(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】SCADAウェブHMIクライアント装置およびSCADAウェブHMIシステム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240426BHJP
G06F 3/14 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
G05B23/02 301X
G06F3/14 350A
G06F3/14 360A
(21)【出願番号】P 2023532952
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2021025635
(87)【国際公開番号】W WO2023281663
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
(72)【発明者】
【氏名】野島 章
(72)【発明者】
【氏名】清水 伸夫
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/015022(WO,A1)
【文献】特開2013-207711(JP,A)
【文献】特開平05-241757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G06F 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブサーバと通信する複数のウェブブラウザを実行するSCADAウェブHMIクライアント装置であって、
前記SCADAウェブHMIクライアント装置は、プロセッサと、第1モニタと、第2モニタと、を備え、
前記プロセッサは、
前記第1モニタに表示され、産業プラントを監視制御するためのHMI画面を描画する、第1ウェブブラウザを実行し、
前記第2モニタに表示され、前記HMI画面を描画する、第2ウェブブラウザを実行し、
前記ウェブサーバから、前記ウェブブラウザごとに前記HMI画面の操作可否を定めた操作権テーブルを取得し、
前記HMI画面は、前記産業プラントを監視するための表示用の画面と、オペレータにより操作される操作用の画面と、を含み、
前記操作権テーブルは、前記第1モニタに表示される前記HMI画面の操作を前記第1ウェブブラウザに許可せず、前記第2モニタに表示される前記HMI画面の操作を前記第2ウェブブラウザに許可し、
前記操作権テーブルに基づいて前記第1ウェブブラウザを実行して前記第1モニタの前記HMI画面に配置された操作パーツを操作不可状態で描画し、
前記操作権テーブルに基づいて前記第2ウェブブラウザを実行して前記第2モニタの前記HMI画面に配置された前記操作パーツを操作可能状態で描画する、ように構成されること、
を特徴とするSCADAウェブHMIクライアント装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記
第2モニタの前記HMI画面に配置された前記操作パーツにマウスポインタが乗った場合に、前記マウスポインタの形状又は色を操作不可状態から操作可能状態へ変化させ、
前記
第1モニタの前記HMI画面に配置された前記操作パーツに前記マウスポインタが乗っても前記マウスポインタの形状又は色を操作不可状態のまま変化させない、ように更に構成されること、
を特徴とする請求項1に記載のSCADAウェブHMIクライアント装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記HMI画面の操作可否を示す操作権識別パーツを前記HMI画面に表示し、
前記第1ウェブブラウザ
を実行して前記
第1モニタの前記HMI画面に配置された前記操作権識別パーツを操作禁止色で描画し、
前記第2ウェブブラウザ
を実行して前記
第2モニタの前記HMI画面に配置された前記操作権識別パーツを操作許可色で描画する、ように更に構成されること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のSCADAウェブHMIクライアント装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記第1ウェブブラウザを終了した後に再び開始する場合、前記第1ウェブブラウザの終了時の位置およびサイズに依らず、前記第1ウェブブラウザを予め定めた初期位置および初期サイズで前記第1モニタに表示し、
