(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
F25B1/00 391
F25B1/00 101H
F25B1/00 304H
F25B1/00 331E
F25B1/00 101J
(21)【出願番号】P 2020029489
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重田 明広
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊一
(72)【発明者】
【氏名】前川 尚輝
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009767(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111176(WO,A1)
【文献】特開2013-015264(JP,A)
【文献】特開2015-075272(JP,A)
【文献】特開平07-151394(JP,A)
【文献】国際公開第2018/167820(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機および室外熱交換器を有する室外機と、
室内熱交換器を有する室内機と、
前記室外機と前記室内機とを接続し液側配管とガス側配管とからなる冷媒配管と、
前記冷媒配管に設けられる回路切替手段と、
前記冷媒配管に設けられる第1調整弁と、
制御部と、を備える空気調和装置であって、
前記圧縮機のインジェクションポートと、前記第1調整弁と前記室内熱交換器との間の前記冷媒配管と、を接続するインジェクション配管と、
前記インジェクション配管に設けられるインジェクション調整弁と、
前記インジェクション配管の接続箇所と前記室内熱交換器との間の冷媒配管に設けられた第2調整弁と、を備え、
前記制御部は、前記室外熱交換器が放熱器となり、前記室内熱交換器が蒸発器となるように前記回路切替手段を制御し、前記圧縮機を動作し、前記第1調整弁を全閉し、前記インジェクション調整弁の開度を制御
して前記圧縮機から前記インジェクション配管を介して中圧冷媒を前記室内熱交換器の低圧配管に流す第1冷媒回収運転を実行し、
前記第1冷媒回収運転時に、前記圧縮機から吐出される冷媒の冷媒吐出温度が第1の所定温度以下となるよう前記インジェクション調整弁の開度を制御し、
前記圧縮機から吐出される冷媒吐出圧力が第1の所定圧力以上となった場合に、前記第2調整弁を閉じるとともに、前記第1調整弁を開く第2冷媒回収運転を実行することを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記第1調整弁と前記インジェクション配管の接続箇所との間を流れる冷媒と、前記インジェクションポートと前記インジェクション調整弁との間を流れる冷媒と、を熱交換するインジェクション熱交換器を備えていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
一端を前記室外熱交換器と前記第2調整弁との間の前記冷媒配管に接続し、他端を前記回路切替手段と前記圧縮機の吸入側との間の冷媒配管に接続するバイパス配管と、
前記バイパス配管に設けられるバイパス調整弁と、
前記バイパス配管の他端と前記圧縮機との間に設けられる冷媒貯留部と、を備え、
前記制御部は、前記圧縮機から吐出される冷媒吐出圧力が第2所定圧力以上の場合、前記バイパス調整弁を開く第3冷媒回収運転を実行することを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置に係り、特に、冷媒の回収運転を行う空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、室外回路の液側配管に、室外膨張弁を設け、室外回路に、液側配管を圧縮機の吸入側と連通させるための液側バイパス配管を設け、室外制御器は、室内回路から冷媒が漏れたことを示す信号を受信すると、液側制御弁を閉じた状態で圧縮機を作動させる冷媒回収制御動作を行うと共に、この冷媒回収制御動作において、液側バイパス配管の液側バイパス弁を開く弁制御動作を行うことで、冷媒回収制御動作における圧縮機の吐出温度過昇を抑制することとなり、圧縮機の損傷等を回避しつつ利用側回路から熱源側回路へ冷媒の回収を行い、冷媒漏洩が生じた際に利用側回路から漏洩する冷媒の量を確実に削減する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧縮機の損傷等を回避するため、ガス化された冷媒を圧縮機に吸い込む必要があるが、従来の技術では、高外気温(例えば、40℃)で冷媒回収を行う場合、R32冷媒のような吐出温度が比較的高いシステムでは、圧縮機の損傷を回避する温度にまで十分に吐出温度を低減することができず、冷媒回収が不十分となるおそれがあった。
