(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20240426BHJP
F25B 47/00 20060101ALI20240426BHJP
G01N 17/04 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
F25B49/02 570Z
F25B47/00 A
G01N17/04
(21)【出願番号】P 2020140922
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝仁
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198357(JP,A)
【文献】特開2019-158377(JP,A)
【文献】特開2017-194314(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0045483(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-49/04
G01N 17/00-17/04
F24F 1/00-13/32
F28D 1/00-21/00
F28F 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱交換器と、圧縮機と、第2熱交換器と、膨張機構と、を備える冷凍サイクル装置であって、
前記第1熱交換器、前記圧縮機、前記第2熱交換器及び前記膨張機構を接続し、冷媒を循環させ、且つ銅を主成分とする冷媒配管と、
前記冷媒配管の外側表面と前記冷媒配管の周囲とのうち少なくとも一方に配置され、腐食電流を検知するACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサと、
前記ACMセンサで検知した前記腐食電流の変化に基づいて前記冷媒配管の腐食を判定する処理部と、
を有
し、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とのうち少なくとも1つに配置される前記冷媒配管は、屈曲部を有し、
前記ACMセンサは、前記屈曲部に配置され、前記屈曲部の外側表面に沿った形状を有する、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記ACMセンサは、前記屈曲部の前記外側表面に密着している、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記ACMセンサは、導電性を有する基材と、
前記基材に積層され、電気絶縁性物質である絶縁層と、
前記絶縁層に積層され、前記基材よりも表面電位が貴であるカソード電極と、を備え、
前記基材の主成分と前記冷媒配管の主成分とは同じである、請求項
1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記基材の厚みと前記冷媒配管の厚みとは略同じである、請求項
3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記基材は、前記冷媒配管の一部で形成されている、請求項
3又は4に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記処理部で判定された前記冷媒配管の腐食の判定結果を表示する表示部をさらに備える、請求項
1から5のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記処理部は、
前記腐食電流の時間微分値が閾値以上で増加する立ち上がり区間と、
前記立ち上がり区間の直後に、前記腐食電流が減少する減少区間と、
を検出し、
前記立ち上がり区間が1秒未満であり、且つ前記減少区間が1秒以上30秒未満であるとき、前記冷媒配管の腐食を判定する、
請求項
1から6のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記閾値は5μA/sである、請求項
7に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記冷媒配管内における前記冷媒が流れる方向を変更する四方弁をさらに備える、請求項
1から8のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
第1熱交換器、圧縮機、第2熱交換器及び膨張機構を備える冷凍サイクル装置と、
ネットワークを介して前記冷凍サイクル装置と通信する処理装置と、
を備え、
前記冷凍サイクル装置は、
前記第1熱交換器、前記圧縮機、前記第2熱交換器及び前記膨張機構を接続し、冷媒を循環させ、且つ銅を主成分とする冷媒配管と、
前記冷媒配管の外側表面と前記冷媒配管の周囲とのうち少なくとも一方に配置され、腐食電流を検知するACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサと、
前記ACMセンサで検知された前記腐食電流の情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部で記憶された前記腐食電流の情報を、前記ネットワークを介して送信する第1通信部と、
を有し、
前記処理装置は、
前記腐食電流の情報を、前記ネットワークを介して受信する第2通信部と、
前記腐食電流の変化に基づいて前記冷媒配管の腐食を判定する処理部と、
を有
し、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とのうち少なくとも1つに配置される前記冷媒配管は、屈曲部を有し、
前記ACMセンサは、前記屈曲部に配置され、前記屈曲部の外側表面に沿った形状を有する、冷凍サイクルシステム。
【請求項11】
前記ACMセンサは、前記屈曲部の前記外側表面に密着している、請求項10に記載の冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍サイクル装置及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル装置として、例えば、特許文献1には、局部腐食を検出できる吸収式冷凍機が開示されている。
【0003】
特許文献1には、冷凍機内壁の構成材料の腐食を検知する腐食検出手段を設けた吸収式冷凍機が開示されている。特許文献1に記載された冷凍機による腐食検出手段は、機器内の吸収液中に浸漬するように配置された一対の電極と、電極間を流れる電流を測定する測定手段と、測定された電流が所定値を超えると警報を発する警報手段、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の冷凍機では、腐食の検知精度の向上といった点で未だ改善の余地がある。
【0006】
