(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】電極シート及び2次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20240426BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240426BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240426BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20240426BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20240426BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20240426BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M50/533
H01M50/534
H01M50/536
(21)【出願番号】P 2023579859
(86)(22)【出願日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2023018250
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522369728
【氏名又は名称】TeraWatt Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大山 剛輔
(72)【発明者】
【氏名】三宅 実
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 一樹
(72)【発明者】
【氏名】坂下 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-213338(JP,A)
【文献】特表2020-533734(JP,A)
【文献】特開2010-40488(JP,A)
【文献】特開2004-253350(JP,A)
【文献】特開2020-177751(JP,A)
【文献】特開2016-207576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0587
H01M 4/13
H01M 4/66
H01M 50/533
H01M 50/534
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向と短手方向とを有し、前記短手方向を軸方向として巻回されることにより2次電池の電極を構成する電極シートであって、
樹脂層と、当該樹脂層の両面のそれぞれに設けられた第1集電層及び第2集電層とを備える集電体と、
前記第1集電層の、前記樹脂層とは反対側の面に設けられた第1活物質層と、
前記第1集電層の前記短手方向の一端に接合され、当該接合により前記長手方向に沿って第1接合痕が形成されている第1金属シートであって、前記第1集電層よりも前記短手方向に延出する第1延出部を有する、第1金属シートと、
を備える、電極シート。
【請求項2】
前記第1延出部には、一以上の切り込みが設けられている、請求項1に記載の電極シート。
【請求項3】
前記一以上の切り込みは、前記短手方向に沿って設けられている、請求項2に記載の電極シート。
【請求項4】
前記第1延出部には、前記短手方向に窪む凹部が前記長手方向に沿って複数設けられている、請求項1に記載の電極シート。
【請求項5】
前記複数の凹部は、互いに一定間隔離間して設けられている、請求項4に記載の電極シート。
【請求項6】
前記凹部は、矩形状である、請求項4に記載の電極シート。
【請求項7】
前記第1接合痕は、溶接痕である、請求項1に記載の電極シート。
【請求項8】
前記第1接合痕は、前記第1金属シートから前記第1集電層にわたって形成されている、請求項7に記載の電極シート。
【請求項9】
前記第1接合痕は、前記長手方向に沿って、線状又は複数の点状に形成されている、請求項8に記載の電極シート。
【請求項10】
前記第1接合痕は、前記第1金属シートから前記第2集電層にわたって形成されている、請求項7に記載の電極シート。
【請求項11】
前記集電体は、前記第1接合痕を含む断面において、前記第2集電層から前記第1集電層に向かう方向に窪んだ形状である、請求項10に記載の電極シート。
【請求項12】
前記集電体は、前記第1接合痕を含む断面において、前記第1集電層及び前記第2集電層が一体化された領域を有する、請求項10に記載の電極シート。
【請求項13】
前記第2集電層の、前記樹脂層とは反対側の面に設けられた第2活物質層と、
前記第2集電層の前記短手方向の一端に接合され、当該接合により前記長手方向に沿って第2接合痕が形成されている第2金属シートであって、前記第2集電層よりも前記短手方向に延出する第2延出部を有する、第2金属シートと、をさらに備える、請求項1に記載の電極シート。
【請求項14】
前記第2接合痕は、溶接痕であり、前記第2接合痕を含む断面において、前記第1集電層から前記第2集電層に向かう方向に窪んだ形状である、請求項13に記載の電極シート。
【請求項15】
前記第1延出部と前記第2延出部とが互いに接合されている、請求項13に記載の電極シート。
【請求項16】
前記第1金属シートは、前記第1活物質層との間に0.1mm~10mmの間隔を空けて前記一端に接合される、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の電極シート。
【請求項17】
前記第1活物質層は、正極活物質であり、
前記第1金属シートは、アルミニウムを含む金属である、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の電極シート。
【請求項18】
前記第1活物質層は、負極活物質であり、
前記第1金属シートは、銅を含む金属である、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の電極シート。
【請求項19】
それぞれが長手方向と短手方向とを有する正極シート及び負極シートにセパレータを挟んだ積層シートを、前記短手方向を軸方向として巻回することにより構成される2次電池であって、
前記正極シートは、
正極側樹脂層と、当該正極側樹脂層の両面のそれぞれに設けられた第1正極側集電層及び第2正極側集電層とを備える正極側集電体と、
前記第1正極側集電層の、前記正極側樹脂層とは反対側の面に設けられた正極活物質層と、
前記第1正極側集電層の前記短手方向の一端に接合され、当該接合により前記長手方向に沿って第1接合痕が形成されている正極側金属シートであって、前記第1正極側集電層よりも前記短手方向に延出する正極側延出部を有する、正極側金属シートと、
を備え、
前記負極シートは、
負極側樹脂層と、当該負極側樹脂層の両面のそれぞれに設けられた第1負極側集電層及び第2負極側集電層とを備える負極側集電体と、
前記第1負極側集電層の、前記負極側樹脂層とは反対側の面に設けられた負極活物質層と、
前記第1負極側集電層の前記短手方向の一端に接合され、当該接合により前記長手方向に沿って負極側接合痕が形成されている負極側金属シートであって、前記第1負極側集電層よりも前記短手方向に延出する負極側延出部を有する、負極側金属シートと、
を備え、
前記セパレータは、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の間に設けられる、2次電池。
【請求項20】
前記軸方向の一端に配置され、前記正極側延出部と電気的に接続される正極用電極タブと、
前記軸方向の他端に配置され、前記負極側延出部と電気的に接続される負極用電極タブと、をさらに備える、請求項19に記載の2次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、電極シート及び2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光又は風力等の自然エネルギーを電気エネルギーに変換する技術が注目されている。これに伴い、安全性が高く、かつ多くの電気エネルギーを蓄えることができる蓄電デバイスとして、様々な2次電池が開発されている。
【0003】
その中でも、正極及び負極の間をリチウムイオンが移動することで充放電を行うリチウム2次電池は、高電圧及び高エネルギー密度を示すことが知られている。典型的なリチウム2次電池として、正極及び負極がリチウム元素を保持するための活物質を有するリチウムイオン2次電池(LIB)が知られている。リチウムイオン2次電池では、正極活物質及び負極活物質の間でリチウムイオンが授受されることで充放電が行われる。
【0004】
また、リチウムイオン2次電池の安全性を高めることを目的とする集電体が開発されている。例えば、特許文献1には、電気抵抗は従来と同等レベルを維持しつつ、過充電時や高温下で発生する異常発熱の際に発火を防止する正・負極構成を提供することを目的とするリチウムイオン2次電池が開示されている。
【0005】
また、発熱を抑制することを目的として、オーム抵抗が小さい2次電池が開発されている。例えば、特許文献2には、電極集電体と缶内面との間により均一な電気的接触を提供するエネルギー貯蔵デバイスのセルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-102711号公報