冷媒回収運転(ポンプダウン)をすることで低圧が徐々に低下するので、蒸発温度が低下し、室内空気との温度差が広がって蒸発器出口で過熱度が大きくなる。これに伴って圧縮機から吐出される冷媒の温度も上昇する。
特に高外気温条件下(例えば、35℃)では冷房運転時でも圧縮機から吐出される温度が上限付近に達する(例えば、100℃)。
この状態で冷媒回収を行う場合には、更に圧力が高くなって吐出温度も上昇するため、冷媒回収が完了する前に圧縮機が停止してしまうことになる。
【0005】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、高外気温でも確実に冷媒回収を行うことができる空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、圧縮機および室外熱交換器を有する室外機と、室内熱交換器を有する室内機と、前記室外機と前記室内機とを接続し液側配管とガス側配管とからなる冷媒配管と、前記冷媒配管に設けられる回路切替手段と、前記冷媒配管に設けられる第1調整弁と、制御部と、を備える空気調和装置であって、前記圧縮機のインジェクションポートと、前記第1調整弁と前記室内熱交換器との間の前記冷媒配管と、を接続するインジェクション配管と、前記インジェクション配管に設けられるインジェクション調整弁と、前記インジェクション配管の接続箇所と前記室内熱交換器との間の冷媒配管に設けられた第2調整弁と、を備え、前記制御部は、前記室外熱交換器が放熱器となり、前記室内熱交換器が蒸発器となるように前記回路切替手段を制御し、前記圧縮機を動作し、前記第1調整弁を全閉し、前記インジェクション調整弁の開度を制御して前記圧縮機から前記インジェクション配管を介して中圧冷媒を前記室内熱交換器の低圧配管に流す第1冷媒回収運転を実行し、前記第1冷媒回収運転時に、前記圧縮機から吐出される冷媒の冷媒吐出温度が第1の所定温度以下となるよう前記インジェクション調整弁の開度を制御し、前記圧縮機から吐出される冷媒吐出圧力が第1の所定圧力以上となった場合に、前記第2調整弁を閉じるとともに、前記第1調整弁を開く第2冷媒回収運転を実行することを特徴とする。
これにより、冷媒回収運転中に、圧縮機から低圧配管に中圧冷媒を流すことにより、第1調整弁よりも下流の液側配管の冷媒圧力の低下を抑制され、蒸発温度を上昇させ室内空気との温度差拡大を防ぎ、圧縮機からの吐出温度を低減させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1調整弁よりも下流の液側配管の冷媒圧力の低下を抑制され、蒸発温度を上昇させ室内空気との温度差拡大を防ぎ、圧縮機からの吐出温度を低減させることができ、高外気温時においても確実に冷媒の回収を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る空気調和装置の第1実施の形態を示す冷媒回路図
【
図3】第1実施の形態の冷媒回収運転動作を示すフローチャート
【
図5】第2実施の形態の冷媒回収運転動作を示すフローチャート
【
図8】第3実施の形態の冷媒回収運転動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、圧縮機および室外熱交換器を有する室外機と、室内熱交換器を有する室内機と、前記室外機と前記室内機とを接続し液側配管とガス側配管とからなる冷媒配管と、前記冷媒配管に設けられる回路切替手段と、前記冷媒配管に設けられる第1調整弁と、制御部と、を備える空気調和装置であって、前記圧縮機のインジェクションポートと、前記第1調整弁と前記室内熱交換器との間の前記冷媒配管と、を接続するインジェクション配管と、前記インジェクション配管に設けられるインジェクション調整弁と、をさらに備え、前記制御部は、前記室外熱交換器が放熱器となり、前記室内熱交換器が蒸発器となるように前記回路切替手段を制御し、前記圧縮機を動作し、前記第1調整弁を全閉し、前記インジェクション調整弁の開度を制御する第1冷媒回収運転を実行する。
