(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】燃料処理器の運転方法、コンピュータプログラム、記録媒体及び燃料処理器
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0612 20160101AFI20240426BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20240426BHJP
H01M 8/0668 20160101ALI20240426BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20240426BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240426BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240426BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240426BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20240426BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20240426BHJP
C07C 1/04 20060101ALI20240426BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240426BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240426BHJP
【FI】
H01M8/0612
H01M8/04225
H01M8/0668
H01M8/04302
H01M8/0432
H01M8/04746
H01M8/04537
H01M8/04701
C07C9/04
C07C1/04
H01M8/10 101
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021027640
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100202201
【氏名又は名称】兒島 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】飯山 繁
(72)【発明者】
【氏名】楠山 貴広
(72)【発明者】
【氏名】田口 清
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137209(JP,A)
【文献】特開平07-169496(JP,A)
【文献】特開2004-027975(JP,A)
【文献】特開2010-135125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0612
H01M 8/04225
H01M 8/0668
H01M 8/04302
H01M 8/0432
H01M 8/04746
H01M 8/04537
H01M 8/04701
C07C 1/04
C07C 9/04
H01M 8/10
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質器と、
CO除去器と、
前記改質器を加熱する燃焼器と、
前記改質器、前記CO除去器及び前記燃焼器をこの順に流体が流れる流体流れを形成する流体機械と、
前記燃焼器の燃焼状態に応じたイオン電流が流れるフレームロッドと、
前記CO除去器を加熱する加熱器と、を備えた燃料処理器の運転方法であって、
前記改質器に、水素及び一酸化炭素を含み炭化水素の濃度が可燃下限界未満である原料が供給され、
前記加熱器が前記CO除去器を加熱する動作を加熱動作と定義し、
前記流体機械が前記原料を前記改質器に供給することによって前記流体流れを形成する動作を流れ形成動作と定義したとき、
前記運転方法は、
前記加熱動作を開始することと、
前記加熱動作を開始した後に前記流れ形成動作を開始し、これにより前記原料よりも炭化水素の濃度が高い前記流体を前記燃焼器に供給することと、を含
み、
前記流れ形成動作が行われる期間は、少なくとも前記改質器において前記原料に含まれた水素および一酸化炭素から化学反応により炭化水素を生成する期間を含む、
運転方法。
【請求項2】
前記流れ形成動作が行われる期間は、少なくとも前記改質器において前記原料に含まれた水素および一酸化炭素からメタン化反応によりメタンを生成する期間を含む、
請求項1に記載の運転方法。
【請求項3】
前記加熱動作を開始した後に、前記加熱動作を行いながら前記流れ形成動作を行うことを開始することを含む、
請求項1
又は2に記載の運転方法。
【請求項4】
前記流れ形成動作が行われる期間は、第1期間と、前記第1期間に続く第2期間と、前記第2期間に続く第3期間と、を有し、
前記第1期間は、前記CO除去器において生成された
メタンにより、前記
CO除去器の出口における前記流体の
メタンの濃度が
閾値濃度以下の濃度から前記閾値濃度よりも高い濃度まで上昇する期間であり、
前記第2期間は、前記燃焼器における前記流体の
メタンの濃度が
前記閾値濃度以上に維持される期間であり、
前記第3期間は、前記改質器において生成された
メタンにより、前記
改質器の出口における前記流体の
メタンの濃度が
前記閾値濃度以下の濃度から前記閾値濃度よりも高い濃度まで上昇する期間であ
り、
前記閾値濃度は、0.4%以上1.0%以下である、
請求項1
から3のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項5】
前記原料における一酸化炭素の濃度は、5体積%以上であり、
前記原料における水素の濃度は、30体積%以上であり、
前記原料における炭化水素の濃度は、2体積%以下である、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項6】
前記原料は、前記燃料処理器の外部で生じた排気ガスである、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項7】
改質器と、
CO除去触媒を有するCO除去器と、
前記改質器を加熱する燃焼器と、
前記改質器、前記CO除去器及び前記燃焼器をこの順に流体が流れる流体流れを形成する流体機械と、
前記燃焼器の燃焼状態に応じたイオン電流が流れるフレームロッドと、
前記CO除去器を加熱する加熱器と、を備えた燃料処理器の運転方法であって、
前記加熱器が前記CO除去器を加熱する動作を加熱動作と定義し、
前記流体機械が原料を前記改質器に供給することによって前記流体流れを形成する動作を流れ形成動作と定義したとき、
前記運転方法は、
前記加熱動作を開始することと、
前記加熱動作を開始した後に、
前記CO除去触媒の温度が第1閾値温度以上であるときに、前記加熱動作を行いながら前記流れ形成動作を行うことを開始すること
と、
前記流れ形成動作を開始した後において、前記イオン電流が閾値電流よりも小さいときに、前記流れ形成動作を停止することと、
前記流れ形成動作を開始した後において、前記イオン電流が前記閾値電流以上のときに、前記流れ形成動作を継続することと、
前記イオン電流が前記閾値電流よりも小さいことにより前記流れ形成動作を停止した後において、前記第1閾値温度をより高い値に更新することと、
前記第1閾値温度を更新した後において、前記CO除去触媒の温度が前記第1閾値温度以上であるときに、前記加熱動作を行いながら前記流れ形成動作を行うことを再開することと、を含む、
運転方法。
【請求項8】
前記改質器は、改質触媒を有し、
前記イオン電流が
前記閾値電流以上であることにより前記流れ形成動作が継続されておりかつ前記改質触媒の温度が第3閾値温度以上であるときに、前記加熱動作を停止することを含む、請求項
7に記載の運転方法。
【請求項9】
改質触媒を有する改質器と、
CO除去器と、
前記改質器を加熱する燃焼器と、
前記改質器、前記CO除去器及び前記燃焼器をこの順に流体が流れる流体流れを形成する流体機械と、
前記燃焼器の燃焼状態に応じたイオン電流が流れるフレームロッドと、
前記CO除去器を加熱する加熱器と、を備えた燃料処理器の運転方法であって、
前記加熱器が前記CO除去器を加熱する動作を加熱動作と定義し、
前記流体機械が原料を前記改質器に供給することによって前記流体流れを形成する動作を流れ形成動作と定義したとき、
前記運転方法は、
前記加熱動作を開始することと、
前記加熱動作を開始した後に、前記加熱動作を行いながら前記流れ形成動作を行うことを開始することと、
前記流れ形成動作を開始した後において、前記イオン電流が閾値電流よりも小さいときに、前記流れ形成動作を停止することと、
前記流れ形成動作を開始した後において、前記イオン電流が前記閾値電流以上のときに、前記流れ形成動作を継続することと、
前記イオン電流が前記閾値電流以上であることにより前記流れ形成動作が継続されておりかつ前記改質触媒の温度が第3閾値温度以上であるときに、前記加熱動作を停止することを含む、
運転方法。
【請求項10】
前記燃料処理器は、前記燃焼器の点火を行う点火器をさらに備え、
前記点火器が前記燃焼器の点火を行う動作を点火動作と定義したとき、
前記イオン電流が
前記閾値電流よりも小さいことにより前記流れ形成動作を停止した後に、前記点火動作を停止することを含む、
請求項7
から9のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項11】
前記CO除去器は、CO除去触媒を有し、
