(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】乾燥機及び乾燥機の運転方法
(51)【国際特許分類】
D06F 34/26 20200101AFI20240426BHJP
D06F 33/65 20200101ALI20240426BHJP
【FI】
D06F34/26
D06F33/65
(21)【出願番号】P 2023005430
(22)【出願日】2023-01-17
【審査請求日】2023-01-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-07
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【氏名又は名称】山田 裕三
(74)【復代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【復代理人】
【識別番号】100230640
【氏名又は名称】高山 望
(72)【発明者】
【氏名】柴山 亜美
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】村上 聡
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0083827(KR,A)
【文献】特開2002-233685(JP,A)
【文献】特開平7-323196(JP,A)
【文献】特開2022-84468(JP,A)
【文献】特開2020-92884(JP,A)
【文献】特開平6-7593(JP,A)
【文献】特開2002-58891(JP,A)
【文献】特開2002-66197(JP,A)
【文献】特開2007-268158(JP,A)
【文献】特開2007-301283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F33/00-34/34
D06F58/30-58/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽と、
前記外槽内に設けられ
たドラムと、
前記外槽における空気を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段と前記外槽とを接続する循環流路と、
前記循環流路に設けられた送風部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ドラムに収容された乾いた状態のコース対象物の撥水性を回復させる撥水回復コースを実行可能であり、
前記制御部は、前記撥水回復コースにおいて、
前記コース対象物が目標温度となるように
、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させ
て、
または、前記コース対象物が目標温度となるように、前記撥水回復コースの実行中の前記ドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、
前記目標温度は、42.5℃より高く60℃以下である、乾燥機。
【請求項2】
前記制御部は、
前記コース対象物が前記目標温度となるように、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段を作動させて、
前記設置環境に関する温度情報に基づいて、前記撥水回復コースに
おいて前記目標温度に対応する前記加熱手段の作動時間を決定し、
前記設置環境に関する前記温度情報が所定値よりも高い場合は、前記撥水回復コースにおける前記加熱手段の作動時間を相対的に短くして、
前記設置環境に関する前記温度情報が前記所定値よりも低い場合は、前記撥水回復コースにおける前記加熱手段の作動時間を相対的に長くする、請求項1に記載の乾燥機。
【請求項3】
前記乾燥機の前記設置環境に関する
前記温度情報を検知する温度検知手段をさらに備える、請求項2に記載の乾燥機。
【請求項4】
前記制御部は、前記撥水回復コースにおいて、前記ドラム内の空気温度が45℃以上60℃以下となるように前記加熱手段及び前記送風部を作動させる、請求項1に記載の乾燥機。
【請求項5】
前記目標温度は、45℃以上60℃以下である、請求項1に記載の乾燥機。
【請求項6】
前記制御部は、前記撥水回復コースにおいて、前記ドラムが停止している時間が、前記ドラムが回転している時間より長くなるように前記ドラムを制御する、請求項2に記載の乾燥機。
【請求項7】
前記制御部は、前記撥水回復コースにおいて、前記ドラムを停止させる、請求項2に記載の乾燥機。
【請求項8】
前記循環流路の流出口は、前記外槽の底部に接続され、
前記外槽は、前記流出口から前記外槽に流入する空気を、前記ドラムの回転軸から離れる方向に偏向させるガイド手段を有する、請求項1に記載の乾燥機。
【請求項9】
前記加熱手段は、ヒートポンプ装置を有する、請求項1から
8のいずれか一項に記載の乾燥機。
【請求項10】
乾いた状態のコース対象物の撥水性を回復させる乾燥機の運転方法であって、
送風部を作動させて、外槽と加熱手段との間で空気を循環させるとともに、前記加熱手段を作動させて、前記コース対象物の目標温度を42.5℃より高く60℃以下として、前記外槽における空気を加熱するステップ、
を含
み、
制御部は、前記加熱するステップにおいて、
前記コース対象物が前記目標温度となるように、前記加熱手段が作動する前に取得した設置環境に関する温度情報に基づいて前記目標温度に対応する時間を決定し、決定した時間前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させて、
または、前記コース対象物が前記目標温度となるように、運転中における前記外槽内に設けられたドラム内の空気温度を取得して、取得した温度が少なくとも前記目標温度に到達するまで前記加熱手段が前記空気を加熱するように前記加熱手段及び前記送風部を作動させる、乾燥機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乾燥機及び乾燥機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、デリケートな衣類を乾燥するために、洗濯乾燥機の機械的出力を弱くした乾燥運転を実行するドラム式洗濯乾燥機が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の機械的出力を弱くした乾燥運転では、ドラム内で広げた衣類が転がらないようにドラムの回転角度を制限し、ドラムを正反転させる。通常の乾燥運転に対してドラムの回転角度を制限することで、デリケートな衣類の傷みや縮みを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の洗濯乾燥機において、衣類の撥水性の回復については開示も示唆もされていない。
