(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】認知機能の判定方法、プログラム、認知機能の判定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20240426BHJP
G10L 17/00 20130101ALI20240426BHJP
G10L 25/15 20130101ALI20240426BHJP
G10L 25/21 20130101ALI20240426BHJP
G10L 25/66 20130101ALI20240426BHJP
【FI】
A61B10/00 H
G10L17/00 200C
G10L25/15
G10L25/21
G10L25/66
(21)【出願番号】P 2021537304
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2020029682
(87)【国際公開番号】W WO2021024987
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019143998
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】細川 満春
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 美紗
(72)【発明者】
【氏名】穗積 潤一
(72)【発明者】
【氏名】中島 博文
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205191(JP,A)
【文献】特許第6537005(JP,B1)
【文献】特開2019-083902(JP,A)
【文献】特開2018-050847(JP,A)
【文献】特開2018-140741(JP,A)
【文献】特開2018-148987(JP,A)
【文献】上村 直人 他,「認知症と自動車運転」,老年期痴呆研究会誌,2010年08月24日,Vol.15,pp. 151 -159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
提示部と音声取得部と推定部と反映部とを備える認知機能の判定システムによる、運転免許証の発行と更新との少なくとも一方の役務を行う運転免許センターにおける、対象者への前記役務の提供に際して用いられる認知機能の判定方法であって、
前記提示部が、前記対象者に定型文の読み上げを促す情報を提示する提示処理と、
前記音声取得部が、前記対象者に前記読み上げを実行させ前記読み上げに係る音声データを取得する音声取得処理と、
前記推定部が、前記音声取得処理で取得された前記音声データに基づいて、前記対象者の認知機能を推定する推定処理と、
前記反映部が、前記運転免許センターでの前記対象者への前記役務の提供の手順又は前記役務の提供の可否の判断に、前記推定処理の結果を反映させる反映処理と、
を備え、
前記提示処理では、前記運転免許証に関連する質問を前記対象者に提示し、
前記質問は、前記質問に対する解答としての前記定型文の前記読み上げを前記対象者に促す内容を含
み、
前記質問は、前記対象者の音声を取得する通話装置の表示部にスピードメータの画像を表示させてメータが指し示す速度を答えさせる質問、又は前記表示部にナンバープレートの画像を表示させて地名及び番号を答えさせる質問を含む、
認知機能の判定方法。
【請求項2】
前記推定処理では、前記音声データから抽出される特徴量を用いて前記認知機能を推定する、
請求項1に記載の認知機能の判定方法。
【請求項3】
前記特徴量は、
前記音声データで示される前記対象者の音声に含まれる音節における母音の第一フォルマント周波数、又は第二フォルマント周波数に関する量、
前記対象者の音声に含まれる開音節における子音の音圧と前記子音に後続する母音の音圧との間の音圧差、
前記対象者の音声に含まれる複数の開音節における、子音の音圧と前記子音に後続する母音の音圧との間の音圧差の、ばらつき、
前記読み上げに要した総時間、
前記定型文の複数回の前記読み上げにそれぞれ要した時間の変化量
からなる群から選択される1以上を含む、
請求項2に記載の認知機能の判定方法。
【請求項4】
前記判定システムは、記録部を更に備え、
前記判定方法は、前記音声取得処理で取得された前記音声データを前記記録部に記録する記録処理を、更に備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の認知機能の判定方法。
【請求項5】
前記推定処理では、機械学習により生成された学習済モデルを用いて、前記認知機能を推定する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の認知機能の判定方法。
【請求項6】
前記音声取得処理では、電気通信回線を通じて前記音声データを取得する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の認知機能の判定方法。
【請求項7】
前記推定処理では、前記音声取得処理で取得された前記音声データに加えて、前記対象者の属性に関する属性データを更に用いて、前記認知機能を推定する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の認知機能の判定方法。
【請求項8】
前記提示処理では、前記対象者に前記定型文の前記読み上げを促す自動音声を再生する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の認知機能の判定方法。
【請求項9】
前記提示処理では、前記対象者に前記定型文の前記読み上げを促す情報を視覚的に与える、
請求項1~8のいずれか1項に記載の認知機能の判定方法。
【請求項10】
前記判定システムは、本人確認部を更に備え、
前記判定方法は、前記本人確認部が、前記対象者が本人であることを確認する本人確認処理を更に備える、
請求項1~9のいずれか1項に記載の認知機能の判定方法。
【請求項11】
前記本人確認処理は、前記対象者の生体情報を用いて行う、
請求項10に記載の認知機能の判定方法。
【請求項12】
前記生体情報は、前記対象者の声紋の情報を含む、
請求項11に記載の認知機能の判定方法。
【請求項13】
前記判定システムは、対象者特定部を更に備え、
前記判定方法は、前記対象者特定部が、前記対象者を特定する対象者特定処理を更に備える、
請求項1~12のいずれか1項に記載の認知機能の判定方法。
【請求項14】
前記対象者特定処理は、前記対象者の生体情報を用いて行う、
請求項13に記載の認知機能の判定方法。
【請求項15】
前記判定システムは、操作部を更に備え、
前記判定方法は、前記操作部が、前記対象者からの操作入力を受け付ける操作受付処理
を更に備え、
前記推定処理は、前記音声取得処理で取得された前記音声データに加えて、前記操作入力の結果を更に用いて、前記認知機能を推定する、
請求項1~14のいずれか1項に記載の認知機能の判定方法。
【請求項16】
前記判定方法は、前記判定システムが、前記対象者以外の人が前記対象者の代わりに前記判定方法による検査を受検するのを抑止する代理受検抑止処理を更に備え、
前記代理受検抑止処理では、前
記通話装置の
前記表示部に、所定の注意文を表示させる、
請求項1~15のいずれか1項に記載の認知機能の判定方法。
【請求項17】
前記判定方法は、前記判定システムが、前記対象者以外の人が前記対象者の代わりに前記判定方法による検査を受検するのを抑止する代理受検抑止処理を更に備え、
前記代理受検抑止処理では、前
記通話装置で撮影された前記対象者の画像を、前記通話装置の
前記表示部に表示させる、
請求項1~
15のいずれか1項に記載の認知機能の判定方法。
【請求項18】
前記推定処理で推定された前記対象者の前記認知機能の推定結果には、有効期限が設定され、
前記反映処理では、前記有効期限内の前記推定結果が反映される、
請求項1~17のいずれか1項に記載の認知機能の判定方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の認知機能の判定方法を、1以上のプロセッサに実行させ
るプログラム。
【請求項20】
運転免許証の発行と更新との少なくとも一方の役務を行う運転免許センターにおける、対象者への前記役務の提供に際して用いられる認知機能の判定システムであって、
