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特許7478854蓄電管理装置、蓄電装置および蓄電部の管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】蓄電管理装置、蓄電装置および蓄電部の管理方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240425BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240425BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/02 H
H02J7/00 Y
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022579286
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2021004518
(87)【国際公開番号】W WO2022168295
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 健志
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-119578(JP,A)
【文献】特開2013-135486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電素子が直列に接続された蓄電部を管理するための蓄電管理装置であって、
前記複数の蓄電素子のそれぞれの電圧を検出する電圧検出部と、
前記蓄電部に直列に接続され、前記蓄電部に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記複数の蓄電素子のそれぞれに対応して設けられた複数のトランスであって、それぞれ、各前記蓄電素子に対して並列に接続された第1の巻き線と、前記蓄電部と前記電流検出部とに対して並列に接続された第2の巻き線とを有する、複数のトランスと、前記複数の蓄電素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチ部であって、それぞれ、前記第1の巻き線に直列に接続された第1のスイッチと前記第2の巻き線に直列に接続された第2のスイッチとの少なくとも一方を有する、複数のスイッチ部と、を含み、前記複数の蓄電素子間の電圧差を小さくする電圧均等化回路と、
前記複数の蓄電素子の中から一部の蓄電素子を対象蓄電素子として選択して、前記対象蓄電素子に対応する前記スイッチ部にオン・オフ動作をさせるオン・オフ制御部と、
前記スイッチ部のオン・オフ動作時における前記電流検出部の検出結果が、前記電圧検出部の検出結果に基づく前記対象蓄電素子の電圧と前記蓄電部の電圧とに対応する正常電流範囲外であることを必要条件として含む第1の異常判断条件が満たされた場合に、前記電流検出部の異常検出に対応した処理を行う第1の異常時処理部と、
を備える、蓄電管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電管理装置であって、
前記第1の異常判断条件は、前記スイッチ部のオン・オフ動作に伴う前記対象蓄電素子の電圧変化が有り、かつ、前記電流検出部の検出結果が前記正常電流範囲外であることを必要条件として含む、
蓄電管理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電管理装置であって、
さらに、前記スイッチ部のオン・オフ動作に伴う前記対象蓄電素子の電圧変化量が正常電圧範囲外であることを必要条件として含む第2の異常判断条件が満たされた場合に、前記電圧均等化回路の異常検出に対応した処理を行う第2の異常時処理部を備える、
蓄電管理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の蓄電管理装置であって、
前記オン・オフ制御部は、前記複数の蓄電素子の内、電圧が前記蓄電部の電圧を前記蓄電素子の数で除算した平均電圧値を含む基準電圧範囲外である前記蓄電素子を、前記対象蓄電素子として選択する、
蓄電管理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の蓄電管理装置であって、
さらに、前記複数のスイッチ部の同じスイッチ部を複数回オン・オフ動作させたときにおける前記電流検出部の異常検出結果が異なることと、少なくとも2つ以上のスイッチ部を順次オン・オフ動作時させたときにおける前記電流検出部の異常検出結果が異なることとの少なくとも1つを必要条件として含む第3の異常判断条件が満たされた場合に、前記電圧均等化回路の異常検出に対応した処理を行う第3の異常時処理部を備える、
蓄電管理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の蓄電管理装置であって、
前記オン・オフ制御部は、前記対象蓄電素子が互いに隣り合う第1の蓄電素子と第2の蓄電素子とを含む場合、前記第1の蓄電素子に対応する前記スイッチ部のオン・オフ動作と、前記第2の蓄電素子に対応する前記スイッチ部のオン・オフ動作とを互いに異なる時期に行う、
蓄電管理装置。
【請求項7】
複数の蓄電素子が直列に接続された蓄電部と、
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の蓄電管理装置と、備える、蓄電装置。
【請求項8】
複数の蓄電素子が直列に接続された蓄電部と、
前記複数の蓄電素子のそれぞれの電圧を検出する電圧検出部と、
