(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】液体媒体内の生存微生物の迅速な検出のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20240426BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12M1/34 B
(21)【出願番号】P 2022197771
(22)【出願日】2022-12-12
(62)【分割の表示】P 2020504466の分割
【原出願日】2018-04-06
【審査請求日】2023-01-11
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519361494
【氏名又は名称】インペディクス ダイアグノスティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オコーナー スティーブン ディー.
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0081676(US,A1)
【文献】Sensors and Actuators B,2005年01月23日,Vol. 109,pp. 209-215
【文献】J. Phys. D: Appl. Phys.,1999年,Vol. 32,pp. 2814-4820
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体含有サンプル内の少なくとも1つの病原体の存在を検出するための方法であって、
システムを提供することであって、
前記システムは、
前記液体含有サンプルを受け取るように構成される流体チャネルと、
前記流体チャネルと電気的連通状態にある少なくとも2つの電極と、
前記少なくとも2つの電極に動作可能に結合されたパルス発生器回路要素と、
前記少なくとも2つの電極に動作可能に結合された信号検出回路要素と、
前記信号検出回路要素に動作可能に結合された比較回路要素と、
前記パルス発生器回路要素、前記信号検出回路要素、および前記比較回路要素に動作可能に結合された制御回路要素と、を備える、システムを提供することと、
前記液体含有サンプルの少なくとも一部分と電気的連通状態にある少なくとも2つの電極間に第1の電気パルスを印加することと、
前記第1の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の
50%に到達するために必要とされる時間以内で延長する第1の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を生成するために、前記第1の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分および前記少なくとも2つの電極の第1の初期電気応答を検出することと、
前記液体含有サンプルの少なくとも一部分と電気的連通状態にある前記少なくとも2つの電極間に第2の電気パルスを印加することと、
前記第2の電気パルスの状態の変化後に前記定常状態電気応答値の
50%に到達するために必要とされる時間以内で延長する第2の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を生成するために、前記第2の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分および前記少なくとも2つの電極の第2の初期電気応答を検出することと、および、
前記少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を具現化する、または前記少なくとも1つの第2の初期電気応答信号から導出される第2の電気応答を、前記少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を具現化する、または前記少なくとも1つの第1の初期電気応答信号から導出される第1の電気応答と比較することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の50~98%に到達するために必要とされる時間以内で延長する第1の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を生成するために、前記第1の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分および前記少なくとも2つの電極の第1の初期電気応答を検出すること、および
前記第2の電気パルスの状態の変化後に前記定常状態電気応答値の50~98%に到達するために必要とされる時間以内で延長する第2の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を生成するために、前記第2の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分および前記少なくとも2つの電極の第2の初期電気応答を検出すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の電気パルスが印加される前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分は、前記液体含有サンプルの第1の部分を含み、
前記第1の初期電気応答が検出される前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分は、前記液体含有サンプルの前記第1の部分を含み、
前記第2の電気パルスが印加される前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分は、前記液体含有サンプルの第2の部分を含み、
前記第2の初期電気応答が検出される前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分は、前記液体含有サンプルの前記第2の部分を含む、請求項1
または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の電気パルスが印加される前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分は、前記第2の電気パルスが印加される前記液体含有サンプルの同じ少なくとも一部分を含む、請求項1
から請求項3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つの電極は、流体チャネルと電気的連通状態にあり、前記方法は、
前記第1の電気パルスを印加する前に前記流体チャネルに前記液体含有サンプルの前記第1の部分を供給すること、および、
前記第2の電気パルスを印加する前に前記流体チャネルに前記液体含有サンプルの前記第2の部分を供給することをさらに含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
以下の特徴(i)または(ii):(i)前記第1の電気パルスの状態の変化は電流増加または電圧増加を含むこと、または、(ii)前記第2の電気パルスの状態の変化は電流増加または電圧増加を含むこと、の少なくとも一方を含む、請求項1
から請求項5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
以下の特徴(i)または(ii):(i)前記第1の電気パルスの状態の変化は電流低下または電圧低下を含むこと、または、(ii)前記第2の電気パルスの状態の変化は電流低下または電圧低下を含むこと、の少なくとも一方を含む、請求項1
から請求項5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の初期電気応答信号は、所定の、またはユーザーにより決定された電圧または電流値の到達に対応する時間値を含む、請求項1
から請求項7のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1の初期電気応答信号は、前記第1の初期時間窓内で得られる複数の測定された電気応答値から導出される少なくとも1つの曲線当てはめパラメータを含む、請求項1
から請求項8のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の電気パルスおよび前記第2の電気パルスのそれぞれは、直流電気信号を含む、請求項1
から請求項9のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の電気パルスの状態の変化後に、少なくとも約5倍前記第1の初期時間窓より長く延長する第1の延長時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第1の延長電気応答信号を生成するために、前記第1の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記第1の部分および前記少なくとも2つの電極の第1の延長電気応答を検出することと、
前記第2の電気パルスの状態の変化後に、少なくとも約5倍前記第2の初期時間窓より長く延
長する第2の延長時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第2の延長電気応答信号を生成するため
に、前記第2の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記第2の部分および前記少なくとも2つの電極の第2の延長電気応答を検出することと、および、
前記第1の電気応答を導出するために前記少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を正規化するために、前記少なくとも1つの第1の延長電気応答信号を利用することと、および、前記第2の電気応答を導出するために前記少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を正規化するために、前記少なくとも1つの第2の延長電気応答信号を利用することと、をさらに含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の初期時間窓は、前記第1の電気パルスの状態の変化後の、約
20ナノ秒以内に延長し、前記第2の初期時間窓は、前記第2の電気パルスの状態の変化後の、約
20ナノ秒以内に延長する、請求項1
から請求項11のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の電気パルスの印加時刻と前記第2の電気パルスの印加時刻との間で前記少なくとも1つの病原体の成長を促す条件下でリザーバ内に前記液体含有サンプルを維持することをさらに含み、
前記流体チャネルに前記液体含有サンプルの前記第1の部分を供給することは、前記液体含有サンプルの前記第1の部分を、前記リザーバから前記流体チャネルに移送することを含み、
前記流体チャネルに前記液体含有サンプルの前記第2の部分を供給することは、前記液体含有サンプルの前記第2の部分を、前記リザーバから前記流体チャネルに移送することを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項14】
以下のステップ(A)または(B):(A)前記液体含有サンプルの前記第1の部分を前記流体チャネルから前記リザーバに戻すこと、または、(B)前記液体含有サンプルの前記第2の部分を前記流体チャネルから前記リザーバに戻すこと、の少なくとも一方をさらに含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記液体含有サンプルの前記第2の部分は、前記液体含有サンプルの前記第1の部分の少なくともサブセットを含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも2つの電極は、第1の対の電極および第2の対の電極を備え、
前記少なくとも2つの電極間で前記第1の電気パルスを印加することは、前記第1の対の電極間で前記第1の電気パルスを印加することを含み、
前記少なくとも2つの電極間で前記第2の電気パルスを印加することは、前記第
1の対の電極間で前記第2の電気パルスを印加することを含み、
前記第1の初期電気応答を検出することは、前記第2の対の電極の使用を含み、
前記第2の初期電気応答を検出することは、前記第2の対の電極の使用を含む、請求項1
から請求項15のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記液体含有サンプルの前記第2の部分は、前記液体含有サンプルの前記第1の部分が前記流体チャネルに供給された後で、約10分以上たって前記流体チャネルに供給される、請求項
5に記載の方法。
【請求項18】
前記液体含有サンプルの前記第2の部分は、前記液体含有サンプルの前記第1の部分が前記流体チャネルに供給された後で、約1時間以上たって前記流体チャネルに供給される、請求項
5に記載の方法。
【請求項19】
液体含有サンプル内の少なくとも1つの病原体の存在を検出するためのシステムであって、
前記液体含有サンプルを受け取るように構成される流体チャネルと、
前記流体チャネルと電気的連通状態にある少なくとも2つの電極と、
前記少なくとも2つの電極と動作可能に結合されたパルス発生器回路要
素と、
前記少なくとも2つの電極と動作可能に結合された信号検出回路要
素と、
前記信号検出回路要素に動作可能に結合され
た比較回路要素と、
パルス発生器回路要素、信号検出回路要素、および比較回路要素に動作可能に結合された制御回路要素と、を備え、
パルス発生器回路要素は前記少なくとも2つの電極と動作可能に結合され、前記パルス発生器回路要素に、前記少なくとも2つの電極が前記液体含有サンプルの少なくとも一部分と電気的連通状態にあるときに、前記少なくとも2つの電極にわたる第1の電気パルスを生成させ、前記少なくとも2つの電極が前記液体含有サンプルの少なくとも一部分と電気的連通状態にあるときに、前記少なくとも2つの電極にわたる第2の電気パルスを生成させるように、前記制御回路要素がプログラムされ、
信号検出回路要素は前記少なくとも2つの電極と動作可能に結合され、前記信号検出回路要素に、(i)前記第1の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分の第1の初期電気応答を検出して、前記第1の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の50%に到達するために必要とされる時間以内で延長する第1の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を生成させ、(ii)前記第2の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分の第2の初期電気応答を検出して、前記第2の電気パルスの状態の変化後に前記定常状態電気応答値の50%に到達するために必要とされる時間以内で延長する第2の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を生成させるように、前記制御回路要素がプログラムされ、
比較回路要素は前記信号検出回路要素に動作可能に結合され、前記比較回路要素に、前記少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を具現化するまたは前記少なくとも1つの第2の初期電気応答信号から導出される第2の電気応答を、前記少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を具現化するまたは前記少なくとも1つの第1の初期電気応答信号から導出される第1の電気応答と比較させるように、前記制御回路要素がプログラムされる、システム。
【請求項20】
前記信号検出回路要素は前記少なくとも2つの電極と動作可能に結合され、前記信号検出回路要素に、(i)前記第1の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分の第1の初期電気応答を検出して、前記第1の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の50~98%に到達するために必要とされる時間以内で延長する第1の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を生成させ、(ii)前記第2の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分の第2の初期電気応答を検出して、前記第2の電気パルスの状態の変化後に前記定常状態電気応答値の50~98%に到達するために必要とされる時間以内で延長する第2の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を生成させるように、前記制御回路要素がプログラムされる、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記第1の電気パルスが生成される前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分は前記液体含有サンプルの第1の部分を含み、
