(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法及びその結晶
(51)【国際特許分類】
C07H 19/048 20060101AFI20240426BHJP
C07H 1/06 20060101ALI20240426BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240426BHJP
A61K 31/706 20060101ALN20240426BHJP
【FI】
C07H19/048
C07H1/06
A61P43/00 105
A61K31/706
(21)【出願番号】P 2022563187
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 CN2021129252
(87)【国際公開番号】W WO2023077503
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】323013837
【氏名又は名称】邦泰生物工程(深▲セン▼)有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】522235146
【氏名又は名称】中山市邦泰合盛生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】ジアン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】チン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン チュン リャン
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113402570(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112870979(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/09-19/24
C07H 1/00- 1/08
A61K 31/706
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンアミドモノヌクレオチドを水に溶解し、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を得るステップ1)と、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を減圧濃縮又は凍結乾燥して、含水量15%以下の半固体とするステップ2)と、半固体を撹拌しながら溶出剤を滴下し、滴下しながら1~15℃/hの降温速度で結晶化終点温度5~18℃に降温するステップ3)と、結晶が完全に析出されると、結晶をろ別して、乾燥させて、嵩密度を向上させたニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得るステップ4)とを含
み、
前記ステップ3)において、前記溶出剤は、無水エタノール、無水メタノール、及び無水アセトンから選択されるいずれか1種、又はこれらから選択される2種以上の混合物であり、当該溶出物の滴下速度は、50~200ml/hである
ことを特徴とするニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法。
【請求項2】
前記ステップ2)の前に、前記ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液のpH値を4.5~6.5に調整するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法。
【請求項3】
前記ステップ2)では、減圧濃縮の温度は40~50℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法。
【請求項4】
前記ステップ2)では、凍結乾燥の終点温度は25~30℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法。
【請求項5】
前記ステップ2)では、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を減圧濃縮して、含水量5~15%の半固体とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法。
【請求項6】
前記ステップ3)では、
前記滴下する溶出剤の体積量が前記半固体重量の4~6倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法。
【請求項7】
前記ステップ3)では、
前記降温速度は5~15℃/hであることを特徴とする請求項1又は2に記載のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法。
【請求項8】
前記ステップ3)では、
前記結晶化終点温度は10~18℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物結晶製造の技術分野に関し、特にニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上できる方法、及び該方法によって製造されるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチンアミドモノヌクレオチド(Nicotinamide mononucleotide、略してNMNという)は生体細胞内の固有な生化学物質の一種であり、ニコチンアミドヌクレオチドアデノシルトランスフェラーゼによってアデニル化された後に生体細胞の生存にとって重要物質であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(略してNAD、補酵素Iともいい、すべての細胞に存在し、数千の反応に関与し、生体細胞のエネルギー生成に重要な役割を果たしている)に変換される。NMNはNADの直接的な前駆体であり、生体細胞内のNAD補完合成経路の重要な中間体であり、その生体細胞内のレベルはNADの濃度に直接影響する。
【0003】
研究によると、体外でNMNを補充することは細胞内NAD濃度レベルを高める最も理想的な方式であり、そのほか、体外でNMNを補充することは例えば老化を遅延させ、パーキンソンなどの老年病を治療し、インスリン分泌を調節し、mRNAの発現に影響を及ぼすなどの多くの医療保健効果を得ることができることが発見され、そして、ますます多くのNMNに関する新しい医薬用途が絶えず報告されている。また、李嘉誠氏が「不老薬」であるNMNに投資したというニュースが広まるにつれ、NMNは大人気となり、多くの資本を集めており、大衆もNMN医薬品やサプリメントを追いかけており、市場ではNMN医薬品やサプリメントに対する需要量が日増しに増加している。
