(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】複素環系化合物の結晶形及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20240425BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240425BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240425BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240425BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240425BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20240425BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20240425BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20240425BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240425BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240425BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240425BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240425BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20240425BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240425BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240425BHJP
C07D 413/06 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
C07D471/04 108K
A61K31/5377
A61P1/02
A61P11/00
A61P11/06
A61P11/08
A61P11/14
A61P13/00
A61P13/10
A61P15/00
A61P17/02
A61P25/04
A61P25/06
A61P29/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
C07D413/06
C07D471/04 CSP
(21)【出願番号】P 2022581651
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2021102068
(87)【国際公開番号】W WO2022001820
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】202010610052.6
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520317136
【氏名又は名称】武漢朗来科技発展有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン、リャン
(72)【発明者】
【氏名】ロウ、チュン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ホアユン
(72)【発明者】
【氏名】クオ、シアオタン
(72)【発明者】
【氏名】チエン、リナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イーハン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ヨンカイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チャオトン
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/135771(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/258059(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/268218(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/00-471/22
C07D 413/00-413/14
A61K 31/5377
A61P 1/02
A61P 11/00
A61P 11/06
A61P 11/08
A61P 11/14
A61P 13/00
A61P 13/10
A61P 15/00
A61P 17/02
A61P 25/04
A61P 25/06
A61P 29/00
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶I、
結晶II、
結晶III、
結晶IV、
結晶V、
結晶VI、
結晶VII、
結晶VIII及び
結晶IXから選択される式Aで表される化合物又はその溶媒和物の
結晶であって、
【化1】
ここで、式Aで表される化合物の水和物の
結晶IIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が12.91°±0.20°、16.77°±0.20°、19.27°±0.20°及び22.80°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物の
結晶Vの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.38°±0.20°、9.15°±0.20°、13.52°±0.20°及び18.44°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物の
結晶Iの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.56°±0.20°、12.48°±0.20°及び22.13°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物のMTBE溶媒和物の
結晶IIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.42°±0.20°、12.09°±0.20°、13.68°±0.20°及び20.87°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物の水和物の
結晶IVの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.65°±0.20°、12.69°±0.20°及び22.56°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物の水和物の
結晶VIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.62°±0.20°、12.69°±0.20°及び22.59°±0.02°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物のエチレングリコール溶媒和物の
結晶VIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.36°±0.20°、12.13°±0.20°、12.45°±0.20°、16.84°±0.20°及び21.66°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物のTHF溶媒和物の
結晶VIIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.53°±0.20°、12.38°±0.20°、13.66°±0.20°及び21.49°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物のDMSO溶媒和物の
結晶IXの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.55°±0.20°、12.43°±0.20°、21.75°±0.20°及び25.07°±0.20°において特徴的なピークを有する、式Aで表される化合物又はその溶媒和物の
結晶。
【請求項2】
前記
結晶IIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が12.91°±0.20°、16.77°±0.20°、19.27°±0.20°、22.80°±0.20°、13.75°±0.20°、14.46°±0.20°及び20.86°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶Vの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.38°±0.20°、9.15°±0.20°、13.52°±0.20°、18.44°±0.20°、16.26°±0.20°、16.89°±0.20°及び17.86°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶Iの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.56°±0.20°、12.48±0.20°、22.13°±0.20°、13.53°±0.20°、14.25±0.20°、25.18°±0.20°及び26.07°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶IIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.42°±0.20°、12.09°±0.20°、13.68°±0.20°、20.87°±0.20°、16.17°±0.20°、16.93°±0.20°、17.55°±0.20°及び21.20°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶IVの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.65°±0.20°、12.69°±0.20°、22.56°±0.20°、13.48°±0.20°、17.39°±0.20°、21.04°±0.20°及び23.63°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶VIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.62°±0.20°、12.69°±0.20°、22.59°±0.02°、13.46°±0.20°、17.41°±0.20°、26.51°±0.02°、25.62°±0.02°及び25.24°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶VIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.36°±0.20°、12.13°±0.20°、12.45°±0.20°、16.84°±0.20°、21.66°±0.20°、21.07°±0.20°及び24.82°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、式Aで表される化合物のTHF溶媒和物の
結晶VIIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.53°±0.20°、12.38°±0.20°、13.66°±0.20°、21.49°±0.20°、20.99°±0.20°、24.94°±0.20°及び25.31°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶IXの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.55°±0.20°、12.43°±0.20°、21.75°±0.20°、25.07°±0.20°、13.57°±0.20°、17.18°±0.20°、20.94°±0.20°及び25.57°±0.20°において特徴的なピークを有する、請求項1に記載の化合物A又はその溶媒和物の
結晶。
【請求項3】
前記
結晶IIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が12.91°±0.20°、16.77°±0.20°、19.27°±0.20°、22.80°±0.20°、13.75°±0.20°、14.46°±0.20°、20.86°±0.20°、21.08°±0.20°、23.75°±0.20°及び24.05°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶IIIの熱重量分析スペクトルにおいて、室温~100℃の区間における重量減少勾配は1.5%であり、
及び/又は、前記
結晶IIIの示差走査熱量スペクトルにおいて、最初の吸熱ピークは0.4個の水の除去であり、
及び/又は、前記
結晶Vの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.38°±0.20°、9.15°±0.20°、13.52°±0.20°、18.44°±0.20°、16.26°±0.20°、16.89°±0.20°、17.86°±0.20°、22.35°±0.20°、23.56°±0.20°、24.74°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶Vの示差走査熱量スペクトルにおいて、166℃に吸熱ピークを有し、融解エンタルピーは70±2J/gであり、
及び/又は、前記
結晶Iの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.56°±0.20°、12.48°±0.20°、22.13°±0.20°、13.53°±0.20°、14.25°±0.20°、25.18°±0.20°、26.07°±0.20°、22.32°±0.20°、23.23°±0.20°及び23.42°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶Iの示差走査熱量スペクトルにおいて、152℃で吸熱ピークを有し、融解エンタルピーは44±2J/gであり、
及び/又は、前記
結晶IIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.42°±0.20°、12.09°±0.20°、13.68°±0.20°、20.87°±0.20°、16.17°±0.20°、16.93°±0.20°、17.55°±0.20°、21.20°±0.20°、22.60°±0.20°、23.23°±0.20°及び24.40°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶IIの熱重量分析スペクトルにおいて、100~160℃の温度区間で3.5%の重量損失があり、160~200℃の温度区間で2.9%の重量損失があり、
及び/又は、前記
結晶IVの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.65°±0.20°、12.69°±0.20°、22.56°±0.20°、13.48°±0.20°、17.39°±0.20°、21.04°±0.20°、23.63°±0.20°、14.39°±0.20°、25.60°±0.20°及び26.52°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶IVのTGAスペクトルにおいて、RT~60℃の温度区間で1.2%の重量損失があり、
及び/又は、前記
結晶VIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.36°±0.20°、12.13°±0.20°、12.45°±0.20°、16.84°±0.20°、21.66°±0.20°、21.07°±0.20°、24.82°±0.20°、13.61°±0.20°、23.22°±0.20°及び24.57°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶VIIの熱重量分析スペクトルにおいて、室温~120℃の区間で25.7%の重量損失があり、
及び/又は、前記
結晶VIIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.53°±0.20°、12.38°±0.20°、13.66°±0.20°、21.49°±0.20°、20.99°±0.20°、24.94°±0.20°、25.31°±0.20°、17.14°±0.20°、21.72°±0.20°及び23.00°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶VIIIの熱重量分析スペクトルにおいて、室温~160℃の温度区間で5.7%の重量損失があり、
及び/又は、前記
結晶IXの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.55°±0.20°、12.43°±0.20°、21.75°±0.20°、25.07°±0.20°、13.57°±0.20°、17.18°±0.20°、20.94°±0.20°、25.57°±0.20°、21.37°±0.20°及び23.12°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記
結晶IXの熱重量分析スペクトルにおいて、室温~
160℃の温度区間で18.23%の重量損失があることを特徴とする、請求項2に記載のAで表される化合物又はその溶媒和物の
結晶。
【請求項4】
