(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】ペプチジルアルギニンデイミナーゼ1発現促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/61 20060101AFI20240426BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240426BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240426BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240426BHJP
A61K 36/88 20060101ALI20240426BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240426BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240426BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20240426BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240426BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20240426BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240426BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20240426BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20240426BHJP
【FI】
A61K36/61
A61P43/00 111
A61P17/16
A61P17/14
A61K36/88
A61K36/185
A61P43/00 121
A61K8/9789
A61K8/9794
A61Q19/00
A61Q7/00
A23L33/105 ZNA
A61K131:00
A61K127:00
(21)【出願番号】P 2020006711
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 知大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 千奈
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-151388(JP,A)
【文献】特開2002-338439(JP,A)
【文献】特開2014-133711(JP,A)
【文献】特開2012-097008(JP,A)
【文献】特開2001-039823(JP,A)
【文献】永田 武 Takeshi Nagata Takeshi Nagata,女性にも有効な天然育毛原料“バンジロウ葉エキス” Banjiro leaf extract of natural hair growth ingredient ,having effective on the hair-thinning of women,フレグランスジャーナル 4月号 ,vol.40, no.4,宇野 浩一 フレグランス ジャーナル社,p.11-13
【文献】大戸 信明 Nobuaki Ohto Nobuaki Ohto,フィトールのメラニン産生抑制作用と美白剤としての応用 Phytol as a skin brightening agent via inhibition of melanin synthesis,フレグランスジャーナル 12 ,vol.42, no.12,宇野 浩一 ▲C▼フレグランスジャーナル社,p.52-55
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/61
A61K 36/88
A61K 36/185
A61K 8/9789
A61K 8/9794
A23L 33/105
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グァバ葉
30%エタノール抽出物を含有することを特徴とする
内服用ペプチジルアルギニンデイミナーゼ1(PAD1)発現促進剤
(発毛剤及び育毛剤を除く)。
【請求項2】
パイナップル果実及びパパイヤ果実を含有することを特徴とする請求項1記載の
内服用PAD1発現促進剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載のPAD1発現促進剤を含有することを特徴とする
内服用保湿剤。
【請求項4】
請求項1又は2記載のPAD1発現促進剤を含有するPAD1発現促進用、保湿用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グァバ葉を含有することを特徴とするペプチジルアルギニンデイミナーゼ1発現促進剤、保湿剤、発毛剤及び育毛剤に関する。さらに詳しくは、グァバ葉、パイナップル果実及びパパイヤ果実を含有することを特徴とするペプチジルアルギニンデイミナーゼ1発現促進剤、保湿剤、発毛剤及び育毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD、peptidylarginine deiminase)はペプチド中の塩基性アミノ酸であるアルギニン残基をシトルリン残基に変換する翻訳後修飾酵素である。PADアイソフォームの一つであるPAD1は、ヒトの表皮や毛包の分化に重要な因子である(非特許文献1)。
