(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】浴槽洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A47K 3/00 20060101AFI20240426BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A47K3/00 Q
G08B21/00 A
(21)【出願番号】P 2020162435
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】久保 隆志
(72)【発明者】
【氏名】川崎 修司
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-023471(JP,A)
【文献】特開2010-236211(JP,A)
【文献】特開2020-122588(JP,A)
【文献】特開2014-209968(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2759643(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
G08B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に配設された洗浄ノズルに湯水を供給する湯水通路と、前記湯水通路の途中に設けられた湯水貯留部と、前記洗浄ノズルに前記湯水貯留部の湯水を送り出すポンプと、前記洗浄ノズルから湯水と洗浄液を散布する洗浄運転を制御する制御手段を備えた浴槽洗浄装置において、
前記湯水貯留部よりも上流側で前記湯水通路を開閉するための注湯電磁弁と、前記湯水貯留部の水位を検知するための水位検知手段と、前記洗浄運転に関する情報を報知するための報知手段を有し、
前記制御手段は、前記洗浄運転の終了時に前記注湯電磁弁を閉弁すると共に前記ポンプを駆動して前記湯水貯留部が空になるまで湯水を排水する排水動作を制御し、前記排水動作を実施したにもかかわらず前記湯水貯留部が空でないことを前記水位検知手段が検知した場合に、前記報知手段によってエラー報知を行うことを特徴とする浴槽洗浄装置。
【請求項2】
前記水位検知手段は、前記湯水貯留部の第1水位及び前記第1水位よりも高水位の第2水位を検知するように構成され、
前記制御手段は、前記排水動作によって前記第1水位未満になると前記湯水貯留部が空になったと判定し、前記注湯電磁弁の閉弁を維持しながら前記洗浄運転の終了後から次回の洗浄運転の開始までの期間内に、前記水位検知手段が前記第2水位以上であることを検知した場合に前記エラー報知を行うことを特徴とする請求項1に記載の浴槽洗浄装置。
【請求項3】
前記湯水通路の前記湯水貯留部よりも上流側に、複数の分岐通路が並列に接続された並列通路部と、前記複数の分岐通路を夫々開閉するための複数の前記注湯電磁弁を有し、
前記制御手段は、前記洗浄運転において前記湯水貯留部の水位が夫々予め設定された下限水位と上限水位の間で維持されるように複数の前記注湯電磁弁の開閉を制御し、
前記第1水位が前記下限水位に設定され且つ前記第2水位が前記上限水位に設定されたことを特徴とする請求項2に記載の浴槽洗浄装置。
【請求項4】
前記エラー報知は前記注湯電磁弁の開故障の報知を含むことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の浴槽洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽を自動洗浄する浴槽洗浄装置に関し、特に低い上水供給圧に対応可能なように湯水を貯留する湯水貯留部を備えた浴槽洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴槽を自動洗浄する浴槽洗浄装置が利用されている。浴槽洗浄装置は、浴槽内に洗浄液を散布して汚れを浮かせ、湯水を散布して洗い流すことにより浴槽の洗浄を行っている。
【0003】
例えば特許文献1の壁掛け式の浴室洗浄装置は、電磁弁を開弁して上水を水ノズル部から散布し、水タンクにためた上水と洗剤タンクの洗剤をポンプで吸い上げて混合した洗浄液を洗剤ノズル部から散布することが記載されている。水タンクには電磁弁を開いたときに上水が供給される。壁掛け式なので、電磁弁に閉弁できない不具合(開故障)が発生した場合には水ノズル部から上水が流出し、容易に開故障を見つけることができる。
