(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】リニアガイド装置
(51)【国際特許分類】
F16C 29/12 20060101AFI20240425BHJP
F16C 29/04 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
F16C29/12
F16C29/04
(21)【出願番号】P 2023524330
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2023001488
(87)【国際公開番号】W WO2023157551
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2022024587
(32)【優先日】2022-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石ヶ谷 和征
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 修
(72)【発明者】
【氏名】黒田 悠希子
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2021-0041707(KR,A)
【文献】特開2020-85089(JP,A)
【文献】特表平1-501690(JP,A)
【文献】特開平5-253775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/00-31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線的に延びるガイドレール(1)と、このガイドレールに沿って走行可能な走行体(5)とを備え、
前記ガイドレールは、長手方向と直交する第1方向に対峙する一対のガイド部(3)を有するとともに、前記長手方向および前記第1方向と直交する第2方向の一方側に開放部(4)を有し、前記ガイド部の各々は、前記開放部から遠い第1ガイド面(3a)と前記開放部に近い第2ガイド面(3b)を有し、前記一対のガイド部の前記第1ガイド面は、前記開放部に向かって互いに離れるように傾斜し、前記一対のガイド部の前記第2ガイド面は、前記開放部に向かって互いに近づくように傾斜しており、
前記走行体は、第1ホルダ(10)と第2ホルダ(30)を有し、前記第1ホルダと前記第2ホルダの一方のホルダには、前記一対のガイド部(3)の前記第1ガイド面(3a)を転動する第1ローラ(20)が回転可能に支持され、前記第1ホルダと前記第2ホルダの他方のホルダには、前記一対のガイド部の前記第2ガイド面(3b)を転動する第2ローラ(40)が回転可能に支持されているリニアガイド装置において、
さらに、前記第2方向に延びる連結軸部材(8)と、摩擦付与手段(P)を備え、
前記第1ホルダ(10)と前記第2ホルダ(30)は、前記連結軸部材(8)により前記第1方向に相対変位可能に連結され、前記摩擦付与手段(P)により相対変位を規制されることを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項2】
前記連結軸部材が、単一の連結軸部材(8)からなり、前記第1ホルダ(10)と前記第2ホルダ(30)は、前記連結軸部材により、前記第1方向に相対変位可能でかつ前記連結軸部材を中心とする相対回動可能に連結されることを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド装置。
【請求項3】
前記連結軸部材(8)が前記第1ホルダ(10)の連結部(15)の穴(16)と前記第2ホルダ(30)の連結部(35)の穴(36)に挿通され、前記第1ホルダと前記第2ホルダの少なくとも一方の前記穴が貫通穴(16)からなり、前記貫通穴の内周と前記連結軸部材の外周との間には、前記第1ホルダと前記第2ホルダの前記第1方向の相対変位を許容する遊びが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド装置。
【請求項4】
前記第1ホルダ(10)と前記第2ホルダ(30)の前記連結部(15,35)は、前記連結軸部材(8)により、前記第2方向の隙間を介して対峙するとともに互いに近づく方向に力を受けた状態で連結され、前記第1ホルダと前記第2ホルダは、前記連結部から離間した箇所で当接し、この当接箇所が前記摩擦付与手段(P)として提供されることを特徴とする請求項3に記載のリニアガイド装置。
【請求項5】
