IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テンセント・テクノロジー・(シェンジェン)・カンパニー・リミテッドの特許一覧

特許7478824フレキシブルコンデンサアレイおよびその製造方法、コンデンサアレイ検出システムならびにロボット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】フレキシブルコンデンサアレイおよびその製造方法、コンデンサアレイ検出システムならびにロボット
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20240425BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20240425BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20240425BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20240425BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20240425BHJP
   G01L 1/14 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
B25J5/00 C
B25J13/00 Z
H01G11/56
H01G11/26
G01L1/14 J
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022539324
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 CN2021086979
(87)【国際公開番号】W WO2021223581
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】202010377743.6
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514187420
【氏名又は名称】テンセント・テクノロジー・(シェンジェン)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,ユアン
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ケウエイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ,チュアンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】バイ,ニンニン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ルォイルォイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,チンチン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジォンイオウ
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0059434(US,A1)
【文献】国際公開第2009/096419(WO,A1)
【文献】特開2011-099847(JP,A)
【文献】特開2011-185858(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0365198(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0078946(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0038745(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0059417(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0268940(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0196281(US,A1)
【文献】特開2015-187561(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109990927(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0177114(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-1/26,5/00-5/28,25/00
B25J 5/00,13/00
H01G 11/26,11/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルコンデンサアレイであって、
複数の第1電極を含む第1電極アレイが配置されている第1フレキシブル電極層と、
複数の第2電極を含む第2電極アレイが配置されている第2フレキシブル電極層と、
前記第1フレキシブル電極層と前記第2フレキシブル電極層との間に配置されている誘電体層と、
前記第1電極アレイと前記誘電体層との間に配置されている第1スペーサ層と、を含み、
ここで、前記第1電極アレイと前記第2電極アレイにおいて対向配置されている各電極対と、前記電極対の間に介在している前記第1スペーサ層および前記誘電体層の一部とは、前記フレキシブルコンデンサアレイのコンデンサセルを構成し、それら複数のコンデンサセルのうちの各々のコンデンサセルには、第1電気二重層コンデンサと前記第1電気二重層コンデンサに直列接続されている第2電気二重層コンデンサとが含まれ、前記第1電気二重層コンデンサには、前記第1電極と、前記第1スペーサ層と、前記誘電体層とが含まれ、前記第2電気二重層コンデンサには、前記第2電極と、前記誘電体層と、前記第2電極アレイと前記誘電体層との間に配置されている第2スペーサ層とが含まれ、
ここで、押圧状態では、前記コンデンサセルにおける誘電体層は、前記第1スペーサ層を貫通し、前記第1電極に接触して複数の第1接触面を形成し、前記複数の第1接触面における各接触面において、第1マイクロ電気二重層コンデンサが形成され、かつ、前記複数の第1接触面での複数の第1マイクロ電気二重層コンデンサが並列接続されて前記第1電気二重層コンデンサを形成し、
前記押圧状態において前記誘電体層は、前記第2スペーサ層を貫通し、前記第2電極と接触して複数の第2接触面を形成し、前記複数の第2接触面における各接触面において、第2マイクロ電気二重層コンデンサが形成され、かつ、前記複数の第2接触面での複数の第2マイクロ電気二重層コンデンサが並列接続されて前記第2電気二重層コンデンサを形成する、
ことを特徴とするフレキシブルコンデンサアレイ。
【請求項2】
前記第1電極アレイにおける複数の第1電極は、M行とN列を含むマトリクスに配列されており、ここで、M、Nは、正の整数であり、前記第2電極アレイにおける複数の第2電極は、M行とN列を含むマトリクスに配列されており、また、前記第2電極アレイにおけるi行j列目の第2電極と、前記第1電極アレイにおけるi行j列目の第1電極とは、対向配置されて電極対を形成し、iは、0以上かつM未満であり、jは、0以上かつN未満である、
ことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルコンデンサアレイ。
【請求項3】
前記第1スペーサ層には、前記誘電体層を前記電極対のうちの少なくとも1つの電極から離間させるキャビティが含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルコンデンサアレイ。
【請求項4】
前記キャビティには、ポリジメチルシロキサン(PDMS)支持カラムからなるキャビティと、高分子薄膜の枠形ブラケットからなるキャビティと、メッシュ状の高分子薄膜からなるキャビティのうちの少なくとも1つが含まれる、
ことを特徴とする請求項に記載のフレキシブルコンデンサアレイ。
【請求項5】
前記第1電極アレイにおける同一行の複数の第1電極は、行方向に電気的に接続されて、行方向に平行するM個の電極列を形成し、
前記第2電極アレイにおける同一列の複数の第2電極は、列方向に電気的に接続されて、列方向に平行するN個の電極列を形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルコンデンサアレイ。
【請求項6】
前記第1電極アレイにおける複数の第1電極は、互いに電気的に接続され、かつ、1つの共通のリード線に共通に電気的に接続され、また、前記第2電極アレイにおける各々の第2電極は、個別のリード線を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルコンデンサアレイ。
【請求項7】
前記第1電極アレイにおける各々の第1電極は、個別のリード線を有し、および、前記第2電極アレイにおける各々の第2電極は、個別のリード線を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルコンデンサアレイ。
【請求項8】
フレキシブルコンデンサアレイの製造方法であって、
第1フレキシブル電極層を配置するステップであって、前記第1フレキシブル電極層の上に複数の第1電極を含む第1電極アレイが配置されているステップと、
前記第1フレキシブル電極層の上に第1スペーサ層を配置するステップと、
前記第1スペーサ層の上に誘電体層を配置するステップと、
第2フレキシブル電極層を配置するステップであって、前記第2フレキシブル電極層の上に複数の第2電極を含む第2電極アレイが配置されているステップと、
前記誘電体層の上に前記第2フレキシブル電極層を配置するステップと、
前記第1フレキシブル電極層、前記誘電体層、前記第1スペーサ層、および前記第2フレキシブル電極層を、前記フレキシブルコンデンサアレイとしてパッケージ化するステップと、を含み、
ここで、前記第1電極アレイと前記第2電極アレイにおいて対向配置されている各電極対と、前記電極対の間に介在している前記第1スペーサ層および前記誘電体層の一部とは、前記フレキシブルコンデンサアレイのコンデンサセルを構成し、それら複数のコンデンサセルのうちの各々のコンデンサセルには、第1電気二重層コンデンサと前記第1電気二重層コンデンサに直列接続されている第2電気二重層コンデンサとが含まれ、前記第1電気二重層コンデンサには、前記第1電極と、前記第1スペーサ層と、前記誘電体層とが含まれ、前記第2電気二重層コンデンサには、前記第2電極と、前記誘電体層と、前記第2電極アレイと前記誘電体層との間に配置されている第2スペーサ層とが含まれ、
ここで、押圧状態では、前記コンデンサセルにおける誘電体層は、前記第1スペーサ層を貫通し、前記第1電極に接触して複数の第1接触面を形成し、前記複数の第1接触面における各接触面において、第1マイクロ電気二重層コンデンサが形成され、かつ、前記複数の第1接触面での複数の第1マイクロ電気二重層コンデンサは、並列接続されて前記第1電気二重層コンデンサを形成し、
前記押圧状態において前記誘電体層は、前記第2スペーサ層を貫通し、前記第2電極と接触して複数の第2接触面を形成し、前記複数の第2接触面における各接触面において、第2マイクロ電気二重層コンデンサが形成され、かつ、前記複数の第2接触面での複数の第2マイクロ電気二重層コンデンサが並列接続されて前記第2電気二重層コンデンサを形成する、
ことを特徴とするフレキシブルコンデンサアレイの製造方法。
【請求項9】
前記第1電極アレイにおける複数の第1電極は、M行とN列を含むマトリクスに配列されており、ここで、M、Nは、正の整数であり、前記第2電極アレイにおける複数の第2電極は、M行とN列を含むマトリクスに配列されており、また、前記第2電極アレイにおけるi行j列目の第2電極と、前記第1電極アレイにおけるi行j列目の第1電極とは、対向配置されて電極対を形成し、iは、0以上かつM未満であり、jは、0以上かつN未満である、
