(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】液体充填装置の充填ノズル
(51)【国際特許分類】
B65B 39/00 20060101AFI20240426BHJP
B65B 37/06 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
B65B39/00 B
B65B37/06
(21)【出願番号】P 2021539276
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2020030393
(87)【国際公開番号】W WO2021029365
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2019146992
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000180298
【氏名又は名称】四国化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅勝
(72)【発明者】
【氏名】武知 靖浩
(72)【発明者】
【氏名】河野 小雪
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-008199(JP,A)
【文献】実開昭63-026501(JP,U)
【文献】特開2008-201424(JP,A)
【文献】特開2006-282279(JP,A)
【文献】特開2001-278216(JP,A)
【文献】実開昭55-047971(JP,U)
【文献】実開昭58-158863(JP,U)
【文献】実公昭37-005472(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 39/00
B65B 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端が容器の開口に臨むように液体充填装置の下部に設けられている略垂直筒状のノズル本体と、ノズル本体内に上下摺動自在に挿入されている略垂直棒状のスプールとを備えており、
スプールの外周面に液体流入口と該液体流入口よりも下方に位置する液体吐出口とが形成されているとともに、液体流入口と液体吐出口とを連通させる液体流通路がスプールの内部に形成されており、
ノズル本体の所定高さ位置に、所定の充填圧力が加えられた液体を導入する液体導入孔が貫通状に形成されており、
スプールは、液体充填時に、液体流入口がノズル本体の液体導入孔と連通させられるとともに液体吐出口がノズル本体の下方に露出して開放される位置まで降下させられ、液体充填完了時に、液体吐出口がノズル本体の内周面によって塞がれる位置まで上昇させられる、液体充填装置の充填ノズル。
【請求項2】
液体充填完了時にスプールが上昇させられる際、ノズル本体の液体導入孔がスプールの外周面における液体流入口と液体吐出口との間の部分によって塞がれた後、液体吐出口がノズル本体の内周面によって塞がれるようになっている、請求項1記載の液体充填装置の充填ノズル。
【請求項3】
液体充填開始時にスプールが降下させられる際、スプールの液体吐出口の少なくとも一部がノズル本体の下方に露出して開放された後、スプールの液体流入口とノズル本体の液体導入孔とが連通されるようになっている、請求項1または2記載の液体充填装置の充填ノズル。
【請求項4】
液体充填開始時にスプールが降下させられる際、スプールの液体吐出口の開口面積の少なくとも5%がノズル本体の下方に露出して開放された後、スプールの液体流入口とノズル本体の液体導入孔とが連通されるようになっている、請求項3記載の液体充填装置の充填ノズル。
【請求項5】
液体充填開始時にスプールが降下させられる際、スプールの液体吐出口の開放が開始されると同時に、スプールの液体流入口とノズル本体の液体導入孔との連通が開始されるようになっており、
液体充填完了時にスプールが上昇させられる際、ノズル本体の液体導入孔がスプールの外周面における液体流入口と液体吐出口との間の部分によって塞がれると同時に、液体吐出口がノズル本体の内周面によって塞がれるようになっている、請求項1記載の液体充填装置の充填ノズル。
【請求項6】
スプールの液体流入口およびノズル本体の液体導入孔は、スプールが昇降ストロークのいずれの位置にある時にも一定の面積で連通するように形成されており、
液体充填開始時にスプールが降下させられる際、液体流入口および液体導入孔を通じて液体流通路に所定の充填圧力が加えられた液体が導入され始めると同時に、スプールの液体吐出口の開放が開始されるようになっており、
液体充填完了時にスプールが上昇させられる際、液体流通路への前記液体の導入が終了すると同時に、液体吐出口がノズル本体の内周面によって塞がれるようになっている、請求項1記載の液体充填装置の充填ノズル。
【請求項7】
スプールの液体流通路が、液体吐出口に向かって斜め下向きにのびる傾斜部を有している、請求項1~6のいずれか1つに記載の液体充填装置の充填ノズル。
【請求項8】
スプールの外周面に、横断面四角形の容器における4つの側壁の内面または対向する2つの側壁の内面に向かって平面より見て斜め方向に液体を吐出する4つまたは2つの液体吐出口が周方向に等間隔おきに形成されている、請求項1~7のいずれか1つに記載の液体充填装置の充填ノズル。
【請求項9】
スプールの外周面に、横断面円形の容器の周壁の内面に向かって液体を吐出する3つの液体吐出口が周方向に等間隔おきに形成されている、請求項1~7のいずれか1つに記載の液体充填装置の充填ノズル。
【請求項10】
スプールは、液体充填時に、ノズル本体の下方に露出して開放された液体吐出口の少なくとも一部が容器内に入り込む位置まで降下させられる、請求項1~9のいずれか1つに記載の液体充填装置の充填ノズル。
【請求項11】
スプールの液体吐出口は、その下部の水平方向の幅が下方に向かって次第に小さくなるような形状を有している、請求項1~10のいずれか1つに記載の液体充填装置の充填ノズル。
【請求項12】
スプールの下端面が上方に向かって凹んでいる、請求項1~11のいずれか1つに記載の液体充填装置の充填ノズル。
【請求項13】
スプールの下端部に、液体吐出口の下方に位置する外周面部分の辺りから下向きに延長状にのびる下方突出部が形成されている、請求項1~12のいずれか1つに記載の液体充填装置の充填ノズル。
【請求項14】
ノズル本体の下端部に、スプールの液体吐出口に対応する外周面部分の辺りから下向きにのびる下方突出部が形成されている、請求項1~13のいずれか1つに記載の液体充填装置の充填ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器に液体を定量充填する液体充填装置に関し、より詳細には、液体充填装置において、液体を容器内に向かって吐出するための充填ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば種々の飲料やデザート等の液体を、紙製の屋根型容器やレンガ型容器あるいはプラスチック製のカップやボトル等の各種容器に定量充填するための液体充填装置にあっては、その下部に充填ノズルが設けられており、充填ノズルから容器内に向かって液体が定量ずつ吐出されるようになっている。
このような充填ノズルとして、例えば、下記の特許文献1には、垂直筒状のノズル本体と、ノズル本体の下端部に配置された1枚または上下複数枚の多孔板とを備えたものが開示されている。
また、下記の特許文献2には、底壁部に吐出孔を有する略垂直有底筒状のノズル本体と、吐出孔の上端縁に当接離間して吐出孔を開閉しうるようにノズル本体内を昇降させられる弁部材とを備えた充填ノズルが開示されている。
下記の特許文献3には、下端部に先細状の吐出口を有する略垂直筒状のノズル本体と、ノズル本体内を昇降させられる弁支持杆と、弁支持杆の下端部に連結されかつ吐出口の下端縁に当接離間して吐出口を開閉しうる閉塞弁とを備えた充填ノズルが開示されている。
下記の特許文献4には、下端部に吐出口を有しかつ周壁部に液体導入口を有する垂直筒状のノズル本体と、ノズル本体に上下摺動自在に挿入されて液体導入口を開閉するスプールとを備えた充填ノズルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平4-97010号公報
【文献】特開2004-83043号公報
【文献】実願昭59-5658号(実開昭60-118601号)のマイクロフィルム
