(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240425BHJP
H01L 21/3065 20060101ALN20240425BHJP
H01L 21/31 20060101ALN20240425BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/31 F
(21)【出願番号】P 2023509410
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2022025789
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】石川 征樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-135168(JP,A)
【文献】実開平2-135141(JP,U)
【文献】特開2019-41024(JP,A)
【文献】特開2014-53481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を内蔵するセラミック基材を備え前記セラミック基材の上面にウエハ載置面を有する上部基材と、
前記上部基材のうち前記ウエハ載置面とは反対側の面に配置され、冷媒を流通させる冷媒流路又は前記冷媒流路の側壁及び底を構成する冷媒流路溝を備えた下部基材と、
前記冷媒流路又は前記冷媒流路溝と交差するように前記下部基材を上下方向に貫通する貫通孔と、
前記上部基材の下面のうち前記貫通孔に対向する位置に設けられたネジ穴と、
前記貫通孔に前記下部基材の下面から挿入され、前記ネジ穴に螺合されたネジ部材と、
前記ネジ部材が挿入された前記貫通孔から前記下部基材の下面に前記冷媒が漏れ出すのを防止する冷媒漏出防止部材と、
を備えたウエハ載置台。
【請求項2】
前記下部基材は、前記冷媒流路溝を備え、
前記上部基材は、前記セラミック基材と、前記セラミック基材の下側に配置され前記冷媒流路の天井を構成する天井基材と、前記セラミック基材と前記天井基材とを接合する金属接合層と、を備える、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記天井基材は、前記セラミック基材との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10
-6/K以下である、
請求項2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記天井基材は、金属とセラミックとの複合材料製である、
請求項3に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
前記上部基材の下面と前記下部基材の上面との間には、放熱シートが配置されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【請求項6】
前記下部基材は、易加工性材料製である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエハ載置面を有し電極を内蔵するセラミック基材と、セラミック基材のうちウエハ載置面とは反対側の面に配置された金属板とを備えたウエハ載置台が知られている。特許文献1には、こうしたウエハ載置台において、金属板に複数の貫通孔を設けると共に、セラミック基材の下面のうち各貫通孔に対向する位置にネジ穴を設け、各貫通孔に金属板の下面からネジ部材を差し込んでネジ穴に螺合してセラミック基材と金属板とを締結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/038044号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした構造のウエハ載置台において、ウエハの冷却効率を向上させるために、金属板に冷媒流路を設けることが考えられる。その場合、ネジ部材を避けるようにして冷媒流路を設けると、冷媒流路の設計の自由度が低下すると共にネジ部材を設けた箇所は冷却されにくくなる。そのため、ウエハの面内温度分布を所望の温度分布に設定しにくいという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、上部基材と下部基材とをネジ部材で締結したウエハ載置台においてウエハの面内温度分布を所望の温度分布に設定しやすくすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明のウエハ載置台は、
電極を内蔵するセラミック基材を備え前記セラミック基材の上面にウエハ載置面を有する上部基材と、