【文献】特表2022-512776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、2次電池の有用性を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一つの例示的実施形態において、長手方向と短手方向とを有し、短手方向を軸方向として巻回されることにより2次電池の電極を構成する電極シートであって、樹脂層と、当該樹脂層の両面のそれぞれに設けられた第1集電層及び第2集電層とを備える集電体と、第1集電層の、樹脂層とは反対側の面に設けられた第1活物質層と、第1集電層の短手方向の一端に接合され、当該接合により長手方向に沿って第1接合痕が形成されている第1金属シートであって、第1集電層よりも短手方向に延出する第1延出部を有する、第1金属シートと、を備える2次電池が提供される。
【0009】
本開示の他の一つの例示的実施形態において、それぞれが長手方向と短手方向とを有する正極シート及び負極シートにセパレータを挟んだ積層シートを、短手方向を軸方向として巻回することにより構成される2次電池であって、正極シートは、正極側樹脂層と、当該正極側樹脂層の両面のそれぞれに設けられた第1集電層及び第2集電層とを備える正極側集電体と、第1集電層の、正極側樹脂層とは反対側の面に設けられた正極活物質層と、第1集電層の短手方向の一端に接合され、当該接合により長手方向に沿って第1接合痕が形成されている第1金属シートであって、第1集電層よりも短手方向に延出する第1延出部を有する、第1金属シートと、を備え、負極シート5は、負極側樹脂層と、当該負極側樹脂層の両面のそれぞれに設けられた第3集電層及び第4集電層とを備える負極側集電体と、第3集電層の、負極側樹脂層とは反対側の面に設けられた負極活物質層と、第3集電層の短手方向の他端に接合され、当該接合により長手方向に沿って第3接合痕が形成されている第3金属シートであって、第3集電層よりも短手方向に延出する第3延出部を有する、第3金属シートと、を備え、セパレータは、正極活物質層及び負極活物質層に接する2次電池が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、2次電池の有用性を向上させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態にかかる電極シートの構成例を説明するための図である。
【
図2】第1実施形態にかかる電極シートの構成例を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態にかかる電極シートの構成例を説明するための図である。
【
図4】第1実施形態にかかる電極シートの構成例を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態にかかる電極シートの構成例を説明するための図である。
【
図6】第2実施形態にかかる電極シートの構成例を説明するための図である。
【
図7】第2実施形態にかかる電極シートの構成例を説明するための図である。
【
図8】第2実施形態にかかる電極シートの構成例を説明するための図である。
【
図9】2次電池の構成例を説明するための図である。
【
図10】2次電池の構成例を説明するための図である。
【
図11】2次電池の構成例を説明するための図である。
【
図12】電極シートの変形例を説明するための図である。
【
図13】電極シートの変形例を説明するための図である。
【
図14】電極シートの変形例を説明するための図である。
【
図15】電極シートの変形例を説明するための図である。
【
図16】電極シートの変形例を説明するための図である。
【
図17】電極シートの変形例を説明するための図である。
【
図18】電極シートの変形例を説明するための図である。
【
図19】電極シートの変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0013】
一つの例示的実施形態において、長手方向と短手方向とを有し、短手方向を軸方向として巻回されることにより2次電池の電極を構成する電極シートであって、樹脂層と、当該樹脂層の両面のそれぞれに設けられた第1集電層及び第2集電層とを備える集電体と、第1集電層の、樹脂層とは反対側の面に設けられた第1活物質層と、第1集電層の短手方向の一端に接合され、当該接合により長手方向に沿って第1接合痕が形成されている第1金属シートであって、第1集電層よりも短手方向に延出する第1延出部を有する、第1金属シートと、を備える、電極シートが提供される。
【0014】
一つの例示的実施形態において、第1延出部には、一以上の切り込みが設けられている。
【0015】
一つの例示的実施形態において、一以上の切り込みは、短手方向に沿って設けられている。
【0016】
一つの例示的実施形態において、第1延出部には、短手方向に窪む凹部が長手方向に沿って複数設けられている。
【0017】
一つの例示的実施形態において、複数の凹部は、互いに一定間隔離間して設けられている。
【0018】
一つの例示的実施形態において、凹部は、矩形状である。
【0019】
一つの例示的実施形態において、第1接合痕は、溶接痕である。
【0020】
一つの例示的実施形態において、第1接合痕は、第1金属シートから第1集電層にわたって形成されている。
【0021】
一つの例示的実施形態において、第1接合痕は、長手方向に沿って、線状又は複数の点状に形成されている。
【0022】
一つの例示的実施形態において、第1接合痕は、第1金属シートから第2集電層にわたって形成されている。
【0023】
一つの例示的実施形態において、集電体は、第1接合痕を含む断面において、第2集電層から第1集電層に向かう方向に窪んだ形状である。
【0024】
一つの例示的実施形態において、集電体は、第1接合痕を含む断面において、第1集電層及び第2集電層が一体化された領域を有する。
【0025】
一つの例示的実施形態において、第2集電層の、樹脂層とは反対側の面に設けられた第2活物質層と、第2集電層の短手方向の一端に接合され、当該接合により長手方向に沿って第2接合痕が形成されている第2金属シートであって、第2集電層よりも短手方向に延出する第2延出部を有する、第2金属シートと、をさらに備える。
【0026】
一つの例示的実施形態において、第2接合痕は、溶接痕であり、第2接合痕を含む断面において、第1集電層から第2集電層に向かう方向に窪んだ形状である。
【0027】
一つの例示的実施形態において、第1延出部と第2延出部とが互いに接合されている。
【0028】
一つの例示的実施形態において、第1金属シートは、第1活物質層との間に0.1mm~10mmの間隔を空けて一端に接合される。
【0029】
一つの例示的実施形態において、第1活物質層は、正極活物質であり、第1金属シートは、アルミニウムを含む金属である。
【0030】
一つの例示的実施形態において、第1活物質層は、負極活物質であり、第1金属シートは、銅を含む金属である。
【0031】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0032】
本開示において、2次電池2の有用性とは、2次電池2のエネルギー密度、安全性、製造に要する金銭的なコスト及び製造の効率等の少なくとも一部を含む。
【0033】
また、本開示において、2次電池2は典型的にはリチウムイオン2次電池であるとして説明するが、他の種類の2次電池に対しても適用可能である。
【0034】
<第1実施形態に係る電極シート1の構成例>
図1-
図5は、第1実施形態に係る電極シート1の構成例について説明するための図である。
【0035】
図1は、電極シート1の構成例を説明するための俯瞰図である。電極シート1は、長手方向と短手方向とを有する。長手方向は、
図1におけるx軸と平行な方向である。短手方向は、
図1におけるy軸と平行な方向である。2次電池2は、電極シート1を短手方向を軸方向として巻回することにより構成される。
【0036】
図2は、
図1における領域100の部分を切り出した断面斜視図である。
図2のとおり、電極シート1は、集電体3と、第1活物質層16a及び第2活物質層16bと、第1金属シート20aとを備える。
【0037】
[集電体3]
集電体3は、樹脂層10と、第1集電層12aと、第2集電層12bとにより構成される。第1集電層12aは樹脂層10のz軸の正の方向の面に設けられる。第2集電層12bは樹脂層10のz軸の負の方向の面に設けられる。
【0038】
樹脂層10は、例えば、シート状(フィルム状)又は繊維状の樹脂で構成されてよい。樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂の少なくとも1つであってよい。樹脂層10は、当該樹脂の少なくとも1つ以上が複数積層されて構成されてもよい。一実施形態において、樹脂層10は、融点が130℃以上300℃以下の材料から形成される。一実施形態において、樹脂層10の平均厚さは、2μm以上15μm以下、又は、3μm以上10μm以下でよい。
【0039】
樹脂層10を備えるように集電体3を構成すると、電極シート1の安全性が高まる。樹脂層10は、2次電池2が過充電等により異常発熱した際に溶融する材質で構成される。樹脂層10が溶融すると、電極シート1が破損するため、電池内部の電流が遮断される。これにより、電池の発火等が抑制され得る。
【0040】
第1集電層12a及び第2集電層12bは、それぞれ第1活物質層16a及び第2活物質層16bから電力を取り出すための層である。第1集電層12a及び第2集電層12bの材質は、例えば、アルミニウムを含む金属である。一実施形態において、第1集電層12a及び第2集電層12bは集電体3において樹脂層10を挟むように形成される。そのため、第1集電層12a及び第2集電層12bは、後述する第1接合痕24aの領域202以外の部分では通電しない。
