(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】自動塗装装置及び配管器材、並びに塗装作業スペース
(51)【国際特許分類】
B05B 12/00 20180101AFI20240426BHJP
B05B 13/04 20060101ALI20240426BHJP
B05B 16/40 20180101ALI20240426BHJP
【FI】
B05B12/00 A
B05B13/04
B05B16/40
(21)【出願番号】P 2019177722
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2018184702
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 涼
(72)【発明者】
【氏名】植松 健
(72)【発明者】
【氏名】野村 直
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嵐
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-044655(JP,A)
【文献】特開2007-044840(JP,A)
【文献】特開昭60-007954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/00
B05B 13/04
B05B 16/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装ブースの外方位置に非防爆型の電動機器を搭載した駆動源を配置し、前記塗装ブースの内及び/又は外に被塗装物である配管器材を回転可能に配置し、さらに、配管器材塗装用の塗装ガンを有する駆動機構を基台により支持して配置すると共に、前記駆動機構は、少なくとも前記塗装ガン全体を前記基台に対して平行に回転するX方向駆動用の駆動ユニットと、前記塗装ガン全体を前記基台に対して直交に回転するY方向駆動用の駆動ユニットと、先端にノズルを有する前記塗装ガンを支持する支持台や支持枠に対して周方向に回転するQ方向駆動用の駆動ユニットとを隣接させた状態でユニット化して構成し、前記X方向駆動用の駆動ユニットと前記Y方向駆動用の駆動ユニットと前記Q方向駆動用の駆動ユニットに個別に設けたプーリと前記駆動源に個別に設けたプーリにそれぞれワイヤリンケージ機構を掛設して、このワイヤリンケージ機構を介して各駆動ユニットに個別に動力を伝達するようにしたことを特徴とする自動塗装装置。
【請求項2】
前記配管器材は回転可能にワーク支持部により支持され又は前記配管器材は回転機構により回転可能である請求項1に記載の自動塗装装置。
【請求項3】
前記駆動源は、モータによる電動機器を搭載し、かつ個別の回転方向に駆動するプーリに前記ワイヤリンケージ機構のワイヤを巻回して構成した駆動源ユニットから成る請求項1又は2に記載の自動塗装装置。
【請求項4】
前記塗装ガンは丸吹き又は平吹き方式である請求項1乃至3の何れか1項に記載の自動塗装装置。
【請求項5】
前記駆動源ユニットは、複数個の駆動源ユニットを積層し、又は横並びにして構成された請求項3に記載の自動塗装装置。
【請求項6】
前記駆動ユニットは、複数個の駆動ユニットを積層し、又は横並びにして構成された請求項4に記載の自動塗装装置。
【請求項7】
前記駆動源ユニットは、前記塗装ブースの仕切壁の外部上方又は外方側方に配置された
請求項3に記載の自動塗装装置。
【請求項8】
前記配管器材は、組立完成後のバルブ又はバルブや継手の構成部品或いは組立完成後の空気圧式アクチュエータ又はこのアクチュエータの構成部品である請求項1乃至7の何れか1項に記載の自動塗装装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の自動塗装装置を用いて塗装
することを特徴とする配管器材
の塗装方法。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の自動塗装装置を用いたことを特徴とする塗装作業スペース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動塗装装置及び配管器材、並びに塗装作業スペースに関する。詳細には、防爆対策を実施しながらも、小型化とユニット化を実施可能な自動塗装装置及びこれを用いて塗装した配管器材、並びに自動塗装装置を用いた塗装作業スペースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バルブ、継手、ストレーナなどの配管器材のワークの塗装作業は、作業者が手作業でスプレーガンを使用して塗料を吹付け、下塗りや上塗り等の塗装を行っていた。しかし、有機溶剤の塗料は揮発性かつ引火性で作業環境の安全性を確保する必要があり、作業環境への配慮などから、塗装作業に自動塗装装置を導入している。
【0003】
一方で、自動車の車体等の塗装作業においては、複雑な形状の車体に塗装することができるように、ロボットアームに塗装ガンを取付けた自動塗装ロボットにより塗装作業を実施している。特に、塗装作業に自動塗装ロボットを導入するには、防爆対策が必要であるから、一定の防爆対策を実施するために塗装ブース内に自動塗装ロボットを設置して塗装作業を実施している。また、一定の防爆対策をした場合に、塗装作業設備全体が大きくなるため、防爆対策をしつつ、塗装作業ブースの小型化をすることが望まれる。
