IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-固体電解質材料およびこれを用いた電池 図1
  • 特許-固体電解質材料およびこれを用いた電池 図2
  • 特許-固体電解質材料およびこれを用いた電池 図3
  • 特許-固体電解質材料およびこれを用いた電池 図4
  • 特許-固体電解質材料およびこれを用いた電池 図5
  • 特許-固体電解質材料およびこれを用いた電池 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】固体電解質材料およびこれを用いた電池
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20240426BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20240426BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240426BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240426BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240426BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240426BHJP
   C01F 17/30 20200101ALI20240426BHJP
   C01F 17/10 20200101ALI20240426BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01B1/08
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M10/052
H01M10/0562
C01F17/30
C01F17/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021529887
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2020009174
(87)【国際公開番号】W WO2021002052
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2019125563
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】西尾 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】宮武 和史
(72)【発明者】
【氏名】久保 敬
(72)【発明者】
【氏名】浅野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 章裕
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-513687(JP,A)
【文献】特表2021-535582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
H01B 1/08
H01M 4/62
H01M 4/13
H01M 10/052
H01M 10/0562
C01F 17/30
C01F 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li、Y、O、およびXを含む固体電解質材料であって、
Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも2種の元素であり、
Oは、前記固体電解質材料の表面領域に存在し、
Cu-Kα線を用いたX線回折測定によって得られる前記固体電解質材料のX線回折パターンにおいて、13.6°以上14.6°以下、27.8°以上29.0°以下、32.0°以上33.3°以下、46.3°以上47.8°以下、および57.2°以上59.8°以下の回折角2θの範囲にピークが存在する、
固体電解質材料。
【請求項2】
Mg、Ca、Zn、Sr、Ba、Al、Sc、Ga、Bi、La、Zr、Hf、Ta、およびNbからなる群より選択される少なくとも1種の元素をさらに含む、
請求項1に記載の固体電解質材料。
【請求項3】
Li、Y、O、およびXからなる、
請求項1に記載の固体電解質材料。
【請求項4】
前記固体電解質材料の表面領域におけるYに対するOのモル比は、前記固体電解質材料全体におけるYに対するOのモル比より大きい、
請求項1から3のいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項5】
Xは、ClおよびBrである、
請求項1からのいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項6】
Xにおいて、Clのモル分率は、Brのモル分率より高い、
請求項に記載の固体電解質材料。
【請求項7】
以下の3つの数式が充足される:
2.6≦x≦3.4、
2.7≦y≦4.2、および
1.6≦z≦2.5、
ここで、
xは、Yに対するLiのモル比を表し、
yは、Yに対するClのモル比を表し、
zは、Yに対するBrのモル比を表す、
請求項またはに記載の固体電解質材料。
【請求項8】
以下の3つ数式が充足される:
2.99≦x≦3.05、
3.05≦y≦3.81、および
1.79≦z≦2.19、