前記上部基材のうち前記ウエハ載置面とは反対側の面に配置され、冷媒を流通させる冷媒流路又は前記冷媒流路の側壁及び底を構成する冷媒流路溝を備えた下部基材と、
前記冷媒流路又は前記冷媒流路溝と交差するように前記下部基材を上下方向に貫通する貫通孔と、
前記上部基材の下面のうち前記貫通孔に対向する位置に設けられたネジ穴と、
前記貫通孔に前記下部基材の下面から挿入され、前記ネジ穴に螺合されたネジ部材と、
前記ネジ部材が挿入された前記貫通孔から前記下部基材の下面に前記冷媒が漏れ出すのを防止する冷媒漏出防止部材と、
を備えたものである。
【0007】
このウエハ載置台では、上部基材と下部基材とはネジ部材で締結される。下部基材は、冷媒流路又は冷媒流路溝を備えている。ネジ部材は、冷媒流路又は冷媒流路溝と交差するように下部基材を上下方向に貫通する貫通孔に下部基材の下面から挿入されて上部基材のネジ穴に螺合される。また、冷媒漏出部材により、ネジ部材が挿入された貫通孔から冷媒が漏れ出すのが防止される。こうすることにより、ネジ部材を迂回して冷媒流路を設ける必要がなくなるため、冷媒流路又は冷媒流路溝の設計の自由度が向上する。また、ネジ部材が冷媒で冷却されるため、ネジ部材を設けた箇所も冷却されやすい。その結果、本発明のウエハ載置台によれば、ウエハの面内温度分布を所望の温度分布に設定しやすくなる。
【0008】
なお、本明細書では、上下、左右、前後などを用いて本発明を説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。そのため、ウエハ載置台の向きを変えた場合には上下が左右になったり左右が上下になったりすることがあるが、そうした場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0009】
[2]本発明のウエハ載置台(前記[1]に記載のウエハ載置台)において、前記下部基材は、前記冷媒流路溝を備え、前記上部基材は、前記セラミック基材と、前記セラミック基材の下側に配置され前記冷媒流路の天井を構成する天井基材と、前記セラミック基材と前記天井基材とを接合する金属接合層と、を備えるものとしてもよい。
【0010】
[3]本発明のウエハ載置台(前記[2]に記載のウエハ載置台)において、前記天井基材は、前記セラミック基材との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10-6/K以下であるものとしてもよい。こうすれば、セラミック基材と天井基材との熱膨張差が小さいため、熱応力による上部基材の反りや破損を抑制できる。なお、本明細書では、40℃と400℃の長さを測定して求めた線熱膨張係数を、40~400℃の線熱膨張係数と称する。
【0011】
[4]本発明のウエハ載置台(前記[2]又は[3]に記載のウエハ載置台)において、前記天井基材は、金属とセラミックとの複合材料製であるものとしてもよい。金属とセラミックとの複合材料は、セラミック基材との線熱膨張係数差の絶対値を小さくすることができるし、セラミック材料よりも靱性が高いため熱応力が生じても破損しにくい。
【0012】
[5]本発明のウエハ載置台(前記[1]~[4]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記上部基材の下面と前記下部基材の上面との間には、放熱シートが配置されているものとしてもよい。こうすれば、放熱シートは上部基材と下部基材とがネジ部材によって締結されることにより上部基材と下部基材にしっかりと密着するため、上部基材の熱が下部基材へ速やかに伝導しやすくなる。その結果、ウエハを冷却する効率が高まる。
【0013】
[6]本発明のウエハ載置台(前記[1]~[5]のいずれかに記載のウエハ載置台)において、前記下部基材は易加工性材料製であるものとしてもよい。こうすれば、下部基材に冷媒流路又は冷媒流路溝を容易に形成することができるため、加工コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】チャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図。
【
図4】ウエハ載置台10を上部基材20と下部基材30との間で切断した切断面を上から見たときの断面図。
【
図5】ウエハ載置台10の製造工程図(上部基材20の製造工程)。
【
図6】ウエハ載置台10の製造工程図(下部基材30の製造工程)。
【
図7】ウエハ載置台10の製造工程図(ウエハ載置台10の組立工程)。
【
図8】ネジ部材50をOリング53でシールしたときの縦断面図。
【
図9】ネジ部材50をOリング58でシールしたときの縦断面図。
【