前記蓄電部に直列に接続され、前記蓄電部に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記複数の蓄電素子のそれぞれに対応して設けられた複数のトランスであって、それぞれ、各前記蓄電素子に対して並列に接続された第1の巻き線と、前記蓄電部と前記電流検出部とに対して並列に接続された第2の巻き線とを有する、複数のトランスと、前記複数の蓄電素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチ部であって、それぞれ、前記第1の巻き線に直列に接続された第1のスイッチと前記第2の巻き線に直列に接続された第2のスイッチとの少なくとも一方を有する、複数のスイッチ部と、を含み、前記複数の蓄電素子間の電圧差を小さくする電圧均等化回路と、を備える蓄電部の管理方法であって、
前記複数の蓄電素子の中から一部の蓄電素子を対象蓄電素子として選択して、前記対象蓄電素子に対応する前記スイッチ部にオン・オフ動作をさせる工程と、
前記スイッチ部のオン・オフ動作時における前記電流検出部の検出結果が、前記電圧検出部の検出結果に基づく前記対象蓄電素子の電圧と前記蓄電部の電圧とに対応する正常電流範囲外であることを必要条件として含む第1の異常判断条件が満たされた場合に、前記電流検出部の異常検出に対応した処理を行う工程と、
を含む、蓄電部の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電管理装置、蓄電装置および蓄電部の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、蓄電部(例えば組電池)と電流検出部とを備える蓄電装置(例えば電池パック)が知られている。電流検出部は、蓄電部に直列に接続され、蓄電部に流れる電流を検出する。電流検出部によって検出される電流は、例えば、蓄電部の充放電状態の把握等に利用される。ここで、電流検出部は、例えば、電流検出部が備える内部回路のショートやオープン、部品の故障などに起因して、蓄電部に流れる電流を正常に検出できなくなることがある。
【0003】
そこで、従来から、電流検出部が正常であるか異常であるかを判断する機能を備える蓄電装置がある。この従来の蓄電装置では、互いに直列に接続された分圧抵抗とリレーとを備え、それらの分圧抵抗およびリレーが、蓄電部および電流検出部に並列に接続されている。リレーがオン状態とされると、蓄電部と分圧抵抗との両方に電流が流れる。そのときにおける分圧抵抗の分圧電圧と電流検出部の検出結果とに基づき、電流検出部の異常の有無が判断される(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-29236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の蓄電装置では、リレーがオフ状態からオン状態に移行したときの電流変化を精度よく検出するためには、分圧抵抗の抵抗値をある程度小さい値に設定して蓄電部および電流検出部に流れる電流を大きくする必要がある。しかし、蓄電部および電流検出部に流れる電流が大きい値に設定される程、分圧抵抗による電力損失が増大し、その結果、蓄電装置の残容量が低下することなる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することが可能な蓄電管理装置、蓄電装置、および、蓄電部の管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の蓄電管理装置は、複数の蓄電素子が直列に接続された蓄電部を管理するための蓄電管理装置であって、前記複数の蓄電素子のそれぞれの電圧を検出する電圧検出部と、前記蓄電部に直列に接続され、前記蓄電部に流れる電流を検出する電流検出部と、前記複数の蓄電素子のそれぞれに対応して設けられた複数のトランスであって、それぞれ、各前記蓄電素子に対して並列に接続された第1の巻き線と、前記蓄電部と前記電流検出部とに対して並列に接続された第2の巻き線とを有する、複数のトランスと、前記複数の蓄電素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチ部であって、それぞれ、前記第1の巻き線に直列に接続された第1のスイッチと前記第2の巻き線に直列に接続された第2のスイッチとの少なくとも一方を有する、複数のスイッチ部と、を含み、前記複数の蓄電素子間の電圧差を小さくする電圧均等化回路と、前記複数の蓄電素子の中から一部の蓄電素子を対象蓄電素子として選択して、前記対象蓄電素子に対応する前記スイッチ部にオン・オフ動作をさせるオン・オフ制御部と、前記スイッチ部のオン・オフ動作時における前記電流検出部の検出結果が、前記電圧検出部の検出結果に基づく前記対象蓄電素子の電圧と前記蓄電部の電圧とに対応する正常電流範囲外であることを必要条件として含む第1の異常判断条件が満たされた場合に、前記電流検出部の異常検出に対応した処理を行う第1の異常時処理部と、を備える。
【0008】
本蓄電管理装置では、電圧均等化回路を構成する一部のスイッチ部がオン・オフ動作されると、そのスイッチ部に対応する対象蓄電素子と蓄電部との間の電流の授受が行われる。その結果、蓄電部に流れる電流が変化する。この際、電流検出部が正常であれば、電流検出部の検出結果は、電圧検出部の検出結果に基づく対象蓄電素子の電圧と蓄電部の電圧とに対応する正常電流範囲内となり、電流検出部が異常であれば、電流検出部の検出結果は、正常電流範囲外になる。本発明者は、このような電圧均等化回路のオン・オフ動作に伴う対象蓄電素子の電圧変化と電流検出部の検出結果とに着目することにより、電流検出部の異常の有無を判断する、ことを新たに見出した。これにより、本蓄電管理装置によれば、電流検出部の異常の有無の判断のための専用の電流経路を別途設けることなく、電圧均等化回路を利用して電流検出部の異常の有無を判断することができる。
