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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】遮断システム、遮断器及び分電盤
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/093 20060101AFI20240426BHJP
   H02B 1/42 20060101ALI20240426BHJP
   H01H 71/16 20060101ALI20240426BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
H02H3/093 D
H02B1/42
H01H71/16
H02H3/00 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021079917
(22)【出願日】2021-05-10
(65)【公開番号】P2022173881
(43)【公開日】2022-11-22
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩見 英司
(72)【発明者】
【氏名】塩川 明実
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 晋治
【審査官】大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-128354(JP,A)
【文献】米国特許第04429340(US,A)
【文献】特開2005-183226(JP,A)
【文献】特開平09-205722(JP,A)
【文献】特開2008-289301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/093
H02B 1/42
H01H 71/16
H02H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路に予め決められた値を超える電流が一定時間以上継続して流れたときに前記電流を遮断する遮断部と、
前記電路に設けられる電流センサと、
前記電流センサの出力を基に、前記電路を通る電流に応じた電流値を取得する取得部と、
前記電流値から前記電流の実効値である電流実効値を算出する演算部と、
前記電流実効値を基に、前記遮断部が前記電流を遮断するまでの時間である遮断時間を推定し、推定結果を示す遮断時間推定値を取得する推定部と、
前記遮断時間推定値に関する情報である遮断関連情報を出力する出力部と、を備え、
前記演算部は、さらに、前記電流実効値の2乗に予め決められた係数を乗算し、乗算結果を積算し、積算結果を示す積算値を取得し、
前記推定部は、
前記遮断部の動作特性を基に、前記電流実効値に対応する遮断時間を取得し、
前記乗算結果に前記遮断時間を乗算することにより遮断閾値を取得し、
前記遮断閾値から前記積算値を減算し、減算結果を前記乗算結果で除算し、除算結果に基づいて、前記遮断時間推定値を取得する、
遮断システム。
【請求項2】
前記遮断部は、前記電流による前記電路の温度上昇に応じて前記電流を遮断する、
請求項1に記載の遮断システム。
【請求項3】
前記演算部は、前記電流実効値が予め決められた開始閾値に達したこと又は前記開始閾値を超えたことに応じて、前記積算値の取得を開始する、
請求項1又は2に記載の遮断システム。
【請求項4】
前記遮断部は、前記電路の温度上昇に応じて変形するバイメタルを含み、
前記演算部は、前記温度上昇に応じた前記バイメタルの変形に関する特性に応じて、前記電流実効値の範囲を複数の区間に区分し、前記区間ごとに異なる係数を乗算する、
請求項1-3のいずれか一項に記載の遮断システム。
【請求項5】
電路に予め決められた値を超える電流が一定時間以上継続して流れたときに前記電流を遮断する遮断部と、
前記電路に設けられる電流センサと、
前記電流センサの出力を基に、前記電路を通る電流に応じた電流値を取得する取得部と、
前記電流値から前記電流の実効値である電流実効値を算出する演算部と、
前記電流実効値を基に、前記遮断部が前記電流を遮断するまでの時間である遮断時間を推定し、推定結果を示す遮断時間推定値を取得する推定部と、
前記遮断時間推定値に関する情報である遮断関連情報を出力する出力部と、を備え、
前記電路は、単相3線式の幹線を構成するL1相の電圧側線に対応する第1電路であり、
前記電流センサは、前記第1電路に設けられる第1電流センサであり、
前記幹線を構成するL2相の電圧側線に対応する第2電路に設けられる第2電流センサを更に備え、
前記遮断部は、前記第1電路及び前記第2電路の少なくとも一方に前記予め決められた値を超える電流が前記一定時間以上継続して流れたときに、前記第1電路を通る第1電流及び前記第2電路を通る第2電流を遮断する第1遮断部であり、
前記取得部は、
前記第1電流センサの出力を基に、前記第1電流に応じた第1電流値を取得し、
前記第2電流センサの出力を基に、前記第2電流に応じた第2電流値を取得し、
前記演算部は、
前記第1電流値から前記第1電流の実効値である第1電流実効値を算出し、
前記第2電流値から前記第2電流の実効値である第2電流実効値を算出し、
前記推定部は、
前記第1電流実効値を基に、前記第1遮断部が前記第1電流及び前記第2電流を遮断するまでの時間である第1遮断時間を推定し、推定の結果を示す第1遮断時間推定値を取得し、
前記第2電流実効値を基に、前記第1遮断部が前記第1電流及び前記第2電流を遮断するまでの時間である第2遮断時間を推定し、推定の結果を示す第2遮断時間推定値を取得し、
前記出力部は、前記第1遮断時間推定値及び前記第2遮断時間推定値の少なくとも一方に関する遮断情報を出力する、
断システム。
【請求項6】
前記出力部は、前記第1電路及び前記第2電路の中から、前記第1電流実効値及び前記第2電流実効値のうち最大のもの、に対応する電路を特定し、特定した電路に関する電路情報を含む遮断情報を出力する、
請求項に記載の遮断システム。
【請求項7】
前記第1電流実効値及び前記第2電流実効値を合計し、合計した結果を示す合計値が、予め決められた上限値に達したこと又は当該上限値を超えたことに応じて、前記第1電流及び前記第2電流を遮断する第2遮断部を更に備え、
前記出力部は、前記合計値が前記上限値に対して所定の割合に達したことに応じて、前記合計値が前記上限値に近づいている旨の警告を含む遮断情報を出力する、
請求項又はに記載の遮断システム。
【請求項8】
前記出力部による出力は、表示器への表示及び外部の装置への送信の少なくとも一方を含む、
請求項1-のいずれか一項に記載の遮断システム。
【請求項9】
電路に予め決められた値を超える電流が一定時間以上継続して流れたときに前記電流を遮断する遮断部と、
前記電路に設けられる電流センサの出力を基に、前記電路を通る電流に応じた電流値を取得する取得部と、
前記電流値から前記電流の実効値である電流実効値を算出する演算部と、
前記電流実効値を基に、前記遮断部が前記電流を遮断するまでの時間である遮断時間を推定し、推定結果を示す遮断時間推定値を取得する推定部と、
前記遮断時間推定値に関する情報である遮断情報を出力する出力部と、を備え、
前記演算部は、さらに、前記電流実効値の2乗に予め決められた係数を乗算し、乗算結果を積算し、積算結果を示す積算値を取得し、
前記推定部は、
前記遮断部の動作特性を基に、前記電流実効値に対応する遮断時間を取得し、
前記乗算結果に前記遮断時間を乗算することにより遮断閾値を取得し、
前記遮断閾値から前記積算値を減算し、減算結果を前記乗算結果で除算し、除算結果に基づいて、前記遮断時間推定値を取得する、
遮断器。
【請求項10】
電路に予め決められた値を超える電流が一定時間以上継続して流れたときに前記電流を遮断する遮断部と、
前記電路に設けられる電流センサの出力を基に、前記電路を通る電流に応じた電流値を取得する取得部と、
前記電流値から前記電流の実効値である電流実効値を算出する演算部と、
前記電流実効値を基に、前記遮断部が前記電流を遮断するまでの時間である遮断時間を推定し、推定結果を示す遮断時間推定値を取得する推定部と、
前記遮断時間推定値に関する情報である遮断情報を出力する出力部と、を備え、
前記電路は、単相3線式の幹線を構成するL1相の電圧側線に対応する第1電路であり、
前記電流センサは、前記第1電路に設けられる第1電流センサであり、
前記幹線を構成するL2相の電圧側線に対応する第2電路に設けられる第2電流センサを更に備え、
前記遮断部は、前記第1電路及び前記第2電路の少なくとも一方に前記予め決められた値を超える電流が前記一定時間以上継続して流れたときに、前記第1電路を通る第1電流及び前記第2電路を通る第2電流を遮断する第1遮断部であり、
前記取得部は、
前記第1電流センサの出力を基に、前記第1電流に応じた第1電流値を取得し、
前記第2電流センサの出力を基に、前記第2電流に応じた第2電流値を取得し、
前記演算部は、
前記第1電流値から前記第1電流の実効値である第1電流実効値を算出し、
前記第2電流値から前記第2電流の実効値である第2電流実効値を算出し、
前記推定部は、
前記第1電流実効値を基に、前記第1遮断部が前記第1電流及び前記第2電流を遮断するまでの時間である第1遮断時間を推定し、推定の結果を示す第1遮断時間推定値を取得し、
前記第2電流実効値を基に、前記第1遮断部が前記第1電流及び前記第2電流を遮断するまでの時間である第2遮断時間を推定し、推定の結果を示す第2遮断時間推定値を取得し、
前記出力部は、前記第1遮断時間推定値及び前記第2遮断時間推定値の少なくとも一方に関する遮断情報を出力する、
遮断器。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の遮断器と、
前記電流センサと、を備える、
