(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】チカグレロル活性を逆転させる方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240426BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240426BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240426BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240426BHJP
A61K 31/616 20060101ALI20240426BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P7/04
A61K47/22
A61K47/26
A61K31/616
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021515473
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 US2019052173
(87)【国際公開番号】W WO2020061465
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-15
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523362652
【氏名又は名称】エスエフジェイ ファーマ エックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バランス,デイヴィット ジェームス
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535252(JP,A)
【文献】特開平3-154867(JP,A)
【文献】BUCHANAN A; NEWTON P; PEHRSSON S; ET AL,STRUCTURAL AND FUNCTIONAL CHARACTERIZATION OF A SPECIFIC ANTIDOTE FOR TICAGRELOR,BLOOD,米国,AMERICAN SOCIETY OF HEMATOLOGY,2015年05月28日,VOL:125, NR:22,PAGE(S):3484 - 3490,http://dx.doi.org/10.1182/blood-2015-01-622928
【文献】Thomas MEYER and Helmuth HILZ,Eur. J. Biochem.,1986年,Vol.155,p.157-165
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 7/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チカグレロル((1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール)に関連した出血又は前記出血のリスクを逆転させる
方法を、それを必要としている患者において使用するための
、チカグレロル
に結合する抗体又はその断片
を含む医薬組成物であって、前記方法が、前記患者に対し、9g~36gの前記医薬組成物を投与すること、を含み、
前記抗体又はその断片が、
a)配列番号53(VH CDR1)、配列番号54(VH CDR2)、配列番号55(VH CDR3)、配列番号58(VL CDR1)、配列番号59(VL CDR2)及び配列番号60(VL CDR3);
b)配列番号63(VH CDR1)、配列番号64(VH CDR2)、配列番号65(VH CDR3)、配列番号68(VL CDR1)、配列番号69(VL CDR2)及び配列番号70(VL CDR3);並びに
c)配列番号73(VH CDR1)、配列番号74(VH CDR2)、配列番号75(VH CDR3)、配列番号78(VL CDR1)、配列番号79(VL CDR2)及び配列番号80(VL CDR3)
からなる群から選択される相補性決定領域(CDR)の組み合わせを含む医薬組成物。
【請求項2】
配列番号73(VH CDR1)、配列番号74(VH CDR2)、配列番号75(VH CDR3)、配列番号78(VL CDR1)、配列番号79(VL CDR2)及び配列番号80(VL CDR3)を含む、相補性決定領域(CDR)を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記抗体又はその断片は、配列番号52及び配列番号57、配列番号62及び配列番号67、並びに配列番号72及び配列番号77からなる群より選択される重鎖可変領域(VH)配列及び軽鎖可変領域(VL)配列の組み合わせを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗体又はその断片が、配列番号72及び配列番号77の重鎖可変領域(VH)配列及び軽鎖可変領域(VL)配列の組み合わせを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記患者は、前記抗チカグレロル抗体又はその断片の投与前にチカグレロルを投与されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抗体又はその断片はFabであ
る、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記用量は約9g~約18gのFabである、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記患者は、前記Fabを
、約9g、約18g、約24g、約30g
又は約36g
投与される、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物は前記患者に静脈内投与される、請求項1~
8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物は、約
10分から約36時間かけて静脈内投与される、請求項
9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物は2つ以上のセグメントで投与される、請求項
9又は10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記第1のセグメントはボーラスである、請求項
11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記セグメントそれぞれの投与速度は異なる、請求項
11又は12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記セグメントそれぞれの投与速度は、前記注入の連続するセグメントによって異なる、請求項
13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物は3つ以上のセグメントで投与され、前記セグメントそれぞれの投与速度は、前記注入の連続するセグメントによって異なる、請求項
11~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬組成物は、以下のスケジュール:12gを10分かけて注入、続いて12gを6時間かけて注入、続いて12gを18時間かけて注入、で投与される、請求項
6~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物は、約50mg/mL~約200mg/mLの抗チカグレロル抗体又はその断片、約5mM~約50mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液、約100mM~約300mMのスクロース、及び約0.01%(w/v)~約1.0%(w/v)のポリソルベート80(pH5.5~6.5)を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物は、100mg/mLの抗チカグレロル抗体又はその断片、25mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液、290mMのスクロース、及び0.05%(w/v)のポリソルベート80(pH6.0)を含む、請求項
17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記医薬組成物は、投与のために生理食塩水で希釈される、請求項
17又は18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記チカグレロル関連出血は、大出血である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記大出血は生命を脅かすものであり、臨床的に重大な障害につながる可能性があり、出血を制御するための手術を必要とし、血液製剤による処置を必要とすることを特徴とするか、又は臨床的に重要なヘモグロビンの低下と関連する急性出血である、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記患者は緊急の手術又は介入を必要とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記緊急の手術又は介入は、周術期イベントを経験するリスクと関連した、出血が注意深く制御されない場合に有害手術転帰のある冠動脈バイパス手術、神経外科手術、眼科手術若しくは関節置換手術などの出血の重大なリスク、又は2剤抗血小板療法が術前に行われない場合に血栓症のリスクが高い患者における出血の重大なリスクと関連していることが知られている、請求項
22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記患者は急性冠症候群(ACS)を発症するリスクがあるか、又はそれと診断されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記患者は、心筋梗塞(MI)、不安定狭心症、安定虚血性心疾患、鎌状赤血球症(小児患者を含む)、心房細動、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、虚血性脳卒中、1つ以上の冠動脈ステント、頸動脈ステント、頭蓋内動脈瘤後のステント、及び血液透析のために作成された動静脈瘻からなる群から選択される疾患を発症するリスクがあるか、又はそれと診断されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記患者は小児患者である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記小児患者は18歳未満である、請求項
26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記小児患者は2歳未満である、請求項
27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記患者は成人患者である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記成人患者は18~64歳(両端を含む)である、請求項
29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記患者は65歳を超えている、請求項
29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記患者は65~80歳(両端を含む)である、請求項
31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記患者は、アスピリン(アセチルサリチル酸を投与されている、請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記抗体又はその断片の投与は、チカグレロル活性を逆転させる、請求項1~
33のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記抗体又はその断片の投与は、血小板機能を回復させる、請求項
34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記抗体又はその断片の投与は、血小板凝集能を回復させる、請求項
35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記抗体又はその断片の投与は、血小板凝集能をベースラインの少なくとも80%まで回復させる、請求項
36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記抗体又はその断片の投与は、投与後1分~60分以内に血小板凝集能を回復させる、請求項
36又は37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記抗体又はその断片の投与は、投与後5分以内に血小板凝集能を回復させる、請求項
38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記抗体又はその断片の投与は、血小板凝集能の持続的な回復を提供する、請求項
36又は37に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記血小板凝集能の回復は、投与後少なくとも12時間持続する、請求項
40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記血小板凝集能の回復は、投与後少なくとも16時間持続する、請求項
41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
血小板凝集能の回復は、投与後少なくとも24時間持続する、請求項
42に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、米国仮特許出願第62/733,892号(2018年9月20日出願)、米国仮特許出願第62/806,225号(2019年2月15日出願)及び米国仮特許出願第62/836,373号(2019年4月19日出願)の利益を主張する。これらの各文献の全内容があらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
[0002] 本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルすなわち、配列リストのコンピュータ可読のフォーマットの写し(ファイル名:PHAS_037_01WO_SeqList_ST25.txt、記録日:2019年9月20日、ファイルサイズ:44キロバイト)は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 急性冠症候群(ACS)は、不安定狭心症及び心筋梗塞、又は心臓発作を含む、心臓への血流の突然の低下に関連する様々な病態をいう。ACSは、冠動脈に血栓が不適切に形成されることによって起こる。これらの血栓は、血液中にみられる小さなレンズ形の細胞であり、通常、損傷を受けた部位で凝集して出血を止めるのに役立っている血小板で主に構成されている。米疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)によると、米国では毎年約790,000人が心臓発作を起こしており、先進国では心臓発作が主な死因となっている。
【0004】
[0004] ACSの主な治療は、既存の血栓の悪化の防止、又はさらなる血栓の形成の抑制のために、抗血小板薬を使用することである。これらの血栓は、心臓で、又は閉塞した冠状動脈に配置して血管を開いたままにするステントで、又は身体の他のどこかで生じ得る。抗血小板薬がなければ、患者は心臓発作の再発、脳卒中及び死亡のリスクが大きく上昇する。ACS患者の標準治療は、アスピリンとP2Y12受容体として知られる血小板上にある特異的受容体の阻害薬を組み合わせる、抗血小板薬2剤併用療法、すなわちDAPTである。この併用療法は、患者が心臓発作又はACSの他の症状を発現した後に開始され、血小板凝集及び血栓形成を大きく減少させ、心臓発作の再発、脳卒中及び死亡の頻度を減少させることが示されている。
【0005】
[0005] DAPT療法に使用される抗血小板薬は、ACS患者の転帰全般の改善に有効であることが証明されている一方で、血液凝固の抑制は患者の大出血リスクを増大させる。抗血小板療法を受けている患者の出血イベントは自然発生的に、又は損傷や手術の結果として起こり得るが、それらは小出血と大出血に分類される。AstraZenecaが実施した18,000人の患者を対象とした臨床試験「血小板阻害と患者転帰(Platelet Inhibition and Patient Outcomes)」、すなわちPLATO試験では、チカグレロルが、商標名Plavixで市販されている抗血小板薬クロピドグレルよりも、ACS患者の心臓発作の再発、脳卒中及び死亡を減少させる効果が優れていることが示された(Wallentin et al. 2009)。しかし、両治療群とも、試験に参加した患者の11%~12%が大出血イベントを起こし、患者の5.8%で、これらの大出血イベントは致死的又は生命を脅かすものであった。出血の原因は、治験対象集団において異なっていた。チカグレロル投与患者の約3%では、大出血イベントは自然発生的であり、いかなる医療処置にも関連していなかったが、チカグレロル投与患者の約9%では、冠動脈バイパス手術、すなわちCABGなどの処置に関連した大出血が発現した(Wallentin et al. 2009)。治験プロトコルでは、CABGを必要とする患者は手術前の1~3日間チカグレロルの服用を中止することを推奨していたが、チカグレロルを服用した患者のほぼ半数が緊急に手術を必要とし、チカグレロルの効果が消え、正常な血液凝固が回復するまでの最大3日間を待つことができなかった。全体として、治験に参加したCABG患者の最大80%が手術に関連した大出血又は生命を脅かす出血イベントを経験し、緊急手術を必要とし、チカグレロルのウォッシュアウトまで3日間待つことができなかった患者では、約50%が致死的又は生命を脅かす出血イベントを経験した(Held et al., 2011)。このリスクの一部は患者の基礎疾患と関連している可能性が高いものの、全体的な出血リスクは抗血小板薬により有意に増加し、チカグレロルに関する現在の米国の処方情報は、手術前5日間のチカグレロル治療の中断を示唆している。
【0006】
[0006] 出血リスクの増加にもかかわらず、抗血小板薬は、静脈内の凝血を防止するために使用される抗凝固薬と共に、その救命効果のために米国で最も広く処方されている薬物のいくつかを示している。これらの部類の薬物はいずれも出血リスクを増大させるが、抗凝固薬については拮抗薬が開発されている。しかし、抗血小板薬については今日まで拮抗薬は存在しない。拮抗薬がない場合、医師の治療の選択肢は限られており、ときに血小板輸血を行うが、この状況での有効性は実証されていない。チカグレロルの抗血小板活性を速やかに逆転させ、正常な凝固を回復させることができれば、大出血の場合のほか、出血に伴う外科的又は他の医学的介入が緊急に必要とされる状況においても、その安全性が高まるであろう。
【0007】
[0007] DAPT療法で処方される3つの経口抗血小板P2Y12受容体拮抗薬は、商標名Plavixで市販されているクロピドグレル、商標名Effientで市販されているプラスグレル、及び商標名Brilinta及びBriliqueで市販されているチカグレロルである。血小板上の標的受容体に永久的に結合して阻害するクロピドグレルやプラスグレルとは異なり、チカグレロルは一過性でP2Y12受容体に結合し、受容体への速やかなオン・オフを繰り返す。チカグレロルのこの一過性の結合は、チカグレロルに特異的な拮抗薬を開発する無比の機会を提示するが、他の薬物の受容体への永続的な結合は、拮抗薬の開発を妨げる。
【0008】
[0008] チカグレロルはクロピドグレルと比較してより優れた有効性を示していることから、ベストインクラスのP2Y12抗血小板薬と考えられている。しかし、チカグレロル治療の副作用は、自然出血を引き起こす可能性がある。さらに、その抗血小板活性のために、チカグレロル治療は緊急手術を必要とする患者には危険であり、血液損失の増加につながる可能性がある。
