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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】時計用光学装置
(51)【国際特許分類】
   G04B 39/00 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
G04B39/00 E
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019096238
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020016638
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】18175014.2
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン, エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジュノド, ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】パーセギュール, セバスティエン
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-205889(JP,A)
【文献】特開平5-34607(JP,A)
【文献】実開平4-109393(JP,U)
【文献】実公昭36-2390(JP,Y1)
【文献】特開2000-65960(JP,A)
【文献】米国特許第1812367(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 39/00
G01D 11/26
G02B 3/00 - 3/14
G02B 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ガラスであって、前記時計ガラスは、ガラスと、時計が提供する表示を拡大することが意図される少なくとも1つのレンズを含む光学装置と、を一体として含み、前記レンズは、垂直方向zの光学軸を含む垂直面を通る少なくとも1つの断面を含む少なくとも1つの非球面を含み、その少なくとも1つの輪郭は、以下の数式で定義可能であり、
【数3】
ここでRは公称曲率半径であり、
κはコニシティ定数であり、
α(4,6,・・・) は非球面性係数であり、
少なくとも前記コニシティ定数κ及びまたは少なくとも1つの非球面性係数はゼロではなく、
前記光学装置は、前記ガラスの厚み内で形成され、前記ガラスの上面より下または同じ高さに、また前記ガラスの下面より上または同じ高さに維持され、
前記時計ガラスは、非球面を含む第1レンズと、非球面を含む第2レンズとを含み、前記第1レンズは前記少なくとも1つのレンズで構成され、前記第2レンズは前記第1レンズが生成するひずみを減衰させるレンズである、時計ガラス。
【請求項2】
前記少なくとも1つのレンズは、レンズを完全に取り囲む、変形可能でない硬質素材製の少なくとも1つの外側外囲を含む、または前記少なくとも1つのレンズは、全体が変形可能でない硬質素材製である、及びまたは前記少なくとも1つのレンズは、硬い水晶素材製である、
請求項1に記載の時計ガラス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのレンズは、前記少なくとも1つの非球面である凸面を含む、
請求項1または2に記載の時計ガラス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの非球面は、縦軸周りの回転対称を含むまたは含まない、
請求項1から3のいずれか一項に記載の時計ガラス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの非球面は、少なくとも1つの輪郭が円の部分と、凸面と凹面との変化を引き起こす変曲点とを含む、垂直面を通る断面を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の時計ガラス。
【請求項6】
前記時計ガラスは、前記ガラスの上面または下面に形成されたまたは追加された、前記ガラスと同じ素材または違う素材製の、少なくとも1つの非球面を含むレンズを含む、または、前記時計ガラスは、前記ガラスの厚みに直接形成された少なくとも1つの非球面を含むレンズを含む
請求項1から5のいずれか一項に記載の時計ガラス。
【請求項7】
前記第1レンズは前記ガラスの下面側に配置され、前記第2レンズは前記ガラスの上面側に前記第1レンズに重ね合せて配置される
請求項1から6のいずれか一項に記載の時計ガラス。
【請求項8】
