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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】畜舎洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/00 20060101AFI20240426BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A01K1/00 C
B08B3/02 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022070387
(22)【出願日】2022-04-21
(65)【公開番号】P2023160211
(43)【公開日】2023-11-02
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000150453
【氏名又は名称】株式会社中嶋製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 祐治
(72)【発明者】
【氏名】篠田 智之
(72)【発明者】
【氏名】堀内 準也
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220655(JP,A)
【文献】特開2013-247938(JP,A)
【文献】特開2016-202184(JP,A)
【文献】特開平07-129241(JP,A)
【文献】特開2022-020164(JP,A)
【文献】特開2018-136711(JP,A)
【文献】特開2008-043250(JP,A)
【文献】特開2021-078447(JP,A)
【文献】国際公開第00/036904(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/005158(WO,A1)
【文献】特開2023-150693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00 - 3/00
31/00 - 31/24
B08B 3/02
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端末より入力された洗浄径路に沿って自律走行しながら車両本体から洗浄液を噴出させて畜舎内の洗浄動作を行なう畜舎洗浄装置であって、
前記車両本体底部に一対の駆動モータにより各々回転駆動される駆動輪及び従動回転する従動輪を有する走行モジュールと、
前記車両本体から昇降可能かつ旋回可能であって、昇降方向先端に向かって延設された噴出ノズルより洗浄液を噴出して前記洗浄径路に沿った畜舎内の洗浄動作を行なう洗浄モジュールと、
前記車両本体の進行方向前方に設けられ、前記畜舎内の環境を撮像すると共に畜舎周壁面との距離を計測可能なセンサモジュールと、
前記センサモジュールから検出された計測データに基づいて前記車両本体の畜舎内の自己位置を推定し、位置推定に応じた前記走行モジュールによる車両本体の走行動作を制御しかつ前記洗浄モジュールによる洗浄動作を制御する電装モジュールと、を備えたことを特徴とする畜舎洗浄装置。
【請求項2】
前記センサモジュールは、自律走行に必要な周囲の環境を認識するための撮像カメラ及び畜舎周壁面までの距離を計測する測域センサを備え、
前記撮像カメラが畜舎内に配列された第一ガイド部及び第二ガイド部を撮像することで前記第一,第二ガイド部間に認識される走行ラインに対する前記車両本体の傾き角及び位置ずれ量を検出して前記走行ラインに沿うように並進動作が制御され、前記測域センサは、少なくとも前記車両本体前方の畜舎周壁面までの距離を検出して前記車両本体を隣の走行ラインへ旋回させる旋回動作が制御される請求項1記載の畜舎洗浄装置。
【請求項3】
前記畜舎は鶏舎であり、鶏舎長手方向に沿って配置された給水カップに沿った給水ラインと、鶏舎長手方向に沿って配置された給餌皿に沿った給餌ラインが設けられており、前記撮像カメラは、前記給水カップ及び前記給餌皿を撮像することで、前記給水ラインと前記給餌ラインとの間に認識される走行ラインに沿った並進動作が制御される請求項2記載の畜舎洗浄装置。
【請求項4】
前記電装モジュールは、入力端末と無線通信可能な無線通信回路を備え、畜舎内広さや畜舎内のガイド部の配置に関する地図データが記憶部に記憶されており、前記入力端末より前記地図データに応じた走行経路が入力されると、当該走行経路に応じた前記走行モジュールの走行動作及び前記洗浄モジュールの洗浄動作が制御される請求項1記載の畜舎洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄モジュールは昇降アームの先端に昇降方向に延設された噴出ノズルがモータ駆動により旋回動作し、前記噴出ノズルの旋回軸は、噴出方向と直交するように配置されている請求項1記載の畜舎洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄モジュールは、前記噴出ノズルを畜舎天井面、畜舎周壁面、床面に向けて前記旋回軸を中心に所定角度モータを正逆回転駆動させながら洗浄液を噴出させる請求項5記載の畜舎洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄モジュールには洗浄液が圧送りされるホースが連結され、当該ホースの余剰分を巻き取るホースリールが前記車両本体に回転駆動可能に設けられている請求項1記載の畜舎洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜舎内を自律走行しながら洗浄動作を行なう畜舎洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばブロイラー(肉用鶏)の飼育期間は、現在48日程度と言われ、出荷は鶏舎内の全ての鶏が出荷され、出荷日から次の雛が鶏舎に入るまでの1~2週間が空舎期間となる。