前記対象者に定型文の読み上げを促す情報を提示する提示部と、
前記対象者に前記読み上げを実行させ前記読み上げに係る音声データを取得する音声取得部と、
前記音声取得部で取得された前記音声データに基づいて、前記対象者の認知機能を推定する推定部と、
前記運転免許センターでの前記対象者への前記役務の提供の手順又は前記役務の提供の可否の判断に、前記推定部の推定結果を反映させる反映部と、
を備え、
前記提示部は、前記運転免許証に関連する質問を前記対象者に提示し、
前記質問は、前記質問に対する解答としての前記定型文の前記読み上げを前記対象者に促す内容を含
み、
前記質問は、前記対象者の音声を取得する通話装置の表示部にスピードメータの画像を表示させてメータが指し示す速度を答えさせる質問、又は前記表示部にナンバープレートの画像を表示させて地名及び番号を答えさせる質問を含む、
認知機能の判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に認知機能の判定方法、プログラム、認知機能の判定システムに関し、より詳細には、運転免許センターでの役務に関連して用いられる認知機能の判定方法、プログラム、認知機能の判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車等の運転免許更新時における後期高齢者を対象として実施する認知機能検査の進行を管理するためのシステムが、開示されている。
【0003】
特許文献1のシステムは、検査員が使用する検査員装置と、受検者が使用する複数台の端末装置とから構成される。
【0004】
複数の端末装置の各々は、タブレット型端末装置であり、表示画面上にタッチパネルを備える表示入力装置を有する。端末装置の表示画面上には、説明文、注意文、設問、回答欄等が表示される。受検者は、表示画面上に指または専用ペンを用いてタッチしたり、文字、数字等を手書きしたりして、解答等を入力する。検査員装置は、認知機能検査の進行管理のための情報を表示する表示装置を有する。
【0005】
特許文献1のシステムでは、認知機能検査の実施に時間がかかるため、免許更新時に認知機能検査を受検する受検者にかかる負担が大きくなり得る。また、高齢者人口の増加に伴い、免許更新時に認知機能検査の受検が必要な対象者の数も増加しているため、一人当たりの認知機能検査の実施にかかる時間が長くなると、運転免許センターにかかる負担も大きくなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
本開示は、上記事由に鑑みてなされており、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能な認知機能の判定方法、プログラム、及び認知機能の判定システムを提供することを目的とする。
【0008】
本開示の一態様に係る認知機能の判定方法は、提示部と音声取得部と推定部と反映部とを備える認知機能の判定システムによる判定方法である。前記判定方法は、運転免許証の発行と更新との少なくとも一方の役務を行う運転免許センターにおける、対象者への前記役務の提供に際して用いられる。前記判定方法は、提示処理と、音声取得処理と、推定処
理と、反映処理と、を備える。前記提示処理では、前記提示部が、前記対象者に定型文の読み上げを促す情報を提示する。前記音声取得処理では、前記音声取得部が、前記対象者に前記読み上げを実行させ前記読み上げに係る音声データを取得する。前記推定処理では、前記推定部が、前記音声取得処理で取得された前記音声データに基づいて、前記対象者の認知機能を推定する。前記反映処理では、前記反映部が、前記運転免許センターでの前記対象者への前記役務の提供の手順又は前記役務の提供の可否の判断に、前記推定処理の結果を反映させる。前記提示処理では、前記運転免許証に関連する質問を前記対象者に提示する。前記質問は、前記質問に対する解答としての前記定型文の前記読み上げを前記対象者に促す内容を含む。前記質問は、前記対象者の音声を取得する通話装置の表示部にスピードメータの画像を表示させてメータが指し示す速度を答えさせる質問、又は前記表示部にナンバープレートの画像を表示させて地名及び番号を答えさせる質問を含む。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、上記の認知機能の判定方法を、1以上のプロセッサに実行させるプログラムである。
【0010】
本開示の一態様に係る認知機能の判定システムは、運転免許証の発行と更新との少なくとも一方の役務を行う運転免許センターにおける、対象者への前記役務の提供に際して用いられる。前記判定システムは、提示部と、音声取得部と、推定部と、反映部と、を備える。前記提示部は、前記対象者に定型文の読み上げを促す情報を提示する。前記音声取得部は、前記対象者に前記読み上げを実行させ前記読み上げに係る音声データを取得する。前記推定部は、前記音声取得部で取得された前記音声データに基づいて、前記対象者の認知機能を推定する。前記反映部は、前記運転免許センターでの前記対象者への前記役務の提供の手順又は前記役務の提供の可否の判断に、前記推定部の推定結果を反映させる。前記提示部は、前記運転免許証に関連する質問を前記対象者に提示する。前記質問は、前記質問に対する解答としての前記定型文の前記読み上げを前記対象者に促す内容を含む。前記質問は、前記対象者の音声を取得する通話装置の表示部にスピードメータの画像を表示させてメータが指し示す速度を答えさせる質問、又は前記表示部にナンバープレートの画像を表示させて地名及び番号を答えさせる質問を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態の認知機能の判定方法を実行するための判定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、同上の判定システムを模式的に示す模式図である。
【
図3】
図3は、同上の判定方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)概要
現在日本国では、75才以上のドライバーには、運転免許証の更新時に認知機能検査を受検することが義務づけられている。現状この認知機能検査は、主に、指導員が出す問題に対して受検者がテスト用紙に解答を記入する方式で実施されている。しかしながら、このような方式では、検査会場及び指導員の確保、解答内容の採点等のため、検査を実施する側の負担が大きくなる可能性がある。また、検査自体に時間がかかり、指定された時間に検査会場に向かう必要もあるため、受検者側にも負担を強いる可能性がある。本実施形態の認知機能の判定方法(以下、単に「判定方法」ともいう)及び認知機能の判定システム10(以下、単に「判定システム10」ともいう)は、一例として、このような認知機能検査の代替、或いは認知機能検査の受検者を絞り込むための一次スクリーニングとして用いられることを想定する。
【0013】
例えば、運転免許証の更新時に認知機能検査が義務づけられているドライバー(以下、「対象者2」ともいう)は、運転免許証の更新の通知を郵便等で受け取った場合、運転免許センター1で免許の更新を行う前に、本実施形態の認知機能の判定方法による検査を受検する。この検査結果は、運転免許センター1にて対象者2が運転免許証の更新を行う際に、上記の認知機能検査の代わりとして、或いは上記の認知機能検査の受検が必要な受検者を絞り込むために、用いられ得る。これにより、免許更新時にかかる負担を軽減することが可能となる。
【0014】
まず、本実施形態の認知機能の判定方法(以下、単に「判定方法」ともいう)、及び認知機能の判定システム10の概要について、説明する。
【0015】
本実施形態の判定方法は、上述のように、運転免許センター1(
図2参照)における、対象者2への役務の提供に際して用いられる。運転免許センター1は、ここでは、自動車運転免許証(以下、単に「運転免許証」ともいう)の新規交付(以下、「発行」ともいう)と更新との少なくとも一方の役務を行う施設又は場所を意味する。
【0016】
本実施形態での運転免許センター1は、運転免許証の発行と更新との少なくとも一方の役務を行えばよく、運転免許試験場、交通安全(教育)センター、総合交通センター、運転(者)教育センター、運転者講習センター、免許センター、安全運転学校、試験場、(免許)更新センター等と呼ばれる施設を含み得る。また、本実施形態での運転免許センター1は、運転免許証の更新の役務を行う施設としての警察署を含んでもよい。運転免許センター1は、運転免許証の再交付等の、他の役務を更に行ってもよい。