前記第2ウェブブラウザを終了した後に再び開始する場合、前記第2ウェブブラウザの終了時の位置およびサイズに依らず、前記第2ウェブブラウザを予め定めた初期位置および初期サイズで前記第2モニタに表示する、ように更に構成されること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のSCADAウェブHMIクライアント装置。
【請求項5】
産業プラントを構成するフィールド機器群に関する信号をプログラマブルロジックコントローラと送受信し、かつウェブサーバを実行するHMIサーバ装置、および、前記ウェブサーバを介して前記信号を送受信する複数のウェブブラウザを実行するHMIクライアント装置、を備えるSCADAウェブHMIシステムであって、
前記HMIクライアント装置は、プロセッサと、第1モニタと、第2モニタと、を備え、
前記プロセッサは、
前記第1モニタに表示され、前記産業プラントを監視制御するためのHMI画面を描画する、第1ウェブブラウザを実行し、
前記第2モニタに表示され、前記HMI画面を描画する、第2ウェブブラウザを実行し、
前記ウェブサーバから、前記ウェブブラウザごとに前記HMI画面の操作可否を定めた操作権テーブルを取得し、
前記HMI画面は、前記産業プラントを監視するための表示用の画面と、オペレータにより操作される操作用の画面と、を含み、
前記操作権テーブルは、前記第1モニタに表示される前記HMI画面の操作を前記第1ウェブブラウザに許可せず、前記第2モニタに表示される前記HMI画面の操作を前記第2ウェブブラウザに許可し、
前記操作権テーブルに基づいて前記第1ウェブブラウザを実行して前記第1モニタの前記HMI画面に配置された操作パーツを操作不可状態で描画し、
前記操作権テーブルに基づいて前記第2ウェブブラウザを実行して前記第2モニタの前記HMI画面に配置された前記操作パーツを操作可能状態で描画する、ように構成されること、
を特徴とするSCADAウェブHMIシステム。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記
第2モニタの前記HMI画面に配置された前記操作パーツにマウスポインタが乗った場合に、前記マウスポインタの形状又は色を操作不可状態から操作可能状態へ変化させ、
前記
第1モニタの前記HMI画面に配置された前記操作パーツに前記マウスポインタが乗っても前記マウスポインタの形状又は色を操作不可状態のまま変化させない、ように更に構成されること、
を特徴とする請求項5に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記HMI画面の操作可否を示す操作権識別パーツを前記HMI画面に表示し、
前記第1ウェブブラウザ
を実行して前記
第1モニタの前記HMI画面に配置された前記操作権識別パーツを操作禁止色で描画し、
前記第2ウェブブラウザ
を実行して前記
第2モニタの前記HMI画面に配置された前記操作権識別パーツを操作許可色で描画する、ように更に構成されること、
を特徴とする請求項5又は6に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記第1ウェブブラウザを終了した後に再び開始する場合、前記第1ウェブブラウザの終了時の位置およびサイズに依らず、前記第1ウェブブラウザを予め定めた初期位置および初期サイズで前記第1モニタに表示し、
前記第2ウェブブラウザを終了した後に再び開始する場合、前記第2ウェブブラウザの終了時の位置およびサイズに依らず、前記第2ウェブブラウザを予め定めた初期位置および初期サイズで前記第2モニタに表示する、ように更に構成されること、
を特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のSCADAウェブHMIシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SCADAウェブHMIクライアント装置およびSCADAウェブHMIシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)は、社会インフラシステムを監視制御する仕組みとして知られている。社会インフラシステムは、鉄鋼圧延システム、電力送変電システム、上下水道処理システム、ビル管理システム、道路システムなどである。
【0003】
SCADAは、産業制御システムの一種であり、コンピュータによるシステム監視とプロセス制御とデータ収集とを行う。SCADAでは、システムの処理性能に合わせた即応性(リアルタイム性)が必要である。
【0004】
SCADAは一般に次のようなサブシステムから構成される。
(1)HMI(Human Machine Interface)
HMIは、監視対象装置のデータをオペレータに提示し、オペレータが監視対象装置を監視し制御できるようにする機構である。