【0004】
しかし、上水の供給圧が低い地域、建物等では、水ノズル部から十分な勢いの上水を散布することができず、十分に洗浄できない場合がある。そこで、上水の供給圧が低い場合にも対応するために、例えば特許文献2のように、洗浄用の湯水を供給する湯水通路の途中に湯水を貯留する大気開放タンク(湯水貯留部)を有し、ポンプを駆動して湯水貯留部の湯水を浴槽内に散布する浴槽洗浄装置が知られている。湯水通路の湯水貯留部よりも上流側には、湯水貯留部の水位に応じて開閉するボールタップが装備され、一定の貯留量が維持されるように湯水が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-272071号公報
【文献】実公平4-40632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の浴槽洗浄装置は、ボールタップに開故障が発生した場合には湯水の供給が止まらないので、湯水貯留部から湯水が溢れ出す(オーバーフロー)。しかし、湯水貯留部を設置する場所によっては、オーバーフローを確認することが困難な場合がある。
【0007】
例えば、湯水貯留部が浴槽パン上に設置されて浴槽によって見えなくなっている場合に、溢れ出した湯水が見えないまま浴室の排水口から排水され、ユーザが気づかないうちに湯水の使用量が増加する虞がある。また、給湯装置が長時間にわたって湯水貯留部に給湯を続けることによって、正常に作動している給湯装置のエラーが報知され、原因の特定が容易にできない虞がある。
【0008】
一方、ボールタップを通過する湯水の流量検知手段を装備させると開故障を検知可能になる。また、湯水貯留部にオーバーフロー検知手段を装備させると、発生したオーバーフローの原因として湯水通路の開故障を推定可能になる。しかし、部品の追加によって製造コストが増加するため好ましくない。
【0009】
本発明の目的は、部品を追加することなく湯水貯留部よりも上流側の湯水通路における開故障を報知することができる浴槽洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明の浴槽洗浄装置は、浴槽に配設された洗浄ノズルに湯水を供給する湯水通路と、前記湯水通路の途中に設けられた湯水貯留部と、前記洗浄ノズルに前記湯水貯留部の湯水を送り出すポンプと、前記洗浄ノズルから湯水と洗浄液を散布する洗浄運転を制御する制御手段を備えた浴槽洗浄装置において、前記湯水貯留部よりも上流側で前記湯水通路を開閉するための注湯電磁弁と、前記湯水貯留部の水位を検知するための水位検知手段と、前記洗浄運転に関する情報を報知するための報知手段を有し、前記制御手段は、前記洗浄運転の終了時に前記注湯電磁弁を閉弁すると共に前記ポンプを駆動して前記湯水貯留部が空になるまで湯水を排水する排水動作を制御し、前記排水動作を実施したにもかかわらず前記湯水貯留部が空でないことを前記水位検知手段が検知した場合に、前記報知手段によってエラー報知を行うことを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、湯水貯留部に貯留した湯水を洗浄運転に使用し、洗浄運転の終了時に注湯電磁弁を閉弁し、ポンプを駆動して、湯水貯留部が空になるまで排水動作を行う。そして、排水動作の実施によって空になるはずの湯水貯留部において、水位検知手段が空でないことを検知した場合に、水位に関するエラー報知を行う。従って、排水動作によって湯水貯留部が空にならない場合にエラー報知を行うことによって、部品を追加することなく、間接的に、湯水貯留部が空にならない原因として推定される湯水貯留部よりも上流側の湯水通路における開故障を報知することができる。
【0012】