前記少なくとも1つの第1の初期電気応答信号が生成される前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分は前記液体含有サンプルの前記第1の部分を含み、
前記第2の電気パルスが生成される前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分は前記液体含有サンプルの第2の部分を含み、
前記少なくとも1つの第2の初期電気応答信号が生成される前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分は前記液体含有サンプルの前記第2の部分を含む、請求項
19に記載のシステム。
【請求項22】
前記液体含有サンプルを保持するように構成されるリザーバをさらに備え、前記流体チ
ャネルは、前記リザーバから前記液体含有サンプルの前記第1の部分および前記液体含有サンプルの前記第2の部分を受け取るように構成される、請求項
21に記載のシステム。
【請求項23】
前記液体含有サンプルの前記第1の部分および前記第2の部分を、前記リザーバから前記流体チャネルに移送するように構成される流体移送デバイスをさらに備える、請求項
22に記載のシステム。
【請求項24】
前記少なくとも1つの第1の初期電気応答信号は、所定のまたはユーザーにより決定された電圧または電流値の到達に対応する時間値を含む、請求項
19から請求項23のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記少なくとも1つの第1の初期電気応答信号は、前記第1の初期時間窓内で得られる複数の測定された電気応答値から導出される少なくとも1つの曲線当てはめパラメータを含む、請求項
19から請求項24のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
前記少なくとも2つの電極は、第1の対の電極および第2の対の電極を備え、
前記パルス発生器回路要素は、前記第1の対の電極と動作可能に結合さ
れ、前記パルス発生器回路要素に、前記第1の対の電極が前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分と電気的連通状態にあるときに、前記第1の対の電極にわたる前記第1の電気パルスを生成
させるように、前記制御回路要素がプログラムされ、
前記信号検出回路要素は、前記第2の対の電極と動作可能に結合され
、前記信号検出回路要素に、(i)前記第1の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分の第1の初期電気応答を検出して、前記第1の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の50%に到達するために必要とされる時間以内で延長する第1の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を生成させ、(ii)前記第2の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記少なくとも一部分の第2の初期電気応答を検出して、前記第2の電気パルスの状態の変化後に前記定常状態電気応答値の50%に到達するために必要とされる時間以内で延長する第2の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を生成させるように、前記制御回路要素がプログラムされる、請求項
19から請求項25のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項27】
液体含有サンプル内の少なくとも1つの病原体の存在を検出するための方法であって、
システムを提供することであって、
前記システムは、
前記液体含有サンプルを受け取るように構成される流体チャネルと、
前記流体チャネルと電気的連通状態にある少なくとも2つの電極と、
前記少なくとも2つの電極に動作可能に結合されたパルス発生器回路要素と、
前記少なくとも2つの電極に動作可能に結合された信号検出回路要素と、
前記信号検出回路要素に動作可能に結合された比較回路要素と、
前記パルス発生器回路要素、前記信号検出回路要素、および前記比較回路要素に動作可能に結合された制御回路要素と、を備え、
前記パルス発生器回路要素に、前記少なくとも2つの電極が前記液体含有サンプルの少なくとも一部分と電気的連通状態にあるときに、前記少なくとも2つの電極にわたる1つ以上の電気パルスを生成させるように、前記制御回路要素がプログラムされ、
前記信号検出回路要素に1つ以上の電気応答を検出させるように、前記制御回路要素がプログラムされ、
前記比較回路要素に1つの電気応答を他の電気応答と比較させるように、前記制御回路要素がプログラムされる、システムを提供することと、
前記液体含有サンプル
の少なくとも第1の部分を
、流体チャネルと電気的連通状態にある
前記少なくとも2つの電極に接触させるために、前記液体含有サンプルの
前記少なくとも第1の部分を
前記流体チャネルに供給することと、
前記少なくとも2つの電極間に第1の電気パルスを印加することと、
前記第1の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の
50%に到達するために必要とされる時間以内で延長する第1の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を生成するために、前記第1の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記少なくと
も第1の部分の第1の初期電気応答を検出することと、
前記液体含有サンプル
の少なくとも第2の部分を、前記少なくとも2つの電極に接触させるために、前記液体含有サンプルの
前記少なくとも第2の部分を前記流体チャネルに供給することと、
前記少なくとも2つの電極間に第2の電気パルスを印加することと、
前記第2の電気パルスの状態の変化後に前記定常状態電気応答値の
50%に到達するために必要とされる時間以内で延長する第2の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を生成するために、前記第2の電気パルスの印加による、前記液体含有サンプルの前記少なくとも第2の部分の第2の初期電気応答を検出することと、および、
前記少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を具現化する、または前記少なくとも1つの第2の初期電気応答信号から導出される第2の電気応答を、前記少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を具現化する、または前記少なくとも1つの第1の初期電気応答信号から導出される第1の電気応答と比較することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本開示は、電気信号を利用して、液体媒体(例えば、懸濁液)内の微生物の存在および/または濃度を検出するためのシステムおよび方法に関する。
【0002】
[背景技術]
細菌、ウィルス、真菌、イースト、およびかびなどの微生物または病原体は、種々の媒体において容易に増殖し得る。生存(viable)微生物の存在を迅速に検出することに価値があり得るコンテキストは、哺乳類流体サンプルにおける感染症診断および処置、ならびに、食物、飲料(水を含む)、および医薬品などの消耗アイテムの品質試験を含む。
【0003】
血流感染(セェプタシィーミア(septicemia))および血流感染が産生する全身性炎症(敗血症(sepsis))は、深刻な健康上の懸念を示す。敗血症は、細菌感染によって最も頻繁に引き起こされるが、同様に、ウィルス、真菌、またはイースト感染に起因する場合がある。感染は、細菌または他の感染性因子が、擦過傷または創傷部位を介してなどで身体に侵入する場所ではどこであっても、あるいは、虫垂炎、肺炎、髄膜炎、または尿管感染などのより深刻な医療問題の副産物として始まり得る。感染症は、身体の異なる部分で始まり得るため、異なる症状を有し得る。
【0004】
感染の主要な1つ(または複数)の原因の迅速な識別および処置は、敗血症のコントロールにとって非常に重要である。敗血症を示唆する場合がある症状を示す患者に直面すると、医療関係者は、(グラム陽性種とグラム陰性種の両方などの、多くのタイプの細菌を殺すまたはその増殖を低減するために)広域抗生物質を投与し、血流感染の存在を確認すると共に、原因である病原体を同定するプロセスを開始することができる。感染の存在は、1つまたは複数の体液(例えば、血液、しかしおそらくは、尿、唾液などを同様に含む)を培養し分析することによって確認することができ、培養し分析することは、伝統的に、陽性結果を得るために12~72時間を、また、陰性と考えられる結果について最大120時間を必要とした。とある病原性感染(結核など)の場合、陽性結果を得る時間はさらに長い可能性がある。一般的な処置レジメンは、培養結果および抗菌感受性がわかる前に、多くのタイプの細菌(例えば、グラム陽性種およびグラム陰性種の両方)の増殖を低減するために、広域抗生物質の初期投与を伴う。陽性培養の場合、細菌は、標的化抗生物質が投与される前に、種々の方法(例えば、初期培養ステップ未満であるが更なる時間を必要とする、生化学試験またはPCRベースDNA分析)によって同定することができる。標的抗生物質治療が開始される前の毎時間の遅延で、敗血症に苦しむ患者についての死のリスクが、著しく(例えば、約7%)増加する場合がある。したがって、血流感染の存在を陽性に判定するために必要とされる時間を低減することは、敗血症に起因する死亡を著しく低減することが期待される。
【0005】
液体懸濁液に対する交流(AC:alternating current)電気信号の印加は、Sengupta等に対する米国特許第8,635,028号(「Sengupta特許」)において開示されるように、微生物の存在を検出するための基礎を提供する。基礎にある原理は、AC電界の存在下で、生存する(完全な)細菌細胞膜が、分極し、生存微生物細胞が電気キャパシターのように振舞うように、膜にわたる電荷の蓄積につながることである。増殖による細菌の数の増加は、微生物によって貯蔵される電荷の総量の増加によって、細菌含有懸濁液のバルクキャパシタンスの対応する増加をもたらす。しかしながら、電荷の総量のこの増加は、直接測定されることができず、なぜならば、電極
と懸濁液との間の各個体-液体界面(すなわち、「2重層(double layer)」を形成する)におけるキャパシタンスが、細菌含有懸濁液のバルクキャパシタンスより大幅に大きい(例えば、約1000倍大きい)からである。各電極上で形成される2重層は、(例えば、化学的相互作用によって)電極表面に引き寄せられるイオンからなる表面電荷の第1の層、および、(例えば、クーロン力によって)表面電荷に引き寄せられ、第1の層を電気的に覆うために役立つイオンの第2の層を含む。第2の層は、電気的引力および熱運動の影響下で流体内を移動する自由イオンで作られ、「拡散層(diffuse
layer)」と呼ぶことができる。
【0006】
図1Aは、微生物22を含有するバルク液体懸濁液20に接触するように配置された第1および第2の電極12、14を含むチャネル11を利用するインピーダンス検出システム10の概略図である。電極12、14は、交流(AC)信号を生成するように構成される可変電力(例えば、電流)源16と電圧計18との間で結合される。電極12、14の間に電位を印加すると、2重層12A、14Aが、各電極12、14において形成される。
図1Bは、
図1Aの電極12、14およびバルク液体懸濁液20についての等価回路図を提供する。
図1Cは、
図1Aのインピーダンス検出システム10を利用してインピーダンスを決定するための方程式を提供する。他の電極構成が、他のチャネルまたはウェル構成と同様に可能である。
【0007】
その値が2重層のキャパシタンスによって覆われることを考慮してバルク液体懸濁液のキャパシタンスを決定する困難さに対処するため、Sengupta特許は、細菌含有液体懸濁液によって湿潤された2つの電極間の電気インピーダンスを、1kHz~100MHzの複数の(>500の)周波数で測定するAgilent4294Aインピーダンスアナライザー装置の使用を開示する。装置は、500mV(ピーク・ピーク間)の懸濁液を通って流れる正弦波AC電圧の印加によって、懸濁液を通って流れるAC電流の大きさおよび位相を測定し、測定値からインピーダンス(すなわち、レジスタンスおよびリアクタンス)を計算した。電流は印加された正弦波電圧と同位相ではないため、インピーダンス(DCレジスタンスのAC類似物として考えられ得る)は、レジスタンス(R)と呼ばれる同位相成分およびリアクタンス(X)と呼ばれる位相外れ成分の両方を有する。器具は、1kHz~100MHzの周波数範囲にわたって、各サンプルについてRおよびX値を測定し、複数の周波数のそれぞれについてRおよびXの値を含むインピーダンスデータセットを生成した。複数の所定の周波数のインピーダンスを示す値を測定すること(すなわち、周波数ドメインインピーダンス検知)によって、懸濁液の内部バルクに貯蔵される容量電荷の量を反映する理論的回路モデルにおけるパラメータ値が決定され、-そして、懸濁液のバルクキャパシタンスの変化を反映するために、所定の時間間隔後にこのステップを反復することによって、懸濁液内の生存細菌の存在または非存在が判定され得る。
【0008】
Sengupta特許によって説明されるシステムおよび方法の1つの欠点は、かなりの量の手作業による労力(すなわち、複数の周波数でインピーダンス測定を行い、結果をオフラインで分析しながら、分析のために毎時間、培養サンプルから複数のアリコートを取り出すこと)を伴うことである。Sengupta特許によって説明されるシステムおよび方法のさらなる制限は、分析速度、コスト、および複雑さに関する。サンプルハンドリングステップが自動化されたとしても、広範囲の周波数にわたって(1kHz~100MHzの範囲内の数百の周波数において)掃引しながら、データを収集することは、1サンプルについて少なくとも約2分を必要とすると思われる。さらに、広範囲の周波数にわたってAC信号を印加し、結果として生じる信号を分析するために必要とされる(アナログ)器具類は、複雑かつ比較的費用がかかる場合がある。
【0009】
液体媒体における生存微生物の迅速な検出のための改善されたシステムおよび方法が求められ続けている。
[発明の概要]
液体媒体懸濁液内の生存微生物(例えば、病原体)を迅速に検出するためのシステムおよび方法は、考えられる懸濁液(例えば、微生物を含有すると考えられる液体媒体)と電気的連通(例えば、導電性接触)状態にある少なくとも2つの電極を利用する。短い初期時間窓内で(例えば、電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の95%に到達するために必要とされる時間以内で、または、本明細書で開示される別の時間窓内で)の電気パルスに対する電気応答は、電極間の懸濁液のバルク電気応答が、電極の表面における(または、懸濁液と非接触関係で配置された電極の場合、電極と懸濁液との間の壁の表面における)2重層形成によって電気応答信号が支配される前に、決定されることを可能にする。パルス印加およびパルスの状態の変化に対する電気応答の検出は、所定の期間にわたって反復することができ、そのような応答の変化は、バルク懸濁液内の微生物増殖を検出するのに有用である。例えば、第1および第2の電気パルスが、電極にわたって第1および第2の時刻(例えば、初期および後続の時刻)に印加されると、第1および第2の初期電気応答信号が生成され、各信号は、短い初期時間窓内で(例えば、対応する電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の95%に到達するために必要とされる時間以内で、または、本明細書で開示される別の時間窓内で)において電気応答を示す。電子的に測定することができる第1の時刻と第2の時刻との間の電気応答の変化は、液体媒体内の1つまたは複数の病原体の増殖を立証することができる。
【0010】