【0006】
したがって、本開示の目的は、上記課題を解決することにあって、衣類を含むコース対象物の撥水性を回復できる乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の乾燥機は、外槽と、外槽内に設けられ、コース対象物を収容するドラムと、外槽における空気を加熱する加熱手段と、加熱手段と外槽とを接続する循環流路と、循環流路に設けられた送風部と、制御部と、を備え、制御部は、コース対象物の撥水性を回復させる撥水回復コースを実行可能であり、撥水回復コースにおいて、ドラム内の空気温度が45℃以上となるように加熱手段及び送風部を作動させる。
【0008】
本開示の一態様の乾燥機の運転方法は、コース対象物の撥水性を回復させる乾燥機の運転方法であって、送風部を作動させて、外槽と加熱手段との間で空気を循環させるとともに、加熱手段を作動させて、ドラム内の目標温度を45℃以上として、外槽における空気を加熱するステップ、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、コース対象物の撥水性を回復できる乾燥機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る乾燥機の模式正面図
【
図7A】撥水性の回復と衣類の加熱温度の関係を示す図
【
図7B】目標温度を維持した時間と撥水等級差との関係を示すグラフ
【
図8A】初期温度と目標温度に到達するまでの加熱時間との関係を示すグラフ
【
図8B】初期温度とヒートポンプ装置の作動時間との関係を示す表
【
図12】本開示の実施の形態2に係る乾燥システムのブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1に係る乾燥機1について説明する。
【0012】
図1は、本開示の実施の形態1に係る乾燥機1の模式正面図である。
図2は、乾燥機1の模式断面図である。
【0013】
実施の形態1に係る乾燥機1は、洗濯機能及び乾燥機能を有するドラム式洗濯乾燥機である。
図1に示すように、乾燥機1は、筐体2と、外槽3と、ドラム4と、駆動部5(
図2)と、ヒートポンプ装置6と、循環流路8と、ファン9と、給水弁10と、排水弁11と、温度検知手段15と、制御部16と、操作部17とを備える。
【0014】
筐体2は、乾燥機1の外観を形成する部材である。
図2に示すように、筐体2の前面には、開口20と、開口20を覆う開閉自在な扉21とが設けられている。
【0015】
外槽3は、筐体2の内部に設けられ、洗濯水を溜める機能を有する大略円筒状の部材であって、底部36と筒部37とを有する。外槽3は、水槽またはタブと称されてもよい。外槽3は、筐体2の開口20と面する位置に開口31を設け、開口31の縁は、ベローズ32によって開口20に連結される。また、外槽3の底部の中心を通過する軸を回転軸V0とする。外槽3は、回転軸V0が水平に対して角度を有するように傾斜されて配置される。
【0016】
ドラム4は、外槽3の内側において回転軸V0周りで回転可能に設けられる大略円筒状の部材であって、底部42と筒部44とを有する。ドラム4内に、衣類等、乾燥機1が実行するコースの対象物が収容される。ドラム4は、内槽または収容槽と称されてもよい。ドラム4には多数の貫通孔40が形成され、貫通孔40はドラム4と外槽3とを連通させる。ドラム4は、筐体2の開口20及び外槽3の開口31に面する位置に開口41を設ける。ユーザは、扉21を開けると、開口20、31、41を通じて、ドラム4に衣類等のコース対象物を入れることができる。
【0017】
駆動部5は、ドラム4を回転軸V0周りで回転駆動させる部材である。駆動部5は、例えば、ドラム4を回転させるモータを有する。
【0018】
ヒートポンプ装置6は、外槽3から循環流路8を流れる空気の除湿及び加熱を可能にする装置である。ヒートポンプ装置6は、外槽3の上方に設けられる。ヒートポンプ装置6は、例えば、加熱用熱交換器と、除湿用熱交換器と、圧縮機と、絞り機構と、冷媒配管とを有する。
【0019】
循環流路8は、筐体2の内部に設けられ、外槽3とヒートポンプ装置6とを接続し、外槽3とヒートポンプ装置6の間で空気を循環させる。具体的には、循環流路8の吸込み口81は、外槽3の筒部37に設けられた開口33に接続され、循環流路8の吐出し口82は、外槽3の底部36に設けられた開口34に接続される。
【0020】
ファン9は、循環流路8に空気の流れを発生させるファンである。ファン9は、循環方向Aに循環する空気の流れを発生させる。乾燥機1は、ファン9に代わって、空気の流れを発生させる他の送風部を有してもよい。
【0021】
ヒートポンプ装置6、循環流路8及びファン9は併せて乾燥機構を構成する。乾燥機構は、ドラム4に収容された衣類を乾燥する通常の乾燥コースで使用される。さらに、乾燥機構は、ドラム4に収容された衣類を所定の目標温度thまで加熱する加熱コースの一例である撥水回復コースで使用される。
【0022】
加熱コースは、ドラム4に収容された衣類を所定の目標温度th以上の温度まで加熱するコースである。撥水回復コースは、ドラム4に収容された衣類を所定の目標温度th以上の温度まで加熱し、衣類の撥水性を回復させるコースである。目標温度thを45℃とした撥水回復コースの実行によって、衣類の撥水性を回復させることができる。また、45℃以上の温度まで加熱することによって、45℃を維持した加熱時間にかかわらず、衣類の撥水性を回復させることができる。衣類の撥水性を回復させることとは、衣類の表面張力を、水の表面張力より小さくすること、例えば、衣類に対する水の接触角を90°以上にすること等を意味する。
【0023】
撥水回復コースの対象となる衣類として、例えば、撥水性処理が施されたナイロン製、ポリエステル製のダウンジャケット、マウンテンパーカーやシェルジャケット等のアウトドア系衣類、コート等が挙げられる。また、撥水回復コースの対象となる衣類には、撥水スプレーが塗布された衣類も含まれる。
