(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】空気清浄システム及び空気清浄方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/79 20180101AFI20240426BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240426BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20240426BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F11/74
F24F11/46
(21)【出願番号】P 2019233972
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-10-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】櫟原 勉
(72)【発明者】
【氏名】永谷 吉祥
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-174624(JP,A)
【文献】特開昭63-143448(JP,A)
【文献】特開2010-134367(JP,A)
【文献】特開2009-139010(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03578886(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007、11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風を送出する送風ユニットと、
空間内で咳又はくしゃみの音が発生した位置を検出する検出ユニットと、
前記送風ユニットを制御する制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、前記検出ユニットによって検出された位置に向かって、前記空間の大きさに応じた前記風を送出するように前記送風ユニットを制御
し、
前記空間の大きさは、前記送風ユニットから前記位置を結ぶ直線の延長線上に位置する障害物までの距離であり、
前記検出ユニットは、さらに、前記音を検出するマイクロフォンを含み、前記音を検出した後、前記距離を検出する
空気清浄システム。
【請求項2】
前記検出ユニットは、前記障害物による前記音の反射音を前記マイクロフォンが検出することで、前記距離を検出する
請求項
1に記載の空気清浄システム。
【請求項3】
前記検出ユニットは、さらに、超音波を放出する超音波発振器を含み、前記障害物による前記超音波の反射波を検出することで、前記距離を検出する
請求項
1又は2に記載の空気清浄システム。
【請求項4】
前記検出ユニットは、さらに、発光素子と、受光素子とを含み、前記発光素子から出射された光の前記障害物による反射光を前記受光素子が受光することで、前記距離を検出する
請求項
1~
3のいずれか1項に記載の空気清浄システム。
【請求項5】
空間内で咳又はくしゃみの音が発生した位置を検出するステップと、
検出された位置に向かって、前記空間の大きさに応じた風を送出するように送風ユニットを制御するステップとを含
み、
前記空間の大きさは、前記送風ユニットから前記位置を結ぶ直線の延長線上に位置する障害物までの距離であり、
前記検出するステップでは、マイクロフォンが前記音を検出した後、前記距離を検出する
空気清浄方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の空気清浄方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄システム及び空気清浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、音検知センサを用いて咳又はくしゃみの音が発生した位置を検出し、検出した位置に向けて、薬剤を含む気流を噴射する浄化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
病人が咳又はくしゃみを行った場合、当該病人の口からインフルエンザウイルスなどのウイルス又は菌である感染性物質が放出される。感染性物質が濃い濃度で空間中を浮遊している場合、近くに居る人が一度に大量の感染性物質を吸い込み、病気に感染する可能性が高くなる。一方で、感染性物質の濃度を薄くすれば、人が吸い込む感染性物質の量が少なくなるので、病気には感染しにくくなる。
【0005】