【0017】
図3に示すように、本実施形態の判定方法は、音声取得処理S6と、推定処理S9と、反映処理S12と、を含む。
【0018】
音声取得処理S6は、対象者2に定型文の読み上げを実行させ、読み上げに係る音声データを取得することを含む。推定処理S9は、音声取得処理S6で取得された音声データに基づいて、対象者2の認知機能を推定することを含む。反映処理S12は、運転免許センター1での対象者2への役務の提供の手順又は役務の提供の可否の判断に、推定処理S9の結果を反映させることを含む。
【0019】
判定システム10(
図1参照)は、本実施形態の判定方法を具現化する一態様である。つまり、判定システム10は、運転免許証の発行と更新との少なくとも一方の役務を行う運転免許センター1における、対象者2への役務の提供に際して用いられる。判定システム10は、音声取得処理S6を実行するための音声取得部F5と、推定処理S9を実行するための推定部F7と、反映処理S12を実行するための反映部F13と、を備えている。
【0020】
本実施形態の判定方法及び判定システム10では、対象者2への運転免許証の発行若しくは更新の際の手順又は可否の判断に反映されることとなる、対象者2の認知機能の推定を、対象者2が定型文の読み上げを行った際の音声を示す音声データに基づいて行っている。そのため、例えばテスト用紙に解答を記入してそれを採点する検査方法に比べて、認知機能の検査に要する時間及び手間を短縮することが可能となり、免許更新時に対象者2及び運転免許センター1にかかる負担を低減することが可能となる。要するに、本実施形態の判定方法及び判定システム10によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。また、運転免許証の発行時に認知機能検査を行なう場合についても、本実施形態の認知機能の判定方法及び判定システム10を用いることで、免許発行時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0021】
(2)詳細
以下、本実施形態の判定方法、判定システム10の詳細について、
図1~
図3を参照して説明する。
【0022】
(2.1)全体構成
図1、
図2に、本実施形態の判定方法を実行するための判定システム10の構成を示す。
【0023】
図1に示すように、判定システム10は、第1サーバ4と、第2サーバ5と、を備えている。判定システム10は、対象者2が所持する通話装置3と通信可能である。
【0024】
ここでは、通話装置3は、対象者2によって携帯可能な装置を想定する。また、第1サーバ4は、本実施形態の判定方法の少なくとも一部をサービスとして提供する団体(企業等)の施設に設置されることを想定する。また、第2サーバ5は、運転免許センター1或いは運転免許センター1を管轄する団体の施設に設置されることを想定する。ただし、本実施形態はこのような配置に限定されない。
【0025】
通話装置3は、対象者2の音声を音声データに変換し、変換して得られた音声データを他の機器へ送信するための装置である。また、通話装置3は、他の機器から送信された音声データを、音声に変換して出力するよう構成されている。一例として、通話装置3としては、対象者2が所持する携帯端末、携帯電話又はパーソナルコンピュータである。携帯端末は、一例として、スマートフォン、タブレット端末等である。ここでは、通話装置3がスマートフォンであることを想定する。そのため、以下では、通話装置3が他の装置(第1サーバ4)と通信することを、「電話をかける」とも表現する。
【0026】
図1に示すように、通話装置3は、通信部31と通話部32とを備えている。また、本実施形態の通話装置3は、表示部33、操作部34及び処理部35を更に備えている。
【0027】
通信部31は、通信インターフェースである。特に、通信部31は、電気通信回線NT1に接続可能な通信インターフェースであり、電気通信回線NT1を通じた通信を行う機能を有する。これにより、通話装置3は、電気通信回線NT1を通じて第1サーバ4と通信可能である(
図2参照)。
【0028】
電気通信回線NT1は、例えば、移動体通信網、PSTN(公衆交換電話網)、インターネット等を含み得る。電気通信回線NT1は、単一の通信プロトコルに準拠したネットワークだけではなく、異なる通信プロトコルに準拠した複数のネットワークで構成され得る。通信プロトコルは、周知の様々な有線及び無線通信規格から選択され得る。
図2では簡略化されているが、電気通信回線NT1は、リピータハブ、スイッチングハブ、ブリッジ、ゲートウェイ、ルータ等のデータ通信機器を含み得る。
【0029】
通信部31は、電気通信回線NT1を介して第1サーバ4へ信号を送信する。通信部31が第1サーバ4へ送信する信号には、例えば、通話部32が取得した対象者2の音声を示す音声データ(音声信号)がある。その他、通信部31が第1サーバ4へ送信する信号には、例えば、操作部34に対する対象者2の操作入力に応じて出力される操作信号がある。
【0030】
通信部31は、電気通信回線NT1を介して第1サーバ4からの信号を受信する。通信部31が第1サーバ4から受信する信号には、例えば、第1サーバ4が通話装置3からの要求を受けて自動送信する音声データ(音声信号)(以下「自動音声信号」ともいう)がある。その他、通信部31が第1サーバ4から受信する信号には、例えば、推定部F7による認知機能の推定結果を示す推定結果信号がある。
【0031】
通話部32は、スピーカとマイクロホンとを備えている。マイクロホンは、対象者2が発した音声を含む音を、音声データ(音声信号)へと変換し、通信部31を介して外部へ出力する。スピーカは、外部から通信部31を介して入力された音声データ(音声信号)を、音声(音)に変換して出力する。
【0032】
表示部33は、通信部31で受信されたデータ等を用いて表示を行う。表示部33は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイを含んでいる。
【0033】
操作部34は、対象者2からの操作入力を受け付け、受け付けた操作に応じた信号を出力する。本実施形態では、通話装置3は汎用のスマートフォンであるので、例えばタッチパネルディスプレイのように、表示部33と操作部34とが一体化されている。タッチパネルディスプレイにおいては、通話装置3は、表示部33に表示される各画面上でのボタン等のオブジェクトの操作(タップ、スワイプ、ドラッグ等)が操作部34で検出されることをもって、ボタン等のオブジェクトが操作されたことと判断する。つまり、表示部33及び操作部34は、各種の表示に加えて、対象者2からの操作入力を受け付けるユーザインタフェースとして機能する。
【0034】
処理部35は、通話装置3の全体的な制御、すなわち、通信部31、通話部32、表示部33及び操作部34の動作を制御するように構成される。処理部35は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、処理部35として機能する。プログラムは、ここでは処理部35のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0035】
通話装置3は、対象者2の生体情報を取得するための生体情報取得部を備えていてもよい。生体情報取得部は、例えば、対象者2の指紋の情報を取得する指紋取得部を有していてもよい。生体情報取得部は、例えば、対象者2の顔の情報を取得する顔情報取得部を有していてもよい。指紋取得部及び/又は顔情報取得部は、例えば通話装置3に設けられている撮像部(カメラ)であってもよい。その他、生体情報取得部は、対象者2の静脈情報を取得する静脈情報取得部を有していてもよい。
【0036】
第1サーバ4は、
図1に示すように、通信部41と記憶部42と処理部43とを備えている。
【0037】
第1サーバ4は、本実施形態の判定方法を実行する判定システム10の主体を構成する。第1サーバ4は、判定方法の各処理(
図3参照)のうち「対象者特定処理S2」、「属性取得処理S3」、「本人確認処理S4」、「提示処理S5」、「音声取得処理S6」、「記録処理S7」、「特徴量取得処理S8」、「推定処理(認知機能推定処理)S9」、「出力処理S10」を実行する。
【0038】