【0009】
[0009] チカグレロルはまた、不安定狭心症患者、安定虚血性心疾患患者、小児患者を含む鎌状赤血球症患者、心房細動患者、冠動脈疾患患者、末梢動脈疾患患者、虚血性脳卒中患者、1つ以上の冠動脈ステントを有する患者、頸動脈ステントを有する患者、頭蓋内動脈瘤後のステントを有する患者、血液透析のために作成された動静脈瘻を有する患者において使用され得る。チカグレロルはまた2型糖尿病患者に使用されることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
[0010] 本開示は、高親和性及び特異性でチカグレロルに結合するヒトFab断片を使用して、チカグレロルの抗血小板活性を逆転させる、チカグレロル活性を逆転させる方法を提供する。
【0011】
[0011] いくつかの態様では、本開示は、それを必要としている患者における、チカグレロルに関連した出血又は前記出血のリスクを逆転させる方法であって、チカグレロル((1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール)又はその代謝産物若しくは誘導体に結合する抗体又はその断片を含む医薬組成物の有効量を含む組成物を前記患者に投与することを含む方法を提供する。
【0012】
[0012] いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、以下からなる群から選択される相補性決定領域(CDR)の組み合わせを含む:
[0013] a)配列番号53(VH CDR1)、配列番号54(VH CDR2)、配列番号55(VH CDR3)、配列番号58(VL CDR1)、配列番号59(VL CDR2)及び配列番号60(VL CDR3);
[0014] a)配列番号63(VH CDR1)、配列番号64(VH CDR2)、配列番号65(VH CDR3)、配列番号68(VL CDR1)、配列番号69(VL CDR2)及び配列番号70(VL CDR3);並びに
[0015] c)配列番号73(VH CDR1)、配列番号74(VH CDR2)、配列番号75(VH CDR3)、配列番号78(VL CDR1)、配列番号79(VL CDR2)及び配列番号80(VL CDR3)。
【0013】
[0016] いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号52及び配列番号57、配列番号62及び配列番号67、並びに配列番号72及び配列番号77からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列及び軽鎖可変領域(VL)配列の組み合わせを含む。
【0014】
[0017] いくつかの実施形態では、患者は、抗チカグレロル抗体又はその断片の投与の前にチカグレロルが投与されている。
【0015】
[0018] いくつかの実施形態では、抗体又はその断片はFabであり、患者に約1g~約48g投与される。いくつかの実施形態では、Fabの用量は約9g~約18gである。いくつかの実施形態では、患者は、Fabを約1g、約3g、約9g、約18g、約24g、約30g、約36g又は約48g投与される。
【0016】
[0019] いくつかの実施形態では、医薬組成物は患者に静脈内投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は約15分から約36時間かけて静脈内投与される。
【0017】
[0020] いくつかの実施形態では、医薬組成物は2つ以上のセグメントで投与される。いくつかの実施形態では、第1のセグメントはボーラスである。いくつかの実施形態では、セグメントそれぞれの投与速度は異なる。いくつかの実施形態では、セグメントそれぞれの投与速度は、注入の連続するセグメントによって異なる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は3つ以上のセグメントで投与され、セグメントそれぞれの投与速度は、注入の連続するセグメントによって異なる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、以下のスケジュールで投与される:12gを10分かけて注入、続いて12gを6時間かけて注入、続いて12gを18時間かけて注入。
【0018】
[0021] いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約50mg/mL~約200mg/mLの抗チカグレロル抗体又はその断片、約5mM~約50mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液、約100mM~約300mMのスクロース、及び約0.01%(w/v)~約1.0%(w/v)のポリソルベート80(pH5.5~6.5)を含む。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、100mg/mLの抗チカグレロル抗体又はその断片、25mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液、290mMのスクロース、及び0.05%(w/v)のポリソルベート80(pH6.0)を含む。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、投与のために等張生理食塩水で希釈される。
【0019】
[0022] いくつかの実施形態では、チカグレロル関連出血は大出血である。いくつかの実施形態では、大出血は生命を脅かすものであり、臨床的に重大な障害につながる可能性があり、出血を制御するための手術を必要とし、血液製剤による処置を必要とすることを特徴とするか、又は臨床的に重要なヘモグロビンの低下と関連する急性出血である。いくつかの実施形態では、患者は手術又は介入を必要とする。いくつかの実施形態では、患者は緊急の手術又は介入を必要とする。いくつかの実施形態では、緊急の手術又は介入は、周術期イベントを経験するリスクと関連した、出血が注意深く制御されない場合に有害手術転帰のある冠動脈バイパス手術、神経外科手術、眼科手術若しくは関節置換手術などの出血の重大なリスク、又は2剤抗血小板療法が術前に行われない場合に血栓症のリスクが高い患者における出血の重大なリスクと関連していることが知られている。いくつかの実施形態では、患者は、出血の重大なリスクに関連することが知られている待機的手術又は介入を必要としている。いくつかの実施形態では、患者は急性冠症候群(ACS)を発症するリスクがあるか、又はそれと診断されている。いくつかの実施形態では、患者は、心筋梗塞(MI)、不安定狭心症、安定虚血性心疾患、鎌状赤血球症(小児患者を含む)、心房細動、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、虚血性脳卒中、1つ以上の冠動脈ステント、頸動脈ステント、頭蓋内動脈瘤後のステント、及び血液透析のために作成された動静脈瘻からなる群から選択される疾患を発症するリスクがあるか、又はそれと診断されている。
【0020】
[0023] いくつかの実施形態では、患者は小児患者である。いくつかの実施形態では、小児患者は18歳未満である。いくつかの実施形態では、小児患者は2歳未満である。
【0021】
[0024] いくつかの実施形態では、患者は成人患者である。いくつかの実施形態では、成人患者は18~64歳(両端を含む)である。いくつかの実施形態では、患者は64歳を超えている。いくつかの実施形態では、患者は65~80歳(両端を含む)である。
【0022】
[0025] いくつかの実施形態では、患者は、アスピリン(アセチルサリチル酸)を投与されている。
【0023】
[0026] いくつかの実施形態では、抗体又はその断片の投与は、チカグレロル活性を逆転させる。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片の投与は、血小板機能を回復させる。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片の投与は、血小板凝集能を回復させる。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片の投与は、血小板凝集能をベースラインの少なくとも80%まで回復させる。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片の投与は、投与後1分~60分以内に血小板凝集能を回復させる。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片の投与は、投与後5分以内に血小板凝集能を回復させる。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片の投与は、血小板凝集能の持続的な回復を提供する。いくつかの実施形態では、血小板凝集能の回復は投与後少なくとも12時間持続する。いくつかの実施形態では、血小板凝集能の回復は投与後少なくとも16時間持続する。いくつかの実施形態では、血小板凝集能の回復は投与後少なくとも24時間持続する。
【0024】
[0027] いくつかの実施形態では、患者は、チカグレロル、及び患者のチカグレロル曝露に影響を及ぼす1つ以上の追加の薬物が投与されている。いくつかの実施形態では、患者は、チカグレロル、及びシトクロムP450アイソフォーム3A(CYP3A)の活性を阻害し、チカグレロルへの曝露の増加に導く1つ以上の追加の薬物が投与されている。いくつかの実施形態では、患者は、チカグレロル、及びCYP3Aの活性を誘導し、チカグレロルへの曝露の減少に導く1つ以上の追加の薬物が投与されている。
【0025】
[0028] いくつかの実施形態では、患者はチカグレロルを過量摂取している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図面の簡単な説明
【
図1】[0029]チカグレロル及びチカグレロルの代謝産物の構造を示す。
【
図2】[0030]コホート4における平均血小板凝集抑制率(IPA)を示す。1gのPB2452の静脈内投与はチカグレロル作用を逆転させない。
【
図3】[0031]コホート4及び6における平均血小板凝集抑制率(IPA)を示す。3g又は9gのPB2452を30分かけて静脈内投与すると、30分までに血小板機能は完全回復する。
【
図4】[0032]コホート7における血小板凝集抑制率(IPA)を示す。PB2452の投与は、16時間のチカグレロル逆転を引き起こす。
【
図5】[0033]コホート8,9及び10における血小板凝集抑制率(IPA)を示す。PB2452の投与は、約24時間のチカグレロル逆転を引き起こす。
【
図6A】[0034]例示的な登録のフローチャートを示す。健常な被験者をスクリーニングし、示されたフロー図に従って無作為化した。各用量コホートに対して全コホートが無作為化されていることを保証するため、各コホート登録前に過剰な被験者をスクリーニングした(A)。
【
図6B】[0034]例示的な試験のフローチャートを示す。健常な被験者をスクリーニングし、示されたフロー図に従って無作為化した。被験者の入院、無作為化及び退院スケジュールを示す(B)。
【
図7A】[0035]チカグレロル逆転の開始及び持続時間を示す。PB2452を漸増用量で30分間静脈内投与したPB2452群及びプラセボ群(コホート4~6)においてLTAによる測定で観察された血小板凝集の増加を示す(A)。-48時間の時点は、チカグレロルの投与前の血小板凝集率を示す。
【
図7B】[0035]チカグレロル逆転の開始及び持続時間を示す。コホート7~10の被験者には、固定用量の18gのPB2452を、コホート7、8及び9/10でそれぞれ8時間、12時間及び16時間の注入時間で投与した(B)。-48時間の時点は、チカグレロルの投与前の血小板凝集率を示す。
【
図8A】[0036]VerifyNowによるチカグレロル逆転の開始及び持続時間を示す。PB2452(白抜きマーカー)又はプラセボ(黒丸)を投与したコホート7~10の被験者について、PB2452(又はプラセボ)注入前後の複数の時点で測定した平均血小板機能分析を示す。時間0は、チカグレロルによる前処置の48時間後で、PB2452の注入前の平均血小板機能を示す。VerifyNowにより測定された平均血小板凝集(PRU)を(A)に示す。
【
図8B】[0036]VASP ELISAによるチカグレロル逆転の開始及び持続時間を示す。PB2452(白抜きマーカー)又はプラセボ(黒丸)を投与したコホート7~10の被験者について、PB2452(又はプラセボ)注入前後の複数の時点で測定した平均血小板機能分析を示す。時間0は、チカグレロルによる前処置の48時間後で、PB2452の注入前の平均血小板機能を示す。平均VASP ELISA PRIを(B)に示す。
【
図9A】[0037]LTA及びVerifyNowにより測定された血小板機能アッセイ間の相関分析を示す。(A)では、LTAで測定された凝集とVerifyNow PRUとの間でピアソン及びスピアマンの相関分析を行った(A)。全ての時点を含めた。r値は相関係数を示す。すべての解析でP<0.0001。
【
図9B】[0037]LTA及びVASP ELISAにより測定された血小板機能アッセイ間の相関分析を示す。LTAで測定された凝集とVASP ELISA PRIとの間でピアソン及びスピアマンの相関分析を行った(B)。全ての時点を含めた。r値は相関係数を示す。すべての解析でP<0.0001。
【
図9C】[0037] VerifyNow及びVASP ELISAにより測定された血小板機能アッセイ間の相関分析を示す。VerifyNow PRUとVASP ELISA PRIとの間でピアソン及びスピアマンの相関分析を行った(C)。全ての時点を含めた。r値は相関係数を示す。すべての解析でP<0.0001。
【
図10A】[0038]PB2452投与後の正常な血小板機能の正常化を示す。PB2452によって得られた逆転の程度を、PB2452後の複数の時点での血小板機能を、チカグレロルによる前処置前(-48時間)の全被験者で評価したベースライン血小板機能と比較することによって評価した。LTAで評価した血小板凝集では、逆転後の正常な血小板機能は、点線で示すように、ベースライン血小板凝集能の80%以上であると認められた(A)。
【
図10B】[0038]PB2452投与後の正常な血小板機能の正常化を示す。PB2452によって得られた逆転の程度を、PB2452後の複数の時点での血小板機能を、チカグレロルによる前処置前(-48時間)の全被験者で評価したベースラインの血小板機能と比較することによって評価した。VerifyNow血小板反応度ユニット(PRU)では、逆転後の正常な血小板機能は、点線で示すように、180PRU以上であると認められた(B)。
【
図10C】[0038]PB2452投与後の正常な血小板機能の正常化を示す。PB2452によって得られた逆転の程度を、PB2452後の複数の時点での血小板機能をチカグレロルによる前処置前(-48時間)の全被験者で評価したベースラインの血小板機能と比較することによって評価した。VASP血小板反応性指標(PRI)で測定したP2Y12受容体シグナル伝達では、逆転後の正常な血小板機能は、点線で示すように、ベースラインPRIの80%以上であると認められた(C)。
【
図11A】[0039]PB2452の薬物動態を示す。コホート4、5及び6におけるPB2452の漸増用量の経時的な血中薬物濃度を示す(A)。
【
図11B】[0039]チカグレロルの薬物動態を示す。コホート4、5及び6における総チカグレロルの経時的な血中薬物濃度を示す(B)。
【
図11C】[0039]PB2452の薬物動態を示す。コホート7~10におけるPB2452の固定用量18gの経時的な血中薬物濃度を示す(C)。
【
図11D】[0039]チカグレロルの薬物動態を示す。コホート7~10における総チカグレロルの経時的な血中薬物濃度を示す(D)。
【
図12A】[0040]低用量ADPによる血小板凝集率を示す。5μMのADPをP2Y
12アゴニストとして用いてLTAにより測定したコホート7~10の平均血小板凝集率データを示す(A)。
【
図12B】[0040]低用量ADPによる血小板凝集率を示す。20μMのADPをP2Y
12アゴニストとして用いたコホート7~10の平均血小板凝集率データを示す(B)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
[0041] チカグレロルは、血小板上のP2Y12受容体に結合し、それによって、アデノシン二リン酸、すなわちADPが、血小板凝集を引き起こすのを妨げることで作用する。チカグレロルは、P2Y12受容体に一時的に結合し、オン・オフを繰り返し、チカグレロルに結合するヒトFab断片であるPB2452などの抗チカグレロル剤を、遊離チカグレロルに結合させ、それによって受容体に対するチカグレロルの作用を妨げ、血液循環からチカグレロルが除去されるのを可能にする。チカグレロルがPB2452に結合するか又は除去されると、ADPは再びP2Y12受容体に結合し、血小板凝集を誘導することができる。
【0028】
抗チカグレロル剤
[0042] いくつかの態様では、本開示は、チカグレロル((1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]-トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール)又はその代謝産物若しくは誘導体に結合する薬剤を提供する。
【0029】
[0043] いくつかの実施形態では、チカグレロル及び/又はその代謝産物は
図1に示されている。いくつかの実施形態では、チカグレロル代謝産物は活性代謝産物である。
【0030】
[0044] いくつかの態様では、チカグレロル及び/又はその代謝産物に結合する薬剤は、抗体又はその断片である。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、一本鎖Fv(scFv)、シングルドメイン抗体、Fab、F(ab’)2、一本鎖ダイアボディ、抗体ミメティック、抗体可変ドメイン、ラクダ科動物抗体(VHH又はナノボディとしても知られる)から選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体はscFvを含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片はFabを含む。いくつかの実施形態では、抗体ミメティックは、アドネクチン分子、アフィボディ分子、アフィリン分子、アフィマー分子、アフィチン分子、アルファボディ分子、アンチカリン分子、アプタマー分子、アルマジロリピートタンパク質分子、アトリマー分子、アビマー分子、設計アンキリンリピートタンパク質分子(DARPin)分子、フィノマー分子、ノッティン分子、ノッティン分子、クニッツドメインインヒビター分子、モノボディ、ナノクランプ(nanoCLAMP)分子、又はナノフィチン分子である。
【0031】
[0045] 上記態様及び実施形態のさらなる実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号2、配列番号12、配列番号22、配列番号32、配列番号42、配列番号52、配列番号62及び配列番号72からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列;並びに配列番号7、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号57、配列番号67及び配列番号77からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号2及び配列番号7、配列番号12及び配列番号17、配列番号22及び配列番号27、配列番号32及び配列番号37、配列番号42及び配列番号47、配列番号52及び配列番号57、配列番号62及び配列番号67、並びに配列番号72及び配列番号77からなる群から選択されるVH配列及びVL配列の組み合わせを含む。さらなる実施形態では、抗体は、配列番号52及び配列番号57、配列番号62及び配列番号67、並びに配列番号72及び配列番号77からなる群から選択されるVH及びVLの組み合わせを含む。
【0032】
