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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】SCADAウェブHMIシステム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240426BHJP
   G06F 3/0486 20130101ALI20240426BHJP
   G06F 8/34 20180101ALI20240426BHJP
【FI】
G05B23/02 301X
G06F3/0486
G06F8/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023504044
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2021025634
(87)【国際公開番号】W WO2023281662
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
(72)【発明者】
【氏名】野島 章
(72)【発明者】
【氏名】清水 伸夫
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/106082(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/199206(WO,A1)
【文献】特開2006-277734(JP,A)
【文献】特開2014-115742(JP,A)
【文献】特開2017-27211(JP,A)
【文献】特開2012-113665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G06F 3/0486
G06F 8/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面作成装置とHMIサーバ装置とHMIクライアント装置とを備え、産業プラントを構成する産業機器および集線装置に接続するSCADAウェブHMIシステムであって、
前記図面作成装置は、
前記HMIサーバ装置に対応するサーバパーツと、前記HMIクライアント装置に対応するクライアントパーツと、前記産業機器に対応する産業機器パーツと、前記集線装置に対応するHUBパーツと、通信ケーブルに対応するケーブルパーツとが配列されたステンシルエリアを表示し、
前記ステンシルエリアに配列された各パーツをドラッグアンドドロップして配置することにより前記サーバパーツと前記クライアントパーツと前記産業機器パーツとがそれぞれ前記ケーブルパーツを介して前記HUBパーツに接続したネットワーク構成図を描画できる、製図エリアを表示し、
前記製図エリアに描画された前記ネットワーク構成図に基づいて、前記ネットワーク構成図を構成するパーツが配置されたシステム監視画面のベクター画像情報と、前記システム監視画面に配置された前記パーツのIPアドレス情報と、前記システム監視画面に配置された前記パーツのパーツ間接続情報とを関連付けたHMI構成データを生成し、
前記HMIサーバ装置は、
前記HMIクライアント装置と前記産業機器と前記集線装置とを含む装置群の監視方法を予め定めたサーバランタイムライブラリに前記HMI構成データを適用することにより前記装置群それぞれの通信状態を監視するシステム監視処理であって、前記装置群に含まれる監視対象へのエコー要求に対する前記監視対象からのエコー応答の有無によって前記監視対象の通信状態が正常か異常かを判定するシステム監視処理を実行し、
前記システム監視処理により監視された前記装置群それぞれの通信状態に応じた表示信号を、前記HMIクライアント装置へ送信し、
前記HMIクライアント装置は、
ウェブブラウザを実行し、
前記ウェブブラウザは、
前記HMIサーバ装置から受信した前記ベクター画像情報に基づいて前記システム監視画面を描画し、
受信した前記表示信号に応じて前記システム監視画面に配置された前記パーツの表示状態を変更すること、
を特徴とするSCADAウェブHMIシステム。
【請求項2】
前記システム監視処理は、前記産業機器に対する監視頻度を前記HMIクライアント装置に対する監視頻度よりも低く定めた制約条件を満たすように、前記装置群それぞれの通信状態を監視すること、
を特徴とする請求項1に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項3】
前記HMIサーバ装置は、前記システム監視処理により監視された前記装置群それぞれの通信状態が異常である場合に、前記ウェブブラウザにアラーム信号を送信するアラーム管理処理を実行し、
前記ウェブブラウザは、前記システム監視画面が描画されていない場合であっても、前記アラーム信号の内容を表示すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項4】
前記システム監視処理は、前記装置群の少なくとも1つの装置の通信状態が正常である場合に、前記集線装置の通信状態は正常であると推定すること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項5】
前記システム監視処理は、前記集線装置に接続するすべての装置の通信状態が異常である場合に、前記集線装置の通信状態は異常であると推定すること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項6】
前記システム監視処理は、
前記通信ケーブルの両端に接続する両装置の通信状態が正常である場合に、前記通信ケーブルの通信状態は正常であると推定すること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項7】
前記システム監視処理は、
前記通信ケーブルの両端に接続する少なくとも一方の装置の通信状態が異常である場合に、前記通信ケーブルの通信状態は異常であると推定すること、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項8】