図12】冷媒流路32のうちネジ部材50が存在する部分を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1はチャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図(ウエハ載置台10の中心軸を含む面で切断したときの断面図)、
図2は
図1の部分拡大図、
図3はウエハ載置台10の平面図、
図4はウエハ載置台10を上部基材20と下部基材30との間で切断した切断面を上から見たときの断面図である。本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0016】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバ94の内部に設けられた設置板96に固定されている。ウエハ載置台10は、上部基材20と、下部基材30と、放熱シート40と、ネジ部材50とを備えている。
【0017】
上部基材20は、セラミック基材21と、セラミック基材21の下側に配置され冷媒流路32の天井を構成する天井基材23と、セラミック基材21と天井基材23とを接合する金属接合層25とを備えている。上部基材20の厚みは、強度を考慮すると8mm以上や10mm以上であることが好ましく、冷却効率を考慮すると25mm以下であることが好ましい。
【0018】
セラミック基材21は、円形のウエハ載置面21aを備えている。ウエハ載置面21aには、ウエハWが載置される。セラミック基材21は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成されている。セラミック基材21は、ウエハ載置面21aに近い側に、ウエハ吸着用電極22を内蔵している。ウエハ吸着用電極22は、例えばW、Mo、WC、MoCなどを含有する材料によって形成されている。ウエハ吸着用電極22は、円板状又はメッシュ状の単極型の静電電極である。セラミック基材21のうちウエハ吸着用電極22よりも上側の層は誘電体層として機能する。ウエハ吸着用電極22には、ウエハ吸着用直流電源52が給電端子54を介して接続されている。給電端子54は、下部基材30、天井基材23及び金属接合層25を上下方向に貫通する穴に配置された絶縁管55を通過して、セラミック基材21の下面からウエハ吸着用電極22に至るように設けられている。ウエハ吸着用直流電源52とウエハ吸着用電極22との間には、ローパスフィルタ(LPF)57が設けられている。
【0019】
天井基材23は、セラミック基材21よりも一回り大きな円板であり、導電材料で作製されている。導電材料としては、例えば、複合材料や金属などが挙げられる。複合材料としては、金属とセラミックとの複合材料などが挙げられる。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット(MMC))やセラミックマトリックス複合材料(セラミック・マトリックス・コンポジット(CMC))などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。金属としては、Moなどが挙げられる。天井基材23に使用する材料は、セラミック基材21に使用するセラミック材料との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10-6/K以下であることが好ましく、1.0×10-6/K以下であることがより好ましく、0.5×10-6/K以下であることが更に好ましい。天井基材23の厚みは、強度を考慮すると3mm以上や6mm以上であることが好ましく、冷却効率を考慮すると20mm以下であることが好ましい。
【0020】
天井基材23の下面には、複数のネジ穴24が設けられている。ネジ穴24は、後述する貫通孔36と対向する位置に設けられている。ネジ穴24は、天井基材23の下面に円柱穴を設けてその円柱穴に直接ネジ溝を切ることにより形成されているが、特にこれに限定されない。例えば、ネジ穴24を、円柱穴に螺旋状のネジインサートを挿入することにより形成してもよいし、円柱穴に特許文献1の雌ネジ付き端子(例えば袋ナットなど)を挿入してろう接してもよい。隣接する2つのネジ穴24の中心間間隔は、特に限定するものではないが、例えば100mm以下であることが好ましい。こうすれば、上部基材20と下部基材30とをより緊密に締結することができ、ひいては放熱シート40の熱伝導性能が向上する。
【0021】
金属接合層25は、セラミック基材21の下面と天井基材23の上面とを接合する。金属接合層25は、例えば、はんだや金属ろう材で形成された層であってもよい。金属接合層25は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0022】