したがって、本開示の目的は、前記課題を解決することにあって、腐食の検知精度を向上させることができる冷凍サイクル装置及び冷凍サイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の冷凍サイクル装置は、
第1熱交換器と、圧縮機と、第2熱交換器と、膨張機構と、を備える冷凍サイクル装置であって、
前記第1熱交換器、前記圧縮機、前記第2熱交換器及び前記膨張機構を接続し、冷媒を循環させ、且つ銅を主成分とする冷媒配管と、
前記冷媒配管の外側表面と前記冷媒配管の周囲とのうち少なくとも一方に配置され、腐食電流を検知するACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサと、
前記ACMセンサで検知した前記腐食電流の変化に基づいて前記冷媒配管の腐食を判定する処理部と、
を有する。
【0008】
本開示の一態様の冷凍サイクルシステムは、
第1熱交換器、圧縮機、第2熱交換器及び膨張機構を備える冷凍サイクル装置と、
ネットワークを介して前記冷凍サイクル装置と通信する処理装置と、
を備え、
前記冷凍サイクル装置は、
前記第1熱交換器、前記圧縮機、前記第2熱交換器及び前記膨張機構を接続し、冷媒を循環させ、且つ銅を主成分とする冷媒配管と、
前記冷媒配管の外側表面と前記冷媒配管の周囲とのうち少なくとも一方に配置され、腐食電流を検知するACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサと、
前記ACMセンサで検知された前記腐食電流の情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部で記憶された前記腐食電流の情報を、前記ネットワークを介して送信する第1通信部と、
を有し、
前記処理装置は、
前記腐食電流の情報を、前記ネットワークを介して受信する第2通信部と、
前記腐食電流の変化に基づいて前記冷媒配管の腐食を判定する処理部と、
を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、腐食の検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示に係る実施の形態1の冷凍サイクル装置の一例の模式図である。
【
図2】実施の形態1のACMセンサの模式図である。
【
図3】実施の形態1の水膜付きのACMセンサの断面図である。
【
図4A】実施の形態1のACMセンサで検知された腐食電流と経過時間の関係を示すグラフである。
【
図5】本開示に係る実施の形態2の第1熱交換器の模式図である。
【
図6】実施の形態2のACMセンサ付き屈曲部の断面図である。
【
図7】実施の形態2の変形例1のACMセンサ付き屈曲部の断面図である。
【
図8】本開示に係る実施の形態3の冷凍サイクル装置のブロック図である。
【
図9】本開示に係る実施の形態4の冷凍サイクルシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示に至った経緯)
冷凍サイクル装置において、冷媒を循環させる冷媒配管は、例えば、銅を主成分とする材料で形成されている。一般的に、銅は耐腐食性が高い金属である。
【0012】
しかしながら、銅を主成分とする冷媒配管では、特定の条件下において、局部的に短期間で冷媒配管の腐食は進行し、腐食が冷媒配管を貫通する恐れがある。例えば、冷媒配管の周囲において、建築材料として使用される接着剤に含まれるホルムアルデヒドが酸化すると、冷媒配管内に空洞が発生する蟻の巣腐食が発生しやすい。また、冷媒配管において、曲げ応力がかかっている部位の周囲にアンモニアが存在すると、応力腐食割れが発生しやすい。そこで、冷媒配管の貫通前に腐食に対処するため、冷凍サイクル装置における腐食の検知精度を向上させることが求められている。
【0013】
そこで、本発明者らは、ACMセンサを用いて冷媒配管の腐食を検知する冷凍サイクル装置の構成を検討した。また、本発明者らは、当該構成においてACMセンサで検知される腐食電流の変化を鋭意研究したところ、腐食電流の変化に基づいて、銅を主成分とする冷媒配管の腐食を精度よく検知できることを見出した。
【0014】
これらの新規な知見に基づき、本発明者らは、以下の開示に至った。
【0015】
本開示の第1態様の冷凍サイクル装置は、
第1熱交換器と、圧縮機と、第2熱交換器と、膨張機構と、を備える冷凍サイクル装置であって、
前記第1熱交換器、前記圧縮機、前記第2熱交換器及び前記膨張機構を接続し、冷媒を循環させ、且つ銅を主成分とする冷媒配管と、
前記冷媒配管の外側表面と前記冷媒配管の周囲とのうち少なくとも一方に配置され、腐食電流を検知するACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサと、
前記ACMセンサで検知した前記腐食電流の変化に基づいて前記冷媒配管の腐食を判定する処理部と、
を有する。
【0016】
このような構成により、冷媒配管の腐食の検知精度を向上させることができる。
【0017】
本開示の第2態様の冷凍サイクル装置においては、前記ACMセンサは、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とのうち少なくとも1つに配置される前記冷媒配管に配置されてもよい。
【0018】
このような構成により、第1熱交換器と第2熱交換器とのうち少なくとも1つに配置される冷媒配管の腐食の検知精度を向上させることができる。
【0019】
本開示の第3態様の冷凍サイクル装置においては、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とのうち少なくとも1つに配置される前記冷媒配管は、屈曲部を有し、
前記ACMセンサは、前記屈曲部に配置されてもよい。
【0020】
このような構成により、第1熱交換器と第2熱交換器とのうち少なくとも1つに配置される冷媒配管の屈曲部の腐食の検知精度を向上させることができる。
【0021】
本開示の第4態様の冷凍サイクル装置においては、前記ACMセンサは、導電性を有する基材と、
前記基材に積層され、電気絶縁性物質である絶縁層と、
前記絶縁層に積層され、前記基材よりも表面電位が貴であるカソード電極と、を備え、
前記基材の主成分と前記冷媒配管の主成分とは同じであってもよい。
【0022】
このような構成により、基材が冷媒配管と同様な構成材料で形成されることで、冷媒配管の腐食の検知精度をさらに向上させることができる。
【0023】
本開示の第5態様の冷凍サイクル装置においては、前記基材の厚みと前記冷媒配管の厚みとは略同じであってもよい。
【0024】
このような構成により、冷媒配管の応力腐食割れの検知精度を向上させることができる。
【0025】
本開示の第6態様の冷凍サイクル装置においては、前記基材は、前記冷媒配管の一部で形成されていてもよい。
【0026】
このような構成により、冷媒配管の現実の腐食を検知し、冷媒配管における腐食の検知精度をさらに向上させることができる。