前記システム監視処理は、前記集線装置の通信状態が異常であり、かつ、前記産業機器の通信状態が正常である場合に、前記HMIサーバ装置から前記産業機器までの実際の経路と、前記システム監視画面に描画された前記サーバパーツから前記産業機器パーツまでの経路とが異なっていると推定し、配線異常を示す前記表示信号を送信すること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SCADAウェブHMIシステムに関し、特に産業プラントのシステム監視機能をノンプログラミングでグラフィカルに開発するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)は、大規模な産業プラントを監視制御する仕組みとして知られている。産業プラントとは、製鉄工場、製紙工場、食品工場、製薬工場、セメント工場、発電所などのプラントである。SCADAは、産業監視制御システムの一種であり、コンピュータによるシステム監視とプロセス制御とデータ収集とを行う。
【0003】
SCADAは一般に次のようなサブシステムから構成される。
(1)HMI(Human Machine Interface)
HMIは、対象プロセスのデータをオペレータに提示し、オペレータがプロセスを監視し制御できるようにする機構である。
(2)監視制御システム
監視制御システムは、Programmable Logic Controller(PLC)などによって構成される。監視制御システムは、プロセス上の信号データを収集し、プロセスに対して制御コマンドを送る。
(3)遠方入出力装置(Remote Input Output:RIO)
遠方入出力装置は、プロセス内に設置されたセンサと接続し、センサの信号をデジタルのデータに変換し、そのデジタルデータを監視制御システムに送る。
(4)通信基盤
通信基盤は、監視制御システムと遠方入出力装置を接続する。
【0004】
SCADA HMIサブシステムの一例として、特許文献1には、HMIクライアント装置とHMIサーバ装置とを備えるシステムが開示されている。HMIサーバ装置は、PLCから信号データを受信し、当該信号データをHMIクライアント装置へ送信する。信号データは、産業プラントを構成するフィールド機器群に関する信号であり、アクチュエータ制御信号およびセンサ検出信号などを含む。
尚、出願人は、本発明に関連するものとして、上記の文献を含めて、以下に記載する文献を認識している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本特開2017-27211号公報
【文献】日本特開2012-113665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したサブシステムの1つであるSCADA HMIサブシステムの開発における課題について説明する。
【0007】
産業プラントを監視制御するSCADAは、システム運用者からの発注に基づき開発される。SCADAメーカーは、発注者からの要求仕様に基づき、HMI画面イメージをデザインし、要求仕様と齟齬がないか発注者に確認し、HMI画面イメージを調整する。HMI画面(HMI Screen)のデザインには、高度な図面編集機能を有する汎用の図面エディタが用いられる。汎用の図面エディタは、例えばMicrosoft Visio(登録商標)である。
【0008】
従来、SCADAメーカーは、発注者の合意が得られた後、図面エディタとは別のエンジニアリングツールを用いてHMIサブシステムを開発する。このとき、図面エディタで作成された電子データは用いられず、HMI開発者は、合意が得られたHMI画面イメージに基づいて、エンジニアリングツールを用いて新たに画面データを手作業で作成する。さらに、HMI開発者は、HMI画面の監視制御機能を発揮させるために、HMI画面上に配置される各パーツの動作プログラムを、エンジニアリングツールを用いて作る必要がある。エンジニアリングツールによるHMI開発には大きなコストを要しており、HMI開発の効率化が期待されている。
【0009】
産業プラントシステムのHMI画面の1つとして、コンピュータネットワークを介して接続された各装置の稼働状態を監視するためのシステム監視画面がある。上述したようにHMI開発者は、発注者との合意が得られたHMI画面イメージに基づき、エンジニアリングツールを用いて、システム監視画面の画面データを新たに作成し、かつ、システム監視画面を機能させるプログラムを作成する必要がある。
【0010】
システム監視画面の作成にあたり、オフィスのITシステムなどで利用される、ネットワーク構成図を作図可能なネットワーク監視ソフトウェアを、SCADA HMIサブシステムに組み入れることも考えられるが、次の2点で効率的とは言えない。
【0011】
第1に、SCADA HMIサブシステムは、産業プラントを監視制御するための多数のHMI画面を有し、システム監視画面はその1つに過ぎない。すべてのHMI画面のデザインは統一される必要がある。上述のネットワーク監視ソフトウェアを用いてもネットワーク構成図を作図できるに過ぎず、そのネットワーク構成図を他のHMI画面とデザインが統一されたシステム監視画面として流用することはできない。
【0012】
第2に、産業プラントシステムは、オフィスのITシステムに比して、システムを構成する機器の寿命が長い。オフィスのITシステムでは、耐用年限が経過した機器は早期にリプレースされ効率的な運用が図られる場合が多い。一方、産業プラントシステムでは、産業機器の数が多く、末端の産業機器も含めると数十年以上も連続稼働している産業機器も珍しくない。そのような場合、レガシーな産業機器に影響を及ぼさないために制約条件を満たすように監視する必要がある。上述のネットワーク監視ソフトウェアでは、このような産業プラントシステム特有の制約条件には対応できない。
【0013】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、産業プラントのシステム監視機能をノンプログラミングでグラフィカルに実現できるSCADAウェブHMIシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の観点は、SCADAウェブHMIシステムに関連する。
SCADAウェブHMIシステムは、図面作成装置とHMIサーバ装置とHMIクライアント装置とを備え、産業プラントを構成する産業機器および集線装置に接続する。
