(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】部品実装装置および部品実装システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
H05K13/02 V
(21)【出願番号】P 2020024817
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 敬太
(72)【発明者】
【氏名】石本 憲一郎
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-111298(JP,A)
【文献】特開2017-107916(JP,A)
【文献】特開2012-094673(JP,A)
【文献】特開2013-168404(JP,A)
【文献】特許第6777644(JP,B2)
【文献】特許第6124900(JP,B2)
【文献】特許第5212395(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業位置に位置した
反りを生じないキャリアに取り付けられた基板に部品を装着する部品実装装置であって、
前記キャリア上に設定された一直線上にはない3つの計測点それぞれの高さを前記キャリアが前記作業位置に位置した状態で計測する高さ計測部と、
前記高さ計測部によって計測された前記3つの計測点それぞれの高さに基づいて、前記作業位置に位置した前記キャリア
の全体が傾いていない場合における前記基板に対する部品の装着高さを補正する装着高さ補正部と、
前記装着高さ補正部で補正された装着高さで前記基板に部品を装着する装着手段とを備え
、
前記装着高さ補正部は、前記高さ計測部によって計測された前記3つの計測点それぞれの高さに基づいて前記キャリアの全体の傾きを算出し、その算出した前記キャリアの全体の傾きに基づいて得られる装着高さの補正値を用いて装着高さを補正する部品実装装置。
【請求項2】
第1の作業位置に位置した
反りを生じないキャリアに取り付けられた基板に部品を装着する第1の部品実装装置と、第1の部品実装装置から前記キャリアを受け取り、第2の作業位置に位置した前記キャリアに取り付けられた前記基板に部品を装着する第2の部品実装装置とを備えた部品実装システムであって、
前記第1の部品実装装置は、
前記キャリア上に設定された一直線上にはない3つの計測点それぞれの高さを前記キャリアが前記第1の作業位置に位置した状態で計測する高さ計測部と、
前記高さ計測部によって計測された前記3つの計測点それぞれの高さに基づいて、前記第1の作業位置に位置した前記キャリア
の全体が傾いていない場合における前記基板に対する部品の装着高さを補正する第1の装着高さ補正部と、
前記第1の装着高さ補正部で補正された装着高さで前記基板に部品を装着する第1の装着手段と、
前記第1の装着高さ補正部が装着高さを補正するために用いた補正用情報を前記第2の部品実装装置に送信する送信部とを備え、
前記第2の部品実装装置は、
前記送信部から送信された前記補正用情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記補正用情報に基づいて、前記第2の作業位置に位置した前記キャリア
の全体が傾いていない場合における前記基板に対する部品の装着高さを補正する第2の装着高さ補正部と、
前記第2の装着高さ補正部で補正された装着高さで前記基板に部品を装着する第2の装着手段とを備え
、
前記第1の装着高さ補正部は、前記高さ計測部によって計測された前記3つの計測点それぞれの高さに基づいて前記キャリアの全体の傾きを算出し、その算出した前記キャリアの全体の傾きに基づいて得られる装着高さ補正値を用いて装着高さを補正し、
前記第2の装着高さ補正部は、前記受信部が受信した前記補正用情報に基づいて前記キャリアの全体の傾きを算出し、その算出した前記キャリアの全体の傾きに基づいて得られる装着高さ補正値を用いて装着高さを補正する部品実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に部品を装着する部品実装装置および部品実装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装システムにおいて部品を装着する部品実装装置は、作業位置に位置した基板に対し、部品を吸着したノズルを下降させることによって基板に部品を装着する。ノズルが部品を基板に装着する高さは装着高さとして予め定められているが、基板に反りが生じている場合には装着高さを補正したうえで部品を装着する必要がある。このため部品の装着作業の開始前には、作業位置に位置した基板の反りを検出し、その検出した基板の反りに応じて装着高さを補正する工程が必要となる(例えば、下記の特許文献1)。この場合、基板の反りの検出は通常、基板上に定められた多数の計測点の高さを計測し、基板の全体の湾曲形状を求めることによって行われる。
【0003】