請求項2の発明の浴槽洗浄装置は、請求項1の発明において、前記水位検知手段は、前記湯水貯留部の第1水位及び前記第1水位よりも高水位の第2水位を検知するように構成され、前記制御手段は、前記排水動作によって前記第1水位未満になると前記湯水貯留部が空になったと判定し、前記注湯電磁弁の閉弁を維持しながら前記洗浄運転の終了後から次回の洗浄運転の開始までの期間内に、前記水位検知手段が前記第2水位以上であることを検知した場合に前記エラー報知を行うことを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、湯水貯留部の水位が排水動作によって第1水位未満になった場合に空になったと判定して洗浄運転を終了し、注湯電磁弁の閉弁を維持しながら次回の洗浄運転の開始までに湯水貯留部の水位が第2水位以上になった場合に、水位に関するエラー報知を行う。従って、水位が第1水位未満の空の湯水貯留部に、注湯電磁弁を閉弁した状態で次回の洗浄運転までに第2水位まで湯水がたまった場合にエラー報知を行うことによって、部品を追加することなく、間接的に、原因として推定される湯水貯留部よりも上流側の湯水通路における開故障を報知することができる。また、第1水位よりも高水位の第2水位以上になった場合にエラー報知を行うので、洗浄運転の終了後に湯水貯留部の内壁等に付着していた水滴が落下して第1水位になった場合等の誤報知を防ぐことができる。
【0014】
請求項3の発明の浴槽洗浄装置は、請求項2の発明において、前記湯水通路の前記湯水貯留部よりも上流側に、複数の分岐通路が並列に接続された並列通路部と、前記複数の分岐通路を夫々開閉するための複数の前記注湯電磁弁を有し、前記制御手段は、前記洗浄運転において前記湯水貯留部の水位が夫々予め設定された下限水位と上限水位の間で維持されるように複数の前記注湯電磁弁の開閉を制御し、前記第1水位が前記下限水位に設定され且つ前記第2水位が前記上限水位に設定されたことを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、制御部は洗浄運転中に、下限水位に設定された第1水位と上限水位に設定された第2水位の間で湯水貯留部の水位が維持されるように、湯水貯留部の上流側の湯水通路における並列通路部に装備された複数の注湯電磁弁の開閉を制御する。そして、湯水貯留部の水位が排水動作によって下限水位未満になった場合に空になったと判定して洗浄運転を終了し、次回の洗浄運転の開始までに湯水貯留部の水位が上限水位以上になった場合に水位に関するエラー報知を行う。従って、下限水位未満の空の湯水貯留部に、注湯電磁弁を閉弁した状態で次回の洗浄運転までに上限水位まで湯水がたまった場合にエラーを報知することによって、部品を追加することなく、間接的に、湯水貯留部よりも上流側の湯水通路における開故障を報知することができる。
【0016】
請求項4の発明の浴槽洗浄装置は、請求項1~3の何れか1項の発明において、前記エラー報知は前記注湯電磁弁の開故障の報知を含むことを特徴としている。
上記構成によれば、水位に関するエラー報知に、原因として推定される湯水通路の湯水貯留部よりも上流側に装備された注湯電磁弁の開故障の報知を含むので、直接的に開故障を伝えて対応を促すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の浴槽洗浄装置によれば、部品を追加することなく湯水貯留部よりも上流側の湯水通路における開故障を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例に係る浴槽洗浄装置と周辺機器の構成図である。
【
図2】実施例に係る洗浄運転の工程ブロック図である。
【
図3】実施例に係る洗浄運転における注湯電磁弁の動作説明図である。
【
図4】実施例に係る開故障検出制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0020】
最初に、本発明の浴槽洗浄装置10の周辺機器を含めた全体構成について、
図1に基づいて説明する。浴槽1の湯張りや追焚きのために、浴槽1と給湯装置2が、湯張り追焚き通路3と循環アダプタ1aを介して接続されている。また、浴槽1の底部には、矢印Dで示すように湯水を排水するための例えば電動式の排水栓4と、湯水や洗浄液を散布して浴槽1を洗浄するための洗浄ノズル5が配設されている。
【0021】
浴槽1の近傍には、洗浄ノズル5に湯水や洗浄液を供給する供給ユニット6と、供給ユニット6に供給する洗剤をためておく洗剤タンク7と、排水栓4の開栓操作、閉栓操作を行うための排水スイッチ8が配設されている。供給ユニット6には、給湯装置2から湯水を供給するための給湯通路2aが接続されている。
【0022】
