(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】折畳み構造体
(51)【国際特許分類】
E04H 15/44 20060101AFI20240426BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
E04H15/44
E04H1/12 301
(21)【出願番号】P 2020218282
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】518278742
【氏名又は名称】株式会社クロコアートファクトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】徳田 吉泰
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3073655(JP,U)
【文献】実開平04-062197(JP,U)
【文献】特開平04-143382(JP,A)
【文献】特開平11-324361(JP,A)
【文献】実開昭50-079642(JP,U)
【文献】登録実用新案第3076350(JP,U)
【文献】特開2001-140503(JP,A)
【文献】米国特許第09932752(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 15/44
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースユニットと、
当該ベースユニットに対して立設された状態で接続される少なくとも4本の弾性長尺部材と、
当該少なくとも4本の弾性長尺部材の隣接する2本の間に設けられた幕体から形成されてなる壁部と、
当該幕体に対して接続されてなる天板と、
を有する折畳み構造体であって、
前記少なくとも4本の弾性長尺部材が、前記ベースユニットに対して、それぞれ弾性ゴムパーツを介して、接続されており、
かつ、
非展開時には、前記弾性長尺部材が、コイル状に折り畳んだ状態となり、
展開時には、前記天板、前記弾性長尺部材、及び、前記幕体から形成された壁部で区画されてなる所定空間を形成することを特徴とする折畳み構造体。
【請求項2】
前記少なくとも4本の弾性長尺部材の上端と、前記天板との間に、弾性ゴムパーツを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の折畳み構造体。
【請求項3】
前記弾性ゴムパーツは、長手方向の途中にくびれ部を備えたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の折畳み構造体。
【請求項4】
水平方向の強化用長尺部材を更に備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の折畳み構造体。
【請求項5】
前記幕体の一部に、切込み又はファスナーを備えた出入り口を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の折畳み構造体。
【請求項6】
前記ベースユニットの内部に、水槽を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の折畳み構造体。
【請求項7】
前記ベースユニットの内部に、中蓋を設け、当該中蓋の上方に、シャワーユニット又はトイレユニットを、それぞれ着脱可能に設けたことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の折畳み構造体。
【請求項8】
前記少なくとも4本の弾性長尺部材が繊維強化樹脂であって、当該弾性長尺部材の直径を2~10mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の折畳み構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折畳み構造体に関する。特に、内容積が大きいにもかかわらず、展開時の復元及び、非展開時の畳み作業を迅速に行うことができ、かつ、機械的強度や形状安定性に優れた折畳み構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
主として、山や草原のアウトドアで夜を過ごすため、携帯性に優れた、折り畳み式布構造体や折畳み式テントが各種提案されている。
例えば、コイル状に折り曲げ自在な支持部材を備える折り畳み式布構造体及びその折り畳む方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、
図9(a)に示すように、折り畳み式布構造体100は、第1サイドパネル101、第2サイドパネル103、第3サイドパネル105、及び、第4サイドパネル107を備えている。
【0003】
ここで、第1サイドパネル101及び第2サイドパネル103の各々は、閉塞した形状(この例では略三角形状に閉塞)でかつコイル状に折り曲げ可能なチャネル111と、チャネル111に接続されている布材113と、によって構成されている。そして、チャネル111は、内部に、ばね網で形成された部材を備えている。
又、第3サイドパネル105及び第4サイドパネル107の各々は、逆U字形状であって、かつ、コイル状に折り曲げ可能な逆U字状チャネル115と、逆U字状チャネル115に接続されている布材117と、によって構成されている。そして、逆U字状チャネル115は、内部に、ガラス繊維エポキシ複合材製のロッドを備えている。
【0004】
又、第1サイドパネル101及び第2サイドパネル103が対向し、第3サイドパネル105及び第4サイドパネル107が対向するように、これらのサイドパネルは配置されている。更に、第1~第4サイドパネルのうちの隣り合うサイドパネルは、チャネルの位置で、蝶番又は縫い付け等で、接続されている。
そして、逆U字状チャネル115の反発力で、折り畳み式布構造体100に緊張状態が形成され、所定形状(この例では略ピラミッド状)の構造体が形成される。逆U字状チャネル115の先端115aは突出しており、逆U字状チャネル115の突出部分を地面に刺し込むことによって、折り畳み式布構造体100を安定に固定できる。
【0005】
従って、折り畳み式布構造体100を折畳む場合、例えば、
図9(a)中の、対角位置に在る稜線R1と稜線R2とを接触させて、第1次の折畳みをし、その後、稜線R3及び稜線R4が接触するよう折畳んで、