通信部41は、通信インターフェースである。通信部41は、電気通信回線NT1に接続可能な通信インターフェースであり、電気通信回線NT1を通じた通信を行う機能を有する。第1サーバ4は、電気通信回線NT1を通じて通話装置3と通信可能である。また、第1サーバ4は、電気通信回線NT1を通じて第2サーバ5と通信可能である。なお、通信部41が通話装置3と通信するための通信プロトコルは、通信部41が第2サーバ5と通信するための通信プロトコルと同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0039】
通信部41は、電気通信回線NT1を介して通話装置3へ信号を送信する。通信部41が通話装置3へ送信する信号には、上述の自動音声信号、推定結果信号等がある。また、通信部41は、電気通信回線NT1を介して通話装置3からの信号を受信する。通信部41が通話装置3から受信する信号には、上述の音声信号、操作信号等がある。
【0040】
通信部41は、電気通信回線NT1を介して第2サーバ5へ信号を送信する。通信部41が第2サーバ5へ送信する信号には、例えば、対象者2の本人確認を行うために用いられる本人確認情報を要求する、要求信号がある。その他、通信部41が第2サーバ5へ送信する信号には、推定部F7による認知機能の推定結果を示す推定結果信号がある。
【0041】
通信部41は、電気通信回線NT1を介して第2サーバ5からの信号を受信する。通信部41が第2サーバ5から受信する信号には、例えば、要求信号に応じて第2サーバ5から送信される、本人確認情報を示す信号がある。
【0042】
記憶部42は、情報を記憶するための装置である。記憶部42は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM等を含み得る。記憶部42には、通話装置3からの要求(電話での呼び出し)を受けて自動送信される自動音声の音声データが、記憶される。また、記憶部42には、学習済モデル(後述する)が記憶される。また、記憶部42は、通話装置3から送信される対象者2の音声データ(音声信号)を記憶するための領域を、有している。
【0043】
処理部43は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、処理部43として機能する。
【0044】
処理部43は、第1サーバ4の全体的な制御、すなわち、通信部41及び記憶部42の動作を制御するように構成される。また、
図1に示すように、処理部43は、対象者特定部F1と、属性取得部F2と、本人確認部F3と、提示部F4と、音声取得部F5と、記録部F6と、推定部F7と、出力部F8とを備えている。なお、対象者特定部F1、属性取得部F2、本人確認部F3、提示部F4、音声取得部F5、記録部F6、推定部F7及び出力部F8は、実体のある構成を示しているわけではなく、処理部43によって実現される機能を示している。
【0045】
対象者特定部F1は、通話装置3で通話している対象者2を特定する。本実施形態では、対象者特定部F1は、第2サーバ5の応答部F11(後述する)と協働して対象者2を特定する。
【0046】
対象者特定部F1は、例えば、通話装置3からの要求(電話での呼び出し)を受けると、記憶部42に記憶されている自動音声の音声データ(自動音声信号)を、通信部41を介して通話装置3へ送信する。
【0047】
対象者特定部F1が送信させる自動音声は、対象者2を特定するための対象者情報の入力を促す内容を含み得る。対象者情報は、例えば、対象者2の免許証番号を含み得る。或いは、対象者情報は、対象者2の氏名、住所等を含み得る。
【0048】
なお、対象者情報は通話装置3の電話番号であってもよく、この場合には対象者2による対象者情報の更なる入力は不要である。
【0049】
対象者特定部F1は、自動音声に対して対象者2から通話装置3に入力された対象者情報を、通話装置3から受信し、受信した対象者情報に基づいて対象者2を特定する。対象者特定部F1による対象者2の特定は、例えば、受信した対象者情報を、所定の情報データベースDB1に記憶されている本人情報と対照することで、行われる。本人情報を含む情報データベースDB1は、本実施形態では、第2サーバ5の記憶部52に記憶されている。
【0050】
対象者特定部F1は、対象者情報を第2サーバ5へ送信し、第2サーバ5から、対象者情報と情報データベースDB1との対照結果を受信する。対照結果は、第2サーバ5によって特定された対象者2を示す情報を含む。これにより、対象者特定部F1は、対象者2を特定する。なお、対象者特定部F1自体(すなわち第1サーバ4の処理部43)が、対象者情報と本人情報とを対照することで、対象者2を特定してもよい。例えば、対象者特定部F1は、第2サーバ5から情報データベースDB1の一部又は全部の情報を受信し、受信した情報データベースDB1の情報と対象者情報とを対照することで、対象者2を特定してもよい。
【0051】
すなわち、本実施形態の判定方法は、対象者2を特定するための対象者特定処理S2を含む。
【0052】
なお、通話装置3が指紋取得部等の生体情報取得部を有している場合、対象者情報は、対象者2の指紋等の生体情報を含み得る。或いは、対象者情報は、対象者2の生体情報として、対象者2の音声から得られる声紋の情報を含み得る。この場合、対象者特定処理S2は、対象者2の生体情報(指紋、声紋等)を用いて行われてもよい。
【0053】
属性取得部F2は、対象者特定部F1で特定された対象者2の属性に関する属性データを取得する。対象者2の属性としては、例えば、人種・性別・年齢(年代)・教育歴等がある。属性データは、例えば、上述の情報データベースDB1に、本人情報と紐付けて記憶されている。属性取得部F2は、通信部41を介して、第2サーバ5から対象者2の属性データを取得する。
【0054】
すなわち、本実施形態の判定方法は、対象者2の属性に関する属性データを取得する属性取得処理S3を含む。
【0055】
本人確認部F3は、通話装置3で実際に通話している人が、対象者特定部F1で特定された対象者2本人で間違いないかを確認する。すなわち、通話装置3で通話している人が、自分のものではない他人の対象者情報(免許証番号等)を誤って入力する可能性があるので、本人確認部F3が、通話している人が対象者2本人であることを確認する。本人確認部F3は、対象者特定部F1で対象者2を特定すると、通信部41を介して第2サーバ5へ要求信号を送信し、要求信号の応答として第2サーバ5から、本人確認情報(対照情報)を取得する。本人確認情報は、例えば、対象者2の音声を事前に録音して得られた音声データ(以下、「対照音声データ」という)である。本人確認部F3は、通話装置3から得られる音声データを、対照音声データと比較することで、音声データで示される音声の発声者(通話している人)が対象者2本人であることを確認する。例えば、本人確認部F3は、各音声データで示される音声の声紋を比較し、その一致度を判定することで、本人確認を行う。
【0056】
すなわち、本実施形態の判定方法は、対象者2が本人であることを確認するための本人確認処理S4を含む。本人確認処理S4は、対象者2の生体情報、より詳細には対象者2の声紋を用いて行われる。
【0057】
本人確認処理S4は、例えば、通話装置3から音声データを受信した場合に、任意のタイミングで行われてよい。例えば、本人確認処理S4は、対象者特定処理S2と平行して行われてよい。すなわち、対象者特定処理S2において対象者2の生体情報(声紋の情報)を用いて対象者2を特定し、かつ、本人確認処理S4において対象者2の生体情報(声紋の情報)を用いて本人確認を行なう構成の場合、対象者特定処理S2と平行して本人確認処理S4を行うことが可能である。また、本人確認処理S4は、判定方法の実行中及び実行後に、音声取得処理S6で取得される音声データを用いて随時行われてよい。
【0058】
本人確認処理S4は、音声データ以外の情報を用いて行われてもよい。例えば、本人確認処理S4は、対象者2の指紋等の声紋以外の生体情報を用いて行われてもよいし、免許証番号等の生体情報以外の情報を用いて行われてもよい。また、本人確認処理S4は、対象者特定処理S2と同じ情報を用いて行われてもよい。
【0059】
提示部F4は、対象者特定部F1による対象者2の特定後、記憶部42に記憶されている自動音声の音声データ(自動音声信号)を、通信部41を介して通話装置3へ送信する。
【0060】
提示部F4が送信させる自動音声は、対象者2に定型文の読み上げを促す指示内容を含む。指示内容は、例えば、対象者2に読み上げられるべき定型文と、この定型文の読み上げを行うべき期間の始点及び終点を示す音(例えば「ピ」音)と、を含んでもよい。
