(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
B25J15/08 T
(21)【出願番号】P 2022196852
(22)【出願日】2022-12-09
【審査請求日】2023-01-11
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518309954
【氏名又は名称】微程式資訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MICROPROGRAM INFORMATION CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】6F.-2, No. 402, Shizheng Rd., Xitun Dist., Taichung City 407, Taiwan
(73)【特許権者】
【識別番号】522480506
【氏名又は名称】長智貿易股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】522480517
【氏名又は名称】盛詮科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】弁理士法人プロテクトスタンス
(72)【発明者】
【氏名】ウ タン イェン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ジャー ウェイ
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0001638(US,A1)
【文献】特開2021-122925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に第一収容スペース
と、前記第一収容スペースに連通している第二収容スペースと、前記第一収容スペース及び前記第二収容スペースに連通している第三収容スペースと、を有している本体と、
前記本体の前記第一収容スペースに内設され、前記本体の振動レベルを感知するための感知ユニットと、
前記第二収容スペース内に収容され、一端が前記感知ユニットに電気的に接続されている伝送線と、
前記本体の前記第一収容スペース
及び前記第二収容スペースの上面に設置され、
且つ前記本体の前記第三収容スペースに収容し、前記感知ユニットが外界に接触するのを防止するためのカバーと、を備え、
これにより、前記本体が駆動してワークスペースに進入するように動作すると、前記感知ユニットが前記ワークスペースの範囲内に位置し、前記本体の振動を検出した後に対応する振動信号を発生させ、且つデジタル装置に伝送することを特徴とする埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置。
【請求項2】
前記本体には前記第三収容スペースを貫通する複数の貫通穴が更に設けられ、前記カバーには前記貫通穴に対応する複数の孔部が更に設けられ、前記カバーは複数の固着具によりこれら前記貫通穴及びこれら前記孔部に貫設されて前記本体にロックされていることを特徴とする
請求項1に記載の埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置。
【請求項3】
前記感知ユニットの厚さは前記本体の厚さ以下であることを特徴とする請求項1に記載の埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置。
【請求項4】
前記本体の厚さは3mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置。
【請求項5】
前記本体の上面に設置されている複数の滑り止め部材を更に備え、これら前記滑り止め部材は互いに離間し、前記本体の摩擦力を増加させるために用いられていることを特徴とする請求項1に記載の埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置。
【請求項6】
これら前記滑り止め部材は2つの吸盤であり、前記本体は気流チャンネルを更に有し、両端は前記2つの吸盤にそれぞれ連結され、他端はエアコンプレッサに接続されていることを特徴とする
請求項5に記載の埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置。
【請求項7】
前記カバーは前記第一収容スペース及び前記気流チャンネルを同時に被覆していることを特徴とする
請求項6に記載の埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置。
【請求項8】
前記本体はフォーク状を呈し、ハンドル及び2つのフォーク部を有し、前記2つのフォーク部は前記ハンドルの一端から延伸され、且つ前記2つのフォーク部は互いに所定の距離の間隔を置き、前記2つの滑り止め部材は前記2つのフォーク部にそれぞれ設置されていることを特徴とする