【0003】
皮膚の保湿機能は角質層が担っている。角質層が皮膚内部の水分を逃さず一定に保つためには、天然保湿因子(NMF、natural moisturizing factor)が充分にあることが重要である。表皮の角化過程において、プロフィラグリンから遊離されたフィラグリンが、PAD1による修飾を受けることでNMFは産生される。このように、PAD1はNMF産生に必須の因子であり、皮膚の保湿機能の維持亢進において重要な役割を果たしている。
【0004】
毛包は、毛、毛根鞘、毛母細胞、毛乳頭細胞などで形成される毛を産生する器官である。毛は、成長期、退行期、休止期、脱毛期からなる周期をもって毛の伸長と脱毛を繰り返している。成長期は、毛包が分化して成長する期間であり、毛根が頻繁に分裂し毛幹に付け加わることで毛が伸長していく。この毛包の分化に係るPAD1は、毛の発生と伸長において重要な役割を果たしている。
【0005】
真珠および/または貝殻に含まれる水不溶性タンパク質の酵素分解物を有効成分とするPAD1産生促進剤(特許文献1)はあるが、形態は皮膚外用剤である。また、グァバ葉、パイナップル果実又はパパイヤ果実を含有する保湿用化粧料などはあるが、これら3種の併用による保湿作用や発毛及び育毛作用に関する知見は一切なく、それに係る発明も未だにない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】J. Steroid. biochem. Mol. Biol,144:237-241(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、グァバ葉を含有することを特徴とするPAD1発現促進剤、保湿剤、発毛剤及び育毛剤に関する。さらに詳しくは、グァバ葉、パイナップル果実及びパパイヤ果実を含有することを特徴とするPAD1発現促進剤、保湿剤、発毛剤及び育毛剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究した結果、グァバ葉がPAD1発現促進作用、保湿作用、発毛及び育毛作用を有することを見出した。さらに、グァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実の併用により、PAD1発現促進作用、保湿作用、発毛及び育毛作用が顕著に増加することを見出した。
【0010】
本発明のグァバ葉として、フトモモ科(Myrtaies)バンジロウ属(Psidium)に属するグァバ(Psidium guajava)の葉を用いることができる。
【0011】
本発明のパイナップル果実として、パイナップル科(Bromeliaceae)アナナス属(Ananas)に属するパイナップル(Ananas comosus)の果実を用いることができる。
【0012】
本発明のパパイヤ果実として、パパイヤ科(Caricaceae)パパイヤ属(Carica)に属するパパイヤ(Carica papaya)の果実を用いることができる。
【0013】
本発明に用いるグァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実は、必要に応じてそのままの状態、破砕物、圧搾物、乾燥物などを適宜選択することができる。また、微粒化処理、ロールプレス処理、摩砕処理、超高圧マイクロスチーム処理、通常工業的に用いられるその他機械的方法などで処理して用いてもよい。
【0014】
本発明に用いるグァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実は、必要に応じて抽出操作に付することができる。抽出溶媒として、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールなど)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、石油エーテルなど)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテルなど)などを用いることができる。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。また、抽出方法としては、連続抽出、浸漬抽出などが挙げられ、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、活性炭処理などによる脱色、脱臭などの処理をして用いてもよい。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥などの処理を行い、乾燥物として用いてもよい。
【0015】
本発明のグァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実は、いずれの処理物あるいは抽出物を用いてもよい。更に、グァバ葉は含水エタノール抽出物、パイナップル果実はエタノール抽出物、パパイヤ果実は乾燥破砕した粉末を用いることが好ましい。