(2)監視制御システム
監視制御システムは、Programmable Logic Controller(PLC)などによって構成される。監視制御システムは、監視対象装置のデータを収集し、監視対象装置に対して制御コマンドを送る。
(3)遠方入出力装置(Remote Input Output:RIO)
遠方入出力装置は、監視対象装置に設置されたセンサと接続し、センサの信号をデジタルのデータに変換し、そのデジタルデータを監視制御システムに送る。
(4)通信基盤
通信基盤は、監視制御システムと遠方入出力装置を接続する。
【0005】
SCADA HMIサブシステムの一例として、特許文献1には、HMIクライアント装置とHMIサーバ装置とを備えるシステムが開示されている。特許文献1のような従来のSCADAでは、HMIサーバ装置が、PLCから受信したデータをHMIクライアント装置へ送信する。HMIクライアント装置は、コンピュータ本体と、キーボード・マウス等の入力デバイスと、モニタとを有し、モニタに1つのHMI画面(HMI Screen)を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、生産ライン等の運転室における運用形態として、多人数で監視するための大型モニタと、オペレータが操作するための卓上小型モニタとに、同じHMI画面をフルスクリーンで表示する形態がある。この運用形態を特許文献1に係るHMIサブシステムで実現するには、大画面モニタに接続するHMIクライアント装置と、卓上小型モニタに接続するHMIクライアント装置とが必要であり、HMIクライアント装置を2台用意する必要がある。
【0008】
しかしながら、費用、設置スペース、故障率、通信負荷を低減する観点から、1台のHMIクライアント装置で上記運用形態を実現できることが望ましい。
【0009】
本願発明者は、鋭意研究を進めた結果、ブラウザベースのSCADA HMIサブシステムを開発するに至った。これによれば、ウェブブラウザ上で動作するウェブアプリケーションとしてHMI画面を実現することができる。また、1台のHMIクライアント装置に大型モニタと卓上小型モニタの2台を接続し、2つのウェブブラウザを実行してそれぞれのモニタに表示することができる。
【0010】
この構成において、1台のHMIクライアント装置が備える入力デバイス(キーボード・マウス)は1セットであり、2つのウェブブラウザが同時に操作されることはない。一方で、それぞれのウェブブラウザを切り替えて操作することは可能であるため、誤操作を防ぐ必要がある。誤操作を防ぐため、多人数で監視するための大型モニタにはHMI画面が操作不可状態で表示され、オペレータが操作するための卓上小型モニタにはそのHMI画面が操作可能状態で表示される運用が望ましい場合がある。
【0011】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ウェブブラウザ単位で各HMI画面の操作権を設定して、同じHMI画面を、第1ウェブブラウザでは表示用として、第2ウェブブラウザでは操作用として、1台のコンピュータで実現できるSCADAウェブHMIクライアント装置およびSCADAウェブHMIシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の観点は、SCADAウェブHMIクライアント装置およびSCADAウェブHMIシステムに関連する。
SCADAウェブHMIシステムは、HMIサーバ装置とHMIクライアント装置とを備える。
HMIサーバ装置は、産業プラントを構成するフィールド機器群に関する信号をプログラマブルロジックコントローラと送受信し、かつウェブサーバを実行する。
HMIクライアント装置は、前記ウェブサーバを介して前記信号を送受信する複数のウェブブラウザを実行する。
前記HMIクライアント装置は、プロセッサと、第1モニタと、第2モニタと、を備える。
前記プロセッサは、
前記第1モニタに表示され、前記産業プラントを監視制御するためのHMI画面を描画する、第1ウェブブラウザを実行し、
前記第2モニタに表示され、前記HMI画面を描画する、第2ウェブブラウザを実行し、
前記ウェブサーバから、前記ウェブブラウザごとに前記HMI画面の操作可否を定めた操作権テーブルを取得し、
前記HMI画面は、前記産業プラントを監視するための表示用の画面と、オペレータにより操作される操作用の画面と、を含み、
前記操作権テーブルは、前記第1モニタに表示される前記HMI画面の操作を前記第1ウェブブラウザに許可せず、前記第2モニタに表示される前記HMI画面の操作を前記第2ウェブブラウザに許可し、
