(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】剥離装置及び剥離方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240425BHJP
B65H 41/00 20060101ALN20240425BHJP
【FI】
H01L21/68 N
B65H41/00 Z
(21)【出願番号】P 2023094438
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2019017524の分割
【原出願日】2019-02-01
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591126471
【氏名又は名称】株式会社エム・シー・ケー
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【氏名又は名称】坊野 康博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠太
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-219087(JP,A)
【文献】特開2012-28591(JP,A)
【文献】特開2006-186151(JP,A)
【文献】特開2018-8769(JP,A)
【文献】特開2006-232509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B65H 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の貼付部材が貼付されたワークを設置するステージと、
前記
貼付部材に粘着される粘着部材の連続体を供給する粘着部材供給手段と、
前記粘着部材を前記ワークに貼付された前記
貼付部材の一端に粘着させる粘着手段と、
前記ステージ
と前記ワークとを前記ワークの前記
貼付部材が貼付された面に沿う方向に
相対的に移動させ、前記
貼付部材の他端が前記ワークに粘着した状態で前記ステージ
と前記ワークとの相対移動を停止させる
相対移動手段と、
前記一端が前記粘着部材に粘着され、剥離された状態で前記粘着手段と前記ワークとに架け渡された前記
貼付部材の非粘着面を押し込んで、前記粘着部材に当該
貼付部材の粘着面を押圧することで、当該
貼付部材の粘着面が、先行して剥離されて前記粘着部材に保持されている前記
貼付部材に粘着するように処理する剥離
部材処理手段と、
を備えることを特徴とする剥離装置。
【請求項2】
前記粘着手段は、前記粘着部材に粘着させた前記
貼付部材の一端を、前記ワークの表面から設定された距離まで移動させ、
前記
相対移動手段は、前記ステージ
と前記ワークとを前記ワークの前記貼付部材が貼付された面に沿う方向に相対的に移動させることにより、前記
貼付部材を
前記設定された距離によって定まる引き剥がし角度で剥離させることを特徴とする請求項1に記載の剥離装置。
【請求項3】
前記粘着部材は、前記粘着手段の位置よりも下流側における粘着面を前記ワークに面する方向に傾斜させて配置されており、
前記剥離
部材処理手段は、前記ワーク側から一方向に前記
貼付部材の非粘着面を押し込むことにより、前記粘着部材に前記
貼付部材の粘着面を押圧することを特徴とする請求項
1または2に記載の剥離装置。
【請求項4】
前記
貼付部材は、前記粘着部材に粘着された前記一端から折り返され、当該
貼付部材の粘着面によって、前記粘着部材の下流側に粘着して保持されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の剥離装置。
【請求項5】
シート状の貼付部材が貼付されたワークをステージに設置する設置工程と、
前記
貼付部材に粘着される粘着部材の連続体を供給する粘着部材供給工程と、
粘着手段によって、前記粘着部材を前記ワークに貼付された前記
貼付部材の一端に粘着させる粘着工程と、
前記ステージ
と前記ワークとを前記ワークの前記
貼付部材が貼付された面に沿う方向に
相対的に移動させ、前記
貼付部材の他端が前記ワークに粘着した状態で前記ステージ
と前記ワークとの相対移動を停止させる
相対移動工程と、
前記一端が前記粘着部材に粘着され、剥離された状態で前記粘着手段と前記ワークとに架け渡された前記
貼付部材の非粘着面を押し込んで、前記粘着部材に当該
貼付部材の粘着面を押圧することで、当該