【0009】
上記蓄電管理装置において、前記第1の異常判断条件は、前記スイッチ部のオン・オフ動作に伴う前記対象蓄電素子の電圧変化が有り、かつ、前記電流検出部の検出結果が前記正常電流範囲外であることを必要条件として含む構成としてもよい。本蓄電管理装置によれば、電圧均等化回路が異常である場合に、誤って電流検出部が異常と判断されることを抑制できる。
【0010】
上記蓄電管理装置において、さらに、前記スイッチ部のオン・オフ動作に伴う前記対象蓄電素子の電圧変化量が正常電圧範囲外であることを必要条件として含む第2の異常判断条件が満たされた場合に、前記電圧均等化回路の異常検出に対応した処理を行う第2の異常時処理部を備える構成としてもよい。本蓄電管理装置によれば、電流検出部の異常検出に加えて、電圧均等化回路の異常検出をも行うことができる。
【0011】
上記蓄電管理装置において、前記オン・オフ制御部は、前記複数の蓄電素子の内、電圧が前記蓄電部の電圧を前記蓄電素子の数で除算した平均電圧値を含む基準電圧範囲外である前記蓄電素子を、前記対象蓄電素子として選択する構成としてもよい。本蓄電管理装置では、電圧が基準電圧範囲外となり、電圧均等化処理が必要な蓄電素子に対応するスイッチ部をオン・オフ動作させて、電流検出部の異常の有無が判断される。これにより、本蓄電管理装置によれば、電圧が基準電圧範囲内であるか否かに関係なく対象蓄電素子を選択する構成に比べて、電圧均等化処理では本来不要なスイッチ部のオン・オフ動作を抑制しつつ、電圧均等化回路を利用して電流検出部の異常の有無を判断することができる。
【0012】
上記蓄電管理装置において、さらに、前記複数のスイッチ部の同じスイッチ部を複数回オン・オフ動作させたときにおける前記電流検出部の異常検出結果が異なることと、少なくとも2つ以上のスイッチ部を順次オン・オフ動作時させたときにおける前記電流検出部の異常検出結果が異なることとの少なくとも1つを必要条件として含む第3の異常判断条件が満たされた場合に、前記電圧均等化回路の異常検出に対応した処理を行う第3の異常時処理部を備える構成としてもよい。本蓄電管理装置によれば、電流検出部の異常検出に加えて、電圧均等化回路の異常検出をも行うことができる。
【0013】
上記蓄電管理装置において、前記オン・オフ制御部は、前記対象蓄電素子が互いに隣り合う第1の蓄電素子と第2の蓄電素子とを含む場合、前記第1の蓄電素子に対応する前記スイッチ部のオン・オフ動作と、前記第2の蓄電素子に対応する前記スイッチ部のオン・オフ動作とを互いに異なる時期に行う構成としてもよい。例えば、互いに隣り合う蓄電素子に対応するスイッチ部が同時期にオン・オフ動作されると、共有経路における電圧降下が互いに打ち消されることによって、各蓄電素子の電圧を精度よく測定できず、その結果、電流検出部の異常の有無を精度よく判断することができなくなるおそれがある。これに対して、本蓄電管理装置によれば、互いに隣り合う蓄電素子(第1の蓄電素子、第2の蓄電素子)に対応するスイッチ部のオン・オフ動作が互いに異なる時期に行われるため、電流検出部の異常の有無判断の精度低下を抑制することができる。
【0014】
本発明の蓄電装置において、複数の蓄電素子が直列に接続された蓄電部と、上記のいずれか一つの蓄電管理装置と、備える構成である。本蓄電装置によれば、電圧均等化回路を利用して電流検出部の異常の有無を判断することができる。
【0015】
本発明の蓄電部の管理方法は、複数の蓄電素子が直列に接続された蓄電部と、前記複数の蓄電素子のそれぞれの電圧を検出する電圧検出部と、前記蓄電部に直列に接続され、前記蓄電部に流れる電流を検出する電流検出部と、前記複数の蓄電素子のそれぞれに対応して設けられた複数のトランスであって、それぞれ、各前記蓄電素子に対して並列に接続された第1の巻き線と、前記蓄電部と前記電流検出部とに対して並列に接続された第2の巻き線とを有する、複数のトランスと、前記複数の蓄電素子のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチ部であって、それぞれ、前記第1の巻き線に直列に接続された第1のスイッチと前記第2の巻き線に直列に接続された第2のスイッチとの少なくとも一方を有する、複数のスイッチ部と、を含み、前記複数の蓄電素子間の電圧差を小さくする電圧均等化回路と、を備える蓄電部の管理方法であって、前記複数の蓄電素子の中から一部の蓄電素子を対象蓄電素子として選択して、前記対象蓄電素子に対応する前記スイッチ部にオン・オフ動作をさせる工程と、前記スイッチ部のオン・オフ動作時における前記電流検出部の検出結果が、前記電圧検出部の検出結果に基づく前記対象蓄電素子の電圧と前記蓄電部の電圧とに対応する正常電流範囲外であることを必要条件として含む第1の異常判断条件が満たされた場合に、前記電流検出部の異常検出に対応した処理を行う工程と、を含む。本蓄電部の管理方法によれば、電圧均等化回路を利用して電流検出部の異常の有無を判断することができる。
【0016】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、蓄電管理装置、蓄電管理装置と蓄電部とを備える蓄電装置、それらの管理方法、それらの方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態における電池装置100の構成を概略的に示す説明図
図2】複数の蓄電池12のうち、1つの蓄電池12aを対象蓄電池12xとした場合の定電流制御の動作を概略的に示す説明図
図3】正常電流範囲テーブルT1の一例を示す説明図