また、例えば浴室の天井裏に配設された電源通信ユニット9と供給ユニット6とが、電力供給可能且つ通信可能に接続されている。電源通信ユニット9は浴槽洗浄装置10の洗浄運転等を制御する制御部20(制御手段)を備えている。浴槽洗浄装置10は、排水栓4、洗浄ノズル5、供給ユニット6、洗剤タンク7、排水スイッチ8、電源通信ユニット9、制御部20等によって構成されている。
【0023】
給湯装置2は、矢印Wで示す上水を例えば燃料の燃焼熱を利用して加熱した湯水を給湯する燃焼式給湯装置であるが、ヒートポンプ式熱源機等他の熱源機を有する給湯装置等であってもよい。給湯装置2には、湯張り運転や追焚き運転の開始操作、給湯設定温度の設定操作等を行うための浴室リモコン11、台所リモコン12が通信可能に接続されている。また、浴槽洗浄装置10による洗浄運転の開始操作等を行うための洗浄リモコン13が電源通信ユニット9に通信可能に接続されている。そして、給湯装置2と電源通信ユニット9とが通信可能に接続され、台所リモコン12及び浴室リモコン11からも浴槽洗浄装置10の操作が可能である。これら洗浄リモコン13、台所リモコン12及び浴室リモコン11は、洗浄運転に関する情報を表示や音声によって報知する報知手段である。
【0024】
次に、浴槽洗浄装置10について説明する。
浴槽洗浄装置10の供給ユニット6は、洗浄ノズル5に湯水を供給する湯水通路14と、湯水通路14の途中に設けられた湯水タンク15(湯水貯留部)と、洗浄ノズル5に湯水タンク15の湯水を送り出すためのポンプ16等を有する。ポンプ16よりも下流側の湯水通路14には、洗浄ノズル5に供給する湯水に洗剤を混合するためのベンチュリ17が介装されている。湯水タンク15は、例えば最大貯留量が0.5L程度の小型のものであり、供給ユニット6を浴槽1の近傍に見えないように配設するのに適している。
【0025】
給湯装置2から湯水を供給する給湯通路2aは、フィルタ14aを備えた湯水通路14に接続される。湯水通路14は、湯水タンク15よりも上流側且つフィルタ14aの下流側に、分岐して合流する並列通路部18を有する。並列通路部18では、複数(例えば2つ)の分岐通路18a,18bが並列に接続されている。
【0026】
分岐通路18aは、分岐通路18aを開閉するための注湯電磁弁18cと定流量弁18eを備えている。分岐通路18bは、分岐通路18bを開閉するための注湯電磁弁18dと定流量弁18fを備えている。定流量弁18e,18fは、ポンプ16の吐出能力(例えば通常流量として6.5L/分)よりも小さい流量に夫々制限すると共に、合計の流量がポンプ16の通常流量よりも大きくなるもの(例えば夫々5L/分のもの)が選ばれている。分岐通路18a,18bにおける注湯電磁弁18c,18dを開けたときの流量は、定流量弁18e,18fによって互いに等しくなる。
【0027】
また、湯水通路14は、湯水タンク15よりも下流側に、ポンプ16、温度センサ19、流量センサ14b、ベンチュリ17等を備えている。ベンチュリ17には、洗剤タンク7から洗剤を供給するための洗剤通路7aが接続されている。洗剤通路7aは、この洗剤通路7aを開閉するための洗剤電磁弁7bを備えている。
【0028】
制御部20は、注湯電磁弁18c,18d、洗剤電磁弁7bの開閉やポンプ16の駆動が可能なように接続され、排水スイッチ8の操作に応じて排水栓4を開閉可能なように接続されている。また、制御部20には、湯水タンク15の水位を検知する水位検知手段である例えばフロートスイッチ15aと、洗剤タンク7の洗剤の液面を検知するフロートスイッチ7cが接続されている。
【0029】
湯水タンク15には、第1水位Lと第2水位Hが設定されている。第1水位Lは水位の制御のために予め設定された湯水タンク15の下限水位に対応し、第2水位Hは予め設定された湯水タンク15の上限水位に対応する。湯水タンク15に貯留される湯水のうち、上限水位を超えた湯水の大部分は、湯水タンク15のオーバーフロー口15bから浴槽パンに流れ、浴室の排水口から排水される。
【0030】
フロートスイッチ15aは、湯水タンク15の下限水位に対応する第1水位Lと上限水位に対応する第2水位Hを検知するものであってもよい。また水位検知手段として、第1水位Lと第2水位Hを夫々検知する複数の電極棒を用いることもできるが、水跳ね等による水位の誤検知を防ぐ観点からフロートスイッチが好ましい。
【0031】