貼付部材の粘着面が、先行して剥離されて前記粘着部材に保持されている前記
貼付部材に粘着するように処理する剥離
部材処理工程と、
を含むことを特徴とする剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離装置及び剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板等のワークに貼付された樹脂製のフィルム等を剥離する剥離装置が知られている。
このような剥離装置として、例えば、粘着テープにフィルムを粘着させ、ワークの搬送方向に対して、フィルムを端部から反転させることにより、ワークからフィルムを剥離する手法が用いられている。
なお、剥離装置に関する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、粘着テープにフィルムを粘着させてワークからフィルムを剥離する場合、ワークの貼付面に対してフィルムを剥離する方向によっては、ワークに不適切な力が作用する可能性がある。また、複数のワークから連続的にフィルムを剥離する場合等には、フィルムを粘着させる粘着テープの消費量が増大する可能性があり、剥離したフィルムも多量となることから、剥離後のフィルムの処理も問題となる。さらに、複数のワークから連続的にフィルムを剥離する手法によっては、装置が大型化・複雑化する可能性がある。
即ち、ワークからフィルムを剥離する従来の剥離装置の機能には改善の余地があった。
【0005】
本発明の課題は、ワークからフィルムを剥離する剥離装置の機能を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る剥離装置は、
フィルムが貼付されたワークを設置するステージと、
前記フィルムに粘着される粘着部材の連続体を供給する粘着部材供給手段と、
前記粘着部材を前記ワークに貼付された前記フィルムの一端に粘着させる粘着手段と、
前記ステージを前記ワークの前記フィルムが貼付された面に沿う方向に移動させるステージ移動手段と、
前記一端が前記粘着部材に粘着され、剥離された状態の前記フィルムを、当該フィルムの粘着面が、先行して剥離されて前記粘着部材に保持されている前記フィルム、及び、前記粘着部材の少なくともいずれかに粘着するように処理する剥離フィルム処理手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワークからフィルムを剥離する剥離装置の機能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る剥離装置1全体の構成を示す模式図である。
【
図3】巻き取りローラ70の構成を示す模式図である。
【
図4】制御部80に形成される機能的構成を示すブロック図である。
【
図5】剥離装置1の動作を示すフローチャートである。
【
図6】ワーク設置工程における剥離装置1の状態を示す模式図である。
【
図7】剥離準備工程における剥離装置1の状態を示す模式図である。
【
図8】テープ粘着工程における剥離装置1の状態を示す模式図である。
【
図9】フィルム剥離工程における剥離装置1の状態を示す模式図である。
【
図10】押圧工程における剥離装置1の状態を示す模式図である。
【
図11】ワーク取り外し工程における剥離装置1の状態を示す模式図である。
【
図12】テープ200に収容されたフィルム110の状態を示す模式図である。
【
図13】剥離装置1の他の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[構成]
図1は、本発明に係る剥離装置1全体の構成を示す模式図である。
剥離装置1は、ワーク100に貼付されたフィルム110を剥離する装置であり、粘着性を有するテープ200(粘着部材の連続体)にフィルム110の一端を粘着させ、ワーク100の往復動作によってフィルム110の剥離を行う。
また、剥離装置1は、剥離したフィルム110の粘着性を利用して、テープ200によって剥離されたフィルム110を先行して剥離されたフィルム110に粘着させることで、巻き取られるテープ200と一体に剥離後のフィルム110を収容する。
なお、以下の説明において、フィルム110と称する部材には、ワーク100に貼付される種々のものが含まれ、例えば、フィルム、シール、シート、ウェブ等と称される貼付物が含まれる。
【0010】
