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特許7478811螺旋固定を用いてリードレス心臓ペーシング装置の植込みおよび/または回収を行う器具およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】螺旋固定を用いてリードレス心臓ペーシング装置の植込みおよび/または回収を行う器具およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/372 20060101AFI20240425BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A61N1/372
A61M25/00 540
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022515825
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 US2020050123
(87)【国際公開番号】W WO2021050679
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】62/898,701
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フォスター、アーサー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】サックス、ダナ
(72)【発明者】
【氏名】クープ、ブレンダン アーリー
(72)【発明者】
【氏名】アルト、ジャスティン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウルフマン、デイビッド ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ハースル、ベンジャミン ジェイ.
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-501137(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0175219(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0213919(US,A1)
【文献】特表2019-513444(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0280057(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードレス心臓ペーシング装置のための植込みおよび/または回収装置であって、
内腔を含む第1の長尺状シャフトと、
前記第1の長尺状シャフトの前記内腔内に摺動可能に配置された第2の長尺状シャフトと、
前記第1の長尺状シャフトの遠位端部に固定して取り付けられたエンド・キャップ・アセンブリと、
前記第2の長尺状シャフトに取り付けられ、前記エンド・キャップ・アセンブリから遠位方向に延びる、複数のワイヤであり、前記エンド・キャップ・アセンブリに対して相対的に移動可能である複数のワイヤと、を備え、
前記複数のワイヤが、前記リードレス心臓ペーシング装置の近位ハブと係合するように構成され、
前記複数のワイヤが、前記エンド・キャップ・アセンブリから遠位方向に延びる複数のワイヤ・ループを形成し、
前記エンド・キャップ・アセンブリが、外側筐体内に固定されたインサートを含み、前記外側筐体が、前記第1の長尺状シャフトの前記遠位端部に固定して取り付けられ、
前記インサートの最遠位表面は、前記近位ハブの近位表面に当接するように構成され
前記複数のワイヤ・ループが、第1の位置において、前記リードレス心臓ペーシング装置の前記近位ハブを前記インサートの最遠位表面に対して固定するように構成される
リードレス心臓ペーシング装置のための植込みおよび/または回収装置。
【請求項2】
リードレス心臓ペーシング装置のための植込みおよび/または回収装置であって、
内腔を含む第1の長尺状シャフトと、
前記第1の長尺状シャフトの前記内腔内に摺動可能に配置された第2の長尺状シャフトと、
前記第1の長尺状シャフトの遠位端部に固定して取り付けられたエンド・キャップ・アセンブリと、
前記第2の長尺状シャフトに取り付けられ、前記エンド・キャップ・アセンブリから遠位方向に延びる、複数のワイヤであり、前記エンド・キャップ・アセンブリに対して相対的に移動可能である複数のワイヤと、を備え、
前記複数のワイヤが、前記リードレス心臓ペーシング装置の近位ハブと係合するように構成され、
前記複数のワイヤが、前記エンド・キャップ・アセンブリから遠位方向に延びる複数のワイヤ・ループを形成し、
前記エンド・キャップ・アセンブリが、外側筐体内に固定されたインサートを含み、前記外側筐体が、前記第1の長尺状シャフトの前記遠位端部に固定して取り付けられ、
前記インサートの最遠位表面は、前記近位ハブの近位表面に当接するように構成され、
前記インサートの最遠位表面が、前記外側筐体の最遠位端面と面一である、
リードレス心臓ペーシング装置のための植込みおよび/または回収装置
【請求項3】
リードレス心臓ペーシング装置のための植込みおよび/または回収装置であって、
内腔を含む第1の長尺状シャフトと、
前記第1の長尺状シャフトの前記内腔内に摺動可能に配置された第2の長尺状シャフトと、
前記第1の長尺状シャフトの遠位端部に固定して取り付けられたエンド・キャップ・アセンブリと、
前記第2の長尺状シャフトに取り付けられ、前記エンド・キャップ・アセンブリから遠位方向に延びる、複数のワイヤであり、前記エンド・キャップ・アセンブリに対して相対的に移動可能である複数のワイヤと、を備え、
前記複数のワイヤが、前記リードレス心臓ペーシング装置の近位ハブと係合するように構成され、
前記複数のワイヤが、前記エンド・キャップ・アセンブリから遠位方向に延びる複数のワイヤ・ループを形成し、
前記エンド・キャップ・アセンブリが、外側筐体内に固定されたインサートを含み、前記外側筐体が、前記第1の長尺状シャフトの前記遠位端部に固定して取り付けられ、
前記インサートの最遠位表面は、前記近位ハブの近位表面に当接するように構成され、
前記インサートが、前記インサートを通って延びる複数の穴を含み、前記複数の穴が、前記複数のワイヤを受けるように構成される、
リードレス心臓ペーシング装置のための植込みおよび/または回収装置
【請求項4】
前記複数の穴のそれぞれが、遠位方向において径方向外向きに湾曲する、請求項3に記載の植込みおよび/または回収装置。
【請求項5】
前記インサートが、一体構造である、請求項3~4のいずれか一項に記載の植込みおよび/または回収装置。
【請求項6】
前記インサートが、複数のインサート部材を備え、各インサート部材が、前記インサート部材を通って延びる前記複数の穴のうちの1つまたは複数の少なくとも一部分を含む、請求項3~4のいずれか一項に記載の植込みおよび/または回収装置。
【請求項7】
前記複数の穴のそれぞれが、前記複数のワイヤのうちの一つ以上を受けるように構成される、請求項3~4のいずれか一項に記載の植込みおよび/または回収装置。
【請求項8】
前記複数のワイヤが、前記第1の位置において、前記第1の長尺状シャフトの回転運動を前記近位ハブに対して伝達するように構成される、請求項に記載の植込みおよび/または回収装置。
【請求項9】
前記複数のワイヤ・ループが、
前記複数の穴のうちの第1の対を通る第1のワイヤ・ループと、
前記複数の穴のうちの第2の対を通る第2のワイヤ・ループと、
前記複数の穴のうちの第3の対を通る第3のワイヤ・ループと、を含む、
請求項3~7のいずれか一項に記載の植込みおよび/または回収装置。
【請求項10】
前記複数の穴のうちの前記第2の対の一方が、円周方向に前記複数の穴のうちの前記第1の対の間に配置され、
前記複数の穴のうちの前記第3の対の一方が、円周方向に前記複数の穴のうちの前記第2の対の間に配置される、
請求項に記載の植込みおよび/または回収装置。
【請求項11】
前記エンド・キャップ・アセンブリには、前記近位ハブの側面と係合するように構成されたいかなる構造もない、請求項1~10のいずれか一項に記載の植込みおよび/または回収装置。
【請求項12】
第1の位置において、前記複数のワイヤ・ループが、前記リードレス心臓ペーシング装置の本体から前記近位ハブまで軸方向に延びる前記リードレス心臓ペーシング装置のネック部分を協働して取り囲むように構成され、
第2の位置において、前記複数のワイヤ・ループが、前記本体の周縁から径方向外向きに延びるように構成される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の植込みおよび/または回収装置。
【請求項13】
前記複数のワイヤ・ループのうちの円周方向に隣接するワイヤ・ループが、軸方向に見たときに互いに十字に交差している、請求項1~12のいずれか一項に記載の植込みおよび/または回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療装置、ならびに医療装置を製造および/または使用する方法に関する。さらに詳細には、本開示は、リードレス心臓ペーシング装置および方法、ならびにこのようなリードレス装置の送達および回収装置および方法など、リードレス心臓装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幅広く様々な医療装置が、例えば心臓のための用途など、医療用途のために開発されている。これらの装置の一部は、カテーテル、リード、およびペースメーカなど、ならびにこのような装置を送達するために使用される送達デバイスおよび/またはシステムを含む。これらの装置は、様々な異なる製造方法のうちの任意の1つによって製造され、様々な方法のうちの任意の1つによって使用され得る。既知の医療装置、送達システム、および方法のそれぞれは、特定の利点および欠点を有する。代替の医療装置および送達装置、ならびに医療装置および送達装置を製造および使用するための代替の方法を提供することは、常に必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
1つの例では、リードレス心臓ペーシング装置のための植込みおよび/または回収装置は、内腔を含む第1の長尺状シャフトと、第1の長尺状シャフトの内腔内に摺動可能に配置された第2の長尺状シャフトと、第1の長尺状シャフトの遠位端部に固定して取り付けられたエンド・キャップ・アセンブリと、第2の長尺状シャフトに取り付けられ、エンド・キャップ・アセンブリから遠位方向に延びる、複数のワイヤであり、エンド・キャップ・アセンブリに対して相対的に移動可能である複数のワイヤと、を備えることがある。複数のワイヤは、リードレス心臓ペーシング装置の近位ハブと係合するように構成される。複数のワイヤは、エンド・キャップ・アセンブリから遠位方向に延びる複数のワイヤ・ループを形成する。
【0004】
これに加えて、または別法として、エンド・キャップ・アセンブリは、外側筐体内に固定されたインサートを含み、外側筐体は、第1の長尺状シャフトの遠位端部に固定して取り付けられる。
【0005】
これに加えて、または別法として、インサートの最遠位表面は、外側筐体の最遠位端面と面一である。
これに加えて、または別法として、インサートは、そのインサートを通って延びる複数の穴を含み、複数の穴は、複数のワイヤを受けるように構成される。
【0006】
これに加えて、または別法として、複数の穴のそれぞれは、遠位方向に径方向外向きに湾曲する。
これに加えて、または別法として、インサートは、一体構造である。
【0007】
これに加えて、または別法として、インサートは、複数のインサート部材を備え、各インサート部材は、そのインサート部材を通って延びる複数の穴のうちの1つまたは複数の少なくとも一部分を含む。
【0008】
これに加えて、または別法として、複数の穴のそれぞれは、複数のワイヤのうちの複数のワイヤを受けるように構成される。
これに加えて、または別法として、複数のワイヤ・ループのうちの円周方向に隣接するワイヤ・ループは、軸方向に見たときに互いに十字に交差している。
【0009】
これに加えて、または別法として、リードレス心臓ペーシング装置のための植込みおよび/または回収装置は、内腔を含む第1の長尺状シャフトと、第1の長尺状シャフトの遠位端部に固定して取り付けられたエンド・キャップ・アセンブリと、エンド・キャップ・アセンブリを通って延び、エンド・キャップ・アセンブリより遠位側に複数のワイヤ・ループを形成する、複数のワイヤであり、エンド・キャップ・アセンブリを通って第1の位置と第1の位置より遠位側の第2の位置との間で移動可能な複数のワイヤと、を備えることがある。複数のワイヤ・ループは、第1の位置において、リードレス心臓ペーシング装置の近位ハブをエンド・キャップ・アセンブリに対して相対的に固定するように構成される。
【0010】
これに加えて、または別法として、エンド・キャップ・アセンブリは、外側筐体内に固定されたインサートを含む。インサートは、外側筐体の最遠位表面と面一の最遠位表面と、インサートを通って延び、遠位方向に開く複数の穴とを含むことがある。複数のワイヤ・ループは、第1の位置において、リードレス心臓ペーシング装置の近位ハブをインサートの最遠位表面に押し付けて固定するように構成される。
【0011】
これに加えて、または別法として、複数のワイヤ・ループのうちの円周方向に隣接するワイヤ・ループは、軸方向に見たときに互いに十字に交差している。
これに加えて、または別法として、複数のワイヤは、第1の位置において、第1の長尺状シャフトの回転運動を近位ハブに対して伝達するように構成される。
【0012】
これに加えて、または別法として、複数のワイヤ・ループは、複数の穴のうちの第1の対を通る第1のワイヤ・ループと、複数の穴のうちの第2の対を通る第2のワイヤ・ループと、複数の穴のうちの第3の対を通る第3のワイヤ・ループと、を含む。
【0013】
これに加えて、または別法として、複数の穴のうちの第2の対の一方は、円周方向に複数の穴のうちの第1の対の間に配置され、複数の穴のうちの第3の対の一方は、円周方向に複数の穴のうちの第2の対の間に配置される。
【0014】
これに加えて、または別法として、第1のワイヤ・ループの遠位端部セグメントは、第3のワイヤ・ループの遠位端部セグメントと平行であり、第1のワイヤ・ループの遠位端部セグメントは、第2のワイヤ・ループの遠位端部セグメントに対して直交する。
【0015】