【0027】
本開示の第7態様の冷凍サイクル装置においては、前記処理部で判定された前記冷媒配管の腐食の判定結果を表示する表示部をさらに備えていてもよい。
【0028】
このような構成により、腐食の判定結果を使用者に表示でき、腐食への対処を促すことができる。
【0029】
本開示の第8態様の冷凍サイクル装置においては、前記処理部は、
前記腐食電流の時間微分値が閾値以上で増加する立ち上がり区間と、
前記立ち上がり区間の直後に、前記腐食電流が減少する減少区間と、
を検出し、
前記立ち上がり区間が1秒未満であり、且つ前記減少区間が1秒以上30秒未満であるとき、前記冷媒配管の腐食を判定してもよい。
【0030】
このような構成により、腐食電流の変化に基づいて、処理部は、冷媒配管の腐食を判定することができる。
【0031】
本開示の第9態様の冷凍サイクル装置においては、前記閾値は5μA/sであってもよい。
【0032】
このような構成により、立ち上がり区間における腐食電流の時間微分値が5μA/s以上で増加するとき、処理部は、冷媒配管の腐食を判定することができる。これにより、銅を主成分とする冷媒配管の腐食の検知精度をさらに向上させることができる。
【0033】
本開示の第10態様の冷凍サイクル装置においては、前記冷媒配管内における前記冷媒が流れる方向を変更する四方弁をさらに備えていてもよい。
【0034】
このような構成により、例えば、空気調和器における腐食の検知精度を向上させることができる。
【0035】
本開示の第11態様の冷凍サイクルシステムは、
第1熱交換器、圧縮機、第2熱交換器及び膨張機構を備える冷凍サイクル装置と、
ネットワークを介して前記冷凍サイクル装置と通信する処理装置と、
を備え、
前記冷凍サイクル装置は、
前記第1熱交換器、前記圧縮機、前記第2熱交換器及び前記膨張機構を接続し、冷媒を循環させ、且つ銅を主成分とする冷媒配管と、
前記冷媒配管の外側表面と前記冷媒配管の周囲とのうち少なくとも一方に配置され、腐食電流を検知するACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサと、
前記ACMセンサで検知された前記腐食電流の情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部で記憶された前記腐食電流の情報を、前記ネットワークを介して送信する第1通信部と、
を有し、
前記処理装置は、
前記腐食電流の情報を、前記ネットワークを介して受信する第2通信部と、
前記腐食電流の変化に基づいて前記冷媒配管の腐食を判定する処理部と、
を有する。
【0036】
このような構成により、冷凍サイクル装置における冷媒配管の腐食の検知精度を向上させること、及び、ACMセンサで検知された腐食電流の情報を冷凍サイクル装置から別の装置へ送信することができる。
【0037】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置について説明する。なお、以下の説明において、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の一例として冷房運転時の空気調和器について説明するが、冷凍サイクル装置を空気調和器に限定しない。
【0038】
[全体構成]
図1は、本開示に係る実施の形態1の冷凍サイクル装置1の一例を示す模式図である。
図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、第1熱交換器2、圧縮機3、第2熱交換器4、膨張機構5、冷媒配管6、四方弁8、ACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサ11及び処理部12を備える。
【0039】
冷凍サイクル装置1において、第1熱交換器2及び冷媒配管6の一部は、室内機9を構成し、室内に配置される。一方で、圧縮機3、第2熱交換器4、膨張機構5、四方弁8及び冷媒配管6の一部は、室外機10を構成し、室外に配置される。
【0040】
<第1熱交換器>
第1熱交換器2は、フィンと、第1熱交換器2の内部に配置された冷媒配管6と、室内ファンと、を備える。フィンは、複数の薄い金属板で構成され、それぞれの金属板の面が互いに平行になるよう配置する。フィンは、空気との熱交換を行うために用いられる。冷媒配管6は、フィンの面に直交し、フィンを繰り返し貫通するように曲げられた状態で配置され、第1熱交換器2に流入する冷媒を気化させる。室内ファンは、第1熱交換器2で温度が調整された空気を室内に向けて吹き出す。
【0041】
<圧縮機>
圧縮機3は、冷媒配管6によって第1熱交換器2及び四方弁8に接続される。圧縮機3は、第1熱交換器2側の冷媒配管6から流入した冷媒を圧縮するために用いられる。
【0042】
<第2熱交換器>
第2熱交換器4は、フィンと、第2熱交換器4の内部に配置された冷媒配管6と、室外ファンを備える。フィンは、第1熱交換器2のフィンと同様な構造を有する。冷媒配管6は、フィンの面に直交し、フィンを繰り返し貫通するように曲げられた状態で配置され、第2熱交換器4に流入する冷媒を液化させる。室外ファンは、第2熱交換器4で温度が調整された空気を室外に向けて吹き出す。
【0043】
<膨張機構>
膨張機構5は、冷媒配管6によって第1熱交換器2及び第2熱交換器4に接続される。膨張機構5は、第2熱交換器4側の冷媒配管6から流入した冷媒を膨張させるために用いられる。例えば、膨張機構5は膨張弁である。
【0044】
<冷媒配管>
冷媒配管6は、第1熱交換器2、圧縮機3、四方弁8、第2熱交換器4及び膨張機構5を接続するように配置される。また、冷媒配管6は、第1熱交換器2及び第2熱交換器4の一部を構成している。例えば、冷媒配管6は、第1熱交換器2、圧縮機3、四方弁8、第2熱交換器4及び膨張機構5の順番にそれぞれを接続するように配置される。
【0045】
冷媒配管6は、冷媒配管6の内部に冷媒が流れる流路を有し、冷媒を循環させる。例えば、冷媒配管6は中空の円筒形状を有する。
【0046】
冷媒配管6は、銅を主成分とする。冷媒配管6を構成する材料は、80wt%以上の銅を含む。好ましくは、冷媒配管6を構成する材料は、95wt%以上の銅を含む。より好ましくは、冷媒配管6を構成する材料は、99wt%以上の銅を含む。また、冷媒配管6を構成する材料は、0.015wt%以上0.40wt%以下のリンを含んでいてもよい。例えば、冷媒配管6を構成する材料として、無酸素銅C1020、リン脱酸銅C1220、高リン脱酸銅C1260が挙げられる。また、冷媒配管6の銅におけるリンの添加量によって、腐食に対する耐性を向上させることができる。例えば、冷媒配管6が高リン脱酸銅C1260で形成されている場合、冷媒配管6内に空洞が発生する蟻の巣腐食に対する耐性が高くなる。
【0047】
<四方弁>