【0016】
本発明に用いるグァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実の摂取量は、投与形態、使用目的、年齢、体重などによって異なる。グァバ葉含水エタノール抽出物として0.1~100mg/日、好ましくは0.5~20mg/日、より好ましくは1~10mg/日の範囲で1日1回から数回経口投与できる。パイナップル果実エタノール抽出物として1~1000mg/日、好ましくは10~100mg/日、より好ましくは20~50mg/日の範囲で1日1回から数回経口投与できる。パパイヤ果実粉末として0.1~100mg/日、好ましくは0.5~20mg/日、より好ましくは1~10mg/日の範囲で1日1回から数回経口投与できる。上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要がある場合もある。また、製剤化における薬効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0017】
本発明のPAD1発現促進剤は、食品、医薬部外品又は医薬品のいずれにも用いることができる。その剤形は内服用であることが好ましく、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤などの剤形で用いることができる。また、皮膚外用剤、注射剤、座剤などとして用いることもできる。
【0018】
本発明のPAD1発現促進剤は、効果を損なわない範囲内で、必要に応じて通常の食品、医薬部外品又は医薬品に用いられる賦形剤、安定剤、保存剤、結合剤、崩壊剤、炭化水素類、脂肪酸類、ビタミン類、アルコール類、エステル類、pH調整剤、防腐剤、香料などの成分を含有することもできる。ビタミン類を含有することが好ましく、更にβ―カロテン(ビタミンA)、ビタミンC、ビタミンEを含有することが好ましく、特にβ―カロテンを1~2mg、ビタミンCを1000~2000mg、ビタミンEを10~20mgで含有することが好ましい。
【0019】
本発明における保湿剤は、皮膚中の水分量を増加させ、皮膚からの水分蒸散量を抑制する剤であり、乾燥肌、乾皮症、皮脂欠乏症、シワ、アトピー性皮膚炎、肌荒れ、角化異常を予防、改善することができる。
【0020】
本発明における発毛剤及び育毛剤は、頭髪などの毛の発生と伸長を促す剤であり、増毛や薄毛及び脱毛の予防改善をすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のグァバ葉を含有することを特徴とするPAD1発現促進剤は、PAD1発現促進作用、保湿作用、発毛及び育毛作用を有する。さらに、グァバ葉、パイナップル果実及びパパイヤ果実を含有することを特徴とするPAD1発現促進剤は、優れたPAD1発現促進作用、保湿作用、発毛及び育毛作用を有する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の実施例は例示のために説明するものであり、本発明の特許請求の範囲はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、実施例に示す含有量の%は重量%を示す。
【実施例1】
【0023】
製造例1 グァバ葉熱水抽出物
グァバ葉100gに、精製水2Lを加え、95~100℃で2時間抽出した後、濾液を濃縮、凍結乾燥して、グァバ葉熱水抽出物9.3gを得た。
【0024】
製造例2 グァバ葉30%エタノール抽出物
グァバ葉100gに、精製水1.4Lとエタノール0.6Lを加え、常温で5日間抽出した後、濾液を濃縮乾固して、グァバ葉30%エタノール抽出物5.7gを得た。
【0025】
製造例3 グァバ葉70%エタノール抽出物
グァバ葉100gに、精製水0.6Lとエタノール1.4Lを加え、常温で5日間抽出した後、濾液を濃縮乾固して、グァバ葉70%エタノール抽出物3.2gを得た。
【0026】
製造例4 パイナップル熱水抽出物
パイナップル果実100gに、精製水2Lを加え、95~100℃で2時間抽出した後、濾液を濃縮、凍結乾燥して、パイナップル果実熱水抽出物7.4gを得た。
【0027】
製造例5 パイナップル果実30%エタノール抽出物
パイナップル果実100gに、精製水1.4Lとエタノール0.6Lを加え、常温で5日間抽出した後、濾液を濃縮乾固して、パイナップル果実30%エタノール抽出物4.0gを得た。
【0028】
製造例6 パイナップル果実エタノール抽出物
パイナップル果実100gに、エタノール1Lを加え、常温で5日間抽出した後、濾液を濃縮乾固して、パイナップル果実エタノール抽出物4.1gを得た。
【0029】
製造例7 パパイヤ果実粉末
パパイヤ果実100gを乾燥させ、粉砕後にふるい選別して、パパイヤ果実粉末80gを得た。
【0030】
製造例8 パパイヤ果実熱水抽出物
パパイヤ果実100gに、精製水2Lを加え、95~100℃で2時間抽出した後、濾液を濃縮、凍結乾燥して、パパイヤ果実熱水抽出物8.7gを得た。
【0031】
製造例9 パパイヤ果実30%エタノール抽出物
パパイヤ果実100gに、精製水1.4Lとエタノール0.6Lを加え、常温で5日間抽出した後、濾液を濃縮乾固して、パパイヤ果実30%エタノール抽出物4.7gを得た。
【実施例2】
【0032】