図4】実施形態の電池装置100において実行される異常判断処理を示すフローチャート
図5】実施形態の電池装置100において実行されるオン・オフ制御処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.実施形態:
A-1.電池装置100の構成:
図1は、本実施形態における電池装置100の構成を概略的に示す説明図である。電池装置100は、組電池10と、蓄電管理装置20とを備える。
【0019】
組電池10は、複数の蓄電池12が直列に接続された構成を有している。本実施形態では、組電池10は、4つの蓄電池12(12a,12b,12c,12d)から構成されている。蓄電池12としては、例えばリン酸鉄系のリチウムイオン電池が挙げられる。組電池10は、プラス端子42およびマイナス端子44を介して、図示しない負荷および外部電源に接続される。組電池10は、蓄電部の一例であり、蓄電池12は、蓄電素子の一例である。
【0020】
蓄電管理装置20は、組電池10を含む電池装置100を管理するための装置である。蓄電管理装置20は、電圧検出部22と、電流検出部24と、監視部28と、電圧均等化回路30と、ラインスイッチ40と、制御部60と、記録部72と、履歴部74と、インターフェース(I/F)部76とを備えている。電池装置100は、蓄電装置の一例である。
【0021】
電圧検出部22は、各蓄電池12に対して1つ設けられている。各電圧検出部22は、各蓄電池12に対して並列に接続され、各蓄電池12の電圧を検出して、電圧検出値を示す信号を監視部28に向けて出力する。電流検出部24は、組電池10に対して直列に接続されている。電流検出部24は、組電池10に流れる電流を検出して、電流検出値を示す信号を監視部28に向けて出力する。監視部28は、電圧検出部22および電流検出部24から受け取った信号に基づき、各蓄電池12の電圧および組電池10に流れる電流を示す信号を制御部60に向けて出力する。
【0022】
電圧均等化回路30は、組電池10を構成する複数の蓄電池12の間で電荷を移動させることにより、複数の蓄電池12の間の電圧の差を小さくするための定電流制御を実行する回路である。すなわち、電圧均等化回路30は、アクティブ方式の電圧均等化を実行するための回路である。電圧均等化回路30は、互いに隣り合う2つの蓄電池12の組に限らず、任意の蓄電池12の組合せについて電圧均等化を実行できるように構成されている。
【0023】
すなわち、電圧均等化回路30は、各蓄電池12に対して1つ設けられたトランス39を備える。各トランス39は、第1の巻き線39iと、第2の巻き線39jとを有する。各トランス39の第1の巻き線39iは、対応する蓄電池12に対して並列に接続されている。また、各トランス39の第2の巻き線39jは、組電池10および電流検出部24に並列に接続されている。また、電圧均等化回路30は、各蓄電池12に対して1つ設けられた第1のスイッチ37および第2のスイッチ38を備える。各第1のスイッチ37は、各蓄電池12に対して設けられたトランス39の第1の巻き線39iに直列に接続されており、各第2のスイッチ38は、各蓄電池12に対して設けられたトランス39の第2の巻き線39jに直列に接続されている。制御部60は、所定の変調方法(例えば、パルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM))によって各第1のスイッチ37および各第2のスイッチ38のオン・オフ動作を制御して定電流制御を行うことにより、トランス39を介して各蓄電池12と組電池10との間で電荷が移動する。第1のスイッチ37および第2のスイッチ38としては、例えば、MOSFETやリレーが用いられる。以下、第1のスイッチ37および第2のスイッチ38をまとめて「スイッチ部」ということがある。
【0024】
なお、本実施形態では、各蓄電池12と電圧均等化回路30とがワイヤ36を介して接続されている。具体的には、各電圧検出部22の一端と各トランス39の第1の巻き線39iとが接続されており、その接続点が、ワイヤ36を介して蓄電池12の正極に接続されている。また、各電圧検出部22の他端と第1のスイッチ37とが接続されており、その接続点が、ワイヤ36を介して蓄電池12の負極に接続されている。互いに隣り合う蓄電池12の電荷の移動では共通のワイヤ36が利用され、電流が打ち消し合うことになる。
【0025】
このような構成の電圧均等化回路30によれば、複数の蓄電池12の間で電荷を移動させることにより、複数の蓄電池12のそれぞれの電圧の差を小さくするための定電流制御を、各蓄電池12に対して個別に実行可能である。すなわち、複数の蓄電池12のうち、電圧検出部22が検出した複数の蓄電池12のそれぞれの電圧と、複数の蓄電池12の平均電圧Vaveと、の差が所定値以上である少なくとも1つの蓄電池12を対象蓄電池12xとして特定し、対象蓄電池12xを対象として、対象蓄電池12xの電圧を平均電圧Vaveに近付けるような定電流制御を実行可能である。
【0026】
図2は、複数の蓄電池12のうち、1つの蓄電池12aを対象蓄電池12xとした場合の定電流制御の動作を概略的に示す説明図である。図2のA欄には、対象蓄電池12xである蓄電池12aの電圧Vaが各蓄電池12の平均電圧Vaveより高く、第1のスイッチ37をオン・オフ動作させて対象蓄電池12xから他の蓄電池12に電荷を移動させることによって、電圧均等化を行っている状態が示されている。また、図2のB欄には、対象蓄電池12xである蓄電池12aの電圧Vaが各蓄電池12の平均電圧Vaveより低く、第2のスイッチ38をオン・オフ動作させて他の蓄電池12から対象蓄電池12xに電荷を移動させることによって、電圧均等化を行っている状態が示されている。
【0027】