四方弁8は、冷媒配管6によって圧縮機3、第1熱交換器2及び第2熱交換器4に接続される。冷房運転時において、四方弁8は、圧縮機3から流出した冷媒を第2熱交換器4に送る。一方で、四方弁8は冷凍サイクル装置1の運転モード(冷房運転、暖房運転)によって、冷媒が流れる方向を変更する。
【0048】
<ACMセンサ>
ACMセンサ11は、冷媒配管6の腐食を再現し、再現した腐食による腐食電流を検知する。ACMセンサ11は、冷凍サイクル装置1の使用開始から継続的に、定量的に腐食電流を測定してもよい。例えば、ACMセンサ11は0.1秒ごとに腐食電流を測定する。
【0049】
ACMセンサ11は、冷媒配管6の外側表面に配置される。実施の形態1では、ACMセンサ11は、第1熱交換器2の冷媒配管6の外側表面に配置される。
【0050】
ACMセンサ11の腐食環境を冷媒配管6の腐食環境と合わせるため、ACMセンサ11は冷媒配管6に貼り付ける。即ち、ACMセンサ11は、冷媒配管6において腐食を検知したい部位に貼り付けられる。ACMセンサ11を、冷媒配管6の外側表面の形状に合わせて変形して、冷媒配管6に貼り付けてもよい。即ち、ACMセンサ11は可撓性を有してもよい。例えば、ACMセンサ11を、ACMセンサ11の裏面に設けた接着層による貼り付け、接着剤を用いた貼り付け、ロウ付け、はんだ付け、スポット溶接、によって冷媒配管6に貼り付けることができる。また、冷媒配管6に取り付けたケースへACMセンサ11を差し込むことで、ACMセンサ11を冷媒配管6に貼り付けることができる。
【0051】
ACMセンサ11の寸法は、設置場所や設置方法によって設計するとよい。
【0052】
図2は、実施の形態1のACMセンサ11の模式図である。
図2に示すように、ACMセンサ11は、基材13と、絶縁層14と、カソード電極15と、導線20と、絶縁保護層21と、を備える。
【0053】
基材13は、導電性を有する材料で形成される。例えば、基材13を、冷媒配管6を構成する材料と、同一の材料で形成する。実施の形態1では、基材13は、冷媒配管6と同様に銅を主成分とする。よって、冷媒配管6の腐食を基材13で再現することができる。その結果、ACMセンサ11における基材13の腐食に基づいて、冷媒配管6の腐食を精度良く検知することができる。
【0054】
基材13は板状に形成されている。基材13の厚みを小さくすることで、ACMセンサ11を容易に変形し、ACMセンサ11の設置場所にACMセンサ11の形状を合わせることができる。また、基材13の厚みと冷媒配管6の厚みとは略同じであってもよい。例えば、基材13の厚みは、冷媒配管6の厚みの0.8倍以上1.2倍以下である。好ましくは、基材13の厚みは、冷媒配管6の厚みの0.9倍以上1.1倍以下である。
【0055】
絶縁層14は板状に形成されている。絶縁層14は、基材13の一方の面に積層される。一方で、絶縁層14積層後の面においても、基材13は露出している。
【0056】
絶縁層14は、電気絶縁性の材料である。絶縁層14を形成する材料は、例えば、樹脂である。
【0057】
カソード電極15は、絶縁層14における基材13と逆側の面に積層される。
【0058】
カソード電極15は、導電性を有し、且つ基材13に対して表面電位が貴である材料で形成される。カソード電極15の表面電位が基材13に対して貴である場合、基材13が優先的に腐食するため、ACMセンサ11を用いて冷媒配管6の腐食を検知できる。例えば、カソード電極15は、基材13の銅より表面電位が貴である銀又はカーボンで形成される。
【0059】
ACMセンサ11は、導線20を、基材13、カソード電極15及び処理部12との間に備え、導線20はそれぞれを電気的に接続する。導線20は、電気導電性材料で形成される。例えば、導線20は銅で形成される。
【0060】
絶縁保護層21は、導線20と基材13及びカソード電極15との接続点に配置され、接続点を保護する。絶縁保護層21は、電気絶縁性材料で形成される。例えば、絶縁保護層21は樹脂で形成される。
【0061】
<処理部>
処理部12を構成する要素は、例えば、これらの要素を機能させるプログラムを記憶したメモリ(図示せず)と、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサに対応する処理回路(図示せず)を備え、プロセッサがプログラムを実行することでこれらの要素として機能してもよい。
【0062】
処理部12は、腐食電流の変化に基づいて冷媒配管6の腐食を判定する。より具体的には、処理部12は、ACMセンサ11で検知した腐食電流がスパイク信号を有するか否かを判定することによって、冷媒配管6の腐食を判定する。例えば、処理部12は、腐食電流がスパイク信号を有しているときに冷媒配管6において腐食が発生していると判定する。
【0063】
スパイク信号とは、腐食電流における急激な電流値の変化である。スパイク信号は、後述する
図4Bに示す立ち上がり区間R1及び減少区間R2によって構成される。立ち上がり区間R1は、腐食電流の時間微分値がある閾値以上で増加する区間である。一方、減少区間R2は、立ち上がり区間R1の直後に発生し、腐食電流が減少する区間である。電流が減少するため、減少区間R2の時間微分値は、0μA/s未満、つまり負である。時間微分値が閾値以上となる立ち上がり区間R1が時間t1続き、腐食電流が減少する減少区間R2が時間t2続くとき、処理部12は、腐食電流がスパイク信号を有すると判定し、冷媒配管6の腐食を判定してもよい。例えば、時間t1は1秒未満であり、時間t2は1秒以上30秒未満である。また、例えば、立ち上がり区間R1の時間微分値の閾値は5μA/sである。
【0064】
処理部12は、ACMセンサ11と電気的に接続される。処理部12は、ACMセンサ11の周辺に配置されてもよい。
【0065】
[動作]
冷凍サイクル装置1の動作の一例について詳細に説明する。
【0066】
図3は、ACMセンサ11の断面図である。
図3では、ACMセンサ11は、導線20を介して処理部12に接続されている。ACMセンサ11の表面には、水膜19が形成されている。
【0067】
水膜19は、連続した水の膜であり、基材13の一部とカソード電極15の一部とに接触する。ACMセンサ11上に複数の水膜19を形成してもよい。水膜19は、例えば、基材13の温度が周囲の温度より低く、ACMセンサ11が結露した場合において形成される。また、基材13の周囲の湿度が高い場合においても、水膜19は形成される。
【0068】
水は電気導電性を有するため、水膜19の形成によって、基材13とカソード電極15とが導通する。基材13とカソード電極15との間に電位差が存在するため、腐食電流が流れる。腐食電流は基材13からカソード電極15に向かって流れ、電子はカソード電極15から基材13に向かって移動する。腐食電流は、カソード電極15から処理部12に流れる。
【0069】
ACMセンサ11は基材13の腐食電流を検知する。基材13が水膜19によって腐食されると、ACMセンサ11で検知される腐食電流が変化する。処理部12は、腐食電流の変化に基づいて、冷媒配管6の腐食を判定する。