【0004】
防爆対策とブースの小型化の一例としては、塗装ブースの外部に非防爆型の電源と、自動塗装装置の駆動本体を設置し、自動塗装装置のアーム部を塗装ブース内に突出させて、アーム部を気密カバーで覆いアームの内部に揮発した塗料が侵入しないようにした構成が挙げられる。しかし、複雑な形状に対応できるようにロボットアームを使用した自動塗装ロボットのアーム部をカバーで覆うと、アームの作動範囲が制限される。
【0005】
そこで、特許文献1では、塗装ブースの小型化が可能で防爆型の駆動源を使用する必要がなく大きな作動範囲を得ることが可能な塗装装置が開示されている。特許文献1では、塗装ブースの外部に駆動電源を設け、固定アーム部と回動アーム部と塗装ガンからなる塗装装置において、固定アームを気密状態で塗装ブースに突出させ、固定アームの伝達機構内の同軸上の各回転軸との間にシール型軸受部材を介装させて、塗装ブースに拡散した有機溶剤がアームの内部に侵入するのを阻止した構成によって、非防爆モータの使用が可能な塗装装置が開示されている。
【0006】
ところで、塗装作業以外に、ロボットアームを使用した作業ロボットは、例えば、ダイカストマシン内で対向している狭い金型内や複雑な形状の金型の金型面に離型剤をスプレー噴霧するために使用されている。
【0007】
このようなスプレーロボットは、メインロボットとメインロボットの先端部にスプレーノズルの姿勢を制御するリストロボットからなり、リストロボットには、角度固定スプレーノズルと角度可動スプレーノズルが取り付けられている。また、角度固定スプレーノズルと角度可動スプレーノズルを併用していることから、機構が複雑になっている。
【0008】
そこで、特許文献2のスプレーロボットでは、リストロボットは、リストロボット本体とアクチュエータ部に分離させ、間接駆動方式を採用してリストロボットを小型化している。特許文献2では、リストロボット本体とアクチュエータ部を分離させ、スプレー剤を噴霧するスプレーノズルとスプレーノズルの向きを変えるリストロボットと、リストロボットを所定の位置まで移動させる機能を有するメインロボットで構成し、分離したリストロボット本体とアクチュエータ部との間を蛇管ワイヤによる動力伝達手段を用いた金型スプレーロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第3809259号公報
【文献】特開2002-35913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の塗装装置では、駆動アームの駆動軸にシール型ベアリングを介装させることにより、塗装ガンの駆動アーム全体をカバーで覆うことなく、防爆対策をしながら、非防爆型の電源を使用することができ、塗装ブースを小型化することができる。
しかしながら、ロボットアームを使用する塗装装置であるから、複雑な形状に対応できるようにアームの作動範囲を確保するために、塗装ブース内で一定のスペースを確保する必要がある。このため、塗装内ブースが狭く、ロボットアームの作動範囲を十分に確保できない場所には塗装装置を設置することができない。
さらに、ロボットアームの駆動機構は複雑な機構となっており、また、ロボットアームを使用した塗装装置では、自動車の車体よりも比較的小さい被塗装物で、大小様々な多品種少量の被塗装物を塗装することを前提としていない。
【0011】
また、特許文献2の金型スプレーロボットでは、ロボットアームのスプレーノズルの向きを変更するシリアルリンクのプーリとアクチュエータ部のプーリとをワイヤで接続させて、ワイヤによる動力伝達手段による間接駆動式の機構としたことで、ダイカストマシンの狭い金型面や複雑な形状の金型に適切にスプレー剤を噴霧することができるとともに、装置の小型化をすることができる。
しかしながら、特許文献2の金型スプレーロボットは、間接駆動式のアームを採用しているけれども、塗装作業に使用するための装置ではなく、塗装作業場所に設置するための防爆対策については何ら考慮されていない。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために開発されたものであり、その目的とするところは、複雑な機構にすることなく、適切な防爆対策のもとで非防爆型駆動源の使用が可能であり、塗装作業環境の向上と塗装作業スペースを効率的に活用することができるとともに、多品種少量の製品を塗装ブース内で塗装することができる自動塗装装置及び、この装置により塗装されるバルブ、継手、ストレーナなどの配管器材並びに自動塗装装置を用いた塗装作業スペースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、塗装ブースの外方位置に非防爆型の電動機器を搭載した駆動源を配置し、塗装ブースの内及び/又は外に被塗装物である配管器材を回転可能に基台により支持して配置し、さらに、配管器材塗装用の塗装ガンを有する駆動機構を配置すると共に、駆動機構は、少なくとも、塗装ガン全体を基台に対して平行に回転するX方向駆動用の駆動ユニットと、塗装ガン全体を基台に対して直交に回転するY方向駆動用の駆動ユニットと、先端にノズルを有する塗装ガンを支持する支持台や支持枠に対して周方向に回転するQ方向駆動用の駆動ユニットとを隣接させた状態でユニット化して構成し、X方向駆動用の駆動ユニットとY方向駆動用の駆動ユニットとQ方向駆動用の駆動ユニットに個別に設けたプーリと駆動源に個別に設けたプーリにそれぞれワイヤリンケージ機構を掛設し、このワイヤリンケージ機構を介して各駆動ユニットに個別に動力を伝達するようにした自動塗装装置である。