前記時計ガラスは、少なくとも1つの非球面を含むレンズと、実質的に円形または実質的に楕円形の前記ガラスの表面に平行な平面を通る断面を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の時計ガラス。
【請求項9】
前記時計ガラスは、前記ガラスと同じ素材製または異なる素材製の少なくとも1つの非球面を含むレンズを含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の時計ガラス。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のガラスを含む、時計
【請求項11】
前記時計は、時インジケータと、時または分のディスプレイと、カレンダーインジケータとの中から少なくとも1つのインジケータ、及びまたは注釈またはパターンを含むインジケータを含む、及び前記時計は、前記インジケータの上に配置された前記ガラスの少なくとも1つの非球面を含む少なくとも1つのレンズを含む、
請求項10に記載の時計。
【請求項12】
前記時計は、前記時計の文字盤の窓内の特定の表示をディスプレイするように配置された、モバイルインジケータを含む、及び前記時計は、前記窓に現れる前記特定の表示の可視性を最適化するために、前記文字盤の前記窓の上に配置された、請求項1から10のいずれか一項に記載のガラスの少なくとも1つの非球面を含む少なくとも1つのレンズを含む、
請求項10または11に記載の時計。
【請求項13】
前記時計は、少なくとも1つの非球面を含む前記少なくとも1つのレンズを含む前記ガラスに平行な平面に配置されたインジケータを含み、前記少なくとも1つのレンズは、前記ガラスの前記上面の全表面積の30%以下の表面積を占める少なくとも1つの非球面を含む、及びまたは、前記少なくとも1つのレンズは、前記時計の拡大されるべき少なくとも1つのインジケータに実質的に垂直の方向に重ね合わされる、少なくとも1つの非球面を含む、及びまたは、前記少なくとも1つのレンズは、前記ガラスに対して固定される少なくとも1つの非球面を含む、
請求項11または12に記載の時計。
【請求項14】
前記ガラスは、前記少なくとも1つのインジケータ用の密閉外囲を形成し、前記少なくとも1つのインジケータに重ね合わされた少なくとも1つの非球面を含む少なくとも1つのレンズを含む、
請求項11から13のいずれか一項に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用光学装置に関する。本発明はまた、当該光学装置を含む時計ガラスに関する。最後に本発明は、当該光学装置を含む時計に関する。
【背景技術】
【0002】
時計上の表示の可視性を最適化し、読み取りの容易さを改善するための従来の解決策は、時計上に、読み取るべき表示を拡大するレンズを組み込むことからなる。しかしながら、既存の解決策は、レンズに対して垂直上方からの最適化された読み取りを可能にするが、時計の装着者が時計に対して、すなわちレンズに対して、オフセットするときには効率が落ちる。実際、所定のレンズと時計的な表示のインジケータについて、約10°を超える単純なオフセットによっても、レンズを介した時計的な表示の有利な読み取りの利点を得ることができず、それはレンズの外側でも同様である。このため、当該従来の解決策はこのような使用の制限のため、最適化可能であることが判明した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の概括的な目的は、従来技術の欠点の全部または一部を含まない、時計上の表示の読み取りを改善するための解決策を提供することである。
【0004】
より具体的には、本発明の第1目的は、時計上の表示を読み取るための、よりユーザフレンドリーな解決策を提供することである。特に、本発明の概括的な目的は、従来技術に比べてより大きな角度範囲にわたり見やすい、拡大された表示の読み取りを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため本発明は、時計用の、特に小型時計用のガラスであって、ガラスは、垂直方向zの光学軸を含む垂直面を通る少なくとも1つの断面を含む少なくとも1つの非球面を含むレンズを含み、その少なくとも1つの輪郭は、以下の数式で定義可能であり、
【数1】
【0006】
ここでRは公称曲率半径であり、
κはコニシティ定数であり、
α(4,6,・・・) は非球面性係数であり、
少なくとも前記コニシティ定数κ及びまたは少なくとも1つの非球面性係数はゼロではない、時計用のガラスに基づく。
【0007】
少なくとも1つのレンズは、レンズを取り囲む、全体が非変形可能硬質素材製の少なくとも1つの外側外囲(outer envelope)を含む、または前記少なくとも1つのレンズは、全体が非変形可能硬質素材製である、及びまたは少なくとも1つのレンズは、硬い水晶素材製である。
【0008】
本発明は更に、当該ガラスを含む、時計に関する。