スキーム一、スキーム二又はスキーム三であることを特徴とする、物質Aの
結晶IIIの製造方法であって、
前記スキーム
一は、式Aで表される化合物の非晶質と溶媒との懸濁液を結晶化させて、物質Aの
結晶IIIを得るステップを含み、前記溶媒は水又はアルコール系溶媒で
あり、
前記スキーム
二は、式Aで表される化合物と溶媒との溶液に貧溶媒を加え、結晶を析出させて、物質Aの
結晶IIIを得るステップを含み、前記溶媒はアルコール系、フラン系又はDMSOのうちの一つ又は複数であり、前記貧溶媒は水であり、
前記スキーム
三は、式Aで表される化合物と溶媒との溶液を水溶液Aに加え、結晶を析出させて、物質Aの
結晶IIIを得るステップを含み、前記水溶液Aは前記物質Aの
結晶IIIの種結晶と水との懸濁液であり、前記溶媒はDMSOであ
り、
物質Aの前記結晶IIIは、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物Aの水和物の結晶IIIである、
ことを特徴とする、物質Aの
結晶IIIの製造方法。
【請求項5】
前記スキーム一において、前記溶媒は水又はメタノールであり、
及び/又は、前記スキーム一において、前記結晶を析出させる温度は20~50℃であり
、
及び/又は、前記スキーム一において、前記化合物Aの非晶質と溶媒との質量体積比は50mg/mLであり、
及び/又は、前記スキーム二において、前記溶媒は、メタノール、テトラヒドロフラン又はDMSOのうちの1つ又は複数であり、
及び/又は、前記スキーム三において、前記溶媒と水との体積比は3:1~1:1であり、
及び/又は、前記スキーム三において、前記DMSOと水との体積比は1:1~1:4であり、
及び/又は、前記スキーム一を採用する場合、化合物Aの非晶質試料を溶媒と混合し、懸濁液を結晶化させるステップを含み、前記溶媒は水又はメタノールであり、攪拌温度は20~50℃であり、
前記化合物Aの非晶質と溶媒との質量体積比は50mg/mLであり、
及び/又は、前記スキーム二を採用する場合、化合物Aを溶媒と混合し、貧溶媒に滴下するステップを含み、前記溶媒はメタノール、テトラヒドロフラン又はDMSOのうちの1つ又は複数であり、前記貧溶媒は水であり、前記溶媒と水との体積比は3:1~1:1であり、
及び/又は、前記スキーム三を採用する場合、化合物Aと溶媒との溶液を水溶液Aに加え、結晶を析出させるステップを含み、前記水溶液Aは前記物質Aの
結晶IIIの種結晶と水との懸濁液であり、前記溶媒はDMSOであり、前記DMSOと水との体積比は1:1~1:4であることを特徴とする、
請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記スキーム一において、前記結晶を析出させる温度は40℃又は50℃であり、
及び/又は、前記スキーム一を採用する場合、化合物Aの非晶質試料を溶媒と混合し、懸濁液を結晶化させるステップを含み、前記溶媒は水又はメタノールであり、前記攪拌温度は40℃であり、前記化合物Aの非晶質と溶媒との質量体積比は50mg/mLである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか一項に記載の製造方法により製造され
、
物質Aの前記結晶IIIは、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物Aの水和物の結晶IIIであることを特徴とする、物質Aの
結晶III。
【請求項8】
スキームA又はスキームBである製造方法であって、
前記スキームAは20~50℃で式Aで表される化合物の非晶質と溶媒との懸濁液を結晶化させて、化合物Aの
結晶Vを得るステップを含み、前記溶媒は水又は
アセトニトリルであり
、
スキームBは式Aで表される化合物と溶媒の溶液中の溶媒を揮発させ、化合物Aの
結晶Vを得るステップを含み、前記溶媒は
メタノールであることを特徴とする、式Aで表される化合物の
結晶Vの製造方法。
【請求項9】
スキームAにおいて、前記化合物Aの非晶質と前記溶媒との質量体積比は、3.0mg/mL又は50mg/mLであり、
及び/又は、スキームAにおける結晶化の温度は50℃であり
、
及び/又は、スキームBにおける結晶を析出させる温度は50℃であり、
及び/又は、前記スキームAを採用する場合、20~50℃で化合物Aの非晶質と溶媒との懸濁液を結晶化させて、化合物の
結晶Vを得るステップを含み、前記結晶化の温度は50℃であり、前記溶媒は水又はアセトニトリルであり、前記化合物Aの非晶質と溶媒との質量体積比は50mg/mL又は3.0mg/mLであり、
及び/又は、前記スキームBを採用する場合、化合物Aと溶媒の溶液中の溶媒を揮発させて結晶を析出させ、化合物Aの
結晶Vを得るステップを含み、前記溶媒はメタノールであり、前記結晶を析出させる温度は50℃であることを特徴とする、
請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の式Aで表される化合物又はその溶媒和物の
結晶及び/又は
請求項7に記載の物質Aの
結晶III、及び医薬補助材料を含む、医薬組成物。
【請求項11】
P2X3受容体アンタゴニスト又は薬物の製造における、請求項1~
3のいずれか一項に記載の式Aで表される化合物又はその溶媒和物の
結晶、
請求項7に記載の物質Aの
結晶IIIの使用であって、前記薬物は、動物の少なくとも部分的にP2X3によって媒介される又は活性関連疾患の防護、処理、治療、又は軽減に使用される薬物
である、あるいは、前記薬物は、疼痛、泌尿器疾患又は呼吸器疾患の治療に使用される薬物
である、使用。
【請求項12】
前記疾患は、疼痛、泌尿器疾患又は呼吸器系疾患を含
む、
請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記疼痛は
、炎症性疼痛、手術疼痛、内臓痛、歯痛、月経前疼痛、中枢性疼痛、火傷による疼痛、片頭痛、又は群発頭痛を含み、前記泌尿器疾患は、尿失禁、膀胱過活動、排尿障害、膀胱炎を含み、前記呼吸器系疾患は
、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、気管支けいれん、又は慢性咳を含む呼吸障害を含むことを特徴とする、
請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記医薬組成物を投与することにより、治療に伴う味覚障害の副作用を低減することを特徴とする、
請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は出願日が2020年6月29日である中国特許出願2020106100526の優先権を主張する。本出願は上記の中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本発明は、医薬化学の分野に属し、具体的には、複素環系化合物の結晶形及びその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ATP受容体は、分子構造、伝達機序、及び薬理学的特性に基づいて、P2Y-及びP2X-プリン受容体の2つの主要なファミリーに分類される。P2X-プリン受容体はATP感受性陽イオンチャネルのファミリーであり、いくつかのサブタイプをクローニングし、それはP2X1、P2X2、P2X3、P2X4、P2X5、及びP2X7の6つの同族受容体と、P2X2/3、P2X4/6、P2X1/5の3つの同族受容体を含む。研究によると、P2X3受容体が下部尿路や気道などの「中空内臓」の一次求心性神経線維で特異的に発現することが分かった。
【0004】
咳は呼吸器疾患の主な症状であり、呼吸器クリニック患者の70%~80%に咳症状がある。COPD、IPFなどの有病率の増加に伴い、咳がほとんどの呼吸器疾患の主な症状となり、需要も高まっている。体の防御性神経反射として、咳は呼吸器分泌物や有害因子の除去に有益であるが、頻繁で激しい咳は患者の仕事、生活、社会活動に深刻な影響を与える。
【0005】
P2X3アンタゴニストは明確に咳の適応症に対して開発されたものはあまり多くなく、現在急速に進行しているプロジェクトはロシュのAF-219プロジェクトであり、新たに完了された第II相臨床試験で難治性の咳に対してより良い治療効果を有していたが、味覚障害は深刻である。
【0006】
現在、慢性咳嗽を含む多くの疾患を治療するためのP2X3阻害経路の薬物は市販されていない。従って、P2X3の活性を阻害できる新しい化合物の開発は、疾患の治療に積極的な意味を持つ。
【0007】
特許出願CN201911379293.8は、以下に示されるP2X3アンタゴニストに関し、高いP2X3アンタゴニスト活性を有し、より良い選択性を有し、毒性が低く、代謝安定性が高く、味覚への影響が少ない。医薬品開発の見通しは良好である。しかし、上記化合物の結晶形については言及していない。
【0008】
【0009】
化合物には一般に結晶多形現象があり、一般的な薬物は2つ以上の異なる結晶性物質状態が存在する可能性がある。結晶多形化合物の存在形態と量は予測不可能であり、同じ薬物の異なる結晶形態には、溶解度、融点、密度、安定性などの面で大きな違いがあり、薬物の温度、均一性、バイオアベイラビリティ、有効性及び安全性に様々な程度で影響を与える。従って、新薬の研究開発の過程において化合物の結晶多形スクリーニングを全面的に行う必要であり、薬物製剤の開発に適した結晶形を選択することは臨床的に大きな意義がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、複素環系化合物の結晶形及びその製造方法と使用を提供する。本発明の結晶形は、良好な安定性を有し、薬物の最適化及び開発に重要な価値を有する。
【0011】
本発明は、式Aで表される化合物又はその溶媒和物の結晶形を提供し:
【化2】
それは、結晶形I、結晶形II、結晶形III、結晶形IV、結晶形V、結晶形VI、結晶形VII、結晶形VIII及び結晶形IXから選択される。
【0012】
本発明は、粉末X線回折スペクトル(XRPD)が2θ値が12.91°±0.20°、16.77°±0.20°、19.27°±0.20°及び22.80°±0.20°において特徴的なピークを有する、式Aで表される化合物の結晶形IIIを提供する。
【0013】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形IIIの2θ角で表されるXRPDはまた13.75°±0.20°、14.46°±0.20°及び20.86°±0.20°において特徴的なピークを有し、さらに、21.08°±0.20°、23.75°±0.20°及び24.05°±0.20°において特徴的なピークを有する。
【0014】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形IIIの2θ角で表されるXRPDスペクトルは基本的に
図1に示された通りである。前記結晶形IIIの熱重量分析スペクトル(TGA)において、室温(RT)~100℃の区間における重量減少勾配は1.5%であり、前記「%」は重量百分率である。前記結晶形IIIの示差走査熱量スペクトル(DSC)において、最初の吸熱ピークは0.4の水の除去であり、2番目の吸熱ピークは試料の脱水後の溶融吸熱ピークに起因し、そのTGA及びDSCスペクトルは、好ましくは、
図2に示された通りである。前記結晶形IIIは脱水後、周囲湿度下で速やかに吸湿して再び結晶形IIIになり、加熱して脱水する前後のXRPDスペクトルは、好ましくは、
図3に示された通りである。前記結晶形IIIの動的水分吸着スペクトル(DVS)は、試料が所定の吸湿性を有し、広い湿度範囲で水分含有量がほとんど変化しないことを示し、そのDVSスペクトルは好ましくは、
図4に示された通りである。前記結晶形IIIのDVS試験前後のXPRDスペクトルにおいて、DVS試験前後のXRPDに有意な変化はなく、そのDVS試験前後のXPRDスペクトルは、好ましくは、
図5に示された通りである。前記結晶形IIIの偏光顕微鏡スペクトル(PLM)において、結晶形は約2μmの不規則な結晶であり、凝集は20~50μmであり、そのPLM図は、好ましくは、基本的に
図6に示された通りである。前記結晶形IIIの純度は、一般に90%以上であり、好ましくは95%以上である。
【0015】
本発明は、XRPDが2θ値が8.38°±0.20°、9.15°±0.20°、13.52°±0.20°及び18.44°±0.20°において特徴的なピークを有する、式Aで表される化合物の結晶形Vを提供する。
【0016】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形Vの2θ角で表されるXRPDスペクトルはまた16.26°±0.20°、16.89°±0.20°及び17.86°±0.20°において特徴的なピークを有し、さらに、22.35°±0.20°、23.56°±0.20°、24.74°±0.20°において特徴的なピークを有する。
【0017】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形Vの2θ角で表されるXRPDスペクトルは基本的に
図7に示された通りである。前記結晶形VのTGAスペクトルにおいて、RT~230℃の温度区間に重量損失はない。前記結晶形VのDSCスペクトルにおいて、166℃±2℃に吸熱ピークを有し、融解エンタルピーは70±2J/gであり、そのTGA及びDSCスペクトルは、好ましくは、
図8に示された通りである。DSC及びTGAスペクトルを組み合わせると、当該製品が無水結晶であることが分かる。前記結晶形VのDVSスペクトルは、試料がある程度の吸湿性(0.7%、80%RH)を有することを示し、そのDVSスペクトルは好ましくは、
図9に示された通りである。前記結晶形VのDVS試験前後のXPRDスペクトルにおいて、DVS試験前後のXRPDに有意な変化はなく、そのDVS試験前後のXPRDスペクトルは、好ましくは、
図10に示された通りである。前記結晶形VのPLMにおいて、結晶形は約5μmの不規則な結晶であり、そのPLM図は、好ましくは、基本的に
図11に示された通りである。前記結晶形Vの純度は、一般に90%以上であり、好ましくは95%以上である。
【0018】
本発明は、XRPDスペクトルが2θ値が8.56°±0.20°、12.48°±0.20°及び22.13°±0.20°において特徴的なピークを有する、式Aで表される化合物の結晶形Iを提供する。
【0019】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは2θ値が13.53°±0.20°、14.25°±0.20°、25.18°±0.20°及び26.07°±0.20°において特徴的なピークを有し、さらに、22.32°±0.20°、23.23°±0.20°及び23.42°±0.20°において特徴的なピークを有する。
【0020】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形Iの2θ角で表されるXRPDスペクトルが基本的に
図12に示された通りである。前記結晶形IのDSCスペクトルにおいて、152℃±2℃に吸熱ピークを有し、融解エンタルピーは44±2J/gである。前記結晶形IのTGAスペクトルにおいて、RT~230℃の温度区間に重量損失はない。そのTGA及びDSCスペクトルは、好ましくは、基本的に
図13に示された通りである。DSC及びTGAスペクトルを組み合わせると、当該製品が無水結晶であることが分かる。前記結晶形IのDVSスペクトルは
図14に示される通りであり、相対湿度が40%を超えると、結晶形Iの重量が急激に増加する。相対湿度が40%まで下がると、吸収されたすべての水分が放出される。前記結晶形Iの吸湿後のXRPDスペクトルにおいて、結晶形Iが高湿度環境下で吸湿して結晶転移をし、水和物結晶形IVに転換され、それを30℃の真空乾燥箱に入れて乾燥させた後、再び初期結晶形Iに転換し、その吸湿前後のXRPDスペクトルは、好ましくは、基本的に
図15に示された通りである。DVS試験結果(
図14)と合わせて、環境相対湿度が40%を超えると、結晶形Iが急速に吸湿して水和物に転換し、相対湿度が50%未満である時、吸着した水が急速に脱離して結晶形Iに転換することが分かる。即ち、結晶形IとIVとの間の相互転移は可逆的である。前記結晶形Iは吸湿性(6.8%、80%RH)を示し、前記結晶形IはDVS試験後も結晶形が変化せず、そのDVS試験前後のXRPDスペクトルは、好ましくは、
図16に示された通りである。前記結晶形IのPLMにおいて、結晶形は約5μmの不規則な結晶であり、そのPLMは、好ましくは、基本的に
図17に示された通りである。前記結晶形Iの純度は、一般に90%以上であり、好ましくは95%以上である。
【0021】
本発明は、XRPDスペクトルが2θ値が8.42°±0.20°、12.09°±0.20°、13.68°±0.20°及び20.87°±0.20°において特徴的なピークを有する、式Aで表される化合物のMTBE溶媒和物の結晶形IIを提供する。
【0022】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形IIの2θ角で表されるXRPDはまた16.17°±0.20°、16.93°±0.20°、17.55°±0.20°及び21.20°±0.20°において特徴的なピークを有し、さらに、22.60°±0.20°、23.23°±0.20°及び24.40°±0.20°において特徴的なピークを有する。
【0023】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形IIの2θ角で表されるXRPDは基本的に
図18に示された通りである。前記結晶形IIの核磁気共鳴水素スペクトル(HNMR)において、化学シフトは1.11及び3.08にMTBEの残留シグナルを有し、その残留MTBEのHNMRスペクトルは
図19に示された通りである。前記結晶形IIのTGAスペクトルにおいて、100~160℃の温度区間で3.5%の重量損失があり、160~200℃の温度区間で2.9%の重量損失がある。前記結晶形IIのDSCスペクトルにおいて、隣接する2つの吸熱ピークがあり、そのTGA及びDSCスペクトルは、好ましくは、
図20に示された通りである。
図19に示される残留MTBE水素スペクトルから、当該製品がMTBE溶媒和物であることが分かる。前記結晶形IIのPLMにおいて、結晶形は約2μmの不規則な結晶であり、そのPLMは、好ましくは、基本的に
