(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240426BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240426BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20240426BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B41J2/01 109
B41J2/01 127
B41J2/01 501
C09D11/30
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41M5/00 112
(21)【出願番号】P 2019188420
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184653
【氏名又は名称】瀬田 寧
(72)【発明者】
【氏名】島村 佳明
(72)【発明者】
【氏名】田村 弘
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-050806(JP,A)
【文献】特開平04-241943(JP,A)
【文献】国際公開第2012/172973(WO,A1)
【文献】特開平11-010817(JP,A)
【文献】特開2019-093582(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0104356(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00- 7/26
B41J 2/01、 2/165- 2/20
B41J 2/21- 2/215
C09D 11/00-13/00
B41M 5/00、 5/50 - 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧板の製造方法であって、
(1)基材を準備する工程;
(2)上記工程(1)において準備した上記基材の面の上に、樹脂フィルムを、上記基材の面の形状に合わせて被着する工程;及び、
(3)上記工程(2)において上記基材の面の上に被着した上記樹脂フィルムの面の上に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクを用い、インクジェット印刷により、加飾層を形成する工程;
を含み、ここで、上記基材の面とは、上記基材の平面、前面、左側面、右側面、及び背面を意味
し、
上記樹脂フィルムの面とは、上記工程(2)において上記基材の面の上に上記樹脂フィルムが被着された被着体の平面、前面、左側面、右側面、及び背面を意味する、
上記化粧板の製造方法。
【請求項2】
上記基材が三次元形状を有する請求項1に記載の化粧板の製造方法。
【請求項3】
上記加飾層が下記特性を満たす、請求項1又は2に記載の化粧板の製造方法:
上記加飾層の表面を、#0000のスチールウールにより、荷重500g/cm
2、スピード1往復/秒、距離30mmの条件で10往復擦ったとき、傷が認められない又は傷が1~4本である。
【請求項4】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂が、多官能(メタ)アクリレートを20質量%以上含む、請求項1~3の何れか1項に記載の化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、加飾層がインクジェット印刷により形成される化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、家具の部材や建築物の内装部材として、木材、合板、集成材、パーチクルボード、及びハードボードなどの木質系材料からなる基材;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート、及びポリエステルなどの樹脂系材料からなる基材;鉄、及びアルミニウムなどの金属系材料からなる基材;及び、石膏ボード、及びケイ酸カルシウム板などの基材;の表面に加飾層を形成されたもの(化粧板)が使用されている。上記化粧板の加飾層の形成には、耐擦傷性に優れることから、活性エネルギー線硬化性樹脂を、通常はバインダーとして、含むインクが、しばしば使用されている。近年、物品の差別化ポイントとして、その意匠性がますます重視されるようになっている。そのため、上記化粧板として、三次元成形されているものが製造されている。しかし、活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクを用いて加飾層を形成されている化粧板は、加飾層が予熱しても十分に軟化せず、十分な柔軟性・伸張性を発現しないため、三次元成形を行うと加飾層が白化する;加飾層にクラックが生じる;加飾層と基材層との層間剥離が発生する;などの問題があり、三次元形状を付与することが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019‐077783号公報
【文献】特開2015‐048387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、新規な化粧板の製造方法を提供することにある。本発明の更なる課題は、三次元形状を有し、耐擦傷性に優れ、良好な外観を有する(白化、クラック、層間剥離などの不良現象のない)化粧板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の製造方法により、上記課題を達成できることを見出した。
【0006】
即ち、本発明の諸態様は以下の通りである。
[1].
化粧板の製造方法であって、
(1)基材を準備する工程;
(2)上記工程(1)において準備した上記基材の面の上に、樹脂フィルムを、上記基材の面の形状に合わせて被着する工程;及び、
(3)上記工程(2)において上記基材の面の上に被着した上記樹脂フィルムの面の上に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクを用い、インクジェット印刷により、加飾層を形成する工程;
を含む、上記化粧板の製造方法。
[2].
上記基材が三次元形状を有する[1]項に記載の化粧板の製造方法。
[3].
上記加飾層が下記特性を満たす、[1]項又は[2]項に記載の化粧板の製造方法:
上記加飾層の表面を、#0000のスチールウールにより、荷重500g/cm2、スピード1往復/秒、距離30mmの条件で10往復擦ったとき、傷が認められない又は傷が1~4本である。
[4].