下部基材30は、易加工性材料製の円板部材である。本実施形態では、下部基材30の外径は天井基材23の外径と同じである。下部基材30の上面には、冷媒流路溝34が設けられている。冷媒流路溝34は、冷媒流路32の側壁及び底を構成するものである。冷媒流路溝34は、セラミック基材21が配置された全域に行き渡るように、冷媒流路32の入口32aから出口32bまで一筆書きの要領で渦巻き状に形成されている(
図4)。冷媒流路32の入口32a及び出口32bは、下部基材30の下面と冷媒流路溝34の底面とを貫通している。冷媒流路32の入口32a及び出口32bは、図示しない冷媒冷却装置に接続されており、出口32bから排出された冷媒は、冷媒冷却装置で温度調整されたあと再び入口32aに戻されて冷媒流路32内に供給される。冷媒流路32を流れる冷媒は、液体が好ましく、電気絶縁性であることが好ましい。電気絶縁性の液体としては、例えばフッ素系不活性液体などが挙げられる。下部基材30に使用する易加工性材料は、天井基材23よりも加工が容易なものが好ましい。加工性の指標としては、例えば、JIS B 0170(2020)に示された被削性指数を用いることができる。易加工性材料としては、被削性指数が40以上の材料が好ましく、100以上の材料がより好ましく、140以上の材料がさらに好ましい。易加工性材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS材)などが挙げられる。
【0023】
下部基材30は、RF電源62に給電端子64を介して接続されている。そのため、下部基材30は、プラズマ発生用の高周波(RF)電極としても機能する。下部基材30とRF電源62との間には、ハイパスフィルタ(HPF)63が配置されている。
【0024】
下部基材30は、複数の貫通孔36を有する。貫通孔36は、冷媒流路32(冷媒流路溝34)と交差するように下部基材30を上下方向に貫通している。具体的には、貫通孔36は、
図2に示すように、下部基材30の下面と冷媒流路32の底とを貫通する段差孔である。貫通孔36は、ネジ部材50の頭部50aを収納する大径部36aと、ネジ部材50の足部50bは通過するが頭部50aは通過不能な小径部36bとを有する。
【0025】
放熱シート40は、上部基材20の下面と下部基材30の上面との間に配置されている。本実施形態では、放熱シート40は、天井基材23の下面と下部基材30の上面のうち冷媒流路溝34が設けられておらずシール部材42,44も設けられていない部分との間に配置されている。放熱シート40は、上部基材20と下部基材30との間に挟まれて上下方向に圧縮されている。こうすることにより、放熱シート40は上部基材20の下面と下部基材30の上面にしっかりと密着するため、上部基材20の熱が下部基材30へ速やかに伝導する。放熱シート40の熱抵抗は、0.35K・cm2/W以下が好ましく、0.1K・cm2/W以下がより好ましい。放熱シート40のヤング率は、100MPa以下が好ましく、20MPa以下がより好ましく、5MPa以下がさらに好ましい。熱抵抗は、例えばASTM D5470に準じて測定することができる。放熱シート40は、具体的には、カーボン及び樹脂を含むシートであることが好ましい。カーボンとしては、グラファイトやカーボンファイバー、カーボンナノチューブなどが挙げられ、樹脂としては、シリコーン樹脂などが挙げられる。グラファイトの場合、グラファイトを構成するグラフェンの面方向が上下方向に沿うように配置するのが好ましく、カーボンファイバーやカーボンナノチューブの場合、軸方向が上下方向に沿うように配置するのが好ましい。放熱シート40の材料としては、例えばサーマル・インタフェース・マテリアル(TIM)を用いることができる。放熱シート40の具体例としては、EX20000C4S(デクセリアルズ社製)、GraphitePADやGraphiteTIM(登録商標)(いずれもパナソニック社製)などが挙げられる。放熱シート40のポアソン比は、0.4以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。放熱シート40のポアソン比が小さいほど、ネジ部材50の締結力が放熱シート40の全面にわたって均等に伝わり、横方向に逃げにくいため、放熱シート40はその全面にわたって天井基材23と下部基材30にしっかりと密着する。そのため、ウエハWをより均一に冷却できる。放熱シート40のショア硬度(ShoreOO)は、50以上80以下としてもよい。放熱シート40の厚さは、例えば0.05mm以上1mm以下が好ましく、0.1mm以上0.3mm以下がより好ましい。
【0026】
ネジ部材50は、