そこで、本発明は、感染性物質を効果的に希釈することができる空気清浄システム及び空気清浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る空気清浄システムは、風を送出する送風ユニットと、空間内で咳又はくしゃみの音が発生した位置を検出する検出ユニットと、前記送風ユニットを制御する制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、前記検出ユニットによって検出された位置に向かって、前記空間の大きさに応じた前記風を送出するように前記送風ユニットを制御する。
【0007】
本発明の一態様に係る空気清浄方法は、空間内で咳又はくしゃみの音が発生した位置を検出するステップと、検出された位置に向かって、前記空間の大きさに応じた風を送出するように送風ユニットを制御するステップとを含む。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記空気清浄方法をコンピュータに実行させるプログラムとして実現することができる。あるいは、当該プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、感染性物質を効果的に希釈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る空気清浄装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、狭い空間内で、実施の形態1に係る空気清浄装置が送出する風を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、広い空間内で、実施の形態1に係る空気清浄装置が送出する風を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る空気清浄装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態2に係る空気清浄装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施の形態2に係る空気清浄装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態3に係る空気清浄装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、実施の形態3に係る空気清浄装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施の形態の変形例に係る空気清浄システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態に係る空気清浄システム及び空気清浄方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
(実施の形態1)
[構成]
まず、実施の形態1に係る空気清浄システムの構成について説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る空気清浄装置1の構成を示すブロック図である。空気清浄装置1は、空気清浄システムの一例であり、空気清浄システムが備える構成要素を一体的に備える装置である。
【0015】
図1に示されるように、空気清浄装置1は、送風ユニット10と、検出ユニット20と、制御ユニット30とを備える。送風ユニット10、検出ユニット20及び制御ユニット30は、空気清浄装置1の外郭筐体の内部に収納され、又は、外部に取り付けられている。
【0016】
送風ユニット10は、風70を送出する。本実施の形態では、送風ユニット10は、指向性の強い風70を送出する。具体的には、送風ユニット10は、一の直線方向に沿って直進性が高く、かつ、広がりの少ない風70を送出するサーキュレータである。風70の送出方向(以下、送風方向と記載)は、風70の直進方向を意味する。
【0017】
図1に示されるように、送風ユニット10は、風向調整部11と、風速調整部12とを備える。
【0018】
風向調整部11は、風70の送出方向を調整する。風向調整部11は、例えば、送風ユニット10自体の向きを回転させる回転台である。あるいは、風向調整部11は、送風ユニット10の風70の吹出口に設けられた可動式のルーバーであってもよい。送風方向は、所定範囲内でスイングされてもよい。送風方向の変更ができれば、風向調整部11の具体的な構成は、特に限定されない。
【0019】
風速調整部12は、風70の風速を調整する。送風ユニット10による風速の調整の具体例については、後で説明する。風速調整部12は、例えば、風70を生成するファンの回転数を調整することで、風70の風速を調整する。風速調整部12は、ファンを回転させるモータに電流を供給する電源及び制御回路などで実現される。
【0020】
検出ユニット20は、空間内で咳又はくしゃみの音が発生した位置を検出する。本実施の形態では、検出ユニット20は、少なくとも1つのマイクロフォンを含んでいる。