【0004】
現在市場では、結晶形態のNMNを原料としてNMN医薬品やサプリメントを生産するのが一般的であり、中国特許出願CN108697722Aに開示されたβ-ニコチンアミドモノヌクレオチドの結晶形態は、現在最もよく使われる2種類のNMN結晶であり、それぞれ、無水結晶(形態1)とジメチルスルホキシド溶媒和物結晶(形態2)である。しかし、この2種類の結晶の嵩密度は非常に低く、0.2g/ml程度なので、この2種類のNMN結晶の流動性は悪く、これにより、生産されたNMN医薬品やサプリメント製品の充填/重量の差が大きくなり、品質が不揃いになり、更には充填/重量の差が100%を超え、それによって、医薬品やサプリメントの生産企業に迷惑を与えることになる。
【0005】
上記の技術的課題を解決するために、中国特許出願CN112694505Aには、NMNの水溶液に貧溶媒を絶えず添加し、水含有NMN油状物層を形成するステップと、その後、貧溶媒を用いて油層を何度も繰り返し叩解し、油層中の含水量を低減させ、ゆっくりと白い粉体に変換するステップと、ろ過乾燥後、ペレット揺動機で粉砕して、40~80メッシュのふるいにかけ、高嵩密度のNMNを得るステップとを含む高密度NMNの製造方法が開示されている。その実施例データによると、この方法によって製造されたNMNは、ゆるみ嵩密度が0.52g/mlであり、タップ密度が0.71g/mlである。このことから、この方法によって製造されたNMNの嵩密度は、一般的な形態1と形態2の2種類のNMN結晶よりも確実に大きく向上した。しかし、付属の電子顕微鏡結晶化パターンを見ると、製造されたNMN結晶の形態は棒状構造であるが、嵩密度は結晶の形態と密接に関係しており、塊状結晶の嵩密度は棒状結晶より高いことが知られている。従って、もしNMN結晶の形態を塊状構造に転化することができれば、NMN結晶の嵩密度を更に高めることができ、それによって、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の流動性が悪く、NMN医薬品やサプリメント製品の充填/重量の差が大きく、品質が不揃いになるという技術的課題をさらに効果的に解決することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の背景技術に記載の欠陥に鑑み、本発明の目的は、塊状構造のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得ることで、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の流動性が悪く、NMN医薬品やサプリメント製品の充填/重量の差が大きく、品質が不揃いになるという従来の技術的課題を解決するために、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成させるために、本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチドを水に溶解し、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を得るステップ1)と、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を減圧濃縮又は凍結乾燥して、含水量15%以下の半固体とするステップ2)と、半固体を撹拌しながら溶出剤を滴下し、滴下しながら1~15℃/hの降温速度で結晶化終点温度5~18℃に降温するステップ3)と、結晶が完全に析出されると、結晶をろ別して、乾燥させて、嵩密度を向上させたニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得るステップ4)とを含むニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法を提供する。
【0008】
ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液のpH値は通常2.0~4.0であり、本発明者らは、研究した結果、本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法では、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液のpH値を変えることが最終的に得られるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度に影響を与え、特にpH値を4.5~6.5に調整すると、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を大幅に向上できることを見出した。このため、好ましくは、本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法では、ステップ2)の前に、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液のpH値を4.5~6.5に調整するステップをさらに含む。
【0009】
より好ましくは、本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法では、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液のpH値はリン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムで調整される。
【0010】
本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法のステップ2)では、いわゆる半固体は、物理的な正式名称が準固体であり、非晶質固体とも呼ばれ、従来の結晶性固体と異なり、ミクロスケールでは無秩序である。
【0011】
好ましくは、本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法のステップ2)では、減圧濃縮の温度は40~50℃である。一方では、該温度は濃縮効率とニコチンアミドモノヌクレオチドが高温で分解するというリスクとの両方を考慮し、他方では、該温度は後続の降温結晶化のための条件を提供し、結晶の十分な析出に有利である。
【0012】
より好ましくは、本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法のステップ2)では、減圧濃縮の真空度は0.07~0.10MPaの範囲に制御される。
【0013】
好ましくは、本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法のステップ2)では、凍結乾燥の初期温度は-45±5℃、終点温度は25~30℃である。
【0014】