【0009】
本発明は、請求項により具体的に定義される。
【0010】
本発明の目的、特徴、及び利点は、添付の図面に関して、非限定的な例として挙げられる特定の実施形態に関する以下の記載で、詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる時計に対する、観察者の基準位置を図示する。
図2図2は、本発明の実施形態にかかる時計に対する、観察者のオフセット位置を図示する。
図3図3は、本発明の実施形態にかかる時計の観察の角度範囲を図示する。
図4図4は、本発明の第1実施形態の第1変形例にかかる時計のガラスの光学装置の、垂直正中面を通る断面を図示する。
図5図5は、本発明の第1実施形態の第2変形例にかかる時計のガラスの光学装置の、垂直正中面を通る断面を図示する。
図6図6は、本発明の第1実施形態の第3変形例にかかる時計のガラスの光学装置の、垂直正中面を通る断面を図示する。
図7図7は、本発明の第1実施形態の第4変形例にかかる時計のガラスの光学装置の、垂直正中面を通る断面を図示する。
図8図8は、本発明の第2実施形態の第1変形例にかかる時計のガラスの光学装置の、垂直正中面を通る断面を図示する。
図9図9は、本発明の第2実施形態の第2変形例にかかる時計のガラスの光学装置の、垂直正中面を通る断面を図示する。
図10図10は、本発明の実施形態にかかる時計の光学装置の形状を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態にかかる時計1を示し、時計1は、例えば文字盤に配置される、少なくとも1つのインジケータ2を含む。時計は、その上面に、実質的にインジケータ2の上に配置された、光学装置10を含む。時計は、特にその上面は、慣例により水平面を定義すると見做される平面P内で実質的に延長する。
【0013】
以下の説明を簡便にするため、時計の水平面Pに直角の方向を、垂直方向zと示す。図1は、インジケータ2の中心を通る縦軸に位置する位置から、時計を、特にインジケータ2を、見ている観察者Oの基準位置決めを図示する。更に具体的には、インジケータを観察者の目と結びつけるベクトルvは、垂直方向zに沿って配向される。観察者の当該基準位置は、一般的には、観察者にインジケータ2の最高の視認性を与えるものである。
【0014】
加えて、「上」という形容詞は、時計の観察者Oの側に向けられた、時計の部品または表面を示すと定義される。反対に、「下」という形容詞は、時計の観察者の反対側に向けられた、例えば腕時計の状況では装着者の手首側の、時計の部品または表面を示す。
【0015】
図2は、図1で定義する基準位置に対する、時計1に関する観察者Oの代替的なオフセット位置決めを示す。当該オフセットは、上述の垂直方向zとベクトルvとの間の角度θで測定される。ここで、観察者は、垂直方向zに対する特定の側に位置する第1方向にオフセットすることが可能であり、または同じ垂直方向に対して第2反対方向にオフセットすることが可能であることに留意する。これら2つの方向において、観察者は、この点を超えると、それ以上のオフセットにより時計のインジケータ2をもはや見ることができなくなる、図3に図示するθminとθmaxの2つの角度をそれぞれ経験的に発見することができる。
【0016】
これら2つのオフセットは、好ましくは、インジケータ2を通過する垂直面であり、時マークの位置決めの従来手法によれば、時計の6時及び12時マークから延長する方向に実質的に平行な、同一平面P’内の観察者の視点の変位により発見される。もちろん、最終的にその中ではインジケータの視認性が良好な、実質的にインジケータの中心を取る縦軸の円錐を決定可能にするため、全ての他の方向の垂直面に沿って、同じオフセットを実現することができる。当該円錐は、当該垂直方向に対する最大及び最小角度を定義する、楕円形の底面を有してもよく、変形例では、θmin及びθmaxの2つの角度を定義することができる。
【0017】
本発明の導入部で言及した通り、技術的課題は、θmin及びθmaxの2つの角度を最適化すること、すなわち良好な視認性または可視性の範囲の幅を増加することからなる。換言すれば、本発明は、観察者の拡大したオフセット位置決めからのインジケータ2の良好な視認性または可視性を可能にすることを求める。
【0018】
本発明の概念によれば、少なくとも1つの非球面の表面または面部分を含む、少なくとも1つのレンズを含む光学装置が用いられる。より単純には、光学装置は少なくとも1つの非球面を含む少なくとも1つのレンズを含む、または、光学装置は少なくとも1つの非球面を含む、と言うことができる。当該光学装置は、インジケータと観察者との間に位置されるように配置される。このため光学装置は、観察すべきインジケータに実質的に重ね合わされる、すなわち、実質的にインジケータ上に位置される。
【0019】