一方、部品実装装置は、基板がフレキシブル基板である場合のように極めて剛性が小さく、基板単体では搬送その他を行うことができない場合には、キャリアと呼ばれる剛性が高い板状の部材に取り付けられた状態で取り扱われる。キャリア自体は剛性が高く反りを生じないため、作業位置に位置したキャリアの反りの検出は不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、キャリア自体は反りを生じなくても、キャリアを床に落としたり他の物にぶつけたりした場合にキャリアの角等に隆起状の変形部が形成されてしまうと、キャリアの全体が作業位置で傾いた姿勢となる。このため、予め定められた装着高さをそのまま用いて部品の装着を行うと、基板上の位置によっては不適切な高さで部品を装着することとなり、部品の装着不良が発生するおそれがあるという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、作業位置に位置したキャリアが傾いた姿勢となっていても部品の装着不良の発生を低減できる部品実装装置および部品実装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の部品実装装置は、作業位置に位置した反りを生じないキャリアに取り付けられた基板に部品を装着する部品実装装置であって、前記キャリア上に設定された一直線上にはない3つの計測点それぞれの高さを前記キャリアが前記作業位置に位置した状態で計測する高さ計測部と、前記高さ計測部によって計測された前記3つの計測点それぞれの高さに基づいて、前記作業位置に位置した前記キャリアの全体が傾いていない場合における前記基板に対する部品の装着高さを補正する装着高さ補正部と、前記装着高さ補正部で補正された装着高さで前記基板に部品を装着する装着手段とを備え、前記装着高さ補正部は、前記高さ計測部によって計測された前記3つの計測点それぞれの高さに基づいて前記キャリアの全体の傾きを算出し、その算出した前記キャリアの全体の傾きに基づいて得られる装着高さの補正値を用いて装着高さを補正する。
【0008】
本発明の部品実装システムは、第1の作業位置に位置した反りを生じないキャリアに取り付けられた基板に部品を装着する第1の部品実装装置と、第1の部品実装装置から前記キャリアを受け取り、第2の作業位置に位置した前記キャリアに取り付けられた前記基板に部品を装着する第2の部品実装装置とを備えた部品実装システムであって、前記第1の部品実装装置は、前記キャリア上に設定された一直線上にはない3つの計測点それぞれの高さを前記キャリアが前記第1の作業位置に位置した状態で計測する高さ計測部と、前記高さ計測部によって計測された前記3つの計測点それぞれの高さに基づいて、前記第1の作業位置に位置した前記キャリアの全体が傾いていない場合における前記基板に対する部品の装着高さを補正する第1の装着高さ補正部と、前記第1の装着高さ補正部で補正された装着高さで前記基板に部品を装着する第1の装着手段と、前記第1の装着高さ補正部が装着高さを補正するために用いた補正用情報を前記第2の部品実装装置に送信する送信部とを備え、前記第2の部品実装装置は、前記送信部から送信された前記補正用情報を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記補正用情報に基づいて、前記第2の作業位置に位置した前記キャリアの全体が傾いていない場合における前記基板に対する部品の装着高さを補正する第2の装着高さ補正部と、前記第2の装着高さ補正部で補正された装着高さで前記基板に部品を装着する第2の装着手段とを備え、前記第1の装着高さ補正部は、前記高さ計測部によって計測された前記3つの計測点それぞれの高さに基づいて前記キャリアの全体の傾きを算出し、その算出した前記キャリアの全体の傾きに基づいて得られる装着高さ補正値を用いて装着高さを補正し、前記第2の装着高さ補正部は、前記受信部が受信した前記補正用情報に基づいて前記キャリアの全体の傾きを算出し、その算出した前記キャリアの全体の傾きに基づいて得られる装着高さ補正値を用いて装着高さを補正する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業位置に位置したキャリアが傾いた姿勢となっていても部品の装着不良の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態における部品実装システムの概略構成図
【
図2】本発明の一実施の形態における部品実装システムが備える第1の部品実装装置の要部側面図
【
図3】本発明の一実施の形態における第1の部品実装装置の要部平面図
【
図4】本発明の一実施の形態における第1の部品実装装置の一部の側面図
【
図5】本発明の一実施の形態における第1の部品実装装置の制御系統を示すブロック図
【
図6】本発明の一実施の形態における第2の部品実装装置の制御系統を示すブロック図
【
図7】本発明の一実施の形態における第1の部品実装装置が高さを計測するキャリア上の3つの計測点の位置を示す図
【
図8】本発明の一実施の形態における部品実装システムが備える第1の部品実装装置においてキャリアが作業位置で傾いた姿勢となっている状態を示す図
【
図9】本発明の一実施の形態における部品実装システムが備える第1の部品実装装置が算出する基準キャリア面に対する傾斜キャリア面の傾きを説明する図装着高さ補正値を説明する図
【
図10】(a)(b)本発明の一実施の形態における部品実装システムが備える第1の部品実装装置が算出する傾斜キャリア面の傾き角度の算出過程を説明する図
【
図11】本発明の一実施の形態における部品実装システムが備える第1の部品実装装置が算出する装着高さ補正値を説明する図
【
図12】(a)(b)本発明の一実施の形態における部品実装システムが備える第1の部品実装装置が算出する装着高さ補正値の算出過程を説明する図
【
図13】本発明の一実施の形態における部品実装システムが備える第1の部品実装装置が高さセンサによりキャリア上に設定された計測点の高さを計測している状態を示す図
【
図14】本発明の一実施の形態における部品実装システムが備える第1の部品実装装置が実行する部品装着作業の流れを示すフローチャート
【
図15】本発明の一実施の形態における部品実装システムが備える第2の部品実装装置が実行する部品装着作業の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施の形態における部品実装システム1を示している。部品実装システム1は基板KBに部品BHを装着するものであり、上流側から半田印刷装置2、第1の部品実装装置3A、第2の部品実装装置3B、検査装置4およびリフロー装置5を備えている。