図9(b)のような構造体100aを得る。次いで、コイル状に折り曲げて、
図9(c)のような円盤状の構造体100bを得る。
【0006】
又、4枚の壁面部の左右両側縁がそれぞれ折畳み可能に相互に結合されて4角筒状に形成された折畳み式テントが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、
図10(a)に示すように、折畳み式テント130は、第1の壁面部131、第2の壁面部133、第3の壁面部135、及び第4の壁面部137を備えている。
そして、これら第1の壁面部131~第4壁面部137は、各々、角部が湾曲した略矩形状可撓性幕139と、略矩形状可撓性幕139の外周縁に接続され弾性に富んだ無端フレーム141と、によって構成されている。このような無端フレーム141として、厚さが1~2mm、幅が5~10mm程度の鋼製帯状無端ベルトが使用されている。
【0007】
従って、第1の壁面部131~第4壁面部137において、隣接するもの同士が、側縁で連結されており、無端フレーム141の反発力によって、4角筒状の構造体を形成できる構成である。
そして、折畳み式テント130を折畳む場合は、対角位置に在る稜線R1と稜線R2とを接触させ、
図10(b)に示す平坦な構造体130aを形成し、その後、稜線R3及び稜線R4が接触するよう折畳んで
図10(c)のような4つ折りの構造体130bを得る。次いで、コイル状に折り曲げて、
図10(d)のような円盤状の構造体130cを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-140503号公報(特許請求の範囲、
図1等)
【文献】特許第5595570号公報(特許請求の範囲、
図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、レジャーの拡大や、災害の増加等に起因して折畳み構造体の用途が、多岐になっている。
そのため、展開時には容易に人(大人)が立って出入りできるほど内容積が大きいにもかかわらず、折り畳み時には小型な、折畳み構造体であって、容易に展開したり、折り畳んだりすることができ、かつ、展開後の機械的強度や形状安定性に優れ、多用途、例えば、簡易型の更衣室、トイレ、シャワー等に使える折畳み構造体が望まれている。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された折り畳み式布構造体100の場合、例えばピラミッド形状のもので、容易に人が立って出入りできる内容積を有する折畳み構造体を実現しようとすると、底面積が増大して大型になるという問題点が見られた。
又、立方体状のもので、容易に人が立って出入りできる内容積を有する折畳み構造体を実現しようとすると、展開後の機械的強度や形状安定性を確保する必要があった。そのため、チャネル111内部に設けるばね網や、逆U字状チャネル115の内部に設けるガラス繊維エポキシ複合材製のロッドを強固なものにしなければならず、そのため、折り畳みが難しくなるという問題点が見られた。
更に又、折り畳み作業をするには、第1サイドパネル~第4サイドパネル101、103、105、107を平面状に折畳む処理と、折り畳んだものをコイル状に更に畳む処理とが必要となり、折畳みの作業時間が長くなるという問題点が見られた。
【0011】
一方、特許文献2に記載された折畳み式テント130の場合も、容易に人が立って出入りできる内容積を有する折畳み構造体を構成しようとすると、無端フレーム141を構成する鋼製帯状無端ベルトを強固なものにしなければならなかった。そのため、折畳み自体が難しくなるという問題点が見られた。
又、折畳み作業をするには、第1壁面部~第4壁面部131~137を平面状に折畳む処理と、折り畳んだものをコイル状に更に畳む処理とが必要となり、折畳み作業が複雑化し、折畳み時間が長くなるという問題点も見られた。
【0012】
そこで、本発明の発明者は、所定のベースユニットや、天板を設けるとともに、それらに対して、所定の弾性ゴムパーツを介して、複数の弾性長尺部材を接合することにより、非展開時は、容易に小型化でき、かつ、展開時には、迅速に復元できるとともに、内容積が大きい折畳み式テントの形状安定性が著しく向上することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、内容積が大きいにもかかわらず、展開時の復元及び、非展開時の畳み作業を迅速に行うことができ、かつ、機械的強度や形状安定性に優れた折畳み構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ベースユニットと、当該ベースユニットに対して立設された状態で接続される少なくとも4本の弾性長尺部材と、当該少なくとも4本の弾性長尺部材の隣接する2本の間に設けられた幕体から形成されてなる壁部と、当該幕体に対して接続されてなる天板と、を有する折畳み構造体である。
そして、少なくとも4本の弾性長尺部材が、ベースユニットに対して、それぞれ弾性ゴムパーツ(以下、下側弾性ゴムパーツと称する場合がある。)を介して、接続されており、かつ、非展開時には、弾性長尺部材が、コイル状に折り畳んだ状態となり、展開時には、天板、弾性長尺部材、及び、幕体から形成された壁部で区画されてなる所定空間を形成することを特徴とする折畳み構造体が提供され、上述した課題を解決することができる。
すなわち、本発明の折畳み構造体であれば、非展開時には、コイル状に折り畳んだ状態となり、小型化、薄型化してベースユニットの内部に収容することができる。
一方、展開時には、内容積が大きいにもかかわらず、所定形状に、迅速に復元することができ、かつ、機械的強度や形状安定性に優れ、その結果、各種シャワーブースやトイレブース等の用途に好適に使うことができる。
【0014】
又、本発明の折畳み構造体を構成するにあたり、前述の少なくとも4本の弾性長尺部材の上端と、天板との間にも、弾性ゴムパーツ(以下、上側弾性ゴムパーツと称する場合がある。)を更に設けておくことが好ましい。
このように構成することにより、弾性長尺部材の折畳みをより円滑に行うことができ、ひいては、本発明の折畳み構造体の折畳みを、更に迅速に行うことができる。
【0015】
又、本発明の折畳み構造体を構成するにあたり、弾性ゴムパーツ(上側弾性ゴムパーツを設ける場合はそれも含む)は、長手方向の途中に、くびれ部を備えたものとすることが好ましい。
