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特許7478998木材切断端面直径の撮像計測方法及び装置
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  • 特許-木材切断端面直径の撮像計測方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】木材切断端面直径の撮像計測方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 23/08 20060101AFI20240426BHJP
   G06T 7/62 20170101ALI20240426BHJP
   G01B 11/08 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A01G23/08 501G
G06T7/62
G01B11/08 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020216137
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022101822
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】516343893
【氏名又は名称】株式会社藤興業
(73)【特許権者】
【識別番号】591108178
【氏名又は名称】秋田県
(74)【代理人】
【識別番号】100110537
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 繁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大三
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 雄二
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/008074(WO,A1)
【文献】特開平08-054215(JP,A)
【文献】特開平09-210785(JP,A)
【文献】特開2017-040548(JP,A)
【文献】特開平05-282443(JP,A)
【文献】特開昭54-038158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 23/00 - 23/14
G01B 11/00 - 11/30
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伐採した木材をカメラで1本ずつ木口断面と前記カメラに附帯した照射装置で照射した2つの光点を撮影し、欠陥部分を画像処理で排除し撮像画像に仮想の輪郭を設定し円形状を判断する画像処理を行い、前記画像処理された円形状から重心を求め、重心を中心とした円形状の最小値を求め、円形状の最小値と2つの光点距離との相対比較で実測値を求め、前記撮像画像の実測値から径級値を演算し、径級ごとに集計した本数と材積を記録することを特徴とする木材切断端面直径の撮像計測方法。
【請求項2】
木材切断端面直径を測定する基準となる光を照射する少なくとも1対の照射装置を前記カメラに固定する撮像計測装置を有し、該撮像計測装置と連動して前記基準となる光の照射点と前記木材切断端面を同時に撮像し、これにより得られた画像を処理することで切断円形端面の径を計測することを特徴とする、請求項1記載の木材切断端面直径の撮像計測方法。
【請求項3】
前記木材切断端面直径を測定する基準となる光は、レーザー発光モジュールの2つを光が平行になるように設置し、計測対象の木材切断端面に映される2つの光点が、計測対象の木材切断端面との距離によらず一定の間隔を保つことで信頼性の高い長さの基準となることを特徴とする、請求項2記載の木材切断端面直径の撮像計測方法。
【請求項4】
前記木材切断端面の撮像計測において、木材切断端面を測定する基準となる光を照射して撮像した画像と、照射せずに撮像した画像の両方を処理に用いることで、画像内で照射された光の位置を正確に判断することを特徴とする、請求項2記載の木材切断端面直径の撮像計測方法。
【請求項5】
伐採した木材を1本ずつ切断円形端面を撮影するカメラと、該カメラに附帯して画像処理上で計測基準となる2つの光点を表示する照射装置と、前記カメラにより撮像された画像から欠陥部分を排除し円形状を判断する画像処理装置と、前記撮像画像から重心を求め、重心を中心とした円形状の最小値を求める算出装置と、円形状の最小値と2つの光点間距離との相対比較で実測値を求める実測演算装置と、前記撮像画像の実測値から径級値を演算する径級演算装置と、径級ごとに集計した本数と材積を記録する記憶装置と、前記径級の計算結果を表示する表示装置と、を備えていることを特徴とする木材切断端面直径の撮像計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伐採現場で伐採した木材の直径を撮像計測し、径級表示を換算して計測データとして保存利用することができる木材切断端面直径の撮像計測方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