【0012】
本実施の形態では、基板KBはフレキシブル基板のように剛性に小さい基板から成り、剛性の高い板状の部材であるキャリアCRの上面に取り付けられている。部品実装システム1を構成する半田印刷装置2、第1の部品実装装置3A、第2の部品実装装置3B、検査装置4、リフロー装置5はそれぞれ、キャリアCRを順次受け渡し、それぞれの作業位置に位置させたうえで、所要の作業を基板KBに対して施す。
【0013】
半田印刷装置2は例えばスクリーン印刷装置から成る。半田印刷装置2は、搬入したキャリアCRを作業位置に位置させたうえで、基板KBに半田を印刷する。そして基板KBへの半田の印刷作業が終了したら、キャリアCRを下流側に搬出する。
【0014】
第1の部品実装装置3Aは、半田印刷装置2から搬出されたキャリアCRを搬入し、その搬入した基板KBに部品BHを装着する。そして、基板KBへの部品BHの装着が終了したら、キャリアCRを下流側に搬出する。
【0015】
第2の部品実装装置3Bは、第1の部品実装装置3Aから搬出されたキャリアCRを搬入し、その搬入した基板KBに部品BHを装着する。そして、基板KBへの部品BHの装着が終了したら、キャリアCRを下流側に搬出する。
【0016】
検査装置4は、第2の部品実装装置3Bから搬出されたキャリアCRを搬入して作業位置に位置させたうえで、第1の部品実装装置3Aと第2の部品実装装置3Bとによって基板KBに装着された各部品BHを検査する。部品BHの検査では、例えば、図示しないカメラによって各部品BHを上方から撮像し、基板KB上の所定の位置に正常に装着されているかどうかを判断する。そして、各部品BHの検査を終了したら、キャリアCRを下流側に搬出する。なお、検査装置4で不具合箇所が発見された基板KBは、下流側へ搬出されずに分別されて、作業者OPによってリペア作業が施される。
【0017】
リフロー装置5は、検査装置4から搬出されたキャリアCRを搬入し、下流側に搬送しながら半田リフロー処理を行う。半田リフロー処理では、基板KB上の半田を溶融させた後で固化させる。これにより各部品BHは基板KB上に固定され、リフロー装置5から搬出される。
【0018】
ここで、第1の部品実装装置3Aおよび第2の部品実装装置3Bについて説明する。先ず、第1の部品実装装置3Aについて説明する。ここでは説明の便宜上、基板KBの搬送方向(作業者OPから見た左右方向)をX軸方向とし、X軸方向と直交する水平方向(作業者OPから見た前後方向)をY軸方向とする。また、上下方向をZ軸方向とする。
【0019】
図2および
図3において、第1の部品実装装置3Aは、基台11、搬送保持部12、テープフィーダ13、装着ヘッド14、ヘッド移動機構15、部品カメラ16、高さセンサ17および第1の制御装置18Aを備えている。基台11は床面FL上に設置されており、搬送保持部12は基台11上に設けられている。
【0020】
図3および
図4において、搬送保持部12は一対の搬送コンベア21および下受け部としての下受けユニット22を備えている。一対の搬送コンベア21は基板KBの両端部を下方から支持してX軸方向に搬送し、その基板KBを作業位置(第1の作業位置)に位置させる。
【0021】
図3および
図4において、一対の搬送コンベア21はY軸方向に対向して配置された一対のフレーム21Fに支持されている。一対のフレーム21Fの上端それぞれには、互いに対向する方向(Y軸方向)に張り出した一対のキャリア押え部21Pが設けられている。搬送保持部12は、上流工程側から送られてきた基板KBを一対の搬送コンベア21によって受け取って搬入し、第1の作業位置の上方に基板KBを移動させて保持する。
【0022】
図4において、下受けユニット22は、平板状の下受けベース31と、下受けベース31の上面に立設された複数の下受けピン32を有して構成されている。下受けベース31は作業位置に位置した基板KBの下方に位置しており、昇降シリンダ33によって作業位置に位置した基板KBの下方を昇降されるようになっている(
図4中に示す矢印A)。
【0023】
下受けユニット22は、搬送コンベア21によって基板KBが作業位置に位置された状態で、昇降シリンダ33に駆動されて上昇すると、複数の下受けピン32の上端を基板KBの下面に当接させて、基板KBを押し上げる。これにより基板KBの両端部はそれぞれ2つのキャリア押さえ部21Pに下方から押し付けられ、基板KBは搬送保持部12に保持(詳細にはフレーム21Fに固定)された状態となる(
図4)。
【0024】
図2において、基台11の手前側(作業者OP側)の端部にはフィーダ台車DSが連結されている。フィーダ台車DSの上部にはフィーダベースFBが設けられており、テープフィーダ13はフィーダベースFBに着脱自在に取り付けられている。
図3に示すように、フィーダベースFBには、複数のテープフィーダ13をX軸方向に並べて取り付けることができる。フィーダ台車DSを基台11に連結させると、フィーダベースFBに取り付けられている複数のテープフィーダ13が一括して基台11に接続される。
【0025】
図2において、フィーダ台車DSにはキャリアテープCTが巻き付けられたリールRLが保持されている。リールRLはテープフィーダ13ごとに用意されており、リールRLから引き出されたキャリアテープCTは対応するテープフィーダ13に取り付けられる。キャリアテープCTには部品BHが一定間隔おきに収納されている。テープフィーダ13は取り付けられたキャリアテープCTを前方(搬送保持部12に向かう側)に搬送し、所定の部品供給位置13K(
図3も参照)に部品BHを供給する。
【0026】
図2および