図1に示すように、剥離装置1は、ステージ10と、ガイドレール20と、移動基台30と、ハンドリング部40と、粘着処理部50と、供給ローラ60と、巻き取りローラ70と、制御部80と、を備えている。
【0011】
ステージ10は、フィルム110が貼付されたワーク100(電子回路が形成された基板等)を収容し、フィルム110の剥離時にワーク100を保持する。ワーク100を保持する場合、ワーク100裏面からの吸着、ワーク100側面からの支持あるいは嵌め込みによる支持等の手段を用いることができる。なお、本実施形態におけるワーク100の形状は、円形あるいは方形等、種々の形状のものとすることができる。
【0012】
また、ステージ10は、フィルム110を剥離する際の剥離力によりワーク100の端部が浮き上げることを防止するために、固定用のツメ11を備えている。ツメ11は、電動のロック機構等を備えることにより、ワーク100がステージ10から取り出される際には、ワーク100の固定を解除する。
また、ステージ10は、移動基台30の上面に設置され、移動基台30と一体にガイドレール20に沿って移動する。
【0013】
ガイドレール20は、移動基台30のベアリング等を備えた係合部を係合して支持し、ガイドレール20に沿う方向に移動基台30を案内する。
移動基台30は、内蔵されたアクチュエータまたは外部に設置されたアクチュエータによって、ガイドレール20に沿う方向に移動する。移動基台30の移動は、制御部80によって制御される。
【0014】
また、移動基台30は、押圧ローラ31と、支持部32と、昇降部33と、を備えている。
押圧ローラ31は、昇降部33によって上下方向に移動され、上方に移動する動作によって、剥離後のフィルム110をテープ200の下流側(フィルム110の一端に粘着した部分よりも巻き取りの下流側)に押圧する。このとき、押圧ローラ31は、フィルム110の非粘着面(ワーク100に粘着していない面)を押圧し、フィルム110の粘着面をテープ200の下流側に接触させる。これにより、剥離後のフィルム110を、その粘着面を利用して、テープ200の下流側に収容することができる。
【0015】
支持部32は、押圧ローラ31を回転自在に支持し、昇降部33によって上下方向に移動される。
昇降部33は、エアシリンダ等の伸縮機構を備え、押圧ローラ31及び支持部32を上下方向に移動する。昇降部33の昇降動作は、制御部80によって制御される。
ハンドリング部40は、ワーク100を吸着することにより、フィルム110が貼付されたワーク100をステージ10に設置したり、フィルム110が剥離されたワーク100をステージ10から取り外したりする。
また、ハンドリング部40には、ワーク100にフィルム110が粘着しているか否かを検出するフィルム検出部41が設置されている。
【0016】
フィルム検出部41は、カラーセンサあるいは測長機等によって構成される。例えば、フィルム検出部41をカラーセンサによって構成する場合、ワーク100の色を予め記憶しておき、ワーク100の表面における色の一致率によって、ワーク100にフィルム110が貼付されているか否かを検出できる。また、フィルム検出部41を測長機によって構成する場合、測長機としてレーザー距離計を用いることができ、レーザー測距による距離の差またはレーザーフォーカスによるフォーカス位置の差から、ワーク100にフィルム110が貼付されているか否かを検出できる。さらに、フィルム検出部41を測長機によって構成する場合、測長機として接触センサを用いることができ、ワーク100の表面にプローブを接触させることにより、フィルム110の厚みの有無を検出し、ワーク100にフィルム110が貼付されているか否かを検出できる。
フィルム検出部41によって、フィルム110を剥離する対象としてステージ10に設置されたワーク100にフィルム110が貼付されていることを確認したり、フィルム110の剥離が終了したワーク100にフィルム110が貼付されていないことを確認したりすることができる。
【0017】
粘着処理部50は、供給ローラ60から供給されたテープ200をワーク100に貼付されたフィルム110の一端に粘着させる。
具体的には、粘着処理部50は、圧着ローラ51と、支持部52と、昇降部53と、を備えている。
圧着ローラ51は、供給ローラ60から供給され、巻き取りローラ70に巻き取られるテープ200が巻回される。なお、圧着ローラ51のローラ面は、テープ200における非粘着面に接触している。また、圧着ローラ51は、昇降部53によって上下方向に移動され、下端の位置においてフィルム110が貼付されたワーク100の表面(即ち、フィルム110)にテープ200の粘着面を接触させる。これにより、テープ200がフィルム110の一領域に粘着する。