【文献】実願昭63-56340号(実開平1-158401号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の充填ノズルの場合、多孔板の整流作用によって、吐出された液体が容器内で液跳ねしたり泡立ちを生じたりするのが抑制されるが、充填すべき液体が高粘度の液体や果肉等の固形物を含有する液体であると、多孔板が目詰まりを起こすため、そのような液体の充填には適用することができなかった。
上記特許文献2記載の充填ノズルの場合、吐出孔の上端側が弁部材によって開閉されるため、下端側は常に開放されており、液体充填完了後は、表面張力だけで液体が落ちないようになっている。そのため、機械振動等により液体の表面張力が崩れると、液垂れが生じたり、吐出孔の下端縁に付着した果肉等の固形物が落下したりすることがあった。しかも、この充填ノズルの場合、上記の通り表面張力によって液垂れを防止する必要上、吐出孔の孔径が小さくなるため、例えば比較的大きなサイズの果肉等の固形物を含有する液体の充填には適用することができなかった。
上記特許文献3記載の充填ノズルにあっては、果肉等の固形物を含有した液体の充填に適用する場合、液体充填完了後に吐出口と閉塞弁との間に含有固形物が挟まれやすく、それによって液垂れや含有固形物の落下が発生するという問題があった。また、容器内に吐出された液体の液跳ねや泡立ちを防止するためには、液体の吐出位置をなるべく低くする方が好ましい。上記特許文献3記載の充填ノズルの場合、吐出位置を低くするには閉塞弁の昇降ストロークを大きくする必要があるが、そうすると吐出口の開口面積が大きくなって、充填ノズル内にエアが入りやすくなる上、吐出される液体のまとまりが悪くなり、却って液跳ねや泡立ちが多くなるおそれがあった。
また、上記特許文献4記載の充填ノズルの場合、吐出口からの液体の吐出方向が真下であるため、容器の底部に直接当たることにより、液体の暴れが大きくなり、液跳ねによる容器のトップシール面への液体の付着、容器外への液体の飛び出し、泡立ちが生じやすかった。また、スプールの下端面には液体充填時に液体や含有固形物が付着するが、その状態のままスプールが上方に移動して充填が完了するため、スプールの下端面からの液垂れや含有固形物の落下が生じるおそれがあった。
【0005】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、低粘度の液体から高粘度の液体や果肉、繊維等の固形物を含有した液体までの多様な液体を支障なく吐出することができ、液体充填完了後に液垂れや含有固形物の落下が生じることがなく、吐出された液体の容器内での液跳ねや泡立ちを効果的に抑制することができる液体充填装置の充填ノズルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
なお、この発明を特定するに当たり、「液体」には、低粘度から高粘度までの種々の粘度を有する液体が含まれるとともに、例えば果実の果肉や繊維等の固形物を含有した液体が含まれるものとする。
【0007】
1)下端が容器の開口に臨むように液体充填装置の下部に設けられている略垂直筒状のノズル本体と、ノズル本体内に上下摺動自在に挿入されている略垂直棒状のスプールとを備えており、
スプールの外周面に液体流入口と該液体流入口よりも下方に位置する液体吐出口とが形成されているとともに、液体流入口と液体吐出口とを連通させる液体流通路がスプールの内部に形成されており、
ノズル本体の所定高さ位置に、所定の充填圧力が加えられた液体を導入する液体導入孔が貫通状に形成されており、
スプールは、液体充填時に、液体流入口がノズル本体の液体導入孔と連通させられるとともに液体吐出口がノズル本体の下方に露出して開放される位置まで降下させられ、液体充填完了時に、液体吐出口がノズル本体の内周面によって塞がれる位置まで上昇させられる、液体充填装置の充填ノズル。
【0008】
2)液体充填完了時にスプールが上昇させられる際、ノズル本体の液体導入孔がスプールの外周面における液体流入口と液体吐出口との間の部分によって塞がれた後、液体吐出口がノズル本体の内周面によって塞がれるようになっている、上記1)の液体充填装置の充填ノズル。
【0009】
3)液体充填開始時にスプールが降下させられる際、スプールの液体吐出口の少なくとも一部がノズル本体の下方に露出して開放された後、スプールの液体流入口とノズル本体の液体導入孔とが連通されるようになっている、上記1)または2)の液体充填装置の充填ノズル。
【0010】
4)液体充填開始時にスプールが降下させられる際、スプールの液体吐出口の開口面積の少なくとも5%がノズル本体の下方に露出して開放された後、スプールの液体流入口とノズル本体の液体導入孔とが連通されるようになっている、上記3)の液体充填装置の充填ノズル。
【0011】
5)液体充填開始時にスプールが降下させられる際、スプールの液体吐出口の開放が開始されると同時に、スプールの液体流入口とノズル本体の液体導入孔との連通が開始されるようになっており、
液体充填完了時にスプールが上昇させられる際、ノズル本体の液体導入孔がスプールの外周面における液体流入口と液体吐出口との間の部分によって塞がれると同時に、液体吐出口がノズル本体の内周面によって塞がれるようになっている、上記1)の液体充填装置の充填ノズル。
【0012】
6)スプールの液体流入口およびノズル本体の液体導入孔は、スプールが昇降ストロークのいずれの位置にある時にも一定の面積で連通するように形成されており、
液体充填開始時にスプールが降下させられる際、液体流入口および液体導入孔を通じて液体流通路に所定の充填圧力が加えられた液体が導入され始めると同時に、スプールの液体吐出口の開放が開始されるようになっており、
液体充填完了時にスプールが上昇させられる際、液体流通路への前記液体の導入が終了すると同時に、液体吐出口がノズル本体の内周面によって塞がれるようになっている、上記1)の液体充填装置の充填ノズル。
【0013】
7)スプールの液体流通路が、液体吐出口に向かって斜め下向きにのびる傾斜部を有している、上記1)~6)のいずれか1つの液体充填装置の充填ノズル。
【0014】
8)スプールの外周面に、横断面四角形の容器における4つの側壁の内面または対向する2つの側壁の内面に向かって平面より見て斜め方向に液体を吐出する4つまたは2つの液体吐出口が周方向に等間隔おきに形成されている、上記1)~7)のいずれか1つの液体充填装置の充填ノズル。
【0015】
9)スプールの外周面に、横断面円形の容器の周壁の内面に向かって液体を吐出する3つの液体吐出口が周方向に等間隔おきに形成されている、上記1)~7)のいずれか1つの液体充填装置の充填ノズル。
【0016】
10)スプールは、液体充填時に、ノズル本体の下方に露出して開放された液体吐出口の少なくとも一部が容器内に入り込む位置まで降下させられる、上記1)~9)のいずれか1つの液体充填装置の充填ノズル。
【0017】
11)スプールの液体吐出口は、その下部の水平方向の幅が下方に向かって次第に小さくなるような形状を有している、上記1)~10)のいずれか1つの液体充填装置の充填ノズル。
【0018】
12)スプールの下端面が上方に向かって凹んでいる、上記1)~11)のいずれか1つの液体充填装置の充填ノズル。
【0019】
13)スプールの下端部に、液体吐出口の下方に位置する外周面部分の辺りから下向きに延長状にのびる下方突出部が形成されている、上記1)~12)のいずれか1つの液体充填装置の充填ノズル。
【0020】
14)ノズル本体の下端部に、スプールの液体吐出口に対応する外周面部分の辺りから下向きに延長状にのびる下方突出部が形成されている、上記1)~13)のいずれか1つの液体充填装置の充填ノズル。
【発明の効果】
【0021】
上記1)の液体充填装置の充填ノズルによれば、ノズル本体の液体導入孔ならびにスプールの液体流入口および液体流通路を経て、ノズル本体の下方に開放されたスプール外周面の液体吐出口から液体が吐出されるため、高粘度の液体や果肉、繊維等の固形物を含有した液体であっても、目詰り等を起こさずに支障なく吐出することができる。
また、同充填ノズルによれば、液体充填完了時にスプールが上昇してその液体吐出口がノズル本体の内周面によって塞がれるため、液垂れや含有固形物の落下が生じない。
さらに、同充填ノズルによれば、吐出位置を低くするためにスプールの昇降ストロークを大きくしても液体吐出口の開口面積は常に一定である上、スプールの外周面に形成された液体吐出口から液体が吐出されるため、吐出された液体の容器内での液跳ねや泡立ちを抑制することができる。
【0022】