図4において、装着ヘッド14は下方に延びた複数のノズル14Nを備えている。各ノズル14Nは装着ヘッド14に対する昇降動作とZ軸まわりの回転動作が可能である。装着ヘッド14は、テープフィーダ13が部品供給位置13Kに供給する部品BHを各ノズル14Nの下端に吸着させてピックアップする。ヘッド移動機構15は例えばXY移動機構から成り、装着ヘッド14を水平面内方向に移動させる。
【0027】
図2および
図3において、部品カメラ16は基台11上の搬送保持部12とテープフィーダ13の間の領域に設けられている。部品カメラ16は撮像光軸を上方に向けており、複数のノズル14Nそれぞれに部品BHを吸着させた装着ヘッド14が部品カメラ16の上方領域をX軸方向に通過するように移動したとき、各部品BHを下方から撮像する。
【0028】
図2および
図4において、高さセンサ17は装着ヘッド14に取り付けられている。高さセンサ17は下方に位置する計測点に向けて投光した検査光の反射光を受光することで、計測点の高さを計測する。
【0029】
図2において、第1の制御装置18Aは基台11内に設けられている。第1の制御装置18Aは、
図5に示すように、記憶部41と装着動作制御部42を備えている。記憶部41には部品装着プログラムのほか種々のデータが記憶されている。装着動作制御部42は、記憶部41に記憶された部品装着プログラムに従って第1の部品実装装置3Aの各部を動作させることにより、基板KBに部品BHを装着する部品装着作業を実行する。
【0030】
具体的には、装着動作制御部42は、搬送保持部12が備える一対の搬送コンベア21による基板KBの搬送動作と昇降シリンダ33による下受けベース31の昇降動作を制御する。また装着動作制御部42は、各テープフィーダ13による部品BHの供給動作を制御し、ヘッド移動機構15による装着ヘッド14の移動の動作と、装着ヘッド14のノズル14Nによる部品BHの吸着の動作を制御する。
【0031】
また、装着動作制御部42は、部品カメラ16による部品BHの撮像動作を制御する。部品カメラ16の撮像によって得られた画像データはそれぞれ装着動作制御部42に送信され、装着動作制御部42は得られた画像データに基づいて画像認識処理を行う。また第1の制御装置18Aは、高さセンサ17を制御する。
【0032】
第1の部品実装装置3Aが行う部品装着作業では、先ず搬送保持部12の搬送コンベア21が作動し、上流工程側から送られてきた基板KBを受け取って作業位置に位置させる。基板KBが作業位置に位置させたら、下受けユニット22が上昇して基板KBを下受けし、基板KBの両端部を2つのキャリア押さえ部21Pに下方から押し付けて基板KBを保持する。
【0033】
基板KBが下受けユニット22によって下受けされ、搬送保持部12に保持されたら、装着ヘッド14は装着ターンを繰り返し実行する。装着ヘッド14はひとつの装着ターンにおいて、テープフィーダ13が供給する部品BHをピックアップする動作、部品カメラ16の上方をX軸方向に通過するように移動して部品カメラ16に部品BHを撮像させる動作、基板KB上に定められた部品装着位置に部品BHを装着する動作をこの順で行う。
【0034】
装着ヘッド14が基板KBに部品BHを装着する際の各部品BHの装着高さSH(
図4)は記憶部41に予め記憶されており、装着動作制御部42は、部品BHを装着するごとに、その部品BHの装着高さSHを記憶部41から読み出すようになっている。第1の制御装置18Aは、部品カメラ16が部品BHを撮像して得られた画像に基づいて部品認識を行い、装着ヘッド14が部品BHを基板KBに装着するとき、部品の認識結果を利用して、部品BHの基板KBに対する位置補正等を行う。
【0035】
上記の装着ターンが繰り返し実行されることによって、基板KBに装着すべき部品BHが全て装着されたら、搬送保持部12の搬送コンベア21は、基板KBを下流工程側の第2の部品実装装置3Bに搬出する。これにより第1の部品実装装置3Aによる、基板KBの1枚当たりの部品装着作業が終了する。
【0036】
次に、第2の部品実装装置3Bについて説明する。第2の部品実装装置3Bは、第1の部品実装装置3Aと同様に、基台11、搬送保持部12、テープフィーダ13、装着ヘッド14、ヘッド移動機構15、部品カメラ16を備えるほか、第2の制御装置18B(
図6)を備えている。
【0037】
第2の部品実装装置3Bが備える第2の制御装置18Bは、
図6に示すように、第1の部品実装装置3Aと同様に、記憶部41と装着動作制御部42を備えている。これら記憶部41と装着動作制御部42の機能は、第1の部品実装装置3Aの場合と同様であるが、第2の部品実装装置3Bが備える記憶部41には、第2の部品実装装置3Bが装着ヘッド14によって基板KBに各部品BHを装着する際の装着高さSHが記憶されている。
【0038】
第2の部品実装装置3Bは、搬送保持部12によって、第1の部品実装装置3Aから送られてきた基板KBを一対の搬送コンベア21によって受け取って搬入し、その基板KBを作業位置(第2の作業位置)に位置させる。そして、下受けユニット22を上昇させて、基板KBを第2の作業位置の上方に移動させて保持する。基板KBが保持されたら、第2の部品実装装置3Bは、装着ヘッド14を移動させ、第1の部品実装装置3Aの場合と同様の装着ターンを繰り返し実行することによって、基板KBに部品BHを装着する。
【0039】
これら第1の部品実装装置3Aおよび第2の部品実装装置3Bにおいて、キャリアCRが搬送コンベア21に搬入され、作業位置において下受けユニット22によって下受けされる(押し上げられる)と、キャリアCRの両端部の上面は2つのキャリア押さえ部21Pに下方から押し付けられて、搬送保持部12に保持される。このときキャリアCRの上面は通常、水平面となる。各部品BHの装着高さSHは、このように下受けユニット22によって下受けされた状態で水平面となっている(傾いていない)状態でのキャリアCRの上面(「基準キャリア面JP」と称する)の高さを基準に設定されている。