或る実施形態において、さらなる測定は、より延長した期間にわたって行われ、バルク懸濁液(液体媒体ならびに微生物を含む)の組成全体の電気応答を検出するために使用することができ、この延長電気応答は、上記で述べた初期電気応答信号を正規化するために使用することができる。そのような正規化は、異なるバルク懸濁液の初期液体媒体特性の変動、および/または、同じバルク懸濁液の時間に関する液体媒体特性の変動に対処するために有用となりうる。そのような変動は、潜在的に、pH、塩濃度、化学的組成、ペプチド/タンパク質濃度、赤血球および/または白血球の存在、および/または他のパラメータに起因する。これらの他の構成要素の存在および異なる特性は、電気応答に影響を及ぼす場合があり、それらの全体の影響をサンプル特有の方式で決定することが望ましい場合がある。さらに、システム構成の差は、電気応答に対する十分な影響を及ぼす場合がある。そのようなシステム構成の差は、電極サイズ、電極位置/間隔、電極表面品質、全体のチャネルまたはチャンバー寸法、および/または、所定の期間にわたるシステムファウリング(システムの或るエリアに対する細胞および/または他の分析物の結合などのようなもの)を含むが、それに限定されない。なお、さらに、入力信号(例えば、電圧および/または電流値、パルス形状など)は、電気応答に影響を及ぼす場合がある。
【0011】
一つの態様において、液体含有サンプル内の少なくとも1つの病原体の存在を検出するための方法は、液体含有サンプルの少なくとも一部分と電気的連通状態にある少なくとも2つの電極間に第1の電気パルスを印加すること;第1の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の95%(または、本明細書で開示する別の閾値パーセンテージ)に到達するために必要とされる時間以内で延長する第1の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を生成するために、第1の電気パルスの印加による、液体含有サンプルの少なくとも一部分および少なくとも2つの電極の第1の初期電気応答を検出すること;液体含有サンプルの少なくとも一部分と電気的連通状態にある少なくとも2つの電極間に第2の電気パルスを印加すること;第2の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の95%(または、本明細書で開示する別の閾値パーセンテージ)に到達するために必要とされる時間以内で延長する第2の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を生成するために、第2の電気パルスの印加による、液体含有サンプルの少なくとも一部分および少なくとも2つの電極の第2の初期電気応答を検出すること:および、少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を具現化する、または少なくとも1つの第2の初期電気応答信号から導出される第2の電気応答を、少
なくとも1つの第1の初期電気応答信号を具現化する、または少なくとも1つの第1の初期電気応答信号から導出される第1の電気応答と比較することを含む。或る実施形態において、第1の電気応答は少なくとも1つの第1の初期電気応答信号において具現化する、または少なくとも1つの第1の初期電気応答信号からのみ導出することができ、第2の電気応答は少なくとも1つの第2の初期電気応答信号において具現化する、または少なくとも1つの第2の初期電気応答信号からのみ導出することができる。他の実施形態において、さらなる信号を、第1および第2の電気応答の導出において使用することができる。
【0012】
或る実施形態において、第1の電気パルスが印加される液体含有サンプルの少なくとも一部分は、液体含有サンプルの第1の部分を含み、第1の初期電気応答が検出される液体含有サンプルの少なくとも一部分は、液体含有サンプルの第1の部分を含み、第2の電気パルスが印加される液体含有サンプルの少なくとも一部分は、液体含有サンプルの第2の部分を含み、第2の初期電気応答が検出される液体含有サンプルの少なくとも一部分は、液体含有サンプルの第2の部分を含む。
【0013】
或る実施形態において、第1の電気パルスが印加される液体含有サンプルの少なくとも一部分は、第2の電気パルスが印加される液体含有サンプルの同じ少なくとも一部分を含む。
【0014】
或る実施形態において、少なくとも2つの電極は、流体チャネルと電気的連通状態にあり、その方法は、第1の電気パルスを印加する前に流体チャネルに液体含有サンプルの第1の部分を供給すること、および、第2の電気パルスを印加する前に流体チャネルに液体含有サンプルの第2の部分を供給することをさらに含む。
【0015】
或る実施形態において、方法は、以下の特徴(i)または(ii):(i)第1の電気パルスの状態の変化(例えば、パルスの印加に対応する)が電流増加または電圧増加を含むこと、または、(ii)第2の電気パルスの状態の変化(例えば、パルスの印加に対応する)が電流増加または電圧増加を含むこと、の少なくとも一方を含む。
【0016】
或る実施形態において、方法は、以下の特徴(i)または(ii):(i)第1の電気パルスの状態の変化(例えば、パルスの終了に対応する)が電流低下または電圧低下を含むこと、または、(ii)第2の電気パルスの状態の変化(例えば、パルスの終了に対応する)が電流低下または電圧低下を含むこと、の少なくとも一方を含む。
【0017】
或る実施形態において、少なくとも1つの第1の初期電気応答信号は、所定の、またはユーザーにより決定された電圧または電流値の到達に対応する時間値を含む。或る実施形態において、所定の、またはユーザーにより決定された電圧または電流値は、定常状態電気応答値の規定されたパーセンテージを含む。
【0018】
或る実施形態において、少なくとも1つの第1の初期電気応答信号は、第1の初期時間窓内で得られる複数の測定された電気応答値から導出される少なくとも1つの曲線当てはめパラメータを含む。
【0019】
或る実施形態において、第1の電気パルスおよび第2の電気パルスのそれぞれは、直流電気信号を含む。この直流電気信号は、時間に関してモニターされてもよい。
或る実施形態において、方法は、第1の電気パルスの状態の変化後に、少なくとも約5倍だけ第1の初期時間窓より長く延長する第1の延長時間窓(しかし、或る実施形態において、約20マイクロ秒以内である)内で電気応答を示す少なくとも1つの第1の延長電気応答信号を生成するために、第1の電気パルスの印加による、液体含有サンプルの第1の部分および少なくとも2つの電極の第1の延長電気応答を検出すること;第2の電気パ
ルスの状態の変化後に、少なくとも約5倍だけ第2の初期時間窓より長く延長する第2の延長時間窓(しかし、或る実施形態において、約20マイクロ秒以内である)内で電気応答を示す少なくとも1つの第2の延長電気応答信号を生成するために、第2の電気パルスの印加による、液体含有サンプルの第2の部分および少なくとも2つの電極の第2の延長電気応答を検出すること;および、第1の電気応答を導出するために少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を正規化するために、少なくとも1つの第1の延長電気応答信号を利用すること;および、第2の電気応答を導出するために少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を正規化するために、少なくとも1つの第2の延長電気応答信号を利用することをさらに含む。そのため、或る実施形態において、第1の電気応答は、少なくとも1つの第1の延長電気応答信号と組み合わせて少なくとも1つの第1の初期電気応答信号から導出することができ、第2の電気応答は、少なくとも1つの第2の延長電気応答信号と組み合わせて少なくとも1つの第2の初期電気応答信号から導出することができる。或る実施形態において、第1および第2の延長時間窓は、定常状態電気応答値の99.8%に到達するために必要とされる時間以内で延長する。第1および第2の延長時間窓を規定するための20マイクロ秒より長いまたは短い他の時間枠が同様に利用され得る。
【0020】
或る実施形態において、第1の初期時間窓は、第1の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の90%に到達するために必要とされる時間以内で延長し、第2の初期時間窓は、第2の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の90%に到達するために必要とされる時間以内で延長する。
【0021】
或る実施形態において、第1の初期時間窓は、第1の電気パルスの状態の変化後の、約100ナノ秒以内に延長し、第2の初期時間窓は、第2の電気パルスの状態の変化後の、約100ナノ秒以内に延長する。
【0022】
或る実施形態において、方法は、第1の電気パルスの印加時刻と第2の電気パルスの印加時刻との間で少なくとも1つの病原体の成長を促す条件下でリザーバ内に液体含有サンプルを維持することをさらに含み、流体チャネルに液体含有サンプルの第1の部分を供給することは、液体含有サンプルの第1の部分を、リザーバから流体チャネルに移送することを含み、流体チャネルに液体含有サンプルの第2の部分を供給することは、液体含有サンプルの第2の部分を、リザーバから流体チャネルに移送することを含む。
【0023】
或る実施形態において、方法は、以下のステップ(A)または(B):(A)液体含有サンプルの第1の部分を、流体チャネルからリザーバに戻すこと、または、(B)液体含有サンプルの第2の部分を、流体チャネルからリザーバに戻すこと、の少なくとも一方をさらに含む。
【0024】
或る実施形態において、液体含有サンプルの第2の部分は、液体含有サンプルの第1の部分の少なくともサブセットを含む。
或る実施形態において、少なくとも2つの電極は、第1の対の電極および第2の対の電極を備え、少なくとも2つの電極間で第1の電気パルスを印加することは、第1の対の電極間で第1の電気パルスを印加することを含み、少なくとも2つの電極間で第2の電気パルスを印加することは、第1の対の電極間で第2の電気パルスを印加することを含み、第1の初期電気応答を検出することは、第2の対の電極の使用を含み、第2の初期電気応答を検出することは、第2の対の電極の使用を含む。
【0025】
或る実施形態において、流体チャネルは、約1mmより小さい少なくとも1つの寸法を含む。
或る実施形態において、液体含有サンプルの第2の部分は、液体含有サンプルの第1の部分が流体チャネルに供給された後で、約10分以上たって流体チャネルに供給される。
【0026】
或る実施形態において、液体含有サンプルの第2の部分は、液体含有サンプルの第1の部分が流体チャネルに供給された後で、約1時間以上たって流体チャネルに供給される。
別の態様において、液体含有サンプル内の少なくとも1つの病原体の存在を検出するためのシステムは、液体含有サンプルを受け取るように構成される流体チャネルと、流体チャネルと電気的連通状態にある少なくとも2つの電極と、少なくとも2つの電極と動作可能に結合されたパルス発生器回路要素であって、それにより、少なくとも2つの電極が液体含有サンプルの少なくとも一部分と電気的連通状態にあるときに、少なくとも2つの電極にわたる第1の電気パルスを生成し、少なくとも2つの電極が液体含有サンプルの少なくとも一部分と電気的連通状態にあるときに、少なくとも2つの電極にわたる第2の電気パルスを生成する、パルス発生器回路要素と、少なくとも2つの電極と動作可能に結合された信号検出回路要素であって、信号検出回路要素は、(i)第1の電気パルスの印加による、液体含有サンプルの少なくとも一部分の第1の初期電気応答を検出して、第1の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の95%(または、本明細書で開示する別の閾値パーセンテージ)に到達するために必要とされる時間以内で延長する第1の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を生成し、(ii)第2の電気パルスの印加による、液体含有サンプルの少なくとも一部分の第2の初期電気応答を検出して、第2の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の95%(または、本明細書で開示する別の閾値パーセンテージ)に到達するために必要とされる時間以内で延長する第2の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を生成するように構成される信号検出回路要素と、信号検出回路要素に動作可能に結合され、少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を具現化する、または少なくとも1つの第2の初期電気応答信号から導出される第2の電気応答を、少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を具現化する、または少なくとも1つの第1の初期電気応答信号から導出される第1の電気応答と比較するように構成される比較回路要素と、を備える。
【0027】
或る実施形態において、第1の電気パルスが生成される液体含有サンプルの少なくとも一部分は液体含有サンプルの第1の部分を含み、少なくとも1つの第1の初期電気応答信号が生成される液体含有サンプルの少なくとも一部分は液体含有サンプルの第1の部分を含み、第2の電気パルスが生成される液体含有サンプルの少なくとも一部分は液体含有サンプルの第2の部分を含み、少なくとも1つの第2の初期電気応答信号が生成される液体含有サンプルの少なくとも一部分は液体含有サンプルの第2の部分を含む。
【0028】
或る実施形態において、システムは、液体含有サンプルを保持するように構成されるリザーバをさらに備え、流体チャネルは、リザーバから液体含有サンプルの第1の部分および液体含有サンプルの第2の部分を受け取るように構成される。
【0029】
或る実施形態において、システムは、液体含有サンプルの第1の部分および第2の部分を、リザーバから流体チャネルに移送するように構成される流体移送デバイスをさらに備える。
【0030】
或る実施形態において、少なくとも1つの第1の初期電気応答信号は、所定の、またはユーザーにより決定された電圧または電流値の到達に対応する時間値を含む。
或る実施形態において、少なくとも1つの第1の初期電気応答信号は、第1の初期時間窓内で得られる複数の測定された電気応答値から導出される少なくとも1つの曲線当てはめパラメータを含む。
【0031】
或る実施形態において、少なくとも2つの電極は、第1の対の電極および第2の対の電極を備え、パルス発生器回路要素は、第1の対の電極と動作可能に結合されて、第1の対の電極が液体含有サンプルの少なくとも一部分と電気的連通状態にあるときに、第1の対
の電極にわたる第1の電気パルスを生成し、信号検出回路要素は、第2の対の電極と動作可能に結合される。
【0032】
或る実施形態において、流体チャネルは約1mmより小さい少なくとも1つの寸法を含む。
別の態様において、液体含有サンプル内の少なくとも1つの病原体の存在を検出するための方法は、液体含有サンプルの少なくとも第1の部分を、流体チャネルと電気的連通状態にある少なくとも2つの電極に接触させるために、液体含有サンプルの少なくとも第1の部分を流体チャネルに供給すること;少なくとも2つの電極間に第1の電気パルスを印加すること;第1の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の95%(または、本明細書で開示する別の閾値パーセンテージ)に到達するために必要とされる時間以内で延長する第1の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を生成するために、第1の電気パルスの印加による、液体含有サンプルの少なくとも第1の部分の第1の初期電気応答を検出すること;液体含有サンプルの少なくとも第2の部分を、少なくとも2つの電極に接触させるために、液体含有サンプルの少なくとも第2の部分を流体チャネルに供給すること;少なくとも2つの電極間に第2の電気パルスを印加すること;第2の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の95%(または、本明細書で開示する別の閾値パーセンテージ)に到達するために必要とされる時間以内で延長する第2の初期時間窓内で電気応答を示す少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を生成するために、第2の電気パルスの印加による、液体含有サンプルの少なくとも第2の部分の第2の初期電気応答を検出すること;ならびに、少なくとも1つの第2の初期電気応答信号を具現化する、または少なくとも1つの第2の初期電気応答信号から導出される第2の電気応答を、少なくとも1つの第1の初期電気応答信号を具現化するまたは少なくとも1つの第1の初期電気応答信号から導出される第1の電気応答と比較することを含む。
【0033】
別の態様において、本明細書で開示する任意の態様、実施形態、および/または特徴は、本明細書で反対に指示されない限り、さらなる利点のために組み合わすことができる。