当該非球面の面は、より具体的には、光学装置の垂直方向zの光学軸を含む垂直面を通る少なくとも1つの断面を含むという事実で定義され、その少なくとも1つの輪郭は、以下の数式(1)で定義可能な曲線である。
【数2】
【0020】
ここで、以下の条件が裏付けられる。コニシティ定数κまたは非球面性係数α(i=4,6,・・・)の少なくとも1つの値が、ゼロではない。
【0021】
垂直方向zの光学軸に対して直角の基準方向に対する上記垂直面の角度オフセットを示すためにφを用いると、(r,φ,z)は、数式(1)において、通常の円筒座標であり、Rは公称曲率半径であり、κはコニシティ定数であり、α4,6,・・・は非球面性係数である。公称曲率半径Rは、r=0の位置での曲率半径に対応することに留意する。
【0022】
当該輪郭が角度φにかかわらず数式(1)により定義可能な特定の場合において、当該輪郭は、垂直方向zの光学軸周りに回転対称を示す。
【0023】
非球面性α4,6,・・・の全ての係数がゼロの場合、コニシティ定数κは、断面の形状のタイプに影響を与える。断面は、κ=0の場合は円であり、κ=-1の場合は放物線であり、κ<-1の場合は双曲線であり、その他の場合は楕円である。
【0024】
非球面性α4,6,・・・の係数は、当初の断面(すなわち、非球面性係数の全てがゼロである、同じ数式(1)で定義される断面)の外観を変更することに寄与することに留意する。当該変更は、原点からの距離が離れるほど、大きくなる(すなわち、rが大きくなるほど大きくなる)。
【0025】
このため、本発明にかかる非球面は、
- 放物線、双曲線、または楕円、または
- 少なくとも1つの非ゼロ非球面性係数により修正された、放物線、双曲線、または楕円、または
- 少なくとも1つの非ゼロ非球面性係数により修正された、円
の形状を有する少なくとも1つの断面を含む。
【0026】
このため、本発明はまた、時計用光学装置に関し、少なくとも1つの非球面は、少なくとも1つの輪郭が非球面性係数で修正された円の一部分の形を取る曲線である垂直面を通る、少なくとも1つの断面を含む。
【0027】
更に、本発明はまた、時計用光学装置に関し、少なくとも1つの非球面は、少なくとも1つの輪郭が楕円、放物線または双曲線の形を取る曲線である垂直面を通る、少なくとも1つの断面を含む。
【0028】
このような少なくとも1つの非球面を有する光学装置に基づいて、表示の視認性及びまたは可視性が明らかに改善されたことが認められた。実際には、レンズの表面または面部分の正確な非球面の決定は、いくつかのアプローチに基づき行うことができる。
【0029】
出願人が好むアプローチによれば、非球面形状は、2つの連続するステップからなる最適化アルゴリズムに基づき定義することができる。第1ステップにおいて、非球面の空間でのグローバル検索により、強い光学ポテンシャルのレンズのファミリーを決定することが可能になる。検索は、確率アルゴリズムに、特にラテン超方格法と遺伝的アルゴリズムとに基づくものである。第2ステップにおいて、正しく決定されたファミリーのそれぞれの代表周りの局所探索法により、十分な解決策が現れるまで、反復によりレンズの表面を最適化することができる。当該第2ステップで用いられる方法は、例えば、ネルダー-ミードシンプレックス最適化の変形であってよい。
【0030】
「十分な解決策」とは、以下に説明する、相反する目的に少なくとも部分的に対処することを可能にする解決策を意味するものと理解される。
- 間隔[θmin, θmax]をできる限り増加する、
- θminとθmaxとの間の角度θが何であれ、関係する表示をできる限り一定に拡大する、
- 関係する表示の読み違えを引き起こす危険性がある、当該表示のひずみをできる限り最小化する。
【0031】
当該アプローチによる、出願人による研究によれば、関係する表示を一定に拡大しつつ、また当該表示のひずみをできる限り最小化しつつ、間隔[θmin, θmax]を先行技術から既知の間隔に対して100%ほど最大化できると見受けられる。
【0032】
更に具体的には、その曲率がrの関数として減少する少なくとも1つの非球面を含む少なくとも1つのレンズを含む光学装置は、上記の目的に取り組むことを可能にする、特に最適な解決策を構成する。
【0033】
図4から9は、本発明にかかる少なくとも1つの光学装置と時計ガラスとの連携を含む、本発明の実施形態を更に具体的に図示する。当該ガラスは、実質的に水平に延長する。読解を簡単にするため、様々な実施形態で同一または類似の要素を示すために同じ参照番号を用いる。
【0034】
図4から7に示す第1実施形態によれば、光学装置10は、例えば時計の文字盤に配置された、インジケータ2の実質的に上に、単一のレンズ21を含む。
【0035】