林業伐採現場では、伐採した木材を1本ずつ切断円形端面から見て最小値となる個所を巻き尺等で測定し、14cm以下は1cm刻み、例えば9cm~9.9cmは『9cm』の径級で、また14cmを超えるものは2cm刻み、例えば14cm~15.9cmは『14cm』の径級で、計測データを記録用紙へ記載すると共に計測した木材の切断円形端面にも直接記入する。
前記計測データは、各社指定の納品書に径級ごとに集計した本数と材積を記録し、顧客へ木材と納品書をセットで渡す。
顧客は、現品木材と納品書の計測データを照合し、径級ごとに現品木材を仕分けし保管し、径級ごとに作業指示をする。
【0003】
従来、山林で木材資源を切り出し、木材製品とする木材の伐採及び造木作業を機械化するのに用いられるプロセッサ装置と、このようなプロセッサ装置を用いた木材の伐採造木方法が知られている(特許文献1を参照)。
この公知技術は、可動アームを備えた作業車に装備され、伐倒された木材を保持して所定長さ毎に切断するプロセッサ装置であって、前記可動アームの先端に配置される本体部と、該本体部に配置され、木材を把持する把持部と、該把持部で把持された木材を長さ方向に送る送り部と、該送り部の隣接端で木材を切断する切断部と、前記把持部で把持された木材のうち把持部の中心線に沿って把持部から延び出た部分を、把持部に隣接する部分から離れる方向へと木材の軸方向に沿って撮像する撮像装置と、前記作業車に配置され、前記撮像装置から送られる木材の撮像情報を受け取り表示する表示装置と、前記撮像装置から前記表示装置へと撮像情報を伝達する情報伝達手段とを備えるものである。
【0004】
このように、前記の木材の伐採造木用のプロセッサ装置は、作業者の目視観察に加えて、別の方向からの撮像装置による撮像情報を基にして、木材の欠陥個所を検査することができるし、木材のうち、欠陥のない良好な部分のみを確実に切り取って、商品価値の高い木材製品を得ることができる。
一方、本発明は、伐採現場で伐採した木材の直径を撮像計測し、各社指定の納品書に径級ごとに集計した本数と材積を記録した計測データを得て、顧客へ木材と納品書をセットで渡すことができる後工程の作業である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-193096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、伐採現場で伐採した木材の直径を、直径計測には用いない部分(以下、「欠陥部分」という。)を除いて正確に撮像計測し、径級表示を換算して計測データとして保存利用することができる木材切断端面直径の撮像計測方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の木材切断端面直径の撮像計測方法は、伐採した木材をカメラで1本ずつ木口断面と前記カメラに附帯した照射装置で照射した2つの光点を撮影し、欠陥部分を画像処理で排除し撮像画像に仮想の輪郭を設定し円形状を判断する画像処理を行い、前記画像処理された円形状から重心を求め、重心を中心とした円形状の最小値を求め、円形状の最小値と2つの光点距離との相対比較で実測値を求め、前記撮像画像の実測値から径級値を演算し、径級ごとに集計した本数と材積を記録するものである。
【0008】
本発明の木材切断端面直径の撮像計測装置は、伐採した木材を1本ずつ切断円形端面を撮影するカメラと、該カメラに附帯して画像処理上で計測基準となる2つの光点を表示する照射装置と、前記カメラにより撮像された画像から欠陥部分を排除し円形状を判断する画像処理装置と、前記撮像画像から重心を求め、重心を中心とした円形状の最小値を求める算出装置と、円形状の最小値と2つの光点間距離との相対比較で実測値を求める実測演算装置と、前記撮像画像の実測値から径級値を演算する径級演算装置と、径級ごとに集計した本数と材積を記録する記憶装置と、前記径級の計算結果を表示する表示装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の木材切断端面直径の撮像計測方法及び装置は、木材切断端面直径を撮影するだけで実測値との差異が小さく正確に計測でき、径級を仕分けることができ、集計したデータを顧客が保存利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の木材切断端面直径の撮像計測装置の作業フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の木材切断端面直径の撮像計測装置の一実施例を以下に説明する。