前記第1ホルダ(10)は平板形状をなして前記ガイドレール(1)の外側に配置されるベース部(11)を有し、前記第2ホルダ(30)は前記第1方向両側に前記ベース部に対して傾斜した当接片(34)を有し、前記当接片と前記ベース部の当接箇所が前記摩擦付与手段(P)として提供されることを特徴とする請求項4に記載のリニアガイド装置。
【請求項6】
前記当接片(34)の先端部は他の部位に比べて薄肉をなしていることを特徴とする請求項5に記載のリニアガイド装置。
【請求項7】
前記連結軸部材(8)は、雄ネジが形成された軸部(8a)と、この軸部の一端に形成された頭部(8b)とを有し、前記第1ホルダ(10)と前記第2ホルダ(30)の前記穴のうちの一方が前記貫通穴(16)として提供され、他方がネジ穴(36)として提供され、前記連結軸部材の軸部を前記貫通穴に通し前記ネジ穴にねじ込むことにより、前記第1ホルダと前記第2ホルダが連結されるとともに互いに近づく方向の力を受けることを特徴とする請求項4記載のリニアガイド装置。
【請求項8】
前記第1ローラ(20)と前記第2ローラ(40)を含む全ローラは、前記連結軸部材(8)を通り前記長手方向に延びる基準線に対して対称をなすとともに、前記連結軸部材を通り前記第1方向に延びる基準線に対して対称をなす位置に、配置されていることを特徴とする請求項2に記載のリニアガイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線的に延びるガイドレールと、このガイドレールに沿って走行する走行体とを備えたリニアガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行体を高精度に安定して走行させるリニアガイド装置は公知である。このリニアガイド装置のガイドレールは、長手方向と直交する第1方向に対峙する一対のガイド部を有するとともに、長手方向および第1方向と直交する第2方向の一方側に開放部を有している。ガイド部の各々は、開放部から遠い第1ガイド面と開放部に近い第2ガイド面を有している。一対のガイド部の第1ガイド面は、開放部に向かって互いに離れるように傾斜し、一対のガイド部の第2ガイド面は、開放部に向かって互いに近づくように傾斜している。リニアガイド装置の走行体は、一対のガイド部の第1ガイド面をそれぞれ転動する複数の第1ローラと、一対のガイド部の第2ガイド面をそれぞれ転動する複数の第2ローラとを有している。
【0003】
先行技術文献としての特許文献1(特開2000-320228号公報)には、改良されたリニアガイド装置が開示されている。このリニアガイド装置の走行体は、2分割されたホルダ、すなわち主ホルダと副ホルダを有しており、主ホルダには第1ガイド面を転動する第1ローラが回転可能に支持され、副ホルダには第2ガイド面を転動する第2ローラが回転可能に支持されている。主ホルダと副ホルダは、複数の調節ネジにより上記第2方向の間隔を調節可能にして連結されている。
【0004】
特許文献1のリニアガイド装置では、複数の調節ネジにより第1、第2ローラが第1、第2ガイド面にそれぞれ当接するように調節することができる。なお、このリニアガイド装置では、主ホルダの第1ローラが当接するガイド面と副ホルダの第2ローラが当接するガイド面を逆にすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なリニアガイド装置では、走行体のローラの取付位置は誤差を含んでおり、この誤差のため一部のローラがガイド面に強く当たり、他の一部のローラがガイド面にわずかに接しない状況が生じる。特許文献1では主ホルダと副ホルダの間隔を調節することによりローラのガイド面への当たりを調節することが可能であるが、ローラの微小な取付誤差を補償することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、直線的に延びるガイドレールと、このガイドレールに沿って走行可能な走行体とを備え、
前記ガイドレールは、長手方向と直交する第1方向に対峙する一対のガイド部を有するとともに、前記長手方向および前記第1方向と直交する第2方向の一方側に開放部を有し、前記ガイド部の各々は、前記開放部から遠い第1ガイド面と前記開放部に近い第2ガイド面を有し、前記一対のガイド部の前記第1ガイド面は、前記開放部に向かって互いに離れるように傾斜し、前記一対のガイド部の前記第2ガイド面は、前記開放部に向かって互いに近づくように傾斜しており、
前記走行体は、第1ホルダと第2ホルダを有し、前記第1ホルダと前記第2ホルダの一方のホルダには、前記一対のガイド部の前記第1ガイド面を転動する第1ローラが回転可能に支持され、前記第1ホルダと前記第2ホルダの他方のホルダには、前記一対のガイド部の前記第2ガイド面を転動する第2ローラが回転可能に支持されているリニアガイド装置において、