【0070】
実施の形態1では、ACMセンサ11の基材13と冷媒配管6とは同一の材料で形成されている。さらに、ACMセンサ11は、第1熱交換器2の冷媒配管6の外側表面に貼り付けられている。よって、冷媒配管6の腐食を基材13で再現することができる。これにより、処理部12は、ACMセンサ11の基材13の腐食により発生する腐食電流の変化に基づいて、冷媒配管6の腐食の発生を推定することができる。
【0071】
腐食による電流の変化について詳細に説明する。
【0072】
まず、基材13及び冷媒配管6を形成する材料に用いられる銅の局部腐食について説明する。銅の局部腐食の例として、蟻の巣腐食及び応力腐食割れが挙げられる。蟻の巣腐食では、銅の内部、例えば、冷媒配管6の壁内において、複雑に枝分かれした微小空洞が形成される。蟻の巣腐食は、銅の周囲にカルボン酸が存在すると発生しやすい。例えば、建築材料として使用される接着剤に含まれるホルムアルデヒドが酸化するとカルボン酸が生じる。また、応力割れ腐食では、銅の表面、例えば、冷媒配管6の外側表面から亀裂が発生する。応力割れ腐食は、曲げ応力がかかっている銅の周囲に、アンモニアが存在すると発生する。アンモニアは、例えば、ペットの尿から生じる。
【0073】
銅を主成分とする基材13において、湿度または塩害による通常の腐食が発生した場合、基材13を形成する銅が酸化し、電子を放出する。基材13の腐食により、基材13を流れる腐食電流が増加する。一方で、銅を主成分とする基材13の局部腐食が発生した場合、基材13を形成する銅が酸化し、短期間で多くの電子を放出する。基材13の局部腐食により、基材13を流れる腐食電流が増加する。また、局部腐食による腐食電流の増加は、湿度または塩害による通常の腐食より急激な増加であり、スパイク信号である。よって、局部腐食が発生した場合、ACMセンサ11は腐食電流のスパイク信号を検知する。即ち、スパイク信号は銅の局部腐食の発生を示し、銅の腐食の検知に用いることができる。
【0074】
図4Aは、ACMセンサ11で検知された腐食電流と経過時間の関係を示すグラフである。
図4Bは、
図4Aの腐食電流の一部の拡大図である。
図4Aでは、銅を主成分とする基材13の腐食の発生を示すスパイク信号を矢印で示している。
図4Bでは、
図4Aで示したスパイク信号の1つの拡大図を示している。
【0075】
銅の腐食において、スパイク信号は、立ち上がり区間R1と、立ち上がり区間R1の直後に発生する減少区間R2とを、有する。上記で説明したように、腐食電流の立ち上がり区間R1及び減少区間R2に基づいて、処理部12は冷媒配管6の腐食を判定する。
【0076】
処理部12による腐食の判定とは、冷媒配管6の腐食の有無の判定である。例えば、スパイク信号が発生した場合、腐食が有ると判定し、スパイク信号が発生しない場合、腐食が無いと判定する。また、ACMセンサ11で検知されるスパイク信号に関連した他の情報に基づいて、腐食領域の大きさ、腐食速度、冷媒配管6の寿命等の腐食状態を判定してもよい。例えば、スパイク信号の最大電流値、発生回数又は発生頻度によって、腐食状態を判定する。
【0077】
[効果]
実施の形態1に係る冷凍サイクル装置1によれば、以下の効果を奏するができる。
【0078】
冷凍サイクル装置は、第1熱交換器2と、圧縮機3と、第2熱交換器4と、膨張機構5と、を備える。冷凍サイクル装置1は、さらに、冷媒配管6と、ACMセンサ11と、処理部12と、を有する。冷媒配管6は、第1熱交換器2、圧縮機3、第2熱交換器4及び膨張機構5を接続し、冷媒を循環させ、且つ銅を主成分とする。ACMセンサ11は、冷媒配管6の外側表面に配置され、腐食電流を検知する。処理部12は、ACMセンサ11で検知した腐食電流の変化に基づいて冷媒配管6の腐食を判定する。
【0079】
このような構成により、腐食の検知精度を向上させることができる。具体的には、ACMセンサ11を用いて腐食電流を検知し、検知された腐食電流の変化に基づいて冷媒配管6の腐食を判定するため、腐食の検知精度を向上させることができる。
【0080】
ACMセンサ11は、冷媒配管6の外側表面に配置されることによって、冷媒配管6における腐食の検知精度をさらに向上させることができる。具体的には、ACMセンサ11を冷媒配管6の外側表面に配置することによって、ACMセンサ11の腐食環境と冷媒配管6の腐食環境とを合わせることができる。これにより、例えば、ACMセンサ11の温度が、冷媒配管6の温度に同期する。この場合、温度の同期によって、ACMセンサ11は冷媒配管6と同程度結露する。冷媒配管6の結露を再現することによって、ACMセンサ11を用いて、冷媒配管6の腐食を再現することができ、腐食の検知精度を向上させることができる。
【0081】
温度の同期は、例えば、ACMセンサ11の基材13と冷媒配管6との間の熱伝導によって行われる。また、冷媒配管6の主成分が銅であり、銅の熱伝導率は高いため、温度の同期は実現しやすい。
【0082】
ACMセンサ11は、第1熱交換器2に配置される冷媒配管6に配置される。
【0083】
このような構成により、冷媒配管6における腐食の検知精度をさらに向上させることができる。具体的には、冷凍サイクル装置1において、第1熱交換器2の冷媒配管6の温度と周囲の温度との差が発生しやすいため、第1熱交換器2の冷媒配管6は結露しやすく腐食しやすい。腐食しやすい冷媒配管6にACMセンサ11を配置することで、腐食をより確実に検知することができる。また、冷凍サイクル装置1において冷媒配管6が腐食しやすい場所にACMセンサ11を配置することによって、冷媒配管6における腐食の萌芽を検知することができる。これにより、冷媒配管6の腐食による冷凍サイクル装置1の故障を事前に検知することができる。
【0084】
ACMセンサ11は、基材13と、絶縁層14と、カソード電極15と、を備える。基材13は導電性を有し、基材13の主成分と冷媒配管6の主成分とは同じである。絶縁層14は、基材13に積層され、電気絶縁性物質である。カソード電極15は、絶縁層14に積層され、基材13よりも表面電位が貴である。
【0085】
このような構成により、基材13とカソード電極15との間に腐食電流が流れ、腐食電流の変化に基づいて冷媒配管6の腐食を判定できる。
【0086】
また、基材13の主成分と冷媒配管6の主成分が同じであることで、冷媒配管6における腐食の検知精度をさらに向上させることができる。具体的には、基材13と冷媒配管6との主成分が銅である。このため、基材13と冷媒配管6の材料特性が同じになる。これにより、基材13で冷媒配管6の腐食を再現することができ、基材13の腐食の発生による腐食電流の変化に基づいて冷媒配管6の腐食を判定することができる。その結果、冷媒配管6の腐食の検知精度を向上させることができる。また、基材13と冷媒配管6との材料特性が同じであるため、例えば、表面の撥水性が同じであり、表面に形成される水膜19の面積、厚み等が同じである。よって、腐食の検知精度をさらに向上させることができる。