【0041】
一実施形態において、第1集電層12a及び第2集電層12bは、リチウムイオンと反応しない導電体から構成される。一実施形態において、第1集電層12a及び第2集電層12bは、アルミニウム、チタン、ステンレス、ニッケル及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも一種の材料から構成される。第1集電層12a及び第2集電層12bは、一例では、アルミニウム又はアルミニウム合金である。一実施形態において、第1集電層12a及び第2集電層12bは、上記材料を樹脂層10の表面に、蒸着、スパタリング、電解めっき又は貼り合わせすることで形成される。一実施形態において、第1集電層12a及び第2集電層12bの平均厚さは、1.0μm以上15μm以下、2.0μm以上10μm以下、又は、3.0μm以上6.0μm以下でよい。
【0042】
[第1活物質層16a及び第2活物質層16b]
第1活物質層16aは、第1集電層12aの樹脂層10とは反対側の面(すなわち、
図2では、第1集電層12aからz軸の正の方向の面)に設けられた層である。また、第2活物質層16bは、第2集電層12bの樹脂層10とは反対側の面(すなわち、
図2では、第2集電層12bからz軸の負の方向の面)に設けられた層である。第1活物質層16a及び第2活物質層16bは、活物質により構成される。
【0043】
一実施形態において、第1活物質層16a及び第2活物質層16bは、同じ種類の活物質により構成される。例えば、第1活物質層16aが正極活物質により構成される場合、第2活物質層16bも同様に正極活物質により構成される。他にも、例えば、第1活物質層16aが負極活物質により構成される場合、第2活物質層16bも同様に負極活物質により構成される。
【0044】
正極活物質は、キャリア金属を電極シート1に保持するための物質であり、キャリア金属のホスト物質ということもできる。正極活物質は、リチウムイオンを電極シート1に保持するための物質でよく、この場合、電池の充放電により正極活物質にリチウムイオンが充填及び脱離される。これにより、電池の安定性及び出力電圧が向上され得る。一実施形態において、正極活物質は、金属酸化物又は金属リン酸塩である。金属酸化物は、例えば、酸化コバルト系化合物、酸化マンガン系化合物、又は、酸化ニッケル系化合物でよい。金属リン酸塩は、例えば、リン酸鉄系化合物、又はリン酸コバルト系化合物でよい。一実施形態において、正極活物質は、LiCoO2、LiNixCoyMnzO(x+y+z=1)、LiNixCoyAlzO(x+y+z=1)、LiNixMnyO(x+y=1)、LiNiO2、LiMn2O4、LiFePO、LiCoPO、LiFeOF、LiNiOF、及びLiTiS2からなる群から選択される少なくとも1つでよい。正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。一実施形態において、第1活物質層16a及び第2活物質層16bにおける正極活物質の含有量は、第1活物質層16a及び第2活物質層16bの全体に対して50質量%~100質量%以下でよい。
【0045】
負極活物質は、負極において電極反応、すなわち酸化反応及び還元反応を生じる物質である。負極活物質は、例えば、リチウム金属及びリチウム金属を含む合金、炭素系物質、金属酸化物、並びにリチウムと合金化する金属及び該金属を含む合金等でよい。上記炭素系物質は、例えば、グラフェン、グラファイト、ハードカーボン、カーボンナノチューブ等でよい。上記金属酸化物は、例えば、酸化チタン系化合物、酸化コバルト系化合物等でよい。上記リチウムと合金化する金属は、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、及びガリウムでよい。
【0046】
2次電池2のエネルギー密度を向上させる観点から、電極シート1は、上述のとおり、第1活物質層16a及び第2活物質層16bの両方によって構成されてよい。しかし、一実施形態において、電極シート1は、第1活物質層16a及び第2活物質層16bの一方を備えなくてもよい。
【0047】
[第1金属シート20a]
第1金属シート20aは、第1集電層12a及び第2集電層12bと、外部の電極タブとを通電させるための部材である。第1金属シート20aは、第1集電層12aの短手方向の一端(
図2では、y軸の負の方向の端)に接合される。第1金属シート20aが第1集電層12aに対して接合された箇所には、第1接合痕24aが形成されている。第1金属シート20aの材質は、例えば、アルミニウム又は銅を含む金属である。第1金属シート20aの厚さは、例えば、3μm~20μmであってよい。
【0048】
一実施形態において、第1金属シート20aは、第1活物質層16aとの間に所定の間隔204を空けて第1集電層12aに対して接合される。所定の間隔204を空けることにより、正極側の電極シート1と負極側の電極シート1とを積層した場合の短絡のリスクが抑制される。一実施形態において、所定の間隔204は、0.1mm~10mmであってよく、1mm~5mmであってもよい。
【0049】
第1金属シート20aは、第1集電層12aとの間の通電が阻害されない方法によって第1集電層12aに対して接合される。第1金属シート20aは、第1集電層12aとの間に原子レベルの結合(例えば、金属結合)を生じさせる方法によって接合されてよい。このような接合によれば、第1金属シート20aと第1集電層12aとの間の熱伝導性が高まる。
【0050】
第1金属シート20aは、第1集電層12aに対して、冶金的接合、機械的接合及び化学的接合のいずれによって接合されてもよい。冶金的接合は、溶接、圧接及びろう接を含む。溶接は、例えば、アーク溶接、電子ビーム溶接、ガス溶接及びレーザ溶接等を含む。圧接は、例えば、超音波接合、摩擦圧接及び拡散接合等を含む。ろう接は、例えば、はんだ付け等を含む。機械的接合は、例えば、リベット、かしめ、ボルト接合、焼き嵌め及び折り込み等を含む。化学的接合は、例えば、接着剤に接着等を含む。
【0051】
一実施形態において、第1金属シート20aは、超音波接合により第1集電層12aに対して接合される。超音波接合は、2つの金属の間に圧力と振動を加えることにより、当該2つの金属の間に原子レベルの結合を生じさせる接合方法である。超音波接合により形成された接合痕は、金属が溶融することもあるため、溶接痕であるということもできる。
【0052】
超音波接合は、短時間で第1金属シート20aを第1集電層12aに対して接合することを可能にする。また、超音波接合は、熱を加えずに第1金属シート20aを第1集電層12a対して接合することを可能にする。また、超音波接合は、接合のために他の材料を消費しない。以上のとおり、超音波接合は、電極シート1の製造効率を向上させうる。一実施形態において、超音波接合は、連続して処理が可能なロータリー超音波接合であってよい。
【0053】
第1金属シート20aは、第1延出部40a及び第1接合痕24aを有する。
図3-
図5は、第1金属シート20aをより詳細に説明するための図である。
【0054】
[第1延出部40a]
図3は、
図1におけるII-II断面の断面図である。一実施形態において、第1延出部40aは、第1金属シート20aのうち、集電体3と重なっていない部分の少なくとも一部である。第1延出部40aは、第1金属シート20aが集電体3から受け取った熱を外部に排出する。第1延出部40aの短手方向の長さは、0.5mm~20mmであってよく、2mm~15mmであってもよい。第1延出部40aの短手方向の長さは、第1金属シート20aの短手方向の全長に対して10%~90%であってよく、30%~80%であってもよい。電極シート1を短手方向を軸方向として巻回することにより構成される2次電池2は、軸方向(短手方向)の端部に第1延出部40aを有することになる。このとき第1延出部40aは、第1金属シート20aが集電体3から受け取った熱を外部に排出する放熱体として機能しうる。第1金属シート20aは、樹脂層10を含む集電体3よりも熱伝導性が高く、第1延出部40aを介して2次電池2の内部の熱を効率的に外部に排出させることができる。すなわち、第1延出部40aを有することにより、2次電池2の放熱性が向上し得る。
【0055】
[第1接合痕24a]
第1接合痕24aは、第1金属シート20a及び集電体3が重なっている位置に設けられる。また、第1接合痕24aは、第1金属シート20aの長手方向に沿って線状に設けられる(
図1-
図2参照)。また、
図3のとおり、第1接合痕24aは、第1金属シート20aから第1集電層12a及び第2集電層12bにわたって形成されている。
【0056】
図4は、第1接合痕24a周辺の拡大図である。
図4のとおり、集電体3は、第1接合痕24aを含む断面において、第2集電層12bから第1集電層12aに向かう方向に窪んだ形状となっている。第1接合痕24aは、第1金属シート20aが設けられていない第2集電層12bの面から、第1金属シート20aが設けられている第1集電層12aの面に向かって圧力を作用させることで形成される。一実施形態において、第1接合痕24aは、超音波接合用のホーンを第2集電層12bの面から第1集電層12aの面に向かって押し当てることによって形成される。この際、第2集電層12bとは反対側にある第1集電層12aは、製造上の理由(例えば、ホーンに対応するアンビルによって圧力がかかること等)により変形することがあってよい。
【0057】