【0061】
指示内容は、異なる複数の定型文を含んでもよい。例えば、指示内容は、6種類の定型文を順次読み上げさせる内容を含んでもよい。定型文は、例えば、閉鎖子音と後続母音とからなる文字が、5以上含まれていてもよい。定型文の一例としては、例えば、「きたからきたかたたたきき」等の文がある。
【0062】
また、指示内容は、同一の定型文の複数回の読み上げを指示する内容を含んでもよい。この場合、指示内容は、定型文を読み上げるべき回数を含んでもよい。
【0063】
すなわち、本実施形態の判定方法は、定型文の読み上げを促す情報を対象者2に提示する提示処理S5を含む。また、提示処理S5は、対象者2に定型文の読み上げを促す自動音声を再生することを含む。
【0064】
音声取得部F5は、提示部F4によって送信された自動音声に応答して対象者2から発せられた音声を示すデータであって通話装置3から送信される音声データを、通信部41を介して取得する。すなわち、本実施形態の判定方法は、対象者2に定型文の読み上げを実行させ読み上げに係る音声データを取得する音声取得処理S6を含む。音声取得処理S6では、電気通信回線NT1を通じて、音声データが取得される。
【0065】
記録部F6は、音声取得部F5で取得した音声データを、記憶部42に記録(録音)させる。すなわち、本実施形態の判定方法は、音声取得処理S6で取得された音声データを記録する記録処理S7を含む。
【0066】
推定部F7は、記憶部42に記録された音声データ(音声取得部F5で取得した音声データ)を処理することで、対象者2の認知機能を推定する。すなわち、本実施形態の判定方法は、音声取得処理S6で取得された音声データに基づいて対象者2の認知機能を推定する推定処理S9を含む。
【0067】
推定部F7は、例えば、音声データから抽出される特徴量を用いて、対象者2の認知機能を推定する。すなわち、本実施形態の判定方法は、音声データから特徴量を抽出する特徴量取得処理S8を含む。また、推定部F7によって実行される推定処理S9は、音声データから抽出される特徴量を用いて認知機能を推定することを含む。
【0068】
本実施形態の判定システム10において、推定部F7は、属性取得部F2で取得した属性データを更に用いて、認知機能を推定する。すなわち、推定部F7によって実行される推定処理S9は、音声データに加えて、対象者2の属性に関する属性データを更に用いて認知機能を推定することを含む。
【0069】
本実施形態の判定システム10において、推定部F7は、学習済モデルM1を利用して対象者2の認知機能を推定する。本実施形態の判定システム10において、学習済モデルM1は、例えばロジスティック回帰モデルである。すなわち、推定部F7によって実行される推定処理S9では、機械学習により生成された学習済モデルM1を用いて、対象者2の認知機能の推定を行う。
【0070】
学習済モデルM1は、与えられた入力(特徴量)に対して、対象者2の認知機能の程度を示す値を出力するように設計されている。推定部F7は、音声データから得られた特徴量を学習済モデルM1に与え、これによって学習済モデルM1から得られた値に基づいて、対象者2の認知機能の程度を推定する。このような学習済モデルM1は、認知機能の程度を示す値と特徴量との関係を規定する学習用データ(データセット)を用いた教師あり学習により生成することができる。学習済モデルM1は、記憶部42に記憶されている。
【0071】
本実施形態において、推定処理S9に用いられる特徴量は、音声データで示される対象者2の音声に含まれる音節における母音の第一フォルマント周波数又は第二フォルマント周波数に関する量を含み得る。
【0072】
ここにおいて、第一フォルマント周波数とは、人から発せられる音声に含まれる周波数ピークのうちで最も周波数が小さいピークに対応する周波数である。第二フォルマント周波数とは、人から発せられる音声に含まれる周波数ピークのうちで二番目に周波数が小さいピークに対応する周波数である。
【0073】
一例において、上記量は、音声データで示される対象者2の音声に含まれる複数の音節における複数の母音の、第一フォルマント周波数、第二フォルマント周波数、又は第一フォルマント周波数に対する第二フォルマント周波数の比のばらつきを含み得る。ばらつきは、例えば標準偏差である。
【0074】
一例において、上記量は、音声データで示される対象者2の音声に含まれる複数の音節における複数の母音の、第一フォルマント周波数又は第二フォルマント周波数の変化量を含み得る。
【0075】
一例において、上記量は、音声データで示される対象者2の音声に含まれる複数の音節における複数の母音の第一フォルマント周波数又は第二フォルマント周波数の変化にかかる所要時間を含み得る。
【0076】
一例において、上記量は、音声データで示される対象者2の音声に含まれる複数の音節における複数の母音の第一フォルマント周波数又は第二フォルマント周波数の、所要時間に対する変化量の比である変化率を含み得る。
【0077】
一例において、上記量は、母音の第一フォルマント周波数に対する第二フォルマント周波数で形成される座標空間において、音声データで示される対象者2の音声に含まれる複数の音節における複数の母音の第一フォルマント周波数に対する第二フォルマント周波数の値をプロットした場合の、プロットされた複数の点の間の位置関係、又はそれらの点で形成される多角形の形状又は面積を含み得る。
【0078】
また、推定処理S9に用いられる特徴量は、音声データで示される対象者2の音声に含まれる開音節における子音の音圧と当該子音に後続する母音の音圧との間の音圧差を含み得る。
【0079】
推定処理S9に用いられる特徴量は、音声データで示される対象者2の音声に含まれる複数の開音節における、子音の音圧と当該子音に後続する母音の音圧との間の音圧差の、ばらつきを含み得る。
【0080】
推定処理S9に用いられる特徴量は、定型文の読み上げに際し、対象者2が読み上げに要した総時間を含み得る。
【0081】
推定処理S9に用いられる特徴量は、同一の定型文の複数回の読み上げに際し、複数回の読み上げにそれぞれ要した時間の変化量を含み得る。
【0082】
なお、本実施形態の判定方法を用いた認知機能の検査に用いられ得る対象者2の音声の特徴量については、特許第6337362号を参照されたい。
【0083】
また、推定処理S9に用いられる特徴量は、属性取得部F2で取得された対象者2の属性を含み得る。
【0084】
推定部F7は、対象者2の認知機能の推定結果を出力する。推定結果は、例えば、対象者2の認知機能の程度を示す数値で示される。推定部F7は、例えば、推定した認知機能の程度が、予め決められた複数段階のうちのどの段階に属するかを示す数値(例えば5段階中の2段階目等)を出力してもよい。
【0085】
出力部F8は、推定部F7の推定結果に基づく結果情報を示す推定結果信号を、通信部41を介して通話装置3及び第2サーバ5へ出力する。出力部F8が出力する結果情報は、推定部F7から出力された推定結果(例えば数値)そのものであってもよいし、別の形態であってもよい。出力部F8が出力する結果情報は、例えば、推定結果に基づいて対象者2が次に取るべき行動を示す情報(例えば、病院で医師による認知機能検査を受けることを促す情報)、注意事項(認知機能の改善を促す情報)等であってもよい。通話装置3は、第1サーバ4から推定結果信号を受け取ると、その推定結果を、通話部32により音声で出力する又は表示部33により画像で表示することで、対象者2に通知してもよい。
【0086】
図1に示すように、第2サーバ5は、通信部51と記憶部52と処理部53とを備えている。
図2に示すように、第2サーバ5は、例えば運転免許センター1に設置される。
【0087】
第2サーバ5は、判定方法の各処理(
図3参照)のうち「記録処理S11」、「反映処理S12」を実行する。
【0088】
通信部51は、通信インターフェースである。通信部51は、電気通信回線NT1に接続可能な通信インターフェースであり、電気通信回線NT1を通じた通信を行う機能を有する。第2サーバ5は、電気通信回線NT1を通じて第1サーバ4と通信可能である。
【0089】
通信部51は、電気通信回線NT1を介して第1サーバ4へ信号を送信する。通信部51が第1サーバ4へ送信する信号には、例えば、上述の本人確認情報を示す信号等がある。また、通信部51は、電気通信回線NT1を介して第1サーバ4からの信号を受信する。通信部51が第1サーバ4から受信する信号には、例えば、上述の要求信号、推定結果信号等がある。