分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遮断システム、遮断器及び分電盤に関し、より詳細には、配線に閾値を超える電流(過電流)が一定時間以上流れたときに電流を遮断する遮断システム、遮断器及び分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、過電流に応じて直接加熱される第1バイメタルと、第1バイメタルの厚さ方向に設けられ、過電流通電時に第1バイメタルの湾曲を抑制する第2バイメタルとを備えることで、過電流通電時の遮断時間を所望の時間に調整することができる、回路遮断器の熱動引外し装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-207536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のものでは、ユーザは、通常、配線に接続されている電気機器が遮断により停止して初めて、配線が直前まで過電流状態にあったことを認識する。
【0005】
回路遮断器が遮断する前の過電流状態において、遮断までの時間をユーザが認識できれば、例えば、ユーザが使用しているコンピュータのデータのバックアップ(以下では「PCのバックアップ」と記す)や、消費電力の大きい一部機器の電源をオフするといった、事前の対処が可能となる。
【0006】
本開示の目的は、遮断前の過電流状態において、遮断までの時間をユーザに認識させることができる遮断システム、遮断器及び分電盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る遮断システムは、遮断部と、電流センサと、取得部と、演算部と、推定部と、出力部とを備える。前記遮断部は、電路に予め決められた値を超える電流が一定時間以上継続して流れたときに前記電流を遮断する。前記電流センサは、前記電路に設けられ、前記取得部は、前記電流センサの出力を基に、前記電路を通る電流に応じた電流値を取得する。前記演算部は、前記電流値から前記電流の実効値である電流実効値を算出する。前記推定部は、前記電流実効値を基に、前記遮断部が前記電流を遮断するまでの時間である遮断時間を推定し、推定結果を示す遮断時間推定値を取得する。前記出力部は、前記遮断時間推定値に関する情報である遮断関連情報を出力する。前記演算部は、さらに、前記電流実効値の2乗に予め決められた係数を乗算し、乗算結果を積算し、積算結果を示す積算値を取得する。前記推定部は、前記遮断部の動作特性を基に、前記電流実効値に対応する遮断時間を取得し、前記乗算結果に前記遮断時間を乗算することにより遮断閾値を取得し、前記遮断閾値から前記積算値を減算し、減算結果を前記乗算結果で除算し、除算結果に基づいて、前記遮断時間推定値を取得する。
本開示の一態様に係る遮断システムは、遮断部と、電流センサと、取得部と、演算部と、推定部と、出力部とを備える。前記遮断部は、電路に予め決められた値を超える電流が一定時間以上継続して流れたときに前記電流を遮断する。前記電流センサは、前記電路に設けられ、前記取得部は、前記電流センサの出力を基に、前記電路を通る電流に応じた電流値を取得する。前記演算部は、前記電流値から前記電流の実効値である電流実効値を算出する。前記推定部は、前記電流実効値を基に、前記遮断部が前記電流を遮断するまでの時間である遮断時間を推定し、推定結果を示す遮断時間推定値を取得する。前記出力部は、前記遮断時間推定値に関する情報である遮断関連情報を出力する。前記電路は、単相3線式の幹線を構成するL1相の電圧側線に対応する第1電路である。前記電流センサは、前記第1電路に設けられる第1電流センサである。前記遮断システムは、前記幹線を構成するL2相の電圧側線に対応する第2電路に設けられる第2電流センサを更に備える。前記遮断部は、前記第1電路及び前記第2電路の少なくとも一方に前記予め決められた値を超える電流が前記一定時間以上継続して流れたときに、前記第1電路を通る第1電流及び前記第2電路を通る第2電流を遮断する第1遮断部である。前記取得部は、前記第1電流センサの出力を基に、前記第1電流に応じた第1電流値を取得し、前記第2電流センサの出力を基に、前記第2電流に応じた第2電流値を取得する。前記演算部は、前記第1電流値から前記第1電流の実効値である第1電流実効値を算出し、前記第2電流値から前記第2電流の実効値である第2電流実効値を算出する。前記推定部は、前記第1電流実効値を基に、前記第1遮断部が前記第1電流及び前記第2電流を遮断するまでの時間である第1遮断時間を推定し、推定の結果を示す第1遮断時間推定値を取得する。また、前記推定部は、前記第2電流実効値を基に、前記第1遮断部が前記第1電流及び前記第2電流を遮断するまでの時間である第2遮断時間を推定し、推定の結果を示す第2遮断時間推定値を取得する。前記出力部は、前記第1遮断時間推定値及び前記第2遮断時間推定値の少なくとも一方に関する遮断情報を出力する。
【0008】
本開示の一態様に係る遮断器は、遮断部と、取得部と、演算部と、推定部と、出力部とを備える。前記遮断部は、電路に予め決められた値を超える電流が一定時間以上継続して流れたときに前記電流を遮断する。前記取得部は、前記電路に設けられる電流センサの出力を基に、前記電路を通る電流に応じた電流値を取得する。前記演算部は、前記電流値から前記電流の実効値である電流実効値を算出する。前記推定部は、前記電流実効値を基に、前記遮断部が前記電流を遮断するまでの時間である遮断時間を推定し、推定結果を示す遮断時間推定値を取得する。前記出力部は、前記遮断時間推定値に関する情報である遮断情報を出力する。前記演算部は、さらに、前記電流実効値の2乗に予め決められた係数を乗算し、乗算結果を積算し、積算結果を示す積算値を取得する。前記推定部は、前記遮断部の動作特性を基に、前記電流実効値に対応する遮断時間を取得し、前記乗算結果に前記遮断時間を乗算することにより遮断閾値を取得し、前記遮断閾値から前記積算値を減算し、減算結果を前記乗算結果で除算し、除算結果に基づいて、前記遮断時間推定値を取得する。
本開示の一態様に係る遮断器は、遮断部と、取得部と、演算部と、推定部と、出力部とを備える。前記遮断部は、電路に予め決められた値を超える電流が一定時間以上継続して流れたときに前記電流を遮断する。前記取得部は、前記電路に設けられる電流センサの出力を基に、前記電路を通る電流に応じた電流値を取得する。前記演算部は、前記電流値から前記電流の実効値である電流実効値を算出する。前記推定部は、前記電流実効値を基に、前記遮断部が前記電流を遮断するまでの時間である遮断時間を推定し、推定結果を示す遮断時間推定値を取得する。前記出力部は、前記遮断時間推定値に関する情報である遮断情報を出力する。前記電路は、単相3線式の幹線を構成するL1相の電圧側線に対応する第1電路である。前記電流センサは、前記第1電路に設けられる第1電流センサである。前記遮断器は、前記幹線を構成するL2相の電圧側線に対応する第2電路に設けられる第2電流センサを更に備える。前記遮断部は、前記第1電路及び前記第2電路の少なくとも一方に前記予め決められた値を超える電流が前記一定時間以上継続して流れたときに、前記第1電路を通る第1電流及び前記第2電路を通る第2電流を遮断する第1遮断部である。前記取得部は、前記第1電流センサの出力を基に、前記第1電流に応じた第1電流値を取得し、前記第2電流センサの出力を基に、前記第2電流に応じた第2電流値を取得する。前記演算部は、前記第1電流値から前記第1電流の実効値である第1電流実効値を算出し、前記第2電流値から前記第2電流の実効値である第2電流実効値を算出する。前記推定部は、前記第1電流実効値を基に、前記第1遮断部が前記第1電流及び前記第2電流を遮断するまでの時間である第1遮断時間を推定し、推定の結果を示す第1遮断時間推定値を取得する。また、前記推定部は、前記第2電流実効値を基に、前記第1遮断部が前記第1電流及び前記第2電流を遮断するまでの時間である第2遮断時間を推定し、推定の結果を示す第2遮断時間推定値を取得する。前記出力部は、前記第1遮断時間推定値及び前記第2遮断時間推定値の少なくとも一方に関する遮断情報を出力する。
【0009】
本開示の一態様に係る分電盤は、前記遮断器と、前記電流センサと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の遮断システムは、遮断前の過電流状態において、遮断までの時間をユーザに認識させることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施形態に係る遮断器のブロック図である。
図2図2は、同上の遮断器を構成する熱動式の遮断部の動作特性曲線を示すグラフである。
図3図3は、同上の遮断器を構成する処理部等の処理を示すフローチャートである。
図4図4は、同上の処理に含まれる遮断関連処理を示すフローチャートである。
図5図5は、同上の遮断関連処理の変形例を示すフローチャートである。
図6図6は、同上の遮断器を含む分電盤の外観を示す上面図である。
図7図7は、同上の分電盤のブロック図である。
図8図8は、同上の分電盤を構成する主ブレーカのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記の実施形態において説明する各図は模式的な図であり、各構成要素の大きさ及び厚さのそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、以下の実施形態で説明する構成は本開示の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
(1)遮断システム
本開示の実施形態に係る遮断システムは、図1に示す遮断器1である。この遮断器1は、分電盤を構成する主幹ブレーカの少なくとも一部である。
【0014】
少なくとも一部とは、例えば、単相3線用の分電盤100(図6及び図7参照)を構成する主幹ブレーカ1(図8参照)の一部(第2電路L2及び第2電流センサ12を除外したもの)であるが、単相2線用の分電盤(図示しない)を構成する主幹ブレーカの全体と考えてもよい。なお、分電盤100については、“遮断システムの変形例1”で説明する。