このように、第1金属シート20aが設けられていない面から圧力を作用させて第1金属シート20aを第1集電層12aに対して接合することにより、電極シート1の製造時の歩留まりの低下を抑制することができる。仮に、第1金属シート20aの上からホーンを押し当てると、ホーンと第1金属シート20aとの間の接着力が、第1金属シート20aと第1集電層12aとの間の接着力を上回る場合がある。このような場合、超音波接合用のホーンを第1金属シート20aから取り外す際に第1金属シート20aと第1集電層12aとの間の接合が剥離する可能性が高まる。これは、超音波接合を行う際に、ホーンと第1金属シート20aとの間で大きな発熱が生じるからであると考えられる。これに対して、ホーンを第2集電層12bの上から押し当てた場合には比較的発熱が抑えられるため、ホーンを取り外す際の接合の剥離を抑制することができる。
【0058】
集電体3は、第1接合痕24aを含む断面において、第1集電層12a及び第2集電層12bが一体化された領域202を有する。一実施形態において、領域202では、第1金属シート20a、第1集電層12a及び第2集電層12bが超音波接合により溶融している。これにより、第1金属シート20aは、領域202を介して、樹脂層10の両面に設けられている第1集電層12a及び第2集電層12bと通電することが可能になる。したがって、第1集電層12a及び第2集電層12bから電力を取り出すためには、第1金属シート20aを外部の電極タブに接続すれば足りる。
【0059】
第1接合痕24aは、第1金属シート20aの長手方向に沿って設けられるため、電極シート1の電気抵抗の増加およびこれによる発熱が抑制される。仮に第1接合痕24aが第1金属シート20aの長手方向の一部(例えば、長手方向の一端)にのみ設けられているとした場合、第1接合痕24aが第1金属シート20aの長手方向全体にわたって設けられている場合と比較して、第2集電層12bと第1金属シート20aとの間の電子の平均移動距離が増加する。これにより、第2集電層12bと第1金属シート20aとの間の電気抵抗が増加し、さらには発熱量が増加する。すなわち、第1金属シート20aが長手方向に沿って第1集電層12aと接合されることにより、電子の平均移動距離が抑制され、電気抵抗及び発熱も抑制される。
【0060】
また、第1接合痕24aは、第1金属シート20aの長手方向に沿って設けられるため、電極シート1の可用性が高まる。仮に第1接合痕24aが第1金属シート20aの長手方向の一部(例えば、長手方向の一端)にのみ設けられているとした場合、その接合箇所が破損したら、少なくとも第2集電層12bからは電力を取り出すことができなくなる。これに対して、第1金属シート20aが長手方向に沿って第1集電層12aと接合されることにより、接合箇所の一部が破損したとしても残りの接合箇所において第1金属シート20aと第2集電層12bとが通電するため、引き続き第2集電層12bから電力を取り出すことができる。
【0061】
また、第1接合痕24aは、第1金属シート20aの長手方向に沿って設けられるため、電極シート1の破損が抑制される。仮に第1接合痕24aが第1金属シート20aの長手方向の一部(例えば、長手方向の一端)にのみ設けられているとした場合、その接合箇所に電流が集中し、過熱等により接合箇所が破損する可能性が高まる。これに対して、第1金属シート20aが長手方向に沿って第1集電層12aと接合されることにより、電流が接合箇所全体に分散し、過熱等が発生する可能性が低くなる。
【0062】
なお、
図4では、集電体3が、第1接合痕24aを含む断面において、第2集電層12bから第1集電層12aに向かう方向に窪んだ形状である場合について説明したが、これに限られない、具体的には、
図5のように、集電体3は、第1接合痕24aを含む断面において、第1集電層12aから第2集電層12bに向かう方向に窪んだ形状であってもよい。すなわち、第1接合痕24aは、金属シート20aの上から超音波接合用のホーンを押し当てることによって形成されてもよい。
【0063】
<第2実施形態に係る電極シート1の構成例>
図6-
図8は、第2実施形態に係る電極シート1の構成例について説明するための図である。
【0064】
図6は、第1金属シート20aだけでなく、第2金属シート20bも備える電極シート1の断面図である。第2金属シート20bは、第1金属シート20aと同様に、第1集電層12a及び第2集電層12bと、外部の電極タブとを通電させるための部材である。第2金属シート20bは、第2集電層12bの短手方向の一端(
図6では、y軸の負の方向の端)に接合される。第2金属シート20bの材質は、例えば、アルミニウムを含む金属である。第2金属シート20bの厚さは、3μm~20μmであってよい。
【0065】
第2金属シート20bの短手方向の長さは、第1金属シート20aの短手方向の長さと略同一であってもよく、第1金属シート20aの短手方向の長さと比較して長くてもよく、第1金属シート20aの短手方向の長さと比較して短くてもよい。
【0066】
第2金属シート20bは、第2活物質層16bとの間に所定の間隔208を空けて第2集電層12bの一端に接合される。一実施形態において、所定の間隔208は、0.1mm~10mmであってよく、1mm~5mmであってもよい。
【0067】
第2金属シート20bは、第1金属シート20aと同様に、第2集電層12bとの間に原子レベルの結合(例えば、金属結合)を生じさせる方法によって接合されてよい。一実施形態において、第2金属シート20bは、超音波接合により第2集電層12bに対して接合される。
【0068】
第2金属シート20bは、第2延出部40b及び第2接合痕24bを有する。
【0069】
[第2延出部40b]
第2延出部40bは、第2金属シート20bのうち、集電体3と重なっていない部分である。第2延出部40bは、第2金属シート20bが集電体3から受け取った熱を外部に排出する。第2延出部40bの短手方向の長さは、0.5mm~20mmであってよく、2mm~15mmであってもよい。他にも、第2延出部40bの短手方向の長さは、第2金属シート20bの短手方向の全長に対して10%~90%であってよく、30%~80%であってもよい。
【0070】
第2延出部40bの短手方向の長さは、第1延出部40aの短手方向の長さと略同一であってもよく、第1延出部40aの短手方向の長さと比較して長くてもよく、第1延出部40aの短手方向の長さと比較して短くてもよい。
【0071】
[第2接合痕24b]
第2接合痕24bは、第2金属シート20b及び集電体3が重なっている位置に設けられる。第2接合痕24bは、第2金属シート20bの長手方向に沿って設けられる。また、
図6のとおり、第2接合痕24bは、第2金属シート20bから第2集電層12b及び第1集電層12aにわたって形成されている。
【0072】
一実施形態において、第2接合痕24bは、第1接合痕24aに対して干渉しない位置に設けられる。第2接合痕24bは、第1接合痕24aとは少なくとも一部が重ならない位置に設けられるということもできる。第2接合痕24bが設けられたy座標は、第1接合痕24aが設けられたy座標と異なるということもできる。
【0073】
図7は、第1接合痕24a及び第2接合痕24b周辺の拡大図である。
図7のとおり、集電体3は、第2接合痕24bを含む断面において、第1集電層12aから第2集電層12bに向かう方向に窪んだ形状となっている。すなわち、第2接合痕24bは、第2金属シート20bが設けられていない第1集電層12aの面から、第2金属シート20bが設けられている第2集電層12bの面に向かって圧力を作用させることで形成される。一実施形態において、第2接合痕24bは、超音波接合用のホーンを第1集電層12aの面から第2集電層12bの面に向かって押し当てることによって形成される。
【0074】
なお、一実施形態において、第1接合痕24aを形成するために超音波接合用のホーンを押し当てた箇所は、第2金属シート20bにより覆われる。これは、第2金属シート20bは、第1接合痕24aを形成した後で配置されるからである(後述の
図8参照)。
【0075】
集電体3は、第2接合痕24bを含む断面において、第2集電層12b及び第1集電層12aが一体化された領域206を有する。一実施形態において、領域206では、第2金属シート20b、第2集電層12b及び第1集電層12aが超音波接合により溶融している。これにより、第2金属シート20bは、領域206を介して、樹脂層10の両面に設けられている第2集電層12b及び第1集電層12aと通電することが可能になる。
【0076】
[電極シート1の製造方法]
図8は、第2実施形態に係る電極シート1の製造方法を説明するためのフローチャートである。なお、初期状態において、集電体3は準備されているとする。
【0077】
まずは、第1集電層12aの表面の一部に活物質を塗布して第1活物質層16aを形成する(ST10)。一実施形態において、第1活物質層16aは、第1集電層12aの表面のうち、第1金属シート20aを配置するための部分を除いた部分に塗布される。
【0078】
次に、第2集電層12bの表面の一部に活物質を塗布して第2活物質層16bを形成する(S12)。第2活物質層16bは、第2集電層12bの表面のうち、第2金属シート20bを配置するための部分を除いた部分に塗布される。
【0079】
次に、第1金属シート20aを、第1集電層12aよりも短手方向に延出するように第1集電層12aの一端に配置する(ST14)。これにより、第1延出部40aが形成される。また、第1金属シート20aは、第1活物質層16aとの間に所定の間隔204が空くように配置される。
【0080】
次に、集電体3の第2集電層12b側から圧力を作用させることで、第1金属シート20aを第1集電層12a及び第2集電層12bに対して接合する(ST16)。これにより、第1金属シート20a、第1集電層12a及び第2集電層12bが一体化した領域202を含む第1接合痕24aが形成される。