上記活性エネルギー線硬化性樹脂が、多官能(メタ)アクリレートを20質量%以上含む、[1]~[3]項の何れか1項に記載の化粧板の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法により製造される化粧板は、家具の部材や建築物の内装部材として良好に用いることができる。本発明の好ましい製造方法により製造される化粧板は三次元形状を有し、耐擦傷性に優れ、良好な外観を有する。そのため家具の部材や建築物の内装部材として良好に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において「樹脂」の用語は、2種以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。本明細書において「フィルム」の用語は、「シート」と相互交換的に又は相互置換可能に使用する。本明細書において、「フィルム」及び「シート」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできるものに使用する。「板」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできないものに使用する。また本明細書において、ある層と他の層とを順に積層することは、それらの層を直接積層すること、及び、それらの層の間にアンカーコートなどの別の層を1層以上介在させて積層することの両方を含む。
【0009】
本明細書において数値範囲に係る「以上」の用語は、ある数値又はある数値超の意味で使用する。例えば、20%以上は、20%又は20%超を意味する。数値範囲に係る「以下」の用語は、ある数値又はある数値未満の意味で使用する。例えば、20%以下は、20%又は20%未満を意味する。また数値範囲に係る「~」の記号は、ある数値、ある数値超かつ他のある数値未満、又は他のある数値の意味で使用する。ここで、他のある数値は、ある数値よりも大きい数値とする。例えば、10~90%は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%を意味する。更に、数値範囲の上限と下限とは、任意に組み合わせることができるものとし、任意に組み合わせた実施形態が読み取れるものとする。例えば、ある特性の数値範囲に係る「通常10%以上、好ましくは20%以上である。一方、通常40%以下、好ましくは30%以下である。」や「通常10~40%、好ましくは20~30%である。」という記載から、そのある特性の数値範囲は、一実施形態において10~40%、20~30%、10~30%、又は20~40%であることが読み取れるものとする。
【0010】
実施例以外において、又は別段に指定されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用されるすべての数値は、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなく、各数値は、有効数字に照らして、及び通常の丸め手法を適用することにより解釈されるべきである。
【0011】
本発明の化粧板の製造方法は、(1)基材を準備する工程;(2)上記工程(1)において準備した上記基材の面の上に、樹脂フィルムを、上記基材の面の形状に合わせて被着する工程;及び、(3)上記工程(2)において上記基材の面の上に被着した上記樹脂フィルムの面の上に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクを用い、インクジェット印刷により、加飾層を形成する工程;を含む。
【0012】
上記工程(1)は、上記化粧板の基材を準備する工程である。上記基材は、上記化粧板に概略の形状を付与し、上記化粧板の機械的強度を保持する働きをする。
【0013】
上記基材の製造に使用する材料は、特に制限されない。上記基材の製造に使用する材料としては、例えば、木材、合板、集成材、パーチクルボード、ミディアムデンシティファイバーボード(以下、「MDF」と略すことがある。)、及びハードボードなどの木質材料;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート、及びポリエステルなどの熱可塑性樹脂材料;フェノール樹脂、及びメラミン樹脂などの硬化性樹脂材料;鉄、及びアルミニウムなどの金属材料;その他、石膏ボード;及びケイ酸カルシウム板;などをあげることができる。
【0014】
これらの中で、上記化粧板を家具の部材として用いる場合には、市場で木質感が好まれることから、また物品の軽量化の観点から、木質材料が好ましい。これらの中で、上記化粧板を建築物の内装部材として用いる場合には、建築基準法により建築物の内装部材には防火材料の使用が義務付けられていることから、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板が好ましい。
【0015】
上記基材の形状は、特に制限されない。上記基材の形状は、上記化粧板を家具の部材や建築物の内装部材として用いる目的から、通常、板状であり、典型的には平面的な略直方体であり、好ましくは平面的な略直方体であって、その平面、前面、左側面、右側面、及び背面の少なくとも何れか1面に三次元形状を有する。本明細書において、基材や化粧板の「平面」とは、化粧板が家具の部材や建築物の内装部材として用いられた状態において、通常、最も良く視認される側の面である。
【0016】
上記基材は、上述の材料を用い、公知の方法、例えば、公知の切削加工機を使用して裁断する方法により、所望の形状、及び寸法に仕上げることにより得ることができる。上記基材に三次元形状を付与する方法としては、例えば、ルーターなどの公知の切削加工機を使用し、溝加工や面取加工などを施す方法をあげることができる。その他、上記基材を所望の形状、及び寸法に仕上げる方法としては、硬化性樹脂材料、石膏ボード、及びケイ酸カルシウム板の場合には、例えば、所望の形状、及び寸法の型に原材料を注入し、固める方法などをあげることができる。熱可塑性樹脂材料の場合には、例えば、押出成形、カレンダーロール圧延成形、及び射出成型などをあげることができる。
【0017】
図1は上記基材の一例を示す写真である。
