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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】間欠バルブおよび間欠塗工装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240426BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20240426BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240426BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/02
H01M4/139
H01M4/04 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021527418
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017612
(87)【国際公開番号】W WO2020255559
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2019112617
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 鷹則
(72)【発明者】
【氏名】脇谷 啓介
(72)【発明者】
【氏名】如月 明心李
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-216277(JP,A)
【文献】特開2006-051407(JP,A)
【文献】特開2001-038276(JP,A)
【文献】特表2014-506663(JP,A)
【文献】特開2013-114969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 11/10
B05C 5/02
H01M 4/139
H01M 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を貯留するタンクから被塗工体に前記塗料を塗布するダイへの前記塗料の供給と非供給とを切り替える間欠バルブであって、
上流端、第1下流端および第2下流端を有し前記タンクが前記上流端に接続される流入室、前記第1下流端および前記ダイに接続される供給室、ならびに前記第2下流端および前記タンクに接続されるリターン室を内部に有するバルブ本体と、
前記バルブ本体内で第1位置および第2位置を切り替え可能なピストンと、
前記ピストンに固定され、前記ピストンが前記第1位置にあるとき前記流入室から前記供給室への前記塗料の流通を許容し、前記ピストンが前記第2位置にあるとき当該流通を遮断する供給弁と、
前記ピストンに固定され、前記ピストンが前記第1位置にあるとき前記流入室から前記リターン室への前記塗料の流通を遮断し、前記ピストンが前記第2位置にあるとき当該流通を許容するリターン弁と、を備え、
前記供給弁の弁径は、前記リターン弁の弁径の1.53倍以上である、間欠バルブ。
【請求項2】
前記供給弁は、前記第1下流端側を向く面に、前記ピストンの軸方向と直交する方向に延びる第1平面部を有し、
前記バルブ本体は、前記ピストンが前記第2位置にあるとき前記第1平面部と面接触する第2平面部を有する、請求項1に記載の間欠バルブ。
【請求項3】
前記被塗工体は、二次電池の集電体であり、
前記塗料は、二次電池の電極スラリーである、請求項1または2に記載の間欠バルブ。
【請求項4】
塗料を貯留するタンクと、
被塗工体に前記塗料を塗布するダイと、
前記ダイへの前記塗料の供給と非供給とを切り替える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の間欠バルブと、を備える、間欠塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間欠バルブおよび間欠塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)等の普及にともない、二次電池の出荷が増えている。特にリチウムイオン二次電池の出荷が増えている。一般的な二次電池は、正極板、負極板、セパレータおよび電解液を主な構成要素とする。正極板や負極板といった電極板は、金属箔からなる集電体の表面に、電極活物質が積層された構造を有する。