図21に示された通りである。
【0024】
本発明は、XRPDスペクトルが2θ値が8.65°±0.20°、12.69°±0.20°及び22.56°±0.20°において特徴的なピークを有する、式Aで表される化合物の水和物の結晶形IVを提供する。
【0025】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形IVの2θ角で表されるXRPDはまた13.48°±0.20°、17.39°±0.20°、21.04°±0.20°及び23.63°±0.20°において特徴的なピークを有し、さらに、14.39°±0.20°、25.60°±0.20°及び26.52°±0.20°において特徴的なピークを有する。
【0026】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形IVの2θ角で表されるXRPDは基本的に
図22に示された通りである。前記結晶形IVのTGAスペクトルにおいて、RT~60℃の温度区間で1.2%の重量損失がある。前記結晶形IVのDSCスペクトルにおいて、2つの吸熱ピークピークがあり、最初の広い吸熱ピークは脱水によるものと推定され、後の吸熱ピークは溶融ピークであり、そのTGA及びDSCスペクトルは、好ましくは、
図23に示された通りである。前記結晶形IVは高湿度環境下でのみ安定であり、脱水後、周囲湿度下で速やかに吸湿して再び結晶形Iになり、加熱して脱水する前後のXRPDスペクトルは、好ましくは、
図24に示された通りである。前記結晶形IVのPLMにおいて、結晶形は約5μmの不規則な結晶であり、そのPLM図は、好ましくは、基本的に
図25に示された通りである。前記結晶形IVの純度は、一般に90%以上であり、好ましくは95%以上である。
【0027】
本発明は、粉末X線回折スペクトルが2θ値が8.62°±0.20°、12.69°±0.20°及び22.59°±0.02°において特徴的なピークを有する、式Aで表される化合物の水和物の結晶形VIを提供する。
【0028】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形VIの2θ角で表されるXRPDはまた13.46°±0.20°、17.41°±0.20°、26.51°±0.02°、25.62°±0.02°及び25.24°±0.20°において特徴的なピークを有し、さらに、23.64°±0.20°、21.00°±0.20°及び27.85°±0.20°において特徴的なピークを有する。
【0029】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形VIの2θ角で表されるXRPDは基本的に
図26に示された通りである。前記結晶形VIのXRPDスペクトルのオーバーレイにおいて、当該結晶形試料は、周囲湿度(35%RH)下に数分間置かれた後、結晶形Iに転移する。そのXRPDスペクトルのオーバーレイは
図27に示された通りである。これは、結晶形VIが非常に不安定な水和物である可能性があることを示唆している。前記結晶形VIの純度は、一般に90%以上であり、好ましくは95%以上である。
【0030】
本発明は、粉末X線回折スペクトルが2θ値が8.36°±0.20°、12.13°±0.20°、12.45°±0.20°、16.84°±0.20°及び21.66°±0.20°において特徴的なピークを有する、式Aで表される化合物のエチレングリコール溶媒和物の結晶形VIIを提供する。
【0031】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形VIIのXRPDはさらに下記の2θ値:21.07°±0.20°、24.82°±0.20°において特徴的なピークを有し、また、13.61°±0.20°、23.22°±0.20°及び24.57°±0.20°において特徴的なピークを有する。
【0032】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形VIIの2θ角で表されるXRPDは基本的に
図28に示された通りである。前記結晶形VIIの
1HNMRスペクトルにおいて、化学シフトδは3.39及び4.44においてエチレングリコール溶媒の残留を示し、その残留エチレングリコールの
1HNMRスペクトルは、好ましくは、
図29に示された通りである。前記結晶形VIIのTGAスペクトルにおいて、rt~120℃の区間で25.7%の重量損失がある。前記結晶形VIIのDSCスペクトルにおいて、2つの広い吸熱ピークがあり、最初の吸熱ピークは脱溶媒によるものと推定され、そのTGA及びDSCスペクトルは、好ましくは、
図30に示された通りである。DSC及びTGAスペクトルを組み合わせると、当該製品がエチレングリコールの溶媒和物であることが分かる。前記結晶形VIIの純度は、一般に90%以上であり、好ましくは95%以上である。
【0033】
本発明は、粉末X線回折スペクトルが2θ値が8.53°±0.20°、12.38°±0.20°、13.66°±0.20°及び21.49°±0.20°において特徴的なピークを有する、式Aで表される化合物のTHF溶媒和物の結晶形VIIIを提供する。
【0034】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形VIIIの2θ角で表される粉末X線回折スペクトルはさらに20.99°±0.20°、24.94°±0.20°及び25.31°±0.20°において特徴的なピークを有し、さらに、17.14°±0.20°、21.72°±0.20°及び23.00°±0.20°において特徴的なピークを有する。
【0035】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形VIIIの2θ角で表される粉末X線回折スペクトルは基本的に
図31に示された通りである。前記結晶形VIIIのTGAスペクトルにおいて、rt~160℃の温度区間で5.7%の重量損失がある。前記結晶形VIIIのDSCスペクトルにおいて、一つのみの吸熱ピークがあり、試料の脱溶媒後の溶融ピークである。従って、結晶形VIIIはTHFを含む溶媒和物であり、そのTGA及びDSCスペクトルは、好ましくは、
図32に示された通りである。前記結晶形VIIIの
1HNMRスペクトルにおいて、化学シフトδは1.76及び3.60においてTHF溶媒の残留を示し、その
1HNMRスペクトルは、好ましくは、
図33に示された通りである。前記結晶形VIIIは不安定であり、脱溶媒(40℃で3時間真空乾燥させる)後結晶形が変換して、結晶形Iに転移し、その乾燥前後のXRPDスペクトルは、好ましくは、
図34に示された通りである。前記結晶形VIIIの純度は、一般に90%以上であり、好ましくは95%以上である。
【0036】
本発明は、XRPDスペクトルが2θ値が8.55°±0.20°、12.43°±0.20°、21.75°±0.20°及び25.07°±0.20°において特徴的なピークを有する、式Aで表される化合物のDMSO溶媒和物の結晶形IXを提供する。
【0037】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形IXの2θ角で表されるXRPDスペクトルはさらに13.57°±0.20°、17.18°±0.20°、20.94°±0.20°及び25.57°±0.20°において特徴的なピークを有し、また、21.37°±0.20°及び23.12°±0.20°において特徴的なピークを有する。
【0038】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記結晶形IXの2θ角で表されるXRPDスペクトルは基本的に
図35に示された通りである。前記結晶形IXのTGAスペクトルにおいて、rt~160℃の温度区間で18.23%の重量損失があり、DSCスペクトルにはTGA重量損失に対応する吸熱ピークがあり、そのTGA及びDSCスペクトルは、好ましくは、
図36に示された通りである。前記結晶形IXの
1HNMRスペクトルにおいて、化学シフトδは2.68においてDMSO溶媒の残留を示し、その残留DMSOの
1HNMRスペクトルは、好ましくは、
図60に示された通りである。DSC及びTGAスペクトルを組み合わせると、当該製品がDMSO溶媒和物であることが分かる。前記結晶形IXの純度は、一般に90%以上であり、好ましくは95%以上である。
【0039】
本発明において、前記XRPDに用いられる放射線はKα線である。
【0040】
本発明において、前記粉末X線回折に用いられるターゲットのタイプは、Cuターゲットである。
【0041】
本発明はさらに、スキーム一、スキーム二又はスキーム三である物質Aの結晶形IIIの製造方法を提供する。
【0042】
スキーム一は下記のステップを含む:式Aで表される化合物の非晶質と溶媒との懸濁液を結晶化させて、物質Aの結晶形IIIを得、前記溶媒は水又はアルコール系溶媒である。
【0043】
スキーム二は下記のステップを含む:式Aで表される化合物と溶媒との溶液に貧溶媒を加え、結晶を析出させて、物質Aの結晶形IIIを得、前記溶媒はアルコール、フラン系又はDMSOのうちの一つ又は複数であり、前記貧溶媒は水である。
【0044】
スキーム三は下記のステップを含む:化合物Aと溶媒との溶液を水溶液Aに加え、結晶を析出させて、物質Aの結晶形IIIを得、前記水溶液Aは前記物質Aの結晶形IIIの種結晶と水との懸濁液であり、前記溶媒はDMSOである。
【0045】
前記結晶形IIIの製造方法において、前記スキーム一を採用する場合、前記溶媒は好ましくは、水又はメタノールである。
【0046】
前記結晶形IIIの製造方法において、前記スキーム一を採用する場合、前記結晶の析出温度は20~50℃であり、好ましくは40℃又は50℃である。
【0047】
前記結晶形IIIの製造方法において、前記スキーム一を採用する場合、前記化合物Aの非晶質と溶媒との質量体積比は50mg/mLである。
【0048】
前記結晶形IIIの製造方法において、前記スキーム二を採用する場合、前記溶媒は好ましくは、メタノール、テトラヒドロフラン又はDMSOのうちの1つ又は複数である。
【0049】
前記結晶形IIIの製造方法において、前記スキーム二を採用する場合、前記溶媒と水との体積比は、3:1~1:1(例えば、1:1又は3:1)である。
【0050】
前記結晶形IIIの製造方法において、前記スキーム三を採用する場合、前記溶媒と水との体積比は、1:1~1:4(例えば、1:1、2:3、1:2又は1:4)である。
【0051】
前記結晶形IIIの製造方法において、前記スキーム一を採用する場合、好ましくは、化合物Aの非晶質と溶媒との懸濁液を結晶化させるステップを含み、前記溶媒は水又はメタノールである。前記攪拌温度は20~50℃であり、好ましくは40℃である。前記化合物Aの非晶質と溶媒との質量体積比は50mg/mLである。
【0052】
前記結晶形IIIの製造方法において、前記スキーム二を採用する場合、好ましくは、化合物Aを溶媒と混合し、次いでゆっくりと滴下する方法で貧溶媒に加えるステップを含み、前記溶媒は好ましくは、メタノール、テトラヒドロフラン又はDMSOのうちの1つ又は複数であり、前記貧溶媒は水であり、前記溶媒と水との体積比は、3:1~1:1(例えば、3:1又は1:1)である。
【0053】
前記結晶形IIIの製造方法において、前記ススキーム三を採用する場合、好ましくは、化合物Aと溶媒との溶液を水溶液Aに加え、結晶を析出させるステップを含み、前記水溶液Aは前記物質Aの結晶形IIIの種結晶と水との懸濁液であり、前記溶媒はDMSOであり、前記DMSOと水との体積比は、1:1~1:4(例えば、1:1、2:3、1:2又は1:4)である。
【0054】
本発明はさらに、スキームA又はスキームBである化合物Aの結晶形Vの製造方法を提供する。
【0055】
スキームAは下記のステップを含む:20~50℃で式Aで表される化合物の非晶質と溶媒との懸濁液を結晶化させて、化合物Aの結晶形Vを得、前記溶媒は水又はニトリル系溶媒である。
【0056】
スキーBは下記のステップを含む:式Aで表される化合物と溶媒の溶液中の溶媒を揮発させて、化合物Aの結晶形Vを得、前記溶媒はアルコール系溶媒である。
【0057】
スキーAにおいて、前記化合物Aの非晶質と溶媒との質量体積比は、好ましくは、3.0mg/mL又は50mg/mLである。
【0058】
スキーAにおいて、前記溶媒は、好ましくは水又はアセトニトリルである。
【0059】
スキーAにおいて、前記結晶化させる温度は、好ましくは50℃である。
【0060】
スキーBにおいて、前記溶媒は、好ましくはメタノールである。
【0061】
前記スキーAのある形態において、下記のステップを含む:20~50℃で化合物Aの非晶質と溶媒との懸濁液を結晶化させて、化合物の結晶形Vを得、前記溶媒は水又はアセトニトリルであり、前記結晶化温度は、好ましくは50℃であり、前記化合物Aの非晶質と溶媒との質量体積比は50mg/mL又は3.0mg/mLである。
【0062】
前記形態Bのある形態において、下記のステップを含む:化合物Aと溶媒の溶液中の溶媒を揮発させて、化合物Aの結晶形Vを得、前記溶媒はメタノールであり、前記温度は50℃である。
【0063】
本発明において、前記式Aで表される化合物の非晶質は、特許出願CN201911379293.8の方法を参照して製造される(具体的には実施例を参照)。
【0064】
前記式Aで表される化合物又はその溶媒和物の結晶形(例えば、結晶形I、結晶形II、結晶形III、結晶形IV、結晶形V、結晶形VI、結晶形VII、結晶形VIII及び結晶形IXのうちの一つ又は複数)及び/又は前記物質Aの結晶形III、及び医薬補助材料を含む医薬組成物である。ここで、前記結晶形の投与量は、治療上有効な量であり得る。
【0065】
前記医薬補助材料は、医薬製造の分野で広く使用されているものであってもよい。補助材料は、主に安全的、安定的でかつ機能的な医薬組成物を提供するために使用され、被験者に投与された後の活性成分を所望の速度で溶出させる方法、又は被験者に組成物を投与した後、活性成分が効果的に吸収されることを促進する方法をさらに提供することができる。前記医薬補助材料は、不活性充填剤であってもよく、又は組成物の全体的なpH値の安定化、又は組成物の活性成分の分解の防止などの特定の機能を提供することができる。前記医薬補助材料は、接着剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、充填剤、造粒剤、ゲル接着剤、崩壊剤、潤滑剤、接着防止剤、流動促進剤、湿潤剤、ゲル化剤、吸収遅延剤、溶解阻害剤、促進剤、吸着剤、緩衝剤、キレート剤、防腐剤、着色剤、香料、甘味料のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0066】
薬学的に許容される補助材料として使用できる物質は、イオン交換体、アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリコン、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸エステル、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロッキングポリマー、ラノリンなどの塩又は電解質、ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖類、コーンスターチやポテトスターチなどのデンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体、ガムパウダー、モルト、ゼラチン、タルク、ココアバター及び座薬ワックスなどの補助材料、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油などの油、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールなどのグリコール系化合物、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル、寒天、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張塩、リンゲル溶液、エタノール、リン酸緩衝液、及びラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性の適切な潤滑剤、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、調味剤及び香料、防腐剤及び酸化防止剤を含むが、これらに限定されない。
【0067】
本発明の医薬組成物は、開示された内容に応じて、当業者に公知の任意の方法を用いて製造することができる。例えば、従来の混合、溶解、造粒、乳化、粉砕、封入、包埋又は凍結乾燥工程が挙げられる。
【0068】
本発明は、P2X3阻害剤の製造における、前記式Aで表される化合物又はその溶媒和物の結晶形(例えば、結晶形I、結晶形II、結晶形III、結晶形IV、結晶形V、結晶形VI、結晶形VII、結晶形VIII及び結晶形IXのうちの一つ又は複数)、前記物質Aの結晶形IIIの使用を提供する。前記使用において、前記P2X3阻害剤は、哺乳動物の生体内で使用することができ、また、生体外でも使用でき、主に実験の目的で使用され、例えば、標準試料又は対照試料として比較を提供するか、又は当該技術分野の常法に従ってキットを製造して、P2X3の阻害効果の迅速に検出する。
【0069】
本発明は、薬物の製造における、前記式Aで表される化合物又はその溶媒和物の結晶形(例えば、結晶形I、結晶形II、結晶形III、結晶形IV、結晶形V、結晶形VI、結晶形VII、結晶形VIII及び結晶形IXのうちの一つ又は複数)、前記物質Aの結晶形IIIの使用をさらに提供し、前記薬物は、動物の少なくとも部分的にP2X3によって媒介される又は活性関連疾患の防護、処理、治療、又は軽減に使用される薬物であり、或いは、前記薬物は、疼痛、泌尿器疾患又は呼吸器疾患の治療に使用される薬物である。
【0070】