ことを特徴とする請求項に記載のフレキシブルコンデンサアレイの製造方法。
【請求項10】
前記誘電体層の製造方法は、
ポリビニルアルコールを水に溶解させて、ゲル状溶液を形成するステップと、
前記ゲル状溶液にリン酸を加えて、混合溶液を形成するステップと、
前記混合溶液を微細構造体のテンプレートに置くステップと、
前記混合溶液を硬化させて、前記誘電体層を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項に記載のフレキシブルコンデンサアレイの製造方法。
【請求項11】
コンデンサアレイ検出システムであって、
請求項1~のいずれか1項に記載のフレキシブルコンデンサアレイと、
前記フレキシブルコンデンサアレイにおける少なくとも1つのコンデンサセルをゲーティングするように構成されるコンデンサ選択回路と、
前記コンデンサ選択回路の制御下で、前記フレキシブルコンデンサアレイの、第1電極アレイにおける少なくとも1つの電極リード線および第2電極アレイにおける少なくとも1つの電極リード線に励起信号を出力するように構成される励起回路と、
前記少なくとも1つのコンデンサセルの容量値を検出するように構成されるコンデンサ容量検出回路と、
を含むことを特徴とするコンデンサアレイ検出システム。
【請求項12】
前記コンデンサ容量検出回路には、
前記コンデンサ容量検出回路が前記少なくとも1つのコンデンサセルの少なくとも1つのクロストーク補償値を検出するように前記コンデンサ選択回路の制御下で制御するように構成されるクロストーク補償回路と、
前記少なくとも1つのクロストーク補償値に基づいて、前記少なくとも1つのコンデンサセルの容量値を更新するように構成されるコンデンサ容量算出回路と、がさらに含まれる、
ことを特徴とする請求項11に記載のコンデンサアレイ検出システム。
【請求項13】
前記フレキシブルコンデンサアレイは、圧力センシング検出面に配置され、また、前記フレキシブルコンデンサアレイにおける各々のコンデンサセルは、前記圧力センシング検出面の1つの圧力センシング検出位置に対応し、
前記コンデンサ選択回路は、前記フレキシブルコンデンサアレイにおける各々のコンデンサセルを順次にゲーティングするように構成され、
前記コンデンサ容量検出回路は、前記コンデンサセルごとに、
前記コンデンサセルの容量値を検出することであって、前記クロストーク補償回路によって前記コンデンサ容量検出回路が前記コンデンサセルの少なくとも1つのクロストーク補償値を検出するように制御されることと、
前記コンデンサ容量算出回路を使用して、前記少なくとも1つのクロストーク補償値に基づいて、前記コンデンサセルの容量値を更新することと、
それら各々のコンデンサセルの容量値を、前記圧力センシング検出位置の圧力センシング情報として順次に出力することと、を実行するように構成される、
ことを特徴とする請求項12に記載のコンデンサアレイ検出システム。
【請求項14】
ロボットであって、
請求項1113のいずれか1項に記載のコンデンサアレイ検出システムであって、
前記コンデンサアレイ検出システムにおけるフレキシブルコンデンサアレイが、前記ロボットの少なくとも一部の圧力センシング検出面に配置されているコンデンサアレイ検出システムと、
前記コンデンサアレイ検出システムによって検出された少なくとも1つのコンデンサセルの容量値に基づいて、衝撃力検出値および衝撃力発生位置を算出するように構成される衝撃力検出器と、
前記衝撃力検出器による衝撃力検出値および前記衝撃力発生位置に基づいて、衝撃摂動を決定するように構成される衝撃摂動決定器と、
決定された衝撃摂動に応答して、前記ロボットの動作パラメータを調整することで、前記ロボットが前記衝撃摂動に抵抗するように制御するように構成される衝撃摂動抵抗コントローラと、
を含むことを特徴とするロボット。
【請求項15】
前記ロボットは、足型ロボットであり、前記フレキシブルコンデンサアレイは、前記足型ロボットの足部の底面の圧力センシング検出面上に設けられ、
前記ロボットの動作パラメータを調整することは、前記足型ロボットの着地点または着地角度を調整すること、を含み、
前記衝撃摂動抵抗コントローラには、さらに、計画軌跡生成器、調整軌跡生成器、および足関節角度生成器が含まれ、ここで、
前記計画軌跡生成器は、前記足型ロボットの重心軌跡および着地点軌跡を計画するように構成され、
前記調整軌跡生成器は、前記足型ロボットの前記重心軌跡および前記衝撃力検出値に基づいて、前記足型ロボットの重心軌跡を調整し、および、前記足型ロボットの着地点軌跡に基づいて、前記足型ロボットの着地点軌跡を調整するように構成され、
前記足関節角度生成器は、調整された重心軌跡および調整された着地点軌跡に基づいて、前記足型ロボットの足関節角度を調整することにより、前記足型ロボットの着地点または着地角度を調整するように構成される、
ことを特徴とする請求項14に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本願の実施例は、出願番号が202010377743.6で、出願日が2020年5月7日である中国特許出願に基づいて提出され、また、当該中国特許出願の優先権を主張し、当該中国特許出願の全ての内容が、参考として本願の実施例に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本願は、フレキシブルコンデンサアレイおよびその製造方法、コンデンサアレイ検出システムならびにロボットに関する。
【背景技術】
【0003】
スマートロボット技術の発展およびロボット応用シーンの深化に伴い、人々は、ロボットが設定された機械的な動きを完成することができるだけでなく、外部環境を感知してフィードバックを行うこともできる、ということを望んでいる。
【0004】
現在、ロボットに使用されている力学的センサは、通常、多軸力センサである。本願の出願人は、多軸力センサの多くが剛性のものであり、かつ体積が比較的大きい、ということを発見した。関連技術に係るフレキシブルセンサは、小型化が可能であるが、その測定可能な圧強さが比較的小さいため、ロボットの動き検出のような超高圧強さ下での応用には適していない。また、関連技術に係るフレキシブルセンサの安定性も、ロボットの運動中の圧強さを正確に測定するのに不十分である。したがって、関連技術のセンサによってロボットの足にかかる力やロボットの立ち安定性を測定することは、困難であり、これにより、ロボットの安定した歩容での歩行、走りやジャンプに関する設計および開発に対して困難をもたらしてしまう。
【発明の概要】
【0005】
本願の少なくとも1つの実施例は、フレキシブルコンデンサアレイを提供し、第1電極アレイが配置されている第1フレキシブル電極層と、第2電極アレイが配置されている第2フレキシブル電極層と、前記第1フレキシブル電極層と前記第2フレキシブル電極層との間に配置されている誘電体層と、前記第1電極アレイと前記誘電体層との間に配置されている第1スペーサ層と、を含み、ここで、前記第1電極アレイと前記第2電極アレイにおいて対向配置されている各電極対、および前記電極対の間に介在している前記第1スペーサ層および前記誘電体層の一部は、前記フレキシブルコンデンサアレイのコンデンサセルを構成し、それら各々のコンデンサセルには、第1電気二重層コンデンサが含まれ、前記第1電気二重層コンデンサには、前記第1電極と、前記第1スペーサ層と、前記誘電体層とが含まれ、ここで、押圧状態では、前記コンデンサセルにおける誘電体層は、前記第1スペーサ層を貫通し、前記第1電極に接触して少なくとも1つの第1接触面を形成し、前記少なくとも1つの第1接触面における各接触面において、第1マイクロ電気二重層コンデンサが形成され、また、前記少なくとも1つの第1接触面での少なくとも1つの第1マイクロ電気二重層コンデンサが並列接続されて第1電気二重層コンデンサを形成する。
【0006】
本願の少なくとも1つの実施例は、また、フレキシブルコンデンサアレイの製造方法を提供し、第1フレキシブル電極層を配置するステップであって、前記第1フレキシブル電極層の上に第1電極アレイが配置されているステップと、前記第1フレキシブル電極層の上に第1スペーサ層を配置するステップと、前記第1スペーサ層の上に誘電体層を配置するステップと、第2フレキシブル電極層を配置するステップであって、前記第2フレキシブル電極層の上に前記第2電極アレイが配置されているステップと、前記誘電体層の上に前記第2フレキシブル電極層を配置するステップと、前記第1フレキシブル電極層、前記誘電体層、前記スペーサ層、および前記第2フレキシブル電極層を、前記フレキシブルコンデンサアレイとしてパッケージ化するステップと、を含み、ここで、前記第1電極アレイと前記第2電極アレイにおいて対向配置されている各電極対と、前記電極対の間に介在している前記第1スペーサ層および前記誘電体層の一部とは、前記フレキシブルコンデンサアレイのコンデンサセルを構成し、それら各々のコンデンサセルには、第1電気二重層コンデンサが含まれ、前記第1電気二重層コンデンサには、前記第1電極と、前記第1スペーサ層と、前記誘電体層とが含まれ、ここで、押圧状態では、前記コンデンサセルにおける誘電体層は、前記第1スペーサ層を貫通し、前記第1電極に接触して少なくとも1つの第1接触面を形成し、前記少なくとも1つの第1接触面における各接触面において、第1マイクロ電気二重層コンデンサが形成され、また、前記少なくとも1つの第1接触面での少なくとも1つの第1マイクロ電気二重層コンデンサが並列接続されて第1電気二重層コンデンサを形成する。
【0007】
本願の少なくとも1つの実施例は、また、コンデンサアレイ検出システムを提供し、上記のフレキシブルコンデンサアレイと、前記フレキシブルコンデンサアレイにおける少なくとも1つのコンデンサセルをゲーティングするように構成されるコンデンサ選択回路と、前記コンデンサ選択回路の制御下で、前記フレキシブルコンデンサアレイの、第1電極アレイにおける少なくとも1つの電極リード線および第2電極アレイにおける少なくとも1つの電極リード線に励起信号を出力するように構成される励起回路と、前記少なくとも1つのコンデンサセルの容量値を検出するように構成されるコンデンサ容量検出回路と、を含む。
【0008】
本願の少なくとも1つの実施例は、また、ロボットを提供し、コンデンサアレイ検出システムの結果に基づいて、当該ロボットの運動バランス制御が実行され得ており、上記のコンデンサアレイ検出システムであって、前記コンデンサアレイ検出システムにおけるフレキシブルコンデンサアレイが、前記ロボットの少なくとも一部の圧力センシング検出面に配置されているコンデンサアレイ検出システムと、前記コンデンサアレイ検出システムによって検出された少なくとも1つのコンデンサセルの容量値に基づいて衝撃力検出値および衝撃力発生位置を算出するように構成される衝撃力検出器と、前記衝撃力検出器による衝撃力検出値および前記衝撃力発生位置に基づいて、衝撃摂動を決定するように構成される衝撃摂動決定器と、決定された衝撃摂動に応答して、前記ロボットの動作パラメータを調整することで、前記ロボットが前記衝撃摂動に抵抗するように制御するように構成される衝撃摂動抵抗コントローラと、を含む。
【0009】
本願の1つ以上の実施例は、フレキシブルコンデンサアレイおよびその製造方法、コンデンサアレイ検出システならびにロボットを出願し、フレキシブル電極層および誘電体層と組み合わせて、力学的センシングシステムのフレキシブル、高センシング密度、および高センシング感度を実現するとともに、スペーサ層によりセンサの安定性を向上させ、これにより、フレキシブルコンデンサアレイの全体は、フレキシブルを示して、圧力センシングシステムの感度、安定性、および高圧強さに耐える能力を大幅に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本願の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下では、実施例の図面を簡単に説明し、明らかに、以下に説明する図面は、本願を制限するものではなく、本願のいくつかの実施例にのみ関連するものである。