請求項に記載の固体電解質材料。
【請求項9】
数式:0<a≦0.68、が充足され、
ここで、aは、Yに対するOのモル比を表す、
請求項1からのいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項10】
数式:0<a≦0.11、が充足される、
請求項に記載の固体電解質材料。
【請求項11】
正極、
負極、および
前記正極および前記負極の間に設けられている電解質層、
を備え、
前記正極、前記負極、および前記電解質層からなる群より選択される少なくとも1つは、請求項1から10のいずれか一項に記載の固体電解質材料を含有する、
電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質材料およびこれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、硫化物固体電解質を用いた全固体電池を開示している。特許文献2は、Li6-3zz6(0<z<2が充足され、かつXは、ClまたはBrである)で表される固体電解質材料を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-129312号公報
【文献】国際公開第2018/025582号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示による固体電解質材料は、Li、Y、O、およびXを含む固体電解質材料であって、Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも2種の元素であり、Oは、前記固体電解質材料の表面領域に存在する。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、高いリチウムイオン伝導度を有する固体電解質材料を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第2実施形態による電池1000の断面図を示す。
図2図2は、実施例1~5による固体電解質材料のX線回折パターンを示すグラフである。
図3図3は、固体電解質材料のイオン伝導度を評価するために用いられる加圧成形ダイス300の模式図を示す。
図4図4は、実施例1による固体電解質材料のインピーダンス測定結果のCole-Cole線図を示すグラフである。
図5図5は、実施例1および比較例1による電池の初期放電特性を示すグラフである。
図6図6は、実施例1~5および参考例1による固体電解質材料の赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態が、図面を参照しながら説明される。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態による固体電解質材料は、Li、Y、O、およびXを含む。Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも2種の元素である。Oは、固体電解質材料の表面領域に存在する。第1実施形態による固体電解質材料は、高いリチウムイオン伝導度を有する。
【0010】
第1実施形態による固体電解質材料を用いて、充放電特性に優れた全固体電池が得られる。全固体電池は、一次電池であってもよく、二次電池であってもよい。
【0011】
第1実施形態による固体電解質材料は、硫黄を含有しないことが望ましい。硫黄を含有しない固体電解質材料は、大気に曝露されても硫化水素が発生しない。したがって、第1実施形態による固体電解質材料が硫黄を含有しない場合、当該固体電解質材料が用いられた電池は、優れた安全性を有する。特許文献1に開示された硫化物固体電解質は、大気中に曝露されると、硫化水素が発生し得ることに留意せよ。
【0012】
固体電解質材料のイオン伝導度を高めるために、第1実施形態による固体電解質材料は、Mg、Ca、Zn、Sr、Ba、Al、Sc、Ga、Bi、La、Zr、Hf、Ta、およびNbからなる群より選択される少なくとも1種の元素をさらに含んでいてもよい。
【0013】
固体電解質材料のイオン伝導度を高めるために、第1実施形態による固体電解質材料は、Li、Y、O、およびXからなっていてもよい。
【0014】
固体電解質材料のイオン伝導度を高めるために、第1実施形態による固体電解質材料の表面領域におけるYに対するOのモル比は、当該固体電解質材料全体におけるYに対するOのモル比より大きくてもよい。
【0015】
固体電解質材料のイオン伝導度を高めるために、Xは、ClおよびBrであってもよい。このとき、Xにおいて、Clのモル分率は、Brのモル分率より高くてもよい。これにより、第1実施形態による固体電解質材料はより軽くなる。
【0016】
第1実施形態による固体電解質材料のX線回折パターンは、Cu-Kα線を用いて測定され得る。得られたX線回折パターンにおいて、13.6°以上14.6°以下、27.8°以上29.0°以下、32.0°以上33.3°以下、46.3°以上47.8°以下、および57.2°以上59.8°以下の回折角2θの範囲にピークが存在していてもよい。このような固体電解質材料は、高いイオン伝導度を有する。
【0017】
Yに対するLiのモル比をx、Yに対するClのモル比をy、およびYに対するBrのモル比をzとするとき、
以下の3つの数式:
2.6≦x≦3.4、
2.7≦y≦4.2、および
1.6≦z≦2.5、
が充足されてもよい。このような固体電解質材料は、高いイオン伝導度を有する。
【0018】
以下の3つの数式:
2.99≦x≦3.05、