前記操作権テーブルに基づいて前記第1ウェブブラウザを実行して前記第1モニタの前記HMI画面に配置された操作パーツを操作不可状態で描画し、
前記操作権テーブルに基づいて前記第2ウェブブラウザを実行して前記第2モニタの前記HMI画面に配置された前記操作パーツを操作可能状態で描画する、ように構成される。
【0013】
第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記プロセッサは、
前記第2モニタの前記HMI画面に配置された前記操作パーツにマウスポインタが乗った場合に、前記マウスポインタの形状又は色を操作不可状態から操作可能状態へ変化させ、
前記第1モニタの前記HMI画面に配置された前記操作パーツに前記マウスポインタが乗っても前記マウスポインタの形状又は色を操作不可状態のまま変化させない、ように更に構成される。
【0014】
第3の観点は、第1又は第2の観点に加えて、次の特徴を更に有する。
前記プロセッサは、
前記HMI画面の操作可否を示す操作権識別パーツを前記HMI画面に表示し、
前記第1ウェブブラウザを実行して前記第1モニタの前記前記HMI画面に配置された前記操作権識別パーツを操作禁止色で描画し、
前記第2ウェブブラウザを実行して前記第2モニタの前記HMI画面に配置された前記操作権識別パーツを操作許可色で描画する、ように更に構成される。
【0015】
第4の観点は、第1乃至第3の観点のいずれかに加えて、次の特徴を更に有する。
前記プロセッサは、
前記第1ウェブブラウザを終了した後に再び開始する場合、前記第1ウェブブラウザの終了時の位置およびサイズに依らず、前記第1ウェブブラウザを予め定めた初期位置および初期サイズで前記第1モニタに表示し、
前記第2ウェブブラウザを終了した後に再び開始する場合、前記第2ウェブブラウザの終了時の位置およびサイズに依らず、前記第2ウェブブラウザを予め定めた初期位置および初期サイズで前記第2モニタに表示する、ように更に構成される。
【発明の効果】
【0016】
第1の観点によれば、第1モニタに表示されるHMI画面の操作を第1ウェブブラウザに許可せず、第2モニタに表示されるHMI画面の操作を第2ウェブブラウザに許可する操作権テーブルが用いられる。このような操作権テーブルによれば、産業プラントを監視するための表示用のHMI画面と、オペレータにより操作される操作用のHMI画面とを同じHMI画面として表示する場合に、ウェブブラウザ単位で各HMI画面の操作権を設定して、第1ウェブブラウザでは表示用として、第2ウェブブラウザでは操作用として、1台のHMIクライアント装置で実現できる。
【0017】
第2の観点によれば、操作パーツに乗ったときのマウスポインタが、操作権テーブルに基づいて設定されるウェブブラウザの操作権の有無に応じて異なる表現で描画される。そのため、オペレータは現在操作しているウェブブラウザの操作権の有無を識別しやすくなる。
【0018】
第3の観点によれば、HMI画面の操作可否を示す操作権識別パーツの色が、操作権テーブルに基づいて設定されるウェブブラウザの操作権の有無に応じて変更される。そのため、オペレータはウェブブラウザの操作権の有無を識別しやすくなる。
【0019】
第4の観点によれば、ウェブブラウザの終了時の位置およびサイズに依らず、ウェブブラウザを予め定めた初期位置および初期サイズで既定のモニタに表示することができる。そのため、何らかの原因でウェブブラウザに運用外の操作がなされた場合であっても、ウェブブラウザを容易に運用状態に復旧できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係るSCADAウェブHMIシステムの構成例を説明するための図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るHMIサーバ装置およびHMIクライアント装置が有する機能の概要を例示するブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る操作権テーブルの一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係るHMIクライアント装置3の処理例について説明するためのフローチャートである。
【
図5】第1ウェブブラウザに描画された操作不可状態のHMI画面の例、および第2ウェブブラウザに描画された操作可能状態のHMI画面の例を示す図である。
【
図6】HMIサーバ装置およびHMIクライアント装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
実施の形態.