【0003】
従来、このような電極板の製造方法として、活物質および溶媒を混合した電極スラリーを吐出するダイと、ダイへの電極スラリーの供給および非供給を切り替える間欠バルブと、を備えた間欠塗工装置を用いて、長尺の金属箔の表面に電極スラリーを間欠的に塗布する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-51407号公報
【発明の概要】
【0005】
二次電池の品質向上を図るために、間欠塗工における電極スラリーの塗布精度を高めたることは当然に求められる。一方で、二次電池の出荷増にともない、電極板の製造時間を短縮したいという要求がある。しかしながら、電極板の製造時間を短縮するために金属箔に電極スラリーを高速で間欠塗布すると、電極スラリーの塗布精度が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、間欠塗工における塗料の塗布精度を高める技術を提供することにある。
【0007】
本発明のある態様は、塗料を貯留するタンクから被塗工体に塗料を塗布するダイへの塗料の供給と非供給とを切り替える間欠バルブである。この間欠バルブは、上流端、第1下流端および第2下流端を有しタンクが上流端に接続される流入室、第1下流端およびダイに接続される供給室、ならびに第2下流端およびタンクに接続されるリターン室を内部に有するバルブ本体と、バルブ本体内で第1位置および第2位置を切り替え可能なピストンと、ピストンに固定され、ピストンが第1位置にあるとき流入室から供給室への塗料の流通を許容し、ピストンが第2位置にあるとき当該流通を遮断する供給弁と、ピストンに固定され、ピストンが第1位置にあるとき流入室からリターン室への塗料の流通を遮断し、ピストンが第2位置にあるとき当該流通を許容するリターン弁と、を備え、供給弁の弁径は、リターン弁の弁径の1.53倍以上である。
【0008】
本発明の他の態様は、間欠塗工装置である。この間欠塗工装置は、塗料を貯留するタンクと、被塗工体に塗料を塗布するダイと、ダイへの塗料の供給と非供給とを切り替える上記態様の間欠バルブと、を備える。
【0009】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0010】
本発明によれば、間欠塗工における塗料の塗布精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る間欠塗工装置の模式図である。
図2】間欠バルブを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る間欠塗工装置の模式図である。間欠塗工装置1は、ダイ2と、間欠バルブ4と、タンク6と、ポンプ8と、送り管路10と、リターン管路12と、ダイ供給管路14と、を備える。
【0014】
ダイ2は、被塗工体16に塗料18を塗布する器具である。本実施の形態に係る間欠塗工装置1は、二次電池の電極板を製造するために用いられる。二次電池の電極板は、集電体に電極スラリーを塗布して乾燥させたシート状の電極素材である。したがって本実施の形態では、被塗工体16は、二次電池の集電体であり、塗料18は、二次電池の電極スラリーである。集電体は、例えば金属箔である。電極スラリーは、例えば正極活物質または負極活物質と、溶媒との混合物である。一般的なリチウムイオン二次電池の場合、正極の電極板は、アルミ箔上に、コバルト酸リチウムやリン酸鉄リチウム等の正極活物質を含むスラリーが塗布されて作製される。また、負極の電極板は、銅箔上に、黒鉛等の負極活物質を含むスラリーが塗布されて作製される。
【0015】
ダイ2は、吐出口84がバックアップロール20の周面と所定の間隔をあけて対向するように配置される。被塗工体16は、バックアップロール20の回転によって、バックアップロール20と吐出口84とが対向する位置に連続的に搬送される。
【0016】
ダイ2には、ダイ供給管路14を介して間欠バルブ4が接続される。間欠バルブ4は、ダイ2への塗料18の供給と非供給とを切り替える機構である。間欠塗工装置1は、塗料18がダイ2に供給されている間、ダイ2から被塗工体16に塗料18を吐出することができる。間欠バルブ4には、送り管路10およびリターン管路12を介してタンク6が接続される。
【0017】
タンク6は、塗料18を貯留する。送り管路10にはポンプ8が設けられ、ポンプ8の駆動によりタンク6から間欠バルブ4に塗料18が送られる。間欠バルブ4は、タンク6から供給される塗料18をダイ供給管路14を介してダイ2に供給する。あるいは、間欠バルブ4は、タンク6から供給される塗料18をリターン管路12を介してタンク6に戻す。