図1の基材は、MDF製の平面的な略直方体の基材であり、平面と前面、左側面、右側面、及び背面とのなす角には面取加工(3~10R)が施され、更に平面には装飾の溝が彫り込まれている。
【0018】
上記工程(2)は、上記工程(1)において準備した上記基材の面の上に、樹脂フィルムを、上記基材の面の形状に合わせて被着する工程である。ここで、「上記基材の面」とは、上記化粧板を家具の部材や建築物の内装部材であって、加飾化粧された部材として用いる目的から、少なくとも上記基材の平面を含む、上記基材の何れかの面を意味する。典型的な実施形態の1つにあっては、上記基材の平面、前面、左側面、右側面、及び背面を意味する。
【0019】
本発明の化粧板の製造方法では、上記基材の面の上に、上記加飾層を直接形成するのではなく、先ず、上記樹脂フィルムを被着する。上記基材の面の上に、先ず上記樹脂フィルムを被着し、更に上記樹脂フィルムの面の上に上記加飾層を形成することにより、上記加飾層を均一に(加飾層が意図せず形成されない箇所、加飾層の厚みが意図したよりも著しく薄い箇所などの不良個所を生じることなく)形成することが容易になる。また上記基材の面の上に、先ず上記樹脂フィルムを被着し、更に上記樹脂フィルムの面の上に上記加飾層を形成することにより、基材の材料の種類によっては、特に木質材料や石膏ボードの場合には、着弾したインクや汚染物質が基材に浸透してしまうことがあるという問題を根本的に解決することができる。更に上記樹脂フィルムとして、隠蔽性を有するものを、典型的には所望の色に着色され隠蔽性を有するものを使用することにより、基材の色調に依らず、化粧板に所望の意匠を付与することができる。
【0020】
上記樹脂フィルムとして、特に制限されず、任意の樹脂フィルムを用いることができる。上記樹脂フィルムとして、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリ4‐メチルペンテン‐1などのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びアセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン;などの樹脂フィルムをあげることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。更にこれらのフィルムは透明であってもよく、不透明であってもよく、着色されたものであってもよく、固有の色を有するものであってよい。
【0021】
これらの中で、成形加工性、基材や加飾層との密着強度の観点から、非結晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムが好ましく、化粧板の耐汚染性の観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムがより好ましい。
【0022】
上記塩化ビニル系樹脂フィルムの材料として用いる上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体);塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの塩化ビニル系共重合体;後塩素化ビニル共重合体等のポリ塩化ビニルや塩化ビニル系共重合体を改質(塩素化等)したもの;などをあげることができる。更には塩素化ポリエチレン等の、化学構造がポリ塩化ビニルと類似する塩素化ポリオレフィンを用いてもよい。これらの中で、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体)が好ましい。上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0023】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂には、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に通常使用される他の樹脂を、更に含ませることができる。他の樹脂の配合割合は、本発明の目的に反しない限り特に制限されない。他の樹脂の配合割合は、上記ポリ塩化ビニル系樹脂と他の樹脂の合計を100質量%として、好ましくは0~40質量%、より好ましくは0~30質量%、更に好ましくは5~25質量%であってよい。
【0024】
上記他の樹脂としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体;メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体等のコアシェルゴム;などをあげることができる。他の樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0025】
また上記ポリ塩化ビニル系樹脂には、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に通常使用される可塑剤を、更に含ませることができる。上記可塑剤の配合量は、本発明の目的に反しない限り特に制限されない。上記可塑剤の配合量は、上記ポリ塩化ビニル系樹脂と上記他の樹脂との合計を100質量部として、好ましくは50質量部以下、より好ましくは35質量部以下、更に好ましくは0~25質量部程度であってよい。
【0026】
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、イタコン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤、及びエポキシ系可塑剤などをあげることができる。
【0027】
上記可塑剤としては、例えば、多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-へキサンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどを用い、多価カルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などを用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸をストッパーに使用したポリエステル系可塑剤をあげることができる。