これに加えて、または別法として、システムは、本体、近位ハブ、および近位ハブの反対側の螺旋固定部材を含むリードレス心臓ペーシング装置と、カテーテルと、カテーテル内に摺動可能に配置された第1の長尺状シャフトであり、内腔および近位ハンドルを含む第1の長尺状シャフトと、第1の長尺状シャフトの内腔内に摺動可能に配置された第2の長尺状シャフトと、第1の長尺状シャフトの遠位端部に固定して取り付けられた外側筐体、および外側筐体内に固定されたインサートを含むエンド・キャップ・アセンブリと、第2の長尺状シャフトに固定して取り付けられ、エンド・キャップ・アセンブリから遠位方向に延びて、第1の位置と第1の位置より遠位側の第2の位置との間で平行移動可能な複数のワイヤ・ループを形成する複数のワイヤと、を備えることがある。複数のワイヤ・ループは、第1の位置において、リードレス心臓ペーシング装置の近位ハブと係合するように構成される。
【0016】
これに加えて、または別法として、エンド・キャップ・アセンブリには、近位ハブの側面と係合するように構成されたいかなる構造もない。
これに加えて、または別法として、複数のワイヤは、第1の位置において、第1の長尺状シャフトの回転運動を近位ハブに対して伝達するように構成される。
【0017】
これに加えて、または別法として、リードレス心臓ペーシング装置は、本体から近位ハブまで長手方向に延びるネック部分を含む。第1の位置において、複数のワイヤ・ループは、ネック部分をそれを通して受ける区切られた開口を形成する3つ以上の交差する遠位端部セグメントを含む。
【0018】
いくつかの実施形態、態様、および/または例の上記概要は、本開示の各実施形態または全ての実装を説明することを意図したものではない。図面および以下の詳細な説明は、これらの実施形態をさらに詳細に例示するものである。
【0019】
本開示は、以下の詳細な説明を添付の図面と関連付けて考慮することにより、さらに完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】心臓内に植え込まれた例示的なリードレス心臓ペーシング装置を示す概略図。
図2】例示的な植込み型リードレス心臓ペーシング装置を示す側面図。
図3】リードレス心臓ペーシング装置の植込みおよび/または回収を行うシステムの態様を示す図。
図3A図3のシステムの一部分を示す詳細図。
図4A図3A中の線4-4に沿って見たシステムの一部分を示す端面図。
図4B図3A中の線4-4に沿って見たシステムの代替構成の一部分を示す端面図。
図4C図3A中の線4-4に沿って見たシステムの代替構成の一部分を示す端面図。
図5図3のシステムの態様を示す図。
図5A図5のシステムの一部分を示す詳細図。
図6図3および図5のシステムの選択した態様を示す展開図。
図7】本開示による例示的なインサートを示す断面図。
図8図3および図5のシステムの代替構成の態様を示す図。
図9図8のシステムの選択した態様を示す展開図。
図10図8図9のシステムの例示的なインサート部材の態様を示す図。
図11図3および図5のシステムの代替構成の態様を示す図。
図12】リードレス心臓ペーシング装置の患者の心臓内への送達および患者の心臓からの回収を示す一連の概略図。
図13】リードレス心臓ペーシング装置の患者の心臓内への送達および患者の心臓からの回収を示す一連の概略図。
図14】リードレス心臓ペーシング装置の患者の心臓内への送達および患者の心臓からの回収を示す一連の概略図。
図15】リードレス心臓ペーシング装置の患者の心臓内への送達および患者の心臓からの回収を示す一連の概略図。
図16】リードレス心臓ペーシング装置の患者の心臓内への送達および患者の心臓からの回収を示す一連の概略図。
図17】リードレス心臓ペーシング装置の患者の心臓内への送達および患者の心臓からの回収を示す一連の概略図。
図18】リードレス心臓ペーシング装置の患者の心臓内への送達および患者の心臓からの回収を示す一連の概略図。
図19】リードレス心臓ペーシング装置の患者の心臓内への送達および患者の心臓からの回収を示す一連の概略図。
図20】リードレス心臓ペーシング装置の患者の心臓内への送達および患者の心臓からの回収を示す一連の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、様々な修正および代替形態の余地があるが、その詳細は、例示を目的として図面に示されており、以下、詳細に説明する。ただし、本発明は、本開示の態様を記載されている特定の実施形態に対して限定するものではないことを理解されたい。逆に、本発明は、本開示の趣旨および範囲に含まれる全ての修正、均等物、および代替物をカバーするものである。
【0022】
以下の記述は、図面を参照して読まれるべきものである。これらの図面は、必ずしも正確な縮尺ではなく、また、同じ参照番号は、このいくつかの図面を通して同じ要素を示している。この詳細な説明および図面は、特許請求される発明を例示するためのものであり、限定するためのものではない。当業者なら、記載および/または図示される様々な要素は、本開示の範囲を逸脱することなく様々な組合せおよび構成で配置され得ることを認識するであろう。この詳細な説明および図面は、特許請求される発明の例示的な実施形態を示すものである。ただし、明瞭さおよび理解の容易さのために、各図面には全ての特徴および/または要素が示されていないこともあるが、それにもかかわらずそうした1つまたは複数の特徴および/または要素も、特に指定がない限り存在するものとして理解され得る。
【0023】
以下の定義される用語について、特許請求の範囲、または本明細書中の他の箇所において異なる定義が与えられない限り、これらの定義が適用されるものとする。
全ての数値は、明示されているか否かに関わらず、本明細書では、「約」という用語によって修飾されるものとして想定されている。数値の文脈において、「約」という用語は、一般に、記載されている値と等価であると当業者が考える(例えば同じ機能または結果を有する)数の範囲を指す。多くの場合には、「約」という用語は、最も近い有意な数字に丸められた数を含む可能性がある。「約」という用語のその他の使用(例えば数値以外の文脈における使用)は、特に指定がない限り、本明細書の文脈から理解されるように、また本明細書の文脈と矛盾しないように、それらの普通の慣例的な1つまたは複数の定義を有するものと想定されていることがある。
【0024】
エンドポイントによる数値範囲の記載は、エンドポイントを含むその範囲内の全ての数を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、および5を含む)。
【0025】
様々な構成要素、特徴、および/または仕様に関するいくつかの適当な寸法、範囲、および/または値が開示されるが、当業者は、本開示の教示があれば、所望の寸法、範囲、および/または値がそれらの明示的に開示されたものから逸脱することもあり得ることを理解するであろう。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうではないことを示していない限り、複数形の意味を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される「または(あるいは、もしくは)」という用語は、一般に、文脈が明らかにそうではないことを示していない限り、「および/または」を含む意味で利用されている。理解を容易にするために、本開示の特定の特徴は、それらの特徴が複数である可能性があっても、あるいは開示される1つまたは複数の実施形態内で再度現れる可能性があっても、単数形で記載されることがあることに留意されたい。これらの特徴の各事例は、明示的にそうではないと述べられていない限り、単数形の開示を含む、かつ/または単数形の開示に包含されることがある。簡潔さおよび明瞭さのために、開示される発明の全ての要素が、必ずしも各図面に示されている、または以下に詳細に述べられているとは限らない。しかしながら、以下の記述は、明示的にそうではないと述べられていない限り、複数存在する構成要素のうちの任意の構成要素、および/または全ての構成要素に等しく当てはまる可能性があることは理解されるであろう。さらに、いくつかの要素または特徴の全ての事例が各図面中に明瞭に示されているとは限らないこともある。
【0027】
「近位」、「遠位」、「前進させる」、「後退させる」、およびそれらの変形などの相対的な用語は、一般に、装置のユーザ/オペレータ/マニピュレータに対する様々な要素の位置決め、方向、および/または動作に関して考慮されることがあり、「近位」および「後退させる」は、ユーザに対して接近していること、またはユーザに向かうことを示す、または指し、「遠位」および「前進させる」は、ユーザから離れていること、またはユーザから遠ざかることを示す、または指す。いくつかの事例では、「近位」および「遠位」という用語が、本開示の理解を容易にしようとするなかで任意に割り当てられることもあるが、このような事例は、当業者には容易に明らかになるであろう。「上流側」、「下流側」、「流入」、および「流出」など、その他の相対的な用語は、体腔や血管などの内腔内、または装置内の流体流の方向を指す。
【0028】
「範囲」という用語は、述べられる、または識別される寸法の最小測定値を意味するものとして理解され得る「最小」が当該の範囲または寸法の前にある、または「最小」として識別されない限り、述べられる、または識別される寸法の最大測定値を意味するものとして理解され得る。例えば、「外側範囲」は、外側寸法を意味するものとして理解され得、「径方向範囲」は、径方向寸法を意味するものとして理解され得、「長手方向範囲」は、長手方向寸法を意味するものとして理解され得る、などである。「範囲」の事例はそれぞれ異なることがあり(例えば軸方向、長手方向、横方向、径方向、円周方向など)、当業者には個々に使用されている文脈から明らかであろう。一般に、「範囲」は、所期の使用に応じて測定される最大可能寸法とみなされることがあり、「最小範囲」は、所期の使用に応じて測定される最小可能寸法とみなされることがある。いくつかの事例では、「範囲」は、一般に、平面および/または断面内で直交するように測定されることがあるが、限定されるわけではないが、角度をつけて測定される、径方向に測定される、円周方向に(例えば円弧に沿って)測定されるなど、その特定の文脈から明らかになるように異なる方法で測定されることもある。
【0029】
「一体構造の」および「一体の」という用語は、一般に、単一の構造または基本ユニット/要素で構成される、あるいは単一の構造または基本ユニット/要素からなる、1つまたは複数の要素を指すものとする。一体構造および/または一体の要素は、複数の別個の要素を組み立てるなどして結合することによって作製された構造および/または特徴を排除するものとする。
【0030】
本明細書における「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などに対する言及は、記載される1つまたは複数の実施形態が、特定の特徴、構造、または特性を含む可能性があることを示すものであり、全ての実施形態が必ずしもその特定の特徴、構造、または特性を含むとは限らない可能性があることに留意されたい。さらに、このような表現は、必ずしも同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性がある実施形態と関連付けて記載されるときには、そうではないと明確に述べられていない限り、明示的に述べられているか否かに関わらず、その特定の特徴、構造、または特性を他の実施形態と関連付けて実施することは、当業者の知識範囲内である。すなわち、当業者には理解されるように、以下に述べられる様々な個別の要素は、特定の組合せで明示的に示されていない場合でも、他の追加の実施形態を構成するために、あるいは記載される1つまたは複数の実施形態を補完かつ/または強化するために、互いに結合可能または配置可能であるものとして企図されている。
【0031】
明瞭さのために、識別のための特定の数的用語(第1、第2、第3、第4など)が、本明細書および/または特許請求の範囲を通じて、記載および/または特許請求される様々な特徴を指定し、かつ/または区別するために使用されることがある。この数的用語は、限定のためのものではなく、単なる例示であることを理解されたい。いくつかの実施形態では、簡潔さおよび明瞭さのために、以前に使用された数的用語の修正、および以前に使用された数的用語からの逸脱があることもある。すなわち、「第1」の要素として特定された特徴が、後に「第2」の要素もしくは「第3」の要素などと呼ばれる、または完全に省略されることもあり、かつ/あるいは異なる特徴が「第1」の要素と呼ばれることもある。各事例における意味および/または名称は、当業者には明らかであろう。
【0032】
心臓ペースメーカは、心臓組織に対して電気刺激を提供して心臓を収縮させ、それにより血管系を通して血液を送る。従来のペースメーカは、通常は、皮下または筋肉下に植え込まれたパルス発生器から心室の内壁または外壁に隣接して位置決めされた電極まで延びる電気リードを含む。従来のペースメーカの代替として、独立型またはリードレスの心臓ペースメーカが提案されている。リードレス心臓ペースメーカは、通常は心室内または心室の周りの心臓内植込み部位に対して固定される小型カプセルである。この小型カプセルは、通常は、双極ペーシング/感知電極、電源(例えばバッテリ)、およびペーシング/感知電極を制御するための関連する電気回路を含み、これにより心臓組織に対して電気刺激を提供し、かつ/または生理学的状態を感知する。いくつかの場合には、リードレス心臓ペースメーカは、小型カプセルから延びる近位および/または遠位延長部を含むこともあり、この1つまたは複数の延長部が、1つまたは複数のペーシング/感知電極を含むこともある。このカプセルは、大腿静脈を通して下大静脈内、右心房内、ならびに冠状静脈洞内および冠状静脈洞を通って、かつ/または冠状静脈洞まで延びる冠状血管内まで前進させることがある送達装置を用いて心臓まで送達されることがある。したがって、心臓ペーシング装置、および血管系を通した前進を容易にする送達装置を提供することが望ましい可能性がある。
【0033】
本明細書に記載されるリードレス心臓ペーシング装置は、心臓の不整脈を検出および治療することがあり、さらに詳細には、患者の心臓の右心房、左心房、右心室、および/または左心室に対して電気刺激治療を施すことがある。例えば、1つまたは複数の装置が、患者の心臓上、または患者の心臓内に植え込まれることがあり、この1つまたは複数の装置は、1つまたは複数の治療計画に従って患者の心臓の1つまたは複数の空洞に対して電気刺激治療を施し、かつ/あるいは1種類または複数種類の検出された心臓の不整脈を治療するように構成されることがある。いくつかの例示的な電気刺激治療は、徐脈治療、心臓再同期療法(CRT)、抗頻拍ペーシング(ATP)療法、ならびに除細動および/またはカルディオバージョン療法などを含む。いくつかの例示的な心臓の不整脈は、心房細動または心房粗動、心室細動、および頻拍を含む。