【0018】
間欠バルブ4がダイ2に塗料18を供給することで、ダイ2から塗料18を吐出して被塗工体16に塗料18の塗布部18aを形成することができる。また、間欠バルブ4がタンク6に塗料18を戻すことで、ダイ2からの塗料18の吐出を停止して被塗工体16に塗料18の未塗布部16aを形成することができる。つまり、間欠バルブ4によって、被塗工体16に対して塗料18を間欠塗工することができる。未塗布部16aは、電極のセンターリードの貼り付け等に用いられる。
【0019】
図2は、間欠バルブ4を模式的に示す断面図である。間欠バルブ4は、バルブ本体22と、ピストン24と、供給弁26と、リターン弁28と、を備える。バルブ本体22は、いわゆるシリンダであり、ピストン24が摺動可能に挿通される第1開口30を上面に有し、送り管路10が接続される第2開口32、リターン管路12が接続される第3開口34、およびダイ供給管路14が接続される第4開口36を側面に有する。なお、本実施の形態の説明では、便宜上、第1開口30を上面に、第2開口32~第4開口36を側面にそれぞれ設けているが、間欠バルブ4の姿勢は特に限定されない。
【0020】
また、バルブ本体22は、流入室38、供給室40およびリターン室42を内部に有する。流入室38は、一方の端部側が2つに分岐した略T字状の部屋であり、上流端38a、第1下流端38bおよび第2下流端38cを有する。上流端38aには、第2開口32を介して送り管路10が接続される。つまり、上流端38aにはタンク6が接続される。塗料18は、上流端38aから流入室38内に流入し、流入室38内を第1下流端38bおよび第2下流端38cに向かって流れる。
【0021】
第1下流端38bには、供給室40が接続される。供給室40には、第4開口36を介してダイ供給管路14が接続される。つまり、供給室40はダイ2に接続される。流入室38内を流れて第1下流端38bに到達した塗料18は、供給室40およびダイ供給管路14を介してダイ2に流れる。したがって、流入室38および供給室40は、タンク6とダイ2とをつなぐ塗料18の流路の一部を構成する。
【0022】
第2下流端38cには、リターン室42が接続される。リターン室42には、第3開口34を介してリターン管路12が接続される。つまり、リターン室42はタンク6に接続される。流入室38内を流れて第2下流端38cに到達した塗料18は、リターン室42およびリターン管路12を介してタンク6に流れる。したがって、流入室38およびリターン室42は、タンク6と間欠バルブ4との間を塗料18が循環する流路の一部を構成する。
【0023】
バルブ本体22の第1開口30と、第1下流端38bおよび供給室40が連結する第1連結部44と、第2下流端38cおよびリターン室42が連結する第2連結部46とは、直線上に並ぶように配置される。第1開口30、第2連結部46および第1連結部44は、この順に配列される。ピストン24は、棒状部材であり、一端側が第1開口30、第2連結部46および第1連結部44に挿通される。
【0024】
ピストン24における第1連結部44の近傍部には、供給弁26が固定される。ピストン24における第2連結部46の近傍部には、リターン弁28が固定される。供給弁26およびリターン弁28は、ピストン24の軸方向X(ピストン24の軸心が延びる方向)における両者の間隔が第1連結部44と第2連結部46との間隔よりも広くなるように配置されている。本実施の形態の供給弁26、リターン弁28、第1連結部44の開口および第2連結部46の開口はそれぞれ、軸方向Xから見て円形である。
【0025】
ピストン24は、バルブ本体22に対して軸方向Xに変位することで、バルブ本体22内で第1位置および第2位置を切り替え可能である。ピストン24は、第2位置にあるときよりもバルブ本体22内に進入したとき第1位置をとり、第1位置にあるときよりもバルブ本体22内から退出したとき第2位置をとる。図2には、第2位置にあるときのピストン24、供給弁26およびリターン弁28が実線で図示されている。また、ピストン24が第1位置にあるときの供給弁26およびリターン弁28が破線で図示されている。
【0026】