前記図面作成装置は、前記HMIサーバ装置に対応するサーバパーツと、前記HMIクライアント装置に対応するクライアントパーツと、前記産業機器に対応する産業機器パーツと、前記集線装置に対応するHUBパーツと、通信ケーブルに対応するケーブルパーツとが配列されたステンシルエリアを表示する。
前記図面作成装置は、前記ステンシルエリアに配列された各パーツをドラッグアンドドロップして配置することにより前記サーバパーツと前記クライアントパーツと前記産業機器パーツとがそれぞれ前記ケーブルパーツを介して前記HUBパーツに接続したネットワーク構成図を描画できる、製図エリアを表示する。
前記図面作成装置は、前記製図エリアに描画された前記ネットワーク構成図に基づいて、前記ネットワーク構成図を構成するパーツが配置されたシステム監視画面のベクター画像情報と、前記システム監視画面に配置された前記パーツのIPアドレス情報と、前記システム監視画面に配置された前記パーツのパーツ間接続情報とを関連付けたHMI構成データを生成する。
前記HMIサーバ装置は、前記HMIクライアント装置と前記産業機器と前記集線装置とを含む装置群の監視方法を予め定めたサーバランタイムライブラリに前記HMI構成データを適用することにより前記装置群それぞれの通信状態を監視するシステム監視処理を実行する。前記システム監視処理は、前記装置群に含まれる監視対象へのエコー要求に対する前記監視対象からのエコー応答の有無によって前記監視対象の通信状態が正常か異常かを判定する。
前記HMIサーバ装置は、前記システム監視処理により監視された前記装置群それぞれの通信状態に応じた表示信号を、前記HMIクライアント装置へ送信する。
前記HMIクライアント装置は、ウェブブラウザを実行する。
前記ウェブブラウザは、前記HMIサーバ装置から受信した前記ベクター画像情報に基づいて前記システム監視画面を描画する。
前記ウェブブラウザは、受信した前記表示信号に応じて前記システム監視画面に配置された前記パーツの表示状態を変更する。
【0015】
第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記システム監視処理は、前記産業機器に対する監視頻度を前記HMIクライアント装置に対する監視頻度よりも低く定めた制約条件を満たすように、前記装置群それぞれの通信状態を監視する。
【0016】
第3の観点は、第1又は第2の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記HMIサーバ装置は、前記システム監視処理により監視された前記装置群それぞれの通信状態が異常である場合に、前記ウェブブラウザにアラーム信号を送信するアラーム管理処理を実行する。
前記ウェブブラウザは、前記システム監視画面が描画されていない場合であっても、前記アラーム信号の内容を表示する。
【0017】
第4の観点は、第1乃至第3の観点のいずれかに加えて、次の特徴を更に有する。
前記システム監視処理は、前記集線装置の通信状態が異常であり、かつ、前記産業機器の通信状態が正常である場合に、前記HMIサーバ装置から前記産業機器までの実際の経路と、前記システム監視画面に描画された前記サーバパーツから前記産業機器パーツまでの経路とが異なっていると推定し、配線異常を示す前記表示信号を送信する。
【発明の効果】
【0018】
第1の観点によれば、図面作成装置は、ドラッグアンドドロップにより描画されたネットワーク構成図からシステム監視画面のHMI構成データを生成できる。HMIサーバ装置は、予め定めたサーバランタイムライブラリにHMI構成データを適用することでシステム監視処理を実行する。システム監視処理では、HMIクライアント装置と産業機器と集線装置とを含む装置群に含まれる監視対象へのエコー要求に対する監視対象からのエコー応答の有無によって監視対象の通信状態が正常か否かを判定でき、監視対象の装置の通信状態に応じた表示信号を送信できる。HMIクライアント装置は、ウェブブラウザにシステム監視画面を描画し、受信した表示信号に応じてシステム監視画面に配置されたパーツの表示状態を変更できる。そのため、本発明によれば、産業プラントのシステム監視機能をノンプログラミングでグラフィカルに実現できる。


【0019】
第2の観点によれば、レガシーな産業機器を含む既設の産業プラントにおいて制約条件を満たすようにシステム監視を実行することできる。そのため、既設の産業プラントの運用の妨げになるような副作用を防止することができる。
【0020】
第3の観点によれば、ウェブブラウザにシステム監視画面が描画されていない場合であっても、アラーム信号をユーザに通知できる。
【0021】
第4の観点によれば、ネットワークトポロジから推定される集線装置の通信状態と直接検出した集線装置の通信状態とが食い違っている場合に、実際のネットワーク構成がシステム監視画面上のネットワーク構成図構成と異なっていることをユーザに通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態1に係るSCADAウェブHMIシステムの構成例を説明するための図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る図面エディタが表示する図面作成画面の一例である。
図3】本発明の実施の形態1に係るIPアドレス情報とパーツ間接続情報とクライアント通知情報の一例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態1に係るHMIサーバ装置が有する機能の概要を例示するブロック図である。
図5】本発明の実施の形態1に係るシステム監視処理の一例を説明するための図である。
図6】本発明の実施の形態1に係るシステム監視処理について説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の実施の形態1に係るシステム監視処理の一例を説明するための図である。
図8】本発明の実施の形態1に係るシステム監視処理の一例を説明するための図である。
図9】本発明の実施の形態1に係るシステム監視処理の一例を説明するための図である。
図10】本発明の実施の形態2に係るHMIサーバ装置が有する機能の概要を例示するブロック図である。
図11】本発明の実施の形態2に係るシステム監視処理について説明するためのフローチャートである。