1.SCADAウェブHMIシステム
図1は、実施の形態に係るSCADAウェブHMIシステムの構成例を説明するための図である。
図1に示すSCADAウェブHMIシステムは、コンピュータネットワーク4を介して相互に接続された、PLC1、HMIサーバ装置2、HMIクライアント装置3を備える。コンピュータネットワーク4は例えばイーサネット(登録商標)である。
【0023】
PLC1は、図示省略する制御ネットワークを介して監視対象装置(産業プラントを構成するフィールド機器群(アクチュエータおよびセンサを含む))に接続する。PLC1は、ブロックデータを含むパケットをマルチキャストまたはブロードキャストでコンピュータネットワーク4へ周期的に送信する。ブロックデータは、PLC信号の集合である。1つのブロックデータには数十から数百のPLC信号が含まれる。PLC信号の種類として、入出力信号(アクチュエータ制御信号およびセンサ検出信号を含む)やアラーム信号がある。また、PLC1は、HMIサーバ装置2から監視対象装置に関する制御信号を受信する。
【0024】
図2を参照して、HMIサーバ装置2およびHMIクライアント装置3について説明する。
図2は、HMIサーバ装置2およびHMIクライアント装置3が有する機能の概要を例示するブロック図である。
【0025】
HMIサーバ装置2は、産業プラントを構成するフィールド機器群に関する信号をプログラマブルロジックコントローラと送受信し、かつウェブサーバを実行する。HMIサーバ装置2は、後述する
図6に示すように、各種処理を実行するプロセッサ61、各種情報が格納されるメモリ62を備える。メモリ62に記憶されたプログラムをプロセッサ61が実行することにより、プロセッサ61は、PLC信号処理部20、ウェブサーバ処理部21として機能する。PLC信号処理部20およびウェブサーバ処理部21はプロセス間通信により相互にデータを送受信可能である。
【0026】
PLC信号処理部20は、周期的にPLC1から受信したPLC信号を、ウェブサーバ処理部21を介して各ウェブブラウザ6(ウェブブラウザ処理部11)へ送信する。また、PLC信号処理部20は、ウェブサーバ処理部21を介して各ウェブブラウザ6から受信した制御信号をPLC1へ送信する。
【0027】
ウェブサーバ処理部21は、HMIクライアント装置3の各ウェブブラウザ6(ウェブブラウザ処理部11)と、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)、HTTPS(Hypertext Transfer Protocol Secure)、WebSocketを用いて通信可能である。ウェブサーバ処理部21は、各ウェブブラウザ6(ウェブブラウザ処理部11)からのリクエストに応じてコンテンツを送信する。コンテンツは、HTMLファイル(図示省略)、HMI画面(HMI Screen)毎のSVG(Scalable Vector Graphics)ファイル25、パーツ種別毎の動作を記述したパーツライブラリ26、操作権テーブル27を含む。
【0028】
パーツライブラリ26は、パーツ種別毎に動作を記述したスクリプトの集合を含む。スクリプトは、パーツ種別毎に定義されたJavaScript(登録商標)プログラムである。スクリプトは、必要に応じてパラメータ値(例えば操作権テーブル27に定義された操作権の有無)が与えられて各ウェブブラウザ6上で実行可能である。
【0029】
操作権テーブル27は、各ウェブブラウザ6に、各HMI画面7の操作権があるか(操作が許可されているか)操作権がないか(操作が許可されていないか)を定めたテーブルである。
図3は、本実施形態に係る操作権テーブル27の一例を示す図である。「G10」~「G14」は各HMI画面7のスクリーン名、「HMI1_1」は第1ウェブブラウザ6aのブラウザ名、「HMI1_2」は第2ウェブブラウザ6bのブラウザ名である。一例として、ブラウザ名はコンピュータのデバイス名とモニタ番号とを組み合わせた名称である。
図3に示す例では、第1ウェブブラウザ6a(HMI1_1)は、HMI画面(G10)の操作権を有しない。一方で、第2ウェブブラウザ6b(HMI1_2)は、HMI画面(G10)の操作権を有する。
【0030】
2.SCADAウェブHMIクライアント装置の構成
図2に戻り説明を続ける。HMIクライアント装置3は、処理回路10(後述する