3.05≦y≦3.81、および
1.79≦z≦2.19、
が充足されてもよい。このような固体電解質材料は、より高いイオン伝導度を有する。
【0019】
Yに対するOのモル比をaとするとき、
0<a≦0.68、
が充足されてもよい。このような固体電解質材料は、高いイオン伝導度を有する。
【0020】
0<a≦0.11、
が充足されてもよい。このような固体電解質材料は、より高いイオン伝導度を有する。
【0021】
第1実施形態による固体電解質材料の形状は、限定されない。当該形状の例は、針状、球状、または楕円球状である。第1実施形態による固体電解質材料は、粒子であってもよい。第1実施形態による固体電解質材料は、ペレットまたは板の形状を有するように形成されてもよい。
【0022】
例えば、第1実施形態による固体電解質材料の形状が粒子状(例えば、球状)である場合、第1実施形態による固体電解質材料は、0.1μm以上かつ100μm以下のメジアン径を有していてもよい。
【0023】
第1実施形態による固体電解質材料のイオン伝導性を高め、かつ、第1実施形態による固体電解質材料および活物質を良好に分散させるために、メジアン径は0.5μm以上かつ10μm以下であってもよい。第1実施形態による固体電解質材料および活物質をさらに良好に分散させるために、第1実施形態による固体電解質材料は、活物質よりも小さいメジアン径を有していてもよい。
【0024】
<固体電解質材料の製造方法>
第1実施形態による固体電解質材料は、下記の方法により製造され得る。
【0025】
まず、ハロゲン化物の原料粉が混合される。
【0026】
一例として、Li、Y、Cl、Br、およびOからなる固体電解質材料を合成する場合、YCl3原料粉、LiCl原料粉、およびLiBr原料粉が混合される。得られた混合粉は、酸素濃度および水分濃度が調整された不活性ガス雰囲気(例えば、-60℃以下の露点を有するアルゴン雰囲気)中で焼成される。得られた反応物は、比較的高い露点を有する雰囲気(例えば、-30℃の露点を有するアルゴン雰囲気)中で静置される。次いで、融点以下の温度(例えば、400℃)で焼成される。合成プロセスにおいて生じ得る組成変化を相殺するように、あらかじめ調整されたモル比で原料粉は混合されてもよい。原料粉、雰囲気中の酸素濃度、雰囲気中の水分濃度、および反応時間の選択により、固体電解質材料中の酸素量が決定される。このようにして、第1実施形態による固体電解質材料が得られる。
【0027】
混合される原料粉は、酸化物およびハロゲン化物であってもよい。例えば、原料粉として、Y23、NH4Cl、およびLiBrが使用されてもよい。
【0028】
原料粉および原料粉の混合比を選択することにより、様々なハロゲン化物が得られる。
【0029】
当該ハロゲン化物の例は、Li3.10.9Ca0.1Br3Cl3、Li2.40.8Ca0.6Br222、Li3YBr5F、Li2.71.1Br3Cl3、Li2.71.1BrCl5、Li3.30.9Br3Cl3、Li3YBrCl5、Li3YBr4Cl2、またはLi3YBr0.5Cl5.5である。
【0030】
これらのハロゲン化物は、高いイオン伝導度を有する。これらのハロゲン化物が高い露点を有する雰囲気中にさらされることにより、OおよびHが取り込まれた固体電解質材料が得られる。このようにして得られる固体電解質材料も、高いイオン伝導度を有し得る。
【0031】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態が説明される。第1実施形態において説明された事項は、適宜、省略される。
【0032】
第2実施形態による電池は、正極、電解質層、および負極を備える。電解質層は、正極および負極の間に設けられている。正極、電解質層、および負極からなる群より選択される少なくとも1つは、第1実施形態による固体電解質材料を含有する。第2実施形態による電池は、第1実施形態による固体電解質材料を含有するため、優れた充放電特性を有する。
【0033】
図1は、第2実施形態による電池1000の断面図を示す。
【0034】
電池1000は、正極201、電解質層202、および負極203を備える。正極201は、正極活物質粒子204および固体電解質粒子100を含有する。電解質層202は、正極201および負極203の間に設けられている。電解質層202は、電解質材料(例えば、固体電解質材料)を含有する。負極203は、負極活物質粒子205および固体電解質粒子100を含有する。
【0035】
固体電解質粒子100は、第1実施形態による固体電解質材料を主たる成分として含む粒子である。固体電解質粒子100は、第1実施形態による固体電解質材料からなる粒子であってもよい。
【0036】
正極201は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵および放出可能な材料を含有する。当該材料は、例えば、正極活物質(例えば、正極活物質粒子204)である。
【0037】
正極活物質の例は、リチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属フッ化物、ポリアニオン材料、フッ素化ポリアニオン材料、遷移金属硫化物、遷移金属オキシフッ化物、遷移金属オキシ硫化物、または遷移金属オキシ窒化物である。リチウム含有遷移金属酸化物の例は、LiNi1-d-fCoAl(ここで、0<d、0<f、かつ0<(d+f)<1)またはLiCoOである。
【0038】