図12】本発明の実施の形態2に係るシステム監視処理の一例を説明するための図である。
図13】図面作成装置、HMIサーバ装置、HMIクライアント装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図14】図面エディタにより作成されるネットワーク構成図の一例である。
図15】パーツの監視方法と表示方法と制約条件の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0024】
実施の形態1.
1-1.SCADAウェブHMIシステム
図1は、SCADAウェブHMIシステムの構成例を説明するための図である。SCADAウェブHMIシステムは、産業プラントを監視制御するSCADAの一部を構成するHMIサブシステムである。図1に示すSCADAウェブHMIシステムは、図面作成装置1、HMIサーバ装置2、HMIクライアント装置3を含む。HMIサーバ装置2およびHMIクライアント装置3は、コンピュータネットワークを介して、産業プラントを構成する少なくとも1つの産業機器4に接続する。
【0025】
図面作成装置1は開発環境であり、図面エディタ11を実行する。HMI開発者は、図面エディタ11を用いて、産業プラントを監視制御するための複数のHMI画面を設計する。図面作成装置1は、図面エディタ11を用いて描画された各HMI画面イメージに基づいて各HMI画面のベクター画像情報を含むHMI構成データ5を生成する。
【0026】
HMIサーバ装置2およびHMIクライアント装置3は実行環境であり、HMI構成データ5を読み込んで、ブラウザベースのHMIサブシステムとして機能する。HMIクライアント装置3で実行されるウェブブラウザ31は、HMIサーバ装置2で実行されるウェブサーバと協調して動作する。ウェブブラウザ31上に描画される各HMI画面は、産業プラントを監視制御するための画面として機能する。
【0027】
産業機器4は、例えば、産業プラントを構成するセンサやアクチュエータに接続するPLC、PC、ゲートウェイなどである。
【0028】
1-2.図面作成装置
HMI開発者により使用される図面エディタ11は、エンジニアリングツールと呼ばれる。図面作成装置1により実行される図面エディタ11は、高度な図面編集機能と、図面データをSVG形式で保存できる機能を有する。図面エディタ11のベース機能として、例えばMicrosoft Visio(登録商標)を利用できる。さらに、図面エディタ11は、製図部12とHMI構成データ生成部13とを備える。
【0029】
図2を参照して、製図部12により表示される図面作成画面について説明する。図2は、図面エディタ11が表示する図面作成画面の一例である。
【0030】
製図部12は、モニタ1c(図13)に、図面を作成するために必要なパーツのマスターシェイプが配列されたステンシルエリア121と、図面が描かれる製図エリア122とを並べて表示する。また、製図部12は、マウス等の入出力インタフェース1d(図13)を用いて、HMI開発者に選択されたステンシルエリア121上のパーツを、製図エリア122の図面上に配置可能である。
【0031】
以下、HMI画面の一例として、産業プラントのネットワーク構成を監視するためのシステム監視画面について説明する。
【0032】
図2に示すステンシルエリア121には、HMIサーバ装置2に対応するサーバパーツのマスターシェイプ121aと、HMIクライアント装置3に対応するクライアントパーツのマスターシェイプ121bと、産業機器4に対応する産業機器パーツのマスターシェイプ121cと、集線装置6(図4)に対応するHUBパーツのマスターシェイプ121dと、通信ケーブルに対応するケーブルパーツのマスターシェイプ121eとが配列されている。HMI開発者は、ステンシルエリア121上のパーツを、マウス操作によるドラッグアンドドロップによりコピーし、製図エリア122の任意の位置に配置可能である。
【0033】
図2に示す製図エリア122には、システム監視画面として用いられるネットワーク構成図(ネットワークトポロジ)の一例が描かれている。図2に示す製図エリア122には、サーバパーツ122aとクライアントパーツ122bと産業機器パーツ122cとがそれぞれケーブルパーツ(122e、122f、122g)を介してHUBパーツ122dに接続したネットワーク構成図が描かれている。ネットワーク構成図は、ステンシルエリア121に配列された各パーツを製図エリア122にドラッグアンドドロップして配置することにより描かれる。
【0034】
なお、製図エリア122には、図14に示すような複雑なネットワーク構成図を描くこともできる。このようなネットワーク構成図を描画するため、ステンシルエリア121には、図15のパーツ種別列に記載されるパーツ種別ごとに、マスターシェイプが用意されている。
【0035】
図1に戻り説明を続ける。HMI構成データ生成部13は、製図エリア122に描画されたネットワーク構成図に基づいてHMI構成データ5を生成する。HMI構成データ5は、SVG(Scalable Vector Graphics)データ51と、IPアドレス情報52と、パーツ間接続情報53と、クライアント通知情報54とを含み、これらはパーツ名称で関連付けられている。パーツ名称は、画面名とパーツ種別とパーツ番号を組み合わせたシステム内で固有の名称である。
【0036】
SVGデータ51は、ネットワーク構成図を構成するパーツが配置されたシステム監視画面のベクター画像情報であり、各パーツのパーツ名称、位置、形、色、大きさなどの静的表示属性を含む。IPアドレス情報52は、システム監視画面に配置されたパーツのパーツ名称と、パーツに対応する装置のIPアドレスとの対応関係を定める。HMI開発者は、必要に応じてIPアドレスを編集可能である。パーツ間接続情報53は、システム監視画面に配置されたパーツの接続関係を定める。接続関係はケーブルパーツにより接続された2つのパーツのパーツ名称の組み合わせで定義される。クライアント通知情報54は、パーツ名称と少なくとも1つのアラーム信号の内容との関係を定める。HMI開発者は、必要に応じてアラーム信号の内容を編集可能である。
【0037】
さらに、HMI構成データ生成部13は、SVGデータ51をSVG形式のファイルとして出力し、IPアドレス情報52とパーツ間接続情報53とクライアント通知情報54とをCSV形式のファイルとして出力する。これらのファイルはHMIサーバ装置2にダウンロードされる。