処方例1 顆粒剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.グァバ葉30%エタノール抽出物(製造例2) 0.16
2.乳糖 91.84
3.セルロース 8.00
<製造方法>
成分1~3を乾式法により造粒し、顆粒剤を得る。
<用法>
1日当り3.2g摂取する。
【0033】
処方例2 顆粒剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.グァバ葉30%エタノール抽出物(製造例2) 0.16
2.パイナップル果実エタノール抽出物(製造例6) 1.25
3.パパイヤ果実粉末(製造例7) 0.16
4.乳糖 90.43
5.セルロース 8.00
<製造方法>
成分1~5を乾式法により造粒し、顆粒剤を得る。
<用法>
1日当り3.2g摂取する。
【0034】
処方例3 顆粒剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.グァバ葉30%エタノール抽出物(製造例2) 0.16
2.パイナップル果実エタノール抽出物(製造例6) 1.25
3.パパイヤ果実粉末(製造例7) 0.16
4.β―カロテン 0.05
5.ビタミンC 50.00
6.ビタミンE 0.50
7.乳糖 39.88
8.セルロース 8.00
<製造方法>
成分1~8を乾式法により造粒し、顆粒剤を得る。
<用法>
1日当り3.2g摂取する。
【0035】
処方例4 軟カプセル剤
<処方>
成分 含有量(%)
1.グァバ葉熱水抽出物(製造例1) 0.090
2.パイナップル果実熱水抽出物(製造例4) 1.800
3.パパイヤ果実熱水抽出物(製造例8) 0.006
4.米胚芽油 78.104
5.ミツロウ 12.000
6.ビタミンE 8.000
<製造方法>
成分1~6を混合し、ゼラチン、グリセリン、カラメル色素で構成される被膜に、350mg充填し、乾燥後、軟カプセル剤を得る。
<用法>
1日当り3粒摂取する。
【0036】
処方例5 飲料
<処方>
成分 含有量(%)
1.グァバ葉70%エタノール抽出物(製造例3) 0.10
2.パイナップル果実30%エタノール抽出物(製造例5) 1.80
3.パパイヤ果実30%エタノール抽出物(製造例9) 0.01
4.クエン酸 6.00
5.ショ糖 11.00
6.香料 1.00
7.水 80.09
<製造方法>
成分1~6を成分7の一部の水に撹拌溶解する。次いで、成分7の残りの水を加えて混合し、殺菌したものを飲料とする。
<用法>
1日当り50mL摂取する。
【0037】
処方例6 化粧水
<処方>
成分 含有量(%)
1.グァバ葉30%エタノール抽出物(製造例2) 5.0
2.パイナップル果実エタノール抽出物(製造例6) 5.0
3.パパイヤ果実粉末(製造例7) 5.0
4.グリセリン 5.0
5.ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート 1.5
6.エタノール 5.0
7.防腐剤 0.5
8.水 73.0
<製造方法>
成分1~7を成分8の水に撹拌溶解する。
<用法>
1日当り2mLを皮膚に塗布する。
【0038】
比較例1 従来の顆粒剤
処方例1の顆粒剤において、グァバ葉30%エタノール抽出物(製造例2)を乳糖に置換えたものを、従来の顆粒剤とした。
【実施例3】
【0039】
試験例1 グァバ葉によるPAD1発現促進作用、SMPD1発現促進作用及びASAH1発現抑制作用
DMEM培地でコンフルエントまで培養したヒトケラチノサイトHaCaTに、グァバ葉30%エタノール抽出物(製造例2)を24時間添加して、リアルタイムPCR法によりPAD1の遺伝子発現解析を行い、未添加条件の発現量を1として比較した。また、スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ1(SMPD1、sphingomyelin phosphodiesterase1)、N-アセチルスフィンゴシンアミドヒドロラーゼ1(ASAH1、N-acylsphingosine amidohydrolase1)の遺伝子発現解析を行った。
【0040】
PAD1用のプライマーセット
GGGCCCCACTTAGAATTGCT(配列番号1)
GTGCAGATGCAAAGTCATTATCCTT(配列番号2)
SMPD1用のプライマーセット
GAAAGGGTGAAAAAGCCCAAAT(配列番号3)
GGTTCTTTCACCGGATGATCTT(配列番号4)
ASAH1用のプライマーセット
GAATCCAGCACGTCTGTGTGA(配列番号5)
AGGTAGAAGTGAAAAACTGAAGAATGTG(配列番号6)
【0041】
試験例1の結果を表1に示す。グァバ葉30%エタノール抽出物(製造例2)は、PAD1の発現を促進した。このことから、グァバ葉のPAD1発現促進作用が示された。また、製造例2のグァバ葉30%エタノール抽出物はSMPD1の発現を促進し、ASAH1の発現を抑制した。
【0042】
【0043】
グァバ葉30%エタノール抽出物(製造例2)は、保湿において重要なPAD1の発現を促進したことから、グァバ葉は保湿作用を有している。
【0044】
グァバ葉30%エタノール抽出物(製造例2)は、毛の発生と伸長において重要なPAD1の発現を促進したことから、グァバ葉は発毛及び育毛作用を有している。
【0045】