正極201において、正極活物質粒子204および固体電解質粒子100を良好に分散させるために、正極活物質粒子204は、0.1μm以上のメジアン径を有していてもよい。当該良好な分散により、電池1000の充放電特性が向上する。正極活物質粒子204内でリチウムを速やかに拡散させるために、正極活物質粒子204は、100μm以下のメジアン径を有していてもよい。リチウムの速やかな拡散のため、電池1000は、高い出力で動作できる。上記の通り、正極活物質粒子204は、0.1μm以上かつ100μm以下のメジアン径を有していてもよい。
【0039】
正極201において、正極活物質粒子204および固体電解質粒子100を良好に分散させるために、正極活物質粒子204は、固体電解質粒子100よりも大きいメジアン径を有していてもよい。
【0040】
電池1000のエネルギー密度および出力を高めるために、正極201において、正極活物質粒子204の体積および固体電解質粒子100の体積の合計に対する正極活物質粒子204の体積の比は、0.30以上かつ0.95以下あってもよい。
【0041】
電池1000のエネルギー密度および出力を高めるために、正極201は、10μm以上かつ500μm以下の厚みを有していてもよい。
【0042】
電解質層202は、電解質材料を含有する。当該電解質材料は、第1実施形態による固体電解質材料であってもよい。電解質層202は、固体電解質層であってもよい。
【0043】
電解質層202は、第1実施形態による固体電解質材料のみから構成されていてもよい。あるいは、電解質層202は、第1実施形態による固体電解質材料とは異なる固体電解質材料のみから構成されていてもよい。
【0044】
第1実施形態による固体電解質材料とは異なる固体電解質材料の例は、Li2MgX’4、Li2FeX’4、Li(Al,Ga,In)X’4、Li3(Al,Ga,In)X’6、またはLiIである。ここで、X’は、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。
【0045】
以下、第1実施形態による固体電解質材料は、第1固体電解質材料と呼ばれる。第1実施形態による固体電解質材料とは異なる固体電解質材料は、第2固体電解質材料と呼ばれる。
【0046】
電解質層202は、第1固体電解質材料だけでなく、第2固体電解質材料も含有していてもよい。第1固体電解質材料および第2固体電解質材料は、均一に分散していてもよい。第1固体電解質材料からなる層および第2固体電解質材料からなる層が、電池1000の積層方向に沿って積層されていてもよい。
【0047】
正極201および負極203の間の短絡を抑制し、かつ、電池の出力を高めるために、電解質層202は、1μm以上かつ100μm以下の厚みを有していてもよい。
【0048】
負極203は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵および放出可能な材料を含有する。当該材料は、例えば、負極活物質(例えば、負極活物質粒子205)である。
【0049】
負極活物質の例は、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、または珪素化合物である。金属材料は、単体の金属であってもよく、あるいは合金であってもよい。金属材料の例は、リチウム金属またはリチウム合金である。炭素材料の例は、天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、人造黒鉛、または非晶質炭素である。容量密度の観点から、負極活物質の好適な例は、珪素(すなわち、Si)、錫(すなわち、Sn)、珪素化合物、または錫化合物である。
【0050】
負極203において、負極活物質粒子205および固体電解質粒子100を良好に分散させるために、負極活物質粒子205は、0.1μm以上のメジアン径を有していてもよい。当該良好な分散により、電池の充放電特性が向上する。負極活物質粒子205内でリチウムを速やかに拡散させるために、負極活物質粒子205は、100μm以下のメジアン径を有していてもよい。リチウムの速やかな拡散のため、電池は高い出力で動作できる。上記の通り、負極活物質粒子205は、0.1μm以上かつ100μm以下のメジアン径を有していてもよい。
【0051】
負極203において、負極活物質粒子205および固体電解質粒子100を良好に分散させるために、負極活物質粒子205は、固体電解質粒子100よりも大きいメジアン径を有していてもよい。
【0052】
電池1000のエネルギー密度および出力を高めるために、負極203において、負極活物質粒子205の体積および固体電解質粒子100の体積の合計に対する負極活物質粒子205の体積の比は、0.30以上かつ0.95以下であってもよい。
【0053】
電池1000のエネルギー密度および出力を高めるために、負極203は、10μm以上かつ500μm以下の厚みを有していてもよい。
【0054】
イオン伝導性、化学的安定性、および電気化学的安定性を高めるために、正極201、電解質層202、および負極203からなる群より選択される少なくとも1つは、第2固体電解質材料を含有していてもよい。
【0055】
上述されたように、第2固体電解質材料は、ハロゲン化物固体電解質であってもよい。ハロゲン化物固体電解質の例は、Li2MgX’4、Li2FeX’4、Li(Al,Ga,In)X’4、Li3(Al,Ga,In)X’6、またはLiIである。ここで、X’は、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。
【0056】
第2固体電解質材料は、硫化物固体電解質であってもよい。
【0057】