図2に示すように、大径の頭部50aと小径の足部50bとを有する。ネジ部材50は、貫通孔36に下部基材30の下面から挿入され、冷媒流路32(冷媒流路溝34)を通過して天井基材23のネジ穴24に螺合される。ネジ部材50の材料は、導電性及び熱伝導性の良好な材料が好ましく、例えばステンレス鋼が好ましい。ネジ部材50の頭部50aと貫通孔36の段差部(大径部36aと小径部36bとの境界)との間には、Oリング51が配置されている。ネジ部材50の頭部50aは、下部基材30の下面から下方へ飛び出さないように大径部36aに収納されている。ネジ部材50をネジ穴24に螺合することにより、上部基材20と下部基材30とは放熱シート40やシール部材42,44を挟み込んだ状態で締結される。これにより、放熱シート40やシール部材42,44は上下方向に圧縮される。シール部材42は、外径が下部基材30の直径よりもやや小さい金属製又は樹脂製のリングであり、上下方向に圧縮されることでシール性を発揮して冷媒が冷媒流路32から外周側に漏れ出すのを防止する。シール部材44は、絶縁管55の外側に挿入された金属製または樹脂製のリングであり、上下方向に圧縮されることでシール性を発揮する。Oリング51は、ネジ部材50の頭部50aと貫通孔36の段差部との間で上下方向に圧縮されてシール性を発揮する。これにより、Oリング51は、ネジ部材50が挿入された貫通孔36から下部基材30の下面に冷媒流路32内の冷媒が漏れ出すのを防止する。冷媒流路32(冷媒流路溝34)の幅は、冷媒の流れが足部50bによって滞ることのない大きさに設定されている。
【0027】
なお、金属接合層25の側面(外周面)、天井基材23の上面及び側面、下部基材30の側面は、必要に応じて絶縁膜で被覆してもよい。絶縁膜としては、例えばアルミナやイットリアなどの溶射膜が挙げられる。
【0028】
次に、ウエハ載置台10の製造例を
図4~
図6を用いて説明する。
図4~
図6はウエハ載置台10の製造工程図であり、
図4は上部基材20の製造工程を示し、
図5は下部基材30の製造工程を示し、
図6はウエハ載置台10の組立工程を示す。
【0029】
上部基材20は、例えば以下のように作製する。まず、セラミック基材21を、セラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製する(
図5A)。セラミック基材21は、ウエハ吸着用電極22を内蔵している。次に、セラミック基材21の下面からウエハ吸着用電極22まで穴21bをあけ(
図5B)、その穴21bに給電端子54を挿入して給電端子54とウエハ吸着用電極22とを接合する(
図5C)。
【0030】
これと並行して、円板状の天井基材23を作製し(
図5D)、天井基材23に上下方向に貫通する貫通孔23bを形成すると共に天井基材23の下面の所定位置にネジ穴24を形成する(
図5E)。セラミック基材21がアルミナ製の場合、天井基材23はSiSiCTi製かAlSiC製であることが好ましい。SiSiCTiやAlSiCであれば、熱膨張係数を、アルミナの熱膨張係数と概ね同じにすることができるからである。
【0031】
SiSiCTi製の天井基材23は、例えば以下のように作製することができる。まず、炭化珪素と金属Siと金属Tiとを混合して粉体混合物を作製する。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円板状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、SiSiCTi製の天井基材23を得る。
【0032】
次に、天井基材23の上面に円形の金属接合材を配置する。金属接合材には、天井基材23の貫通孔23bに連通する貫通孔を設けておく。そして、セラミック基材21の給電端子54を金属接合材の貫通孔及び天井基材23の貫通孔23bに挿入しつつ、セラミック基材21を金属接合材の上に載せる。これにより、天井基材23と金属接合材とセラミック基材21とを下からこの順に積層した積層体を得る。この積層体を加熱しながら加圧することにより(TCB)、上部基材20を得る(
図5F)。上部基材20は、天井基材23の上面に、金属接合層25を介してセラミック基材21が接合されたものである。
【0033】
TCBは、例えば以下のように行われる。すなわち、金属接合材の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材は金属接合層(あるいは導電接合層)になる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0034】
また、上部基材20の作製と並行して、易加工性材料を用いて円板状の下部基材30を作製する(