図1に示されるように、検出ユニット20は、マイクアレイ21を含んでいる。検出ユニット20は、マイクアレイ21が咳又はくしゃみの音を検出することにより、音が発生した位置(以下、音源位置と記載)を検出する。
【0021】
マイクアレイ21は、所定の面内に配置された複数のマイクロフォンを含んでいる。例えば、複数のマイクロフォンは、環状に並んで配列されているが、行列状に配列されていてもよい。あるいは、複数のマイクロフォンは、直線状に並んで配列されていてもよい。検出ユニット20は、マイクアレイ21に含まれる複数のマイクロフォンの各々が検出した音の位相差などに基づいて音源位置を検出する。
【0022】
なお、マイクアレイ21が検出した音が、咳又はくしゃみの音であるか否かは、パターン解析によって判定される。例えば、検出ユニット20は、咳又はくしゃみの音声パターンをメモリに予め記憶している。検出ユニット20は、マイクアレイ21が検出した音と、メモリに記憶された音声パターンとを比較することにより、マイクアレイ21が検出した音が咳又はくしゃみの音であるか否かを判定する。咳又はくしゃみの音声パターンは、標準的な咳又はくしゃみの音声パターンであるが、特定の人物の咳又はくしゃみの音声パターンであってもよい。例えば、検出ユニット20は、空気清浄装置1が配置される空間の利用者(例えば、居住者又は訪問者など)の咳又はくしゃみの音声パターンを比較対象として記憶してもよい。これにより、咳又はくしゃみの判定精度を高めることができる。また、検出ユニット20は、機械学習を行うことで、咳又はくしゃみの音の判定を行ってもよい。
【0023】
反射音についても同様に、パターン解析によって判定することができる。反射音は、障害物の材質によって変化するので、障害物の材質毎に反射音のサンプルパターンを予め記憶していてもよい。あるいは、空気清浄システムが適用される空間の壁、家具及び家電機器などの障害物になりうる候補物体毎に反射音のサンプルパターンを予め記憶していてもよい。また、検出ユニット20は、機械学習を行うことで、反射音の判定を行ってもよい。機械学習を行うことによって、咳又はくしゃみの音の反射音の判定精度を高めることができる。
【0024】
マイクアレイ21は、検出範囲に指向性を有してもよい。具体的には、マイクアレイ21は、水平方向に対して強い検出範囲を有し、垂直方向に対する検出範囲が弱くてもよい。これにより、検出すべき障害物による反射音と、天井又は床による反射音とを識別しやすくすることができる。
【0025】
本実施の形態では、検出ユニット20は、マイクアレイ21が咳又はくしゃみの音を検出した後、空間の大きさを検出する。空間の大きさは、例えば、送風ユニット10から音源位置を結ぶ直線の延長線上に位置する障害物までの距離である。
【0026】
検出ユニット20は、咳又はくしゃみの音の、障害物による反射音をマイクアレイ21が検出することで、障害物までの距離を検出する。咳又はくしゃみの音の反射音は、咳又はくしゃみの音の直接音より小さく、かつ、直接音より後に検出される音である。例えば、検出ユニット20は、マイクアレイ21に含まれる複数のマイクロフォンの各々が検出した反射音の位相差に基づいて、反射音の発生した位置、すなわち、障害物の位置を検出する。検出ユニット20は、障害物の位置と送風ユニット10の位置とに基づいて、送風ユニット10から障害物までの距離を検出することができる。
【0027】
制御ユニット30は、送風ユニット10を制御する。具体的には、制御ユニット30は、検出ユニット20による検出結果に基づいて、送風ユニット10を制御する。より具体的には、制御ユニット30は、検出ユニット20によって検出された位置(具体的には、音源位置)に向かって、咳又はくしゃみの音が発生した空間の大きさに応じた風70を送出するように送風ユニットを制御する。制御ユニット30による風70の具体的な調整については後で説明する。
【0028】
制御ユニット30は、例えば、集積回路(IC:Integrated Circuit)であるLSI(Large Scale Integration)によって実現される。なお、集積回路は、LSIに限られず、専用回路又は汎用プロセッサであってもよい。例えば、制御ユニット30は、マイクロコントローラであってもよい。プロセッサ又はマイクロコントローラは、例えば、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを含んでいる。また、制御ユニット30は、プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内の回路セルの接続及び設定が再構成可能なリコンフィギュラブルプロセッサであってもよい。制御ユニット30が実行する機能は、ソフトウェアで実現されてもよく、ハードウェアで実現されてもよい。
【0029】
[空間の大きさに応じた風]
次に、本実施の形態に係る空気清浄装置1の送風ユニット10が送出する、空間の大きさに応じた風70について、