【0038】
図3は、図2の製図エリア122に描かれたネットワーク構成図に基づいてHMI構成データ生成部13が生成した、IPアドレス情報52、パーツ間接続情報53、クライアント通知情報54の具体例を示す図である。
【0039】
図3では、IPアドレス情報52の一例として、サーバパーツ122a(パーツ名称:SYS1_1HMISVR)、クライアントパーツ122b(パーツ名称:SYS1_2HMICLT)、HUBパーツ122d(パーツ名称:SYS1_3HUB8)、産業機器パーツ122c(パーツ名称:SYS1_4PC)それぞれにIPアドレスが割り当てられている。なお、パーツ名称(SYS1_1HMISVR)は、画面名(SYS1)とパーツ番号(1)とパーツ種別(HMISVR)との組み合わせで構成されている。
【0040】
図3では、パーツ間接続情報53の一例として、「DeviceEnd」列に記載されたパーツ名称と「ConnectivityEnd」列に記載されたパーツ名称との組み合わせでケーブルパーツにより接続された2つのパーツの接続関係が定められている。
【0041】
図3では、クライアント通知情報54の一例として、1つの装置に対して複数の異常状態がありうるため、1つのパーツ名称に対して複数の異常メッセージが定められている。
【0042】
1-3.HMIサーバ装置
図4は、実施の形態1に係るHMIサーバ装置2が有する機能の概要を例示するブロック図である。
【0043】
HMIサーバ装置2は、各種処理を実行するプロセッサ2a(図13)、各種情報が格納されるメモリ2b(図13)を備える。メモリ2bに記憶されたプログラムをプロセッサ2aが実行することにより、プロセッサ2aは、システム監視処理21、アラーム管理処理22、HMIサーバ処理23として機能する。システム監視処理21とアラーム管理処理22とHMIサーバ処理23とは、プロセス間通信により相互にデータを交換可能である。
【0044】
メモリ2bには、図面作成装置1からダウンロードされたHMI構成データ5が格納されている。HMI構成データ5は、上述したSVGデータ51、IPアドレス情報52、パーツ間接続情報53、クライアント通知情報54を含む。また、メモリ2bには、HMI構成データ5が適用されてHMIサーバ装置2で動作するサーバランタイムライブラリ、および、表示信号またはアラーム信号を受信してHMIクライアント装置3で動作するパーツランタイムライブラリが予め記憶されている。
【0045】
(システム監視処理)
システム監視処理21は、HMIクライアント装置3と産業機器4と集線装置6とを含む装置群の監視方法を予め定めたサーバランタイムライブラリにHMI構成データ5を適用することにより装置群それぞれの通信状態を監視する。ここで、サーバサーバランタイムライブラリ適用されるHMI構成データ5は、IPアドレス情報52、パーツ間接続情報53、クライアント通知情報54である。
【0046】
サーバランタイムライブラリには、装置群それぞれについて監視方法が予め定められている。例えば、IPアドレスを持つ装置についてICMPパケットの応答チェックで通信状態を監視する監視方法が定められている。SNMPをサポートしている装置についてSNMPプロトコルにより通信状態を監視する監視方法が定められている。IPアドレスを有しないあるいはSNMPをサポートしない装置について経路上の他装置の監視結果から当該装置の通信状態を推定する監視方法が定められている。トークンリングネットワーク上に存在する装置ついてトークンの取得により通信状態を監視する監視方法が定められている。PLCやシンクライアントなどの主要装置について独自の監視方法が定められている。また、サーバランタイムライブラリおよびパーツランタイムライブラリには、装置群それぞれの通信状態に応じたパーツの表示色を定めた表示方法が予め定められている。
【0047】
装置群の監視方法の具体例について説明する。例えば、図4に示すHMIクライアント装置3、産業機器4、集線装置6の監視方法は死活監視(alive monitoring)である。具体的には、システム監視処理21は、IPアドレス情報52に基づいてpingコマンドを使用して監視対象の装置(送信先装置)に対し、ICMP(Internet Control Message Protocol)の"echo request"パケットを送信する。システム監視処理21は、送信先装置から"echo reply"が返ってくるか否かを監視することで、送信先装置の通信状態が正常か異常かを判断できる。システム監視処理21は、監視対象の装置の通信状態(正常、異常)に応じて、監視対象の装置に対応するパーツの表示信号をアラーム管理処理22とHMIサーバ処理23へ送信する。表示信号は、パーツ名称と状態値を含む。
【0048】
なお、システム監視処理21は、IPアドレスが無い通信ケーブルを次のように監視する。システム監視処理21は、通信ケーブルの両端に接続する両装置の通信状態が正常である場合に、通信ケーブルの通信状態は正常であると推定する。また、システム監視処理21は、通信ケーブルの両端に接続する少なくとも一方の装置の通信状態が異常である場合に、通信ケーブルの通信状態は異常であると推定する。システム監視処理21は、推定された通信ケーブルの通信状態(正常、異常)に応じた表示信号をアラーム管理処理22とHMIサーバ処理23へ送信する。
【0049】
図5は、産業機器4から応答がなく、HMIクライアント装置3および集線装置6から応答があった場合を示す例である。この場合、産業機器4に対応する産業機器パーツ122cおよびケーブルパーツ122gを異常色(赤)で表示させるための表示信号が送信される。加えて、HMIサーバ装置2に対応するサーバパーツ122a、HMIクライアント装置に対応するクライアントパーツ122b、集線装置6に対応するHUBパーツ122d、およびケーブルパーツ(122e、122f、122g)を正常色(緑)で表示させるための表示信号が送信される。
【0050】
(システム監視処理:制約条件)