この空白期間内に、鶏糞除去、鶏舎の水洗い、消毒(1~2回)、乾燥、新たな敷料(木製チップ)の搬入、鶏舎の加温、餌の準備を行なって次の雛を飼育する準備作業が行われる。
【0003】
準備作業のなかでも、鶏糞除去、鶏舎の水洗い、消毒作業は、重量物の運搬や長時間に渡る高圧ノズルの操作といった作業員とって重労働が強いられ、鶏糞が混じった埃の吸引や汚水の付着等の衛生面でも過酷な作業となる。
生産者は、空舎期間を可及的に短くすることで、飼育期間を確保し生産性を向上することを目指すため、鶏舎の洗浄作業をロボットで代替することができれば、省力化を図り衛生管理面においても好ましい。
【0004】
このため、本件出願人は、すでに畜舎全体に車両本体を走行させて洗浄消毒できる畜舎洗浄消毒システムを提案した。具体的には、車両本体に伸縮する複数のアームを設け、各アームの先端に洗浄液を噴出するノズルを設けて広範囲を洗浄できるようになっている。また、ノズルが回転することにより鶏舎に対して様々な角度から洗浄を可能としている(特許文献1;特開2016-220655号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-220655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の畜舎洗浄消毒システムにおいては、ノズルの反力やノズルの回転機構の重量によりアームに対してねじり方向と曲げ方向の撓みが発生する。また、ノズルが回転するため、アームが鳥の羽ばたきのように振動してしまう。このため、洗浄対象に洗浄液が当たらなくなるおそれがあり、車両本体が振動して走行が不安定となるおそれがあった。これに対して、アームや車両本体の剛性を上げるとすれば、車体重量が嵩み、コストが高くなり、駆動源であるバッテリーの消耗が激しくなる。
【0007】
また、複数のノズルから同時に洗浄液を噴出することで使用する液量が増えて、より高性能なポンプを用いて送液する必要があるため、設備コストが高くなる。
【0008】
更には、車両本体はガイド部となる給水管に吊り下げられた給餌機の下を通過するものであるため、洗浄できるエリアが限られる。近年では特に農場の大規模経営化が進み、畜舎自体も巨大化する傾向にあるため、畜舎全体を洗浄することが困難となっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、大規模化した畜舎内で自己位置推定を行なって自律走行を行いながら天井面、壁面、床面等を省力化して自動洗浄することができ、しかも噴出ノズルから洗浄液を噴出しても昇降機構が機械的に安定し、遠隔操作が容易に行える畜舎洗浄装置を提供することにある。
【0010】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
入力端末より入力された洗浄径路に沿って自律走行しながら車両本体から洗浄液を噴出させて畜舎内の洗浄動作を行なう畜舎洗浄装置であって、前記車両本体底部に一対の駆動モータにより各々回転駆動される駆動輪及び従動回転する従動輪を有する走行モジュールと、前記車両本体から昇降可能かつ旋回可能であって、昇降方向先端に向かって延設された噴出ノズルより洗浄液を噴出して前記走行ラインに沿った洗浄プログラムに沿って畜舎内の洗浄を行なう洗浄モジュールと、前記車両本体の進行方向前方に設けられ、前記畜舎内の環境を撮像すると共に畜舎周壁面との距離を計測可能なセンサモジュールと、前記センサモジュールから検出された計測データに基づいて前記車両本体の畜舎内の自己位置を推定し、位置推定に応じた前記走行モジュールによる車両本体の走行動作を制御しかつ前記洗浄モジュールによる洗浄動作を制御する電装モジュールと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
これにより、大規模化した畜舎内でセンサモジュールの計測データにより車両本体の自己位置推定を行なって、位置推定に応じて走行モジュールを所定の走行経路に沿って自律走行させながら洗浄することにより、畜舎の天井面、周壁面、床面等の洗浄作業を省力化・自動化して行うことができる。
また、車両本体から昇降方向先端に延設された噴出ノズルより洗浄液を噴出しても、ノズルの反力により昇降機構が振動し難く、機械的に安定した状態で洗浄作業を行なうことができる。
また、電装モジュールはセンサモジュールから検出された計測データに基づいて車両本体の畜舎内の自己位置を推定し、位置推定に応じて走行モジュールによる車両本体の走行動作を制御しかつ洗浄モジュールによる洗浄動作を制御する。よって、予め入力された洗浄径路に沿って車両本体の並進動作又は旋回動作を繰り返して畜舎内をくまなく洗浄することができる。
【0012】