当業者は、添付図面の図に関連する好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読んだ後に、本開示の範囲を理解し、そのさらなる態様を認識するであろう。
【0034】
本明細書に組み込まれる、またはその一部を形成する添付図面の図は、本開示の幾つかの態様を示し、説明と共に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】可変電力源および微生物を含有するバルク液体懸濁液に接触するために配置された電極を利用するインピーダンス検出システムの概略図である。
【
図1B】
図1Aの電極およびバルク液体懸濁液についての等価回路図である。
【
図1C】
図1Aのインピーダンス検出システムを利用してインピーダンスを決定するための方程式を示す図を示す。
【
図2】一実施形態による、(i)1V DCパルスについての理想的な立ち上がりエッジ、および、(ii)タイムドメインインピーダンス検出(TDID:time domain impedance detection)システムを使用して得られた5つの1V DCパルスの平均化した立ち上がりエッジ出力信号についての、電圧対時間の重ね合わせプロットを示す。
【
図3A】10μsの時間枠にわたる、(i)未処理出力電圧(点線)および(ii)曲線当てはめされた出力電圧(実線)を含む、一実施形態によるTDIDシステムによる1V DCパルス出力の立ち上がりエッジについての、電圧対時間の重ね合わせプロットを示す。
【
図3B】50μsの時間枠にわたる、(i)未処理出力電圧(点線)および(ii)曲線当てはめされた出力電圧(実線)を含む、
図3Aと同じ1V DCパルス出力の立ち上がりエッジについての、電圧対時間の重ね合わせプロットを示す。
【
図4】一実施形態によるTDIDシステムを使用して得られた5つの1V DCパルスの立ち下がりエッジについての、平均電圧対時間のプロットである。
【
図5A】数秒にわたるリンギングを示す1V DCパルスの立ち上がりエッジについての回路基板によって生成される電圧対時間のプロットである。
【
図5B】トレーリングエッジにリンギングがない状態の、1V DCパルスのトレーリングエッジについての回路基板によって生成される電圧対時間のプロットである。
【
図6】一実施形態による、初期「ベース(base)」電圧(-0.5V)に対応する第1の(下側)水平矢印、および、出力電圧の66%の上昇に対応する第2の(上側)水平矢印を含むように修正された、
図3B(曲線当てはめなし)と同じ1V DCパルス出力の立ち上がりエッジについての電圧対時間のプロットであり、両方の矢印について、立ち上がり時間を決定するために、対応する時間差を計算することができる。
【
図7】本開示の一実施形態によるタイムドメインインピーダンス検出(TDID)システムの構成要素のブロック図である。
【
図8A】一実施形態による流体デバイスの概略的な斜視図であり、流体デバイスは、流体デバイスの側壁を通って突出する伸長部を有する流体チャネルを含み、また、流体チャネルに垂直に配置された2つの円柱電極であって、各電極の中心線が流体チャネルの中心線に交差する、2つの円柱電極を含む。
【
図8B】一実施形態による流体デバイスの概略的な斜視図であり、流体デバイスは、流体デバイスの上部壁を通って突出する伸長部を有する、流体チャネルを含み、また、流体チャネルに垂直に配置された2つの円柱電極であって、各電極が流体チャネルの中心線に対してオフセットする、2つの円柱電極を含む。
【
図8C】一実施形態による流体デバイスの概略的な斜視図であり、流体デバイスは、流体チャネルであって、流体デバイスの上部壁を通って突出する伸長部を有する、流体チャネルを含み、また、流体チャネルの中央部分に沿って配置された2つのプレート型電極であって、一方の電極が流体チャネルの上に、また、別の電極が流体チャネルの下に、任意に、流体チャネルと非接触関係で配置される、2つのプレート型電極を含む。
【
図8D】一実施形態による流体デバイスの概略的な斜視図であり、流体デバイスは、流体デバイスの上部壁を通って突出する伸長部を有する、流体チャネルを含み、流体チャネルの上側左境界に沿って配置された第1の電極を含み、流体チャネルの下側右境界に沿って配置された第2の電極を含む。
【
図8E】一実施形態による流体デバイスの概略的な斜視図であり、流体デバイスは、流体デバイスの上部壁を通って突出する伸長部を有する、流体チャネルを含み、また、流体チャネルに垂直に配置された2つの対の円柱電極であって、各電極が流体チャネルの中心線に対してオフセットする、2つの対の円柱電極を含む。
【
図9A】一実施形態による、正方形に似た断面形状を有する流体チャネルを含む流体デバイスの一部分の概略的な斜視図である。
【
図9B】一実施形態による、丸い断面形状を有する流体チャネルを含む流体デバイスの一部分の概略的な斜視図である。
【
図9C】一実施形態による、狭い長方形断面形状を有する流体チャネルを含む流体デバイスの一部分の概略的な斜視図である。
【
図10】一実施形態による、
図8Bによる流体デバイスおよびTDIDシステムの電気接点に接続された電極の概略的な斜視図である。
【
図11A】一実施形態による、
図8Aによる流体デバイスを含むTDIDシステムの電気接続および流体接続を示す概略的図である。
【
図11B】一実施形態による、
図11Aで示す信号アナライザーのサブコンポーネントを示す概略図である。
【
図12A】組み立て体の側立面図であり、組み立て体は、リザーバ、測定チャネルと電気的連通状態にある電極を含むサンプル分析セグメント、可撓性チューブの湾曲セクションを含むポンプインターフェースセグメント、および、リザーバと、サンプル分析セグメントと、ポンプインターフェースセグメントとの間でのサンプルの循環を可能にする流体回路を含む。
【
図12B】
図12Aの組み立て体のポンプインターフェースセグメントと協働するのに適するロータリースクイーズポンプの一部分の側面断面図である。
【
図13】トリプチックソイブイヨン培地(TSB:Tryptic Soy Broth)(RPI Corp.)内の2CFU/mlの大腸菌(E.coli)(ATCC 25922)の初期細菌負荷を用いた、本明細書で開示するTDIDシステムを利用した8時間の実験についての、パラメータCのパーセンテージ変化対時間(hrs)のプロットである。
【
図14】TSB内の70CFU/mlのクレブシエラ・ニューモニエ(K.pneumoniae)(ATCC 700603)の初期細菌負荷を用いた、本明細書で開示するTDIDシステムを利用した8時間の実験についての、パラメータCのパーセンテージ対時間(hrs)のプロットである。
【
図15】TSB内の40CFU/mlの大腸菌(ATCC 25922)の初期負荷(サンプル)およびTSB単独(対照)を用いた、本明細書で開示するTDIDシステムを利用した9時間の実験についての、パラメータC対時間(hrs)のプロットである。
【
図16】TSB内の70CFU/mlのクレブシエラ・ニューモニエ(ATCC 700603)の初期負荷を用いた、本明細書で開示するTDIDシステムを利用した8時間の実験についての、時定数(μs)対時間(hrs)のプロットである。
【
図17】TSB内の約10000CFU/mlの大腸菌(ATCC 25922)の初期負荷を用いた、本明細書で開示するTDIDシステムを利用した6時間の実験についての、パラメータC対時間(hrs)のプロットである。
【
図18】TSB内のクレブシエラ・ニューモニエ(ATCC 700603)を用いた、本明細書で開示するTDIDシステムを利用した段階希釈実験についての、パラメータB対細菌濃度(CFU/ml)のプロットである。
【
図19】TSB内のクレブシエラ・ニューモニエ(ATCC 700603)を用いた、本明細書で開示するTDIDシステムを利用した段階希釈実験についての、パラメータD対細菌濃度(CFU/ml)のプロットである。
【
図20】TSB内のクレブシエラ・ニューモニエ(ATCC 700603)を用いた、本明細書で開示するTDIDシステムを利用した段階希釈実験についての、パラメータBおよびパラメータDの積対細菌濃度(CFU/ml)のプロットである。
【
図21】TSB内のクレブシエラ・ニューモニエ(ATCC 700603)を用いた、本明細書で開示するTDIDシステムを利用した段階希釈実験についての、パラメータBとパラメータDとの商対細菌濃度(CFU/ml)のプロットである。
【
図22】一実施形態によるTDIDシステムを利用することによって得られる、TSB内の2つの異なる濃度(10
4CFU/mlおよび10
8CFU/ml)の大腸菌の場合の、20の1V DCパルスの印加に応答する、平均化した立ち上がりエッジ出力(応答)信号についての、電圧(V)対時間(μs)のプロットである。
【
図23】一実施形態によるTDIDシステムを利用することによって得られる、2つの電極間の異なる距離(0.5cm、1cm、2cm、および5cm)を有する4つの測定チャネル内のTSBの場合の、20の1V DCパルスの印加に応答する、平均化した立ち上がりエッジ出力(応答)信号についての、電圧(V)対時間(μs)のプロットである。
【
図24】一実施形態によるTDIDシステムを利用することによって得られる、3つの異なる印加電圧(500mV、1V、および2V)を有する20のDCパルスの印加に応答する、平均化した立ち上がりエッジ出力(応答)信号についての、電圧(V)対時間(μs)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下で述べる実施形態は、当業者が実施形態を実施することを可能にするための、必要な情報を説明し、実施形態を実施する最良モードを示す。添付図面の図を考慮して以下の説明を読むと、当業者は、本開示の概念を理解することになり、また、本明細書で特に述べられないこれらの概念の適用形態を認識するであろう。これらの概念および適用形態が本開示および添付特許請求の範囲内に入ることが理解されるべきである。
【0037】
第1、第2などの用語を、種々の要素を述べるために本明細書で使用することができるが、これらの要素がこれらの用語によって限定されるべきでないことが理解されるべきである。これらの用語は、1つの要素を別の要素から区別するために使用されるだけである。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素は第2の要素と呼ばれる可能性があり、同様に、第2の要素は、第2の要素と呼ばれる可能性がある。本明細書で使用するとき、用語「および/または(and/or)」は、関連して挙げられるアイテムの1つまたは複数の任意のものまたは全ての組み合わせを含む。
【0038】
或る要素が別の要素に「接続される(connected)」または「結合される(coupled)」として参照されるとき、その要素が、他の要素に直接接続され得るまたは結合され得る、あるいは、介在する要素が存在することができることが同様に理解されるべきである。対照的に、或る要素が、別の要素に「直接接続される(directly
connected)」または「直接結合される(directly coupled)」として参照されるとき、介在する要素は存在しない。
【0039】
用語「上側(upper)」、「下側(lower)」、「底部(bottom)」、「中間(intermediate)」、「中央(middle)」、「上部(top)」、および同様なものを、種々の要素を述べるために本明細書で使用することができるが、これらの要素がこれらの用語によって限定されるべきでないことが理解されるべきである。これらの用語は、1つの要素を別の要素から区別するために使用されるだけである。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素は「上側」要素と呼ばれる可能性があり、同様に、第2の要素は、これらの要素の相対的配向に応じて、「上側」要素と呼ばれる可能性がある。
【0040】
本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を述べるためのものであり、本開示を制限することを意図されない。本明細書で使用するとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別段にコンテキストが明確に示さない限り、複数形も含むことを意図される。用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、および/または「含んでいる(including)」が、本明細書で使用されるとき、述べた特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはその群の存在または付加を排除しないことがさらに理解されるであろう。
【0041】
別段に規定されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の専門家によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語が、本明細書および関連する技術分野のコンテキストにおけるそれらの意味と矛盾しない意味を有するものとして解釈されるべきであり、また、本明細書でそのように明示的に規定しない限り、理想的なまたは過度に形式的な意味で解釈されないことになることがさらに理解されるであろう。
【0042】
本明細書で使用される用語「病原体」は、疾病を引き起こす微生物を指し、細菌、ウィルス、真菌、イースト、およびかびを含むが、それらに限定されない。
本開示は、液体媒体懸濁液内の生存微生物(例えば、病原体)を迅速に検出するための
システムおよび方法を提供する。少なくとも2つの電極は、微生物を含有すると考えられる液体媒体と電気的連通状態で設置される。第1の電気パルスが初期時刻に少なくとも2つの電極にわたって印加されると、第1の初期電気応答信号が生成され、そのような信号は、短い第1の初期時間窓内(第1の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の95%(または、本明細書で開示する別の閾値パーセンテージ)に到達するために必要とされる時間以内)で電気応答を示す。その後、第2の電気パルスが後続の時刻に少なくとも2つの電極にわたって印加されると、第2の初期電気応答信号が生成され、そのような信号は、短い第2の初期時間窓内(第2の電気パルスの状態の変化後に定常状態電気応答値の95%(または、本明細書で開示する別の閾値パーセンテージ)に到達するために必要とされる時間以内)で電気応答を示す。電子的に測定することができる後続の時刻と初期時刻との間の電気応答の変化は、液体媒体内の1つまたは複数の病原体の増殖を立証することができる。そのような病原体は、細菌、ウィルス、真菌、イースト、胞子、および/または他の非哺乳類細胞を含むことができる。概して、非哺乳類細胞は、哺乳類細胞と異なる膜電位を有することになる。そのため、非哺乳類細胞は、電気パルスの印加に応答して、哺乳類細胞と異なるように、溶液の全体的な電気応答および/または電子記号に影響を及ぼすことになる。
【0043】
本明細書で開示する方法を支持する任意の科学的理論に束縛されることなく、電気パルスの状態の変化後の非常に短い時間窓(例えば、定常状態電気応答値の95%(または、本明細書で開示する別の閾値パーセンテージ)または本明細書で識別される何らかの他の閾値に到達するために必要とされる時間以内)に対応する初期電気応答信号の利用が、懸濁液のバルク電気特性を決定することを可能にし、その理由としては、電極-液体界面における2重層形成が、そのような時間窓中に不完全である場合があるからであると現在のところ思われる。或る実施形態において、そのような時間窓は、定常状態電気応答値の98%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、または50%を到達するために必要とされる時間以内であることができる。上記で述べたように、電極と懸濁液との間の個体-液体界面におけるキャパシタンスは、2つのそのような電極間の液体懸濁液のバルクキャパシタンスより大幅に大きく、それにより、病原体増殖に起因するキャパシタンスの小さい変化を、電極上の2重層の存在に起因する劇的に大きい(例えば、100倍大きい)ベースラインキャパシタンスの背景に対して検出することは難しい可能性がある。電気パルスの状態の変化後(おそらくは、2重層形成が終了し、定常状態電気応答が得られる前)の非常に短い時間窓に対応する初期電気応答信号を利用することによって、バルク溶液の電気応答が決定され得ることを出願人は見出した。所定の期間にわたって同じ測定を反復することによって、電気応答の変化が識別され、液体懸濁液内の病原体などの微生物の存在(すなわち、増殖による)を検出するために使用され得る。或る実施形態において、バルク溶液は、測定の間にまたがる1つまたは複数の期間中に、微生物の成長を促す条件に維持される。
【0044】