【0024】
図1に戻ると、給水弁10は、外部のホースを介して水栓に接続される開閉可能な弁であって、開かれると、外槽3に水が供給される。
【0025】
排水弁11は、開閉可能な弁であって、開かれると、外槽3に溜められた水が外槽3の外部に排水される。排水弁11は、外槽3の下方に設けられる。
【0026】
温度検知手段15は、ドラム4内に設けられ、ドラム4内の空気の温度を測定するセンサを有する。具体的には、撥水回復コース実行前におけるドラム4内の空気の初期温度t0を測定する。
【0027】
制御部16は、乾燥機1の制御を司るコントローラである。制御部16は、駆動部5、ヒートポンプ装置6、ファン9、給水弁10、排水弁11、操作部17等の乾燥機1の構成要素を制御する。制御部16は、プログラムを実行することにより所定の機能を実現するCPU、MPU、FPGA、DSP、ASICのような汎用プロセッサを含む。制御部16は、メモリ16aに格納された制御プログラムを呼び出して実行することにより、乾燥機1における各種の制御を実現することができる。制御部16は、ハードウェアとソフトウェアの協働により所定の機能を実現するものに限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。
【0028】
メモリ16aは、種々の情報や制御プログラムを記録する記録媒体であり、制御部16の作業領域として機能するメモリであってもよい。メモリ16aは、例えば、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Device)、ハードディスク、RAM、その他の記憶デバイス又はそれらを適宜組み合わせて実現される。
【0029】
メモリ16aは、撥水回復コースの運転時間に関する情報を予め記憶している。具体的には、メモリ16aは、撥水回復コース実行前の初期温度t0に対応して、撥水回復コースにおけるヒートポンプ装置6の作動時間を予め記憶している。作動時間については、後述する。
【0030】
操作部17は、ユーザが操作する乾燥機1の部分である。ユーザは、操作部17を介して、乾燥機1に実行させるコース及びコースの条件を入力する。制御部16は、操作部17に対する入力に応じて、乾燥機1を制御する。操作部17は、液晶タッチパネルによって構成されてもよく、1つまたは複数のボタンによって構成されてもよい。
【0031】
ここで、
図3から
図4Bを参照しながら、循環流路8とドラム4との接続について、より詳細に説明する。
図3は、外槽3を省略して、背面側から見たドラム4と循環流路8の一部とを示す斜視図である。
図4Aは、外槽3とドラム4と循環流路8の一部とを示す断面図である。
図4Bは、循環流路8からドラム4内に流入する空気の流れを示す図であって、外槽3とドラム4と循環流路8の一部との模式図である。
【0032】
図3及び
図4Aに示すように、ドラム4の底部42は、多数の貫通孔40が設けられた複数のメッシュ部54を有する。メッシュ部54は、循環流路8からドラム4に流入する空気の方向を偏向する部材である。
図4Aに示すように、メッシュ部54を通過する際に、空気は、流れ方向A0で示すように外側K2に(回転軸V0から筒部44に向かって)偏向される。
【0033】
図4Bに示すように、メッシュ部54は、開口34と対向する位置に、外側K2に向かって順に、回転軸V0と直交する幅方向Kに沿ったフラット部54Bと、前側M1に向かって傾斜される傾斜部54Cとを有する。
【0034】
開口34を通過する空気は、フラット部54Bと傾斜部54Cとの貫通孔40を通過してドラム4に流入する。貫通孔40を通過することで空気の速度は増加し、その後、貫通孔40からさらに離れると、流れた距離に応じて漸減する。ここで、傾斜部54Cの下流で、幅方向Kに延びるVI-VI線に沿った空気に着目する。傾斜部54Cの傾斜によって、それぞれの貫通孔40からVI-VI線までの距離が、外側K2に向かって小さくなり、貫通孔40通過後に空気が流れた距離が小さくなる。そのため、VI-VI線上では、外側K2に向かって、空気は貫通孔40通過後の高い速度を維持しており、言い換えれば、外側K2に向かって空気の速度が大きくなる。そのため、外側K2に向かって負圧が発生し、空気は負圧によって外側K2に引っ張られ、ドラム4の筒部44に向かって偏向される。
【0035】
筒部44に向かって偏向される空気によって、空気が筒部44に沿って配置された衣類に当たりやすくなる。また、偏向される空気が加熱された空気であると、衣類を加温しやすくなる。
【0036】
続いて、
図6Aから
図8Bを参照しながら、加熱による撥水性の回復について説明する。
図6Aは、撥水性を有する衣類の表面を示す模式図である。
図6Bは、撥水性が低下した衣類の表面を示す模式図である。
図7Aは、撥水性の回復と衣類の加熱温度tcの関係を示す。
図7Bは、目標温度thを維持した時間と撥水等級差との関係を示すグラフである。
図8Aは、ドラム4内の初期温度t0と、目標温度thを達成するまでにかかるヒートポンプ装置6の加熱時間Qとの関係を示すグラフである。
図8Bは、ドラム4内の空気の初期温度t0と撥水回復コースにおけるヒートポンプ装置6の作動時間P1との関係を示す表である。
【0037】
図6Aに示すように、撥水性を有する衣類19の表面は、撥水基B1で覆われている。撥水基B1が整列して水滴W1を弾くため、水滴W1が衣類19に浸透しにくい。したがって、衣類19は撥水性を有している。撥水基B1の例として、例えば、フッ素系、及び炭化水素系が挙げられる。フッ素系の撥水基は、例えば、パーフルオロアルキル基を有する化合物を原料とする。炭化水素系の撥水基は、例えば、ステアリルアミン、ヘキサデシルアミン、テトラデシルアミン、ドデシルアミンを有する化合物を原料とする。一方で、衣類19の表面には、上述の例示以外の撥水基が設けられてもよい。
【0038】
図6Bに示すように、衣類19の使用によって、撥水基B1が整列した状態から乱れる。撥水基B1が倒れると、水滴W1を弾きにくくなり、水滴W1が衣類19に浸透しやすくなる。したがって、衣類19の撥水性が低下する。
【0039】
衣類19を加熱することで、
図6Bに示す状態から