上記2)の液体充填装置の充填ノズルによれば、ノズル本体の液体導入孔がスプールの外周面における液体流入口と液体吐出口との間の部分によって塞がれ、スプールの内部に圧力が掛からなくなった状態で、スプールの液体吐出口がノズル本体の内周面によって塞がれるため、スプールの上昇時に液体吐出口から液体が勢いよく飛び出して容器の開口部等に付着するおそれがない。
【0023】
上記3)または4)の液体充填装置の充填ノズルによれば、スプールの液体吐出口の少なくとも一部がノズル本体の下方に露出して開放されるまでは、スプールの液体流入口とノズル本体の液体導入孔とが連通されず、スプールの内部に圧力が掛かっていない状態となるので、スプールの降下時に液体吐出口から液体が勢いよく飛び出して容器の開口部等に付着するおそれがない。特に、上記4)の液体充填装置の充填ノズルのように、スプールの液体吐出口の開口面積の少なくとも5%がノズル本体の下方に露出して開放されるまで、スプールの液体流入口とノズル本体の液体導入孔とが連通されないように構成すれば、上記効果がより確実に奏される。
【0024】
上記5)の液体充填装置の充填ノズルによれば、例えば、液体充填装置が、スプールの外周面に、スプールが昇降ストロークの上端位置にある時に液体流通路とノズル本体の上方に配置された液体タンク内とを連通させる液体流通口が形成されているとともに、ノズル本体の液体導入孔が、ピストンが摺動自在に挿入された定量シリンダ内と連通させられているものである場合に(後述する第1の実施形態および
図1~5等参照)、以下のような問題を解消することができる。すなわち、液体充填開始時にスプールが降下させられる際、スプールの液体吐出口の開放が開始された後で、スプールの液体流入口とノズル本体の液体導入孔とが連通され、スプール内の液体流通路に液体が導入されるようになっていると、その間に液体吐出口から液体流通路に空気が進入して、液体流通路の上部に滞留する可能性がある。また、液体充填完了時にスプールが上昇させられる際、ノズル本体の液体導入孔がスプールの外周面における液体流入口と液体吐出口との間の部分によって塞がれた後、液体吐出口がノズル本体の内周面によって塞がれるようになっていると、その間に液体吐出口から液体流通路に空気が進入して、液体流通路の上部に滞留する可能性がある。このような空気の滞留は、とりわけ、容器に充填する液体が低粘度のものであって、容器への液体充填量が比較的少量である場合に起こり易くなると考えられる。そして、液体流通路の上部に滞留した空気は、例えば液体流通路と連通する液体タンクから導入される液体とともに液体充填用の定量シリンダ内に送り込まれて滞留し、それによって定量シリンダによる液体の充填機能が損なわれるおそれがある。
そこで、上記5)の充填ノズルのように、液体を充填する際に、スプールの液体吐出口の開放が開始されるタイミングと、スプールの液体流入口とノズル本体の液体導入孔との連通が開始されるタイミングとを一致させ、また、液体の充填を完了させる際に、ノズル本体の液体導入孔が塞がれるタイミングと、スプールの液体吐出口が塞がれるタイミングとを一致させれば、スプールの液体流通路に空気が進入してその上部に滞留するのが回避されるので、液体充填装置を支障なく連続的に運転することができる。
【0025】
上記6)の液体充填装置の充填ノズルによれば、液体を充填する際に、スプールの液体流通路への液体の導入が開始されるタイミングと、スプールの液体吐出口の開放が開始されるタイミングとを一致させ、また、液体の充填を完了させる際に、液体流通路への液体の導入が終了するタイミングと、スプールの液体吐出口が塞がれるタイミングとを一致させることにより、上記5)の充填ノズルの場合と同様に、スプールの液体流通路に空気が進入してその上部に滞留するのが回避されるので、液体充填装置を支障なく連続的に運転することができる。
また、上記6)の充填ノズルによれば、スプールの昇降ストロークの位置にかかわらず、スプールの液体流入口とノズル本体の液体導入孔とが連通する面積を一定にすることができるので、スプールの液体流通路に導入される液体の流れが一定となり、液体充填時の調整が容易となる。
【0026】
上記7)の液体充填装置の充填ノズルによれば、スプールの液体流通路の傾斜部によって液体吐出口に案内された液体が、液体吐出口から斜め下向きに吐出され、容器の内周面に沿って流下した後、容器の底部に当たるため、その際の衝撃が少なくなり、液跳ねや泡立ちが抑制される。
【0027】
上記8)の液体充填装置の充填ノズルによれば、スプールの4つまたは2つの液体吐出口から横断面四角形の容器の側壁内面に向かって吐出された液体が、容器の底部付近で衝突するのが回避されるため、液跳ねや泡立ちが効果的に抑制される。
【0028】
上記9)の液体充填装置の充填ノズルによれば、スプールの3つの液体吐出口から横断面円形の容器の周壁内面に向かって吐出された液体が、容器の底部付近で衝突するのが回避されるため、液跳ねや泡立ちが効果的に抑制される。
【0029】
上記10)の液体充填装置の充填ノズルによれば、スプールの液体吐出口の少なくとも一部が容器内に入り込んだ状態で液体の吐出が行われるため、例えば紙製の屋根型容器等のトップシール面に液体が付着するのが防止され、ひいてはトップシール不良の発生が防止される。
また、同充填ノズルによれば、スプールの液体吐出口と容器の底部との距離が短くなった状態で、液体の吐出が開始されるため、吐出された液体が容器の底部に当たった際の衝撃が少なくなり、液跳ねや泡立ちが抑制される。
【0030】
上記11)の液体充填装置の充填ノズルによれば、充填する液体が果肉や繊維等の固形物を含有するものである場合において、液体充填完了時にスプールが上昇させられると、スプールの液体吐出口の下端に固形物が集まって切れが良くなるため、ノズル本体とスプールとの間に固形物が挟まるのが抑制される。
【0031】
上記12)の液体充填装置の充填ノズルによれば、吐出された液体や含有固形物がスプールの下端面に付着して留まり難くなり、液垂れや含有固形物の落下を効果的に抑制することができる。
【0032】
上記13)または14)の液体充填装置の充填ノズルによれば、高粘度の液体を容器に充填する場合であっても、スプールの液体吐出口から吐出されてスプールの外周面の下端部に付着した液体が、スプールの下端部および/またはノズル本体の下端部に形成された下方突出部の先端部分に集まりやすくなる。そのため、液体充填完了時にスプールが上昇してノズル本体内に収容される際に、スプール外周面に付着した液体をほぼ完全に切ることができ、液垂れが効果的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】この発明の第1の実施形態に係る液体充填装置の全体概略を示す垂直断面図である。
【
図2】同液体充填装置の充填ノズルの液体充填前の状態を示す拡大垂直断面図である。
【
図3】同液体充填装置の充填ノズルの液体充填時の状態を示す拡大垂直断面図である。
【
図4】同充填ノズルに用いられるスプールの斜視図である。
【
図5】同充填ノズルによる液体充填工程を順次示した垂直断面図である。
【
図6】同液体充填装置の第1の変形例を示すものであって、同充填ノズルによる液体充填工程を順次示した垂直断面図(
図5に相当)である。
【
図7】同液体充填装置の第2の変形例を示すものであって、充填ノズルの液体充填前の状態を示す拡大垂直断面図(
図2に相当)である。
【
図8】同液体充填装置の第2の変形例を示すものであって、充填ノズルの液体充填時の状態を示す拡大垂直断面図(
図3に相当)である。
【
図9】同液体充填装置の第2の変形例の充填ノズルに用いられるスプールを示すものであって、(a)は側面図、(b)は(a)のb-b線に沿う垂直断面図、(c)は(b)のc-c線に沿う水平断面図、(d)は(b)のd-d線に沿う水平断面図、(e)は(b)のe-e線に沿う水平断面図である。
【
図10】同液体充填装置の第2の変形例の充填ノズルによる液体充填工程を順次示した垂直断面図(
図5に相当)である。
【
図11】この発明の第2の実施形態に係る液体充填装置の全体概略を示す垂直断面図である。
【
図12】同液体充填装置の充填ノズルの液体充填前の状態を示す拡大垂直断面図である。
【
図13】同液体充填装置の充填ノズルの液体充填時の状態を示す拡大垂直断面図である。
【
図14】同充填ノズルに用いられるスプールの斜視図である。
【
図15】同充填ノズルによる液体充填工程を順次示した垂直断面図である。
【
図16】同液体充填装置の変形例を示すものであって、同充填ノズルによる液体充填工程を順次示した垂直断面図(