【0015】
遮断器1は、図1に示す配線200に設けられる。図1の配線200は、例えば、単相3線式の幹線20(図7及び図8参照)の一部である。単相3線式の幹線20は、3つの電路を含む。3つの電路とは、L1相の電圧側線、L2相の電圧側線、及び中性線である。
【0016】
ただし、配線200は、単相2線式の幹線20であってもよい。単相2線式の幹線20は、2つの電路を含む。2つの電路とは、L1相の電圧側線、及び中性線である。
【0017】
以下では、L1相の電圧側線に対応する電路を「第1電路L1」、L2相の電圧側線に対応する電路を「第2電路L2」、中性線に対応する電路を「第3電路N」と記す。
【0018】
遮断器1は、配線200を構成する少なくとも1つの電路に過電流が継続的に流れたとき、配線200を流れる電流を遮断する。
【0019】
過電流とは、予め決められた値を超える電流である。予め決められた値は、例えば、定格電流値である。なお、本実施形態における電流は、交流であり、通常、単相交流である。交流の電流値は、通常、実効値で表現される。
【0020】
継続的とは、過電流が流れている状態(過電流状態)が、一定時間以上、継続していることである。なお、過電流状態において、電流値が予め決められた値を瞬間的に下回っても、過電流状態は継続しているとみなされる。
【0021】
電流を遮断する対象となる電路は、本実施形態では、配線200を構成する全ての電路である。例えば、単相3線式の幹線20(図7及び図8参照)において、第1電路L1に過電流が継続的に流れたとき、遮断器1は、第1電路L1、第2電路L2及び第3電路Nの各々を流れる電流を遮断する。また、その結果として、第1分岐電路L1b、第2分岐電路L2b及び第3分岐電路Nbの各々を流れる電流も遮断される。ただし、遮断器1は、過電流が継続的に流れている電路のみを対象に、電流を遮断してもよい。
【0022】
なお、図1の遮断器1は、例えば、分電盤100(図6及び図7参照)を構成する分岐ブレーカ2であると考えてもよい。この場合、図1の配線200は、幹線20(図7及び図8参照)から分岐した分岐線(第1電路L1からの第1分岐電路L1bを含む第1分岐線21、又は第2電路L2からの第2分岐電路L2bを含む第2分岐線22)と考えてもよい。遮断器1が分岐ブレーカである場合については、“遮断器の変形例2”で説明する。
【0023】
遮断器1は、プロセッサ、メモリ、ディスプレイ及び通信モジュール(いずれも図示しない)を有する。メモリにはプロブラム及び各種の情報が格納され、プロセッサがメモリ内のプロブラム及び各種の情報に基づいて動作することにより、後述する処理部13等の機能が実現される。なお、処理部13等の機能を実現するプロセッサ及びメモリを「コンピュータ」と称してもよい。
【0024】
また、遮断器1は、プロセッサ等に電力を供給する電源回路も有する。電源回路は、例えば、第1電路L1及び第3電路Nに接続されるが、第1電路L1及び第2電路L2に接続されてもよいし、第2電路L2及び第3電路Nに接続されても構わない。
【0025】
前述したディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイであり、遮断器1の前面を覆うカバー(図示しない)の外面に設けられる。前述した通信モジュールは、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信、及びLANやインターネット等のネットワークを介した通信、のうち1種類以上の通信を行うためのモジュールである。
【0026】
後述する出力部14の表示機能及び送信機能は、ディスプレイ及び通信モジュールを利用して実現される。なお、遮断器1は、出力部14の音声出力機能を実現するためのスピーカも有していてもよい。
【0027】
(1-1)遮断器
遮断器1は、図1に示すように、遮断部10と、電流センサ11と、処理部13と、出力部14とを備える。処理部13は、取得部131と、演算部132と、推定部133とを備える。
【0028】
(1-1-1)遮断部
遮断部10は、電路に予め決められた値を超える電流が一定時間以上継続して流れたときに電流を遮断する。電路は、本実施形態では、第1電路L1であるが、第2電路L2、第3電路N、第1分岐電路L1b、第2分岐電路L2b及び第3分岐電路Nbのいずれか1つでもよいし、これら6種類の電路のうち2つ以上でも構わない。なお、以下では、電流を遮断する対象となり得る1つ以上の電路を「電路(L1,L2,N,L1b,L2b,Nb)」のように略記する場合がある。
【0029】
遮断部10は、通常、配線200を構成する少なくとも1つの電路に予め決められた値を超える電流が一定時間以上継続して流れたときに、遮断動作を実行することにより、配線200を流れる全ての電流を遮断する。本実施形態における遮断動作とは、当該電路を含む配線200を構成する各線の接点を開放する動作である。遮断動作は、例えば、バイメタルや電磁石等で接点間のスイッチを引き外す動作である。ただし、遮断部10は、当該電路の接点を開放することにより、当該電路を流れる電流のみを遮断してもよい。
【0030】
予め決められた値は、通常、電路の定格電流値であるが、これに限らない。
【0031】
一定時間は、電流実効値の予め決められた値(定格電流値)に対する比で決まるパラメータであり、当該電流実効値が継続した場合に、遮断部10が電流を遮断するまでの時間(以下、「遮断時間」と記す)を示す。
【0032】
なお、以下では、電路は第1電路L1であるものとして説明する。すなわち、遮断部10は、幹線20を構成する電路L1を通る電流の電流実効値が当該電路L1の定格電流値を超えている状態である過電流状態が、当該電流実効値で決まる遮断時間以上継続した場合に、幹線20を流れる全電流を遮断する。
【0033】
(1-1-1A)熱動式
本実施形態における遮断部10は、熱動式で動作する。熱動式とは、バイメタルを用いて、幹線20を構成する各線の接点を開閉する方式である。バイメタルは、熱膨張率が異なる2枚の金属板を貼り合わせた部材であり、温度変化に応じて変形する。
【0034】
電路L1に過電流が流れている過電流状態が継続すると、電路L1は発熱し、電路L1及びその周辺の温度が上昇する。熱動式の遮断部10では、このような温度上昇に応じたバイメタルの変形によって、各線の接点が開放され、電流が遮断される。
【0035】
バイメタルは、通常、温度変化に対して非線形に変形する。このため、バイメタルを用いた熱動式の遮断部10の動作特性は、例えば、図2のグラフに実線で示された2つの動作特性曲線C1及びC2のように、非線形となる。
【0036】
動作特性曲線とは、遮断部10の動作特性を示す曲線であり、動作特性とは、電流実効値と遮断時間との関係に関する特性である。図2のグラフでは、横軸が電流実効値を、縦軸が遮断時間を示す。横軸の電流実効値は、定格電流値に対する比率(%)であり、以下では、このような電流実効値を単に「電流実効値」と記す。遮断時間は、当該電流実効値に対応する電流が流れ続けた場合に、遮断部10が遮断動作を実行するまでの時間である。
【0037】
図2の2つの動作特性曲線C1及びC2は、遮断部10の遮断対象である電流の電流実効値(%)と遮断時間との関係を示している。2つの動作特性曲線C1及びC2のうち、上側の動作特性曲線C1が遮断時間の上限を、下側の動作特性曲線C2が遮断時間の下限を、それぞれ示しており、遮断部10は、これら2つの動作特性曲線C1及びC2で挟まれる範囲で動作する。
【0038】
例えば、電流値500%に対し、遮断時間の下限は約1秒、上限は約8秒である。従って、電路に定格電流の5倍の電流が流れたとき、遮断部10は、最短で1秒後、最長で8秒後に遮断動作を実行する。
【0039】
なお、図2のグラフに示されている2つの動作特性曲線C1及びC2は、遮断部10の周囲温度が所定値(例えば40℃)である場合の動作特性であり、遮断部10は、周囲温度に応じて、電流実効値(%)の算出に用いる定格電流値を補正してもよい。
【0040】
詳しくは、遮断器1において、遮断部10の近傍に温度センサ(図示しない)が設けられ、メモリには、周囲温度と定格電流補正率(%)との対応に関する対応情報が格納されている。対応情報は、例えば、周囲温度を横軸、定格電流補正率(%)を縦軸とするグラフに示される温度補正曲線である。対応情報は、定格電流値によって異なる複数の温度補正曲線(例えば、定格電流値が閾値以下である場合に対応する第1温度補正曲線、及び定格電流値が閾値を超える場合に対応する第2温度補正曲線)であってもよい。
【0041】
遮断部10は、当該格納されている対応情報を用いて、例えば、上記複数の温度補正曲線のうち、演算部132が算出した電流実効値に対応する温度補正曲線を特定し、当該特定した温度補正曲線を用いて、温度センサが示す温度に対応する定格電流補正率(%)を取得する。そして、遮断部10は、当該取得した定格電流補正率(%)を基に、定格電流値を補正し、上記算出された電流実効値を当該補正後の定格電流値で除算することにより、電流実効値(%)を算出してもよい。
【0042】
(1-1-1B)遮断部の変形例1:電子式
ただし、遮断部10は、電子式で動作してもよい。電子式とは、電子回路を用いて、電流を遮断するタイミングを制御する方式である。電子回路は、例えば、コンピュータを含み、ソフトウェア及びハードウェアの協働によりタイミング制御を実現するが、ハードウェアのみでタイミング制御を実現するものでもよい。
【0043】
電子式の遮断部10では、電子回路が、電流値等を基に、過電流状態か否かの判断、及び過電流状態の継続時間の計時を行い、過電流状態の継続時間が閾値を超えた場合に、接点の開閉を行う駆動機構に接点を開放させる。
【0044】
電子式で動作する遮断部10は、予め決められた遮断条件を満たす場合に、電流の遮断を実行してもよい。遮断条件とは、遮断部10が電流の遮断を実行する条件である。