【0087】
基材13の主成分が銅であるため、基材13の電気導電性が高く、基材13の電気抵抗が小さい。よって、基材13を流れる微弱な腐食電流及び腐食電流の変化を検出しやすい。
【0088】
基材13の厚みは、冷媒配管6の厚みとは略同じである。
【0089】
このような構成によって、冷媒配管6の腐食の検知精度をさらに向上させることができる。具体的には、基材13と冷媒配管6との厚みが略同じであるため、基材13を用いて、冷媒配管6の温度状況、結露状況及び応力状況を再現しやすくなる。よって、基材13を用いて、冷媒配管6の腐食を再現することができ、腐食の検知精度をさらに向上させることができる。
【0090】
処理部12は、腐食電流において、立ち上がり区間R1と、減少区間R2と、を検出する。立ち上がり区間R1では、腐食電流の時間微分値が閾値以上で増加する。減少区間R2では、立ち上がり区間R1の直後であり、腐食電流が減少する。立ち上がり区間R1が1秒未満であり、減少区間R2が1秒以上30秒未満である場合、処理部12は冷媒配管6の腐食を判定する。
【0091】
このような構成により、腐食電流の変化に基づいて、処理部12は、銅を主成分とする冷媒配管6の腐食を判定することができる。
【0092】
第1閾値は5μA/sである。
【0093】
このような構成により、立ち上がり区間R1における腐食電流の時間微分値が5μA/s以上で増加するとき、処理部12は、銅を主成分とする冷媒配管6の腐食を判定することができる。これにより、銅を主成分とする冷媒配管6の腐食の検知精度をさらに向上させることができる。
【0094】
冷凍サイクル装置1は、冷媒配管6内における冷媒が流れる方向を変更する四方弁8をさらに備える。
【0095】
このような構成により、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置1のように、例えば、冷房運転時の空気調和器における腐食の検知精度を向上させることができる。
【0096】
なお、実施の形態1では、冷凍サイクル装置1の一例として冷房運転時の空気調和器について説明したが、これに限定されない。例えば、冷凍サイクル装置1は、暖房運転時の空気調和器であってもよい。また、冷凍サイクル装置1は、冷蔵庫等の冷凍機器であってもよい。
【0097】
実施の形態1では、冷媒配管6が第1熱交換器2、圧縮機3、四方弁8、第2熱交換器4及び膨張機構5を接続するように配置される例について説明したが、冷媒配管6はアキュムレータ、弁等の他の要素を接続してもよい。
【0098】
実施の形態1では、ACMセンサ11が第1熱交換器2の冷媒配管6の外側表面に配置されている例について説明したが、これに限定されない。ACMセンサ11は、第1熱交換器2と第2熱交換器4とのうち少なくとも1つに配置されてもよい。例えば、ACMセンサ11を、第2熱交換器4の冷媒配管6の外側表面に配置してもよい。または、ACMセンサ11を、第1熱交換器2と第2熱交換器4との両方の冷媒配管6に配置してもよい。
【0099】
あるいは、ACMセンサ11を冷媒配管6の他の部分に配置してもよい。
【0100】
実施の形態1では、冷凍サイクル装置1は、1つのACMセンサ11を備える例について説明したが、これに限定されない。冷凍サイクル装置1は、1つ又は複数のACMセンサ11を備えていてもよい。
【0101】
実施の形態1では、ACMセンサ11が冷凍サイクル装置1の冷媒配管6の外側表面に配置される例について説明したが、これに限定されない。ACMセンサ11は、冷媒配管6の外側表面と冷媒配管6の周囲とのうち少なくとも一方に配置されてもよい。冷媒配管6の周囲に配置されるとは、冷媒配管6に他の部品を介して間接的に配置されることを意味する。例えば、ACMセンサ11を、冷媒配管6が接続される第1熱交換器2のフィンに配置してもよい。また、ACMセンサ11を、冷媒を通さないダミー配管の外側表面に配置してもよい。ダミー配管は、冷媒配管6の近位に配置することで温度を同期させる。設置場所の温度が周囲の雰囲気の温度より低く結露しやすい場所、又は、応力負荷がかかっている場所に、ACMセンサ11を配置することで腐食の検知精度をさらに向上させることができる。
【0102】
実施の形態1では、基材13を形成する主成分が銅である例について説明したが、これに限定されない。基材13を形成する材料は、カソード電極15より優先的に腐食する材料であればよい。また、基材13を形成する材料は、冷媒配管6の腐食を再現可能な材料であればよい。
【0103】
(実施の形態2)
本開示の実施の形態2に係る冷凍サイクル装置について説明する。なお、実施の形態2では、主に、実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する説明を省略する。
【0104】
図5は、本開示に係る実施の形態2の第1熱交換器2の模式図である。
【0105】
実施の形態2では、第1熱交換器2に配置された冷媒配管6が屈曲部7を有し、ACMセンサ11は屈曲部7に配置される点で実施の形態1と異なる。
【0106】
実施の形態2において、冷凍サイクル装置1は、特に説明しない限り、実施の形態1と同じである。
【0107】
図5で示すように、第1熱交換器2において、複数のフィン17が間隔を有して配置されている。第1熱交換器2において、冷媒配管6は複数のフィン17を貫通して配置されている。また、冷媒配管6は曲げられており、屈曲部7を有する。
図5の矢印は、冷凍サイクル装置1の冷房運転時において、冷媒が流れる方向を示している。
【0108】
冷媒配管6の屈曲部7は、第1熱交換器2の側面のフィン17から突出し、曲がっている。つまり、屈曲部7には曲げ応力がかかった状態である。例えば、屈曲部7は、U字状に湾曲している。実施の形態2では、第1熱交換器2の冷媒配管6は、複数の屈曲部7を有している。
【0109】
冷凍サイクル装置1の冷房運転時では、第1熱交換器2の冷媒配管6において、冷媒の出口側の屈曲部7bよりも入口側の屈曲部7aの方が、冷媒の温度が低い。このため、屈曲部7bよりも屈曲部7aの方が、相対湿度が高く、腐食しやすい。よって、実施の形態2では、ACMセンサ11は、第1熱交換器2の冷媒の入口側の屈曲部7aに配置されている。
【0110】
ACMセンサ11を、屈曲部7の形状に合わせて変形し、屈曲部7に貼り付ける。
【0111】
図6は、実施の形態2のACMセンサ11付き屈曲部の断面図である。
図6で示すように、ACMセンサ11は、屈曲部7の外側表面に沿って密着するように貼り付けられている。即ち、ACMセンサ11は、屈曲部7の外形に沿って変形している。よって、ACMセンサ11においても屈曲部7と同様に曲げ応力がかかった状態を再現している。ACMセンサ11は、ロウ付け、はんだ付け、スポット溶接、によって屈曲部7に貼り付けることができる。また、屈曲部7に取り付けたケースへACMセンサ11を差し込むことで、冷媒配管6に貼り付けることができる。