図15に相当)である。
【
図17】同充填ノズルにおいて、横断面四角形の容器の側壁内面に対するスプールの4つの液体吐出口からの液体の吐出方向の態様を示したものであって、(a)はスプールの側面図であり、(b-1)ないし(b-3)はスプールおよび容器の平面図である。
【
図18】同充填ノズルにおいて、横断面四角形の容器の側壁内面に対するスプールの2つの液体吐出口からの液体の吐出方向の態様を示したものであって、(a)はスプールの側面図であり、(b-1)ないし(b-3)はスプールおよび容器の平面図である。
【
図19】同充填ノズルの変形例を示すものであって、(a)はスプールの斜視図、(b)はノズル本体の斜視図である。
【
図20】同充填ノズルのもう1つの変形例を示すものであって、(a)はスプールの斜視図、(b)はノズル本体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、この発明の実施形態を、図面を参照して以下に説明する。
【0035】
[第1の実施形態]
図1は、この発明の第1の実施形態に係る液体充填装置の全体概略を示したものであり、
図2~
図5は、同装置の充填ノズルの詳細を示したものである。
以下の説明において、
図1~
図3の各左を「前」、同各右を「後」というものとする。
【0036】
図1に示すように、この実施形態の液体充填装置(1)は、液体タンク(2)と、液体タンク(2)の底部の下方に液体タンク(2)内と連通可能に設けられた充填ノズル(3)と、液体タンク(2)の底部の下方に充填ノズル(3)と前後に隣接するようにかつ充填ノズル(3)内と連通可能に設けられた定量シリンダ(6)とを備えている。
液体タンク(2)には、図示しない液体供給管によって液体が供給され、一時的に貯留されるようになっている。
充填ノズル(3)は、下端が容器(C)の上端開口に臨むように配置されている略垂直筒状のノズル本体(4)と、ノズル本体(4)内に上下摺動自在に挿入されている略垂直棒状のスプール(5)とを備えている。容器(C)は、例えばコンベヤ(22)等によって、充填ノズル(3)の真下の充填ステーションまで搬送され、ここで液体が充填された後、次のステーションへ搬送されるようになっている。
定量シリンダ(6)内には、ピストン(7)が上下摺動自在に挿入されている。ピストン(7)は、その上端部に接続されかつ液体タンク(2)の頂部を貫通して上方に突出した垂直な昇降ロッド(8)を、例えばサーボモータ(図示略)等の駆動手段によって昇降させることにより、定量シリンダ(6)内を上下往復移動させられるようになっている。定量シリンダ(6)の周壁下部には、その充填ノズル(3)側部分、すなわち後側部分に液体流通孔(61)が貫通状に形成されている。
【0037】
充填ノズル(3)のノズル本体(4)は、その下端が容器(C)の上端開口に臨むように、液体タンク(2)の底部に垂下状に設けられている。ノズル本体(4)の上端開口は、液体タンク(2)内と連通させられている。ノズル本体(4)の内周面は、横断面円形の垂直筒状となされている。ノズル本体(4)の周壁部には、定量シリンダ(6)側部分、すなわち前側部分の所定高さ位置に液体導入孔(41)が貫通状に形成されている。液体導入孔(41)は、ノズル本体(4)と定量シリンダ(6)との間に介在された連通部材(9)の水平な連通孔(91)を介して、定量シリンダ(6)の液体流通孔(61)と連通させられている。
【0038】
スプール(5)は、その上端部に接続されかつ液体タンク(2)の頂部を貫通して上方に突出した垂直な昇降ロッド(10)を、例えばエアシリンダ(11)等の駆動手段によって昇降させることにより、ノズル本体(4)内を上下往復移動させられるようになっている。
図4に詳しく示すように、スプール(5)は、ノズル本体(4)の内周面に対して摺動可能な横断面円形の外周面を有するものである。また、スプール(5)は、複数の垂直な連結軸部(5c)を介して互いに連結された上スプール部(5a)と下スプール部(5b)とを有している。複数の連結軸部(5c)は、周方向に等間隔おきに設けられており、隣り合う連結軸部どうしの間が、液体流通口(S1)となされている。
【0039】
下スプール部(5b)の外周面には、その上端部の前側部分に液体流入口(51)が形成されているとともに、その下端部の前側部分および後側部分に液体吐出口(52)が形成されている。なお、液体吐出口(52)の数は、図示のような2つには限定されず、1つまたは3つ以上とすることも可能である。
そして、これらの液体流入口(51)と液体吐出口(52)とを連通させるように、スプール(5)の内部に上下にのびる液体流通路(53)が形成されている。液体流通路(53)の上端は、下スプール部(5b)の上端面に開口させられている。これにより、下スプール部(5b)内の液体流通路(53)が、隣り合う連結軸部(5c)どうしの間の液体流通口(S1)を通じて、液体タンク(2)内と連通可能となされている。液体流通路(53)の下部には、その中心部から各液体吐出口(52)に向かって斜め下向きにのびる傾斜部(531)が形成されている。傾斜部(531)の傾斜角度、すなわち、液体吐出口(52)からの液体の吐出角度は、例えば水平面に対して約45~75°となされる。なお、液体流通路(53)のうち傾斜部(531)を除いた部分は、横断面円形の垂直筒状となされている。つまり、液体流通路(53)には、導入された液体の流れを阻害する要因が存在せず、脈動が起こりにくい構造となされている。各傾斜部(531)は、横断面略円形の傾斜案内面(531a)を有している。したがって、これらの傾斜部(531)の下端開口よりなる液体吐出口(52)は、略縦長楕円形状となされている(
図4参照)。但し、液体吐出口(52)の形状は上記に限定されるものではない。液体吐出口(52)の開口面積は、充填する液体の種類や単位時間当たりの吐出量等を考慮の上、適宜設定される。この実施形態の充填ノズル(3)の場合、液体吐出口(52)がスプール(5)の外周面に形成されているため、例えば上記特許文献1~3記載の充填ノズルの場合のように充填ノズル(3)の外径を大きくしなくても、液体吐出口(52)の開口面積を大きくすることができるので、容器(C)の開口面積との関係で使用に制約を受けるおそれが少ない。また、吐出する液体の種類についても制約を受けることがなく、例えば高粘度までの液体や、果肉、繊維等の固形物を含有した液体であっても、スプール(5)の液体吐出口(52)から支障なく吐出させることが可能である。
また、下スプール部(5b)の外周面の前側部分における液体流入口(51)と液体吐出口(52)との間の部分には、液体タンク(2)内の液体を定量シリンダ(6)に供給するための連通口(54)が、液体流通路(53)と連通するように形成されている。さらに、下スプール部(5b)の外周面の後側部分には、液体流入口(51)および連通口(54)に対応する箇所に、内部洗浄等のメンテナンスを行うための補助開口(55)が、液体流通路(53)と連通するように形成されている。補助開口(55)は、さらにスプール(5)の外周面において液体流入口(51)および連通口(54)から周方向に約90°回転した左右両側部分に形成されていてよい。ただし、補助開口(55)は、機能上必須のものではないので、省略することも可能である。
液体流入口(51)、連通口(54)および補助開口(55)の形状は、例えば
図4に示すようなやや横長の略長円形となされる他、円形や四角形等であってもよい。
【0040】
スプール(5)の下端面は、上方に向かって凹んでいる。より詳細には、
図2~
図4に示すように、スプール(5)の下端面における周縁部を除いた部分に、横断面略台形状の凹弧面部(56)が形成されている。なお、スプール(5)下端面の凹形状は、上記には限定されない。
【0041】
次に、
図5等を参照して、上記の液体充填装置(1)による容器(C)内への液体の充填工程を順次説明する。
【0042】
まず、
図5(a)に示す液体充填開始前の段階では、充填ノズル(3)のスプール(5)は、昇降ストロークの上端位置にある。この状態で、スプール(5)内の液体流通路(53)は液体流通口(S1)を通じて液体タンク(2)内と連通させられている。また、スプール(5)の連通口(54)がノズル本体(4)の液体導入孔(41)と連通させられている。スプール(5)の液体流入口(51)および液体吐出口(52)は、ノズル本体(4)の内周面によって塞がれている。一方、定量シリンダ(6)内では、ピストン(7)が昇降ストロークの上端位置まで上昇させられる(