【0014】
請求項2に係る発明は、配管器材は回転可能にワーク支持部により支持され又は配管器材は回転機構により回転可能である自動塗装装置である。
【0015】
請求項3に係る発明は、駆動源は、モータによる電動機器を搭載し、かつ個別の回転方向に駆動するプーリにワイヤリンケージ機構のワイヤを巻回して構成した駆動源ユニットから成る自動塗装装置である。
【0016】
請求項4に係る発明は、塗装ガンは丸吹き又は平吹き方式である自動塗装装置である。
【0017】
請求項5に係る発明は、駆動源ユニットは、複数個の駆動源ユニットを積層し、又は横並びにして構成された自動塗装装置である。
【0018】
請求項6に係る発明は、駆動ユニットは、複数個の駆動ユニットを積層し、又は横並びにして構成された自動塗装装置である。
【0019】
請求項7に係る発明は、駆動源ユニットは、前記塗装ブースの仕切壁の外部上方又は外方側方に配置された自動塗装装置である。
【0020】
請求項8に係る発明は、配管器材は、組立完成後のバルブ又はバルブや継手の構成部品或いは組立完成後の空気圧式アクチュエータ又はこのアクチュエータの構成部品である自動塗装装置である。請求項9に係る発明は、自動塗装装置を用いて塗装された配管器材である。請求項10に係る発明は、自動塗装装置を用いた塗装作業スペースである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によると、多品種少量で、しかもバルブやアクチュエータ等のように曲面や段差等の複雑な形状の配管器材であっても、配管器材の全体を満遍なく確実に塗装することができると共に、駆動ユニットを含む塗装装置を著しくコンパクトに集約することができるので、防爆対策を可能にしつつ塗装作業スペースを効率的に活用することが可能となり、もって省スペースに設置することができる。
【0022】
請求項2に係る発明によると、駆動源の駆動力を塗装ガンに伝達させる駆動機構は、ワイヤリンケージ機構でありワイヤを介して塗装ガンが所定の方向に駆動し、配管器材は、ワーク支持部により回転可能に支持し又は回転機構により回転可能であるから、自動塗装の駆動機構を複雑な構成や機構とすることなく、防爆対策を実施しながらも、省スペースにも設置可能な自動塗装装置を提供できる。
【0023】
請求項3に係る発明によると駆動源は、モータによる電動機器を搭載し、かつ個別の回転方向に駆動するプーリにワイヤリンケージ機構のワイヤを巻回して構成した駆動源ユニットとしたことにより、塗装ブース外方で爆発雰囲気から離間させた場所に設置することができ、防爆対策ができると共に、ワイヤリンケージ機構でワイヤを介して、駆動源の駆動力を応答性良く駆動ユニットに伝達させることができ、自動塗装の駆動機構を複雑な構成や機構にすることなく防爆対策が実施された自動塗装装置を提供することができる。
【0024】
請求項4に係る発明によると、塗装ガンは、丸吹き又は平吹き方式であるから、任意の回転方向のみ駆動させることでワークを塗装できるので、所望の回転方向のみ駆動機構を設ければよいので、装置の小型化に寄与することができる。
【0025】
請求項5及び請求項6に係る発明によると、駆動源ユニット及び駆動ユニットが、複数個の駆動源ユニット及び複数個の駆動ユニットを積層又は横並びにして構成されているので、駆動源ユニットをコンパクトに集約することが可能で、かつ、駆動ユニットを積層して構成することが可能で、塗装ガンを駆動可能にしながらも、自動塗装装置の小型化とユニット化を実施可能にすると共に、多品種で複雑な形状の配管器材にも塗装することができる自動塗装装置を提供することができる。
【0026】
請求項7に係る発明によると、非防爆型の電動機器を搭載した駆動源ユニットを、塗装ブースの上方又は塗装ブースの外方側に配置可能であるから、防爆対策を実施可能にしながら塗装作業スペースを効率的に活用することができると共に、省スペースにも設置可能な自動塗装装置を提供することができる。
【0027】
請求項8及び請求項9に係る発明によると、自動塗装装置を使用して、手作業と同程度の塗装の仕上がりで、大小様々で多品種の組立完成後のバルブ又はバルブや継手の構成部品或いは組立完成後の空気圧式アクチュエータ又はこのアクチュエータの構成部品など配管器材に塗装することができる。請求項10に係る発明によると、自動塗装装置の周囲を塗装作業者の作業領域として利用することができ、塗装作業スペースを効率的に活用することが可能となり、もって省スペースに設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施例を示す自動塗装装置であり、(a)はその概略構成図、(b)は塗装ガン付近の拡大図である。
【
図2】同上のワイヤリンケージ機構の説明図である。
【
図3】駆動源ユニット側のワイヤリンケージ機構の説明図であり、(a)は一部切欠き斜視図、(b)は平面説明図である。
【
図4】ワイヤの張力を維持する機構の説明図である。
【
図5】塗装ガンの駆動ユニットのワイヤリンケージ機構の概略図である。
【
図8】他例のワイヤの張力を維持する機構の説明図であり、(a)は側面説明図、(b)は平面説明図である。
【