【0045】
遮断条件は、具体的には、例えば、「電流実効値が予め決められた値(定格電流値)を超えている状態(過電流状態)が、予め決められた時間(遮断時間)を超えて継続したこと」である。
【0046】
すなわち、遮断部10は、例えば、後述する演算部132が算出した電流実効値が定格電流値を超えている状態(過電流状態)が、予め決められた時間(遮断時間)を超えて継続したことに応じて、電流を遮断してもよい。
【0047】
ここで、過電流状態が継続すると、電路L1で熱が発生し、電路L1の温度が上昇する。このような電路L1の温度上昇ΔTは、電路L1での発熱量に比例し、電路L1での発熱量は、電路L1を通る電流の通過エネルギーと等価である。そして、通過エネルギーは、電流実効値の2乗に比例定数である係数k(k>0)を乗算した乗算結果を積算した積算値として算出可能である。
【0048】
詳しくは、電路L1の過電流状態における温度上昇ΔTは、電路L1を通る電流の電流実効値Iが一定であれば、電流実効値Iの2乗と当該過電流状態の継続時間tとの積(I×t)に係数kを乗算することにより算出される。つまり、温度上昇ΔTと、電流実効値Iと、継続時間tとの間には、第1式“ΔT=k×(I ×t)”の関係が成り立つ。
【0049】
ここで、継続時間tを遮断時間t(秒)、ΔT/kを第2係数とすると、上記第1式は、第2式“t=第2係数×(1/I)”のように変形される。従って、電子式の遮断部10の動作特性を示す曲線は、基本的に、上記第2式に従う曲線となる。
【0050】
ただし、本変形例1では、電子式の遮断部10の動作特性を、前述した熱動式の遮断部10の動作特性に近付けるために、図2のグラフに点線で示すような遮断特性曲線C3を採用する。これによって、熱動式と同等の動作特性が実現される。
【0051】
ここでいう遮断特性曲線C3とは、熱動式と同等の電子式の遮断部10による遮断の特性を示す曲線である。遮断特性曲線C3は、前述した熱動式の遮断部10の2つの動作特性曲線C1及びC2で挟まれる範囲で変化する曲線であり、本変形例1では、上限側の動作特性曲線C1に沿った曲線である。
【0052】
遮断特性曲線C3は、後述する推定部133が、前述した熱動式の遮断部10に関して遮断時間推定値を取得するための情報(特性情報:後述)である。
【0053】
電流実効値Iが変動する場合は、現時点での電流実効値Iを定期的に又不定期に取得し、第1式を用いて一周期における温度上昇を算出し、算出結果を積算すればよい。
【0054】
従って、遮断特性曲線C3を用いる場合の遮断条件は、「電路を通る電流の通過エネルギー(電流実効値の2乗に係数を乗算した乗算結果を積算した積算値)が、遮断特性曲線を基に決定される遮断閾値に達した又は遮断閾値を超えたこと」でもよい。遮断閾値とは、遮断動作を実行するか否かを判断するための閾値であり、遮断特性曲線を基に決定される。
【0055】
すなわち、遮断部10は、例えば、後述する演算部132が取得した積算値が、遮断特性曲線を用いて取得される遮断閾値に達した又は当該遮断閾値を超えたことに応じて、電流を遮断してもよい。
【0056】
詳しくは、遮断部10は、まず、後述する演算部132が取得した電流実効値に対応する遮断時間を、遮断特性曲線C3を基に取得する。次に、遮断部10は、後述する演算部132が取得した乗算結果(“k×(電流実効値)”)に当該取得した遮断時間を乗算することにより、遮断閾値を取得する。そして、遮断部10は、後述する演算部132が取得した積算値が、当該取得した遮断閾値に達した又は遮断閾値を超えたか否かを判断し、超えたと判断した場合に、遮断動作を実行する。
【0057】
なお、積算値が遮断閾値に満たないと判断した場合、遮断部10は、上記取得した遮断閾値を、後述する推定部133に引き渡してもよい。この場合、推定部133は、自ら遮断閾値を取得する必要はなく、遮断部10が取得した遮断閾値を用いて遮断時間推定値を取得すればよい。
【0058】
なお、遮断部10は、遮断までの残り時間を管理し、残り時間が0となったことに応じて遮断を実行してもよい。この場合、推定部133は、遮断部10から残り時間を取得すればよい。
【0059】
なお、本変形例1における遮断特性曲線C3は、2つの動作特性曲線C1及びC2のうち、上限側の動作特性曲線C1に沿った曲線であるが、下限側の動作特性曲線C2に沿った曲線であってもよい。遮断特性曲線C3は、2つの動作特性曲線C1及びC2で挟まれる範囲で変化する曲線であればよく、それによって、バイメタルを用いた熱動式の遮断部10の動作特性と同等の遮断特性を有する電子式の遮断部10が実現される。
【0060】
また、遮断特性曲線C3が非線形である場合は、図2のグラフの横軸に示された電流実効値の範囲が複数(ここでは7つ)の区間に区分され、遮断器1のメモリに、当該複数の区間(例えば、第1-第7の7つの区間)、及び当該複数の区間に対応する複数の係数(例えば、7つの係数k1-k7)、が格納される。なお、7つの区間及び7つの係数k1-k7の詳細については後述する。
【0061】
遮断部10は、当該格納されている複数の区間のうち、演算部132が取得した電流実効値が属する区間を特定し、当該格納されている複数の係数(k1-k7)のうち、当該特定した区間に対応する係数を取得する。そして、遮断部10は、当該取得した係数を“k”として、上記乗算結果“k×(電流実効値)”を取得する。
【0062】
なお、上記のような「区間ごとの係数」を用いた乗算値の取得等は、後述する推定部133が、熱動式の遮断部10に関して遮断時間推定値を取得する際にも行われる。
【0063】
(1-1-1C)遮断部の変形例2:処理部等の指示で動作
本変形例2における遮断部10は、上記変形例1における遮断部10の一連の動作において、遮断閾値の取得、積算値の取得、及び積算値が遮断閾値を超えたか否かの判断(これらの処理を、以下では「遮断処理」と記す)を行わず、電流を遮断する動作のみを行う。
【0064】
例えば、後述する処理部13が、遮断処理を行い、積算値が遮断閾値を超えた場合に、遮断部10に遮断動作の実行を指示し、遮断部10は、当該指示に応じて、遮断動作を実行してもよい。
【0065】
(1-1-1D)遮断部の変形例3:その他の方式
なお、遮断部10は、電磁式、又は熱動電磁式で動作してもよい。電磁式とは、電流に応じて磁力が変化する電磁石を用いて、電路の接点を開閉する方式である。電磁式の遮断部10では、例えば、制動ばねの弾性力、シリコンオイルの粘性抵抗等を利用して、過電流に対する遮断のタイミングが遅延される。
【0066】
熱動電磁式とは、バイメタル及び電磁石の両方を用いて、接点の開閉を行う方式である。熱動電磁式の遮断部10は、例えば、定格電流値のn倍まではバイメタルで、n倍を超えると電磁石で瞬時に、接点を開放する。なお、n倍とは、例えば10倍であるが、これに限らない。
【0067】
(1-1-2)電流センサ
電流センサ11は、電路L1に設けられ、電路L1を流れる電流に応じた電気信号を出力する。電流に応じた電気信号は、電流の時間変化を示す波形(以下「電流波形」)といってもよい。
【0068】
電流センサ11は、例えば、CT(Current Trans)、ロゴスキーコイル等を用いた交流用のセンサであるが、直流も検出可能なホール素子を用いた電流センサ等でもよい。
【0069】
電流センサ11が出力する電気信号は、通常、アナログの電気信号である。ただし、電流センサ11は、A/D変換回路(図示しない)を有していてもよく、その場合、電流センサ11からは、アナログの電気信号をA/D変換したデジタルの電気信号が出力される。
【0070】
なお、電流センサは、電路L1に限らず、第2電路L2、第3電路N、第1分岐電路L1b、第2分岐電路L2b及び第3分岐電路Nbのいずれか1つに設けられてもよいし、これら6種類の電路のうち2つ以上に設けられてもよい。
【0071】
(1-1-3)処理部
処理部13は、各種の処理を行う。各種の処理とは、例えば、遮断関連処理である。遮断関連処理とは、電流の遮断に関する処理である。本実施形態における遮断関連処理は、推定値取得処理を含む。推定値取得処理とは、遮断部10が電流を遮断するまでの遮断時間の推定値を取得する処理である。
【0072】
ただし、遮断関連処理は、推定値取得処理に加えて、遮断処理も含んでもよい。遮断処理とは、前述したように、遮断部10に遮断動作を実行させる処理である。遮断処理は、遮断部10の変形例3で説明したように、遮断条件の取得、積算値の取得、及び積算値が遮断閾値を超えたか否かの判断などを含む。
【0073】
詳しくは、遮断関連処理は、取得部131、演算部132及び推定部133の処理を含む。また、処理部13は、フローチャートで説明する各種の判断なども行う。なお、その他の処理については、適時説明する。
【0074】
(1-1-3A)電流値の取得
取得部131は、電流センサ11の出力を基に、電路L1を通る電流に応じた電流値を取得する。
【0075】
電流センサの出力は、前述したように、アナログの電気信号(電流波形)である。本実施形態における取得部131は、A/D変換回路(図示しない)を含み、電流センサから出力される電流波形を基に、A/D変換回路でサンプリングし、当該サンプリング結果であるデジタルの電流値(以下、単に「電流値」)を取得する。
【0076】
なお、A/D変換が電流センサで行われる場合、取得部131は、電流センサから出力されるデジタルの電流値を取得すればよい。
【0077】
取得された電流値は、遮断器1のメモリに時系列に記憶される。これによって、メモリには、電流センサからの電流波形に沿う1つ以上の電流値が格納される。
【0078】
(1-1-3B)電流値に基づく演算
演算部132は、取得部131が取得した電流値に基づく各種の演算を行う。各種の演算とは、電流実効値の算出、及び積算値の算出などである。
【0079】
(1-1-3Ba)電流実効値の算出