前記イオン電流が
前記閾値電流よりも小さいことにより前記流れ形成動作を停止した後において、前記CO除去触媒の温度が第2閾値温度以上であるときに、前記加熱動作を停止することを含む、
請求項7から
10のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項12】
前記閾値電流は、0.4マイクロアンペア以上である、請求項7から11のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項13】
前記運転方法は、前記燃料処理器の起動時に実行される、請求項
7から
12のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項14】
コンピュータによる実行時において、請求項
7から
13のいずれか一項に記載の運転方法をコンピュータに実行させる指示を備えた、コンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項
14に記載のコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体。
【請求項16】
改質器と、
CO除去触媒を有するCO除去器と、
前記CO除去触媒の温度を検出するCO除去器温度検出器と、
前記改質器を加熱する燃焼器と、
前記改質器、前記CO除去器及び前記燃焼器をこの順に流体が流れる流体流れを形成する流体機械と、
前記燃焼器の燃焼状態に応じたイオン電流が流れるフレームロッドと、
前記イオン電流を検出する電流センサーと、
前記CO除去器を加熱する加熱器と、
前記CO除去器の加熱を前記加熱器に行わせる加熱制御と、原料を前記改質器に供給することによって前記流体流れを形成することを前記流体機械に行わせる流れ形成制御と、を実行する制御器と、を備えた燃料処理器であって、
前記燃料処理器の所定運転において、前記加熱制御が開始された後に、
前記CO除去触媒の温度が第1閾値温度以上であるときに、前記加熱制御を行いながら前記流れ形成制御を行うことが開始され
、
前記流れ形成制御を開始した後において、前記イオン電流が閾値電流よりも小さいときに、前記流れ形成制御が停止され、
前記流れ形成制御を開始した後において、前記イオン電流が前記閾値電流以上のときに、前記流れ形成制御が継続され、
前記イオン電流が前記閾値電流よりも小さいことにより前記流れ形成制御を停止した後において、前記第1閾値温度がより高い値に更新され、
前記第1閾値温度を更新した後において、前記CO除去触媒の温度が前記第1閾値温度以上であるときに、前記加熱制御を行いながら前記流れ形成制御を行うことが再開される、
燃料処理器。
【請求項17】
前記改質器は、改質触媒を有し、
前記改質触媒の温度を検出する改質器温度検出器をさらに備え、
前記イオン電流が前記閾値電流以上であることにより前記流れ形成制御が継続されておりかつ前記改質触媒の温度が第3閾値温度以上であるときに、前記加熱制御が停止される、
請求項16に記載の燃料処理器。
【請求項18】
改質触媒を有する改質器と、
前記改質触媒の温度を検出する改質器温度検出器と、
CO除去触媒を有するCO除去器と、
前記CO除去触媒の温度を検出するCO除去器温度検出器と、
前記改質器を加熱する燃焼器と、
前記改質器、前記CO除去器及び前記燃焼器をこの順に流体が流れる流体流れを形成する流体機械と、
前記燃焼器の燃焼状態に応じたイオン電流が流れるフレームロッドと、
前記イオン電流を検出する電流センサーと、
前記CO除去器を加熱する加熱器と、
前記CO除去器の加熱を前記加熱器に行わせる加熱制御と、原料を前記改質器に供給することによって前記流体流れを形成することを前記流体機械に行わせる流れ形成制御と、を実行する制御器と、を備えた燃料処理器であって、
前記燃料処理器の所定運転において、前記加熱制御が開始された後に、前記加熱制御を行いながら前記流れ形成制御を行うことが開始され、
前記流れ形成制御を開始した後において、前記イオン電流が閾値電流よりも小さいときに、前記流れ形成制御が停止され、
前記流れ形成制御を開始した後において、前記イオン電流が前記閾値電流以上のときに、前記流れ形成制御が継続され、
前記イオン電流が前記閾値電流以上であることにより前記流れ形成制御が継続されておりかつ前記改質触媒の温度が第3閾値温度以上であるときに、前記加熱制御が停止される、
燃料処理器。
【請求項19】
前記閾値電流は、0.4マイクロアンペア以上である、請求項16から18のいずれか一項に記載の燃料処理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料処理器の運転方法、コンピュータプログラム、記録媒体及び燃料処理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の燃料処理器は、改質器、CO低減器、燃焼器、火炎検出器及び制御器を備える。改質器は、炭化水素を主成分とする原料から水素含有ガスを生成する。CO低減器は、水素含有ガスの一酸化炭素濃度を低減する。燃焼器は、改質器及びCO低減器からなる群より選択される少なくとも1つを加熱する。火炎検出器は、燃焼器の火炎の有無を検出する。特許文献1には、水素生成装置の起動時において火炎検出器で炭化水素の火炎を検出する運転方法が記載されている。特許文献1では、火炎検出器としてフレームロッドが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、火炎検出器としてフレームロッドを用い原料として水素及び一酸化炭素を含み炭化水素をほとんど含まないものを用いる場合であっても火炎を検出することを可能にする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、
改質器と、
CO除去器と、
前記改質器を加熱する燃焼器と、
前記改質器、前記CO除去器及び前記燃焼器をこの順に流体が流れる流体流れを形成する流体機械と、
前記燃焼器の燃焼状態に応じたイオン電流が流れるフレームロッドと、
前記CO除去器を加熱する加熱器と、を備えた燃料処理器の運転方法であって、
前記改質器に、水素及び一酸化炭素を含み炭化水素の濃度が可燃下限界未満である原料が供給され、
前記加熱器が前記CO除去器を加熱する動作を加熱動作と定義し、
前記流体機械が前記原料を前記改質器に供給することによって前記流体流れを形成する動作を流れ形成動作と定義したとき、
前記運転方法は、
前記加熱動作を開始することと、
前記加熱動作を開始した後に前記流れ形成動作を開始し、これにより前記原料よりも炭化水素の濃度が高い前記流体を前記燃焼器に供給することと、を含む、
運転方法を提供する。
【0006】
本開示は、
改質器と、
CO除去器と、
前記改質器を加熱する燃焼器と、
前記改質器、前記CO除去器及び前記燃焼器をこの順に流体が流れる流体流れを形成する流体機械と、
前記燃焼器の燃焼状態に応じたイオン電流が流れるフレームロッドと、
前記CO除去器を加熱する加熱器と、を備えた燃料処理器の運転方法であって、
前記加熱器が前記CO除去器を加熱する動作を加熱動作と定義し、
前記流体機械が原料を前記改質器に供給することによって前記流体流れを形成する動作を流れ形成動作と定義したとき、
前記運転方法は、
前記加熱動作を開始することと、
前記加熱動作を開始した後に、前記加熱動作を行いながら前記流れ形成動作を行うことを開始することを含む、
運転方法を提供する。
【0007】
本開示は、
改質器と、
CO除去器と、
前記改質器を加熱する燃焼器と、
前記改質器、前記CO除去器及び前記燃焼器をこの順に流体が流れる流体流れを形成する流体機械と、
前記燃焼器の燃焼状態に応じたイオン電流が流れるフレームロッドと、
前記CO除去器を加熱する加熱器と、
前記CO除去器の加熱を前記加熱器に行わせる加熱制御と、原料を前記改質器に供給することによって前記流体流れを形成することを前記流体機械に行わせる流れ形成制御と、を実行する制御器と、を備えた燃料処理器であって、
前記燃料処理器の所定運転において、前記加熱制御が開始された後に、前記加熱制御を行いながら前記流れ形成制御を行うことが開始される、
燃料処理器を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る技術は、火炎検出器としてフレームロッドを用い原料として水素及び一酸化炭素を含み炭化水素をほとんど含まないものを用いる場合であっても火炎を検出することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1における燃料処理器のブロック図
【
図2】実施の形態1における、原料供給時間と、改質器温度検出器の検出温度と、第1ガス中のメタン濃度と、の関係を示す特性図
【
図3】実施の形態1における、原料供給時間と、第2ガス中のメタン濃度と、の関係を示す特性図
【
図4】実施の形態1における、燃料中のメタン濃度と、フレームロッドの電流値と、の関係を示す特性図
【
図5】実施の形態1における燃料処理器のシステム動作を示すフローチャート
【
図6】実施の形態2における燃料処理器のブロック図
【
図7】実施の形態2における燃料処理器のシステム動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、燃料処理器に関する検討がなされていた。一例に係る従来の燃料処理器では、起動時において、炭化水素が原料として改質器に供給される。この炭化水素は、改質器及びCO低減器を経由して、燃料として燃焼器に供給される。燃焼器は、燃料を燃焼することによって改質器を加熱する。燃焼器における火炎の検出は、火炎検出器により行われる。
【0011】