このように構成することにより、くびれ部を備えた弾性ゴムパーツの場合、折畳み操作を行う際にくびれ部を起点として折畳みが円滑に起こるため、弾性長尺部材につき、コイル状に折畳み動作を円滑に開始できる。従って、当該折畳み構造体の折畳みをより迅速に行うことができる。
【0016】
又、本発明の折畳み構造体を構成するにあたり、前述の弾性長尺部材、すなわち鉛直方向の長尺部材のほかに、水平方向に、強化用長尺部材を設けることが好ましい。
このように構成することにより、更に優れた機械的強度や形状安定性を発揮することができる。
【0017】
又、本発明の折畳み構造体を構成するにあたり、前述の幕体の一部に、切込み又はファスナーを備えた出入り口を設けておくことが好ましい。
このように構成することにより、幕体を全開せずに、一部分を開閉することができるため、使用者の出入りの用途にきめ細かく対応することができる。
【0018】
又、本発明の折畳み構造体を構成するにあたり、ベースユニットの内部に、水槽を設けておくことが好ましい。
このように構成することにより、当該折畳み構造体の下方にあるベースユニットの内部に、所定量の水を収容できるため、それを利用して、折畳み構造体の安定感を向上させることができ、一方で、その水をシャワーやトイレに好適に利用することができる。
【0019】
又、本発明の折畳み構造体を構成するにあたり、ベースユニットの内部に、中蓋を設け、当該中蓋の上方に、シャワーユニット又はトイレユニットを、それぞれ着脱可能に設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、中蓋を変更することで、用途に応じて、シャワーユニット又はトイレユニットの切り替えを容易に行うことができる。
【0020】
又、本発明の折畳み構造体を構成するにあたり、前述の弾性長尺部材が繊維強化樹脂であって、当該弾性長尺部材の直径(円相当径)を2~10mmの範囲内の値とすることが好ましい。
このような直径を有するFRP製の弾性長尺部材であれば、弾性ゴムパーツと協同して、通常、10秒以内で、極めて迅速に、折畳み構造体を展開することができる。更に、折畳み構造体の展開後には、優れた機械的強度や形状安定性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(a)は、折畳み構造体の全体概要を説明するために供する図(斜視図)であり、
図1(b)は、折畳み構造体から幕体を外し骨格的な構造を説明するために供する図(斜視図)である。
【
図2】
図2(a)及び(b)は、ベースユニット及び中蓋を説明するために供する図(斜視図)であり、
図2(c)は中蓋の変形例を説明するために供する図(斜視図)である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、折畳み構造体の展開前、展開途中、及び展開後の状態を説明するために供する図である。
【
図4】
図4(a)は、折畳み構造体展開時の、弾性ゴムパーツ及び弾性長尺部材の状態を説明するために供する図(側面図)であり、
図4(b)は、折畳み構造体を折畳み時の、弾性ゴムパーツ、弾性長尺部材及び幕体の状態、並びに、天板とベースユニットとの固定方法の例を説明するために供する図(側面図)である。
【
図5】
図5(a)~(c)は、折畳み構造体及びそれに備わる水平方向の強化用長尺部材を説明するために供する図(斜視図)である。
【
図6】
図6(a)~(c)は、折畳み構造体及びそれに備わるシャワーユニットを説明するために供する図(側面図)である。
【
図7】
図7(a)及び(b)は、折畳み構造体及びそれに備わるトイレユニットを説明するために供する図(側面図)である。
【
図8】
図8は、変形例の中蓋を説明するために供する図(斜視図)である。
【
図9】
図9(a)~(c)は、従来の折り畳み式布構造体を説明するために供する図である。
【
図10】
図10(a)~(d)は、従来の別の折畳み式テントを説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、ベースユニットと、当該ベースユニットに対して立設された状態で接続される少なくとも4本の弾性長尺部材と、当該少なくとも4本の弾性長尺部材の隣接する2本の間に設けられた幕体から形成れてなる壁部と、当該幕体に対して接続されてなる天板と、を有する折畳み構造体である。
そして、少なくとも4本の弾性長尺部材が、ベースユニットに対して、それぞれ弾性ゴムパーツを介して、接続されており、かつ、非展開時には、弾性長尺部材が、コイル状に折り畳んだ状態となり、展開時には、天板、弾性長尺部材、及び、幕体から形成された壁部で区画されてなる所定空間を形成することを特徴とする折畳み構造体である。
以下、第1の実施形態の折畳み構造体の構成に分けて、適宜図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0023】
1.主構成
図1(a)及び
図1(b)は、第1の実施形態の折畳み構造体10の構成例を示す図である。
図1(a)は、折畳み構造体10を展開した場合の斜視図であって、かかる折畳み構造体10は、主構成として、鉛直方向に沿って、下方から、ベースユニット11と、弾性ゴムパーツ13、19と、複数の弾性長尺部材15と、幕体17と、天板21と、を有している。
そして、ベースユニット11と、複数の弾性長尺部材15とは、下側弾性ゴムパーツ13を介して、接続されており、複数の弾性長尺部材15が、ベースユニット11に対して立設された状態が維持されている。
又、天板21と、複数の弾性長尺部材15とも、上側弾性ゴムパーツ19を介して、接続されている。
更に、隣接する弾性長尺部材14の間に設けられた幕体17からなる壁部を備えている。
【0024】
すなわち、本発明の折畳み構造体は、これらの部材を主構成とすることで、非展開時には、コイル状に折り畳んだ状態で、小型化、薄型化して、例えば、ベースユニットの内部に収容することができる。
従って、全体として、携帯性や保管性にも優れた折畳み構造体とすることができる。
【0025】
一方、展開時には、所定形状に、迅速に復元することができる。又、内容積が大きいにもかかわらず、機械的強度や形状安定性に優れた折畳み構造体とすることができる。
なお、内容積の大きさは用途等にもよるが、通常、40万cm3~300万cm3の範囲内の値とすることが好ましく、60万cm3~250万cm3の範囲内の値とすることがより好ましく、80万cm3~200万cm3の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0026】