図9】他例のワイヤの張力を維持する機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明における自動塗装装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書において、X、Y、Q方向などの方向は図面に記載の方向である。
図1(a)は、本発明の一実形態の自動塗装装置の概略構成図であり、
図1(b)は、塗装ガン付近の拡大図である。
【0030】
図1に示すように、塗装作業スペースには、塗装ブース1、ワーク載置台2、自動塗装装置3が設置されている。自動塗装装置3と塗装ブース1の間には、ワーク載置台2が設置されている。このワーク載置台2はワーク支持部4を有し、塗装されるワーク5を回転可能に支持している。
【0031】
塗装ブース1は、塗装室と排気機構や集塵機構の給排気ユニットを備えた枠体で構成されており、塗装ガンからの塗料ミストなどを集塵し、塗装作業スペースの周辺環境に拡散しないようにしている。本実施形態では、塗装装置3を塗装ブース外に設けているが、塗装ブース内に内包されて設置されていてもよい。なお、本実施形態においては水洗式の集塵方法を採用した塗装ブース1を使用しているが、塗装作業に適切に使用できるものであれば特に限定されない。
【0032】
ワーク載置台2は、塗装ブース1と自動塗装装置3の間に配置されている。このワーク載置台2にはワーク支持部4があり回転可能に塗装されるワーク5を支持している。ワーク支持部4が回転可能であるから、ワーク5を所望の向きに回転させることができる。なお、回転機構などによりワークが回転するようにしてもよく、ワークの回転方向は特に限定はない。
本実施形態においては、ワークが塗装ブース外に配置されているが、ワーク載置台を塗装ブース内に配置してワークを塗装ブース内に配置してもよい。また、ワーク支持部を自動塗装装置3に設けてもよい。
【0033】
塗装されるワークは、バルブ、継手、ストレーナなどの配管器材である。例えば、このワークは、組立完成後のバルブや、バルブや継手の構成部品のほか、組立完成後の空気圧アクチュエータやアクチュエータの構成部品(ハウジングなど)の各種の部品や大きさが様々な配管器材である。
【0034】
自動塗装装置3は、駆動機構6を備えた塗装ガン8と、この駆動機構6に駆動力を付与する駆動源9と、この駆動源9の駆動力を塗装ガン8に伝達するための駆動力伝達機構7とを備えている。駆動源9による遠隔操作により塗装ガン8を駆動させて、塗装ブース1の内外に配置された被塗装物であるワーク5を塗装することができる。この駆動力伝達機構7は、ワイヤリンケージ機構としている。
本実施形態では、駆動源からの伝達駆動力をワイヤを介して伝達させているワイヤリンケージ機構を用いているが、ワイヤリンケージ機構の一例としては、自転車のブレーキワイヤやギヤーワイヤなどがある。
なお、塗装ガンの方式には特に限定はないが、丸吹き方式、平吹き方式、その他の方式を塗装するワークの用途に合わせて適用できる。
【0035】
駆動源9は、塗装ブースの外方に配置され、非防爆型の電動機器を搭載している。駆動源は、モータによる電動機器を搭載し、かつ個別の回転方向(後述するX、Y、Q方向)に駆動するプーリに、ワイヤリンケージ機構のワイヤを巻回して構成した駆動源ユニットから成る。そして、この駆動源ユニットは、複数個の駆動源ユニットを積層し又は横並びにして構成している。
【0036】
本実施形態では、非防爆型の電源モータを使用している。塗装作業環境の周辺で非防爆型の電源モータを使用する際には、適切な防爆対策を実施する必要がある。このため、この駆動源9は、有機溶剤を用いた塗装において、爆発雰囲気から十分に離間した位置に設置される。すなわち、非防爆型の電動機器を搭載した駆動源9は、塗装ブースの外方に配置される。
【0037】
例えば、
図1(a)に示すように、塗装ブース1の上面に駆動源9aを設置することができる。このとき爆発雰囲気から十分に離間した高さに位置する仕切壁で塗装ブースの上面に駆動源9aが配置されるとよい。また、例えば、
図1(a)に示すように、爆発雰囲気から十分に離間した塗装ブース1の側面側の仕切壁から離れた位置に、駆動源9bを設置することもできる。
【0038】
このように、駆動源ユニットを、塗装ブースの仕切壁の外部上方又は外方に配置することができるから、非防爆型の電動機器を搭載した駆動源が、塗装ブース外方の爆発雰囲気から離間した位置に配置されて、防爆対策が実施された環境下でワークを遠隔で自動塗装することができると共に、省スペースに設置可能な自動塗装装置を提供できる。そして、駆動源をユニット化したことで、小型化とユニット化を可能にした自動塗装装置を塗装作業環境の周辺に設置することができる。
【0039】
自動塗装装置3において、駆動機構6と塗装ガン8は、個別の回転方向に駆動するプーリにワイヤリンケージ機構のワイヤを巻回して構成した駆動ユニットとこの駆動ユニットに設けた塗装ガン8から成る。そして、駆動ユニットは、複数個の駆動ユニットを積層し又は横並びにして構成される。
【0040】
このため、
図1(b)に示すように、自動塗装装置3の塗装ガン8は、駆動機構6により塗装ガンの方向を調整することができる。駆動機構6によって、塗装ガン8がX、Y、Q方向に駆動することができる。この塗装ガン8の駆動は、駆動源9の駆動力を伝達する駆動力伝達機構7によって駆動する。この駆動伝達機構7は、ワイヤリンケージ機構であり、塗装ガン8の駆動機構6と駆動源9とがワイヤを介して接続し、塗装ガン8を駆動制御するようにしている。本実施形態における駆動力伝達機構7は、ワイヤリンケージ機構で、駆動源の駆動力が応答性良く駆動ユニットに伝達される。また、駆動機構を複数個の駆動ユニットで構成したことで、駆動ユニットを横方向又は縦方向に沿って積層して構成することが可能でコンパクト化を可能とし、小型化とユニット化を可能にした自動塗装装置を提供することができる。