さらに、前記第2方向に延びる連結軸部材と、摩擦付与手段を備え、前記第1ホルダと前記第2ホルダは、前記連結軸部材により前記第1方向に相対変位可能に連結され、前記摩擦付与手段により相対変位を規制されることを特徴とする。
【0007】
上述の構成によれば、走行体をガイドレールに組み込む際に、ガイドレールの第1、第2ガイド面と第1、第2ローラの当たりにより、摩擦付与手段での摩擦抵抗に抗して第1、第2ホルダの第1方向の相対変位が生じ、これにより、ローラの取付誤差を含む走行体の製作誤差が自動的に補償され、第1、第2ローラの第1、第2ガイド面への接触状態を最適化することができる。その結果、走行体を安定して走行させることができる。走行体がガイドレールに組み込まれた状態では、摩擦付与手段での摩擦抵抗により、第1、第2ホルダの相対変位が規制されるので、第1、第2ローラは第1、第2ガイド面を安定して転動することができる。
【0008】
好ましくは、前記連結軸部材が、単一の連結軸部材からなり、前記第1ホルダと前記第2ホルダは、前記連結軸部材により、前記第1方向に相対変位可能でかつ前記連結軸部材を中心とする相対回動可能に連結される。
この構成によれば、走行体をガイドレールに組み込む際に第1ホルダと第2ホルダが相対回動することにより、ローラの取付誤差等の補償機能をより一層高めることができる。
【0009】
好ましくは、前記連結軸部材が前記第1ホルダの連結部の穴と前記第2ホルダの連結部の穴に挿通され、前記第1ホルダと前記第2ホルダの少なくとも一方の前記穴が貫通穴からなり、前記貫通穴の内周と前記連結軸部材の外周との間には、前記第1ホルダと前記第2ホルダの前記第1方向の相対変位を許容する遊びが形成されている。
【0010】
好ましくは、前記第1ホルダと前記第2ホルダの前記連結部は、前記連結軸部材により、前記第2方向の隙間を介して対峙するとともに互いに近づく方向に力を受けた状態で連結され、前記第1ホルダと前記第2ホルダは、前記連結部から離間した箇所で当接し、この当接箇所が前記摩擦付与手段として提供される。
この構成によれば、摩擦付与手段の構成を簡略化することができる。
【0011】
好ましくは、前記第1ホルダは平板形状をなして前記ガイドレールの外側に配置されるベース部を有し、前記第2ホルダは前記第1方向両側に前記ベース部に対して傾斜した当接片を有し、前記当接片と前記ベース部の当接箇所が前記摩擦付与手段として提供される。この構成によれば、傾斜した当接片の弾性を利用することにより、当接箇所において所望レベルの摩擦抵抗を得ることができる。
【0012】
好ましくは、前記当接片の先端部は他の部位に比べて薄肉をなしている。
この構成によれば、当接箇所での所望レベルの摩擦抵抗をより一層確実に得ることができる。
【0013】
好ましくは、前記連結軸部材は、雄ネジが形成された軸部と、この軸部の一端に形成された頭部とを有し、前記第1ホルダと前記第2ホルダの前記穴のうちの一方が前記貫通穴として提供され、他方がネジ穴として提供され、前記連結軸部材の軸部を前記貫通穴に通し前記ネジ穴にねじ込むことにより、前記第1ホルダと前記第2ホルダが連結されるとともに互いに近づく方向の力を受ける。
この構成によれば、連結軸部材のねじ込み量を調節することにより、摩擦付与手段による摩擦抵抗のレベルが最適になるように管理することができる。
【0014】
好ましくは、前記第1ローラと前記第2ローラを含む全ローラは、前記連結軸部材を通り前記長手方向に延びる基準線に対して対称をなすとともに、前記連結軸部材を通り前記第1方向に延びる基準線に対して対称をなす位置に、配置されている。
この構成によれば、走行体をより一層安定して走行させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ローラの取付誤差を含む走行体の製作誤差を、走行体をガイドレールに組み込む際に自動的に補償することができ、第1、第2ローラとガイドレールの第1、第2ガイド面の接触を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るリニアガイド装置を、ガイドレールと走行体に分解して示す上方から見た斜視図である。
【
図3】同ガイドレールと走行体を分解して示す正面図である。
【
図4】同走行体を構成要素毎に分解して示す上方から見た斜視図である。
【
図5】同走行体の主組立体と副組立体を分解して示す正面図である。
【
図6】同走行体の主組立体と副組立体を分解して示す下面図である。
【
図10】