図1】スマート足型ロボットの模式図である。
図2A】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイの模式図である。
図2B】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイの原理の模式図である。
図2C】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイにおけるスペーサ層の構造の模式的な平面図である。
図2D】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイにおけるコンデンサセルの等価回路図である。
図3A】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイにおける第1電極アレイの一部の模式図である。
図3B】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイにおける第2電極アレイの一部の模式図である。
図3C】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイの構造の模式図である。
図4A】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイの別の構造の模式図である。
図4B】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイの第1電極アレイの平面図である。
図4C】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイの別の構造の模式図である。
図5】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイの製造方法のフローチャートを示す図である。
図6A】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイの感度の模式図である。
図6B】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイの経時的コンデンサ容量ドリフト曲線である。
図6C】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイのサイクル試験曲線である。
図6D】本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイのアレイ図である。
図7A】本願の実施例によって提供されるコンデンサアレイ検出システムの等価回路図である。
図7B】本願の実施例によって提供されるコンデンサアレイ検出システムのアーキテクチャ図である。
図7C】本願の実施例によって提供されるコンデンサアレイ検出システムによる圧力センシング情報の検出のフローチャートである。
図7D】本願の実施例によって提供されるコンデンサアレイ検出システムのクロストーク補償回路の等価回路図である。
図8】本願の実施例によって提供されるロボットの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願の実施例の目的、技術的解決手段および利点をより明確にするために、以下、図面を参照しながら、本願の実施例の技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。明らかに、説明される実施例は、本願のいくつかの実施例であり、全ての実施例ではない。説明される本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力を必要とせずに取得した他の全ての実施例は、本願が保護する範囲に属する。
【0012】
本願で使用される技術用語または科学用語は、特に定義されていない限り、当業者に理解される一般的な意味であるべきである。本願で使用される「第1」、「第2」および類似の用語は、順序、数量または重要性を示すものではなく、異なるコンポーネントを区別するために使用されるものであるにすぎない。同様に、「1つ」、「一」、または「当該」のような類似の用語も、数量を制限することを意味するのではなく、少なくとも1つが存在することを意味する。「含む」または「備える」のような類似の用語は、当該用語の前に現れる要素または物が、当該用語の後に列挙される要素または物およびそれらの均等物を包含するとともに、他の要素または物を除外しない、ということを意味する。「接続」または「連結」のような類似の用語は、物理的または機械的接続に限定されるものではなく、直接的または間接的にかかわらず、電気的接続を含み得る。「上」、「下」、「左」、「右」などは、相対的な位置関係を示すことのみに使用され、説明対象の絶対位置が変化した後、当該相対的な位置関係は、それに応じて変化され得る。
【0013】
以下、図面を参照しながら、本願の実施形態およびその実施例を詳細に説明する。
【0014】
図1は、スマート足型ロボット10の模式図を示す。図1を参照すると、実際の環境では、スマート足型ロボット10が人間による単調な繰り返しタスクまたは危険度の高いタスクの実行に協力または代替できるように、スマート足型ロボット10は、安定した移動能力を有する必要がある。したがって、スマート足型ロボット10は、移動中に足底が受ける地面からの衝撃力の大きさおよび方向を検出できる必要がある。このため、スマート足型ロボット10の足底の検出面には力学的センサが配置され、これにより、スマート足型ロボット10は、該衝撃力に基づいてバランス安定制御をどのように行うかを判断することができる。
【0015】
スマート足型ロボット10は、人工知能に基づくものであり得る。人工知能(AI:Artificial Intelligence)は、デジタルコンピュータまたはデジタルコンピュータによって制御されるマシンを使用して、人間の知能をシミュレート、延伸および拡張し、環境を感知し、知識を獲得して、知識を利用することで最適な結果を得るために使用される理論、方法、技術およびオペレーティングシステムである。言い換えれば、人工知能は、コンピュータ科学の総合的な技術であり、知能の本質を理解することを企んで、人間の知能と似ている方式で応答することができる新しい知能マシンを作り出す。人工知能とは、様々な知能マシンの設計原理および実現方法を研究して、マシンに感知、推理および意思決定の機能を持たせることである。人工知能技術は、総合的な学科であり、幅広い分野に関与しており、ハードウェアレベルの技術もあるし、ソフトウェアレベルの技術もある。センサは、人工知能の基礎技術の一つとすることができる。
【0016】
関連技術に係るスマート足型ロボット10に使用される力学的センサは、通常、多軸力センサである。これらの力学的センサの多くは、剛性のものであり、かつ体積が比較的大きい。したがって、剛性の力学的センサを取り付けることは、足底面積の小さい足型ロボットには適用されない。関連技術に係るフレキシブルセンサは、小型化が可能であるが、その測定可能な圧強さが比較的小さいため、足型ロボットの動き検出のような超高圧強さ下での応用には適していない。また、関連技術に係るフレキシブルセンサの安定性も、ロボットの運動中の圧力を正確に測定するには不十分である。
【0017】
このため、本願の実施例は、応答速度が速く、精度が高く、測定範囲が大きく、耐衝撃性能が強くフレキシブルコンデンサアレイを提供し、図1に示すようなスマート足型ロボット10の足底の力学的センサとして使用され得る。該フレキシブルコンデンサアレイは、スマート型足型ロボット10の足底に対する地面からの衝撃力の大きさおよび方向を正確に検出することができる。一方では、スマート足型ロボット10は、該衝撃力に基づいてロボットのゼロモーメント点を算出し、不安定かどうか、バランス制御が必要かどうかの判定根拠とすることができる。他方では、スマート型足型ロボット10は、この力に基づいて全身動力学的バランスコントローラを構築することができ、測定した衝撃力を外力として入力することにより、衝撃力を受けた状態で各関節のバランスを保つためのモーメントや角度の補正量を算出する。また、スマート足型ロボット10は、該衝撃力に基づいて、足底の衝撃吸収コントローラを設計することもでき、フレキシブルコンデンサアレイによって検出された力と、予め計画された足底の受力との間の誤差に基づいて、足部と地面との間の相互作用力を調整し、揺動足をしなやかに着地させることと、着地時の衝撃を低減させることと、支持足をできるだけ地面に接着させることとを実現し、これにより、足型ロボットの移動安定性を向上させる。本願の実施例におけるフレキシブルコンデンサアレイは、アレイ状に配列されているため、足底の機械的構造を変更することなく迅速に取り付けることができ、現在のスマート足型ロボット10の設計により適している。
【0018】
本願の実施例は、また、上記のフレキシブルコンデンサアレイを含むコンデンサアレイ検出システムを提供する。本願の実施例のコンデンサアレイ検出システムは、人体歩行パラメータ測定装置のコンポーネントとして使用されてもよい。人体の歩行パラメータは、生物医療分野および二足ロボット分野の研究にとって重要な意義がある。生物医療分野では、人体の歩行パラメータは、その身体の状態と強く相関しており、例えば、パーキンソン病患者が特有する足底圧力の分布状況、糖尿病患者によく見られる合併症である足のただれなどが、その歩行の歩容に影響を与えることがある。本願の実施例のコンデンサアレイ検出システムは、歩行時に人の足底に対する地面からの衝撃力を検出し、さらに、正常人と患者の歩行パラメータを測定して記録することにより、機械学習と組み合わせてビッグデータ分析を行い、様々な病症の場合の歩行パラメータを得て、これにより、医師による治療を補助することができる。二足ロボットの分野では、人間は、数千万年の自然進化を経たため、極めて優れた器用性と極めて強い環境適応性を有し、本願の実施例に係るコンデンサアレイ検出システムは、人体の歩行パラメータを測定し、これを二足ロボットの歩容計画の重要な根拠とし、人体の運動のメカニズムをシミュレートして、二足ロボットの研究開発を行い、これにより、複雑な環境への二足ロボットの適応性を向上させることができる。
【0019】
本願の1つまたは複数の実施例は、フレキシブルコンデンサアレイおよびその製造方法、コンデンサアレイ検出システムならびにロボットを提供し、これにより、フレキシブルコンデンサアレイの全体は、フレキシブルを示して、圧力センシングシステムの感度、安定性、および高圧強さに耐える能力を大幅に向上させる。
【0020】
図2Aは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20の模式図である。図2Bは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20の原理の模式図である。図2Cは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20における第1スペーサ層204の構造の模式的な平面図である。図2Dは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20におけるコンデンサセルの等価回路図である。
【0021】
図2Aおよび図2Bは、フレキシブルコンデンサアレイ20の1つのコンデンサセルの構造を示すが、当業者が理解できるように、フレキシブルコンデンサアレイ20には、図2Aおよび図2Bに示すコンデンサセルと類似する構造を有する複数のコンデンサセルが含み得る。
【0022】
図2Aに示すように、当該フレキシブルコンデンサアレイ20は、第1フレキシブル電極層201と、第2フレキシブル電極層202と、誘電体層203と、第1スペーサ層204とを含む。ここで、第1フレキシブル電極層201には、第1電極アレイ2012が配置されている。ここで、第1電極アレイ2012における複数の第1電極は、M行とN列を含むマトリクス状に配列されており、ここで、M、Nは、正の整数である。