演算部132は、取得部131が取得した電流値から電流実効値を算出する。電流実効値とは、電路を流れる電流の実効値である。
【0080】
演算部132は、例えば、電流値を入力とし、電流実効値を出力とする所定のアルゴリズムで計算を行う。所定のアルゴリズムは、例えば、直近に入力された電流値及び過去に入力された1つ以上の電流値を用いて電流実効値を算出するように構成されている。
【0081】
詳しくは、例えば、遮断器1のメモリに、上記所定のアルゴリズムを含むプログラムが格納されており、演算部132は、メモリに格納されている上記1つ以上の電流値及び上記所定のアルゴリズムを用いて、電流実効値を算出する。
【0082】
こうして演算部132が算出した電流実効値は、推定部133に引き渡される。また、算出された電流実効値は、遮断部10にも引き渡されてよい。さらに、算出された電流実効値は、遮断器1のメモリに時系列に記憶されてもよく、これによって、メモリには、電流センサの出力(アナログの電流波形)に基づく1つ以上の電流実効値(デジタルの標本値)が格納される。
【0083】
(1-1-3Bb)積算値の算出
さらに、演算部132は、上記算出した電流実効値の2乗に予め決められた係数kを乗算し、当該乗算結果(つまり“k×(電流実効値)”)を積算し、当該積算結果を示す積算値を取得する。
【0084】
こうして演算部132が取得した積算値は、上記乗算結果と共に、推定部133に引き渡される。
【0085】
電路L1の温度上昇は、通過エネルギーに比例することから、演算部132が通過エネルギーを示す積算値を取得することで、後述する推定部133は、取得された積算値を用いて、遮断時間を高い精度で推定することが可能になる。
【0086】
(1-1-3Bc)積算開始のタイミング
演算部132は、取得した電流実効値が予め決められた開始閾値に達したこと又は当該開始閾値を超えたことに応じて、積算値の取得を開始する。
【0087】
開始閾値は、例えば、電路の定格電流の1.1倍であるが、1.2倍や1.05倍等でもよく、1倍を超える値(k>1)であれば何倍でもよい。
【0088】
なお、演算部132が積算値の取得を開始したことに応じて、積算値を用いる後段の処理(推定部133による推定、及び出力部14による出力)も開始される。出力部14は、推定時間情報に含まれる推定時間のカウントダウンを行ってもよい。
【0089】
こうして、電流実効値が開始閾値を超えたことに応じて積算を開始することで、演算量の抑制と、推定精度の向上との両立を図ることができる。
【0090】
前述したように、本実施形態の遮断部10は、バイメタルを用いる熱動式であり、遮断部10は、図2に実線で示した2つの動作特性曲線C1及びC2で挟まれる範囲で動作する。一方、後述するように、推定部133は、演算部132が取得した電流実効値及び積算値と、図2に点線で示した遮断特性曲線C3とに基づいて、遮断部10による遮断時間の推定を行う。
【0091】
(1-1-3Bd)区間ごとの係数
そこで、演算部132は、推定部133が推定に用いる遮断特性曲線C3に対し、電流実効値の範囲を複数の区間に区分し、区間ごとに異なる係数kを、電流実効値の2乗に乗算する。
【0092】
なお、図2における実行電流値は、前述したように、定格電流値に対する比(%)である。また、図2における複数の区間は、110-125%(以下、第1区間と記す)、125-150%(第2区間)、150-200%(第3区間)、200-260%(第4区間)、260-480%(第5区間)、480-100%(第6区間)、及び1000-4000%(第7区間)の7区間である。
【0093】
このように、遮断部10に含まれるバイメタルの特性に応じた係数であり、電流実行値の区間ごとに異なる係数、を用いることで、熱動式の遮断部10に対して推定部133が的確な推定を行えるような積算値が得られる。
【0094】
(1-1-3C)遮断時間の推定
推定部133は、演算部132が算出した電流実効値を基に、遮断時間を推定し、当該推定結果を示す遮断時間推定値を取得する。
【0095】
遮断時間とは、前述したように、当該電流実効値が継続した場合に、遮断部10が電流を遮断するまでの時間である。本実施形態における遮断時間は、現時点から遮断までの残り時間であり、時間の経過に連れて更新(例えば、カウントダウン)される。
【0096】
詳しくは、推定部133は、まず、遮断部10の動作特性を基に、演算部132が取得した電流実効値に対応する遮断時間を取得する。遮断部10の動作特性とは、前述した2つの動作特性曲線C1及びC2のうち前者、に沿う遮断特性曲線C3である。
【0097】
例えば、遮断器1のメモリに、遮断特性曲線C3を示す特性情報が格納されている。特性情報は、例えば、電流実効値と遮断時間との対の集合で構成されたデータテーブルであるが、関数でもよい。関数は、例えば、前述した複数の区間(7つの区間)に対応する複数の関数(7つの関数)で構成されてもよい。
【0098】
具体的には、例えば、電流実効値が“400%”である場合、遮断特性曲線C3を用いて、当該電流実効値“400%”に対応する遮断時間“11秒”が取得される。
【0099】
次に、推定部133は、演算部132による上記乗算結果(“k×(電流実効値)”)に、上記取得した遮断時間を乗算することにより、遮断閾値を取得する。具体的には、例えば、k=2とすると、上記電流実効値“400%”及び上記遮断時間“11秒”を基に、2×4×11=352が取得される。
【0100】
そして、推定部133は、当該取得した遮断閾値から上記積算値を減算し、当該減算結果(“積算結果-遮断閾値”)を上記乗算結果で除算し、当該除算結果(“(積算結果-遮断閾値)/{k×(電流実効値)}”)に基づいて、遮断時間推定値を取得する。具体的には、例えば、現時点の積算値が“192”の場合、遮断時間推定値“(352-192)/{2×4}=160/32=5秒”が取得される。
【0101】
(1-1-3Ca)推定部の変形例1:遮断時間の最大値及び最小値の推定
なお、推定部133は、2つの動作特性曲線C1及びC2(図2参照)を用いて、遮断時間の最大値及び最大値を推定してもよい。
【0102】
この場合、演算部132が取得した一の電流実効値に対し、推定部133は、動作特性曲線C1に基づく最大遮断時間と、動作特性曲線C2に基づく最小遮断時間とを取得する。
【0103】
具体的には、例えば、電流実効値が“500%”の場合、動作特性曲線C1に基づく最大遮断時間“8秒”と、動作特性曲線C2に基づく最小遮断時間“1秒”とが取得される。
【0104】
こうして、電流実効値と、2つの動作特性曲線C1及びC2とを用いて、遮断部10の動作特性の幅に応じた最小推定値及び最大推定値の取得が可能になる。
【0105】
(1-1-3Cb)推定部の変形例2
または、推定部133は、例えば、演算部132が取得した電流実効値と、図2に示した2つの動作特性曲線C1及びC2とを用いて、最大推定値及び最小推定値を取得してもよい。最大推定値とは、遮断時間に関する最大の推定値であり、動作特性曲線C2を基に取得される。最小推定値とは、遮断時間に関する最小の推定値であり、動作特性曲線C1を基に取得される。
【0106】
具体的には、k=2、現時点の電流実効値が500%、現時点の積算値が“192”で、遮断時間最大値“8秒”及び遮断時間最小値“1秒”が取得された場合、最小推定値“(352-192)/{2×8}=160/128=1.25秒”、及び最大推定値“(352-192)/{2×1 }=160/4=40秒”が取得される。
【0107】
こうして、電流実効値及び積算値と、2つの動作特性曲線C1及びC2とを用いて、遮断時間の最大値および最小値を推定することで、遮断部10の動作特性の幅に応じた高い精度の最大推定値および最小推定値が取得可能になる。
【0108】
(1-1-3Cc)推定部の変形例3
なお、前述したように、演算部132が、遮断部10の動作特性(本例では、温度上昇に応じたバイメタルの変形に関する特性)に応じて、遮断特性曲線C3における電流実効値の範囲を複数の区間に区分し、区間ごとに異なる係数を乗算する場合、推定部133は、演算部132が取得した電流実効値が、当該2以上の区間のうちどの区間に属するかを判別する。そして、推定部133は、当該2以上の区間に対応する2以上の係数のうち、当該電流実効値が属する区間に対応する係数を用いて、推定を行う。
【0109】
このように、遮断部10に含まれるバイメタルの特性に応じた係数であり、電流実効値の区間ごとに異なる係数、を用いることで、熱動式の遮断部10に対して的確な推定を行える。
【0110】
(1-1-3Cd)推定部の変形例4
なお、遮断時間の起点は、現時点に限らず、例えば、電流実効値が開始閾値を超えた時点でもよい。この場合、遮断時間推定値は固定値となるため、例えば、処理部13が、開始閾値を超えた時点からの経過時間を計時し、後述する出力部14に引き渡し、出力部14は、遮断時間推定値と共に経過時間を出力してもよい。
【0111】
こうして、電流実効値が開始閾値を超えた時点を起点とする遮断時間推定値と、当該時点を起点とする経過時間とを出力することで、現時点から遮断までの残り時間の認識が可能化される。
【0112】
以上のように、バイメタルを用いた熱動式の遮断部10に対し、電路を通る電流の通過エネルギーを示す積算値を用いて遮断時間を推定することで、例えば、電磁式の遮断部10に対し同様の推定を行う場合と比べて、より高い精度での推定が可能になる。
【0113】
(1-1-3Ce)推定部の変形例5:電子式の遮断部に対する推定
なお、遮断部10の変形例1で説明したような電子式の遮断部10に対しても、推定部133が積算値及び遮断閾値を用いて遮断時間を推定することで、高い精度での推定が可能になる。
【0114】
例えば、遮断部10が、積算値及び遮断閾値を用いて、電流を遮断するか否かを判断する一方、推定部133は、当該積算値及び当該遮断閾値を用いて、遮断までの時間を推定してもよい。これによって、更に高い精度で遮断時間の推定を行うことが可能になる。