図6に示す、各種処理を実行するプロセッサ71、各種情報が格納されるメモリ72を含む)、複数のモニタ5(第1モニタ5a、第2モニタ5b)を備える。メモリ72に記憶されたプログラムをプロセッサ71が実行することにより、プロセッサ71は、ウェブブラウザ処理部11として機能する。
【0031】
ウェブブラウザ処理部11は、ウェブブラウザ6ごとに実行される。ウェブブラウザ6は、産業プラントを監視制御するためのHMI画面7を描画する。HMI画面7はオペレータの操作により他のHMI画面7へ切り替わる。HMI画面7には複数のパーツが配置されている。パーツは、例えば、オペレータの操作に応じてPLC1へ制御信号を送信するための操作パーツ、受信したPLC信号に応じて表示状態(数値、文字、色、形)が変化する表示パーツ、他のHMI画面に切り替える画面遷移パーツ、操作権の有無に応じて色が変化する操作権ランプなどの操作権識別パーツ、などを含む。
【0032】
各ウェブブラウザ6(ウェブブラウザ処理部11)は起動時に、ウェブサーバ処理部21から、上述したHTMLファイル、SVGファイル25、パーツライブラリ26、操作権テーブル27などを取得する。これらに基づいて、ウェブブラウザ6は、パーツが配置されたHMI画面7を描画する。また、各ウェブブラウザ6は、起動時にウェブサーバ処理部21から常に最新のファイルを取得するために、キャッシュを使用しないモードで実行される。
【0033】
ウェブブラウザ処理部11は、起動位置処理部12、画面操作権処理部13、パーツ種別処理部14を備える。
【0034】
起動位置処理部12は、ウェブブラウザ6の終了時の位置およびサイズに依らず、ウェブブラウザ6を予め定めた初期位置および初期サイズで既定のモニタ5に表示する。例えば、第1ウェブブラウザ6aを終了した後に再び開始する場合、第1ウェブブラウザ6aは第1モニタ5aにフルスクリーンで表示される。同様に第2ウェブブラウザ6bを終了した後に再び開始する場合、第2ウェブブラウザ6bは第2モニタ5bにフルスクリーンで表示される。これによれば、何らかの原因でウェブブラウザに運用外の操作がなされた場合であっても、ウェブブラウザ6を容易に運用状態に復旧できる。
【0035】
画面操作権処理部13は、HMIサーバ装置2から取得した操作権テーブル27を読み込んで、ウェブブラウザ6ごとに各HMI画面7の操作権の有無を決定する。
【0036】
パーツ種別処理部14は、HMI画面7に配置されたパーツのパーツ種別に応じて、上述したパーツライブラリ26に含まれるパーツ種別毎のスクリプトを実行する。ここでは、パーツ種別のうち、スクリプトに渡される操作権の有無(パラメータ値)に応じて動作が変化する操作パーツおよび操作権識別パーツについて説明する。
【0037】
操作パーツについて、操作権テーブル27においてウェブブラウザ6にHMI画面7の操作が許可されていない場合、ウェブブラウザ6のHMI画面7に配置された操作パーツは操作不可状態で描画される。また、操作権テーブル27においてウェブブラウザ6にHMI画面7の操作が許可されている場合、ウェブブラウザ6のHMI画面7に配置された操作パーツは操作可能状態で描画される。
【0038】
操作可能状態において、操作パーツは、オペレータの実行操作(例えばマウスクリック)を受け付け、当該操作に応じた制御信号をHMIサーバ装置2へ送信する。操作不可状態において、操作パーツは、オペレータの実行操作を受け付けない。
【0039】
また、操作可能状態と操作不可状態とではマウスオーバー処理が異なる。操作可能状態において、操作パーツにマウスポインタが乗った場合、マウスポインタの形状又は色は、操作不可状態から操作可能状態へ変化する。操作不可状態においては、操作パーツにマウスポインタが乗ってもマウスポインタの形状又は色は操作不可状態のまま変化しない。これによれば、操作パーツに乗ったときのマウスポインタが、操作権の有無に応じて異なる表現で描画される。そのため、オペレータは現在操作しているウェブブラウザ6の操作権の有無を識別しやすい。
【0040】