これによれば、冷媒回収運転中に、圧縮機から低圧配管に中圧冷媒を流すことにより、第1調整弁よりも下流の液側配管の冷媒圧力の低下を抑制され、蒸発温度を上昇させ室内空気との温度差拡大を防ぎ、圧縮機からの吐出温度を低減させることができ、高外気温時においても確実に冷媒の回収を行うことができる。
【0010】
第2の発明は、前記制御部は、前記第1冷媒回収運転時に、前記圧縮機から吐出される冷媒の冷媒吐出温度が第1の所定温度以下となるよう前記インジェクション調整弁の開度を制御する。
これによれば、冷媒回収運転中に、圧縮機から低圧配管に中圧冷媒を流すことにより、第1調整弁よりも下流の液側配管の冷媒圧力の低下を抑制され、蒸発温度を上昇させ室内空気との温度差拡大を防ぎ、圧縮機からの吐出温度を低減させることができ、高外気温時においても確実に冷媒の回収を行うことができる。
【0011】
第3の発明は、前記インジェクション配管の接続箇所と前記室内熱交換器との間の冷媒配管に設けられた第2調整弁を備え、前記制御部は、前記圧縮機から吐出される冷媒吐出圧力が第1の所定圧力以上となった場合に、前記第2調整弁を閉じるとともに、前記第1調整弁を開く第2冷媒回収運転を実行する。
これによれば、圧縮機の圧縮途中の中間圧に過熱度の低い冷媒を流入させることで、一度上昇した冷媒の温度を飽和温度近傍まで低下させることができ、従って、圧縮機の吐出温度を低下させることができル。その結果、高外気温条件下で冷媒回収を行い、高圧が上昇した場合でも、圧縮機から吐出される冷媒の温度を低下させることができ、室内熱交換器の冷媒を確実に室外熱交換器に回収することができる。
【0012】
また、本実施形態においては、第1調整弁とインジェクション配管の接続箇所との間を流れる冷媒と、インジェクションポートとインジェクション調整弁との間を流れる冷媒と、を熱交換するインジェクション熱交換器を備えている。
これによれば、インジェクション分岐部と第1冷媒量調整との間を流れる冷媒と、インジェクション調整手段とインジェクションポートとの間を流れる冷媒とをインジェクション熱交換器で熱交換することで、室外熱交換器から流出した冷媒の温度を低下することができ、冷媒密度を向上(液化)させることができる。従って、熱源側から吐出される空気の温度が高くなる過負荷の場合(例えば、50℃)でも、回収された冷媒の温度を下げて冷媒密度を向上して高圧を低下することができる。その結果、過負荷の場合に冷媒回収を行う場合でも、冷媒密度を向上して高圧を低下し、圧縮機から吐出される冷媒の温度を低下させて、室内熱交換器の冷媒を確実に室外熱交換器に回収することができる。
【0013】
第5の発明は、一端を前記室外熱交換器と前記第2調整弁との間の前記冷媒配管に接続し、他端を前記回路切替手段と前記圧縮機の吸入側との間の冷媒配管に接続するバイパス配管と、前記バイパス配管に設けられるバイパス調整弁と、前記バイパス配管の他端と前記圧縮機との間に設けられる冷媒貯留部と、を備え、前記制御部は、前記圧縮機から吐出される冷媒吐出圧力が第2所定圧力以上の場合、前記バイパス調整弁を開く第3冷媒回収運転を実行する。
これによれば、室外熱交換器に貯留された冷媒が一杯となり、高圧が上昇した場合、室外熱交換器に貯留された冷媒をバイパス配管を通り冷媒貯留部に貯留できるため、高圧を低下することになる。その結果、冷媒回路内に封入された冷媒量が多い場合でも、高圧上昇による圧縮機から吐出される冷媒の温度の上昇を抑制でき、高圧を低下して圧縮機から吐出される冷媒の温度を低下することができ、室内熱交換器の冷媒を確実に室外熱交換器に回収することができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る空気調和装置の第1実施の形態を示す冷媒回路図である。
図1に示すように、本実施形態における空気調和装置1は、室外機10との室内機20とを備えている。
室外機10は、圧縮機11、回路切替手段としての四方弁12、室外熱交換器13、第1調整弁14およびこれらの各部品を接続するガス側配管15、液側配管16により構成されている。室外熱交換器13の近傍には、この室内熱交換器に外気を送る室外ファン17が設けられている。