【0028】
上記フタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジラウリル、フタル酸ジシクロヘキシル、及びテレフタル酸ジオクチルなどをあげることができる。
【0029】
上記トリメリット酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリ(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ(n-オクチル)トリメリテート、及びトリ(イソノニル)トリメリテートなどをあげることができる。
【0030】
上記アジピン酸エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、及びアジピン酸ジイソデシルなどをあげることができる。
【0031】
上記エポキシ系可塑剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸オクチルエステル、及びエポキシ化脂肪酸アルキルエステルなどをあげることができる。
【0032】
上記可塑剤としては、その他、トリメリット酸系可塑剤、テトラヒドロフタル酸ジエステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエステル系可塑剤、イソソルバイドジエステル系可塑剤、ホスフェート系可塑剤系、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニルテトラカルボン酸エステル系可塑剤、及び塩素系可塑剤などをあげることができる。
【0033】
上記可塑剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0034】
また上記ポリ塩化ビニル系樹脂には、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に通常使用される物質を、本発明の目的に反しない限度において、更に含ませることができる。含む得る任意成分としては、顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、尿素-ホルムアルデヒドワックス、及び、界面活性剤等の添加剤;などをあげることができる。これらの任意成分の配合量は、ポリ塩化ビニル系樹脂と上記他の樹脂との合計を100質量部としたとき、通常50質量部程度以下、典型的には0.01~50質量部程度である。
【0035】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂用い、上記塩化ビニル系樹脂フィルムを製膜する方法は、特に制限されず、公知の製膜方法を使用することができる。上記製膜方法としては、例えば、カレンダーロール圧延加工機と引巻取機を備える装置を使用する方法、及び押出機、Tダイ、及び引巻取機を備える装置を使用する方法などをあげることができる。
【0036】
上記非結晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂フィルムの材料として用いる上記非結晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸成分とエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコール成分とのポリエステル系共重合体をあげることができる。
【0037】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、多価カルボン酸成分としてテレフタル酸95~100モル%、多価ヒドロキシ化合物成分としてエチレングリコール60~80モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール20~40モル%、及びジエチレングリコール0~10モル%を含むグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG);多価カルボン酸成分としてテレフタル酸95~100モル%、多価ヒドロキシ化合物成分としてエチレングリコール32~42モル%及び1,4-シクロヘキサンジメタノール58~68モル%を含むグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG);多価カルボン酸成分としてテレフタル酸50~99モル%、及びイソフタル酸1~50モル%、多価ヒドロキシ化合物成分として1,4-シクロヘキサンジメタノール95~100モル%を含む酸変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTA);多価カルボン酸成分として、テレフタル酸60~90モル%、及びイソフタル酸10~40モル%、多価ヒドロキシ化合物成分としてエチレングリコール70~96モル%、ネオペンチルグリコール4~30モル%、ジエチレングリコール0~2モル%、及びビスフェノールA 0~2モル%を含む酸変性及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート;多価カルボン酸成分としてテレフタル酸95~100モル%、及びイソフタル酸0~5モル%、多価ヒドロキシ化合物成分として1,4-シクロヘキサンジメタノール50~90モル%、及び2,2,4,4,-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール10~50モル%を含む酸変性及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート;などをあげることができる。このとき多価カルボン酸成分の総和は100モル%である。多価ヒドロキシ化合物成分の総和は100モル%である。
【0038】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0039】