火炎検出器として、フレームロッドが用いられることがある。フレームロッドは、金属棒である。フレームロッドは、電源及び電流センサーと組み合わされて、電流検出回路を構成する。フレームロッドが火炎に曝されると、フレームロッドにイオン電流が流れる。その電流が、電流センサーで検出される。検出値の大小により火炎の状態が判定される。
【0012】
火炎中の炭化水素が少ないと、フレームロッドに十分なイオン電流が流れないことがある。この場合、実際には火炎が形成されているにも関わらず、火炎が形成されていないという誤った判定がなされうる。
【0013】
上記のような誤った判定を回避するための技術が存在する。例えば、アノードオフガスを燃焼器の燃料として利用する場合、アノードオフガスに含まれる炭化水素が所定の濃度以上になるように、改質器の温度を調整することが行われている。
【0014】
ただし、原料には、メタン等の炭化水素をほとんど含まないものもある。そのような原料を用いる場合、燃焼中に十分なイオン電流を流すことは容易ではなく、火炎の検出は容易ではない。実際には火炎が形成されていることが予想される状況であっても、火炎を検出できなければ、安全のために燃焼器への燃料の供給を停止せざるをえない。このことは、燃料処理器の起動を不可能にしうる。
【0015】
そこで、本開示は、火炎検出器としてフレームロッドを用い原料として水素及び一酸化炭素を含み炭化水素をほとんど含まないものを用いる場合であっても火炎を検出することを可能にする技術を提供する。
【0016】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0017】
添付図面及び以下の説明は、当事者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0018】
(実施の形態1)
以下、
図1から
図5を用いて、実施の形態1を説明する。
【0019】
[1-1.構成]
図1において、燃料処理器41は、改質器2、CO除去器4、燃焼器5、原料供給器6、加熱器9、改質器温度検出器12、CO除去器温度検出器14、点火器15、フレームロッド16及び制御器11を備える。以下、改質器温度検出器12を、第1検出器12と称することがある。CO除去器温度検出器14を、第2検出器14と称することがある。
【0020】
改質器2の内部には、図示しない改質触媒が搭載されている。本実施の形態では、改質触媒は、アルミナ担体にルテニウムを担持させた触媒である。
【0021】
改質器2には、原料が供給される。改質器2では、原料を用いたメタン化反応が生じる。このメタン化反応では、以下の化学式1に示すように、原料に含まれた水素及び一酸化炭素から、メタン及び水蒸気が生成される。以下、改質器2の出口に存するガスを、第1ガスと称する。ここで、改質器2の出口は、詳細にはCO除去器4に向かって開口する出口である。
化学式1:3H2+CO→CH4+H2O
【0022】
本実施の形態では、原料は、水素と一酸化炭素とを含む。一方、原料の炭化水素の濃度は、可燃下限界未満である。原料は、炭化水素をほとんど含んでいなくてもよい。原料は炭化水素をほとんど含まないとは、例えば、原料の炭化水素の濃度が2体積%未満であることを指す。
【0023】
一例では、原料は、吸熱型変成ガスである。一数値例では、原料における水素の濃度は、41体積%である。原料における一酸化炭素の濃度は、20体積%である。原料における窒素の濃度は、39体積%である。原料における炭化水素の濃度は、0.1体積%未満である。
図2から
図4を参照して説明する後述の実験では、この数値例に係る吸熱型変成ガスを用いた。
【0024】
CO除去器4の内部には、図示しないCO除去触媒が搭載されている。本実施の形態では、CO除去触媒は、選択酸化触媒である。本実施の形態では、CO除去触媒は、アルミナ担体にルテニウムを担持させた触媒である。
【0025】
CO除去器4には、改質器2からガスが供給される。このガスは、水素及び一酸化炭素を含む。CO除去器4では、このガスを用いたメタン化反応が生じる。このメタン化反応では、以下の化学式2に示すように、このガスに含まれた水素及び一酸化炭素から、メタン及び水蒸気が生成される。以下、CO除去器4の出口に存するガスを、第2ガスと称する。ここで、CO除去器4の出口は、詳細には燃焼器5に向かって開口する出口である。
化学式2:3H2+CO→CH4+H2O
【0026】
燃焼器5は、燃料及び空気を混合して燃焼させる。これにより、改質器2が加熱される。燃焼器5の燃料には、CO除去器4から供給されるガスが用いられる。
【0027】
原料供給器6は、改質器2に原料を供給する。本実施の形態では、原料供給器6はポンプである。
【0028】
加熱器9は、CO除去器4を加熱する。本実施の形態では、加熱器9は電気加熱器である。電気加熱器は、抵抗加熱式の加熱器であってもよく、赤外線加熱器であってもよい。一数値例では、電気加熱器の消費電力は、500Wである。
【0029】
第1検出器12は、改質器2に搭載されている改質触媒の温度を検出する。本実施の形態では、第1検出器12は熱電対である。
【0030】
第2検出器14は、CO除去器4に搭載されているCO除去触媒の温度を検出する。本実施の形態では、第2検出器14は熱電対である。
【0031】
点火器15は、燃焼器5に供給された燃料と空気の混合ガスに点火する。本実施の形態では、点火器15は、火花放電によって点火する。
【0032】
フレームロッド16は、金属棒である。フレームロッド16は、図示しない電源及び電流センサーと組み合わされて、電流検出回路を構成する。フレームロッド16が火炎に曝されると、フレームロッド16にイオン電流が流れる。その電流が、電流センサーで検出される。検出値の大小により火炎の状態が判定される。
【0033】
制御器11は、原料供給器6、加熱器9及び点火器15を制御する。具体的には、制御器11は、第1検出器12及び第2検出器14を用いて、原料供給器6、加熱器9及び点火器15を制御する。
【0034】
「原料供給器6が○○○を行う」という表現は、「原料供給器6が○○○を行うように制御器11は原料供給器6を制御する」に読み替え可能である。「加熱器9が○○○を行う」という表現は、「加熱器9が○○○を行うように制御器11は加熱器9を制御する」に読み替え可能である。「点火器15が○○○を行う」という表現は、「点火器15が○○○を行うように制御器11は点火器15を制御する」に読み替え可能である。
【0035】
[1-2.動作]
以上のように構成された燃料処理器41について、以下、その動作及び作用を説明する。燃料処理器41の運転方法は、待機工程、起動工程、発電工程及び停止工程の4工程をこの順に含む。
【0036】
待機工程では、改質器2の温度、CO除去器4の温度及び燃焼器5の温度が、常温付近に維持される。待機工程では、原料供給器6、加熱器9、点火器15及び電流検出回路は動作しない。起動工程が開始されるまでの期間において、待機工程が継続される。
【0037】
起動工程では、初めに、加熱器9は、CO除去器4の温度が所定の範囲まで上昇するように、CO除去器4を加熱する。この所定の範囲は、メタン化反応によって、CO除去器4においてフレームロッド16での火炎検出に必要な濃度のメタンが生成される温度範囲である。本実施の形態では、この所定の範囲は、150℃から250℃である。
【0038】
起動工程では、次に、原料供給器6及び点火器15が動作する。これにより、燃焼器5での燃焼が実行される。燃焼器5は、燃焼により、改質器2の温度が所定の範囲まで上昇するように、改質器2を加熱する。この所定の範囲は、メタン化反応によって原料からフレームロッド16での火炎検出に必要な濃度のメタンが生成される温度範囲である。本実施の形態では、この所定の範囲は、150℃から550℃である。
【0039】
改質器2の温度が150℃から550℃の範囲に入った時点で、起動工程は完了する。その後、発電工程に移行する。
【0040】
発電工程では、CO除去器4で生成したガスを、図示しない水素利用機器に安定的に継続して供給する。燃料処理器41は、停止工程に移行するまで、発電工程を継続する。
【0041】
停止工程では、改質器2の温度及びCO除去器4の温度が常温付近まで低下するように、改質器2及びCO除去器4が冷却される。改質器2の温度及びCO除去器4の温度が常温付近まで低下すると、待機工程に移行する。
【0042】
以下、第1閾値温度Tth1、刻み幅ΔT、第2閾値温度Tth2及び第3閾値温度Tth3という用語を用いることがある。第1閾値温度Tth1は、改質器2への原料供給を開始するときの第2検出器14の検出温度T14であって、フレームロッド16による火炎の連続的な検出が可能となることが期待される温度である。刻み幅ΔTは、この期待に反してフレームロッド16による火炎の検出が不可能であった場合の、制御サイクル毎の第1閾値温度Tth1の上昇幅である。第2閾値温度Tth2は、CO除去触媒の耐久上の上限温度である。第3閾値温度Tth3は、第1検出器12の検出温度T12であって、改質器2で原料からメタンが生成されることが期待される温度である。
【0043】
第1閾値温度T
th1について、
図2から
図4を用いて具体的に説明する。
【0044】
CO除去器4でのメタンの生成は、フレームロッド16による火炎の検出が可能な状態を実現することに寄与しうる。以下、この寄与を、第1寄与と称する。また、改質器2でのメタンの生成は、フレームロッド16による火炎の検出が可能な状態を実現することに寄与しうる。以下、この寄与を、第2寄与と称する。第1閾値温度Tth1は、第1寄与及び第2寄与の少なくとも一方によってフレームロッド16による火炎の連続的な検出を可能にするための、第2検出器14の検出温度T14の値である。