図6Aに示す状態に戻し、衣類19の撥水性を回復させることができる。撥水性の回復は、具体的には、加熱前の撥水等級(JIS L 1092参照)と加熱後の撥水等級との差が1等級以上あることを意味する。撥水性の回復は、例えば、衣類が撥水性を有しない状態から撥水性を有する状態に戻すことや、衣類の撥水性が低下した状態から衣類の撥水性を向上させることを含む。
【0040】
そこで、本発明者らは、衣類の撥水性の回復を実現するために加熱条件を検討した。まず、加熱温度tcの影響を検討するため、本発明者らは、異なる温度まで衣類を加熱する加熱試験を実行した。加熱温度tcとは本条件で作動させた際、コース運転中で最高となる衣類温度である。具体的には、乾燥機1を用いて、環境温度を5℃~10℃として、ドラム4を停止または正転させて、ヒートポンプ装置6の出力を通常の乾燥運転と同等の条件で作動させて、ファン9の回転数を通常の乾燥運転より低くして、2~3時間の運転を実行した。加熱前の撥水等級と加熱後の撥水等級との差である撥水等級差(0,1,2,3)を測定した。その結果を
図7Aに示す。
【0041】
本発明者らは、
図7Aに示すように、衣類の撥水性の回復が、加熱温度tcに依存することを発見した。また、撥水等級が変化しなかった最大の加熱温度tcは42.5℃であった。言い換えれば、衣類を42.5℃より高い温度に加熱すれば、撥水等級の差が1等級以上になった。したがって、誤差を考慮して、衣類を45℃以上に加熱すれば、撥水等級を増加させて、衣類の撥水性を回復することができる。そのため、撥水回復コースにおける衣類の目標温度thを45℃とする。
【0042】
また、本発明者らは、加熱時間の影響も検討し、加熱温度tcの影響と比較した。そのため、本発明者らは、衣類を40℃、45℃のそれぞれの環境に収容し、それぞれの温度を維持して加熱した。
図7Bに示すように、衣類を40℃で長時間加熱するよりも、衣類を45℃で加熱する方が、撥水等級差が大きくなった。したがって、衣類の撥水性の回復において、加熱温度tcが、加熱時間より大きな影響を与える。一方で、45℃以上の温度を一定時間にわたって維持することで、さらに撥水性を向上させることができる。
【0043】
乾燥機1による撥水回復コースにおいて、加熱温度tcが45℃以上に到達すると、45℃を維持した時間にかかわらず撥水性を向上させることができる。
【0044】
目標温度thは、45℃以上であってもよい。この場合、衣類等の撥水性能をより向上させることができる。一方で、目標温度thを45℃以上60℃以下とすることで、加熱によって衣類がダメージを受けることを抑制できる。例えば、目標温度thを60℃以下とすることで、衣類のジッパー等のプラスチック製の部品が軟化による変形などのダメージを受けること、熱と機械力に弱い化学繊維が収縮すること、及び熱圧着されたプリントや生地がはがれること等を抑制できる。
【0045】
本実施の形態では、加熱装置としてヒートポンプ装置6を採用しているので、ヒートポンプ装置の特性上、目標温度thが60℃以下となる。なお、60℃以上の加熱が行える装置の場合は、60℃以下になるように加熱装置を温度制御するとよい。
【0046】
乾燥機1では、ヒートポンプ装置6を作動させることによって、ドラム4に収容された衣類を目標温度thまで加熱する。
【0047】
一方で、
図8Aに示すように、加熱前における乾燥機1の設置環境に関する温度情報によって、目標温度th以上の温度に加熱するまでにかかるヒートポンプ装置6の加熱時間Qが異なる。具体的には、加熱前に温度検知手段15が測定するドラム4内の空気の初期温度t0が低いと、目標温度thを達成するまでにかかるヒートポンプ装置6の加熱時間Qが長くなる。
【0048】
目標温度thを達成するように、制御部16は、撥水回復コースにおけるヒートポンプ装置6の作動時間P1を制御する。
図8Bに示すように、制御部16のメモリ16aは、初期温度t0と対応して作動時間P1を予め記憶しており、制御部16は、初期温度t0に基づいて作動時間P1を決定する。そのため、初期温度t0にかかわらず撥水回復コースによって衣類が目標温度thを達成しやすくなり、衣類の撥水性が回復する。
【0049】
[動作]
以上のような構成において、乾燥機1の撥水回復コースの一例について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、撥水回復コースのフローチャートである。
【0050】
撥水回復コースでは、洗い工程やすすぎ工程を含む洗濯コースを実行せず、乾いた衣類を加熱する。具体的には、撥水回復コースでは衣類の目標温度thを45℃以上60℃以下として衣類を加熱する。
【0051】
衣類が乾いていると、濡れている衣類と比較して、含有水分量が少ないため、衣類の熱容量が小さく、目標温度thまでに加熱するためのエネルギーが少なくなる。そのため、衣類が乾いていることによって、目標温度thに到達しやすくなる。
【0052】
ユーザが操作部17を通じて「撥水回復コース」を選択すると、撥水回復コースは開始される。ユーザは、コースの選択とともに、ドラム4に衣類を投入し、衣類に関する情報を入力してもよい。
【0053】
図9に示すように、まず、制御部16は、ドラム4内の初期温度t0を取得する(S10)。具体的には、制御部16は、温度検知手段15が測定したドラム4内の初期温度t0を取得する。
【0054】
続いて、制御部16は、ドラム4に収容された衣類に関する情報が取得する(S11)。制御部16は、ドラム4に収容された衣類に関する情報として、ユーザが操作部17に入力した希望する衣類の仕上がり情報を取得する。例えば、衣類の撥水性を大きく向上させたいとき、ユーザは、衣類の仕上がり情報として、操作部17上で「強」を選択し、衣類の撥水性を少し向上させたいとき、ユーザは、操作部17上で「弱」を選択する。
【0055】
続いて、制御部16は、初期温度t0及びステップS11で衣類の仕上がり情報に基づいて、撥水回復コースにおけるヒートポンプ装置6の作動時間P1を決定する(S12)。具体的には、制御部16は、メモリ16aを参照して、初期温度t0に対応する値を作動時間P1と決定する。
【0056】
ステップS11で衣類の仕上がり情報を取得した場合、衣類の仕上がり情報が「強」のときに、制御部16は作動時間P1を長くしてもよい。衣類の仕上がり情報が「弱」のときに、制御部16は作動時間P1を短くしてもよい。
【0057】
続いて、制御部16は、ファン9をONにして回転させて(S13)、ヒートポンプ装置6をONにする(S14)。このような動作によって、循環流路8及びドラム4において、加熱した空気が循環する。