【0040】
ここで、
図7および
図8に示すように、キャリアCRの角部等に隆起状の変形部RHが形成されているような場合には、キャリアCRが下受け部によって下受けされた(押し上げられた)ときに、変形部RHがキャリアCRとキャリア押さえ部21Pとの間に挟み込まれてしまって、キャリアCRの上面は水平面から傾いてしまう(
図8)。このようにキャリアCRを下受けユニット22によって下受けした結果、キャリアCRの上面が基準キャリア面JPから傾いたときのキャリアCRの傾斜した上面を以下、「傾斜キャリア面CP」と称する。
【0041】
図8に示すように、下受けユニット22によって下受けされた状態でキャリアCRが傾いている状態では、各部品BHについて設定されている装着高さSHをそのまま用いて部品BHを基板KBに装着すると、適切でない高さで部品BHの吸着状態を解除することとなるため、部品BHの装着不良が発生するおそれがある。このため、キャリアCR上の位置(すなわち基板KB上の位置)ごとに、その位置に応じた装着高さSHの補正値(装着高さ補正値Zr)を求め、その求めた装着高さ補正値Zrで装着高さSHを補正して得られる補正後装着高さ(=SH+Zr)で部品BHを装着する必要がある。
【0042】
このため本実施の形態では、部品実装装置(第1の部品実装装置3Aおよび第2の部品実装装置3B)は装着高さSHを補正する機能を備えており、以下にその説明を行う。
【0043】
始めに、装着高さ補正値Zrの求め方について説明する。これには先ず、キャリアCR上に、一直線上にはない3つの計測点Kを設定する(
図7)。ここでは、
図7に示すように、基準キャリア面JP上にキャリアCRの上面が位置している場合のキャリアCRの4隅のうちの3隅に、3つの計測点Kとして、第1計測点K1(0,0,0)、第2計測点K2(X1,0,0)および第3計測点K3(0,Y1,0)を設定する。ここでは便宜上、基準キャリア面JPの高さをZ=0としている。
【0044】
図9は、基準キャリア面JP上の3つの計測点KであるK1(0,0,0),K2(X1,0,0),K3(0,Y1,0)がそれぞれ、傾斜キャリア面CP上では、K1c(0,0,Z1),K2c(X1,0,Z2),K3c(0,Y1、Z3)となっている状態を示している。この状態において、傾斜キャリア面CPの基準キャリア面JPからのX軸まわりの傾き角度Θxの正接は、
図10(a)に示すように、K2cとK1cの間のX軸方向の距離がX1であり(Θxは微小であるのでK2とK1の間のX軸方向の距離で近似)、Z軸方向の距離がZ2-Z1であることから、式
tanΘx=(Z2-Z1)/X1
であらわすことができる。また、この式から、傾き角度Θxは、
Θx=arctan{(Z2-Z1)/X1}
と表すことができる。
【0045】
また、傾斜キャリア面CPの基準キャリア面JPからのY軸まわりの傾き角度Θyの正接は、
図10(b)に示すように、K3cとK1cの間のY軸方向の距離がY1であり(Θyは微小であるのでK3とK1との間のY軸方向の距離で近似)、Z軸方向の距離がZ3-Z1であることから、式
tanΘy=(Z3-Z1)/Y1
で表すことができる。また、この式から、傾き角度Θyは、
Θy=arctan{(Z3-Z1)/Y1}
と表すことができる。
【0046】
図11において、基準キャリア面JP上の任意の点Rが傾斜キャリア面CP上では点Rcとなったとする。そして、点Rの座標(Xr,Yr,0)から、点Rcの座標(Xr,Yr,Zr)になったとすると、点RcのZ座標である「Zr」は、点Rを部品装着位置とする部品BHの装着高さの補正値(装着高さ補正値)に相当する。
【0047】
図11に示すように、基準キャリア面JP上の線分(K1-K2)上に、点R(Xr,Yr,0)をY軸に沿って投影した点R1を設定すると、点R1の座標はR1(Xr,0,0)となる。そして、傾斜キャリア面CP上に、点R1(Xr,0,0)をZ軸に沿って投影した点R2を設定すると、点R2の座標は、R1とR2の間のZ軸方向の距離がZ1+XrtanΘxになることから(
図12(a))、R2(Xr,0,Z1+XrtanΘx)となる。
【0048】
また、
図10(b)に示すように、点Rを通るZ軸上に、点R2(Xr,0,Z1+XrtanΘx)をY軸に沿って投影した点R3を設定すると、点R3の座標は、R3(Xr,Yr,XrtanΘx)となる。この点R3と点Rcとの間のZ軸方向距離は、
図12(b)よりYrtanΘyとなる。よって、点Rcの座標はRc(Xr,Yr,Z1+XrtanΘx+YrtanΘy)となる。このことから、基準キャリア面JP上の任意の点R(Xr,Yr,0)の装着高さ補正値Zrは、数式
Zr=Z1+XrtanΘx+YrtanΘy
(但しtanΘx=(Z2-Z1)/X1,tanΘy=(Z3-Z1)/Y1)
から求められる。
【0049】
次に、第1の部品実装装置3Aにおける、装着高さSHを補正する機能について説明する。
図5に示すように、第1の制御装置18Aは、前述の記憶部41と装着動作制御部42のほか、高さ計測制御部43、第1の傾き算出部44A、第1の数式算出部45A、第1の補正値算出部46A、第1の補正後装着高さ算出部47Aおよび送信部48を備えている。
【0050】
高さ計測制御部43は、作業位置(第1の作業位置)に位置し、下受けユニット22によって下受けされて搬送保持部12に保持されたキャリアCRに設定された前述の3つの計測点K(
図7)それぞれの高さHCを、高さセンサ17を作動させて計測する(