図2及び
図3を用いて説明する。上述したように、空間の大きさは、送風ユニット10から障害物までの距離である。制御ユニット30は、障害物までの距離に応じた風70を送出する。
【0030】
図2は、狭い空間80内で空気清浄装置1が送出する風70を模式的に示す図である。
図3は、広い空間81内で空気清浄装置1が送出する風70を模式的に示す図である。
【0031】
図2及び
図3に示されるように、人90が咳又はくしゃみをした場合、検出ユニット20によって音源位置91が検出される。送風ユニット10(本実施の形態では、空気清浄装置1)から音源位置91を結ぶ直線の延長線上には、空間80を規定する壁面82又は83が障害物として存在している。したがって、制御ユニット30は、送風ユニット10から壁面82又は83までの距離D1又はD2に応じた風70を送出する。なお、距離D1及びD2は、人90が行った咳又はくしゃみの音の、壁面82又は83による反射音をマイクアレイ21が検出することによって得られる。
【0032】
壁面82及び83などの障害物は、送風ユニット10から音源位置91に向けて送出された風70を拡散させることができる。つまり、障害物までの距離が短い程、風70が拡散されやすくなるので、感染性物質の希釈効果が高くなる。逆に、障害物までの距離が長い程、風70が拡散されにくくなるので、感染性物質の希釈効果が低くなる。このため、制御ユニット30は、障害物までの距離に応じて風70の風速を調整することで、感染性物質を十分に希釈させる。
【0033】
例えば、制御ユニット30は、障害物までの距離が長い程、風速を大きくすることにより、風70が一定以上の速度で障害物まで到達し、障害物によって拡散されやすくする。また、制御ユニット30は、障害物までの距離が短い程、風速を小さくする。風速が小さくても、障害物までの距離が短いので、風70が一定以上の速度で障害物まで到達し、障害物によって十分に拡散させることができる。風速を小さくすることにより、消費電力の増加を抑制することができる。つまり、感染性物質の希釈効果を維持しながら、省エネルギー化を実現することができる。
【0034】
例えば、
図2及び
図3に示されるように、送風ユニット10(空気清浄装置1)から壁面82までの距離D1は、送風ユニット10から壁面83までの距離D2よりも短い。
図2に示される空間80内では、制御ユニット30は、風速が小さい風71を送出するように送風ユニット10を制御する。
図3に示される空間81内では、制御ユニット30は、風速が大きい風72を送出するように送風ユニット10を制御する。つまり、狭い空間80内で送出される風71の風速は、空間80より広い空間81内で送出される風72の風速より小さい。
【0035】
なお、制御ユニット30は、風速の代わりに、又は、風速に加えて、空間の大きさに基づいて風量を制御してもよい。例えば、制御ユニット30は、狭い空間80内で送出される風71の風量が、空間80より広い空間81内で送出される風72の風量より少なくなるように送風ユニット10を制御してもよい。あるいは、制御ユニット30は、空間の大きさに基づいて風70の送風範囲を制御してもよい。
【0036】
[動作]
続いて、本実施の形態に係る空気清浄装置1の動作について、
図4を用いて説明する。
【0037】
図4は、本実施の形態に係る空気清浄装置1の動作を示すフローチャートである。
【0038】
図4に示されるように、検出ユニット20のマイクアレイ21が、人90が行う咳又はくしゃみの音を検出するまで、空気清浄装置1は待機する(S10でNo)。待機中は、送風ユニット10は、例えば、空間内の全体に風70が行き亘るように、送風方向をスイングする。あるいは、送風ユニット10は、送風方向を一方向に固定して風70を送出してもよい。あるいは、送風ユニット10は、風70の送出を停止していてもよい。
【0039】
マイクアレイ21が咳又はくしゃみの音を検出した場合(S10でYes)、検出ユニット20は、検出した音に基づいて音源位置を検出する(S12)。次に、制御ユニット30は、咳又はくしゃみの音の障害物による反射音を検出することで、障害物までの距離を空間の大きさとして検出する(S14)。
【0040】
次に、制御ユニット30は、空間の大きさに応じた風70を送出するように送風ユニット10を制御する(S16)。具体的には、制御ユニット30は、送風ユニット10を制御することで、障害物までの距離に応じた風70を送出させる。
【0041】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る空気清浄システムの一例である空気清浄装置1は、風70を送出する送風ユニット10と、空間内で咳又はくしゃみの音が発生した位置を検出する検出ユニット20と、送風ユニット10を制御する制御ユニット30とを備える。制御ユニット30は、検出ユニット20によって検出された位置に向かって、空間の大きさに応じた風70を送出するように送風ユニット10を制御する。