更に、折畳み構造体の内部に、シャワーブースやトイレブース等を容易に併設できることから、災害時や避難場所での地面(土壌)や、マリンスポーツ等を実施するアウトドアにおける砂浜等であって、多少地盤がでこぼこしているような場所であっても、一人であっても容易かつ迅速に設置し、ライフラインの一助として好適に使用することができる。
【0027】
2.ベースユニット
ベースユニット11は、折畳み構造体10の基盤になるものである。
かかるベースユニット11の平面形状は、円形、四角形等任意のもので良いが、平面視で四角形状のものとすることが好ましい。
そして、通常、かかるベースユニット11の幅を60~100cm、奥行きを60~100cm、高さを12~40cmの範囲内の寸法(大きさ)とすることが好ましい。
この理由は、このような寸法であれば、更衣室、シャワーブース、トイレブース等の種々の用途に適合し易く、かつ、設置面積も必要最小限にできるためである。
【0028】
又、ベースユニット11は、当該折畳み構造体10を、非展開時として、折り畳んだ際に、弾性ゴムパーツ13、弾性長尺部材15及び幕体17を収納する凹部11a(
図2(a)及び
図4(b)を参照)を有するものとすることが好ましい。
この凹部11aの大きさや深さは、目的や用途に応じて適宜変更することができるが、通常、ベースユニット11の寸法よりも小さく、例えば、幅を55~95cm、奥行きを55~95cm、深さを10~38cmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0029】
なお、かかる凹部11aは、ベースユニット11に対して、補強効果を発揮しうるリブとして設けることも好ましい。
すなわち、弾性長尺部材15及び幕体17を収納する凹部11aのほかに、別の凹部を1個又は2個以上設けて、それを柱状(円柱や角柱等)のリブとすることによって、ベースユニット11の鉛直方向の機械的強度を著しく向上させることができるためである。
【0030】
更に又、ベースユニット11の凹部11aは、単純な1つの凹部でも良いが、表面側の第1凹部11bと、第1凹部11bに深さ方向で連続していて開口面積が小さくなった第2凹部11cとの2段構造の凹部としておくことが好ましい。
この理由は、このように2段構造の凹部であると、2段の凹部の間の段差の箇所に、中蓋25を置くことができるので、中蓋25を用いて当該折畳み構造体10の利便性を高めることで、後述する種々のユニットを構成できるためである。
【0031】
又、ベースユニット11を構成する材料としては、目的や用途に応じて、各種使用することができるが、通常、軽量かつ高強度、耐蝕性、耐久性、成形性に富むものが好ましい。
そのような観点から、ベースユニット11を構成する材料としては、好ましくは樹脂又は強化樹脂である。
【0032】
従って、より好適な樹脂として、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂等の少なくとも一つが挙げられる。
そして、これらの樹脂中には、公知の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、各種フィラー、カーボン粒子、ナノ繊維等を、樹脂の全体量に対して、通常、0.1~20重量%の範囲となるように配合することが好ましく、0.5~10重量%の範囲となるように配合することがより好ましい。
【0033】
又、好適な強化樹脂として、上述した樹脂中に、所定の繊維補強材としての、各種ナノファイバー、ガラスバブル、ガラスファイバー、カーボンファイバー等を、所定量含ませてなる、FRP(樹脂繊維強化樹脂)、GFRP(ガラス繊維強化樹脂)、CFRP(カーボン繊維強化樹脂)等の少なくとも一つが挙げられる。
より具体的には、樹脂の全体量に対して、所定の繊維補強材を、通常、1~30重量%の範囲となるように配合することが好ましく、5~20重量%の範囲となるように配合することがより好ましい。
【0034】
又、本発明の折畳み構造体を構成するにあたり、ベースユニット11の内部に、水槽を設けておくことが好ましい。
この理由は、かかる折畳み構造体の下方にあるベースユニットの内部に、水槽を介して、所定量の水を収容することにより、その水をシャワーやトイレに好適に利用することができるためである。
又、所定量の水、例えば、5~20kgの水を収容した水槽を、錘として利用することができ、折畳み構造体の安定感をより向上させることができるためである。
【0035】
ここで、
図6(a)~(c)を参照して、水槽について、更に具体的に説明する。
すわなち、
図6(a)に示すように、水槽61aは、中蓋25とベースユニット11から構成されており、折畳み構造体10の重心を低くするため、折畳み構造体10の形状安定性、姿勢安定性の向上にも寄与することができる。
又、
図6(b)に示すように、かかる水槽を、水を貯蔵できるタンク61eと別体であって、シャワーホース及びヘッド61bとポンプ61cとが接続されているタンク61eとして構成することも好ましい。
この理由は、タンク61eによって水槽を構成することで、気密性が良好となり、かつ、タンク61eをベースユニットから脱着可能とすることで、持ち運びやメンテナンスも容易になるためである。
しかも、タンク61eが別体であれば、各種形態や、水を貯蔵する内容量を適宜変更可能にすることもでき、それをブロー成形法等の公知の成形法によって作成することができるためである。
【0036】
更に又、タンク61eについても、
図6(c)に示すように、折畳み可能なものとすることが好ましい。
この理由は、未使用時の持ち運びが容易になるためである。又、折畳み性を考慮して、タンク61eの構成材料は、比較的比重が小さく、かつ機械的強度に優れた樹脂、例えば、ポリカーボネートや、繊維強化ポリエステル樹脂等であることが好ましい。
【0037】
又、折畳み構造体10は、
図2(a)~(c)に拡大図で示すように、ベースユニット11の凹部11aの開口に嵌め合わせできる中蓋25を備えることが好ましい。
この理由は、かかる中蓋25は、折畳み構造体10内に入る利用者が立つための床となり、後述するシャワーユニットやトイレユニットを構成する際の当該ユニットの構成成分の一部にもなることができるためである。
なお、中蓋25の構成材料は、強度、耐水性、耐腐食性を持つものが良く、かつ、人に対し優しいものが良い。このような観点から、中蓋25を構成する材料は、ベースユニット11を構成する材料と同一の樹脂又は強化樹脂が好ましい。