【0041】
本実施形態では、自動塗装装置3が塗装ブース外に配置されており、塗装ガン8を駆動させる駆動機構6は塗装ブース外に配置されるが、塗装ブース内に自動塗装装置3が配置される場合には、駆動機構6も塗装ブース内に配置されることになる。一方で、駆動機構6が塗装ブース内外の何れに配置されても、駆動源9は塗装ブース1の外方に配置される。
【0042】
また、本実施形態において、自動塗装装置3の側方を塗装作業者の作業領域として利用することができる。例えば、ワーク載置台2にワーク支持部4を介して設置された組立後のバルブに対し、塗料が付着するのを防ぐためのマスキング作業場所として利用することができる。
【0043】
続けて、本発明の自動塗装装置のワイヤリンケージ機構の構成を詳しく説明する。本発明の自動塗装装置は、駆動機構と、この駆動機構によりX、Y、Q方向に駆動する塗装ガンと、駆動力を与える駆動源と、駆動源の駆動力を塗装ガンに伝達する駆動力伝達機構と、を備えて構成されている。
【0044】
図2は、自動塗装装置の駆動力伝達機構の概要を示している。
図2に示すように、本発明の一実施形態の自動塗装装置は、基台11、基軸部12、駆動機構6(駆動ユニット)、塗装ガン8、駆動源9(駆動源ユニット)と、駆動力伝達機構7と、を備えて構成されている。
【0045】
基台11は、駆動機構6と塗装ガン8を有する自動塗装装置を支持している。基台11は、例えば、前後左右S方向(塗装ブースに対して直交または平行方向)に移動可能に設けてもよい。S方向の移動は、別途ワイヤリンケージ機構や他の機構(カム機構とを組合わせたその他機構など)を用いてもよい。
【0046】
基軸部12は、基台11と接続している。基軸部12は、駆動機構6の駆動ユニット21と接続している。基軸部12は、上下Z方向(塗装ガン全体を上下する方向)に昇降可能で、例えば、空気圧シリンダ(図示せず)により、昇降することができる。Z方向の移動は、別途ワイヤリンケージ機構や他の機構(カム機構とを組合わせたその他機構など)を用いてもよい。
【0047】
駆動機構6は、塗装ガン8と接続しており、駆動源9の駆動源ユニットから駆動力が伝達されて、塗装ガン8が駆動する。駆動機構6は、塗装ガン8の方向を調整するように回転機構を有している。
図2に示す、一実施形態の自動塗装装置では、駆動機構6は、駆動ユニット21と、駆動ユニット31と、駆動ユニット41から構成されている。駆動ユニットは、複数個の駆動ユニットを積層し、又は横並びにして構成している。
【0048】
駆動ユニット21は、塗装ガン8をX方向(塗装ガン全体を基台11に対して
平行に回転する方向)に駆動させるように設けている。
図2に示すように、駆動ユニット21のX回転軸22は、基軸部12と
平行であり、駆動ユニット21のX回転軸22は、第1支持台18を回転可能に接続している。駆動ユニット21により、X回転軸22に対する回転方向のX方向に第1支持台18が回転するので、塗装ガン8をX方向に駆動させることができる。
【0049】
駆動ユニット21のプーリ23は、ワイヤ20と接続しており、このプーリ23に接続されたワイヤ20が駆動源ユニット51と接続している。ワイヤ20は、タイコ24により一端がX回転軸22のプーリ23に固定されている。駆動ユニット21の駆動回転は、駆動源ユニット51から駆動力がワイヤ20を介して伝達される。このように、駆動力を塗装ガン8に伝達する駆動力伝達機構7を、ワイヤリンケージ機構としている。
【0050】
駆動ユニット31は、塗装ガン8をY方向(塗装ガン全体を基台11に対して
直交に回転する方向)に駆動させるように設けている。
図2に示すように、駆動ユニット31のY回転軸32は、第1支持台18と
平行であり、駆動ユニット31のY回転軸32は、第2支持台19を回転可能に接続している。また、Y回転軸32は、駆動ユニット21のX回転軸22と直交している。駆動ユニット31により、Y回転軸32に対する回転方向のY方向に第2支持台19が回転するので、塗装ガン8をY方向に駆動させることができる。
【0051】
駆動ユニット31は、駆動ユニット21と同様にワイヤリケージ機構により、駆動源から駆動力が伝達される。駆動ユニット31は、ワイヤ30がタイコ34により一端がプーリ33に固定されて、Y回転軸32のプーリ33に接続したワイヤ30が駆動源ユニット52と接続しており、駆動ユニット31の駆動回転は、駆動源ユニット52から駆動力がワイヤ30を介して伝達される。このように、駆動力を塗装ガン8に伝達する駆動力伝達機構7を、ワイヤリンケージ機構としている。
【0052】
駆動ユニット41は、塗装ガン8をQ方向(先端に複数のノズル(図示せず)を有する塗装ガンを支持する支持台や支持枠に対して周方向に回転する方向)に駆動させるように設けている。
図2に示すように、駆動ユニット41のQ回転軸42は、Y回転軸32に対して直交している。Q方向は、塗装ガン8の回転方向であるから、駆動ユニット41は、塗装ガン8の回転方向のQ方向に塗装ガン8を駆動させることができる。
【0053】