【0090】
記憶部52は、情報を記憶するための装置である。記憶部52は、ROM、RAM、EEPROM等を含み得る。記憶部52には、上述の情報データベースDB1が記憶される。
【0091】
処理部53は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、処理部53として機能する。
【0092】
処理部53は、第2サーバ5の全体的な制御、すなわち、通信部51及び記憶部52の動作を制御するように構成される。また、
図1に示すように、処理部53は、応答部F11と、登録部F12と、反映部F13とを備えている。なお、応答部F11、登録部F12及び反映部F13は、実体のある構成を示しているわけではなく、処理部53によって実現される機能を示している。
【0093】
応答部F11は、第1サーバ4から送信される信号に応じて、所定の応答を行う。
【0094】
例えば、応答部F11は、第1サーバ4から送信される対象者情報を示す信号に応じて、対象者情報で示される対象者2を特定する。応答部F11は、例えば、受信した対象者情報を情報データベースDB1と対照することで、対象者2を特定する。応答部F11は、対照結果(特定された対象者2)を示す情報を、第1サーバ4へ送信する。すなわち、応答部F11は、第1サーバ4の対象者特定部F1と協働して、対象者2を特定する。このとき、応答部F11は、特定された対象者2の属性に関する属性データも合わせて送信する。
【0095】
また、応答部F11は、第1サーバ4から送信される要求信号に応答して、本人確認情報を送信する。本人確認情報は、上述のように、対象者2の音声を事前に録音して得られた音声データである対照音声データである。対照音声データは、例えば、対象者2に対して運転免許証を発行(新規交付)する際に録音されてもよいし、過去の運転免許証の更新時に録音されてもよいし、運転免許証の交付又は更新に関係なく録音されてもよい。
【0096】
登録部F12は、第1サーバ4から推定結果信号を受信すると、推定結果信号で示される対象者2の認知機能の推定結果を、情報データベースDB1へ登録する。推定結果の情報は、情報データベースDB1において、対応する対象者2の本人情報と紐付けて登録される。登録部F12は、情報データベースDB1に既に推定結果の情報が登録されている場合、既に登録されている情報を新たな情報で書き換え(更新し)てもよいし、既に登録されている情報を残しつつ新たな情報を追加してもよい。
【0097】
なお、情報データベースDB1に登録される対象者2の認知機能の推定結果には、有効期限が設定されていることが好ましい。有効期限に特に制限はないが、例えば、1年、半年、3ヶ月、1ヶ月、半月、1週間等であってもよい。
【0098】
反映部F13は、運転免許センター1での対象者2への運転免許証の交付又は更新の手順、及び交付又は更新の可否の判断に、情報データベースDB1へ登録されている対象者2の認知機能の推定結果を反映させる。
【0099】
反映部F13は、例えば、認知機能の推定結果の程度に応じて、対象者2が運転免許センター1にて運転免許証の更新を行う際の手順を異ならせる。例えば、対象者2の認知機能が低下している場合(例えば、認知機能の程度を示す数値が、5段階中の最も悪い段階である場合)、反映部F13は、この対象者2の運転免許証の更新の際に、医師による認知機能検査の実施を義務づけてもよい。一方、対象者2の認知機能に問題がない場合(例えば、認知機能の程度を示す数値が、5段階中の最も良い段階である場合)、反映部F13は、この対象者2が運転免許証の更新のために運転免許センター1に赴いた際に、認知機能検査を省略させてもよい。
【0100】
反映部F13が推定結果を反映させる具体的な手段は、特に限定されない。例えば、反映部F13は、医師による認知機能検査の実施が必要か否かを対象者2毎に示す情報を、運転免許センター1の職員に対して通知してもよい。例えば、反映部F13は、第2サーバ5に接続されている表示装置に、医師による認知機能検査の実施が必要か否かを対象者2毎に表示させてもよい。運転免許センター1の職員は、表示装置にてこの情報を参照することで、各対象者2の運転免許証の更新の際に、認知機能検査の実施が必要であるか否かを判断することが可能となる。
【0101】
なお、情報データベースDB1において、ある対象者2の本人情報に対して認知機能の推定結果が複数紐付けられている場合、反映部F13は、最新の推定結果のみを反映させてもよいし、有効期限内の複数の推定結果を反映させてもよい。
【0102】
(2.2)動作
次に、
図3を参照して本実施形態の判定方法について簡単に説明する。
【0103】
運転免許証の更新時に認知機能検査の受検を義務づけられている対象者2は、運転免許証の更新のために運転免許センター1に赴く前に、例えば自宅にて、通話装置3を用いて第1サーバ4へ電話で呼び出しを行う(呼出処理S1)。
【0104】
第1サーバ4は、通話装置3によって電話で呼び出しを受けると、対象者2を特定するための対象者情報の入力を促す自動音声を、通話装置3へ送信する。対象者2は、自動音声に応答して、通話装置3を介して運転免許証番号等の対象者情報を入力し、第1サーバ4は、電気通信回線NT1を介して対象者情報を取得する。第1サーバ4は、取得した対象者情報を第2サーバ5へ送信し、第2サーバ5は、受信した対象者情報を情報データベースDB1と対照することで、対象者2を特定する。第2サーバ5は、特定した対象者2を示す情報を第1サーバ4へ送信し、第1サーバ4は、この情報を第2サーバ5から受信することで、対象者2を特定する(対象者特定処理S2)。また、第2サーバ5は、特定した対象者2の属性を示す属性データを第1サーバ4へ送信し、第1サーバ4は、対象者2の属性データを取得する(属性取得処理S3)。
【0105】
対象者2を特定すると、第1サーバ4は第2サーバ5へ要求信号を送信し、第2サーバ5から本人確認情報を取得する。第1サーバ4は、対象者2の特定後において対象者2との通話中に、本人確認情報を用いて、通話装置3の通話者が対象者2本人であることを確認する(本人確認処理S4)。
【0106】
また、対象者2を特定する(及び通話者が対象者2本人であることを確認する)と、第1サーバ4は、定型文の読み上げを促す自動音声を通話装置3へ送信する(提示処理S5)。また、第1サーバ4は、対象者2が定型文を読み上げた際の音声データを通話装置3から取得し(音声取得処理S6)、取得した音声データを記憶部42に記録(録音)する(記録処理S7)。第1サーバ4は、記録した音声データから、特徴量を抽出(取得)する(特徴量取得処理S8)。
【0107】
第1サーバ4は、特徴量取得処理S8で取得した特徴量、及び属性取得処理S3で取得した属性データを用いて、対象者2の認知機能を推定する(認知機能推定処理(推定処理)S9)。第1サーバ4は、推定処理S9で得られた認知機能の推定結果を、通話装置3及び第2サーバ5へ出力する(出力処理S10)。
【0108】
通話装置3は、第1サーバ4から得られた認知機能の推定結果を、通話部32又は表示部33を介して、対象者2へ通知する。
【0109】
第2サーバ5は、第1サーバ4から得られた認知機能の推定結果を、記憶部52へ記録する(記録処理S11)。そして、第2サーバ5は、対象者2への運転免許証の交付若しくは更新の手順、又は交付若しくは更新の可否の判断に、対象者2の認知機能の推定結果を反映させる(反映処理S12)。
【0110】
その後、対象者2が、運転免許証の更新のために運転免許センター1に赴いた際には、対象者2は、判定法法による認知機能の推定結果が反映された手順に従って、運転免許証の更新を行うことができる。或いは、認知機能の推定結果が、運転免許証の更新に適さないとの結果を示す場合には、運転免許センター1の職員は、その旨を対象者2に告げて、医師による認知機能検査を受検することを対象者2に促してもよい。
【0111】
(2.3)利点
上述のように、本実施形態の認知機能の判定方法及び判定システム10によれば、対象者2に定型文を読み上げさせ、読み上げられた音声の音声データを処理することで、対象者2の認知機能の検査を行っている。この検査を実行する(定型文の読み上げ及び処理を行う)のに要する時間は、例えば6種類の定型文を対象者2に読み上げさせる場合であっても、3分程度である。一方、例えばテスト用紙に解答を記入してそれを採点する従来の検査方法では、解答時間及び採点時間を含めると、少なくとも30分程度の時間を要する。そのため、本実施形態の判定方法及び判定システム10を用いることで、従来の検査方法に比べて、検査に要する時間を短縮することが可能となる。