[0046] 上記態様及び実施形態のさらなる実施形態では、抗体又はその断片は、重鎖可変領域並びに軽鎖可変領域のフレームワーク領域(FR)並びに相補性決定領域(CDR)1、2及び3を含む。ここで、重鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3の配列は、配列番号3(CDR1)、配列番号4(CDR2)及び配列番号5(CDR3);配列番号13(CDR1)、配列番号14(CDR2)及び配列番号15(CDR3);配列番号23(CDR1)、配列番号24(CDR2)及び配列番号25(CDR3);配列番号33(CDR1)、配列番号34(CDR2)及び配列番号35(CDR3);配列番号43(CDR1)、配列番号44(CDR2)及び配列番号45(CDR3);配列番号53(CDR1)、配列番号54(CDR2)及び配列番号55(CDR3);配列番号63(CDR1)、配列番号64(CDR2)及び配列番号65(CDR3)、又は配列番号73(CDR1)、配列番号74(CDR2)及び配列番号75(CDR3)を含み、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3の配列は、配列番号8(CDR1)、配列番号9(CDR2)及び配列番号10(CDR3);配列番号18(CDR1)、配列番号19(CDR2)及び配列番号20(CDR3);配列番号28(CDR1)、配列番号29(CDR2)及び配列番号30(CDR3);配列番号38(CDR1)、配列番号39(CDR2)及び配列番号40(CDR3);配列番号48(CDR1)、配列番号49(CDR2)及び配列番号50(CDR3);配列番号58(CDR1)、配列番号59(CDR2)及び配列番号60(CDR3);配列番号68(CDR1)、配列番号69(CDR2)及び配列番号70(CDR3)、又は配列番号78(CDR1)、配列番号79(CDR2)及び配列番号80(CDR3)を含む。さらなる実施形態では、抗体は、配列番号53(VH CDR1)、配列番号54(VH CDR2)、配列番号55(VH CDR3)、配列番号58(VL CDR1)、配列番号59(VL CDR2)及び配列番号60(VL CDR3);配列番号63(VH CDR1)、配列番号64(VH CDR2)、配列番号65(VH CDR3)、配列番号68(VL CDR1)、配列番号69(VL CDR2)及び配列番号70(VL CDR3);並びに配列番号73(VH CDR1)、配列番号74(VH CDR2)、配列番号75(VH CDR3)、配列番号78(VL CDR1)、配列番号79(VL CDR2)及び配列番号80(VL CDR3)からなる群から選択されるCDR領域の組み合わせを含む。
【0033】
[0047] いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号73(VH CDR1)、配列番号74(VH CDR2)、配列番号75(VH CDR3)、配列番号78(VL CDR1)、配列番号79(VL CDR2)及び配列番号80(VL CDR3)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号72及び配列番号77のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号72及び配列番号77のアミノ酸配列を含む抗体又はその断片は、PB2452(MEDI2452)である。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号81を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、VH領域及びCH領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、VH領域及びCH1領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号72及びCH1領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号83のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号84の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、VL及びCL領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号77及びCL領域のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号85のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、配列番号86の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列番号83及び配列番号85のアミノ酸配列を含む抗体又はその断片は、PB2452(MEDI2452)である。
【0034】
[0048] いくつかの実施形態では、本開示の抗体又はその断片は、天然変異又はヒト操作による1つ以上のアミノ酸の置換、欠失又は付加を含む。示されているように、変化は、抗体又はその断片のフォールディング又は活性に有意に影響しない保存的アミノ酸置換などの軽微な性質のものであることが好ましい。
【0035】
[0049] 本開示は、本明細書に記載されるVHドメイン、VH CDR、VLドメイン及びVL CDRの変異体(誘導体を含む)を含むか、或いはそれらからなる抗体又はその断片を提供し、これらの抗体は、チカグレロル又はその誘導体若しくは代謝産物に免疫特異的に結合する。当業者に知られている標準的な技術を使用して、本開示の分子をコードするヌクレオチド配列に、例えば、アミノ酸置換を生じる部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発を含む変異を導入することができる。好ましくは、変異体(誘導体を含む)は、参照VHドメイン、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLドメイン、VLCDR1、VLCDR2、又はVLCDR3に対して、50未満のアミノ酸置換、40未満のアミノ酸置換、30未満のアミノ酸置換、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換、又は2未満のアミノ酸置換をコードする。特定の実施形態では、変異体はVHCDR3の置換をコードする。好ましい実施形態では、変異体は、1つ以上の予測される非必須アミノ酸残基に保存的アミノ酸置換を有する。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の電荷を持つ側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の電荷を持つ側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。或いは、変異は、例えば、飽和変異誘発によって、コード配列の全部又は一部に沿って無作為に導入され得、及び得られた変異体は、活性(例えば、チカグレロル又はその誘導体又は代謝産物に結合する能力)を保持する変異体を同定するために、生物学的活性についてスクリーニングすることができる。変異誘発に続いて、コードされたタンパク質をルーチン的に発現させることができ、コードされたタンパク質の機能的及び/又は生物学的活性(例えば、チカグレロル又はその誘導体若しくは代謝産物に免疫特異的に結合する能力)を、本明細書に記載の技術を使用して、又は当該技術分野で知られるルーチン的な改変技術によって決定することができる。
【0036】
[0050] 別の実施形態では、チカグレロル、誘導体、又はその代謝産物に免疫特異的に結合する本開示の抗体又はその断片は、VLドメインのいずれか1つに対し少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、又はそれからなる。別の実施形態では、チカグレロル、誘導体、又はその代謝産物に免疫特異的に結合する本開示の抗体は、VL CDRのいずれか1つに対し少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、又はそれからなる。別の実施形態では、チカグレロル、誘導体、又はその代謝産物に免疫特異的に結合する本開示の抗体は、VL CDR3のいずれか1つに対し少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、又はそれからなる。これらの抗体をコードする核酸分子もまた、本開示に包含される。
【0037】
[0051] 別の実施形態では、チカグレロル、誘導体、又はその代謝産物に免疫特異的に結合する本開示の抗体又はその断片は、VHドメインのいずれか1つに対し少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、又はそれからなる。別の実施形態では、チカグレロル、誘導体、又はその代謝産物に免疫特異的に結合する本開示の抗体は、VH CDRのいずれか1つに対し少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、又はそれからなる。別の実施形態では、チカグレロル、誘導体、又はその代謝産物に免疫特異的に結合する本開示の抗体は、VH CDR3のいずれか1つに対し少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、又はそれからなる。これらの抗体をコードする核酸分子もまた、本開示に包含される。
【0038】
[0052] PB2452は、チカグレロル及びTAMに特異的に結合する組換えヒトIgG1λモノクローナルFab抗体断片である。PB2452は、可変重鎖又は可変軽鎖の相補性決定領域3中のアミノ酸を無作為化し、続いてアフィニティー選択及びスクリーニングすることによって作製したライブラリーから、ファージディスプレイを用いてヒト抗チカグレロル抗体を最適化することによって得られた。米国特許出願公開第2016/0130366号を参照されたい。この文献は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。PB2452は大腸菌(E.coli)細胞において産生され、大腸菌(E.coli)細胞を、4段階クロマトグラフィープロセスを用いて精製される。
【0039】
[0053] いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、チカグレロルに結合し、チカグレロル及びTAMの抗血小板凝集活性を中和し、その結果として、チカグレロル及びTAMの存在下でADP誘導性血小板凝集を回復させる。
【0040】
[0054] いくつかの実施形態では、対象における抗体又はその断片の終末相半減期は、チカグレロル及びTAMの終末相半減期とほぼ同じである。いくつかの実施形態では、抗体の終末相半減期は約4~24時間(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24時間)である。いくつかの実施形態では、終末相半減期は約4~12時間(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11又は12時間)である。いくつかの実施形態では、対象における終末相半減期は約6~9時間である。いくつかの実施形態では、対象における終末相半減期は約6~7時間である。いくつかの実施形態では、終末相半減期は約6.9時間である。
【0041】
[0055] いくつかの実施形態では、対象における抗体又はその断片の分布相半減期は、チカグレロル及びTAMの分布相半減期とほぼ同じである。いくつかの実施形態では、分布相半減期は約0.1~2時間(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9又は2時間)である。いくつかの実施形態では、分布相半減期は約0.1~1時間(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又は1.0時間)である。いくつかの実施形態では、分布相半減期は約0.89時間である。
【0042】
[0056] いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、活性の迅速な開始を提供する。例えば、実施形態において、抗体の開始までの時間、又はチカグレロル及びTAM媒介血小板抑制を中和する時間は、約5~120分、又は約5~60分である。いくつかの実施形態では、開始までの時間は60分未満である。いくつかの実施形態では、開始までの時間は約30分である。いくつかの実施形態では、開始までの時間は約30分未満である。いくつかの実施形態では、開始までの時間は約10分未満である。いくつかの実施形態では、開始までの時間は約5分未満である。
【0043】
[0057] いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、チカグレロル及びTAM活性の持続的な阻害を提供する。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片によるチカグレロル及びTAM活性の阻害は、約2~約48時間(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47又は48時間)持続する。いくつかの実施形態では、チカグレロル及びTAM活性の持続的な阻害は、用量依存性である。いくつかの実施形態では、チカグレロル及びTAM活性の持続的な抑制は、IV注入前のボーラスで投与される用量に依存する。いくつかの実施形態では、チカグレロル及びTAM活性の持続的な抑制は、IV注入で投与される用量に依存する。
【0044】
[0058] いくつかの実施形態では、本開示の抗体又はその断片は、チカグレロル及びTAM活性の迅速な阻害(例えば、投与の5分以内)及び持続的な阻害(例えば、24又は48時間まで)の両方を示す。
【0045】
[0059] いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、最後のチカグレロル投与の直後に、それを必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、最後のチカグレロル投与から約1時間~120時間以内に、それを必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、最後のチカグレロル投与から約1時間~72時間以内に、それを必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、約1時間~24時間(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24時間)以内に、それを必要とする対象に投与される。
【0046】
[0060] いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、例えば、抗体を投与された対象が処方されたチカグレロル療法を再開し得るように、活性の迅速な消失を提供するPK/PDプロファイルを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体を(例えば、i.v.注入によって)投与された対象は、抗体の投与後6時間以内にチカグレロル療法を受けるか、又は再開し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体又はその断片を(例えば、i.v.注入によって)投与された対象は、抗体の投与後12時間以内にチカグレロル療法を受けるか、又は再開し得る。いくつかの実施形態では、本明細書中に開示される抗体を(例えば、i.v.注入によって)投与された対象は、抗体の投与後24時間以内にチカグレロル療法を受けるか、又は再開し得る。
【0047】
PB2452活性
[0061] 理論に束縛されるものではないが、PB2452はP2Y12受容体に対するチカグレロルの親和性よりも100倍強い親和性でチカグレロルに結合する。この高い親和性によって、PB2452は遊離チカグレロルに結合することが可能になり、チカグレロルの作用の迅速な逆転及び血小板活性の回復をもたらす。
【0048】
[0062] チカグレロル開発の化学的出発点はアデノシン三リン酸(ATP)であり、チカグレロルはアデノシン様コアを保持している。チカグレロル及びチカグレロル活性代謝産物(TAM)に対するPB2452の特異性を確認するため、ATP、ADP、及びアデノシンへの結合を評価した。PB2452特異性をさらに確認するために、市販の薬物の構造データベースを、チカグレロルと構造的類似性を有する分子について調べた。このインシリコ解析から、12種の化合物のパネルを選択した(フェノフィブラート、ニルバジピン、シロスタゾール、ブクラデシン、レガデノソン、シクロチアジド、シフルトリン、ロバスタチン、リネゾリド、シンバスタチン、カングレロール及びパントプラゾール)。PB2452の選択性は、ビオチン化チカグレロルへのPB2452の競合結合によって決定した。ビオチン化チカグレロルへのPB2452結合の阻害は、ATPでも、ADPでも、アデノシンでも、12の構造的に関連する化合物でも認められなかった。したがって、PB2452は、チカグレロル及びTAMに対して高い親和性と選択性で結合する。
【0049】
[0063] いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片は、チカグレロル又はTAM活性を逆転し、予防し、阻害し、又は低下させる。いくつかの実施形態では、このチカグレロル又はTAMの活性は、ADP誘発血小板凝集の減少及び/又はP2Y12受容体への結合から選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片の投与は、ADP誘発血小板凝集及び/又はP2Y12受容体への結合を回復させる。いくつかの実施形態では、ADP誘発血小板凝集及び/又はP2Y12受容体への結合を回復させる抗チカグレロル抗体は、PB2452である。米国特許出願公開第2016/0130366号を参照されたい。この文献は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
治療方法
[0064] いくつかの態様では、本開示は、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、チカグレロル又はTAM活性を逆転し、阻害し、低下させ、又は予防する方法を提供する。チカグレロル又はTAM活性の逆転、阻害、低下、又は予防は、例えば、血液サンプル中の遊離又は全チカグレロルを測定することを含む、当該技術分野で知られる任意の方法によって測定され得る。
【0051】
[0065] いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の投与は、血小板凝集能を回復させる。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の投与は、P2Y12受容体へのチカグレロル又はTAMの結合を阻害する。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片は、PB2452である。
【0052】
[0066] いくつかの態様では、本開示は、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、血小板凝集能を回復させる方法を提供する。いくつかの態様では、本開示は、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、チカグレロル投与患者における失血を減少させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物の投与により患者のチカグレロル関連出血が抑制される。
【0053】