本発明の木材切断端面直径の撮像計測装置は、伐採した木材を1本ずつ切断円形端面を撮影するカメラと、該カメラに附帯して画像処理上で計測基準となる光を照射する1対の照射装置と、前記カメラにより撮像された画像から欠陥部分を除いて円形状を判断する画像処理装置と、前記撮像画像から重心を求め、重心を中心とした円形状の最小値を求める算出装置と、円形状の最小値と2つの光点間距離との相対比較で実測値を求める実測演算装置と、前記撮像画像の実測値から径級値を演算する径級演算装置と、径級ごとに集計した本数と材積を記録する記憶装置と、前記径級の計算結果を表示する表示装置と、を備えている。
【0012】
前記カメラは、ハンディータイプの持ち運び可能な撮影機器であり、携帯電話のカメラ機能で代用することもでき、内部にデータ処理機能とデータ送信機能が備わっている。木材切断端面直径を測定する基準となる光を照射する少なくとも1対の照射装置を前記カメラに固定する撮像計測装置を有し、該撮像計測装置と連動して前記基準となる光の照射点と前記木材切断端面を同時に撮像し、これにより得られた画像を処理することで切断円形端面の径を計測する。
一定距離離れた地点から木材の切断円形端部を撮影し、その画像を撮影機器内部で実測値に変換したデータを適宜にクラウドサーバーにアップロードし、離れた地点のパソコン等の径級換算する演算装置にデータをダウンロードする。
【0013】
前記画像処理装置は、カメラにより撮像された撮像画像の輪郭から欠陥部分を除いて円形状を判断する画像処理を行う。木材切断端面を機械学習による画像解析によって欠陥部分を除外した上で木材切断端面直径を算出することで、測定精度を大きく向上させる。
前記算出装置は、前記画像処理装置により画像処理された円形状から重心を求め、重心を中心とした円形状の最小値を求める。
前記照射装置は、画像処理上で計測基準となる光を照射する1対のレーザー発光モジュールを設ける。木材切断端面を測定する基準となる光を照射して撮像した画像と、照射せずに撮像した画像の両方を処理に用いることで、画像内で照射された光の位置を正確に判断する。前記木材切断端面直径を測定する基準となる光は、レーザー発光モジュールの2つを光が平行になるように設置し、計測対象の木材切断端面に映される2つの光点が、計測対象の木材切断端面との距離によらず一定の間隔を保つことで信頼性の高い長さの基準となる。
【0014】
前記実測演算装置は、円形状の最小値と2つの光点間距離との相対比較で実測値を求め、前記径級演算装置は、前記撮像画像の実測値から径級値を演算する。
前記記憶装置は、前記演算装置から送られてきた演算結果を径級ごとに集計した本数と材積を記録する。
前記表示装置はCRTやモニター画面であり、前記径級の計算結果を表示する。
【0015】
前記測定した実測値をクラウドサーバーで保管・管理することでデータの受け渡しを複数の作業者(複数の撮影機器や演算処理装置)間で運用を可能とし、顧客へのデータ転送による管理資料や検収資料などに利用する。
【0016】
次に、本発明の木材切断端面直径の撮像計測方法の操作動作を図1の(1)~(4)に説明する。
(1)山林で伐採した木材を平坦な空き地の伐採現場に山積みで並べ、伐採した木材をカメラで1本ずつ木口断面とカメラに附帯したレーザー発光モジュール等の照射装置で照射した2つの光点を撮影する。
(2)木材切断端面を測定する基準となる2つの光を照射して撮像した画像と、照射せずに撮像した画像の両方を解析に用いることで、画像内で照射された2つの光の位置の距離を画像上に記憶させ、計測基準とする。
(3)木材切断端面を機械学習による画像解析(AI)によって直径計測に用いてはいけない欠陥部分(割れ、節など)を除外した上で撮像画像の輪郭から円形状を判断する画像処理を行う。
(4)画像処理された円形状から重心を求め、重心を中心とした円形状の最小値を求め、2つの光点距離との相対比較で実測値を求め、測定した木材の断面に実測値を記載する。
【0017】
前記計測データの利用を以下の図1の(5)~(12)に説明する。
(5)トラックへの積み込み場所に測定した木材を運搬し撮像画像の計測データを専用のクラウドサーバーにアップロードする。
(6)トラック積み込み作業ごとに木材断面に記載した実測値をクラウドから読み込み実測値を読み込み装置にデータ蓄積し、トラック積み込み作業終了単位で実測値を表示しトラックに積み込んだ現物と照合する。
(7)実測値の記憶と同時に読み込み装置上で径級値を演算する。
(8)径級ごとに集計した本数と材積を表示する。
(9)本数と材積を登録し、撮影した木には直接径級値を記載する。径級値の処理は、14cm以下は1cm刻み、例えば9cm~9.9cmは「9cm」の径級で、また14cmを超えるものは2cm刻み、例えば14cm~15.9cmは「14cm」の径級で、自動換算される。
(10)読み取り装置で顧客先ファイル別に所定の集計及び計算を自動的に行い、登録する。
(11)顧客へ木材を納品する。
(12)顧客は、現品と電子記録を照合し、径級ごとに現品を仕分け保管し、階級ごとに作業指示をする。
このように、本発明は、伐採現場での径級作業を自動化することができ、集計したデータを顧客が電子ファイルで手軽に利用することができるものである。
図1