【0045】
図2は、実施の形態1における、原料供給時間と、第1検出器12の検出温度T
12と、第1ガス中のメタン濃度と、の関係を示す特性図である。
図2において、実線は、検出温度T
12である。一点鎖線は、第1ガス中のメタン濃度である。以下の
図2に関する説明において、メタン濃度の単位である%は、第1ガスの総体積に対する体積%である。
【0046】
図2に示すプロットは、以下の実験により得たものである。すなわち、原料として上記数値例に係る吸熱型変成ガスを用いた。点火器15が動作しておりかつ加熱器9が動作していない状態で、この原料を、原料供給器6から改質器2に1mol/分で供給した。これにより、改質器2からCO除去器4を経由して燃焼器5へと流れる流体の流れを形成させ、流体が燃料として燃焼器5に供給され、燃料の燃焼により改質器2が加熱されるようにした。改質器2への原料供給時間に対する検出温度T
12の関係をプロットした。また、原料供給時間に対する第1ガス中のメタン濃度をプロットした。なお、第1ガス中のメタン濃度は、非分散形赤外吸収法の分析計によって測定した。
【0047】
図2に示すとおり、原料供給開始から12分経過したときに、第1検出器12の検出温度T
12が250℃を越え、第1ガス中のメタン濃度が増加し始めた。原料供給開始から14分経過したときに、改質器温度検出器の温度が350℃を超え、第1ガス中のメタン濃度は1%を超えた。検出温度T
12が420℃となったときに、第1ガス中のメタン濃度は5%に到達した。その後、検出温度T
12が上昇するにつれ、第1ガス中のメタン濃度が減少した。
【0048】
なお、
図2において、検出温度T
12が相対的に低い領域では、検出温度T
12が上昇するにつれてメタンの濃度が上昇している。これは、改質触媒の温度が上昇するにつれて改質触媒におけるメタン化反応の反応速度が速くなるためであると考えられる。一方、検出温度T
12が相対的に高い領域では、検出温度T
12が上昇するにつれてメタンの濃度が低下している。これは、改質触媒の温度が上昇するにつれて改質触媒におけるメタン化反応の平衡点が水素及び一酸化炭素側にシフトしていくためであると考えられる。
【0049】
図3は、実施の形態1における、原料供給時間と、第2ガス中のメタン濃度と、の関係を示す特性図である。以下の
図3に関する説明において、メタン濃度の単位である%は、第2ガスの総体積に対する体積%である。
【0050】
図3に示すプロットは、以下の第1実験、第2実験及び第3実験により得たものである。すなわち、原料として、
図2のプロットを得るための実験で用いた吸熱型変成ガスと同一の吸熱型変成ガスを用いた。点火器15が動作していない状態で、この原料を、原料供給器6から改質器2に1mol/分で供給した。具体的に、この原料の改質器2への供給は、加熱器9によりCO除去器4を加熱することによってCO除去器検出器14の検出温度T
14が所定の温度に到達した時点で開始した。具体的には、第1実験では、所定の温度は150℃である。第2実験では、所定の温度は200℃である。第3実験では、所定の温度は250℃である。第1実験、第2実験及び第3実験において、原料供給時間に対する第2ガス中のメタン濃度をプロットした。なお、第2ガス中のメタン濃度は、非分散形赤外吸収法の分析計によって測定した。
【0051】
第1実験、第2実験及び第3実験のいずれにおいても、原料供給開始直後から、第2ガス中のメタン濃度が上昇し始めた。原料供給開始からの経過時間が1分から1.5分であるときに、メタン濃度は最大値を示した。その後、メタン濃度は低下した。
【0052】
第1実験では、第2ガス中のメタン濃度が1%以上である期間は、原料供給開始直後から12分間であった。第2実験では、第2ガス中のメタン濃度が1%以上である期間は、原料供給開始直後から15分間であった。第1実験では、第2ガス中のメタン濃度が1%以上である期間は、原料供給開始直後から19分間であった。
【0053】
図4は、実施の形態1における、燃料中のメタン濃度と、フレームロッド16の電流値と、の関係を示す特性図である。フレームロッド16の電流値は、具体的には、フレームロッド16を流れるイオン電流の値である。以下の
図4に関する説明において、メタン濃度の単位である%は、燃料の総体積に対する体積%である。
【0054】
図4に示すプロットは、以下の実験により得たものである。すなわち、原料として、
図2及び
図3のプロットを得るための実験で用いた吸熱型変成ガスと同一の吸熱型変成ガスを用いた。ただし、
図4のプロットを得るための実験では、この原料にメタンを添加することによって、混合流体を生成した。加熱器9によるCO除去器検出器14の加熱を行うことなく混合流体を原料供給器6から改質器2に1mol/分で供給し、混合流体が燃料として燃焼器5に供給されるようにした。この供給の際、原料へのメタンの添加量を徐々に増加させることによって混合流体のメタン濃度を変化させつつ、フレームロッド16の電流値を測定した。これにより、燃料中のメタン濃度に対するフレームロッド16の電流値をプロットした。なお、燃料中のメタン濃度は、非分散形赤外吸収法の分析計によって測定した。
【0055】
図4に示すように、燃料中のメタン濃度が高くなるほど、イオン電流値は大きくなる。フレームロッド16を用いた電流検出回路による火炎の検出が可能となるのは、イオン電流が0.4×10
-6A以上である領域であった。イオン電流=0.4×10
-6Aは、メタン濃度=0.4%に対応する。ただし、確実に火炎の有無を判定するためには、0.4×10
-6Aよりも大きいイオン電流を流したほうがよい。そこで、以下のように第1閾値温度T
th1の決定に際しては、閾値濃度を0.4%ではなく1%に設定した。そして、イオン電流の検出値がこの閾値濃度に対応する閾値電流以上であるときには火炎が存在すると扱い、イオン電流の検出値がこの閾値電流未満であるときには火炎が存在しないと扱うこととした。
【0056】
以上の説明を踏まえ、第1閾値温度Tth1の決定根拠について整理する。
【0057】
本実施の形態の起動工程は、燃焼器5での燃料の燃焼を開始する前において、改質器2に新たな原料を供給することなく加熱器9によりCO除去器4を加熱する期間を含む。改質器2に新たな原料が供給されていないことは、CO除去器4においてガスの流れが形成されていないことを意味する。このため、上記の期間においては、CO除去器4におけるメタン化反応の反応速度は遅いものの、原料供給がなされている場合に比べてCO除去器4内でのガスとCO除去触媒との接触時間を確保し易い。このため、CO除去器4内で高濃度のメタンを生成できる。この文脈において、ガスとCO除去触媒との接触時間は、CO除去触媒の周囲に位置するガスの塊が新鮮なガスと置き換わることなくCO除去触媒の周囲に留まり続ける時間を指す。
【0058】
一方、改質器2への原料供給が開始されると、CO除去器4の内部に貯留されていたメタンが燃焼器5に向かって押し出される。これにより、第2ガス中のメタン濃度が1%よりも高い濃度まで上昇する。ただし、その後、第2ガス中のメタン濃度は1%以下に低下する。これは、改質器2への原料供給開始に伴い、CO除去器4においてガスの流れが形成され、CO除去器4内でのガスとCO除去触媒との接触時間が短くなるためである。
【0059】
そこで、改質器2への原料供給が開始後において第2ガス中のメタン濃度が1%よりも高い状態が維持されるように、改質器2からメタンを供給する。具体的には、第2ガス中のCO除去器4由来のメタン濃度が1%以下に低下する前に、改質器2でのメタン化反応を促進させて第1ガス中のメタン濃度を1%よりも高い濃度まで上昇させる。このようにして、第2ガス中のメタン濃度が1%よりも高い状態を維持することに改質器2を貢献させる。第2ガス中のメタン濃度が1%よりも高い状態が維持されることにより、フレームロッド16による火炎の連続的な検出が可能となる。
【0060】
図2を参照した上記検討によれば、第1ガス中のメタン濃度を1%よりも高くするには、改質器2への原料供給を少なくとも14分間行う必要がある。この期間は、第2ガス中のメタン濃度が1%よりも高い状態を、CO除去器4により実現する必要がある。
図3を参照した上記検討によれば、CO除去器検出器14の検出温度T
14が200℃に到達した時点で改質器2への原料供給を開始すれば、原料供給開始直後から15分間(>14分間)にわたり第2ガス中のメタン濃度が1%以上に維持できる。そこで、本実施の形態では第1閾値温度T
th1を200℃とした。
【0061】
次に、刻み幅ΔTについて説明する。
【0062】
原料の吸熱型変成ガスの一酸化炭素濃度が低い場合において、フレームロッド16を用いて火炎が検出できる濃度のメタンをメタン化反応により得るためには、CO除去器4の温度を上昇させることが考えられる。典型的な現実の制御においては、CO除去器4の温度を上昇させるべき場合に、制御サイクル毎に所定の上昇幅ずつCO除去器4の温度を上昇させる。刻み幅ΔTは、この上昇幅に相当する。
【0063】
吸熱型変成ガスの一酸化炭素濃度が低い状況は、以下のようにして生じうる。すなわち、吸熱型変成ガスは、炭化水素から生成されうる。吸熱型変成ガスにおける一酸化炭素の濃度は、炭化水素の組成に依存するのである。
【0064】
メタン化反応では、一酸化炭素及び水素からメタンが生成される。吸熱型変成ガスの一酸化炭素濃度が低いと、メタン化反応の反応速度は遅い。そこで、メタン化反応の反応温度を高めることにより、メタン化反応の反応速度を速くする。これにより、CO除去器4においてメタンの濃度が高まり易い状況を作り出す。具体的には、
図3から理解されるように、CO除去器4の温度を高めてメタン化反応の反応速度を速くすることにより、第2ガス中のメタン濃度が所望のレベルにある状態を十分な期間にわたり確保できる。