【0042】
これにより、空間の大きさに応じた風70が送出されるので、適切な風70によって感染性物質を効果的に拡散させることができ、感染性物質を効果的に希釈することができる。
【0043】
また、例えば、空間の大きさは、送風ユニット10から音源位置を結ぶ直線の延長線上に位置する障害物までの距離である。
【0044】
これにより、障害物による風70の拡散を利用して、感染性物質をより広範囲に拡散させることができる。これにより、感染性物質をより効果的に希釈することができる。
【0045】
また、例えば、検出ユニット20は、さらに、音を検出するマイクロフォンを含み、音を検出した後、障害物までの距離を検出する。
【0046】
これにより、送風ユニット10を基準とした場合に距離を検出すべき障害物が位置する方向を音源位置に基づいて決定することができるので、障害物までの距離の検出精度を高めることができる。したがって、適切な風70を送出し、感染性物質を効果的に希釈することができる。
【0047】
また、例えば、検出ユニット20は、障害物による音の反射音をマイクロフォンが検出することで、障害物までの距離を検出する。
【0048】
これにより、音源位置の延長線上に位置する障害物以外の物体(例えば、天井又は床など)からの反射音を検出対象から除外することができ、音源位置の延長線上に位置する障害物からの反射音を精度良く検出することができる。したがって、障害物までの距離を精度良く検出することができるので、適切な風70を送出し、感染性物質を効果的に希釈することができる。
【0049】
また、例えば、本実施の形態に係る空気清浄方法は、空間内で咳又はくしゃみの音が発生した位置を検出するステップと、検出された位置に向かって、空間の大きさに応じた風70を送出するように送風ユニット10を制御するステップとを含む。また、例えば、本実施の形態に係るプログラムは、上記空気清浄方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0050】
これにより、上述した空気清浄システムの場合と同様に、感染性物質を効果的に希釈することができる。
【0051】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。
【0052】
実施の形態2に係る空気清浄システムは、実施の形態1に係る空気清浄システムと比較して、障害物までの距離の検出方法が相違する。具体的には、本実施の形態に係る空気清浄システムでは、超音波を用いて距離を検出する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0053】
[構成]
まず、本実施の形態に係る空気清浄装置101の構成について、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施の形態に係る空気清浄装置101の構成を示すブロック図である。
【0054】
図5に示されるように、空気清浄装置101は、実施の形態1に係る空気清浄装置1と比較して、検出ユニット20の代わりに検出ユニット120を備える点が相違する。検出ユニット120は、マイクアレイ21と、超音波発振器121とを備える。
【0055】
超音波発振器121は、超音波を放出する。具体的には、超音波発振器121は、検出ユニット120が咳又はくしゃみの音を検出した後、検出された音源位置に基づいて、送風ユニット10から音源位置を結ぶ直線の延長線上に位置する障害物に向かって超音波を放出する。
【0056】
検出ユニット120は、超音波発振器121から放出された超音波の、障害物による反射波を検出することで、距離を検出する。本実施の形態では、マイクアレイ21が超音波の反射波を検出する。検出ユニット120は、例えば、超音波を放出してから、放出した超音波の反射波を受信するまでの時間と、超音波が空気中を伝搬する速度(音速)とを用いて、障害物までの距離を算出する。
【0057】
なお、マイクアレイ21は、実施の形態1と同様であり、可聴域だけでなく、超音波域に受信感度を有する。あるいは、検出ユニット120は、マイクアレイ21とは異なる超音波受信機を有してもよい。この場合、マイクアレイ21は、超音波域に受信感度を有しなくてもよい。
【0058】
[動作]
次に、本実施の形態に係る空気清浄装置101の動作について、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施の形態に係る空気清浄装置101の動作を示すフローチャートである。
【0059】