【0018】
支持部52は、圧着ローラ51を回転自在に支持し、昇降部53によって上下方向に移動される。
昇降部53は、エアシリンダ等の伸縮機構を備え、圧着ローラ51及び支持部52を上下方向に移動する。昇降部53の昇降動作は、制御部80によって制御される。
供給ローラ60は、テープ200の張力によって従動的に回転し、テープ200を送出する。
【0019】
図2は、供給ローラ60の構成を示す模式図である。
図2に示すように、供給ローラ60は、回転軸に連結されたクラッチ61を備えている。クラッチ61は、一端が供給ローラ60の回転軸に連結され、他端は固定されている。
クラッチ61の締結力は、制御部80によって制御され、テープ200をフィードする場合には、テープ200に設定された張力が発生するよう調整される。また、クラッチ61は、テープ200のフィードを行わない場合(テープ200をフィルム110に粘着させる場合等)には、供給ローラ60の回転に要するトルクを低減し、テープ200の張力を緩和する。なお、クラッチ61は、締結力を任意の値に調整可能なクラッチや、締結状態をON/OFFするクラッチ等によって構成することができる。
【0020】
巻き取りローラ70は、アクチュエータによって回転軸を回転され、供給ローラ60から送出されたテープ200を剥離後のフィルム110と共に巻き取る。また、巻き取りローラ70は、圧着ローラ51よりもハンドリング部40側(ワーク100の設置作業が行われる位置側)にオフセットして設置されており、圧着ローラ51の位置よりも下流側のテープ200の粘着面がワーク100に面する方向に傾斜した状態となっている。即ち、押圧ローラ31が所定方向(例えば鉛直上方)に上昇すると、フィルム110の非粘着面側からフィルム110を押し上げ、フィルム110の粘着面がテープ200に押圧される位置関係となっている。
これにより、簡単な動作で剥離後のフィルム110をテープ200に保持させることができる。
【0021】
図3は、巻き取りローラ70の構成を示す模式図である。
図3に示すように、巻き取りローラ70は、回転軸を駆動するアクチュエータ71と、アクチュエータ71と巻き取りローラ70の間に連結されたクラッチ72と、を備えている。
アクチュエータ71は、制御部80によって制御され、設定された速度で出力軸を回転する。
【0022】
クラッチ72は、一端をアクチュエータ71の出力軸に連結され、他端を巻き取りローラ70の回転軸に連結されている。また、クラッチ72は、制御部80によって制御され、テープ200をフィードする場合には、一定の張力でテープ200を巻き取るためのトルクをアクチュエータ71から巻き取りローラ70に伝達する。
【0023】
図1に戻り、制御部80は、PLC(Programmable Logic Controller)あるいはPC(Personal Computer)等の制御機能を備える装置によって構成され、剥離装置1全体の動作を制御する。例えば、制御部80は、移動基台30をガイドレール20に沿って移動させたり、昇降部33及び昇降部53の昇降動作を制御したり、供給ローラ60及び巻き取りローラ70の回転動作を制御したりする。
【0024】
図4は、制御部80に形成される機能的構成を示すブロック図である。
制御部80が剥離装置1の制御のためのプログラムを実行することにより、機能的構成として、移動制御部81と、圧着ローラ昇降制御部82と、押圧ローラ昇降制御部83と、供給ローラ制御部84と、巻き取りローラ制御部85と、ハンドリング制御部86と、が形成される。
移動制御部81は、剥離装置1におけるフィルム110の剥離処理工程に応じて、移動基台30を所定位置に移動させる。
例えば、移動制御部81は、ワーク100をステージ10に設置する工程及びワーク100をステージ10から取り外す工程において、移動基台30をガイドレール20の一端側(
図1における右端側)に位置するワーク設置位置P1に移動して停止させる。
【0025】
また、移動制御部81は、ワーク100に貼付されたフィルム110の一端にテープ200を粘着させる工程において、移動基台30をガイドレール20の他端側(
図1における左端側)に位置するテープ粘着位置P2に移動して停止させる。