図2参照)。すると、液体タンク(2)内の液体が、スプール(5)の液体流通口(S1)、液体流通路(53)および連通口(54)、ノズル本体(4)の液体導入孔(41)、連通部材(9)の連通孔(91)、ならびに定量シリンダ(6)の液体流通孔(61)を通じて、定量シリンダ(6)の下部に供給される。
【0043】
次に、液体充填を開始するためにスプール(5)を降下させていくと、
図5(b)に示すように、上スプール部(5a)がノズル本体(4)内に入り込んで液体流通口(S1)が次第に閉鎖され、液体流通路(53)が液体タンク(2)内から遮断される。また、ノズル本体(4)の液体導入孔(41)がスプール(5)の外周面における液体流入口(51)と液体吐出口(52)との間の部分によって塞がれ、液体流通路(53)と定量シリンダ(6)内とが完全に遮断される(
図5(c)参照)。この状態では、スプール(5)の液体吐出口(52)は、ノズル本体(4)の外周面によって塞がれたままである。
【0044】
スプール(5)がさらに降下すると、
図5(d)に示すように、スプール(5)の液体吐出口(52)の一部がノズル本体(4)の下方に露出して開放されるが、この状態では、ノズル本体(4)の液体導入孔(41)は未だスプール(5)の外周面によって塞がれている。
【0045】
そして、スプール(5)が降下するにつれて、
図5(e)に示すように、ノズル本体(4)の液体導入孔(41)とスプール(5)の液体流入口(51)との連通が開始され、また、それと連動して定量シリンダ(6)内でピストン(7)の降下が開始される。すると、定量シリンダ(6)内の液体が、ピストン(7)によって所定の充填圧力が加えられた状態で、ノズル本体(4)の液体導入孔(41)からスプール(5)の液体流入口(51)を経て液体流通路(53)に導入され、各液体吐出口(52)から斜め下向きに吐出される。この際、スプール(5)は、液体吐出口(52)の少なくとも一部が容器(C)内に入り込む位置まで降下させられており、液体吐出口(52)と容器(C)の底部との距離が短くなされている(
図3参照)。液体吐出口(52)から吐出された液体は、通常、容器(C)の側壁の内面に沿って流下させられ、容器(C)の底部に達する。これにより、吐出された液体が容器(C)内で液跳ねしたり泡立ったりし難くなる。
なお、液体導入孔(41)と液体流入口(51)との連通が開始されるタイミングは、液体吐出口(52)の少なくとも一部が開放されたときであれば良いが、好ましくは液体吐出口(52)の開口面積の5%以上、より好ましくは同30%以上が開放されたときとなされる。これにより、液体吐出口(52)の狭い開放部分から液体が勢いよく飛び出して容器(C)の開口付近等に付着するのが効果的に抑制される。
【0046】
スプール(5)の降下は、液体吐出口(52)の全体がノズル本体(4)の下方に露出して開放されるとともに、液体流入口(51)がノズル本体(4)の液体導入孔(41)とほぼ合致させられる位置に達した時点で停止させられ(
図5(f)参照)、この状態で引き続き液体吐出口(52)からの液体の吐出が行われる。
【0047】
その後、液体吐出口(52)からの液体の吐出、すなわち容器(C)内への液体の充填がほぼ完了した時点で、スプール(5)の上昇が開始され、
図5(g)に示すように、まずノズル本体(4)の液体導入孔(41)がスプール(5)の外周面によって徐々に塞がれていく。
【0048】
やがて、ノズル本体(4)の液体導入孔(41)がスプール(5)の外周面によって完全に塞がれるが(
図5(h)参照)、この時点では、スプール(5)の液体吐出口(52)は、少なくともその一部(好ましくは液体吐出口(52)の開口面積の5%以上、より好ましくは同30%以上)がノズル本体(4)の下方に露出して開放されている。これにより、スプール(5)の上昇時に、開放部分が狭くなった液体吐出口(52)から液体が勢いよく飛び出して容器(C)の開口付近等に付着するのが防止される。
【0049】
スプール(5)がさらに上昇すると、
図5(i)、
図5(j)に示すように、スプール(5)の液体吐出口(52)もノズル本体(4)の内周面によって完全に塞がれる。
ここで、吐出された液体やこれに含まれる果肉等の固形物が、スプール(5)の外周面における液体吐出口(52)の周辺部分等に付着することがあるが、スプール(5)の上昇に伴ってその外周面がノズル本体(4)の内周面と滑り接触させられることにより、付着した液体や含有固形物がスプール(5)の外周面から掻き落とされる。また、スプール(5)の下端面にも、吐出された液体や含有固形物が付着することがあるが、スプール(5)の下端面は上方凹状となされているので、液体等が留まりにくい。これにより、液体充填完了後に液垂れや含有固形物の落下が生じるのが抑制される。
【0050】
そして、スプール(5)が昇降ストロークの上端位置、すなわち
図5(a)に示す位置まで戻ると、定量シリンダ(6)内をピストン(7)が上昇させられて、液体タンク(2)内の液体が定量シリンダ(6)内の下部へ導入され、次の充填準備が完了する。
以上の工程が繰り返されることにより、容器(C)内への液体の定量充填が効率よく行われる。
【0051】
図6は、
図1~5に示す第1の実施形態に係る液体充填装置(1)の第1の変形例を示すものである。
この変形例では、充填ノズル(3)におけるスプール(5)の液体流入口(51)が、
図1~5に示す液体流入口(51)と比べて、やや下方に位置させられている。
そして、液体充填開始時にスプール(5)が降下させられる際、スプール(5)の液体吐出口(52)の開放が開始されると同時に、スプール(5)の液体流入口(51)とノズル本体(4)の液体導入孔(41)との連通が開始されるようになっている(
図6(c)ないし
図6(d)参照)。また、液体充填完了時にスプール(5)が上昇させられる際、ノズル本体(4)の液体導入孔(41)がスプール(5)の外周面における液体流入口(51)と液体吐出口(52)との間の部分によって塞がれると同時に、液体吐出口(52)がノズル本体(4)の内周面によって塞がれるようになっている(
図6(h)ないし
図6(i)参照)。
【0052】
ここで、
図1~5に示す液体充填装置(1)の充填ノズル(3)では、容器(C)に充填する液体が低粘度のものである場合、とりわけ容器(C)への液体充填量が比較的少量である場合に、以下のような現象が生じる可能性がある。すなわち、液体充填開始時にスプール(5)が降下させられる際、スプール(5)の液体吐出口(52)の開放が開始された後で、スプール(5)の液体流入口(51)とノズル本体(4)の液体導入孔(41)とが連通され、スプール(5)内の液体流通路(53)に液体が導入されるようになっているので、その間に液体吐出口(52)から液体流通路(52)に空気が進入して、液体流通路(53)の上部に滞留する可能性がある(
図5(d)参照)。また、液体充填完了時にスプール(5)が上昇させられる際、ノズル本体(4)の液体導入孔(41)がスプール(5)の外周面における液体流入口(51)と液体吐出口(52)との間の部分によって塞がれた後、液体吐出口(52)がノズル本体(4)の内周面によって塞がれるようになっているので、その間に液体吐出口(52)から液体流通路(52)に空気が進入して、液体流通路(53)の上部に滞留するおそれがある(
図5(h)参照)。液体流通路(53)の上部に滞留した空気は、ピストン(7)を上昇させて液体タンク(2)内の液体を定量シリンダ(6)内に導入させる際、液体とともに導入される(
図5(a)参照)。導入された空気は、液体充填時に液体とともにスプール(5)の液体流通路(53)に送られるが(
図5(e)等参照)、特に容器(C)への液体充填量が比較的少量である場合には、その一部が液体吐出口(52)から液体とともに排出されずに液体流通路(53)の上部に残り、定量シリンダ(6)内に再び送られることになる。この一連の工程が繰り返し行われると、定量シリンダ(6)内に空気が蓄積されていき、ピストン(7)を降下させても空気を圧縮するので定量の液体を押し出すことができなくなり、最終的には、定量シリンダ(6)内が空気で満たされて液体の導入が困難になるおそれがある。
これに対して、
図6に示す第1の変形例の液体充填装置(1)の充填ノズル(3)の場合、上述した通り、スプール(5)の液体流入口(51)の位置を調整することにより、液体を充填する際に、スプール(5)の液体吐出口(52)の開放が開始されるタイミングと、スプール(5)の液体流入口(51)とノズル本体(4)の液体導入孔(41)との連通が開始されるタイミングとを一致させ、また、液体の充填を完了させる際に、ノズル本体(4)の液体導入孔(41)が塞がれるタイミングと、スプール(5)の液体吐出口(52)が塞がれるタイミングとを一致させている。そのため、容器(C)に充填する液体が低粘度(かつ少量)である場合でも、スプール(5)の液体流通路(53)に空気が進入してその上部に滞留することが回避されるので、液体充填装置(1)を支障なく連続的に運転することができる。