本発明は、動物(例えば、ヒト)の少なくとも部分的にP2X3によって媒介される又は活性関連疾患の防護、処理、治療、又は軽減における、前記式Aで表される化合物又はその溶媒和物の結晶形(例えば、結晶形I、結晶形II、結晶形III、結晶形IV、結晶形V、結晶形VI、結晶形VII、結晶形VIII及び結晶形IXのうちの一つ又は複数)、前記物質Aの結晶形III又は前記医薬組成物の使用をさらに提供する。前記疾患は、呼吸器系疾患、咳、慢性咳、特発性肺線維症、慢性肺閉塞、喘息、疼痛、尿失禁、自己免疫疾患、過活動膀胱、排尿障害、炎症、アルツハイマー病、パーキンソン病、睡眠障害、てんかん、精神疾患、関節炎、神経変性症、外傷性脳損傷、心筋梗塞、関節リウマチ、脳卒中、血栓症、アテローム性動脈硬化症、結腸症候群、炎症性腸疾患、消化管疾患、胃腸機能障害、呼吸不全、性機能障害、心血管系疾患、心不全、高血圧、尿失禁、膀胱炎、関節炎、子宮内膜症、血液疾患、筋骨格及び結合組織発達障害、全身障害疾患を含むが、これらに限定されない。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記疾患は疼痛を含み、前記疼痛は、炎症性疼痛、手術疼痛、内臓痛、歯痛、月経前疼痛、中枢性疼痛、火傷による疼痛、片頭痛、又は群発頭痛を含むが、これらに限定されない。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記疾患は泌尿器疾患を含み、前記泌尿器疾患は、尿失禁、過活動膀胱、排尿障害、膀胱炎を含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記疾患は呼吸器疾患を含み、前記呼吸器疾患には、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、気管支けいれん、又は慢性咳を含む呼吸障害が含まれるが、これに限定されない。
【0074】
本発明は、前記式Aで表される化合物又はその溶媒和物の結晶形(例えば、結晶形I、結晶形II、結晶形III、結晶形IV、結晶形V、結晶形VI、結晶形VII、結晶形VIII及び結晶形IXのうちの一つ又は複数)、前記物質Aの結晶形III又は前記医薬組成物の、動物(例えば、ヒト)の少なくとも部分的にP2X3によって媒介される又は活性関連疾患を防護、処理、治療、又は軽減する方法をさらに提供する。前記疾患は、呼吸器系疾患、咳、慢性咳、特発性肺線維症、慢性肺閉塞、喘息、疼痛、尿失禁、自己免疫疾患、過活動膀胱、排尿障害、炎症、アルツハイマー病、パーキンソン病、睡眠障害、てんかん、精神疾患、関節炎、神経変性症、外傷性脳損傷、心筋梗塞、関節リウマチ、脳卒中、血栓症、アテローム性動脈硬化症、結腸症候群、炎症性腸疾患、消化管疾患、胃腸機能障害、呼吸不全、性機能障害、心血管系疾患、心不全、高血圧、尿失禁、膀胱炎、関節炎、子宮内膜症、血液疾患、筋骨格及び結合組織発達障害、全身障害疾患を含むが、これらに限定されない。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記疾患は疼痛を含み、前記疼痛は、炎症性疼痛、手術疼痛、内臓痛、歯痛、月経前疼痛、中枢性疼痛、火傷による疼痛、片頭痛、又は群発頭痛を含むが、これらに限定されない。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記疾患は泌尿器疾患を含み、前記泌尿器疾患は、尿失禁、過活動膀胱、排尿障害、膀胱炎を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記疾患は呼吸器疾患を含み、前記呼吸器疾患には、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、気管支けいれん、又は慢性咳を含む呼吸障害が含まれるが、これに限定されない。
【0078】
前記医薬組成物は、前記医薬組成物を投与することにより、治療に伴う味覚障害の副作用を低減させることを特徴とする。
【0079】
当本技術分野の常識に違反しない限り、前記各好ましい条件は、任意に組み合わせて、本発明の各好ましい実施例を得ることができる。
【0080】
本発明で使用される試薬及び原料は市販品として入手できる。
【0081】
本発明の積極的な進歩的効果は下記の通りである:
1.従来技術では当該複素環系化合物の結晶形を報告せず、本出願は初めて当該化合物の多くの新規結晶形を発見した。本発明は、多くの実験及びスクリーニングにより、結晶形I、結晶形II、結晶形III、結晶形IV、結晶形V、結晶形VI、結晶形VII、結晶形VIII又は結晶形IXを初めて製造し、これを候補とした。
2.本発明により製造された結晶形の一部は、安定性が良好で、保存が容易であり、医薬品の開発や製造過程における結晶転移のリスクを回避でき、バイオアベイラビリティや薬効の変化を回避できるため、臨床使用に適した剤形に開発することができ、経済的価値が高い。
3.本発明は、結晶形I、結晶形II、結晶形III、結晶形IV、結晶形V、結晶形VI、結晶形VII、結晶形VIII、結晶形IXの塩又は溶媒和物の製造方法をさらに提供し、操作が簡単で再現性が高く、溶媒が残りにくく、環境にやさしく、さまざまなスケールの生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図2】結晶形IIIのTGA/DSCのオーバーレイである。
【
図3】加熱して脱水する前後の結晶形IIIのXRPDのオーバーレイである。
【
図5】結晶形IIIのDVS試験前後のXRPDのオーバーレイである。
【
図8】結晶形VのTGA/DSCのオーバーレイである。
【
図9】結晶形VのDVS試験前後のXRPDのオーバーレイである。
【
図13】結晶形IのTGA/DSCのオーバーレイである。
【
図15】結晶形Iの吸湿後のXPRDスペクトルである。
【
図16】結晶形IのDVS試験前後のXRPDのオーバーレイである。
【
図19】結晶形IIの残留MTBEのHNMRスペクトルである。
【
図20】結晶形IIのTGA/DSCのオーバーレイである。
【
図23】結晶形IVのTGA/DSCのオーバーレイである。
【
図24】結晶形IVの脱水前後のXRPDのオーバーレイである。
【
図27】結晶形VIのXRPDのオーバーレイである。
【
図28】結晶形VIIのXRPDスペクトルである。
【
図29】結晶形VIIの残留エチレングリコールのHNMRスペクトルである。
【
図30】結晶形VIIのTGA/DSCのオーバーレイである。
【
図31】結晶形VIIIのXRPDスペクトルである。
【
図32】結晶形VIIIのTGA/DSCのオーバーレイである。
【
図33】結晶形VIII及び原料のHNMRスペクトルである。
【
図34】結晶形VIII及び乾燥前後の試料のXRPDのオーバーレイである。
【
図36】結晶形IXのTGA/DSCのオーバーレイである。
【
図37】非晶質試料から得られた結晶形IIIのXRPDのオーバーレイである。
【
図38】非晶質試料から得られた結晶形IIIのDSC&TGAのオーバーレイである。
【
図39】結晶形IIIの異なる体積比の混合溶媒でスラリー化させたXRPDのオーバーレイである。
【
図40】200mgグレードの結晶形IIIのXRPDのオーバーレイである。
【
図41】200mgグレードの結晶形IIIのPLM図である。
【
図42】結晶形III(3g)のXRPDのオーバーレイである。
【
図43】結晶形IIIの水中で、室温でスラリー化させる前後のXRPDのオーバーレイである。
【
図46】結晶形I、結晶形Vの競争スラリー化実験のXRPDのオーバーレイである。
【
図47】結晶形IとVの固体状態における安定性データ結果図である。
【
図48】結晶形Iの安定性試験の試料のXRPDのオーバーレイである。
【
図49】結晶形IIIの安定性試験の試料のXRPDのオーバーレイである。
【
図50】結晶形Iの粉砕試験前後のXRPDオーバーレイである。
【
図51】結晶形Iの圧力試験前後のXRPDのオーバーレイである。
【
図52】結晶形IIIの粉砕試験前後のXRPDのオーバーレイである。
【
図53】結晶形IIIの圧力試験前後のXRPDのオーバーレイである。
【
図54】結晶形I、III及びVの溶解度データ図である。
【
図55】結晶形Iの溶解度試験の残留固体のXRPDのオーバーレイである。
【
図56】結晶形Vの溶解度試験の残留固体のXRPDのオーバーレイである。
【
図57】結晶形IIIの溶解度試験の残留固体のXRPDのオーバーレイである。
【
図59】非晶質試料のDSC&TGAのオーバーレイである。
【
図60】結晶形IXの
1HNMRスペクトルである。
【
図61】結晶形Vの安定性試験の試料のXRPDのオーバーレイである。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下、実施例の形態によってさらに本発明を説明するが、これによって本発明を前記実施例の範囲内に限定するわけではない。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常の方法及び条件、或いは商品の説明書に従って選ばれた。
【0084】
以下、具体的な実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明の基本原理、主要な特徴及び利点を説明することを意図しており、本発明は以下の実施例によって限定されないことを理解されたい。実施例で使用される実施条件は、特定の要件に応じてさらに調整することができ、記載されていない実施条件は、通常、従来の実験における条件である。
【0085】
以下の実施例において、前記実験方法は、通常、従来の条件又は従来の試験条件に従って行われ、前記化合物は、有機合成又は市販の方法によって得ることができる。以下の実施例で用いた化合物は、市販の方法により得られ、純度は99%に達する。
【0086】
本発明で使用される略語は、下記のように解釈される:
XPRD:粉末X線回折
TGA:熱重量分析
DSC:示差走査熱量分析
DVS:動的水分吸脱着分析
PLM:偏光顕微鏡分析
【0087】
そのテスト条件は次の通りである:
XRPD
固体は、粉末X線回折計(ブルックD8 advance又はD2 Phase)を使用して特徴付けられる。
スキャン角度:3°(2θ)~40°(2θ)。
ステップサイズ:0.02°(2θ)。
スキャン速度:0.3秒/ステップ(D8)、0.2秒/ステップ(D2)。
光管電圧:40KV(D8)、30KV(D2)。
光管電流:40mA(D8)、10mA(D2)。
回転:オン。
サンプルパン:ゼロバックグラウンドサンプルパン。
【0088】
TGA
TA Instrument熱重量分析Q500又はDiscovery TGA 55を用いて固体試料の熱重量分析を行う。サンプルパンを平衡化した後、試料を吊り下げワイヤーにぶら下がって、炉に持ち上げる。安定化後、試料を10℃/分の速度で異なる終点温度に加熱する。
【0089】
DSC
TA Instrumentの示差走査熱量計Q200及びDiscovery DSC 250を用いて固体試料のDSC分析を行う。試料を計量し、数値を記録し、試料をサンプルチャンバーに置う。試料を10℃/分の速度で25℃から異なる終点温度に加熱する。
【0090】
DVS
IGAsorp動的水吸着装置を用いて固体のDVS分析を行う。
温度:25℃。
気流:250mL/分。
スキャンサイクル:2。
最小試験時間:30分。
最大試験時間:2時間。
バランス待ち:98%。
【0091】
PLM
ニコンのEclipse LV100N POL型偏光顕微鏡を用いて試料を観察した。
【0092】
実施例1:式Aで表される化合物の製造
【0093】
【0094】
ステップ1 (S)-2-((2-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-7-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)メチル)モルホリン-4-ギ酸tert-ブチルの製造
【0095】
【0096】
100mLの丸底フラスコに、(S)-2-エチニルモルホリン-4-ギ酸tert-ブチル(3.1g、1.0eq、中間体1-4)、4-ブロモ-2,6-ジフルオロベンゼンホルムアルデヒド(2.76g、1.0eq、化合物172-1)、4-クロロピリジン-2-アミン(1.61g、1.0eq、化合物172-2)、CuCl(0.37g、0.3eq)、Cu(OTf)2(1.36g、0.3eq)、イソプロパノール(50mL)を順次に加え、窒素ガスで3回置換し、80℃の油浴で一晩加熱し、TLCで原料化合物172-2が消失したことを検出した。イソプロパノールをスピン乾燥し、EAとアンモニア水で順次に抽出し、EA相を取り、飽和食塩水とクエン酸で順次に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転乾燥させ、カラムを通して中間体172-3のを得、白色固体であった(3.0g、純度:78%)。LC-MS:[M+H]+=542.2。
【0097】
ステップ2 (S)-2-((2-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-7-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)メチル)モルホリンの製造
【0098】
【0099】
中間体172-3(2.67g)をジクロロメタン(24mL)に溶解させ、次いで塩酸ジオキサン(24mL)を加え、室温で1.0時間攪拌し、LC-MSで反応が完了したことを検出した。反応液をスピン乾燥させ、反応液に水(15mL)とジクロロメタン(15mL)を加え、抽出後、水相を除去し、水相が弱アルカリ性(pH=8~9)になるまで炭酸水素ナトリウム水溶液でpHを調節した。分離してジクロロメタン相を取り、水相をジクロロメタンで抽出した(10mL×2)。ジクロロメタン相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、スピン乾燥させて中間体172-4を得、白色固体であった(1.70g、純度:88.6%)。LC-MS:[M+H]+=442.1。
【0100】
ステップ3 (S)-2-((2-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-7-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)メチル)モルホリン-4-ギ酸メチルの製造
【0101】
【0102】
中間体172-4(1.4g、1.0eq)をジクロロメタン(10mL)に溶解させ、トリエチルアミン(480mg、1.5eq)を加え、クロロ酢酸メチル(388mg、1.3eq)を滴下した。1.0時間の反応させた後、LC-MSは生成物の形成を示した。反応後、水(10mL)を加えて30分間攪拌し、次に、分離してジクロロメタン相を取り、水相をジクロロメタンで抽出した(10mL×2)。ジクロロメタン相を合わせ、飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムでスピン乾燥させ、カラムを通して中間体172-5を得、白色固体であった(1.01g、純度:93.02%)。LC-MS:[M+H]+=499.8。
【0103】
ステップ4 (S)-2-((2-(4-(ベンジルチオ)-2,6-ジフルオロフェニル)-7-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)メチル)モルホリン-4-ギ酸メチルの製造
【0104】
【0105】
中間体172-5(0.73g、1.0eq)をジオキサン(4mL)に溶解させ、BnSH(0.24g、1.3eq)、Pd2(dba)3(0.04g、0.03eq)、Xantphos(0.04g、0.05eq)、DIEA(0.60g、3.0eq)を加え、N2で3回置換し、80℃で一晩反応させた。LCMSで原料が完全に消失したことをモニターした。反応液にジクロロメタン(10mL)と水(10mL)を加え、分離してジクロロメタン相を取り、水相をジクロロメタンで抽出した(10mL×2)。ジクロロメタン相を合わせ、飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムでスピン乾燥させ、カラムを通して中間体172-6を得、白色固体であった(0.82g、純度:91.53%)。LC-MS:[M+H]+=544.2。
【0106】
ステップ5 (S)-2-((7-クロロ-2-(4-(クロロスルホニル)-2,6-ジフルオロフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)メチル)モルホリン-4-ギ酸メチルの製造
【0107】
【0108】
中間体172-6(510mg)を反応フラスコに加え、アセトニトリル(3mL)を加えて溶解させ、氷酢酸(281mg、5.0eq)を加え、氷浴下でSO2Cl2(506mg、4.0eq)を滴下した。0℃で1時間反応させた。LCMSは原料が消失し、中間体172-7が生成したことを示した。反応は処理せず、反応溶液をそのまま次のステップに使用した。
【0109】
ステップ6 (S)-2-((7-クロロ-2-(2,6-ジフルオロ-4-スルファモイルフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)メチル)モルホリン-4-ギ酸メチルの製造
【0110】
【0111】
0℃でアンモニア水(2mL)をアセトニトリル(1mL)で希釈して上記反応液に滴下し、室温で0.5時間反応させた。LCMSは原料が完全に消失し、標的生成物が生成したことを示した。反応溶液を水及び酢酸エチルで2回抽出し、食塩水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで
乾燥させ、濃縮し、C18カラム(水/アセトニトリル、RRt=22.5分)で分離・精製した。非晶質状態の化合物Aを得、白色固体であった。(185mg、純度:99.74%)。LC-MS:[M+H]+=501.1。
【0112】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ = 8.11 (d, J=7.4, 1H), 7.29 (d, J=1.6, 1H), 7.22 (s, 2H), 7.14 (d, J=6.6, 2H), 6.60 (dd, J=7.4, 2.1, 1H), 3.33 (d, J=12.8, 1H), 3.13 (d, J=11.3, 2H), 3.07 (s, 3H), 2.97 (d, J=7.8, 1H), 2.77 - 2.69 (m, 1H), 2.69 - 2.61 (m, 1H), 2.53 (dd, J=15.5, 8.3, 1H).