【0112】
また、対象者2は、少なくとも通話装置3さえ所持していれば、本実施形態の認知機能の判定方法及び判定システム10による検査を受検することが可能である。そのため、対象者2は、任意の場所で検査を受けることが可能であり、従来の検査方法のように検査会場に赴いて検査を受ける必要がない。そのため、本実施形態の判定方法及び判定システム10によれば、従来の検査方法に比べて、対象者2の負担を軽減することが可能である。
【0113】
要するに、本実施形態の認知機能の判定方法及び判定システム10によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0114】
また、運転免許証の更新時に限らず、運転免許証の発行時に認知機能検査を行なう場合についても、本実施形態の認知機能の判定方法及び判定システム10を用いることで、免許発行時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0115】
(3)変形例
本開示の実施形態は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上記実施形態に係る認知機能の判定方法と同様の機能は、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0116】
一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、1以上のプロセッサに、上述の実施形態の判定方法を実行させるためのプログラムである。
【0117】
以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0118】
本開示における認知機能の判定システム10は、例えば、通話装置3、第1サーバ4、第2サーバ5等に、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、通話装置3、第1サーバ4、第2サーバ5としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0119】
また、第1サーバ4、第2サーバ5の各々における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは判定システム10に必須の構成ではなく、第1サーバ4、第2サーバ5の各々の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、判定システム10の少なくとも一部の機能、例えば、第1サーバ4及び第2サーバ5の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0120】
反対に、上述の実施形態において、複数の装置に分散されている判定システム10の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。例えば、第1サーバ4と第2サーバ5とに分散されている判定システム10の一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0121】
一変形例において、提示処理S5では、対象者2に定型文の読み上げを促す情報を視覚的に与えてもよい。例えば、提示処理S5において、対象者2に定型文の読み上げを促す文章、画像、映像等を、通話装置3の表示部33に表示させてもよい。
【0122】
一変形例において、提示処理S5において提示される内容(自動音声の内容、文章、画像等)は、解答が一義的に決まる質問を含んでもよい。質問は、運転免許証に関連していてもよい。質問の例としては、例えば、一時停止標識の色を答えさせる質問、表示部33にスピードメータの画像を表示させてメータが指し示す速度を答えさせる質問、表示部33にナンバープレートの画像を表示させて地名、番号等を答えさせる質問等がある。表示部33に表示される画像は、動画であってもよく、例えばその大きさが徐々に変化する(徐々に大きくなる)画像であってもよい。また、表示部33に一時的に画像を表示させてその内容を対象者2に記憶させた後に画像を非表示とし、画像に示されていた内容についての質問を対象者2に提示してもよい。すなわち、提示処理S5では、運転免許証に関連する質問を対象者2に提示し、この質問は、質問に対する解答としての定型文の読み上げを対象者2に促してもよい。
【0123】
一変形例において、提示処理S5において提示される内容は、解答が一義的に決まらない質問を、更に含んでもよい。質問の例としては、例えば、対象者2の氏名、年齢、教育歴等を答えさせる質問がある。
【0124】
一変形例において、推定処理S9に用いられる特徴量は、通話装置3に対する対象者2の操作入力に関する情報(例えば、タッチパネルに対する操作速度等)を、更に含んでもよい。すなわち、判定方法は、対象者2から通話装置3への操作入力を受け付ける操作受け付け処理を更に備えてもよい。推定処理S9では、音声取得処理S6で取得された音声データに加えて、操作入力の結果を更に用いて、対象者2の認知機能を推定してもよい。
【0125】
一変形例において、本人情報を含む情報データベースDB1は、第1サーバ4の記憶部42に記録されていてもよい。この場合、第1サーバ4のみで、対象者特定処理S2、属性取得処理S3、本人確認処理S4を実行可能である。
【0126】
一変形例において、属性取得処理S3において、対象者2に通話装置3を用いて属性データを入力させてもよい。
【0127】
一変形例において、推定処理S9において、対象者2の属性データを特徴量として用いなくてもよい。
【0128】
一変形例において、通話装置3は、対象者2が携帯可能な装置に限られない。通話装置3は、例えば、対象者2の住戸に備えられるいわゆる固定電話、或いは対象者2を含む不特定多数の人が利用できるように設置される公衆電話等であってもよい。また、通話装置3は電話に限られず、マイクとスピーカ等の通話手段と通信部31とを備えていればよい。通話装置3は、運転免許センター1に備えられていてもよい。すなわち、対象者2は、運転免許センター1にて、本開示の判定方法による検査を受検してもよい。
【0129】
一変形例において、判定方法において本人確認処理S4は必須ではなく、省略されてもよい。また、判定方法は、本人確認処理S4に代えて或いは加えて、代理受検抑止処理を含んでもよい。代理受検抑止処理は、対象者2以外の人が、対象者2の代わりに判定方法による検査を受検するのを抑止する処理である。なお、本人確認処理S4も、代理受検抑止処理として機能する。
【0130】
一例において、代理受検抑止処理は、通話装置3の表示部33に所定の注意文を表示させることを含んでもよい。注意文の例としては、例えば、「テスト中は声紋による個人認証により常に同じ人が発話していることを確認しています」等の文章がある。
【0131】
一例において、通話装置3がカメラ等の撮像部を備えている場合、代理受検抑止処理は、通話装置3で撮影された対象者2の画像を通話装置3の表示部33に表示させることを含んでもよい。この場合、撮影された対象者2の画像を処理した画像データから、対象者2が本人であるかの本人確認を実際に行ってもよいし、行わなくてもよい。また、この場合、判定方法は、対象者2が撮像部の撮像範囲から外れた場合に検査を中止する中止処理を含んでもよい。
【0132】
一例において、代理受検抑止処理は、人(例えば運転免許センター1の職員以外の人)による監視を含んでもよい。例えば、運転免許証の更新の通知が郵送で行なわれる場合、代理受検抑止処理は、更新の通知を郵送する郵便局の職員による監視を含んでもよい。
【0133】
一変形例において、本人確認処理S4は、運転免許証の更新の際に用いられる第2暗証番号(ワンタイムパスワード)を用いてもよい。
【0134】
一変形例において、対象者2への推定結果の通知は即座に行われなくてもよく、例えば、電気通信回線NT1に接続されている所定のサーバに通話装置3からアクセスすることで、対象者2が推定結果を閲覧できてもよい。また、推定結果の通知は、通話装置3以外の手段(例えば郵送等)を介して行われてもよい。
【0135】
(4)まとめ