【0053】
図7~
図10は、
図1~
図5に示す第1の実施形態に係る液体充填装置(1)の第2の変形例を示すものである。
この変形例では、充填ノズル(3)におけるノズル本体(4)の上部に、同下部と比べて内径が大きくなされた拡径部(45)が形成されている。この拡径部(45)の内部は、液体タンク(2)の底部と連通しており、液体で満たされている。
また、スプール(5)は、上スプール部(5a)と下スプール部(5b)とが、連結軸部を介在せずに、直接連結されている。
下スプール部(5b)の外周面の上部には、その後側部分に、スプール(5)が昇降ストロークの上端位置にある時にノズル本体(4)の拡径部(45)を介して液体タンク(2)とスプール(5)の液体流通路(53)とを連通させる液体流通口(55A)が形成されている。
さらに、この変形例のスプール(5)では、液体流入口(51A)が上下に長いものとなされている。この液体流入口(51A)は、
図1~
図5に示す連通口(54)を兼ねているため、スプール(5)には単独の連通口は形成されていない。
以上の構成により、スプール(5)の液体流入口(51A)およびノズル本体(4)の液体導入孔(41)は、スプール(5)が昇降ストロークのいずれの位置にある時にも、一定の面積(液体導入孔(41)の開口面積に等しい面積)で連通するようになされている。
【0054】
そして、この第2の変形例では、
図10に示すように、液体充填開始時にスプール(5)が降下させられる際、ピストン(7)が降下を開始して、液体流入口(51A)および液体導入孔(41)を通じて液体流通路(53)に所定の充填圧力が加えられた液体が導入され始めると同時に、スプール(5)の液体吐出口(52)の開放が開始されるようになっている(
図10(b)ないし
図10(c)参照)。つまり、液体を充填する際に、ピストン(7)の降下によりスプール(5)の液体流通路(53)への加圧液体の導入が開始されるタイミングと、スプール(5)の液体吐出口(52)の開放が開始されるタイミングとを一致させている。
また、液体充填完了時にスプール(5)が上昇させられる際、ピストン(7)が降下を停止して、液体流通路(53)への加圧液体の導入が終了すると同時に、液体吐出口(52)がノズル本体(4)の内周面によって塞がれるようになっている(
図10(f)参照)。つまり、液体の充填を完了させる際に、ピストン(7)の降下停止により液体流通路(53)への加圧液体の導入が終了するタイミングと、スプール(5)の液体吐出口(52)が塞がれるタイミングとを一致させている。
従って、
図7~
図10に示す第2の変形例の液体充填装置(1)によれば、
図6に示す第1の変形例の液体充填装置と同様に、容器(C)に充填する液体が低粘度(かつ少量)であったとしても、スプール(5)の液体流通路(53)に空気が進入してその上部に滞留するのが回避されるので、液体充填装置(1)を支障なく連続的に運転することができる。
また、第2の変形例の液体充填装置(1)によれば、スプール(5)の昇降ストロークの位置にかかわらず、スプール(5)の液体流入口(51A)とノズル本体(4)の液体導入孔(41)とが連通する面積を一定にすることができるので、スプール(5)の液体流通路(53)に導入される液体の流れが一定となり、液体充填時の調整が容易となる。
【0055】
[第2の実施形態]
図11は、この発明の第2の実施形態に係る液体充填装置の全体概略を示したものであり、
図12~
図15は、同装置の充填ノズルの詳細を示したものである。
図16は、同装置の変形例を示したものである。
図17および
図18は、同充填ノズルの液体吐出口からの液体の吐出方向の態様を容器の内面との位置関係において示したものである。また、
図19および
図20は、同充填ノズルの変形例を示したものである。
以下の説明において、
図11~
図13の各左を「前」、同各右を「後」というものとする。
また、以下において、第1の実施形態と実質的に同一である構成や作用効果については、説明を省略する場合がある。
【0056】
図11に示すように、この実施形態の液体充填装置(1X)は、垂直な充填管(12)と、充填管(12)の下端部に設けられた充填ノズル(3X)と、充填管(12)の上端部に接続管(14)を介して連通させられかつ内部にピストン(15)が前後往復移動自在に挿入されている定量シリンダ(13)と、定量シリンダ(13)の頂部に接続されている液体供給管(16)と、液体供給管(16)の内部に設けられた開閉弁(17)とを備えている。液体供給管(16)の上端部は、図示しない液体タンクに接続されている。
【0057】
充填ノズル(3X)は、下端が容器(C)の上端開口に臨むように配置されている略垂直筒状のノズル本体(4X)と、ノズル本体(4X)内に上下摺動自在に挿入されている略垂直棒状のスプール(5X)とを備えている。容器(C)は、ガイド部材(21)によって保持案内されながらコンベヤ等によって搬送され、充填ノズル(3X)の真下の充填ステーションで停止させられると、液体充填時にリフター(20)によって上昇させられ、充填が進むにつれてリフター(20)により降下させられるようになっている。
【0058】
ノズル本体(4X)は、充填管(12)の下端部内に所定の環状空隙(S2)をあけて同心状に配置固定されている。より詳細には、ノズル本体(4X)外周面の下端寄り位置に環状のフランジ部(42)が設けられており、同フランジ部(42)が充填管(12)の下端面に当接させられ、さらに、下端に環状内方突出部(121a)を有する筒状の雌ネジ部材(121)が、充填管(12)外周面の下端の雄ネジ部にねじ嵌められることにより、ノズル本体(4X)が充填管(12)の下端部に固定されている。なお、ノズル本体(4X)の固定構造は上記には限定されない。
ノズル本体(4X)の内周面は、横断面円形の垂直筒状となされている。
ノズル本体(4X)の周壁部には、その一側部(図では前側部)の所定高さ位置に液体導入孔(41)が貫通状に形成されている。液体導入孔(41)は、環状空隙(S2)を介して、充填管(12)の内部と連通させられている。なお、液体導入孔(41)は、
図11~
図13に示すように、ノズル本体(4X)の周壁部の所定高さ位置に1つだけ形成する他、周方向に間隔をおいて複数形成してもよい(後述する
図19、
図20参照)。
【0059】
スプール(5X)は、その上端部に接続されかつ充填管(12)の頂部を貫通して上方に突出した垂直な昇降ロッド(18)を、例えばエアシリンダ(19)等の駆動手段によって昇降させることにより、ノズル本体(4X)内を上下往復移動させられるようになっている。
【0060】
図14に詳しく示すように、スプール(5X)は、ノズル本体(4X)の内周面に対して摺動可能な横断面円形の外周面を有するものである。また、スプール(5X)は、その上部(571)が円錐台形状となされているとともに、同部分(571)からさらに上方に短くのびる小径軸部(572)を介して円板状の頭部(573)が形成されている。そして、スプール(5X)の頭部(573)が、昇降ロッド(18)の下端部に設けられた切欠部(181)に嵌め込まれることにより、スプール(5X)が昇降ロッド(18)の下端部に取り付けられている。
【0061】
スプール(5X)の外周面には、その高さ中間の一側部(
図11~
図13では前側部)に液体流入口(51)が形成されているとともに、その下端部に4つの液体吐出口(52)が周方向に等間隔おきに形成されている。なお、液体流入口(51)の数は、ノズル本体(4X)の液体導入孔(41)の数に応じて、2つ以上となされる場合もある。また、液体吐出口(52)の数は、図示のような4つには限定されず、1つまたは3つ以上とすることも可能である。
そして、これらの液体流入口(51)と液体吐出口(52)とを連通させるように、スプール(5X)の内部に上下にのびる液体流通路(53)が形成されている。液体流通路(53)は、その上部が横断面円形の垂直な筒状となされているとともに、その下部が、筒状上部の下端から分岐して各液体吐出口(52)に向かって斜め下向きにのびる傾斜部(531)よりなる。各傾斜部(531)は、横断面略円形の傾斜案内面(531a)を有している。したがって、これらの傾斜部(531)の下端開口よりなる液体吐出口(52)は、略縦長楕円形状となされている(
図14参照)。