駆動ユニット41は、駆動ユニット21及び駆動ユニット31と同様に、ワイヤリケージ機構により、駆動源から駆動力が伝達される。駆動ユニット41は、ワイヤ40がタイコ44により一端がプーリ43に固定されて、Q回転軸42のプーリ43に接続したワイヤ40が駆動源ユニット53と接続しており、駆動ユニット41の駆動回転は、駆動源ユニット53から駆動力がワイヤ40を介して伝達される。このように、駆動力を塗装ガン8に伝達する駆動力伝達機構7を、ワイヤリンケージ機構としている。
【0054】
駆動機構6において、駆動ユニットは、駆動ユニット21と、駆動ユニット31と、駆動ユニット41とが隣接して積層又は横並びに構成しており、駆動ユニットを積層して直線的に構成することができるので、塗装ガン8の駆動機構6をコンパクト化し、自動塗装装置の小型や省スペース化を図ることができる。そして、複数の方向に塗装ガン8が駆動するから、大小様々で複雑な形状のワークに対して、塗装ガン8の位置を制御することができる。さらに、駆動源9から駆動力を伝達する駆動力伝達機構7が、ワイヤリンケージ機構であるから、駆動源の駆動力を応答性良く駆動ユニットに伝達することができると共に、塗装ガン8の駆動機構を複雑な機構とすることなく、塗装ガン8を駆動させることができる。
【0055】
駆動源9は、駆動力を駆動機構に伝達できるように構成されている。駆動源は、モータによる電動機器を搭載し、かつ個別に駆動するプーリにワイヤリンケージ機構のワイヤを巻回して構成した駆動源ユニットからなり、駆動源ユニットは、複数個の駆動源ユニットを積層又は横並びにして構成される。また、駆動源ユニットは、塗装ブースの仕切壁の外部上方又は外方側方に配置される。
【0056】
駆動源9の駆動源ユニットのモータがプーリに接続しており、モータの回転によりプーリが回転するように、制御部で操作される。このプーリは、駆動ユニットのプーリに接続したワイヤと接続している。
図2に示すように、駆動源ユニット51のプーリ51aは駆動ユニット21のワイヤ20と接続しており、駆動源ユニット52のプーリ52aは駆動ユニット31のワイヤ30と接続しており、駆動源ユニット53のプーリ53aは駆動ユニット41のワイヤ40と接続している。このように、駆動源9の駆動源ユニットから駆動力を伝達する駆動力伝達機構7を、ワイヤリンケージ機構としている。
【0057】
駆動力伝達機構7が、ワイヤリンケージ機構であるから、非防爆型の電動機器を搭載した駆動源9を、爆発雰囲気から十分に離間させた場所に設置することが可能で、適切な防爆対策をすることができる。また、駆動力を伝達する駆動源の駆動源ユニット51、駆動源ユニット52、駆動源ユニット53を隣接して横並び又は積層して配置することができる。駆動源ユニットをコンパクトに集約できるため、駆動源ユニットを仕切壁の外部上方又は外方側方に配置することが可能で、塗装ブースの仕切壁の外方側方が狭い場合であっても、駆動源ユニットを縦方向に積層して配置できる。塗装作業スペースが狭い場所であっても、防爆対策が実施された環境下で、自動塗装装置を設置することができる。
【0058】
図3(a)に示すように、駆動源は、モータによる電動機器を搭載し、かつ、個別の回転方向に駆動するプーリに、ワイヤリンケージ機構のワイヤを巻回して構成した駆動源ユニットから成る。
【0059】
駆動源は、駆動源ユニットを備えて構成されている。モータ64は、断面L字の支持板65に支持固定されている。モータ64の回転軸66は、支持板65を貫通しており、軸受部67により回転可能に支持されている。モータ64の回転軸66にはプーリ72が装着され、プーリ72に接続するワイヤ71はタイコ73によって一端が固定されている。回転軸66に装着されたプーリ72とこのプーリ72に接続されたワイヤ71によりワイヤリンケージ機構を構成し、モータ64の回転駆動力が、ワイヤ71を介して塗装ガンを駆動させる駆動機構の駆動ユニットに伝達される。
【0060】
端部軸受部69は、回転軸66に装着したプーリ72の端部68側から、プーリ72を介して回転軸66の端部68を回転可能に支持している。なお、軸受部はプーリの回転軸を支持するほかに、プーリを介して端部側も支持するように複数個所に構成してもよい。
【0061】
プーリ72に接続したワイヤ71は、支持板65に取付けたケーブルグランド76により固定されている。
図3(b)に示すように、アウターケーブル75にワイヤ71を通し、プーリ72の反対の支持板65の外側からケーブルグランド76を締めこむことにより、ワイヤ71に張力を生じさせることができる。
【0062】
ワイヤリンケージ機構のワイヤの固定手順としては、駆動ユニットの回転軸とプーリを固定し、駆動源のモータを原点復帰して初期位置にしておく。次に、ワイヤ71とアウターケーブル75をケーブルグランド76に通し、ワイヤ71にタイコ73を取付けてプーリ72に固定する。次に、ケーブルグラウンド76による締めこみ固定によりワイヤ71に張力を生じさせる。以上のワイヤリンケージ機構は駆動ユニットにも同様に適用される。
【0063】
このように、ワイヤの張力がワイヤンリケージ機構の駆動力伝達機構を構成し、駆動源の駆動力が、ワイヤを介して駆動ユニットにずれが無く、応答性良く伝達される。このため、ワイヤの張力は、ワイヤリケージ機構において重要であるから、ワイヤの張力を維持する機構(テンション維持機構)があるとなおよい。
【0064】
例えば、