【0081】
次に、第2金属シート20bを、第2集電層12bよりも短手方向に延出するように第2集電層12bの一端に配置する(ST18)。これにより、第2延出部40bが形成される。また、第2金属シート20bは、第2活物質層16bとの間に所定の間隔208が空くように配置される。
【0082】
次に、集電体3の第1集電層12a側から圧力を作用させることで、第2金属シート20bを第1集電層12a及び第2集電層12bに対して接合する(ST20)。これにより、第2金属シート20b、第1集電層12a及び第2集電層12bが一体化した領域206を含む第2接合痕24bが形成される。
【0083】
第1実施形態にかかる電極シート1と比較して、第2実施形態に係る電極シート1は、可用性がさらに高まりうる。具体的には、第1金属シート20aおよび第2金属シート20bの2つの金属シートを有することで、第1集電層12a及び第2集電層12bからの電力の取り出し経路が増加する。これにより2次電池2を構成した際における電極タブとの電気抵抗が低下しうる。また第2実施形態に係る電極シート1は、第1金属シート20a及び第2金属シート20bの一方が破損したとしても、継続的に第1集電層12a及び第2集電層12bの両方から電力を取り出すことができる。より具体的には、第1集電層12a及び第2集電層12bは、それぞれ領域202及び領域206において第1金属シート20a及び第2金属シート20bと一体化しているため、一方の金属シートが破損したとしても、他の一方の金属シートが外部の端子との導電状態を維持することができる。また上述のとおり、第1延出部40aや第2延出部40bは、当該電極シート1を巻回して構成される2次電池2において内部の熱を外部に放出する放熱体として機能し得る。電極シート1が、第1延出部40aと第2延出部40bの2つの延出部を有することで、当該電熱シート1を巻回して構成される2次電池2の放熱性がより向上しうる。
【0084】
図8を参照して説明したように、電極シート1の製造工程では、第2金属シート20bが第2集電層12bに対して配置される前に(ST18参照)、第1金属シート20aが第1集電層12a及び第2集電層12bに対して接合される(ST16参照)。仮に、逆の順序(すなわち、第2金属シート20bが配置された後で第1金属シート20aが第1集電層12a及び第2集電層12bに対して接合されるという順序)を採用すると、第2金属シート20bに対して超音波接合用のホーンを押し当てる必要性が生じる。しかしながら、上述したように、この方法はホーンを取り外す際に接合の剥離が発生する可能性を高める。したがって、電極シート1の歩留まりの低下を抑止するために、第1金属シート20aを第1集電層12aに対して接合した後に(ST10-ST16参照)、第2金属シート20bを第2集電層12bに対して配置及び接合してよい(ST18-ST20参照)。
【0085】
また、
図7では、ST20において第1金属シート20aの上からホーンを押し当てることを避けるために第1金属シート20aを第2接合痕24bが形成される予定の箇所を覆わないように配置した状態を図示しているが、これに限られない。具体的には、ST14において、第1金属シート20aは、第2接合痕24bが形成される予定の箇所を覆うように配置されてもよい。この場合、例えば、第1金属シート20aをめくることによってホーンを第1集電層12aに直接押し当てることができるようにした後に、第2金属シート20bを第2集電層12bに対して配置及び接合してよい(ST18-ST20参照)。
【0086】
なお、第1実施形態に係る電極シート1は、ST10-ST16を実行することにより製造することができる。すなわち、第1実施形態に係る電極シート1を製造するためには、2枚目の金属シートである第2金属シート20bを配置及び接合する工程(ST18-ST20)は不要である。
【0087】
<電極シート1を使用した2次電池2の構成例>
図9-
図11は、第1実施形態に係る電極シート1を使用した2次電池2の構成例について説明するための図である。
【0088】
図9は、2次電池2を製造するための積層シートの構造を説明するための図である。積層シートは、正極シート4、セパレータ30及び負極シート5により構成される。また、2次電池2は、さらに電解液を含んでもよい。
【0089】
[正極シート4]
一実施形態において、正極シート4は、正極側集電体3aと、第1正極活物質層18a及び第2正極活物質層18bと、正極側金属シート21aとにより構成される。
【0090】
正極側集電体3aは、電極シート1の集電体3に相当する。正極側集電体3aは、電極シート1の第1集電層12aに相当する第1正極側集電層13aと、電極シート1の第2集電層12bに相当する第2正極側集電層13bと、電極シート1の樹脂層10に相当する正極側樹脂層11aとにより構成される。
【0091】
正極側金属シート21aは、電極シート1の第1金属シート20aに相当する。正極側金属シート21aには、電極シート1の第1接合痕24aに相当する正極側接合痕25aが設けられている。また、正極側金属シート21aは、電極シート1の第1延出部40aに相当する正極側延出部41aを含む。正極側金属シート21aの材質は、一例では、アルミニウムを含む金属である。
【0092】
第1正極活物質層18a及び第2正極活物質層18bは、電極シート1における第1活物質層16a及び第2活物質層16bの活物質として正極活物質を用いることにより構成される。
【0093】
一実施形態において、正極シート4は、第1正極側集電層13aの短手方向の一端に正極側金属シート21aが接合されている。正極側金属シート21aは、正極側接合痕25aを介して第1正極側集電層13a及び第2正極側集電層13bと通電する(
図4等参照)。
【0094】
一実施形態において、第1正極活物質層18a及び第2正極活物質層18bの少なくとも一方は、正極活物質以外の成分を1つ以上含んでよい。
【0095】
一実施形態において、第1正極活物質層18a及び第2正極活物質層18bの少なくとも一方は犠牲正極材を含んでよい。正極活物質の充放電電位範囲において酸化反応を生じ、かつ、還元反応を実質的に生じないリチウム含有化合物である。
【0096】
一実施形態において、第1正極活物質層18a及び第2正極活物質層18bの少なくとも一方はゲル電解質を含んでよい。ゲル電解質は、第1正極活物質層18a及び第2正極活物質層18bと正極側集電体3aとの接着力を向上させうる。一例では、ゲル電解質は、高分子と、有機溶媒と、リチウム塩とを含む。ゲル電解質における高分子は、例えば、ポリエチレン及び/又はポリエチレンオキシドの共重合体、ポリビニリデンフロライド、並びにポリビニリデンフロライド及びヘキサフロロプロピレンの共重合体等でよい。
【0097】
一実施形態において、第1正極活物質層18a及び第2正極活物質層18bの少なくとも一方は導電助剤及び/又はバインダーを含んでよい。一例では、導電助剤は、カーボンブラック、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)、カーボンナノファイバー(CF)等である。一例では、バインダーは、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等である。一実施形態において、導電助剤の含有量は、第1正極活物質層18a及び第2正極活物質層18b全体に対して0.5質量%30質量%以下である。一実施形態において、バインダーの含有量は、第1正極活物質層18a及び第2正極活物質層18b全体に対して0.5質量%30質量%以下でよい。
【0098】
一実施形態において、第1正極活物質層18a及び第2正極活物質層18bの少なくとも一方はポリマー電解質を含んでよい。一例では、ポリマー電解質は、高分子及び電解質を主に含む固体ポリマー電解質、並びに高分子、電解質、及び可塑剤を主に含む半固体ポリマー電解質である。一実施形態において、ポリマー電解質の含有量の合計は、第1正極活物質層18a及び第2正極活物質層18b全体に対して、0.5質量%30質量%以下でよい。
【0099】
[セパレータ30]
図9に示すように、セパレータ30は、正極シート4及び負極シート5の間、及び、負極シート5の正極シート4と対向しない面に配置される。セパレータ30は、正極シート4と負極シート5とを物理的及び/又は電気的に隔離するとともに、リチウムイオンのイオン伝導性を確保する。一実施形態において、セパレータ30は、絶縁性の多孔質部材、ポリマー電解質、ゲル電解質、及び、無機固体電解質からなる群より選択される少なくとも1種でよい。セパレータ30は、1種の部材を単独で用いてよく、2種以上の部材を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
セパレータ30が絶縁性の多孔質部材を含む場合、多孔質部材の細孔にイオン伝導性を有する物質(電解液、ポリマー電解質、及び/又はゲル電解質等)が充填される。これによりセパレータ30はイオン伝導性を発揮する。絶縁性の多孔質部材を構成する材料としては、特に限定されず、例えば絶縁性高分子材料が挙げられ、具体的には、ポリエチレン(PE)、及びポリプロピレン(PP)が挙げられる。すなわち、セパレータ30は、多孔質のポリエチレン(PE)膜、多孔質のポリプロピレン(PP)膜、又はこれらの積層構造であってよい。
【0101】