前記センサモジュールは、自律走行に必要な周囲の環境を認識するための撮像カメラ及び畜舎周壁面までの距離を計測する測域センサを備え、前記撮像カメラが畜舎内に配列された第一ガイド部及び第二ガイド部を撮像することで前記第一,第二ガイド部間に認識される走行ラインに対する前記車両本体の傾き角及び位置ずれ量を検出して前記走行ラインに沿うように並進動作が制御され、前記測域センサは、少なくとも前記車両本体前方の畜舎周壁面までの距離を検出して前記車両本体を隣の走行ラインへ旋回させる旋回動作が制御されるようにしてもよい。
これにより、車両本体を畜舎周壁面に沿った走行ラインを並進動作させて測域センサが車両本体前方の畜舎周壁面までの距離を検出して車両本体を畜舎周壁面の近傍で左右いずれかへ旋回動作させて隣の走行ラインへ移動する。撮像カメラは第一ガイド部及び第二ガイド部を撮像することで第一,第二ガイド部間に認識される走行ラインに対する車両本体の傾き角及び位置ずれ量を検出して走行ラインに沿うように車両本体の並進動作が制御される。よって、車両本体を洗浄径路に沿った所定の走行ライン上を並進動作させ次の走行ラインへの旋回動作を繰り返して自律走行動作を制御することができる。
このように、畜舎内に特有の環境データを撮像カメラ及び測域センサにより検出し、信頼性の高い計測データを優先的に用いて自己位置推定を行なうことで、自律走行動作の精度を高めることができる。
【0013】
前記畜舎は鶏舎であり、鶏舎長手方向に沿って配置された給水カップに沿った給水ラインと、鶏舎長手方向に沿って配置された給餌皿に沿った給餌ラインが設けられており、前記撮像カメラは、前記給水カップ及び前記給餌皿を撮像することで、前記給水ラインと前記給餌ラインとの間に認識される走行ラインに沿った並進動作が制御されるようにしてもよい。
この場合には、撮像カメラを用いて給水ラインと給餌ラインの間に認識される走行ラインに沿って車両本体を並進動作させることができる。また、車両本体が進行方向前方に鶏舎周壁面に近づくと測域センサの計測により車両本体を旋回動作させて次の走行ラインへ移動させて一筆書き状に連続走行させながら効率良く洗浄作業が行える。
【0014】
前記電装モジュールは、入力端末と無線通信可能な無線通信回路を備え、畜舎内広さや畜舎内のガイド部の配置に関する地図データが記憶部に記憶されており、前記入力端末より前記地図データに応じた走行経路が入力されると、当該走行経路に応じた前記走行モジュールの走行動作及び前記洗浄モジュールの洗浄動作が制御されるようにしてもよい。
これにより、畜舎外から遠隔操作して地図データをもとに走行経路を自由に設定して車両本体の走行動作や洗浄動作を制御することができる。また、畜舎内の洗浄状態やトラブルの発生などを撮像カメラや測域センサを通じて遠隔操作で確認することができる。
【0015】
前記洗浄モジュールは昇降アームの先端に昇降方向に延設された噴出ノズルがモータ駆動により旋回動作し、前記噴出ノズルの旋回軸は、噴出方向と直交するように配置されていることが好ましい。
このように、噴出ノズルからの洗浄液の噴出方向と昇降アームの昇降方向は一致しているため、洗浄液噴出の反力で昇降アームがねじれることはなく、噴出ノズルの旋回軸は噴出方向と直交するので、噴出ノズルの旋回動作によって、昇降アームが撓んだり振動したりするのを最小限に抑えることができ、機械的に安定した状態で洗浄作業が行える。
【0016】
前記洗浄モジュールは、前記噴出ノズルを畜舎天井面、畜舎周壁面、床面等に向けて前記旋回軸を中心に所定角度モータを正逆回転駆動させながら洗浄液を噴出させることが好ましい。
これにより、車両本体を走行しながら噴出ノズルを昇降させて畜舎天井面、畜舎周壁面、床面等に向けて旋回軸を中心に所定角度正逆回転させることで畜舎の天井面、周壁面、床面の洗浄のみならず走行ラインに沿って配置される給水皿や給餌皿等を満遍なく洗浄することができる。
【0017】
前記洗浄モジュールには洗浄液が圧送りされるホースが連結され、当該ホースの余剰分を巻き取るホースリールが前記車両本体に回転駆動可能に設けられていることが好ましい。
これにより、車両本体が畜舎内を走行するにしたがってホースリールよりホースが引き出されるが、車両が旋回して隣の走行ラインを戻る際に、引き出されたホースの余剰分を再度ホースリールに巻き取らせることで、ホースの余剰分が床面を引きずることなく車両本体の走行動作や洗浄作業の妨げになることはない。
【発明の効果】
【0018】
大規模化した畜舎内で自己位置推定を行なって自律走行を行いながら天井面、壁面、床面等を省力化して自動洗浄することができ、しかも噴出ノズルから洗浄液を噴出しても昇降機構が機械的に安定し、遠隔操作が容易に行える畜舎洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】鶏舎洗浄装置の正面図、右側面図、平面図である。
図2】洗浄モジュールを定位置と定位置から上昇させた位置にある鶏舎洗浄装置の斜視説明図である。
図3】鶏舎内を鶏舎洗浄装置が走行状態の正面図、平面図、右側面図である。
図4】鶏舎洗浄装置の鶏舎内の並進動作を示す斜視図及び旋回動作を示す平面図である。
図5】撮像カメラの撮像と走行ラインとの関係を示す説明図である。
図6】車両本体の走行姿勢と走行ラインとのずれを示す平面視説明図及び撮像された画像の説明図である。
図7】鶏舎洗浄装置の天井洗浄、床洗浄、給餌皿及び給水カップの洗浄動作を示す説明図である。
図8】噴出ノズルの旋回動作を示す状態図である。