図4に示すような、ワイヤの張力を維持するためのテンション維持機構を実施することができる。ワイヤリンケージ機構の張力を有するワイヤ71を、外周側から押圧するようにして、ワイヤ71の張力を保持させている。外周から押圧するプーリ81の支持部材82に弾性部材83等を取付けた構成の機構によって、ワイヤ71の張力が維持される。これにより、ワイヤがプーリの外周に密接した状態を保ち、駆動源からワイヤリンケージ機構を介して駆動機構に伝達される回転力を、ずれが無く、応答性良く伝達する状態を長く維持することができる。このテンション維持機構は、ワイヤリンケージ機構の駆動源ユニット側及び駆動ユニット側の両方に設けてもよく、何れか一方に設けてもよい。
【0065】
他例は、
図8(a)及び
図8(b)に示すような、プーリ72の回転軸66の両端に反発部材として、トーションバネ(ねじりバネ)93を配置し、第1支持体91と第2支持体92とでバネを支持する構成の機構を適用することができる。第1支持体91の端部は軸受部などに固定させて、第2支持体92はプーリ72上に配置させているが、反発部材の反力によってワイヤの張力を維持しているが、反発部材の反力を利用することができれば、第1支持体と第2支持体との位置は特に限定はない。
【0066】
他例は、
図9に示すように,ワイヤリンケージ機構を構成するワイヤの一端に反発部材200を設けて、駆動源9の駆動源ユニットのプーリ72と接続するワイヤを1本としてもよい。この例では、駆動源側のプーリ72は、1本のワイヤで駆動機構6の駆動ユニットと接続させる構成とすることができる。
これにより、ワイヤ1本で接続する構成としたことで、組立や調整が容易となり、塗装ガンの動作時にワイヤが自動塗装装置3やこの塗装装置の周辺にある機器等に絡まるおそれを低減することができる。
また、反発部材200は、ワイヤの張力を維持できれば、特に限定されず、バネ部材、定荷重バネ、重りなどを適用することができる。
【0067】
続けて、塗装ガンの駆動ユニットを詳しく説明する。
図5は、塗装ガンの駆動ユニットのワイヤリンケージ機構の概略図であり、
図6は、一部を省略した
図5のA-A断面図であり、
図7は、一部を省略した
図5のB-B断面図である。
【0068】
図5及び
図6に示すように、駆動ユニット21は、基台枠100の内部に収容されている。駆動ユニット21のX回転軸22の回転方向に回転可能にプーリ23が固定されている。プーリ23に接続されたワイヤ20は、駆動源の駆動源ユニット51と接続しており、駆動源ユニット51から駆動力が伝達されて、駆動ユニット21のプーリ23が回転するように構成されている。
【0069】
駆動ユニット21を収容する基台枠100は、第1固定枠106に下端で固定され、基軸部118に左右から固定されている。X回転軸22の端部122aは、第1支持枠101に接続し固定部122bで固定している。第1固定枠106は、基台枠100と第1支持枠101を固定し、X回転軸22の回転方向であるX方向に回転可能に第1支持枠101を支持部106aで支持している。このため、駆動機構の駆動ユニット21のX方向の駆動により、第1支持枠101がX方向に回転するので、塗装ガン8をX方向に駆動させることができる。
【0070】
図5及び
図6に示すように、駆動ユニット31は、第1支持枠101の内部に収容されている。駆動ユニット31のY回転軸32の回転方向に回転可能にプーリ33が固定されている。プーリ33に接続されたワイヤ30は、駆動源の駆動源ユニット52と接続しており、駆動源ユニット52から駆動力が伝達されて、駆動ユニット31のプーリ32が回転するように構成されている。
【0071】
駆動ユニット31を収容する第1支持枠101は、第2固定枠107の固定部107aに固定されている。Y回転軸32の端部132aは、第2支持枠102に接続し固定部132bで固定している。第2固定枠107は、第1支持枠101を固定し、Y回転軸32の回転方向であるY方向に回転可能に第2支持枠102を支持部107bで支持している。このため、駆動機構の駆動ユニット31のY方向の駆動により、第2支持枠102がY方向に回転するので、塗装ガン8をY方向に駆動させることができる。
【0072】
図5及び
図7に示すように、駆動ユニット41は、第3支持枠103の内部に収容されている。駆動ユニット41のQ回転軸42の回転方向に回転可能にプーリ43が固定されている。プーリに接続されたワイヤ40は、駆動源の駆動源ユニット53と接続しており、駆動源ユニット53から駆動力が伝達されて、駆動ユニット41のプーリ43が回転するように構成されている。
【0073】
駆動ユニット41を収容する第3支持枠103は、回転支持台114に固定されている。回転支持台114は、第2支持枠102に固定され、塗装ガン8を回転可能に支持している。Q回転軸42の端部142aは、塗装ガン固定部116と接続している。塗装ガン固定部116は、塗装ガン8を固定し、Q回転軸42の回転方向に回転可能に、駆動ユニット41のQ回転軸42に支持されている。Q回転軸42の回転方向であるQ方向は、塗装ガン8の回転方向であるから、駆動ユニット41の駆動により、塗装ガン8のQ方向に回転し、すなわち、塗装ガン8を回転方向に駆動させることができる。
【0074】
このように、駆動ユニットを積層又は横並びにして、駆動ユニット21、駆動ユニット31、駆動ユニット41により塗装ガン8をX方向、Y方向、Q方向に駆動させて、大小様々で多品種のワークに対して塗装することができる。
そして、