また、移動制御部81は、フィルム110をワーク100から剥離する工程において、移動基台30をテープ粘着位置P2からワーク設置位置P1の方向に、設定された速度(フィルム110の剥離に適する速度)で移動させ、フィルム110がワーク100の他端に所定量粘着したローラ押圧位置P3で停止させる。このとき、フィルム110をワーク100の他端に粘着させておく量(剥離残し量)は、フィルム110がテープ200(圧着ローラ51)とワーク100との間で架け渡された状態を保持するように選択される。ただし、フィルム110がテープ200(圧着ローラ51)とワーク100との間で架け渡された状態としなくてもよく、押圧ローラ31が剥離されたフィルム110をテープ200に押圧できればよい。
【0026】
移動制御部81は、移動基台30をローラ押圧位置P3で停止させた後、フィルム110が押圧ローラ31によってテープ200の下流側に押圧される工程の完了を待って、ワーク設置位置P1に移動させる。このとき、フィルム110はワーク100の他端に所定量粘着した状態(テープ200とワーク100との間で架け渡された状態)とされており、このような状態で押圧ローラ31がフィルム110を上方に押し上げることで、フィルム110を非粘着面の側から容易に取り扱うことができる。
圧着ローラ昇降制御部82は、移動制御部81によって移動基台30がテープ粘着位置P2に停止された場合に、昇降部53によって圧着ローラ51を下降させることにより、テープ200をワーク100の表面に貼付されているフィルム110に粘着させる。そして、圧着ローラ昇降制御部82は、テープ200にフィルム110が粘着すると、昇降部53によって圧着ローラ51を設定された高さまで上昇させる。
【0027】
押圧ローラ昇降制御部83は、移動制御部81によって移動基台30がローラ押圧位置P3に停止された場合に、昇降部33によって押圧ローラ31を上昇させることにより、非粘着面側からフィルム110を押し込み(即ち、押し上げて)、フィルム110の粘着面をテープ200の下流側に押圧する。
供給ローラ制御部84は、テープ200をフィードする場合には、テープ200に設定された張力が発生するようクラッチ61の締結力を調整する。また、供給ローラ制御部84は、テープ200のフィードを行わない場合(テープ200をフィルム110に粘着させる場合等)には、巻き取りローラ70の回転に要するトルクが低減するようにクラッチ61の締結力を発生させる。
【0028】
巻き取りローラ制御部85は、設定された速度でアクチュエータ71の出力軸を回転させる。また、巻き取りローラ制御部85は、テープ200をフィードする場合には、一定の張力でテープ200を巻き取るためのトルクがアクチュエータ71から巻き取りローラ70に伝達されるようにクラッチ72の締結力を発生させる。
ハンドリング制御部86は、移動制御部81によって移動基台30がワーク設置位置P1に停止された場合に、ハンドリング部40を制御し、フィルム110を剥離するワーク100をステージ10に設置させたり、フィルム110が剥離された後のワーク100をステージ10から取り外したりする。
【0029】
[動作]
次に、剥離装置1の動作を説明する。
図5は、剥離装置1の動作を示すフローチャートである。
また、
図6~
図11は、各工程における剥離装置1の状態を示す模式図である。
剥離装置1がフィルム110の剥離動作を行う場合、ステップS1において、制御部80は、移動基台30をワーク設置位置P1に停止させ、フィルム110が貼付されたワーク100をステージ10に設置する(ワーク設置工程)。
図6に示すように、ワーク設置工程では、移動基台30がワーク設置位置P1に停止されると共に、ハンドリング部40がフィルム110を剥離するワーク100を吸着してステージ10に設置する。
【0030】
ステップS2において、制御部80は、移動基台30を移動させ、フィルム110が貼付されたワーク100をテープ粘着位置P2に停止させる(剥離準備工程)。
図7に示すように、剥離準備工程では、移動基台30が移動し、フィルム110の一端(
図7においては右端)が圧着ローラ51の直下に位置するように停止される。
【0031】
ステップS3において、制御部80は、昇降部53によって圧着ローラ51を下降させ、下端の位置においてフィルム110が貼付されたワーク100の表面(即ち、フィルム110)に圧着ローラ51を粘着させる(テープ粘着工程)。
図8に示すように、テープ粘着工程では、昇降部53が圧着ローラ51及び支持部52を下降させ、テープ200にフィルム110が粘着すると、圧着ローラ51及び支持部52の下降が停止される。
【0032】