【0065】
具体的に、本実施の形態の起動工程では、第2検出器14の検出温度T14が第1閾値温度Tth1に達したときに、原料供給器6による改質器2への原料供給と、点火器15による燃焼器5の点火動作と、が開始される。これらを開始したにも関わらずフレームロッド16を用いた火炎の検出ができなかった場合、燃料中のメタン濃度が火炎の検出に必要な濃度に達していないと判定され、第1閾値温度Tth1に刻み幅ΔTが加算された温度へと、第1閾値温度Tth1が更新される。これにより、メタンの生成が促進されうる。
【0066】
本実施の形態では、刻み幅ΔTは10℃である。この程度に刻み幅ΔTが高ければ、制御の応答性を十分に確保できる。この程度に刻み幅ΔTが低ければ、制御の安定性を十分に確保できる。また、この程度に刻み幅ΔTが低ければ、燃焼器5に供給されるメタンが急増して燃焼器5における燃焼が不安定になるという事態が生じ難い。
【0067】
次に、第2閾値温度Tth2について説明する。
【0068】
上述のとおり、第2閾値温度Tth2は、CO除去触媒の耐久上の上限温度である。本実施の形態のCO除去触媒は、アルミナ担体上にルテニウムを分散したものである。ルテニウムは、通常使用する温度より高温の環境に晒されると凝集し、その表面積が減少する。表面積が減少すると、CO除去触媒としての機能発揮に寄与する面積が減少し、CO除去能力が短時間で低下しうる。そこで、少なくとも燃料処理器41の設計寿命を超える時間は、CO除去触媒としての必要な能力が発揮できるように、第2閾値温度Tth2は設定されうる。本実施の形態では、第2閾値温度Tth2は250℃である。
【0069】
第3閾値温度T
th3は、第1検出器12の検出温度T
12であって、改質器2で原料からメタンが生成されることが期待される温度である。具体的には、第3閾値温度T
th3は、改質器2に充填された水素及び一酸化炭素からメタンが生成されることが期待される温度である。
図2を参照した上記検討によれば、検出温度T
12が350℃以上になると、第1ガス中のメタン濃度が1%よりも高くなる。これを踏まえ、第3閾値温度T
th3は設定されうる。本実施の形態では、第3閾値温度T
th3は350℃である。
【0070】
次に、燃料処理器41のシステム動作を、
図5を用いてより詳細に説明する。
【0071】
起動工程が開始されると、燃料処理器41は、以下に示す動作を行う。
【0072】
ステップS101において、加熱器9は、加熱動作を開始する。加熱動作は、CO除去器4を加熱する動作である。具体的には、ステップS101において、制御器11は、加熱器9が加熱動作を開始するように、加熱器9を制御する。
【0073】
ステップS101で開始される加熱動作により、CO除去器4に充填された水素及び一酸化炭素からのメタンの生成が促進されうる。なお、起動工程は、燃料処理器41内に水素及び一酸化炭素が充填されている状態で開始されうる。これは、例えば、以下の理由によるものである。すなわち、仮に適切な処置が行われない場合、原料由来の一酸化炭素濃度を低減させる反応で添加した水蒸気は、その温度低下に伴い触媒上で凝縮し、触媒を劣化させうる。このような事態を避けるために、燃料処理器41の停止工程において、燃料処理器41内に原料を供給することによって、水蒸気を除去する。この原料由来の水素及び一酸化炭素が、その後の起動開始時にも燃料処理器41内に残存するのである。
【0074】
ステップS101の後、ステップS102において、制御器11は、第2検出器14の検出温度T14が第1閾値温度Tth1以上であるという条件が成立しているか否かを判定する。この条件が成立している場合、ステップS103に進む。この条件が成立していない場合、ステップS102に進む。つまり、検出温度T14が第1閾値温度Tth1に到達するまではステップS102が繰り返し実行される。検出温度T14が第1閾値温度Tth1に到達すると、ステップS103に進む。
【0075】
ステップS103において、点火器15は、点火動作を開始する。具体的には、ステップS103において、制御器11は、点火器15が点火動作を開始するように、点火器15を制御する。点火動作は、燃焼器5を点火する動作である。本実施の形態では、点火動作は、火花を生成する動作である。
【0076】
ステップS103の後、ステップS104において、原料供給器6は、原料供給動作を開始する。具体的には、ステップS104において、制御器11は、原料供給器6が原料供給動作を開始するように、原料供給器6を制御する。原料供給動作は、改質器2に原料を供給する動作である。
【0077】
ステップS103及びステップS104により、燃焼器5での燃料の燃焼が開始される。なお、ステップS103及びステップS104は、同時に行われてもよい。
【0078】
ステップS104の後、ステップS105において、制御器11は、フレームロッド16により火炎が検出されたという条件が成立しているか否かを判定する。この条件が成立している場合、ステップS106に進む。この条件が成立していない場合、ステップS151に進む。
【0079】
ステップS105における上記条件を、イオン電流という用語を用いて説明することも可能である。すなわち、上記条件は、フレームロッド16を流れるイオン電流が閾値電流以上であるという条件である。具体的には、上記条件は、電流検出回路によるイオン電流の検出値が閾値電流以上であるという条件である。
【0080】
ステップS151において、原料供給器6は、原料供給動作を停止する。具体的には、ステップS151において、制御器11は、原料供給器6が原料供給動作を停止するように、原料供給器6を制御する。
【0081】
ステップS151の後、ステップS152において、点火器15は、点火動作を停止する。具体的には、ステップS152において、制御器11は、点火器15が点火動作を停止するように、点火器15を制御する。
【0082】
ステップS151及びステップS152により、燃焼器5での燃料の燃焼が停止される。本実施の形態では、原料供給器6が原料供給動作を停止した後に、点火器15が点火動作を停止する。このようにすれば、原料供給器6の原料供給動作の停止後において改質器2及びCO除去器4からなる群より選択される少なくとも1つから可燃性の流体が漏出したとしても、その可燃性の流体を完全に燃焼させることができる。
【0083】
ステップS152の後、ステップS153において、制御器11は、第1閾値温度Tth1に刻み幅ΔTが加算された温度へと、第1閾値温度Tth1を更新する。
【0084】
ステップS153の更新により、原料における一酸化炭素濃度の濃度が低い場合であっても、フレームロッド16による火炎の検出に十分な濃度のメタンがCO除去器4において生成され易くなる。
【0085】
ステップS153の後、ステップS154において、制御器11は、第2検出器14の検出温度T14が第2閾値温度Tth2以上であるという条件が成立しているか否かを判定する。この条件が成立している場合、ステップS155に進む。この条件が成立していない場合、ステップS102に進む。
【0086】
ステップS155において、加熱器9は、加熱動作を停止する。具体的には、ステップS155において、制御器11は、加熱器9が加熱動作を停止するように、加熱器9を制御する。
【0087】
ステップS154及びステップS155により、検出温度T14≧第2閾値温度Tth2の場合に、加熱器9によるCO除去器4の加熱が停止される。これにより、CO除去触媒のCO除去能力が短時間で低下することが防止されうる。
【0088】
ステップS155の後、起動工程が終了する。その後、待機工程に移行する。
【0089】
ステップS106において、点火器15は、点火動作を停止する。具体的には、ステップS106において、制御器11は、点火器15が点火動作を停止するように、点火器15を制御する。
【0090】
ステップS106の後、ステップS107において、制御器11は、第1検出器12の検出温度T12が第3閾値温度Tth3以上であるという条件が成立しているか否かを判定する。この条件が成立している場合、ステップS108に進む。この条件が成立していない場合、ステップS107に進む。つまり、検出温度T12が第3閾値温度Tth3に到達するまではステップS107が繰り返し実行される。検出温度T12が第3閾値温度Tth3に到達すると、ステップS108に進む。
【0091】
ステップS108において、加熱器9は、加熱動作を停止する。具体的には、ステップS108において、制御器11は、加熱器9が加熱動作を停止するように、加熱器9を制御する。
【0092】
ステップS107及びステップS108により、検出温度T12≧第3閾値温度Tth3の場合に、加熱器9によるCO除去器4の加熱が停止される。これにより、フレームロッド16による火炎の検出に十分な濃度のメタンが改質器2において生成されうる温度まで改質器2の温度が上昇してから、CO除去器4でのメタンの生成を停止させることができる。
【0093】
ステップS108の後、起動工程が終了する。その後、発電工程に移行する。
【0094】
改質触媒にメタン及び水蒸気が接触すると、水蒸気改質反応のみならず、メタン化反応も進行する。水蒸気改質反応は、メタン及び水蒸気から水素及び一酸化炭素が生成される反応である。メタン化反応は、水蒸気改質反応とは逆方向の反応である。つまり、メタン化反応は、水素及び一酸化炭素からメタン及び水蒸気が生成される反応である。これらの反応は、温度に応じた濃度で平衡に至る。本発明者らは、これをヒントにして、改質触媒を用いて原料の水素と一酸化炭素からメタンを生成するという着想を得た。さらに検討を進め、本発明者らは、本実施の形態に係る技術を見出すに至ったのである。