操作権識別パーツ(操作権ランプ)について、操作権テーブル27においてウェブブラウザ6にHMI画面7の操作が許可されていない場合、ウェブブラウザ6のHMI画面7に配置された操作権識別パーツは操作禁止色で描画される。操作禁止色は例えば赤である。また、操作権テーブル27においてウェブブラウザ6にHMI画面7の操作が許可されている場合、ウェブブラウザ6のHMI画面7に配置された操作権識別パーツは操作許可色で描画される。操作許可色は例えば緑である。これによれば、HMI画面7の操作可否を示す操作権識別パーツの色が、ウェブブラウザ6の操作権の有無に応じて変更される。そのため、オペレータはウェブブラウザ6の操作権の有無を識別しやすい。
【0041】
3.SCADAウェブHMIクライアント装置の動作例
図3~
図5を参照して、操作権の有無に応じた各ウェブブラウザ6におけるHMI画面7の表示について具体的に説明する。
図3は、上述した操作権テーブル27の一例を示す図である。
図4は、HMIクライアント装置3の処理例について説明するためのフローチャートである。
図5は、第1ウェブブラウザ6aに描画された操作不可状態のHMI画面7の例、および第2ウェブブラウザ6bに描画された操作可能状態のHMI画面7の例を示す図である。
【0042】
図4のステップS100において、HMIクライアント装置3は、ウェブブラウザ6を実行する。ウェブブラウザ処理部11は、ウェブブラウザ6の終了時の位置およびサイズに依らず、ウェブブラウザ6を予め定めた初期位置および初期サイズで既定のモニタ5に表示する。
図5に示す例では、第1ウェブブラウザ6aは第1モニタ5aにフルスクリーンで表示され、第2ウェブブラウザ6bは第2モニタ5bにフルスクリーンで表示される。
【0043】
ステップS110において、各ウェブブラウザ6は、HMIサーバ装置2からコンテンツを取得する。コンテンツには、上述したHTMLファイル、SVGファイル25、パーツライブラリ26、操作権テーブル27が含まれる。なお、パーツライブラリ26および操作権テーブル27はウェブブラウザ6の起動時にのみ取得すれば足りる。
図5に示す例は、第1ウェブブラウザ6aおよび第2ウェブブラウザ6bに同一のHMI画面(G10)を表示するものであり、各ウェブブラウザ6は、同一のコンテンツを取得する。
【0044】
ステップS120~ステップS150において、各ウェブブラウザ6は、HMI画面7に配置されている操作パーツ(
図5の操作ボタン30)について処理する。ウェブブラウザ処理部11は、操作パーツが配置されたHMI画面7を描画しているウェブブラウザ6に、当該HMI画面7の操作権があるか否かを判定する(ステップS120、ステップS130)。操作権がある場合、パーツ種別処理部14は、操作パーツを操作可能状態で描画する(ステップS140)。一方、操作権がない場合は、パーツ種別処理部14は、操作パーツを操作不可状態で描画する(ステップS150)。
図5に示す例では、
図3の操作権テーブル27には、第1ウェブブラウザ(HMI1_1)におけるHMI画面(G10)の操作は許可されていない(操作権なし)。そのため、操作ボタン30は操作不可状態で描画される。操作不可状態においては、操作ボタン30にマウスポインタが乗ってもマウスポインタの形状は矢印のまま変化しない。また、操作ボタン30は操作無効を示す色で描画される。
一方、
図3の操作権テーブル27には、第2ウェブブラウザ(HMI1_2)におけるHMI画面(G10)の操作は許可されている(操作権あり)。そのため、操作ボタン30は操作可能状態で描画される。操作可能状態において操作ボタン30にマウスポインタが乗った場合、マウスポインタの形状は矢印から指形に変化する。また、操作ボタン30は操作可能を示す色で描画される。
【0045】
ステップS160~ステップS190において、各ウェブブラウザ6は、HMI画面7に配置されている操作権識別パーツ(
図5の操作権ランプ31)について処理する。ウェブブラウザ処理部11は、操作権ランプ31が配置されたHMI画面7を描画しているウェブブラウザ6に、当該HMI画面7の操作権があるか否かを判定する(ステップS160、ステップS170)。操作権がある場合、パーツ種別処理部14は、操作権ランプ31を操作許可色(緑色)で描画する(ステップS180)。一方、操作権がない場合は、パーツ種別処理部14は、操作権ランプ31を操作禁止色(赤色)で描画する(ステップS190)。
図5に示す例では、第1ウェブブラウザ6aにはHMI画面(G10)の操作権がないため操作権ランプ31は赤色で描画される。第2ウェブブラウザ6bにはHMI画面(G10)の操作権があるため操作権ランプ31は緑色で描画される。