[0067] いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与により、患者の身体からチカグレロル及び/又はTAMが除去される。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与により、患者の血液中のチカグレロル及び/又はTAMが減少する。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与により、チカグレロル及び/又はTAMのベースライン量と比較して、患者の血液中のチカグレロルの量が約100%~約5%減少する。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与により、チカグレロル及び/又はTAMのベースライン量と比較して、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%又は約5%、患者の血清中のチカグレロルの量が減少する。
【0054】
[0068] いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与により、患者の身体中の遊離チカグレロル及び/又はTAMの量が減少する。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与により、患者の血液中の遊離チカグレロル及び/又はTAMの量が減少する。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与により、チカグレロル及び/又はTAMのベースライン量と比較して、患者の血液中の遊離チカグレロル及び/又はTAMの量が約100%~約15%減少する。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与により、チカグレロル及び/又はTAMのベースライン量と比較して、患者の血液中の遊離チカグレロル及び/又はTAMの量が、約99.9%、約99.8%、約99.7%、約99.6%、約99.5%、約99.4%、約99.3%、約99.2%、約99.1%、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%又は約5%減少する。いくつかの実施形態では、チカグレロル又はTAM活性は、約1時間~約2日間、逆転、阻害、低下又は予防される。いくつかの実施形態では、チカグレロル又はTAMの活性は、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約36時間又は約48時間にわたって逆転、阻害、低下又は予防される。いくつかの実施形態では、この逆転、阻害、低下又は予防は、本明細書に開示される時点で観察される。
【0055】
[0069] いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物の投与により、対象におけるチカグレロル又はTAMの活性が、未投与の対象と比較して、逆転、阻害、低下又は予防される。いくつかの実施形態では、チカグレロル又はTAMの活性は、未投与の対象における活性と比較して、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%、又は約100%、逆転、阻害、低下又は予防される。いくつかの実施形態では、この逆転、阻害、低下又は予防は、本明細書中に開示される時点で観察される。
【0056】
[0070] いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物の投与により、対象の血小板凝集の抑制が、チカグレロルに対する処置がなされていない対象と比較して、逆転する。いくつかの実施形態では、血小板凝集抑制率は、チカグレロルに対する処置がなされていない対象における血小板凝集抑制率と比較して、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%、又は約100%逆転する。いくつかの実施形態では、この血小板凝集抑制率の逆転は、本明細書中に開示される時点で観察される。
【0057】
[0071] いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の対象への投与により、患者の血液における血小板凝集能が回復する。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与により、正常な血小板凝集のベースラインレベルと比較して、患者の血液における血小板凝集能が約100%~約15%まで回復する。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与により、患者の血液における血小板凝集能が、正常な血小板凝集能のベースラインレベルの約100%、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%又は約5%まで回復する。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与により、正常な血小板凝集能のベースラインレベルと比較して、患者の血液における血小板凝集能が、約80%以上にまで回復する。いくつかの実施形態では、血小板凝集能は、投与後約1時間~約2日で、正常な血小板凝集能のベースラインレベルの少なくとも80%まで回復する。いくつかの実施形態では、血小板凝集能は、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約36時間又は約48時間で回復する。いくつかの実施形態では、この回復は、本明細書中に開示される時点で観察される。
【0058】
[0072] いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の対象への投与は、VerifyNow P2Y12(VerifyNow PRUTestとしても知られる)アッセイ法(Accriva/Instrumentation Laboratory、San Diego CA)により測定される患者の血液の血小板凝集能を回復させる。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与は、患者の血液の血小板凝集能を、VerifyNowによる測定で、約50~約250の血小板反応度ユニット(PRU)にまで回復させる。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与は、患者の血液の血小板凝集能を、VerifyNowによる測定で、約250血小板反応度ユニット(PRU)にまで、約240PRUにまで、約230PRUにまで、約220PRUにまで、約210PRUにまで、約200PRUにまで、約190PRUにまで、約180PRUにまで、約170PRUにまで、約160PRUにまで、約150PRUにまで、約140PUにまで、約130PRUにまで、約120PRUにまで、約110PRUにまで、約100PRUにまで、約90PRUにまで、約80PRUにまで、約70PRUにまで、約60PRUにまで、約50PRUにまで回復させる。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与は、患者の血液の血小板凝集能を少なくとも180PRUにまで回復させる。いくつかの実施形態では、血小板凝集能は、投与後約1時間~約2日で少なくとも180PRUにまで回復する。いくつかの実施形態では、血小板凝集能は、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約36時間又は約48時間で、少なくとも180PRUにまで回復する。いくつかの実施形態では、この回復は、本明細書中に開示される時点で観察される。
【0059】
[0073] いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の対象への投与は、血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)法により測定される患者の血液の血小板凝集能を回復させる。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与は、患者の血液の血小板凝集能を、VASPによる測定で、約50~約150%のベースライン血小板反応性指標(PRI)にまで回復させる。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の必要とする対象への投与は、患者の血液の血小板凝集能を、VASPによる測定で、約150%のベースライン血小板反応性指数(PRI)にまで、約140%のベースラインPRIにまで、約130%のベースラインPRIにまで、約120%のベースラインPRIにまで、約110%のベースラインPRIにまで、約100%のベースラインPRIにまで、約90%のベースラインPRIにまで、約80%のベースラインPRIにまで、約70%のベースラインPRIにまで、約60%のベースラインPRIにまで、約50%のベースラインPRIにまで回復させる。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片を含む医薬組成物の、必要とする対象への投与は、患者の血液の血小板凝集能を少なくとも100%のベースラインPRIにまで回復させる。いくつかの実施形態では、血小板凝集能は、投与後約1時間~約2日で少なくとも100%のベースラインPRIにまで回復する。いくつかの実施形態では、血小板凝集能は、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約36時間又は約48時間で、少なくとも100%のベースラインPRIにまで回復する。いくつかの実施形態では、この回復は、本明細書中に開示される時点で観察される。
【0060】
患者集団
[0074] 本開示の抗チカグレロル抗体又はその断片は、必要とするいかなる患者にも投与することができる。いくつかの実施形態では、患者は急性冠症候群(ACS)のリスクがあるか、又はそれと診断されている。いくつかの実施形態では、患者は心筋梗塞(MI)のリスクがあるか、又はそれと診断されている。いくつかの実施形態では、患者はMIの既往がある。いくつかの実施形態では、患者は、チカグレロルを投与されているか、又は投与されたことがある。いくつかの実施形態では、患者は、アスピリンなどの別の抗血小板療法と共にチカグレロルを投与されているか、又は投与されたことがある。
【0061】
[0075] いくつかの実施形態では、患者は、不安定狭心症、安定虚血性心疾患、鎌状赤血球症(小児患者を含む)、心房細動、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、虚血性脳卒中、1つ以上の冠動脈ステント、頸動脈ステント、頭蓋内動脈瘤後のステント、又は血液透析のために作成された動静脈瘻を有する。
【0062】
[0076] いくつかの実施形態では、患者は2型糖尿病を有する。いくつかの実施形態では、患者は2型糖尿病及び冠疾患を有する。いくつかの実施形態では、患者は、経皮的冠動脈形成術の既往と共に2型糖尿病を有する。
【0063】
[0077] いくつかの実施形態では、患者は、チカグレロル治療に関連する出血のより高いリスク又は出血率の上昇がある。いくつかの実施形態では、このチカグレロル関連出血は消化器の出血である。いくつかの実施形態では、このチカグレロル関連出血は頭蓋内出血(intracranial bleeding)又は頭蓋内出血(intracranial hemorrhage)(ICH)である。いくつかの実施形態では、このチカグレロル関連出血は交通事故などの外傷性損傷の結果である。いくつかの実施形態では、チカグレロル関連出血は大出血として分類される。大出血は、治療医によって逆転が必要であると判断される出血イベントが含まれる。これには、生命を脅かす出血イベント、臨床的に重大な障害に至る可能性のある出血イベント、出血を制御する手術を要する出血イベント、血液製剤による治療を要する出血イベント、又は臨床的に重要なヘモグロビン値の低下と関連する急性出血が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
[0078] いくつかの実施形態では、患者は緊急の手術又は介入を必要とする。緊急の手術又は介入とは、5日間チカグレロルを投与しないことが医学的に望ましくない状況において、出血リスク又は周術期出血に関連する外科手術又は医療処置を必要とすることと定義される。緊急手術を必要とすることには、以下の臨床状況のいずれかにある患者が含まれるが、これらに限定されない:出血の重大なリスクと関連することが知られている手術又は処置(冠動脈バイパス手術など)を受けている;出血が慎重に制御されない場合に有害な外科的転帰を有する可能性のある手術又は処置(神経学的、眼科的、又は人工関節置換手術など)を受けている;重大な周術期出血が発生した場合にショック、心筋梗塞又は脳卒中などの周術期イベントを経験するリスクがある(特に、高齢患者又は併存症を有する患者);抗血小板薬2剤併用療法を術前に差し控えた場合に血栓症のリスクが高い(最近冠動脈ステント装着を受けた患者など)。
【0065】
[0079] いくつかの実施形態では、患者は、抗チカグレロル抗体又はその断片の投与前に出血が始まっている。いくつかの実施形態では、患者は、抗チカグレロル抗体又はその断片の投与前に出血が始まっていない。いくつかの実施形態では、患者は手術を必要とし、したがって、チカグレロル治療による出血の危険性が増大している。いくつかの実施形態では、手術は緊急(urgent)手術である。いくつかの実施形態では、手術は緊急(emergent)手術である。
【0066】
[0080] いくつかの実施形態では、患者は成人である。いくつかの実施形態では、30~100歳以上の成人患者。いくつかの実施形態では、成人患者は、40歳超、50歳超、60歳超、70歳超、80歳超又は90歳超である。いくつかの実施形態では、成人患者は50~64歳である。いくつかの実施形態では、成人患者は65~75歳である。いくつかの実施形態では、患者は高齢(例えば、50~64歳(両端を含む))と定義される。いくつかの実施形態では、患者は老齢(例えば、65歳を超える、又は65~80歳(両端を含む))と定義される。いくつかの実施形態では、高齢又は老齢の患者がチカグレロル及びアスピリンで前処置されている。いくつかの実施形態では、高齢又は老齢の患者は、より若い被験者と比較して、チカグレロルへのより高い曝露及び/又はチカグレロルへのより低い反応を経験する。
【0067】
[0081] いくつかの実施形態では、患者は若年成人である。いくつかの実施形態では、18~30歳以上の若年成人患者。いくつかの実施形態では、患者は18歳未満の小児患者である。いくつかの実施形態では、患者は2歳未満の小児患者である。いくつかの実施形態では、小児患者又は若年成人患者は鎌状赤血球症を有する。
【0068】
医薬組成物及び投与
[0082] 本開示は、抗チカグレロル抗体又はその断片を、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤及び/又は希釈剤と共に含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片は、PB2452である。
【0069】
[0083] 本開示の製剤は、当該技術分野で知られる任意の適切な賦形剤を含むことができる。例示的な賦形剤としては、ヒスチジン、グリシン又はアルギニンなどのアミノ酸;グリセロール;スクロースなどの糖;ポリソルベート20及びポリソルベート80などの界面活性剤;クエン酸;クエン酸ナトリウム;酸化防止剤;ナトリウム、カリウム及びカルシウムなどのアルカリ土類金属塩を含む塩;塩化物及びリン酸塩などの対イオン;糖アルコール(例えば、マンニトール);防腐剤;糖アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール);並びに緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム二塩基性、リン酸ナトリウム一塩基性、リン酸ナトリウム及びリン酸カリウムが挙げられる。
【0070】
[0084] 特定の実施形態では、製剤は、約5mM~約100mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液を含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は、約50mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液、約40mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液、約30mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液、約25mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液、約20mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液、又は約15mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液を含む。
【0071】
[0085] 特定の実施形態では、製剤は、約100mM~約1Mのスクロースを含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は、約150mMのスクロース、約200mMのスクロース、約250mMのスクロース、約290mMのスクロース、約300mMのスクロース、約350mMのスクロース、約400mMのスクロース、又は約500mMのスクロースを含み得る。
【0072】
[0086] 特定の実施形態では、製剤は、界面活性剤を含み得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤はポリソルベート80である。いくつかの実施形態では、製剤は、約0.01%w/v~約1.00%w/vのポリソルベート80を含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は、約0.01%w/v、約0.02%w/v、約0.03%w/v、約0.05%w/v、約0.06%w/v、約0.07%w/v、約0.08%w/v、約0.09%w/v又は約0.1%w/vのポリソルベート80を含み得る。
【0073】
[0087] 特定の実施形態では、製剤は、約10mg/mL~約200mg/mLの抗チカグレロル抗体又はその断片を含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は、約10mg/mL、約20mg/mL、約30mg/mL、約40mg/mL、約50mg/mL、約60mg/mL、約70mg/mL、約80mg/mL、約90mg/ml、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL又は約150mg/mLの抗チカグレロル抗体又はその断片を含み得る。
【0074】
[0088] いくつかの実施形態では、製剤は、100mg/mLの抗チカグレロル抗体又はその断片、25mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液、290mMのスクロース、及び0.05%(w/v)のポリソルベート80(pH6.0)を含む。
【0075】
[0089] 製剤は、冷凍、冷蔵、又は室温で保存することができる。貯蔵条件は、約-10℃未満、又は約-20℃未満、又は約-40℃未満、又は約-70℃未満など、氷点下であり得る。貯蔵条件は一般に、室温未満、例えば、約32℃未満、又は約30℃未満、又は約27℃未満、又は約25℃未満、又は約20℃未満、又は約15℃未満である。いくつかの実施形態では、製剤は、2℃~8℃で保存される。例えば、製剤は、血液と等張であってもよいし、生理学的条件を模倣するイオン強度を有してもよい。
【0076】
[0090] いくつかの実施形態では、製剤は、生理学的pHで製剤化される。いくつかの実施形態では、製剤は、約5.5~約8.5の範囲のpHで製剤化される。いくつかの実施形態では、製剤は、約6.0~約8.0の範囲のpHで製剤化される。いくつかの実施形態では、製剤は、約6.5~約7.5の範囲のpHで製剤化される。いくつかの実施形態では、製剤は、7.5のpHで製剤化される。いくつかの実施形態では、より低いpHを有する製剤は、より高いpHの製剤と比較して改善された製剤安定性を示す。いくつかの実施形態では、より高いpHを有する製剤は、より低いpHの製剤と比較して改善された製剤安定性を示す。
【0077】