【0023】
第2フレキシブル電極層202には、第2電極アレイ2022が配置されている。ここで、第2電極アレイにおける複数の第2電極は、M行とN列を含むマトリクス状に配列されており、第2電極アレイにおけるi行j列目の第2電極は、第1電極アレイにおけるi行j列目の第1電極に対向配置されて電極対が形成されてもよく、iは、0以上かつM未満であり、jは、0以上かつN未満である。ここで、第2電極アレイのi行j列目の第2電極は、また、第1電極アレイのj行i列目の第1電極に対向配置されて電極対が形成されてもよいし、したがって、本願の実施例は、第1電極アレイおよび第2電極アレイの両方におけるi行j列目の電極が対向配置されて電極対が形成される、ということに限定されない。
【0024】
第1電極アレイ2012と第2電極アレイ2022において対向配置されている各電極対について、当該電極対の間には、第1スペーサ層204と誘電体層203とが配置されている。1つの電極対と、当該電極対の中間にある第1スペーサ層204および誘電体層203とは、フレキシブルコンデンサアレイ20における1つのコンデンサセルを構成する。
【0025】
いくつかの実施例では、第1スペーサ層204には、誘電体層203を電極対のうちの少なくとも1つの電極から離間させるキャビティが含まれる。例えば、図2Aにおいて、第1スペーサ層204の断面図が示されており、第1スペーサ層204のキャビティは、第1電極アレイ2012における電極を誘電体層203から離間させる。
【0026】
いくつかの実施例では、電極対には、第2電極アレイ2022における電極を誘電体層203から離間するように別のスペーサ層(例えば、第2スペーサ層)が設計されてもよく、これにより、第1電極アレイ2012および第2電極アレイ2022の両方における電極が、いずれも、誘電体層203から離間される。
【0027】
いくつかの実施例では、第1スペーサ層204および/または第2スペーサ層におけるキャビティには、ポリジメチルシロキサン(PDMS)支持カラムからなるキャビティ、高分子薄膜の枠形ブラケットからなるキャビティ、メッシュ状の高分子薄膜からなるキャビティのうちの少なくとも1つが含まれる。高分子薄膜の枠形ブラケットからなるキャビティについては、高分子薄膜全体の中間部分を切断することによって枠付きブラケットが形成され得る。
【0028】
図2Cにおいて、第1スペーサ層204および/または第2スペーサ層の様々な平面図が示されている。メッシュ状の高分子薄膜におけるメッシュは、図2Cに示すように、ハニカム状メッシュ、円形メッシュ、四角型メッシュ、菱形メッシュなどであってもよい。当業者が理解できるように、キャビティを導入することによって空気層または有機層を追加することに加えて、他の方式によってスペーサ層を導入することも可能であり、本願の実施例は、これを限定しない。
【0029】
以上のように、関連技術におけるイオン型コンデンサセンサにおける電極層が誘電体層に隣接されるため、センサの信号ドリフトがもたらされてしまう。関連技術のイオン型コンデンサセンサと比較して、本願の実施例における第1スペーサ層204の設計、例えば空気層または高分子薄膜層が上部電極層を誘電体層から離間させるような設計は、センサの信号ドリフトを低減させ、また、センサの安定性を向上させることができる。
【0030】
いくつかの実施例では、誘電体層203は、ポリビニルアルコール-リン酸(PVA-HPO)からなるイオンゲル薄膜である。関連技術のイオン型コンデンサセンサに比べて、ポリビニルアルコール-リン酸(PVA-HPO)材料製の誘電体層203の安定性および感度は、いずれもより高くなる。当業者が理解できるように、ポリビニルアルコール-リン酸の誘電体層の代わりに、他の材料が使用されてもよく、例えば、高分子繊維、紙などをイオン液体で浸漬する方法でイオン誘電体層が取得されてもよく、または、液状のイオン液体が誘電体層203として使用されてもよい。
【0031】
いくつかの実施例では、誘電体層203の表面としては、一方の面が微細構造体を有し、他方の面が平坦であってもよい。いくつかの実施例では、第2電極アレイ2022に近い誘電体層203の側は、平坦であってもよく、第1スペーサ層204に近い誘電体層203の側は、微細構造体を有してもよい。
【0032】
さらに、フレキシブルコンデンサアレイ20は、必要に応じて、他の構造または機能層を含んでもよい。例えば、当該フレキシブルコンデンサアレイ20は、圧力センシング信号を伝送する機能を実現するためのリード層を含んでもよい。また例えば、当該フレキシブルコンデンサアレイ20は、保護層をさらに含んでもよく、例えば、当該保護層が、フレキシブル薄膜保護層などである。例えば、当該フレキシブルコンデンサアレイ20は、他の機能層をさらに含んでもよく、これらの他の機能層が、光学的透明粘着剤(OCA粘着剤)を介して第1フレキシブル電極層201または第2フレキシブル電極層202上に結合されてもよく、本願の実施例は、フレキシブルコンデンサアレイ20の他の構造について具体的に限定しない。
【0033】
第1フレキシブル電極層201は、第1フレキシブル薄膜層2011を含み、第1電極アレイ2012は、第1フレキシブル薄膜層2011上に作製されている。第2フレキシブル電極層202は、第2フレキシブル薄膜層2021を含み、第2電極アレイ2022は、第2フレキシブル薄膜層2021上に作製されている。フレキシブルコンデンサアレイ20は、フレキシブル薄膜材料でパッケージ化されている。フレキシブルコンデンサアレイ20における全てのコンポーネントが、フレキシブルを有する材料で作製されているため、その全体としては、ある程度の曲げおよび引張変形が実施され得ており、ある程度の変形下で力学的センシング性能の安定を確保され得る。フレキシブルコンデンサアレイ20が足型ロボットに適用される場合、フレキシブルコンデンサアレイ20は、ロボットの足底またはロボットの外面の任意の位置に完全に接着され得て、これにより、圧力センシング信号は、より安定かつ正確になる。第1電極アレイ2012および第2フレキシブル電極層202は、また、大面積のフレキシブル電極層であってもよい。したがって、フレキシブルコンデンサアレイ20は、ロボットの足底またはロボットの外面の任意の位置にコンフォーマル(Conformal、共形)に接着され得て、これにより、ロボットの全方位の力学的センシングが実現される。
【0034】
例えば、フレキシブル電極層を形成するために、第1電極アレイ2012は、銀ナノスプレーまたは物理気相堆積の方式により、第1フレキシブル薄膜層2011上に作製されてもよい。同様に、第2電極アレイ2022も、銀ナノスプレーまたは物理気相堆積の方式により、第2フレキシブル薄膜層2021上に作製されてもよい。例えば、物理気相堆積という方式には、蒸着(例えば、電子ビーム蒸着)またはスパッタリングが含まれる。第1フレキシブル薄膜層2011および第2フレキシブル薄膜層2021は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーゴム(TPU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ナイロン6(PA6)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、およびポリエーテルスルホン(PES)のうちの少なくとも1つの材料から構成されてもよい。
【0035】
例えば、まず、予め設定された電極パターンを有するマスク版を製造し、次に、銀ナノワイヤスプレーという方法を使用して、フレキシブル薄膜(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))上にパターン化されたアレイ電極をスプレーしてもよい。銀ナノワイヤは、ナノスケールの銀製のワイヤである。銀ナノワイヤは、銀の優れた導電性に加えて、そのナノレベルの寸法効果により、光透過性および耐屈曲性を有し、これにより、高いフレキシブルおよび導電性が実現される。または、電子ビーム蒸着(EBE:Electron Beam Evaporation)という方法を使用して、フレキシブル薄膜(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))上にAu薄膜を蒸着し、パターン化された電極アレイを作製してもよい。電子ビーム蒸着は、物理気相堆積プロセスである。電子ビーム蒸着は、電磁場の協力下で、高エネルギー電子を使用して坩堝内のターゲット材(例えば金(Au))を精密に衝撃し、それを融解させて基板上(例えば、フレキシブル薄膜上)に堆積させ、さらに、高純度高精度の電極アレイがメッキされ得る。もちろん、第1電極アレイ2012および第2電極アレイ2022は、他の方法でフレキシブル薄膜上に作製されてもよく、本願は、これについて限定しない。
【0036】
これにより、第1フレキシブル電極層201、第2フレキシブル電極層202において、フレキシブル電極層が形成されている。
【0037】
図2Bに示すように、第1電極アレイ2012における第1電極、第1スペーサ層204と誘電体層203との間では、可変コンデンサ構造である第1電気二重層コンデンサC1EDLが形成されている。説明を容易にするために、ここでの第1電極は、第1電極アレイ2012におけるいずれかの第1電極を指す。例えば、図2Bにおいて、第1電極アレイ2012における第1電極、第1スペーサ層204と誘電体層203との間では、電極-スペーサ層-誘電体層構造2041が形成されている。電極-スペーサ層-誘電体層構造2041において、第1電極内部の表面電荷は、誘電体層203からイオンを吸着することができる(例えば、図2Bにおける白い丸で示す)。これにより、電極-スペーサ層-誘電体層界面2041において、スペーサ層に近い誘電体層の側には、電荷の数が第1電極内部の表面電荷の数と等しく、かつ符号が逆であるイオン界面層が形成されている。例えば、第1電極に負の電圧が印加された場合、第1スペーサ層204に近い第1電極の側には、負の電荷層が形成されており、第1スペーサ層204に近い誘電体層203の側には、カチオン層が形成されている。第1スペーサ層204の存在により、カチオン層のカチオンと、負電荷層における負電荷とが、いずれも、境界を越えて互いに中和され得ない。いくつかの実施例では、第1スペーサ層204に近い誘電体層203の側には、微細構造体を有してもよい。第1電極に圧力が印加されたとき(押圧状態で)、誘電体層203のイオンゲル表面の微細構造体は、第1スペーサ層204を部分的に貫通して第1電極の電極と接触することができ、これにより、電極-スペーサ層-誘電体層構造2042において、可変コンデンサ構造が形成されている。
【0038】
図2Dは、圧力印加後のフレキシブルコンデンサアレイのコンデンサセルの等価回路図を示す。非押圧状態で、電極-スペーサ層-誘電体層構造2041のピッチが大きくなる。一方、押圧状態で、第1スペーサ層204が存在して、かつ、第1電極に近い誘電体層203の側の微細構造体が異なるマイクロコーン高さを有するため、第1電極と誘電体層203との間の距離が減少される。そして、誘電体層203の一部の領域は、第1電極と互いに接触し、さらに、少なくとも1つの第1接触面を形成する。各第1接触面において、第1マイクロ電気二重層コンデンサが形成されている。図2Dを参照すると、電極-スペーサ層-誘電体層構造2041において、圧力によりN個の接触面が形成されていると仮定し、ここで、i番目の接触面に形成されているマイクロ電気二重層コンデンサは、C1EDL/iである。電極-スペーサ層-誘電体層構造2041では、N個の接触面に形成されているN個のマイクロ電気二重層コンデンサは、並列関係にある。コンデンサの並列式によれば、電極-スペーサ層-誘電体層構造2041における第1電気二重層コンデンサC1EDLの大きさは、各マイクロ電気二重層コンデンサの和になり、すなわち、C1EDL=C1EDL/1+C1EDL/2+C1EDL/3+…C1EDL/i-1+C1EDL/i+C1EDL/i+1…=ΣC1EDL/i(1≦i≦N)である。