硫化物固体電解質の例は、Li2S-P25、Li2S-SiS2、Li2S-B23、Li2S-GeS2、Li3.25Ge0.250.754、またはLi10GeP212である。
【0058】
第2固体電解質材料は、酸化物固体電解質であってもよい。
【0059】
酸化物固体電解質の例は、
(i)LiTi2(PO43またはその元素置換体のようなNASICON型固体電解質、
(ii)(LaLi)TiO3のようなペロブスカイト型固体電解質、
(iii)Li14ZnGe416、Li4SiO4、LiGeO4、またはその元素置換体のようなLISICON型固体電解質、
(iv)Li7La3Zr212またはその元素置換体のようなガーネット型固体電解質、または
(v)Li3PO4またはそのN置換体
である。
【0060】
第2固体電解質材料は、有機ポリマー固体電解質であってもよい。
【0061】
有機ポリマー固体電解質の例は、高分子化合物およびリチウム塩の化合物である。高分子化合物はエチレンオキシド構造を有していてもよい。エチレンオキシド構造を有する高分子化合物は、リチウム塩を多く含有することができるため、イオン伝導率をより高めることができる。
【0062】
リチウム塩の例は、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiN(SO2CF3)(SO249)、またはLiC(SO2CF33である。これらから選択される1種のリチウム塩が、単独で使用されてもよい。あるいは、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が使用されてもよい。
【0063】
正極201、電解質層202、および負極203からなる群より選択される少なくとも1つは、リチウムイオンの授受を容易にし、電池1000の出力特性を向上する目的で、非水電解液、ゲル電解質、またはイオン液体を含有していてもよい。
【0064】
非水電解液は、非水溶媒および当該非水溶媒に溶けたリチウム塩を含有する。
【0065】
非水溶媒の例は、環状炭酸エステル溶媒、鎖状炭酸エステル溶媒、環状エーテル溶媒、鎖状エーテル溶媒、環状エステル溶媒、鎖状エステル溶媒、またはフッ素溶媒である。環状炭酸エステル溶媒の例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、またはブチレンカーボネートである。
【0066】
鎖状炭酸エステル溶媒の例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、またはジエチルカーボネートである。
【0067】
環状エーテル溶媒の例は、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、または1,3-ジオキソランである。
【0068】
鎖状エーテル溶媒の例は、1,2-ジメトキシエタンまたは1,2-ジエトキシエタンである。
【0069】
環状エステル溶媒の例は、γ-ブチロラクトンである。
【0070】
鎖状エステル溶媒の例は、酢酸メチルである。
【0071】
フッ素溶媒の例は、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート、またはフルオロジメチレンカーボネートである。
【0072】
これらから選択される1種の非水溶媒が、単独で使用されてもよい。あるいは、これらから選択される2種以上の非水溶媒の混合物が使用されてもよい。
【0073】
リチウム塩の例は、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiN(SO2CF3)(SO249)、またはLiC(SO2CF33である。これらから選択される1種のリチウム塩が、単独で使用されてもよい。あるいは、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が使用されてもよい。
【0074】
リチウム塩の濃度は、例えば、0.5mol/リットル以上かつ2mol/リットル以下の範囲にある。
【0075】
ゲル電解質として、非水電解液を含浸させたポリマー材料が使用され得る。ポリマー材料の例は、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、またはエチレンオキシド結合を有するポリマーである。
【0076】
イオン液体に含まれるカチオンの例は、
(i)テトラアルキルアンモニウムまたはテトラアルキルホスホニウムのような脂肪族鎖状4級塩類、
(ii)ピロリジニウム類、モルホリニウム類、イミダゾリニウム類、テトラヒドロピリミジニウム類、ピペラジニウム類、またはピペリジニウム類のような脂肪族環状アンモニウム、または
(iii)ピリジニウム類またはイミダゾリウム類のような含窒ヘテロ環芳香族カチオンである。
【0077】
イオン液体に含まれるアニオンの例は、PF6 -、BF4 -、SbF6- -、AsF6 -、SO3CF3 -、N(SO2CF32 -、N(SO2252 -、N(SO2CF3)(SO249-、またはC(SO2CF33 -である。イオン液体はリチウム塩を含有してもよい。
【0078】
正極201、電解質層202、および負極203からなる群より選択される少なくとも1つは、粒子同士の密着性を向上する目的で、結着剤を含有していてもよい。
【0079】
結着剤の例は、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、またはカルボキシメチルセルロースである。
【0080】