【0038】
又、中蓋25は、使用目的に応じて、例えば
図2(c)に示すように、中蓋25自体の一部に凹部25aを有する構造のものとしても良い。
更に又、中蓋25は、
図8に示すように、変形した構造のものとしても良い。この例では、シャワーユニット用のシャワーホース及びヘッド61bをポケット25bに収納した例を示してある。
【0039】
より具体的には、中蓋25の適所に、本発明の折畳み構造体の種々の変形例、例えばシャワーユニットとかトイレユニット等を構成する変形例で用いる部材を収容するポケット25bを、設けることができる。
又、中蓋25には、
図4(a)及び(b)に示すように、その縁の全周に、シール材としてのパッキング31が設けられていることも好ましい。
この理由は、パッキング31によって、上述の水槽から水が漏れたり、又は、後述するシャワーユニット等を構成する際に、使用した水が水槽内に侵入したりしないように、気密性、防水性を付与することができるためである。
【0040】
3.弾性長尺部材
弾性長尺部材15は、典型的には、硬化したエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等に対して、樹脂繊維、ナノ繊維、ガラスバブル、ガラス繊維、カーボン繊維等を、導入してなる強化樹脂から構成することが好ましい。
より具体的には、硬化したポリエステル樹脂等中に、少なくとも樹脂繊維を含むFRP(樹脂繊維強化樹脂)、硬化したポリエステル樹脂等中に、少なくともガラス繊維を含むGFRP(ガラス繊維強化樹脂)、硬化したポリエステル樹脂等中に、少なくともカーボン繊維を含むCFRP(カーボン繊維強化樹脂)の一つから成る棒状物が好ましい。
この理由は、かかる弾性長尺部材であれば、所定の直径(円相当径)とすることで、折畳みに必要な柔軟性と、展開に必要な弾性力、展開後に必要な機械的強度や形状安定性を確保できるためである。
又、所定のFRP等であれば、展開時には容易に人(大人)が立って出入りできるほど内容積が大きくしても、折畳み時には小型な、折畳み構造体とできるためである。そして、展開及び折畳みそれぞれの際は、所定形状に迅速に展開・折畳みができ、かつ、展開後には、機械的強度や形状安定性に優れた折畳み構造体とすることができる。
【0041】
そして、弾性長尺部材15は、FRP等を芯材とし、その周囲に、塩化ビニル樹脂被覆したり、ポリエステル樹脂被覆、ポリオレフィン樹脂被覆等を施したりすることも好ましい。
この理由は、所定の被覆樹脂によって、FRP等の耐久性や耐候性が向上するとともに、ジョイントとしての、弾性長尺部材の弾性ゴムパーツへの挿入が容易になる反面、弾性長尺部材と、弾性ゴムパーツとの間の摩擦力が向上し、抜けにくくなる効果を得ることができるためである。
【0042】
又、弾性長尺部材15の直径(円相当径)は、目的や用途に応じて適宜変更することができるが、通常、2~10mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる弾性長尺部材の直径が2mm未満の値になると、十分な弾性力を発揮できず、かつ、折畳み構造体を、迅速に展開することができない場合があるためである。
又、機械的強度が過度に低下して、折畳み構造体を展開後、必要な機械的強度や形状安定性を担保することができない場合があるためである。
一方、かかる弾性長尺部材の直径が10mmを超える値になると、柔軟性が過度に低下し、折畳み構造体を折畳むことができない場合があるためである。
従って、弾性長尺部材の直径を3~9mmの範囲内の値とすることがより好ましく、4~8mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0043】
なお、弾性長尺部材を立設した場合に、鉛直方向に沿って、下方に向かって、連続的、あるいは段階的に、当該弾性長尺部材の直径を変えることも好ましい。
より具体的には、鉛直方向に沿って、例えば、弾性長尺部材の半分よりも上方位置の直径を2~4mmの範囲内とし、弾性長尺部材の半分よりも下方位置の直径を5~10mmの範囲内とすることが好ましい。
この理由は、このように弾性長尺部材の直径を変えることによって、弾性長尺部材の半分よりも下方位置の部位が影響し、展開時の機械的強度や形状安定性がより向上するためである。
一方、非展開時の折り畳み性については、弾性長尺部材の半分よりも上方位置の部位が影響することから、その直径がより細くなって、折り畳み性が更に良好になるためである。
その他、弾性長尺部材の直径が、部位によって変わっていると、それを目印として、折畳み構造体を容易かつ正確に、展開することもできる。
【0044】
又、弾性長尺部材15の長さは、折畳み構造体10の高さに応じて、適宜決めることができるが、通常、150~230cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような長さの弾性長尺部材15であれば、折畳み構造体10の高さとして、例えば、大人から子供まで、誰もが立ったまま入れる程度とすることもできるし、更に言えば、取り扱う際の折り畳み性や、形状安定性を良好なものとすることができるためである。
従って、弾性長尺部材15の長さを、160~210cmの範囲内の値とすることがより好ましく、170~190cmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0045】
なお、この実施形態の場合は、弾性長尺部材15を、ベースユニット11の四隅付近にそれぞれ接続した合計4本の弾性長尺部材としてある。
この点、弾性長尺部材15の本数は、4本に限られないが、ベースユニット11の四隅付近にそれぞれ接続した合計4本の弾性長尺部材とすると、折畳み構造体10の高さの確保と、折畳み構造体10の展開及び折畳みそれぞれの作業がし易いという利点がある。
【0046】
又、
図5に示すように、折畳み構造体40に対して、鉛直方向に沿って設けてある弾性長尺部材15のほかに、折畳み構造体の水平方向の強度を強化するために、水平方向あるいは、水平方向に1~30°の角度で傾斜してなる強化用長尺部材(以下、単に、水平方向の強化用長尺部材、あるいは強化用長尺部材と称する場合がある。)41を更に設けることも好ましい。
この理由は、かかる強化用長尺部材41を更に設けた折畳み構造体40であれば展開後の機械的強度及び形状安定性を更に高めることができるためである。
【0047】
ここで、強化用長尺部材41の装着方法は特に制限されるものではないが、