【0039】
いくつかの実施例では、第2電極アレイ2022の第2電極と誘電体層203の間では、電極-誘電体層構造(すなわち、第2電気二重層コンデンサC2EDL)が形成されている。説明を容易にするために、ここでの第2電極は、第2電極アレイ2022におけるいずれかの第2電極を指す。例えば、図2Bにおいて、第2電極アレイ2022と誘電体層203との間では、電極-誘電体層構造2042が形成されている。電極-誘電体層構造2042において、第2電極内部の表面電荷は、誘電体層203の電解質からイオンを吸着することができる(例えば、図2Bの白丸で示す)。これにより、電極-誘電体層構造2042において、誘電体層に近い側には、電荷の数が第2電極内部の表面電荷の数と等しく、かつ符号が逆であるイオン界面層が形成されている。例えば、第2電極に正の電圧が印加された場合、電極-誘電体層構造2042において第2電極に近い側には、正の電荷層が形成されており、電極-誘電体層構造2042において誘電体層203に近い側には、アニオン層が形成されている。電極-誘電体層構造2042の存在により、正電荷層の正電荷と、アニオン層におけるアニオンとが、いずれも、境界を越えて互いに中和され得なく、そのため、電極-誘電体層構造2042において、安定した電気二重層コンデンサ(すなわち、第2電気二重層コンデンサC2EDL)が形成されている。この場合、電極-誘電体層構造2042における第2電極は、常に、誘電体層203に接触されているため、第2電気二重層コンデンサC2EDLの容量値は、そのまま変化しない。
【0040】
電極-誘電体層2042において、大きさがC2EDLである電気二重層コンデンサが形成されていると仮定する。図2Dを参照すると、C1EDLとC2EDLは、直列関係になる。したがって、圧力が印加された場合、当該コンデンサセルの電気二重層コンデンサの容量値CEDLと、C1EDLおよびC2EDLとの関係は、1/CEDL=1/C1EDL+1/C2EDLとなる。したがって、当該コンデンサセルの電気二重層コンデンサの容量値CEDLの大きさは、式(1)のようになる。
【0041】
[式1]
EDL=C1EDL・C2EDL/(C1EDL+C2EDL)=ΣC1EDL/i・C2EDL/(ΣC1EDL/i+C2EDL
これにより、電極対と、電極対の中間にある第1スペーサ層204および誘電体層203とは、フレキシブルコンデンサアレイ20内の1つのコンデンサセルを構成し、該コンデンサセルは、イオン型の電気二重層コンデンサである。
【0042】
さらに、第1電極と第2電極との間には、静的コンデンサも形成されている。圧力が印加された後、誘電体層とスペーサ層が押圧されたため、第1電極と第2電極との間の距離が減少される。コンデンサ容量の算出式(2)は次の通りである。
【0043】
[式2]
【0044】
【数1】
ここで、Cは、コンデンサセルの静的コンデンサの容量値を示し、
は、材料の誘電率を示し、Sは、第1電極と第2電極との正対面積を示し、kは、静電力定数を示し、dは、第1電極と第2電極との間の距離を示す。フレキシブルコンデンサアレイ20において、第1電極が第2電極と正対に配置されており、これにより、フレキシブルコンデンサアレイ20の静電場が平行電場に近似され得る。図2Bに示すように、圧力の作用により、第1電極アレイ2012と第2電極アレイ2022との間の距離dが減少される。また、第1スペーサ層204のキャビティ構造の体積が圧力の作用に伴って減少されるため、誘電率
がこれに伴って増加され、さらに、コンデンサセルの静的コンデンサの容量値が増加される。
【0045】
コンデンサセルの静的コンデンサと比べて、当該コンデンサセルの電気二重層コンデンサがはるかに大きいので、センサが圧力を受けた場合、電極と微細構造体との接触面積が増加されるため、総CEDLの大きさは、C1EDLの増加に伴って急激に変化され、すなわち、電極と誘電体層の微細構造体との接触面積の増加に伴って急激に増加され、これにより、高い感度が示されている。
【0046】
したがって、本願の実施例は、フレキシブル電極アレイを直接にフレキシブル薄膜材料の基板上に作製して、フレキシブルイオン型センシング活性材料を誘電体層として使用することにより、力学的センシングシステムのフレキシブル、高センシング密度、および高センシング感度を実現する。さらに、本願の実施例は、また、スペーサ層の設計により、センサの信号ドリフトを大幅に低減して、センサの安定性を向上させる。これにより、本願の実施例のフレキシブルコンデンサアレイは、全体としてフレキシブルを示し、圧力センシングシステムの感度、安定性、および高圧強さに耐える能力を大幅に向上させる。
【0047】
いくつかの実施例では、誘電体層203と第2電極アレイ2022との間には、第2スペーサ層(図示せず)をさらに含んでもよい。このような場合、第2電気二重層コンデンサC2EDLには、第2電極と、第2スペーサ層と、誘電体層203とが含まれる。同様に、押圧状態では、コンデンサセルにおける誘電体層203は、第2スペーサ層を貫通し、第2電極と接触して少なくとも1つの第2接触面を形成し、少なくとも1つの第2接触面における各接触面において、第2マイクロ電気二重層コンデンサが形成され、また、少なくとも1つの第2接触面における少なくとも1つの第2マイクロ電気二重層コンデンサが並列接続されて第2電気二重層コンデンサを形成する。この場合、第2電気二重層コンデンサC2EDLは、可変電気二重層コンデンサになる。この場合、押圧状態では、電極と微細構造体との接触面積が増加され、総CEDLの大きさがC1EDLとC2EDLの増加に伴って急激に変化され、すなわち、第1電極、第2電極と誘電体層の微細構造体との接触面積の増加に伴って急激に増加されるため、高度な感度が示されている。
【0048】
図3Aは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20の第1電極アレイ2012の一部の模式図である。図3Bは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20の第2電極アレイ2022の一部の模式図である。図3Cは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20の構造の模式図である。
【0049】
図3Aおよび図3Bに示す実施例において、第1電極アレイ2012における同一行の複数の第1電極は、行方向に電気的に接続されて、行方向に平行するM個の電極列を形成し、第2電極アレイ2022における同一列の複数の第2電極は、列方向に電気的に接続されて、列方向に平行するN個の電極列を形成する。
【0050】
ここで、第1電極アレイ2012と第2電極アレイ2022とは、対向配置されており、また行方向と列方向とが異なる。いくつかの実施例では、行方向および列方向は、ほぼ垂直である。
【0051】
第1電極および第2電極のうちの少なくとも一方の電極の電極パターンは、円形、長方形または正方形である。例えば、電極パターンは、図2Aおよび図2Bに示す正方形であってもよい。もちろん、電極パターンの寸法は、実際の適用シーンに応じて決定されてもよく、本願は、これに対して限定しない。
【0052】
図3Cは、スマート足型ロボットに使用され得るフレキシブルコンデンサアレイ20の構造の模式図を示す。いくつかの実施例では、スマート足型ロボットにとっては、フレキシブルコンデンサアレイ20の大きさが、5mm×5mmに設計されてもよい。スマート足型ロボットの片足の足底の圧力分布試験用のアレイは、5mm×5mmのフレキシブルコンデンサアレイ20を1つ以上含んでもよい。いくつかの実施例では、図1におけるスマート足型ロボット10の各脚には、少なくとも4つのフレキシブルコンデンサアレイ20が配置されてもよく、4つの脚には、16個のフレキシブルコンデンサアレイ20が必要となる。スマート足型ロボット10の4つの脚のいずれかに対して圧力フィードバック情報を取得することができるので、4つの足からの圧力フィードバックを総合的に分析することができ、これにより、スマート足型ロボットの重心の傾向に対して迅速な応答が実行され、これによって、運動安定性を判定するための基準が提供され得る。したがって、本願の実施例は、足型ロボット(例えば、ロボット犬)の動きのために、定量化された足底圧力分布および大きさというフィードバックを迅速かつ正確に提供することができ、これにより、剛性力センサ(例えば、多軸力センサ)を使用してモーメントを算出する複雑なプロセスが簡素化される。
【0053】
いくつかの実施例では、各フレキシブルコンデンサアレイ20は、4×4個、合計16個のコンデンサセルを含んでもよい。第1電極アレイ2012は、4個のセンサセルを1つの直列電極とし、合計4列となっている。第2電極アレイ2022も、4つの電極が直列接続されている電極列を4列含む。これにより、フレキシブルコンデンサアレイ20は、合計8個の電極引き出し線を有する。最後に、誘電体層203と第1スペーサ層204とを交差させて積層することにより、4×4の標準アレイを含むフレキシブルコンデンサアレイ20が作製され得る。
【0054】
これにより、フレキシブルコンデンサアレイ20が圧力を受けるとき、フレキシブルコンデンサアレイ20は、4×4の電極アレイのうちの1つまたは複数のコンデンサの変化を特定し、さらに、圧力の大きさおよび位置を決定することができる。本願の実施例は、フレキシブル力学的電極アレイをフレキシブル薄膜材料の基板上に直接作製(例えば印刷)して、フレキシブルイオン型センシング活性材料を誘電体層として使用するとともに、電極と誘電体層との間にスペーサ層を配置することにより、フレキシブルコンデンサアレイ20のフレキシブル、高センシング密度、高センシング感度、高安定性、および高圧強さを測定できる能力を実現する。従来技術の多軸力センサと比較して、フレキシブルコンデンサアレイ20は、全ての材料がフレキシブル材料で構成されるため、それがロボットの曲面や凹凸の外面上によりよく接着されて落下しにくく、これにより、優れたコンフォーマル接着性が実現される。図3A図3Cに示すような電極配列方式では、線路の配列が明確であるため、テストの作業が簡素化され(一度に直列接続されている1列の電極全体をテストすることができる)、リード線の配線スペースを低減させて、電極間のクロストークを低減させ、これにより、高密度な電極配列が実現され得る。
【0055】
注意すべきものとして、図3A図3Cは、第1電極アレイ2012および第2電極アレイ2022のうちの一部の電極分布方式の例を模式的に示すが、本願の実施例では、第1電極アレイ2012および第2電極アレイ2022に含まれる電極の数、配列方式や具体的な位置のいずれかが限定されず、フレキシブルコンデンサアレイ20が接触位置および接触圧力の検出が可能であればよい。
【0056】
図4Aは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20の別の構造の模式図である。図4Bは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20の第1電極アレイ2012の平面図である。図4Cは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20の別の構造の模式図である。
【0057】
図4Aおよび図4Cを参照すると、上記の実施例と同様に、第1電極アレイ2012または第2電極アレイ2022の複数の電極のうちの少なくとも1つの電極パターンは、円形、長方形または正方形である。
【0058】