【0034】
本明細書にはリードレス心臓ペーシング装置の様々な特徴が記載されるが、例示的なリードレス心臓ペーシング装置の代替および/または追加の特徴は、あらゆる目的のために参照により本願明細書に援用する、2019年3月29日出願の「心臓の不整脈を治療するためのシステムおよび方法(SYSTEMS AND METHODS FOR TREATING CARDIAC ARRHYTHMIAS)」と題する米国仮特許出願第62/826496号、およびあらゆる目的のために参照により本願明細書に援用する、2019年3月29日出願の「心臓の不整脈を治療するためのシステムおよび方法(SYSTEMS AND METHODS FOR TREATING CARDIAC ARRHYTHMIAS)」と題する米国仮特許出願第62/826507号に記載されている。以下、参照により援用するこれらの参照文献は、「本願明細書に援用する参照文献」と呼ばれる。
【0035】
図1は、患者の心臓の右心房、左心房、右心室、および/または左心室に対して電気刺激療法を施すことを含む、患者の心臓に対して電気刺激療法を施す例示的なシステムを示す概念図である。図1は、心臓10内および心臓10の周りに植え込まれた例示的なリードレス心臓ペーシング装置20を示している。図1の心臓10は、右心房11、左心房12、右心室13、左心室14、冠状静脈洞15、冠状静脈洞口16、大心臓静脈17、および中隔18を示すように描かれている。図1では、冠状静脈洞15および大心臓静脈17は、心臓10の後部側にあり、図1では通常は見えないはずであるため、破線で描かれている。リードレス心臓ペーシング装置20は、植え込まれ、冠状静脈洞15内まで延びるように示されており、リードレス心臓ペーシング装置20の少なくとも一部分は図1では通常は見えないはずであるが、分かりやすくするために、リードレス心臓ペーシング装置20は全体が実線で描かれている。いくつかの事例では、リードレス心臓ペーシング装置20の本体22の長さの約50%が冠状静脈洞15内に挿入され、本体22の近位端部領域が、右心房11内に位置決めされる。いくつかの事例では、リードレス心臓ペーシング装置20の本体22の長さの最遠位部分の約25%~75%が冠状静脈洞15内に挿入され、本体22の残りの近位端部領域が、右心房11内に位置決めされることもある。
【0036】
図1の例では、リードレス心臓ペーシング装置20は、近位端部および遠位端部を有する本体22と、本体22の遠位端部から遠位方向に延びる遠位延長部24とを含む。ただし、いくつかの事例では、遠位延長部24が含まれないこともあり、かつ/あるいは1つまたは複数の他の遠位および/または近位延長部が含まれることもある。本体22は、その全長にわたって同じ断面形状を有していなくてもよい。植え込まれたときには、本体22は、患者の心臓10の冠状静脈洞15内に完全に、または部分的に配置されることがあり、遠位延長部24は、冠状静脈洞15から延びる血管(例えば大心臓静脈17、前室間静脈、別の側方下行血管など)内に完全に、または部分的に配置されることがある。
【0037】
本体22は、患者の心臓10内の目標位置への植込みに適した任意の寸法を有することができる。1つの例では、本体22は、冠状静脈洞15内に嵌合するのに十分な断面直径または断面積を有することがあり、これは、約0.24インチ(6mm)から約0.6インチ(15mm)の間で変動することがある。本体22の直径は、様々な実施形態において、約0.1インチ(2.54mm)から約0.4インチ(10mm)の間の範囲であることがある。本体22は、十分な血流が冠状静脈洞15を流れることができるようにしながら、異なるサイズの冠状静脈洞内に植え込まれるようにサイジングされ得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、リードレス心臓ペーシング装置20は、1つまたは複数の電極を含むことがある。1つの例では、リードレス心臓ペーシング装置20の本体22が、第1の電極26および第2の電極28を支持し、遠位延長部24が、遠位電極を支持することがある。いくつかの場合には、遠位延長部24は、複数の電極(例えば第1の近位環状電極30、第2の近位環状電極32、第3の近位環状電極34、遠位環状電極36、および/あるいは1つまたは複数のその他の電極)を含むことがある。記載される電極は、環状電極であるものとして示されることもあるが、応用分野に応じて他の電極タイプも利用され得る。
【0039】
いくつかの場合には、第1の電極26は、本体22上に、本体22に沿って、かつ/または本体22から形成されることがあり、第2の電極28は、本体22から延びる固定部材50(以下で詳細に述べる)上に、固定部材50に沿って、かつ/または固定部材50から形成されることがある。1つの例では、本体22は、少なくとも部分的には導電性材料で構成されることがあり、この導電性材料の露出表面は、少なくとも部分的に第1の電極26を構成することがある。これに加えて、または代替として、第2の電極28は、患者の心臓組織に対して露出していることがある固定部材50の1つまたは複数の露出した導電性表面部分から形成されることがある。位置、形状、1つまたは複数の材料などを含めて、電極26、28の様々な構成が企図される。リードレス心臓ペーシング装置20の代替および/または追加の電極構成は、本願明細書に援用する参考文献に記載されている。
【0040】
リードレス心臓ペーシング装置20の電極は、設けられると、心臓10に対して電気刺激を送達し、かつ/あるいは1つまたは複数の生理学的信号を感知するために使用され得る。いくつかの場合には、リードレス心臓ペーシング装置20は、電極(例えば電極26~36またはその他の電極)のうちの1つまたは複数を使用して、限定されるわけではないが1つまたは複数の他のリードレス心臓ペースメーカおよび/または植込み型除細動器など、1つまたは複数のその他のデバイスと通信することがある。いくつかの事例では、リードレス心臓ペーシング装置20は、伝導通信技術を用いて通信することがあり、電極(例えば電極26~36またはその他の電極)のうちの1つまたは複数を通して通信信号を送達かつ/または受信することがある。いくつかの実施形態では、リードレス心臓ペーシング装置20は、1つまたは複数の他のデバイスとの無線通信のためのアンテナとして動作し、かつ/あるいは1つまたは複数の他のデバイスから電気エネルギーを受け取るように動作するように構成された1本または複数本の通信ワイヤを含むことがある。
【0041】
いくつかの事例では、リードレス心臓ペーシング装置20は、本体22から一般に本体22より近位側に配置される近位ハブ38(例えばドッキング・ハブまたはその他の部材)まで長手方向に延びるネック部分を含むことがある。植込み中に、近位ハブ38は、植込みおよび/または回収装置(図1には図示せず)に解除可能に結合されることがある。結合されると、植込みおよび/または回収装置の移動がリードレス心臓ペーシング装置20および/または本体22に対して変換され、それにより医師などのユーザがリードレス心臓ペーシング装置20および/または本体22を心臓10内の適所まで、例えば冠状静脈洞15内またはその近傍まで、操作移動させることができるようになり得る。植込みおよび/または回収装置は、リードレス心臓ペーシング装置20を長手方向かつ/または回転方向に操作することができることがある。
【0042】
いくつかの事例では、リードレス心臓ペーシング装置20は、送達カテーテル(図1には図示せず)から送達されることがあり、送達カテーテルの本体22を取り囲む部分は、本体22にぴったりと沿って、送達カテーテルと本体22の間にしっかりした接続を生み出し得る。リードレス心臓ペーシング装置20が適所に置かれたら、送達カテーテルを後退させることもあるし、あるいは植込みおよび/または回収装置を使用して本体22を送達カテーテルから押し出す、かつ/またはその他の方法でリードレス心臓ペーシング装置20の位置を調整することもある。いくつかの実施形態では、植込みおよび/または回収装置は、本体22に対して回転トルクを加えて、リードレス心臓ペーシング装置20を心臓組織に対して固着することもある。
【0043】
図1には遠位延長部24が示されているが、いくつかの事例では、リードレス心臓ペーシング装置20は、遠位延長部24を含まないこともある。リードレス心臓ペーシング装置20が遠位延長部24を含む場合には、遠位延長部24は、本体22の遠位端部から遠位方向に延びることがある。さらに、含まれるときには、遠位延長部24は、冠状静脈洞15内まで延び、冠状静脈洞15内に固定されることもある。いくつかの場合には、遠位延長部24は、冠状静脈洞15を通って、図1に示すように大心臓静脈17内まで延びることもあるし、あるいは冠状静脈洞15または大心臓静脈17から延びる1つまたは複数の他の血管内まで延びることもある。
【0044】
遠位延長部24は、近位端部24aおよび遠位端部24bを含むことがある。遠位延長部24の遠位端部24bは、1つまたは複数の係合部材を含むことがあるが、これは必要というわけではない。係合部材は、含まれる場合には、遠位延長部24の遠位端部24bを冠状静脈洞15または大心臓静脈17内に固定する助けになることがあり、かつ/あるいは1つまたは複数の電極またはワイヤ・ループを含み、1つもしくは複数の他の装置と通信し、かつ/または1つもしくは複数の他の装置から電気エネルギーを受け取るためのアンテナとして作用することもある。例えば、リードレス心臓ペーシング装置20は、係合部材の電極および/またはワイヤ・ループを通して誘導および/または伝導通信技術を用いて、エネルギー伝達を受け、かつ/または通信することもある。
【0045】
いくつかの実施形態では、遠位延長部24上の電極30~36は、心臓10に対して電気刺激を送達するために使用されることがある。例えば、リードレス心臓ペーシング装置20は、電極のうちの1つまたは複数のセット(例えば電極30~36またはその他の電極からのセット)を通して心臓10の左心室14に対して電気刺激を送達することもある。いくつかの実施形態では、リードレス心臓ペーシング装置20は、電極30~36のうちの2つ以上を同時に、または(例えばマルチ電極ペーシングによって)遅延を設けて使用して、心臓10の左心室14に対して電気刺激を送達することもある。いくつかの実施形態では、リードレス心臓ペーシング装置20は、電極30~36のうちの1つまたは複数を使用して、1つまたは複数の他の装置と通信することもある(例えば、電極30~36がアンテナとして作用することもある)。例えば、リードレス心臓ペーシング装置20は、電極30~36のうちの1つまたは複数を通して誘導または伝導通信技術を用いて、エネルギー伝達を受け、かつ/または通信することもある。
【0046】
リードレス心臓ペーシング装置20上の電極26~36および/またはその他の電極は、電気信号を感知する、電気刺激信号を提供する、または電気信号を感知し、かつ電気刺激信号を提供することができることがある。信号処理、通信、および/または治療パルス生成は、適当な処理モジュールが位置することがあるリードレス心臓ペーシング装置の任意の部分で行われ得る。1つの例では、リードレス心臓ペーシング装置20の電極(例えば電極26~36および/またはその他の電極)についての信号処理、通信、および治療パルス生成は、本体22内の、または本体22によって支持されるモジュールで行われることもある。
【0047】
いくつかの実施形態では、リードレス心臓ペーシング装置20は、単一の装置として(例えば追加のリードレス心臓ペーシング装置または1つもしくは複数の植込み型除細動器なしで)植え込まれることがあり、この装置が、所望の通りに右心房11、左心房12、右心室13、および/または左心室14に対して電気刺激を提供することがある。例えば、リードレス心臓ペーシング装置20は、心房細動または心房粗動を治療するための治療計画に従って電気刺激を送達するように構成されることもある。他の場合には、リードレス心臓ペーシング装置20は、心臓10内、および/または心臓10の周りの1つまたは複数の位置に植え込まれた他のリードレス心臓ペーシング装置および/または1つもしくは複数の植込み型除細動器と共に植え込まれることもある。
【0048】
図2は、例示的なリードレス心臓ペーシング装置20を示す概略図である。いくつかの実施形態では、本体22は、一般に、生体適合性金属および/または高分子などの生体適合性材料を含むことがあり、リードレス心臓ペーシング装置20の構成要素に流体が侵入しないように気密密封することがある。図2に示す本体22は、中心長手方向軸に沿って延びるほぼ直線状の長尺形状を有することがある。いくつかの事例では、本体22は、実質的に円筒形であることがある。ただし、本体22は、限定されるわけではないが心臓10の組織をリードレス心臓ペーシング装置20の電極と係合させるのを容易にするための屈曲部分または角度部分を有するなど、1つまたは複数の他の適当な形状を採ることもあり得る。本体22の追加または代替の形状構成は、本願明細書に援用する参考文献に記載されている。
【0049】
上述のように、リードレス心臓ペーシング装置20は、電極26、28、および/またはその他の電極など、1つまたは複数の電極を有することがあり、これらの電極は、ここに示す例では、本明細書に記載するように本体22によって支持される。いくつかの場合には、本体22は、異なる数の電極を有することも、あるいは電極を全く有していないこともあるものと考えられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、リードレス心臓ペーシング装置20は、本体22の近位端部から近位ハブ38まで延びるネック部分46を含むことがある。いくつかの場合には、ネック部分46は、第1の外側範囲を有することがあり、ネック部分46の近位端部は、第2の外側範囲を有する近位ハブ38に対して接続されることがある。いくつかの例では、近位ハブ38の第2の外側範囲は、ネック部分46の第1の外側範囲より大きいことがある。他の構成も考えられる。
【0051】