[0091] いくつかの実施形態では、製剤は、貯蔵条件で安定である。安定性は、当該技術分野における任意の適切な手段を用いて測定することができる。一般に、安定な製剤は、分解生成物又は不純物の増加が5%未満の製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、貯蔵条件で少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、又は少なくとも約2年以上安定である。いくつかの実施形態では、製剤は、25℃で少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、又は少なくとも約1年以上安定である。
【0078】
[0092] いくつかの態様では、製剤は、凍結乾燥製品である。いくつかの実施形態では、製剤は、約1g~約36gの抗チカグレロル抗体又はその断片を含む凍結乾燥製品である。いくつかの実施形態では、製剤は、約6gの抗チカグレロル抗体又はその断片を含む凍結乾燥製品である。いくつかの態様では、製品は、注射用水で再構成した後、静脈内(iv)注入用の0.9%生理食塩水にさらに希釈させることができる。いくつかの実施形態では、製品は凍結乾燥されず、静脈内(iv)注入用の0.9%生理食塩水にさらに希釈される。
【0079】
[0093] 一態様では、本開示の製剤は、エンドトキシン及び/又は関連する発熱物質を実質的に含まない発熱物質非含有製剤である。エンドトキシンには、微生物の内部に閉じ込められており、微生物が破壊されるか又は死滅したときのみ放出される毒素が含まれる。発熱性物質にはまた、細菌及び他の微生物の外膜由来の発熱性で熱に安定な物質(糖タンパク質)が含まれる。これらの物質はいずれも、ヒトに投与された場合、発熱、低血圧及びショックを引き起こす可能性がある。潜在的な有害作用のために、少量のエンドトキシンであっても静脈内投与医薬溶液から除去されなければならない。アメリカ食品医薬品局(Food & Drug Administration)(「FDA」)は、静脈内薬物適用で、上限を、1時間に、体重1キログラム当たり、5エンドトキシンユニット(EU)/用量に設定している(The United States Pharmacopeial Convention, Pharmacopeial Forum 26 (1):223 (2000))。いくつかの特定の態様では、組成物中のエンドトキシン及び発熱物質レベルは、約1EU/mg未満、又は約0.1EU/mg未満、又は約0.01EU/mg未満、又は約0.001EU/mg未満である。いくつかの実施形態では、組成物中のエンドトキシン及び発熱物質レベルは、0.0138EU/mg以下である。
【0080】
[0094] インビボ投与に使用する場合、本開示の製剤は無菌でなければならない。本開示の製剤は、滅菌濾過、放射線などを含む様々な滅菌方法によって滅菌することができる。一態様では、製剤は、予め滅菌された0.22ミクロンフィルターで濾過滅菌される。注射用の滅菌組成物は、“Remington: The Science & Practice of Pharmacy”, 21sted., Lippincott Williams & Wilkins, (2005)に記載されているように、従来の医薬実務にしたがって製剤化することができる。
【0081】
[0095] いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、製剤は、約5分~48時間にわたって静脈内投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、任意の適切な容量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、約30mL~約2Lの総容量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、約30mL、約40mL、約50mL、約100mL、約125mL、約150mL、約175mL、約200mL、約225mL、約250mL、約275mL、約300mL、約400mL、約500mL、約1L、約1.5L、又は約2Lの総容量で投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、約250mLの総容量で約30分かけて静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、最初にボーラスとして投与され、続いてより長時間の注入が行われる。いくつかの実施形態では、ボーラス後のより長時間の注入は約4時間である。いくつかの実施形態では、ボーラス後のより長時間の注入は約8時間である。いくつかの実施形態では、ボーラス後のより長時間の注入は約12時間である。いくつかの実施形態では、ボーラス後のより長時間の注入は約18時間である。いくつかの実施形態では、ボーラス後のより長時間の注入は約24時間である。いくつかの実施形態では、ボーラス後のより長時間の注入は約36時間である。
【0082】
[0096] いくつかの実施形態では、製剤中の抗チカグレロル抗体又はその断片の濃度は、単回IV注入で0.4mg/mLから72mg/mLまでの間で変動し、0.1g、0.3g、1.0g、3g、9g、180g、24g、30g、36g若しくは48gの用量、又は9~48gの間の中間用量で、30分から12時間かけて250mLが送達される。場合によっては、治療組成物の一部は、注入の最初の5~20分間に、より速い速度(ボーラスに相当)で(最大約12gまで)注入される。
【0083】
[0097] いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片は、1本以上のガラスバイアルに保存され、その後、投与用の輸液バッグに移される。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片は、1本以上のガラス製の薬瓶で保存され、その後、シリンジポンプを使用して、投与用のシリンジに移される。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片は、シリンジポンプを使用して、投与用のプレフィルドシリンジ中に保存される。いくつかの実施形態では、抗チカグレロル抗体又はその断片は、Baxter Galaxy Liquid Premix System又はBaxter Galaxy Frozen Premix SystemなどのIV容器に保存される。
【0084】
[0098] いくつかの実施形態では、抗体又はその断片は、チカグレロル活性の迅速で且つ長時間持続する逆転をもたらすために投与される。いくつかの実施形態では、注入速度は注入全般にわたって一定である。いくつかの実施形態では、注入速度は注入時間にわたって変化する。いくつかの実施形態では、より多量の医薬組成物が注入の最初に投与され、その量は注入の残りの時間、漸減される。
【0085】
[0099] いくつかの実施形態では、注入は約5分~約36時間持続する。いくつかの実施形態では、注入レジメンは、約1時間~約24時間にわたって一定の注入速度で約3g~約36gを注入、約3gを約5分間で注入した後、約15gを約8時間で注入、約6gを約15分間で注入し、続いて約6gを約3時間で注入した後、約6gを約8.75時間で注入、約6gを約15分で注入し、続いて約6gを約4時間で注入した後、約6gを約12時間で注入、約6gを約10分間で注入し、続いて約6gを約3時間で注入した後、約6gを約13時間で注入、約12gを約10分間で注入し、続いて約12gを約6時間で注入した後、約12gを約18時間で注入、から選択されるが、これらに限定されない。
【0086】
[00100] いくつかの実施形態では、チカグレロル活性の迅速な逆転が所望される場合(例えば、患者に激しい出血が続いている間)、本開示の抗体又はその断片は、以下にしたがって投与され得る:
[00101] 1.約5分~約15分かけて約3g~約6g注入し、続いて約1時間~約3時間かけて約3g~約6g注入した後、約3時間~約8時間かけて約3g~約6g注入する。
[00102] 2.約5分~約15分かけて約3g~約6g注入し、続いて約1時間~約3時間かけて約6g~約12g注入した後、約3時間~約8時間かけて約6g~約12g注入する。
[00103] 3.約5分~約15分かけて約3g~約6g注入し、続いて約1時間~約3時間かけて約6g~約12g注入した後、最大で約24時間~約48時間にわたって約1g/時で注入する。
[00104] 4.約5~約30分かけて約9g注入し、続いて約3時間~約8時間にわたって約1g/時~約3g/時で注入する。
[00105] 5.約1時間~約4時間かけて約9g~約24g注入する。
【0087】
[00106] いくつかの実施形態では、患者が手術を受けようとしている場合、本開示の抗体又はその断片は、以下にしたがって投与され得る:
[00107] 1.約5分~約30分かけて約3g~約6g注入し、続いて約3時間~約6時間かけて約3g~約6g注入した後、最大で約12時間~約24時間にわたって約1g/時で注入する。
[00108] 2.約5分~約15分かけて約3g~約6g注入し、続いて約1時間~約3時間かけて約3g~約6g注入した後、約12時間~約24時間にわたって約1g/時で注入する。
[00109] 3.約1時間~約4時間かけて約9g~約24g注入する。
【0088】
[00110] いくつかの実施形態では、患者がチカグレロル曝露に影響を及ぼす1つ以上のさらなる薬物、例えば、シトクロムP450アイソフォーム3A(CYP3A)の活性を阻害し、チカグレロルへの曝露の増加をもたらす薬物を摂取している場合、又は患者が過剰のチカグレロルを摂取している場合、本開示の抗体又はその断片は、以下にしたがって投与され得る:
[00111] 1.約5分~約30分かけて約6g~約12g注入し、続いて約3時間~約6時間かけて約6g~約12g注入した後、最大で約12時間~約24時間かけて約6g~約12g注入する。
[00112] 2.約5分~約15分かけて約6g~約12g注入し、続いて約1時間~約3時間かけて約6g~約12g注入した後、約12時間~約24時間にわたって約0.5~1g/時で注入する。
[00113] 3.約3時間~約6時間かけて約18g~約36g注入する。
【0089】
[00114] 製剤は、好都合なことに、単位剤形で提供することができ、薬学分野で知られた任意の方法で調製することができる。本開示の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対し毒性がなく、特定の患者、組成物、及び投与方法で所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量(例えば、「治療有効量」)が得られるように変更することができる。選択される投与量レベルは、使用される特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度、治療の期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康及び以前の病歴、並びに医学分野でよく知られる周知の同様の因子を含む種々の薬物動態因子に依存する。
【0090】
[00115] 好適な用量は、約1000mg~約36g、又は約9g~約24g、又は約9g~約15g、又は約1g~約3gの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約1000mg、約3g、約9g、約18g、約24g、約30g、約36g、又は約48gであり得る。いくつかの実施形態では、患者に投与される抗チカグレロル抗体又はその断片の量は、患者が投与されたチカグレロルの量に依存する。いくつかの実施形態では、患者に投与される抗チカグレロル抗体又はその断片の量は、患者の体重に依存する。
【0091】
[00116] 投与される抗チカグレロル抗体又はその断片の用量は、シミュレートされた患者集団の95%においてチカグレロルに誘発された血小板脱凝集の逆転を引き起こす用量であり、逆転は、ベースラインの10%未満への血小板脱凝集の逆転であると解釈される。
【0092】
[00117] いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも180mgのチカグレロルを投与されている。いくつかの実施形態では、患者は少なくとも180mgのチカグレロルの負荷投与量を投与されており、その後、90mgが1日2回投与されている。いくつかの実施形態では、患者は、抗チカグレロル抗体又はその断片の投与の少なくとも3日前に、チカグレロルを投与されている。いくつかの実施形態では、患者は、抗チカグレロル抗体又はその断片の投与と同時にチカグレロルを投与される。いくつかの実施形態では、患者はチカグレロルを過剰に投与されている。
【0093】
[00118] 本開示は同様に、診断及び研究の使用に適した製剤も作製され得ることを意図していることに留意されたい。そのような製剤中の活性剤の濃度、並びに賦形剤及び/又は発熱物質の有無は、特定の用途及び意図する用途に基づいて選択することができる。
【0094】
[00119] 「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」などの単数形が、便宜上、本出願全体を通して使用されているが、文脈又は明示的な記述が別段の指示をしている場合を除いて、これらの単数形は複数形を含むことが意図されていることを理解されたい。全ての数値範囲は、数値範囲内の全ての数値点を含むと理解されるべきであり、どの数値点も個々に列挙していると解釈されるべきである。同じ成分又は特性に向けられた全ての範囲の端点は包括的であり、独立して組み合わせ可能であることが意図されている。
【0095】
[00120] 参照数値指示と関連して使用されている場合の「約」という用語は、参照数値指示にその参照数値指示の最大10%まで加算又は減算されることを意味する。例えば、「約50」という表現は、45~55の範囲をカバーする。
【0096】
[00121] 本明細書で使用される場合、「含む(include)」という用語及びその変形は、非限定的であることが意図されており、したがって、リスト中の項目の記述は、本技術の材料、組成物、デバイス及び方法においても有用であり得る他の同様の項目を排除するものではない。同様に、「~できる(can)」及び「~し得る(may)」という用語、並びにそれらの変形は、非限定的であることが意図されており、したがって、実施形態が特定の要素又は特徴を含むことができる、又は含み得るという記述は、それらの要素又は特徴を含まない本技術の他の実施形態を排除しない。本開示を説明し、特許請求するために、本明細書で使用されている、含む(including)、含有する(containing)、又は有する(having)などの用語の同義語として「含む(comprising)」という開放型用語が使用されているが、本技術、又はその実施形態は、代わりに、列挙された成分「からなる(consisting of)」、又は列挙された成分「から実質的になる(consisting essentially of)」などのより限定的な用語を使用して記載されてもよい。
【0097】
[00122] 別段の定義がない限り、本明細書中の全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料はどれも、本開示の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料が本明細書に記載される。
【0098】
本開示の非限定的実施形態の例
[00123] 本明細書に開示される本主題の実施形態は、単独で、又は1つ以上の他の実施形態と組み合わせて有益であり得る。前述の説明を限定することなく、本開示の特定の非限定的な実施形態(番号1~42)を以下に示す。本開示を読めば当業者には明らかであろうように、個々に番号が付された実施形態のそれぞれは、その前又はその後の個々に番号が付された実施形態のいずれかと使用又は組み合わせることができる。これは、実施形態のそのような組み合わせの全てをサポートすることを意図したものであり、以下に明示的に提供される実施形態の組み合わせに限定されるものではない。
【0099】
[00124] 実施形態1.チカグレロルに関連した出血又は前記出血のリスクの逆転を、それを必要とする患者に施す方法であって、チカグレロル((1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール)又はその代謝産物若しくは誘導体に結合する抗体又はその断片を含む医薬組成物の有効量を含む組成物を前記患者に投与することを含む方法。
【0100】
[00125] 実施形態2.抗体又はその断片は、
a)配列番号53(VH CDR1)、配列番号54(VH CDR2)、配列番号55(VH CDR3)、配列番号58(VL CDR1)、配列番号59(VL CDR2)及び配列番号60(VL CDR3);
b)配列番号63(VH CDR1)、配列番号64(VH CDR2)、配列番号65(VH CDR3)、配列番号68(VL CDR1)、配列番号69(VL CDR2)及び配列番号70(VL CDR3);並びに
c)配列番号73(VH CDR1)、配列番号74(VH CDR2)、配列番号75(VH CDR3)、配列番号78(VL CDR1)、配列番号79(VL CDR2)及び配列番号80(VL CDR3)
からなる群から選択される相補性決定領域(CDR)の組合せを含む、実施形態1に記載の方法。
【0101】
[00126] 実施形態3.抗体又はその断片は、
[00127] 配列番号52及び配列番号57;配列番号62及び配列番号67;並びに配列番号72及び配列番号77からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)配列及び軽鎖可変領域(VL)配列の組み合わせを含む、実施形態1又は2に記載の方法。
【0102】
[00128] 実施形態4.患者は、抗チカグレロル抗体又はその断片の投与前にチカグレロルを投与されている、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
【0103】
[00129] 実施形態5.抗体又はその断片はFabであり、患者は約1g~約48gの用量が投与される、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
【0104】
[00130] 実施形態6.用量は約9g~約18gのFabである、実施形態5に記載の方法。
【0105】
[00131] 実施形態7.患者は、Fabを約1g、約3g、約9g、約18g、約24g、約30g、約36g又は約48g投与される、実施形態5又は6に記載の方法。
【0106】
[00132] 実施形態8.医薬組成物は患者に静脈内投与される、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
【0107】
[00133] 実施形態9.医薬組成物は、約15分から約36時間かけて静脈内投与される、実施形態8に記載の方法。
【0108】
[00134] 実施形態10.医薬組成物は2つ以上のセグメントで投与される、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
【0109】
[00135] 実施形態11.第1のセグメントはボーラスである、実施形態10に記載の方法。
【0110】
[00136] 実施形態12.セグメントそれぞれの投与速度は異なる、実施形態10又は11に記載の方法。
【0111】
[00137] 実施形態13.セグメントそれぞれの投与速度は、注入の連続するセグメントによって異なる、実施形態10~12のいずれかに記載の方法。
【0112】
[00138] 実施形態14.医薬組成物は3つ以上のセグメントで投与され、セグメントそれぞれの投与速度は、注入の連続するセグメントによって異なる、実施形態10~13のいずれかに記載の方法。
【0113】
[00139] 実施形態15.医薬組成物は、以下のスケジュール:12gを10分かけて注入、続いて12gを6時間かけて注入、続いて12gを18時間かけて注入、で投与される、実施形態5~14のいずれかに記載の方法。
【0114】
[00140] 実施形態16.医薬組成物は、約50mg/mL~約200mg/mLの抗チカグレロル抗体又はその断片、約5mM~約50mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液、約100mM~約300mMのスクロース、及び約0.01%(w/v)~約1.0%(w/v)のポリソルベート80(pH5.5~6.5)を含む、実施形態1~15のいずれかに記載の方法。