本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法のステップ2)では、本発明者らは、研究した結果、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液が含水量5%に濃縮された場合、さらに濃縮して含水量を低下させると、得られたニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度の向上程度が低いことを見出し、このことから、時間及びコストを総合的に考慮して、好ましくは、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を減圧濃縮して、含水量5~15%の半固体とする。
【0015】
好ましくは、本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法のステップ3)では、溶出剤はメタノール、エタノール及びアセトンから選択される少なくとも1種である。この3種類の溶出剤はニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を素早く十分に析出させ、そして、低コストで入手しやすい。
【0016】
好ましくは、本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法のステップ3)では、滴下する溶出剤の体積量は半固体重量の4~6倍である。
【0017】
本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法のステップ3)では、本発明者らは、比較・研究をした結果、溶出剤の滴下速度が結晶の嵩密度に大きな影響を及ぼすことを見出し、このため、溶出剤の滴下速度は好ましくは50~200ml/hに制御され、この範囲では、最終的に得られた結晶の形態が塊状構造であり、これにより、嵩密度が十分に高い結晶が得られる。
【0018】
好ましくは、本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法では、溶出剤を滴下するときの撹拌速度は50~500rpmの範囲に維持される。
本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法のステップ3)では、本発明者らは、研究した結果、降温速度が5℃/h以下に低下すると、降温速度の更なる低下に対する、得られたニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度の変化が小さいことを見出し、このため、時間及びコストを総合的に考慮して、降温速度は好ましくは5~15℃/hである。
【0019】
本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法のステップ3)では、本発明者らは、研究した結果、結晶化終点温度が10℃以下に低下すると、結晶化終点温度の更なる低下に対する、得られたニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度の変化が小さいことを見出し、このため、時間及びコストを総合的に考慮して、結晶化終点温度は好ましくは10~18℃である。
【0020】
また、本発明は、結晶の形態が塊状構造であるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を提供する。
好ましくは、本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶は、本発明で提供される上記のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法によって製造される。
【発明の効果】
【0021】
有益な効果
本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を大幅に向上できる方法、及び該方法によって製造されるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を提供し、従来技術に比べて、該方法によって製造されるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶は、形態が塊状構造を呈し、従来の棒状ないし針状構造のニコチンアミドモノヌクレオチド結晶よりも、粒径が顕著に増大し、嵩密度が数倍向上し、NMN医薬品やサプリメントの生産においては大きな優位性を持ち、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の流動性が悪く、NMN医薬品やサプリメント製品の充填/重量の差が大きく、品質が不揃いになるという技術的課題を効果的に解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】中国特許出願CN108697722Aの実施例1で開示された方法を参照して製造されるニコチンアミドモノヌクレオチド無水結晶の電子顕微鏡像である。
【
図2】本発明で提供される方法によって製造されるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面及び具体的な実施例を参照して本発明についてさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明を解釈するものであり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
以下の実施例に使用される試薬は、特に断らない限り、全て市販品として入手する。
【0025】
以下に記載の嵩密度は全てゆるみ嵩密度であり、その具体的な数値が以下の方法によって測定される。試験対象を篩(1.00mm、番号18)にかけ、精密に秤量し、ガラスメスシリンダに緩やかに入れて、トップを平坦にし、見かけ体積を記録して、嵩密度を算出し、同一バッチのサンプルを3つ準備し、平行に測定して、読み取りを記録し、平均値を測定結果とする。
【0026】
以下の実施例に使用されるニコチンアミドモノヌクレオチド原料は中国特許出願CN108697722Aの実施例1で開示された方法を参照して製造されたニコチンアミドモノヌクレオチド無水結晶であり、測定した結果、その嵩密度が0.20g/mlであり、その電子顕微鏡像が
図1に示される。
【0027】
実施例1
半固体の含水量と嵩密度との関係の検討
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド原料20gを水60mLに溶解し、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を得て、測定した結果、該水溶液のpH値は3.5であった。次に、該水溶液を45℃の水浴にて真空度を0.07MPに制御して素早く真空濃縮し、表1に示す各含水量の半固体とし、次に、各含水量の半固体を撹拌速度200rpmで撹拌しながら100ml/hの速度で体積量が半固体重量の5倍の無水エタノールを等速滴下し、滴下しながら10℃/hの降温速度で結晶化終点温度10℃に降温し、結晶を3h(3時間)成長させ、結晶をろ別して、乾燥させて、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得た。
