ち上げ、撹拌ポットまわりの残留粉末をへらで削り取り、-98Mpa、20rpmで10分間撹拌を再開した後、混合物を成形機に投入し、プレスして焼成した。得られたものを、試験用に直径28.6mm及び厚さ2.5mmの円形ガスケットに加工した。
【0090】
撹拌後の混合物の粘度、及び熱伝導率係数、オイルブリード率及び重量減少率(それぞれオイルブリード試験方法1及び2による)、ならびに実施例2の円形ガスケットの製品の138kPa(20psi)での変形を、上記の試験方法を使用することによって試験した。結果を下記の表1に示す。
【0091】
実施例3
この例では、粘度2000mPa・s(2000cps)のビニルシリコーン樹脂9部、粘度2000mPa・s(2000cps)の水素含有シリコーン樹脂3部、D50が50μmで平均球形度83%のアルミナ87部、及びチタナートカップリング剤1部を用いた。
【0092】
ビニルシリコーン樹脂と水素含有シリコーン樹脂を撹拌ポットに入れ、40rpmの速度で10分間撹拌した後、アルミナ87部とチタナートカップリング剤1部を加え、30rpmで5分間撹拌を再開した。その後、真空ポンプを稼働させて真空度が-98Mpaになるまで排気し、15分間撹拌を再開した。撹拌終了後、撹拌パドルを持ち上げ、撹拌ポットまわりの残留粉末をへらで削り取り、-98Mpa、20rpmで10分間撹拌を再開した後、混合物を成形機に投入し、プレスして焼成した。得られたものを、試験用に直径28.6mm及び厚さ2.5mmの円形ガスケットに加工した。
【0093】
撹拌後の混合物の粘度、及び熱伝導率係数、オイルブリード率及び重量減少率(それぞれオイルブリード試験方法1及び2による)、ならびに実施例3の円形ガスケットの製品の138kPa(20psi)での変形を、上記の試験方法を使用することによって試験した。結果を下記の表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
表1から、比較例1及び2の円形ガスケットは、オイルブリード試験方法2に合格したが、オイルブリード試験方法1ではオイルブリード率が20%を超え、オイルブリード試験に不合格であった。これに対して、実施例1~3の円形ガスケットは、すべてオイルブリード試験方法1及び2の両方に合格し、オイルブリード率及び重量減少率が比較例1及び2よりも有意に低かった。また、図2A~2B及び図3A~3Bを参照すると、比較例1及び2のサーマルギャップパッド材料は、実施例1~3のサーマルギャップパッド材料と比較してオイルブリードが深刻であることが分かる。
【0096】
さらに、比較例1及び2と実施例1との比較から分かるように、フィラーの充填率が同じ(約80%)とき、実施例1の方がオイルブリード率が低く、熱伝導率が高い。
一方、比較例1のブロック状フィラーは、5種類の例の中で比表面積が最も大きい(0.52m/g)が、深刻なオイルブリードの問題を有し、熱伝導性、柔軟性、及び調製作業性に劣っていた。単純にフィラーの比表面積を増加させても、オイルブリードの問題を解決することができず、製品の熱伝導率、柔軟性及び調製作業性にも悪影響を及ぼすことが明らかである。さらに、ブロック状粒子を用いた比較例1のサーマルギャップパッド材料の混合粘度は過度に高く、また、調製プロセスにおける作業性が低下するという欠点もある。
【0097】
加えて、実施例1~3の間の比較から分かるように、アルミナ粒子の平均球形度を変化させる(75%~85%)ことにより、実施例2及び3では、熱伝導性フィラーの充填率(87%)が高くなり、熱伝導率が大幅に向上する一方で、低いオイルブリード率が達成され、この高い熱伝導率係数は、比較例1及び2のブロック状又は真球状フィラーでは達成できない。また、平均球形度を適切に選択することにより、より高い柔軟性や調製作業性(混合物粘度)も得ることができる。
【0098】
異なる平均球形度を有する熱伝導性粒子に対して異なるシリコーン樹脂系を選択することによって、本開示は、より高い熱伝導率及びより低いオイルブリード、ならびに改善された柔軟性又は調製作業性を達成することができ、それによって、様々な適用分野における要件を満たすことができることは明らかである。