図6A)。次に、下部基材30を上下方向に貫通する端子孔30bを形成すると共に下部基材30の上面に冷媒流路溝34を形成する。また、冷媒流路溝34の一端と他端に冷媒流路32の入口32aと出口32bを形成し、冷媒流路溝34の所望の位置に大径部36aと小径部36bとを有する貫通孔36を形成する(
図6B)。
【0035】
次に、上部基材20と下部基材30とをネジ部材50で締結することによりウエハ載置台10を作製する。具体的には、まず、
図7Aに示すように、下部基材30の上面に、放熱シート40を配置する。放熱シート40は、下部基材30と同径の円形シートから、冷媒流路溝34の開口と一致する部分を切り抜いたものである。放熱シート40のうちシール部材42,44を配置する部分も切り抜かれている。次に、下部基材30の外周に沿ってシール部材42を配置すると共に、端子孔30bの開口縁に沿ってシール部材44を配置する。次に、上部基材20の給電端子54を端子孔30bに挿入しながら、下部基材30の上面に配置された放熱シート40及びシール部材42,44の上に上部基材20を載せる。次に、各貫通孔36に対して、ネジ部材50を下部基材30の下面から挿入して上部基材20のネジ穴24に螺合する。これにより、放熱シート40は上部基材20と下部基材30との間で圧縮されて高い熱伝導性能を発揮する。また、シール部材42,44は上部基材20と下部基材30との間で圧縮されてシール性を発揮する。その後、端子孔30bに、給電端子54を挿通する絶縁管55を配置する(
図7B)。以上のようにして、ウエハ載置台10を得ることができる。
【0036】
次に、ウエハ載置台10の使用例について
図1を用いて説明する。まず、ウエハ載置台10をチャンバ94の設置板96に設置する。具体的には、最初に、設置板96の上面と下部基材30の下面との間に、シール部材80,82a,82bを配置する。シール部材80は、外径が下部基材30の直径よりもやや小さい金属製又は樹脂製のリングであり、上下方向に圧縮可能である。シール部材82a,82bは、冷媒流路32の入口32a及び出口32bの開口縁に沿って配置される金属製又は樹脂製のリングであり、上下方向に圧縮可能である。次に、ネジ部材70を、設置板96の下面からネジ挿通孔97を介して下部基材30の下面に設けられたネジ穴38に螺合する。こうすることにより、シール部材82a,82bは上下方向に圧縮されてシール性を発揮して冷媒がシール部材82a,82bから外側に漏出するのを防止する。
【0037】
設置板96に設置されたウエハ載置台10のウエハ載置面21aには、円盤状のウエハWが載置される。この状態で、ウエハ吸着用電極22にウエハ吸着用直流電源52の直流電圧を印加してウエハWをウエハ載置面21aに吸着させる。また、温度調節した冷媒を冷媒流路32の入口32aに供給し、出口32bから冷媒を排出する。そして、チャンバ94の内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、シャワーヘッド98からプロセスガスを供給しながら、下部基材30にRF電源62からのRF電圧を印加する。すると、ウエハWとシャワーヘッド98との間でプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。
【0038】
以上説明したウエハ載置台10では、上部基材20と下部基材30とはネジ部材50で締結される。下部基材30は、冷媒流路溝34を備えている。ネジ部材50は、冷媒流路32(冷媒流路溝34)と交差するように下部基材30を上下方向に貫通する貫通孔36に下部基材30の下面から挿入されて上部基材20のネジ穴24に螺合される。また、Oリング51(冷媒漏出防止部材)により、ネジ部材50が挿入された貫通孔36から冷媒が漏れ出すのが防止される。こうすることにより、ネジ部材50を迂回して冷媒流路32を設ける必要がなくなるため、冷媒流路32(冷媒流路溝34)の設計の自由度が向上する。また、ネジ部材50が冷媒で冷却されるため、ネジ部材50を設けた箇所も冷却されやすい。その結果、ウエハ載置台10によれば、ウエハWの面内温度分布を所望の温度分布に設定しやすくなる。
【0039】
また、天井基材23は、セラミック基材21との40~400℃の線熱膨張係数差の絶対値が1.5×10-6/K以下であることが好ましい。こうすれば、セラミック基材21と天井基材23との熱膨張差が小さいため、熱応力による上部基材20の反りや破損を抑制できるし、セラミック基材21と天井基材23とを接合する金属接合層25の破損も抑制できる。また、金属接合層25は、樹脂に比べてセラミック基材21と天井基材23との熱伝導を良好にする。
【0040】