請求項5に記載の埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームに関し、更に詳しくは、センサーをロボットアームの支持装置内部に埋設し、狭小なワークスペースでも動作すると共に振動レベルを感知する埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置(Robotic arm supporting device with embedded sensor)に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアームにセンサーを設置する技術は関連する研究開発が既に行われており、従来の特許文献では、例えば、下記特許文献1には検出装置をロボットアームの表面に装設し、ロボットアームの振動及び水平状況をリアルタイム監視し、その後に警告モジュールにより範囲を超過した際に警告メッセージを発信する装置により安定的に監視するシステムが開示されている。また、下記特許文献2には感知装置をロボットアームの機体、ベースまたはモーターに近接する表面に装設し、前記感知装置の振動信号を利用して機械または機台に異常が発生したかどうか判断する感知装置及び感知システムが開示されている。また、下記特許文献3には、複数のセンサーをロボットアームの連動機構の表面に設置し、ロボットアームの変位または振動情報を収集して異常信号がないかどうかデータベースと比較し、且つ異常信号が発信された場合ホストコンピューターに返信して予め警告するロボットアーム及びポンプの異常を予め検出する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】台湾登録実用新案第M618590U号公報
【文献】台湾登録実用新案第M613754U号公報
【文献】台湾登録実用新案第M571297U号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の技術では、ロボットアームに用いる感知装置は全てロボットアームの表面に装設しているため、幾つかの問題に直面する。第一に、ウェハーの間の作業空間がウェハーのサイズの縮小に従って小さくなり、ロボットアームがそのような微小な作業空間では一定の厚さを有するセンサーをその表面に収容できなくなる。然しながら、センサーをウェハーから離れた位置に設置する場合、ロボットアームとウェハーとの接触端から伝達された振動を直接感知できず、対応する振動または変位により発生した信号に僅かに誤差が生じ、短時間の誤差によりロボットアームがウェハーに衝突する。また、ロボットアームの表面に露出するセンサーが製造プロセス中に発生した汚染物質の影響により信号の判断が干渉され、センサー自体が動作時に発生した汚染物質によりウェハーの製造プロセス環境が汚染される。
【0005】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、合理的設計で上記の課題を効果的に改善する本発明の提案に至った。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、その目的は、ロボットアームの支持装置の厚さに影響しないように、振動の感知感度と精度を向上させる埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置は、内部に第一収容スペースを有している本体と、前記本体の前記第一収容スペースに内設され、前記本体の振動レベルを感知するための感知ユニットと、前記本体の前記第一収容スペースの上面に設置され、前記感知ユニットを前記本体と前記カバーとの間に位置させ、前記感知ユニットが外界に接触するのを防止するためのカバーと、を含んで構成される。これにより、前記本体が駆動してワークスペースに進入するように動作すると、前記感知ユニットが前記ワークスペースの範囲内に位置し、前記本体の振動を検出した後に対応する振動信号を発生させ、且つデジタル装置に伝送する。
【発明の効果】
【0008】
上述の技術的手段により発生する効果は、微小なワークスペース中でロボットアームの支持装置の振動レベルをより敏感に直接感知可能にし、且つ感知ユニットが環境を汚染するまたは環境に汚染される可能性を防止する。
【0009】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1好ましい実施例に係る埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置を示す分解図である。
【
図2】本発明の第1好ましい実施例に係る埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置を示す外観斜視図である。
【
図3】本発明の第1好ましい実施例において、ウェーハを運搬するときの状況を概略的に示す側面図である。
【