【0058】
ここで、撥水回復コースにおけるファン9の回転数は、衣類を乾燥させるための通常の乾燥コースにおけるファン9の回転数より低い。通常の乾燥コースにおいてファン9の回転数が変化する場合、撥水回復コースにおけるファン9の回転数は、通常の乾燥コースにおけるファン9の最低回転数より低い。一方で、ファン9の回転数は、通常の乾燥コースにおけるファン9の回転数と同じであってもよい。
【0059】
また、ヒートポンプ装置6による加熱では、空気の温度を、例えば、60℃以下に維持しやすい。ヒートポンプ装置6は、圧縮機から出た冷媒が凝縮器で凝縮される際に放出する熱を利用して、空気を加熱している。そのため、空気が高温になり過ぎることを抑制し、過剰に加熱された空気による衣類へのダメージを抑制できる。
【0060】
実施の形態1では、撥水回復コースにおいて、制御部16は駆動部5をOFFにして、ドラム4は停止している。一方で、制御部16は、駆動部5をONにして、ドラム4を回転させてもよい。その場合、撥水回復コースにおけるドラム4の停止時間がドラム4の回転時間より長くなるように、駆動部5をONにする。例えば、ドラム4は、一定の時間間隔を空けて断続的に回転するゆり運動を実行してもよい。このような動作によって、ドラム4の回転によって槽内の空気や設置した衣類がより均一に加熱される。ドラム4の回転によって槽内の空気がよどまず均一になる。また、ドラム4の回転によって衣類の向きが変わるため、衣類に空気が均一に接触し、衣類も均一に温まっていく。
【0061】
続いて、制御部16は、ヒートポンプ装置6をONにしてから作動時間P1が経過したか否かを判断する(S15)。
【0062】
ヒートポンプ装置6をONにしてから作動時間P1が経過していなければ(S15でNo)、ステップS15の前に戻る。
【0063】
ヒートポンプ装置6をONにしてから作動時間P1が経過していれば(S15でYes)、ヒートポンプ装置6をOFFにする(S16)。
【0064】
続いて、制御部16は、待機時間P2の経過を待つ(S17)。待機時間P2の間、ファン9は作動している。ヒートポンプ装置6をOFF(S16)にしてから、待機時間P2の間、ファン9を作動させることで、加熱した衣類を冷却できる。そのため、ユーザが撥水回復コースの終了後すぐに衣類を取り出すことができる。
【0065】
続いて、制御部16は、所定時間が経過した後にファン9をOFFにして(S18)、空気の循環を停止させて、撥水回復コースを終了する。
【0066】
上記の説明をまとめて、本開示の特徴を述べる。
【0067】
実施の形態1に係る乾燥機1においては、制御部16は、衣類の温度が目標温度thに到達するように、初期温度t0に基づいてヒートポンプ装置6の作動時間P1を制御する。そのため、衣類は45℃以上に加熱され、衣類の撥水性が向上する。
【0068】
効率的に衣類を加熱するように、撥水回復コースにおいて、通常の乾燥コースよりファン9の回転数を小さくし、ドラム4を停止させる。この点では、ドラム4から積極的に湿った空気を追い出して、乾燥した空気を導入する通常の乾燥コースとは異なる。
【0069】
[効果]
実施の形態1に係る乾燥機1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0070】
上述したように、実施の形態1の乾燥機1は、外槽3と、外槽3内に設けられ、コース対象物を収容するドラム4と、を備える。乾燥機1は、外槽3における空気を加熱するヒートポンプ装置6(加熱手段)と、ヒートポンプ装置6と外槽3とを接続する循環流路8と、循環流路8に設けられたファン9(送風部)と、制御部16と、をさらに備える。制御部16は、コース対象物の撥水性を回復させる撥水回復コースを実行可能であり、撥水回復コースにおいて、ドラム4内の空気温度が45℃以上となるようにヒートポンプ装置6及びファン9を作動させる。
【0071】
このような構造によって、乾燥機1を用いて、目標温度thまで加熱することで、撥水基を整列した状態に戻すことができ、衣類の撥水性が回復させることができる。
【0072】
実施の形態1の乾燥機1において、制御部16は、設置環境に関する温度情報に基づいて、撥水回復コースにおけるヒートポンプ装置6の作動時間P1を決定する。
【0073】
このような構造によって、設置環境に関する温度情報にかかわらず、より確実に目標温度thまで加熱しやすくなる。
【0074】
実施の形態1の乾燥機1において、乾燥機1の設置環境に関する温度情報としてドラム内の初期温度t0を検知する温度検知手段15をさらに備え、制御部16は、初期温度t0に基づいて、撥水回復コースにおけるヒートポンプ装置6の作動時間を決定する。
【0075】
このような構造によって、ドラム内の初期温度t0にかかわらず、より確実に目標温度thまで加熱しやすくなる。
【0076】
実施の形態1の乾燥機1において、制御部16は、撥水回復コースにおいて、ドラム4が停止している時間が、ドラム4が回転している時間より長くなるようにドラム4を制御する。
【0077】
このような構造によって、ドラム4内の空気や衣類の撹拌を抑制できる。そのため、加熱した空気が、冷たい空気と混ざりにくくなり、ドラム4内の温度を高く維持しやすくなる。
【0078】
実施の形態1の乾燥機1において、制御部16は、撥水回復コースにおいて、ドラム4を停止させる。
【0079】
このような構造によって、ドラム4内の空気や衣類の撹拌をさらに抑制できる。
【0080】
実施の形態1の乾燥機1は、ファン9を有する。制御部16は、ヒートポンプ装置6及びファン9を作動させる通常の乾燥コースを実行し、撥水回復コースにおけるファン9の回転数は、通常の乾燥コースにおけるファン9の回転数以下である。
【0081】
このような構造によって、ドラム4内の空気や衣類の撹拌をさらに抑制できる。
【0082】
実施の形態1の乾燥機1において、ファン9は、通常の乾燥コースにおいて、異なる回転数で回転し、撥水回復コースにおけるファン9の回転数は、通常の乾燥コースにおけるファン9の最低回転数以下である。
【0083】
このような構造によって、ドラム4内の空気や衣類の撹拌をさらに抑制できる。
【0084】
実施の形態1の乾燥機1において、循環流路の吐出し口82(流出口)は、外槽3の底部に接続され、外槽3は、吐出し口82から外槽3に流入する空気を、ドラムの回転軸V0から離れる方向に偏向させるメッシュ部54(ガイド手段)を有する。