ここで、第1電極アレイにおける複数の第1電極は、互いに電気的に接続され、かつ、1つの共通のリード線に共通に電気的に接続される。例えば、図4Aにおいて、第1電極アレイ2012における各電極は、少なくとも第1電極アレイ2012における他の電極に接続され(「4」字形となる)、第2電極アレイ2022における各第2電極は、個別のリード線を有する。4×4のアレイにとっては、第1電極アレイ2012の16個の電極は、第1電極アレイ2012の他の電極にそれぞれ接続され、第1電極アレイ2012の16個の電極は、合計1つの電極引き出し線を有する。第2電極アレイ2022の各電極は、いずれも、1つの電極引き出し線を使用し、すなわち、フレキシブルコンデンサアレイ20は、合計17個の電極引き出し線を有する(第1電極アレイ2012は、1つの電極引き出し線を有し、第2電極アレイ2022は、16個の電極引き出し線を有する)。
【0059】
図4Cにおいて、第1電極アレイ2012における各第1電極は、個別のリード線を有する。第2電極アレイ2022における各第2電極は、個別のリード線を有する。各電極が個別のリード線を有するので、電極間のクロストークが低減され得る。図4Cにおける各コンデンサセルは、電気的特性が独立しており、アレイの態様に従って、位置の配列および固定が実行される。これにより、フレキシブルコンデンサアレイ20では、電気的信号干渉が大幅に解消される。コンデンサセルごとに少なくとも上下の2つの電極を必要となるため、図4Cの配列方式では、合計32個の電極引き出し線を有する。
【0060】
図4A図4Cに示すような電極配列方式では、第1電極アレイ2012と第2電極アレイ2022において対向配置されている2つの電極と、それらの間の誘電体層およびスペーサ層とは、コンデンサセルを構成し、各コンデンサセルは、それぞれ独立したセンサとして動作することができ、これにより、複雑な空間での力学的検出に有利である。
【0061】
注意すべきものとして、図4A図4Cは、第1電極アレイ2012および第2電極アレイ2022のうちの一部の電極およびリード線の分布形式の例を模式的に示すが、本願の実施例では、第1電極アレイ2012および第2電極アレイ2022に含まれる電極の数、配列方式、リード線の配列や具体的な位置のいずれかが限定されず、フレキシブルコンデンサアレイ20が圧力の位置および大きさの検出が可能であればよい。
【0062】
図5は、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20の製造方法500のフローチャートを示す。本願の実施例の製造方法500は、以下のステップを含む。製造方法500の各ステップ501~506が順次に示されているが、当業者が理解できるように、ステップは、図5に示されているものとは異なる順序で実行されてもよく、またはこれらのステップが同時に実行されてもよい。そのような代替順序での実施例は、重複、交互、中止、再順序付け、増分、準備、補足、同時、逆、または他の変体の順序を含んでもよい。
【0063】
ステップ501では、第1フレキシブル電極層201を配置することができる。第1フレキシブル電極層201には、第1電極アレイ2012が配置されている。ここで、第1電極アレイ2012における複数の第1電極は、M行とN列を含むマトリクス状に配列されており、ここで、M、Nは、正の整数である。例えば、銀ナノワイヤスプレーという方式を使用して、第1フレキシブル電極層201の第1フレキシブル薄膜層2011上に、パターン化された第1電極アレイ2012をスプレーしてもよい。または、電子ビーム蒸着という方式を使用して、第1フレキシブル電極層201の第1フレキシブル薄膜層2011上に、パターン化された第1電極アレイ2012を蒸着してもよい。上記のように、第1フレキシブル薄膜層2011は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーゴム(TPU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ナイロン6(PA6)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、およびポリエーテルスルホン(PES)などのうちの少なくとも1つの材料から構成されてもよい。
【0064】
例えば、作製されたマスク版を使用して、上記の銀ナノワイヤスプレーや電子ビーム蒸着というプロセスを補助することができる。例えば、当該マウス版における電極パターンの各電極は、円形、長方形または正方形であってもよい。
【0065】
ステップ502では、第1スペーサ層204を配置することができ、第1フレキシブル電極層201の上に第1スペーサ層204を配置してもよい。ここで、第1スペーサ層204を製造するステップは、マイクロカラム構造のポリジメチルシロキサン(PDMS)薄膜を製造することで、ポリジメチルシロキサン(PDMS)支持カラムからなるキャビティを形成するステップと、高分子薄膜を製造して、該高分子薄膜をフレーム構造の高分子薄膜に切断することで、高分子薄膜の枠形ブラケットからなるキャビティを形成するステップと、高分子溶液を網状構造のテンプレートに放置し、混合溶液を硬化させて、第1スペーサ層204を得ることで、メッシュ状の高分子薄膜からなるキャビティを形成するステップのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0066】
ステップ503では、誘電体層203を配置することができ、第1スペーサ層204の上に誘電体層203を配置してもよい。誘電体層203は、ポリビニルアルコール-リン酸(PVA-HPO)からなるイオンゲル薄膜である。誘電体層203の製造方法は、以下の通りであり、まず、ポリビニルアルコール(PVA)単量体を水に溶解させる。例えば、水を入れた容器にPVAを加えて、その後、当該容器を水浴で加熱しながら、約90℃で撹拌して、約1~2時間後にPVAを水に完全に溶解させて、無色透明のゲル状溶液を形成することができる。次に、ゲル状溶液にリン酸を加えて、混合溶液を形成する。例えば、PVA水溶液にリン酸(HPO)を加えて、磁性体により常温で約1時間撹拌した後、全体が透明になり、この中で、凝集状物質が少量混入された。このとき、混合溶液(PVA-HPO水溶液)の製造が完了した。次に、この混合溶液を微細構造体のテンプレート上に流し込み、例えば、PVA-HPO水溶液を予め製造された微細構造体のテンプレートの表面に注いで、それを硬化させた後、薄膜を剥がすことができ、ポリビニルアルコール-リン酸(PVA-HPO)のイオンゲル薄膜を得る。最後に、イオンゲル薄膜を所望の大きさに切断して、使用するまでに密封保存する。
【0067】
本願の実施例は、誘電体層203および第1スペーサ層204を製造する順序に対して限定を実行しない。例えば、本願の実施例では、まず第1スペーサ層204を製造し、次に誘電体層203を製造してもよい。
【0068】
ステップ504では、第2フレキシブル電極層202を製造し、第2フレキシブル電極層202上に、第2電極アレイ2022が配置されている。ここで、第2電極アレイ2022における複数の第2電極は、M行とN列を含むマトリクス状に配列されている。同様に、銀ナノワイヤスプレーという方式を使用して、第2フレキシブル電極層202の第2フレキシブル薄膜層2021上に、パターン化された第2電極アレイ2022をスプレーしてもよい。または、電子ビーム蒸着という方式を使用して、第2フレキシブル電極層202の第2フレキシブル薄膜層2021上に、パターン化された第2電極アレイ2022を蒸着してもよい。上記のように、第2フレキシブル薄膜層2021は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーゴム(TPU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ナイロン6(PA6)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、およびポリエーテルスルホン(PES)などのうちの少なくとも1つの材料から構成されてもよい。第2電極アレイ2022の電極パターンは、第1電極アレイ2012の電極パターンと類似してもよい。
【0069】
ステップ505では、第2電極アレイ2022におけるi行j列目の第2電極と、第1電極アレイ2012におけるi行j列目の第1電極とが対向配置されて電極対を形成するように、第2フレキシブル電極層202を誘電体層203の上に配置し、ここで、iは、0以上かつM未満であり、jは、0以上かつN未満である。
【0070】
ステップ506では、第1フレキシブル電極層201、誘電体層203、第1スペーサ層204および第2フレキシブル電極層202をフレキシブルコンデンサアレイ20としてパッケージ化する。
【0071】
例えば、第1フレキシブル電極層201における、誘電体層と接触されていない空き位置(例えば、複数列の直列電極間の間隔)には、両面接着剤などの各種充填材が充填され得る。次に、第2フレキシブル電極層202を誘電体層203の上に配置する。一実施例では、第1フレキシブル電極層201と第2フレキシブル電極層202とは、空き位置での充填材によって接着され、さらに、フレキシブルコンデンサアレイ20のパッケージ化が完成する。
【0072】
ここで、第1電極アレイおと第2電極アレイにおいて対向配置されている各電極対と、電極対の間に介在している第1スペーサ層および誘電体層の一部とは、フレキシブルコンデンサアレイのコンデンサセルを構成し、各コンデンサセルには、直列接続されている第1電気二重層コンデンサと第2電気二重層コンデンサとが含まれ、第1電気二重層コンデンサには、第1電極と、第1スペーサ層と、誘電体層とが含まれる。押圧状態では、コンデンサセルにおける誘電体層は、第1スペーサ層を貫通し、第1電極に接触して少なくとも1つの第1接触面を形成し、少なくとも1つの第1接触面における各接触面において、第1マイクロ電気二重層コンデンサが形成され、また、少なくとも1つの第1接触面での少なくとも1つの第1マイクロ電気二重層コンデンサが並列接続されて第1電気二重層コンデンサを形成する。
【0073】
図6Aは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20の感度の模式図である。図6Bは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20の経時的コンデンサ容量ドリフト曲線である。図6Cは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20のサイクル試験曲線である。図6Dは、本願の実施例によって提供されるフレキシブルコンデンサアレイ20のアレイ図である。
【0074】
図6Aの横座標は、フレキシブルコンデンサアレイ20に印加される圧力(単位は、kPaであり)、縦座標は、コンデンサ容量の変化値である。図6Aにおいて、黒い点は測定値であり、灰色の線はフィッティングラインである。フィッティングライン1は、500kPa~1500kPaの圧力が印加された場合のコンデンサ容量の変化値と圧力との関係を特徴付けるために使用され得る。フィッティングライン2は、2000kPa~4000kPaの圧力が印加された場合のコンデンサ容量の変化値と圧力との関係を特徴付けるために使用され得る。図6Aに示すように、フレキシブルコンデンサアレイ20は、1000kPaの圧力が印加された場合のコンデンサ容量の変化値が約1000kPa×13.41kPa-1=13.41×10であり、3000kPaの圧力が印加された場合、コンデンサ容量の変化値が、約3000kPa×5.54kPa-1=16.62×10である。ここから分かるように、フレキシブルコンデンサアレイ20の感度は、従来のコンデンサアレイよりも著しく高い。
【0075】