図4】本発明の第1好ましい実施例において、感知ユニットがウェーハの範囲内に位置する上面図である。
【
図5】本発明の第2好ましい実施例に係る埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置において、カバーを外した上面図である。
【
図6】本発明の第2好ましい実施例に係る埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置において、カバーを閉めている上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
<第1好ましい実施例>
本発明の第1実施例の構成を
図1から
図4に示す。本発明の第1好ましい実施例に係る埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置は主に本体10と、感知ユニット20と、カバー30と、を含んで構成されている(
図1と
図2参照)。以下、それぞれについて説明する。
【0013】
前記本体10はロボットアームの支持装置であり、ウェハーを積載して運搬するために用いられている。本実施例では、前記本体10は厚さ3mm以下の二股フォークであり、その外形はフォーク状を呈し、一体成形されているハンドル12及び2つのフォーク部14を有している。前記ハンドル12の幅は中央部から一端にかけて徐々に広くなり、前記2つのフォーク部14は前記ハンドル12の幅が広い一端の対向する両側が前記ハンドル12から離れる方向に向けて延伸され、且つ前記2つのフォーク部14は互いに所定の距離の間隔を置いている。前記本体10は第一収容スペース15と、第二収容スペース16と、第三収容スペース17と、を有し、前記第一収容スペース15は円形を呈し、前記ハンドル12の幅が広い一端箇所に位置している。前記第二収容スペース16は細長いスリット状を呈し、前記第一収容スペース15に連通している。前記第三収容スペース17は矩形を呈し、前記第一収容スペース15及び前記第二収容スペース16に連通され、前記第一収容スペース15及び前記第二収容スペース16が前記第三収容スペース17の底面に連接され、且つ前記第三収容スペース17の深さは前記第一収容スペース15及び前記第二収容スペース16の深さ未満である。前記本体10には前記第三収容スペース17を貫通する複数の貫通穴18が設けられている。前記本体10は前記本体10の表面に設置されている複数の滑り止め部材19を更に有し、前記複数の滑り止め部材19はウェハーの運搬中にウェハーが前記本体10に対し滑るのを防止するための摩擦力を提供するために用いられている。本実施例では、これら前記滑り止め部材19は円形を呈している複数の滑り止めパッドであり、前記本体10の端部に設置され、具体的には、これら前記滑り止めパッドのうちの2つが前記2つのフォーク部14の一端にそれぞれ設置され、他の1つが前記ハンドル12の幅が狭い一端に近接する箇所に設置されている。
【0014】
前記感知ユニット20は極めて薄い電子素子を前記本体10に埋設している。具体的には、前記感知ユニット20は前記第一収容スペース15内に収容され、且つ本実施例では、前記感知ユニット20の厚さが前記第一収容スペース15の深さは以下であり、よって、前記感知ユニット20が前記第一収容スペース15に収容されると、前記感知ユニット20の高さが前記本体10の高さ以下であるため、前記本体10の厚さが本来の厚さを維持する。本実施例では、前記感知ユニット20は微小電子機械システム(Microelectromechanical Systems、MEMS)であり、ウェハーの運搬中に前記本体10が変位することにより発生する振動を感知し、且つ振動信号を発信するために用いられている。前記振動信号が発信されると、前記感知ユニット20が有線またはワイヤレス方式で前記振動信号をデジタル装置(図示省略)に伝送し、例えば、パソコンによりデータの分析及び処理を行う。本実施例では、伝送線22は前記第二収容スペース16内に収容され、その厚さは前記第二収容スペース16の深さ以下である。前記伝送線22の一端は前記感知ユニット20に電気的に接続され、他端は前記デジタル装置に接続され、前記感知ユニット20が発信した振動信号を前記デジタル装置に伝送するために用いられている。他の実施例では、前記感知ユニットはブルートゥース(登録商標)や遠赤外線等のワイヤレス伝送装置を組み合わせて前記振動信号を前記デジタル装置に伝送してもよい。
【0015】