【0085】
このような構造によって、ドラム4内に流入する空気をドラム4の周面に向かって偏向することができる。そのため、ドラム4の周面に沿って配置された衣類に対して、より多くの空気を、より均一に衣類に当てることができる。
【0086】
実施の形態1の乾燥機1は、ヒートポンプ装置6を有する。
【0087】
このような構造によって、他の加熱手段を使用した場合と比較して、過剰な加熱による衣類へのダメージを抑制できる。
【0088】
実施の形態1の乾燥機1の運転方法は、コース対象物の撥水性を回復させる乾燥機1の運転方法である。運転方法は、ファン9を作動させて、外槽3とヒートポンプ装置6との間で空気を循環させるとともに、ヒートポンプ装置6を作動させて、ドラム4内の目標温度thを45℃以上として、外槽3における空気を加熱するステップ、を含む。
【0089】
このような構造によって、乾燥機1を用いて、目標温度thまで加熱することで、撥水基を整列した状態に戻すことができ、衣類の撥水性が回復させることができる。
【0090】
なお、本開示は実施の形態1に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
【0091】
なお、実施の形態1では、乾燥機1が洗濯機能を有するものであると説明したが、乾燥機1は洗濯機能を有しなくてもよい。また、乾燥機1が回転槽として機能するドラム4を有する例について説明したが、乾燥機1は回転槽を有しなくてもよい。例えば、乾燥機1の代わりに、衣類を内部に内包する衣類処理装置が提供されてもよい。
【0092】
なお、実施の形態1では、加熱コースの一例として、撥水回復コースについて説明したが、これに限定されない。乾燥機1は、加熱コースとして、コース対象物の撥水性を向上させる撥水回復コースを実行してもよい。また、実施の形態1において、ユーザが「撥水回復コース」を選択する例について説明したが、名称は「撥水回復コース」に限定せず、衣類の撥水性を回復させる他のコースを含むので、例えば「撥水向上コース」等であってもよい。
【0093】
なお、実施の形態1では、撥水回復コースの対象が衣類である場合について説明したが、他の撥水性を有する生地をコース対象物としてもよい。例えば、靴、帽子、またはテントや傘の布部分に対して撥水回復コースを実行してもよい。
【0094】
なお、実施の形態1において、乾燥機1がヒートポンプ装置6を有する例について説明したが、これに限定されない。例えば、乾燥機1は、ヒートポンプ装置6の代わりにPTCヒータ等のヒータを有してもよい。乾燥機1が2本のヒータを含むPTCヒータである場合、初期温度t0に応じて、PTCヒータによる加熱量を変更してもよい。例えば、初期温度t0が低い場合はヒータを2本駆動させ、初期温度t0が高い場合にはヒータを1本駆動させるようにしてもよい。
【0095】
なお、実施の形態1において、目標温度thが45℃以上である例について説明したが、これに限定されない。例えば、目標温度thは40℃以上45℃未満であってもよい。この場合、目標温度thを30分維持するように撥水回復コースを実行する。そのため、目標温度thが45℃以上である場合、短時間で衣類の撥水性が回復するため、より確実に衣類の撥水性を回復させることができる。
【0096】
なお、乾燥機1が温度検知手段15を有し、設置環境に関する温度情報が、温度検知手段15によって測定されたドラム4内の初期温度t0である例について説明したが、これに限定されない。乾燥機1は、温度検知手段15の代わりに、乾燥機1の外側に設置され、乾燥機1の設置環境に関する温度情報として周囲温度情報を検知する他の温度検知手段を備えてもよい。周囲温度情報は、乾燥機1の周囲の空気の温度であってもよく、乾燥機1が設置された部屋の室温を含んでもよい。制御部16は、周囲温度情報に基づいて、撥水回復コースにおけるヒートポンプ装置6の作動時間P1を決定する。
【0097】
また、乾燥機1の制御部16は、空気調和機等の外部の装置と通信可能な通信部を有してもよい。この場合、通信部は、外部の機器で測定または取得された、乾燥機1の設置環境に関する温度情報を受信し、制御部16は、通信部が受信した温度情報に基づいてヒートポンプ装置6の作動時間P1を決定する。
【0098】
なお、実施の形態1において、乾燥機1が、ガイド手段としてメッシュ部54を有する例について説明したが、これに限定されない。乾燥機1は、メッシュ部54の代わりに、通過する空気の圧力や速度を変更することで、空気の流れを偏向する他のガイド手段を有してもよい。
【0099】
なお、実施の形態1において、撥水回復コースを洗濯コースから独立して実行する例について説明したが、これに限定されない。例えば、洗濯コース、即ち、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程の後に、撥水回復コースが実行されてもよい。ただし、実施の形態1のように、撥水回復コースを洗濯コースから独立して実行することで、洗濯できない撥水性を有する対象物であっても撥水回復コースの対象とすることができる。
【0100】
さらに、撥水回復コースは、機能性微粒子による消臭衛生コースの一工程として実行されてもよい。機能性微粒子は、消臭や除菌の効果を発揮する微粒子である。この場合、機能性微粒子を衣類に付与する工程の後に撥水回復コースが実行されてもよい。撥水回復コースは、高温の水蒸気を発生させて対象物を水蒸気で処理するスチームコースの一工程として実行されてもよい。この場合、高温の水蒸気を発生させるスチーム工程の後に撥水回復コースが実行されてもよい。
【0101】
なお、実施の形態1において、ステップS11でドラム4に収容された衣類に関する情報を取得する例について説明したが、これに限定されない。ステップS11を省略して、初期温度t0のみに基づいて作動時間P1を決定してもよい。
【0102】
なお、実施の形態1において、ドラム4を停止させて撥水回復コースを実行する例について説明したが、これに限定されない。例えば、後述の変形例1に示すように、ドラム4に収容された衣類等の重量を検知するために、ドラム4を回転させるように駆動部5を作動させてもよい。
【0103】
なお、実施の形態1において、ヒートポンプ装置6の加熱(S14)の前に、ユーザがドラム4に衣類を投入する例について説明したが、これに限定されない。例えば、後述の変形例2に示すように、ドラム4内が空である状態でヒートポンプ装置6の加熱(S14)を実行してもよい。