一実施形態において、セパレータ30は、一面又は両面がセパレータ被覆層によりコーティングされてよい。これにより、2次電池2のサイクル特性が向上し得る。一実施形態において、セパレータ被覆層は、セパレータ30の表面の50%以上の面積において均一の厚みで連続する膜でよい。一実施形態において、セパレータ被覆層は、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、スチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの合材(SBR-CMC)、及びポリアクリル酸(PAA)のようなバインダーを含むものでよい。一実施形態において、セパレータ被覆層は、上記バインダーにシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア又は水酸化マグネシウム等の無機粒子が添加されて構成されてよい。
【0102】
一実施形態において、セパレータ30の平均厚さ(セパレータ30が被覆層を含む場合当該被覆層を含む)は、3.0μm以上40μm以下でよい。これにより、正極シート4と負極シート5とを隔離しつつ、セパレータ30の占める体積を減少させ得る。一実施形態において、セパレータ30の平均厚さは、5.0μm以上30μm以下、7.0μm以上10μm以下、又は、10μm以上20μm以下でよい。
【0103】
[負極シート5]
一実施形態において、負極シート5は、負極側集電体3cと、第1負極活物質層18c及び第2負極活物質層18dと、負極側金属シート21cとにより構成される。
【0104】
負極側集電体3cは、電極シート1の集電体3に相当する。負極側集電体3cは、電極シート1の第1集電層12aに相当する第1負極側集電層13cと、電極シート1の第2集電層12bに相当する第2負極側集電層13dと、電極シート1の樹脂層10に相当する負極側樹脂層11cとにより構成される。また、負極側金属シート21cは、電極シート1の第1金属シート20aに相当する。
【0105】
負極側金属シート21cは、電極シート1の第1金属シート20aに相当する。負極側金属シート21cには、電極シート1の第1接合痕24aに相当する負極側接合痕25cが設けられている。また、負極側金属シート21cは、電極シート1の第1延出部40aに相当する負極側延出部41cを含む。負極側金属シート21cの材質は、一例では、銅を含む金属である。
【0106】
第1負極活物質層18c及び第2負極活物質層18dは、電極シート1における第1活物質層16a及び第2活物質層16bの活物質として負極活物質を用いることにより構成される。
【0107】
一実施形態において、負極シート5は、第1負極側集電層13cの短手方向の一端に負極側金属シート21cが接合されている。負極側金属シート21cは、負極側接合痕25cを介して第1負極側集電層13c及び第2負極側集電層13dと通電する(
図4等参照)。
【0108】
一実施形態において、第1負極活物質層18c及び第2負極活物質層18dの少なくとも一方はゲル電解質を含んでよい。ゲル電解質は、第1負極活物質層18c及び第2負極活物質層18dと負極側集電体3cとの接着力を向上させうる。一例では、ゲル電解質は、高分子と、有機溶媒と、リチウム塩とを含む。ゲル電解質における高分子は、例えば、ポリエチレン及び/又はポリエチレンオキシドの共重合体、ポリビニリデンフロライド、並びにポリビニリデンフロライド及びヘキサフロロプロピレンの共重合体等でよい。
【0109】
一実施形態において、第1負極活物質層18c及び第2負極活物質層18dの少なくとも一方はバインダーを含んでよい。一例では、バインダーは、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等である。一実施形態において、導電助剤の含有量は、第1負極活物質層18c及び第2負極活物質層18d全体に対して0.5質量%30質量%以下である。一実施形態において、バインダーの含有量は、第1負極活物質層18c及び第2負極活物質層18d全体に対して0.5質量%30質量%以下でよい。
【0110】
一実施形態において、第1負極活物質層18c及び第2負極活物質層18dの少なくとも一方はポリマー電解質を含んでよい。一例では、ポリマー電解質は、高分子及び電解質を主に含む固体ポリマー電解質、並びに高分子、電解質、及び可塑剤を主に含む半固体ポリマー電解質である。一実施形態において、ポリマー電解質の含有量の合計は、第1負極活物質層18c及び第2負極活物質層18d全体に対して、0.5質量%30質量%以下でよい。
【0111】
[電解液]
一実施形態において、2次電池2は電解液を含んでよい。電解液は、溶媒及び電解質を含む液体であり、イオン伝導性を有する。電解液は、液体電解質と換言してもよく、リチウムイオンの導電経路として作用する。このため、2次電池2が電解液を有する場合、内部抵抗が低下し、エネルギー密度、容量、及びサイクル特性が向上し得る。
【0112】
電解液は、例えば、2次電池2の筐体(パウチ)を充填する溶液であってよい。また例えば、電解液は、セパレータ30に浸潤されてよく、また高分子に保持されることでポリマー電解質又はゲル電解質を構成していてもよい。
【0113】
電解液に含まれる電解質は、例えば、リチウム塩でよい。リチウム塩は、例えば、LiI、LiCl、LiBr、LiF、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF3CF3)2、LiB(O2C2H4)2、LiB(C2O4)2、LiB(O2C2H4)F2、LiB(OCOCF3)4、LiNO3、及びLi2SO4からなる群から選択される1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0114】
電解液に含まれる溶媒は、例えばフッ素原子を有する非水溶媒(以下、「フッ素化溶媒」という。)及びフッ素原子を有しない非水溶媒(以下、「非フッ素溶媒」という。)でよい。
【0115】
フッ素化溶媒は、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、及び1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル等でよい。
【0116】
非フッ素溶媒は、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジメトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジメトキシブタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、及び12-クラウン-4でよい。
【0117】
上記フッ素化溶媒及び/又は非フッ素溶媒は1種を単独で、又は2種以上を任意の割合で自由に組み合わせて用いてよい。フッ素化溶媒と非フッ素溶媒の含有量は特に限定されず、溶媒全体に対するフッ素化溶媒の割合が0~100体積%であってよく、溶媒全体に対する非フッ素溶媒の割合が0~100体積%であってもよい。
【0118】
[2次電池2の製造方法]
図10を参照して、2次電池2の製造方法の一例について説明する。なお、初期状態において、セパレータ30は準備されているとする。
【0119】
まず、正極シート4を製造する(ST30)。正極シート4は、例えば、
図8のST10-ST16に基づいて製造してもよい。
【0120】
次に、負極シート5を製造する(ST32)。負極シート5は、例えば、
図8のST10-ST16に基づいて製造してもよい。
【0121】
次に、正極シート4、負極シート5及びセパレータ30を積層して積層シートとする(S34)。一実施形態において、積層シートは、
図9のとおり、順に正極シート4、1枚目のセパレータ30、負極シート5及び2枚目のセパレータ30を積層することにより構成されてもよい。また、一実施形態において、正極シート4及び負極シート5は、正極側延出部41aが延出する方向と、負極側延出部41cが延出する方向とが背向するように積層される。
【0122】
次に、積層シートの短手方向を軸方向として、この積層シートを長手方向に巻回する(ST36)。この際、巻き芯を中心として積層シートを巻回してもよい。
図11は、積層シートの巻回の一例を説明するための図である。
図9の積層シートを
図11のように巻回した場合、第1正極活物質層18aと第1負極活物質層18cとが1枚目のセパレータ30を挟んで対向するとともに、第2正極活物質層18bと第2負極活物質層18dとが2枚目のセパレータ30を挟んで対向することになる。
【0123】
次に、巻回された積層シートの正極側延出部41aを折り込むことにより正極面400を構成するとともに、巻回された積層シートの負極側延出部41cを折り込むことにより負極面402を構成する(ST38)。
【0124】
次に、正極面400を2次電池2の正極用の電極タブに、負極面402を2次電池2の負極用の電極タブにそれぞれ電気的に接続する(ST40)。この際、正極面400は正極用のタブに密着するように接続される。同様に、負極面402は負極用のタブに密着するように接続される。
【0125】
[2次電池の使用方法]
2次電池2は、正極用の電極タブを外部回路の一端に接続し、負極用の電極タブを外部回路の他端に接続することで充放電される。外部回路は、例えば抵抗、電源、装置、デバイス、別の電池、又はポテンショスタット等でよい。
【0126】
正極用の電極タブと負極用の電極タブとの間に、負極用の電極タブから外部回路を通り正極用の電極タブへの電流が流れるような電圧を印加すると、2次電池2が充電される。充電後の2次電池2について、所望の外部回路を介して正極用の電極タブ40及び負極用の電極タブを接続すると、2次電池2が放電される。
【0127】
[2次電池2の効果]