植込み中には、図12図20を参照して以下でさらに詳細に述べるように、植込みおよび/または回収装置(例えば図3)は、近位ハブ38と解除可能に係合かつ/または結合することがある。結合されると、植込みおよび/または回収装置の移動が本体22に対して伝達し、それによりユーザが植込み中にリードレス心臓ペーシング装置20を長手方向に位置決めかつ/または回転することができるようになり得る。いくつかの場合には、ネック部分46および近位ハブ38の代わりに、またはこれらに加えて、リードレス心臓ペーシング装置20は、インタロック機構の半分を含むことがあり、植込みおよび/または回収装置が、リードレス心臓ペーシング装置20のインタロック機構と解除可能に結合し得るインタロック機構のもう半分を有することがある。インタロック機構は、磁気接続、キー接続、および/またはその他の適当な接続を生み出すように構成され得る。追加および/または代替のインタロック機構は、本願明細書に援用する参考文献に記載されている。
【0052】
いくつかの事例では、本体22は、固定部材50を含むことがあり、かつ/または固定部材50は、本体22の近位ハブ38の反対側から延びることがある。いくつかの実施形態では、固定部材50は、螺旋固定部材であることがあり、図2に示すように遠位先端57を含むことがあり、リードレス心臓ペーシング装置20が心臓10の冠状静脈洞15内に植え込まれたときに冠状静脈洞15内にリードレス心臓ペーシング装置20を維持するように構成されることがある。いくつかの事例では、固定部材50は、約0.247インチ(6.274mm)から約0.275インチ(6.985mm)の範囲の外径、および螺旋コイルの周りの少なくとも1周につき約0.050インチ(1.270mm)から約0.075インチ(1.905mm)のピッチを有することがある螺旋コイルであるが、いくつかの実施形態では、螺旋固定部材50は、1つまたは複数の異なる直径、および/あるいは異なる適当なピッチを有することもある。固定部材50は、心臓の組織に貫入して係合すること、電気を伝導すること、および/または可撓性もしくは屈曲性があることに適した直径を有する材料で構成されることがある。固定部材50の追加の寸法および/または特徴は、本願明細書に援用する参考文献に記載されている。
【0053】
固定部材50は、任意の適当な方法で本体22に固定され得る。1つの例では、固定部材50の近位部分(例えば螺旋コイルの近位部分)は、本体22内に埋め込まれ(例えば成形され)、固定部材50の遠位部分(例えば螺旋コイルの遠位部分)は、本体22から延び、リードレス心臓ペーシング装置が患者の体内に位置決めされたときに患者の心臓組織と係合するように構成されることもある。固定部材50の遠位部分は、本体22の周りで約0.5周から約2.0周分(またはその間の任意の量)だけ延びるように構成されることもある。固定部材50は、少なくとも部分的には、心臓の組織に貫入して係合するように構成され、導電性であり、放射線不透過性であり、かつ/あるいは可撓性であり、かつ/または形状記憶特性を有する材料で構成され得る。固定部材50の材料のいくつかの非限定的な適当な例は、以下に記載されている。
【0054】
いくつかの場合には、固定部材50が組織と係合しており、リードレス心臓ペーシング装置20に軸方向の力が印加されているときに、固定部材50は、螺旋構成から真っ直ぐになる、または伸びることができることがある。いくつかの事例では、固定部材50は、軸方向の力を受けると、塑性変形して、螺旋構成から直線構成に伸びることがある。固定部材50のこのような構成により、リードレス心臓ペーシング装置20の取外しが容易になり、穿孔または打撲によって患者を傷つけるリスクを低減し得る。
【0055】
図面には本体22上に1つの固定部材50が示されているが、本体22は、固定部材50から軸方向に離間した1つまたは複数の追加の固定部材を支持することもある。他の事例では、本体22は、固定部材50を含まないこともある。いくつかの場合には、上述のように、固定部材50は、1つまたは複数の電極(例えば第2の電極28もしくは他の適当な電極)を含む、または形成し、かつ/あるいは1つもしくは複数の他の装置と通信し、かつ/または1つもしくは複数の他の装置から電気エネルギーを受けるアンテナとして作用することもある。例えば、リードレス心臓ペーシング装置20は、固定部材50の電極を通して誘導および/または伝導通信技術を用いてエネルギー伝達を受け、かつ/または通信することがある。
【0056】
少なくともいくつかの場合には、本体22は、本体22を通って延び、かつ/または本体22の側面から外部に開く、ガイド・ワイヤ・ポート54を有することがあり、ここで、この側面は、本体22の第1の端部から第2の端部まで延びている。いくつかの場合には、ガイド・ワイヤ・ポート54は、ガイド・ワイヤを受けるように構成されることがある。リードレス心臓ペーシング装置20が遠位延長部24を含む場合には、遠位延長部24は、遠位延長部24の遠位端部24bの遠位先端において対応するガイド・ワイヤ・ポートを含むことがある。このような事例では、ガイド・ワイヤは、大心臓静脈17(または冠状静脈洞15と連通している他の血管)の下方に配置されることがある。遠位延長部24をガイド・ワイヤの近位端部の上に螺子留めし、その後にリードレス心臓ペーシング装置20をガイド・ワイヤ上で適所まで前進させることによって、リードレス心臓ペーシング装置20がガイド・ワイヤ上で曳行されることもある。リードレス心臓ペーシング装置20が遠位延長部24を含まない実施形態では、本体22が、第2のガイド・ワイヤ・ポートを含むこともある。
【0057】
遠位延長部24は、含まれる場合には、本体22から任意の適当な角度で延びることがある。いくつかの場合には、遠位延長部24は、本体22の中心長手方向軸に対して角度をなして本体22から延びることもある。いくつかの実施形態では、この角度が斜角であり、遠位延長部24が、遠位延長部24を屈曲させる、または撓ませる外部の力が加わらない無制約状態にあるときには、本体22の中心長手方向軸に対して非平行の角度で本体22から延びるようになっていることもある。いくつかの事例では、この斜角は、10度から50度の範囲であることもある。いくつかの場合には、遠位延長部24は、本体22から、本体22のガイド・ワイヤ・ポート54とは反対側の周縁側に向かうように遠位方向に延びることもある。
【0058】
遠位延長部24は、特に本体22に対して細く、長尺状の、可撓性の部材であることがある。例えば、遠位延長部24は、本体22の長さの2倍から10倍の長さであることもある。いくつかの実施形態では、電極30~36および/またはその他の電極は、遠位延長部24の遠位端部24bの近傍に配置されることもあるし、または図2に示すように遠位延長部24の長さに沿って分散している(例えば長手方向に互いに離間している)こともある。遠位延長部24上の電極の他の配列および/または構成も考えられ、利用され得る。1つの例示的な配列では、これらの電極はそれぞれ環状電極であることもあり、電極36(例えば遠位環状電極)は、遠位延長部24上の遠位延長部24の遠位先端付近に配置され、電極34(例えば第3の近位環状電極)は、電極36より近位側に40ミリメートル離間され、電極32(例えば第2の近位環状電極)は、電極34より近位側に10ミリメートル離間され、電極30(例えば第1の近位環状電極)は、電極32より近位側に10ミリメートル離間されていることもある。このような電極30~36の構成は、遠位延長部24が大心臓静脈17またはその他の血管内に挿入されてリードレス心臓ペーシング装置20が心臓10の左心房12の感知かつ/またはペーシングを行うことができるようになったときに、左心房12に対して整列することがある。いくつかの場合には、遠位延長部24を偏らせて、螺旋コイルあるいは1つまたは複数のループなどの形状を形成することもある。
【0059】
図3は、リードレス心臓ペーシング装置20の植込みおよび/または回収を行うシステムの態様を示す図である。いくつかの実施形態では、このシステムは、その内部に延びる内腔を有するカテーテル80(例えば図13図20)を含むことがある。いくつかの実施形態では、カテーテル80は、送達シース、回収シース、またはそれらの組合せであることがある。いくつかの実施形態では、このシステム、および/またはこのシステムの選択された構成要素は、リードレス心臓ペーシング装置の植込みおよび/または回収装置と呼ばれることもある。したがって、明らかであるものを除いて、このシステムに対する任意の言及は、植込みおよび/または回収装置にも当てはまることがあり、またその逆もあり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される全ての要素が、開示されるシステムが適切に機能するために必要であるとは限らない。例えば、カテーテル80は、いくつかの実施形態では任意選択の要素および/または特徴とみなされることもある。
【0060】
システム100は、その内部に延び、近位ハンドル102から遠位方向に延びる、内腔を含む第1の長尺状シャフト104を含むことがある。第1の長尺状シャフト104は、管状部材であり、かつ/またはその内部に延びる内腔を確定する壁面を備えた環状であることもある。第1の長尺状シャフト104は、カテーテル80の内腔内に摺動可能に配置されることがある。近位ハンドル102は、第1の長尺状シャフト104の遠位端部を例えば左右に偏向させ、かつ/または操縦するように構成された、1つまたは複数の作動要素106を含むことがある。1つの例示的な構成では、1つまたは複数の作動要素106の移動および/または平行移動(例えば長手方向、回転方向など)が、引張ワイヤまたはその他の適当な手段などによって第1の長尺状シャフト104に加わる張力の特徴を変化させることがある。第1の長尺状シャフト104を操縦するその他の手段も考えられる。近位ハンドル102、第1の長尺状シャフト104、および/あるいは1つまたは複数の作動要素106の材料のいくつかの非限定的な適当な例は、以下に記載されている。
【0061】
いくつかの実施形態では、システム100は、第1の長尺状シャフト104の内腔内に摺動可能に配置される長尺状部材108を含むことがある。図3では、長尺状部材108の近位端部のみが見えている。長尺状部材108は、構造が管状であることがあり、その内部に延びる内腔を含むことがある。長尺状部材108は、近位ハンドル102を通って第1の長尺状シャフト104内まで遠位方向に延びるようにサイジングおよび構成されることがある。いくつかの実施形態では、長尺状部材108の遠位端部は、第1の長尺状シャフト104の遠位端部の近傍に位置決めされることがある。長尺状部材108は第1の長尺状シャフト104に対して相対的に摺動可能であるので、第1の長尺状シャフト104に対する長尺状部材108の正確な位置決めは、必要によって変化し得る。いくつかの実施形態では、長尺状部材108は、第1の長尺状シャフト104内の補強装置として働くことがある。いくつかの実施形態では、長尺状部材108は、第1の長尺状シャフト104、および/または長尺状部材108の内腔内に摺動可能に配置されることがある別の要素(本明細書に記載される第2の長尺状シャフトなど)の、張力、トルク、圧縮などが加わったときの軸方向のつぶれ、短縮、脱出、および/または圧縮を、低減かつ/または防止し得る。いくつかの実施形態では、長尺状部材108は、第1の長尺状シャフト104、および/または長尺状部材108内に摺動可能に配置された別の要素(例えば第2の長尺状シャフト)よりも大きな柱強度ならびに/あるいは軸方向および/または横方向剛性を有することがある。長尺状部材108の材料のいくつかの非限定的な適当な例は、以下に記載されている。
【0062】
いくつかの実施形態では、システム100は、1つまたは複数の注水ポートを含むことがある。1つの例では、システム100は、近位ハンドル102に対して流体接続され、第1の長尺状シャフト104の内腔に注水かつ/または通水するように構成された、第1の注水ポート110を含むことがある。長尺状部材108が第1の長尺状シャフト104の内腔内の適所にある状態で、第1の注入口110は、長尺状部材108の外側表面と第1の長尺状シャフト104の内腔の内側表面との間に注水かつ/または通水するように構成されることがある。いくつかの実施形態では、システム100は、長尺状部材108に対して流体接続され、長尺状部材108の内腔に注水かつ/または通水するように構成された、第2の注水ポート112を含むことがある。少なくともいくつかの実施形態では、第1の注水ポート101および第2の注水ポート112が存在し、かつ/または利用されることがある。いくつかの実施形態では、第1の注水ポート110および第2の注水ポート112がいずれも存在せず、かつ/または利用されないこともある。追加および/またはその他の注水ポートが、必要に応じて追加され、かつ/または使用されることもある。いくつかの実施形態では、システム100は、近位ポート114を含むことがある。いくつかの実施形態では、近位ポート114は、近位ハンドル102の内部、および/または第1の長尺状シャフト104の内腔との流体連絡、ならびに/あるいはそれらからの流体の漏れを防止するように構成された密封構造であり、かつ/または同密封構造を含むことがある。第1の注水ポート110、第2の注水ポート112、および/または近位ポート114の材料のいくつかの非限定的な適当な例は、以下に記載されている。
【0063】
システム100は、第1の長尺状シャフト104および/または長尺状部材108の内腔内に摺動可能に配置された第2の長尺状シャフト116を含むことがある。いくつかの実施形態では、第2の長尺状シャフト116は、近位ポート114および/または近位ハンドル102より近位側に配置された第1の近位ハンドル118を含むことがある。いくつかの実施形態では、第2の長尺状シャフト116は、第1の近位ハンドル118より近位側に配置された第2の近位ハンドル120を含むことがある。いくつかの実施形態では、第2の近位ハンドル120は、第2の長尺状シャフト116の近位端部において、かつ/または第2の長尺状シャフト116の近位端部の近傍において、第2の長尺状シャフト116に対して固定して取り付けられることがある。第1の近位ハンドル118は、第2の長尺状シャフト116上で摺動可能であることがあり、ユーザによって選択された第2の長尺状シャフト116に沿った可変位置において第2の長尺状シャフト116に対して選択的にロック可能であることがある。いくつかの実施形態では、第1の近位ハンドル118を第2の長尺状シャフト116に対してロックすることで、ハンドル102、第1の長尺状シャフト104、長尺状部材108、および/または近位ポート114に対する相対的な第2の長尺状シャフト116の軸方向の移動を制限し得る。例えば、第1の近位ハンドル118が第2の長尺状シャフト116に対してロックされると、第1の近位ハンドル118は、近位ポート114(あるいは存在する場合には近位ハンドル102および/または長尺状部材108の近位表面)と接触かつ/または干渉し、それによりハンドル102、第1の長尺状シャフト104、長尺状部材108、および/または近位ポート114に対する相対的な第2の長尺状シャフト116のそれ以上の遠位方向の平行移動を防止し得る。第1の近位ハンドル118を第2の長尺状シャフト116に対してロックすることの追加の、および/またはその他の理由は、明らかになるであろう。少なくともいくつかの実施形態では、第2の長尺状シャフト116は、ハイポチューブまたはその他の同様の構造など、その内部に延びる内腔を有する管状部材であることがある。いくつかの実施形態では、第2の長尺状シャフト116は、その内部にいかなる内腔も配置されていない、中実のシャフトまたはワイヤであることもある。第2の長尺状シャフト116、第1の近位ハンドル118、および/または第2の近位ハンドル120の材料のいくつかの非限定的な適当な例は、以下に記載されている。