ラインスイッチ40(図1)は、電流検出部24とマイナス端子44との間に設置されている。ラインスイッチ40は、制御部60によってオン・オフ制御されることにより、組電池10と負荷および外部電源との間の接続を開閉する。
【0028】
制御部60は、例えば、CPU、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイス(Field Programmable Gate Array(FPGA)、Programmable Logic Device(PLD)等)を用いて構成され、蓄電管理装置20の動作を制御する。制御部60は、オン・オフ制御部62と、電流検出部異常時処理部64と、均等化回路異常時処理部66としての機能を有する。これら各部の機能については、後述の異常判断処理の説明に合わせて説明する。電流検出部異常時処理部64は、第1の異常時処理部の一例であり、均等化回路異常時処理部66は、第2の異常時処理部および第3の異常時処理部の一例である。
【0029】
記録部72は、例えばROMやRAM、ハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラムやデータを記憶したり、各種の処理を実行する際の作業領域やデータの記憶領域として利用されたりする。例えば、記録部72には、後述する異常判断処理を実行するためのコンピュータプログラムが格納されている。該コンピュータプログラムは、例えば、CD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(不図示)に格納された状態で提供され、電池装置100にインストールすることにより記録部72に格納される。
【0030】
また、記録部72には、正常電流範囲テーブルT1が格納されている。正常電流範囲テーブルT1は、蓄電池12と組電池10との電圧関係に基づき組電池10に流れる電流値の正常範囲の特定に用いられるテーブルである。図3は、正常電流範囲テーブルT1の一例を示す説明図である。正常電流範囲テーブルT1は、蓄電池12の端子電圧(セル電圧)と、組電池10の電圧(組電池電圧)と、正常電流範囲とを関連付けるテーブルである。正常電流範囲は、電流検出部24および電圧均等化回路30が正常に動作可能な状態における蓄電池12の端子電圧と組電池10の電圧との対応関係によって定まる、組電池10に流れる電流値の数値範囲である。なお、図3では、正常電流範囲を、l1,l2,・・・などと表示しているが、正常電流範囲テーブルT1には、実際には組電池10に流れる電流の数値範囲が規定されている。
【0031】
履歴部74は、例えばROMやRAM、ハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、電池装置100に関する各種履歴を記録する。このような履歴としては、例えば、電流検出部異常時処理部64および均等化回路異常時処理部66における各異常検出結果が挙げられる。インターフェース部76は、有線または無線により他の装置との通信を行う。例えば、インターフェース部76を介した他の装置との通信により、履歴部74に記録された履歴が更新される。
【0032】
A-2.異常判断処理:
次に、本実施形態の電池装置100において蓄電管理装置20により実行される異常判断処理について説明する。図4は、本実施形態の電池装置100において実行される異常判断処理を示すフローチャートであり、図5は、本実施形態の電池装置100において実行されるオン・オフ制御処理を示すフローチャートである。異常判断処理は、電流検出部24および電圧均等化回路30が正常であるか異常であるかを判断し、その判断結果に応じた異常時処理を実行するための処理である。オン・オフ制御処理は、電流検出部24および電圧均等化回路30が正常であるか異常であるかを判断するために、選択された対象蓄電池12yに対応するスイッチ部(第1のスイッチ37、第2のスイッチ38)をオン・オフ動作させるための処理である。異常判断処理は、例えば、電池装置100の起動時に、自動的に、または、管理者からの指示に応じて開始される。
【0033】
異常判断処理(図4)が開始されると、蓄電管理装置20のオン・オフ制御部62(図1)は、複数の蓄電池12の内、オン・オフ動作させるスイッチ部に対応する対象蓄電池12yを選択する(S110)。例えば、オン・オフ制御部62が選択する対象蓄電池12yは、上述した対象蓄電池12xである。すなわち、オン・オフ制御部62は、複数の蓄電池12の内、電圧が組電池10の電圧を蓄電池12の合計数で除算した平均電圧値(平均電圧Vave)を含む基準電圧範囲外である蓄電池12を、対象蓄電池12yとして選択する。
【0034】
次に、蓄電管理装置20のオン・オフ制御部62は、対象蓄電池12yに対してオン・オフ制御処理(図5)を実行する(S120)。ここで、対象蓄電池12yが複数存在する場合、複数の対象蓄電池12yの内、互いに隣り合う対象蓄電池12y同士に対しては互いに異なる時期にオン・オフ制御処理を行い、互いに隣り合わない対象蓄電池12y同士については同時期にオン・オフ制御処理を行う。具体的には、図1に示す4つの蓄電池12の全てが対象蓄電池12yである場合、例えば、蓄電池12aと蓄電池12cとについて同時期にオン・オフ制御処理を行い、その後、蓄電池12bと蓄電池12dとについて同時期にオン・オフ制御処理を行う。
【0035】