【0104】
(変形例1)
図10は、変形例1に係る乾燥機101の模式断面図である。
図10に示すように、乾燥機101は、重量検知手段14をさらに備える点において、実施の形態1に係る乾燥機1と異なる。
【0105】
重量検知手段14は、ドラム4内に収容された衣類の重量を測定するセンサを有する。具体的には、駆動部5が回転する際に駆動部5に負荷されるトルクに基づいて、衣類の重量を算出する。
【0106】
変形例1における乾燥機101の動作は、特段記載のない限り、実施の形態1における乾燥機1の動作と共通である。以下では、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0107】
ステップS11において、制御部16は、重量検知手段14に、ドラム4に収容された衣類の重量を測定させて、衣類の重量に応じた重量レベル(「軽い」、「標準」または「重い」)を取得する。重量レベルの数は3つ以上設定されてもよい。重量レベルの数は、2つまたは4つ以上設定されてもよい。
【0108】
ステップS12において、制御部16は、初期温度t0及び衣類の重量レベルに基づいて、撥水回復コースにおけるヒートポンプ装置6の作動時間P1を決定する。具体的には、重量レベルが「標準」である場合、制御部16は、メモリ16aを参照して、初期温度t0に対応する値を作動時間P1と決定する。重量レベルが「重い」である場合、制御部16は、「標準」である場合に対して作動時間P1を長くし、例えば、メモリ16aに記憶されている最大値を作動時間P1と決定する。重量レベルが「軽い」である場合、制御部16は、「標準」である場合に対して作動時間P1を短くし、例えば、メモリ16aに記憶されている最小値を作動時間P1と決定する。
【0109】
乾燥機101において、ドラムに収容された衣類の重量を検知する重量検知手段14をさらに備え、制御部16は、設置環境に関する温度情報と、重量検知手段14が検知した衣類の重量とに基づいて、撥水回復コースにおけるヒートポンプ装置6の作動時間P1を決定する。
【0110】
このような構造によって、重い衣類であっても、目標温度thを達成するまで加熱することができる。
【0111】
乾燥機101において、撥水回復コースとして撥水性回復コースが選択可能である操作部17をさらに備える。
【0112】
このような構造によって、ユーザが操作部17を操作することで、撥水性回復コースを選択することができる。
【0113】
乾燥機101において、操作部17は、ドラム4に収容された衣類に関する情報が入力可能である。制御部16は、設置環境に関する温度情報と、操作部17に対する入力とに基づいて、撥水回復コースにおけるヒートポンプ装置6の作動時間P1を決定する。
【0114】
このような構造によって、ユーザが衣類に関する情報を入力することで、撥水回復コースを調整することができる。例えば、ユーザが希望する衣類の仕上がり情報を入力することで、衣類の撥水性の回復の程度が調整可能である。
【0115】
なお、ステップS11では、制御部16は、衣類の重量の代わりに、衣類の嵩や体積を取得してもよい。衣類の嵩や体積は、乾燥機1に設けられたセンサによって測定され、またはユーザによって操作部17に入力されてもよい。
【0116】
(変形例2)
図11は、変形例2に係る乾燥機111の模式断面図である。
図11に示すように、乾燥機111は、温度検知手段15の代わりに、温度検知手段18を備える点において、実施の形態1に係る乾燥機1と異なる。
【0117】
温度検知手段18は、撥水回復コース実行前におけるドラム4内の空気の初期温度t0に加えて、撥水回復コース実行中におけるドラム4内の空気の温度を測定する。
【0118】
変形例2における乾燥機111の動作は、特段記載のない限り、実施の形態1における乾燥機1の動作と共通である。以下では、実施の形態1と異なる点について説明する。
【0119】
ドラム4が空の状態で、即ち、衣類を収容していない状態で、ステップS10は実行される。また、扉21の開放を抑制するようにロックがかかる。ステップS11、S12は省略される。
【0120】
ステップS13、S14を実行した後、ステップS15の代わりに、制御部16は、温度検知手段18が測定したドラム4内の温度を取得し、取得した温度が目標温度th以上か否かを判定する。温度検知手段18は、ドラム4内の温度を一定間隔で、または連続的に測定してもよい。取得した温度が目標温度th以上である場合、制御部16は、扉21のロックを解除し、扉21を開放可能とする。取得した温度が目標温度th未満である場合、制御部16は、扉21のロックを維持し、加熱を継続する。
【0121】
扉21が開放可能になると、ユーザはドラム4に衣類を投入し、扉21を閉鎖する。制御部16は、扉21の閉鎖後、所定時間が経過すると、ステップS16~S18を実行する。所定時間は、例えば、1分である。その後、ユーザはドラム4から衣類を取り出せる。
【0122】
このような構成によって、衣類がドラム4内で拘束される時間を短縮できる。例えば、ドラム4内の空気を加熱する工程を予約運転し、衣類がドラム4内で拘束される時間を短縮できる。また、衣類を加熱している時間が短縮されるため、衣類へのダメージを低減できる。
【0123】
(実施の形態2)
本開示の実施の形態2に係る乾燥システム201について説明する。なお、実施の形態2では、主に、実施の形態1と異なる点について説明し、実施の形態1と重複する説明を省略する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。
【0124】
図12は、本開示の実施の形態2に係る乾燥システム201のブロック図である。
【0125】
図12に示すように、乾燥システム201は、乾燥機202と、端末装置222と、処理装置212とを備える。
【0126】
乾燥機202は、第1通信部204をさらに有する。実施の形態2において乾燥機202は、特に説明しない限り、実施の形態1の乾燥機1と同じである。
【0127】
第1通信部204は、端末装置222によって送信された乾燥機202の運転条件を、ネットワークを介して受信する。第1通信部204は、撥水回復コースにおける乾燥機202の運転条件を、ネットワークを介して受信する。例えば、第1通信部204は、所定の通信規格(例えば、LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標))に準拠して、端末装置222からの受信を行う回路を含む。