【0112】
[効果]
第1熱交換器2に配置される冷媒配管6は、屈曲部7を有し、ACMセンサ11は、屈曲部7に配置される。
【0113】
このような構成により、冷媒配管6における応力腐食割れの検知精度を向上させることができる。具体的には、基材13は冷媒配管6の屈曲部7に沿って配置されるため、基材13を用いて冷媒配管6の屈曲部7における曲げ形状を再現できる。ここで、さらに、基材13を用いて冷媒配管6の主成分及び厚みを再現することで、基材13において、冷媒配管6の屈曲部7における曲げ応力状況を再現できる。冷媒配管6の屈曲部7における応力状況を再現することよって、基材13を用いて、冷媒配管6の応力腐食割れを再現することができ、応力腐食割れの検知精度を向上させることができる。
【0114】
なお、実施の形態2では、ACMセンサ11が第1熱交換器2の冷媒配管6の屈曲部7に配置されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1熱交換器2と第2熱交換器4とのうち少なくとも1つに配置される冷媒配管6は、屈曲部7を有し、ACMセンサ11は、屈曲部7に配置されてもよい。例えば、ACMセンサ11は、第2熱交換器4の冷媒配管6の屈曲部7に配置されてもよい。ACMセンサ11は、第1熱交換器2と第2熱交換器4との両方の冷媒配管6の屈曲部7に配置されてもよい。
【0115】
実施の形態2では、複数の屈曲部7のうち1つの屈曲部7aに1つのACMセンサ11が配置されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の屈曲部7に複数のACMセンサ11が配置されてもよい。
【0116】
実施の形態2では、ACMセンサ11を配置する屈曲部7を冷媒の入口側の屈曲部7aである例について説明したが、これに限定されない。冷媒の出口側の屈曲部7bにACMセンサ11を配置してもよい。また、第1熱交換器2と第2熱交換器4の冷媒配管6以外の屈曲部7に配置してもよい。
【0117】
実施の形態2では、ACMセンサ11を屈曲部7に貼り付ける例について説明したが、これに限定されない。例えば、後述の変形例1のように、基材13は冷媒配管6の一部で形成されていてもよい。
【0118】
(変形例1)
図7は、実施の形態2の変形例のACMセンサ11Aの断面図である。
図7に示すように、ACMセンサ11Aの基材13は、冷媒配管6の屈曲部7の一部で形成されている。ACMセンサ11Aの絶縁層14は、屈曲部7の外側表面に沿って貼り付けられている。絶縁層14における屈曲部7と反対側の面に、カソード電極15を積層する。変形例1において、ACMセンサ11Aの他の構成は、実施の形態2のACMセンサ11と同じである。このようなACMセンサ11Aの形成方法として、絶縁層14を屈曲部7に直接印刷する方法が挙げられる。
【0119】
このような構成により、冷媒配管6の実際の腐食電流を検知することができ、腐食の検知精度をさらに向上させることができる。変形例1において、ACMセンサ11Aは、冷媒配管6の腐食を直接検知することができる。また、部品点数を減らすことができ、省スペース化を実現することができる。
【0120】
なお、変形例1では、ACMセンサ11Aの基材13が冷媒配管6の屈曲部7の一部で形成されている例について説明したが、これに限定されない。基材13が、屈曲部7以外の冷媒配管6で形成されてもよい。例えば、基材13は直線状に延びる冷媒配管6の一部で形成されていてもよい。
【0121】
(実施の形態3)
本開示の実施の形態3に係る冷凍サイクル装置について説明する。なお、実施の形態3では、主に、実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態3においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態3では、実施の形態1と重複する説明を省略する。
【0122】
図8は、本開示に係る実施の形態3の冷凍サイクル装置1Aのブロック図である。
【0123】
実施の形態3では、冷凍サイクル装置1Aが表示部16を有する点で実施の形態1と異なる。
【0124】
実施の形態3において、冷凍サイクル装置1Aは、特に説明しない限り、実施の形態1の冷凍サイクル装置1と同じである。
【0125】
表示部16は、処理部12で判定された冷媒配管6の腐食の判定結果を表示する。腐食の判定結果とは、例えば、腐食の発生の有無である。表示部16は、LEDと、LEDを制御する制御回路と、を含む。制御回路は、処理部12からの信号を受信することによって、LEDを点灯させる。例えば、処理部12は腐食が有ると判定したときに、表示部16の制御部回路に信号を送信する。制御回路は、処理部12からの信号を受信したとき、LEDを点灯させる。LEDは冷凍サイクル装置1Aの使用者が視認できる位置に配置される。例えば、LEDは、室内機9の外側に配置される。
【0126】
[効果]
表示部16は、処理部12で判定された冷媒配管6の腐食の判定結果を表示する。
【0127】
このような構成により、冷媒配管6の腐食の判定結果を冷凍サイクル装置1Aの使用者に表示することができる。よって、使用者に冷媒配管6の交換又は修理の必要性を知らせ促すことで、冷媒配管6の貫通前に、冷媒配管6の処置を行うことができる。
【0128】
なお、実施の形態3では、冷凍サイクル装置1Aが表示部16を備える例について説明したが、これに限定されない。表示部16は冷凍サイクル装置1Aの構成要素に含まれていなくてもよい。表示部16は、冷凍サイクル装置1Aから独立していたディスプレイであってもよい。表示部16が冷凍サイクル装置1Aから独立している場合、冷凍サイクル装置1A及び表示部16は通信部を備えてもよい。通信部は所定の通信規格(例えば、LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標))に準拠し表示部16との通信を行う回路を含む。例えば、冷凍サイクル装置1Aのリモートコントローラのディスプレイが表示部16として機能してもよい。冷凍サイクル装置1Aは、通信部によってリモートコントローラに腐食の判定結果の情報を送信する。リモートコントローラは、通信部によって腐食の判定結果の情報を受信し、リモートコントローラのディスプレイに腐食の判定結果を表示してもよい。また、スマートフォンのディスプレイが表示部16として機能してもよい。具体的には、冷凍サイクル装置1Aの通信部とスマートフォンとが通信し、腐食の判定結果をスマートフォンに表示してもよい。例えば、冷凍サイクル装置1Aに対応したアプリケーションをスマートフォンに設け、当該アプリケーションによってスマートフォンに腐食の判定結果を表示してもよい。
【0129】
実施の形態3では、腐食の発生の有無によって、表示部16のLEDが点灯する例について説明したが、これに限定されない。表示部16は、腐食の発生の有無とともに又は代えて、処理部12で判定されたスパイク信号に関連した情報を表示してもよい。例えば、表示部16はディスプレイを有する場合、表示部16は、スパイク信号の有無、最大電流値、発生回数又は発生頻度を数値として表示してもよい。