【0113】
実施例2:原料の後処理
実施例1を参照して合計11.1gの化合物Aを製造し、20mLのアセトンを加え、65℃(窒素ガスで保護)で2.0時間還流し、アセトンを直接にスピン乾燥させ、40℃で12時間真空乾燥させ、核磁気は約1%のアセトン残留物があることを示した。80℃で再度12時間真空乾燥させ、核磁気はまだアセトン残留物があることをを示した。5.3gを取り、再度80℃で12時間真空乾燥させ、核磁気はまだアセトン残留物があることをを示した。当該バッチの生成物をアセトニトリル(16mL)に加え、85℃(窒素ガスで保護)で2.0時間還流し、アセトニトリルを直接にスピン乾燥させ、さらに80℃で12時間真空乾燥させ、核磁気は溶媒の残留がなく、合格であることを示し、5.2gを入庫した。製品の純度は99.29%であり、白色の粉末状であった。
【0114】
PLM図とXRPDの結果は、原料が10~50μmの不規則な結晶であり、結晶化度が一般的であり、非晶質状態であることを示した。
図37に示されるように、DSCスペクトルは、原料が約150~180℃の間に2つの接続された吸熱ピークを有し、ピーク温度がそれぞれ64℃±2℃及び173℃±2℃であり、
図38に示されるように、TGAスペクトルは、試料が230℃前に基本的に重量損失がないことを示した。
【0115】
実施例3:式Aで表される化合物の非晶質の製造及び特徴付け
3.1化合物Aを所定量のTHFに溶解させ、減圧濃縮して乾燥させ、非晶質試料を得た。XRPD特性については、
図37を参照されたい。
【0116】
実施例4:式Aで表される化合物の結晶形Iの製造及び特徴付け
4.1 EtOH、IPA、NBA、MEK、ACN、アセトン、EA、IPAc、Heptの9種類の溶媒をそれぞれ選択し、室温で懸濁してスラリー化させ、スラリー化の濃度は60mg/mLであり、結晶形Iを得た。
【0117】
4.2 IPA、NBA、MEK、アセトン、Tol、EAの6種類の溶媒をそれぞれ選択し、50℃で懸濁してスラリー化させ、スラリー化の濃度は100mg/mLであり、結晶形Iを得た。
【0118】
4.3 IPAcを溶媒として選択し、50℃で懸濁してスラリー化させ、スラリー化の濃度は50mg/mLであり、結晶形Iを得た。
【0119】
4.4 メタノールとエタノール中でゆっくりと結晶を冷却させ、冷却温度は50℃からRTまでであり、いずれも結晶形Iを得ることができた。
【0120】
4.5 テトラヒドロフランを良溶媒として試料を溶解させ、特定の濃度の試料溶液を形成し、Tol、Hept、水をそれぞれ貧溶媒として試料溶液にゆっくりと滴下し、体積比は過飽和度を高めるためにすべて1:10にし、それによって固体を析出させ、結晶形Iを得た。
【0121】
4.6 EtOHを溶媒として選択し、揮発性結晶化試験を行い、結晶形Iを得た。
【0122】
結晶形Iの2θ角で表されるXRPDは
図12に示された通りである。前記結晶形IのDSCスペクトルにおいて、152℃に吸熱ピークを有し、融解エンタルピーは44±2J/gであった。前記結晶形IのTGAスペクトルにおいて、RT~230℃の温度区間に重量損失はなかった。そのTGA及びDSCスペクトルは、
図13に示された通りである。DSC及びTGAスペクトルを組み合わせると、当該製品が無水結晶であることが分かった。前記結晶形IのDVSスペクトルは
図14に示された通りであり、相対湿度が40%を超えると、結晶形Iの重量が急激に増加した。相対湿度が40%に下がると、吸収された水分がすべて放出された。前記結晶形Iの吸湿後のXRPDスペクトルにおいて、結晶形Iは高湿度環境下で吸湿して結晶転移をし、水和物結晶形IVに転換し、これを30℃の真空乾燥箱に入れて乾燥させた後、再び初期結晶形Iに転換し、その吸湿後のXRPDスペクトルは、
図15に示された通りである。DVS試験結果(
図14)と合わせて、環境相対湿度が40%を超えると、結晶形Iが急速に吸湿して水和物に転換し、相対湿度が50%未満では、吸着した水が急速に脱離して結晶形Iに転換することが分かった。即ち、結晶形IとIVとの間の相互転移は可逆的であった。前記結晶形Iは吸湿性(6.8%、80%RH)を示し、前記結晶形IのDVS試験後も変化せず、そのDVS試験前後のXRPDスペクトルは、
図16に示された通りである。前記結晶形IのPLM図において、結晶形は約5μmの不規則な結晶であり、そのPLMは、
図17に示された通りである。
【0123】
実施例5:式Aで表される化合物の結晶形IIの製造及び特徴付け
5.1 MTBEにおいて、室温で懸濁してスラリー化させ、結晶形IIを得た。
【0124】
5.2 MTBEを溶媒として選択し、50℃で懸濁してスラリー化させ、スラリー化の濃度は100mg/mLであり、結晶形IIを得た。
【0125】
5.3 テトラヒドロフランを良溶媒として試料を溶解させ、特定の濃度の試料溶液を形成し、MTBEを貧溶媒として試料溶液にゆっくりと滴下し、体積比は過飽和度を高めるために1:10にし、それによって固体を析出させ、結晶形IIを得た。
【0126】
結晶形IIの2θ角で表される粉末X線回折スペクトルは
図18に示された通りである。前記結晶形IIの核磁気共鳴水素スペクトルにおいて、化学シフトは1.10及び3.08でMTBEの溶媒残留シグナルを有し、そのモル比は0.39であり、HNMRスペクトルは
図19に示された通りである。前記結晶形IIのTGAスペクトルにおいて、100~160℃の温度区間で3.5%の重量損失があり、160~200℃の温度区間で2.9%の重量損失があった。前記結晶形IIのDSCスペクトルには、隣接する2つの吸熱ピークがあり、そのTGA及びDSCスペクトルは、
図20に示された通りである。
図19に示される残留MTBE水素スペクトルは約6.0%に相当し、当該製品がMTBE溶媒和物であることが分かった。前記結晶形IIのPLMにおいて、結晶形は約2μmの不規則な結晶であり、その偏光顕微鏡図は、
図21に示された通りである。
【0127】
実施例6:式Aで表される化合物の結晶形IIIの製造及び特徴付け
6.1 水を溶媒として選択し、50℃で懸濁してスラリー化させ、スラリー化の濃度は50mg/mLであり、結晶形IIIを得た。
【0128】
6.2 非晶質試料を40℃の水に懸濁してスラリー化させ、結晶形IIIを得、具体的には、試料をメタノールに溶解させ、ろ過して試料溶液を得、スピン蒸発して250mgの非晶質試料を得た。水で20時間懸濁してスラリー化させた後、結晶形IIIを得た。XRPD、DSC、TGA特性評価試験により、純粋な結晶形IIIの製造に成功したことを確認し、その後のスケールアップ実験の種結晶とした。
【0129】
6.3 溶媒-貧溶媒により結晶を沈殿させ、種結晶を加えて核形成を誘導する方法で結晶形IIIを製造した。具体的には、予め試料を表1に示される特定比率の混合溶媒に溶解させ、ろ過して飽和溶液を得、結晶形IIIを種結晶として上記飽和溶液に加え、その後、水を貧溶媒としてゆっくりと加えて固体を析出させ、結晶化を誘導した。ろ過により得られた固体試料に対してXRPD試験を実行した。実験結果は表1に示されるように、結晶形IIIは上記系で不安定であり、溶媒和物又は不安定な水和物に変化した。溶解度と溶媒残留限界の観点から、DMSOを第3種溶媒とし、溶解度は100mg/mLよりも高いため、DMSOを選択して次の研究を行った。
【0130】
【0131】
6.4 上記6.3の実験結果から明らかなように、良溶媒の試料溶液に貧溶媒を加える結晶化方式では標的結晶形IIIを得ることが困難であるため、有機溶媒に溶解した試料を種結晶が分散した水溶液に滴下して化合物Aを結晶化して製造する方法で標的結晶形を製造することを考えた。具体的な方法は、まず試料をDMSOに溶解させ、ろ過してDMSO溶液を得、次いで種結晶が分散した水溶液にゆっくりと滴下した。析出した固体は、種結晶に誘導されて標的結晶形IIIに転移した。表2及び
図1に示されるように、結晶形IIIが当該系に安定に存在することを保証するために、異なる比率のDMSO/水混合溶媒系における結晶形IIIの安定性をそれぞれ検討して、適切な溶媒/貧溶媒の比率を確認した。実験結果は、室温で結晶形IIIは、含水率が60%(体積パーセント)を超えるDMSO/水混合溶媒において、結晶転移が発生せずに安定に存在できることを示した。また、含水率が60%未満であると、結晶形IIIはDMSOの溶媒和物(結晶形IX)に転移した。
【0132】
表2 異なる体積比の混合溶媒における結晶形IIIの安定性結果
【表2】
【0133】
目的生成物の収率の観点から、混合溶媒の比率を確定するために上記の比率における結晶形IIIの理論収率をそれぞれ計算した。表3に示されるように、DMSO/水1:2、1:3、1:4の場合、これら3つの比率の溶媒における結晶形IIIの溶解度がいずれも比較的小さいため、理論収率に大きな差はなく、収率はすべて99%以上であった。
【0134】
表3 異なる比率のDMSO/水混合溶媒における結晶形IIIの理論収率
【表3】
【0135】
6.5 結晶形III(200mg)の増幅
室温で、試料をDMSOに溶解させ、ろ過してDMSO溶液を得、結晶形IIIの種結晶を分散させた水に25μL/分の速度でゆっくりと滴下し、DMSO溶液の滴下量が増加するにつれて、固体の析出が徐々に増加した(DMSO/水1:2、体積比)。XRPDで確認したところ(
図2)、析出したばかりの固体試料はほぼ非晶質であり、反応時間の延長及び種結晶の誘導に伴い、室温で16時間磁力攪拌した後、全て結晶形IIIに転移した。実験により、反応終了後、攪拌を停止して、固体はすぐに底に沈降し、上層の液体はほぼ透明であることが観察された。PLM(
図6)で観察して、得られた結晶形III試料自体は約2μmの結晶であるが、20~50μmの大きな粒子で凝集しやすいため、攪拌を停止すると、凝集により固体が沈降することが分かった。従って、当該結晶形はろ過が容易であった。以上より、貧溶媒を使用して沈殿させて結晶化する方法により200mgの結晶形III試料を成功に製造し、収率は93.0%であり、
1HNMRは残留DMSOが0.1%wtであることを示し、溶媒残留限界(<0.5%wt)に適合した。
【0136】
6.6グラムスケール結晶形IIIのスケールアップ製造
DMSOの体積を低下させ、反応温度を上げ、結晶転移終了後に室温に低下させ、適切にスラリー化実験を延長することは、溶媒残留を低下させ、収率を高めるのに有利である。以上の考察から、3gの結晶形IIIをスケールアップして製造する場合、40℃で1:4のDMSO/水の系を採用し、種結晶の添加量は2%wtであり、DMSO(5V)溶液の滴下速度を25μL/分に制御した。生産スケールアップをシミュレートするために、アンカーパドルを採用し、回転速度は150rpmであった。反応系を40℃で22時間懸濁してスラリー化させ、XRPDの結果は固体が結晶形IIIに転移したことを示した。収率をさらに高めるために、反応温度を室温まで下げ、室温で懸濁してスラリー化し続け、22時間後にろ過して固体試料を得、水にスラリー化させてDMSO溶媒の残留を除去した。
図42に示されるように、3gの結晶形IIIのスケールアップ製造に成功し、収率は96.7%であった。
図43に示されるように、0.7%のDMSO溶媒の残留は、室温で水中でスラリー化させることによって除去でき、結晶形は変化しなかった。
【0137】
化合物の製造、溶媒使用量、溶媒残留及び製品の収率等を考慮し、最終結晶形IIIの結晶化工程温度は40℃であり、反応系は1:4のDMSO/水であり、溶媒体積は25Vであった。以上より、結晶形IIIはグラムスケールのスケールアップ製造を行うことができ、収率は97%に達した。
【0138】
結晶形IIIの2θ角で表されるXRPDスペクトルは
図1に示された通りである。前記結晶形IIIのTGAスペクトルにおいて、RT~100℃の区間における重量減少勾配は1.5%であり、前記「%」は重量百分率である。前記結晶形IIIのDSCスペクトルにおいて、最初の吸熱ピークは0.4の水の除去であり、2番目の吸熱ピークは試料の脱水後の溶融吸熱ピークに起因し、そのTGA及びDSCスペクトルは、
図2に示された通りである。前記結晶形IIIは脱水後、周囲湿度下で速やかに吸湿して再び結晶形IIIになり、加熱して脱水する前後のXRPDスペクトルは、
図3に示された通りである。前記結晶形IIIのDVSスペクトルは、試料がある程度の吸湿性を有し、広い湿度範囲で水分含有量がほとんど変化しないことを示し、そのDVSスペクトルは、
図4に示された通りである。前記結晶形IIIのDVS試験前後のXPRDスペクトルにおいて、DVS試験前後のXRPDに大きな変化はなく、そのXPRDスペクトルは、
図5に示された通りである。前記結晶形IIIのPLMにおいて、結晶形は約2μmの不規則な結晶であり、凝集は20~50μmであり、そのPLM図は、
図6に示された通りである。
【0139】
実施例7:式Aで表される化合物の結晶形IVの製造及び特徴付け
7.1 結晶形I製品を高湿条件下で吸湿させて、結晶形IVを得た。
【0140】
7.2 結晶形I製品スラリーを50~95%の水/アセトン(V/V)でスラリー化させて、結晶形IVを得た。
【0141】
IVの2θ角で表されるXRPDスペクトルは基本的に
図22に示された通りである。前記結晶形IVのTGAスペクトルにおいて、RT~60℃の温度区間で1.2%の重量損失がある。前記結晶形IVのDSCスペクトルにおいて、2つの吸熱ピークピークがあり、最初の広い吸熱ピークは脱水によるものと推定され、後の吸熱ピークは溶融ピークであり、そのTGA及びDSCスペクトルは、
図23に示された通りである。DSC及びTGAスペクトルを組み合わせると、当該製品は水分子が約0.34の水和物結晶形であることが分かった。前記結晶形IVは高湿度環境下でのみ安定であり、脱水後、周囲湿度下で速やかに吸湿して再び結晶形Iになり、加熱して脱水する前後のXRPDスペクトルは、
図24に示された通りである。前記結晶形IVのPLMにおいて、結晶形は約5μmの不規則な結晶であり、そのPLM図は、
図25に示された通りである。
【0142】
実施例8:式Aで表される化合物の結晶形Vの製造及び特徴付け
8.1 水を溶媒として選択し、50℃で懸濁してスラリー化させ、スラリー化の濃度は50mg/mLであり、結晶形Vを得た。
【0143】
8.2 ACNを溶媒として選択し、50℃で懸濁してスラリー化させ、スラリー化の濃度は3.0mg/mLであり、結晶形Vを得た。
【0144】
8.3 MeOHを溶媒として選択し、揮発性結晶化試験を行い、結晶形Vを得た。
【0145】
結晶形Vの2θ角で表されるXRPDスペクトルは
図7に示された通りである。前記結晶形VのTGAスペクトルにおいて、RT~230℃の温度区間に重量損失はない。前記結晶形VのDSCスペクトルにおいて、166℃±2℃に吸熱ピークを有し、融解エンタルピーは70±2J/gであり、そのTGA及びDSCスペクトルは、
図8に示された通りである。DSC及びTGAスペクトルを組み合わせると、当該製品が無水結晶であることが分かった。前記結晶形VのDVSスペクトルは、試料がある程度の吸湿性(0.7%、80%RH)を有していることを示し、そのDVSスペクトルは、
図9に示された通りである。前記結晶形VのDVS試験前後のXPRDスペクトルにおいて、DVS試験前後のXRPDに大きな変化はなく、そのXPRDスペクトルは、
図10に示された通りである。前記結晶形VのPLMにおいて、結晶形は約5μmの不規則な結晶であり、そのPLM図は、
図11に示された通りである。
【0146】
実施例9:式Aで表される化合物の結晶形VIの製造及び特徴付け
9.1 結晶形VIは、60℃で含水率10%(体積比)の水/アセトン混合溶媒中で結晶形I又は結晶形Vを60℃でスラリー化させて得られた。
【0147】
結晶形VIの2θ角で表される粉末X線回折スペクトルは
図26に示された通りである。前記結晶形VIのXRPDスペクトルのオーバーレイにおいて、当該結晶形試料は、周囲湿度(35%RH)下に数分間置かれた後、結晶形Iに転移した。そのXRPDスペクトルオーバーレイは
図27に示された通りである。これは、結晶形VIが非常に不安定な水和物である可能性があることを示唆している。
【0148】
実施例10:式Aで表される化合物の結晶形VIIの製造及び特徴付け
10.1 エチレングリコールを溶媒として選択し、90℃で懸濁してスラリー化させ、スラリー化の濃度は320mg/mLであり、結晶形VIIを得た。
