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  • 特許-腎機能改善剤 図1
  • 特許-腎機能改善剤 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】腎機能改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/64 20150101AFI20240426BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240426BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240426BHJP
【FI】
A61K35/64
A61P13/12
A23L33/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023072453
(22)【出願日】2023-04-26
(62)【分割の表示】P 2023000822の分割
【原出願日】2023-01-06
【審査請求日】2023-04-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構「ムーンショット型農林水産研究開発事業」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503303466
【氏名又は名称】学校法人関西文理総合学園
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】小倉 淳
(72)【発明者】
【氏名】永井 信夫
(72)【発明者】
【氏名】俣野 泰毅
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2021-0147181(KR,A)
【文献】特開2019-210269(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0148712(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111110809(CN,A)
【文献】特開2009-234984(JP,A)
【文献】Mi Yong Ahn et al.,The FASEB Journal,2018年,32(51),p.673.7,https://doi.org/10.1096/fasebj.2018.32.1_supplement.673.7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/AGRICOLA/FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コオロギの粉末を有効成分として含む、腎機能改善剤。
【請求項2】
血液中の尿素窒素の量及び/又はクレアチニン量の低下機能を有する、請求項1記載の剤。
【請求項3】
糖尿病患者用である、請求項1記載の剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項記載の剤を含む、腎機能改善用の、機能性食品又はサプリメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腎機能改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓は、全身をめぐる血液から老廃物や毒素を取り除き、血液を浄化する機能を有する。腎臓で濾過された老廃物や毒素は、尿中に排泄され、体の外へ送り出される。ここで、腎臓が正常に機能しているか否かを判断する一つの手法が、血液中に含まれる尿素窒素の量(BUN)やクレアチニン量(CRE)である。尿素は、蛋白質の代謝副産物であり、腎機能が低下するとBUN値が上昇する。また、クレアチニンは、血液中の老廃物の一種であり、本来なら尿中へどんどん排泄されるものである。腎臓の機能が低下すると、血液中にクレアチニンが溜まって血清クレアチニン値が上昇する。例えば、糖尿病患者は、これら数値が高くなることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2002-543386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、腎機能を改善する新規成分を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、コオロギ成分を含む、腎機能改善剤である。ここで、本発明は、血液中の尿素窒素の量及び/又はクレアチニン量の低下機能を有していてもよい。更に、本発明は、糖尿病患者用であってもよい。また、本発明は、上記剤を含む、機能性食品又はサプリメントであってもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、腎機能を改善する新規成分を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施例における、糖尿病マウスにおいてヨーロッパイエコオロギ粉が血中尿素窒素及びクレアチニンに及ぼす影響の評価を示した図である。
図2図2は、実施例における、糖尿病マウスにおいてCPが腎臓の組織構造に及ぼす影響の評価を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本形態は、コオロギ成分を含む、腎機能改善剤である。以下、本形態に係る腎機能改善剤を詳述する。
【0009】
≪腎機能改善剤≫
本形態に係る腎機能改善剤は、コオロギ成分を含む。ここで、コオロギ成分を含むものであれば、特に限定されず、典型的には、コオロギそのものでも、コオロギの粉末や該粉末の圧着物であっても、コオロギの抽出物であってもよい。
【0010】
ここで、原料であるコオロギは、コオロギ科昆虫であれば特に限定されず、例えば、ヨーロッパイエコオロギ、フタホシコオロギ、エンマコオロギ、ミツカドコオロギ、オカメコオロギ、ツヅレサセコオロギ等が挙げられる。これらの内、ヨーロッパイエコオロギであることが好ましい。
【0011】
≪製造方法≫
本形態に係る剤は、好適には、粉末又は抽出物である。ここで、コオロギの粉末手法は、特に限定されず、例えば、コオロギを煮沸・乾燥した後、粉砕して粉末状にする手法でよい。また、コオロギの抽出手法も、特に限定されず、例えば、真空低温抽出手法であってもよい。
【0012】
≪用途≫
本形態に係る剤は、腎機能改善に有効である。特に、本形態に係る剤は、糖尿病患者に有効である。また、本形態に係る剤は、単独で又は他の成分と共に、機能性食品の形態でもサプリメントの形態であってもよい。ここで、適用方法は、例えば、一日当たり最大投与量を3000 mg/kgとして1回経口摂取する。
【実施例
【0013】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例には限定されない。
【0014】
≪腎機能評価≫
動物舎で1週間馴化させたC57BL/6J系統マウスの健康状態を確認して体重測定を行ない、正常+0.9% 生理食塩水(SA)投与群、正常+ヨーロッパイエコオロギ粉(CP: Cricket powder)投与群(3000 mg/kg)、糖尿病(DM)+ 0.9% SA投与群、DM+CP投与群(3000 mg/kg)及びDM+ Astaxanthin(AXT:10 mg/kg)投与群の5群に分けた(8-12 匹/群)。糖尿病モデルマウスは、膵臓のランゲルハンス島β細胞を選択的に破壊し、インスリン分泌を抑制するStreptozotocin(STZ)を100 mg/kg/dayで腹腔内へ2週間連続投与を行い誘導した。また、STZ投与8日目以降にマウスの尾静脈からの部分採血により血糖値を測定し、血糖値が400 mg/dL以上で糖尿病が誘導されたとした。DM群の全てのマウスで糖尿病が誘導された日をDay 0としてDay 1から各群で60日間の連続経口投与を開始し、体重測定、状態異常及び生死を毎日確認した。60日目の投与後に安楽死前3時間の絶食を行い、200 mg/kgのセコバルビタールナトリウム溶液の腹腔内投与による深麻酔を誘導し、ヘパリンナトリウムの抗凝固条件下で全採血を行なった後に腎臓を摘出した。採血した血液は4℃、3300 rpmで15分間遠心し、血漿を解析用サンプルとした。また、摘出した腎臓を4%パラホルムアルデヒド溶液(0.1M リン酸 バッファー pH7.4)で固定後にパラフィンで包埋し、ミクロトームを用いて切片を作成した。血漿中に含まれるタンパク質の代謝副産物である尿素窒素(BUN)、クレアチンリン酸の代謝副産物であるクレアチニン(CRE)の濃度を富士ドライケムを用いて測定した結果、図1に示す通り、正常群では、CP投与による血中BUN及びCRE濃度の減少傾向が確認できた。更に、DM群では、CP投与による血中BUN及びCRE濃度の顕著な減少が確認できた。統計検定にはOne-way ANOVAを用いてp <0.05を有意差有りとし、グラフのカラム内にマウスの使用個体数を示した。また、腎臓切片のHematoxylinとEosin染色を行い、組織構造を評価した結果、図2に示す通り、DM群でControl群と比較して糸球体(矢印)の萎縮が認められた(矢頭)。この糸球体萎縮はCP投与により抑制傾向が認められたが、AXT投与群では萎縮が認められた(矢頭)。

【要約】
【課題】 腎機能を改善する新規成分を提供することである。
【解決手段】 コオロギ成分を含む、腎機能改善剤である。
【選択図】 図1
図1
図2