図5に示すように、幕体17の適所に水平方向あるいは、水平方向に1~30°で傾斜してなる袋部43を設けて、この袋部43内に、水平方向又は斜め方向の強化用長尺部材41を装着することが好ましい。
この理由は、このような構造であれば、水平方向の強化用長尺部材41が幕体17及び弾性長尺部材15と適度に連結するため、簡易に強化効果が得られるためである。
【0048】
又、図示しないものの、このような強化用長尺部材41を2本挿入する場合には、立設する弾性長尺部材15を、長さ的に3等分する切断線を想定し、その切断線を中心に、±10cm以内の箇所に、それぞれ強化用長尺部材41が位置するように装着することが好ましい。
この理由は、このように構成すると、2本の強化用長尺部材41が、それぞれ機械的強度や形状安定性を向上させるとともに、それらが相まって折畳み構造体40の機械的強度や形状安定性を更に向上させることができるためである。
【0049】
更に、図示しないものの、斜め方向の強化用長尺部材41の態様の一つとして、螺旋状の強化用長尺部材41を準備し、それを折畳み構造体40の上方(例えば、天板から10~30mmの下方位置)、又は、下方位置(例えば、ベースユニット11から10~30mmの上方位置)に、折畳み構造体40を巻き込むように装着することも好ましい。
この理由は、このように、所定位置に螺旋状の強化用長尺部材41を周囲から装着することにより、折畳み構造体40の機械的強度や形状安定性を更に向上させることができ、しかも、折畳み構造体40の人の出入りにも、支障をきたさないためである。
【0050】
なお、このような強化用長尺部材の形態としては、鉛直方向に沿って設けてある弾性長尺部材15と同様のFRP等としても良く、あるいは、幅3~20mmのベルト状や紐状としても良い。
しかも、かかる強化用長尺部材41は、上記の弾性長尺部材15と同様に、棒状のFRP等から構成した場合であっても、より補強効果を発揮すべく、弾性長尺部材15の直径(円相当径)よりも1~3mmほど太い直径(円相当径)とすることも好ましい。
その上、かかる強化用長尺部材の表面にLED光源を設け、夜間における折畳み構造体の識別性を向上させることも好ましい。
【0051】
その他、強化用長尺部材を設けても、折り畳み性や展開性には、特に影響がないことが別途判明している。
但し、展開時に、強化用長尺部材が展開動作を妨げるような場合には、完全に、折畳み構造体40の所定場所に装着する必要はなく、例えば、一端をフリーにしておいて、展開後に、そのフリーの一端に、キャップをしたり、袋部43の中に、展開後に挿入したりしても良い。
【0052】
4.弾性ゴムパーツ
弾性ゴムパーツは、弾性長尺部材15とベースユニット11、あるいは、弾性長尺部材15と、天板とを接合する、ジョイントの一部である下側弾性ゴムパーツ13と、上側弾性ゴムパーツ19とから、基本的に構成される。
【0053】
すなわち、
図4(a)に示すように、下側弾性ゴムパーツ13は、一端がベースユニット11に接続され、他端が弾性長尺部材15に接続された構成である。
より具体的には、下側弾性ゴムパーツ13は、ベースユニット11に接続される第1部分13aと、弾性長尺部材15に接続される第2部分13bと、これらの間(長手方向の途中)のくびれ部分13cとで構成することが好ましい。
【0054】
そして、下側弾性ゴムパーツ13の第1部分13aは、ベースユニット11の壁面に固定し易いよう平坦面を一部に有し、かつ、ベースユニット11の壁面に止めるネジを受けるネジ穴を有している。又、下側弾性ゴムパーツ13の第2部分13bは、弾性長尺部材15を嵌合させるための穴部を有していることが好ましい。
この理由は、このような下側弾性ゴムパーツ13であれば、ベースユニット11に下側弾性ゴムパーツ13を介して、弾性長尺部材15を接続し、弾性長尺部材との協同によって、弾性長尺部材の展開及び折畳みを円滑かつ迅速に行うことができるためである。
【0055】
又、
図4(a)に示すように、上側弾性ゴムパーツ19は、一端が弾性長尺部材15に接続され、他端が天板21に接続された構成である。
より具体的には、上側弾性ゴムパーツ19は、弾性長尺部材15に接続される第1部分19aと、天板21に接続される第2部分19bと、これらの間のくびれ部分19cとで構成しておくことが好ましい。
【0056】
そして、上側弾性ゴムパーツ19の第1部分19aは、弾性長尺部材15を嵌合させるための穴部を有していることが好ましい。更に又、上側弾性ゴムパーツ19の第2部分19bは、天板21に接続するネジ穴を有していることが好ましい。
この理由は、上側弾性ゴムパーツ19をこのような構成とすることで、天板21に上側弾性ゴムパーツ19を介して、弾性長尺部材15を接続し、弾性長尺部材との協同によって、弾性長尺部材の折畳みをより円滑かつ迅速に行うことができるためである。
【0057】
又、下側弾性ゴムパーツ13のくびれ部分13c、及び、上側弾性ゴムパーツ19のくびれ部分19cそれぞれは、折畳み構造体10を折畳む際に、当該弾性ゴムパーツの屈曲のし易さを高めるためのもので、第1部分や第2部分に比べ、太さを適度に細くした部分である。
従って、通常、第1部分や第2部分の直径を100%とした場合に、くびれの直径を30~90%の範囲とすることが好ましい。
そして、くびれの程度は、折畳み構造体10を展開している際は、展開状態を維持できる強度を持ち、当該折畳み構造体10を折畳む際は、弾性ゴムパーツの屈曲を誘導できるように、適正に設計することが好ましい。
【0058】
更に又、下側弾性ゴムパーツ13及び上側弾性ゴムパーツ19各々の構成材料は、当該部材の目的に適するゴム材で構成することが好ましい。
この理由は、これらのゴム材であれば、弾性長尺部材の展開及び折畳みを円滑に行うために必要な弾性力と柔軟性を発揮することができるためである。
【0059】
ここで、かかるゴム材の種類としては、特に制限はないが、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(略称EPDM)、エチレン・プロピレンゴム(EP)、ウレタンゴム(UR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)等の少なくとも一つが挙げられる。
そして、これらのゴム材の中でも、充填剤としてのカーボン粒子との相性がよく、しかも、優れた汎用性、成形性、反発弾性や耐屈曲亀裂性等の観点から、特に、EPDMであることが好ましい。
【0060】
5.幕体