定常状態電気応答は、完全な2重層形成後に得られ、電気応答の状態の変化を伴う。「定常状態電気応答(Steady state electrical response)」は、過渡現象の影響がもはや重要でないために起こる回路の平衡条件を指す。本明細書で述べるシステムおよび方法による定常状態電気応答は、性質が漸近的であり、電気応答の有意の変化が、電気パルスの状態の変化直後に得られるが、そのような応答の変化が、電気応答が定常状態条件に近づくにつれて減少すると思われる。例えば、状態の変化が電気パルスの印加を含む場合、電気応答特徴(例えば、性質が擬似容量性)は、1よりかなり大きい値を有する高度な正の初期傾斜で、急速に(例えば、指数関数方式で)立ち上がることができるが、そのような傾斜は、時間と共に減少することになり、ついには、ゼロ(すなわち、定常状態)に達する。逆に、様態の変化が電気パルスの終了を含む場合、電気応答特徴(例えば、性質が擬似容量性)は、高度な負の初期傾斜値で、急速に(例えば、指数関数方式で)立ち下がることができるが、そのような傾斜は、時間と共により小さ
い負値になることになり、ついには、ゼロ(すなわち、定常状態)に達する。定常状態条件の到達前の、電気パルスの状態の変化後の非常に短い時間窓に対応する初期電気応答信号の使用は、バルク溶液の電気特性が決定されることを可能にする。
【0045】
上記で述べたように、システム構成の差および/または動作パラメータ(例えば、電極サイズ、電極位置/間隔、電極表面品質、全体のチャネルまたはチャンバー寸法、システムファウリング、電圧および/または電流値、パルス形状など)は電気応答に影響を及ぼす場合があるため、定常状態条件の到達の時刻は、異なる構成または動作パラメータを必要とするシステムについて異なる場合がある。この問題に対処するために、本明細書で述べる或る実施形態において、初期時間窓(その中で、バルク溶液の電気特性を決定することができる)の期間は、定常状態電気応答値の指定されたパーセンテージ(100%未満)に到達するために必要とされる時間によって規定することができる。或る実施形態において、十分な電気応答情報が収集されることを保証するために、初期時間窓を、定常状態電気応答値の、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%に到達するために必要とされる時間以内などの最小期間によってさらに境界付けることができる。そのため、或る実施形態において、本明細書で開示されるシステムおよび方法に関して有用な初期電気応答信号は、電気パルスの状態の変化後の最小時間窓に対応することができ、最小時間窓は、少なくとも本明細書で開示される1つまたは複数の最小期間閾値の到達に対応する時間程度に長いが、本明細書で開示される最大期間閾値の到達に対応する時間以内であり、最小および最大の両方の期間閾値は、定常状態電気応答値の到達の時刻の所定のパーセンテージに対応する。或る実施形態において、初期時間窓期間値は、任意に、以下の範囲:1~1000ナノ秒、5~800ナノ秒、10~700ナノ秒、20~600ナノ秒、30~500ナノ秒、35~400ナノ秒、40~300ナノ秒、または50~200ナノ秒、の1つまたは複数の値以内であることができる。
【0046】
バルク懸濁液(またはその所定の部分)の、所定の期間にわたる複数回の電気測定を行うことによって、微生物増殖を示唆する変化を識別しようとすることに関する潜在的な1つの問題は、バルク懸濁液の電気応答の変化が、微生物増殖以外の現象-バルク懸濁液の液体媒体のpH、塩濃度、化学的組成、ペプチド/タンパク質濃度、赤血球および/または白血球の存在、および/または他のパラメータの変化などに少なくとも部分的に起因する場合がある。液体媒体に対するそのような変化は、微生物増殖の副産物であるおよび/または他の要因によって誘発される場合がある。さらに、(例えば、異なるサンプルから導出される)異なるバルク溶液は、塩濃度、pH、化学的組成、ペプチド/タンパク質濃度、または同様なものなどの異なる開始特性を有する場合がある。これらの問題に対処するために、或る実施形態において、より延長した期間(例えば、各電極における2重層の形成後の期間を含む)にわたって行われる測定は、バルク懸濁液(液体媒体ならびに微生物を含む)の全体の組成の電気応答を検出するために使用することができ、この延長電気応答は、パルスの状態の変化後の短い初期時間窓中に得られる上述した初期電気応答信号を正規化するために使用することができる。初期および延長電気応答測定の利用は、バルク懸濁液内の微生物(例えば、病原体)の検出感度の大幅な増加を可能にする。或る実施形態において、ベースライン測定が行われるため、バルク懸濁液の開始特性は、全体の測定技法に対して正規化され得る。例えば、2つの異なるバルク懸濁液が塩の異なる開始濃度を有する場合、各バルク懸濁液の全体レジスタンスは異なることになる。或る実施形態において、バルク懸濁液の液体媒体のpH、塩濃度、化学的組成、ペプチド/タンパク質濃度、および/または他のパラメータは、電気応答の初期測定から後続の測定まで変化する場合がある。初期期間(または、単に「初期(initial)」)電気応答を正規化するための、延長期間(または、単に「延長(extended)」)電気応答の利用は、サンプル間およびサンプル内の差が正規化されることを可能にする。さらに、本明細書で開示するシステムおよび方法は、多数の測定値が、1秒当たり2測定値以上のレートで
迅速に生成されることを可能にする。そのため、開始溶液のベースライン測定は、高い程度の正値性になるように定量化され、数学的にモデル化される。媒体内に存在する病原体が増殖するため、バルク懸濁液の液体媒体特性および病原体電荷貯蔵特性の両方の測定可能な変化は、このベースラインに対して変化を受け易く、本明細書で開示する方法およびシステムを使用して、従来の技法の使用よりも迅速に検出可能である。或る実施形態において、延長時間窓は、少なくとも2、4、6、8、10、15、20、25、30、40、50、60、80、100、150、200、250、500、750、または1000の倍数など、より短い初期時間窓の整数倍を含むことができる。
【0047】
本明細書で開示するシステムおよび方法は、以前の方法と比較して、より簡単かつより費用がかからない回路要素を用いて、生存微生物の検出をより迅速に可能にする。本明細書において上記で述べたように、Sengupta特許は、周波数ドメインインピーダンス検知を開示し、周波数ドメインインピーダンス検知において、数百の同位相レジスタンス(R)値および位相外れリアクタンス(X)値が、AC入力信号を使用して広い周波数範囲にわたって得られ、そのような検知が、複数の時間間隔にわたって反復されて、懸濁液内の生存細菌の増殖(それゆえ、存在)を示す懸濁液のバルクキャパシタンスの変化の決定を可能にする。Sengupta特許によって開示される方法は、感度があるが、費用がかかる器具類(例えば、可変周波数インピーダンスアナライザー)を必要とし、また、方法は、比較的遅い(例えば、各サンプル分析のために数分の期間を必要とする)。
【0048】
Sengupta特許によって開示される方法と対照的に、本明細書で開示される方法は、多数の異なる周波数で懸濁液にAC信号が印加されることを必要とすることなく、タイムドメインインピーダンス検知を含む。本明細書で開示される方法は、DC入力信号を用いて懸濁液をいっそう迅速に分析し得る。例えば、或る実施形態において、100kHzのパルス幅を有するDCパルスを使用することができ、それにより、インピーダンス測定が10μ秒ごとに行われることを可能にする。
【0049】
或る実施形態において、システムの時間ベース応答は、バルク懸濁液に対する電圧パルスの印加に応答してモニターすることができる。これは、
V=V0(1-e-t/τ)
として数学的に表され得る。
ここで、V0は入力信号の振幅であり、tは時間であり、τは生成される信号の時定数である。当業者によって認識されるように、他の数学的モデルが使用されて、本明細書で開示されるシステムの全体の電子特性の変化を追跡し得る。或る例は、y=a+b(1-e-cx)、y=a+b(1-e((x+c(ln2)1/d-b)/(c))d、およびy=a+((bc(e-cx)-e-dx)/(d-c))などの曲線当てはめ方程式を使用することを含む;しかしながら、他の曲線当てはめ方程式が同様に使用され得ることを当業者は認識するであろう。これらの方程式のそれぞれにおいて、パラメータは、振幅、最小電圧、最大電圧、指数関数的成長などのような種々の電子特性を数学的に示す。所定の期間にわたるパラメータまたはパラメータの組み合わせにおける変化は、懸濁液の電子特性の変化を表し、それは、次に、微生物(例えば、病原体)成長を表す。曲線の下の面積は、異なるパラメータの数学的関係によって決定することができる。或る実施形態において、曲線の下の面積は、2つのパラメータ値の割り算によって表される。パラメータおよびパラメータの組み合わせは全て、時間に対してプロットされる。所定の期間にわたるそのような値の変化は、懸濁液の電子特性の変化を示すことができる。
【0050】
或る実施形態において、測定窓は、電流増加または電圧増加を含む電気パルスの状態の変化によって開始される。換言すると、そのような測定窓は、パルスの開始に対応することができる。
図2は、一実施形態による(i)TDIDシステムの電極への入力として供給される1V DCパルスについての理想的な立ち上がりエッジ(実線で表す)、および
、(ii)TDIDシステムを使用した5つの1V DCパルスの印加に応答する、平均化した立ち上がりエッジ出力(応答)信号(破線で表す)についての、電圧対時間の重ね合わせプロットを提供する。平均化した立ち上がりエッジ出力または応答信号は、理想的な立ち上がりエッジ入力信号の曲線と形状が異なる曲線を具現化し、上記で概説した曲線当てはめ方程式に従って数学的にモデル化される対象になる。
【0051】
図3Aは、10μsの時間枠にわたる、(i)未処理出力電圧(点線)および(ii)曲線当てはめされた出力電圧(実線)を含む、一実施形態によるTDIDシステムによる1V DCパルス出力の立ち上がりエッジについての、電圧対時間の重ね合わせプロットを提供する。
図3Bは、50μsの時間枠にわたる、(i)未処理出力電圧(点線)および(ii)曲線当てはめされた出力電圧(実線)を含む、
図3Aと同じ1V DCパルス出力の立ち上がりエッジについての、電圧対時間の重ね合わせプロットを提供する。これらの図の比較は、より長い時間枠内で観察されると、密接に方形波(
図3Bに示す)に似るにも関わらず、適切に短い時間枠内で観察されると曲線(
図3Aに示す)に似ることを明らかにする。
【0052】
或る実施形態において、測定窓は、電流低下または電圧低下を含む電気パルスの状態の変化によって開始される。換言すると、そのような測定窓は、パルスの終了に対応することができる。
図4は、一実施形態によるTDIDシステムを使用して得られた5つの1V
DCパルスの立ち下がりエッジ(DC入力信号の終了に対応する)についての、平均電圧対時間のプロットである。平均出力または応答信号は、対応する入力信号(示さないが、0.5Vから-0.5Vへの瞬時低下として表すことができる)と形状が異なる曲線を具現化し、上記で概説した曲線当てはめ方程式に従って数学的にモデル化される対象になる。
【0053】
そのため、種々の実施形態において、測定窓は、電流または電圧の増加(または開始)を含む、または、電流または電圧の低下(または終了)を含む、電気パルスの状態の変化によって開始することができる。理論的に、電気パルスの開始または終了は、電極およびバルク溶液の比較可能な応答の測定を可能にするべきである。しかしながら、実際には、測定窓が、電流低下または電圧低下に対応する電気パルスの状態の変化によって開始されると、ノイズの低減が生じる場合があり、なぜならば、オーバーシュートおよびリンギング(すなわち、電圧または電流の好ましくない振動)の現象が、現実世界の(非理想の)回路を使用したパルスの印加につきものであるが、パルスが終了すると、そのような現象が存在しない場合があるからである。電気パルスの印加と終了との間の差は、
図5Aおよび
図5Bを比較すると明らかである。
図5Aは、電圧増加に対応する1V DCパルスの立ち上がりエッジについての、回路基板によって生成される電圧対時間のプロットであり、電圧が1V値で安定するまで、数マイクロ秒の間、リンギング(振動)を示すものとして回路を示す。
図5Bは、電圧低下に対応する1V DCパルスのトレーリングエッジについての、回路基板によって生成される電圧対時間のプロットであり、トレーリングエッジはリンギングがない。電気パルスの開始によるリンギングを完全になくすことが難しいため、
図5Aの電圧振動の大きさおよび/または期間を、従来の手段によって低減することができることが留意される。
【0054】
数学的当てはめの上記議論にもかかわらず、或る実施形態において、数学的当てはめ(例えば、曲線当てはめ)は全く実施されない。代わりに、電気信号の直接測定が実施されて、入力信号に対するシステムの時間応答を測定し得る。例えば、一実施形態において、電圧比較器が使用されて、パルスの印加による信号の立ち上がり時間を決定することができる。そのような場合、数学的当てはめは必要ではない。代わりに、比較器は、入力電圧と、懸濁液で湿潤された電極を介して得られた結果として生じる電圧との間の差、および、入力電圧(パルス)と結果として生じる電圧との間の遅延時間を測定することができる
。比較器は、所望の成果に応じて種々のレベルに設定され得る。或る実施形態において、比較器は、入力パルスの開始と、出力信号が全体最大(入力)信号の66%である状態との間の時間遅延をレポートするように設定することができ、結果として生じる時間遅延は、システムの時定数を表すことになる。例えば、
図6は、初期「ベース」電圧(-0.5V)に対応する第1の(下側)水平矢印、および、660mV立ち上がり(すなわち、出力電圧における66%の上昇を表す)に対応する第2の(上側)水平矢印を含むように修正された、
図3Bと同じ電圧対時間データプロット(曲線当てはめなし)を示し、両方の矢印について、立ち上がり時間を決定するために、対応する時間差を計算することができる。
【0055】
或る実施形態において、測定を実施するために使用される電極を、リザーバ内に含まれる比較的大きい容積のバルク懸濁液と接触状態で設置することができる。或る実施形態において、測定を実施するために使用される電極は、より小さい容積の懸濁液を含む測定チャネル(例えば、マイクロチャネルなどの流体チャネル)と接触状態で設置される。そのような実施形態において、バルク懸濁液の第1の部分を、リザーバから収集し、分析のために測定チャネル内に設置することができる。分析後、バルク懸濁液の第2の部分を、直前に分析された第1の部分を置換するために測定チャネルに移送することができる。その次の部分を、測定チャネル内に移送し、分析することができる。こうして、バルク懸濁液の大部分が、所定の期間にわたってサンプリングされて、統計分析を改善することができる。リザーバからマイクロチャネルへのバルク懸濁液の所定の部分の移送は、手作業でまたは自動的に実施することができる。或る実施形態において、バルク懸濁液は、間欠方式でまたは実質的に連続方式で測定チャネルを通して流されて、測定が種々の時点で実施されることを可能にすることができる。或る実施形態において、バルク懸濁液を、リザーバおよび/または測定チャネル内で循環させる(例えば、圧送する)および/または攪拌することができる。
【0056】
種々の実験が、約1mm×1mmの正方形断面、約4mmの長さ、および電極間の約1cmの距離を有する測定チャネルを利用して実施された。しかしながら、他の形状(例えば、異なる断面形状のチャネル、湾曲チャネル、および/または非直線のチャネル)およびサイズ(先述の寸法より大きいまたは小さい)ならびに異なる電極間隔の測定チャネルが使用される可能性があることが理解される。測定チャネルは、流体インターフェース(例えば、懸濁液の移送および/または循環のための)、電気インターフェース(例えば、電気パルスの送信および電気パルスの印加による電気応答を示す信号の受信)、種々の信号処理および/または信号分析コンポーネント、ならびにユーザーインターフェースと共に使用することができる。
【0057】
図7は、本開示の一実施形態によるタイムドメインインピーダンス検出(TDID)システム30の構成要素のブロック図である。TDIDシステム30は、チャネル32(スケールが微小流体的であってもよく、測定チャネルとして用いられてもよい)、チャネル32の内容物と電気的連通(例えば、導電性接触)状態にある電極に結合可能な電気インターフェース34、ならびに、チャネル32およびユーザーインターフェース46の両方に連結された器具36を含む。器具36は、流体移動および/または懸濁液の混合のためにチャネル32に結合可能である機械システム42を含む。器具36は、1つまたは複数のDCパルスを生成するのに適し、チャネル32に連結された少なくとも2つの電極に結合可能な信号発生器38をさらに含む。器具36は、微生物電荷の所定の期間にわたる変化および液体媒体特性を測定する等のために、チャネル32に連結された少なくとも2つの電極から受信される信号を分析するのに適した信号アナライザー40をさらに含む。少なくとも1つのデータ分析要素44は、液体媒体の特性変化を示す特定のパラメータを抽出するためなどで、信号アナライザー40から受信されるデータを処理するためにさらに設けられる。ユーザーインターフェース46は、選択的な実験パラメータを入力し、出力