ピストン24が第1位置にあるとき、供給弁26と第1連結部44との間には隙間が形成され、流入室38と供給室40とが連通される。一方、ピストン24が第2位置にあるとき、供給弁26は第1連結部44に嵌合し、流入室38と供給室40とが遮断される。したがって、供給弁26は、ピストン24が第1位置にあるとき流入室38から供給室40への塗料18の流通を許容し、ピストン24が第2位置にあるとき流入室38から供給室40への塗料18の流通を遮断する。
【0027】
また、ピストン24が第1位置にあるとき、リターン弁28は第2連結部46に嵌合し、流入室38とリターン室42とが遮断される。一方、ピストン24が第2位置にあるとき、リターン弁28と第2連結部46との間には隙間が形成され、流入室38とリターン室42とが連通される。したがって、リターン弁28は、ピストン24が第1位置にあるとき流入室38からリターン室42への塗料18の流通を遮断し、ピストン24が第2位置にあるとき流入室38からリターン室42への塗料18の流通を許容する。
【0028】
したがって、間欠バルブ4は、ピストン24が第1位置にあるとき、ダイ2へ塗料18を供給する第1状態をとり、ピストン24が第2位置にあるとき、ダイ2への塗料18の供給を停止する第2状態をとる。具体的には、間欠バルブ4が第1状態をとるとき、ピストン24は第1位置にあるため、流入室38と供給室40とが連通され、流入室38とリターン室42とが遮断される。したがって、送り管路10から流入室38に流れ込んだ塗料18は、供給室40およびダイ供給管路14を経由して、ダイ2に供給される。一方、間欠バルブ4が第2状態をとるとき、ピストン24は第2位置にあるため、流入室38と供給室40とが遮断され、流入室38とリターン室42とが連通される。したがって、送り管路10から流入室38に流れ込んだ塗料18は、リターン室42およびリターン管路12を経由して、タンク6に戻される。
【0029】
ピストン24は、バルブ本体22外に突出する端部に連結される駆動部(図示せず)により、第1位置と第2位置とが切り替えられる。駆動部は、サーボモータ等のモータと、モータおよびピストン24を連結するクランク機構等とで構成される。なお駆動部は、エアシリンダ等のモータ以外の公知の駆動源であってもよい。
【0030】
ピストン24は、第1位置から第2位置に変位する際、供給室40から退出する方向に移動する。したがって、ピストン24における供給室40内に位置する部分の体積が減少する。これにより、供給室40内が負圧になり、ダイ2から塗料18の一部が逆流する。また、ピストン24の変位にともなって供給弁26が第1連結部44に近づく方向に変位する際、供給弁26によって塗料18の一部が流入室38側に引き込まれる。これによっても、ダイ2から塗料18の一部が逆流する。この塗料18の逆流により、ダイ2からの塗料18の吐出が停止する際に、塗料18が吐出口84から垂れ落ちることを抑制することができる。つまり、サックバック効果を得ることができる。
【0031】
本実施の形態では、供給弁26の寸法がリターン弁28の寸法よりも大きい。具体的には、供給弁26の弁径D1は、リターン弁28の弁径D2の1.53倍以上である。つまり、リターン弁28の弁径D2に対する供給弁26の弁径D1の割合(D1/D2:以下では適宜、この割合を弁径比と称する)は、1.53以上である。また、弁径比は、好ましくは1.81以上であり、より好ましくは2.00以上である。本実施の形態において、各弁の弁径D1,D2は、各弁においてピストン24の軸方向Xと直交する方向の寸法が最も大きい部分の大きさである。
【0032】
供給弁26およびリターン弁28の寸法を、弁径比が1.53以上となるように設定することで、サックバック効果によりダイ2から引き戻される塗料18の量(以下では適宜、この量をサックバック量と称する)を増やして、未塗布部16aへの塗料18の飛散を抑制することができる。
【0033】
本発明者らは、弁径比が約1.52である参考例の間欠バルブと、弁径比が2.00である実施例の間欠バルブ4とのそれぞれを用いて間欠塗工を実施した。そして、参考例と実施例とで、未塗布部16aに飛散した塗料18の量(面積)を公知の画像解析により測定し、両者を比較した。この結果、参考例における未塗布部16aへの塗料18の飛散量を1としたとき、実施例における飛散量は0.67に減少したことが確認された。
【0034】