ところで、産業プラントを構成する産業機器4にはレガシーな機器も存在する。レガシーな機器では、通信処理が低速なものもあり、その場合、ネットワーク監視のための通信を行うことにより、本来の動作の妨げになる場合もある。例えば、ICMPエコー要求パケットに対する応答により機器の監視を行う場合、その機器がネットワーク上に存在しない場合、その機器のMACアドレスを検出するためにARPパケットが繰り返し送出される。ARPパケットはブロードキャストで送信される。そのため、通信処理が低速な機器が多数のARPパケットを受信し処理することにより、当該機器本来の機能が誤動作する場合もある。そのような状態を回避するため監視方法に制約を設ける必要がある。
【0051】
そこで、システム監視処理21は、レガシーな産業機器4に対する監視頻度を、HMIクライアント装置3および集線装置6に対する監視頻度よりも小さく定めた制約条件を満たすように、装置群それぞれの通信状態を監視する。制約条件の一例として、通信処理を高速に行えない産業機器4が存在する場合、ICMPエコー要求パケットの送出間隔を長くするとともに、産業機器4が発見できない場合には、ICMPエコー要求パケットの送出間隔を段階的に長く設定することができる。このような制約条件を満たすことで、既設の産業システムにシステム監視機能を新たに適用する際の副作用を防ぐことができる。
【0052】
(システム監視処理:アンマネージ機器の通信状態の推定)
次に、監視対象の装置の通信状態を直接的に監視できない場合の推定方法について説明する。集線装置6がマネージ機器である場合、IPアドレスを有し直接的に集線装置6の通信状態を直接的に監視できるが、集線装置6がアンマネージ機器である場合、IPアドレスを有しておらず間接的に通信状態を監視する必要がある。
【0053】
そこで、システム監視処理21は、パーツ間接続情報53からHMIサーバ装置2から各装置(HMIクライアント装置3、産業機器4)までの経路を取得し、経路上の装置(集線装置6)の通信状態を次のように推定することとした。
(1)システム監視処理21は、集線装置6に接続する装置群の少なくとも1つの装置の通信状態が正常である場合に、集線装置6の通信状態は正常であると推定する。
(2)システム監視処理21は、集線装置6に接続するすべての装置の通信状態が異常である場合に、集線装置6の通信状態は異常であると推定する。
【0054】
図6図9を参照して上述したシステム監視処理21の具体例について説明する。図6は、実施の形態1に係るシステム監視処理21において装置群の通信状態を監視する処理について説明するためのフローチャートである。この説明では、図4に示すネットワーク構成において集線装置6はIPアドレスを有さないアンマネージ機器(アンマネージHUB)であるとする。
【0055】
ステップS100において、システム監視処理21は、制約条件を満たすように、IPアドレスを有する装置群(HMIクライアント装置3、産業機器4)を送信先装置としてpingコマンドを実行する。
【0056】
ステップS110において、すべての送信先装置からICMPエコー応答メッセージを受信した否かが判定される。すべての送信先装置からICMPエコー応答メッセージを受信した場合には、ステップS120の処理が実行される。
【0057】
ステップS120において、すべての送信先装置の通信状態は正常であると判定される。加えて、集線装置6に接続する装置群の少なくとも1つの送信先装置の通信状態が正常であるため、アンマネージ機器である集線装置6は正常と推定される。
【0058】
次にステップS170において、システム監視画面に配置されたパーツに関する表示信号が送信される。図7は、すべての送信先装置(HMIクライアント装置3、産業機器4)から応答があった場合のシステム監視画面の表示例を示す図である。ステップS120の処理後、ステップS170において、HMIサーバ装置2に対応するサーバパーツ122a、HMIクライアント装置3に対応するクライアントパーツ122b、産業機器4に対応する産業機器パーツ122c、集線装置6に対応するHUBパーツ122d、ケーブルパーツ(122e、122f、122g)のそれぞれを正常色(緑)で表示させる表示信号が送信される。
【0059】
また、ステップS110の判定条件が成立しない場合、ステップS130の処理が実行される。ステップS130において、一部の送信先装置からICMPエコー応答メッセージを受信したか否かが判定される。一部の送信先装置からICMPエコー応答メッセージを受信した場合には、ステップS140の処理が実行される。
【0060】
ステップS140において、応答がある送信先装置の通信状態は正常であると判定される。応答がない送信先装置の通信状態は異常であると判定される。加えて、集線装置6に接続する装置群の少なくとも1つの送信先装置の通信状態が正常であるため、アンマネージ機器である集線装置6は正常と推定される。
【0061】
次にステップS170において、システム監視画面に配置されたパーツに関する表示信号が送信される。図8は、一部の送信先装置(HMIクライアント装置3)から応答があった場合のシステム監視画面の表示例を示す図である。ステップS140の処理後、ステップS170において、HMIサーバ装置2に対応するサーバパーツ122a、HMIクライアント装置3に対応するクライアントパーツ122b、およびこれらに接続するケーブルパーツ(122e、122f)をそれぞれ正常色(緑)で表示させる表示信号が送信される。また、産業機器4に対応する産業機器パーツ122cおよびこれに接続するケーブルパーツ122gをそれぞれ異常色(赤)で表示させる表示信号が送信される。加えて、集線装置6に対応するHUBパーツ122dを正常色(緑)で表示させる表示信号が送信される。
【0062】
また、ステップS130の判定条件が成立しない場合、ステップS150の処理が実行される。ステップS150において、すべての送信先装置からICMPエコー応答メッセージを受信しなかったか否かが判定される。すべての送信先装置からICMPエコー応答メッセージを受信しなかった場合には、ステップS160の処理が実行される。
【0063】
ステップS160において、すべての送信先装置の通信状態は異常であると判定される。加えて、集線装置6に接続するすべての送信先装置の通信状態が異常であるため、アンマネージ機器である集線装置6の通信状態も異常であると推定される。
【0064】