幕体17の種類としては、例えば、樹脂製シート又は耐水性が付与された布帛であることが好ましい。
この理由は、かかる幕体であれば、遮蔽性があり、かつ、折畳み構造体10の展開及び折畳みに応じて展開及び折畳みしやすい柔軟性があり、更には優れた耐水性や強度を持たせることができるためである。
より具体的には、樹脂製シートとしては、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂等の少なくとも一つが挙げられる。
又、耐水性が付与された布帛の形態としては、木綿、麻、合成繊維等を材料とした不織布、織布、フェルト等の少なくとも一つが挙げられる。
【0061】
又、かかる幕体の厚さは、特に制限されるものではないが、通常、0.2~2mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる幕体の厚さが、0.2mm未満の値になると、機械的強度が不十分となり、製品寿命が低下する場合があるためである。
一方、かかる幕体の厚さが、2mmを超えた値になると、幕体が厚くなり過ぎて、折畳み構造体の折畳みのし易さが低下する場合があるためである。
従って、幕体の厚さを0.3~1.5mmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.4~1mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0062】
又、幕体17は、弾性長尺部材15に接続されて用いられるが、接続方法の一例を
図1(a)に示す。
すなわち、
図1(a)に示した例の場合は、幕体17の弾性長尺部材15を接続する箇所に、弾性長尺部材15を挿入する袋部15aを設けておき、この袋部15a内に弾性長尺部材15を挿入してある。
この点、袋部15aを有した幕体であると、幕体17が弾性長尺部材15に適度に拘束された状態になるので、折畳み構造体10を展開する場合及び折畳む場合各々の際に、幕体17が弾性長尺部材15を動きに連動し易いため、好ましい。
なお、かかる幕体17の表面の一部又は縁部に沿って、LED光源を設け、夜間における折畳み構造体の識別性を向上させることも好ましい。
【0063】
又、本発明の折畳み構造体を構成するにあたり、前述の幕体の一部に、切込み又はファスナーを備えた出入り口を設けておくことが好ましい。
この理由は、幕体を全開せずに、一部分を開閉することができるから、使用者の出入りの用途にきめ細かく対応することができるためである。
【0064】
なお、
図1(a)の例では、折畳み構造体10の4つの面のうちの1つの面に、ファスナーによって開閉できる出入り口23を設けてある。
そして、かかる幕体17の出入り口23の表面又は縁部に沿って、LED光源を設け、夜間における折畳み構造体の出入り口に対する識別性を向上させることも好ましい。
【0065】
6.天板
天板21は、折畳み構造体10の天面を遮蔽すると共に、弾性長尺部材15と協同して、折畳み構造体10の強度確保にも寄与する部材である。
かかる天板21の形状及び大きさは、ベースユニット11の形状及び大きさと、概ね同じとすることが好ましい。
従って、この例では、平面形状が四角形状で、幅及び奥行きがベースユニット11と同じ程度のものとしてある。
【0066】
そして、天板21は、各種樹脂や金属等から選ばれる材料から構成できるが、折畳み構造体の上方に載置することから、軽量かつ高強度、耐蝕性、耐久性、耐候性等に富むものが好ましい。
従って、このような観点から、天板21を構成する材料は、ベースユニット11を構成する材料と同一又は強化樹脂であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
但し、耐候性等をより向上させるため、それらの樹脂からなる天板の表面に、紫外線吸収剤を配合したり、あるいは、紫外線吸収層を設けたりすることが好ましい。
【0067】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態の折畳み構造体の使用方法、並びにその使用方法を用いた用途に関する実施形態である。
従って、
図3及び
図4等を適宜参照して、折畳み構造体10の使用方法、すなわち、展開手順と折畳み手順や、その用途について、具体的に説明する。
【0068】
1.使用方法
(1)展開手順
まず、折畳み構造体10の使用前には、折り畳んだ状態であって、
図3(a)及び
図4(b)に示すように、ベースユニット11内に、下側弾性ゴムパーツ、弾性長尺部材、幕体及び上側弾性ゴムパーツが折畳まれて、更には、天板21によって蓋がされた、小型の構造体になっている。
従って、折り畳んだ状態での折畳み構造体10の寸法であるが、通常、幅Wを約60~100cm、奥行きDを約60~100cm、高さH1を約12~40cmとすることが好ましい。
又、より好適には、幅Wを約70~90cm、奥行きDを約70~90cm、高さH1を約15~30cmとすることである。
【0069】
このように折り畳まれた折畳み構造体10を展開する場合は、天板21をベースユニット11に固定しているフック(
図4中の固定フック27を参照)を外す。
次いで、天板21を軽く引き上げると、弾性ゴムパーツ及び弾性長尺部材の弾性力によって、弾性長尺部材15と幕体17は、
図3(b)に示すように、折畳み構造体10の平面中心から鉛直方向に延びる仮想線Pをほぼ回転中心にして、鉛直上方にコイル状に伸び上がる。
【0070】
次いで、弾性長尺部材15が鉛直上方に伸び切ると、
図3(c)に示すように、折畳み構造体10のそれ以上の展開が終了する。この状態での折畳み構造体10の高さH2は、通常、160~250cmとすることが好ましく、より好適には、170cm~230cmとすることである。
そして、展開された折畳み構造体10は、
図4(a)に示すように、下側弾性ゴムパーツ13、弾性長尺部材15及び上側弾性ゴムパーツ19全体が、直線状に緊張した状態となって、幕体17による空間を形成することができる。
【0071】
(2)折畳み手順
一方、非使用時は、展開している折畳み構造体10を折り畳むことになるが、その場合、
図3(c)の状態において、天板21を押しながら、折畳み構造体10を展開したときとは逆の方向に天板を
図3(b)の仮想線Pを回転中心にコイル状に押し込んでゆく。
【0072】
この点、その操作において、上側弾性ゴムパーツ19は、くびれ部分19cの箇所から屈曲し、又、下側弾性ゴムパーツ13も、くびれ部分13cの箇所から屈曲する。