また、本発明者らは、参考例の間欠バルブを用い、塗料18の流量(流速)を3.2L/分に設定して間欠塗工を実施した。また、実施例の間欠バルブ4を用い、塗料18の流量を4.0L/分に設定して間欠塗工を実施した。この結果、参考例の間欠バルブを用いた間欠塗工では、未塗布部16aへの塗料18の飛散が観察された。一方、実施例の間欠バルブ4を用いた間欠塗工では、流量を増大させたにもかかわらず、参考例に比べて塗料18の飛散量が減少したことが確認された。また、参考例の間欠バルブにおけるサックバック量は0.17mLであり、実施例の間欠バルブ4におけるサックバック量は、0.22mLであった。
【0035】
一般に、塗料18の流速が上がると、ピストン24の第1位置から第2位置への変位に対する抵抗が増大する。このため、供給弁26が閉じにくくなり、未塗布部16aに塗料18が飛散しやすくなる。このような傾向にもかかわらず、本実施の形態によれば、サックバック量を増やして、未塗布部16aへの塗料18の飛散を抑制できることができる。なお、本発明者らは、少なくとも参考例よりも弁径比を大きくすれば、つまり弁径比を1.53以上とすれば、サックバック量の増大と塗料18の飛散抑制とを実現できると認識している。
【0036】
また、本実施の形態の供給弁26は、第1下流端38b側を向く面に、ピストン24の軸方向Xと直交する方向に延びる第1平面部26aを有する。また、バルブ本体22は、ピストン24が第2位置にあるとき第1平面部26aと面接触する第2平面部22aを有する。軸方向Xから見て、第1平面部26aおよび第2平面部22aは第1下流端38bの外側に位置する。また、第1平面部26aは上方を向き、第2平面部22aは下方を向いて、互いに対向する。
【0037】
第1平面部26aを設けることで、ピストン24が第1位置から第2位置に変位する際、より多くの塗料18を流入室38側に引き込むことができる。これにより、サックバック量をより確実に増やすことができる。また、ピストン24が第2位置にある状態で、第1平面部26aと第2平面部22aとが面接触することで、流入室38から供給室40への塗料18の漏出を抑制することができる。
【0038】
また、ピストン24が第2位置から第1位置に変位する際、第1下流端38bの外周には、第1平面部26aと第2平面部22aとで画成される細幅の(したがって流路抵抗の大きい)流路が形成される。これにより、ピストン24が第2位置から第1位置に変位した瞬間に、流入室38から供給室40に大量の塗料18が流れ込むことを抑制することができる。また、ピストン24が第2位置から第1位置に変位する際、流入室38から供給室40に流出する塗料18の液圧を第1平面部26aが受けることができる。これにより、ピストン24の変位に対して供給弁26をより高精度に追従させることができる。この結果、ダイ2への塗料18の供給と非供給とをより高精度に切り替えることができる。
【0039】
また、供給弁26は、第1下流端38b側を向く面における第1平面部26aよりもピストン24側の領域に、第1下流端38b側に突出する凸部26bを有する。ピストン24が第2位置にある状態で、凸部26bは第1下流端38bに嵌入する。これにより、流入室38から供給室40への塗料18の漏出をより抑制することができる。
【0040】
また、供給弁26は、第1下流端38b側を向く面の外縁部に、軸方向Xと直交する方向で供給弁26の外側に向かうにつれて第2平面部22aから離間するように傾斜するテーパ部26cを有する。本実施の形態の間欠バルブ4では、第2開口32と第4開口36との高さ位置がおおよそ揃えられている。このため、供給室40は、第1連結部44から水平方向に延びた後、ピストン24とずれた位置で上方に延びて第4開口36に連結されている。このため、供給弁26の弁径D1が大きくなると、供給室40が水平方向から鉛直方向に折れる箇所において供給弁26の外縁部が供給室40の中央側に張り出し、塗料18の流れを阻害してしまうおそれがある。これに対し、テーパ部26cを設けることで、供給室40内での塗料18の流れが供給弁26によって阻害されることを軽減することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態に係る間欠バルブ4は、塗料18を貯留するタンク6から被塗工体16に塗料18を塗布するダイ2への塗料18の供給と非供給とを切り替える機構である。間欠バルブ4は、バルブ本体22と、ピストン24と、供給弁26と、リターン弁28と、を備える。バルブ本体22は、上流端38a、第1下流端38bおよび第2下流端38cを有しタンク6が上流端38aに接続される流入室38、第1下流端38bおよびダイ2に接続される供給室40、ならびに第2下流端38cおよびタンク6に接続されるリターン室42を内部に有する。ピストン24は、バルブ本体22内で第1位置および第2位置を切り替え可能である。供給弁26は、ピストン24に固定され、ピストン24が第1位置にあるとき流入室38から供給室40への塗料18の流通を許容し、ピストン24が第2位置にあるとき当該流通を遮断する。リターン弁28は、ピストン24に固定され、ピストン24が第1位置にあるとき流入室38からリターン室42への塗料18の流通を遮断し、ピストン24が第2位置にあるとき当該流通を許容する。そして、供給弁26の弁径D1は、リターン弁28の弁径D2の1.53倍以上に設定される。