次にステップS170において、システム監視画面に配置されたパーツに関する表示信号が送信される。図9は、すべての送信先装置(HMIクライアント装置3、産業機器4)から応答がなかった場合のシステム監視画面の表示例を示す図である。ステップS160の処理後、ステップS170において、HMIサーバ装置2に対応するサーバパーツ122aを正常色(緑)で表示させる表示信号が送信される。HMIクライアント装置3に対応するクライアントパーツ122b、産業機器4に対応する産業機器パーツ122c、集線装置6に対応するHUBパーツ122d、ケーブルパーツ(122e、122f、122g)をそれぞれ異常色(赤)で表示させる表示信号が送信される。
【0065】
なお、本実施形態では、通信状態の監視方法としてpingコマンドを用いた例について説明したが、これに限定されるものではない。図15に示すように産業プラントを構成する装置毎に様々な監視方法が存在し、これらの監視方法はメモリ2bに記憶されたサーバランタイムライブラリに予め定められている。
【0066】
(アラーム管理処理)
図4に戻り、アラーム管理処理22について説明する。アラーム管理処理22は、システム監視処理21から受信した表示信号に基づいて、システム監視処理21により監視された装置群それぞれの通信状態が異常であるか否かを判定する。アラーム管理処理22は、システム監視処理21により監視された装置群それぞれの通信状態が異常である場合に、HMIサーバ処理23を介して、ウェブブラウザ31にアラーム信号を送信する。アラーム信号の内容は、必ずオペレータへ通知される必要がある。そのため、アラーム信号は、ウェブブラウザ31で描画されているHMI画面に依らず、すなわちシステム監視画面が描画されていない場合であっても、ウェブブラウザ31へ通知される。
【0067】
(HMIサーバ処理)
次に、図4のHMIサーバ処理23について説明する。HMIサーバ処理23は、HMIクライアント装置3で実行されるウェブブラウザ31と通信するウェブサーバ機能を含む。HMIサーバ処理23は、ウェブブラウザ31からのリクエストに応じてコンテンツを送信する。コンテンツは、HTMLファイル(図示省略)、HMI画面毎のSVGデータ51、パーツ種別毎の動作を記述したパーツランタイムライブラリを含む。
【0068】
パーツランタイムライブラリは、パーツ種別毎に動作を記述したスクリプトの集合を含む。スクリプトは、パーツ種別毎に定義されたJavaScript(登録商標)プログラムである。スクリプトは、必要に応じてパラメータ値(例えば、表示信号に含まれるパーツ名称と状態値)が与えられて各ウェブブラウザ31上で実行可能である。
【0069】
HMIサーバ処理23は、システム監視処理21から受信したパーツ毎の表示信号、アラーム管理処理22から受信したパーツ毎のアラーム信号、および、産業機器4から受信した信号をウェブブラウザ31へ送信する。システム監視画面に関する表示信号は当該画面がウェブブラウザ31に表示されている場合にのみ送信されればよい。一方、アラーム信号はウェブブラウザ31に表示されているHMI画面に依らず送信される。
【0070】
1-4.HMIクライアント装置
次に、図4のHMIクライアント装置3について説明する。HMIクライアント装置3は、各種処理を実行するプロセッサ3a(図13)、各種情報が格納されるメモリ3b(図13)、モニタ3c(図13)を備える。メモリ3bに記憶されたプログラムをプロセッサ3aが実行することにより、プロセッサ3aは、表示パーツが配置されたHMI画面を表示するウェブブラウザ31を実行するように構成されている。モニタ3cは、ウェブブラウザ31を表示する。
【0071】
ウェブブラウザ31は、HMIサーバ装置2のHMIサーバ処理23からHMI画面に関するコンテンツを取得可能である。コンテンツは、上述したとおりHTMLファイル、HMI画面毎のSVGデータ51、パーツ種別毎の動作を記述したスクリプトの集合であるパーツランタイムライブラリを含む。
【0072】
ウェブブラウザ31は、HMIサーバ装置2から受信したSVGデータ51に基づいてシステム監視画面を描画する。ウェブブラウザ31は、受信した表示信号に応じてシステム監視画面に配置されたパーツの表示状態を変更する。具体的には、表示信号に含まれるパーツ名称および状態値が、パーツランタイムライブラリに含まれる当該パーツのパーツ種別に応じたスクリプトに適用されることで、表示信号の状態値(正常、異常など)に応じてパーツの色(緑、赤など)を変更する処理が実行される。例えば、ウェブブラウザ31は、図5の産業機器4に対応する産業機器パーツ122cに関する表示信号(パーツ名称と異常を示す状態値を含む)を受信すると、パーツランタイムライブラリに含まれる産業機器パーツ用スクリプトに表示信号を適用して、産業機器パーツ122cの表示状態を異常色(赤)へ変化させる。
【0073】
また、ウェブブラウザ31は、システム監視画面が描画されていない場合であっても、アラーム信号の内容を表示する。具体的には、受信したアラーム信号に含まれるパーツ名称およびメッセージ内容が、パーツランタイムライブラリに含まれる当該パーツのパーツ種別に応じたスクリプトに適用されることで、アラーム信号に応じたアラームパーツの色変更やメッセージ内容を表示する処理が実行される。
【0074】
1-5.効果
以上説明したように、図面作成装置1は、ドラッグアンドドロップのマウス操作により描画されたネットワーク構成図からシステム監視画面のHMI構成データ5を生成できる。HMIサーバ装置2は、予め定めたサーバランタイムライブラリにHMI構成データ5を適用することでシステム監視処理21を実行し、監視対象の装置の通信状態に応じた表示信号を送信できる。HMIクライアント装置3は、ウェブブラウザ31にシステム監視画面を描画し、受信した表示信号に応じてシステム監視画面に配置されたパーツの表示状態を変更できる。そのため、本実施形態のシステムによれば、産業プラントのシステム監視機能をノンプログラミングでグラフィカルに実現できる。
【0075】
また、本実施形態のシステムによれば、レガシーな産業機器を含む既設の産業プラントにおいて制約条件を満たすようにシステム監視を実行することできる。そのため、既設の産業プラントの運用の妨げになるような副作用を防止することができる。また、ウェブブラウザにシステム監視画面が描画されていない場合であっても、アラーム信号をユーザに通知できる。
【0076】
実施の形態2.