更に、天井基材23は、金属とセラミックとの複合材料製であることが好ましい。金属とセラミックとの複合材料は、セラミック基材21との線熱膨張係数差の絶対値を小さくすることができるし、セラミック材料よりも靱性が高いため熱応力が生じても破損しにくい。また、こうした複合材料は導電性を有するため、RF電極として使用することもできる。
【0041】
更にまた、上部基材20の下面と下部基材30の上面との間には、放熱シート40が配置されている。放熱シート40は上部基材20と下部基材30とがネジ部材50によって締結されることにより上部基材20と下部基材30にしっかりと密着する。そのため、上部基材20の熱が下部基材30へ速やかに伝導しやすくなる。その結果、ウエハWを冷却する効率が高まる。
【0042】
そして、下部基材30は易加工性材料製である。こうすれば、下部基材30に冷媒流路溝34を容易に形成することができるため、加工コストを低減できる。また、下部基材30を金属とセラミックとの複合材料(例えばMMCやCMC)で形成した場合に比べて、材料コストを低く抑えることができる。
【0043】
そしてまた、放熱シート40は導電性を有している。これにより、下部基材30は天井基材23や金属接合層25と同電位になるため、天井基材23や金属接合層25をRF電極として用いることができ、ウエハWの上方でプラズマを生成しやすくなる。なお、導電性のネジ部材50を使用し、下部基材30と天井基材23とをネジ部材50を介して同電位となるようにしてもよい。
【0044】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0045】
上述した実施形態では、ネジ部材50の頭部50aと貫通孔36の段差部との間に、冷媒漏出防止部材としてOリング51を配置したが、冷媒漏出防止部材はOリング51に限定されない。例えば、
図8に示すように、Oリング53を、貫通孔36の小径部36bの内周面とネジ部材50の足部50bの外周面との間に配置してもよい。この場合、Oリング53は、貫通孔36の小径部36bの内周面とネジ部材50の足部50bの外周面との間に挟まれて圧縮されることによりシール性を発揮する。そのため、Oリング53は、冷媒が貫通孔36から外部へ漏出を防止する。あるいは、
図9に示すように、下部基材30の下面のうち貫通孔36の大径部36aの開口縁にOリング58を配置し、下部基材30の下面を覆う円板部材56を下部基材30にネジ止めしてもよい。この場合、Oリング58は、下部基材30の下面と円板部材56の上面との間に挟まれて圧縮されることによりシール性を発揮する。そのため、Oリング58は、冷媒が貫通孔36から外部へ漏出を防止する。なお、
図8及び
図9では上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。
【0046】
上述した実施形態では、上部基材20は、セラミック基材21と天井基材23とを金属接合層25で接合したものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、
図10に示すウエハ載置台110のように、上部基材120を、セラミック基材単層としてもよい。なお、
図10では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。
【0047】
上述した実施形態では、上部基材20と下部基材30とをネジ部材50で締結したウエハ載置台10をチャンバ94の設置板96に設置したが、特にこれに限定されない。例えば、
図11に示すウエハ載置台210のように、下部基材30をチャンバ94の設置板96と兼用してもよい。なお、
図11では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。
【0048】
上述した実施形態では、冷媒流路32(冷媒流路溝34)の幅をネジ部材50の足部50bの有無にかかわらず一定としたが、特にこれに限定されない。例えば、ウエハWの面内温度分布を所望の温度分布にするために、冷媒流路32(冷媒流路溝34)のうちネジ部材50の足部50bが存在する部分の幅を広げたり(
図12A参照)、狭めたり(
図12B参照)してもよい。
【0049】
上述した実施形態では、下部基材30は、上面に冷媒流路溝34を備えたものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、下部基材30は、冷媒流路32を内蔵していてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、上部基材20の下面と下部基材30の上面との隙間に放熱シート40を配置したが、特にこれに限定されない。例えば、放熱シート40の配置を省略してもよい。その場合、放熱シート40の代わりに冷媒が入り込むことになるが、上部基材20の下面と下部基材30の上面との隙間に入り込んだ冷媒は流れにくくその場にとどまることが多い。そのため、その隙間を利用して上部基材20の熱を下部基材30に逃がすのが困難になる。したがって、上述した実施形態のように、その隙間に熱抵抗の低い(熱伝導の良い)放熱シート40を配置するのが好ましい。