図6に示すように、駆動ユニット21のX回転軸22の軸芯延長線上に駆動ユニット31のY回転軸32の軸芯を配置しているので、X方向の回転を安定して行うことができる。また、駆動ユニット31のY回転軸32の軸芯延長上に駆動ユニット41のQ回転軸42の軸芯を配置すると共に、
図7に示すように回転支持台114に対して左右に塗装ガン8と駆動ユニット41を配置し、その中間にY回転軸32を配置しているので、Y方向の回転を安定して行うことができる。
【0075】
よって、駆動ユニットを積層又は横並びにしたことで、自動塗装装置が直線的な構成となり、小型化とユニット化を可能とし、コンパクトで省スペース化が実施可能な自動塗装装置を提供することができる。加えて、駆動機構の駆動力伝達機構がワイヤリンケージ機構であるから、駆動機構を複雑な構成や機構とすることなく防爆対策が実施されるので、自動塗装装置を省スペースでコンパクトな構成で、防爆対策を実施可能とし、小型化とユニット化を可能にした自動塗装装置を提供することができる。
【0076】
塗装ガン8をX方向に駆動させるときは、駆動源ユニット51からの駆動力で駆動ユニット21のプーリ23を回転させると、X回転軸22を介して第1支持枠101がX方向に回転するので、塗装ガン8をX方向に駆動させることができる。
【0077】
また、塗装ガン8をY方向に駆動させるときは、駆動源ユニット52からの駆動力で駆動ユニット31のプーリ33を回転させると、Y回転軸32を介して第2支持枠102がY方向に回転するので、塗装ガン8をY方向に駆動させることができる。
【0078】
そして、塗装ガン8をQ方向に駆動させるときは、駆動源ユニット53からの駆動力で駆動ユニット41のプーリ43を回転させると、Q回転軸42を介して塗装ガン固定部116がQ方向に回転するので、塗装ガン8をQ方向に駆動させることができる。
【0079】
このように、塗装ガン8をX、Y、Q方向に駆動させて、遠隔から塗装ガンを操作してワークを塗装することができる。よって、省スペースの作業場であっても、本発明を実施した自動塗装装置では、自動車の車体などよりも比較的小さいワーク(配管器材など)を塗装することができる。
【0080】
また、塗装ガンの方式によっては、X、Y、Q方向のすべてに駆動させる必要はないから、所定の方向のみ駆動する構成により、ワークを塗装するようにしてもよい。
【0081】
塗装ガンが丸吹き方式のときには、塗装ガンがX又はY方向に駆動するような機構とし、ワークがX方向に回転する場合には、塗装ガンをY方向のみ駆動する構成にすることができ、ワークがY方向に回転する場合には、塗装ガンをX方向のみ駆動する構成にすることもできる。
【0082】
塗装ガンが平吹き方式のときには、塗装ガンがX又はY方向及びQ方向に駆動するような機構とし、ワークがX方向に回転する場合には、塗装ガンをY及びQ方向のみ駆動する構成にすることができ、ワークがY方向に回転する場合には、塗装ガンをX及びQ方向のみ駆動する構成にすることもできる。平吹き方式では、Q方向に駆動することで、直線的な吹付けパターンを、縦もしくは横、或いは斜めに変更することができるので、曲面や段差部等の複雑な形状のワークにも確実に塗装することができる。
【0083】
ここでいう丸吹き方式とは、塗装パターンが円形であることを意味する。また、ここでいう平吹き方式とは、塗装パターンが線形であることを意味する。なお、線形とは、楕円形状が好適であるが、四角形等であってもよい。
【0084】
塗装ガンの方式に合わせて、必要な方向のみ駆動させる駆動ユニットで構成すれば、駆動ユニットの数を減らすことができ、装置の小型化に寄与し、限られた作業環境でも自動塗装装置を設置しやすくなる。
【0085】
本発明の一実形態を説明してきたが、本発明の範囲において変形や変更が可能である。他の変形例としては、前述の
図9の駆動源のプーリと接続するワイヤを1本とした構成のときに、
図10に示すように、駆動源をモータに替えてシリンダー300に変更することもできる。この場合には、駆動源のプーリや他の部材が不要となるので装置を小型化することができる。さらに、駆動源の動作を細かく制御することができるので、ワイヤリンケージ機構による駆動力の制御が細かくなるから、塗装ガンの動作をより細かく制御することができる。なお、防爆対策ができれば、シリンダーは、空気圧式、油圧式、電磁式など任意のものを適用できる。
【0086】
また、ワーク載置台に変えて、ワークを吊り下げ式に支持する態様でもよい。さらには、ワークが所定の回転機構により回転する構成でもよい。すなわち、支持台が回転する以外に、吊り下げる態様や、治具などでワークが保持される態様においても、外部からの駆動機構などによりワークが回転可能となる構成としてもよい。
【0087】
また、自動塗装装置を床置きに変えて、天井やクレーン等に吊り下げる態様でもよい。塗装ガンを支える基軸部を1本の柱状体で構成するほか、複数本で支持する構成の態様であってもよい。ワイヤの張力を維持する機構は、例示した機構以外でもあってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 塗装ブース
3 自動塗装装置
4 ワーク支持部
5 ワーク
6 駆動機構(駆動ユニット)
7 駆動力伝達機構(ワイヤリケージ機構)
8 塗装ガン
9 駆動源(駆動源ユニット)
20、30、40、 ワイヤ
21、31、41 駆動ユニット
23、33、43 プーリ
51、52、53 駆動源ユニット
51a、52a、53a プーリ