オン・オフ制御処理が開始されると、図5に示すように、蓄電管理装置20の制御部60(図1)は、組電池10に電流が流れているか否かを判断する(S210)。ここで、上述したように本異常判断処理は、ラインスイッチ40が開状態である起動時に実行される。このため、電流検出部24が正常であれば、電流検出部24において電流が検出されないはずである。逆に、電流検出部24において電流が検出された場合、電流検出部24が異常状態(例えば内部回路のショートやオープン、部品の故障)になっており、精度の高い電流検出を行うことができない可能性がある。なお、制御部60は、監視部28から入力される信号に基づき、組電池10に流れる電流を検出し、その電流検出値が所定の下限値(ほぼゼロ)以下であれば、組電池10に電流が流れていないと判断し、電流検出値が所定の下限値より大きければ、組電池10に電流が流れていると判断する。
【0036】
制御部60は、組電池10に電流が流れていると判断した場合(S210:NO)、電流検出部24が異常状態であると判断し(S230)、スイッチ部のオン・オフ動作を開始することなく、本オン・オフ制御処理を終了し、図4のS130に進む。なお、S230において、制御部60は、例えば、電流検出部24の異常状態を検出したこと(以下、「異常検出」という)を、インターフェース部76を介して外部に報知してもよい。これにより、電流検出部24の異常検出が既にされたにもかかわらず、対象蓄電池12yに対応するスイッチ部のオン・オフ動作が実行されることが抑制される。
【0037】
制御部60は、組電池10に電流が流れていないと判断した場合(S210:YES)、オン・オフ制御部62は、対象蓄電池12yに対応するスイッチ部にオン・オフ動作を実行させる(S220)。本実施形態では、オン・オフ制御部62は、第1のスイッチ37または第2のスイッチ38のオン・オフ動作を制御して、対象蓄電池12xの電圧を平均電圧Vaveに近付けるような定電流制御を実行する。
【0038】
次に、電流検出部異常時処理部64は、上記スイッチ部のオン・オフ動作に伴う対象蓄電池12yの電圧変化量が正常電圧範囲外であるか否かを判断する(S240)。この判断は、スイッチ部のオン・オフ動作に伴う対象蓄電池12yの電圧変化量に基づき、電圧均等化回路30の異常を検出するために行われる。例えば電圧均等化回路30が異常状態(例えば内部回路のショートやオープン、部品の故障)になると、スイッチ部のオン・オフ動作の開始前後における対象蓄電池12yの電圧変化量が正常電圧範囲外になる。
【0039】
具体的には、均等化回路異常時処理部66は、スイッチ部のオン・オフ動作の開始前における対象蓄電池12yの電圧と、スイッチ部のオン・オフ動作の開始後(オン・オフ動作中)における対象蓄電池12yの電圧との差を算出し、その電圧差が正常電圧範囲外であるか否かを判断する。正常電圧範囲は、電圧均等化回路30が正常状態である場合において、スイッチ部のオン・オフ動作の開始前後において想定される対象蓄電池12yの電圧変化量である。正常電圧範囲は、例えば、対象蓄電池12yの内部抵抗値と、ワイヤ36の抵抗値と、電圧均等化回路30の定電流値とから想定される電圧降下値を含む電圧範囲(例えば該電圧降下値±所定値である数値範囲)である。なお、S240の判断条件は、第2の異常判断条件の一例である。
【0040】
スイッチ部のオン・オフ動作の開始前後における対象蓄電池12yの電圧変化量が正常電圧範囲外であると判断された場合(S240:YES)、均等化回路異常時処理部66は、電圧均等化回路30の異常検出に対応した処理を実行し(S260)、本オン・オフ制御処理を終了する。電圧均等化回路30の異常検出に対応した処理は、例えば、電圧均等化回路30の異常検出を、インターフェース部76を介して外部に報知する処理や、マイナス端子44を閉状態にすることや電圧均等化処理の実行を禁止する処理などである。この場合、次述する電流検出部24の異常を検出するための処理(S270~S290)は実行されず、対象蓄電池12yに対応するスイッチ部にオン・オフ動作を停止させる(S300)。電圧均等化回路30が異常状態である場合、電流検出部24の異常判断を正確に行うことができないからである。
【0041】
一方、電圧均等化回路30は正常であると判断された場合(S240:NO)、例えば制御部60は電圧均等化回路30の正常を示すフラグを履歴部74に記録する(S250)。次に、電流検出部異常時処理部64は、対象蓄電池12yに対応するスイッチ部のオン・オフ動作時において組電池10に流れる電流値が正常電流範囲外であるか否かを判断する(S270)。この判断は、スイッチ部のオン・オフ動作時において組電池10に流れる電流の電流検出値に基づき、電流検出部24の異常を検出するために行われる。例えば電流検出部24が異常状態になると、スイッチ部のオン・オフ動作時に組電池10に流れる電流の電流検出値が正常電流範囲外になる。
【0042】
具体的には、電流検出部異常時処理部64は、正常電流範囲テーブルT1(図3)を参照して、スイッチ部のオン・オフ動作時に検出される、対象蓄電池12yの電圧値と組電池10の電圧値とに対応する正常電流範囲を抽出する。次に、電流検出部異常時処理部64は、スイッチ部のオン・オフ動作時における電流検出部24からの電流検出値が、その抽出された正常電流範囲外であるか否かを判断する。なお、S270の判断条件は、第1の異常判断条件の一例である。また、組電池10の電圧値は、例えば全ての蓄電池12の電圧検出値を合算することにより算出することができる。
【0043】
スイッチ部のオン・オフ動作時における電流検出部24からの電流検出値が正常電流範囲外であると判断された場合(S270:YES)、電流検出部24は異常であると判断され、例えば制御部60は電流検出部24の異常を示すフラグを履歴部74に記録し(S290)、S300の処理に進み、本オン・オフ制御処理を終了する。一方、スイッチ部のオン・オフ動作時における電流検出部24からの電流検出値が正常電流範囲外でないと判断された場合(S270:NO)、電流検出部24は正常であると判断され、例えば制御部60は電流検出部24の正常を示すフラグを履歴部74に記録し(S280)、S300の処理に進み、本オン・オフ制御処理を終了する。