【0064】
システム100は、第1の長尺状シャフト104の遠位端部に配置されたエンド・キャップ・アセンブリ122を含むことがある。いくつかの実施形態では、図3Aに示すように、エンド・キャップ・アセンブ122は、第1の長尺状シャフト104の遠位端部に固定して取り付けられた外側筐体124と、外側筐体124内に固定されたインサート126とを含むことがある。いくつかの実施形態では、インサート126の最遠位表面は、外側筐体124の最遠位端面と面一である。いくつかの実施形態では、インサート126の最遠位表面は、外側筐体124の最遠位端面と平行、かつ/または共面である。いくつかの実施形態では、インサート126は、インサート126を通って延びる複数の穴128を含むことがある。いくつかの実施形態では、この複数の穴128は、インサート126を通ってほぼ長手方向に配向され、かつ/または延びることがある。少なくともいくつかの実施形態では、この複数の穴128は、遠位方向に、かつ/またはインサート126の最遠位表面に開いていることがある。エンド・キャップ・アセンブリ122、外側筐体124、および/またはインサート126の材料のいくつかの非限定的な適当な例は、以下に記載されている。
【0065】
システム100は、第2の長尺状シャフト116に取り付けられ、エンド・キャップ・アセンブリ122から遠位方向に延びる、複数のワイヤ130を含むことがある。明示的には示されていないが、この複数のワイヤ130は、第1の長尺状シャフト104および/または長尺状部材108の内腔内の位置において、第2の長尺状シャフト116に対して取り付けられることがある(例えば固定して取り付けられる、溶接される、接合される、など)。いくつかの実施形態では、この位置は、第1の長尺状シャフト104および/または長尺状部材108の遠位端部の近傍であることがある。いくつかの実施形態では、この位置は、第1の長尺状シャフト104および/または長尺状部材108の中央部分沿い(例えばそれらの全長の約1/4から約3/4まで)であることもある。この複数のワイヤ130は、第1の長尺状シャフト104および/または長尺状部材108に対する相対的な第2の長尺状シャフト116の平行移動および/または移動によって、エンド・キャップ・アセンブリ122に対して相対的に移動可能であることがある。いくつかの実施形態では、この複数のワイヤ130は、第1の位置(例えば図3A)と第1の位置より遠位側の第2の位置(例えば図5A)との間で、エンド・キャップ・アセンブリ122を通して移動可能かつ/または平行移動可能であることがある。複数のワイヤ130の材料のいくつかの非限定的な適当な例は、以下に記載されている。
【0066】
複数のワイヤ130は、リードレス心臓ペーシング装置20の近位ハブ38と係合するように構成されることがある。いくつかの実施形態では、複数のワイヤ130は、エンド・キャップ・アセンブリ122より遠位側であり、かつ/またはエンド・キャップ・アセンブリ122から遠位方向に延びる、複数のワイヤ・ループ132を形成することがある。いくつかの実施形態では、この複数のワイヤ・ループ132は、第1の位置と第1の位置より遠位側の第2の位置との間で平行移動可能であることがある。いくつかの実施形態では、この複数のワイヤ・ループ132は、第1の位置においてリードレス心臓ペーシング装置20の近位ハブ38と係合するように構成されることがある。いくつかの実施形態では、この複数のワイヤ・ループ132は、第1の位置においてリードレス心臓ペーシング装置20の近位ハブ38をエンド・キャップ・アセンブリ122に対して相対的に固定するように構成されることがある。いくつかの実施形態では、この複数のワイヤ・ループ132は、第1の位置においてリードレス心臓ペーシング装置20の近位ハブ38をインサート126の最遠位表面に押し付けて固定するように構成されることがある。複数の穴128は、複数のワイヤ130を受けるように構成されることがある。いくつかの実施形態では、複数のワイヤ130は、複数の穴128を通って延びることがある。いくつかの実施形態では、この複数のワイヤ130は、第1の長尺状シャフト104に対する相対的な第2の長尺状シャフト116、および/または第1の近位ハンドル118に対する相対的な第2の近位ハンドル120の平行移動および/または長手方向移動によって、複数の穴128を通って移動可能かつ/または平行移動可能であることがある。いくつかの実施形態では、第2の近位ハンドル120は、複数のワイヤ130および/または複数のワイヤ・ループ132が第1の位置(例えば図3)にあるときに、第1の近位ハンドル118から近位方向に離間していることがある。いくつかの実施形態では、複数のワイヤ130および/または複数のワイヤ・ループ132は、第1の位置において、リードレス心臓ペーシング装置20の植込みおよび/または回収のために、第1の長尺状シャフト104の回転運動を近位ハブ38に対して伝達するように構成される。
【0067】
少なくともいくつかの実施形態では、リードレス心臓ペーシング装置20の近位ハブ38が目標部位までのナビゲーションのためにエンド・キャップ・アセンブリ122に対して相対的に、かつ/またはエンド・キャップ・アセンブリ122に押し付けて固定される、リードレス心臓ペーシング装置20の送達前、および/または送達中に、図3Aの構成が見られ、かつ/または利用されることがある。いくつかの実施形態では、リードレス心臓ペーシング装置20が再捕捉されているリードレス心臓ペーシング装置20の回収中に、図3Aの構成が見られ、かつ/または利用されることがある。
【0068】
図4Aは、図3A中の線4-4に沿って取った断面を示す図である。いくつかの実施形態では、複数のワイヤ・ループ132のそれぞれが、遠位端部セグメント134を含み、かつ/または画定することがある。いくつかの実施形態では、遠位端部セグメント134は、複数の穴128のうちの対(例えば2つ)の穴の間に延びることがある。いくつかの実施形態では、遠位端部セグメント134は、実質的に直線状であることもある。いくつかの実施形態では、遠位端部セグメント134は、インサート126の最遠位表面および/または外側筐体124の最遠位端面とほぼ平行に延びることもある。いくつかの実施形態では、遠位端部セグメント134は、第1の長尺状シャフト104の中心長手方向軸および/またはエンド・キャップ・アセンブリ122に対してほぼ直交して延びることもある。
【0069】
いくつかの実施形態では、第1の位置において、複数のワイヤ・ループ132は、リードレス心臓ペーシング装置20のネック部分46をその中に受ける区切られた開口136を形成する3つ以上の交差する遠位端部セグメント134を含むことがある。いくつかの実施形態では、第1の位置において、区切られた開口136は、リードレス心臓ペーシング装置20の中心長手方向軸に対して直交して測定されるネック部分46の最大径方向範囲より大きい、エンド・キャップ・アセンブリ122の中心長手方向軸に対して直交して測定される最小の径方向範囲を有することがあり、また、区切られた開口136は、リードレス心臓ペーシング装置20の中心長手方向軸に対して直交して測定される近位ハブ38の最小径方向範囲より小さい、エンド・キャップ・アセンブリ122の中心長手方向軸に対して直交して測定される最大径方向範囲を有することがある。
【0070】
いくつかの実施形態では、複数のワイヤ・ループ132のうちの円周方向に隣接するワイヤ・ループおよび/または遠位端部セグメントは、エンド・キャップ・アセンブリ122の中心長手方向軸に沿って軸方向に見ると、互いに十字に交差する(例えば上および/または下になって交差する)。いくつかの実施形態では、複数のワイヤ130および/または複数のワイヤ・ループ132が第1の位置にあるときに、複数のワイヤ・ループ132のうちの円周方向に隣接するワイヤ・ループは、エンド・キャップ・アセンブリ122の中心長手方向軸に沿って軸方向に見ると、互いに十字に交差する(例えば上および/または下になって交差する)。いくつかの実施形態では、複数のワイヤ130および/または複数のワイヤ・ループ132が第2の位置にあるときに、複数のワイヤ・ループ132のうちの円周方向に隣接するワイヤ・ループは、エンド・キャップ・アセンブリ122の中心長手方向軸に沿って軸方向に見ると、互いに十字に交差する(例えば上および/または下になって交差する)。
【0071】
いくつかの実施形態では、複数のワイヤ・ループ132は、複数の穴128のうちの第1の対142を通る第1のワイヤ・ループ140を含むことがある。いくつかの実施形態では、複数のワイヤ・ループ132は、複数の穴128のうちの第2の対146を通る第2のワイヤ・ループ144を含むことがある。いくつかの実施形態では、複数のワイヤ・ループ132は、複数の穴128のうちの第3の対150を通る第3のワイヤ・ループ148を含むことがある。いくつかの実施形態では、複数のワイヤ・ループ132は、複数の穴128のうちの第4の対154を通る第4のワイヤ・ループ152を含むことがある。他の構成および/または配列も考えられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、複数の穴128の第2の対146の一方は、円周方向に複数の穴128の第1の対142の間に配置されることがある。いくつかの実施形態では、複数の穴128の第3の対150の一方は、円周方向に複数の穴128の第2の対146の間に配置されることがある。いくつかの実施形態では、複数の穴128の第4の対154の一方は、円周方向に複数の穴128の第3の対150の間に配置されることがある。いくつかの実施形態では、複数の穴128の第1の対142の一方は、円周方向に複数の穴128の第4の対154の間に配置されることがある。他の構成および/または配列も考えられる。
【0073】
図4Aの例では、複数のワイヤ・ループ132および/またはその遠位端部セグメント134は、互いに対して「上/下」パターンを形成することがある。この例示される配列では、第1のワイヤ・ループ140は、第4のワイヤ・ループ152の上、および第2のワイヤ・ループ144の下を通り、第2のワイヤ・ループ144は、第1のワイヤ・ループ140の上、および第3のワイヤ・ループ148の下を通り、第3のワイヤ・ループ148は、第2のワイヤ・ループ144の上、および第4のワイヤ・ループ152の下を通り、第4のワイヤ・ループ152は、第3のワイヤ・ループ148の上、および第1のワイヤ・ループ140の下を通る。第1のワイヤ・ループ140、第2のワイヤ・ループ144、第3のワイヤ・ループ148、および第4のワイヤ・ループ152は、協働して区切られた開口136を形成かつ/または画定することがある。図4Aの例では、近位ハブ38は、4つの「ローブ」またはコーナを含み、波形の辺を有するほぼ正方形の形状を有する。いくつかの実施形態では、区切られた開口136は、ほぼ正方形であることがある。他の構成も考えられる。いくつかの実施形態では、第1のワイヤ・ループ140の遠位端部セグメント134は、第3のワイヤ・ループ148の遠位端部セグメント134とほぼ平行に配向されることがある。いくつかの実施形態では、第2のワイヤ・ループ144の遠位端部セグメント134は、第4のワイヤ・ループ152の遠位端部セグメント134とほぼ平行に配向されることがある。いくつかの実施形態では、第1のワイヤ・ループ140の遠位端部セグメント134および/または第3のワイヤ・ループ148の遠位端部セグメントは、第2のワイヤ・ループ144の遠位端部セグメント134および/または第4のワイヤ・ループ152の遠位端部セグメント134に対してほぼ直交するように配向されることがある。いくつかの実施形態では、複数の穴128のうちの隣接する穴は、近位ハブ38の幅および/または径方向範囲未満の距離だけ離間されていることがある。本明細書に記載するように、図4Aの構成は、リードレス心臓ペーシング装置20の送達中に使用され、かつ/またはリードレス心臓ペーシング装置20の回収中に使用されることがある。
【0074】
図4Bは、図4Bの例では複数のワイヤ・ループ132および/またはその遠位端部セグメント134が互いに「上/上」および「下/下」パターンを形成することがある点を除けば上記の図4Aの構成と実質的に同じであり得る、図3A中の線4-4に沿って取った断面の代替構成を示す図である。この例示される配列では、第1のワイヤ・ループ140は、第4のワイヤ・ループ152の上、および第2のワイヤ・ループ144の上を通り、第2のワイヤ・ループ144は、第1のワイヤ・ループ140の下、および第3のワイヤ・ループ148の下を通り、第3のワイヤ・ループ148は、第2のワイヤ・ループ144の上、および第4のワイヤ・ループ152の上を通り、第4のワイヤ・ループ152は、第3のワイヤ・ループ148の下、および第1のワイヤ・ループ140の下を通る。第1のワイヤ・ループ140、第2のワイヤ・ループ144、第3のワイヤ・ループ148、および第4のワイヤ・ループ152は、協働して区切られた開口136を形成かつ/または画定することがある。図4Bの例では、近位ハブ38は、4つの「ローブ」またはコーナを含み、波形の辺を有するほぼ正方形の形状を有する。いくつかの実施形態では、区切られた開口136は、ほぼ正方形であることがある。いくつかの実施形態では、第1のワイヤ・ループ140の遠位端部セグメント134は、第3のワイヤ・ループ148の遠位端部セグメント134とほぼ平行に配向されることがある。いくつかの実施形態では、第2のワイヤ・ループ144の遠位端部セグメント134は、第4のワイヤ・ループ152の遠位端部セグメント134とほぼ平行に配向されることがある。いくつかの実施形態では、第1のワイヤ・ループ140の遠位端部セグメント134および/または第3のワイヤ・ループ148の遠位端部セグメントは、第2のワイヤ・ループ144の遠位端部セグメント134および/または第4のワイヤ・ループ152の遠位端部セグメント134に対してほぼ直交するように配向されることがある。いくつかの実施形態では、複数の穴128のうちの隣接する穴は、近位ハブ38の幅および/または径方向範囲未満の距離だけ離間されていることがある。本明細書に記載するように、図4Bの構成は、リードレス心臓ペーシング装置20の送達中に使用され、かつ/またはリードレス心臓ペーシング装置20の回収中に使用されることがある。