制御部20は、例えば演算装置と記憶装置と入出力装置等を備えたコンピュータであり、記憶装置に格納された制御プログラム等に基づいて、浴槽1を洗浄する洗浄運転や排水栓4の開閉等を制御する。この制御部20は、洗浄運転では、排水栓4を開栓し、注湯電磁弁18c,18d、洗剤電磁弁7b等の開閉やポンプ16の駆動等を制御する。
【0032】
次に、洗浄運転について説明する。
洗浄運転は、洗浄液等が浴槽1の外に飛び散らないように図示外の蓋を浴槽1に被せた状態で行う。
【0033】
洗浄リモコン13等の操作端末の操作によって浴槽洗浄装置10による洗浄運転の開始操作が行われると、洗浄運転が開始される。例えば
図2の洗浄運転の工程ブロック図に示すように、洗浄運転は準備工程、洗浄工程、排水工程の順に行われる。
【0034】
準備工程では、洗浄前の準備動作として、例えば注湯電磁弁18cを開けて湯水タンク15に湯水を第2水位Hまで貯留する。また、排水栓4が閉じている場合には排水栓4を開栓し、浴槽1に湯水が残っている場合に浴槽1が空になるまで待機する。
図3(a)の湯水を貯留する状態と
図3(b)の湯水貯留完了状態が、この準備工程に相当する。
図3では、給湯装置2から並列通路部18を介して湯水タンク15に流入する湯水と、湯水タンク15から流出する湯水を白抜き矢印で示している。
【0035】
洗浄工程では、洗浄動作として浴槽1内に湯水タンク15の湯水や洗浄液の散布を行う。例えば、ポンプ16を駆動して通常流量で洗浄ノズル5に湯水の供給を開始し(
図3(c)参照)、注湯電磁弁18c等を開けて湯水タンク15に湯水を貯留しながら洗浄ノズル5から湯水を散布して(
図3(d),(e)参照)、予備洗浄として浴槽1に付着した汚れに水分を含ませる。
【0036】
その後、ポンプ16を駆動しながら洗剤電磁弁7bを開けて、ベンチュリ17を流通する湯水に洗剤通路7aから洗剤を供給し、ベンチュリ17で湯水と洗剤が混合された洗浄液を洗浄ノズル5から散布した後、一定時間待機する。この洗浄液散布と一定時間待機を交互に繰り返して、浴槽1に付着した汚れを浮かせる。待機中は湯水の貯留を停止し、洗浄液散布が再開されると待機前と同じ状態で湯水の貯留を再開する。
【0037】
湯水や洗浄液を散布するときには、ポンプ16によって湯水タンク15から通常流量の湯水が洗浄ノズル5に供給される。このとき開閉される注湯電磁弁18c,18dによって、湯水タンク15では、注湯電磁弁18c,18dの両方を開けた第1モードのときには貯留量が増加し、注湯電磁弁18c,18dの何れか一方のみを開けた第2モードのときには貯留量が減少する。
【0038】
予備洗浄開始時には、例えば注湯電磁弁18cのみを開けた第2モードで湯水を貯留する(
図3(d)参照)。湯水や洗浄液の散布中には、制御部20は、フロートスイッチ15aが第1水位Lを検知すると第1モードに移行して、注湯電磁弁18cと注湯電磁弁18dの両方を開ける(
図3(e)参照)。そして、フロートスイッチ15aが第2水位Hを検知すると第2モードに移行して、注湯電磁弁18cを開けたまま注湯電磁弁18dを閉じる(
図3(d)参照)。第2モードで開ける電磁弁を入れ替えるようにしてもよい。
【0039】
湯水や洗浄液の散布しているときには、第1モードと第2モードの切り替えが繰り返され、湯水タンク15の水位が第1水位Lと第2水位Hの間を繰り返し往き来して第1水位Lと第2水位Hの間に維持されることになるが、給湯装置2からの湯水の供給圧によらず、洗浄ノズル5に湯水タンク15の湯水を安定供給することができる。
【0040】
洗浄液の散布と待機を所定回数繰り返した後は、すすぎとしてポンプ16を駆動して湯水を散布することにより汚れ及び洗浄液を洗い流し、洗浄工程を終了する。第1モードで洗浄工程を終了する場合と第2モードで洗浄工程を終了する場合があるが、どちらの場合からも排水工程に移行できる。尚、第1モードから一定時間待機する場合や、第1モードから排水工程に移行する場合において、最後の数秒程度の短時間だけ第2モードに移行して、複数の注湯電磁弁18c,18dを同時に閉じる場合よりも水撃作用を軽減することもできる。
【0041】
排水工程では、注湯電磁弁18c,18dの両方を閉じた状態でポンプ16を駆動して、湯水タンク15が空になるまで、残っている湯水を洗浄ノズル5から浴槽1に排水する排水動作を行う(