共重合体もまた、結着剤として用いられ得る。このような結着剤の例は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、およびヘキサジエンからなる群より選択された2種以上の材料の共重合体である。これらのうちから選択された2種以上の混合物を結着剤として使用してもよい。
【0081】
正極201および負極203から選択される少なくとも1つは、電子導電性を高めるために、導電助剤を含有していてもよい。
【0082】
導電助剤の例は、
(i)天然黒鉛または人造黒鉛のようなグラファイト類、
(ii)アセチレンブラックまたはケッチェンブラックのようなカーボンブラック類、
(iii)炭素繊維または金属繊維のような導電性繊維類、
(iv)フッ化カーボン、
(v)アルミニウムのような金属粉末類、
(vi)酸化亜鉛またはチタン酸カリウムのような導電性ウィスカー類、
(vii)酸化チタンのような導電性金属酸化物、または
(viii)ポリアニリン、ポリピロール、またはポリチオフェンのような導電性高分子化合物
である。低コスト化のために、上記(i)または(ii)の導電助剤が使用されてもよい。
【0083】
第2実施形態による電池の形状の例は、コイン型、円筒型、角型、シート型、ボタン型、扁平型、または積層型である。
【0084】
(実施例)
以下の実施例を参照しながら、本開示がより詳細に説明される。
【0085】
≪実施例1≫
[固体電解質材料の作製]
-60℃以下の露点を有するアルゴン雰囲気(以下、「乾燥アルゴン雰囲気」と称する。)中で、原料粉としてYCl3、LiCl、およびLiBrが、1:1:2程度のYCl3:LiCl:LiBrモル比となるように用意された。これらの粉末が、乳鉢中で粉砕され、混合された。次いで、混合物は、アルミナ製るつぼ中で、500℃で1時間焼成された後、乳鉢中で粉砕された。得られた反応物は、-30℃の露点を有する雰囲気中で、約3分間静置された。さらに、乾燥アルゴン雰囲気中で、400℃で1時間焼成された後、乳鉢中で粉砕された。このようにして、実施例1による固体電解質材料が得られた。
【0086】
[固体電解質材料の組成分析]
実施例1による固体電解質材料の単位重量あたりのLiおよびYの含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(Thermo Fisher Scientific製、iCAP7400)を用いて、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定された。実施例1による固体電解質材料のClおよびBrの含有量は、イオンクロマトグラフ装置(Dionex製、ICS-2000)を用いて、イオンクロマトグラフィー法により測定された。これらの測定結果から得られたLi:Y:Cl:Brの含有量をもとに、Li:Y:Cl:Brのモル比が算出された。その結果、実施例1による固体電解質材料は、3.02:1.0:3.81:2.19のLi:Y:Cl:Brのモル比を有していた。
【0087】
実施例1による固体電解質材料全体の質量に対するOの質量は、酸素・窒素・水素分析装置(堀場製作所製、EMGA-930)を用いて、非分散型赤外線吸収法により測定された。その結果、0.26%であった。これをもとに、Y:Oのモル比が算出された。その結果、実施例1による固体電解質材料は、1.00:0.07のY:Oのモル比を有していた。
【0088】
実施例1による固体電解質材料の表面領域におけるYに対するOのモル比は、走査型X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ製、PHI Quantera SXM)を用いて、X線光電子分光法により測定された。X線源は、Al線が使用された。その結果、実施例1による固体電解質材料は、表面領域において、1.00:0.44のY:Oのモル比を有していた。本開示における表面領域は、このようにして測定された領域を意味する。すなわち、第1実施形態による固体電解質材料の表面領域は、当該固体電解質材料の表面から内部方向へ5nm程度であった。
【0089】
組成分析において、Yに対して0.001%以下のモル分率である元素は、不純物として見なされた。
【0090】
[X線回折]
-45℃以下の露点を有するドライ環境で、X線回折装置(RIGAKU社、MiniFlex600)を用いて、実施例1による固体電解質材料のX線回折パターンが測定された。X線源として、Cu-Kα線(波長1.5405Åおよび1.5444Å)が使用された。
【0091】
X線回折測定の結果、14.17°、28.27°、28.62°、32.87°、47.40°および59.25°にピークが存在していた。実施例1による固体電解質材料のX線回折パターン図は、図2に示される。
【0092】
[イオン伝導度の評価]
図3は、固体電解質材料のイオン伝導度を評価するために用いられた加圧成形ダイス300模式図を示す。加圧成形ダイス300は、枠型301、パンチ下部302、およびパンチ上部303を具備していた。枠型301は、絶縁性ポリカーボネートから形成されていた。パンチ上部303およびパンチ下部302は、いずれも電子伝導性のステンレスから形成されていた。
【0093】
図3に示される加圧成形ダイス300を用いて、下記の方法により、実施例1による固体電解質材料のイオン伝導度が測定された。
【0094】
乾燥アルゴン雰囲気中で、実施例1による固体電解質材料の粉末を加圧成形ダイス300の内部に充填した。加圧成形ダイス300の内部で、実施例1による固体電解質材料に、パンチ下部302およびパンチ上部303を用いて400MPaの圧力が印加された。