上記の各条件で得られたニコチンアミドモノヌクレオチド結晶のそれぞれについて、嵩密度を測定し、測定結果を表1に示し、含水量15%の半固体に対応するニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の電子顕微鏡像を
図2に示す。
【表1】
【0028】
実施例2
降温方式と嵩密度との関係の検討
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド原料20gを水60mLに溶解し、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を得て、測定した結果、該水溶液のpH値は3.5であった。次に、該水溶液を45℃の水浴にて真空度を0.07MPに制御して素早く真空濃縮し、含水量10%の半固体とし、次に、半固体を撹拌速度200rpmで撹拌しながら100ml/hの速度で体積量が半固体重量の5倍である無水エタノールを等速滴下し、滴下しながら表2に示す各降温速度で表2に示す各結晶化終点温度に降温し、結晶を3h成長させ、結晶をろ別して、乾燥させて、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得た。
上記の各条件で得られたニコチンアミドモノヌクレオチド結晶のそれぞれについて、嵩密度を測定し、測定結果を表2に示す。
【表2】
【0029】
実施例3
ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液のpH値と嵩密度との関係の検討
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド原料20gを水60mLに溶解し、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を得て、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムを加えて、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液のpH値をそれぞれ表3に示す各数値に調整し、次に、pH値が調整された各水溶液を45℃水浴にて真空度を0.07MPに制御して素早く真空濃縮し、含水量10%の半固体とし、次に、半固体を撹拌速度200rpmで撹拌しながら、100ml/hの速度で体積量が半固体重量の5倍である無水エタノールを等速滴下し、滴下しながら10℃/hの降温速度で結晶化終点温度10℃に降温し、結晶を3h成長させ、結晶をろ別して、乾燥させて、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得た。
上記の各条件で得られたニコチンアミドモノヌクレオチド結晶のそれぞれについて、嵩密度を測定し、測定結果を表3に示す。
【表3】
【0030】
実施例4
本発明で提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法によるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の製造
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド原料20gを水60mLに溶解し、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を得て、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムを加えて、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液のpH値を5.0に調整し、次に、pH値が調整された水溶液を40℃の水浴にて真空度を0.10MPに制御して素早く真空濃縮し、含水量15%の半固体とし、次に、半固体を撹拌速度100rpmで撹拌しながら、体積量が半固体重量の4倍である無水アセトンを50ml/hの速度で等速滴下しながら5℃/hの降温速度で結晶化終点温度15℃に降温し、結晶を3h成長させ、結晶をろ別して、乾燥させて、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得て、測定した結果、この結晶の嵩密度は1.02g/mlであった。
【0031】
実施例5
本発明で提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法によるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の製造
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド原料20gを水60mLに溶解し、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を得て、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムを加えて、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液のpH値を5.5に調整し、次に、pH値が調整された水溶液を50℃の水浴にて真空度を0.07MPに制御して素早く真空濃縮し、含水量5%の半固体とし、次に、半固体を撹拌速度300rpmで撹拌しながら、体積量が半固体重量の6倍である無水アセトンと無水エタノールとの混合液を200ml/hの速度で等速滴下し、滴下しながら15℃/hの降温速度で結晶化終点温度10℃に降温し、結晶を3h成長させ、結晶をろ別して、乾燥させて、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得て、測定した結果、この結晶の嵩密度は1.17g/mlであった。
【0032】
実施例6
本発明で提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法によるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の製造