ステップS4において、制御部80は、昇降部53を設定された高さまで上昇させると共に、移動基台30を設定された速度でワーク設置位置P1の方向に移動させ、フィルム110がワーク100の他端に所定量粘着したローラ押圧位置P3で停止させる(フィルム剥離工程)。
図9に示すように、フィルム剥離工程では、昇降部53が圧着ローラ51及び支持部52を設定された高さhまで上昇させる。この高さhは、フィルム110の剥離においてワーク100に加わる力の作用を考慮して設定される。即ち、高さhを変化させることにより、引き剥がし角度を調整することができる。例えば、高さhを低く設定した場合、180度ピールに近づき、フィルム110の剥離においてワーク100の表面に加わる面に垂直な方向の力が弱くなる。引き剥がし角度は、ワークWの厚みやフィルム110の粘着力に応じて調整することができる。
また、
図9に示すように、フィルム剥離工程では、圧着ローラ51が高さhまで上昇された後、移動基台30が設定された速度(フィルム110の剥離に適する速度)でワーク設置位置P1の方向に移動させ、フィルム110がワーク100の他端に所定量粘着した状態で停止される。
【0033】
ステップS5において、制御部80は、昇降部33によって押圧ローラ31を上昇させ、フィルム110の非粘着面側からフィルム110を押圧する(押圧工程)。
図10に示すように、押圧工程では、昇降部33が押圧ローラ31及び支持部32を上昇させ、フィルム剥離工程によってテープ200とワーク100との間で架け渡された状態となっている剥離後のフィルム110の非粘着面を下方から押し込む(即ち、押し上げる)ことにより、フィルム110の粘着面をテープ200の下流側に押圧する。これにより、押圧工程では、剥離後のフィルム110がテープ200の下流側(フィルム110の一端に粘着した部分より巻き取りの下流側)に粘着して保持される。この結果、剥離後のフィルム110を、その粘着面を利用して、テープ200の下流側に収容することができる。
【0034】
ステップS6において、制御部80は、移動基台30を移動させ、フィルム110が剥離された後のワーク100をワーク設置位置P1に停止させて、ワーク100をステージ10から取り外す(ワーク取り外し工程)。
図11に示すように、ワーク取り外し工程では、移動基台30がワーク設置位置P1に停止されると共に、ハンドリング部40がフィルム110を剥離された後のワーク100を吸着してステージ10から取り外す。
引き続き、他のワーク100からフィルム110を剥離する場合、上述の工程が繰り返される。
【0035】
この結果、フィルム110が、テープ200に粘着された一端から折り返され、フィルム110の粘着面によって、テープ200の下流側に粘着されて収容された状態となる。
図12は、テープ200に収容されたフィルム110の状態を示す模式図である。
図12に示すように、剥離時にテープ200に粘着されたフィルム110の一端は、テープ200の粘着面を利用して粘着されている一方、一端から折り返されたフィルム110の部分は、フィルム110の粘着面を利用して、先行して剥離したフィルム110に粘着されている。
これにより、テープ200の消費量を抑制しつつ、フィルム110を剥離して収容することが可能となる。
【0036】
以上のように、剥離装置1は、ワーク設置位置P1において、フィルム110が貼付されたワーク100をステージ10に設置し、移動基台30をテープ粘着位置P2に移動させた後、昇降部53によって圧着ローラ51を下降させることによりテープ200にフィルム110の一端を粘着させる。そして、昇降部53によって圧着ローラ51を上昇させると共に、移動基台30をワーク設置位置P1の方向に移動させ、フィルム110がワーク100の他端に所定量粘着したローラ押圧位置P3で移動基台30を停止させる。さらに、剥離装置1は、昇降部33によって押圧ローラ31を上昇させ、フィルム110の非粘着面を下方から押し上げることにより、フィルム110の粘着面をテープ200に粘着させる。この後、剥離装置1は、移動基台30をワーク設置位置P1に戻し、フィルム110が剥離されたワーク100が取り外される。
【0037】
そのため、剥離装置1においては、テープ200にフィルム110を粘着させた後に、圧着ローラ51を上昇させる高さを変化することによって、フィルム110の剥離時にワーク100の表面に作用する力を調整することが可能となる。