【0095】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態では、燃料処理器41は、改質器2、CO除去器4、燃焼器5、点火器15、流体機械、フレームロッド16、加熱器9及び制御器11を備える。改質器2は、改質触媒を有する。CO除去器4は、CO除去触媒を有する。燃焼器5は、改質器2を加熱する。点火器15は、燃焼器5の点火を行う。流体機械は、改質器2、CO除去器4及び燃焼器5をこの順に流体が流れる流体流れを形成する。フレームロッド16には、燃焼器5の燃焼状態に応じたイオン電流が流れる。加熱器9は、CO除去器4を加熱する。
図1の例では、流体機械は、原料供給器6である。
【0096】
以下、加熱器9がCO除去器4を加熱する動作を、加熱動作と称する。流体機械が原料を改質器2に供給することによって上記流体流れを形成する動作を、流れ形成動作と称する。点火器15が燃焼器5の点火を行う動作を、点火動作と称する。点火動作は、例えば、火花を生成する動作である。
【0097】
以下、CO除去器4の加熱を加熱器9に行わせる制御を、加熱制御と称する。原料を流改質器2に供給することによって上記流体流れを形成することを流体機械に行わせる制御を、流れ形成制御と称する。燃焼器5の点火を点火器15に行わせる制御を、点火制御と称する。点火制御は、例えば、火花の生成を行わせる制御である。制御器11は、加熱制御、流れ形成制御及び点火制御を行う。
【0098】
本実施の形態では、改質器2に、水素及び一酸化炭素を含み炭化水素の濃度が可燃下限界未満である原料が供給される。燃料処理器41の運転方法は、加熱動作を開始する工程を含む。運転方法は、加熱動作を開始した後に流れ形成動作を開始し、これにより原料よりも炭化水素の濃度が高い流体を燃焼器5に供給する工程を含む。この構成によれば、燃料処理器41において原料における炭化水素の濃度よりも高濃度の炭化水素を生成し、その高濃度の炭化水素を燃焼器5に供給することにより、検出限界値以上にまでイオン電流を増加させることができる。このため、この構成は、火炎検出器としてフレームロッド16を用い原料として水素及び一酸化炭素を含み炭化水素をほとんど含まないものを用いる場合であっても火炎を検出することを可能にする。
【0099】
具体的には、上記の構成によれば、燃料処理器41の起動を、燃料処理器41内に水素及び一酸化炭素が充填されている状態で開始できる。これは、例えば、以下の理由によるものである。すなわち、仮に適切な処置が行われない場合、原料由来の一酸化炭素濃度を低減させる反応で添加した水蒸気は、その温度低下に伴い触媒上で凝縮し、触媒を劣化させうる。このような事態を避けるために、燃料処理器41の停止工程において、燃料処理器41内に原料を供給することによって、水蒸気を除去する。この原料由来の水素及び一酸化炭素が、その後の起動開始時にも燃料処理器41内に残存するのである。燃料処理器41の起動を燃料処理器41内に水素及び一酸化炭素が充填されている状態で開始できるため、燃料処理器41の加熱を通じて水素及び一酸化炭素から炭化水素を生成できる。このため、炭化水素をほとんど含まない原料を用いてもフレームロッド16による火炎検知が可能となる。
【0100】
炭化水素の可燃下限界は、炭化水素の燃焼が起こるのに必要な炭化水素の濃度の最低値である。炭化水素の例は、メタン、エタン、プロパン、ブタン等である。メタンの可燃下限界は、5.0体積%である。エタンの可燃下限界は、3.0体積%である。プロパンの可燃下限界は、2.1体積%である。ブタンの可燃下限界は、1.8体積%である。なお、上記の文脈において、「炭化水素の濃度が可燃下限界未満である」を「炭化水素の濃度が5.0体積%未満である」に読み替えてもよい。
【0101】
本実施の形態では、流れ形成動作を開始する上記の工程は、加熱動作を行いながら流れ形成動作を行うことを開始する工程である。加熱動作を行いながら流れ形成動作を行うことは、CO除去器4での炭化水素の生成量を確保し燃焼器5に供給される炭化水素の濃度を高める観点から有利である。
【0102】
本実施の形態では、流れ形成動作が行われる期間は、第1期間、第2期間及び第3期間を有する。第2期間は、第1期間に続く期間である。第3期間は、第2期間に続く期間である。第1期間は、CO除去器4において生成された炭化水素により、燃焼器5における流体の炭化水素の濃度が上昇する期間である。第2期間は、燃焼器5における流体の炭化水素の濃度が低下する期間である。第3期間は、改質器2において生成された炭化水素により、燃焼器5における流体の炭化水素の濃度が上昇する期間である。この構成では、CO除去器4において生成される炭化水素と改質器2において生成される炭化水素とにより、燃焼器5に供給される炭化水素の濃度を十分なレベルに維持できる。このため、検出限界値以上のイオン電流を継続して発生させることができる。
【0103】
上記の「燃焼器5における流体の炭化水素の濃度」という表現について説明する。この表現において、「燃焼器5における流体」は、具体的には、燃焼器5の火炎噴射口における流体を指す。
【0104】
典型的には、CO除去器4における炭化水素の濃度の増加は、CO除去器4におけるメタンの生成によるものである。改質器2における炭化水素の濃度の増加は、改質器2におけるメタンの生成によるものである。
【0105】
本実施の形態では、原料における一酸化炭素の濃度は、5体積%以上である。原料における水素の濃度は、30体積%以上である。原料における炭化水素の濃度は、2体積%以下である。この組成を有する原料は、本実施の形態の燃料処理器41で利用可能である。具体的には、原料における一酸化炭素の濃度は、6体積%以上25体積%以下でありうる。原料における水素の濃度は30体積%以上48体積%以下でありうる。原料における炭化水素の濃度は1体積%以下でありうる。
【0106】
一例では、原料は、燃料処理器41の外部で生じた排気ガスである。排気ガスは、本実施の形態の燃料処理器41に供給する原料として利用可能である。一具体例では、排気ガスは、燃料処理機の外部において、燃焼及び化学反応からなる群より選択される少なくとも1つにより生成されうる。排気ガスは、例えば、産業用途の装置の排気ガスである。
【0107】
本実施の形態では、運転方法は、燃料処理器41の起動時に実行される。
【0108】
本実施の形態では、運転方法は、加熱動作を開始する工程を含む。運転方法は、加熱動作を開始した後に、加熱動作を行いながら流れ形成動作を行うことを開始する工程を含む。この構成は、火炎検出器としてフレームロッド16を用い原料として水素及び一酸化炭素を含み炭化水素をほとんど含まないものを用いる場合であっても火炎を検出することを可能にする。
【0109】
具体的には、本実施の形態では、運転方法は、加熱動作を開始した後に、加熱動作を行いながら点火動作及び流れ形成動作を行うことを開始する工程を含む。この構成によれば、不必要な点火動作を回避でき、点火器15の短寿命化を回避し易い。なお、「点火動作及び流れ形成動作を行う」という表現は、点火動作の開始時点及び流れ形成動作の開始時点が同じであってもずれていてもよく、点火動作の停止時点及び流れ形成動作の停止時点が同じであってもずれていてもよいことを意図した表現である。「点火動作及び流れ形成動作を開始する」という表現及び「点火動作及び流れ形成動作を停止する」という表現についても同様である。
【0110】
本実施の形態では、運転方法は、流れ形成動作を開始した後において、イオン電流が相対的に小さいときに、流れ形成動作を停止する工程を含む。運転方法は、流れ形成動作を開始した後において、イオン電流が相対的に大きいときに、流れ形成動作を継続する工程を含む。イオン電流が相対的に小さいときは、燃焼器5に燃料が供給されているにも関わらず燃焼器5で燃料が燃焼していない可能性を排除できない。そのようなときに、改質器2への原料の供給を停止できる。また、イオン電流が相対的に大きいときは、燃焼器5に供給された燃料が燃焼器5で燃焼していることが把握される。そのようなときに、改質器2への原料の供給を継続できる。「イオン電流が相対的に大きいとき」は、具体的には「イオン電流が閾値電流以上のとき」である。「イオン電流が相対的に小さいとき」は、具体的には「イオン電流が閾値電流よりも小さいとき」である。
【0111】
具体的には、運転方法は、点火動作及び流れ形成動作を開始した後において、イオン電流が相対的に小さいときに、点火動作及び流れ形成動作を停止する工程を含む。運転方法は、点火動作及び流れ形成動作を開始した後において、イオン電流が相対的に大きいときに、流れ形成動作を継続する工程を含む。
【0112】
本実施の形態では、運転方法は、CO除去触媒の温度が第1閾値温度以上であるときに、加熱動作を行いながら流れ形成動作を行うことを開始する工程を含む。運転方法は、イオン電流が相対的に小さいことにより流れ形成動作を停止した後において、第1閾値温度をより高い値に更新する工程を含む。運転方法は、第1閾値温度を更新した後において、CO除去触媒の温度が第1閾値温度以上であるときに、加熱動作を行いながら流れ形成動作を行うことを再開する工程を含む。この構成によれば、イオン電流が相対的に小さいときに、CO除去器4で生成される炭化水素を増加させることができる。このことは、例えば、原料として吸熱型変成ガスを用い、その吸熱型変成ガスの一酸化炭素濃度が低い場合に有用である。第1閾値温度は、例えば、CO除去触媒でメタンを生成できるときのCO除去触媒の温度として与えられる。
【0113】