また、室内機20は、室内熱交換器21およびこれらを接続するガス側配管15、液側配管16により構成されている。室内熱交換器21の近傍には、この室内熱交換器21に室内空気を送る室内ファン22が設けられている。
【0015】
圧縮機11は、ガス側配管15から吸入したガス冷媒を所定圧力に圧縮させて吐出するように構成されており、この圧縮された冷媒は、冷房運転時においては、四方弁12を介して室外熱交換器13に送られる。
【0016】
室外熱交換器13は、室外ファン17を駆動することにより外気と冷媒との熱交換を行うものであり、冷房運転時には凝縮器として、暖房運転時には蒸発器として機能するように構成されている。
第1調整弁14は、液側配管16に設けられており、冷房運転時に室内熱交換器21に流入する冷媒を減圧膨張させるものである。
また、室内熱交換器21は、室内ファン22を駆動することにより室内空気の熱交換を行うものであり、冷房運転時には蒸発器として、暖房運転時には凝縮器として機能するように構成されている。
【0017】
また、本実施の形態においては、第1調整弁14と室内熱交換器21との間には、インジェクション配管30が接続されており、インジェクション配管30の他端は、圧縮機11の圧縮空間の中間圧となっているインジェクションポート31に接続されている。
インジェクション配管30の中途部には、インジェクション調整弁32が設けられている。
第1調整弁14と室内熱交換器21との間であって、インジェクション配管30の接続箇所より室内熱交換器21側には、第2調整弁33が設けられている。
なお、第1調整弁14、インジェクション調整弁32および第2調整弁33は、任意に開度を調整することができる電動弁で構成されている。
【0018】
圧縮機11の冷媒吐出側には、冷媒吐出温度を検出する吐出温度センサ35と、冷媒吐出圧力を検出する吐出圧力センサ36とがそれぞれ設けられている。
また、圧縮機11の冷媒吸入側には、冷媒吸入圧力を検出する吸入圧力センサ37が設けられている。
【0019】
次に、第1実施の形態の制御構成について説明する。
図2は、第1実施の形態の制御構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施の形態の空気調和装置1は、制御部40を備えている。制御部40は、例えば、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスとを備え、空気調和装置1の各部の制御を行うものである。
制御部40には、吐出温度センサ35と、吐出圧力センサ36と、吸入圧力センサ37とがそれぞれ接続されている。
制御部40は、これら吐出温度センサ35、吐出圧力センサ36および吸入圧力センサ37の検出値に基づいて、圧縮機11、室外ファン17、室内ファン22の駆動制御を行うとともに、第1調整弁14、第2調整弁33、インジェクション調整弁32の開度制御および四方弁12の切り替え制御を行うように構成されている。
【0020】
次に、本実施の形態における冷媒回収運転動作について説明する。
図3は、本実施の形態の冷媒回収運転動作を示すフローチャートである。
図3に示すように、制御部40は、冷媒回収運転を開始すると、第1冷媒回収運転を行う。
第1冷媒回収運転は、四方弁12を冷房運転に切り替え、第1調整弁14を全閉し、第2調整弁33を所定の開度に固定し、圧縮機11の運転周波数を固定する。
【0021】
そして、制御部40は、吐出温度センサ35による圧縮機11の冷媒吐出温度Tdを取得し、この冷媒吐出温度Tdが第1所定温度T1以上であるか否かを判断する(ST2)。
冷媒吐出温度Tdが第1の所定温度T1以上の場合には(ST2:YES)、制御部40は、インジェクション調整弁32の開度を増加するように制御する(ST3)。
【0022】
一般に、冷媒回収動作を行うことで、室内熱交換器21の上流側の低圧冷媒圧力が徐々に低下するので、室内熱交換器21における蒸発温度が低下し、室内空気との温度差が広がって室内熱交換器21出口で過熱度が大きくなる。これに伴って、圧縮機11から吐出される冷媒の温度も上昇する。
特に、高外気温条件下(例えば、35℃)では冷房運転時でも圧縮機11から吐出される冷媒温度が上限付近に達する(例えば、100℃)。