【0044】
本オン・オフ制御処理を終了すると、図4に示すように、制御部60は、選択された全ての対象蓄電池12yに対してオン・オフ制御処理を実行したか否かを判断する(S130)。全ての対象蓄電池12yに対してオン・オフ制御処理を実行しないと判断された場合(S130:NO)、制御部60は、残りに対象蓄電池12yに対してオン・オフ制御処理(S120)を繰り返し実行する。
【0045】
一方、全ての対象蓄電池12yに対してオン・オフ制御処理を実行したと判断された場合(S130:YES)、均等化回路異常時処理部66は、互いに異なる時期に実行された複数回のオン・オフ制御処理(図4)における電流検出部24の異常判断結果(以下、「電流異常判断結果」という)が一致するか否かを判断する(S140)。電圧均等化回路30が正常であれば、全ての回の電流異常判断結果が一致するはずである。一方、例えば電圧均等化回路30の内、蓄電池12aに対応するトランス39およびスイッチ部の構成回路が正常であるのに対し、蓄電池12bに対応するトランス39およびスイッチ部の構成回路が異常(例えば断線や短絡)であるとする。そして、蓄電池12a,12bがS110で対象蓄電池12yに選択され、互いに異なるタイミングでオン・オフ制御処理(図5)が実行されたとする。すると、蓄電池12aに対するオン・オフ制御処理では電流異常判断結果が正常と判断され、蓄電池12bに対するオン・オフ制御処理では電流異常判断結果が異常と判断され、その結果、電流異常判断結果が一致しなくなる。なお、均等化回路異常時処理部66は、履歴部74に記録された電流検出部24の異常を示すフラグ(S280,S290)に基づき判断することができる。なお、異常判断処理において、オン・オフ制御処理(図5)が1回しかされなかった場合、S140では「YES」と判断されるとしてもよい。なお、S140の判断条件は、第3の異常判断条件の一例である。
【0046】
複数回の電流異常判断結果の中に、他の回とは異なる電流異常判断結果が含まれていると判断された場合(S140:NO)、均等化回路異常時処理部66は、電圧均等化回路30の異常検出に対応した処理を実行し(S160)、本異常判断処理を終了する。電圧均等化回路30の異常検出に対応した処理は、例えば、電圧均等化回路30の異常検出を、インターフェース部76を介して外部に報知する処理である。
【0047】
一方、全ての回の電流異常判断結果が一致すると判断された場合(S140:YES)、電流異常判断結果が異常であるか否かを判断する(S150)。電流異常判断結果が異常であると判断された場合(S150:YES)、電流検出部異常時処理部64は、電流検出部24の異常検出に対応した処理を実行し(S170)、本異常判断処理を終了する。電流検出部24の異常検出に対応した処理は、例えば、電流検出部24の異常検出を、インターフェース部76を介して外部に報知する処理や、組電池10の充放電を禁止する処理である。一方、電流異常判断結果が正常であると判断された場合(S150:NO)、制御部60は、例えば電流検出部24が正常状態であることを確定するフラグを記録部72に記録し(S180)、本異常判断処理を終了する。これにより、例えば電圧均等化処理等が実行可能とされる。
【0048】
A-3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の蓄電管理装置20では、図1に示すように、各トランス39の第2の巻き線39jは、組電池10だけでなく電流検出部24にも並列に接続されている。このような構成において、電圧均等化回路30を構成する一部のスイッチ部がオン・オフ動作されると、そのスイッチ部に対応する対象蓄電池12yと組電池10との間の電流の授受が行われる。その結果、対象蓄電池12yの電圧が変化する。この際、電流検出部24が正常であれば、電流検出部24の検出結果は、電圧検出部22の検出結果に基づく対象蓄電池12yの電圧と組電池10の電圧とに対応する正常電流範囲内となり(図5のS270:NO)、電流検出部24が異常状態であれば、電流検出部24の検出結果は、正常電流範囲外になる(図5のS270:YES)。
【0049】
本発明者は、このような電圧均等化回路30のオン・オフ動作に伴う対象蓄電池12yの電圧変化と電流検出部24の検出結果とに着目することにより、電流検出部24の異常の有無を判断する、ことを新たに見出した。これにより、本実施形態によれば、電流検出部24の異常の有無の判断のための専用の電流経路を別途設けることなく、電圧均等化回路30を利用して電流検出部24の異常の有無を判断することができる。
【0050】
本実施形態では、オン・オフ制御処理(図5)において、スイッチ部のオン・オフ動作に伴う対象蓄電池12yの電圧変化が有り(S240:NO)、かつ、電流検出部24の検出結果が正常電流範囲外であること(S270:YES)を必要条件として、電流検出部24が異常状態であると判断される(S290)。これにより、本実施形態によれば、電圧均等化回路30が異常状態である場合に、誤って電流検出部24が異常状態であると判断されることを抑制できる。
【0051】
本実施形態では、オン・オフ制御処理(図5)において、スイッチ部のオン・オフ動作の開始前後における対象蓄電池12yの電圧変化量が正常電圧範囲外であると判断された場合(S240:YES)、均等化回路異常時処理部66は、電圧均等化回路30の異常検出に対応した処理を実行する(S260)。これにより、本実施形態によれば、電流検出部24の異常検出に加えて、電圧均等化回路30の異常検出をも行うことができる。
【0052】