図6Bの大図において、横座標は、フレキシブルコンデンサアレイ20における1つのコンデンサセルを押圧する押圧保持時間(押圧保持時間の開始点が横座標上の0.0秒)であり、縦座標は、該コンデンサセルの容量値(開始点が縦座標上の0点)である。図6Bの小図は、当該コンデンサセルを測定する方式を示す。例えば、図6Bの小図の各曲線は、フレキシブルコンデンサアレイ20における1つのコンデンサセルを0秒、0.2秒、0.5秒、1秒、1.5秒、および2秒押圧した後に、その押圧を解除した場合の、当該コンデンサセルの容量値の経時変化の曲線をそれぞれ示す。小図における各曲線のコンデンサ容量の最大値は、大図の各点に対応する縦座標の値である。図6Bに示すように、フレキシブルコンデンサアレイ20を押圧する時間が0.5秒である場合には、フレキシブルコンデンサアレイ20のコンデンサ容量の変化値は、約750pFである。一方、フレキシブルコンデンサアレイ20を押圧する時間が1.5秒である場合にも、フレキシブルコンデンサアレイ20のコンデンサ容量の変化値は、約750pFである。ここから分かるように、フレキシブルコンデンサアレイ20を連続的に押圧しても、フレキシブルコンデンサアレイ20のコンデンサ容量の値変動は、依然として大きくなく、関連技術のフレキシブルコンデンサセンサに比べて、フレキシブルコンデンサアレイ20の安定度は、著しく向上する。
【0076】
図6Cの横座標は、フレキシブルコンデンサアレイを押圧するサイクル回数であり、縦座標は、各サイクルでの最大のコンデンサ容量値である。図6Cは、フレキシブルコンデンサアレイ20を1回~150回押圧する情況を示す。図6Cに示すように、フレキシブルコンデンサアレイ20を繰り返し押圧した場合、フレキシブルコンデンサアレイ20のコンデンサ容量値は、急激な変化なしに常に安定している。
【0077】
図6Dは、フレキシブルコンデンサアレイ20におけるあるコンデンサセルを押圧する情況を示しており、その座標XとYは、コンデンサセルの位置に対応し、垂直座標は、該コンデンサセルの変化量である。押圧位置でのコンデンサセルの容量値は、非押圧位置でのコンデンサセルの容量値よりも著しく高くなる。ここから分かるように、フレキシブルコンデンサアレイ20を力学的センサとして使用することは、力を受けた位置を正確に検出することができる。
【0078】
図7Aは、本願の実施例によって提供されるコンデンサアレイ検出システム70の等価回路図である。図7Bは、本願の実施例によって提供されるコンデンサアレイ検出システム70のアーキテクチャ図である。図7Cは、本願の実施例によって提供されるコンデンサアレイ検出システム70による圧力センシング情報の検出のフローチャートである。図7Dは、本願の実施例によって提供されるコンデンサアレイ検出システム70のクロストーク補償回路の等価回路図である。
【0079】
コンデンサアレイ検出システム70は、励起回路71と、フレキシブルコンデンサアレイ20と、コンデンサ容量検出回路72と、コンデンサ選択回路73とを含む。
【0080】
コンデンサ選択回路73は、フレキシブルコンデンサアレイ20における少なくとも1つのコンデンサセルをゲーティングするように構成される。いくつかの実施例では、コンデンサ選択回路73は、スイッチ回路であり、例えば、図7Aにおけるコンデンサ選択回路は、スイッチと等価であり得る。
【0081】
励起回路71は、コンデンサ選択回路の制御下で、フレキシブルコンデンサアレイの、第1電極アレイにおける少なくとも1つの電極リード線および第2電極アレイにおける少なくとも1つの電極リード線に励起信号を出力するように構成される。図7Aにおいて、励起回路71は、交流電源であってもよく、パルス信号源であってもよい。コンデンサ容量を検出する過程では、アニオンとカチオンが電極間を移動するため、コンデンサ容量値の大きさは、励起周波数と相関関係があり、励起周波数が高いほど、コンデンサの容量値は小さくなり安定しているが、イオン特性は悪くなる。そのため、異なる励起周波数では、コンデンサセルの応答特性ははっきりと異なっている可能性がある。いくつかの実施例では、励起回路71の周波数は、10Hzである。
【0082】
例えば、図4Cに示す各電極の個別のリード線の実施例にとっては、第1フレキシブル電極層1012における電極Aが、励起回路71の一端に接続され得て、第2フレキシブル電極層1022における、電極Aと正対する電極Bが、励起回路71の他端に接続され得る。フレキシブルコンデンサアレイ20における電極Aと電極Bとが重なる領域は、図7AのコンデンサCと等価であり得る。残りのリード線は、抵抗Rと等価であり得る。
【0083】
コンデンサ容量検出回路72は、少なくとも1つのコンデンサセルの容量値を検出するように構成される。いくつかの実施例では、コンデンサ容量検出回路72は、例えば図7のサンプリング抵抗Rsampleによって構成され得る。図7Aに示すように、励起回路71、フレキシブルコンデンサアレイ20、およびコンデンサ容量検出回路72は、1つのループを構成する。外力が印加されると、コンデンサCの容量値が変化する。さらに、サンプリング抵抗Rsampleの両端の電圧が変化する。サンプリング抵抗Rsampleの両端の電圧は、検出されたコンデンサセルの容量値に対応することができ、両者の対応関係によって、検出されたコンデンサセルの容量値を取得することができる。コンデンサセルの容量値は、抵抗Rsampleの両端の電圧を測定することにより測定されるが、当業者が理解できるように、コンデンサセルの容量値は、他の方式により測定され得て、本願は、これに対して限定を実行しない。
【0084】
また、コンデンサ容量検出回路72は、少なくとも1つのコンデンサセルの容量値を信号プロセッサ(図示せず)に出力することもできる。信号プロセッサは、少なくとも1つのコンデンサセルの容量値を圧力の大きさおよび位置に変換するように構成される。信号プロセッサは、コンデンサ容量値をアナログ信号に変換することができるアナログ信号プロセッサとして実現されてもよく、または、コンデンサ容量検出回路72は、コンデンサ容量値をデジタル信号に変換することができるデータ信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などとして実現されてもよいし、本明細書の実施例は、信号プロセッサの実現方式に対して限定を実行しない。
【0085】
また、図3Cに記載の電極アレイについても、第1電極アレイにおける電極が第1方向に直列接続される一方、第2電極アレイにおける電極が第2方向に直列接続されるため、コンデンサ選択回路73は、電極アレイに対して行列の走査を行うマルチプレクサを含み得ており、該マルチプレクサは、一端が励起回路71の一端に接続される。例えば、第1電極アレイ2012における各列の直列電極の一端は、マルチプレクサの一端に連結されてもよく、他端は、宙吊り状態であってもよい。第2電極アレイ2022における各列の直列電極の一端は、励起回路71の他端に連結されてもよく、他端は宙吊り状態であってもよい。また例えば、第1電極アレイ2012における各列の直列電極の両端は、いずれも、マルチプレクサに連結される。第2電極アレイ2022における各列の直列電極の両端は、いずれも、コンデンサ容量検出回路72に連結される。さらに例えば、第1電極アレイ2012における各列の直列電極の両端は、励起回路71の両端にそれぞれ連結され、第2電極アレイ2022における各列の直列電極の両端は、コンデンサ容量検出回路72に連結される。本願は、図3Cに記載の電極アレイに対して行列の走査を行う方式について限定を実行しない。
【0086】
いくつかの実施例では、コンデンサ選択回路73は、第1電極アレイ2012における直列電極のうちの1つを周期的にゲーティングする。第1電極アレイ2012において直列接続されている電極A’、A’、…A’によって形成される直列電極が、ある時点でゲーティングされたと仮定する。この時点で、第2電極アレイ2022と該直列電極とが重なる領域にある電極B’、B’…B’と電極A’、A’ …A’とによって形成されるコンデンサが導通されている。電極A’と電極B’とが重なる領域は、図7AにおけるコンデンサCと等価であり得る。電極A’と電極B’のリード線は、1つの抵抗Rと等価であり得る。このとき、合計k個のコンデンサCが導通されている。励起回路71と、k個のコンデンサCのうちのいずれか1つのコンデンサと、コンデンサ容量検出回路72とは、1つのループを構成することができ、このとき、合計k個の導通されたループがある。このとき、電極A’と電極B’とが重なる領域に接触されると、電極A’と電極B’とによって構成されるコンデンサが急激に変化している。さらに、サンプリング抵抗Rsampleの両端の電圧が変化している。サンプリング抵抗Rsampleの両端の電圧は、コンデンサCの容量値に対応することができ、当該電圧に基づいてコンデンサCの容量値を算出することができる。
【0087】
これにより、スマートロボットが運動する過程において、ロボットが物体や人間に接触した後に衝撃力が発生し、フレキシブルコンデンサアレイ20は、そのコンデンサ容量の変化によって衝撃力を検出することができる。電極アレイにおける応答の発生位置から、物体に接触したロボットの位置を判定し、また、コンデンサ容量値の変化量から、衝撃力の大きさを大まかに判定することができる。コンデンサ容量値の変化を分析することにより、ロボットと外界の物体との接触の状況を取得することができ、ロボットの次の動作のために情報を提供することができる。本願の実施例によるコンデンサアレイ検出システムは、ロボットの安全性、ヒューマンマシンインタラクションなどの方面において、巨大な応用価値を有する。
【0088】
注意すべきものとして、図7Aは、コンデンサアレイ検出システム70のある示例を模式的に示すが、本願の実施例のコンデンサアレイ検出システム70の回路接続方式は、フレキシブルコンデンサアレイ20が圧力の検出を実現することができる限り、限定されるものではない。
【0089】
図7Bを参照すると、コンデンサ選択回路73は、MCU(Microcontroller Unit)およびインターフェース回路をさらに含んでもよい。図3C図4Aおよび図4Cに対応するコンデンサアレイに対して、第1電極アレイ2012における電極を制御するのに適したスイッチング回路および第2電極アレイ2022における電極を制御するのに適したスイッチング回路を設計することができ、すなわち、制御可能なスイッチを介して、アレイにおける各コンデンサセルの上下電極への制御可能な接続をそれぞれ実現し、その制御可能なスイッチの制御リード線が、いずれも、MCUのGPIO(General Purpose Input Output)によって制御され、その目的が、アレイにおける各コンデンサセルへの独立したゲーティングやシャットダウンを実現し、同一時刻に、制御可能なスイッチを介して、あるコンデンサセルをゲーティングしてから後段のコンデンサ容量検出回路72にアクセスすることでコンデンサ容量値の測定を行う、ということである。フレキシブルコンデンサアレイ20の全てのコンデンサセルは、いずれも、MCUによって開閉制御される。MCUは、コンデンサセルを順次にオンすることにより、フレキシブルコンデンサアレイ20全体の全コンデンサセルの容量値の検出を走査の方式により実現する。
【0090】
コンデンサ容量検出回路72は、以下のコンデンサ容量の検出方式、即ち、1:既存のコンデンサセンサチップによる検出、2:ハードウェア検出回路の構築による検出(例えば、上述の簡単なサンプリング抵抗という方式、または、オペアンプなどのデバイスを含む他のハードウェア検出回路)、および3:コンデンサ容量値の測定器具による検出(例えばLCRによる検出)などを含むが、これらに限定されるものではない。本願の実施例は、コンデンサ容量検出回路72によるコンデンサ容量値の検出方式について、限定を実行しない。
【0091】
いくつかの実施例では、本願の実施例におけるフレキシブルコンデンサアレイ20の安定性を向上させ、アレイの各コンデンサセルのクロストーク防止能力を向上させるために、コンデンサ容量検出回路72には、クロストーク補償回路がさらに含まれてもよい。当該回路は、制御可能なスイッチとスイッチング回路とによって構成され、スイッチが、同様に、MCUによって制御される。コンデンサアレイは、走査検出を行うとき、まず、処理を行うために検出対象をクロストーク補償回路に供給し、そして、上記の3種類の検出方法によって各セルのコンデンサ容量値を測定する。その後、コンデンサ容量検出モジュールは、検出した、対応するコンデンサセルの容量値を信号プロセッサにアクセスし、後続の信号処理、補償および分析などの作業を行う。本願の実施例によって提供されるコンデンサアレイ検出システムは、本願の実施例のコンデンサアレイが極めて広い測定範囲を実現するとともに、各コンデンサセルに強い安定性および一致性を持たせる、ということを確保する。