図9】電装モジュールの構成を示すブロック構成図である。
図10】鶏舎洗浄装置の洗浄径路設定を示す入力画面の説明図である。
図11図10の洗浄径路設定に伴う径路ごとの洗浄条件のプリセットを示す入力画面図及び他例に係る鶏舎内の洗浄経路を示す入力画面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る畜舎洗浄装置の概略構成について図1乃至図9を参照して説明する。畜舎洗浄装置1は、車両本体2に洗浄モジュール4が搭載され、指定された場所まで自律走行する無軌道車両である。以下では鶏舎12内を水洗いする鶏舎洗浄装置1を例示して説明するものとする。本実施例の鶏舎洗浄装置1は、後述するように撮像カメラ5aの画像情報と測域センサ5b(LiDAR)による座標情報を併用し、鶏舎12内の環境に応じていずれかを優先的に用いることで、鶏舎12内の自律走行動作の信頼性を高めている。
【0021】
先ず、図1(a)~(c)に示すように、鶏舎洗浄装置1は、入力端末より洗浄径路が入力されると、センサモジュール5により所定の走行ラインM(図5参照)を認識しながら走行モジュール3によって自律走行し、車両本体2に搭載された洗浄モジュール4から洗浄液を噴出させて畜舎12(図4(b)参照)内を走行しながら洗浄動作を行なう。
車両本体2の底部には走行モジュール3が設けられている。走行モジュール3は車両本体2の底部に一対の駆動モータ(図示せず)により各々回転駆動される前輪3a(駆動輪)及び従動回転する一対の後輪3b(従動輪)を有する。各前輪3aには駆動モータから、カップリングを介して駆動伝達される。尚、駆動モータから電磁クラッチなどのクラッチ機構を通じて駆動伝達するようにしてもよい。また一対の後輪3bは、キャスター付きの自在輪が用いられる。前輪3a及び後輪3bは、空気入りタイヤ又はノーパンクタイヤが用いられる。また、車両本体2の底部には、バッテリーケース3c(図1(b)参照)が設けられており、バッテリーケース3c内には充電式のバッテリー(図示せず)が装着されている。バッテリーは一対の駆動モータへ各々給電する。
【0022】
一対の前輪3aは、後述する制御部よりモータ駆動モジュールを介して駆動モータが制御され、左右輪の回転速度や回転数を同じにしたり変更したりすることで並進動作或いは旋回動作を実現するようになっている。駆動モータの回転信号により、左右の前輪3aの回転速度や回転位置が後述する制御部に送信される。尚、車両本体2をフリー走行させる場合には、ブレーキを解除するかクラッチ機構を解除して走行させることができる。
【0023】
図2(a)(b)に示すように、車両本体2には洗浄モジュール4が搭載されている。洗浄モジュール4は、車両本体2の上部に筒状の外装パネル4aに囲まれて搭載されている。外装パネル4a内には、昇降パイプ4bと、その先端に噴出ノズル4cを含むスプレーモジュール4dが一体に組み付けられている。噴出ノズル4cは昇降パイプ4bの長手方向先端に昇降方向に倣って延設されている。昇降パイプ4bはベース部4eに対して昇降自在に設けられ入れ子状に収納されている。スプレーモジュール4dは、アクチュエータ4f(例えば電動アクチュエータ等)により伸縮動作する伸縮ロッド4gの先端に連結されておりかつ昇降パイプ4bにも連結されている。スプレーモジュール4dには、噴出ノズル4cを昇降方向(昇降パイプ4b)と直交するように配置された旋回軸4h(図2(b)参照)を中心に旋回動作させるアブソリュート型エンコータ付き旋回モータ(図示せず)が内蔵されている。噴出ノズル4cには、車両本体2とは別途用意した動力噴霧器(図示せず)よりホースを通じて圧送りされた高圧の水が供給され、後述する電磁弁を開弁することで洗浄水が噴出ノズル4cより噴出するようになっている。
【0024】
図2(a)に示す状態から、アクチュエータ4fを作動させると、図2(b)に示すように伸縮ロッド4gが上方に伸びてスプレーモジュール4dが、昇降パイプ4bと共にベース部4eより上昇する。スプレーモジュール4dに洗浄水を供給するホースや旋回モータの電気配線等は、ケーブルキャリア4iに保護されて車両本体2と接続されている。旋回モータを正逆回転させて噴出ノズル4cを旋回軸4h中心に所定角度旋回動作させながら鶏舎天井面、鶏舎周壁面、床面等に向けて噴出ノズル4cより洗浄水を噴出することで洗浄動作が行われる。洗浄範囲は車両本体2の進行方向に対して左右両側を合わせて旋回軸4hを中心に概ね270°の範囲で行うことができる。尚、洗浄範囲は適宜変更することが可能である。
【0025】
このように、噴出ノズル4cからの洗浄液(又は消毒液)の噴出方向と昇降パイプ4bの昇降方向は一致しているため、洗浄液噴出の反力で昇降パイプ4bがねじれることはない。また、噴出ノズル4cは昇降パイプ4b先端部に延設され、旋回動する長さは限られておりしかも旋回軸4hは昇降方向と直交するので、噴出ノズル4cの旋回動作によって、昇降パイプ4bが撓んだり振動したりするのを最小限に抑えることができ、機械的に安定した状態で洗浄作業が行える。
【0026】