信号を表示するために使用することができる。
【0058】
或る実施形態において、電気インターフェース34は、TDIDシステム30をチャネル32の電極に接続するために使用され得る種々の電気接続を含む。これらの電気接続は、電極と、TDIDシステム30の他の構成要素との間で入力および出力信号を伝達するのに使用され得る。或る実施形態において、電気インターフェース34は、測定チャネル電極およびTDIDシステム30に連結された器具36のコンポーネントの接続および切り離しを可能にする。或る実施形態において、電気インターフェース34は、任意の適した長さ(例えば、数インチ、0.5フィート、1フィート、3フィート、またはそれより長い長さ)のケーブルを含むことができる。チャネル32に連結された電極に対する接続を可能にするために、或る実施形態において、ケーブルの1つまたは複数の端は、バイヨネットコネクタ、ミニグラバーコネクタ、アリゲータクリップ、回路基板を有するスリップコネクタ、または、種々の他の従来のコネクタの任意のコネクタで終端することができる。或る実施形態において、電気接続は、圧縮接続を利用して、カートリッジデバイスと測定器具類との間で行うことができる。或る実施形態において、電気ケーブルは、外部周波数ノイズの受信を低減するために遮蔽を含むことができる。或る実施形態において、同軸ケーブルが、ノイズ低減を促進するために使用され得る。或る実施形態において、能動および/または受動遮蔽(ファラデーケージまたは他の方法の使用など)は、本明細書で開示するように、TDIDシステム30のケーブルおよび/またはコネクタと共に使用することができる。
【0059】
或る実施形態において、短時間(rapid)DCパルスは、チャネル32に連結された電極に(例えば、入力信号として)印加することができ、そのような電極は、パルスの状態の変化に続くTDIDシステム30の電圧および/またはアンペロメトリック応答を(例えば、出力信号として)測定するために使用することができる。或る実施形態において、TDIDシステム30は、パルス状入力信号を印加する信号発生器38を含むことができ、また、対応する出力信号を分析する信号アナライザー40を含むことができる。或る実施形態において、パルス状電流/電圧信号は、信号発生器38を使用して種々の周波数および電圧で印加することができ、信号発生器38は、電気インターフェース34を使用してチャネル32に連結された電極に接続することができる。例えば、パルス周波数は、100kHz、10kHz、2MHz、または上記範囲内(外)の任意の所望の値であり得る。同様に、印加電圧は変動する場合があり、電極に供給される電圧パルスの例示的な値は、100mV~10Vの範囲内である。当業者によって理解されるように、広範囲のパルス周波数および印加電圧が可能である。信号アナライザー40は、チャネル32に連結された電極間の電気的相互作用を通して媒体懸濁液特性の変化を測定し得る。
【0060】
或る実施形態において、信号発生器38は、チャネル32の電極に、パルス形態の一定電流信号を供給するために使用することができ、対応する電圧は、(例えば、信号アナライザー40によって)測定され、追跡されて、微生物(例えば、病原体)の成長を判定し得る。
【0061】
測定チャネル(チャネル32など)は、種々の方法で設計され、作製され得る流体デバイス内に設けることができる。例えば、1つまたは複数のチャネルを含み、複数の電極を受け取るように構成される流体デバイスは、種々のソフトウェアプログラム(例えば、SOLIDWORKS(登録商標)ソフトウェア(Dassault Systemes SE、Velizy-Villacoublay、フランス)、PTC CREO(登録
商標)ソフトウェア(Parametric Technology Corporation、米国マサチューセッツ州ニードハム(Needham,Massachusetts,US))、AUTOCAD(登録商標)ソフトウェア(Autodesk,Inc
.,米国カルフォルニア州サンラファエル(San Rafael,Californi
a,US)、または同様なもの)により種々の3次元設計をすることができる。付加および/または除去製造プロセスを使用することができる。流体デバイスは、当業者によって認識されるように、3D印刷、射出成形、(レーザー除去、ブレードカッティング、または同様なものによって種々の材料を通して規定可能な)ステンシル層の積層および圧縮または付着、フォトリソグラフィによる特徴画定とそれに続くエッチング、または他の方法を通して作製され得る。チャネルを含む流体デバイスは、異なるタイプの非導電性材料を用いて印刷することができる。1つのそのような例は、光硬化性ポリマー樹脂であるが、他の材料を使用することができる。
【0062】
或る実施形態において、測定チャネルは、流体デバイスの少なくとも1つの表面内に規定される窪みまたは溝として形成されるトレンチを具現化することができ、また任意に、上部で開放していることができる。或る実施形態において、測定チャネルは、任意に、本体構造内に具現化される、またはその他の方法で固着される1つまたは複数のチュービングセクションを含む、種々の形状および寸法のチューブで形成することができる。
【0063】
或る実施形態において、測定チャネルは、電極間に、約1mm×1mm×10mm、または0.3mm×0.3mm×5mmの幅×深さ×長さ寸法を含むことができる。或る実施形態において、測定チャネル全体は、長さが約4cm以下であることができる。他の実施形態において、長さが4cmを超える測定チャネルを使用することができる。或る実施形態において、測定チャネルについての長さ:幅および/または長さ:高さのアスペクト比は、1:1、2:1、1:2、3:1、5:1、7.5:1、10:1、または他の値である可能性がある。当業者によって容易に理解されるように、本明細書で示し、および/または論じる特定のチャネル形状および寸法以外の他のチャネル形状および寸法が可能である。
【0064】
引き続き
図7を参照すると、或る実施形態において、信号発生器38および信号アナライザー40は、関数発生器およびオシロスコープでそれぞれ具現化することができる。そのような実施形態において、信号発生器38(例えば、関数発生器)はパルス状入力信号を提供することができ、信号アナライザー40(例えば、オシロスコープ)はタイムドメイン電圧測定を実施するために使用することができる。チャネル32の電極間の懸濁液にわたる電圧降下を測定することができる。或る実施形態において、信号発生器38は、特定の周波数でパルス状電圧信号を提供することができ、信号アナライザー40は、チャネル32に連結された電極間で伝達される電流を測定するのに用いることができる。或る実施形態において、アナログ・デジタル(A/D)変換器が、信号アナライザー40の一部として使用され得る。或る実施形態において、信号発生器38および信号アナライザー40の機能を、単一回路基板または単一コントローラに連結された構成要素(例えば、信号プロセッサ、信号変換器、比較器、積分器、メモリ要素、および/または他のコンポーネント)によって実施することができる。
【0065】
当業者によって認識されるように、サンプルに電気信号を印加し、対応する電気応答を分析する他の自動化(例えば、電子的)方法を利用することができる。本明細書で述べる種々の例において、電圧(例えば、電圧パルス信号)がシステムに印加される。しかしながら、当業者によって認識されるように、他の実施形態において、電流(例えば、電流パルス信号)がサンプルに印加され得る。本明細書で述べる例における電気測定システムを使用して、出力電圧システムが記録される。しかしながら、或る実施形態において、出力電流測定値を、記録し、分析することができる。
【0066】
種々の実施形態において、測定チャネルに連結された電極から受信される出力信号は、曲線を当てはめ、曲線の下の面積を決定し、立ち上がり時間を計算することなどによって分析され得る。或る実施形態において、曲線当てはめは、測定データに対して回路方程式
を当てはめ、方程式の個々のパラメータを得ることによって実施され得る。1つのそのようなパラメータは、方形パルスにおける指数関数的立ち上がりであり得る。或る実施形態において、曲線の下の面積は、当てはめパラメータに基づく数学的計算を使用することによって決定され得る。或る実施形態において、立ち上がり時間は、測定チャネル電極から受信される信号が予め指定された状態の変化(例えば、電圧パルスの開始または終了)から立ち上がるのにかかる時間を計算することによって決定することができる。或る実施形態において、データ生成および分析のプロセスは、指定された期間にわたって反復されて、バルク懸濁液内の生存微生物(例えば、病原体)の存在または非存在を判定する。
【0067】
さらに
図7を参照すると、或る実施形態によるTDIDシステム30のためのユーザーインターフェース46は、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、埋め込み回路、電圧カウンタ、および/または任意の他のタイプの処理デバイスを含むことができ、任意の他のタイプの処理デバイスは、好ましくは、機械可読命令セットを実行するように構成されるマイクロプロセッサを含む。或る実施形態において、ユーザーインターフェース46は、データを閲覧するためのディスプレイならびにデータエントリーおよび分析を容易にする入力デバイスを含むことができる。ユーザーインターフェース46は、ユーザーが、媒体のタイプ、収集の時刻、記録の時刻などのような実験情報およびデータを入力することを可能にすることができる。或る実施形態において、ユーザーインターフェース46は、出力電気信号を測定するように信号アナライザー40をトリガーするために使用することができる。或る実施形態において、ユーザーインターフェース46は、所定の時間間隔で測定を自動的にトリガーし、記録するように構成されることができる。或る実施形態において、TDIDシステム30は、埋め込みアルゴリズムを含むことができ、結果(例えば、陽性/陰性判定、支持データなど)を、ユーザーインターフェース46または専用通信要素(図示せず)を介して直接、研究所情報システムに送信するように構成することができる。
【0068】
本明細書で開示される実施形態と共に使用可能である測定チャネルおよび電極を含む流体デバイスの種々の非限定的な例が
図8A~
図8Eに示される。
図8Aは、一実施形態による流体デバイス50の概略的な斜視図であり、流体デバイス50は、本体構造52の側壁を通って突出するチャネル伸長部54A、54Bを有する流体チャネル54を含み、また、流体チャネル54に垂直に配置された2つの円柱電極56A、56Bを含む。図示するように、各電極56A、56Bの中心線が流体チャネル54の中心線53に交差する。流体デバイス50の使用時、液体媒体および微生物を含有する懸濁液は、流体デバイス50を通って流れ、電極56A、56Bに接触することができる。1つまたは複数の電気パルスを、電極56A、56Bに印加することができ、同じ電極56A、56Bを、流体デバイス50の電気応答および/または流体チャネル54の内容物を検出するために使用することができる。例えば、短い初期時間窓(例えば、電気パルスの状態の変化後の200ナノ秒以内)内の電気パルスに対する電気応答は、電極56A、56Bの間の懸濁液のバルク電気応答が、電極56A、56Bの表面における2重層形成によって電気応答信号が支配される前に決定されることを可能にし、一方、延長時間窓(例えば、電気パルスの状態の変化後の約20マイクロ秒以内)内の電気応答は、初期電気応答信号を正規化するために使用することができる。
【0069】
図8Bは、一実施形態による流体デバイス60の概略的な斜視図であり、流体デバイス60は、本体構造62の上部壁を通って突出するチャネル伸長部64A、64Bを有する流体チャネル4を含み、また、流体チャネル64に垂直に配置された2つの円柱電極66A、66Bであって、各電極66A、66Bが流体チャネル64の中心線63に対してオフセットする、2つの円柱電極66A、66Bを含む。各チャネル伸長部64A、64Bは、任意に、チューブ、マニホルド、または他の流体ハンドリングコンポーネントで具現化される、外部流体インターフェースにインターフェースするための取り付け具またはポ
ート65A、65Bを含むことができる。
図8Aのデバイス50と同様の方法で、1つまたは複数の電気パルスを、電極66A、66Bに印加することができ、同じ電極66A、66Bを、流体デバイス60の電気応答および/または流体チャネル64の内容物を検出するために使用することができる。
【0070】
図8Cは、一実施形態による流体デバイス70の概略的な斜視図であり、流体デバイス70は、本体構造72の上部壁を通って突出するチャネル伸長部74A、74Bを有する流体チャネル74を含み、また、流体チャネル74の中央部分の上および下にそれぞれ配置された2つの平面またはプレート型電極76A、76Bを含む。或る実施形態によれば、電極76A、76Bは、流体チャネル74内の懸濁液と非接触関係で配置することができ、1つまたは複数の壁材料および/またはコーティングが、直接接触を排除するために電極間に配置される。代替の実施形態において、電極76A、76Bは、流体チャネル74の流体内容物に接触するように構成することができる。各電極76A、76Bは、流体チャネル74の中心線73に実質的に平行である。各チャネル伸長部74A、74Bは、任意に、チューブ、マニホルド、または他の流体ハンドリングコンポーネントで具現化される、外部流体インターフェース(図示せず)にインターフェースするための取り付け具またはポート75A、75Bを含むことができる。
図8Aおよび
図8Bの流体デバイス50、60と同様の方法で、1つまたは複数の電気パルスを、電極76A、76Bに印加することができ、同じ電極76A、76Bを、流体デバイス70の電気応答および/または流体チャネル74の内容物を検出するために使用することができる。電極76A、76Bが、流体チャネル74内の懸濁液と非接触関係で配置される場合、より高い振幅のパルス(例えば、電圧または電流パルス)が、電極76A、76Bと懸濁液との間に配置された任意の介入する壁および/またはコーティング材料を通過するために必要とされる場合があり、および/または、電極76A、76Bによって受信される応答信号は、流体チャネル74内の懸濁液に直接接触するように構成することができる代替の電極の利用に比べて、大幅に減衰する場合がある。
【0071】
図8Dは、一実施形態による流体デバイス80の概略的な斜視図であり、流体デバイス80は、本体構造82の上部壁を通って突出するチャネル伸長部84A、84Bを有する流体チャネル84を含み、流体チャネル84の上側左境界に沿って配置された第1の電極86Aを含み、流体チャネル84の下側右境界に沿って配置された第2の電極86Bを含む。電極86A、86Bは、任意選択で、幅より大きい長さを含むことができ、長さ寸法は流体チャネル84の中心線83に実質的に平行である。各チャネル伸長部84A、84Bは、任意に、チューブ、マニホルド、または他の流体ハンドリングコンポーネントで具現化される、外部流体インターフェース(図示せず)にインターフェースするための取り付け具またはポート85A、85Bを含むことができる。
図8A~
図8Cの流体デバイス50、60、70と同様の方法で、1つまたは複数の電気パルスを、電極86A、86Bに印加することができ、同じ電極86A、86Bを、流体デバイス80の電気応答および/または流体チャネル84の内容物を検出するために使用することができる。
【0072】
図8Eは、一実施形態による流体デバイス90の概略的な斜視図であり、流体デバイス90は、本体構造92の上部壁を通って突出するチャネル伸長部94A、94Bを有する流体チャネル94を含み、また、流体チャネル94に垂直に配置された2つの対の円柱電極(例えば、外側対の電極96A、96Bおよび内側対の電極97A、97B)であって、各電極96A、96B、97A、97Bが流体チャネル94の中心線93に対して側方にオフセットする、2つの対の円柱電極を含む。或る実施形態において、外側対の電極96A、96Bを、流体チャネル94の内容物に電気パルスを印加するために使用することができ、内側対の電極97A、97Bを、流体デバイス90の電気応答および/または流体チャネル94の内容物を検出するために使用することができる。各チャネル伸長部94A、94Bは、任意に、チューブ、マニホルド、または他の流体ハンドリングコンポーネ
ントで具現化される、外部流体インターフェース(図示せず)にインターフェースするための取り付け具またはポート95A、95Bを含むことができる。
【0073】