【0095】
圧力が印加されたまま、パンチ上部303およびパンチ下部302を介して、ポテンショスタット(Princeton Applied Research社、VersaSTAT4)を用いて、電気化学的インピーダンス測定法により、室温において、実施例1による固体電解質材料のインピーダンスが測定された。パンチ上部303は、作用極および電位測定用端子に接続された。パンチ下部302は、対極および参照極に接続された。
【0096】
図4は、インピーダンス測定結果のCole-Cole線図を示すグラフである。
【0097】
図4において、複素インピーダンスの位相の絶対値が最も小さい測定点でのインピーダンスの実数値が、実施例1による固体電解質材料のイオン伝導に対する抵抗値と見なされた。当該実数値については、図4において示される矢印RSEを参照せよ。当該抵抗値を用いて、以下の数式(2)に基づいて、イオン伝導度が算出された。
σ=(RSE×S/t)-1 ・・・(2)
ここで、σは、イオン伝導度である。Sは、固体電解質材料のパンチ上部303との接触面積(図3において、枠型301の中空部の断面積に等しい)である。RSEは、インピーダンス測定における固体電解質材料の抵抗値である。tは、圧力が印加された固体電解質材料の厚み(図3において、固体電解質材料の粉末101から形成される層の厚みに等しい)である。
【0098】
25℃で測定された、実施例1による固体電解質材料のイオン伝導度は、1.4×10-3S/cmであった。
【0099】
[電池の作製]
乾燥低アルゴン雰囲気中で、実施例1による固体電解質材料および活物質であるLiCoO2が、70:30の体積比率となるように用意された。これらの材料がメノウ乳鉢中で混合され、合剤が得られた。
【0100】
9.5mmの内径を有する絶縁性の筒の中で、実施例1による固体電解質材料(156mg)、上述の合剤(10.0mg)、およびアルミニウム粉末(14.7mg)が、順に積層された。積層体に300MPaの圧力が印加され、第1電極および固体電解質層が形成された。固体電解質層は、700μmの厚みを有していた。
【0101】
次に、固体電解質層に、金属In箔を積層した。固体電解質層は、金属In箔および第1電極の間に挟まれていた。金属In箔は、200μmの厚みを有していた。次に、金属In箔に80MPaの圧力が印加され、第2電極が形成された。
【0102】
ステンレス鋼から形成された集電体が第1電極および第2電極に取り付けられ、次いで、当該集電体に集電リードが取り付けられた。最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性の筒の内部が外気雰囲気から遮断され、筒の内部が密閉された。このようにして、実施例1による電池が得られた。
【0103】
[充放電試験]
得られた実施例1による電池は、25℃の恒温槽に配置された。
【0104】
電池の理論容量に対して0.05Cレート(20時間率)となる電流値で、3.7Vの電圧に達するまで、実施例1による電池を充電した。
【0105】
次に、同じく0.05Cレートとなる電流値で、1.9Vの電圧に達するまで、実施例1による電池を放電した。
【0106】
充放電試験の結果、実施例1による電池は、81μAhの初期放電容量を有していた。
【0107】
≪実施例2~5≫
[固体電解質材料の作製]
(実施例2)
-30℃の露点を有する雰囲気中で反応物が静置された時間を、約3分間ではなく1時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2による固体電解質材料が得られた。
【0108】
(実施例3)
-30℃の露点を有する雰囲気中で反応物が静置された時間を、約3分間ではなく2時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3による固体電解質材料が得られた。
【0109】
(実施例4)
-30℃の露点を有する雰囲気中で反応物が静置された時間を、約3分間ではなく12時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4による固体電解質材料が得られた。
【0110】
(実施例5)
-30℃の露点を有する雰囲気中で反応物が静置された時間を、約3分間ではなく24時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5による固体電解質材料が得られた。
【0111】
[固体電解質材料の組成分析]
実施例1と同様にして、実施例2~5による固体電解質材料の組成分析が実施された。実施例2、3、4および5による固体電解質材料全体の質量に対するOの質量は、それぞれ0.29%、0.41%、1.96%、および2.63%であった。元素比は表1に示される。
【0112】
[X線回折]
実施例1と同様にして、実施例2~5による固体電解質材料のX線回折パターンが測定された。
【0113】
実施例2による固体電解質材料のX線回折パターンにおいては、14.16°、28.26°、28.60°、32.86°、47.39°、および59.22°にピークが存在していた。
【0114】
実施例3による固体電解質材料のX線回折パターンにおいては、14.16°、28.27°、28.61°、32.87°、47.39°、および59.28°にピークが存在していた。
【0115】
実施例4による固体電解質材料のX線回折パターンにおいては、14.15°、28.26°、28.60°、32.86°、47.38°、および59.24°にピークが存在していた。