【0099】
マトリックス材料及び熱伝導性フィラーを含むサーマルインターフェース材料の例示的な実施形態が開示される。熱伝導性フィラーは、走査型電子顕微鏡を使用して観察したときにほぼ球形の形状、2~120μmの平均粒径(D50)、及び70%~90%の平均球形度である粒子を有する。
【0100】
例示的な実施形態において、マトリックス材料は有機ケイ素樹脂である。
例示的な実施形態において、熱伝導性フィラーは、水酸化アルミニウム(ATH)、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び炭化ケイ素のうちの1つ以上から選択される。
【0101】
例示的な実施形態において、熱伝導性フィラーは、0.01m2/g~1.3m2/gの比表面積(SSA)を有する。
例示的な実施形態において、熱伝導性フィラーは、サーマルインターフェース材料の総重量に対して75重量%~96重量%の量で含まれる。
【0102】
例示的な実施形態において、マトリックス材料は、サーマルインターフェース材料の総重量に対して3重量%~25重量%の量で含まれる。
例示的な実施形態において、サーマルインターフェース材料は、カップリング剤をさらに含む。
【0103】
例示的な実施形態において、サーマルインターフェース材料は、1.0W/m・K以上の熱伝導率を有するように構成される。
例示的な実施形態において、サーマルインターフェース材料は:導電性フィラー;電磁波吸収フィラー;誘電吸収フィラー;及び、熱伝導性、導電性、誘電吸収性、及び電磁波吸収性のうちの2つ以上の特性を有するフィラー、の1つ以上をさらに含む。
【0104】
例示的な実施形態において、マトリックス材料は有機ケイ素樹脂であり;熱伝導性フィラーは、水酸化アルミニウム(ATH)、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び炭化ケイ素のうちの1つ以上から選択され;熱伝導性フィラーは0.01m2/g~1.3m2/gの比表面積(SSA)を有し;熱伝導性フィラーは、サーマルインターフェース材料の総重量に対して75重量%~96重量%の量で含まれ;マトリックス材料は、サーマルインターフェース材料の総重量に対して3重量%~25重量%の量で含まれ;サーマルインターフェース材料は、1.0W/m・K以上の熱伝導率を有する。
【0105】
例示的な実施形態において、サーマルインターフェース材料は、熱伝導性ガスケットの形態である。例示的な実施形態において、サーマルインターフェース材料は、熱伝導性パッドの形態である。
【0106】
例示的な実施形態において、熱伝導性フィラー粒子は、サーマルインターフェース材料からの物質の移動を減少させるように構成されている。熱伝導性フィラー粒子は、マトリックス材料からグリースを吸着するように構成されていることにより、サーマルインターフェース材料からの油漏れの発生を低減又は防止し得る。
【0107】
例示的な実施形態において、サーマルインターフェース材料を調製する方法は、有機ケイ素樹脂及び熱伝導性フィラーを均一に撹拌及び混合すること、次いで、得られた混合物を加熱硬化させて、特定の厚さを有するサーマルインターフェース材料を得ることを含み、前記熱伝導性フィラーは、2μm~120μmの平均粒径(D50)、及び70%~90%の平均球形度を有する。有機ケイ素樹脂は、ビニルシリコーンオイルと水素含有シリコーンオイルとを反応させることによって得ることができる。
【0108】
例示的な実施形態において、複合材は、走査型電子顕微鏡を使用して観察したときにほぼ球形の形状、2μm~120μmの平均粒径(D50)、及び70%~90%の平均球形度である粒子を有する熱伝導性フィラーを含むことにより、熱伝導性フィラー粒子は、複合材からの物質の移動を減少させるように構成されている。
【0109】
例示的な実施形態において、熱伝導性フィラー粒子は、マトリックス材料からグリースを吸着するように構成されていることにより、複合材からの油漏れの発生を低減又は防止する。
【0110】
例示的な実施形態において、複合材のマトリックス材料は有機ケイ素樹脂である。