本明細書では、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、試料を320℃で5分間保持した後、20℃/分の降温速度で-50℃まで冷却し、-50℃で5分間保持した後、20℃/分の昇温速度で320℃まで加熱するという温度プログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程において測定される融解曲線)の融解熱量が、10J/g以下のポリエステルを非結晶性、10J/gを超えて60J/g以下のポリエステルを低結晶性と定義した。
【0040】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、その他の任意成分を更に含ませることができる。含む得る任意成分としては、例えば、上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び、界面活性剤等の添加剤;などをあげることができる。これらの任意成分の配合量は、上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂を100質量部としたとき、通常25質量部以下、好ましくは0~20質量部、より好ましくは0.01~10質量部程度であってよい。
【0041】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。コアシェルゴムを用いることで、樹脂フィルムの耐衝撃性を向上させることができる。またカレンダーロール圧延加工機と引巻取機を備える装置を使用して製膜する際の製膜性を大きく向上することができる。
【0042】
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴムの1種又は2種以上の混合物をあげることができる。コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0043】
上記コアシェルゴムの配合量は、上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂を100質量部としたとき、耐衝撃性を向上させるため、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であってよい。一方、通常30質量部以下、好ましくは20質量部以下であってよい。上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂の透明性を意匠に活かそうとする場合には、透明性を保持する観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下であってよい。
【0044】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂用い、上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂フィルムを製膜する方法は、特に制限されず、公知の製膜方法を使用することができる。上記製膜方法としては、例えば、カレンダーロール圧延加工機と引巻取機を備える装置を使用する方法、及び押出機、Tダイ、及び引巻取機を備える装置を使用する方法などをあげることができる。
【0045】
上記樹脂フィルムは、基材や加飾層との密着強度の観点から、片面に又は両面に易接着処理を施してもよい。上記易接着処理としては、例えば、コロナ処理、アンカーコートの形成、及び表面の粗面化処理などをあげることができる。上記樹脂フィルムとして、上記ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム又は上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂フィルムを用いる場合には、特に加飾層の形成面については、これらの樹脂フィルムが活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクとの密着強度に優れるため、易接着処理を必要としない。
【0046】
上記樹脂フィルムの厚みは、特に制限されない。上記樹脂フィルムの厚みは、上記基材の表面の凹凸;上記樹脂フィルムの上記基材側に接着剤層を形成する実施形態にあっては、当該接着剤層の表面の凹凸;などに影響されることなく、上記樹脂フィルムの加飾層形成面の平滑性を維持することができるようにする観点から、好ましくは80μm以上、より好ましくは90μm以上、更に好ましくは100μm以上であってよい。一方、上記樹脂フィルムの厚みは、上記基材に上記樹脂フィルムを被着する際の作業性の観点から、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは250μm以下であってよい。
【0047】
上記樹脂フィルムの隠蔽率は、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、更に好ましくは99%以上であってよい。上記基材の色調に依らず、化粧板に所望の意匠を付与することが容易になる。ここで樹脂フィルムの隠蔽率は、測定サンプルとして、塗布済みのポリエステルフィルムの替わりに、上記樹脂フィルムを使用したこと以外は、JIS K5600-4-1の方法A(ポリエステルフィルム)に準拠し、該規格の6.4.1項に従い三刺激値YW及びYBを測定し、隠蔽率YB/YWを百分率で計算する。
【0048】
上記工程(2)において、上記基材の面の上に上記樹脂フィルムを被着する方法は、上記基材の面の形状に合わせて上記樹脂フィルムを被着することのできる方法であれば、特に制限されない。上記工程(2)において、上記基材の面の上に上記樹脂フィルムを被着する方法としては、例えば、平貼り成形、ラッピング成形、真空成型、圧空成型、真空圧空成型、メンブレンプレス成型、インモールド成型、インサートモールド成型、及びオーバーレイ真空成型などの方法をあげることができる。以下、ラッピング成形とメンブレンプレス成型について説明する。ここで「成形」と表記した方法は、所謂1D成形又は所謂2D成形である。「成型」と表記した方法は、所謂3D成型である。
【0049】