この状態で、冷媒回収動作を行うと、さらに圧縮機11から吐出される冷媒温度が上昇するため、冷媒回収が完了する前に圧縮機11が停止することとなる。
【0023】
本実施の形態では、圧縮機11からインジェクション配管30を介して圧縮機11の中圧冷媒を液側配管16に流すことで、第1調整弁14よりも下流の液側配管16の冷媒圧力の低下を抑制することができ、室内熱交換器21における蒸発温度を上昇させ、室内空気との温度差拡大を防ぎ、圧縮機11からの吐出温度を大幅に低減させることが可能となる。
【0024】
その後、制御部40は、吸入圧力センサ37による圧縮機11の吸入圧力Psを取得し、この冷媒の吸引圧力Psが-0.1MPa以下であるか否かを判断する(ST4)。
制御部40は、吸入圧力Psが-0.1MPa以下であると判断した場合には(ST4:YES)、冷媒回収動作を終了する。
吸入圧力Psが-0.1MPa以下でないと判断した場合には(ST4:NO)、制御部40は、冷媒吐出温度Tdが第1所定温度T1以下であるか否かを判断するステップ2に戻る(ST2)。
【0025】
一方、冷媒吐出温度Tdが第1の所定温度T1以上でない場合には(ST2:NO)、制御部40は、冷媒吐出温度Tdが第1所定温度T1-30℃以下であるか否かを判断する(ST5)。
冷媒吐出温度Tdが第1の所定温度T1-30℃以下であると判断した場合は(ST5:YES)、制御部40は、インジェクション調整弁32の開度を減少するように制御する(ST6)。
【0026】
冷媒吐出温度Tdが第1の所定温度T1-30℃以下でないと判断した場合は(ST5:NO)、制御部40は、インジェクション調整弁32の開度を維持するように制御する(ST7)。
インジェクション調整弁32の開度を制御した後は、冷媒の吸引圧力Psが-0.1MPa以下であるか否かを判断するステップ4に移行する(ST4)。
【0027】
以上述べたように、本実施形態においては、圧縮機11のインジェクションポート31と第1調整弁14と室内熱交換器21との間の冷媒配管とを接続するインジェクション配管30と、インジェクション配管30に設けられるインジェクション調整弁32と、をさらに備え、制御部40は、室外熱交換器13が放熱器となり、室内熱交換器21が蒸発器となるように四方弁12(回路切替手段)を制御し、圧縮機11を動作し、第1調整弁14を全閉し、インジェクション調整弁32の開度を制御する第1冷媒回収運転を実行する。
これにより、冷媒回収運転中に、圧縮機11から低圧配管に中圧冷媒を流すことにより、第1調整弁14よりも下流の液側配管16の冷媒圧力の低下を抑制され、蒸発温度を上昇させ室内空気との温度差拡大を防ぎ、圧縮機11からの吐出温度を低減させることができ、高外気温時においても冷媒の回収を行うことができる。
【0028】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態を示す冷媒回路図である。
図4に示すように、第1調整弁14とインジェクション配管30の接続箇所との間を流れる冷媒と、前記インジェクションポート31と前記インジェクション調整弁32との間を流れる冷媒と、を熱交換するインジェクション熱交換器34を備えている。
その他の構成は、
図1に示す第1実施形態と同様であるため、同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0029】
次に、第2実施の形態における冷媒回収運転動作について説明する。
図5は、本実施の形態の冷媒回収運転動作を示すフローチャートである。
第2実施形態における制御構成は、
図2に示す第1実施形態と同様であるため、
図2を参照しつつ説明する。
図5に示すように、制御部40は、冷媒回収動作を開始すると、第1冷媒回収運転を行う。この場合、第1冷媒回収運転は、
図3に示すフローチャートのステップ(ST1)から(ST7)までの動作と同様である。そのため、同一ステップには同一ステップ数を付して、その説明を省略する。
【0030】
制御部40は、第1冷媒回収運転時に、吸入圧力Psが-0.1MPa以下でないと判断した場合には(ST4:NO)、制御部40は、冷媒吐出圧力Pdが第1所定圧力Pd1以上であるか否かを判断する(ST8)。