【0115】
また、遮断部10の変形例2で説明したように、処理部13が、遮断条件の取得、積算値の取得、及び積算値が遮断閾値を超えたか否かの判断を含む遮断処理を行い、遮断部10は処理部13の指示に応じて遮断のみを行う場合も、推定部133は、当該積算値及び当該遮断閾値を用いて、遮断までの時間を高い精度で推定できる。
【0116】
さらに、遮断部10が遮断までの残り時間を管理する場合、推定部133は、現時点での残り時間を遮断部10から取得すればよい。こうして遮断部10から取得される残り時間も、断時間推定値の一種と考えてもよい。
【0117】
(1-1-3Cf)推定部の変形例6:電磁式の遮断部に対する推定
なお、遮断部10の変形例2で説明したような電磁式の遮断部10に対しても、例えば、制動ばねの弾性力やシリコンオイルの粘性抵抗等を考慮した係数kを用いることで、積算値及び遮断閾値に基づく高精度の推定は可能である。
【0118】
(1-1-4)出力部
出力部14は、遮断関連情報を出力する。遮断関連情報とは、推定部133が取得した遮断時間推定値に関する情報である。遮断関連情報は、例えば、遮断時間推定値である。
【0119】
または、遮断関連情報は、予告情報でもよい。予告情報とは、遮断を予告する情報である。予告情報は、例えば、配線200が過電流状態にあり、近く電流を遮断する旨の情報でもよい。予告情報は、現時点での電流実効値、及び現時点での遮断時間推定値、の少なくとも一方を含むことが好適である。
【0120】
または、遮断関連情報は、催促情報でもよい。催促情報とは、遮断への事前の対応を催促する情報である。事前の対応とは、例えば、配線200に接続されている電気機器に対する操作である。操作は、例えば、PCのバックアップ、消費電力が大きい家電の電源オフなどであるが、これに限らない。
【0121】
出力部14による出力は、通常、ディスプレイへの表示であるが、スピーカからの音声出力でもよい。また、出力は、例えば、スマートフォン等の外部の装置への送信を含むことが好適である。さらに、出力には、例えば、記録媒体への記録、遮断システム内の他の構成要素への引き渡しなども含まれてもよい。
【0122】
こうして、電路を通る電流の電流実効値を取得し、当該電流実効値を基に当該電流が遮断されるまでの時間(遮断時間)を推定し、遮断時間推定値に関する遮断関連情報を出力することにより、遮断前の過電流状態において、遮断までの時間をユーザが認識可能となり、事前の対処(例えば、PCのバックアップ、一部の機器の電源オフ等)を容易化できる。
【0123】
出力部14による出力は、表示器(図示しない)への表示及び外部の装置(図示しない)への送信の少なくとも一方を含む。
【0124】
表示器は、本例では、分電盤100のカバー(図示しない)の外面に設けられたディスプレイ(図示しない)である。ただし、表示器は、遮断システムの外部のディスプレイ(例えば、宅内のLAN等のネットワークに接続されたテレビ)でもよい。
【0125】
外部の装置は、例えば、スマートフォン等の携帯端末であるが、通信機能をする機器であれば、その種類や所在は問わない。
【0126】
こうして、遮断関連情報を表示または外部に送信することで、ユーザの所在によらず、過電流状態等の認識が可能化される。
【0127】
(1-2)処理部等の動作
遮断システム(遮断器1)を構成する処理部13及び出力部14は、例えば、図3及び図4に示すフローチャートの処理に従って動作する。なお、このフローチャートの処理は、遮断システムの起動に応じて開始され、シャットダウンに応じて終了される。
【0128】
処理が開始されると、最初、処理部13は、“積算値”をリセットする。(ステップS1)。“積算値”とは、演算部132が取得した積算値を示す変数である。これにより、“積算値”は“0”に初期化される。
【0129】
次に、処理部13は、現在時刻が取得タイミングであるか否かを判断する(ステップS2)。取得タイミングとは、電流値を取得するタイミングである。
【0130】
詳しくは、例えば、遮断システムのメモリに、取得タイミングに関するタイミング情報が格納されている。タイミング情報は、通常、電流値を取得(サンプリング)する周期(サンプリング周期)を示す情報である。なお、サンプリング周期は、電流の周期(60Hz又は50Hz)に対し、例えば、10倍以上が好適であるが、2倍以上であればよい。
【0131】
処理部13は、プロセッサの内蔵時計又はNTP(Network Time Protocol)サーバ等から現在時刻を示す時刻情報を取得し、タイミング情報のタイミングと一致するか否かを判断する。
【0132】
そして、ステップS2で一致すると判断された場合、処理部13を構成する取得部131が、電流センサの出力(アナログの電流波形)をサンプリングし、電流値(デジタルの標本値)を取得する(ステップS3)。
【0133】
なお、ステップS3で取得された電流値は、メモリに時系列に(又はステップS2で取得された時刻情報と対応付けて)記憶され、これによって、アナログの電流波形に沿うデジタルの電流値の集合が格納される結果となる。
【0134】
次に、演算部132は、ステップS3で取得された電流値を基に電流実効値を算出する(ステップS4)。なお、電流実効値の算出方法については、前述したので説明を省略する。
【0135】
次に、処理部13は、ステップS4で算出された電流実効値と、予め決められた開始閾値(例えば、定格電流値の1.1倍)とを比較し、“電流実効値≧開始閾値”であるか否かを判断する(ステップS5)。
【0136】
ステップS5で“電流実効値≧開始閾値”であると判断された場合、処理部13等は、遮断関連処理を実行する(ステップS6)。なお、遮断関連処理については、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0137】
ただし、ステップS6の遮断関連処理は、遮断時間推定値を取得する処理(遮断時間推定処理)に加えて、遮断部10に遮断動作を実行させる処理(遮断処理)も含んでもよい。このような遮断関連処理については、変形例(図5参照)で説明する。
【0138】
ステップS6で遮断時間推定値が取得されると、出力部14は、当該遮断時間推定値に関する遮断関連情報を出力する(ステップS7)。なお、ここでの出力は、ディスプレイへの表示でもよいし、スマートフォン等の外部の装置への送信でもよいし、表示及び送信の両方でもよい。
【0139】
出力される遮断関連情報は、遮断時間推定値でもよいし、「過電流状態にあり、近く遮断される」旨を通知する通知情報でもよいし、このような通知情報と遮断時間推定値とを含む情報でもよい。その後、ステップS2に戻る。
【0140】
なお、図3のフローチャートにおいて、S5の判断結果が“電流実効値<開始閾値”から“電流実効値≧開始閾値”に変化した後、同様の判断結果“電流実効値≧開始閾値”が継続している状態(過電流状態)において、S5の判断結果が“電流実効値<開始閾値”に変化しても、処理が直ちにステップS1に戻ることはない。例えば、同様の判断結果“電流実効値<開始閾値”が予め決められた回数以上継続した場合に、処理はステップS1に戻る。
【0141】
(1-2-1)遮断関連処理
上記ステップS6の遮断関連処理は、例えば、図4のフローチャートに従って実行される。
【0142】
演算部132は、ステップS3で算出した電流実効値の2乗に係数kを乗算し、当該乗算結果を“積算値”に加算し、当該加算結果(つまり“積算値+k×(電流実効値)”)を“積算値”にセットする(ステップS61)。係数kは、複数の区間に対応する複数の係数のうち、当該電流実効値が属する区間に対応する係数である。
【0143】
詳しくは、例えば、メモリに、電流実効値の範囲を区分した複数の区間(例えば、前述した第1-第7の7つの区間)、及び当該複数の区間に対応する複数の係数(例えば、前述した7つの係数k1-k7)、が格納されている。演算部132は、当該格納されている複数の区間のうち、ステップS3で算出した電流実効値が属する区間を特定する。そして、演算部132は、当該格納されている複数の係数のうち、当該特定した区間に対応する係数を取得し、当該取得した係数を上記係数kとして、ステップS61の演算を行う。
【0144】
推定部133は、ステップS3で算出された電流実効値に対応する遮断時間を取得する(ステップS62)。詳しくは、メモリに、図2に点線で示した遮断特性曲線が格納されている。
【0145】
前述したように、図2の遮断特性曲線は、第1-第7の7つの区間に対応する7つの線分で構成される折れ線であり、メモリには、上記7つの区間に対応付けて、第1-第7の7つの線分情報が格納される。区間は、開始値及び終了値で表現され、開始値は、区間の左端に対応する値であり、終了値は、区間の右端に対応する値である。線分情報とは、線分を規定する情報であり、線分情報は、当該線分に対応する区間の開始値及び当該開始値に対応する遮断時間と、当該区間の終了値及び当該開始値に対応する遮断時間と、で構成される。
【0146】
ただし、遮断特性曲線は、滑らかな曲線でもよく、その場合、メモリには、実行電流値と遮断時間との対の集合が格納される。なお、遮断特性曲線が折れ線の場合も、実行電流値と遮断時間との対の集合が格納されてもよい。
【0147】
推定部133は、当該格納されている特性情報を用いて、当該算出した電流実効値に対応する遮断時間を取得する。
【0148】
次に、推定部133は、ステップS4で取得された電流実効値の2乗に、ステップS62で取得した遮断時間を乗算し、さらに係数kを乗算して、当該乗算結果(つまり“k×(電流実効値)×遮断時間”)を“遮断閾値”にセットする(ステップS63)。
【0149】
次に、処理部13は、電流センサ11の出力を基に、電路の電流が未遮断か否かを判断する(ステップS64)。ここで未遮断と判断された場合、上位の処理に戻る。
【0150】