【0075】
図4Cは、図4Cの例ではワイヤ・ループが3つと複数の穴128の対が3対しかない点を除けば上記の図4Aの構成と実質的に同じであり得る、図3A中の線4-4に沿って取った断面の代替構成を示す図である。図4Cの例では、複数のワイヤ・ループ132および/またはその遠位端部セグメント134は、互いに「上/下」パターンを形成することがある。この例示される配列では、第1のワイヤ・ループ140は、第3のワイヤ・ループ148の上、および第2のワイヤ・ループ144の下を通り、第2のワイヤ・ループ144は、第1のワイヤ・ループ140の上、および第3のワイヤ・ループ148の下を通り、第3のワイヤ・ループ148は、第2のワイヤ・ループ144の上、および第1のワイヤ・ループ140の下を通る。第1のワイヤ・ループ140、第2のワイヤ・ループ144、および第3のワイヤ・ループ148は、協働して区切られた開口136を形成かつ/または画定することがある。近位ハブ38は、3つの「ローブ」またはコーナを含み、波形の辺を有するほぼ三角形の形状を有する。いくつかの実施形態では、区切られた開口136は、ほぼ三角形であることがある。他の構成も考えられる。いくつかの実施形態では、複数の穴128のうちの隣接する穴は、近位ハブ38の幅および/または径方向範囲未満の距離だけ離間されていることがある。本明細書に記載するように、図4Cの構成は、リードレス心臓ペーシング装置20の送達中に使用され、かつ/またはリードレス心臓ペーシング装置20の回収中に使用されることがある。
【0076】
図5および図5Aは、図3および図3Aに示すシステム100の選択された態様を示す図である。いくつかの実施形態では、複数のワイヤ130および/または複数のワイヤ・ループ132が第2の位置(例えば図5)にあるときに、第2の近位ハンドル120は、第1の近位ハンドル118に対して接近し、かつ/または当接するように移動されることがある。図5Aは、第2の位置にある複数のワイヤ130および/または複数のワイヤ・ループ132をさらに詳細に示している。複数のワイヤ130および/または複数のワイヤ・ループ132が第2の位置にあるときには、リードレス心臓ペーシング装置20は、目標部位に対する送達および/または植込みのために植込みおよび/または回収装置に装荷されることもあるし、あるいは、リードレス心臓ペーシング装置20は、目標部位からの回収および/または取外しのために目標部位において捕捉されることもある。複数のワイヤ130および/または複数のワイヤ・ループ132は、第2の位置において、リードレス心臓ペーシング装置20および/または本体22の最外周面から径方向外向きに延びることがある。第2の位置において、複数のワイヤ・ループ132のそれぞれの遠位端部セグメント134は、実質的に直線状であることがある。いくつかの実施形態では、遠位端部セグメント134は、インサート126の最遠位表面および/または外側筐体124の最遠位端面とほぼ平行に延びることがある。いくつかの実施形態では、遠位端部セグメント134は、第1の長尺状シャフト104および/またはエンド・キャップ・アセンブリ122の中心長手方向軸に対してほぼ直交するように伸びることもある。
【0077】
図6は、システム100の特定の要素、例えば図3Aおよび/または図5Aのエンド・キャップ・アセンブリ122およびリードレス心臓ペーシング装置20の展開図である。分かるように、エンド・キャップ・アセンブリ122は、外側筐体124およびインサート126を含む。インサート126は、外側筐体124内に同軸に受けられることがある。いくつかの実施形態では、インサート126は、接着剤による接合、機械的取付け、様々な形態の溶接、またはその他の手段などによって、外側筐体124に対して固定して取り付けられることがある。少なくともいくつかの実施形態では、インサート126は、図6に見られるように、一体構造であることがある。インサート126は、実質的に平坦、かつ/または平面状の最遠位表面127を含むことがある。インサート126の最遠位表面127は、近位ハブ38の近位表面に当接かつ/または接触するように構成されることがある。少なくともいくつかの実施形態では、エンド・キャップ・アセンブリ122、外側筐体124、および/またはインサート126には、近位ハブ38の側面と係合かつ/または接触するように構成されたいかなる構造もないことがある。
【0078】
図7は、図6のインサート126を示す断面図である。上述のように、インサート126は、インサート126を通って延びる複数の穴128を含むことがある。いくつかの実施形態では、この複数の穴128は、インサート126をほぼ長手方向に通るように、配向され、かつ/または延びることがある。いくつかの実施形態では、複数の穴128のうちの一部および/またはそれぞれは、インサート126の中心長手方向軸に対して遠位方向において径方向外向きに湾曲することがある。少なくともいくつかの実施形態では、複数の穴128は、遠位方向に、かつ/またはインサート126の最遠位表面127に開いていることがある。複数のワイヤ130(図示せず)は、インサート126および/または複数の穴128を通って延びることがある。複数のワイヤ130の近位部分は、インサート126から近位方向に第1の長尺状シャフト104内まで延びることがあり、ここで、複数のワイヤ130の近位部分は、第2の長尺状シャフト116の遠位端部に固定して取り付けられ、かつ/または接合されることがある。
【0079】
図8図9は、図5A図7のエンド・キャップ・アセンブリ122の代替構成を示す図である。参考のために、図8の例では、複数のワイヤ130は、第2の位置で示されている。いくつかの実施形態では、システム100は、本明細書に明示的に述べる点を除けば多くの点でエンド・キャップ・アセンブリ122と同様であり得る、エンド・キャップ・アセンブリ1322を含むことがある。エンド・キャップ・アセンブリ1322は、第1の長尺状シャフト104の遠位端部に配置されることがある。いくつかの実施形態では、エンド・キャップ・アセンブリ1322は、図8に示すように、第1の長尺状シャフト104の遠位端部に対して固定して取り付けられた外側筐体1324と、外側筐体1324内に固定されたインサート1326とを含むことがある。いくつかの実施形態では、インサート1326の最遠位表面1327は、外側筐体1324の最遠位端面と面一である。いくつかの実施形態では、インサート1326の最遠位表面1327は、外側筐体1324の最遠位端面と平行、かつ/または共面である。いくつかの実施形態では、インサート1326は、インサート1326を通って延びる複数の穴1328を含むことがある。いくつかの実施形態では、この複数の穴1328は、インサート1326を通ってほぼ長手方向に配向され、かつ/または延びることがある。少なくともいくつかの実施形態では、この複数の穴1328は、遠位方向に開いていることがある。エンド・キャップ・アセンブリ1322、外側筐体1324、および/またはインサート1326の材料のいくつかの非限定的な適当な例は、以下に記載されている。
【0080】
いくつかの実施形態では、インサート1326は、複数のインサート部材1330(例えば図9)および/またはインサート部材保持器1332を含むことがある。いくつかの実施形態では、インサート部材保持器1332は、インサート1326の最遠位表面1327を含み、かつ/または画定することがある。いくつかの実施形態では、インサート部材保持器1332は、複数のインサート部材1330より遠位側に配置されることがある。インサート1326は、外側筐体1324内に同軸に受けられることがある。いくつかの実施形態では、インサート1326は、接着剤による接合、機械的取付け、様々な形態の溶接、またはその他の手段などによって、外側筐体1324に対して固定して取り付けられることがある。最遠位表面1327は、実質的に平坦、かつ/または平面状であることがある。インサート1326の最遠位表面1327は、近位ハブ38の近位表面に当接かつ/または接触するように構成されることがある。少なくともいくつかの実施形態では、エンド・キャップ・アセンブリ1322、外側筐体1324、インサート1326、および/または複数のインサート部材1330には、近位ハブ38の側面と係合かつ/または接触するように構成されたいかなる構造もないことがある。
【0081】
図9に見られるように、複数のインサート部材1330のそれぞれは、インサート1326を通って延びる複数の穴1328のうちの1つまたは複数の少なくとも一部分を含むことがある。いくつかの実施形態では、複数の穴1328のそれぞれは、卵形の断面形状を有することがある。図8図9の例では、複数の穴1328のそれぞれは、複数のワイヤ130のうちの1本または複数本をその中に受けるように構成されることがある。例えば、複数の穴1328のそれぞれは、複数のワイヤ130のうちの2本をその中に受けるように、サイジング、成形、かつ/または構成されることがある。いくつかの実施形態では、インサート部材保持器1332が、各穴1328の遠位開口を横切り、かつ/または2つの開口に分離するように構成されることがあり、各開口が、それを通って延びる複数のワイヤ130のうちの1本を受けるように構成される。複数のインサート部材1330が接合されて集合的にインサート1326を形成するときには、複数のインサート部材1330は、少なくともいくつかの実施形態では外側筐体1324の中心長手方向軸と同軸であることがあるインサート1326の中心長手方向軸に沿って、かつ/または同中心長手方向軸において、互いに接合することがある。いくつかの実施形態では、複数のインサート部材1330は、組み立てられてインサート1326を形成するときに、互いに固定して取り付けられる(例えば接着剤で接合される、溶接されるなど)ことがある。ただし、隣接するインサート部材1330間の固定取付けは、全ての場合に厳密に必要であるわけではない。
【0082】
図10は、複数のインサート部材1330のうちの1つを詳細に示す図である。いくつかの実施形態では、複数の穴1328は、インサート1326および/または複数のインサート部材1330を通ってほぼ長手方向に配向され、かつ/または延びることがある。いくつかの実施形態では、複数の穴1328のうちの一部および/またはそれぞれは、インサート1326の中心長手方向軸に対して遠位方向に径方向外向きに湾曲することがある。複数のワイヤ130(図示せず)は、インサート1326、複数のインサート部材1330、および/または複数の穴1328を通って延びることがある。複数のワイヤ130の近位部分は、インサート1326から近位方向に第1の長尺状シャフト104内まで延びることがあり、ここで、複数のワイヤ130の近位部分は、第2の長尺状シャフト116の遠位端部に固定して取り付けられ、かつ/または接合されることがある。
【0083】
複数のインサート部材1330のそれぞれは、第1の側方面1334および第2の側方面1336を含むことがある。いくつかの実施形態では、第1の側方面1334および第2の側方面1336は、互いに対して実質的に直交して配向されることがある。他の構成も可能である。第1の側方面1334は、インサート部材1330内まで延びる凹部1338を含むことがあり、第2の側方面1336は、そこから外向きに延びる突起1340を含むことがある。複数のインサート部材1330が互いに組み立てられると、突起1340は、凹部1338内に受けられることがある。例えば、第1のインサート部材1330の突起1340が、第2のインサート部材1330の凹部1338内に受けられ、第2のインサート部材1330の突起1340が、第3のインサート部材1330の凹部1338内に受けられ、第3のインサート部材1330の突起1340が、第4のインサート部材1330の凹部1338内に受けられ、第4のインサート部材1330の突起1340が、第1のインサート部材1330の凹部1338内に受けられることもある。少なくともいくつかの実施形態では、複数のインサート部材1330のそれぞれは、そのインサート部材1330の遠位向き表面から近位方向に延びる、インサート部材保持器1332の一部分を受けるように構成された、遠位凹部を含むことがある。いくつかの実施形態では、インサート部材1330の遠位向き表面は、エンド・キャップ・アセンブリ1322が完全に組み立てられたときに、インサート部材保持器1332の最遠位表面1327と実質的に平行、かつ/または共面であることがある。図10に見られ、かつ/または図10から判断され得るように、複数のインサート部材1330のそれぞれは、それを通って延びる複数の穴1328のそれぞれの約半分を含むことがある。したがって、2つの隣接するインサート部材1330が、互いに組み立てられた後で、複数の穴1328の各穴を完成させる。
【0084】
図11は、エンド・キャップ・アセンブリ122の別の代替構成の態様を示す図である。いくつかの実施形態では、システム100は、明細書に明示的に述べる点を除けば多くの点でエンド・キャップ・アセンブリ122と同様であり得る、エンド・キャップ・アセンブリ1422を含むことがある。エンド・キャップ・アセンブリ1422は、第1の長尺状シャフト104(図示せず)の遠位端部に配置されることがある。いくつかの実施形態では、エンド・キャップ・アセンブリ1422は、第1の長尺状シャフト104の遠位端部に対して固定して取り付けられた外側筐体1424と、外側筐体1424内に固定されたインサート1426とを含むことがある。いくつかの実施形態では、インサート1426の最遠位表面1427は、外側筐体1424の最遠位端面と面一である。いくつかの実施形態では、インサート1426の最遠位表面1427は、外側筐体1424の最遠位端面と平行、かつ/または共面である。いくつかの実施形態では、インサート1426は、インサート1426を通って延びる複数の穴1428を含むことがある。いくつかの実施形態では、この複数の穴1428は、インサート1426を通ってほぼ長手方向に配向され、かつ/または延びることがある。少なくともいくつかの実施形態では、この複数の穴1428は、遠位方向に開いていることがある。いくつかの実施形態では、外側筐体1424は、一対の遠位方向に延びる延長部1430を含むことがある。この遠位方向に延びる延長部1430の対は、近位ハブ38の1つまたは複数の側面と係合かつ/または当接して、第1の長尺状シャフト104から近位ハブ38に対する回転運動の伝達を容易にするように構成されることがある。エンド・キャップ・アセンブリ1422、外側筐体1424、および/またはインサート1426の材料のいくつかの非限定的な適当な例は、以下に記載されている。