図1(a)~(c)に示すように、洗浄モジュール4には洗浄液が圧送りされるホースが巻き取られたホースリール4jが車両本体2に回転駆動可能に設けられている。ホースリール4jは、電動モータ(図示せず)により回転させてホースを巻き取るホースリール巻取り機構、ホースリール4jに巻き取られるホースの不均衡を是正するホース乱巻き防止機構(図示せず)、ホース内に供給された高圧洗浄水を噴出ノズル4cに供給する電磁弁(図示せず)を備えている。電動モータにはワンウェイクラッチが設けられており、ホースリール4jよりホースを引き出される向きには慣性力で回転し、余剰のホースを巻き取る向きのみに回転駆動される。ホースリール4jがいずれかの方向に回転すると、ホースリール乱巻き防止機構は、ホースリール4jの回転に同期して作用する。鶏舎洗浄装置1が自律走行する場合には、車両本体1がUターンして戻る際に、余剰のホースをホースリール巻取り機構により巻取りながら走行する。
【0027】
このように、車両本体2が鶏舎内を自律走行する際にホースリール4jからホースが引き出されるが、車両本体2が旋回して隣の走行ラインをUターンして戻る際に、引き出されたホースの余剰分が床面上で絡んだり踏んだりすることなくホースリール4jに巻き取ることで、車両本体2の走行動作や洗浄作業の妨げになることはない。
【0028】
センサモジュール5は、車両本体2の前方に設けられている。センサモジュール5は、畜舎12内の環境を撮像すると共に畜舎周壁面Wとの距離を計測し(図4(b)参照)、車両本体2が自律走行するのに必要な周囲の環境を認識するものである。具体的には、図1(a)及び図2(a)(b)に示すように、センサモジュール5は、車両本体2前方の上段に撮像カメラ5a(環境把握用カメラ)とその下段に測域センサ5b(Lider:レーザ距離センサ)を備えている。撮像カメラ5aは、自律走行に必要な鶏舎12内の環境を撮像して読み取る。撮像カメラ5aの種類としては防水性を有する単眼カメラが用いられる。尚、防水性と画素数が確保できれば広角カメラを用いてもよい。撮像カメラ5aは、図5に示すように、鶏舎12内に配列された給水カップ6(第一ガイド部)及び給餌皿7(第二ガイド部)を撮像することで、給水カップ6と給餌皿7間に形成される走行ラインMに対する車両本体2の走行姿勢を検出して走行ラインMに沿うように並進動作が制御される(図6参照)。
【0029】
また、測域センサ5bは、レーザースキャナから照射されたレーザー光の反射光を受光するまでの時間の差により対象物までの距離を測定する。測域センサ5bは、図4(b)に示すように、少なくとも車両本体2の前方及び側方の鶏舎周壁面Wまでの距離を検出して車両本体2の並進動作及び隣の走行ラインへの旋回動作が制御される。測域センサ5bは、レーザー光を照射して3D(x,y,z座標)の点群データを取得して自己位置を推定する。測域センサ5bは鶏舎洗浄装置1の走行時に位置推定の他に障害物を検知するためなどに用いられる。
【0030】
図5に示すように鶏舎12内には、その長手方向に沿って天井から吊り下げられた給水管に沿って給水カップ6が直列に並んだ給水ラインL1と、天井から吊り下げられた取付アームに沿って給餌皿7が直列に並んだ給餌ラインL2が交互配置されている。尚、給水カップ6は給水管に付いたニップルから鶏が水を飲む際にこぼれた水や、振動などでニップルから漏れた水が床を濡らさないようにする為の受け皿である。
撮像カメラ5aは給水カップ6と給餌皿7を撮像することで車両本体2を給水ラインL1と給餌ラインL2との中間に形成される走行ラインMを認識する。実際の走行ラインをM´とする。撮像された画像から走行ラインMに対する車両本体2の走行ラインM´の位置ずれ量や傾きを推測して走行モジュール3の動作、即ち一対の前輪3aを回転駆動する駆動モータの制御を行なって、車両本体2の並進動作が走行ラインMに沿うように制御される。
【0031】
具体的には、図6(a)(b)に示すように、撮像カメラ5aは、撮像された画像から給水カップ6が設けられた給水ラインL1と給餌器7が設けられた給餌ラインL2を認識する。このとき、給水ラインL1と給餌ラインL2の中間部に走行ラインMを認識する。撮像カメラ5aの画像中心に垂線Vを引くことで、垂線Vと走行ラインMとのなす傾き角θが車両本体2の姿勢(向き)のずれ量を示す。また、撮像カメラ5aの画像中心を通過する走行ラインMに対する平行線M´を描くことで、走行ラインMと平行線M´の距離Dが走行ラインMからのずれ量となる。図6(b)に撮像画像に表示された傾き角θ及びずれ量Dを示す。電装モジュール8は、この傾き角θ及びずれ量Dが零となるように、走行モジュール3の一対の駆動モータの駆動量を制御することで、車両本体2が走行ラインMの上をトレースするように走行させる。
【0032】
図4(a)に示すように、鶏舎12には撮像カメラ5aより撮像される障害物が比較的少なく、撮像される画像データの信頼性が低い場合には、測域センサ5bで得られた対象物までの距離を測定して優先的に採用して自己位置推定が行われる。
【0033】
これにより、図4(b)に示すように、先ず車両本体2を鶏舎周壁面Wに沿って配置し、鶏舎周壁面Wと給水ラインL1との間を走行させる場合には、測域センサ5bが車両本体2の前方及び側方の鶏舎周壁面Wまでの距離を検出して、鶏舎周壁面Wと給水ラインL1の中間に形成される走行ラインM(図5参照)を認識する。走行ラインMに対する車両本体2の傾き角θやずれ量Dを推測して走行モジュール3の動作、即ち一対の前輪3aを各々回転駆動する駆動モータの制御が行なわれる(図6(a)(b)参照)。撮像カメラ5aの画像から給水カップ6(給水ラインL1)が認識できなくなると、測域センサ5bで計測された車両本体2の前方の鶏舎周壁面Wまでの距離の計測データを優先適用して走行モジュール3の動作を制御して車両本体2を左右いずれかの方向へ旋回動作させる。これにより、図4(a)(b)に示すように、車両本体2を給水ラインL1と給餌ラインL2との中間に認識される走行ラインMに沿って並進動作させる。以後同様に、図4(a)に示すように、車両本体2を給水ラインL1と給餌ラインL2の間を並進動作させ隣のラインへの旋回動作を繰り返して鶏舎12内を自律走行させることができる。