そして、冷媒吐出圧力Pdが第1所定圧力Pd1以上であると判断した場合は、制御部40は、第2冷媒回収運転を行う(ST9)。
第2冷媒回収運転は、四方弁12を冷房運転に切り替え、第1調整弁14を所定の開度に固定し、第2調整弁33を全閉し、圧縮機11の運転周波数を固定する。
【0031】
そして、制御部40は、吐出温度センサ35による圧縮機11の冷媒吐出温度Tdを取得し、この冷媒吐出温度Tdが第2所定温度T2以上であるか否かを判断する(ST10)。
冷媒吐出温度Tdが第2所定温度T2以上の場合には(ST10:YES)、制御部40は、インジェクション調整弁32の開度を増加するように制御する(ST11)。
【0032】
その後、制御部40は、吐出温度Tdが第2所定温度T2以上でないと判断した場合には(ST10:NO)、制御部40は、冷媒吐出温度Tdが第1所定温度T1-30℃以下であるか否かを判断する(ST12)。
冷媒吐出温度Tdが第1所定温度T1-30℃以下であると判断した場合は(ST12:YES)、制御部40は、インジェクション調整弁32の開度を減少するように制御する(ST13)。
【0033】
冷媒吐出温度Tdが第1の所定温度T1-30℃以下でないと判断した場合は(ST12:NO)、制御部40は、インジェクション調整弁32の開度を維持するように制御する(ST14)。
インジェクション調整弁32の開度を制御した後は、冷媒の吸引圧力Psが-0.1MPa以下であるか否かを判断するステップ4に移行する(ST4)。
【0034】
なお、第2実施形態においては、
図4に示す冷凍サイクル回路を用いて説明したが、
図1に示す冷凍サイクル回路のようにインジェクション熱交換器34を用いない冷凍サイクル回路でも、同様の制御を行うことにより同様の作用・効果を得ることができる。
【0035】
以上述べたように、本実施の形態においては、インジェクション配管30の接続箇所と室内熱交換器21との間の冷媒配管に設けられた第2調整弁33を備え、制御部40は、圧縮機11から吐出される冷媒吐出圧力が第1の所定圧力以上となった場合に、第2調整弁33を閉じるとともに、第1調整弁14を開く第2冷媒回収運転を実行する。
これにより、圧縮機11の圧縮途中の中間圧に過熱度の低い冷媒を流入させることで、一度上昇した冷媒の温度を飽和温度近傍まで低下させることができ、従って、圧縮機11の吐出温度を低下させることができル。その結果、高外気温条件下で冷媒回収を行い、高圧が上昇した場合でも、圧縮機11から吐出される冷媒の温度を低下させることができ、室内熱交換器21の冷媒を確実に室外熱交換器13に回収することができる。
【0036】
また、本実施形態においては、第1調整弁14とインジェクション配管30の接続箇所との間を流れる冷媒と、インジェクションポート31とインジェクション調整弁32との間を流れる冷媒と、を熱交換するインジェクション熱交換器34を備えている。
これにより、インジェクション分岐部と第1冷媒量調整との間を流れる冷媒と、インジェクション調整手段とインジェクションポート31との間を流れる冷媒とを熱交換することで、室外熱交換器13から流出した冷媒の温度を低下することができ、冷媒密度を向上(液化)させることができる。従って、熱源側から吐出される空気の温度が高くなる過負荷の場合(例えば、50℃)でも、回収された冷媒の温度を下げて冷媒密度を向上して高圧を低下することができる。その結果、過負荷の場合に冷媒回収を行う場合でも、冷媒密度を向上して高圧を低下し、圧縮機11から吐出される冷媒の温度を低下させて、室内熱交換器21の冷媒を確実に室外熱交換器13に回収することができる。
【0037】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図6は本発明の第3実施形態を示す冷媒回路図である。
図6に示すように、第3実施形態においては、一端を室外熱交換器13と第2調整弁33との間の冷媒配管に接続し、他端を四方弁12と圧縮機11の吸入側との間の冷媒配管に接続するバイパス配管50を設けている。
また、バイパス配管50の中途部には、バイパス調整弁51が設けられている。バイパス配管50のガス側配管15の接続箇所と圧縮機11との間には、冷媒貯留部52が設けられている。
【0038】
図7は、第3実施形態の制御構成を示すブロック図である。