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド原料20gを水60mLに溶解し、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を得て、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムを加えて、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液のpH値を4.5に調整し、次に、pH値が調整された水溶液を50℃の水浴にて真空度を0.07MPに制御して素早く真空濃縮し、含水量8%の半固体とし、次に、半固体を撹拌速度50rpmで撹拌しながら、体積量が半固体重量の5倍である無水メタノール、無水エタノール及び無水アセトンの混合液を150ml/hの速度で等速滴下し、滴下しながら5℃/hの降温速度で結晶化終点温度18℃に降温し、結晶を3h成長させ、結晶をろ別して、乾燥させて、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得て、測定した結果、この結晶の嵩密度は1.21g/mlであった。
【0033】
実施例7
本発明で提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法によるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の製造
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド原料20gを水60mLに溶解し、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を得て、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムを加えて、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液のpH値を5.0に調整し、次に、pH値が調整された水溶液を、乾燥の初期温度-45℃、終点温度25℃となるように凍結乾燥機にて乾燥し、含水量10%の半固体とし、次に、半固体を撹拌速度50rpmで撹拌しながら、体積量が半固体重量の5倍である無水メタノールを150ml/hの速度で等速滴下し、滴下しながら5℃/hの降温速度で結晶化終点温度18℃に降温し、結晶を3h成長させ、結晶をろ別して、乾燥させて、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得て、測定した結果、この結晶の嵩密度は0.95g/mlであった。
【0034】
実施例8
本発明で提供されるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の嵩密度を向上させる方法によるニコチンアミドモノヌクレオチド結晶の製造
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド原料20gを水60mLに溶解し、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を得て、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムを加えて、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液のpH値を5.0に調整し、次に、pH値が調整された水溶液を、乾燥の初期温度-45℃、終点温度30℃となるように凍結乾燥機にて乾燥し、含水量5%の半固体とし、次に、半固体を撹拌速度50rpmで撹拌しながら、体積量が半固体重量の5倍である無水メタノールを50ml/hの速度で等速滴下し、滴下しながら5℃/hの降温速度で結晶化終点温度10℃に降温し、結晶を3h成長させ、結晶をろ別して、乾燥させて、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得て、測定した結果、この結晶の嵩密度は1.24g/mlであった。
【0035】
比較例1
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド原料20gを水60mLに溶解し、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を得て、測定した結果、該水溶液のpH値は3.5であった。次に、水溶液を撹拌速度200rpmで撹拌しながら、無水エタノール110mlを100ml/hの速度で等速滴下し、滴下しながら10℃/hの降温速度で結晶化終点温度10℃に降温し、結晶を3h成長させ、結晶をろ別して、乾燥させて、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得て、測定した結果、この結晶の嵩密度は0.23g/mlであった。
【0036】
比較例2
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド原料20gに水2.2mLを加えて、均一に混合し、含水量10%の混合物を得て、次に、該混合物を撹拌速度200rpmで撹拌しながら、無水エタノール110mlを100ml/hの速度で等速滴下し、滴下しながら10℃/hの降温速度で結晶化終点温度10℃に降温し、結晶を3h成長させ、結晶をろ別して、乾燥させて、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得て、測定した結果、この結晶の嵩密度は0.20g/mlであった。
【0037】
比較例3
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド原料20gを水60mLに溶解し、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を得て、測定した結果、該水溶液のpH値は3.5であった。次に、該水溶液を45℃の水浴にて真空度を0.07MPに制御して素早く真空濃縮し、含水量10%の半固体とし、室温に放冷した後、半固体を撹拌速度200rpmで撹拌しながら、体積量が半固体重量の5倍である無水エタノールを100ml/hの速度で等速滴下し、結晶を3h成長させ、結晶をろ別して、乾燥させて、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得て、測定した結果、この結晶の嵩密度は0.40g/mlであった。
【0038】
比較例4
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド原料20gを水60mLに溶解し、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液を得て、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムを加えて、ニコチンアミドモノヌクレオチド水溶液のpH値を5.0に調整し、次に、該水溶液を45℃の水浴にて真空度を0.07MPに制御して素早く真空濃縮し、含水量10%の半固体とし、室温に放冷した後、半固体を撹拌速度200rpmで撹拌しながら、体積量が半固体重量の5倍である無水エタノールを100ml/hの速度で等速滴下し、結晶を3h成長させ、結晶をろ別して、乾燥させて、ニコチンアミドモノヌクレオチド結晶を得て、測定した結果、この結晶の嵩密度は0.56g/mlであった。