【0128】
端末装置222は、乾燥機202と処理装置212と通信可能な装置である。端末装置222は、例えば、スマートフォンである。また、端末装置222は、実施の形態1の操作部17として機能してもよい。
【0129】
処理装置212は、処理部213と第2通信部214とを有する。処理装置212は、例えば、サーバ又はクラウドである。
【0130】
処理部213は、乾燥機202の運転条件を記憶している。処理部213は、例えば、撥水回復コースの運転条件を記憶している。
【0131】
第2通信部214は、処理部213で記憶された乾燥機202の運転条件を、ネットワークを介して送信する。具体的には、第2通信部214は、端末装置222の操作に応じて、乾燥機202の運転条件を、ネットワークを介して端末装置222へ送信する。第2通信部214は、所定の通信規格(例えば、LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標))に準拠して、端末装置222への送信を行う回路を含む。
【0132】
ユーザは、端末装置222上で、必要なコースを選択する。ユーザの選択に応じて、処理装置212が、選択されたコースの運転条件を、第2通信部214によって、端末装置222に送信する。ユーザが端末装置222を操作することで、端末装置222は、選択されたコースの運転条件を、第1通信部204に送信する。乾燥機202は、例えば、第1通信部204が受信した運転条件に基づいた撥水回復コースを実行する。具体的には、乾燥機202は、ファン9及びヒートポンプ装置6を作動させて、ドラム4内の目標温度thを45℃以上として、外槽3における空気を加熱するステップを含む運転方法を実行する。
【0133】
第1の態様における乾燥機は、外槽と、外槽内に設けられ、コース対象物を収容するドラムと、外槽における空気を加熱する加熱手段と、加熱手段と外槽とを接続する循環流路と、循環流路に設けられた送風部と、制御部と、を備え、制御部は、コース対象物の撥水性を回復させる撥水回復コースを実行可能であり、撥水回復コースにおいて、ドラム内の空気温度が45℃以上となるように加熱手段及び送風部を作動させる。
【0134】
第2の態様における乾燥機として、第1の態様における乾燥機において、制御部は、設置環境に関する温度情報に基づいて、撥水回復コースにおける加熱手段の作動時間を決定する。
【0135】
第3の態様における乾燥機として、第2の態様における乾燥機において、乾燥機の設置環境に関する温度情報としてドラム内の初期温度を検知する温度検知手段をさらに備え、制御部は、初期温度に基づいて、撥水回復コースにおける加熱手段の作動時間を決定する。
【0136】
第4の態様における乾燥機として、第2または第3の態様における乾燥機において、乾燥機の設置環境に関する温度情報として周囲温度情報を検知する温度検知手段をさらに備え、制御部は、周囲温度情報に基づいて、撥水回復コースにおける加熱手段の作動時間を決定する。
【0137】
第5の態様における乾燥機として、第2から第4の態様のいずれかにおける乾燥機において、制御部は、外部の装置と通信可能な通信部を有し、通信部が受信した乾燥機の設置環境に関する温度情報に基づいて、撥水回復コースにおける加熱手段の作動時間を決定する。
【0138】
第6の態様における乾燥機として、第2から第5の態様のいずれかにおける乾燥機において、制御部は、撥水回復コースにおいて、ドラムが停止している時間が、ドラムが回転している時間より長くなるようにドラムを制御する。
【0139】
第7の態様における乾燥機として、第2から第6の態様のいずれかにおける乾燥機において、制御部は、撥水回復コースにおいて、ドラムを停止させる。
【0140】
第8の態様における乾燥機として、第1から第7の態様のいずれかにおける乾燥機において、送風部はファンを有し、制御部は、加熱手段及びファンを作動させる乾燥コースを実行し、撥水回復コースにおけるファンの回転数は、乾燥コースにおけるファンの回転数以下である。
【0141】
第9の態様における乾燥機として、第8の態様における乾燥機において、ファンは、乾燥コースにおいて、異なる回転数で回転し、撥水回復コースにおけるファンの回転数は、乾燥コースにおけるファンの最低回転数以下である。
【0142】
第10の態様における乾燥機として、第1から第9の態様のいずれかにおける乾燥機において、循環流路の流出口は、外槽の底部に接続され、外槽は、流出口から外槽に流入する空気を、ドラムの回転軸から離れる方向に偏向させるガイド手段を有する。
【0143】
第11の態様における乾燥機として、第1から第10の態様のいずれかにおける乾燥機において、加熱手段は、ヒートポンプ装置を有する。
【0144】
第12の態様における乾燥機の運転方法は、コース対象物の撥水性を回復させる乾燥機の運転方法であって、送風部を作動させて、外槽と加熱手段との間で空気を循環させるとともに、加熱手段を作動させて、ドラム内の目標温度を45℃以上として、外槽における空気を加熱するステップ、を含む。
【0145】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本開示の乾燥機は、衣類等の撥水性を回復させることができるため、家庭用の乾燥機、業務用の乾燥機、あるいは任意の種類の衣類処理装置(例えば家庭用のドラム式洗濯乾燥機、又は縦型洗濯機)として有用である。
【符号の説明】
【0147】
1 乾燥機
2 筐体
3 外槽
4 ドラム
5 駆動部
6 ヒートポンプ装置
8 循環流路
9 ファン
10 給水弁
11 排水弁
15 温度検知手段
16 制御部
17 操作部
th 目標温度
P1 作動時間
【要約】
【課題】衣類の撥水性を回復できる乾燥機を提供する。
【解決手段】本開示に係る乾燥機は、外槽と、外槽内に設けられ、コース対象物を収容するドラムと、外槽における空気を加熱する加熱手段と、加熱手段と外槽とを接続する循環流路と、循環流路に設けられた送風部と、制御部と、を備え、制御部は、コース対象物の撥水性を回復させる撥水回復コースを実行可能であり、撥水回復コースにおいて、ドラム内の空気温度が45℃以上となるように加熱手段及び送風部を作動させる。
【選択図】
図9