2次電池2によれば、正極面400及び負極面402の電気抵抗の値、及び、電気抵抗のばらつきの両方を抑制することができる。また、正極側金属シート21aは集電体3とは異なり両面の電気的な導通が予めとれているため、正極面400を構成するために折り込んだ際に樹脂層10を介すことなく、折りたたんだ金属シート間が低抵抗で接合される。これにより、正極面400全体の電気抵抗が均一になり、かつ、正極面400全体の平均的な電気抵抗が抑制される。同様に、負極面402も、電気抵抗の値、及び、電気抵抗のばらつきの両方が抑制される。
【0128】
なお、電気抵抗のばらつきは、異なる2次電池2の間での正極面400(又は負極面402)の電気抵抗のばらつきと、同じ2次電池2における正極面400(又は負極面402)の位置ごとの電気抵抗のばらつきとを含む。
【0129】
<変形例>
図12-
図18は、電極シート1の変形例について説明するための図である。
【0130】
[第1延出部40aの形状に関する変形例]
上記実施形態において、第1延出部40aは長手方向に沿って連続するものとして説明したが、これに限られない。すなわち、第1延出部40aは、長手方向に沿って連続しない部分を有してもよい。具体的には、第1延出部40aは、切り込み300及び/又は凹部302を有してもよい。
【0131】
図12は、第1延出部40aが切り込み300を有する場合の電極シート1について説明するための図である。切り込み300は、第1延出部40aに略一定間隔離間で設けられてもよい。第1延出部40aに切り込み300を設けることにより、正極面400及び負極面402を形成する際に第1延出部40aを折り込みやすくなる。これにより、正極面400及び負極面402の物理的な凹凸をさらに小さくすることができる。また、正極面400内の物理的な凹凸は、正極面400の電気抵抗の大きさと相関する。したがって、第1延出部40aに切り込み300を設けることにより、正極面400及び負極面402の電気抵抗の製造上のばらつきがさらに抑制される。また、第1延出部40aを折り込みやすくなると、正極面400及び負極面402における金属シート間の接触面積が増加するため、電気抵抗が抑制される。
【0132】
一実施形態において、切り込み300は、短手方向に沿って設けられていてもよい。また、製造上のコンタミネーションを避けるために、切り込み300は、第1金属シート20aが第1集電層12aに接合される前に第1延出部40aに設けられてよい。例えば、
図8のST12とST14の間に、第1金属シート20aの第1延出部40aに切り込み300を設ける工程があってもよい。
【0133】
図13は、第1延出部40aが矩形状の凹部302を有する場合の電極シート1について説明するための図である。凹部302は、短手方向に窪んでおり、長手方向に沿って設けられている。また、凹部302は、互いに略一定間隔離間して設けられていてもよい。第1延出部40aに凹部302を設けることにより、正極面400及び負極面402を形成する際に第1延出部40aを折り込みやすくなる。これにより、正極面400及び負極面402の物理的な凹凸をさらに小さくすることができる。すなわち、正極面400及び負極面402の電気抵抗の製造上のばらつきがさらに抑制される。また、第1延出部40aを折り込みやすくなると、正極面400及び負極面402における金属シート間の接触面積が増加するため、電気抵抗が抑制される。
【0134】
また、製造上のコンタミネーションを避けるために、凹部302は、第1金属シート20aが第1集電層12aに接合される前に第1延出部40aに設けられてよい。例えば、
図8のST12とST14の間に、第1金属シート20aの第1延出部40aに凹部302を設ける工程があってもよい。
【0135】
[第1接合痕24aの形状に関する変形例]
上記実施形態において、第1接合痕24aは、線状であるとして説明したが、これに限られない。例えば、
図14のとおり、第1接合痕24aは点状であってもよい。第1接合痕24aを点状にすることで、接合箇所に加えられるエネルギー(例えば、力、振動及び熱等)を小さい面積に集約することができる。すなわち、第1接合痕24aを点状にすることで、第1金属シート20aをより強固に集電体3に対して接合することができる。なお、第1接合痕24aは、上記の例に限らず、任意の形状であってよい。他の接合痕についても同様である。
【0136】
[第1金属シート20a及び第2金属シート20bの接合方法に関する変形例]
上記実施形態において、第1金属シート20a及び第2金属シート20bはそれぞれ異なる接合痕により集電体3に対して接合されるものとして説明したが(
図6-
図8参照)、これに限られない。具体的には、第1金属シート20a及び第2金属シート20bは、集電体3に対して一括して(すなわち、単一の接合痕により)接合されてもよい。電極シート1をこのように構成することで、製造上の工数を減らすことができる。
【0137】
図15-
図16は、第1金属シート20a及び第2金属シート20bを集電体3に対して一括して接合した場合の電極シート1について説明するための図である。
図15において、電極シート1は単一の接合痕24a/24bを有する。上記実施形態では、第1金属シート20aは第1接合痕24aにより、第2金属シート20bは第2接合痕24bによりそれぞれ集電体3に対して接合されるものとして説明したが、このように、第1金属シート20a及び第2金属シート20bの両方が単一の接合痕24a/24bにより接合されてもよい。
【0138】
図16は、単一の接合痕24a/24b周辺の拡大図である。
図7を参照して説明した電極シート1は、第1金属シート20a、第1集電層12a及び第2集電層12bが一体化した領域202と、第2金属シート20b、第1集電層12a及び第2集電層12bが一体化した領域206とを有していたが、このように、電極シート1は、第1金属シート20a、第2金属シート20b、第1集電層12a及び第2集電層12bが一体化した領域210を有してもよい。
図16に示す単一の接合痕24a/24bは、第2金属シート20bの上からホーン等を押し当てることで、第2金属シート20b、集電体3及び第1金属シート20aを接合させることで形成されてよい。
【0139】
上記実施形態において、第1金属シート20aは、第1金属シート20aが設けられる面とは反対側の第2集電層12bの上からホーン等を押し当てることによって第1集電層12aに対して接合され、第2金属シート20bは、第2金属シート20bが設けられる面とは反対側の第1集電層12aの上からホーン等を押し当てることによって第2集電層12bに対して接合されるものとして説明したが(
図7参照)、これに限られない。具体的には、第1金属シート20a及び第2金属シート20bの少なくとも一方は、金属シートの上からホーン等を押し当てることによって集電体3に対して接合されてもよい。
【0140】
より具体的には、第1金属シート20aは、第1金属シート20aの上からホーン等を押し当てることによって第1集電層12aに対して接合されてよい。そして、第2金属シート20bは、第2金属シート20bの上からホーン等を押し当てることによって第2集電層12bに対して接合されてよい。
図17は、このようにして接合した場合の第1接合痕24a及び第2接合痕24bの周辺の拡大図の一例である。
図17に示すように、集電体3は、第1接合痕24aを含む断面において、第1集電層12aから第2集電層12bに向かう方向に窪んだ形状となる。また、集電体3は、第2接合痕24bを含む断面において、第2集電層12bから第1集電層12aに向かう方向に窪んだ形状となる。また、集電体3は、第1接合痕24a及び第2接合痕24bのそれぞれにおいて、第1金属シート20a、第1集電層12a、第2集電層12b及び第2金属シート20bが一体化した領域212及び領域214を含む。このように接合する場合、第1金属シート20a及び第2金属シート20bを集電体3を挟むように配置した後に、それぞれを順番に又は並列に集電体3に対して接合すればよいため、製造ラインが簡略化され得る。
【0141】
図18は、第1接合痕24a及び第2接合痕24bの周辺の拡大図の他の例である。
図18に示す接合痕は、例えば次のようにして形成されてよい。まず、集電体3の第1集電層12a上に第1金属シート20aを配置する。そして集電体3の第2集電層12b側からホーン等を押し当てることによって第2接合痕24bを形成する。第2接合痕24bは、第1金属シート20a、第1集電層12a及び第2集電層12bが一体化した領域218を含む。次に第2金属シート20bを第2集電層12b上に配置する。そして第1金属シート20aの上からホーン等を押し当てることによって第1接合痕24aを形成する。第1接合痕24aは、第1金属シート20a、第1集電層12a、第2集電層12b及び第2金属シート20bが一体化した領域216を含む。このように、第1接合痕24aに含まれる領域216及び第2接合痕24bに含まれる領域218は、それぞれ異なる層が一体化した領域であってよい。
【0142】
[第1延出部40a及び第2延出部40bの接合に関する変形例]
上記実施形態において、第1延出部40a及び第2延出部40bは接合されない例について説明したが(
図6参照)、これに限られない。具体的には、第1延出部40aは、第2延出部40bと接合されてよい。
【0143】
図19は、第1延出部40aと第2延出部40bとを接合した電極シート1について説明するための図である。
図19では、第1延出部40a及び第2延出部40bが第3接合痕24cにより接合されている。電極シート1をこのように構成することで、正極面400及び負極面402の電気抵抗のばらつきがさらに抑制される。仮に、第1延出部40a及び第2延出部40bを接合しない場合、第1延出部40a及び第2延出部40bのそれぞれの電気抵抗がわずかに異なる場合がある。その結果、電極シート1を巻回した際の正極面400及び負極面402は、位置によって電気抵抗が異なるものになる。これに対して、第1延出部40a及び第2延出部40bを接合した状態で電極シート1を巻回すると、正極面400及び負極面402は位置に関わらず電気抵抗が略一定となる。