図3(f)参照)。そして、湯水タンク15が空になったら、ポンプ16を停止させて排水工程を終了し、洗浄運転を終了する(
図3(g)参照)。
【0042】
湯水タンク15が空になったことは、湯水タンク15の水位を検知するフロートスイッチ15aが下限水位である第1水位Lを検知してから所定時間(例えば3秒)経過したことによって判定される。尚、流量センサ14bの検知流量が所定の流量(例えば1L/分)以下になったことや、ポンプ16の負荷を反映するポンプ16の電流値等に基づいて判定することもできる。
【0043】
排水動作を実施したにもかかわらず湯水タンク15が空でないことをフロートスイッチ15aが検知した場合、洗浄リモコン13、台所リモコン12等に表示や音声によって、水位に関する不具合発生を報知する(エラー報知)。例えば排水動作を所定時間(例えば60秒)継続しても湯水タンク15が空にならない場合に、不具合として正常に排水できないこと又は湯水の供給が止まらないことが考えられる。
【0044】
正常に排水できない原因としては、湯水通路14の湯水タンク15よりも下流側の閉塞やポンプ16の故障が挙げられる。これらは、流量センサ14bの検知流量やポンプ16の電流値等に基づいて判定できるので、水位に関するエラー報知に湯水通路閉塞やポンプ故障の報知を含めて行うことができる。
【0045】
一方、正常に排水できないことは、排水動作の前の洗浄動作において既に湯水の流量等に異常が現われて、湯水通路14の湯水タンク15よりも下流側の閉塞やポンプ16の故障が判明する場合が多いので、排水動作における水位に関する不具合の原因とはなり難い。それ故、排水動作における水位に関する不具合の原因は、多くの場合、湯水の供給が止まらないことであり、湯水通路14の湯水タンク15よりも上流側の開故障が原因として推定される。従って、排水動作における水位に関するエラー報知によって、その原因が湯水通路14の湯水タンク15よりも上流側の開故障であることを間接的に報知することができる。湯水の供給が停止していないことを報知して開故障を間接的に報知してもよい。
【0046】
湯水通路14の湯水タンク15よりも下流側が正常であれば、エラー報知に湯水通路14の湯水タンク15よりも上流側の開故障の報知を含めて、開故障を直接的に報知することができる。開故障が発生するのは注湯電磁弁18c,18dなので、注湯電磁弁開故障の報知を含めてエラー報知を行ってもよい。
【0047】
湯水タンク15が空になって排水動作が完了し、洗浄運転を終了すると、次回の洗浄運転の開始までの期間中に、制御部20は注湯電磁弁18c,18dの閉じた状態を維持しながら湯水タンク15の水位の検知を繰り返し行う。そして、排水動作によって空になった湯水タンク15に、次回の洗浄運転までに湯水がたまった場合に水位に関するエラー報知を行う。その原因は、排水動作が完了できているので、上記のように湯水通路14の湯水タンク15よりも上流側の開故障であると推定される。この制御部20による開故障検出制御について、
図4のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0048】
S1において、洗浄運転中か否か判定する。S1の判定がYesの場合(洗浄運転中の場合)には開故障検出制御を終了する。S1の判定がNoの場合(洗浄運転中ではない場合)にはS2に進む。
【0049】
S2において、湯水タンク15の水位が第2水位H以上であるか否か判定する。S2の判定がYesの場合(第2水位H以上を検知した場合)にはS3に進む。そしてS3において、注湯電磁弁18c,18dを閉じた状態でも湯水の供給が止まらず第2水位H以上になったので、水位に関するエラー報知を行う。このとき、原因として推定される湯水通路14の湯水タンク15よりも上流側の開故障(注湯電磁弁18c,18dの開故障)を含めてエラー報知をすることもできる。
【0050】
一方、S2の判定がNoの場合(第2水位Hを検知していない場合)にはS1に戻る。S2において第1水位Lを検知した場合にエラー報知を行うようにすることもできる。しかし、洗浄運転終了時の水位が第1水位L未満の第1水位Lに近い水位であった場合に、例えば湯水タンク15の内壁等に付着していた水滴が落ちて第1水位Lが検知されるような誤報知を避けるために、第1水位Lよりも高水位の第2水位Hを検知した場合にエラー報知を行う方が好ましい。
【0051】