【0115】
[00141] 実施形態17.医薬製剤は、100mg/mLの抗チカグレロル抗体又はその断片、25mMのヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩緩衝液、290mMのスクロース、及び0.05%(w/v)のポリソルベート80(pH6.0)を含む、実施形態16に記載の方法。
【0116】
[00142] 実施形態18.医薬製剤は、投与のために生理食塩水で希釈される、実施形態16又は17に記載の方法。
【0117】
[00143] 実施形態19.チカグレロル関連出血は大出血である、実施形態1~18のいずれかに記載の方法。
【0118】
[00144] 実施形態20.大出血は生命を脅かすものであり、臨床的に重大な障害につながる可能性があり、出血を制御するための手術を必要とし、血液製剤による処置を必要とすることを特徴とするか、又は臨床的に重要なヘモグロビンの低下と関連する急性出血である、実施形態19に記載の方法。
【0119】
[00145] 実施形態21.患者は緊急の手術又は介入を必要とする、実施形態1~20のいずれかに記載の方法。
【0120】
[00146] 実施形態22.緊急の手術又は介入は、周術期イベントを経験するリスクと関連した、出血が注意深く制御されない場合に有害手術転帰のある冠動脈バイパス手術、神経外科手術、眼科手術若しくは関節置換手術などの出血の重大なリスク、又は2剤抗血小板療法が術前に行われない場合に血栓症のリスクが高い患者における出血の重大なリスクと関連していることが知られている、実施形態21に記載の方法。
【0121】
[00147] 実施形態23.患者は急性冠症候群(ACS)を発症するリスクがあるか、又はそれと診断されている、実施形態1~22のいずれかに記載の方法。
【0122】
[00148] 実施形態24.患者は、心筋梗塞(MI)、不安定狭心症、安定虚血性心疾患、鎌状赤血球症(小児患者を含む)、心房細動、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、虚血性脳卒中、1つ以上の冠動脈ステント、頸動脈ステント、頭蓋内動脈瘤後のステント、及び血液透析のために作成された動静脈瘻からなる群から選択される疾患を発症するリスクがあるか、又はそれと診断されている、実施形態1~23のいずれかに記載の方法。
【0123】
[00149] 実施形態25.患者は小児患者である、実施形態1~24のいずれかに記載の方法。
【0124】
[00150] 実施形態26.小児患者は18歳未満である、実施形態25に記載の方法。
【0125】
[00151] 実施形態27.小児患者は2歳未満である、実施形態26に記載の方法。
【0126】
[00152] 実施形態28.患者は成人患者である、実施形態1~24のいずれかに記載の方法。
【0127】
[00153] 実施形態29.成人患者は18~64歳(両端を含む)である、実施形態28に記載の方法。
【0128】
[00154] 実施形態30.患者は65歳を超えている、実施形態28に記載の方法。
【0129】
[00155] 実施形態31.患者は65~80歳(両端を含む)である、実施形態30記載の方法。
【0130】
[00156] 実施形態32.患者は、アスピリン(アセチルサリチル酸)を投与されている、実施形態1~31のいずれかに記載の方法。
【0131】
[00157] 実施形態33.抗体又はその断片の投与は、チカグレロル活性を逆転させる、実施形態1~32のいずれかに記載の方法。
【0132】
[00158] 実施形態34.抗体又はその断片の投与は、血小板機能を回復させる、実施形態33に記載の方法。
【0133】
[00159] 実施形態35.抗体又はその断片の投与は、血小板凝集能を回復させる、実施形態34に記載の方法。
【0134】
[00160] 実施形態36.抗体又はその断片の投与は、血小板凝集能をベースラインの少なくとも80%まで回復させる、実施形態35に記載の方法。
【0135】
[00161] 実施形態37.抗体又はその断片の投与は、投与後1分~60分以内に血小板凝集能を回復させる、実施形態35又は36に記載の方法。
【0136】
[00162] 実施形態38.抗体又はその断片の投与は、投与後5分以内に血小板凝集能を回復させる、実施形態37に記載の方法。
【0137】
[00163] 実施形態39.抗体又はその断片の投与は、血小板凝集能の持続的な回復を提供する、実施形態35~38のいずれかに記載の方法。
【0138】
[00164] 実施形態40.血小板凝集能の回復は、投与後少なくとも12時間持続する、実施形態39に記載の方法。
【0139】
[00165] 実施形態41.血小板凝集能の回復は、投与後少なくとも16時間持続する、実施形態40に記載の方法。
【0140】
[00166] 実施形態42.血小板凝集能の回復は、投与後少なくとも24時間持続する、実施形態41に記載の方法。
【0141】
[00167] 以下の非限定的な実施例によって本開示をさらに説明する。
【実施例】
【0142】
実施例
実施例1-健常なボランティアを対象にチカグレロルの前投与の有無におけるPB2452の安全性、忍容性、薬物動態及び薬力学を評価する、第1相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、用量漸増単回投与試験
[00168] 主要目的:1)経口チカグレロルの有無における、PB2452の用量漸増単回静脈内(IV)投与の安全性と忍容性を評価する;2)透過光血小板凝集検査法(LTA)を用いてチカグレロル抗血小板活性に対するPB2452の用量漸増単回投与の効果を評価する。
【0143】
[00169] 副次目的:1)チカグレロルの存在下及び非存在下でのPB2452の漸増用量の薬物動態を測定する;2)PB2452の存在下及び非存在下でのチカグレロル及びその活性代謝産物TAMの薬物動態を測定する;3)VerifyNow(商標)P2Y12アッセイによるP2Y12反応度ユニット(PRU)、及び酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)による血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)リン酸化アッセイによる血小板反応性指標(PRI)を測定することによって、チカグレロル抗血小板活性を逆転させることにおけるPB2452単回IV投与の有効性を評価する;3)チカグレロルの6回目の用量が与えられた場合、PB2452のIV投与の24時間後のチカグレロルの単回経口投与再開の薬物動態及び薬力学を評価する;4)PB2452の免疫原性の可能性を評価する。
【0144】
[00170] 探索的目的:非結合チカグレロル及び非結合TAMの血漿中濃度の薬物動態(PK)プロファイルに対するPB2452の効果を評価する。
【0145】
[00171] 試験デザイン及び方法論:これは、健常な男女被験者に投与した場合のチカグレロル前処置の有無におけるPB2452の安全性、忍容性、薬物動態及び薬力学を評価するための、第1相、ヒト初回、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、用量漸増単回投与、逐次群試験である。プロトコルの内容内の治験薬に関する全ての参考文献は、PB2452又はマッチングプラセボに適用される。
【0146】
[00172] 本試験では、最大10のコホートを対象とし、最大で合計約80例の被験者を対象とする。PB2452の開始用量は100mgとし、その後のコホートの予定用量は300、1000、3,000、9,000、18,000mgとする。他の用量もまた試験され得、18,000mgを超え得る。
【0147】
[00173] この試験は、スクリーニング期間(-45~-4日目)、入院/前処置(-3~-1日目)、施設内処置期間(1~3日目)、及び追跡調査来院(4、7及び28日目[+2日])からなる。被験者には1日目に治験薬をIV投与する。1日目に、選択基準を全て満たし、除外基準のいずれにも該当しない被験者を、全ての処置コホートにおいてPB2452投与群又はプラセボ投与群に3:1の割合で無作為に割り付ける:
【0148】
[00174] コホート1~3:最初のコホート(コホート1)に対しては、健常被験者4例を3:1の比率で実薬群とプラセボ群に無作為に割り付け(3A:1P)、治験薬100mgを30分かけて単回IV投与する。第2のコホート(コホート2)に対しては、健常被験者4例を無作為に割り付け(3A:1P)、治験薬300mgを30分かけて単回IV投与する。第3のコホート(コホート3)に対しては、健常被験者4例を無作為に割り付け(3A:1P)、治験薬1,000mgを30分かけてIV投与する。
【0149】
[00175] コホート4~6:以前に投与されたコホートに安全性上の懸念が生じなかった場合、コホート4~6の各8例を3:1の比率で無作為に割り付け(6A:2P)、チカグレロルの5回目の前処置後約2時間以内に治験薬を単回IV投与する。チカグレロル前処置として、チカグレロル180mgを朝(-2日目)に経口負荷投与した後、チカグレロル90mgを12時間毎に4回追加経口投与し、5回目のチカグレロル投与(1日目)後約2時間以内に治験薬を単回IV投与する。コホート4~6のそれぞれの被験者は、上記のようにチカグレロルの前処置を受け、それぞれ1,000、3,000、又は9,000又は18,000mgの治験薬を30分かけて単回IV投与される。コホート4~6は、先行する各用量コホートの安全性及び用量漸増評価の後に逐次投与される。
【0150】
[00176] コホート7~10:コホート7では、チカグレロル前処置前に被験者を3:1の比率で無作為に割り付け(6A:2P)、治験薬を単回IV内投与する。5回目のチカグレロル投与の2時間後に静脈内注入を開始し、PB2452を継続的に、ただし注入時間中、以下のとおり異なる速度で投与する:3,000mgを5分かけて投与し、続いて15,000mgを7時間55分間で投与する。
【0151】
[00177] コホート8では、注入期間中の注入速度を以下のとおりとする:6,000mgを15分かけて投与し、続いて6,000mgを3時間で投与し、続いて6,000mgを8.75時間で投与する。コホート9では、注入期間中の注入速度を以下のとおりとする:6,000mgを15分かけて投与し、続いて6,000mgを4時間で投与し、続いて6,000mgを12時間で投与する。コホート10では、注入期間中の注入速度を以下のとおりとする:6,000mgを10分かけて投与し、続いて6,000mgを3時間で投与し、続いて6,000mgを13時間で投与する。
【0152】
[00178] コホート1~3の被験者は、-1日目に試験実施医療機関に入院する。1日目の朝に、被験者は治験薬を単回IV投与される。被験者は3日目に試験実施医療機関から退院し、4、7及び28日目(+2日)に追跡調査のために来院する。
【0153】
[00179] コホート4~10の被験者は、-3日目に試験実施医療機関に入院する。-2日目の朝、被験者はチカグレロルによる前処置を開始する。1日目の朝に、被験者は治験薬を単回IV投与される。コホート4~8(6回目のチカグレロル投与を受けない場合はさらにコホート9)の被験者は3日目に試験実施医療機関を退院し、4、7及び28日目(+2日)に追跡調査のために来院する。コホート10は7日目に試験実施医療機関を退院し、28日目(+2日)に最終追跡調査のために来院する。
【0154】
[00180] 2日目、コホート9の被験者には、治験薬注入開始から24時間後の朝にチカグレロルを追加投与することができる。この場合、被験者は4日目に試験実施医療機関から退院し、7及び28日目(+2日)に追跡調査のために来院する。6回目のチカグレロル投与が行われなかった場合は、3日目に治験実施部署から退院し、4、7及び28日目に追跡調査のために来院する。この6回目のチカグレロル投与の可否については、事前のコホートのデータを検討した上で判断する。
【0155】
[00181] PB2452、チカグレロル及びその活性代謝物TAMのPK及び薬力学(PD)解析用の血漿サンプル、並びにチカグレロル及びTAMのPK解析用の尿サンプルを、投与28日後まで特定の間隔をおいて採取する。全てのコホートで、0時間を治験薬注入開始日とする。
【0156】
[00182] 試験期間を通して、安全性及び忍容性を注意深くモニターする。ベースライン時及び治験薬投与後最大28日間、全被験者の免疫原性を測定する。
【0157】
[00183] センチネル投与:コホート1(ヒトにおけるPB2452の初回曝露)に対する投与は、最初に無作為に治験薬の単回IV投与を受けるように割り付けられた2例のセンチネル被験者で進められる。センチネル被験者からの治験薬注入後24時間までの盲検安全性データが、コホート1の残り2例の被験者に投与される前に、治験責任医師により検討される。残りの被験者には、センチネル被験者の少なくとも24時間後に投与される。さらに、コホート4(ヒトにおけるPB2452とチカグレロルの併用投与の最初の曝露)に対する投与は、実薬とプラセボに1:1の比で無作為に割り付けられ、PB2452の単回IV投与又はプラセボを受ける前に、チカグレロルによる前治療を受けたセンチネル被験者2例で進める。センチネル被験者からのチカグレロル治験薬注入後24時間までの盲検安全性データが、コホート4の残り6例の被験者に投与される前に、治験責任医師により検討される。残りの被験者には、センチネル被験者の少なくとも24時間後に投与される。
【0158】
[00184] 用量漸増:各用量コホートの4日目までの安全性(例えば、臨床検査結果、有害事象[AE]、12誘導心電図[ECG]、バイタルサイン)及び利用可能なPKデータについて盲検下で検討するため、安全性審査委員会(SRC)を設置する。連続するコホートに対する用量漸増は、先行するコホートの安全性に基づいて行う。治験責任医師は、次の予め設定された用量レベルに進むか、追加の安全性及び/又はPKデータの検討のために投与を中断するか、又は次の用量コホートの用量を調整するかについて勧告を行う。用量の調整若しくは中断、又は次のコホートへの進行の決定はSRCが行う。安全性データは盲検下で検討され、次の高用量群の投与前にSRCに受け入れられると判断されなければならない。
【0159】
[00185] 利用可能であれば、安全性及びPKデータの検討に基づき、SRCは、用量レベルを繰り返すか、前回の用量よりも少ない用量を投与するか、又は次の予定用量よりも低い用量まで増量するかを選択することができる。SRCは、DLTに関する利用可能な安全性データを検討した上で、用量漸増を進める決定を下す権限を有する。
【0160】
[00186] 中止基準:各用量コホートの4日目終了後、SRCは利用可能な全ての安全性(例えば、臨床検査結果、AE、ECG、バイタルサイン)、忍容性、及び利用可能なPKデータを検討し評価して、次の用量コホートの用量漸増を決定する。PB2452の投与を確認後、SRCによる検討を経て、以下のいずれかの状況が発生した場合、用量漸増を中断する:
[00187] SRCの見解では、PB2452のさらなる被験者への投与が禁忌とされる前臨床事象又は臨床事象;
[00188] 用量コホートにおける何らかの重篤な有害事象(SAE);
[00189] 予期せぬ反応(例えば、臨床検査データ、ECG、心電図テレメトリー、バイタルサイン又は身体所見における臨床的に重要な変化)など、より高いレベルで投与される次のコホートでの安全性上の懸念を示す、前の用量コホートのデータ;
[00190] 用量コホート中の2例以上の被験者がいずれかのDLTを経験するか、又は1例の被験者がSRCの見解で用量漸増の停止を保証するグレード2以上のAE(DLT)を経験する;
[00191] 2例以上の被験者のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)若しくはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の値が正常値(ULN)の上限の3倍超であるか、又はビリルビン若しくはアルカリホスファターゼの値がULNの2倍超であって、その増加を説明できる他の理由が見出せない;或いは
[00192] 1例以上の被験者が注入に伴う反応のために前投薬を受けていたにもかかわらず、グレード2以上の注入に伴う反応を経験する。
【0161】
[00193] SRC又は治験依頼者の判断により、被験者にさらに投与される前にさらなる評価が必要となる利用可能なデータの包括的な検討で、他の重要な安全性又は忍容性の問題が確認された場合にも、用量漸増は中断され得る。これには、新たに得られた非臨床データ、臨床的に関連するAE、又は、たとえその事象自体がプロトコルに規定された用量制限毒性の定義に合っていなくても、安全性の懸念を示す他の情報源からの関連データが含まれ得る。SRCは、SAE及び他の中止基準に関する利用可能な安全性データを検討した上で、用量漸増を進める決定を下す権限を有する。
【0162】
[00194] 選択基準:
[00195] 1)コホート1~10の男性又は女性の被験者のための被験者は18~50歳(両端を含む)の男性又は女性である。
[00196] 2)被験者は、スクリーニング時に、ボディ・マス・インデックスが18~35kg/m2であり、体重が50kg以上120kg以下(両端を含む)である。
3)被験者は、スクリーニング時に、病歴、臨床検査結果、バイタルサイン測定、12誘導ECGの結果、及び身体所見から、治験責任医師により全身の健康状態が良好であると判定される。
[00197] 4)出産の可能性のある女性被験者は、治験薬の最後の投与から3ヶ月の間、妊娠、授乳、又は妊娠の計画をしてはならず、スクリーニング時及び入院時の血清妊娠検査が陰性でなければならない。出産の可能性のある女性被験者は、治験薬投与30日前から試験終了までに、2種類の有効な避妊方法(すなわち、コンドームと組み合わせた経口、埋め込み式、パッチ式若しくは注射用避妊薬、コンドームと組み合わせた、スクリーニング前の少なくとも2ヵ月間留置させたホルモン含有子宮内器具、二重バリア法[すなわち、殺精子ゲル若しくはクリームを用いたコンドーム、スポンジ、ペッサリー若しくは子宮頚管キャップ]、又は男性被験者若しくは女性被験者の男性パートナーに対する精管切除)を使用しなければならない。以下の基準の1つを満たしている女性は出産の可能性がないとみなされる:不可逆的な不妊手術(すなわち、子宮摘出、若しくは両側卵巣摘出[卵管結紮ではない])の証拠書類の提出、又は閉経後(全ての外因性ホルモン療法の中止後12ヶ月間連続して無月経で、卵胞刺激ホルモンの血漿中濃度が40IU/mL超であることが実証されているか、若しくは24ヶ月間連続して無月経であると定義される)。妊娠する可能性のあるパートナーを有する男性被験者は、試験期間中、及び治験薬最終投与後30日間、適切で効果的な避妊法(例えば、コンドーム+殺精子剤付きペッサリー、コンドーム+殺精子剤)を用いること、並びに治験薬投与前の少なくとも7日間、及び治験薬最終投与後少なくとも90日間は精子の提供を控えることに同意しなければならない。
[00198] 5)被験者は、全てのプロトコル要件を遵守することに同意する。
[00199] 6)被験者は、文書によるインフォームド・コンセントを提供することができる。
【0163】
[00200] 除外基準
[00201] 1.臨床的に重大な急性若しくは慢性疾患又は内科的疾患の既往。
[00202] 2.消化器疾患、肝疾患(ジルベール症候群を除く)若しくは腎疾患、又は腎不全(すなわち、推算糸球体濾過量が60ml/min/1.73m2未満)、或いは薬物の吸収、分布、代謝、又は排泄を妨げることが知られているその他の病態の既往又は存在。
[00203] 3.治験薬投与から4週間以内の臨床的に重大な疾患、内科的/外科的処置、若しくは外傷、又は治験期間中(スクリーニングから28日目の追跡調査による来院まで)に実施が予定されている外科的処置。
[00204] 4.スクリーニング又は入院中に確認された身体所見、バイタルサイン、臨床検査による評価、及びECGパラメータにおける臨床的に重要な異常所見。注:確認のために異常の検査結果を1回繰り返してもよい。
【0164】
[00205] 仰臥位安静10分後に起こる特定のバイタルサイン除外基準は、以下のいずれかである:
[00206] 収縮期血圧 150mmHg超