図13)。高さ計測制御部43は、計測点Kの高さを計測するときには、基板KBの上方に装着ヘッド14を移動させて、高さを計測しようとしている計測点Kの上方に高さセンサ17を位置させる。そして、高さセンサ17から下方に検査光を投光させて、計測点Kの高さHCを計測する。
【0051】
ここで、高さセンサ17によって計測される計測点Kの高さHCは、高さセンサ17からの下方距離である(
図13)。従って、高さセンサ17によって検出される計測点Kは、検出される高さHCの値が大きい程低い位置に位置していることになる。本実施の形態では、第1計測点K1の高さがZ1(点K1cのZ座標)、第2計測点K2の高さがZ2(点K2cのZ座標)、第3計測点K3の高さがZ3(点K3cのZ座標)として計測される。
【0052】
このように本実施の形態において、第1の制御装置18Aの高さ計測制御部43と高さセンサ17は、キャリアCR上に設定された一直線上にはない3つの計測点Kそれぞれの高さHCをキャリアCRが作業位置に位置した状態で計測する高さ計測部51となっている(
図5)。
【0053】
第1の傾き算出部44Aは、高さ計測部51によって計測された3つの計測点Kそれぞれの高さHCに基づいて、キャリアCRの傾きを算出する。具体的には、傾斜キャリア面CPの基準キャリア面JPからのX軸まわりの傾きを傾き角度Θxとして算出し、傾斜キャリア面CPの基準キャリア面JPからのY軸まわりの傾きを傾き角度Θyとして算出する。傾き角度ΘxとΘyは前述の正接の形
tanΘx=(Z2-Z1)/X1
tanΘy=(Z3-Z1)/Y1
で表されていてもよい。
【0054】
第1の数式算出部45Aは、第1の傾き算出部44Aで算出された傾き角度Θx,Θy(或いはtanΘx,tanΘy)に基づいて、装着高さ補正値Zrを算出するための前述の数式(装着高さ補正値算出用数式)
Zr=Z1+XrtanΘx+YrtanΘy
(但しtanΘx=(Z2-Z1)/X1,tanΘy=(Z3-Z1)/Y1)
を求める。
【0055】
第1の補正値算出部46Aは、第1の数式算出部45Aで求められた装着高さ補正値算出用数式に、各部品BHについての部品装着位置(前述の任意の点Rの位置に相当)の座標(Xr,Yr)を代入することによって、各部品装着位置における装着高さ補正値Zrを算出する。
【0056】
第1の補正後装着高さ算出部47Aは、記憶部41に記憶されている各部品BHについての装着高さを、第1の補正値算出部46Aにおいて算出された装着高さ補正値Zrで補正することによって、補正後装着高さHSHを求める。補正後装着高さHSHは、式HSH=SH+Zrによって求めることができる(
図8)。
【0057】
このように、本実施の形態において、第1の傾き算出部44A、第1の数式算出部45A、第1の補正値算出部46Aおよび第1の補正後装着高さ算出部47Aは、高さ計測部51によって計測された3つの計測点Kそれぞれの高さHCに基づいて、作業位置(第1の作業位置)に位置したキャリアCRが傾いていない場合における基板KBに対する部品BHの装着高さSHを補正する第1の装着高さ補正部52Aとなっている(
図5)。ここで、第1の装着高さ補正部52Aは、詳細には、高さ計測部51によって計測された3つの計測点Kそれぞれの高さHCに基づいてキャリアCRの傾きを算出し、その算出したキャリアCRの傾きに基づいて得られる装着高さ補正値Zrを用いて装着高さSHを補正するようになっている。
【0058】
送信部48は補正用情報を第2の部品実装装置3Bに送信する。ここで「補正用情報」とは、第1の装着高さ補正部52Aが装着高さ補正値Zrを算出するために用いた情報である。ここでは、高さ計測部51によって計測された3つの計測点KのキャリアCRにおける位置(XY座標)のデータとこれら3つの計測点Kの高さHCのデータを補正用情報として、これを第2の部品実装装置3Bに送信する。
【0059】
次に、第2の部品実装装置3Bにおける、装着高さSHを補正する機能について説明する。
図6に示すように、第2の制御装置18Bは、前述の記憶部41と装着動作制御部42のほか、受信部61、第2の傾き算出部44B、第2の数式算出部45B、第2の補正値算出部46Bおよび第2の補正後装着高さ算出部47Bを備えている。
【0060】
受信部61は、第1の部品実装装置3Aの送信部48から送信された補正用情報を受信する。第2の傾き算出部44Bは、受信部61が受信した補正用情報に基づいて、キャリアCRの傾きを算出する。具体的には、傾斜キャリア面CPの基準キャリア面JPからのX軸まわりの傾きを傾き角度Θxとして算出し、傾斜キャリア面CPの基準キャリア面JPからのY軸まわりの傾きを傾き角度Θyとして算出する。ここでも第1の部品実装装置3Aの場合と同様に、傾き角度Θx,Θyは正接の形
tanΘx=(Z2-Z1)/X1
tanΘy=(Z3-Z1)/Y1
で表されていてもよい。
【0061】
第2の数式算出部45Bは、第2の傾き算出部44Bで算出された傾き角度Θx,Θy(或いはtanΘx,tanΘy)に基づいて、第1の部品実装装置3Aの場合と同様に、装着高さ補正値Zrを算出するための数式(装着高さ補正値算出用数式)
Zr=Z1+XrtanΘx+YrtanΘy
(但しtanΘx=(Z2-Z1)/X1,tanΘy=(Z3-Z1)/Y1)
を求める。
【0062】
第2の補正値算出部46Bは、第2の数式算出部45Bで求められた装着高さ補正値算出用数式に、各部品BHについての部品装着位置の座標(前述の任意の点Rの位置に相当)の座標(Xr,Yr)を代入することによって、各部品装着位置における装着高さ補正値Zrを算出する。
【0063】
第2の補正後装着高さ算出部47Bは、記憶部41に記憶されている各部品BHについての装着高さを、第2の補正値算出部46Bにおいて算出された装着高さ補正値Zrで補正することによって、補正後装着高さHSHを求める。補正後装着高さHSHは、第1の補正後装着高さ算出部47Aと同様、式HSH=SH+Zrによって求めることができる(