また、剥離後のフィルム110の粘着面を利用して、テープ200に剥離された複数のフィルム110を粘着させることができるため、フィルム110の剥離に要するテープ200の消費量を抑制することができる。
また、剥離後のフィルム110がテープ200と一体に収容されるため、剥離後のフィルム110の取り扱いが容易となる。
さらに、剥離装置1は、移動基台30を往復させる動作によってフィルム110の剥離及び回収が完了することから、装置を小型化できると共に、簡単な動作の中でフィルム110の剥離を行うことができる。
したがって、剥離装置1によれば、ワーク100からフィルム110を剥離する従来の剥離装置の機能を改善することができる。
【0038】
[変形例1]
上述の実施形態において、ワークWのフィルム110が貼付された面を上面として配置し、ワークWの上方に配置されたテープ200に剥離後のフィルム110を押圧する構成を例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、他の構成例として、ワークWのフィルム110が貼付された面を下面として配置し、ワークWの下方に配置されたテープ200に剥離後のフィルム110を押圧する構成とすることができる。
図13は、剥離装置1の他の構成例を示す模式図である。
図13に示す構成例では、
図1に示す剥離装置1の主要な構成部分が上下反転した状態となっている。
ただし、
図13に示す構成例において、押圧ローラ31、支持部32及び昇降部33については、
図1に示す構成と異なっている。具体的には、昇降部33に代えて、支持部32を回転させる回転部33aを備え、回転部33aが支持部32を回転させ、支持部32の先端に設置された押圧ローラ31が剥離後のフィルム110の非粘着面を回転動作によって押圧するものとなっている。
なお、この場合、フィルム剥離工程において、フィルム110をワーク100から全て剥離し、押圧ローラ31によってフィルム110をテープ200に押圧する。
このような構成例とした場合にも、ワーク100からフィルム110を剥離する従来の剥離装置の機能を改善することができる。
なお、
図13に示す構成例において、
図1の場合と同様の押圧ローラ31、支持部32及び昇降部33の構成としてもよい。この場合、フィルム剥離工程において、テープ200とワーク100との間でフィルム110が架け渡された状態とし、この状態において剥離後のフィルム110の非粘着面を上方から押し込む(即ち、押し下げる)ことにより、フィルム110の粘着面をテープ200の下流側に押圧することができる。
【0039】
なお、上述の実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の機能を実現する種々の実施形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態において、ハンドリング部40はワーク100を吸着して設置及び取り外しを行うものとして説明したが、これに限られない。例えば、ハンドリング部40をロボットハンド等で構成することにより、ワーク100の設置及び取り外しをより柔軟に行う機能を備えることとしてもよい。この場合、ワーク100の設置及び取り外しをより高度に自動化できると共に、フィルム110をワーク100から剥離する工程の上流あるいは下流の工程とより適切に連携して処理を行うことが可能となる。
【0040】
また、上述の実施形態において、押圧ローラ31が剥離後のフィルム110をテープ200の下流側に押圧する動作としては、押圧ローラ31が直上に移動することの他、斜め上方向に移動したり、曲線を描いて上方に移動したりすることとしてもよい。さらに、ローラを用いて押圧することの他、剥離後のフィルム110の一端を把持して折り返したり、エアーあるいはその他の手段によって剥離後のフィルム110をテープ200の下流側に押圧したりしてもよい。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 剥離装置、10 ステージ、11 ツメ、20 ガイドレール、30 移動基台、31 押圧ローラ、32,52 支持部、33,53 昇降部、33a 回転部、40 ハンドリング部、41 フィルム検出部、50 粘着処理部、51 圧着ローラ、60 供給ローラ、61,72 クラッチ、70 巻き取りローラ、71 アクチュエータ、80 制御部、81 移動制御部、82 圧着ローラ昇降制御部、83 押圧ローラ昇降制御部、84 供給ローラ制御部、85 巻き取りローラ制御部、86 ハンドリング制御部、100 ワーク、110 フィルム、200 テープ