ステップS64で遮断済みと判断された場合、推定部133は、“遮断閾値”から“積算値”を減算し、ステップS4で取得した電流実効値の2乗に係数kを乗算する。そして、推定部133は、当該減算結果(つまり“遮断閾値-積算値”)を当該乗算結果(つまり““k×(電流実効値)”)で除算し、当該除算結果(つまり“(遮断閾値-積算値)/{k×(電流実効値)}”)を“遮断時間推定値”にセットする(ステップS65)。その後、上位の処理(図3参照)にリターンする。
【0151】
(1-2-2)遮断関連処理の変形例
ステップS6の遮断関連処理は、図5のフローチャートに従って実行されてもよい。
【0152】
図5のフローチャートは、図4のフローチャートに対し、ステップS64をステップS64a及びステップS64aに置き換えたものである。また、図4のフローチャートでは推定部133によって実行されたステップS62及びS63が、図5のフローチャートでは、遮断部10によって実行される。さらに、図5のフローチャートのステップS65では、推定部133は、遮断部10が取得した遮断閾値を用いて、遮断時間推定値を取得。ステップS63で遮断部10によって“遮断閾値”に{k×(電流実効値)×遮断時間}がセットされた後、遮断部10は、“積算値”と“遮断閾値”とを比較し、“積算値”が“遮断閾値”よりも小さい(つまり“積算値<遮断閾値”である)か否かを判断する(ステップS64a)。ここで“積算値<遮断閾値”であると判断された場合は、遮断部10から推定部133に“遮断閾値”が引き渡され、ステップS65に進む。
【0153】
一方、“積算値”は“遮断閾値”よりも小さくない(つまり“積算値≧遮断閾値”である)と判断された場合、遮断部10は、幹線20を流れる電流を遮断する(ステップS64b)。その後、上位の処理(図3参照)にリターンする。
【0154】
(1-1A)遮断器の具体例
図1の遮断器1は、具体的には、前述したように、単相3線式の幹線20用の主幹ブレーカ(図6図8参照)である。遮断部10は、当該幹線20を構成する第1電路L1及び第2電路L2の少なくとも一方で過電流状態が遮断時間を超えて継続すると、当該幹線20を流れる電流を遮断する。
【0155】
本具体例では、第1電路L1に第1電流センサ11が、第2電路L2に第2電流センサ12がそれぞれ設けられ、第1電流センサ11及び第2電流センサ12の各々の出力について、取得部131が電流値を取得し、演算部132が電流実効値を算出する。そして、電流実効値が開始閾値以上となった電路について、演算部132による積算値の取得、及び推定部133による遮断時間推定値の取得、を含む遮断関連処理が実行され、出力部14によって、遮断時間推定値に関する遮断関連情報が出力される。
【0156】
(1-1B)遮断器の変形例1
本変形例1における遮断器1は、単相2線式の幹線20用の主幹ブレーカ(図示しない)である。この場合、遮断部10は、当該幹線20を構成する電路L1で過電流状態が遮断時間を超えて継続すると、当該幹線20を流れる電流を遮断する。
【0157】
本例では、電路L1に電流センサ11が設けられ、電流センサ11の出力について、電流値が取得され、電流実効値が算出される。そして、電流実効値が開始閾値以上となった場合に、上記と同様の遮断関連処理が行われ、遮断関連情報が出力される。
【0158】
(1-1C)遮断器の変形例2
本変形例2における遮断器1は、分岐ブレーカである。分岐ブレーカは、例えば、図7に示す分岐線21又は分岐線22用の分岐ブレーカ2である。分岐線21は、第1電路L1から分岐した第1分岐電路L1b、及び第3電路Nから分岐した第3分岐電路Nbを含む。分岐線22は、第2電路L2から分岐した第2分岐電路L2b、及び第3電路Nから分岐した第3分岐電路Nbを含む。
【0159】
遮断器1が分岐線21用の分岐ブレーカ2である場合、遮断部10は、当該分岐線21を構成する第1分岐電路L1bで過電流状態が遮断時間を超えて継続すると、当該分岐線21を流れる電流を遮断する。本例では、第1分岐電路L1bに電流センサ11が設けられ、当該電流センサ11の出力に基づいて遮断関連処理等が行われ、遮断関連情報が出力される。
【0160】
遮断器1が分岐線22用の分岐ブレーカ2である場合も同様に、遮断部10は、当該分岐線22を構成する第2分岐電路L2bで過電流状態が遮断時間を超えて継続すると、当該分岐線22を流れる電流を遮断する。本例では、第2分岐電路L2bに電流センサ11が設けられ、当該電流センサ11の出力に基づいて遮断関連処理等が行われ、遮断関連情報が出力される。
【0161】
(1-1D)遮断器の変形例3
本変形例4において、交流は三相交流であり、遮断器1は、三相3線式の幹線(図示しない)用の主幹ブレーカ(図示しない)である。すなわち、この場合、遮断部10は、当該幹線を構成する3つの電路(図示しない)の少なくとも一方で過電流状態が遮断時間を超えて継続すると、当該幹線を遮断する。
【0162】
本例では、3つの電路の各々に電流センサ11が設けられ、当該3つの電流センサ11の各々の出力について、図3図5と同様の処理が行われる。
【0163】
(2)遮断システムの変形例1
なお、遮断システムは、本開示の実施形態に係る分電盤100であってもよい。分電盤100は、図6及び図7に示すように、主幹ブレーカ1、複数の分岐ブレーカ2、及びリミッタ3を含む。
【0164】
前述した遮断器1(図1参照)は、本例では、主幹ブレーカ1に対応する。本変形例の遮断システムは、実施形態で説明した遮断器1に対応する主幹ブレーカ1に加えて、複数の分岐ブレーカ2及びリミッタ3を含む。
【0165】
主幹ブレーカ1は、図8に示すように、第1遮断部10、第1電流センサ11、第2電流センサ12、処理部13及び出力部14を備える。処理部13は、取得部131、演算部132及び推定部133を備える。
【0166】
すなわち、本例の主幹ブレーカ1は、図1の遮断器1において、遮断部10を第1遮断部10に、電流センサ11を第1電流センサ11にそれぞれ置き換え、第2電流センサ12を追加したものである。
【0167】
なお、処理部13及び出力部14、並びに、処理部13を構成する取得部131、演算部132及び推定部133は、基本的に、図1の遮断器1におけるものと同様の動作を行う。以下では、相違点のみ説明する。
【0168】
前述した配線200は、本例では単相3線式の幹線20である。
【0169】
前述した電流センサ11は、本例では、第1電路L1に設けられる第1電流センサ11である。
【0170】
なお、第1電流センサ11及び第2電流センサ12は、主幹ブレーカ(遮断器)1内に限らず、例えば、リミッタ(第2遮断部)3の内部に設けられてもよいし、幹線20の近傍であれば、分電盤100内のどこに設けられてもよい。
【0171】
主幹ブレーカ(遮断器)1は、第2電路L2に設けられる第2電流センサ12を更に備える。
【0172】
前述した遮断部(10)は、本例では、第1電路L1及び第2電路L2の少なくとも一方に、予め決められた値(定格電流値)を超える電流が一定時間以上継続して流れたときに、第1電流及び第2電流を遮断する第1遮断部10である。
【0173】
取得部131は、第1電流センサ11の出力を基に、第1電路L1を通る第1電流に応じた第1電流値を取得する。また、取得部131は、第2電流センサ12の出力を基に、第2電路L2を通る第2電流に応じた第2電流値を取得する。
【0174】
演算部132は、第1電流値から第1電流の実効値である第1電流実効値を算出する。また、演算部132は、第2電流値から第2電流の実効値である第2電流実効値を算出する。
【0175】
推定部133は、第1電流実効値を基に、第1遮断部10が第1電流及び第2電流を遮断するまでの時間である第1遮断時間を推定し、当該推定結果を示す第1遮断時間推定値を取得する。また、推定部133は、第2電流実効値を基に、第1遮断部10が第1電流及び第2電流を遮断するまでの時間である第2遮断時間を推定し、当該推定結果を示す第2遮断時間推定値を取得する。
【0176】
出力部14は、推定部133が取得した第1遮断時間推定値及び前記第2遮断時間推定値の少なくとも一方に関する遮断情報を出力する。少なくとも一方とは、通常、前記第1遮断時間推定値及び前記第2遮断時間推定値のうち、小さい方であるが、両方でもよいし、大きい方でもよい。
【0177】
なお、前述した電源回路(図示しない)は、通常、第1電路L1及び第2電路L2に接続されるが、第1電路L1又は第2電路L2と第3電路Nとに接続されてもよい。
【0178】
こうして、電路ごとに遮断時間を推定することにより、第1及び第2の2電路の少なくとも一方が過電流状態にあることを、当該2電路の遮断前にユーザに認識させることができる。
【0179】
出力部14は、第1電路L1及び第2電路L2の中から、第1電流実効値及び第2電流実効値のうち最大のもの、に対応する電路を特定し、当該特定した電路に関する電路情報を含む遮断情報を出力してもよい。最大のものとは、第1電流実効値及び第2電流実効値のうち大きい方であるが、第1電流実効値及び第2電流実効値が同じ値の場合は両方である。
【0180】
電路情報は、例えば、当該特定された電路が配設されている場所の名称(「キッチン」や「洗面所」等)が好適であるが、当該特定された電路に接続されている負荷の名称(例えば「エアコン」等)でもよいし、当該電路の名称(「L1」等)などでもよい。
【0181】
こうして、遮断の原因がどの電路かを特定する情報を出力することで、遮断の原因となる電路に接続されている負荷に対する適切な対処を容易化できる。
【0182】
リミッタ3は、第1電流実効値及び第2電流実効値を合計し、当該合計した結果を示す合計値が、予め決められた上限値に達したこと又は当該上限値を超えたことに応じて、前記第1電流及び前記第2電流を遮断する。上限値は、通常、遮断閾値よりも大きい値であり、例えば、ユーザが電力供給者と契約した電流値(契約電流値)である。
【0183】
なお、リミッタ3は、分電盤100の内蔵とは限らず、分電盤100の外部に設けられていてもよい。または、分電盤100以外の機器(例えば、スマートメータ)が、リミッタ3と同様の機能(総電流制限機能)を有していてもよい。言い換えると、遮断システムは、リミッタ3と同等の動作を行う第2遮断部3を有していてもよい。