図8)。
【0064】
このように、本実施の形態において、第2の傾き算出部44B、第2の数式算出部45B、第2の補正値算出部46Bおよび第2の補正後装着高さ算出部47Bは、受信部61が受信した補正用情報に基づいて、第2の作業位置に位置したキャリアCRが傾いていない場合における基板KBに対する部品BHの装着高さSHを補正する第2の装着高さ補正部52Bとなっている(
図6)。ここで、第2の装着高さ補正部52Bは、詳細には、受信部61が受信した補正用情報に基づいてキャリアCRの傾きを算出し、その算出したキャリアCRの傾きに基づいて得られる装着高さ補正値Zrを用いて装着高さを補正するようになっている。
【0065】
次に、第1の部品実装装置3Aにより基板KBに部品BHを装着する部品装着作業を行う手順を説明する。
図14は第1の部品実装装置3Aが実行する部品装着作業の流れを示すフローチャートである。
【0066】
第1の部品実装装置3Aは先ず、上流工程側から送られてきたキャリアCRを搬送コンベア21によって搬入し、作業位置(第1の作業位置)に位置させる(ステップST1)。そして、昇降シリンダ33を作動させて下受けベース31を上昇させ、搬送保持部12によってキャリアCRを保持する(ステップST2)。
【0067】
第1の部品実装装置3Aは、キャリアCRを保持したら、高さ計測部51が、キャリアCR上に設定された3つの計測点K(K1,K2,K3)それぞれの高さHCを計測する(ステップST3)。そして、第1の傾き算出部44Aによって、3つの計測点Kそれぞれの高さHCに基づいて、キャリアCRの傾き(傾き角度Θx,Θy或いはtanΘx,tanΘy)を算出する(ステップST4)。
【0068】
第1の部品実装装置3Aは、第1の傾き算出部44AによってキャリアCRの傾きを算出したら、その算出したキャリアCRの傾きに基づいて、前述の装着高さ補正値算出用数式を求める(ステップST5)。そして、求めた装着高さ補正値算出用数式に各部品装着位置の座標(Xr,Yr)を代入することによって、各部品BHの部品装着位置における装着高さ補正値Zrを算出する(ステップST6)。
【0069】
第1の部品実装装置3Aは、各部品BHの部品装着位置における装着高さ補正値Zrを算出したら、第1の補正後装着高さ算出部47Aにおいて、各部品BHについての補正後装着高さHSHを算出する(ステップST7)。そして、その算出した補正後装着高さHSHを用いて装着ヘッド14に装着ターンを繰り返し行わせることによって、キャリアCRに取り付けられた各基板KBに部品BHを装着する(ステップST8)。
【0070】
このように本実施の形態において、第1の部品実装装置3Aが備える装着ヘッド14は、装着高さ補正部(第1の装着高さ補正部52A)で補正された装着高さSHで基板KBに部品BHを装着する装着手段(第1の装着手段)となっている。
【0071】
第1の部品実装装置3Aは、基板KBに装着すべき部品BHを全て装着したら、昇降シリンダ33を作動させて下受けユニット22を下降させ、搬送保持部12によるキャリアCRの保持を解除する(ステップST9)。そして、キャリアCRの保持が解除されたら、搬送コンベア21を作動させて、キャリアCRを下流工程側の部品実装装置である第2の部品実装装置3Bに搬出する(ステップST10)。
【0072】
第1の部品実装装置3Aは、キャリアCRを搬出したら(搬出する前であってもよい)、第1の装着高さ補正部52Aが装着高さ補正値Zrを算出するために用いた補正用情報(前述したように、高さ計測部51によって計測された3つの計測点KのキャリアCRにおける位置(XY座標)のデータとこれら3つの計測点Kの高さHCのデータ)を下流工程側の部品実装装置である第2の部品実装装置3Bに送信する(ステップST11)。これにより、第1の部品実装装置3Aが行うキャリアCRの1枚当たりの部品装着作業が終了する。
【0073】
次に、第2の部品実装装置3Bにより基板KBに部品BHを装着する部品装着作業を行う手順を説明する。
図15は第2の部品実装装置3Bが実行する部品装着作業の流れを示すフローチャートである。
【0074】
第2の部品実装装置3Bは先ず、上流側の部品実装装置である第1の部品実装装置3Aから送信された補正用情報を受信する(ステップST21)。そして、第1の部品実装装置3Aから送られてきたキャリアCRを搬送コンベア21によって搬入し、第2の作業位置に位置させる(ステップST22)。
【0075】
第2の部品実装装置3Bは、キャリアCRを第2の作業位置に位置させたら、昇降シリンダ33を作動させて下受けベース31を上昇させ、搬送保持部12よってキャリアCRを保持する(ステップST23)。そして、受信部61が受信した補正用情報に基づいて、第2の傾き算出部44Bにより、補正用情報に基づいて、キャリアCRの傾き(傾き角度Θx,Θy或いはtanΘx,tanΘy)を算出する(ステップST24)。
【0076】
第2の部品実装装置3Bは、第2の傾き算出部44BによってキャリアCRの傾きを算出したら、その算出したキャリアCRの傾きに基づいて、装着高さ補正値算出用数式を求める(ステップST25)。そして、求めた装着高さ補正値算出用数式に各部品装着位置の座標(Xr,Yr)を代入することによって、各部品BHの部品装着位置における装着高さ補正値Zrを算出する(ステップST26)。
【0077】
第2の部品実装装置3Bは、各部品BHの部品装着位置における装着高さ補正値Zrを算出したら、第2の補正後装着高さ算出部47Bにおいて、各部品BHについての補正後装着高さHSHを算出する(ステップST27)。そして、その算出した補正後装着高さHSHを用いて装着ヘッド14に装着ターンを繰り返し行わせることによって、キャリアCRに取り付けられた各基板KBに部品BHを装着する(ステップST28)。