図6に示されるように、音源位置の検出(S12)までの処理は、実施の形態1に係る空気清浄装置1と同じである。音源位置を検出した後、検出ユニット120の超音波発振器121は、超音波を放出する(S23)。具体的には、超音波発振器121は、送風ユニット10と音源位置とを結ぶ直線の延長線上に位置する障害物に向かって超音波を放出する。空気清浄装置101は、超音波発振器121と送風ユニット10とを一体的に備えるので、超音波発振器121は、音源位置に向かって超音波を放出することにより、音源位置の奥(すなわち、送風ユニット10と音源位置とを結ぶ直線の延長線上に)に位置する障害物によって超音波が反射される。
【0060】
検出ユニット120は、障害物による超音波の反射波を検出することで、障害物までの距離を空間の大きさとして検出する(S24)。次に、制御ユニット30は、空間の大きさに応じた風70を送出するように送風ユニット10を制御する(S16)。具体的には、制御ユニット30は、送風ユニット10を制御することで、障害物までの距離に応じた風70を送出させる。
【0061】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る空気清浄システムの一例である空気清浄装置101では、検出ユニット120は、さらに、超音波を放出する超音波発振器121を含み、障害物による超音波の反射波を検出することで、障害物までの距離を検出する。
【0062】
これにより、超音波に基づいて障害物までの距離を精度良く検出することができるので、適切な風70を送出し、感染性物質を効果的に希釈することができる。
【0063】
なお、空気清浄装置101の検出ユニット120は、実施の形態1と同様に、咳又はくしゃみの音の、障害物による反射音を検出し、検出した反射音に基づいて障害物までの距離をさらに検出してもよい。つまり、検出ユニット120は、障害物までの距離の検出に、咳又はくしゃみの音の反射音と超音波の反射波とを用いてもよい。例えば、検出ユニット120は、咳又はくしゃみの音の反射音に基づいて検出された距離と、超音波の反射波に基づいて検出された距離との平均値を、障害物までの距離として決定してもよい。あるいは、検出ユニット120は、咳又はくしゃみの音の反射音に基づいて検出された距離と、超音波の反射波に基づいて検出された距離とのうち一方の距離を障害物までの距離として選択してもよい。
【0064】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。
【0065】
実施の形態3に係る空気清浄システムは、実施の形態1に係る空気清浄システムと比較して、障害物までの距離の検出方法が相違する。具体的には、本実施の形態に係る空気清浄システムでは、光を用いて距離を検出する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0066】
[構成]
まず、本実施の形態に係る空気清浄装置201の構成について、
図7を用いて説明する。
図7は、本実施の形態に係る空気清浄装置201の構成を示すブロック図である。
【0067】
図7に示されるように、空気清浄装置201は、実施の形態1に係る空気清浄装置1と比較して、検出ユニット20の代わりに検出ユニット220を備える点が相違する。検出ユニット220は、マイクアレイ21と、発光素子221と、受光素子222とを備える。
【0068】
発光素子221は、光を出射する。発光素子221は、検出ユニット220が咳又はくしゃみの音を検出した後、検出された音源位置に基づいて、送風ユニット10から音源位置を結ぶ直線の延長線上に位置する障害物に向かって光を出射する。光は、例えば可視光であるが、赤外光であってもよい。発光素子221は、例えば、LED(Light Emitting Diode)又は有機EL(Electroluminescence)素子などの固体発光素子であるが、これらに限定されない。発光素子221は、蛍光灯などの放電式のランプであってもよい。
【0069】
受光素子222は、発光素子221から出射され、障害物によって反射された反射光を受光する。受光素子222は、受光した光の強度に応じた電気信号を生成する光電変換素子である。受光素子222は、例えば、フォトダイオードであるが、フォトトランジスタ又は光電子増倍管であってもよい。
【0070】
検出ユニット220は、発光素子221から出射された光の障害物による反射光を受光素子222が受光することで、距離を検出する。例えば、検出ユニット220は、ToF(Time of Flight)方式で障害物までの距離を算出する。具体的には、発光素子221が光を出射してから、出射された光の反射光を受光するまでの時間と、光速とを用いて、障害物までの距離を算出する。
【0071】
[動作]
次に、本実施の形態に係る空気清浄装置201の動作について、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施の形態に係る空気清浄装置201の動作を示すフローチャートである。
【0072】