【0042】
供給弁26の弁径D1をリターン弁28の弁径D2の1.53倍以上とすることで、ピストン24が第1位置から第2位置に変位する際の塗料18のサックバック量を増やして、未塗布部16aへの塗料18の飛散を抑制することができる。これにより、間欠バルブ4、ひいては間欠塗工装置1の構造の複雑化を招くことなく、塗料18の塗布精度を向上させることができる。また、塗料18の塗布精度を保ちながら、間欠塗工の高速化を図ることができる。よって、本実施の形態によれば、電極板の製造時間短縮と品質維持との両立を図ることができる。
【0043】
また、本実施の形態の供給弁26は、第1下流端38b側を向く面に、ピストン24の軸方向Xと直交する方向に延びる第1平面部26aを有する。また、バルブ本体22は、ピストン24が第2位置にあるとき第1平面部26aと面接触する第2平面部22aを有する。供給弁26が第1平面部26aを有することで、サックバック量をより確実に増大させることができる。よって、塗料18の塗布精度をより高めることができる。また、第1平面部26aと第2平面部22aとにより、流入室38から供給室40への塗料18の漏れを抑制することができる。よって、塗料18の塗布精度をより高めることができる。
【0044】
また、第1平面部26aと第2平面部22aとにより、供給弁26の開弁時に塗料18の流量が瞬間的に増大することを抑制することができる。これにより、間欠バルブ4が第2状態から第1状態に切り替わる際に、ダイ2からの塗料18の吐出量が急激に増大することを抑制することができる。よって、塗布部18aの膜厚が未塗布部16aとの境界領域において増大することを抑制して、塗布部18aの膜厚を均一化することができる。
【0045】
塗布部18aの膜厚が均一化されると、塗料18の塗布工程後のプレス加工において、塗布部18aの全体をより確実にプレスすることができる。これにより、塗布部18a全体の密度を高めることができ、また塗布部18a全体を被塗工体16に密着させることができる。この結果、塗布部18aの一部の電池性能が低下したり、被塗工体16から剥がれたりすることを抑制することができる。また、流入室38から供給室40に流出する塗料18の液圧を第1平面部26aが受けることで、ピストン24の変位に対して供給弁26をより高精度に追従させることができる。これにより、ダイ2への塗料18の供給と非供給とをより高精度に切り替えることができ、塗料18の塗布精度をより高めることができる。
【0046】
間欠塗工装置1は、塗料18を貯留するタンク6と、タンク6と間欠バルブ4とを接続する送り管路10およびリターン管路12と、送り管路10に設けられてタンク6から間欠バルブ4に塗料18を送るポンプ8と、を備える。塗料18は、間欠バルブ4が第2状態にあるとき、リターン管路12を介してタンク6に戻る。これにより、ダイ2からの塗料18の吐出を停止させた状態においても、間欠バルブ4への塗料18の供給を継続することができる。したがって、ポンプ8を常時駆動させておくことができるため、間欠塗工装置1のシステム構成の簡略化を図ることができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0048】
実施の形態では、第2開口32と第4開口36の高さ位置が揃えられ、供給室40は第1連結部44から第4開口36に至る過程で折れ曲がっているが、第4開口36が第2開口32よりも下方に位置して、供給室40が第1連結部44から水平方向に直線状に延びていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 間欠塗工装置
2 ダイ
4 間欠バルブ
6 タンク
16 被塗工体
18 塗料
22 バルブ本体
22a 第2平面部
24 ピストン
26 供給弁
26a 第1平面部
28 リターン弁
38 流入室
38a 上流端
38b 第1下流端
38c 第2下流端
40 供給室
42 リターン室
図1
図2