図4は、本実施形態によれば実質的に平面で水平な、小型時計ガラス3の上面4上に追加された光学装置10を図示する。当該光学装置は、小型時計ガラス3の上面4上に固定された、実質的に水平な下面13のレンズ21を含む。この固定は、例えば接着など、あらゆる手段でなされてよい。図4で図示されるように、光学装置10の断面は、コニシティ定数または非球面性係数の少なくとも1つの値が非ゼロの、前述の数式(1)に対応する上部曲線により区切られる。換言すれば、光学装置10のレンズ21の上面14は、その下面13が実質的に平面である一方、非球面性質を与える。
【0036】
図5は、本発明の第1実施形態にかかる光学装置10の第2変形例を図示する。第2変形例は、光学装置10とガラス3が一体成形の全体を形成するという事実で、図4の第1変形例から区別される。換言すれば、光学装置10はもはやガラスに固定された別個の要素ではない。光学装置10は、その上面形状が図4の第1変形例の場合と全体的に同一の全体を形成するために、ガラス3の上面4上に突起を形成し、ガラス3自身の一部となる。
【0037】
図6は、光学装置10とガラス3が一体成形の全体を形成する、第3変形実施形態を図示する。しかしながら、当該変形例において、光学装置は、ガラス3の厚み内に形作られている。このため、レンズ21の非球面頂面14はガラスの上面4の高さ以下に維持される、またはガラスの上面4と実質的に同じ高さに維持される。上面14は、未だに先行する2つの変形例に類似の形状を有することに留意する。
【0038】
図7は、光学装置10が、ガラスの下面5からガラス3の厚み内に形作られている、第4変形実施形態を図示する。当該実施形態において、光学装置10とガラス3は、一体成形の全体を形成する。光学装置10のレンズ21の下面13は、非球面を有する。
【0039】
本出願人の研究によれば、第1実施形態にかかる光学装置は、従来技術に比較して100%ほど増加した角度範囲にわたり可視の、拡大された表示の読み取りを提供することを示す。
【0040】
それぞれ図5から7と関係するこれら後者3つの変形実施形態において、光学装置10はあらゆる手段で、特に機械加工方法で、例えばフェムト秒レーザといったレーザ及びまたはエッチング方法で、ガラスに形成されることができる。
【0041】
図8及び9に図示される第2実施形態によれば、光学装置10は、それぞれ時計ガラス3の上面4及び下面5に配置された、2つの重ね合わされたレンズ21、22を含む。
【0042】
このように図8は第2実施例の第1変形例を図示する。このように光学装置は、図7の実施形態同様、ガラス3の下面に形作られた第1レンズ21を含む。当該第1レンズは非球面である、すなわち少なくとも1つの非球面を含む。加えて、光学装置10は、第1レンズ上に重ね合わされた、ガラスの上面4に固定された第2レンズ22を含む。当該第2レンズ22は、球面である。第2ガラスは、第1レンズの拡大効果を補完する、第2拡大効果を追加する。
【0043】
図9は、第2レンズ22も非球面である点で第1変形例から区別される、第2変形実施形態を図示する。有利には、当該レンズ22は、第1レンズ21が提供する拡大効果を補完する一方、第1レンズ21が生成するひずみ効果を減衰させる。
【0044】
当該第2レンズ22は、図4の第1実施形態の第1変形例の光学装置のレンズと類似する。変形例として、当該第2レンズは、図5及び6の第1実施形態の他の2つの変形例の光学装置のレンズと類似してもよい。第1レンズ21は、図8の第1実施形態の第1レンズと同一のままである。
【0045】
全ての場合において、光学装置及びまたは光学装置が含む少なくとも1つのレンズは、時計のガラスの全表面積の30%以下の表面積を占める。
【0046】
出願人による研究によれば、第2実施形態にかかる光学装置は、第1実施形態にかかる光学装置が提供する拡大された読み取りに対して改善され、従来技術に比較して100%ほど増加した角度範囲にわたり可視の、拡大された表示の読み取りを提供することが明らかにされた。
【0047】
もちろん、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。特に、これら実施形態は組み合わせることができる。更に、光学装置は、1つまたは2つの重ね合わされたレンズを基に説明されてきた。変形例として、光学装置は、3つ以上のレンズを含んでもよい。レンズは、少なくとも部分的に重ね合される。更に、レンズは、ガラスの上面または下面に配置された。変形例として、当該レンズは、ガラスの厚みのいかなる点に位置されてもよい。レンズまたは複数のレンズは、ガラスの厚みの全体にわたり延長してもよい。
【0048】
更に、図示した全ての変形例において、光学装置は、最終的に、非球面の部分を、特に非球面を含む。当該非球面は、凸面である。変形例として、当該レンズは両凸でもよい、すなわち2つの反対の凸面を有してもよい。更に、当該2つの面は、両方とも非球面であってもよい。このため、光学装置は、2つの非球面の上面及び下面を含んでもよい。
【0049】