[00207] 拡張期血圧 90mmHg超、又は
[00208] 心拍数 50拍/分未満若しくは100拍/分超。
【0165】
[00209] スクリーニング時又は入院時のECGパラメータに関する特定の除外基準は、以下のいずれかである:
[00210] Fridericia補正QT間隔(QTcF)の延長 450ミリ秒(msec)超、QTcFの短縮 340msec未満、若しくはポーズ 3秒超、又はQT延長症候群の家族歴;
[00211] PR(PQ)間隔の延長 240msec超、間欠的な第2度若しくは第3度房室(AV)ブロック若しくはAV解離、又はPR間隔の短縮 120msec未満;
[00212] 不完全脚ブロック、完全脚ブロック、又は間欠的脚ブロック(QRSが110msec未満で、QRS及びT波の形態が正常な場合、左室肥大の所見がなければ許容される;
【0166】
[00213] 5.以下のいずれかを含む、動脈血栓症又は静脈血栓症の既往:
[00214] 一過性脳虚血発作、心血管発作、脳卒中(虚血性又は出血性)、不安定狭心症、心筋梗塞、若しくは末梢動脈疾患の既往;又は
[00215] 深部静脈血栓症、肺塞栓症、血栓性静脈炎、若しくは海綿状奇形の既往。
【0167】
[00216] 6.以下を含む、出血リスクの増大:
[00217] 消化管出血の最近の既往(治験薬の初回投与前30日以内);
[00218] 重度の頭部外傷、頭蓋内出血、頭蓋内新生物、動静脈奇形、動脈瘤、又は増殖性網膜症の既往;
[00219] 頭蓋内出血、眼内出血、後腹膜出血、又は脊髄出血の既往;
[00220] 最近(治験薬の初回投与前30日以内)の重大な外傷;
[00221] 出血の危険性を増大させるおそれのある出血性疾患(例えば、血友病、フォン・ヴィレブランド病)の既往;
[00222] 非ステロイド性抗炎症薬(アスピリン[1日100mg超]を含む)、抗凝固剤、又は中止することができない他の抗血小板薬(クロピドグレル、プラスグレル、チクロピジン、ジピリダモール若しくはシロスタゾールを含む)による長期治療を受けている。
[00223] スクリーニングから30日以内に、低分子量ヘパリンを含む経口又は非経口抗凝固剤を摂取したことがある;
[00224] スクリーニングから14日以内にアスピリンを含む非ステロイド性抗炎症薬を服用したことがある;
【0168】
[00225] 7.対象は、スクリーニング時に、B型肝炎表面抗原、C型肝炎ウイルス抗体、又はヒト免疫不全ウイルス1型若しくは2型抗体の検査結果が陽性である。
【0169】
[00226] 8.進行中又は最近(すなわち、スクリーニング期間中)、試験データの解釈に支障を来す可能性があるか、又は治験責任医師による判断で、試験の手順、制限及び要件を遵守する可能性が低いと考えられる、軽微な医学的愁訴が認められる。
【0170】
[00227] 9.徐脈イベント(例えば、既知の洞不全症候群、心房細動、又は第2度若しくは第3度房室ブロック)のリスク。
【0171】
[00228] 10.強力なCYP3A阻害薬、治療指数の狭いCYP3A基質、又は強力なCYP3A誘導薬との併用経口又はIV療法で、無作為化前に少なくとも5半減期(ただし、10日以上)以内に中止できないもの(例の一覧は、セクション6.2を参照)。
【0172】
[00229] 11.治験薬の初回投与前14日以内の、処方薬(ホルモンによる避妊を除く)又は市販薬(パラセタモール[1日2gまで]を除く、ハーブ又は栄養補助食品を含む)。
【0173】
[00230] 12.被験者は治験薬投与前48時間以内に、グレープフルーツ若しくはグレープフルーツジュース、セビリアオレンジ又はセビルオレンジ含有製品(例えば、マーマレード)、又はアルコール若しくはキサンチン含有製品を摂取した。
【0174】
[00231] 13.被験者は、試験の結果に支障を来たすおそれがあると治験責任医師が判断した他の試験に参加しているか、又は非薬物試験に参加している。
【0175】
[00232] 14.被験者は、本試験における治験薬投与から30日以内に、別の新しい化学物質(市販の承認を受けていない化合物と定義される)又は市販若しくは治験用生物学的製剤を投与された。除外期間は、治験薬の最終投与から30日後、又は治験薬の5半減期が経過した日のいずれか長い方から始まる。
【0176】
[00233] 15.被験者は、治験依頼者若しくは試験実施医療機関の従業員又はその親族(例えば、配偶者、両親、兄弟姉妹、又は子供(生物学的であるか法的であるかを問わない)と関わりがある。
【0177】
[00234] 16.被験者は、以前にPB2452を投与されたことがあるか、又は本治験のより早期のコホートで治験薬が投与されるように無作為に割り付けられていた。
【0178】
[00235] 17.被験者は、喫煙者であるか、又は治験薬の注入前3ヶ月以内にニコチン又はニコチン含有製品(例えば、嗅ぎタバコ、ニコチンパッチ、ニコチンチューインガム、模擬タバコ、又は吸入器)を使用したことがある。
【0179】
[00236] 18.被験者は、薬物乱用(アルコールを含む)の既往又は疑いがある、又はスクリーニング若しくは入院時に薬物乱用、アルコール若しくはコチニン(ニコチン濃度300ng/mL超)の検査結果が陽性である。
【0180】
[00237] 19.被験者は、治験薬の注入前24時間以内、及び試験実施医療機関に滞在中に、激しい運動又はコンタクトスポーツに関わっていた。
【0181】
[00238] 20.被験者は、スクリーニングから1ヵ月以内に血液若しくは血漿を提供したか、又は治験薬の注入前3ヵ月間に、500mLを超える血液の提供/喪失があった。
【0182】
[00239] 21.被験者は、治験責任医師により判断された、重度のアレルギー/過敏症の既往、若しくは進行中のアレルギー/過敏症、又はチカグレロルと類似の化学構造若しくはクラスを有する薬物、生物学的治療薬に対する過敏症の既往、又は試験実施医療機関で標準的な食事を摂取できないような重大な食物アレルギーの既往がある。
【0183】
[00240] 22.被験者が試験手順及び/又は追跡調査を遵守できないことに対する懸念がある、或いは治験責任医師の判断で、被験者は試験への参加に適していない。
【0184】
[00241] 評価基準:
[00242] 安全性評価:AEのモニタリング及び記録、臨床検査結果(血液学的検査、凝固検査、血清化学的検査及び尿検査)、バイタルサインの測定(収縮期及び拡張期血圧、口腔体温、呼吸数及び心拍数)、12誘導ECGの結果、心電図テレメトリーモニタリング、免疫原性及び身体所見により安全性及び忍容性を評価する。
【0185】
[00243] 薬物動態評価
[00244] 血漿採取:以下の時点で、全ての被験者から血漿中のPB2452のPK解析のための血液サンプルを採取する:投与前(治験薬の注入開始前10分以内及び治験薬の注入開始の28日後まで。各コホートの具体的な採取時間を下表に列挙する:
【0186】
【0187】
[00245] チカグレロル及びその活性代謝産物TAM(又はARC-124910XX)の総濃度を決定するための血漿サンプルを、コホート4~10の被験者から投与前に(治験薬の注入開始[0時間]前10分以内及び治験薬の注入開始の48時間後まで、採取する。各コホートの具体的な採取時間を下表に列挙する:
【0188】
【0189】
[00246] コホート9において、治験薬の注入から24時間後に6回目のチカグレロルを投与された場合、下表に示すとおり、6回目のチカグレロル投与から24時間後まで追加のPKサンプルを採取する:
【0190】
【0191】
[00247] 結合していないチカグレロル及びTAMの濃度を決定するための血漿サンプルを、コホート4~10の被験者から投与前に(治験薬の注入開始[0時間]前10分以内及び治験薬の注入開始の48時間後まで)採取する。各コホートの具体的な採取時間を下表に列挙する:
【0192】
【0193】
[00248] PB2452の以下の血漿中PKパラメータを算出する:
[00249] 時間0から最終定量可能濃度までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)(AUC0-t);
[00250] 最高血漿中濃度(Cmax);
[00251] 最高血漿中濃度到達時間(Tmax);
[00252] 0時間から無限大時間まで外挿されたAUC(AUC0-inf)(データがあれば);
[00253] 消失半減期(t1/2)(データがあれば);
[00254] 見かけのクリアランス(CL)(データがあれば);
[00255] チカグレロル及びTAMについて、以下の血漿中PKパラメータを算出する:
[00256] Cmax;
[00257] Tmax;
[00258] 投与後0時間から12時間までのAUC(AUC0-12);
[00259] 投与後0時間から24時間までのAUC(AUC0-24);
[00260] 投与後0時間から48時間までのAUC(AUC0-48);
[00261] 0時間から最終定量可能濃度(Clast)までのAUC(AUC0-t);
[00262] AUC0-inf(データがあれば);
[00263] t1/2(データがあれば);
[00264] 治験薬投与24時間後に6回目のチカグレロルを投与されたコホートについては、PKパラメータのAUC0-24及びAUC0-inf(データがあれば)のみを算出する。追加のPKパラメータを含めてもよい。
【0194】
[00265] 薬力学的評価:
【0195】
【0196】
[00266] 以下のPDデータ及びパラメータは、LTA、P2Y12反応度ユニット(pRU)及び血小板反応性指標(PRI)のアッセイから得られる。
【0197】
[00267] 4つまでの血小板アゴニスト[(20μMのアデノシン二リン酸(ADP)、5μMのアデノシン二リン酸(ADP)、1.6mMのアラキドン酸(AA)及び15μMのトロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)]についての、凝集の最大の最終的な程度及び曲線下面積を、各評価点で記録する。
【0198】
[00268] ベースラインの血小板凝集率;
[00269] 最大血小板凝集率;
[00270] 最大血小板凝集率までの時間;
[00271] ベースラインの血小板凝集率の60%、80%、90%までの時間。
[00272] VerifyNow(商標)P2Y12:1)各評価時点でのPRU;2)PRUのベースラインのパーセント;3)最大PRU;4)最大PRUまでの時間;5)ベースラインPRUの60%、80%、90%までの時間
[00273] ELISAによるVASP:1)各評価時点でのPRU;2)PRUのベースラインのパーセント;3)最大PRU;4)最大PRUまでの時間;5)ベースラインPRUの60%、80%、90%までの時間
【0199】
[00274] 治験薬、投与量及び投与経路:
[00275] PB2452:
[00276] 全コホート:PB2452(濃度は0.4mg/mLから72mg/mLまでの間で変動する)単回IV注入、100、300、1,000、3,000、9,000、18,000mg、24,000若しくは36,000mgの漸増用量、又は9,000から36,000mgの間の中間用量で30分から12時間かけて250mLを送達。場合によっては、治験依頼者は、注入の最初の5~20分間、より速い速度(ボーラスと同等)で治験薬の一部(6gまで)を注入することを選択することができる。
【0200】
[00277] マッチングプラセボ:
[00278] 全コホート:0.9%塩化ナトリウム単回IV注入、規定された活性注入持続時間に一致する速度で250mLを送達。
【0201】
[00279] チカグレロル:
[00280] コホート4~10:チカグレロル90mg経口錠剤(即効型);180mg(2×90mg錠)負荷用量+90mgを12時間毎に4回追加として投与される
[00281] コホート9:治験薬注入開始の24時間後に180mg([2×90mg)経口錠剤(即効型)]として1回追加投与することができる。
【0202】
実施例2-ヒト臨床試験データ-PB2452はチカグレロル活性を逆転させる
[00282] チカグレロルは、急性冠症候群患者の虚血性イベントのリスクを低下させるためにアスピリンと併用される経口P2Y12阻害薬である。他の抗血小板薬と同様に、緊急の侵襲的処置に関連する自然大出血及び出血が懸念される。チカグレロルの抗血小板作用は、血小板輸血では逆転させることはできない。迅速に作用する拮抗薬が有用であろう。
【0203】
[00283] ヒト初回、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、健常ボランティア試験で、チカグレロルと高い親和性で結合するモノクローナル抗体断片の静脈内(IV)PB2452を、チカグレロル拮抗薬として評価した。血小板機能はチカグレロル投与の48時間前及び後に、光透過凝集測定(LTA)、VerifyNow、及び血管拡張因子刺激リン酸化蛋白質(VASP)アッセイを用いて評価した
【0204】
[00284] 無作為化された64例の被験者のうち、48例にPB2452が投与され、16例にプラセボが投与された。チカグレロルの48時間後、血小板凝集は約80%抑制された。プラセボと比較して、PB2452を10分間の静脈内ボーラスとして投与し、続いて16時間の注入を行ったところ、複数のアッセイによる測定で、血小板機能が有意に回復した。反転の開始は5分以内に起こり、20時間にわたって持続した(P<0.0001、全てのアッセイで全ての時点にわたってボンフェローニ調整した)。薬物中止後の血小板活性のリバウンドのエビデンスはなかった。治験薬と関連する有害事象は認められなかった。
【0205】
[00285] チカグレロルに特異的な拮抗薬であるPB2452は、多重アッセイを用いて安全且つ効果的に、チカグレロルの抗血小板作用の即時且つ持続的な逆転をもたらした。PB2452は、チカグレロル関連出血性合併症を治療又は予防するための有益な手法であり得る。
【0206】
背景
[00286] 抗血小板療法は心血管イベントの二次予防に必須の部分である。(Bhatt(2014)。特に、抗血小板薬2剤併用療法-アスピリンと経口P2Y12拮抗薬の併用-は、急性冠症候群患者、冠動脈ステント留置患者及び心筋梗塞の既往のある患者における重要な方法である。(Yusuf 92001); Mehta (2001); Bhatt (2006); Bhatt (2007); Chen (2005); Wiviott (2007);Prasugrel (2012);Wiviott (2013)。使用されている3種の経口P2Y12受容体拮抗薬は、クロピドグレル、プラスグレル、及びチカグレロルである。(Koski (2018))。無作為化試験により、急性冠症候群の全スペクトルにわたってチカグレロルがクロピドグレルよりも優れていることが明らかになっている。(Wallentin (2009);Cannon (2010);James (2011)。
【0207】
[00287] 3種の経口P2Y12拮抗薬の全ての限界は、それらが出血のリスクを増大させることにあり、それは中止後数日間持続する。(Plavix処方情報、Brilinta処方情報、Effient処方情報)。これにより、頭蓋内出血又は消化管出血などの大出血の患者に課題が生じる。(Ducrocq (2013);Bhatt (2007))。さらに、緊急の特に突発的な侵襲的処置を必要とする患者は、術中の出血性合併症のリスクも高い。緊急処置が必要な場合、処置者は、経験的に血小板輸血を行った後にしばしば、出血リスクの増大に応じなければならない。緊急であれば、術者は、処置を継続し出血の危険性が増すことを予期するか、又は臨床的に指示された処置を遅らせるリスクを伴う、処置の数日間の延期を行う。学会のガイドラインは、手術の少なくとも5日前に経口P2Y12受容体拮抗薬を中止することを推奨している。(Capodanno (2013);Douketis (2012))。
【0208】
[00288] 現在のところ、P2Y12受容体拮抗薬に対する拮抗薬はない。他のP2Y12拮抗薬とは異なり、チカグレロルは可逆的阻害剤である。その結果、チカグレロルは輸血された血小板上のP2Y12に結合し、それによって、それらを無効にする。したがって、チカグレロルに特異的な拮抗薬が望まれる。
【0209】
試験デザイン
本試験は、チカグレロルの前投与が行われた又は行われていない18~50歳の健常な被験者を対象に、PB2452の安全性、有効性及び薬物動態を評価する単施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、単回漸増投与試験であった。表1に示すように、10の連続用量コホートを評価した。
【0210】
【0211】
[00289] 略語:BID、1日2回
[00290] コホート1~3はそれぞれ、4人の被験者を登録し、チカグレロル前処置なしで30分間注入した0.1、0.3及び1.0グラムのPB2452の静脈内用量を評価した。
【0212】
[00291] コホート4~10の被験者は、180mgの経口チカグレロル負荷用量、続いて48時間、1日2回90mgで前処置し、その後、1.0~18グラムの用量のPB2452を評価した。コホート4、5、6はそれぞれ、チカグレロル前処置後にPB2452を1.0、3.0及び9.0g投与する群とプラセボ投与する群に無作為に割り付けた8例の被験者で構成した。コホート7~10には、様々な注入レジメンによる18gの固定用量のPB2452、又はプラセボを投与した。これらのコホートにおけるPB2452の注入は、チカグレロルの最高濃度と一致するように、最後のチカグレロル前処置投与の2時間後に開始した。(Gurbel (2009)。全コホートにおいて、被験者を、PB2452投与群又はプラセボ投与群に3:1の割合で無作為に割り付けた。
【0213】
[00292] 被験者の適格性:適格被験者は、ボディ・マス・インデックスが18~35kg/m2で、体重が50kg以上120kg以下の18~50歳の健常な男女であった。チカグレロルの禁忌、出血リスクの増大を示唆する病歴、又は推算糸球体濾過量が60mL/min/1.73m2未満の被験者は除外した。書面によるインフォームド・コンセントを全ての被験者から得た。
【0214】
[00293] アウトカム
[00294] 有効性の主要評価項目は、チカグレロルで前処置した被験者を対象に、PB2452又はプラセボの投与前後の複数の時点で光透過凝集測定法を用いて血小板凝集能を解析することによる、チカグレロルの抗血小板作用を逆転させるPB2452の有効性とした。有効性の副次評価項目は、VerifyNow及び血管拡張薬刺激性リン酸化蛋白質イムノアッセイ(VASP)を用いて評価したチカグレロル逆転の有効性とした。
【0215】
[00295] 安全性の主要評価項目は、経口チカグレロル前処置の有無にかかわらず、PB2452に関連する治療中の緊急有害事象(AE)の頻度と重大度とした。臨床検査結果、バイタルサイン測定、12誘導ECG及び連続テレメトリーの結果、並びに身体所見も、スクリーニングから28日間の安全性追跡調査期間終了までの複数の時点で評価した。免疫原性は、PB2452投与前並びに投与後7日目及び28日目に評価した。
【0216】
[00296] その他の副次評価項目には、PB2452及びチカグレロルの薬物動態プロファイルの評価、並びに注入後7日目及び28日目のPB2452免疫原性の評価が含まれた。
【0217】
統計的解析
[00297] 64のサンプルサイズは臨床的及び実用的な考慮に基づくものであり、正規の統計的検出力の計算に基づくものではなかった。サンプルサイズは、PB2452の安全性、有効性及び薬物動態プロファイル、並びにチカグレロルの薬物動態及び薬力学プロファイルを適切に評価するのに十分であると考えられた。抗血小板作用の逆転は、ベースラインの血小板凝集率の平均をPB2452とプラセボとの間でウィルコクソンの順位和検定を用いて比較することにより評価した。ボンフェローニの方法を用いて多重度を調整した。血小板機能試験の各対の間の相関は、ピアソンの相関及びスピアマンの順位相関係数を用いて評価した。プラセボを投与された被験者から得られた平均データを、全症状についてコホート全体で統合した。カテゴリー変数はその頻度と割合によって要約し、連続変数は非欠測データ、平均値、標準偏差、中央値、最小値、最大値を有する被験者数と共に示す。各コホート、並びにプラセボ及びPB2452の統合データについて、記述統計量を示す。薬力学データについては、血小板凝集率の結果を各コホートとプラセボ統合データ(コホート4~6及びコホート7~10は別々に統合した)の間で比較した。全ての分析は、SASソフトウェア、バージョン9.4(SAS Institute)を用いて行った。