【0034】
尚、図4(a)に示すように、車両本体2が旋回動作する場合には、昇降パイプ4bを下降させてベース部4eに同軸状に収納して噴出ノズル4cの高さ位置を低くすることが走行安定上好ましい(図2(a)参照)。車両本体2が並進動作に移行すると、昇降パイプ4bをもとの高さ位置まで上昇させて噴出ノズル4cの高さ位置を高くして洗浄動作を行なうことが好ましい(図2(b)参照)。
【0035】
尚、周囲に障害物が少ない鶏舎12内部では測域センサ5bから得られる点群データの密度が十分ではなく、車両本体2の現在位置を見失ってしまうおそれがある。そこで、撮像カメラ5aによる給水カップ6及び給餌皿7の画像データによる自己位置推定と、測域センサ5bによる鶏舎周壁面Wまでの距離データによる自己位置推定を併用することで自己位置推定精度を維持している。このように、鶏舎12に特有の環境データを撮像カメラ5a及び測域センサ5bにより検出して、これらを併用或いはいずれかを優先的に用いて自己位置推定を行って自律走行の精度を高めている。
【0036】
洗浄モジュール4を用いた洗浄動作の一例について図7及び図8を参照して説明する。図7(a)は鶏舎の天井面洗浄を行なう場合の動作説明図である。昇降パイプ4bの先端に設けられた噴出ノズル4cより高圧洗浄水を天井面に向かって噴出させながら、旋回軸4gを中心に所定角度旋回させながら洗浄を行なう。噴出ノズル4cは起立姿勢(図8(a)参照)から左右両側に所定角度旋回動させることが好ましい(図8(d)参照)。ノズル数は1本であるが、必要に応じて複数本に増設することができる。天井面が高い場合には、アクチュエータ4fにより伸縮ロッド4gを上昇させて、噴出ノズル4cを天井面に近づけて洗浄することができる。また給水ラインL1に沿って天井面から吊り下げ支持された給水管が天井面近くに巻き上げられている場合には、噴出ノズル4cを小刻みに振りながら走行することで洗浄効果を高めることができる。
【0037】
図7(b)は鶏舎の床面洗浄を行なう場合の動作説明図である。この場合には、噴出ノズル4cは斜め下向き姿勢(図8(b)(c)(e)参照)から上下に所定角度旋回動させながら洗浄することが好ましい。
【0038】
図7(c)は鶏舎内に配置された給水カップ6や給餌皿7の洗浄を行なう場合の動作説明図である。この場合には、噴出ノズル4cは水平姿勢から上下に所定角度旋回動させながら洗浄することが好ましい。これは、鶏舎の周壁面Wを洗浄する場合にも同様に行うことができる。尚、鶏舎の周壁面Wに設けられた空調装置を構成する入気口は、鶏舎内の空気の入れ換えや温度調節を行なうため入気口が開閉される。この入気口には埃が溜り易く、その周囲の壁には埃が付着し易い。このため洗浄する場合には、給水カップ6や給餌皿7と同様に噴出ノズル4cを小刻みに旋回しながら走行することで洗浄効果を高めることができる。
【0039】
図9において、鶏舎洗浄装置1の制御系を構成する電装モジュール8についてブロック構成図を参照して説明する。電装モジュール8は、センサモジュール5から検出された画像情報や鶏舎周壁面Wとの距離情報に基づいて走行モジュール3の走行動作を制御し、かつ走行経路に応じた洗浄モジュール4による洗浄動作を制御する。電装モジュール8は、マイクロコンピュータ8a、メモリ8b、通信回路8c等を備えている。撮像カメラ5a及び測域センサ5bも通信インタフェース(図示せず)を介して電装モジュール8に接続されており、撮像或いは計測されたデータを、電装モジュール8へ送信する。
【0040】
マイクロコンピュータ8aは、鶏舎洗浄装置1の動作制御するための演算を行うプロセッサまたは制御回路(コンピュータ)である。典型的にはマイクロコンピュータ8aは半導体集積回路である。マイクロコンピュータ8aは、制御信号であるPWM(Pulse Width Modulation)信号を走行モジュール3のモータ駆動回路に送信して駆動モータに印加する電圧を調整する。これにより一対の前輪3aを所望の回転速度で回転させることができる。また、マイクロコンピュータ8aは、洗浄モジュール4による洗浄径路に沿った畜舎12内の洗浄動作を制御する。即ち、洗浄モジュール4に対して噴出ノズル4cの高さ指令や開弁指令を送出し、旋回モータに対して噴出ノズル4cの旋回指令を送出しエンコーダ出力から噴出ノズル4cの旋回動作を監視して洗浄動作を制御する。更には、マイクロコンピュータ8aは、撮像カメラ5aや測域センサ5bから検出された計測データに基づいて、車両本体2の畜舎内の自己位置を推定し、位置推定による走行モジュール3の走行動作を制御しかつ洗浄モジュール4による洗浄動作を制御する。
【0041】
メモリ8bは、マイクロコンピュータ8aが実行するコンピュータプログラムを記憶する揮発性の記憶装置である。メモリ8bは、入力されたデータを一時記憶し、マイクロコンピュータ8aが位置推定などの演算を行う際のワークエリアとしても利用される。
【0042】