2-1.実施の形態2の概要
次に、図10図12を参照して本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態のシステムは、図1および図10に示す構成において、システム監視処理21が後述する図11のルーチンを実行することで実現することができる。
【0077】
上述した実施の形態1では、実際のネットワーク構成と、システム監視画面上のネットワーク構成とが同じであることを前提として説明した。ところで、通信ケーブルの配線ミスなどの人為的なミスにより、運用中のネットワーク構成と、システム監視画面上のネットワーク構成とが異なる状態になるケースがある。このような状態は、検知されてユーザに通知されることが望まれる。
【0078】
そこで、本実施形態のシステムでは、運用中のネットワーク構成とシステム監視画面上のネットワーク構成との差異を検知した場合に、ユーザに通知することとした。
【0079】
(システム監視処理)
図10は、実施の形態2に係るネットワーク構成の一例について説明するための図である。このネットワーク構成は、2つの集線装置6を備える。第1集線装置6aおよび第2集線装置6bはIPアドレスを有するマネージ機器である。第1集線装置6aは、HMIサーバ装置2とHMIクライアント装置3と第2集線装置6bとに接続する。第2集線装置6bは産業機器4に接続する。
【0080】
ここで、人為的なミスにより、本来は第2集線装置6bに接続されるべき産業機器4が、第1集線装置6aに接続されたとする。この接続状態において第2集線装置6bが故障した場合、HMIサーバ装置2からのpingコマンドに対して、産業機器4からは応答が有り、かつ、第2集線装置6bからは応答が無い状態となる。産業機器4から応答があれば、システム監視画面に表示される経路上の第2集線装置6b(122h)の通信状態は正常と推定される。それにも関わらず、第2集線装置6bからは応答が無いため、第2集線装置6bの実際の通信状態は異常である。すなわち、推定される通信状態と実際の通信状態とが異なり、監視結果に矛盾が生じる。この場合、実際のネットワーク構成とシステム監視画面のネットワーク構成とが異なっていることが推定される。このような場合には、配線異常(黄色)を示す表示信号とアラーム信号でユーザに通知する。
【0081】
そこで、本実施形態に係るシステム監視処理21は、集線装置6の通信状態が異常であり、かつ、産業機器4の通信状態が正常である場合に、HMIサーバ装置2から産業機器4までの実際の経路と、システム監視画面に描画されたサーバパーツ122aから産業機器パーツ122cまでの経路とが異なっていると推定し、配線異常を示す表示信号を送信する。
【0082】
図11は、本実施形態に係るシステム監視処理21において、上述した図6のステップS130の判定条件が成立した場合に実行されるフローチャートである。
【0083】
ステップS131において、産業機器4からICMPエコー応答メッセージを受信したか否かが判定される。産業機器4からICMPエコー応答メッセージを受信した場合、さらにステップS132において、HMIサーバ装置2から産業機器4までの経路上の少なくとも1つの集線装置6からICMPエコー応答メッセージを受信しなかったか否かが判定される。
【0084】
ステップS132において、例えば、図10の第2集線装置6bからICMPエコー応答メッセージを受信しなかった場合、ステップS133の処理が実行される。ステップS133において、産業機器4は配線異常と推定される。応答があった他の装置の通信状態は正常と判定される。応答が無かった装置の通信状態は異常と判定される。
【0085】
次にステップS170において、システム監視画面に配置されたパーツに関する表示信号が送信される。図12は、第2集線装置6bから応答がなかった場合のシステム監視画面の表示例を示す図である。実施の形態1のシステムによれば(A)のように産業機器パーツ122cが正常色(緑)で表示され、かつ、第2集線装置6bに対応するHUBパーツ122hが異常色(赤)で表示されてしまう。これに対して、本実施形態のシステムによれば(B)のように産業機器4が接続されるべき集線装置6が誤っている可能性を検知して、産業機器パーツ122cを配線異常色(黄)で表示する。
【0086】
なお、ステップS131またはステップS132の判定条件が成立しない場合、実施の形態1と同様にステップS140の処理を実行する。
【0087】
また、アラーム管理処理22は、システム監視処理21から配線異常の状態値を有する表示信号を受信した場合に、配線異常に関するメッセージ内容を含むアラーム信号をHMIサーバ処理23へ送信する。また、HMIサーバ処理23は、システム監視処理21から配線異常の状態値を有する表示信号、および、アラーム信号をウェブブラウザ31へ送信する。
【0088】
2-3.効果
以上説明したように、本実施形態のシステムによれば、ネットワークトポロジから推定される産業機器の通信状態と直接検出した産業機器の通信状態とが食い違っている場合に、実際のネットワーク構成がシステム監視画面上の構成と異なっていることをユーザに通知することができる。
【0089】
3.ハードウェア構成例
図13は、図面作成装置1、HMIサーバ装置2、HMIクライアント装置3のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0090】
上述した図面作成装置1の各処理は、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ1aと、メモリ1bと、モニタ1cと、入出力インタフェース1dとが接続して構成されている。プロセッサ1aは、メモリ1bに記憶された各種プログラムを実行することにより、図面作成装置1の各処理を実現する。メモリ1bは、主記憶装置および補助記憶装置を含む。入出力インタフェース1dは、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等の入力デバイス、HMI構成データ5をファイル出力可能な出力デバイス、HMI構成データ5をHMIサーバ装置2へ送信するための通信デバイスを含む。
【0091】
上述したHMIサーバ装置2の各処理は、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ2aと、メモリ2bと、入出力インタフェース2dとが接続して構成されている。プロセッサ2aは、メモリ2bに記憶された各種プログラムを実行することにより、HMIサーバ装置2の各機能を実現する。メモリ2bは、主記憶装置および補助記憶装置を含む。入出力インタフェース2dは、産業機器4およびHMIクライアント装置3と接続してデータを送受信可能な通信デバイス、図面作成装置1からHMI構成データを取得するためのデバイスを含む。
【0092】
上述したHMIクライアント装置3の各処理は、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ3aと、メモリ3b、モニタ3cと、入出力インタフェース3dとが接続して構成されている。プロセッサ3aは、メモリ3bに記憶された各種プログラムを実行することにより、HMIクライアント装置3の各処理を実現する。メモリ3bは、主記憶装置および補助記憶装置を含む。モニタ3cは複数台設けられてもよい。入出力インタフェース3dは、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力デバイス、HMIサーバ装置2と接続してデータを送受信可能な通信デバイスを含む。
【0093】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、上述した実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【符号の説明】
【0094】
1 図面作成装置
2 HMIサーバ装置
3 HMIクライアント装置
4 産業機器
5 HMI構成データ
6 集線装置
6a 第1集線装置
6b 第2集線装置
11 図面エディタ
12 製図部
13 HMI構成データ生成部
21 システム監視処理
22 アラーム管理処理
23 HMIサーバ処理
31 ウェブブラウザ
51 SVGデータ
52 IPアドレス情報
53 パーツ間接続情報
54 クライアント通知情報
121 ステンシルエリア
121a-121e マスターシェイプ
122 製図エリア
122a サーバパーツ
122b クライアントパーツ
122c 産業機器パーツ
122d、122h HUBパーツ
122e、122f、122g、122i ケーブルパーツ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15