【0149】
10.2 エチレングリコール中でゆっくりと結晶を冷却させ、冷却温度は50℃からRTまでであり、結晶形VIIを得た。
【0150】
結晶形VIIの2θ角で表されるXRPDは基本的に
図28に示された通りである。前記結晶形VIIの
1HNMRスペクトルにおいて化学シフトδは3.39及び4.44でエチレングリコール溶媒の残留を示し、その
1HNMRスペクトルは、
図29に示された通りである。前記結晶形VIIのTGAスペクトルにおいて、rt~120℃の区間で25.7%の重量損失がある。前記結晶形VIIのDSCスペクトルにおいて、2つの広い吸熱ピークがあり、最初の吸熱ピークは脱溶媒によるものと推定され、そのTGA及びDSCスペクトルは、
図30に示された通りである。DSC及びTGAスペクトルを組み合わせると、当該製品がは2.79分子のエチレングリコールを含む溶媒和物であることが分かった。実施例11:式Aで表される化合物の結晶形VIIIの製造及び特徴付け
【0151】
実施例11:式Aで表される化合物の結晶形VIIIの製造及び特徴付け
11.1 結晶形IIIを種結晶とし、40℃で飽和50%THF/水溶液に水を滴下して貧溶媒として、油状になり、室温まで温度を下げた後、スラリー化を続けて結晶形VIII(ウェットケーキ)を得た。
【0152】
結晶形VIIIの2θ角で表されるXRPDスペクトルは基本的に
図31に示された通りである。前記結晶形VIIIのTGAスペクトルにおいて、rt~160℃の温度区間で5.7%の重量損失がある。前記結晶形VIIIのDSCスペクトルにおいて、吸熱ピークが1つしかなく、試料の脱溶媒後の溶融ピークである。従って、結晶形VIIIは溶媒和物であり、そのTGA及びDSCスペクトルは、
図32に示された通りである。前記結晶形VIIIの
1HNMRスペクトルにおいて、化学シフトδは1.76及び3.60でTHF溶媒の残留を示し、その
1HNMRスペクトルは、
図33に示された通りである。前記結晶形VIIIは、0.42分子のTHFを含有した。前記結晶形VIIIは不安定であり、脱水(40℃で3時間の真空乾燥させる)後結晶転移をし、結晶形Iに転移し、その加熱前後のXRPDスペクトルは、
図34に示された通りである。
【0153】
実施例12:式Aで表される化合物の結晶形IXの製造及び特徴付け
12.1 結晶形IXは、40℃の50%DMSO/水飽和溶液中で結晶形IIIをスラリー化させて製造された。
【0154】
前記結晶形IXのTGAスペクトルにおいて、rt~160℃の温度区間で18.23%の重量損失があり、前記結晶形IXのDSCスペクトルにおいて、DSCスペクトルにはTGA重量損失に対応する吸熱ピークがあり、そのTGA及びDSCスペクトルは、
図36に示された通りである。前記結晶形IXの
1HNMRスペクトルにおいて、化学シフトδは2.68でDMSO溶媒の残留を示し、その残留DMSOの
1HNMRスペクトルは、
図60に示された通りである。DSC及びTGAスペクトルを組み合わせて、当該製品がDMSO溶媒和物であることが分かった。DSC及びTGAペクトルを組み合わせて、当該製品がDMSO溶媒和物であることが分かった。
【0155】
実施例13:結晶形の相互転移に関する研究
スクリーニング実験により、2種類の無水晶形(結晶形I、結晶形V)、4種類の溶媒和物(結晶形II、結晶形VII、結晶形IX、結晶形VIII)、及び3種類の水和物(結晶形III、結晶形IV、結晶形VI)を含む9種類の異なる結晶形を得た。
【0156】
13.1 結晶形Iと結晶形IVとの間の転移
結晶形Iは、異なる結晶化方法を繰り返して得ることができるが、結晶形Iは吸湿性形態を示し、相対湿度が40%RHを超えると吸湿して水和物結晶形IVに転移した。従って、結晶形IはAPIの生産とスケールアップにおいて結晶転移するリスクがある。
【0157】
13.2 他の水和物結晶形と結晶形Iとの間の転移
結晶形IIIを除いて、残りの水和物は不安定であり、脱水後に結晶形Iに転移した。
結晶形III(半水和物)は、結晶転移のリスクが低い。
結晶形IV(水和物)は、脱水後に結晶形Iに転移した。
結晶形VI(水和物)は非常に不安定であり、周囲湿度で急速に結晶形Iに転移した。
【0158】
13.3 無水結晶と水和物との間の転移研究
水分活性実験を実行した。結晶形IとV(いずれも無水結晶形)をそれぞれ室温及び60℃で異なる含水率のアセトン/水混合溶媒で3日間スラリー化させ、3日後にろ過して固体試料を得、XRPDを試験し、実験結果は表4に示された通りである。
図44及び
図45に示されるように、室温及び高温のいずれにおいても、結晶形I及びVは、含水率50~90%のアセトン/水系において水和物結晶形IVに転移した。含水率が10%の場合、高温で結晶形I又はVのいずれも、別の水和物(結晶形VI)に転移した。研究により、当該水和物は、周囲湿度(35%RH)で非常に不安定であり、数分間置かれた後、結晶形Iに転移したことが分かった。室温で、結晶形Vは当該溶媒系中で結晶形Iに転移した。
【0159】
表4 結晶形I及び結晶形Vの水分活性の実験結果
【表4】
【0160】
13.4 無水結晶形間の競合スラリー化実験
競合スラリー化実験を実行した:等量の結晶形IとVを秤量して均一に混合した後、XRPDを試験してその結果を競合スラリー化実験のT
0とした。混合物をそれぞれアセトン、エタノール、水でスラリー化させ、反応温度は室温及び60℃であった。3日後、ろ過により固体試料を得、XRPDを試験した。
図46に示されるように、有機溶媒系(アセトン又はエタノール)において、室温又は高温で得られたものは、いずれも結晶形Iであり、結晶形IとVを水中で競合スラリー化させ、室温では溶解度が低いため、結晶転移をせず、両者の結晶形の混晶のままであったが、60℃では結晶形Vに転移した。水分活性度実験の結果と組み合わせると、結晶形Iは有機溶媒系又は含水率の低い(≦10%)混合溶媒中でより安定であり、結晶形Vは高温(60℃)の水で安定であると推測できる。
【0161】
13.5 無水結晶形の間の転移
等量の結晶形Iと結晶形Vを軽く粉砕して均一に混合した後、混合物をそれぞれ60℃オーブンと室温乾燥機(結晶形Iが吸湿して結晶転移することを避ける)に置き、1週間後にXRPDを試験して結晶形の相互転移の有無を研究した。
図47に示されるように、上記条件で1週間放置した後、結晶形Iと結晶形Vは互いに転移する傾向がなく、結晶形IとVはいずれも固体状態で安定していることを示している。
【0162】
実施例14:結晶形安定性の研究
結晶形I、III及びVは、他の結晶形と比較して良好な固体特性を示したため、それらの安定性試験をそれぞれ実行した。
【0163】
14.1 物理的及び化学的安定性研究
結晶形I、III及びVの約10mgをそれぞれ40℃/75%RH(オープン)及び60℃(蓋付け)の安定性チャンバーに7日間入れ、それぞれ0日及び7日に試料の一部を取り出してXRPD及びHPLCを試験し、それぞれ物理的及び化学的安定性を調査した。結果は表5、
図48、
図49及び61に示されるように、上記試験条件で7日後の結晶形III及び結晶形Vは変化せず、同時に化学純度が著しく低下しなかった。これは、結晶形III及び結晶形Vの物理的及び化学的安定性が良好であることを示している。結晶形Iについては、40℃/75%RH(オープン)条件で吸湿して結晶転移をして、水和物結晶形IVに転移した。この結果はDVS結果と一致した。60℃で1週間放置した後、結晶形IのXRPDスペクトルは22~28°(2θ)で変化があることを示し、TGAの結果は室温から60℃までの区間で1.5%の重量損失があることを示し、吸水による回折ピークの変化であると推測される。しかし、結晶形Iは化学的安定性は良好であった。
【0164】
【0165】
14.2 機械的安定性試験
粉砕と打錠により、結晶形IとIIIの機械的安定性をそれぞれ検討した。粉砕試験方法:被検試料を乳鉢でそれぞれ2分間、5分間粉砕した後でXRPDを試験し、結晶形と結晶化度の変化を観察した。圧力試験方法:試料を打錠機の金型に入れ、40MPaで1分間保持した後、取り出してXRPD試験を実行した。
【0166】
結晶形I、結晶形IIIの粉砕(2分間及び5分間)及び打錠(40MPa、1分間)後の安定性の結果は
図50及び
図51に示された通りであり、粉砕後の結晶形Iの結晶化度は著しく低下したが、結晶形は変化しなかった。結晶形IIIの場合、粉砕後の結晶形や結晶化度に有意な変化は見られなかったが(
図52)、打錠後の結晶化度の低下は有意であった(
図53)。
【0167】
実施例15:溶解度に関する研究
結晶形I、III及びVは、他の結晶形と比較して良好な固体特性を示したため、それらに対して溶解度試験をそれぞれ行った。結晶形I、III及びVの、それぞれSGF、FaSSIF、FeSSIFにおける溶解度試験温度は人体の体温37℃をシミュレーションし、試験時間24時間であった。
【0168】
10mgの試料を秤量し、次に2.0mLの生物学的媒介緩衝液(即ち、目標濃度は5mg/mLである)を加えて懸濁液を形成した。恒温水浴シェーカー(37℃、100rpm)に入れ、0.5、2、及び24時間でそれぞれ500mLをサンプリングした。ろ過後、濾液のpH値及びHPLC濃度をそれぞれ試験し、同時にろ過により得られた固体試料に対してXRPD試験を実行した。
【0169】
SGF、FaSSIF、及びFeSSIFの生物学的媒介における結晶形I、III、及びVの溶解度試験の結果は表6及び
図54に示された通りである。上記の3つの結晶形は、異なる生物学的媒介における溶解度に大きな差はなく、SGFにおける溶解度はいずれも5mg/mLを超えている。FeSSIFにおける溶解度はFaSSIFの約3倍であり、食品が薬物の吸収に有利である可能性があることを示している。試験中、生物学的媒介緩衝液のpH値に有意な変化はなかった。
【0170】
図55に示されるように、結晶形IはFaSSIFとFeSSIF緩衝液中で0.5時間置いた場合に水和物結晶形IVに転移した。しかし、結晶形III及びVは試験中に結晶形が変化しなく、結果は
図56及び
図57に示された通りである。
【0171】
【0172】
実験例16:薬物動態研究
ビーグル犬(普通級、Beijing Marshall Bioresources Co.,Ltd.)に化合物Aを経口胃内で1回投与し、血漿中の化合物の薬物動態を研究した。被験薬物(投与量:100mg/kg、投与体積:5mL/kg)を胃内投与し、投与後10分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、24時間及び48時間の試料を採取し、末梢静脈穿刺を実行し、各時点で各動物から約~1.0mLの全血を採取して、K2EDTA採血管に血液試料を収集し、数回転倒してよく混合し、室温に置いた。そして、採血後60分以内に全血0.2mLを凍結保存用チューブで分取し、脱イオン水を1:1で加え、上下転倒させてよく混ぜてから凍結保存した。残りの試料を2~8℃で、2000gで10分間遠心分離して、血漿試料を得、各試料の溶血を記録し、検出への影響を評価し、血漿の色を観察し、採血表に記録した。(「-」は溶血なし、「+」はピンク色の上清、「++」は赤色の上清を表す)。
【0173】
血漿試料中の化合物Aの濃度は、LC-MS/MS法(Non-GLP)によって測定された。薬物動態パラメーターの計算は、WinNonlin(PhoenixTM、バージョン8.1)又は他の類似のソフトウェアを使用して実行された。血漿薬物濃度-時間データが利用可能な場合、下記の薬物動態パラメーターが計算された:CL(クリアランス)、Vss(定常状態における分布容積)、T1/2(消失半減期)、Cmax(ピーク濃度)、Tmax(ピーク時間)、AUC(血中薬物濃度-時間曲線下面積)、MRT(平均滞留時間)。薬物動態データは、平均値、標準偏差、サンプルサイズなどの記述的統計学によって記述された。計算はMicrosoft Excel 2007又は2010で実行された。
【0174】
16.1 結晶形Iと結晶形VのPK特性の比較
結晶形Iと結晶形Vの比較では、同じ3匹のイヌ(オス)に、10mg/kgでpo、絶食、0.5%CMC-Na、3時間撹拌した後で投与(懸濁液)され、得られたデータは表7に示された通りである。
【0175】
【0176】
AUC(結晶形I):AUC(結晶形V)=300.53%を計算した結果、結晶形Vの暴露レベル及び絶対バイオアベイラビリティは結晶形Iより小さいことが分かった。
【0177】
16.2 結晶形IIIの薬物動態研究
結晶形IIIの経口投与における性別の差異&禁食かどうかの差を対比し、100mg/kg、po、絶食&非絶食、0.5%CMC-Naで8時間攪拌した後で投与し、懸濁し、得られたデータは表8に示された通りである。
【0178】
【0179】
結果:絶食条件下では、オスメス犬の血漿及び全血の薬物濃度に所定の差があり、血漿中のオスはメスより約6倍高く、全血中のオスはメスより1.9倍高かったが、非絶食条件下では、オスメス犬の血漿及び全血の薬物濃度にはいずれも有意差がなく、絶食条件下では、オスメス犬における薬物の赤血球分布に差があったが(オスメス血液:血漿=1452%Vs521%)、非絶食条件下では、オスメス犬における薬物の赤血球分布のいずれにも有意差はなく(オスメス血液:血漿=114%Vs116%)、オスメスにかかわらず、非絶食条件下では、血漿及び全血の薬物濃度はいずれも絶食条件下よりも高く、非絶食条件下では、血漿の薬物濃度の上昇レベルは全血より高く、メス犬の血漿の薬物濃度は絶食の有無によって最も影響を受けた。全血の薬物濃度の上昇は非絶食条件下で薬物吸収の増加による体内全体の暴露レベルの上昇による可能性があり、飲食は化合物Aの吸収に役立つと推測できるが、血漿の薬物濃度の上昇レベルが全血より高い理由は:1、赤血球中の薬物濃度が飽和し、同様に血漿の薬物濃度が急激に増加した(可能性が最も高いと推定できる)、2、1日目の絶食投与後の薬物は赤血球中に蓄積し続け、7日間の洗浄期間は赤血球中に分布している薬物の代謝を完全にするのに十分ではないため、2回目の非絶食投与時に血漿の薬物濃度が有意に上昇した、3、1日目の絶食投与後、赤血球に影響を与え、2回目の非絶食投与時に赤血球と薬物が結合する能力を低下させ、血漿の薬物濃度の有意な上昇を招いた。
【0180】
生物学的試験
実施例A インビトロ生物活性評価
本発明の化合物のアンタゴニスト特性は、FLIPR(蛍光イメージングプレートリーダー)によって測定され、前記化合物は、HEK293細胞(ヒト腎臓上皮細胞株、ATCC)において発現されるhP2X3(ヒトプリンP2X受容体サブタイプ3、登録番号:NM_002559.4)の活性化によって誘導された細胞内カルシウム上昇の阻害剤である。
【0181】
hP2X3を安定的に発現するHEK293細胞を、37℃、湿度5%の細胞インキュベーターに入れ、10%のFBS(ウシ胎児血清、Gibco、10099-141)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco、15140-122)、及び1mg/mLのG418(Invitrogen、10131027)を含むDMEM高グルコース培地で培養した。FLIPR実験の18~24時間前に、細胞を400,000細胞/mLの密度で384ウェルに播種し(10,000細胞/ウェル)、細胞インキュベーターで一晩培養した。実験当日、培地を廃棄し、細胞をFLIPR緩衝液(30mLの緩衝液当たり0.3mLのプロベネシドが含まれる(Thermo、P36400)、0.6mLの1M HEPES(Invitrogen、15630080)及び29.1mLのHBSS(Invitrogen、14065056)で洗浄した。20μLの0.5×カルシウム6蛍光染料(MolecularDevices、R8190)を各ウェルに添加し、染料ローディングを37℃で1.5時間培養した。次いで、10μLの試験化合物(10mMの濃度でDMSOに溶解させ、緩衝液で段階希釈)又は溶媒を各ウェルに加え、室温で30分間平衡化させた。次いで、細胞プレートをFLIPRに入れ、ベースライン蛍光測定(励起波長:485nm、発光波長:525~535nm)を実行した。その後、アゴニスト(最終濃度は2.5μMであるBZ-ATP(Sigma、B6396))又は溶媒(超純水)を10μL/ウェルで添加し、1秒間隔で2分間蛍光値を測定し、最後に出力蛍光をカウントして分析した。