本実施形態では、異常判断処理(図4)において、オン・オフ制御部62は、複数の蓄電池12の内、電圧が基準電圧範囲外である蓄電池12を、対象蓄電池12yとして選択する(S110)。すなわち、電圧均等化処理が必要な蓄電池12に対応するスイッチ部をオン・オフ動作させて、電流検出部24の異常の有無が判断される。これにより、本実施形態によれば、電圧が基準電圧範囲内であるか否かに関係なく対象蓄電池12yを選択する構成に比べて、電圧均等化処理では本来不要なスイッチ部のオン・オフ動作を抑制しつつ、電圧均等化回路30を利用して電流検出部24の異常の有無を判断することができる。
【0053】
本実施形態では、異常判断処理(図4)において、複数回の電流異常判断結果の中に、他の回とは異なる電流異常判断結果が含まれていると判断された場合(S140:NO)、均等化回路異常時処理部66は、電圧均等化回路30の異常検出に対応した処理を実行する(S160)。本実施形態によれば、電流検出部24の異常検出に加えて、電圧均等化回路30の異常検出をも行うことができる。
【0054】
上述したように、本実施形態の電池装置100では、互いに隣り合う蓄電池12に対応するスイッチ部が同時期にオン・オフ動作されると、共有経路に存在するワイヤ36(抵抗成分)における電圧降下が互いに打ち消されることによって、各蓄電池12の電圧を精度よく測定できず、その結果、電流検出部24の異常の有無を精度よく判断することができなくなるおそれがある。これに対して、本実施形態では、異常判断処理(図4)において、対象蓄電池12yが複数存在する場合、複数の対象蓄電池12yの内、互いに隣り合う対象蓄電池12y同士に対しては互いに異なる時期にオン・オフ制御処理を行う。これにより、電流検出部24の異常の有無判断の精度低下を抑制することができる。
【0055】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0056】
上記各実施形態における電池装置100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記各実施形態において、組電池10を構成する蓄電池12の個数は任意に変更可能である。また、上記各実施形態では、蓄電素子として蓄電池12を例示したが、例えばキャパシタでもよい。また、上記各実施形態では、蓄電部として組電池10を例示したが、例えば複数のキャパシタが直列に接続されたキャパシタ群でもよい。また、上記実施形態において、電圧均等化回路30は、第1のスイッチ37および第2のスイッチ38のいずれか一方を備えない構成でもよい。
【0057】
また、上記各実施形態において、正常電流範囲テーブルT1の内容は、あくまで一例であり、種々変形可能である。また、必ずしも記録部72に正常電流範囲テーブルT1が記録されている必要はない。また、上記各実施形態において、制御部60が有する各機能部の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0058】
上記各実施形態における異常判断処理の内容は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態において、電圧均等化回路30の異常検出を行わない構成でもよい。また、上記実施形態において、異常判断処理は、例えば組電池10を構成する複数の蓄電池12の間の電圧の差が所定の閾値より大きいことが検知された場合に実行される電圧均等化処理に並行して実行されてもよいし、電圧均等化処理とは異なるタイミングで別途実行されてもよい。また、異常判断処理は、電流検出部24の異常検出を高い精度で行うため、ラインスイッチ40が開状態であることを条件に実行されたが、ラインスイッチ40が閉状態であるときに実行されてもよい。
【0059】
上記実施形態において、異常判断処理のS110では、オン・オフ制御部62は、例えば、電圧の高低に関係なく、複数の蓄電池12の中から任意の蓄電池12を対象蓄電池12yとして選択してもよい。また、S120では、オン・オフ制御部62は、複数の対象蓄電池12yの内、互いに隣り合う対象蓄電池12y同士については同時期にオン・オフ制御処理を行ってもよい。
【0060】
上記実施形態において、オン・オフ制御処理のS240では、スイッチ部のオン・オフ動作に伴う対象蓄電池12yの電圧変化量として、スイッチ部のオン・オフ動作の開始の前後における対象蓄電池12yの電圧変化量が正常電圧範囲外であるか否かが判断されたが、これに限らず、例えば、スイッチ部のオン・オフ動作の開始前と該オン・オフ動作の終了後とにおける対象蓄電池12yの電圧変化量が正常電圧範囲外であるか否かが判断されてもよい。
【0061】
上記実施形態において、S140では、互いに異なる対象蓄電池12yに対して互いに異なる時期にそれぞれ実行されたオン・オフ制御処理での電流異常判断結果が一致するか否かが判断されたが、例えば同じ対象蓄電池12yに対して互いに異なる時期にそれぞれ実行されたオン・オフ制御処理での電流異常判断結果が一致するか否かが判断されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10:組電池 12:蓄電池 12x,12y:対象蓄電池 20:蓄電管理装置 22:電圧検出部 24:電流検出部 28:監視部 30:電圧均等化回路 36:ワイヤ 37:第1のスイッチ 38:第2のスイッチ 39:トランス 39i:第1の巻き線 39j:第2の巻き線 40:ラインスイッチ 42:プラス端子 44:マイナス端子 60:制御部 62:オン・オフ制御部 64:電流検出部異常時処理部 66:均等化回路異常時処理部 72:記録部 74:履歴部 76:インターフェース部 100:電池装置 T1:正常電流範囲テーブル
図1
図2
図3
図4
図5