【0116】
実施例5による固体電解質材料のX線回折パターンにおいては、14.16°、28.27°、28.60°、32.87°、47.39°、および59.24°にピークが存在していた。
【0117】
したがって、実施例2~5による固体電解質材料は、実施例1とほぼ同じ回折角にピークを有していた。X線回折パターン図は、図2に示される。
【0118】
[イオン伝導度の評価]
実施例1と同様にして、実施例2~5よる固体電解質材料のイオン伝導度が測定された。測定されたイオン伝導度は、表1に示される。
【0119】
[電池の作製]
実施例2~5による固体電解質材料を用いて、実施例1と同様にして、実施例2~5よる電池が得られた。
【0120】
[充放電試験]
実施例2~5による電池を用いて、実施例1と同様にして、充放電試験が実施された。
【0121】
実施例2~5による電池は、実施例1による電池と同様に、良好に充電および放電された。
【0122】
≪比較例1≫
乾燥アルゴン雰囲気中で、原料粉としてLiClおよびFeCl2が、2:1のLiCl:FeCl2モル比となるように用意された。これらの粉末は、遊星型ボールミルで、25時間、600rpmでメカノケミカル的に反応するようにミリング処理された。このようにして、比較例1による固体電解質材料が得られた。比較例1による固体電解質材料は、Li2FeCl4により表される組成を有していた。
【0123】
実施例1と同様にして、比較例1による固体電解質材料のイオン伝導度が測定された。その結果、22℃で測定されたイオン伝導度は、9×10-6S/cmであった。
【0124】
実施例1と同様にして、比較例1による電池が得られた。当該電池を用いて、充放電試験が実施された。比較例1による電池は、1uAh以下の初期放電容量を有していた。すなわち、比較例1による電池は、充電も放電もされなかった。
【0125】
≪参考例1≫
-60℃以下の露点を有するアルゴン雰囲気(以下、「乾燥アルゴン雰囲気」と称する。)中で、原料粉としてYCl3、LiCl、およびLiBrが、1:1:2程度のYCl3:LiCl:LiBrモル比となるように用意された。これらの粉末が、乳鉢中で粉砕され、混合された。次いで、混合物は、アルミナ製るつぼ中で、500℃で1時間焼成された後、乳鉢中で粉砕された。得られた反応物は、-30℃の露点を有するアルゴン雰囲気中で、2時間静置された。このようにして、参考例1による固体電解質材料が得られた。
【0126】
実施例1と同様にして、参考例1による固体電解質材料全体の酸素量および当該固体電解質材料のイオン伝導度が測定された。測定結果は、表1に示される。
【0127】
[赤外分光分析]
実施例1~5および参考例1による固体電解質材料は、赤外分光装置(BRUKER製、ALPHA)を用いて、全反射測定法により分析された。プリズムはダイヤモンドから形成されていた。その結果、参考例1による固体電解質材料においては、プロトン(H+)と酸素の結合の存在を示す、3100cm-1~3640cm-1の領域にピークが検出された。一方、実施例1~5による固体電解質材料においては、ピークは検出されなかった。赤外分光分析では、固体電解質材料の表面から内部方向へ1μm付近までが測定された。赤外分光スペクトルは、図6に示される。
【0128】
【表1】
【0129】
≪考察≫
表1から明らかなように、実施例1~5による固体電解質材料は、室温近傍において、1×10-5S/cm以上の高いイオン伝導性を有する。
【0130】
実施例1~4を、実施例5と比較すると明らかなように、0<a≦0.51が満たされる場合、固体電解質材料はより高いイオン伝導性を有する。実施例1~3を、実施例4および5と比較すると明らかなように、0<a≦0.11が満たされる場合、イオン伝導性がさらに高まる。
【0131】
実施例1~5による固体電解質材料において、固体電解質材料の表面領域におけるYに対するOのモル比は、固体電解質材料全体におけるYに対するOのモル比の2倍よりも大きい。
【0132】
図6から明らかなように、参考例1による固体電解質材料は、プロトンと結合している酸素を有する。一方、実施例1~5による固体電解質材料は、プロトンと結合している酸素を有しない。このことから、実施例1~5による固体電解質材料の作製における2回目の焼成の際に、製造過程で取り込まれたプロトンが脱離したと考えられる。
【0133】
固体電解質材料の組成分析においては、同一のサンプルを繰り返し測定した場合でも、測定誤差が生じ得る。測定誤差は、最大で20%程度となり得る。
【0134】
実施例1~5による電池は、室温において、充電および放電された。一方、比較例1による電池は、充電も放電もされなかった。
【0135】
実施例1~5による固体電解質材料は、硫黄を含有しないため、硫化水素が発生しない。
【0136】
以上のように、本開示による固体電解質材料は、高いリチウムイオン伝導度を有し、良好に充電および放電可能な電池を提供するために適切である。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本開示の電池は、例えば、全固体リチウムイオン二次電池において利用される。
【符号の説明】
【0138】
100 固体電解質粒子
101 固体電解質材料の粉末
201 正極
202 電解質層
203 負極
204 正極活物質粒子
205 負極活物質粒子
300 加圧成形ダイス
301 枠型
302 パンチ下部
303 パンチ上部
1000 電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6