【0085】
図12図20は、心臓10内のシステム100およびリードレス心臓ペーシング装置20の例示的な使用(例えば植込みおよび回収)を示す図である。図示の方法は、下大静脈を通して患者の心臓10に対するアクセスを得ることを含むが、心臓10に対するアクセスは、これに加えて、または別法として、上大静脈および/またはその他の手法を介して得られることもある。図12図20における心臓10の図は、図1に示す図と同様である。図12図20に示す破線は、1つまたは複数の他の特徴によって覆われることもあり、これらの図では普通なら見えないはずの特徴を示している。破線で示す特徴は、開示する概念の説明を支援するために示されているものである。さらに、冠状静脈洞15内の特徴は、これらの図では普通なら見えないはずではあるが、分かりやすくするために実線で描かれている。
【0086】
いくつかの実施形態では、リードレス心臓ペーシング装置20の心臓10内への植込みは、図12に示す第1のガイド・ワイヤ94などのガイド・ワイヤを心臓10内に位置決めすることから始まることがある。第1のガイド・ワイヤ94は、0.035インチ(0.889mm)の直径を有することがあり、かつ/または心臓10に対するアクセスを得るのに適した1つまたは複数の他の直径を有することがある。第1のガイド・ワイヤ94は、拡張機能(例えば図13に示すようにカテーテル80および拡張器86を用いる)を有する、下大静脈またはその他の体内血管まで、かつ/あるいは下大静脈またはその他の体内血管を通して第1のガイド・ワイヤ94を前進させる導入器またはその他の装置によって拡張された動脈または静脈(例えば大腿静脈またはその他の血管)内まで延びる患者の皮膚の開口を通して、心臓10に対するアクセスを得ることがある。
【0087】
いくつかの事例では、第1のガイド・ワイヤ94は、第1のガイド・ワイヤ94の遠位端部上に、かつ/または第1のガイド・ワイヤ94の遠位端部に隣接して配置される、1つまたは複数の放射線不透過性マーカを有することがある。このような放射線不透過性マーカは、第1のガイド・ワイヤ94が心臓10内の適所まで操作移動されるときに、1つまたは複数の医療用撮像システムを通して第1のガイド・ワイヤ94を見やすくすることがある。いくつかの実施形態では、放射線不透過性マーカは、既知の距離だけ互いから離間されることがある。そのような実施形態では、心臓10内の2つの特徴の間の放射線不透過性マーカの数を数えることによって、その2つの特徴の間の距離が決定され得る。いくつかの実施形態では、リードレス心臓ペーシング装置20は、様々なサイズで製造される可能性がある、あるいは、本体22および遠位延長部24など、リードレス心臓ペーシング装置20の様々な部分が、様々なサイズおよび長さで製造される可能性がある。例えば図12に示すように右心房11内の冠状静脈洞口16と中隔18の間など、患者の心臓10の様々な特徴の間の距離を決定することにより、特定の患者に対して適切なサイズの本体22または遠位延長部24が選択され得る。
【0088】
心臓10の様々な特徴の間の距離を測定した後で、またはこのような測定が必要ない実施形態では、図13に示すように、カテーテル80(例えば導入器)および拡張器86が、第1のガイド・ワイヤ94上で心臓10内まで操作移動され得る。いくつかの場合には、カテーテル80は、操縦可能であることがあり、拡張器86は、カテーテル80の遠位端部に、または遠位端部に隣接して(例えば遠位先端に、または遠位先端に隣接して)位置付けられることがある。拡張器86は、冠状静脈洞15の口16と係合し、冠状静脈洞15を拡張し、かつ/または冠状静脈洞15にカニューレを挿入して、カテーテル80および/またはリードレス心臓ペーシング装置20がその中に受けられるようにするように構成されることがある。別法として、またはこれに加えて、カテーテル80は、カテーテル80の遠位端部に、または遠位端部に隣接して、予備成形された屈曲部を有することもある。そのような場合には、拡張器86は、カテーテルの心臓10内への挿入中に、カテーテル80の遠位端部を通して挿入されて、カテーテル80の遠位端部を真っ直ぐにすることがある。次いで、カテーテル80の遠位端部が右心房11内など心臓内に入ったら、拡張器86が引き抜かれて、カテーテル80の遠位端部が屈曲して、冠状静脈洞15内に向き、かつ/または冠状静脈洞15内に延び、かつ/あるいは第1のガイド・ワイヤ94を冠状静脈洞15に向けて、かつ/または冠状静脈洞15内に送るようにすることがある。
【0089】
図14は、拡張器86をカテーテル80に対して相対的に、カテーテル80を通して、かつ/またはカテーテル80から引き抜いた後、屈曲して冠状静脈洞15内に挿入された、カテーテル80および第1のガイド・ワイヤ94を示す図である。いくつかの場合には、カテーテル80が冠状静脈洞15に向かって屈曲した後で、第1のガイド・ワイヤ94を冠状静脈洞15内に対して前進させ、カテーテル80を第1のガイド・ワイヤ94に沿って冠状静脈洞15内に対して前進させることがある。
【0090】
拡張器86は、円錐形の先細先端を含み、カテーテル80および拡張器86を冠状静脈洞15内に対して前進させると冠状静脈洞15の内径が拡張するようになっていることがある。別の例では、拡張器86は、丸型であることもあるし、あるいは円錐形の先細部より急激な先細部を有することもある。他の拡張器の構成も考えられ、冠状静脈洞15を拡張するのに適した任意の構成が利用され得る。したがって冠状静脈洞15がリードレス心臓ペーシング装置20を受けるために拡張される必要がある場合には、カテーテル80および/または拡張器86の遠位端部または遠位先端を、冠状静脈洞15の口16を通して前進させて、リードレス心臓ペーシング装置20を受けるのに十分な適当な量だけ冠状静脈洞15を拡張することもある。カテーテル80および/または拡張器86に加えて、あるいはこれらの代替として、1つまたは複数の他のカテーテル、拡張器、または導入器が、冠状静脈洞15の拡張、冠状静脈洞15へのカニューレ挿入、および/またはその他の形での冠状静脈洞15への進入を容易にするために使用されることもある。
【0091】
冠状静脈洞15にカニューレが挿入され、カテーテル80がその中に挿入されると、次いで、図15に示すように、第1のガイド・ワイヤ94がカテーテル80から取り外され得る。いくつかの事例では、図16に示すように、第2のガイド・ワイヤ96が、カテーテル80内に、かつ/またはカテーテル80を通して挿入され、冠状静脈洞15を通して大心臓静脈17または冠状静脈洞15から延びるその他の血管内に操作移動されることがある。第2のガイド・ワイヤ96は、約0.014インチ(0.356mm)の直径、ならびに/あるいは心臓10の血管および/または心臓10の周りに延びる血管をナビゲートする(例えば大心臓静脈17、および/または大心臓静脈17から、もしくは大心臓静脈17に対して延びるその他の血管をナビゲートする)のに適したその他の直径を有することがある。少なくともいくつかの実施形態では、第2のガイド・ワイヤ96は、第1のガイド・ワイヤ94の直径より小さい直径を有することがある。あるいは、いくつかの実施形態では、第1のガイド・ワイヤ94を、冠状静脈洞15を通して、大心臓静脈17、または冠状静脈洞15から延びるその他の血管内に対して前進させることもある。
【0092】
図17は、カテーテル80と、遠位延長部24が第2のガイド・ワイヤ96上で大心臓静脈17またはその他の心臓血管内に対して曳行された状態で冠状静脈洞15内に位置決めされたリードレス心臓ペーシング装置20を含むシステム100とを示す図である。第2のガイド・ワイヤ96は、本体22のガイド・ワイヤ・ポートから出て、本体22の外部に沿って延びることがある。いくつかの実施形態では、リードレス心臓ペーシング装置20の本体22の近位端部および近位ハブ38は、複数のワイヤ130が近位ハブ38と係合した状態で、冠状静脈洞15から右心房11内へ近位方向に延びることがある。複数のワイヤ130が近位ハブ38と係合した状態でリードレス心臓ペーシング装置20を含むシステム100をカテーテル80を通して第2のガイド・ワイヤ96上で押すことによって、リードレス心臓ペーシング装置20をこの位置まで前進させ得る。あるいは、カテーテル80または第2のガイド・ワイヤ96のうちの一方のみが、システム100および/またはリードレス心臓ペーシング装置20を位置決めするために利用されることもある。さらに、リードレス心臓ペーシング装置20が、カテーテル80も第2のガイド・ワイヤ96も用いずに位置決めされることもあると考えられる。
【0093】
システム100、リードレス心臓ペーシング装置20、および/またはカテーテル80が冠状静脈洞15内で目標位置に隣接して位置決めされると、システム100、第1の長尺状シャフト104、および/またはリードレス心臓ペーシング装置20を回転させて、固定部材50の遠位先端57を、心臓10および/または冠状静脈洞15の組織に穿孔および係合するための所望の位置に位置決めし得る。冠状静脈洞15内および/またはシステム100内でのリードレス心臓ペーシング装置20の配向は、システム100の近位端部と干渉することによって調整され得、かつ/または異なる適当な方法でも調整され得る。いくつかの場合には、冠状静脈洞15内および/またはシステム100内でのリードレス心臓ペーシング装置20の配向は、長手方向のリードレス心臓ペーシング装置20の位置を調整すること、ならびに/あるいはシステム100および/またはその態様を用いて矢印Aおよび/または矢印Bの方向にリードレス心臓ペーシング装置20を回転させることによって、調整されることもある。
【0094】
いくつかの場合には、遠位先端57の回転方向および/または長手方向の位置は、既知である、または1つまたは複数の放射線不透過性マーカから識別可能であることもあり、この既知の回転方向および/または長手方向の位置が、遠位先端57を位置決めするために利用されることもある。1つの例では、遠位先端57は、心臓10および/または冠状静脈洞15の組織に対する固定部材50の遠位先端57の適切な位置合わせを容易にするために1つまたは複数の撮像システムによって識別可能な放射線不透過性マーカである、またはそのような放射線不透過性マーカを含むことがある。別法として、またはこれに加えて、固定部材50は、1つまたは複数の他の放射線不透過性の特徴を含むこともあり、かつ/あるいはリードレス心臓ペーシング装置20が、遠位先端57を所望の位置に位置決めするために使用され得る遠位先端57との間に既知の関係を有する1つまたは複数の放射線不透過性マーカを含むこともある。1つの例では、遠位先端57が、第1の円周方向位置を有し、固定部材50の後尾が、遠位先端57を心臓の目標組織と回転方向に位置合わせすることを容易にするために使用され得る、第1の円周方向位置から所定の角度配向にある第2の円周方向位置を有することがある。遠位先端57を心臓の目標組織と回転方向に位置合わせするためのリードレス心臓ペーシング装置20の回転は、組織への遠位先端57の意図しない貫入を防止するために、遠位先端57がカテーテル80の内腔内に残っている間に行われることがあり、その後に、固定部材50が、カテーテル80の遠位端部の外部に展開されることがある。別法として、またはこれに加えて、組織への遠位先端57の意図しない貫入を防止するために、固定部材50の遠位先端57をカテーテル80の遠位先端の外部に展開した後で、リードレス心臓ペーシング装置20を固定部材50の螺旋アンカの逆方向に回転させることもある。
【0095】
リードレス心臓ペーシング装置20が適所に置かれると、カテーテル80および第2のガイド・ワイヤ96を後退させ、第1の長尺状シャフト104を用いてリードレス心臓ペーシング装置20をさらに(例えば矢印Aおよび/またはその他の適当な方向に)回転させて、遠位先端57および固定部材50が心臓10および/または冠状静脈洞15の組織と係合するようにし得る。いくつかの事例では、リードレス心臓ペーシング装置20は、遠位先端57が最初に左心房の筋肉中に、かつ/または冠状静脈洞15の壁面を通して貫入するように配向されることがある。固定部材50が組織と係合すると、システム100(リードレス心臓ペーシング装置20を除く)およびカテーテル80を後退させ、任意選択で心臓10から取り外し得る。図18は、システム100、カテーテル80、および第2のガイド・ワイヤ96を後退させ、固定部材50が心臓10の組織と係合した後で、リードレス心臓ペーシング装置20がどのように位置決めされ得るかの一例を示す図である。リードレス心臓ペーシング装置20の本体22は、冠状静脈洞15内で右心房11および左心房12に沿って延びるものとして示されているが、リードレス心臓ペーシング装置20の本体22は、冠状静脈洞15内で全体が右心房11に沿って、または全体が左心房12に沿って、位置決めされることもある。いくつかの事例では、リードレス心臓ペーシング装置20の本体22は、第1の電極26の少なくとも一部が右心房11の組織と接触し、第2の電極28の少なくとも一部が左心房12の組織と接触するように、右心房11および左心房12の両方に沿って位置付けられることもある。そのような事例では、リードレス心臓ペーシング装置20は、右心房11および左心房12のうちの1つまたは複数を、これらの電極が双極性であることにより、それぞれ電極26、28で、または他の電極で、感知かつ/またはペーシングするようにプログラムされることもある。
【0096】
いくつかの場合には、植え込まれたリードレス心臓ペーシング装置20が冠状静脈洞15から取り外される、かつ/または植え込まれたリードレス心臓ペーシング装置20の位置決めが調整されることがある。図19は、カテーテル80、および冠状静脈洞15内に挿入された回収装置78(例えばシステム100であることもシステム100でないこともあり、システム100と同様であることも同様でないこともある、植込みおよび/または回収装置)を示す図であり、この回収装置78(例えばシステム100のエンド・キャップ・アセンブリ122および/または複数のワイヤ130)は、リードレス心臓ペーシング装置20の近位ハブ38と係合している。回収装置78(例えばシステム100のエンド・キャップ・アセンブリ122および/または複数のワイヤ130)がリードレス心臓ペーシング装置20の近位ハブ38と係合すると、回収装置78(例えばシステム100)は、リードレス心臓ペーシング装置に力を加えて、リードレス心臓ペーシング装置20を矢印Bまたはその他の適当な方向に回転させ得る。リードレス心臓ペーシング装置20の回転により、固定部材50は、少なくとも部分的には心臓10の組織と係合した状態から引き抜かれることになることがある。