例示的な実施形態において、複合材の熱伝導性フィラーは、水酸化アルミニウム(ATH)、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び炭化ケイ素のうちの1つ以上から選択される。
【0111】
例示的な実施形態において、複合材の熱伝導性フィラーは、0.01m2/g~1.3m2/gの比表面積(SSA)を有する。
例示的な実施形態において、熱伝導性フィラーは、複合材の総重量に対して75重量%~96重量%の量で含まれる。
【0112】
例示的な実施形態において、複合材のマトリックス材料は、複合材の総重量に対して3重量%~25重量%の量で含まれる。
例示的な実施形態において、複合材は、カップリング剤をさらに含む。
【0113】
例示的な実施形態において、複合材は、1.0W/m・K以上の熱伝導率を有するように構成される。
例示的な実施形態において、サーマルインターフェース材料は:導電性フィラー;電磁波吸収フィラー;誘電吸収フィラー;及び、熱伝導性、導電性、誘電吸収性、及び電磁波吸収性のうちの2つ以上の特性を有するフィラー、の1つ以上をさらに含む。
【0114】
例示的な実施形態において、複合材のマトリックス材料は有機ケイ素樹脂であり;熱伝導性フィラーは、水酸化アルミニウム(ATH)、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び炭化ケイ素のうちの1つ以上から選択され;熱伝導性フィラーは0.01m2/g~1.3m2/gの比表面積(SSA)を有し;熱伝導性フィラーは、複合材の総重量に対して75重量%~96重量%の量で含まれ;マトリックス材料は、複合材の総重量に対して3重量%~25重量%の量で含まれ;複合材は、1.0W/m・K以上の熱伝導率を有する。
【0115】
例示的な実施形態において、複合材は、デバイス又はシステムの熱特性及び/又は電磁特性を管理するために使用可能であるように構成される。
例示的な実施形態において、複合材は、熱管理及び/又は電磁干渉(EMI)軽減材料である。例示的な実施形態において、複合材は、サーマルインターフェース材料、EMI吸収体、熱伝導性吸収体、導電性エラストマー、導電性複合材、又はそれらの2つ以上の組み合わせである。
【0116】
例示的な実施形態では、複合材は、熱伝導性パッド及び/又は熱伝導性ガスケットの形態である。
例示的な実施形態では、本明細書に開示される複合材を含むデバイス又はシステムは、前記デバイス又はシステムの熱特性及び/又は電磁特性を管理するために使用される。
【0117】
例示的な実施形態では、電子デバイスは、熱源と、熱源からの熱伝導性熱経路を確立するために熱源に対して配置された本明細書に開示される複合材とを備える。電子デバイスは、熱除去/放熱構造をさらに備えてもよく、前記複合材は、熱源と熱除去/放熱構造との間にある。これに加えて、又はこれに代えて、電子デバイスはボードレベルシールドを備えてもよく、前記複合材は、熱源とボードレベルシールドとの間にある。そして、電子デバイスは、熱除去/放熱デバイスと、ボードレベルシールドと熱除去/放熱デバイスとの間のサーマルインターフェース材料とを備えてもよい。熱源は集積回路を含んでもよい。熱除去/放熱構造はヒートシンクを含んでもよい。サーマルインターフェース材料は、ボードレベルシールドからヒートシンクへの熱伝導性熱経路を確立するために、ボードレベルシールドとヒートシンクとの間に配置されてもよい。そして、熱伝導性EMI吸収体は、集積回路からボードレベルシールドへの熱伝導性熱経路を確立するために、及び集積回路とヒートシンクとの間を結合する放射電磁界を抑制するために、集積回路とボードレベルシールドとの間に配置されてもよい。
【0118】
本明細書に記載される本発明の様々な修正及び他の実施形態は、前述の説明及び添付の図面に存在する教示に照らして、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、本明細書に開示される特定の実施形態に限定されず、任意の修正及び他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C