通信回路8cは、コントローラ10或いはタッチパネル11(入力端末)と通信回路8cとで無線LANや無線WAN等に準拠した無線通信を行うことができる。予め鶏舎12内の環境地図データは、外部記憶装置9に記憶されている。1または複数の走行経路データは、環境地図データが作成された後に外部記憶装置9に記憶される。また、鶏舎12の洗浄プログラムは事前に外部記憶装置9に記憶されている。ユーザーはコントローラ10或いはタッチパネル11を操作して予め鶏舎12内の環境地図データを基に走行ルートを入力し、洗浄指令を入力することで、走行モジュール3による走行ルートにしたがって自律走行を開始し、洗浄プログラムにしたがって洗浄モジュール4による洗浄動作が開始される。尚、ユーザーはコントローラ10或いはタッチパネル11からマニュアル操作で鶏舎洗浄装置1を操作することも可能である。これにより、鶏舎洗浄装置1をコントローラ10或いはタッチパネル11から遠隔操作して自動洗浄動作を制御することができる。また、鶏舎12内の洗浄状態や侵入者などトラブルの発生などを、撮像カメラ5aを通じて遠隔操作で確認することもできる。
【0043】
尚、コントローラ10或いはタッチパネル11は、例えばアンドロイド(登録商標)やiOS(モバイルオペレーティングシステム)などのロボット操作アプリケーションソフトウェアをインストールされたスマートフォンやタブレット端末を用いて遠隔操作される。
また、鶏舎12の環境地図データや洗浄プログラムは事前に外部記憶装置9に記憶させているが、電装モジュール8内部にデータ格納部を設け、不揮発性の記憶装置として環境地図データや洗浄プログラムを格納するようにしてもよい。
【0044】
次に鶏舎洗浄装置1を用いた鶏舎内の洗浄作業例について図10(a)~(d)の説明図を参照して説明する。
先ず、図10(a)を操作して入力端末(コントローラ10或いはタッチパネル11)の画面上で鶏舎12内の地図データを作成する。具体的には、鶏舎12内の仮想平面上に設備配置を入力する。例えば、鶏舎12内には、長手方向に沿って天井面より給水カップ6(図示せず)に給水する給水管が吊り下げ支持された給水ラインL1、給餌皿7が所定間隔で並んだ給餌ラインL2が交互に配置されており、中間に暖房装置13が等間隔で配列されている。
【0045】
次いで、図10(b)に示すように、続いて入力端末の仮想画面上で設備配置の寸法を入力する。具体的には、鶏舎12の外形寸法(縦方向寸法a、横方向寸法b)、鶏舎周壁面Wと給水ラインL1との距離c、給水ラインL1と給餌ラインL2との距離d、給水ラインL1どうしの距離eなどが入力される。
【0046】
次いで、図10(c)に示すように、入力端末の仮想画面上で洗浄径路14設定する。具体的には、洗浄開始位置STと洗浄終了位置END及び途中径路(破線部)を設定する。鶏舎12の長手方向一端側の左上角部に設けられた洗浄開始位置STから鶏舎12の長手方向右側へ鶏舎周壁面Wと給水ラインL1の間を通過し、鶏舎12の長手方向他端側でUターンして給水ラインL1と給餌ラインL2の間を交互に移動して、暖房装置13の下を通過してから同様に給水ラインL1と給餌ラインL2の間を交互に移動し、鶏舎周壁面Wと給水ラインL1の間を鶏舎12の長手方向反対側の右下角部に設けられた洗浄終了位置ENDで洗浄動作が終了するように洗浄経路14が設定される。
【0047】
図10(d)は、鶏舎洗浄装置1を洗浄開始位置ST(鶏舎12の長手方向一端側の左上角部)に配置して図10(c)で設定した洗浄径路14に沿って鶏舎洗浄装置1を走行させながら洗浄動作を開始させた状態を示す。洗浄径路14ごとの車両本体2の向きは、システムにより自動設定される。図10(d)では白三角で表示した頂点位置が鶏舎洗浄装置1の進行方向前方を指し示すものとする。
【0048】
前述したように車両本体2は測域センサ5bが車両本体2の前方及び側方の鶏舎周壁面Wまでの距離を検出して、鶏舎周壁面Wと給水ラインL1の中間に走行ラインMを認識して走行させ(図4(b)参照)、撮像カメラ5aが給水カップ6及び給餌皿7を撮像することで給水ラインL1と給餌ラインL2の中間に走行ラインMを認識して走行させる(図5参照)。電装モジュール8は走行ラインMに対する車両本体2の傾き角θや位置ずれ量Dを演算により算出して、走行モジュール3の並進動作、即ち一対の前輪3aを各々回転駆動する駆動モータの制御が行なわれる(図6(a)(b)参照)。撮像カメラ5aの撮像画像から給水カップ6が認識できなくなると、測域センサ5bで計測された車両本体2の進行方向前方の鶏舎周壁面W(鶏舎12の長手方向周壁面W)までの距離から走行モジュール3の動作を制御して車両本体2をUターンするように旋回動作させる。
【0049】
また、鶏舎12外に設けられた動力噴霧器を起動して、ポンプをより洗浄液を鶏舎洗浄装置1に対してホースを介して圧送りされている。洗浄モジュール4による鶏舎12の洗浄動作は、天井面、周壁面、床面、給水カップ6、給餌皿7に向けて噴出ノズル4cの高さを調整し、旋回させながら洗浄液を噴出して洗浄動作が行われる。
図11(a)に示すように、洗浄開始位置STから洗浄径路14に沿って走行ラインごとに洗浄条件に関するプリセット(preset)が設けられている。例えば、天井面か壁洗浄か、走行速度、噴出ノズル4cの旋回角などの洗浄条件を洗浄径路14の設定と同時に径路ごとにきめ細かく設定することができるようになっている。
【0050】