ラッピング成形は、樹脂フィルムの片面の上に接着剤層を形成し、上記樹脂フィルムの片面の上に上記接着剤層を有する積層体を得る第1工程;上記基材の面の上に、上記積層体を、その上記接着剤層側の面が上記基材側となるように被せた後、押圧装置を使用し、上記積層体の上記樹脂フィルム側の面の上から、上記積層体を押圧し、上記基材と上記積層体とを貼着する第2工程;を含む。
【0050】
上記第1工程は、上記樹脂フィルムの片面の上に上記接着剤層を形成し、上記樹脂フィルムの片面の上に上記接着剤層を有する上記積層体を得る工程である。
【0051】
上記接着剤層を形成する方法は、特に制限されない。上記接着剤層を形成する方法としては、例えば、任意の接着剤層形成用塗料(典型的には、接着剤と溶剤を含む塗料である。)を用い、公知のウェブ塗布方法を使用し、上記樹脂フィルムの片面の上に接着剤のウェット塗膜を形成した後、該ウェット塗膜を乾燥する、あるいは乾燥し硬化する方法;任意の接着剤(典型的には、ホットメルト接着剤(溶融状態で塗付し、冷えると固まって接着する接着剤)である。)を用い、上記樹脂フィルムの片面の上に溶融押出する方法;及び、これらの何れかの方法により、任意のフィルム基材(典型的には、易剥離処理された二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムである。)の易剥離処理面の上に、接着剤層を形成した後、上記樹脂フィルムの片面の上に、公知の方法により転写する方法;などをあげることができる。
【0052】
上記ウェブ塗布方法としては、例えば、ロッドコート、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、キスリバースコート、ダイコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、及びエアナイフコートなどの方法をあげることができる。
【0053】
上記接着剤は特に制限されない。上記接着剤としては、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリ塩化ビニル系接着剤、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、エチレン・酢酸ビニル共重合体系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリクロロプレン系接着剤、ポリアクリル系接着剤、ポリメタクリル系接着剤、ポリスチレン系接着剤、ポリアミド系接着剤、セルロース系接着剤、スチレン・ブタジエン共重合体系接着剤、及びこれらの2種以上の混合物などの接着剤をあげることができる。上記接着剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0054】
上記第2工程は、上記基材の面の上に、上記積層体を、その上記接着剤層側の面が上記基材側となるように被せた後、上記積層体の上記樹脂フィルム側の面の上から、上記押圧装置を使用して上記積層体を押圧し、上記基材と上記積層体とを貼着する工程である。上記押圧装置による押圧は、上記基材(上記基材と上記積層体との被着体)の各面に対して、順次行われる。上記押圧装置による押圧は、実施形態の1つにおいて、先ず、上記基材(上記基材と上記積層体との被着体)の平面に対して行われ、以後、前面、背面、右側面、左側面の順に行われる。
【0055】
上記押圧装置は、通常は、ラッピング成形装置の備える装置であり、典型的にはローラーである。上記ラッピング成形装置は、通常は、上記基材(上記基材と上記積層体との被着体)の各面に向きに対応する複数の上記押圧装置を有している。
【0056】
ここでは、上記接着剤層を上記樹脂フィルムの片面の上に形成する方法を説明したが、上記接着剤層は、上記基材の上記樹脂フィルムとの被着面(典型的には、平面、前面、背面、右側面、及び左側面)の上に形成してもよい。
【0057】
メンブレンプレス成型は、樹脂フィルムの片面の上に接着剤層を形成し、上記樹脂フィルムの片面の上に上記接着剤層を有する積層体を得る第1工程;メンブレンプレス成型装置内に、基材を設置し、該基材の面の上に、上記積層体を、その上記接着剤層側の面が上記基材側となるように被せ、更にその上にメンブレンゴムを被せ、上記積層体を十分に予熱し、軟化させる第2工程;上記メンブレンプレス成型装置内の圧力を上げ、上記メンブレンゴムを介して、上記積層体を押圧し、上記基材の面の形状に合わせて上記積層体を沿わせるとともに貼着する第3工程;を含む。
【0058】
上記第1工程は、上記樹脂フィルムの片面の上に上記接着剤層を形成し、上記樹脂フィルムの片面の上に上記接着剤層を有する上記積層体を得る工程であり、ラッピング成形の第1工程と同様にして行う。ラッピング成形の第1工程については、上述した。
【0059】
上記第2工程は、上記メンブレンプレス成型装置内に、上記基材を設置し、該基材の面の上に、上記積層体を、その上記接着剤層側の面が上記基材側となるように被せ、更にその上に上記メンブレンゴムを被せ、上記積層体を十分に予熱し、軟化させる工程である。
【0060】
上記積層体の予熱温度は、上記樹脂フィルム、上記接着剤層の特性を考慮し、適宜選択する。上記積層体の予熱温度は、通常50~150℃程度であってよい。上記積層体の予熱温度は、上記樹脂フィルムとしてポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを用いる場合には、好ましくは70~100℃、より好ましくは70~90℃程度であってよい。上記積層体の予熱温度は、上記樹脂フィルムとして非結晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂フィルムを用いる場合には、好ましくは80~140℃、より好ましくは100~120℃程度であってよい。また上記積層体を上記基材に被せる前に、予め上記積層体を加熱しておいてもよい。
【0061】
上記第3工程は、上記メンブレンプレス成型装置内の圧力を上げ、上記メンブレンゴムを介して、上記積層体を押圧し、上記基材の面の形状に合わせて上記積層体を沿わせるとともに貼着する工程である。上記メンブレンゴムは伸縮自在であり、上記メンブレンプレス成型装置内の圧力を上げることにより、上記基材の面の形状に合わせて変形しようとする。その結果、上記積層体は押圧され、上記基材の面の形状に合わせて沿うように変形するとともに貼着される。
【0062】