【0182】
上記の方法を用いて得られたIC50は下記の表に示された通りである。
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
実施例B インビトロP2X2/3受容体選択性評価
本発明におけるP2X2/3受容体に対する化合物の選択性は、FLIPR(蛍光イメージングプレートリーダー)によって測定され、前記化合物は、HEK293細胞(ヒト腎臓上皮細胞株、ATCC)において発現されるhP2X2/3(ヒトプリン作動性P2X受容体サブタイプ2及びサブタイプ3により形成されるヘテロ二量体受容体、P2X2の登録番号:NM_002559.4、P2X3の登録番号:NM_002559.4)の活性化によって誘導された細胞内カルシウムの増加の阻害剤であった。
【0187】
hP2X2/3を安定的に発現するHEK293細胞を、37℃、湿度5%の細胞インキュベーターに入れ、10%のFBS(ウシ胎児血清、Gibco、10099-141)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco、15140-122)、及び1mg/mLのG418(Invitrogen、10131027)を含むDMEM高グルコース培地で培養した。FLIPR実験の18~24時間前に、細胞を250000細胞/mLの密度で96ウェルに播種し(25000細胞/ウェル)、細胞インキュベーターで一晩培養した。実験当日、培地を廃棄し、細胞をFLIPR緩衝液(30mLの緩衝液当たり0.3mLのプロベネシドを含む(Thermo、P36400)、0.6mLの1M HEPES(Invitrogen、15630080)及び29.1mLのHBSS(Invitrogen、14065056)で洗浄した。75μLの1mMFluo-4AM蛍光染料(Thermo、F14202)を各ウェルに加え、染料ローディングを37℃で1.0時間培養した。次いで、96ウェルプレートを緩衝液で1回洗浄し、試験化合物又は溶媒を含む50μLの緩衝液を各ウェルに加え、室温で30分間培養した。次いで、細胞プレートをFLIPRに入れ、ベースライン蛍光測定(励起波長:485nm、発光波長:525~535nm)を実行した。その後、アゴニスト(最終濃度が5μMであるBZ-ATP(Sigma、B6396))又は溶媒(超純水)を50μL/ウェルで加え、1秒間隔で2分間蛍光値を測定し、最後に出力蛍光をカウントして分析した。
【0188】
上記の方法を用いて得られたIC50は下記の表に示された通りである。
【0189】
表10 上記の方法を用いたIC
50データ
【表10】
【0190】
実施例C 簡易クエン酸咳モデル活動試験
オスのダンキンハートレーモルモット(300~350g)を動物霧化ボックスに入れ、霧化ボックスのドアを閉め、同時に超音波霧化機(広東粤華)をオンにし、最大霧化量(約2mL/分)で霧化ボックスに17.5%のクエン酸ガスを充填し、霧化を20秒間継続し、霧化開始から時間を計り、10分以内の動物の咳の様子を連続的に観察した。10分観察期間中に咳を人工的に計数し、腹部のけいれん、口の開き、頭部の下垂などのモルモットの咳の姿勢、及び咳の音で咳の回数を判断し、最初の5分の咳回数、10分の咳回数を記録し、同時にモルモットの咳潜伏期間、即ち、クエン酸の誘導開始から1回目の咳発生までの時間を記録した。
【0191】
【0192】
化合物172は咳の回数を減らし、咳の潜伏期を長くする効果があり、陽性化合物の効果と同等であった。
【0193】
実施例D ATP-クエン酸咳モデル活性試験
オスのダンキンハートレーモルモット(300~400g)を全身ボリュームスキャンボックスに入れ、3~5分間に適応させた後、2分間のATP噴霧を実行し、3分間隔で、さらに5分間のクエン酸噴霧を与え、すべての噴霧速度は約300ul/分であった。クエン酸噴霧の開始から、10分以内の動物の咳の回数と咳の潜伏期間を記録した。10分間観察期間中に咳を人工的に計数し、腹部のけいれん、口の開き、頭部の下垂などのモルモットの咳姿勢、及び咳の音で咳の回数を判断し、10分間の咳回数を記録し、同時にモルモットの咳潜伏期間を記録した。
【0194】
動物を溶媒群、デキストロメトルファン(63mg/kg)陽性群、AF-219(30mg/kg)陽性群、実施例172化合物(3、10、30mg/kg)投与群に分け、すべての化合物を経口投与し、デキストロメトルファンはATP-クエン酸曝露の40分前に投与され、残りの化合物はATP-クエン酸曝露の2時間前に投与された。
【0195】
表12 化合物について得られたキニーネ/水の飲用比率
【表12】
【0196】
表5に示されるように、すべての化合物は処理後、溶媒群と比較して咳回数が低下する傾向があり、その中で、デキストロメトルファン陽性群と化合物172はいずれも咳回数を有意に低下させる効果が得られ、化合物172は用量依存性の抑制効果があった。化合物172は、陽性化合物2に比べて咳抑制効果が強った。
【0197】
実施例E インビトロ細胞毒性試験
本発明における化合物のインビトロ細胞毒性試験は、HepG2細胞においてCCK-8法によって測定された。対数期のHepG2細胞(北納生物)を収集し、細胞懸濁液の濃度を調節し、50,000細胞/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに敷き、細胞を5%、37℃の細胞インキュベーターに入れて一晩培養し、プレート内の細胞融合度が80~90%に達した後、液体を交換して各勾配の濃度の試験化合物又は溶媒(DMSO)を加え、5%、37℃の細胞インキュベーターで48時間培養した。処理終了後、プレート内の培地を捨て、PBSで2回洗浄し、CCK-8作動液(Beyotime Biotechnology)100μLを各ウェルに加え、37℃、暗所で1.5時間培養し、OD450nmにおける各ウェルの吸光度をマイクロプレートリーダーで検出し、各化合物のCC50を分析して算出した。
【0198】
【0199】
実施例F インビトロ代謝安定性試験
本発明における化合物のイントロ代謝安定性は、各種の肝ミクロソームの体温インキュベーション法を用いて測定された。肝ミクロソーム反応系(1mg/mLの肝ミクロソームタンパク質、25U/mLの6-リン酸グルコース脱水素酵素、1mMのNADP、6mMのD-6-リン酸グルコース、5mMのMgCl2)に、適量の試験化合物を加え、37℃のウォーターバスで培養して反応を開始させ、各時点で100μLの反応溶液を取って、400μLの0℃に予冷した内部標準作業溶液(200ng/mLのデキサメタゾン、ジクロフェナク、トルブタミド、ラベタロールを含むアセトニトリル溶液)を含む遠心チューブに加えて、反応を停止させ、4℃、遠心機で10000gで10分間遠心分離し、上清液を取ってLC-MSで分析・測定して、試験体化合物の様々な肝ミクロソームにおけるインビトロ代謝半減期を得た。
【0200】
【0201】
実施例G 二瓶法味覚障害試験
SPFグレードのオスSDラット(6~8週)を入庫直後に3日間の適応飲水訓練を行い、具体的な訓練内容は、動物を単一ケージで飼育し、各ケージに2本の水(いずれも通常の飲用水)を置き、適応訓練期間は毎日夜間では禁水処理(飲用水ボトルを撤去)し、8:30am~5:30pmで飲用水を再投与し、このように3日間繰り返し、毎日2本の水の左右位置を交換し、適応訓練期間中の動物全体が自由に食事をすることができた。正式な実験開始の20時間前にすべての動物用飲料水のボトルを撤去し、試験開始時まで水を禁止した。正式な実験では、すべての動物を無作為で群を分け、再給水前に試験化合物又は溶媒を投与し、投与は単回腹腔内注射で行い、投与時間は試験化合物のTmaxに従って決定した。次に、動物を単一のケージに入れ、2本の飲料水を与え、1本は通常の飲用水であり、もう1本は0.3mMのキニーネウォーターであり、15分以内の動物の飲用水量を観察し、キニーネ飲用水量/通常の飲用水量に基づいて統計分析を行い、陽性化合物2を味覚障害の陽性対照として使用した。
【0202】
【0203】
結果は、空白溶媒群と比較して、5、10、20mg/kgの化合物172はいずれもラットのキニーネ/水の飲用量の比率に有意な影響がなく、化合物172が動物の味覚に与える影響が小さいことを示し、陽性化合物2と比較して、キニーネ/水の飲用量の比率はいずれも有意に低く、化合物172が味覚障害を引き起こすリスクが陽性化合物2よりはるかに優れ、安全性がより良いことを示している。
[1]
結晶形I、結晶形II、結晶形III、結晶形IV、結晶形V、結晶形VI、結晶形VII、結晶形VIII及び結晶形IXから選択される式Aで表される化合物又はその溶媒和物の結晶形であって、
【化1】
ここで、式Aで表される化合物の水和物の結晶形IIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が12.91°±0.20°、16.77°±0.20°、19.27°±0.20°及び22.80°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物の結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.38°±0.20°、9.15°±0.20°、13.52°±0.20°及び18.44°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物の結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.56°±0.20°、12.48°±0.20°及び22.13°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物のMTBE溶媒和物の結晶形IIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.42°±0.20°、12.09°±0.20°、13.68°±0.20°及び20.87°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物の水和物の結晶形IVの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.65°±0.20°、12.69°±0.20°及び22.56°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物の水和物の結晶形VIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.62°±0.20°、12.69°±0.20°及び22.59°±0.02°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物のエチレングリコール溶媒和物の結晶形VIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.36°±0.20°、12.13°±0.20°、12.45°±0.20°、16.84°±0.20°及び21.66°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物のTHF溶媒和物の結晶形VIIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.53°±0.20°、12.38°±0.20°、13.66°±0.20°及び21.49°±0.20°において特徴的なピークを有し、
式Aで表される化合物のDMSO溶媒和物の結晶形IXの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.55°±0.20°、12.43°±0.20°、21.75°±0.20°及び25.07°±0.20°において特徴的なピークを有する、式Aで表される化合物又はその溶媒和物の結晶形。
[2]
前記結晶形IIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が12.91°±0.20°、16.77°±0.20°、19.27°±0.20°、22.80°±0.20°、13.75°±0.20°、14.46°±0.20°及び20.86°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.38°±0.20°、9.15°±0.20°、13.52°±0.20°、18.44°±0.20°、16.26°±0.20°、16.89°±0.20°及び17.86°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.56°±0.20°、12.48±0.20°、22.13°±0.20°、13.53°±0.20°、14.25±0.20°、25.18°±0.20°及び26.07°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形IIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.42°±0.20°、12.09°±0.20°、13.68°±0.20°、20.87°±0.20°、16.17°±0.20°、16.93°±0.20°、17.55°±0.20°及び21.20°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形IVの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.65°±0.20°、12.69°±0.20°、22.56°±0.20°、13.48°±0.20°、17.39°±0.20°、21.04°±0.20°及び23.63°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形VIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.62°±0.20°、12.69°±0.20°、22.59°±0.02°、13.46°±0.20°、17.41°±0.20°、26.51°±0.02°、25.62°±0.02°及び25.24°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形VIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.36°±0.20°、12.13°±0.20°、12.45°±0.20°、16.84°±0.20°、21.66°±0.20°、21.07°±0.20°及び24.82°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、式Aで表される化合物のTHF溶媒和物の結晶形VIIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.53°±0.20°、12.38°±0.20°、13.66°±0.20°、21.49°±0.20°、20.99°±0.20°、24.94°±0.20°及び25.31°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形IXの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.55°±0.20°、12.43°±0.20°、21.75°±0.20°、25.07°±0.20°、13.57°±0.20°、17.18°±0.20°、20.94°±0.20°及び25.57°±0.20°において特徴的なピークを有する、[1]に記載の化合物A又はその溶媒和物の結晶形。
[3]
前記結晶形IIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が12.91°±0.20°、16.77°±0.20°、19.27°±0.20°、22.80°±0.20°、13.75°±0.20°、14.46°±0.20°、20.86°±0.20°、21.08°±0.20°、23.75°±0.20°及び24.05°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形IIIの熱重量分析スペクトルにおいて、室温~100℃の区間における重量減少勾配は1.5%であり、