【0184】
出力部14は、合計値が上限値に対して所定の割合に達したことに応じて、前記合計値が前記上限値に近づいている旨の警告を含む遮断情報を出力する。所定の割合は、例えば、8割、90%等であるが、これに限らない。
【0185】
こうして、電流実効値の合計が上限値(契約電流値)に近い場合に警告を出力することで、リミッタ3の動作(第2遮断部3による遮断)の前に、リミッタが作動しつつある状況をユーザが認識可能となり、事前の対処を容易化できる。
【0186】
(3)遮断システムの変形例2
なお、本実施形態の遮断システムを構成する電流センサ(11,12)は、遮断器1の内部に存在するが、遮断器1の外部に存在してもよい。遮断器1の外部とは、例えば、リミッタ3内であるが、分電盤100内の、主幹ブレーカ1及びリミッタ3以外の場所でもよい。
【0187】
(4)まとめ
第1の態様に係る遮断システム(1,2,100)は、遮断部(10)と、電流センサ(11,12)と、取得部(131)と、演算部(132)と、推定部(133)と、出力部(14)とを備える。前記遮断部(10)は、電路(L1,L2,N,L1b,L2b,Nb)に予め決められた値を超える電流が一定時間以上継続して流れたときに前記電流を遮断する。前記電流センサ(11,12)は、前記電路に設けられ、前記取得部(131)は、前記電流センサ(11,12)の出力を基に、前記電路(L1,L2)を通る電流に応じた電流値を取得する。前記演算部(132)は、前記電流値から前記電流の実効値である電流実効値を算出する。前記推定部(133)は、前記電流実効値を基に、前記遮断部(10)が前記電流を遮断するまでの時間である遮断時間を推定し、当該推定結果を示す遮断時間推定値を取得する。前記出力部(14)は、前記遮断時間推定値に関する情報である遮断関連情報を出力する。
【0188】
この態様によれば、電路を通る電流の電流実効値を取得し、当該電流実効値を基に当該電流が遮断されるまでの時間(遮断時間)を推定し、出力することで、遮断前の過電流状態において、遮断までの時間をユーザが認識可能となり、事前の対処を容易化できる。
【0189】
第2の態様に係る遮断システムでは、第1の態様において、前記遮断部(10)は、前記電流による前記電路の温度上昇に応じて前記電流を遮断する。
【0190】
この態様によれば、遮断部が熱動式、又は熱動式と同等の電子式である場合に、電路を通る電流の通過エネルギーを示す積算値を用いることで、より高い精度での推定が可能になる。
【0191】
第3の態様に係る遮断システムでは、第2の態様において、前記演算部(132)は、さらに、前記算出した電流実効値の2乗に予め決められた係数を乗算し、当該乗算結果を積算し、当該積算結果を示す積算値を取得する。前記推定部(133)は、前記遮断部(10)の動作特性を基に、前記電流実効値に対応する遮断時間を取得し、前記乗算結果に前記遮断時間を乗算することにより遮断閾値を取得する。そして、前記推定部(133)は、前記遮断閾値から前記積算値を減算し、当該減算結果を前記乗算結果で除算し、当該除算結果に基づいて、前記遮断時間推定値を取得する。
【0192】
この態様によれば、電路を通る電流の通過エネルギーを示す積算値を用いることで、遮断時間を高い精度で推定することが可能になる。
【0193】
第4の態様に係る遮断システムでは、第3の態様において、前記演算部(132)は、前記電流実効値が予め決められた開始閾値に達したこと又は前記開始閾値を超えたことに応じて、前記積算値の取得を開始する。
【0194】
この態様によれば、電流実効値が閾値を超えたことに応じて積算開始することで、演算量の抑制と推定精度の向上との両立を図ることができる。
【0195】
第5の態様に係る遮断システムでは、第3又は第4の態様において、前記遮断部(10)は、前記電路の温度上昇に応じて変形するバイメタル(図示しない)を含む。前記演算部(132)は、前記温度上昇に応じた前記バイメタルの変形に関する特性に応じて、前記電流実効値の範囲を複数の区間に区分し、前記区間ごとに異なる係数を乗算する。
【0196】
この態様によれば、遮断部に含まれるバイメタルの特性に応じた係数であり、電流実行値の区間ごとに異なる係数を用いることで、熱動式の遮断部に対して、的確な推定を行える。
【0197】
第6の態様に係る遮断システムでは、第1の態様において、前記電路(L1,L2,N,L1b,L2b,Nb)は、単相3線式の幹線(20)を構成するL1相の電圧側線に対応する第1電路(L1)である。前記電流センサ(11,12)は、前記第1電路(L1)に設けられる第1電流センサ(11)である。前記遮断システムは、前記幹線(20)を構成するL2相の電圧側線に対応する第2電路(L2)に設けられる第2電流センサ(12)を更に備える。前記遮断部(10)は、前記第1電路(L1)及び前記第2電路(L2)の少なくとも一方に前記予め決められた値を超える電流が前記一定時間以上継続して流れたときに、前記第1電路を通る第1電流及び前記第2電路を通る第2電流を遮断する第1遮断部(10)である。前記取得部(131)は、前記第1電流センサ(11)の出力を基に、前記第1電流に応じた第1電流値を取得し、前記第2電流センサ(12)の出力を基に、前記第2電流に応じた第2電流値を取得する。前記演算部(132)は、前記第1電流値から前記第1電流の実効値である第1電流実効値を算出し、前記第2電流値から前記第2電流の実効値である第2電流実効値を算出する。前記推定部(133)は、前記第1電流実効値を基に、前記第1遮断部(10)が前記第1電流及び前記第2電流を遮断するまでの時間である第1遮断時間を推定し、当該推定の結果を示す第1遮断時間推定値を取得する。また、前記推定部(133)は、前記第2電流実効値を基に、前記第1遮断部(10)が前記第1電流及び前記第2電流を遮断するまでの時間である第2遮断時間を推定し、当該推定の結果を示す第2遮断時間推定値を取得する。前記出力部(14)は、前記第1遮断時間推定値及び前記第2遮断時間推定値の少なくとも一方に関する遮断情報を出力する。
【0198】
この態様によれば、電路ごとに遮断時間を推定することで、2電路の少なくとも一方が過電流状態にあることを、2電路の遮断前にユーザに認識させることができる。
【0199】
第7の態様に係る遮断システムでは、第6の態様において、前記出力部(14)は、前記第1電路(L1)及び前記第2電路(L2)の中から、前記第1電流実効値及び前記第2電流実効値のうち最大のもの、に対応する電路を特定し、当該特定した電路に関する電路情報を含む遮断情報を出力する。
【0200】
この態様によれば、遮断の原因がどの電路かを特定する情報を出力することで、遮断の原因となる電路に接続されている負荷に対する適切な対処を容易化できる。
【0201】
第8の態様に係る遮断システムは、第6又は第7の態様において、前記第1電流実効値及び前記第2電流実効値を合計し、当該合計した結果を示す合計値が、予め決められた上限値に達したこと又は当該上限値を超えたことに応じて、前記第1電流及び前記第2電流を遮断する第2遮断部(リミッタ3)を更に備える。前記出力部(14)は、前記合計値が前記上限値に対して所定の割合に達したことに応じて、前記合計値が前記上限値に近づいている旨の警告を含む遮断情報を出力する。
【0202】
この態様によれば、電流実効値の合計が上限値に近い場合に警告を出力することで、電流実効値の合計が上限値に達したことによる遮断(リミッタの動作)についても、ユーザが認識可能となり、事前の対処を容易化できる。
【0203】
第9の態様に係る遮断システムでは、第1-第8の態様において、前記出力部(14)による出力は、表示器(図示しない)への表示、及び外部の装置(図示しない)への送信、の少なくとも一方を含む。
【0204】
この態様によれば、遮断関連情報を表示及び/又は送信することで、ユーザの所在によらず、過電流状態等の認識が可能化される。
【0205】
第10の態様に係る遮断器(1,2)は、遮断部(10)と、取得部(131)と、演算部(132)と、推定部(133)と、出力部(14)とを備える。前記遮断部(10)は、電路(L1,L2,N,L1b,L2b,Nb)に予め決められた値を超える電流が一定時間以上継続して流れたときに前記電流を遮断する。前記取得部(131)は、前記電路に設けられる電流センサ(11,12)の出力を基に、前記電路(L1,L2)を通る電流に応じた電流値を取得する。前記演算部(132)は、前記電流値から前記電流の実効値である電流実効値を算出する。前記推定部(133)は、前記電流実効値を基に、前記遮断部(10)が前記電流を遮断するまでの時間である遮断時間を推定し、当該推定結果を示す遮断時間推定値を取得する。前記出力部(14)は、前記遮断時間推定値に関する情報である遮断情報を出力する。
【0206】
この態様によれば、遮断前の過電流状態において、遮断までの時間をユーザが認識可能となり、事前の対処を容易化できる。
【0207】
第11の態様に係る分電盤(100)は、第10の態様の遮断器(1)と、前記電流センサ(11,12)と、を備える。
【0208】
この態様によれば、遮断前の過電流状態において、遮断までの時間をユーザが認識可能となり、事前の対処を容易化できる。
【符号の説明】
【0209】
100 分電盤
1 主幹ブレーカ(遮断器)
10 遮断部(第1遮断部)
11 第1電流センサ
12 第2電流センサ
13 処理部
14 出力部
131 取得部
132 演算部
133 推定部
2 分岐ブレーカ
3 リミッタ(第2遮断部)
200 配線
20 幹線
21 第1分岐線
22 第2分岐線
L1 第1電路
L1b 第1分岐電路
L2 第2電路
L2b 第2分岐電路
N 第3電路
Nb 第3分岐電路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8