上記メンブレンプレス成型装置内の圧力は、上記積層体を上記基材の面の形状に合わせて沿うように確実に変形させる観点、及び上記積層体又は上記基材が意図しない形状に変形(典型的には圧壊)しないようにする観点から、好ましくは0.2~1MPa、より好ましくは0.4~0.6MPa程度であってよい。上記メンブレンゴムを介して上記積層体を押圧する時間は、好ましくは10~300秒、より好ましくは20~120秒程度であってよい。また上記第3工程中、上記メンブレンプレス成型装置内の温度は、典型的な実施形態の1つにおいて、上記積層体の予熱温度に保持されている。
【0063】
ここでは、上記接着剤層を上記樹脂フィルムの片面の上に形成する方法を説明したが、上記接着剤層は、上記基材の上記樹脂フィルムとの被着面(典型的には、平面、前面、背面、右側面、及び左側面)の上に形成してもよい。
【0064】
上記工程(3)は、上記工程(2)において上記基材の面の上に被着した上記樹脂フィルムの面の上に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクを用い、インクジェット印刷により、加飾層を形成する工程である。
【0065】
ここで、「上記樹脂フィルムの面」とは、上記化粧板を家具の部材や建築物の内装部材であって、加飾化粧されたものとして用いる目的から、少なくとも被着体(上記基材の面の上に上記樹脂フィルムが被着されたもの)の平面を含む、該被着体の何れか1つ以上の面を意味する。典型的な実施形態の1つにあっては、上記被着体の平面を意味する。他の実施形態の1つにあっては、上記被着体の平面、前面、左側面、右側面、及び背面を意味する。
【0066】
インクジェット印刷は、プリントヘッドから吐出されるインクの微小液滴を、紙や樹脂フィルムなどの印刷媒体の面の上に着弾させ、定着させる印刷方法である。本発明の化粧板の製造方法においては、上記インクとして活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクを用いる。この場合、上記インクの微小液滴が、上記印刷媒体の面の上に着弾した直後に活性エネルギー線を照射することにより、上記インクを定着させる。上記加飾層は、インクジェット印刷により形成されるため、上記インクの微小液滴から形成される略円盤状の微小薄膜がランダムに積み重なった構造になっている。
【0067】
上記工程(3)においてインクジェット印刷に使用する装置は、特に制限されず、公知のインクジェット印刷装置を使用することができる。
【0068】
上記加飾層の厚みは、特に制限されない。上記加飾層の厚みは、一定の厚みであってもよく、任意に厚みを変化させてもよい。上記加飾層の厚みは、耐擦傷性、及び耐汚染性の観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは10μm以上であってよい。一方、生産性の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であってよい。
【0069】
上記工程(3)においてインクジェット印刷に使用するインクは、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む。上記活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、塗膜を形成する働きをする。
【0070】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、トリメチルシロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有単官能反応性モノマー;N-ビニルピロリドン、スチレン等の単官能反応性モノマー;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマー;トリペンタエリスリトールオクタアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有8官能反応性モノマー;及び、これらの1種以上を構成モノマーとするプレポリマー又はオリゴマー;などをあげることができる。
【0071】
これらの中で、上記加飾層表面の耐擦傷性の観点から、多官能(メタ)アクリレート(1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物。)が好ましい。上記活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記加飾層表面の耐擦傷性の観点から、多官能(メタ)アクリレートを、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上含むものであってよい。
【0072】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記加飾層表面の耐擦傷性の観点から、多官能(メタ)アクリレートであって、分子量(化学式から算出される分子量)100当たりの(メタ)アクリロイル基の数が好ましくは0.4個以上、より好ましくは0.6個以上、更に好ましくは0.8個以上であるものを、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上含むものであってよい。
【0073】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクは溶剤、例えば、1‐メトキシ‐2‐プロパノール、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどを含むものであってよい。溶剤を含ませることにより、インクジェット印刷適性を保持することができる。一方、溶剤を含ませることにより、印刷後に有機溶剤を乾燥回収工程が必要となったり、上記樹脂フィルムの加飾層形成面の上にインク受容層を設けることが必要となったりする。そのため、上記活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクとして、溶剤を実質的に含まないものを用いることは好ましい。上記活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクとして、溶剤を実質的に含まないものを用いることにより、印刷後の有機溶剤乾燥回収工程は不要になる。また上記樹脂フィルムの加飾層形成面の上にインク受容層を設ける必要もない。ここで「溶剤を実質的に含まない」とは、インク受容層を形成したり、有機溶剤を乾燥回収したりする工程を工業的に省略できる程度に溶剤含量が十分に低いことを意味する。