具体的には、運転方法は、CO除去触媒の温度が第1閾値温度以上であるときに、加熱動作を行いながら点火動作及び流れ形成動作を行うことを開始する工程を含む。運転方法は、イオン電流が相対的に小さいことにより点火動作及び流れ形成動作を停止した後において、第1閾値温度をより高い値に更新する工程を含む。運転方法は、第1閾値温度を更新した後において、CO除去触媒の温度が第1閾値温度以上であるときに、加熱動作を行いながら点火動作及び流れ形成動作を行うことを再開する工程を含む。
【0114】
本実施の形態では、運転方法は、イオン電流が相対的に小さいことにより流れ形成動作を停止した後に、点火動作を停止する工程を含む。この構成によれば、原料供給器6の原料供給動作の停止後において改質器2及びCO除去器4からなる群より選択される少なくとも1つから可燃性の流体が漏出したとしても、その可燃性の流体を完全に燃焼させることができる。
【0115】
本実施の形態では、運転方法は、イオン電流が相対的に小さいことにより流れ形成動作を停止した後において、CO除去触媒の温度が第2閾値温度以上であるときに、加熱動作を停止する工程を含む。この構成によれば、CO除去触媒のCO除去能力が短時間で低下することが防止されうる。第2閾値温度は、例えば、CO除去触媒の耐久上の上限温度として与えられる。典型的には、第2閾値温度は第1閾値温度よりも高い。
【0116】
具体的には、運転方法は、イオン電流が相対的に小さいことにより点火動作及び流れ形成動作を停止した後において、CO除去触媒の温度が第2閾値温度以上であるときに、加熱動作を停止する工程を含む。
【0117】
本実施の形態では、運転方法は、イオン電流が相対的に大きいことにより流れ形成動作が継続されておりかつ改質触媒の温度が第3閾値温度以上であるときに、加熱動作を停止する工程を含む。この構成によれば、フレームロッド16による火炎の検出に十分な濃度のメタンが改質器2において生成されうる温度まで改質器2の温度が上昇してから、CO除去器4での炭化水素の生成を停止させることができる。第3閾値温度は、例えば、改質触媒でメタンを生成できるときの改質触媒の温度として与えられる。
【0118】
本実施の形態では、運転方法は、燃料処理器41の起動時に実行される。
【0119】
コンピュータによる実行時において、上記運転方法をコンピュータに実行させる指示を備えた、コンピュータプログラムを実現可能である。上記コンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体を実現可能である。記録媒体は、オフラインの記録媒体であってもよく、オンライン上の記録媒体であってもよい。オフラインの記録媒体は、例えば、HDD、SDカード、USBメモリ等の半導体記録媒体、フレキシブルディスク等の磁気記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、CD、DVD等の光学記録媒体、等である。オンライン上の記録媒体は、例えば、クラウドサーバー、FTPサーバー、ネットワークストレージ等である。
【0120】
本実施の形態では、燃料処理器41の所定運転において、加熱制御が開始された後に、加熱制御を行いながら流れ形成制御を行うことが開始される。
【0121】
具体的には、所定運転において、加熱制御が開始された後に、加熱制御を行いながら点火制御及び流れ形成制御を行うことが開始される。
【0122】
本実施の形態では、所定運転において、流れ形成制御が開始された後において、イオン電流が相対的に小さいときに、流れ形成制御が停止される。所定運転において、流れ形成制御が開始された後において、イオン電流が相対的に大きいときに、流れ形成制御が継続される。
【0123】
具体的には、所定運転において、点火制御及び流れ形成制御が開始された後において、イオン電流が相対的に小さいときに、点火制御及び流れ形成制御が停止される。所定運転において、点火制御及び流れ形成制御が開始された後において、イオン電流が相対的に大きいときに、流れ形成制御が継続される。
【0124】
本実施の形態では、所定運転において、加熱制御が開始された後において、CO除去触媒の温度が第1閾値温度以上であるときに、加熱制御を行いながら流れ形成制御を行うことが開始される。所定運転において、イオン電流が相対的に小さいことにより流れ形成制御を停止した後において、第1閾値温度がより高い値に更新される。所定運転において、第1閾値温度を更新した後において、CO除去触媒の温度が第1閾値温度以上であるときに、加熱制御を行いながら流れ形成制御を行うことが再開される。
【0125】
具体的には、所定運転において、加熱制御が開始された後において、CO除去触媒の温度が第1閾値温度以上であるときに、加熱制御を行いながら点火制御及び流れ形成制御を行うことが開始される。所定運転において、イオン電流が相対的に小さいことにより点火制御及び流れ形成制御を停止した後において、第1閾値温度がより高い値に更新される。所定運転において、第1閾値温度を更新した後において、CO除去触媒の温度が第1閾値温度以上であるときに、加熱制御を行いながら点火制御及び流れ形成制御を行うことが再開される。
【0126】
本実施の形態では、所定運転において、イオン電流が相対的に小さいことにより流れ形成制御を停止した後に、点火制御が停止される。
【0127】
本実施の形態では、所定運転において、イオン電流が相対的に小さいことにより流れ形成制御を停止した後において、CO除去触媒の温度が第2閾値温度以上であるときに、加熱制御が停止される。
【0128】
具体的には、所定運転において、イオン電流が相対的に小さいことにより点火制御及び流れ形成制御を停止した後において、CO除去触媒の温度が第2閾値温度以上であるときに、加熱制御が停止される。
【0129】
本実施の形態では、所定運転において、イオン電流が相対的に大きいことにより流れ形成制御が継続されておりかつ改質触媒の温度が第3閾値温度以上であるときに、加熱制御が停止される。
【0130】
本実施の形態では、所定運転は、燃料処理器41の起動時に実行される。
【0131】
以下、他の実施の形態について説明する。先の実施の形態と後の実施の形態とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。各実施の形態に関する説明は、技術的に矛盾しない限り、相互に適用されうる。技術的に矛盾しない限り、各実施の形態は、相互に組み合わされてもよい。
【0132】
(実施の形態2)
以下、
図6及び
図7を用いて、実施の形態2を説明する。
【0133】
[2-1.構成]
図6において、燃料処理器42は、CO低減器3、水供給器7、酸化ガス供給器8及びCO低減器温度検出器13を備える。また、燃料処理器42は、加熱器9に代えて加熱器10を備える。
図6では、水素利用機器51が示されている。水素利用機器51は、燃料処理器42の外部に配置されている。以下、CO低減器温度検出器13を、第3検出器13と称することがある。
【0134】
CO低減器3の内部には、図示しない変成触媒が搭載されている。本実施の形態では、変成触媒は、銅と亜鉛の合金である。
【0135】
CO低減器3は、改質器2から供給されるガスに含まれる一酸化炭素の濃度を低減する。本実施の形態のCO低減器3では、水性シフト反応が生じる。この水性シフト反応では、以下の化学式3に示すように、一酸化炭素及び水蒸気から二酸化炭素及び水素が生成される。
化学式3:CO+H2O→CO2+H2
【0136】
水供給器7は、改質器2に水を供給する。本実施の形態では、水供給器7はポンプである。
【0137】
酸化ガス供給器8は、CO除去器4に酸化ガスを供給する。本実施の形態では、酸化ガス供給器8はポンプである。酸化ガスは、空気である。
【0138】
加熱器10は、CO低減器3及びCO除去器4を加熱するとともに、改質器2を加熱する。具体的には、加熱器10は、CO低減器3及びCO除去器4に隣接して配置されている。加熱器10は、CO低減器3及びCO除去器4を直接的に加熱する。改質器2は、CO低減器3と熱的に結合されている。加熱器10は、改質器2を、CO低減器3からの熱伝導により間接的に加熱する。本実施の形態では、加熱器10は、電気加熱器である。電気加熱器は、抵抗加熱式の加熱器であってもよく、赤外線加熱器であってもよい。ヒータである。一数値例では、電気加熱器の消費電力は、500Wである。
【0139】
第3検出器13は、CO低減器3に搭載されている変成触媒の温度を検出する。本実施の形態では、第3検出器13は熱電対である。
【0140】
制御器11は、原料供給器6、水供給器7、酸化ガス供給器8、加熱器10及び点火器15を制御する。具体的には、制御器11は、第1検出器12、第3検出器13及び第2検出器14を用いて、原料供給器6、水供給器7、酸化ガス供給器8、加熱器10及び点火器15を制御する。
【0141】
「水供給器7が○○○を行う」という表現は、「水供給器7が○○○を行うように制御器11は水供給器7を制御する」に読み替え可能である。「酸化ガス供給器8が○○○を行う」という表現は、「酸化ガス供給器8が○○○を行うように制御器11は酸化ガス供給器8を制御する」に読み替え可能である。「加熱器10が○○○を行う」という表現は、「加熱器10が○○○を行うように制御器11は加熱器10を制御する」に読み替え可能である。
【0142】
CO除去器4で生成されたガスは、水素利用機器51に供給される。水素利用機器51で消費されなかったガスは、燃料処理器42の燃焼器5に供給される。
【0143】
本実施の形態では、水素利用機器51は、一例では、燃料電池である。水素利用機器51は、一具体例では、固体高分子形燃料電池である。この具体例では、固体高分子形燃料電池は、アノードに供給された水素とカソードに供給された酸素との電気化学反応により電力を発生させる。固体高分子形燃料電池のアノードに用いられる触媒は、一酸化炭素に対して脆弱である。アノードの性能を維持するために許容される一酸化炭素の濃度は10ppm以下である。