また、スプール(5X)の外周面には、液体流入口(51)と反対側(
図11~
図13では後側)の箇所に、内部洗浄等のメンテナンスを行うための補助開口(55)が、液体流通路(53)と連通するように形成されている。補助開口(55)は、さらにスプール(5X)の外周面において液体流入口(51)から両方向(
図11~
図13では左右方向)に90°回転した位置にも形成されていてよい。ただし、補助開口(55)は、機能上必須のものではないので、省略することも可能である。また、ノズル本体(4X)に液体導入孔(41)が複数形成されている場合には、上記補助開口(55)の一部または全部が、液体導入孔(41)に対応する位置に形成された液体流入口(51)となされることもある。
液体流入口(51)および補助開口(55)の形状は、例えば
図14に示すようなやや横長の略長円形となされる他、円形、四角形等であってもよい。
【0062】
スプール(5X)の下端面は、上方に向かって凹んでいる。より詳細には、
図14等に示すように、スプール(5X)の下端面における外周縁部を除いた部分に、横断面略台形状の凹弧面(56)が形成されている。
【0063】
次に、
図15等を参照して、上記の液体充填装置(1X)による容器(C)内への液体の充填工程を順次説明する。
【0064】
まず、
図15(a)に示す液体充填開始前の段階では、充填ノズル(3X)のスプール(5X)は、昇降ストロークの上端位置にある。この状態で、スプール(5X)内の液体流通路(53)は、ノズル本体(4X)の液体導入孔(41)および同孔(41)と対面するスプール(5X)の1つ(
図11~
図13の前側)の液体吐出口(52)を通じて、充填管(12)内と連通させられている。スプール(5X)の液体流入口(51)および残りの液体吐出口(52)は、ノズル本体(4X)の内周面によって塞がれている。一方、定量シリンダ(13)内では、ピストン(15)が前後移動ストロークの前端位置にあり、また、液体供給管(16)内の開閉弁(17)は閉鎖されている(
図11参照)。液体供給管(16)、定量シリンダ(13)、接続管(14)、および充填管(12)の内部ならびにスプール(5X)内の液体流通路(53)は、液体によって満たされている。
【0065】
次に、液体充填を開始するためにスプール(5X)を降下させていくと、
図15(b)に示すように、ノズル本体(4X)の液体導入孔(41)がスプール(5X)の外周面における液体流入口(51)と液体吐出口(52)との間の部分によって塞がれ、液体流通路(53)と充填管(12)内とが完全に遮断される。この状態では、スプール(5X)の液体吐出口(52)は、ノズル本体(4X)の外周面によって塞がれたままである。また、これに連動して、容器(C)がリフター(20)によって上昇させられ、容器(C)の内部に充填ノズル(3X)および充填管(12)の下部が入り込む(
図13参照)。
【0066】
スプール(5X)がさらに降下すると、
図15(c)に示すように、スプール(5X)の液体吐出口(52)の一部がノズル本体(4X)の下方に露出して開放され、液体流通路(53)内に溜まっていた僅かな量の液体が流出するが、この状態では、ノズル本体(4X)の液体導入孔(41)は未だスプール(5X)の外周面によって塞がれている。
【0067】
そして、スプール(5X)が降下するにつれて、ノズル本体(4X)の液体導入孔(41)とスプール(5X)の液体流入口(51)とが連通させられる。また、それと連動して、まず液体供給管(16)内の開閉弁(17)が開放され、その直後に定量シリンダ(13)内のピストン(15)が後方に移動されることにより、定量シリンダ(13)内に液体が引き込まれ、ピストン(15)が前後移動ストロークの後端位置に来て定量の液体が引き込まれた時点で開閉弁(17)が閉鎖され、その直後にピストン(15)が前方に押し出される。すると、
図15(d)に示すように、充填管(12)内の液体が、ピストン(15)によって所定の充填圧力が加えられた状態で、ノズル本体(4X)の液体導入孔(41)からスプール(5X)の液体流入口(51)を経て液体流通路(53)に導入され、各液体吐出口(52)から斜め下向きに吐出される。この際、スプール(5X)は、液体吐出口(52)を含む下方露出部分の全体が容器(C)内に入り込んでおり、液体吐出口(52)と容器(C)の底部との距離は非常に短くなっている(
図13参照)。液体吐出口(52)から吐出された液体は、通常、容器(C)の側壁の内面に沿って流下させられ、容器(C)の底部に達する。また、液体吐出口(52)からの液体の吐出が開始されると、容器(C)は、充填された液体の液面の上昇に合わせて、リフター(20)により次第に降下させられる。以上のような液体吐出時の態様により、吐出された液体が容器(C)内で液跳ねしたり泡立ったりするのが極めて効果的に抑制される。
なお、液体導入孔(41)と液体流入口(51)との連通が開始されるタイミングは、液体吐出口(52)の少なくとも一部(好ましくは液体吐出口(52)の開口面積の5%以上、より好ましくは同30%以上)が開放されたときとなされる。これにより、液体吐出口(52)の狭い開放部分から液体が勢いよく飛び出して容器(C)の開口付近等に付着するのが効果的に抑制される。
【0068】
スプール(5X)の降下は、液体吐出口(52)の全体がノズル本体(4X)の下方に露出して開放されるとともに、液体流入口(51)がノズル本体(4X)の液体導入孔(41)とほぼ合致させられる位置に達した時点で停止させられ、この状態で引き続き液体吐出口(52)からの液体の吐出が行われる。
【0069】
その後、液体吐出口(52)からの液体の吐出、すなわち容器(C)内への液体の充填がほぼ完了した時点で、スプール(5X)の上昇が開始され、
図15(e)に示すように、まずノズル本体(4X)の液体導入孔(41)がスプール(5X)の外周面によって塞がれる。この時点では、スプール(5X)の液体吐出口(52)は、少なくともその一部(好ましくは液体吐出口(52)の開口面積の5%以上、より好ましくは同30%以上)がノズル本体(4X)の下方に露出して開放されている。これにより、スプール(5X)の上昇時に、開放部分が狭くなった液体吐出口(52)から液体が勢いよく飛び出して容器(C)の開口付近等に付着するのが防止される。
【0070】
スプール(5X)がさらに上昇すると、
図15(f)に示すように、スプール(5X)の液体吐出口(52)もノズル本体(4X)の内周面によって完全に塞がれる。
【0071】
そして、スプール(5X)が昇降ストロークの上端位置、すなわち
図15(a)に示す位置まで戻ると、定量シリンダ(13)内のピストン(15)が前後移動ストロークの前端位置まで戻り、次の充填準備が完了する。
以上の工程が繰り返されることにより、容器(C)内への液体の定量充填が効率よく行われる。
【0072】
図16は、
図11~
図15に示す第2の実施形態に係る液体充填装置(1X)の変形例を示したものである。
図示の液体充填装置の場合、ノズル本体(4X)の液体導入孔(41A)が上下に長いものとなされている。これにより、スプール(5X)の液体流入口(51)およびノズル本体(4X)の液体導入孔(41A)が、スプール(5A)が昇降ストロークのいずれの位置にある時にも一定の面積(液体流入口(51)の開口面積に等しい面積)で連通するようになされている。
【0073】
そして、この変形例では、液体充填開始時にスプール(5X)が降下させられる際、ピストン(15)が前方(液体加圧方向)への移動を開始して、液体流入口(51)および液体導入孔(41A)を通じて液体流通路(53)に所定の充填圧力が加えられた液体が導入され始めると同時に、スプール(5X)の液体吐出口(52)の開放が開始されるようになっている(
図16(c)参照)。つまり、液体を充填する際に、ピストン(15)の前方への移動によるスプール(5X)の液体流通路(53)への加圧液体の導入が開始されるタイミングと、スプール(5X)の液体吐出口(52)の開放が開始されるタイミングとを一致させている。
また、液体充填完了時にスプール(5X)が上昇させられる際、ピストン(15)が前方(液体加圧方向)への移動を停止して、液体流通路(53)への加圧液体の導入が終了すると同時に、液体吐出口(52)がノズル本体(4X)の内周面によって塞がれるようになっている(
図10(f)参照)。つまり、液体の充填を完了させる際に、ピストン(15)の前方への移動停止により液体流通路(53)への加圧液体の導入が終了するタイミングと、スプール(5X)の液体吐出口(52)が塞がれるタイミングとを一致させている。
従って、