【0097】
リードレス心臓ペーシング装置20を矢印Bの方向に回転させることに加えて、またはその代わりに、長手方向および/または軸方向の力が、矢印Cの方向(例えば長手方向)にリードレス心臓ペーシング装置20に加えられることもある。固定部材50が依然として心臓の組織と係合しているときには、長手方向および/または軸方向の力を矢印Cの長手方向にリードレス心臓ペーシング装置20に加えることにより、図19に示すように固定部材50を伸ばし(例えば1つまたは複数の他の適当な方法で真っ直ぐにし、かつ/または伸ばし)、心臓10の組織から固定部材50を取り外すことを容易にすることがある。利用される材料の構成に応じて、約0.1~1.0重量ポンド(lbf)の範囲、約0.1~0.5lbfの範囲、少なくとも約0.25lbf、少なくとも約0.50lbf、少なくとも約0.25lbfであり、かつ約1.0lbf未満、および/またはその他の適当な力の大きさの軸方向の力が、固定部材50を伸ばすために利用されることがある。いくつかの事例では、心臓10の組織からの取外しのために長手方向および/または軸方向の力を矢印Cの方向に加えることにより、固定部材50が真っ直ぐの構成に塑性変形することもある。
【0098】
図20に示すように、固定部材50が心臓10の組織から完全に取り外された後で、回収装置78(例えばシステム100)とカテーテル80の相対移動によって、カテーテル80をリードレス心臓ペーシング装置20の一部分または全体の上に前進させることがある。カテーテル80によって覆われたら、矢印Cの方向にさらなる力を加えることによって、リードレス心臓ペーシング装置20は、冠状静脈洞15および患者の心臓10から完全に引き抜かれ、かつ/あるいは矢印A(例えば図17図18)の方向に回転力を加えて固定部材50を冠状静脈洞15に隣接する組織と再係合させることによって、冠状静脈洞15および/または冠状静脈洞15と連通する血管内で(例えばリードレス心臓ペーシング装置20の電極の位置決めを改善するため、および/または1つもしくは複数の他の適当な理由のために)再位置決めされることがある。
【0099】
いくつかの場合には、カテーテル80は、患者の血管系内(例えば冠状静脈洞15内)に挿入され、リードレス心臓ペーシング装置20および/または回収装置78(例えばシステム100)の少なくとも一部の上に位置決めされて、冠状静脈洞15からのリードレス心臓ペーシング装置20の引き抜きを容易にすることがある。そのような場合には、カテーテル80は、リードレス心臓ペーシング装置20の近位端部を覆う位置に位置決めされることがあり、回収装置78(例えばシステム100)を、カテーテル80を通して、少なくとも部分的にはカテーテル80によって覆われているリードレス心臓ペーシング装置20まで前進させることがある。リードレス心臓ペーシング装置20の近位端部の上でカテーテル80を位置決めすることは、カテーテル80の遠位端部を偏向させて冠状静脈洞15内に入れることと、リードレス心臓ペーシング装置20の近位端部の上でカテーテル80を操縦することとを含むことがある。カテーテル80の偏向および操縦は、カテーテル80の近位端部に隣接する1つまたは複数の制御機構を操作することによって実施されることがあり、かつ/あるいはカテーテル80は、冠状静脈洞15に向かって屈曲するように構成された予備成形された屈曲部を有することがある。いくつかの実施形態では、リードレス心臓ペーシング装置20は、カテーテル80の存在なしで、回収装置78(例えばシステム100)のみを用いて取り外されることもある。
【0100】
当業者なら、本開示が、本明細書において記載および企図されている具体的な実施形態以外の様々な形態で現れ得ることを認識するであろう。例えば、本明細書に記載するように、様々な実施形態は、様々な機能を実行するものとして記載される1つまたは複数のモジュールを含む。しかし、他の実施形態が、記載されている機能を本明細書に記載されるよりも多くのモジュールにわたって分割する追加のモジュールを含むこともある。さらに、他の実施形態では、記載されている機能をより少ないモジュールにまとめることもある。
【0101】
本明細書に開示する1つまたは複数のシステムおよびそれらの様々な要素の様々な構成要素に使用されることが可能な材料は、一般に医療装置に関連する材料を含み得る。簡潔にするために、以下の記述では、システムについて述べる。ただし、これは本明細書に記載される装置および方法を限定することを意図したものではなく、この記述は、限定するわけではないが、第1の長尺状シャフト、第2の長尺状シャフト、エンド・キャップ・アセンブリ、外側筐体、インサート、複数のワイヤ、リードレス心臓ペーシング装置、1つまたは複数のハンドル、および/あるいはそれらの要素または構成要素など、本明細書に開示されるその他の要素、部材、構成要素、または装置にも適用され得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、システムおよび/またはその構成要素は、金属、金属合金、高分子(その一部の例は以下に開示されている)、金属高分子複合体、セラミック、およびそれらの組合せなど、またはその他の適当な材料で構成され得る。
【0103】
適当な高分子のいくつかの例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えばデュポン社(DuPont)製のDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えばPolyurethane 85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリーテルエステル(例えばディー・エス・エム・エンジニアリング・プラスチックス社(DSM Engineering Plastics)製のARNITEL(登録商標))、エーテルまたはエステル系共重合体(例えばブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレートおよび/またはDuPont社製のHYTREL(登録商標)などのその他のポリエステルエラストマ)、ポリアミド(例えばバイエル社(Bayer)製のDURETHAN(登録商標)またはエルフ・アトケム社(Elf Atochem)製のCRISTAMID(登録商標))、エラストマポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えば商標PEBAX(登録商標)で入手可能)、エチレンビニルアセテート共重合体(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、Marlex高密度ポリエチレン、Marlex低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(例えばREXELL(登録商標))、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えばKEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン12(イー・エム・エス・アメリカン・グリロン社(EMS American Grilon)製のGRILAMID(登録商標)など)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)(例えばSIBSおよび/またはSIBS 50A)、ポリカーボネート、ポリウレタンシリコーン共重合体(例えばエイオテック・バイオマテリアルズ(Aortech Biomaterials)製のElastEon(登録商標)またはアドバンソース・バイオマテリアルズ社(AdvanSource Biomaterials)製のChronoSil(登録商標))、生体適合性高分子、その他の適当な材料、またはそれらの混合物、組合せ、共重合体、および高分子/金属複合体などを含む。いくつかの実施形態では、シースは、液晶高分子(LCP)と混合されることができる。例えば、その混合物は、最大で約6パーセントのLCPを含有することができる。
【0104】
適応な金属および金属合金のいくつかの例は、304V、304L、および316LVステンレス鋼などのステンレス鋼、軟鋼、線形弾性および/または超弾性ニチノールなどのニッケルチタン合金、ニッケルクロムモリブデン合金(例えばINCONEL(登録商標)625などのUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標) C-22(登録商標)などのUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標) C276(登録商標)などのUNS:N10276、およびその他のHASTELLOY(登録商標)合金など)、ニッケル銅合金(例えばMONEL(登録商標) 400、NICKELVAC(登録商標) 400、およびNICORROS(登録商標) 400などのUNS:N04400)、ニッケルコバルトクロムモリブデン合金(例えばMP35-N(登録商標)などのUNS:R30035)、ニッケルモリブデン合金(例えばHASTELLOY(登録商標) ALLOY B2(登録商標)などのUNS:N10665)、その他のニッケルクロム合金、その他のニッケルモリブデン合金、その他のニッケルコバルト合金、その他のニッケル鉄合金、その他のニッケル銅合金、ならびにその他のニッケルタングステンまたはタングステン合金などの他のニッケル合金、コバルトクロム合金、コバルトクロムモリブデン合金(例えばELGILOY(登録商標)およびPHYNOX(登録商標)などのUNS:R30003)、白金富化ステンレス鋼、チタン、白金、パラジウム、金、それらの組合せ、あるいはその他の任意の適当な材料を含む。
【0105】
少なくともいくつかの実施形態では、システムの一部分または全て、および/あるいはそれらの組合せは、放射線不透過性材料でドープされる、または放射線不透過性材料で構成されるなどして、放射線不透過性材料を含むこともある。放射線不透過性材料は、医療処置中に蛍光透視スクリーン上に比較的明るい像を生み出すことができる、または別の撮像技術を実施することができる材料として理解される。この比較的明るい像が、システムのユーザがその位置を決定するのを助ける。放射線不透過性材料のいくつかの例は、限定されるわけではないが、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、および放射線不透過性充填剤が装荷された高分子材料などを含む可能性がある。さらに、同じ結果を得るために、他の放射線不透過性マーカ・バンドおよび/またはコイルが、このシステムの設計に組み込まれることもある。
【0106】
いくつかの実施形態では、ある程度の磁気共鳴撮像(MRI)適合性が、本明細書に開示されるシステムおよび/またはその他の要素に付与される。例えば、システム、および/またはその構成要素もしくは部分は、実質的に像を歪ませず、実質的なアーチファクト(すなわち像中のギャップ)を生じない材料で構成されることがある。例えば、特定の強磁性材料は、MRI像中にアーチファクトを生じることがあるので、適当ではないことがある。システムまたはその一部は、MRIマシンが撮像することができる材料で構成されることもある。これらの特性を呈するいくつかの材料は、例えば、タングステン、コバルトクロムモリブデン合金(例えばELGILOY(登録商標)およびPHYNOX(登録商標)などUNS:R30003)、ニッケルコバルトクロムモリブデン合金(例えばMP35-N(登録商標)などのUNS:R30035)、ならびにニチノールなどを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるシステムおよび/またはその他の要素は、適当な治療薬を含み、かつ/または適当な治療薬で処理されることがある。適当な治療薬のいくつかの例は、抗血栓薬(ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)など)、抗増殖薬(エノキサパリン、アンギオペプチン、滑らかな筋肉細胞の増殖を阻害することができるモノクロナール抗体、ヒルジン、およびアセチルサリチル酸など)、抗炎症薬(デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、およびメサラミンなど)、抗腫瘍/抗増殖/抗有糸分裂薬(パクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、およびチミジンキナーゼ阻害剤など)、麻酔薬(リドカイン、ブピバカイン、ロピバカインなど)、抗凝結薬(D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、アンチトロンビン化合物、血小板受容体拮抗剤、アンチトロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬、およびダニ抗血小板ペプチドなど)、血管細胞成長促進剤(成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗剤、転写活性化剤、および翻訳促進剤など)、血管細胞成長阻害剤(成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗剤、転写抑制剤、翻訳抑制剤、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対抗する抗体、成長因子および細胞毒素からなる二官能性分子、抗体および細胞毒素からなる二官能性分子など)、コレステロール低下薬、血管拡張薬、ならびに内因性血管作動機構と干渉する作用薬を含み得る。
【0108】
本開示は、多くの点で、単なる例示であることを理解されたい。詳細、特に形状、サイズ、およびステップの配列については、本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられ得る。これは、適切な範囲まで、1つの例示的な実施形態の特徴のいずれかが他の実施形態で使用されることも含み得る。もちろん、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を表現する文言によって定義される。
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