【0046】
なお、ステップS160の条件が成立しない場合、すなわち操作パーツでも操作権識別パーツでもないパーツは、操作権による違いなく描画される。
図5に示す例では、画面遷移ボタン32は、操作権に関わらず操作可能なボタンとして描画される。また、PLC信号の値を表示するのみの表示パーツ(図示省略)は操作権に関わらず操作不能なパーツとして描画される。
【0047】
ところで、上述した具体例では、ウェブブラウザ6の起動時のHMI画面7の描画について説明した。しかしながら、画面遷移ボタン32を押して他のHMI画面7に遷移する場合もある。この場合、ウェブブラウザ処理部11は、HMIサーバ装置2から当該他のHMI画面7に関するHTMLファイル、SVGファイル25を新たに取得し、ステップS120以降の処理を実行する。
【0048】
4.効果
以上説明したように、本実施形態に係るSCADAウェブHMIシステムによれば、ウェブブラウザ6単位で各HMI画面7の操作権を設定して、同じHMI画面7を、第1ウェブブラウザでは表示用として、第2ウェブブラウザでは操作用として、1台のHMIクライアント装置3で実現できる。また、1台のHMIクライアント装置3で、3つ以上のウェブブラウザ6を実行することもでき、コスト、スペース、故障率、通信負荷を低減できる。また、操作パーツおよび操作権識別パーツは、操作権の有無に応じてオペレータにとって識別しやすく描画され、誤操作を低減できる。
【0049】
5.ハードウェア構成例
図6は、HMIサーバ装置2およびHMIクライアント装置3のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0050】
上述したHMIサーバ装置2の各処理は、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ61と、メモリ62と、ネットワークインタフェース63とが接続して構成されている。プロセッサ61は、メモリ62に記憶された各種プログラムを実行することにより、HMIサーバ装置2の各機能を実現する。メモリ62は、主記憶装置および補助記憶装置を含む。メモリ62は、上述したHTMLファイル、SVGファイル25、パーツライブラリ26、操作権テーブル27を予め記憶している。ネットワークインタフェース63は、コンピュータネットワーク4を介して同一ネットワーク内の他の装置と通信可能に接続する。
【0051】
上述したHMIクライアント装置3の各処理は、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ71と、メモリ72と、ネットワークインタフェース73と、入力インタフェース74と、第1モニタ5aと、第2モニタ5bとが接続して構成されている。プロセッサ71は、メモリ72に記憶された各種プログラムを実行することにより、HMIクライアント装置3の各機能を実現する。メモリ72は、主記憶装置および補助記憶装置を含む。ネットワークインタフェース73は、コンピュータネットワーク4を介して同一ネットワーク内の他の装置と通信可能に接続する。入力インタフェース74は、キーボード、マウス、タッチパネル等からなる一組の入力デバイスである。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、上述した実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【符号の説明】
【0053】
1 プログラマブルロジックコントローラ(PLC)
2 HMIサーバ装置
3 HMIクライアント装置
4 コンピュータネットワーク
5 モニタ
5a 第1モニタ
5b 第2モニタ
6 ウェブブラウザ
6a 第1ウェブブラウザ
6b 第2ウェブブラウザ
7 HMI画面
10 処理回路
11 ウェブブラウザ処理部
12 起動位置処理部
13 画面操作権処理部
14 パーツ種別処理部
20 PLC信号処理部
21 ウェブサーバ処理部
25 SVGファイル
26 パーツライブラリ
27 操作権テーブル
30 操作ボタン
31 操作権ランプ
32 画面遷移ボタン
61、71 プロセッサ
62、72 メモリ
63、73 ネットワークインタフェース
74 入力インタフェース