図7に示すように、制御部40は、吐出温度センサ35、吐出圧力センサ36および吸入圧力センサ37の検出値に基づいて、圧縮機11、室外ファン17、室内ファン22の駆動制御を行うとともに、第1調整弁14、第2調整弁33、インジェクション調整弁32、バイパス調整弁51の開度制御および四方弁12の切り替え制御を行うように構成されている。
図6および
図7において、その他の構成は、第2実施形態と同様であるため、同一部分には同一符号を付して付してその説明を省略する。
【0039】
次に、第3実施の形態における冷媒回収運転動作について説明する。
図8は、本実施の形態の冷媒回収運転動作を示すフローチャートである。
図8に示すように、制御部40は、冷媒回収動作を開始すると、第1冷媒回収運転を行う。この場合、第1冷媒回収運転は、
図5に示すフローチャートのステップ(ST1)から(ST14)までの動作と同様である。そのため、同一ステップには同一ステップ数を付して、その説明を省略する。
【0040】
制御部40は、冷媒吐出圧力Pdが第1所定圧力Pd1以上であると判断した場合は(ST8:YES)、圧縮機11の冷媒吐出圧力Pdが第2所定圧力Pd2以上であるか否かを判断する(ST15)。
そして、冷媒吐出圧力Pdが第1所定圧力Pd2以上でないと判断した場合は、制御部40は、第2冷媒回収運転を行う(ST9)。第2冷媒回収運転の動作は、第2実施形態と同様である。
【0041】
一方、冷媒吐出圧力Pdが第1所定圧力Pd2以上であると判断した場合は(ST15:YES)、制御部40は、第3冷媒回収運転を行う(ST16)。
第3冷媒回収運転は、四方弁12を冷房運転に切り替え、第1調整弁14を所定の開度に固定し、第2調整弁33を全閉し、バイパス調整弁51の開度を増加し、圧縮機11の運転周波数を固定する。
【0042】
その後、制御部40は、圧縮機11の冷媒吐出圧力Pdが第2所定圧力Pd2+0.1MPa以上であるか否かを判断し(ST17)、圧縮機11の冷媒吐出圧力Pdが第2所定圧力Pd2+0.1MPa以上であると判断した場合は(ST17:YES)、冷媒回収運転を終了する。
圧縮機11の冷媒吐出圧力Pdが第2所定圧力Pd2+0.1MPa以上でないと判断した場合は(ST17:NO)、ステップ4に戻る(ST4)。
【0043】
以上述べたように、本実施形態においては、一端を室外熱交換器13と第2調整弁33との間の冷媒配管に接続し、他端を四方弁12と圧縮機11の吸入側との間の冷媒配管に接続するバイパス配管50と、バイパス配管50に設けられるバイパス調整弁51と、バイパス配管50の他端と圧縮機11との間に設けられる冷媒貯留部52とを備え、制御部40は、圧縮機11から吐出される冷媒吐出圧力が第2所定圧力以上の場合、バイパス調整弁51を開く第3冷媒回収運転を実行する。
これにより、室外熱交換器13に貯留された冷媒が一杯となり、高圧が上昇した場合、室外熱交換器13に貯留された冷媒をバイパス配管50を通り冷媒貯留部52に貯留できるため、高圧を低下することになる。その結果、冷媒回路内に封入された冷媒量が多い場合でも、高圧上昇による圧縮機11から吐出される冷媒の温度の上昇を抑制でき、高圧を低下して圧縮機11から吐出される冷媒の温度を低下することができ、室内熱交換器21の冷媒を確実に室外熱交換器13に回収することができる。
【0044】
なお、本発明は、前記実施形態に記載のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更および応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る空気調和装置は、外気温が高温の場合でも、確実に冷媒の回収を行うことのできる空気調和装置として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 空気調和装置
10 室外機
11 圧縮機
12 四方弁
13 室外熱交換器
14 第1調整弁
15 ガス側配管
16 液側配管
17 室外ファン
20 室内機
21 室内熱交換器
22 室内ファン
30 インジェクション配管
31 インジェクションポート
32 インジェクション調整弁
33 第2調整弁
34 インジェクション熱交換器
35 吐出温度センサ
36 吐出圧力センサ
37 吸入圧力センサ
40 制御部
50 バイパス配管
51 バイパス調整弁
52 冷媒貯留部