【0092】
クロストーク補償回路の等価回路は、図7Dに示すようにしてもよい。いくつかの実施例では、クロストーク補償回路は、コンデンサ容量検出回路72が少なくとも1つのコンデンサセルの少なくとも1つのクロストーク補償値を検出するようにコンデンサ選択回路の制御下で制御するように構成され得る。図7Dに示すように、クロストーク補償回路の端子CaおよびCbは、フレキシブルコンデンサアレイ20の第1電極アレイのリード線と、第2電極アレイのリード線にそれぞれ接続される。例えば、端子Ca、およびCbがアクセスするリード線を、MCUを介して制御することで、ある特定の測定対象となるコンデンサをゲーティングすることができる。また、クロストーク補償回路の端子Ccは、コンデンサ容量値/クロストーク補償値を検出するために、コンデンサ容量検出回路72に接続される。MCUが、ある測定対象となるコンデンサをゲーティングする場合、当該測定対象となるコンデンサと、フレキシブルコンデンサアレイ20のうち、この測定対象となるコンデンサに対して影響を与える他のコンデンサとは、図7Dにおける測定対象となるコンデンサと、クロストークコンデンサ1と、クロストークコンデンサ2とによって構成される等価回路と等価であり得る。MCUは、クロストーク補償回路の4つのスイッチを制御することで、測定対象となるコンデンサ、クロストークコンデンサ1、およびクロストークコンデンサ2の各種の直並列接続での複数組の値を順次に検出することができる。その後、コンデンサ容量算出回路を介して、クロストークコンデンサ1およびクロストークコンデンサ2の各種の直並列接続でのコンデンサ容量値(即ち、クロストーク補償値)を算出することにより、測定対象となるコンデンサの正確なコンデンサ容量値を算出することがきできる。例えば、コンデンサ容量算出回路は、少なくとも1つのクロストーク補償値に基づいて、少なくとも1つのコンデンサセルの容量値を更新するように構成され得る。
【0093】
図7Cを参照すると、コンデンサアレイ検出システム70によるコンデンサ容量値の検出の流れは、以下の通りである。
【0094】
まず、フレキシブルコンデンサアレイ20を圧力センシング検出面に配置することができ、かつ、フレキシブルコンデンサアレイ20における各コンデンサセルは、圧力センシング検出面の1つの圧力センシング検出位置に対応する。例えば、スマートロボットにとっては、圧力センシング検出面は、ロボットアームの少なくとも一部であり得る。圧力センシング検出面上に、上記のフレキシブルコンデンサアレイ20が貼り付けられ、当該フレキシブルコンデンサアレイ20は、上記のコンデンサアレイ検出システム70における他の部品と接続されて、さらに、ロボットの運動中にロボットが物体または人に接触した後に発生された接触圧力を検出することができる。ウェアラブルデバイスにとっては、圧力センシング検出面は、ウェアラブルデバイスの外面であり得る。このデバイスは、装着された後、フレキシブルコンデンサアレイ20を介してタッチデータを収集および分析することができる。
【0095】
そして、コンデンサ選択回路73は、フレキシブルコンデンサアレイ20における各コンデンサセルを順次にゲーティングするように構成される。いくつかの実施例では、コンデンサ選択回路73は、MCUのパラメータを初期化することができ、これにより、当該MCUのパラメータは、フレキシブルコンデンサアレイ20における各コンデンサセルを順次にゲーティングさせることができる。コンデンサ選択回路73は、コンデンサセルをゲーティングする前に、そのそれぞれの制御インターフェース(例えば、GPIO制御インターフェース731)および通信インターフェース732が正常であるかどうかを検出することもできる。コンデンサ選択回路73は、各インターフェースが正常である場合、フレキシブルコンデンサアレイ20におけるコンデンサセルのゲーティングを開始することができる。インターフェースが正常でない場合、MCUの各パラメータを再び初期化することができる。
【0096】
ここで、フレキシブルコンデンサアレイ20におけるコンデンサセルCijをゲーティングすることを例にして説明し、Cijは、フレキシブルコンデンサアレイ20におけるi行j列目のコンデンサセルを示す。プログラムが実行された後、MCUは、コンデンサアレイの上下電極の制御可能なスイッチを制御することでCijをゲーティングし、次に、コンデンサ容量検出モジュールにおけるクロストーク補償回路の制御可能なスイッチを制御することで複数組の回路接続状態でのCijを切り替えることにより、コンデンサセルの少なくとも1つのクロストーク補償値を求める。コンデンサ容量算出回路は、少なくとも1つのクロストーク補償値に基づいて、コンデンサセルの容量値を更新することにより、デカップリングされた後のCijの真の容量値(クロストークによる影響が除去された後の容量値)を算出して補償する。その後、MCUは、列から行への走査方式により、後続の動作のために、コンデンサアレイの全てのコンデンサの容量値を順次に読み出す。コンデンサ容量検出回路72は、また、ロボットの後続処理のために、各コンデンサセルの容量値を圧力センシング検出位置の圧力センシング情報として順次に出力するように構成される。
【0097】
図8は、本願の実施例によって提供されるロボット80の模式図である。ロボット80は、上記のコンデンサアレイ検出システム70を含み、ここで、コンデンサアレイ検出システムにおけるフレキシブルコンデンサアレイは、ロボットの少なくとも一部の圧力センシング検出面に配置されている。
【0098】
ロボット80は、衝撃力検出器と、衝撃摂動決定器と、衝撃摂動防止コントローラとをさらに含む。いくつかの実施例では、衝撃力検出器は、コンデンサアレイ検出システム70によって検出された少なくとも1つのコンデンサセルの容量値に基づいて、衝撃力検出値および衝撃力発生位置を算出するように構成される。いくつかの実施例では、コンデンサアレイ検出システム70は、フレキシブルコンデンサアレイにおける各コンデンサセルの容量値を周期的に検出して、そのコンデンサ容量値を衝撃検出器に入力することができる。
【0099】
いくつかの実施例では、衝撃摂動決定器は、衝撃力検出器による衝撃力検出値および衝撃力発生位置に基づいて、衝撃摂動を決定するように構成される。いくつかの実施例では、衝撃力検出器は、衝撃力検出値および衝撃力発生位置によってロボットの現在のZMP(ゼロモーメント点)の安定マージンを算出して、ロボットが外部からの摂動を受けたかどうかを判定する根拠とすることができ、これにより、摂動の大きさ、方向および作用時間に対する定量的高速検出が実現され、そして、後続の制御ステップのためにトリガ条件および算出基礎が提供される。
【0100】
いくつかの実施例では、衝撃摂動抵抗コントローラは、決定された衝撃摂動に応答して、ロボットの動作パラメータを調整することで、ロボットが衝撃摂動に抵抗するように制御するように構成される。ロボットの動作パラメータには、ロボットのステップ踏み出すおよび着地点を制御するパラメータが含まれる。衝撃摂動決定器が摂動の発生を判定した場合、衝撃摂動防止コントローラは、衝撃力検出値および衝撃力発生位置に基づいて、ロボットの着地点を調整し、ステップを踏み出すことによりロボットの全身の安定性を保持し、また、衝撃摂動抵抗コントローラは、衝撃力検出値および衝撃力発生位置に基づいて、着地衝撃吸収制御を行い、足底が柔軟に着地することを実現し、着地時の衝撃を減少する。
【0101】
いくつかの実施例では、ロボットが足型ロボットである場合、フレキシブルコンデンサアレイ20は、足型ロボットの足部の底面の圧力センシング検出面上に敷設され得る。いくつかの実施例では、図1における足型ロボット10の各脚には、少なくとも4つのフレキシブルコンデンサアレイ20が配置されてもよく、4つの脚には、16個のフレキシブルコンデンサアレイ20が必要となる。足型ロボット10の4つの脚のいずれかに対して圧力フィードバック情報を取得することができるので、4つの足からの圧力フィードバックを総合的に分析することができ、これにより、スマート足型ロボットの重心の傾向に対して迅速な応答が実行され、これによって、運動安定性を判定するための基準が提供され得る。
【0102】
いくつかの実施例では、衝撃摂動抵抗コントローラがロボットの動作パラメータを調整することは、さらに、足型ロボットの着地点または着地角度を調整することを含む。衝撃摂動抵抗コントローラは、計画軌跡生成器、調整軌跡生成器、および足関節角度生成器をさらに含む。このうち、計画軌跡生成器は、足型ロボットの重心軌跡および着地点軌跡を計画するように構成される。計画軌跡生成器は、ロボットが常にバランスを取って安定性を維持するように、ZMP安定マージンによって、足型ロボットの走行軌跡を計画することができる。計画軌跡生成器は、また、足型ロボットの着地点(または足首関節)の運動軌跡を計画することもできる。調整軌跡生成器は、衝撃摂動決定器により衝撃摂動が発生したと判定された場合、該当衝撃摂動に基づいて、足型ロボットの走行状態をさらに調整することができる。例えば、調整軌跡生成器は、足型ロボットの重心軌跡および衝撃力検出値に基づいて、足型ロボットの重心軌跡を調整し、および、足型ロボットの着地点軌跡に基づいて、足型ロボットの着地点軌跡を調整するように構成され得る。いくつかの実施例では、調整軌跡生成器は、元の計画軌跡を再び調整した後、内蔵の確率的線形二次調整器(SLQP:Linear Quadratic Regulator)を使用して、重心軌跡の生成を制御することができる。最後に、ロボット80は、足関節角度生成器を使用して、足型ロボットの走行バランスを制御することができる。いくつかの実施例では、足関節角度生成器は、調整された重心軌跡および調整された着地点軌跡に基づいて、足型ロボットの足関節角度を調整することにより、足型ロボットの着地点または着地角度を調整するように構成され得る。足関節角度生成器は、逆運動学を通じて、関節角度時系列を求め、また、着地衝撃吸収制御は、算出された関節角度に対してオンライン補償を行い、最終的に、足型ロボットは、外部からの摂動を受けた時にも、安定した歩行を維持することができる。
【0103】
本願の実施例は、足型ロボット(例えば、ロボット犬)の動きのために、定量化された足底圧力分布および大きさというフィードバックを迅速かつ正確に提供することができ、これにより、剛性力センサ(例えば、多軸力センサ)を使用してモーメントを算出するような従来の複雑なプロセスが簡素化される。
【0104】
本願の実施例は、フレキシブルコンデンサアレイおよびその製造方法、コンデンサアレイ検出システムならびにロボットを提供し、これにより、フレキシブルコンデンサアレイの全体は、フレキシブルを示して、圧力センシングシステムの感度、安定性、および高圧強さに耐える能力を大幅に向上させる。
【0105】
次に、次の点について説明する必要がある。
【0106】
(1)本願の実施例の図面は、本願の実施例に係る構造のみに関し、その他の構造については、通常の設計を参照することができる。
【0107】
(2)明確にするために、本願の実施例を説明するための図面では、層または領域の厚さは、拡大または縮小され、すなわち、これらの図面は、実際の割合で描かれるものではない。理解できるものとして、層、膜、領域、または基板のような要素が、別の要素「上」または「下」に位置すると記載される場合、該要素は、別の要素「上」または「下」に「直接」位置してもよく、または中間要素が存在してもよい。
【0108】
(3)矛盾しない限り、本願の実施例における特徴は、互いに組み合わせて新しい実施例を得ることができる。
【0109】
以上の記載は、本願の例示的な実施形態にすぎず、本願の特許範囲を制限するためのものではなく、本願の特許範囲は、添付された請求の範囲により決定されている。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8