【0051】
上述した実施形態では、すべてのネジ部材50を冷媒流路32内に設けたが、一部のネジ部材50を冷媒流路32内に設け、残りのネジ部材50を冷媒流路32の外側に設けてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、放熱シート40は導電性を有するものを例示したが、放熱シート40は絶縁性であってもよい。
【0053】
上述した実施形態では、セラミック基材21にウエハ吸着用電極22を内蔵したが、これに代えて又は加えて、プラズマ発生用のRF電極を内蔵してもよい。この場合、下部基材30ではなくRF電極に高周波電源を接続する。また、セラミック基材21は、ヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよい。この場合、ヒータ電極にヒータ電源を接続する。セラミック基材21は、電極を1層内蔵していてもよいし、2層以上内蔵していてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、冷媒流路32は入口32aから出口32bまで渦巻状に設けたが、冷媒流路32の形状は特に限定されない。また、上述した実施形態では、1本の冷媒流路32を設けたが、冷媒流路32を複数本設けてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、セラミック基材21はセラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製したが、そのときの成形体は、テープ成形体を複数枚積層して作製してもよいし、モールドキャスト法によって作製してもよいし、セラミック粉末を押し固めることによって作製してもよい。
【0056】
上述した実施形態では、下部基材30を易加工性材料で作製したが、特にこれに限定されない。例えば、下部基材30を金属とセラミックとの複合材料で作製してもよい。但し、材料コストを考慮すると、アルミニウムやアルミニウム合金などの易加工性材料を用いることが好ましい。
【0057】
上述した実施形態のウエハ載置台10において、下部基材30の下面からウエハ載置面21aに至るようにウエハ載置台10を貫通する穴を設けてもよい。こうした穴としては、ウエハWの裏面に熱伝導ガス(例えばHeガス)を供給するためのガス供給穴や、ウエハ載置面21aに対してウエハWを上下させるリフトピンを挿通するためのリフトピン穴などが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のウエハ載置台は、例えば半導体製造装置に用いられる。
【符号の説明】
【0059】
10 ウエハ載置台、20 上部基材、21 セラミック基材、21a ウエハ載置面、21b 穴、22 ウエハ吸着用電極、23 天井基材、23b 貫通孔、24 ネジ穴、25 金属接合層、30 下部基材、30b 端子孔、32 冷媒流路、32a 入口、32b 出口、34 冷媒流路溝、36 貫通孔、36a 大径部、36b 小径部、38 ネジ穴、40 放熱シート、42,44 シール部材、50 ネジ部材、50a 頭部、50b 足部、51 Oリング、52 ウエハ吸着用直流電源、53 Oリング、54 給電端子、55 絶縁管、56 円板部材、58 Oリング、62 RF電源、64 給電端子、70 ネジ部材、80,82a,82b シール部材、94 チャンバ、96 設置板、97 ネジ挿通孔、98 シャワーヘッド、110 ウエハ載置台、120 上部基材、210 ウエハ載置台。
【要約】
ウエハ載置台10は、上部基材20と、下部基材30と、貫通孔36と、ネジ穴24と、ネジ部材50と、を備える。上部基材20は、電極22を内蔵するセラミック基材21を備えセラミック基材21の上面にウエハ載置面21aを有する。下部基材30は、上部基材20のうちウエハ載置面21aとは反対側の面に配置され、冷媒流路32の側壁及び底を構成する冷媒流路溝34を備える。貫通孔36は、冷媒流路32と交差するように下部基材30を上下方向に貫通する。ネジ穴24は、上部基材20の下面のうち貫通孔36に対向する位置に設けられている。ネジ部材50は、貫通孔36に下部基材30の下面から挿入され、ネジ穴24に螺合される。冷媒は、貫通孔36から下部基材30の下面に漏れ出さないように構成されている。