従って、弾性長尺部材15はベースユニット11の方向にコイル状に巻かれ、
図4(b)に示すように、幕体17と共に、ベースユニット11の凹部11a内に円滑に折畳まれる。
【0073】
又、折り畳みが済んだ後は、天板21がベースユニット11に固定されて、折畳み構造体10を持ち運び自在の状態にすることができる。
この場合は、ベースユニット11の側面に固定フック27(以下、パッチン錠と称する場合がある。)を設けてあり、かつ、ベースユニット11の開口の縁部にゴムモール29を設けてあることが好ましい。
更に又、折り畳みが済んだ後は、天板21はゴムモール29を挟んだ状態で固定フック27によってベースユニット11に押し付けられた状態で固定される。従って、折り畳みが済んだ折畳み構造体10は、天板21で強固に蓋をされるので、移動に支障のない安定した状態になる。
【0074】
2.用途
次いで、特に、
図6及び
図7を参照して、折畳み構造体10の用途として、シャワーユニットを設けた場合と、トイレユニットを設けた場合を主に説明する。
なお、シャワーユニット、トイレユニットを別々に設けても良く、あるいは、それぞれ同時に併設することも好ましい。
【0075】
(1)シャワーユニット
図6に示すように、折畳み構造体60は、シャワーユニット61を設けた構成である。
この例は、災害時、緊急時、あるいは、サーファー等が、海辺にてサーフィンの後に簡易に個人的にシャワーユニットとして利用できる折畳み構造体があれば好ましいため、基本的に、本発明をシャワーユニット付きの折畳み構造体に適用したものである。
【0076】
ここで、シャワーユニット61の構成は任意好適なもので良いが、
図6(a)に示した例では、シャワーユニット61は、ベースユニット11と中蓋25とで構成された水槽61aと、水槽61aに接続されたシャワーホース及びヘッド61bと、水槽61aに接続されたポンプ61cと、中蓋25の凹部に設けたドレイン61dと、で構成してある。
すなわち、中蓋25を利用した着脱可能な構造としてある。
そして、水槽61aに入れられた水は、ポンプ61c、例えば足ふみポンプによって加圧されてシャワーホース及びヘッド61bに圧送されて、利用者にシャワーを提供できる。
又は、利用者が使用した水は、中蓋25の凹部25aに落ちた後、ドレイン61dから排出される。使用した水は回収タンク(図示せず)に貯めることが好ましい。
【0077】
(2)トイレユニット
図7に示すように、折畳み構造体80は、トイレユニット81を設けた構造である。
この例は、レジャーや災害時にトイレユニットとして利用できる折畳み構造体があれば好ましいため、本発明をトイレユニット付きの折畳み構造体に適用したものである。
ここで、トイレユニット81の構成は任意好適なもので良いが、
図7(a)に示した例では、トイレユニット81は、中蓋25の凹部25a上に展開してある。すなわち、中蓋25を利用した着脱可能な構造としてあることが好ましい。
【0078】
より具体的には、トイレユニット81は、便座81aと、脚部81bと、回収部材81cとで構成してある。脚部81bは折畳み構造とし、便座81aを使用時は中蓋25の凹部25aに仕舞い込めるようにしても良い。
そして、回収部材は、例えば紙おむつのような、吸水性のビニールシートやポリエステルシート等で構成し、トイレ使用後は封入して廃棄できる構成にすることが好ましい。
なお、回収部材が、生分解性材料、例えば、コーンスターチ材料からなる樹脂製シート場合、更に廃棄処分が容易になることから、好適である。
【0079】
又、
図7(b)は、シャワーユニットのポンプ61cに排風パイプ61fを接続すると共に、排風パイプ61fの他端を、伴座の排気ダクト81dに接続した例を示している。
この場合、ポンプ61cを電気的又は足ふみ又は手ふみにして空気を排風パイプ61fに送ると、便座の排気ダクト81dの箇所に負圧経路83が生じて、便座下の排泄物臭85を外部に排出することができる構成である。
【0080】
3.他の用途
本発明の折畳み構造体によれば、上述したシャワーブースやトイレブースばかりでなく、多用途に使用することができる。
例えば、新型コロナ感染症者等の一時的な隔離所の用途が考えられる。
かかる一時的な隔離所であれば、病院における待合室、更衣室、休憩所、更には、家庭内における部屋数が足りないと言う状況を補って、新型コロナ感染症者等を一次的に隔離したり、そのような患者と一時的に離間したりするブースとして、好適に使用することができる。
よって、そのような用途であれば、本発明の折畳み構造体に、空気洗浄機、加湿器、減圧装置、殺菌用処理液供給手段等を備えることが望ましい。
【0081】
更に言えば、その軽量性や耐久性等の特徴をいかして、臨時又は半恒久的な、着替え室、試着室、実験室、サンプル室、恒温室、ドラフト、花卉育成室、花卉以外の植物育成室、倉庫、洋服掛け、物入れ、展示室、動物飼育室等の多用途に展開することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の折畳み構造体によれば、所定のベースユニットや、天板を設けるとともに、それらに対して、所定の弾性ゴムパーツを介して、複数の弾性長尺部材を接合することにより、折畳み式テントの形状安定性が著しく向上するようになった。
又、本発明の折畳み構造体によれば、内容積が大きくとも、非展開時は、容易に小型化でき、かつ、迅速に展開したり、あるいは折り畳んだりすることができるようになり、携帯性や保管性も著しく向上した。
【0083】
すなわち、本発明によれば、内容積が大きいにもかかわらず、展開時には、所定形状に、迅速に復元することができ、かつ、機械的強度や形状安定性に優れた折畳み構造体を提供することができるようになった。
従って、災害時、緊急時、避難時等において、シャワーブースやトイレブース等を含む各種折畳み構造体の用途に好適に使われることが期待される。
【符号の説明】
【0084】
10:第1の実施形態の折畳み構造体
11:ベースユニット
11a:凹部
13:弾性ゴムパーツ(下側弾性ゴムパーツ)
13a:第1部分
13b:第2部分
13c:くびれ部分
15:弾性長尺部材
17:幕体
19:弾性ゴムパーツ(上側弾性ゴムパーツ)
19a:第1部分
19b:第2部分
19c:くびれ部分
21:天板
23:出入り口
25:中蓋
40:強化用長尺部材を設けた折畳み構造体
41:水平方向の強化用長尺部材
60:シャワーユニットを備えた折畳み構造体
61:シャワーユニット
80:トイレユニットを備えた折畳み構造体
81:トイレユニット