図8に示されるように、音源位置の検出(S12)までの処理は、実施の形態1に係る空気清浄装置1と同じである。音源位置を検出した後、検出ユニット220の発光素子221は、光を出射する(S33)。具体的には、発光素子221は、送風ユニット10と音源位置とを結ぶ直線の延長線上に位置する障害物に向かって光を出射する。空気清浄装置201は、発光素子221と送風ユニット10とを一体的に備えるので、発光素子221は、音源位置に向かって光を出射することにより、音源位置の奥(すなわち、送風ユニット10と音源位置とを結ぶ直線の延長線上に)に位置する障害物によって光が反射される。
【0073】
検出ユニット220は、障害物による光の反射光を検出することで、障害物までの距離を空間の大きさとして検出する(S34)。次に、制御ユニット30は、空間の大きさに応じた風70を送出するように送風ユニット10を制御する(S16)。具体的には、制御ユニット30は、送風ユニット10を制御することで、障害物までの距離に応じた風70を送出させる。
【0074】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る空気清浄システムの一例である空気清浄装置201では、検出ユニット220は、さらに、発光素子221と、受光素子222とを含み、発光素子221から出射された光の障害物による反射光を受光素子222が受光することで、障害物までの距離を検出する。
【0075】
これにより、光に基づいて障害物までの距離を精度良く検出することができるので、適切な風70を送出し、感染性物質を効果的に希釈することができる。
【0076】
なお、空気清浄装置201の検出ユニット220は、実施の形態1と同様に、咳又はくしゃみの音の、障害物による反射音を検出し、検出した反射音に基づいて障害物までの距離をさらに検出してもよい。つまり、検出ユニット220は、障害物までの距離の検出に、咳又はくしゃみの音の反射音と光の反射光とを用いてもよい。例えば、検出ユニット220は、咳又はくしゃみの音の反射音に基づいて検出された距離と、反射光に基づいて検出された距離との平均値を、障害物までの距離として決定してもよい。あるいは、検出ユニット220は、咳又はくしゃみの音の反射音に基づいて検出された距離と、反射光に基づいて検出された距離とのうち一方の距離を障害物までの距離として選択してもよい。
【0077】
また、障害物の材質によって反射光の分光スペクトルが異なるので、検出ユニット220は、反射光の分光スペクトルを解析することにより、障害物の材質を検出してもよい。これにより、検出した材質に基づいて障害物による反射音の識別精度を高めることができる。検出ユニット220は、検出した材質に応じた反射音を検出することができるので、反射音に基づいて障害物までの距離を精度良く検出することができる。
【0078】
(その他)
以上、本発明に係る空気清浄システム及び空気清浄方法について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0079】
例えば、送風ユニット10と検出ユニット20、120又は220とは、空間内の異なる位置に配置されていてもよい。
図9は、実施の形態の変形例に係る空気清浄システム2の構成を模式的に示す図である。
図9に示されるように、空気清浄システム2は、実施の形態1に係る空気清浄装置1と同様に、送風ユニット10と、検出ユニット20と、制御ユニット30とを備える。送風ユニット10と検出ユニット20とは、空間80内の異なる位置に配置されている。制御ユニット30は、空間80の外部に配置されており、送風ユニット10及び検出ユニット20とは、有線又は無線で通信可能に接続されている。この場合、検出ユニット20は、反射音に基づいて障害物(具体的には、壁面82)から検出ユニット20までの距離を算出し、送風ユニット10と検出ユニット20との位置関係に基づいて、算出した距離を補正することで、送風ユニット10から障害物までの距離を算出する。
【0080】
なお、障害物が送風ユニット10と音源位置91とを結ぶ直線の延長線上に位置することを利用して、検出ユニット120の超音波発振器121は、障害物が存在しうる方向に向けて超音波を放出する。例えば、超音波発振器121は、音源位置91を基準位置として超音波の放出方向をスキャンしてもよい。具体的には、超音波発振器121は、検出ユニット120から音源位置91に向かう方向をスキャンの開始方向として、送風ユニット10から離れる方向(壁面82に近づく方向)に向かって放出方向を移動させてもよい。これにより、送風ユニット10と音源位置91とを結ぶ直線の延長線上に位置する障害物を超音波によって検出することができる。光を利用する検出ユニット220についても同様である。
【0081】