【0078】
このように本実施の形態において、第2の部品実装装置3Bが備える装着ヘッド14は、第2の装着高さ補正部52Bで補正された装着高さSHで基板KBに部品BHを装着する第2の装着手段となっている。
【0079】
第2の部品実装装置3Bは、基板KBに装着すべき部品BHを全て装着したら、昇降シリンダ33を作動させて下受けユニット22を下降させ、搬送保持部12によるキャリアCRの保持を解除する(ステップST29)。そして、キャリアCRの保持が解除されたら、搬送コンベア21を作動させて、キャリアCRを下流工程側に搬出する(ステップST30)。これにより、第2の部品実装装置3Bが行うキャリアCRの1枚当たりの部品装着作業が終了する。
【0080】
以上説明したように、本実施の形態における部品実装システム1において、第1の部品実装装置3Aは、作業位置(第1の作業位置)に位置したキャリアCRに設定された一直線上にはない3つの計測点Kそれぞれの高さHCを計測し、その計測した3つの計測点Kそれぞれの高さHCに基づいて部品BHの装着高さSHを補正し、その補正した装着高さで部品BHを基板KBに装着するようになっている。このため作業位置(第1の作業位置)に位置したキャリアCRが傾いた姿勢となっていても部品BHを適切な高さで基板KBに装着することができ、部品BHの装着不良の発生を低減することができる。
【0081】
また、下流側に位置する第2の部品実装装置3Bも同様に、キャリアCR上の3つの計測点Kそれぞれの高さHCに基づいて部品BHの装着高さSHを補正し、その補正した装着高さで部品BHを基板KBに装着するようになっている。このため第1の部品実装装置3Aと同様に、キャリアCRが傾いた姿勢となっていても部品BHを適切な高さで基板KBに装着することができ、部品BHの装着不良の発生を低減することができる。
【0082】
ここで、第1の部品実装装置3Aは、キャリアCRの上面(傾斜キャリア面CP)の姿勢を求めるために、従来の基板の反り形状を計測する要領で、多数の計測点の高さ計測を行うようにしてもよいが、本実施の形態では、キャリアCR自体は剛性が高くて反りを生じないことを利用して、キャリアCR上の3つの計測点Kの高さ計測のみを行うようになっている。このため、装着高さ補正値Zrの算出を迅速に行うことが可能である。また、第2の部品実装装置3Bでは、上流側に位置する第1の部品実装装置3Aが装着高さSHを補正するために用いた補正用情報を受け取り、その受け取った補正用情報を利用して装着高さ補正値Zrを求めるようになっているので、装着高さ補正値を効率よく算出することができる。
【0083】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述したものに限定されず、種々の変形等が可能である。例えば、上述の実施の形態において示したキャリアCR上に設定される3つの計測点Kの配置は一例に過ぎず、他の配置であってもよい。すなわち、一直線上にないのであれば、3つの計測点KをキャリアCR上の任意の位置に配置することができる。
【0084】
また、上述の実施の形態では、第1の部品実装装置3Aから第2の部品実装装置3Bへ送信する補正用情報は、高さ計測部51によって計測された3つの計測点KのキャリアCRにおける位置のデータ(座標)とこれら3つの計測点Kの高さHCのデータとしていたが、これは他の情報であってもよい。例えば、高さ計測部51によって計測された3つの計測点KのキャリアCRにおける位置のデータ(XY座標)とキャリアCRの傾き(傾き角度Θx,Θy)のデータであってもよいし、求めた装着高さ補正値算出用数式をそのまま送信するのであってもよい。補正用情報が、3つの計測点KのキャリアCRにおける位置のデータとキャリアCRの傾きである場合には、第2の制御装置18Bが第2の傾き算出部44Bを備えることが不要となり、補正用情報が、装着高さ補正値算出用数式である場合には、第2の傾き算出部44Bと第2の数式算出部45Bを備えることが不要となる。
【0085】
また、上述の実施の形態において、第1の装着高さ補正部52Aおよび第2の装着高さ補正部52Bはそれぞれ、高さ計測部51によって計測された3つの計測点Kそれぞれの高さHCに基づいてキャリアCRの傾きを算出し、その算出したキャリアCRの傾きに基づいて得られる装着高さ補正値Zrを用いて装着高さSHを補正するようになっていたが、これとは別の方法で補正するようになっていてもよい。例えば、高さ計測部51によって計測された3つの計測点Kそれぞれの高さHCに基づいてキャリアCRの上面を含む平面の方程式を求め、その平面の方程式に各部品BHの座標(前述の点Rの座標(Xr,Yr,Zr)を代入し、これをZrについて解くことで装着高さ補正値Zrを求め、その求めた装着高さ補正値Zrを用いて補正するようになっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
作業位置に位置したキャリアが傾いた姿勢となっていても部品の装着不良の発生を低減できる部品実装装置および部品実装システムを提供する。
【符号の説明】
【0087】
1 部品実装システム
3A 第1の部品実装装置(部品実装装置)
3B 第2の部品実装装置
14 装着ヘッド(装着手段)(第1の装着手段)(第2の装着手段)
48 送信部
51 高さ計測部
52A 第1の装着高さ補正部(装着高さ補正部)
52B 第2の装着高さ補正部
61 受信部
K 計測点
K1 第1計測点
K2 第2計測点
K3 第3計測点
HC 高さ
SH 装着高さ
Zr 装着高さ補正値(装着高さの補正値)
BH 部品
CR キャリア
KB 基板