【0218】
結果
[00298] 試験対象集団:合計64例の被験者を無作為化した。このうち48例にPB2452が投与され、16例にプラセボが投与された。PB2452を投与された48例のうち、21例に18グラムの最高用量が投与され、39例にチカグレロル前処置が行われた。最終的な試験デザイン及び被験者のフロー図をそれぞれ表1及び
図6に示す。被験者のベースライン特性を表2に示す。
【0219】
【0220】
[00299] 安全性:全体的なPB2452は安全で忍容性も良好であると認められた。試験下で発現した有害事象は、64例の被験者のうち、19例(29.7%)で計30件が報告された。PB2452を投与された48例の被験者のうち、17例(35.4%)に27件の有害事象が報告され、一方、プラセボを投与された16例の被験者のうち、2例(12.5%)に3件の有害事象が報告された(表3)。いずれの有害事象も治験薬との関連はないと判定された。治験薬と関連する重篤な有害事象、用量制限毒性及び注入に伴う反応はいずれも認められなかった。死亡も治験薬の投与中止に至る有害事象も認められなかった。試験実施医療機関からの退院後に1例に2件の重篤な有害事象(アルコール中毒及び急性呼吸不全)が認められたが、いずれも治験薬との関連はないと思われた。コホート3の1例の被験者を除き、有害事象が発現した全例の被験者がチカグレロルの前処置を受けていた。平均臨床検査結果、バイタルサイン測定値、及びECG値の変化は、処置群間でもプラセボとの比較でも同程度であった。
【0221】
【0222】
チカグレロルの逆転
[00300] チカグレロルの逆転をコホート4~10で評価した。被験者に、PB2452又はプラセボを投与する前の48時間、チカグレロルで前処置した。プラセボを投与された被験者では、血小板凝集は、チカグレロル前処置の48時間後に80~85%抑制され、チカグレロルを中止した後さらに24時間抑制が続いた。血小板機能は24~48時間で徐々に上昇し(
図3~5;
図7A及び7B)、PB2452の1g投与による逆転は認められなかった(
図2)。PB2452では、コホート5及び6のそれぞれ3.0グラム及び9.0グラムの用量レベルでチカグレロルに対する最初の有意な逆転が観察された(
図7A及び7B)。30分間の注入終了直後の最初の測定時点である30分に、有意ではあるが一過性の平均血小板凝集能の上昇が認められた。逆転の持続時間は用量依存性があり、1~3時間持続した(
図7A)。
【0223】
[00301] より迅速で且つ持続的な逆転を達成するために、コホート7~10ではPB2452の総用量を18グラムに増量し、PB2452の初期ボーラス及び8、12又は16時間のより長い注入を調整した。コホート7では、3.0グラムのPB2452のボーラスと、それに続く8時間の注入により、2時間までに平均血小板凝集を有意に増加させ、約12時間持続した(
図7B)。コホート8~10では、ボーラスを6.0グラムに増加させ、続いて12又は16時間注入した。より大きなボーラスでは、逆転は注入開始から5分以内に達成され、16~24時間持続した(
図7B)。
【0224】
[00302] 凝集能測定の主要有効性評価を用いて測定した統計的に有意な即時及び持続的逆転を、VerifyNow及びVASPで確認した(
図8A及び8B)。3種類の血小板機能検査結果の各々の間の相関分析は、ピアソン及びスピアマンの分析でそれぞれr値が0.81以上及び0.91以上と、全ての比較で非常に有意な相関を示した(全ての比較でP<0.0001、
図9)。
【0225】
[00303] 正常な血小板機能がどの程度回復したかを評価するために、PB2452後の血小板機能を、3種類のアッセイ全てを用いてチカグレロル投与前のベースライン血小板機能と比較した。PB2452は、20時間までの処置後の全ての時点において、平均血小板凝集をベースラインの80%以内に回復させた(
図10A)。平均VerifyNow血小板反応性は、24時間、PRUが180以上であり、血小板機能の迅速且つ持続的な正常化を明らかにした(
図10B)。P2Y12受容体シグナル伝達の回復をVASPで評価したところ、PRIは5分以内にベースラインのほぼ100%まで回復し、20~24時間持続した(
図10C)。
【0226】
[00304] 急速なチカグレロル逆転が血小板凝集の潜在的プロトロンビンリバウンド増加を引き起こすかどうかを決定するために、低濃度のADP(通常の20μMの代わりに5μM)に応答した血小板凝集を測定した。さらに、アラキドン酸及びトロンビン受容体活性化ペプチドを含む他のアゴニストに応答した血小板凝集も試験した。予想通り、5μMのADPは20μMのADPよりも低い反応を誘発し(
図12A及び12B)、逆転後のアラキドン酸及びトロンビン受容体活性化ペプチドに対する反応は、チカグレロル又はPB2425投与前のベースラインと同様であった(データは示していない)。
【0227】
薬物動態
[00305] PB2425の薬物動態分析は、0.1~9.0グラムの用量範囲にわたる平均曝露の用量線形増加を実証した(
図11A)。推定分布相半減期及び推定終末相半減期はそれぞれ0.86時間及び6.9時間であり、推定クリアランスは1.88L/minであり、分布容積は約2.9Lであり、PB2452が血管区画に限られていることが示唆された。チカグレロルのみを投与された被験者では、総チカグレロル濃度が経口投与の約2時間後に900ng/mLでピークに達した。PB2452の存在下では、循環チカグレロルの平均濃度は約2~5.6倍増加した(
図11B)。8~16時間の注入を含む18gの用量レベルでは、PB2452曝露は12~24時間にわたり(
図11C)、平均チカグレロル濃度はチカグレロル単独を投与された被験者と比較して5.6倍増加した(
図11D)。チカグレロル曝露のこれらの増加は、PB2452用量に依存し、PB2452とチカグレロルとの間の強固な結合、及びその後の血管外チカグレロルの血管区画への再分布を反映しているようであった。
【0228】
免疫原性
[00306] PB2452を投与された48例の被験者のうち、抗薬物抗体が検出可能であったのは21例(43.8%)であり、そのうち15例(31.3%)は既存の(投与前)抗体を有し、6例(12.5%)は、抗体価が40(n=5)又は160(n=1)と低いものであったが、投与後に陽性であった。プラセボに割り付けられた被験者では、16例中3例(18.8%)が検査陽性であり、2例が既存の抗体を有していた。いずれの抗体価も低く、PB2452の安全性にも有効性にも影響は認められなかった。
【0229】
考察
[00307] 本試験は、モノクローナル抗体断片PB2452の静脈内注入が、血小板機能の複数の高感度アッセイを用いた測定で、チカグレロルの抗血小板作用を有意に逆転させることを実証した。試験した健常集団内では、PB2452に関連する重篤な有害事象も注入反応も認められなかった。したがって、PB2452は、出血患者又は侵襲的処置中に緊急の止血が必要な患者において、チカグレロルの抗血小板作用を逆転させる有効な手段となる。
【0230】
[00308] 新規経口抗凝固薬の作用を逆転させる能力は、抗血栓症療法において大きな進歩であった。現在のところ、生命を脅かす出血がある患者や血栓症のリスクが高い患者で問題になっている、薬物を保持し、その効果が消失するまで3~5日待つ以外、チカグレロルなどの経口P2Y12拮抗薬の抗血小板作用を逆転させる効果的な方法はない。治療ガイドライン及びチカグレロルの処方情報には、外科的処置まで少なくとも5日待つように記載されている。この長い期間を待つことは、緊急手術を必要とする患者では不可能であり、緊急手術を必要とする患者には勧められないであろう。残念なことに、血小板輸血はチカグレロルを服用している患者には有用ではない。なぜなら、この薬物は新鮮な血小板に結合するからである。(Godier (2015);Teng (2016))。したがって、チカグレロル拮抗薬が必要とされている。
【0231】
[00309] PB2452は、チカグレロル、その活性代謝産物AR-C124910XXに高い特異性をもって結合する組換えヒトIgG1モノクローナル抗体抗原結合断片である。(Buchanan (2015))。その高い親和性により、PB2452は遊離チカグレロル及びP2Y12受容体に結合した薬物を中和することができ、理論に拘束されるものではないが、これはPB2452で観察された迅速な逆転を説明する。作用機序はチカグレロルにのみ特異的であり、不可逆的P2Y12受容体拮抗薬であるクロピドグレルやプラスグレルには作用せず、他のオフターゲット結合も予想されない。
【0232】
結論
[00310] PB2452の静脈内投与は、チカグレロルの抗血小板作用を逆転させる。PB2452の投与は、重篤な出血を有する患者、又は緊急手術若しくは他の侵襲的処置を必要とする患者におけるチカグレロル逆転の有用な戦略となる可能性がある。
【0233】
実施例3-チカグレロル及びアセチルサリチル酸を前投与した高齢の被験者におけるPB2452の安全性、忍容性、PK及びPDを評価する試験
[00311] 無作為化、二重盲検、プラセボ対照、単回投与、群逐次の第2A相試験において、チカグレロル及びアセチルサリチル酸(ASA)で前処置した高齢及び老齢患者を対象に、PB2452の安全性、忍容性、薬物動態及び薬力学を、マッチングプラセボと比較する。高齢(50~64歳)及び老齢(65~80歳)の男女の被験者に、様々な用量レベル及び投与レジメンで投与する。
【0234】
[00312] 最大で5通りの用量及び/又は投与レジメンについて、最大で5つのコホートで評価する。各コホートには、3:1(PB2452:プラセボ)の割合で無作為化された8~12例の被験者が含まれる。
【0235】
[00313] 最初のコホート(コホート1)には、ASA+チカグレロルで前処置された50~64歳の約8例の被験者が含まれ、これらの被験者らは、18グラム(g)のPB2452又はマッチングプラセボが投与されるように無作為に割り付けられる。投与は、最初の6gがボーラスとして10分かけて注入され、続いて12gが次の15時間50分かけて注入され、16時間のレジメンが完了する。この最初のレジメンは、以前の第1相試験で健常な若年成人(18~50歳)において安全で且つ忍容性が良好であり、チカグレロルの抗血小板作用の即時且つ持続的な逆転が得られることが示された。
【0236】
[00314] コホート1の完了後、その後のコホートでは、コホート1と同じ集団、又はより高齢の被験者(65~80歳)などの異なる集団を対象に、同じ用量、より高い用量、若しくはより低い用量、及び/又は異なる注入レジメンのPB2452又はマッチングプラセボを試験することができる。
【0237】
[00315] 本試験は、スクリーニング期間(-45~-4日目)、入院日(-3日目)及び前処置期間、施設内での無作為化/処置日(1日目)、処置及び安全性モニタリングのための施設内での3日間、追跡調査のための来院(7日目)、及び最終追跡調査のための来院(28日目[±2日])から構成される。無作為化(-7日目)の7日前から治験薬を投与する前の1日目の朝の最終投与まで、ASA 81mgを1日1回(QD)被験者に経口投与する。-2日目の朝にチカグレロル180mgの負荷用量を経口投与し、その後、1日目の朝に5回目の投与が行われるまで、12時間毎に90mgを投与する。その後のコホートでは、治験薬投与開始から24時間後にチカグレロルの6回目の投与が行われ得る。
【0238】
[00316] -2日目の朝、被験者は、前段に記載されるように、チカグレロルによる前処置を開始する。1日目に、被験者を3:1(PB2452:プラセボ)の比率で無作為に割り付け、チカグレロル5回目の投与から2時間後に、PB2452又はプラセボのIV投与を行う。被験者は3日目から7日目までの間に試験実施医療機関から退院することができ、7日目(既に退院している場合)及び28日目(±2日)に、追跡調査のために来院する。
【0239】
[00317] 治験薬、投与量及び投与経路:
[00318] PB2452:PB2452IV注入は、1日目に最大で48時間投与される。各被験者の総投与量は30gを超えない。注入速度は30分間で18gを超えず、濃度は250mL中24gを超えない。被験者への治験薬の注入は1時間に250mLを超えることはない。
【0240】
[00319] マッチングプラセボ:0.9%塩化ナトリウム単回IV注入であり、活性注入と一致する速度及び容量で送達される。
【0241】
[00320] チカグレロル:チカグレロル90mg経口錠剤(即効型)を、180mg(2×90mg錠)負荷用量+90mgを12時間毎に4回の追加用量として投与される。コホート1に続く1つ以上のその後のコホートでは、治験薬の注入開始の24時間後に、被験者にチカグレロル90mgを追加単回経口投与してもよい(6回目のチカグレロル投与)。
【0242】
[00321] アスピリン(アセチルサリチル酸;ASA):アスピリン(ASA)81mg経口錠(腸溶コーティング)を、-7日目から1日目の治験薬投与前の朝まで毎日投与する。被験者は、試験から退院後にASAを再開してもよい。試験に参加し、既にASAを毎日服用している被験者は、-7日目から1日目の間に1日81mgの用量を進んで記録し、臨床施設から退院するまでさらなるASAの用量を一時中断しなければならない。
【0243】
[00322] 評価基準:
[00323] 安全性評価:AE、臨床検査結果(血液学的検査、凝固検査、血清化学的検査及び尿検査)、バイタルサイン測定(SBP及びDBP、経口体温、呼吸数[RR]並びにHR)、12誘導ECG、免疫原性、バイオマーカー、及び身体所見をモニタリングし記録することにより、安全性及び忍容性を評価する。
【0244】
[00324] 免疫原性:血液/血清サンプルについて、入院時、並びに1、7及び28(±2日)日目に結合抗薬物抗体(ADA)の有無をスクリーニングする。
【0245】
[00325] 薬力学的評価:
[00326] PDデータ及びパラメータは、PRU、LTA、及びPRIアッセイから作出される:
[00327] VerifyNow(登録商標)P2Y12:
[00328] ・各評価時点におけるPRU
[00329] ・各評価時点のPRUによるチカグレロル抗血小板活性の逆転率
[00330] ・最大PRU
[00331] ・最大PRUまでの時間
[00332] ・4時間以内の最大PRU
[00333] ・180以上のPRUまでの時間
[00334] ・200以上のPRUまでの時間
[00335] ・220以上のPRUまでの時間
[00336] ・30分又は4時間以内にPRUが60%、80%及び90%回復するまでの時間
【0246】
[00337] LTA:
[00338] ・4つまでの血小板アゴニスト(20μMアデノシン二リン酸[ADP]、5μM ADP、1.6mMアラキドン酸[AA]、及び15μMトロンビン受容体活性化ペプチド[TRAP])についての凝集の最大及び最終程度を、各評価時点で記録する。
[00339] ・各評価時点で記録する。
[00340] ・チカグレロル抗血小板凝集における逆転率
[00341] ・最大血小板凝集率
[00342] ・最大血小板凝集率までの時間
[00343] ・4時間以内の最大血小板凝集率
[00344] ・血小板凝集の逆転率が60%、80%及び90%になるまでの時間
[00345] ・30分以内又は4時間以内に血小板凝集の逆転率が60%、80%及び90%を達成した被験者の数及び割合
【0247】
[00346] ELISAによるVASP:
[00347] ・各評価時点におけるPRI;
[00348] ・各評価時点におけるPRIの逆転率;
[00349] ・最大PRI;
[00350] ・最大PRIまでの時間;
[00351] ・4時間以内の最大PRI;
[00352] ・PRIの逆転率が60%、80%及び90%になるまでの時間
[00353] ・30分以内又は4時間以内にPRIの逆転率が60%、80%及び90%を達成した被験者の数及び割合
[00354] 治験薬投与の24時間後に6回目のチカグレロルを投与されたコホートについては、PDパラメータを1日目及び2日目で別々に算出する。
【0248】
[00355] 薬物動態評価:
[00356] 血漿のための血液採取:血液サンプルを適切な時点で採取し、各サンプリング時点でのPB2452の血漿中濃度を評価する。以下のPKパラメータを算出する:
[00357] ・0時間から定量可能な最終濃度時点までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)(AUC0-τ);
[00358] ・観測最高血漿中濃度(Cmax);
[00359] ・観測最高血漿中濃度到達時間(Tmax);
[00360] ・投与後0時間から24時間までのAUC(AUC0-24)
[00361] ・投与後0時間から48時間までのAUC(AUC0-48)
[00362] ・0時間から無限大時間までのAUC(AUC0-∞;データがあれば);
[00363] ・消失半減期(t1/2;データがあれば)
[00364] ・クリアランス(CL;データがあれば)
【0249】
[00365] 各サンプリング時点におけるチカグレロル及び代謝産物TAMの血漿中PK濃度を評価する。以下のPKパラメータを算出する:
[00366] ・Cmax
[00367] ・Tmax
[00368] ・AUC0-Τ
[00369] ・投与後0時間から12時間までのAUC(AUC0-12)
[00370] ・AUC0-24
[00371] ・AUC0-48
[00372] ・AUC0-∞;データがあれば
[00373] ・t1/2;データがあれば
[00374] 治験薬投与開始から24時間後に6回目のチカグレロルを投与されたコホートについては、血漿中PB2452もチカグレロル/TAMもAUC0-48は算出しない。残りのPKパラメータは、1日目及び2日目を別々に算出してもよい。
【0250】
[00375] PB2452、チカグレロル及びTAMの尿中濃度を評価するための採尿プール尿サンプルは、以下の間隔にわたって採取する:投与前(-2日目の最初のチカグレロル投与前60分以内)、並びに0~6時間、6~12時間及び12~24時間。チカグレロルの6回目の投与を受けた患者では、チカグレロル及びTAMの尿中濃度を評価するためのプールされた尿サンプルは、6回目のチカグレロル投与から始めて、以下の間隔にわたって採取する:0~6時間、6~12時間、12~24時間。
【0251】
[00376] 算出するPK集団の全被験者のPB2452、チカグレロル及びTAMの尿中濃度の薬物動態パラメータは以下のとおりである:
[00377] ・投与の24時間後(Ae24)及び48時間後(Ae48)の尿中に排泄された薬物の総量
[00378] ・t1時からt2時までの時間に尿中に排泄された薬物の総量(Aet1-t2)(t1~t2の値が0~6時間、6~12時間、12~24時間及び24~48時間のとき)
[00379] ・投与後1~24時間(Fe24)及び投与後1~48時間(Fe48)に尿中に排泄された画分
[00380] ・投与後24時間の腎クリアランス(CLr)
[00381] 治験薬投与開始から24時間後に6回目のチカグレロル投与を受けたコホートについては、Fe48及びAe24-48は算出しない。その他の尿中PKパラメータは、1日目及び2日目を別々に算出してもよい。
【0252】
実施例4-健常被験者における高用量チカグレロル前処置によるPB2452の安全性、忍容性、薬物動態及び薬力学を評価する試験
[00382] 経口チカグレロル180mgを1日2回48時間前投与した健康被験者のコホートを、PB2452又はプラセボの用量用法に3:1の比(PB2452:プラセボ)で無作為に割り付けた。PB2452の用法は、10分かけて12gを注入し、続いて6時間かけて12gを注入し、その後18時間かけて12gを注入するとした。血小板機能を上記のように測定した。
【0253】
参照による援用
[00383] 引用した全ての刊行物、特許、及び特許刊行物は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0254】
[00384] 本出願は、全ての目的のために以下の刊行物全体を参照により組み込むものとする:米国特許出願公開第2016/0130366号。
【0255】
参考文献
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