上記の浴槽洗浄装置10の作用、効果について説明する。
浴槽洗浄装置10は、湯水タンク15に貯留した湯水を洗浄運転で使用し、洗浄運転の終了時に注湯電磁弁18c,18dを閉弁し、ポンプ16を駆動して、湯水タンク15が空になるまで排水動作を行う。そして、排水動作の実施によって空になるはずの湯水タンク15において、フロートスイッチ15aが空でないことを検知した場合に、水位に関するエラー報知を行う。
【0052】
従って、排水動作によって湯水タンク15が空にならない場合にエラー報知を行うことによって、部品を追加することなく、間接的に、湯水タンク15が空にならない原因として推定される湯水タンク15よりも上流側の湯水通路14における開故障を報知することができる。
【0053】
浴槽洗浄装置10は、湯水タンク15の水位が排水動作によって第1水位L未満になった場合に空になったと判定して洗浄運転を終了する。そして、注湯電磁弁18c,18dの閉弁を維持しながら、次回の洗浄運転の開始までに湯水タンク15の水位が第2水位H以上になったことを検知した場合に水位に関するエラー報知を行う。
【0054】
従って、水位が第1水位L未満の空の湯水タンク15に、注湯電磁弁18c,18dを閉弁した状態で、次回の洗浄運転までに第2水位Hまで湯水がたまった場合にエラー報知を行うことによって、部品を追加することなく、間接的に、原因として推定される湯水タンク15よりも上流側の湯水通路14における開故障を報知することができる。また、第1水位Lよりも高水位の第2水位H以上になった場合にエラー報知を行うので、洗浄運転の終了後に湯水タンク15の内壁等に付着していた水滴が落下して第1水位Lになった場合等の誤報知を防ぐことができる。
【0055】
洗浄運転中に制御部20は、下限水位に設定された第1水位Lと上限水位に設定された第2水位Hの間で湯水タンク15の水位が維持されるように、湯水タンク15の上流側の湯水通路14における並列通路部18に装備された複数の注湯電磁弁18c,18dの開閉を制御する。そして、湯水タンク15の水位が排水動作によって下限水位の第1水位L未満になった場合に空になったと判定して洗浄運転を終了する。その後、注湯電磁弁18c,18dの閉弁を維持しながら、次回の洗浄運転の開始までに湯水タンク15の水位が上限水位の第2水位H以上になったことを検知した場合に水位に関するエラー報知を行う。
【0056】
従って、水位が下限水位未満の空の湯水タンク15に、注湯電磁弁18c,18dを閉弁した状態で、次回の洗浄運転までに上限水位まで湯水がたまった場合にエラー報知を行うことによって、部品を追加することなく、間接的に、湯水タンク15よりも上流側の湯水通路14における開故障を報知することができる。
【0057】
エラー報知を行う場合に、このエラー報知に湯水通路14の湯水タンク15よりも上流側の開故障の報知を含めて、開故障を直接的に報知することもできる。また、湯水通路14の湯水タンク15よりも上流側で開故障が発生するのは注湯電磁弁18c,18dなので、注湯電磁弁開故障の報知を含めてエラー報知を行い、開故障を直接的に報知することもできる。
【0058】
湯水通路14の湯水タンク15よりも上流側に複数の注湯電磁弁18c,18dを有する例を説明したが、湯水通路14の湯水タンク15よりも上流側に、1つの注湯電磁弁を備えた場合や注湯電磁弁と流量調整弁を備えた場合等にも適用することができる。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0059】
1 :浴槽
1a :循環アダプタ
2 :給湯装置
2a :給湯通路
3 :湯張り追焚き通路
4 :排水栓
5 :洗浄ノズル
6 :供給ユニット
7 :洗剤タンク
7a :洗剤通路
7b :洗剤電磁弁
7c :フロートスイッチ
8 :排水スイッチ
9 :電源通信ユニット
10 :浴槽洗浄装置
11 :浴室リモコン(報知手段)
12 :台所リモコン(報知手段)
13 :洗浄リモコン(報知手段)
14 :湯水通路
14a:フィルタ
14b:流量センサ
15 :湯水タンク(湯水貯留部)
15a:フロートスイッチ(水位検知手段)
15b:オーバーフロー口
16 :ポンプ
17 :ベンチュリ
18 :並列通路部
18a,18b:分岐通路
18c,18d:注湯電磁弁
18e,18f:定流量弁
19 :温度センサ
20 :制御部(制御手段)