尚、洗浄動作開始位置STから車両本体2が並進すると、鶏舎12外に設けられたポンプに接続するホースがホースリール4jより引き出されるが、Uターンして並進する際に、ホースリール4jを巻き取ることで、ホースの余剰分が絡んだり、車両本体2が踏んだりしないようにすることができる。
【0051】
以上の動作を繰り返して車両本体2が図10(d)に示す洗浄径路14の洗浄終了位置END(鶏舎12の長手方向反対側の右下角部)に到達すると洗浄動作を終了する。
洗浄動作が終了すると、ユーザーが鶏舎洗浄装置1を次の鶏舎12の洗浄に使用するため、マニュアル走行させて移動したり、鶏舎12外に用意した軽トラック等に載せて移動したりすることができる。ちなみに、鶏舎洗浄装置1は、L1300×W840×H1600~2400mm程度の小型のものが用いられる。
【0052】
図11(b)は、他例に係る鶏舎12内の洗浄経路14を示す入力画面の説明図である。図10(c)は、鶏舎12内の設備配置、設備洗浄開始位置STから鶏舎12の長手方向に沿って鶏舎周壁面Wと給水ラインL1の間、給水ラインL1と給餌ラインL2の間、暖房装置13の下を交互に通過する例を示したが、任意の走行レーンをスキップして走行させる走行経路であってもよい。例えば、図11(b)は上段の給水ラインL1と給餌ラインL2の間から暖房装置13の下方の走行ラインをスキップして下段の給水ラインL1と給餌ラインL2の間を走行させる径路を示す。また、図11(b)の下段に示すように、例えば給水ラインL1と給餌ラインL2の間を同一走行ライン内で、鶏舎洗浄装置1の向きを変えずに前進後退を行なって、洗浄終了位置ENDにて洗浄動作を終了することも可能である。
【0053】
尚、車両本体2が走行中に、撮像カメラ5aや測域センサ5bがイレギュラーな障害物や人などを検出した場合には、走行を一時停止させて洗浄動作を中断するようにしてもよい。また、車両本体2に搭載した撮像カメラ5aにより、鶏舎12の内部を撮像することにより、洗浄状態を確認することが可能である。鶏舎洗浄装置1による洗浄動作は、鶏舎天井面、周壁面、床面の予洗いに相当するため、仮に洗い残しがある場合には、必要に応じてユーザーが仕上げ洗いを行なうようにしてもよい。鶏舎洗浄装置1はバッテリー給電で動作するため、充電量が少なくなった場合には、洗浄動作を中止して、コントローラ10やタッチパネル11にバッテリー残量が少なくなった旨を報知して、バッテリー充電を促すようにしてもよい。
【0054】
以上説明したように、大規模化した鶏舎12内でセンサモジュール5により自己位置推定を行なって走行モジュール3を所定の走行ラインMに沿って自律走行させながら洗浄することにより、鶏舎12の天井面、壁面、床面等の洗浄作業を省力化・自動化して行うことができる。
また、車両本体2から昇降方向先端に設けられた噴出ノズル4cより洗浄液を噴出しても、ノズルの反力により昇降機構が振動し難く、機械的に安定した状態で洗浄作業を行なうことができる。
また、電装モジュール8はセンサモジュール5から検出された鶏舎画像情報や鶏舎周壁面Wとの距離情報に基づいて自己位置を推定しながら走行モジュール3による並進動作又は旋回動作を制御しかつ洗浄モジュール4による洗浄動作を制御する。よって、予め入力された洗浄径路14に沿ってセンサモジュール5が走行ラインMを認識しながら車両本体2の並進動作又は旋回動作を繰り返して鶏舎12内をUターンしながらくまなく洗浄することができる。
【0055】
尚、本実施例は、鶏舎洗浄装置1について例示したが、牛、豚等他の家畜の畜舎の洗浄用にカスタマイズすることが可能である。
また、鶏舎12を水洗いする鶏舎洗浄装置1を例示したが、洗浄液にかぎらず消毒液を用いて鶏舎12内を消毒する鶏舎消毒装置として用いることも可能である。
また、畜舎内に障害物が多い場合、畜舎内の環境地図データを作成しておき、測域センサ5bから計測される点群データと照合させて自己位置推定を行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping:自己位置推定と環境地図作成の同時実行)を搭載することも可能である。この場合には、環境地図データは、鶏舎洗浄装置1を予め畜舎内を自律走行させて作成し、電装モジュール8のデータ格納部に格納しておく。測域センサ5bから測定された点群データと予めデータ格納部に記憶した環境地図データどうしをマッチングすることで車両本体2の移動量や位置を推定しながら洗浄動作を行なうことができる。
更には、測域センサ5bとしてLidarを用いたが、これに替えて他のセンサ、例えば赤外線センサ、や超音波センサ、電波によるレーダーセンサなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 鶏舎洗浄装置 2 車両本体 3 走行モジュール 3a 前輪 3b後輪 3c バッテリーケース 4 洗浄モジュール 4a 外装パネル 4b 昇降パイプ 4c 噴出ノズル 4d スプレーモジュール 4e ベース部 4f アクチュエータ 4g 伸縮ロッド 4h 旋回軸 4i ケーブルキャリア 4j ホースリール 5 センサモジュール 5a 撮像カメラ 5b 測域センサ 6 給水カップ 7 給餌皿 8 電装モジュール 9 外部記憶装置 10 コントローラ 11 タッチパネル 12 鶏舎 13 暖房装置 14 洗浄経路 L1 給水ライン L2 給餌ライン M 走行ライン W 鶏舎周壁面
図1
図2
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