更に、光学装置の水平輪郭は、すなわち水平面に沿った光学装置の断面により、または光学装置の水平面への、特に時計の平面Pへの投影により定義される輪郭は、異なる形状を取ってもよい。例えば、円形、四角、長方形または楕円であってもよい。
【0050】
光学装置のレンズは、硬い水晶素材で、特にコランダム、サファイヤ、またはスピネルで製作されてもよい。代替的に、光学装置のレンズは、ガラス、特に鉱物ガラスで製作されてもよい。他の代替として、光学装置のレンズを形成する素材は、ポリマー、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)製でもよい。変形実施形態がどれであれ、時計のガラスも同様に、硬い水晶素材で、特にコランダム、サファイヤ、またはスピネルで製作されてもよい。同様に、ガラスは、代替的にガラス、特に鉱物ガラスに、またはポリマー、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)で製作されてもよい。レンズまたは複数のレンズは、ガラスと同一の素材製であってもなくてもよい。最後に、少なくとも1つのレンズは、有利には、硬質材料製である。当該硬質材料は、変形不能であり、時計の通常使用中に変形するようには設計されない。硬質材料の塑性域は少ないまたは存在しない。少なくとも1つのレンズは、有利には、全てが当該硬質且つ変形不能材料製であってもよい。変形例として、少なくとも1つのレンズは、少なくとも実質的に完全にレンズを包囲し、変形不能硬質材料製である、少なくとも1つの外側外囲を含んでもよい。
【0051】
全ての実施形態において、光学装置は時計のガラスと関連付けられていた。当該実施形態において、光学装置は、ガラス及び時計に対して固定された。変形例として、光学装置は、ガラスとは独立して時計に配置されてもよい。例えば、光学装置は、インジケータを含む文字盤と、時計のガラスとの間に配置されてもよい。加えて、光学装置は、時計内に配置され固定されていた。変形例として、光学装置は、例えば時計の針に搭載されることにより、時計に対して可動であってもよい。
【0052】
時計のインジケータ2は、あらゆる種類の表示を、特に例えば時または分の表示といった時間の表示、またはあらゆる種類の時刻派生表示を、例えば月の日、曜日、月、または月の相といったカレンダー表示をディスプレイするよう設計されてよい。当該インジケータは可動でもよく、文字盤の窓に特定の表示をディスプレイするように設計されてもよい。この場合、光学装置は、有利には、窓に現れる表示の可視性を最適化するために、文字盤窓上に重ね合される。
【0053】
代替的に、インジケータは、固定されてもよく、例えば文字盤上の様々な位置に追加されるいくつかの別個の表示を含んでもよい。この場合、光学装置は、インジケータの複数の表示の一部のみである、検討すべき表示の可視性を最適化するために、インジケータに対して可動であってもよい。
【0054】
全ての場合において、表示は、数字、文字、または色といった注釈でもよい。インジケータは、有利には、ガラスの及びまたは当該光学装置のレンズの平面に平行な平面に位置される。「ガラスの平面」は、有利には、ガラスの上面に平行な平面及びまたはガラスの上面を通る平面に対応する。
【0055】
最後に、当該ガラスは、
- 時計の密閉且つ固定された外囲の形成に加わる、及びまたは
- 拡大すべきインジケータが存在する平面に平行に配置される、及びまたは
- ガラスの上面の全表面積の30%以下、または20%以下、または10%以下の表面積を占める少なくとも1つの非球面を含む、少なくとも1つのレンズを含む、及びまたは
- 時計の拡大するべき少なくとも1つのインジケータの実質的に垂直方向に重ね合わされた少なくとも1つの非球面を含む、少なくとも1つのレンズを含む、及びまたは
- 当該ガラスに対して固定された少なくとも1つの非球面を含む、少なくとも1つのレンズを含む
ことでもよい。
【0056】
加えて、前述の通り、光学装置は、少なくとも1つの非球面部分を含む少なくとも1つの面を含むときに、非球面であると見做される。このため、図10に示す例示的実施形態によれば、このような非球面13、14は、例えばその輪郭が、中心に円17の部分を含み、少なくとも1つの変曲点18を含む断面を含んでもよい。変曲点18において、当該断面の輪郭の凹面または凸面の変更が存在する。
【0057】
最後に、本発明の実施形態にかかる光学装置の非球面は、中央縦軸周りに回転対称を示しても示さなくてもよい。更に、本発明の実施形態にかかる光学装置は、垂直正中面に対する対称を示しても示さなくてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 時計
2 インジケータ
3 ガラス
4 上面
10 光学装置
13 下面
14 上面
18 変曲点
21 レンズ
22 第2レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10