【0144】
[負極シート5に関する変形例]
上記実施形態において、負極シート5は第1負極活物質層18c及び第2負極活物質層18dを備えるものとして説明したが、これに限られない。負極シート5は負極活物質を実質的に有しなくてよい。
【0145】
一実施形態において、負極シート5は、電池の初期充電前(電池が組み立てられてから第1回目の充電をするまでの状態)に負極活物質を有しない。2次電池2は、初期充電後に、リチウム金属が負極上に析出し、及び、その析出したリチウム金属が電解溶出することにより充放電が行われてよい。この場合、負極活物質が占める体積及び質量が抑制され、電池全体の体積及び質量が小さくなり、エネルギー密度が原理的に高くなる。なお、「リチウム金属が負極上に析出」することは、負極の表面にリチウム金属が析出することだけでなく、後述する固体電解質界面(SEI)層の表面や緩衝機能層の表面又は内部にリチウム金属が析出することも包む。
【0146】
一実施形態において、放電終了時(例えば電池の開回路電圧が2.5V以上3.6V以下である状態)に負極シート5に析出する負極活物質の層厚は、25μm以下である。一実施形態において、放電終了時の負極活物質の層厚は、20μm以下、15μm以下、10μm以下、又は、5μm以下であってよく、また0μmであってもよい。負極シート5が負極活物質を実質的に有しないことにより、重量エネルギー密度に加え、体積当たりのエネルギー密度が向上し得る。なお、この場合、2次電池2は、「アノードフリーリチウム電池」、「ゼロアノードリチウム電池」、又は「アノードレスリチウム電池」ということもできる。
【0147】
一実施形態において、電圧が4.2Vの状態において負極上に析出しているリチウム金属の質量をM4.2とし、電圧が3.0Vの同質量をM3.0とした場合、M3.0/M4.2は、40%以下又は35%以下であってよい。一実施形態において、比M3.0/M4.2は、1.0%以上、2.0%以上、3.0%以上、又は、4.0%以上であってよい。
【0148】
<本開示の実施形態>
本開示の実施形態は、以下の態様をさらに含む。
【0149】
[付記1]
長手方向と短手方向とを有し、短手方向を軸方向として巻回されることにより2次電池2の電極を構成する電極シート1であって、樹脂層10と、当該樹脂層10の両面のそれぞれに設けられた第1集電層12a及び第2集電層12bとを備える集電体3と、第1集電層12aの、樹脂層10とは反対側の面に設けられた第1活物質層16aと、第1集電層12aの短手方向の一端に接合され、当該接合により長手方向に沿って第1接合痕24aが形成されている第1金属シート20aであって、第1集電層12aよりも短手方向に延出する第1延出部40aを有する、第1金属シート20aと、を備える、電極シート1。
【0150】
[付記2]
第1延出部40aには、一以上の切り込み300が設けられている、付記1に記載の電極シート1。
【0151】
[付記3]
一以上の切り込み300は、短手方向に沿って設けられている、付記2に記載の電極シート1。
【0152】
[付記4]
第1延出部40aには、短手方向に窪む凹部302が長手方向に沿って複数設けられている、付記1から付記3のいずれか一つに記載の電極シート1。
【0153】
[付記5]
複数の凹部302は、互いに一定間隔離間して設けられている、付記4に記載の電極シート1。
【0154】
[付記6]
凹部302は、矩形状である、付記4に記載の電極シート1。
【0155】
[付記7]
第1接合痕24aは、溶接痕である、付記1から付記6のいずれか一つに記載の電極シート1。
【0156】
[付記8]
第1接合痕24aは、第1金属シート20aから第1集電層12aにわたって形成されている、付記7に記載の電極シート1。
【0157】
[付記9]
第1接合痕24aは、長手方向に沿って、線状又は複数の点状に形成されている、付記8に記載の電極シート1。
【0158】
[付記10]
第1接合痕24aは、第1金属シート20aから第2集電層12bにわたって形成されている、付記7に記載の電極シート1。
【0159】
[付記11]
集電体3は、第1接合痕24aを含む断面において、第2集電層12bから第1集電層12aに向かう方向に窪んだ形状である、付記10に記載の電極シート1。
【0160】
[付記12]
集電体3は、第1接合痕24aを含む断面において、第1集電層12a及び第2集電層12bが一体化された領域を有する、付記10に記載の電極シート1。
【0161】
[付記13]
第2集電層12bの、樹脂層10とは反対側の面に設けられた第2活物質層16bと、第2集電層12bの短手方向の一端に接合され、当該接合により長手方向に沿って第2接合痕24bが形成されている第2金属シート20bであって、第2集電層12bよりも短手方向に延出する第2延出部40bを有する、第2金属シート20bと、をさらに備える、付記1から付記12のいずれか一つに記載の電極シート1。
【0162】
[付記14]
第2接合痕24bは、溶接痕であり、第2接合痕24bを含む断面において、第1集電層12aから第2集電層12bに向かう方向に窪んだ形状である、付記13に記載の電極シート1。
【0163】
[付記15]
第1延出部40aと第2延出部40bとが互いに接合されている、付記13に記載の電極シート1。
【0164】
[付記16]
第1金属シート20aは、第1活物質層16aとの間に0.1mm~10mmの間隔を空けて一端に接合される、付記1から付記15のいずれか一つに記載の電極シート1。
【0165】
[付記17]
第1活物質層16aは、正極活物質であり、第1金属シート20aは、アルミニウムを含む金属である、付記1から付記16のいずれか一つに記載の電極シート1。
【0166】
[付記18]
第1活物質層16aは、負極活物質であり、第1金属シート20aは、銅を含む金属である、付記1から付記17のいずれか一つに記載の電極シート1。
【0167】
[付記19]
それぞれが長手方向と短手方向とを有する正極シート4及び負極シート5にセパレータ30を挟んだ積層シートを、短手方向を軸方向として巻回することにより構成される2次電池2であって、正極シート4は、正極側樹脂層11aと、当該正極側樹脂層11aの両面のそれぞれに設けられた第1正極側集電層13a及び第2正極側集電層13bとを備える正極側集電体3aと、第1正極側集電層13aの、正極側樹脂層11aとは反対側の面に設けられた正極活物質層18aと、第1正極側集電層13aの短手方向の一端に接合され、当該接合により長手方向に沿って正極側接合痕25aが形成されている正極側金属シート21aであって、第1正極側集電層13aよりも短手方向に延出する正極側延出部41aを有する、正極側金属シート21aと、を備え、負極シート5は、負極側樹脂層11cと、当該負極側樹脂層11cの両面のそれぞれに設けられた第1負極側集電層13c及び第2負極側集電層13dとを備える負極側集電体3cと、第1負極側集電層13cの、負極側樹脂層11cとは反対側の面に設けられた負極活物質層18cと、第1負極側集電層13cの短手方向の一端に接合され、当該接合により長手方向に沿って負極側接合痕25cが形成されている負極側金属シート21cであって、第1負極側集電層13cよりも短手方向に延出する負極側延出部41cを有する、負極側金属シート21cと、を備え、セパレータ30は、正極活物質層18a及び負極活物質層18cの間に設けられる、2次電池2。
【0168】
[付記20]
軸方向の一端に配置され、正極側延出部41aと電気的に接続される正極用電極タブと、軸方向の他端に配置され、負極側延出部41cと電気的に接続される負極用電極タブと、をさらに備える、付記19に記載の2次電池2。
【0169】
以上の各実施形態は、説明の目的で記載されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。以上の各実施形態は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。例えば、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0170】
1…電極シート、2…2次電池、3…集電体、3a…正極側集電体、3c…負極側集電体、4…正極シート、5…負極シート、10…樹脂層、11a…正極側樹脂層、11c…負極側樹脂層、13a…第1正極側集電層、13b…第2正極側集電層、13c…第1負極側集電層、13d…第2負極側集電層、16a…第1活物質層、16b…第2活物質層、18a…正極活物質層、18c…負極活物質層、20a…第1金属シート、20b…第2金属シート、21a…正極側金属シート、21c…負極側金属シート、24a…第1接合痕、24b…第2接合痕、25c…負極側接合痕、30…セパレータ、40a…第1延出部、40b…第2延出部、41a…正極側延出部、41c…負極側延出部、300…切り込み、302…凹部
【要約】
リチウム2次電池の有用性を向上させる技術を提供する。
電極シート1は、長手方向と短手方向とを有し、短手方向を軸方向として巻回されることにより2次電池2の電極を構成する電極シート1であって、樹脂層10と、当該樹脂層10の両面のそれぞれに設けられた第1集電層12a及び第2集電層12bとを備える集電体3と、第1集電層12aの、樹脂層10とは反対側の面に設けられた第1活物質層16aと、第1集電層12aの短手方向の一端に接合され、当該接合により長手方向に沿って第1接合痕24aが形成されている第1金属シート20aであって、第1集電層12aよりも短手方向に延出する第1延出部40aを有する、第1金属シート20aと、を備える。