図16に示す変形例によれば、容器(C)に充填する液体が低粘度のものであったとしても、スプール(5X)の液体流通路(53)に空気が進入してその上部に滞留するのが回避されるので、液体充填装置(1X)を支障なく連続的に運転することができる。
また、変形例の液体充填装置(1X)によれば、スプール(5X)の昇降ストロークの位置にかかわらず、スプール(5X)の液体流入口(51)とノズル本体(4X)の液体導入孔(41A)とが連通する面積を一定にすることができるので、スプール(5X)の液体流通路(53)に導入される液体の流れが一定となり、液体充填時の調整が容易となる。
【0074】
次に、
図17を参照して、上記充填ノズル(3X)によって横断面四角形の容器(C)内に液体を充填する場合における、容器(C)の内面に対するスプール(5X)の液体吐出口(52)からの液体の吐出方向の好適な態様を説明する。
図17(a)に示すように、スプール(5X)の外周面には、4つの液体吐出口(52)が周方向に等間隔おきに形成されている。
まず、
図17(b-1)に示すように、スプール(5X)の4つの液体吐出口(52)から、液体が、容器(C)の4つの側壁(C11)内面の幅中央部に向かって各側壁(C11)内面と直角をなす方向に吐出される場合、各側壁(C11)内面に沿って流下した液体が、容器(C)の底部で衝突し、それによって液跳ねや泡立ちが生じるおそれがある。
また、
図17(b-3)に示すように、スプール(5X)の4つの液体吐出口(52)から、液体が、容器(C)の隣り合う側壁(C11)どうしの内面によって形成された4つの入隅部に向かって吐出される場合も、各入隅部に沿って流下した液体が容器(C)の底部で衝突して、液跳ねや泡立ちが生じるおそれがある。
一方、
図17(b-2)に示すように、スプール(5X)の4つの液体吐出口(52)から、液体が、容器(C)の4つの側壁(C11)内面における幅中央部と入隅部との間の部分に向かって側壁(C11)内面に対して斜め方向に吐出される場合、各側壁(C11)内面に沿って流下した液体が、容器(C)の底部で衝突するのが回避され、液跳ねや泡立ちが生じにくい。
【0075】
また、
図18は、外周面に互いに反対方向を向いた2つの液体吐出口(52)が形成されたスプール(5X)を使用した場合における、横断面四角形の容器(C)の内面に対する液体吐出口(52)からの液体の吐出方向の3つの態様を示したものである。
まず、
図18(b-1)に示すように、スプール(5X)の2つの液体吐出口(52)から、液体が、容器(C)の対向する2つの側壁(C11)内面の幅中央部に向かって側壁(C11)内面と直角をなす方向に吐出される場合、各側壁(C11)内面に沿って流下した液体が、容器(C)の底部で衝突し、それによって液跳ねや泡立ちが生じるおそれがある。
また、
図18(b-3)に示すように、スプール(5X)の2つの液体吐出口(52)から、液体が、容器(C)の対角位置にある2つの入隅部に向かって吐出される場合も、各入隅部に沿って流下した液体が容器(C)の底部で衝突して、液跳ねや泡立ちが生じるおそれがある。
一方、
図18(b-2)に示すように、スプール(5X)の2つの液体吐出口(52)から、液体が、容器(C)の対向する2つの側壁(C11)内面における幅中央部と入隅部との間の部分に向かって側壁(C11)内面に対して斜め方向に吐出される場合、各側壁(C11)内面に沿って流下した液体が、容器(C)の底部で衝突するのが回避され、液跳ねや泡立ちが生じにくい。
【0076】
以上から明らかなように、横断面四角形の容器(C)に液体を充填する場合、外周面に4つまたは2つの液体吐出口(52)が周方向に等間隔おきに形成されているスプール(5X)を使用して、これらの液体吐出口(52)から、容器(C)における4つの側壁(C11)の内面または対向する2つの側壁(C11)の内面に向かって、平面より見て斜め方向に液体が吐出されるように、スプール(5X)の向きを調整するのが好ましく、それによって容器(C)内での液跳ねや泡立ちが効果的に抑制される。
また、図示は省略したが、横断面円形の容器に液体を充填する場合、外周面に3つの液体吐出口が周方向に等間隔おきに形成されているスプールを使用して、これらの液体吐出口から、容器の周壁内面に向かって液体が吐出されるようにすれば、各液体吐出口から吐出された液体が容器の底部で衝突するのが低減され、それによって、容器内での液跳ねや泡立ちが抑えられる。
【0077】
図19は、上記の充填ノズルの変形例を示したものである。
図示の充填ノズルの場合、ノズル本体(4Y)の周壁部の高さ中間位置に、水平方向に長い長孔よりなる液体導入孔(41)が周方向に等間隔おきに複数(例えば3つ)形成されているとともに、これらの液体導入孔(41)に対応するように、スプール(5Y)の外周面に、水平方向に長い長孔よりなる液体流入口(51)が周方向に等間隔おきに複数(例えば3つ)形成されている。
また、スプール(5Y)の外周面には、複数の液体流入口(51)の下方位置にそれぞれ液体吐出口(52)が形成されている。各液体吐出口(52)は、その下部の水平方向の幅が下方に向かって次第に小さくなるような略逆涙滴形の形状を有している。そのため、充填する液体が果肉や繊維等の固形物を含有するものである場合でも、液体充填完了後にスプール(5Y)が上昇させられると、スプール(5Y)の液体吐出口(52)の下端付近に固形物が集まって切れが良くなるため、ノズル本体(4Y)とスプール(5Y)との間に固形物が挟まるのが抑制される。なお、各液体吐出口(52)の形状は、図示のような略逆涙滴形とする他、例えば菱形等とすることも可能である。
スプール(5Y)の外周面には、液体流入口(51)の上方位置に外方突起(58)が形成されている。また、ノズル本体(4Y)の周壁部には、その上端から液体導入孔(41)の上方まで垂直下向きにのびるスリット(43)が形成されている。そして、スプール(5Y)の昇降に伴って、スプール(5Y)の外方突起(58)がノズル本体(4Y)のスリット(43)内を上下方向に摺動させられ、それによってノズル本体(4Y)に対するスプール(5Y)の周方向の位置決めが行われるようになっている。
【0078】
図20は、上記の充填ノズルのもう1つの変形例を示したものである。
図示の充填ノズルは、
図19に示す充填ノズルの構成に加えて、以下のような構成を有している。
すなわち、スプール(5Y)の下端部に、各液体吐出口(52)の下方に位置する外周面部分から下向きに延長状にのびる下方突出部(59)が形成されている。各下方突出部(59)は、例えば略下方凸弧状となされている。
また、ノズル本体(4Y)の下端部に、スプール(5Y)の液体吐出口(52)に対応する外周面部分、すなわち各液体導入孔(41)の下方に位置する外周面部分から下向きに延長状にのびる下方突出部(44)が形成されている。各下方突出部(44)は、スプール(5Y)の下方突出部(59)と同様に、例えば略下方凸弧状となされている。
上記の充填ノズルによれば、例えば高粘度の液体を容器(C)に充填する場合であっても、スプール(5Y)の液体吐出口(52)から吐出されてスプール(5Y)外周面の下端部に付着した液体が、スプール(5Y)の下端部およびノズル本体(4Y)の下端部に形成された下方突出部(59)(44)の先端部分に集まりやすくなる。そのため、液体充填完了後にスプール(5Y)が上昇してノズル本体(4Y)内に収容される際に、スプール(5Y)外周面に付着した液体をほぼ完全に切ることができ、液垂れが効果的に抑制される。
下方突出部は、スプール(5Y)の下端部およびノズル本体(4Y)の下端部のうちいずれか一方のみに形成されていてもよい。
【0079】
なお、この発明の充填ノズルは、上記各実施形態に示した液体充填装置に適用される他、例えば電磁流量計を使用したシリンダとピストンを使用しない液体充填装置にも同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
この発明は、容器に液体を定量充填する液体充填装置において、液体を容器に向かって吐出するための充填ノズルとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0081】
(1)(1X):液体充填装置
(3)(3X):充填ノズル
(4)(4X)(4Y):ノズル本体
(41)(41X):液体導入孔
(44):下方突出部
(5)(5X)(5Y):スプール
(51)(51A):液体流入口
(52):液体吐出口
(53):液体流通路
(531):傾斜部
(56):凹弧面部
(59):下方突出部
(C):容器
(C11):側壁