【0130】
また、表示部16は、3段階で腐食の進行状態を表示してもよい。例えば、表示部16は緑、黄、赤の3つのLEDを備え、腐食発生前では緑LEDが点灯し、腐食発生直後は黄LEDが点灯し、腐食発生から1カ月経過以降は赤LEDが点灯する。
【0131】
また、表示部16は、視覚的な表示に限定されず、警報音を発するスピーカであってもよい。例えば、処理部12が腐食の発生が有ると判定した場合、表示部16は警報音を鳴らしてもよい。
【0132】
なお、実施の形態3では、実施の形態1に表示部16を備えた例について説明したが、これに限定されない。実施の形態2及び変形例1に表示部16を備えてもよい。
【0133】
(実施の形態4)
本開示の実施の形態4に係る冷凍サイクルシステム41について説明する。なお、実施の形態4では、主に、実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態4においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態4では、実施の形態1と重複する説明を省略する。
【0134】
図9は、本開示に係る実施の形態4の冷凍サイクルシステム41のブロック図である。
【0135】
実施の形態4では、冷凍サイクル装置1Bを含む冷凍サイクルシステム41である点で実施の形態1と異なる。
【0136】
実施の形態4において、冷凍サイクル装置1Bは、特に説明しない限り、実施の形態1の冷凍サイクル装置1と同じである。
【0137】
[全体構成]
図9に示すように、冷凍サイクルシステム41は、冷凍サイクル装置1Bと、処理装置51と、を備える。
【0138】
<冷凍サイクル装置>
冷凍サイクル装置1Bは、第1熱交換器2、圧縮機3、第2熱交換器4、膨張機構5、冷媒配管6、ACMセンサ11、記憶部42及び第1通信部43を備える。
【0139】
<記憶部>
記憶部42は、ACMセンサ11で検知された腐食電流の情報を記憶する。記憶部42は、例えば、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又はその他のメモリ技術、CD-ROM、DVD又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気記憶デバイスであってもよい。
【0140】
<第1通信部>
第1通信部43は、記憶部42で記憶された情報を、ネットワークを介して送信する。具体的には、第1通信部43は、腐食電流の情報を、ネットワークを介して処理装置51へ送信する。第1通信部43は、所定の通信規格(例えば、LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標))に準拠して、処理装置51の第2通信部53への送信を行う回路を含む。
【0141】
<処理装置>
処理装置51は、処理部12及び第2通信部53を備える。処理装置51とは、コンピュータである。例えば、処理装置51は、サーバ又はクラウドである。
【0142】
<第2通信部>
第2通信部53は、第1通信部43によって送信された腐食電流の情報を、ネットワークを介して受信する。第2通信部53は、所定の通信規格(例えば、LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、)に準拠して、冷凍サイクル装置1Bの第1通信部43からの受信を行う回路を含む。
【0143】
処理部12は、第2通信部53が受信した腐食電流の情報に基づいて、腐食を判定する。
【0144】
[動作]
冷凍サイクル装置1Bにおいては、ACMセンサ11で腐食電流を検知し、腐食電流の情報を記憶部42に記憶する。第1通信部43は、記憶部42に記憶された腐食電流の情報を、第2通信部53へ送信する。処理装置51においては、第2通信部53によって腐食電流の情報を受信する。処理部12は、第2通信部53で受信した腐食電流の情報に基づいて、冷凍サイクル装置1Bの冷媒配管6の腐食を判定する。
【0145】
[効果]
本開示の一態様の冷凍サイクルシステム41は、冷凍サイクル装置1Bと、処理装置51と、を備える。冷凍サイクル装置1Bは、第1熱交換器2、圧縮機3、第2熱交換器4及び膨張機構5を備える。処理装置51は、ネットワークを介して冷凍サイクル装置1Bと通信する。冷凍サイクル装置1Bは、さらに、冷媒配管6と、ACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサ11と、記憶部42と、第1通信部43と、を有する。冷媒配管6は、第1熱交換器2、圧縮機3、第2熱交換器4及び膨張機構5を接続し、冷媒を循環させ、且つ銅を主成分とする。ACMセンサ11は、冷媒配管6の外側表面と冷媒配管6の周囲とのうち少なくとも一方に配置され、腐食電流を検知する。記憶部42は、ACMセンサ11で検知された腐食電流の情報を記憶する。第1通信部43は、記憶部42で記憶された腐食電流の情報を、ネットワークを介して送信する。処理装置51は、第2通信部53と処理部12を有する。第2通信部53は、腐食電流の情報を、ネットワークを介して受信する。処理部12は、腐食電流の変化に基づいて冷媒配管6の腐食を判定する。
【0146】
このような構成により、冷凍サイクル装置1Bにおける腐食の検知精度を向上させること、及び、ACMセンサ11で検知された腐食電流の情報を冷凍サイクル装置1Bから別の装置へ送信することができる。具体的には、ACMセンサ11で検知された腐食電流の情報を、冷凍サイクル装置1Bから独立した処理装置51に送信することができる。例えば、販売者が処理装置51を有している場合、処理部12による腐食の判定に基づいて、メンテナンスサービスの提供を行うことができる。よって、冷凍サイクル装置1Bの故障発生の抑制、メンテナンスサービスの効率の向上及び使用者の満足度の向上を実現できる。
【0147】
なお、処理装置51は複数の冷凍サイクル装置1Bから情報を受信してもよい。
【0148】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本開示の冷凍サイクル装置及び冷凍サイクルシステムは、銅を主成分とする冷媒配管の腐食の検知精度を向上させることができるため、空気調和器として有用である。
【符号の説明】
【0150】
1、1A、1B 冷凍サイクル装置
2 第1熱交換器
3 圧縮機
4 第2熱交換器
5 膨張機構
6 冷媒配管
7 屈曲部
8 四方弁
9 室内機
10 室外機
11、11A ACMセンサ
12 処理部
13 基材
14 絶縁層
15 カソード電極
16 表示部
17 フィン
19 水膜
20 導線
21 絶縁保護層
41 冷凍サイクルシステム
42 記憶部
43 第1通信部
51 処理装置
53 第2通信部