【0144】
[2-2.動作]
以上のように構成された燃料処理器42について、以下、その動作及び作用を説明する。
【0145】
まず、第4閾値温度Tth4及び第5閾値温度Tth5について説明する。
【0146】
第4閾値温度Tth4は、第1検出器12の検出温度T12であって、改質器2の内部で水蒸気が凝縮しないことが期待される温度である。改質触媒に用いられる金属粒子は、液体の水に触れると酸化して改質触媒としての能力が低下しうる。この問題は、改質器2に供給された水を、改質触媒に到達する前に蒸発させることにより回避可能である。これを踏まえ、第4閾値温度Tth4は設定されうる。本実施の形態では、第4閾値温度Tth4は150℃である。
【0147】
第5閾値温度Tth5は、第3検出器13の検出温度T13であって、CO低減器3で変成反応が生じることが期待される温度である。具体的には、第5閾値温度Tth5は、変成反応により、CO低減器3に供給されたガスに含まれる一酸化炭素及び水蒸気から二酸化炭素及び水素が生成されることが期待される温度である。変成反応には、以下の特徴がある。
・変成反応の際の温度が高いほど、変成反応の反応速度は速い
・ガスと変成触媒との接触時間が限りなく長いと仮定した場合、変成反応の際の温度が高いほど、反応後の一酸化炭素の濃度は高い
・変成反応の際の温度が低いほど、変成反応の反応速度は遅い
・ガスと変成触媒との接触時間が限りなく長いと仮定した場合、変成反応の際の温度が低いほど、反応後の一酸化炭素の濃度は低い
この文脈において、ガスと変成触媒との接触時間は、変成触媒の周囲に位置するガスの塊が新鮮なガスと置き換わることなく変成触媒と接触し続ける時間を指す。CO低減器3では原料供給器6に由来するガスの流れが形成されるため、ガスと変成触媒との接触時間との接触時間は有限である。このため、CO低減器3の変成触媒の温度が低過ぎず高過ぎないときに、CO低減器3からCO除去器4へと流出するガスにおける一酸化炭素の濃度が最も低くなる。発明者らが行った実験によれば、この濃度が最も低くなるときの第3検出器13の検出温度T13は、250℃である。これを踏まえ、第5閾値温度Tth5は設定されうる。本実施の形態では、第5閾値温度Tth5は250℃である。
【0148】
次に、燃料処理器42のシステム動作を、
図7を用いてより詳細に説明する。
【0149】
起動工程が開始されると、燃料処理器42は以下に示す動作を行う。なお、以下では、
図5に示す実施の形態1と同様のステップについては、その説明を省略する。
【0150】
ステップS201において、加熱器10は、加熱動作を開始する。加熱動作は、CO除去器4を加熱する動作である。加熱動作は、CO低減器3を加熱する動作でもある。加熱動作は、改質器2を加熱する動作でもある。具体的には、ステップS201において、制御器11は、加熱器10が加熱動作を開始するように、加熱器10を制御する。
【0151】
ステップS201で開始される加熱動作により、CO除去器4に充填された水素及び一酸化炭素からのメタンの生成が促進されうる。加熱動作により、CO低減器3に供給されたガスに含まれる一酸化炭素及び水蒸気からの二酸化炭素及び水素の生成が促進されうる。加熱動作により、改質器2に供給された水が蒸発しうる。
【0152】
ステップS201の後、ステップS202において、制御器11は、以下の3つの条件が全て成立しているか否かを判定する。3つの条件が全て成立している場合、ステップS103に進む。3つの条件の少なくとも1つが成立していない場合、ステップS202に進む。つまり、3つの条件が全て成立するまでステップS202が繰り返し実行される。3つの条件が全て成立すると、ステップS103に進む。
【0153】
ステップS201の3つの条件は、第1条件、第2条件及び第3条件を含む。第1条件は、第1検出器12の検出温度T12が第4閾値温度Tth4以上であるという条件である。第2条件は、第3検出器13の検出温度T13が第5閾値温度Tth5以上であるという条件である。第3条件は、第2検出器14の検出温度T14が第1閾値温度Tth1以上であるという条件である。
【0154】
ステップS103の後、ステップS204において、水供給器7は、水供給動作を開始する。具体的には、ステップS204において、制御器11は、水供給器7が水供給動作を開始するように、水供給器7を制御する。水供給動作は、改質器2に水を供給する動作である。ステップS204の終了後、ステップS104に進む。
【0155】
ステップS204で開始される水供給動作は、CO低減器3での変成反応により一酸化炭素の濃度を例えば1%以下に低減することを可能にする。
【0156】
ステップS104の後、ステップS206において、酸化ガス供給器8は、酸化ガス供給動作を開始する。具体的には、ステップS206において、制御器11は、酸化ガス供給器8が酸化ガス供給動作を開始するように、酸化ガス供給器8を制御する。酸化ガス供給動作は、CO除去器4に酸化ガスを供給する動作である。ステップS204の終了後、ステップS105に進む。
【0157】
ステップS206で開始される酸化ガス供給動作は、CO除去器4での一酸化炭素の酸化反応により一酸化炭素を除去することを可能にする。
【0158】
実施の形態2では、ステップS105の条件が成立していない場合、ステップS251に進む。
【0159】
ステップS251において、酸化ガス供給器8は、酸化ガス供給動作を停止する。具体的には、ステップS251において、制御器11は、酸化ガス供給器8が酸化ガス供給動作を停止するように、酸化ガス供給器8を制御する。ステップS251の終了後、ステップS151に進む。
【0160】
ステップS251により酸化ガス供給動作を停止することにより、CO除去器4での一酸化炭素の酸化反応が停止されうる。
【0161】
ステップS151の後、ステップS253において、水供給器7は、水供給動作を停止する。具体的には、ステップS253において、制御器11は、水供給器7が水供給動作を停止するように、水供給器7を制御する。ステップS253の終了後、ステップS152に進む。
【0162】
ステップS253により水供給動作を停止することにより、CO低減器3での変成反応が停止されうる。
【0163】
実施の形態2では、水供給器7が水供給動作を停止した後に、点火器15は点火動作を停止する。このようにすれば、水供給器7の水供給動作を停止後において改質器2、CO低減器3及びCO除去器4からなる群より選択される少なくとも1つから可燃性の流体が漏出したとしても、その可燃性の流体を完全に燃焼させることができる。
【0164】
実施の形態2では、ステップS154の条件が成立している場合、ステップS257に進む。
【0165】
ステップS257において、加熱器10は、加熱動作を停止する。具体的には、ステップS257において、制御器11は、加熱器10が加熱動作を停止するように、加熱器10を制御する。
【0166】
ステップS257の後、起動工程が終了する。その後、待機工程に移行する。
【0167】
実施の形態2では、ステップS107の条件が成立している場合、ステップS210に進む。
【0168】
ステップS210において、加熱器10は、加熱動作を停止する。具体的には、ステップS210において、制御器11は、加熱器10が加熱動作を停止するように、加熱器10を制御する。
【0169】
ステップS107及びステップS210により、検出温度T12≧第3閾値温度Tth3の場合に、加熱器10によるCO除去器4の加熱が停止される。これにより、フレームロッド16による火炎の検出に十分な濃度のメタンが改質器2において生成されうる温度まで改質器2の温度が上昇してから、CO除去器4でのメタンの生成を停止させることができる。
【0170】
ステップS210の後、起動工程が終了する。その後、発電工程に移行する。
【0171】
ここで、実施の形態2のステップS153の作用について、説明する。上述のように、CO除去器4では、一酸化炭素を用いてメタンが生成される。一方、CO低減器3は、一酸化炭素の濃度を低下させる。しかし、ステップS153により、CO除去器4の温度が高まることによって、CO除去触媒によるメタン生成作用が向上する。さらに、ステップS153により、CO低減器3の温度が、変成触媒による一酸化炭素の濃度低減作用が最大となる温度からずれていく。実施の形態2のステップS153によれば、これらの作用が相俟って、CO除去器4でメタンが生成され易くなる。
【0172】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略等を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本開示は、吸熱型変成ガスから抽出した水素を利用する装置に適用可能である。具体的には、本開示は、吸熱型変成ガス生成装置、ガス浸炭炉、ガス改質装置及び燃料電池を用いて電力を得る燃料電池システムに適用可能である。また、本開示は、吸熱型変成ガス生成装置、ガス浸炭炉及びガス改質装置とともに、圧力スイング吸着装置、温度スイング吸着装置又は電気化学式水素純化器を用いて精製水素を得る水素製造システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0174】
2 改質器
3 CO低減器
4 CO除去器
5 燃焼器
6 原料供給器
7 水供給器
8 酸化ガス供給器
9 加熱器
10 加熱器
12 改質器温度検出器
13 CO低減器温度検出器
14 CO除去器温度検出器
15 点火器
16 火炎検出器
41 燃料処理器
42 燃料処理器
51 水素利用機器