図7のC-C矢視方向から見た走行体をガイドレールに装着した状態で示す正面図である。
【
図11】
図7のD-D矢視断面で示す走行体をガイドレールに装着した状態で示す断面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係るリニアガイド装置の走行体を示す下面図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係るリニアガイド装置の走行体を示す下面図である。
【
図14】本発明の第4実施形態に係るリニアガイド装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態に係るリニアガイド装置を、
図1~
図11を参照しながら説明する。
図1~
図3に示すように、リニアガイド装置は、直線的に延びる細長いガイドレール1と、このガイドレール1の長手方向に沿って走行可能な走行体5と、を備えている。本実施形態では、ガイドレール1が水平をなして下側に配置され、走行体5が上側に配置されている。以下の説明では、ガイドレール1の長手方向を走行方向と言うこともある。
【0018】
<ガイドレールの構成>
ガイドレール1は、平板形状の細長いベース部2と、ガイドレール1の左右方向または幅方向(長手方向と直交する第1方向)に対峙する一対の細長いガイド部3と、一対のガイド部3間に形成された開放部4とを有している。ベース部2と開放部4は上下方向(長手方向および第1方向と直交する第2方向)に対峙している。ベース部2は、第1対象例えば静止対象の上面に固定されるようになっている。
【0019】
各ガイド部3は屈曲板形状をなしており、その内側の面が、平坦な第1ガイド面3aと平坦な第2ガイド面3bを提供する。ベース部2に近い下側の第1ガイド面3aはベース部と135°の鈍角をなして連なり、開放部4に近い上側の第2ガイド面3bは第1ガイド面3aと90°をなして連なっている。一対のガイド部3の第1ガイド面3aは互いに開放部4に向かって広がるように傾斜し、一対のガイド部3の第2ガイド面3bは互いに開放部4に向かって近づくように傾斜している。
【0020】
<走行体の概略構成>
図1~
図3に示すように、走行体5は、主組立体6(第1組立体)と副組立体7(第2組立体)を、それらの中央で単一の連結軸部材8で連結することにより構成されている。
図4~
図6に示すように、主組立体6は、主ホルダ10(第1ホルダ)に複数例えば4つのローラ20(第1ローラ)を回転可能に支持することにより構成されている。副組立体7は、副ホルダ30(第2ホルダ)に複数例えば4つのローラ40(第2ローラ)を回転可能に支持することにより構成されている。
【0021】
<主組立体の構成>
主ホルダ10は、平板形状の矩形のベース部11と、このベース部11の走行方向両端部にそれぞれ形成された二対のローラ保持部12とを有している。ベース部11は、第2対象例えば移動対象の下面に固定されるようになっている。各対のローラ保持部12は、左右方向に対峙し、ベース部11に対して45°傾斜するとともに互いに離れるように下方に延びている。
【0022】
各ローラ保持部12には、ローラ20がローラ軸部材25により回転可能に連結されている。簡単に説明すると、ローラ20は、内輪部と、この内輪部にベアリングを介して回転可能に支持された外輪部とを有している。ローラ20の内輪部が、ローラ保持部12の穴を通るローラ軸部材25により、ローラ保持部12に固定されている。ローラ20の外輪部は、ローラ軸部材25を中心に回転可能である。各対のローラ保持部12に支持されたローラ20の回転軸は90°で交差する。
【0023】
主ホルダ10のベース部11の中央部には、下に向かって突出するボス部15(連結部)が形成され、このボス部15には、貫通穴16(穴)が形成されている。4つのローラ20の位置は、この貫通穴16を通り走行方向に延びる基準線および貫通穴16を通り左右方向に延びる基準線に対して対称をなしている。換言すれば、貫通穴16は、4つのローラ20を角に配置した仮想矩形の中心に位置している。後述するように、貫通穴16に連結軸部材8が挿通されるようになっている。
【0024】
<副組立体の構成>
副ホルダ30は、ガイドレール1の長手方向に延びるベース部31と、このベース部31の左右両側縁から45°傾斜して互いに離れるように上方に突出する一対の板状片32とを有している。各板状片32のガイドレール長手方向両端部は、ローラ保持部33として提供される。各ローラ保持部33には、ローラ40(第2ローラ)がローラ軸部材45により回転可能に支持されている。その結果、左右方向に対峙するローラ40が、走行方向に離れて二対配置される。各対のローラ40の回転軸は、90°で交差している。