前記カバー30は前記本体10の表面に設置され、前記第三収容スペース17に対応する薄いシートである。本実施例では、前記カバー30の材質はアルミシートである。その外形は前記第三収容スペース17の外形に対応し、前記第三収容スペース17に取り外し可能に固定されることで、前記第一収容スペース15及び前記第二収容スペース16を完全に閉鎖し、前記第一収容スペース15内の前記感知ユニット20及び前記第二収容スペース16内の前記伝送線22を外界から隔絶する。前記カバー30を前記第三収容スペース17に固定する方式に対し、本実施例では、前記カバー30は前記本体10のこれら前記貫通穴18に対応する複数の孔部32を有し、前記カバー30は複数の固着具34がこれら前記孔部32及びこれら前記貫通穴18を貫通することにより前記本体10の前記第三収容スペース17にロックされる。他の実施例では、前記カバー30は溶接、ラッチ、または他の等価の固定方式で前記本体10の第三収容スペース17に固定してもよい。
【0016】
図3と
図4に示す如く、前記感知ユニット20が前記本体10の内部に埋設されるため、前記本体10の実際の厚さには影響しない。前記本体10を2つのウェハー1の間にあるワークスペース2中に挿入してこれら前記ウェハー1を運搬する場合、前記感知ユニット20も追随して運搬する前記ウェハー1の範囲内に進入する。これにより、前記本体10に振動が発生すると、前記感知ユニット20が即時対応する振動信号を発信し、且つ前記伝送線22を介してデジタル装置3に伝送して処理し、前記デジタル装置3のプログラムソフトウェアによりデータベースのデータと比較して分析し、前記本体10が異常状態にあるかどうかを判断する。前記感知ユニット20を埋め込む設計により、前記本体10の厚さを一定の厚さに維持し(3mm以下)、狭小な前記ワークスペース中(例えば、6inのウェハーの約4.6mmのワークスペース)でも作業を行えるようにする。また、前記本体10の表面に設置されているカバー30が、前記感知ユニット20を外界に接触しないように隔絶することで、前記感知ユニット20が環境を汚染するまたは環境により汚染されるのを防止し、前記感知ユニット20の信頼性及び環境全体に対する安全性を高めている。
【0017】
<第2好ましい実施例>
本発明の第2好ましい実施例の埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置(
図5と
図6参照)は、その構造は第1好ましい実施例の構造に類似しているが、前記本体10の前記滑り止め部材19は複数の吸盤に代替されている。これら前記吸盤は中空状を呈し、そのうちの2つは前記本体10の前記2つのフォーク部14の一端にそれぞれ設置されている。また、もう1つはハンドル12の幅が狭い一端に設置されている。前記本体10には、開放状を呈している複数の第一端401及び第二端402を有している気流チャンネル40が更に設けられている。これら前記第一端401はこれら前記吸盤に連通し、前記第二端402はエアコンプレッサ42に連通している。また、本実施例では、前記第三収容スペース17は前記気流チャンネル40に更に連通し、前記気流チャンネル40が前記第三収容スペース17の底面に連接されている。前記カバー30の外形は前記第三収容スペース17の外形に対応するため、前記感知ユニット20及び前記伝送線22を被覆すると同時に前記気流チャンネル40も被覆し、外界の汚染物が前記気流チャンネル40内に進入するのを防止し、前記気流チャンネル40内の汚染物が外界の作業環境を汚染するのも防止している。
【0018】
さらに、本実施例は他のウェハーの固定方法を提供する。前記エアコンプレッサ42により前記気流チャンネル40内の空気を抽出し、ウェハーに吸着するための吸着力をこれら前記吸盤に発生させて運搬を便利にしている。補足として、他の実施例では、前記本体10に第1好ましい実施例の滑り止めパッド及び第2好ましい実施例の吸盤を同時に装設し、前記本体10がウェハーを固定する安定性を高めてもよい。
【0019】
以上述べた如く、本発明の埋め込みセンサーを有するロボットアーム支持装置は、前記本体10の内部に設置されている前記第一収容スペース15及び前記第一収容スペース15に埋め込まれている前記感知ユニット20により、前記本体10の本来の厚さを改変せずに、前記感知ユニット20をウェハーの範囲内の位置に設置可能にし、これにより、振動信号を更に敏感に直接的に発信する。前記カバー30の設計は、前記感知ユニット20が環境により汚染されるまたは環境を汚染するという問題も解決し、前記感知ユニット20の精度を向上し、作業環境の清潔さを維持している。前記本体10は前記滑り止め部材19によりウェハーを安定的に積載して運搬する。よって、本発明は微小なワークスペースでもロボットアームの支持装置の振動レベルを更に敏感且つ精確に感知し、且つ感知ユニットが環境を汚染したり、環境により汚染される可能性を防止する。
【0020】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0021】
1 ウェハー
2 ワークスペース
3 デジタル装置
10 本体
12 ハンドル
14 フォーク部
15 第一収容スペース
16 第二収容スペース
17 第三収容スペース
18 貫通穴
19 滑り止め部材
20 感知ユニット
22 伝送線
30 カバー
32 孔部
34 固着具
40 気流チャンネル
42 エアコンプレッサ
401 第一端
402 第二端