また、例えば、検出ユニット20、120又は220は、マイクロフォンを含んでいなくてもよい。検出ユニット20、120又は220は、空間内を撮像することで、動画像を生成するイメージセンサを含んでもよい。例えば、検出ユニット20、120又は220は、画像処理を行うことによって、動画像に含まれる人の動作を分析する。検出ユニット20、120又は220は、咳又はくしゃみが行われた場合に、咳又はくしゃみを行った時の人の口元を音源位置として検出する。このように、検出ユニット20、120又は220は、音を検出することなく、画像を用いて間接的に音源位置を検出してもよい。
【0082】
また、例えば、送風ユニット10は、直進性が弱く、広がりやすい風を送出してもよい。例えば、送風ユニット10は、扇風機、エアコン、空気清浄機などの送風機能を有する機器であってもよい。
【0083】
また、例えば、障害物は、空気清浄装置1が配置される部屋の壁でなくてもよい。障害物は、部屋の中に配置された家具又は家電機器などであってもよい。障害物は、音、超音波又は光を反射できる固体であればよい。
【0084】
また、例えば、空気清浄装置及び空気清浄システムは、空間の大きさの検出を行わなくてもよい。例えば、空気清浄装置及び空気清浄システムは、空間の大きさを示す情報を予め記憶部に記憶していてもよい。例えば、空気清浄装置及び空気清浄システムは、空間80又は81の三次元データを記憶していてもよい。検出ユニットは、送風ユニット10と音源位置91との位置関係に基づいて三次元データを参照することで、障害物の位置を特定してもよい。
【0085】
また、上記実施の形態で説明した装置間の通信方法については特に限定されるものではない。装置間で無線通信が行われる場合、無線通信の方式(通信規格)は、例えば、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又は、無線LAN(Local Area Network)などの近距離無線通信である。あるいは、無線通信の方式(通信規格)は、インターネットなどの広域通信ネットワークを介した通信でもよい。また、装置間においては、無線通信に代えて、有線通信が行われてもよい。有線通信は、具体的には、電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)又は有線LANを用いた通信などである。
【0086】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよく、あるいは、複数の処理が並行して実行されてもよい。また、空気清浄システムが備える構成要素の複数の装置への振り分けは、一例である。例えば、一の装置が備える構成要素を他の装置が備えてもよい。また、空気清浄システムは、単一の装置として実現されてもよい。
【0087】
例えば、上記実施の形態において説明した処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、又は、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するプロセッサは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
【0088】
また、上記実施の形態において、制御ユニットなどの構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、あるいは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、HDD(Hard Disk Drive)又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0089】
また、制御ユニットなどの構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0090】
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)などが含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGA(Field Programmable Gate Array)も同じ目的で使うことができる。
【0091】
また、本発明の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路又はコンピュータプログラムで実現されてもよい。あるいは、当該コンピュータプログラムが記憶された光学ディスク、HDD若しくは半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0092】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1、101、201 空気清浄装置(空気清浄システム)
2 空気清浄システム
10 送風ユニット
20、120、220 検出ユニット
21 マイクアレイ
30 制御ユニット
70、71、72 風
80、81 空間
82、83 壁面(障害物)
91 音源位置
121 超音波発振器
221 発光素子
222 受光素子