【0025】
副ホルダ30の板状片32の中間部は当接片34として提供される。この当接片34の先端部34aは、2つに分けられ当接片34の他の部位より薄肉をなしている。当接片34の作用については後述する。
【0026】
副ホルダ30のベース部31の長手方向中央にはボス部35(連結部)が形成され、このボス部35にはネジ穴36(穴)が形成されている。4つのローラ40の位置は、このネジ穴36を通り走行方向に延びる基準線と、ネジ穴36を通り左右方向に延びる基準線に対して対称をなしている。換言すれば、このネジ穴36は、4つのローラ40を角に配置した仮想矩形の中心に位置している。後述するように、ネジ穴36に連結軸部材8がねじ込まれるようになっている。
【0027】
<走行体の組立>
上述の構成をなす主組立体6と副組立体7は、
図1、
図2、
図7に示すように、上下方向に延びる連結軸部材8により1点でのみ連結され、これにより走行体5が組み立てられる。
図8に示すように、連結軸部材8は外周に雄ネジが形成された軸部8aと径の大きな頭部8bとを有している。主ホルダ10と副ホルダ20を、貫通穴16とネジ穴36が同軸をなすように位置合わせした状態で、連結軸部材8の軸部8aを貫通穴16に通し、さらにネジ穴36にねじ込むことにより、主ホルダ10と副ホルダ20が連結され、ひいては主組立体6と副組立体7が連結される。
図8に示すように、連結軸部材8の軸部8aの外径は貫通穴16の内径より小さく、両者の間には遊びDが存在する。この遊びDは微小であり例えば0.2~0.3mm程度である。
【0028】
図9に示すように、連結軸部材8のねじ込みの過程で、主ホルダ10のベース部11に副ホルダ30の当接片34の先端部34aが当たる。
図9においてこの当接箇所を符号Pで示す。さらに連結軸部材8をネジ穴36にねじ込むことにより、ボス部15、35が互いに近づく方向の力を受け、当接片34、特に薄肉の先端部34aが弾性変形し、ベース部11に弾性力をもって当接した状態になる。この当接箇所Pが、後述の作用をなす摩擦付与手段として提供される。
【0029】
連結軸部材8は上述のようにしてネジ穴36にねじ込まれた後、接着剤等で副ホルダ30のボス部35に固定される。連結軸部材8のねじ込み完了状態において、主ホルダ10のボス部15の下面と副ホルダ30のボス部35の上面とは当接せず、両者の間には隙間S1が形成されている。また、主ホルダ10のボス部15の幅方向両側の傾斜壁と副ホルダ30の一対の板状片32も当接せず、両者の間には隙間S2が形成されている。
【0030】
<走行体のガイドレールへの組み込み>
上述の構成をなす走行体5をガイドレール1の端から組み込む。この組み込みにより、
図10、
図11に示すように、主組立体6の主ホルダ10のベース部11がガイドレール1の上方に配置され、主ホルダ部10のローラ保持片12およびローラ20と、副組立体7がガイドレール1内に収容される。
【0031】
上記組み込み状態で、
図10に示すように、主組立体6のローラ20がガイドレール1の第1ガイド面3aに当接し、
図11に示すように、副組立体7のローラ40がガイドレール1の第2ガイド面3bに当接する。その結果、走行体5がガイドレール1に沿って走行する際に、ローラ20が第1ガイド面3aを転動し、ローラ40が第2ガイド面3bを転動する。合計8つのローラ20,40は、前述した2つの基準線に対して対称の位置に配置されているので、安定した走行を行える。
【0032】
<ローラ位置調節>
合計8つのローラ20,40が単一のホルダに支持されていると、取付誤差等により、これらローラ20,40をガイドレール1のガイド面3a,3bに最適な状態で当接させるのは難しい。しかし、本実施形態では、主ホルダ10に支持される4つのローラ20からなるローラ群と、副ホルダ30に支持される4つのローラ40からなるローラ群に分けられており、主ホルダ10と副ホルダ30が連結軸部材8を中心に相対回動可能であり、連結軸部材8と貫通穴16との間の遊びDにより左右方向の相対変位も可能である。そのため、走行体5をガイドレール1に組み込む際に、ガイドレール1のガイド面3a,3bとローラ20,40の当たりにより、当接箇所Pでの摩擦抵抗に抗して第1、第2ホルダの相対回動および左右方向の相対変位が生じ、これにより、ローラ20,40の取付誤差を含む走行体5の製作誤差が自動的に補償され、ローラ20,40のガイド面3a,3bへの接触状態を最適化することができる。その結果、走行体を安定して走行させることができる。
【0033】