以上述べたように、第1の態様の認知機能の判定方法は、運転免許証の発行と更新との少なくとも一方の役務を行う運転免許センター(1)における、対象者(2)への役務の提供に際して用いられる。判定方法は、音声取得処理(S6)と、推定処理(S9)と、反映処理(S12)と、を備える。音声取得処理(S6)では、対象者(2)に定型文の読み上げを実行させ読み上げに係る音声データを取得する。推定処理(S9)では、音声取得処理(S6)で取得された音声データに基づいて、対象者(2)の認知機能を推定する。反映処理(S12)では、運転免許センター(1)での対象者(2)への役務の提供の手順又は役務の提供の可否の判断に、推定処理(S9)の結果を反映させる。
【0136】
この態様によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0137】
第2の態様の認知機能の判定方法では、第1の態様において、推定処理(S9)では、音声データから抽出される特徴量を用いて認知機能を推定する。
【0138】
この態様によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0139】
第3の態様の認知機能の判定方法では、第2の態様において、特徴量は、以下の群から選択される1以上を含む。上記群は、音声データで示される対象者(2)の音声に含まれる音節における母音の第一フォルマント周波数、又は第二フォルマント周波数に関する量を含む。上記群は、音声データで示される対象者(2)の音声に含まれる開音節における子音の音圧と前記子音に後続する母音の音圧との間の音圧差を含む。上記群は、音声データで示される対象者(2)の音声に含まれる複数の開音節における、子音の音圧と前記子音に後続する母音の音圧との間の音圧差の、ばらつきを含む。上記群は、上記定型文の読み上げに要した総時間を含む。上記群は、上記定型文の複数回の読み上げにそれぞれ要した時間の変化量を含む。
【0140】
この態様によれば、判定方法による判定結果の正確性の向上を図ることが可能となる。
【0141】
第4の態様の認知機能の判定方法は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、音声取得処理(S6)で取得された音声データを記録する記録処理(S7)を、更に備える。
【0142】
この態様によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0143】
第5の態様の認知機能の判定方法は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、推定処理(S9)では、機械学習により生成された学習済モデル(M1)を用いて、認知機能を推定する。
【0144】
この態様によれば、判定方法による判定結果の正確性の向上を図ることが可能となる。
【0145】
第6の態様の認知機能の判定方法は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、音声取得処理(S6)では、電気通信回線(NT1)を通じて音声データを取得する。
【0146】
この態様によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0147】
第7の態様の認知機能の判定方法は、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、推定処理(S9)では、音声取得処理(S6)で取得された音声データに加えて、対象者(2)の属性に関する属性データを更に用いて、認知機能を推定する。
【0148】
この態様によれば、判定方法による判定結果の正確性の向上を図ることが可能となる。
【0149】
第8の態様の認知機能の判定方法は、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、定型文の読み上げを促す情報を対象者に提示する提示処理(S5)を更に備える。
【0150】
この態様によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0151】
第9の態様の認知機能の判定方法は、第8の態様において、提示処理(S5)では、対象者(2)に定型文の読み上げを促す自動音声を再生する。
【0152】
この態様によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0153】
第10の態様の認知機能の判定方法は、第8又は第9の態様において、提示処理(S5)では、対象者(2)に定型文の読み上げを促す情報を視覚的に与える。
【0154】
この態様によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0155】
第11の態様の認知機能の判定方法は、第8~第10の態様のいずれか1つにおいて、提示処理(S5)では、運転免許証に関連する質問を対象者(2)に提示する。上記質問は、質問に対する解答としての定型文の読み上げを対象者(2)に促す内容を含む。
【0156】
この態様によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0157】
第12の態様の認知機能の判定方法は、第1~第11の態様のいずれか1つにおいて、対象者(2)が本人であることを確認するための本人確認処理(S4)を更に備える。
【0158】
この態様によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0159】
第13の態様の認知機能の判定方法は、第12の態様において、本人確認処理(S4)は、対象者(2)の生体情報を用いて行う。
【0160】
この態様によれば、本人確認の正確性の向上を図ることが可能となる。
【0161】
第14の態様の認知機能の判定方法は、第13の態様において、生体情報は、対象者(2)の声紋の情報を含む。
【0162】
この態様によれば、本人確認の正確性の向上を図ることが可能となる。
【0163】
第15の態様の認知機能の判定方法は、第1~第14の態様のいずれか1つにおいて、対象者(2)を特定するための対象者特定処理(S2)を更に備える。
【0164】
この態様によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0165】
第16の態様の認知機能の判定方法は、第15の態様において、対象者特定処理(S2)は、対象者(2)の生体情報を用いて行う。
【0166】
この態様によれば、対象者(2)の特定の正確性の向上を図ることが可能となる。
【0167】
第17の態様の認知機能の判定方法は、第1~第16の態様のいずれか1つにおいて、対象者(2)からの操作入力を受け付ける操作受付処理を更に備える。推定処理(S9)は、音声取得処理(S6)で取得された音声データに加えて、操作入力の結果を更に用いて、認知機能を推定する。
【0168】
この態様によれば、判定方法による判定結果の正確性の向上を図ることが可能となる。
【0169】
第18の態様のプログラムは、第1~第17の態様のいずれか1つの認知機能の判定方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0170】
この態様によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【0171】
第19の態様の認知機能の判定システム(10)は、運転免許証の発行と更新との少なくとも一方の役務を行う運転免許センター(1)における、対象者(2)への役務の提供に際して用いられる。判定システム(10)は、音声取得部(F5)と、推定部(F7)と、反映部(F13)と、を備える。音声取得部(F5)は、対象者(2)に定型文の読み上げを実行させ読み上げに係る音声データを取得する。推定部(F7)は、音声取得部(F5)で取得された音声データに基づいて、対象者(2)の認知機能を推定する。反映部(F13)は、運転免許センター(1)での対象者(2)への役務の提供の手順又は役務の提供の可否の判断に、推定部(F7)の推定結果を反映させる。
【0172】
この態様によれば、免許更新時の負担の軽減を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0173】
1 運転免許センター
2 対象者
10 判定システム
F5 音声取得部
F7 推定部
F13 反映部
S2 対象者特定処理
S4 本人確認処理
S5 提示処理
S6 音声取得処理
S7 記録処理
S9 推定処理
S12 反映処理
M1 学習済モデル
NT1 電気通信回線