本明細書で開示される実施形態と共に使用可能である測定チャネルの断面形状の種々の非限定的な例が
図9A~
図9Cに示される。
図9Aは、一実施形態による、正方形に似た断面形状を有する流体チャネル104を規定する本体構造102を含む流体デバイス100の一部分の概略的な斜視図である。
図9Bは、一実施形態による、丸い断面形状を有する流体チャネル114を規定する本体構造112を含む流体デバイス110の一部分の概略的な斜視図である。
図9Cは、一実施形態による、狭い長方形断面形状を有する流体チャネル124を規定する本体構造122を含む流体デバイス120の一部分の概略的な斜視図である。
図9A~
図9Cに示す本体構造102、112、122はそれぞれ、長方形形状を有する断面を含むが、他の断面形状(例えば、環状、楕円形、多角形など)を有する本体構造を使用することができることが理解される。
【0074】
図10は、一実施形態による、
図8Bによる流体デバイス60であって、流体デバイス60の電極66A、66BがTDIDシステムの電気接点69A、69Bに接続されている状態の、流体デバイス60の略斜視図であり、電気接点69A、69Bは、本明細書で先に述べた器具の電気インターフェースで具現化することができる。流体デバイス60の他の要素は、
図8Bに関連して本明細書で先に述べたものと同じである。
【0075】
当業者によって認識されるように、種々の材料、形状、サイズ、構造、および設置の電極を使用することができる。
図8A~
図8Eに示すように、電極は、長さおよび/または幅に沿ってオフセットする、長さおよび/または幅に沿って心出しされる、または、チャネルの壁に接して整列されるなど、種々の構造で流体チャネル内に、または流体チャネルに沿って設置することができる。或る実施形態において、平面電極を設けることができ、また、流体チャネル内に含まれる懸濁液と接触状態にある、または接触状態にないように設計することができる。
【0076】
本明細書で開示する流体デバイスの測定チャネルと共に潜在的に使用され得る異なる型の電極は、固体金電極、金コーティング電極、銅電極、プラチナ電極、銀電極、化学修飾電極、表面修飾電極、および導電性電極を含む。或る実施形態において、電極の1つまたは複数の部分は、1つまたは複数の導電率制限材料または導電率低減材料でコーティングされて、測定ステップ中に測定チャネル内の懸濁液を通過することができる電流を制限する、または最小にすることができる。電極の長さおよび幅または直径は変動する場合がある。或る実施形態において、電極の1つまたは複数の部分は、0.5mm、1mm、2mm、3mm、または別の適したサイズの幅または直径を有することができる。或る実施形態において、電極の1つまたは複数の部分は、円柱形、円形、長方形、正方形、弧状、または平面であり得る。或る実施形態において、電極は、流体デバイスの測定チャネルの内容物(例えば、懸濁液)に直接接触するように配置することができる。他の実施形態において、電極(例えば、平面電極)は、流体デバイスの測定チャネル内に含まれる懸濁液と非接触関係で配置することができる。平面または平面に似た電極が、或る実施形態において使用されるとき、そのような電極は、アルミニウム箔または銅シートなどの1つまたは複数の導電性材料を含むことができる。或る実施形態において、平面電極は、電極の形状を画定するために使用可能である、フォトリソグラフィパターニングとそれに続く選択的エッチングを用いる回路基板技術を使用して構築することができる。或る実施形態において、平面電極は、フォトリソグラフィパターニングとそれに続く選択的堆積または選択的エッチングによって作製されて、ガラス、シリコン、または他の材料などの基材上での電極の形成をもたらすことができる。基材および電極の形状および寸法は、適用形態に応じて変動する場合がある。電極は、粗いまたは平滑な表面を有することができる。
【0077】
或る実施形態において、電極は、流体デバイスの使用の前に、種々の化学物質(例えば、エタノール、アセトン、および/または水)および/または洗浄剤でクリーニングすることができる。種々の試薬および/または洗浄剤を使用することができる。或る実施形態において、本明細書で開示される方法のためのデバイスを使用する前に、流体デバイスの電極をクリーニングすることは不必要である場合がある。
【0078】
或る実施形態において、本明細書で述べる種々の流体デバイスを、使用する前に、エタノールおよびアセトン(および/または他の適した作用物質)で徹底的に清浄化することができる。或る実施形態において、流体デバイスを使用する前に、オートクレービング、プラズマイオンクリーニング、または他の標準的なクリーニング技術によってクリーニングすることができる。代替的に、流体デバイスが、無菌条件下で生産される、および/または、予め殺菌される場合、クリーニングは必要ではない場合がある。或る実施形態において、本明細書で開示される流体デバイスは、追加的または代替的に、石鹸および温水の混合物内で一晩浸漬させることによってクリーニングされ得る。化学物質および/または洗浄剤の異なる組み合わせが、使用前のデバイスをクリーニングするために使用され得る。上記クリーニングステップは、或る実施形態においてなくすことができる。独立して、懸濁液で湿潤されることを意図される1つまたは複数の表面(例えば、測定チャネル表面)は、1つまたは複数の材料で処理されて、感度を高めることができるし、流体移動性を改善する、および/または、表面の全体的な疎水性/親水性の性質を変更することができる。
【0079】
本明細書で述べる種々の例は、分析される懸濁液と流体連通状態にある電極を含む。当業者によって認識されるように、電極は、本開示によって述べられる電気応答を誘発するためにサンプルと流体連通状態にある必要はない。或る実施形態において、電極は、絶縁性材料またはコーティングでコーティングされて、電極の導電性表面と分析されるサンプルとの間の直接接続を回避することができる。或る実施形態において、電極は、分析されるサンプルを含有する測定チャネルの境界の外にではあるが、測定チャネルに物理的に非常に近接して配置することができる。そのような場合、分析されるサンプルと非接触関係で配置される電極によって生成される信号の特徴および/または値は、懸濁液と接触状態で配置される電極に対する同等の電気信号の印加と比べて、減衰する、またはその他の仕方で変化する場合がある。システムに印加される電気信号および対応する電気応答信号は、電極がシステムと流体連通状態にある場合の信号と異なることになる。しかしながら、当業者によって認識されるように、結果として生じる信号は、本明細書で述べる方法を使用して分析されて、サンプル内の病原性物質の存在を判定し得る。そのようなシステムに印加される電気入力信号は、分析を容易にするため、対応する電気出力信号を最適化する(例えば、その信号対ノイズ比を増加させる)ように調整することができる。
【0080】
図11Aは、一実施形態によるTDIDシステム130の電気接続および流体接続を示す概略図であり、TDIDシステム130は
図8Aによる流体デバイスを含む。TDIDシステム130は機械サブシステム132および電気サブシステム140を含む。流体デバイス50は、本体構造52を通して延在するチャネル伸長部54A、54Bを有する流体チャネル54(すなわち、測定チャネル)を含み、また、流体チャネル54と電気的連通状態にある2つの電極56A、56Bを含む。機械サブシステム132内で、流体デバイス50のチャネル伸長部54A、54Bは、リザーバ134を含む流体回路、および、バルク懸濁液の所定の部分をリザーバ134から電極56A、56Bに接触する流体チャネル54内に自動的に供給するように構成されるポンプ136に結合される。電気サブシステム140は、制御回路要素142を含み、制御回路要素142は、信号発生器144に信号を提供するために配置され、また、信号アナライザー146から信号を受信するために配置される。制御回路要素142は、ユーザーインターフェース(図示せず)および/または研究所情報システム(図示せず)に結合することができる通信モジュール148
に同様に結合することができる。ポンプ136が示されるが、流体チャネル54にバルク懸濁液を供給するために、圧力源および/または真空源、重力流装置、または同様なものなどの任意の適した流体移送デバイスが、使用され得ることが理解される。
【0081】
制御回路要素142は、中央処理ユニット(CPU)およびメモリを含んで、制御回路要素142が、通信バスまたは別の適切な通信インターフェースを介して通信モジュール148または他のデバイスと一方向的にまたは双方向的に通信することを可能にすることができる。制御回路要素142は、出力情報を通信する、ならびに/あるいは通信モジュールからユーザー入力および/または命令を受信することができる。或る実施形態において、信号アナライザー146はデジタル信号処理モジュールを含むことができる。
【0082】
或る実施形態において、制御回路要素142は、流体デバイス50の電極56A、56Bに1つまたは複数のDCパルス信号を印加するため、信号発生器144の動作を制御するために使用することができる。或る実施形態において、信号アナライザー146は、パルス信号の状態の変化に続く短い初期期間中に電極56A、56B間の懸濁液の電気応答を決定し、パルス信号の状態の変化に続く延長期間中に懸濁液プラス電極56A、56Bの電気応答を決定するため電極56A、56Bから信号を受信するように構成される。
【0083】
図11Bは、
図11Aで示すTDIDシステム130の電気コンポーネントの信号アナライザー146の内部のステージを示す概略的なブロック図である。或る実施形態において、信号アナライザー146は、振幅検出器ステージ150、微分器ステージ152、およびロジック(または比較器)ステージ154を含むことができる。例示的な振幅検出器ステージ150は、受信される電圧または電流信号の振幅を検出することができる。微分器ステージ152は、受信される信号の時間に対する変化を決定する微分器を含むことができる。ロジック(または比較器)ステージ154は、受信される信号を1つまたは複数の閾値信号(例えば、所定の電圧または電流閾値)と比較することができる。例示的なロジック(または比較器)ステージ154は、比較器および積分器を含むことができる。ロジック(または比較器)ステージ154の積分器は、比較器のデジタル信号を積分し、制御回路要素142に提供することができる信号アナライザー146の出力信号を生成するために使用することができる。
図11Aは、一実装態様による回路要素を開示するが、パルス信号を供給し、受信される応答信号を検出するための他の回路要素を、本明細書で開示する流体デバイスと共に使用することができることが理解される。
【0084】
種々の方法は、測定チャネル内に懸濁液(すなわち、サンプル)の所定の部分を導入するために使用することができる。或る実施形態において、懸濁液の所定の部分は、固定容積ピペッティングによってリザーバから測定チャネルに移送することができ、サンプル挿入の間に、測定チャネルから直前に移送された容積を取り除くことを伴う。測定チャネルは、同様に、読み取りの間に新鮮な溶液でフラッシングされ得る。或る実施形態において、媒体懸濁液を含む使い捨て閉鎖閉じ込めデバイスおよび測定チャネルは、蠕動ポンプまたは同様なものなどの構成要素を含む機械システムを通してリザーバから流体懸濁液の所定の部分を受け取ることができる。或る実施形態において、懸濁液が測定チャネルに挿入されると、懸濁液は、電極の終端部分を囲み、終端部分に接触することができる。測定チャネル内にあり、かつチャネルに連結された電極間に存在する懸濁液の容積は、測定チャネルの寸法によって規定することができる。
【0085】
或る実施形態において、電極に連結された測定チャネルは、サンプル培養ボトルにおいて具現化されるリザーバを組み込む本体構造で構築することができ、リザーバから測定チャネルにバルク懸濁液の所定の部分を導入するために手動介入は全く必要とされない。測定チャネル内への懸濁液の自動導入は、当業者が理解するように、種々の方法で達成することができる。一例として、周期的ロッキング運動による受動混合(例えば、ソレノイド
またはモーター駆動式ロッキング装置を使用する)が使用されて、バルク懸濁液の所定の部分が、測定チャネル内にまた測定チャネルから外に移動するようにさせる可能性がある。別の例として、蠕動ポンピングが使用されて、バルク懸濁液の所定の部分を、測定チャネル内に、また測定チャネルから外に移動させ得る。測定チャネル内にサンプルの所定の部分を導入するための他の自動化方法が使用され得る。
【0086】
或る実施形態において、病原体が成長する、または培養されるチャネルまたはチャンバーは、電気測定が行われる同じチャネルまたはチャンバーを具現化する。例えば、分析されるサンプルは、測定チャネル内に設置され、測定チャネルからサンプルを取り除くことなく(任意に、しかも、さらなる流体を測定チャネル内に導入することなく)所定の期間にわたってモニターすることができる。
【0087】
図12Aは、組み立て体200を示し、組み立て体200は、リザーバ204、測定チャネル214に接触する電極216A、216Bを含むサンプル分析セグメント215、第1および第2のチャネル伸張セグメント214A、214B、および本体構造202内に一体化されたポンプインターフェース領域222を組み込む。測定チャネル214は、約5mmの長さおよび1mmの径を含む。リザーバ204は、支持脚部分212によって支持される、水平配置され全体的に円柱の本体、および、本体構造202のベース部分210を含む。上側首部206および蓋208は、バルク懸濁液およびオプションの成長媒体のリザーバ204内への導入を可能にする。第1のチャネル伸張セグメント214Aは、ポンプインターフェース領域222によって受け取られる自動ロータリースクイーズ型ポンプ(
図12Bに示す)を使用して取り出されることを可能にするように構成される。ポンプインターフェース領域222は、取り付け具218A、218Bの間でかつ本体構造202の剛性湾曲表面223に近接して取り付けられた可撓性チューブ220の湾曲セクションを含み、それにより、可撓性チューブ220に対して圧縮されるスクイーズ型ポンプの離間したローラーの周期的な時計方向の回転運動は、可撓性チューブ220内のバルク懸濁液のプラグを、バルク懸濁液が電極216A、216Bと接触状態で設置されるサンプル分析セグメント215の測定チャネル214内に上方に輸送させる。電極216A、216Bに対するパルス状信号の状態の変化に続いて、バルク懸濁液は、電極216A、216Bによって検出可能であり、かつ分析を受ける初期電気応答を示す(また、バルク懸濁液は、電極216A、216Bと組み合わせて、延長電気応答を示す)。その後、測定チャネル214内のバルク懸濁液の部分は、第2のチャネル伸長部214Bを介してリザーバ204に戻すことができる。したがって、組み立て体200に連結されたポンプの動作は、手動の流体輸送および/または作動を必要とすることなく、自動化方法で、バルク懸濁液をリザーバ204から測定チャネル214に輸送することができる。
【0088】
図12Bは、
図12Aの組み立て体200のポンプインターフェース領域222と協働するのに適するロータリースクイーズポンプ225の一部分および組み立て体200の可撓性チューブ220の側面断面図である。ロータリースクイーズポンプ225は、モーター(図示せず)などの駆動源によって駆動することができる。可撓性チューブ220は、剛性湾曲表面223の内周に沿って配設される。第1および第2の対向する押圧ローラー230、231は、可撓性チューブ220の所定の部分を剛性湾曲表面223の内周に押し付けながら、矢印で示す方向に軸228を中心に回転する。そのような運動は、可撓性チューブ220の第1のセグメント221A内のバルク懸濁液の第1のアリコートを、第1の押圧ローラー230の前方の上方に輸送させ、一方、第2のセグメント221B内のバルク懸濁液の第2のアリコートは第2の押圧ローラー231の前方に輸送される。
【0089】
本開示を支持する初期実験において、本発明者等は、印加される上記電圧に対して関数発生器を使用しなかった。代わりに、単一パルスが、カスタム電子部品を使用して測定チャネルの電極に印加され、そのようなパルスからの応答がモニターされた。単一パルスの
印加および測定は、所定の期間にわたって周期的に反復されて、バルク懸濁液の特性の変化を決定した。
【0090】
本開示によるシステムおよび方法を使用する細菌成長試験の注目すべき例が以下で述べられる。
[例1]
図8Bによる流体チャネルを含む流体デバイスの3D設計が、SOLIDWORKS(登録商標)を使用して行われ、Eden 350/350Bプリンターを使用する3D印刷によって作製された。3D印刷された流体デバイスは、非導電性で透明で剛性がありほぼ無色の材料であるveroclear-rgea10で作られた。これらのカセットは、1mm高さ、1mm幅、および10mm長さの寸法を有するトレンチチャネルを含み、長さ寸法は電極間に延在した。それぞれの3D印刷された流体デバイスは、石鹸および温水でこすり洗いすることによって徹底的にクリーニングされた。乾燥後、各流体デバイスは、両面医療等級接着剤(約10ミクロン厚)によってガラス顕微鏡スライドにシールされて、閉鎖測定チャネルを形成した。使用する前に、ガラススライドは、アセトン、エタノール、および水によってそれぞれクリーニングされた。