副ホルダ30の当接片34と主ホルダ10のベース部11との当接箇所Pでの弾性を伴う当接により生じた摩擦抵抗は、比較的大きいものであるが、走行体5をガイドレール1に組み込む際の主ホルダ10と副ホルダ30の相対回動および左右方向の相対変位を許容する。しかし、走行体5がガイドレール1に組み込まれた状態では、当接箇所Pでの摩擦抵抗により、ホルダ10,30の相対回動および左右方向の相対変位は規制され、ローラ20,40は安定してガイド面3a,3bを転動することができる。
【0034】
本実施形態では、連結軸部材8と副ホルダ30のネジ穴36の螺合により主ホルダ10と副ホルダ30を連結するため、連結軸部材8のねじ込み量を調節することにより、当接箇所Pでの摩擦抵抗の強さを調節することができる。
【0035】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。これら実施形態において第1実施形態に対応する構成部には同番号または類似番号を付してその詳細な説明を省略する。
<第2実施形態>
図12に示す第2実施形態では、走行体5の主組立体6の構成は第1実施形態と同様であるが、副組立体7のローラ40の配置が異なる。すなわち、副組立体7は、一対のローラ40を備えており、これら一対のローラ40は、連結軸部材8を挟んで左右方向に対峙している。副ホルダ30の一対の板状片32の走行方向中央部がローラ保持部33として提供され、その両側部が当接片34として提供される。
【0036】
<第3実施形態>
図13に示す第3実施形態では、主組立体6が3つのローラ20を備え、副組立体7が3つのローラ40を備えている。走行方向に間隔をおいて3箇所で、ローラ20,40が左右方向に対峙して対をなしている。主ホルダ10の走行方向両端部では、右側にローラ20が配置されていて、これら2つのローラ20がガイドレール1の右側のガイド部3の第1ガイド面3aを転動し、主ホルダ10の走行方向中央部では、左側にローラ20が配置されていて、このローラ20がガイドレールレール1の左側のガイド部3の第1ガイド面3aを転動するようになっている。他方、副ホルダ30の走行方向の両端部では、左側に2つのローラ40が配置されており、これらローラ40がガイドレール1の左側のガイド部3の第2ガイド面3bを転動し、副ホルダ30の走行方向中央部では、右側にローラ40が配置されており、このローラ40がガイドレール1の右側のガイド部3の第2ガイド面3bを転動するようになっている。
【0037】
第3実施形態でも、第1、第2実施形態と同様に、合計6つのローラ20,40の位置は、連結軸部材8の中心を通り走行方向に延びる基準線および連結部材8の中心を通り左右方向に延びる基準線について、対称をなしている。
【0038】
<第4実施形態>
図14に示す第4実施形態では、ガイドレール1の一対のガイド部3が断面C字形状に湾曲しており、第1ガイド面3a、第2ガイド面3bは凹曲面をなしている。これに対応して、ローラ20,40の外周部の断面輪郭は凸曲線をなしている。他の構造は第1~第3実施形態と同様である。
【0039】
本発明は、前述の実施形態に制約されず、種々の態様を採用することができる。
主ホルダと副ホルダは複数の連結軸部材により連結してもよい。
副ホルダに貫通穴を形成し、主ホルダにネジ穴を形成してもよい。また、連結軸部材は、ネジを有さず、ピン形状をなし、主ホルダと副ホルダの貫通穴に挿通された状態で両端部を例えばかしめることにより、主ホルダと副ホルダを連結してもよい。
上述の実施形態では、第1ガイド面を転動する第1ローラが主ホルダ(第1ホルダ)に支持され、第2ガイド面を転動する第2ローラが副ホルダ(第2ホルダ)に支持されているが、これとは逆に、第1ローラが副ホルダに支持され、第2ローラが主ホルダに支持されていてもよい。
【0040】
上記実施形態ではガイドレールが下側に配置され、走行体が上側に配置されているが、上下逆に配置してもよいし、ガイドレールを垂直に立てて壁板等に固定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、リニアガイド装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ガイドレール
3 ガイド部
3a 第1ガイド面
3b 第2ガイド面
4 開放部
5 走行体
8 連結軸部材
8a 軸部
8b 頭部
10 主ホルダ(第1ホルダ)
11 ベース部
15 ボス部(連結部)
16 貫通穴(穴)
20 ローラ(第1ローラ)
30 副ホルダ(第2ホルダ)
34 当接片
34a 先端部
35 ボス部(連結部)
36 ネジ穴(穴)
40 ローラ(第2ローラ)
P 当接箇所(摩擦付与手段)
S1 隙間