試験例2 グァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実によるPAD1発現促進作用
DMEM培地でコンフルエントまで培養したヒトケラチノサイトHaCaTに、グァバ葉30%エタノール抽出物(製造例2)、パイナップル果実エタノール抽出物(製造例6)、パパイヤ果実粉末(製造例7)を24時間添加して、リアルタイムPCR法による遺伝子発現解析を行った。プライマーは試験例1と同じものを用い、未添加の条件での発現量を1として比較した。
【0046】
試験例2の結果を表2に示す。グァバ葉30%エタノール抽出物(製造例2)、パイナップル果実エタノール抽出物(製造例6)、パパイヤ果実粉末(製造例7)を各々添加した場合と比較して、製造例2、6、7の併用はPAD1発現量の大幅な増加を示した。このことから、グァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実の併用は格別顕著なPAD1発現促進効果を示し、優れた保湿作用、発毛及び育毛作用を有している。
【0047】
【0048】
試験例3 ヒト飲用による保湿作用
男女104名(20~50歳代)を26人ずつ4群に分け、グァバ葉を含有する顆粒剤(処方例1)、グァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実を含有する顆粒剤(処方例2)、グァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実、β―カロテン、ビタミンC、ビタミンEを含有する顆粒剤(処方例3)、従来の顆粒剤(比較例1)を、1回1.6gを1日2回、3ヶ月間飲用させた。保湿作用の評価は、コルネオメーターを用いた角質水分量の測定とテヴァメーターを用いた水分蒸散量の測定を行い、飲用前を100%とした時の飲用後の角質水分量、水分蒸散量を比較した。
【0049】
試験例3の結果を表3に示す。グァバ葉を含有する顆粒剤(処方例1)の飲用は、角質水分量増加と水分蒸散量減少を示した。よって、グァバ葉の保湿作用が示された。
【0050】
【0051】
グァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実を含有する顆粒剤(処方例2)の飲用は、処方例1の飲用よりも著しい角質水分量増加と水分蒸散量減少を示した。よって、グァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実の併用による優れた保湿作用が示された。
【0052】
また、処方例1、処方例2及び処方例3の飲用は、角質水分量増加と水分蒸散量減少だけでなく、踵、足首、脛、肘などの身体の乾燥やカサつきの改善を示した。
【0053】
試験例4 ヒト飲用による発毛及び育毛作用
男女104名(20~50歳代)を26人ずつ4群に分け、グァバ葉を含有する顆粒剤(処方例1)、グァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実を含有する顆粒剤(処方例2)、グァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実、β―カロテン、ビタミンC、ビタミンEを含有する顆粒剤(処方例3)、従来の顆粒剤(比較例1)を用いて、1回1.6gを1日2回、6ヶ月間飲用させた。発毛及び育毛作用の評価は、飲用前に刈毛(1cm×1cm、側頭部の頭髪を根元からハサミを用いて切る)し、写真撮影を行い、毛の本数を写真の画像から計数した。飲用終了後、刈毛(1cm×1cm、側頭部の頭髪を根元からハサミを用いて切る)し、写真撮影を行い、毛の本数と毛の長さを写真の画像から計測した。2日後、写真撮影を行い、毛の長さを計測した。毛の伸長率は、飲用終了後の2日間で伸長した毛の長さを、比較例1の顆粒剤の飲用で伸長した毛の長さを100とした時の百分率で算出した。毛の本数の増加率は、各顆粒剤で飲用前の毛の本数を100とした時の、各顆粒剤の飲用終了後の毛の本数を、飲用前と比べた割合で示した。
【0054】
試験例4の結果を表4に示す。グァバ葉を含有する顆粒剤(処方例1)の飲用は、毛の伸長率と毛の本数の増加率が向上した。よって、グァバ葉の発毛及び育毛作用が示された。
【0055】
【0056】
グァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実を含有する顆粒剤(処方例2)の飲用は、処方例1の飲用よりも著しい毛の伸長率と毛の本数の増加率を示した。よって、グァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実の併用による優れた発毛及び育毛作用が示された。
【0057】
以上の結果より、グァバ葉のPAD1発現促進作用、保湿作用、発毛及び育毛作用が示された。また、グァバ葉、パイナップル果実、パパイヤ果実の併用により優れたPAD1発現促進作用、保湿作用、発毛及び育毛作用が示された。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のPAD1発現促進剤は、優れたPAD1発現促進作用、保湿作用、発毛及び育毛作用を示した。従って、優れたPAD1発現促進作用、保湿作用、発毛及び育毛作用を有する食品、医薬部外品又は医薬品としての利用に有用である。また、皮膚外用剤としても利用可能である。
【配列表】