【0091】
1mm径金コーティング電極は、各測定チャネル内に2つの電極を挿入する前に、アセトン、エタノール、および水によってクリーニングされた。電極から
図10によるTDIDシステムまでの電気コネクタは、実験の開始時に作られ、実験の期間の間、接続されたままであった。この場合、電気インターフェースは約2フィートの長さを有するBNCミニグラバーケーブルを含んだ。
【0092】
タイムドメインインピーダンス測定は、サンプル懸濁液の各アリコートについて各時点で(30分ごとに)行われた。
大腸菌(Escherichia coli)(ATCC 25922)およびクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)(ATCC 700603)が本調査において使用された。細菌の負荷培養を生成するために、大腸菌およびクレブシエラ・ニューモニエが共に、トリプチックソイブイヨン培地(TSB:Tryptic Soy Broth)(RPI Corp.)内で37℃で10~14時間の間、一晩、培養された。懸濁液は、10分の間、スピンダウンされ、新鮮な無菌TSB内で2回、再懸濁された。再懸濁されたサンプルの光学密度は、約108CFU/mlの濃度を得るために調整された。懸濁液は、その後、約102CFU/mlの濃度まで段階的に希釈された。適切な希釈液が、30mlの作りたての無菌TSBに添加されて、大腸菌について2CFU/mlおよび40CFU/mlの、そして、クレブシエラ・ニューモニエについて70CFU/mlの初期負荷を与えた。TSBのみを含有する(微生物を含まない)対照が、この調査において同様に使用された。対照は、実験の最中に汚染されず、そのことは、各時点で(すなわち、30分ごとに)プレーティングによって確認された。懸濁液―すなわち、微生物含有サンプルおよび対照の両方―は、その後、初期の読み取りが行われる前に、30分の間、37℃で培養された。
【0093】
初期の読み取りの時刻(0hr)に、懸濁液の100μlアリコートが、トリプチックソイ寒天培地(TSA:Tryptic Soy Agar)プレート上に設置され、37℃の培養器内に設置された。同時に、400μlの各懸濁液が抽出され、サンプルおよび懸濁液は、37℃の培養器内に戻された。各懸濁液は、別個の測定チャネル内に3つの別個のアリコートで手動注入された。各アリコートは100μlの懸濁液であり、一方、別の100μlの懸濁液が、第1のアリコートの前に使用されて、直前に注入されたいずれの液体懸濁液も、それぞれの流体デバイスの測定チャネルから外にフラッシングした。
【0094】
本明細書で開示するTDIDシステムを使用するタイムドメインインピーダンス測定は
、10KHzの周波数および1V(ピーク・ピーク間)電圧を有する電気方形パルスを電極に印加することによって行われた。同じ電極が、電気応答を検出するために使用された。このプロセスは、プレーティングのための適切な希釈と共に、8hrの期間の間、30分ごとに反復された。
【0095】
データ生成および分析は、病原体の存在を判定するために、8hr期間の間、反復された。データは、曲線当てはめおよび立ち上がり時間によって分析された。曲線当てはめ分析の場合、タイムドメインインピーダンスデータは、次のように数学的表現に当てはめられた:
y=a+b(1-e
-cx)
ここで、yは出力電圧であり、xは時間であり、aは初期電圧値(切片)であり、bはパルスの振幅であり、cは曲線の指数関数成分である。ベースラインからのパラメータCの増加は、サンプル組成物内の病原体の存在を示した。そのため、パラメータCにおける定常的な増加の欠如は、病原体成長の欠如を示した。パラメータCについてのパーセンテージ変化は、約2CFU/ml初期負荷を有する大腸菌サンプルの場合、約6.0%、約40CFU/ml初期負荷を有する大腸菌サンプルの場合、約3.0%、約70CFU/ml初期負荷を有するクレブシエラ・ニューモニエサンプルの場合、約5.0%であると決定された。所定の期間にわたって、パラメータCについてのパーセンテージ変化は、対照(TSBのみ)について約±1.0%の間で変動した。
図13は、約2CFU/ml初期負荷大腸菌サンプルについての、パラメータCのパーセンテージ変化対時間のグラフである。
図14は、約70CFU/ml初期負荷クレブシエラ・ニューモニエについての、パラメータC対時間のグラフである。
図15は、約40CFU/ml初期負荷大腸菌および対照(TSBのみ)についての、パラメータC対時間のグラフである。データ分析は、立ち上がり時間の計算を同様に含んだ。立ち上がり時間は、出力電圧が、予め指定された電圧まで立ち上がるために必要な時間量であり、この場合、0.63V(定常状態電圧の63%)である。立ち上がり時間および病原体(微生物)カウントは、反比例関係を有するため、病原体が増殖するにつれて、立ち上がり時間は減少する。
図16は、TSB内の70CFU/mlのクレブシエラ・ニューモニエ(ATCC 700603)の初期負荷を用いた、本明細書で開示するTDIDシステムを利用した8hr実験についての、時定数(μs)対時間(hrs)のプロットである。この特定の場合、立ち上がり時間は、
図16に示すように、約70CFU/ml初期負荷を有するクレブシエラ・ニューモニエサンプルについて約5.0%減少した。
【0096】
[例2]
1mm径および電極間に5mmの距離を有する測定チャネルを含む
図12Aによる使い捨て閉鎖閉じ込め組み立て体200が、設計され、非導電性樹脂を使用して3D印刷された(デバイスは、この例の残りの部分において、ボトルと呼ばれる)。ボトルのリザーバの最大流体保持容量は90mlであった。
【0097】
1mmの径を有する金コーティング電極が、ボトルから液体の一部分を受け取るように構成される測定チャネルに挿入された。電極は、チャネルの幅の対向する側でオフセットした。
【0098】
ボトルは、機械システムの一部であるステーションに挿入された。機械システムは、複数のステーション(ステーションのそれぞれが、個々にまたは全体としてシェーキングされ得る)からなり、ボトルのリザーバ内での流体移動を容易にする流体ポンピング機構を同様に含んだ。機械システムの設定は、優しくまたは力強くシェーキングするために切り換えられ得る。
【0099】
ボトルの一端は、測定チャネル内への流体の蠕動ポンピングを可能にした可撓性チュー
ビングを含んだ。それぞれの読み取りの前に、蠕動ポンプは、ボトルのチューブと接触して、特定の時間の間、チャネル内に新鮮流体をポンピングした。
【0100】
電気インターフェースは回路基板を含み、回路基板は、必要な入力電圧信号を測定チャネルに連結された電極に提供し、処理された出力電圧信号を読み取るようにプログラムされた。回路基板は、摺動接続を使用してボトルに接続された。それぞれの読み取りの前に、蠕動ポンプおよび回路基板は、適切なボトルまで移動し、そのボトルと接触するように構成された。
【0101】
大腸菌(ATCC 25922)が、この実験で使用された。2次培養は、TSB(RPI Corp.)内で37℃で10~14時間の間、一晩、培養された。1mlの2次培養懸濁液は、10分間、スピンダウンされ、新鮮な無菌TSB内で2回再懸濁された。光学密度は、約108CFU/mlの濃度を得るために調整された。懸濁液は、段階的に希釈され、実際のコロニーカウントを得るためにTSAプレートにプレーティングされた。適切な希釈液が、30mlの新鮮無菌TSBに添加されて、約10000CFU/mlの初期負荷を与えた。混合物は、その後、測定のためにボトルのリザーバに付加された。
【0102】
ボトルは、機械システムに挿入され、第1の読み取りの前に30分間、シェーキングされることを許容された。システムは、6時間の期間の間、特定の時間間隔で測定を行うように自動化された。したがって、実験の残りの最中に、サンプルハンドリングは、手動介入なしで自動化された。
【0103】
データは、上記で述べた方程式に曲線当てはめを行うことによって分析された:
y=a+b(1-e
-cx)
ここで、yは出力電圧であり、xは時間であり、aは初期電圧値(切片)であり、bはパルスの振幅であり、cは曲線の指数関数成分である。この特定の場合、実験の最中のベースラインからのパラメータCの増加は、サンプル組成物内の病原体の存在を示した。パラメータCについてのパーセンテージ変化は、6時間の実験にわたって約3.0%であると決定された。
図17はパラメータC対時間のグラフである。
【0104】
[例3]
流体デバイスは、例1において上記で述べたのと同じ方法で作られた。各流体デバイスは、1mm×1mm×50mmの高さ×幅×長さ(2つの電極間)寸法を有する流体トレンチチャネルを含んだ。電極は、測定チャネルの幅に沿ってオフセットした。それぞれの3D印刷された流体デバイスは、石鹸および温水でこすり洗いすることによって徹底的にクリーニングされた。乾燥後、各流体デバイスは、医療等級接着剤によってガラス顕微鏡スライドにシールされて、閉鎖測定チャネルを形成した。使用する前に、ガラス顕微鏡スライドは、石鹸および水でクリーニングされた。
【0105】
1mm径金コーティング円柱電極が使用された。電極から
図10によるTDIDシステムまでの電気コネクタは、実験の開始時に作られ、実験の期間の間、接続されたままであった。電気インターフェースは約2フィートの長さを有するBNCミニグラバーケーブルを含んだ。
【0106】
クレブシエラ・ニューモニエ(ATCC 700603)は、この調査において使用された病原性微生物であった。細菌の負荷培養を作成するために、クレブシエラ・ニューモニエは、トリプチックソイブイヨン培地(TSB)(RPI Corp.)内で37℃で10~14時間の間、一晩、培養された。翌朝、2次培養は、3時間の間、TSB内で37℃で培養されることを許容された。2次培養は、約108CFU/mlの濃度を有すると仮定された。2次培養は、その後、約104CFU/mlの濃度が得られるまで段階的
に希釈された。
【0107】
段階希釈から生じる各濃度(104、105、106、107、および108CFU/ml)の3つのアリコートが、測定チャネルに手動注入された。各アリコートは、150μlの所望の濃度の懸濁液を含んだ。
【0108】
本明細書で開示するTDIDシステムを使用するタイムドメインインピーダンス測定は、10KHzの周波数および1V(ピーク・ピーク間)電圧を有する電気方形パルスを電極に印加することによって行われた。電極は、その後、電気応答を検出した。このプロセスは、各濃度について反復された。
【0109】
データ生成および分析は、病原体の存在を判定するために、段階希釈について反復された。データは、曲線当てはめによって分析された。曲線当てはめ分析の場合、タイムドメインインピーダンスデータは、次のように数学的表現に当てはめられた:
y=(a/π)[arctan((x-b)/c)+(π/2)]
ここで、yは出力電圧であり、xは時間であり、aは初期電圧値(切片)であり、bは遷移高さであり、cは遷移中心であり、dは遷移幅である。初期濃度からのパラメータbおよびdの減少は、サンプル組成物内の病原体(細菌)の濃度の増加を示す。
【0110】
図18は、各濃度(10
4、10
5、10
6、10
7、および10
8CFU/ml)の3つのアリコートの分析についての、パラメータb(ボルト単位)対細菌の濃度のプロットであり、細菌濃度の増加に伴うパラメータbの線形減少を示す。Bをbとし、Dをdとしたいか?
図19は、各濃度(10
4、10
5、10
6、10
7、および10
8CFU/ml)の3つのアリコートの分析についての、パラメータd(マイクロ秒単位)対細菌の濃度のプロットであり、細菌濃度の増加に伴うパラメータdの実質的な曲線の減少を示す。
【0111】
図20は、3つのアリコートについての、パラメータbおよびパラメータdの積対細菌の濃度のプロットである(細菌濃度の増加に伴う2つパラメータの積の実質的な曲線の減少を示す)、一方、
図21は、3つのアリコートについての、パラメータbとパラメータdの商対細菌の濃度のプロットである(細菌濃度の増加に伴う2つパラメータの商の実質的な曲線の増加を示す)。当業者によって理解されるように、種々の曲線当てはめ方程式およびパラメータが、懸濁液にわたる液体媒体特性および病原体電荷貯蔵特性の変化を検出するために利用され得る。この例において、2つの異なるパラメータについての値は、段階希釈懸濁液の1つのセットからの曲線当てはめデータを通して決定された。パラメータbおよびパラメータdは共に、段階希釈懸濁液にわたる細菌濃度の増加を示す。数学的演算が、データをさらに分析するために2つのパラメータに対して実施された。これらの2つのパラメータ値の積および商は、細菌濃度にわたる両方の値についての指向的傾向(積の場合、値を減少される;商の場合、値を増加させる)が存在することを立証する。これらの結果は、複数のパラメータに対する数学的演算の適用が、サンプル組成物内の病原体の存在を同様に示す値を作成し得ることを立証する。特定の数学方程式が、生物システムおよびそのコンポーネントに応じてこの実験についてのこれらの特定のパラメータを抽出するために使用されたが、種々の他の数学的曲線当てはめ方程式およびパラメータが、本明細書で述べる方法と共に使用され得る。
【0112】
先行する例とは別に、電気応答に対する、システム構成の差(例えば、電極間隔)および/または動作パラメータ(例えば、病原体濃度および入力電圧)の影響を示すために、種々の実験が実施された。そのような実験の結果は
図22~
図24において作表される。
【0113】
図22は、一実施形態によるTDIDシステムを利用することによって得られる、TS
B内の2つの異なる濃度(10
4CFU/mlおよび10
8CFU/ml)の大腸菌の場合の、20の1V DCパルスの印加に応答する、平均の立ち上がりエッジ出力(応答)信号についての、電圧(V)対時間(μs)のプロットである。そのような図は、約0ボルトの電圧値の上のまたその下の2つの応答信号の差を示し、2つのプロットの間の完全オーバラップの欠如を立証した。
【0114】
図23は、一実施形態によるTDIDシステムを利用することによって得られる、2つの電極間の異なる距離(0.5cm、1cm、2cm、および5cm)を有する4つの測定チャネル内のTSBの場合の、20の1V DCパルスの印加に応答する、平均の立ち上がりエッジ出力(応答)信号についての、電圧(V)対時間(μs)のプロットである。そのような図は、異なる電極間隔値について、電気応答プロットの形状における非常に有意な差を示す-より小さい電極間隔値は、定常状態電気応答のより迅速でかつほぼ指数関数的な到達を容易にし、より大きい電極間隔値は、定常状態電気応答のよりゆっくりでかつほぼ直線的な到達を容易にする。
【0115】
図24は、一実施形態によるTDIDシステムを利用することによって得られる、3つの異なる印加電圧(500mV、1V、および2V)を有する20のDCパルスの印加に応答する、平均化した立ち上がりエッジ出力(応答)信号についての、電圧(V)対時間(μs)のプロットである。そのような図は、異なる印加電圧について、電気応答プロットの形状における有意の差を示し、より高い電圧値は、定常状態電気応答のゆっくりした到達に対応する傾向がある。
【0116】
そのため、
図22~
図24は、多数の異なるシステム構成の差および/または動作パラメータ(バルク懸濁液特性(例えば、病原体電荷貯蔵特性を含む)、電極間の距離、および印加電圧を含むが、それに限定されない)が応答信号に影響を及ぼし得ることを立証する。DCパルス用の印加電圧および/または懸濁液内の微生物濃度を変更することは、応答信号立ち上がりエッジの傾斜を変更する。少なくとも2つの電極間の距離を変更することは、応答信号立ち上がりエッジの傾斜を変更する。データ分析および正規化の最良モードは、本明細書で開示されるTDIDシステムの特性に応じて変動する場合がある。電気応答信号の立ち上がりエッジの形状を変更することができる、本明細書で開示されるTDIDシステムおよび方法の多くの他の特性(例えば、システム構成の差および/または動作パラメータ)が存在することが理解される。
図22~
図24に示さないが、同様の変化が、応答信号の立ち下がりエッジに関して同様に観測され得ることが理解される。当業者によって理解されるように、本明細書で開示されるTDIDシステムの種々のシステム構成の差および/または動作パラメータの任意のものを、分析を容易にするため、対応する電気出力信号を最適化する(対応する電気出力信号の信号対ノイズ比を増加させる)ように調整することができる。
【0117】
当業者は、本開示の好ましい実施形態に対する改善および修正を認識するであろう。全てのそのような改善および修正は、本明細書で開示する概念および添付の特許請求の範囲内にあると考えられる。