及び/又は、前記結晶形IIIの示差走査熱量スペクトルにおいて、最初の吸熱ピークは0.4個の水の除去であり、
及び/又は、前記結晶形Vの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.38°±0.20°、9.15°±0.20°、13.52°±0.20°、18.44°±0.20°、16.26°±0.20°、16.89°±0.20°、17.86°±0.20°、22.35°±0.20°、23.56°±0.20°、24.74°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形Vの示差走査熱量スペクトルにおいて、166℃に吸熱ピークを有し、融解エンタルピーは70±2J/gであり、
及び/又は、前記結晶形Iの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.56°±0.20°、12.48°±0.20°、22.13°±0.20°、13.53°±0.20°、14.25°±0.20°、25.18°±0.20°、26.07°±0.20°、22.32°±0.20°、23.23°±0.20°及び23.42°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形Iの示差走査熱量スペクトルにおいて、152℃で吸熱ピークを有し、融解エンタルピーは44±2J/gであり、
及び/又は、前記結晶形IIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.42°±0.20°、12.09°±0.20°、13.68°±0.20°、20.87°±0.20°、16.17°±0.20°、16.93°±0.20°、17.55°±0.20°、21.20°±0.20°、22.60°±0.20°、23.23°±0.20°及び24.40°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形IIの熱重量分析スペクトルにおいて、100~160℃の温度区間で3.5%の重量損失があり、160~200℃の温度区間で2.9%の重量損失があり、
及び/又は、前記結晶形IVの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.65°±0.20°、12.69°±0.20°、22.56°±0.20°、13.48°±0.20°、17.39°±0.20°、21.04°±0.20°、23.63°±0.20°、14.39°±0.20°、25.60°±0.20°及び26.52°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形IVのTGAスペクトルにおいて、RT~60℃の温度区間で1.2%の重量損失があり、
及び/又は、前記結晶形VIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.36°±0.20°、12.13°±0.20°、12.45°±0.20°、16.84°±0.20°、21.66°±0.20°、21.07°±0.20°、24.82°±0.20°、13.61°±0.20°、23.22°±0.20°及び24.57°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形VIIの熱重量分析スペクトルにおいて、室温~120℃の区間で25.7%の重量損失があり、
及び/又は、前記結晶形VIIIの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.53°±0.20°、12.38°±0.20°、13.66°±0.20°、21.49°±0.20°、20.99°±0.20°、24.94°±0.20°、25.31°±0.20°、17.14°±0.20°、21.72°±0.20°及び23.00°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形VIIIの熱重量分析スペクトルにおいて、室温~160℃の温度区間で5.7%の重量損失があり、
及び/又は、前記結晶形IXの粉末X線回折スペクトルは2θ値が8.55°±0.20°、12.43°±0.20°、21.75°±0.20°、25.07°±0.20°、13.57°±0.20°、17.18°±0.20°、20.94°±0.20°、25.57°±0.20°、21.37°±0.20°及び23.12°±0.20°において特徴的なピークを有し、
及び/又は、前記結晶形IXの熱重量分析スペクトルにおいて、室温~60℃の温度区間で18.23%の重量損失があることを特徴とする、[2]に記載のAで表される化合物又はその溶媒和物の結晶形。
[4]
前記結晶形IIIの2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが基本的に図1に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形IIIの熱重量分析スペクトル及び示差走査熱量スペクトルが基本的に図2に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形IIIの動的水分吸着スペクトルが図4に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形IIIの偏光顕微鏡スペクトルが基本的に図6に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形IIIは、0.4当量の水を含み、
及び/又は、前記結晶形Vの2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが基本的に図7に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形Vの動的水分吸着スペクトルが図9に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形Vの熱重量分析スペクトル及び示差走査熱量スペクトルが基本的に図8に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形Vの偏光顕微鏡スペクトルが基本的に図11に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形Iの2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが基本的に図12に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形Iの熱重量分析スペクトル及び示差走査熱量スペクトルが基本的に図13に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形Iの動的水分吸着スペクトルが図14に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形Iの偏光顕微鏡スペクトルが基本的に図17に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形IIの核磁気共鳴水素スペクトルが図19に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形IIの2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが基本的に図18に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形IIの偏光顕微鏡スペクトルが基本的に図21に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形IIの熱重量分析スペクトル及び示差走査熱量スペクトルが基本的に図20に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形IVの2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが基本的に図22に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形IVの熱重量分析スペクトル及び示差走査熱量スペクトルが図23に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形IVの偏光顕微鏡スペクトルが基本的に図25に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形VIの2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが基本に図26に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形VIIの2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが基本に図28に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形VIIの核磁気共鳴水素スペクトルが図29に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形VIIの熱重量分析スペクトル及び示差走査熱量スペクトルが基本的に図30に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形VIIIの2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが基本に図31に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形VIIIの熱重量分析スペクトル及び示差走査熱量スペクトルが基本的に図32に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形VIIIの核磁気共鳴水素スペクトルが図33に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形IXの2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが基本に図35に示された通りであり、
及び/又は、前記結晶形IXの熱重量分析スペクトル及び示差走査熱量スペクトルが基本的に図36に示された通りであることを特徴とする、[3]に記載の化合物A又はその溶媒和物の結晶形。
[5]
スキーム一、スキーム二又はスキーム三であることを特徴とする、物質Aの結晶形IIIの製造方法であって、
前記スキーム1は、式Aで表される化合物の非晶質と溶媒との懸濁液を結晶化させて、物質Aの結晶形IIIを得るステップを含み、前記溶媒は水又はアルコール系溶媒でり、
前記スキーム2は式Aで表される化合物と溶媒との溶液に貧溶媒を加え、結晶を析出させて、物質Aの結晶形IIIを得るステップを含み、前記溶媒はアルコール系、フラン系又はDMSOのうちの一つ又は複数であり、前記貧溶媒は水であり、
前記スキーム3は式Aで表される化合物と溶媒との溶液を水溶液Aに加え、結晶を析出させて、物質Aの結晶形IIIを得るステップを含み、前記水溶液Aは前記物質Aの結晶形IIIの種結晶と水との懸濁液であり、前記溶媒はDMSOである、
ことを特徴とする、物質Aの結晶形IIIの製造方法。
[6]
前記スキーム一において、前記溶媒は水又はメタノールであり、
及び/又は、前記スキーム一において、前記結晶を析出させる温度は20~50℃であり、好ましくは40℃又は50℃であり、
及び/又は、前記スキーム一において、前記化合物Aの非晶質と溶媒との質量体積比は50mg/mLであり、
及び/又は、前記スキーム二において、前記溶媒は、メタノール、テトラヒドロフラン又はDMSOのうちの1つ又は複数であり、
及び/又は、前記スキーム三において、前記溶媒と水との体積比は3:1~1:1であり、
及び/又は、前記スキーム三において、前記DMSOと水との体積比は1:1~1:4であり、
及び/又は、前記スキーム一を採用する場合、化合物Aの非晶質試料を溶媒と混合し、懸濁液を結晶化させるステップを含み、前記溶媒は水又はメタノールであり、前記攪拌温度は20~50℃であり、好ましくは40℃であり、前記化合物Aの非晶質と溶媒との質量体積比は50mg/mLであり、
及び/又は、前記スキーム二を採用する場合、化合物Aを溶媒と混合し、貧溶媒に滴下するステップを含み、前記溶媒はメタノール、テトラヒドロフラン又はDMSOのうちの1つ又は複数であり、前記貧溶媒は水であり、前記溶媒と水との体積比は3:1~1:1であり、
及び/又は、前記スキーム三を採用する場合、化合物Aと溶媒との溶液を水溶液Aに加え、結晶を析出させるステップを含み、前記水溶液Aは前記物質Aの結晶形IIIの種結晶と水との懸濁液であり、前記溶媒はDMSOであり、前記DMSOと水との体積比は1:1~1:4であることを特徴とする、[5]に記載の製造方法。
[7]
[5]又は[6]に記載の製造方法により製造されるのことを特徴とする、物質Aの結晶形III。
[8]
[1]~[4]のいずれか一項に記載の化合物Aの水和物結晶形IIIであることを特徴とする、[7]に記載の物質Aの結晶形III。
[9]
スキームA又はスキームBである製造方法であって、
前記スキームAは20~50℃で式Aで表される化合物の非晶質と溶媒との懸濁液を結晶化させて、化合物Aの結晶形Vを得るステップを含み、前記溶媒は水又はニトリル系溶媒であり、前記結晶化の温度は好ましくは50℃であり、
スキームBは式Aで表される化合物と溶媒の溶液中の溶媒を揮発させ、化合物Aの結晶形Vを得るステップを含み、前記溶媒はアルコール系溶媒であることを特徴とする、式Aで表される化合物の結晶形Vの製造方法。
[10]
スキームAにおいて、前記溶媒は、水又はアセトニトリルであり、
及び/又は、スキームAにおいて、前記化合物Aの非晶質と前記溶媒との質量体積比は、3.0mg/mL又は50mg/mLであり、
及び/又は、スキームAにおける結晶化の温度は50℃であり、
及び/又は、スキームBにおいて、前記溶媒はメタノールであり、
及び/又は、スキームBにおける結晶を析出させる温度は50℃であり、
及び/又は、前記スキームAを採用する場合、20~50℃で化合物Aの非晶質と溶媒との懸濁液を結晶化させて、化合物の結晶形Vを得るステップを含み、前記結晶化の温度は50℃であり、前記溶媒は水又はアセトニトリルであり、前記化合物Aの非晶質と溶媒との質量体積比は50mg/mL又は3.0mg/mLであり、
及び/又は、前記スキームBを採用する場合、化合物Aと溶媒の溶液中の溶媒を揮発させて結晶を析出させ、化合物Aの結晶形Vを得るステップを含み、前記溶媒はメタノールであり、前記結晶を析出させる温度は50℃であることを特徴とする、[9]に記載の製造方法。
[11]
[1]~[4]のいずれか一項に記載の式Aで表される化合物又はその溶媒和物の結晶形及び/又は[7]又は[8]に記載の物質Aの結晶形III、及び医薬補助材料を含む、医薬組成物。
[12]
P2X3受容体アンタゴニスト又は薬物の製造における、[1]~[4]のいずれか一項に記載の式Aで表される化合物又はその溶媒和物の結晶形、[7]又は[8]に記載の物質Aの結晶形IIIの使用であって、前記薬物は、動物の少なくとも部分的にP2X3によって媒介される又は活性関連疾患の防護、処理、治療、又は軽減に使用される薬物であってもよく、あるいは、前記薬物は、疼痛、泌尿器疾患又は呼吸器疾患の治療に使用される薬物であってもよい、使用。
[13]
前記疾患は、疼痛、泌尿器疾患又は呼吸器系疾患を含み、前記疼痛は好ましくは、炎症性疼痛、手術疼痛、内臓痛、歯痛、月経前疼痛、中枢性疼痛、火傷による疼痛、片頭痛、又は群発頭痛を含み、前記泌尿器疾患は、尿失禁、膀胱過活動、排尿障害、膀胱炎を含み、前記呼吸器系疾患は好ましくは、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、気管支けいれん、又は慢性咳を含む呼吸障害を含むことを特徴とする、[12]に記載の使用。
[14]
前記医薬組成物を投与することにより、治療に伴う味覚障害の副作用を低減することを特徴とする、[13]に記載の医薬組成物。