【0074】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクが、溶剤を実質的に含まないものであっても、インクジェット印刷適性を保持できるようにする観点から、活性エネルギー線硬化性樹脂の総和を100質量%として、分子量(化学式から算出される分子量)が好ましくは500以下、より好ましくは400以下、更に好ましくは350以下の成分を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90~100質量%含むものであってよい。
【0075】
インクジェット印刷には、通常、数種類の色のインク、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの4種類の色のインクが使用される。そのため、上記活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクは、通常、顔料を含む。上記顔料は、無機化合物であってもよく、有機化合物であってもよい。加飾層に付与しようとする意匠によっては、上記活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクは顔料を含まないもの(白色透明なもの)を用いてもよい。
【0076】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインクには、本発明の目的に反しない限度において、所望により、光重合開始剤、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物、撥水剤、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、及びフィラーなどの添加剤を1種又は2種以上含ませることができる。
【0077】
上記工程(3)の後、エージング処理を行ってもよい。化粧板の特性を安定化することができる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
測定方法
(イ):工程(2)の良否確認(平滑性):
基材の面の上に、その形状に合わせて、樹脂フィルムを被着した後、該樹脂フィルムの面の上に加飾層を形成する前に、上記樹脂フィルムの表面を、蛍光灯の光を、入射角をいろいろと変えて当てながら目視観察し、以下の基準で評価した。
A:基材の形状に樹脂フィルムが均一に追従していた。樹脂フィルムの色調の均一感が保たれていた。
B:基材の形状に樹脂フィルムが追従して伸びていた。しかし、大きく延伸される部分において、樹脂フィルムの色調が薄くなっていた。
C:基材の形状に樹脂フィルムが追従して伸びていた。しかし、大きく延伸される部分において、樹脂フィルムに白化が認められた。
D:基材の形状に樹脂フィルムが追従できていない部分があった。
【0080】
(ロ)化粧板の碁盤目試験(加飾層の密着性):
JIS K5600-5-6:1999に従い、化粧板の加飾層の表面であって、平らな(三次元形状を有していない)箇所に、碁盤目の切れ込みを100マス(1マス=1mm×1mm)入れた後、密着試験用テープを碁盤目へ貼り付けて指でしごいた後、剥がした。評価基準はJISの上記規格の表1に従った。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥れがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さな剥れ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は数箇所の目が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
分類5:剥れの程度が分類4を超える場合。
【0081】
(ハ)化粧板の耐擦傷性:
化粧板の加飾層の表面であって、平らな(三次元形状を有していない)箇所を、#0000のスチールウールにより、荷重500g/cm2、スピード1往復/秒、距離30mmの条件で10往復擦った後、擦傷箇所を目視観察し、以下の基準で評価した。
A:傷は認められなかった。
B:1~4本の傷が認められた。
C:5~10本の傷が認められた。
D:10本以上の傷が認められた。
【0082】
(ニ)化粧板の耐汚染性:
合板の日本農林規格(最終改正平成26年2月25日農林水産省告示第303号)の3試験方法、(19)汚染試験、(ア)汚染A試験に準拠し、化粧板の加飾層の表面であって、平らな(三次元形状を有していない)箇所に、該規格に規定される青色インキ、油性インキ(黒色)及び赤色クレヨンでそれぞれ幅10mmの線を引き、4時間放置した後、イソプロパノールを布に含ませて拭取った。その後、線を引いた箇所を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:汚染物は完全に除去され、線を引いた跡が全く残らなかった。
○:汚染物は除去されたが、線を引いた跡が僅かに残っていた。
△:汚染物の一部が除去されず、線を引いた跡が明確に残り、一部には線が残っていた。
×:汚染物の多くが除去されず、拭取り前と同様に、線が残っていた。
【0083】
使用した原材料
(A)樹脂フィルム:
(A1)塩化ビニル単独重合体(重合度800)100質量部、フタル酸ジ(2‐エチルヘキシル)25質量部、酸化チタン(白色顔料)12質量部、及びバリウム亜鉛複合塩系安定剤2質量部を含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用い、逆L型4本カレンダーロール圧延加工機と引巻取装置を備える製膜装置を使用し、第1ロール温度180℃、第2ロール温度180℃、第3ロール185℃、第4ロール180℃、及び引巻取速度60m/分の条件で製膜した厚み120μmのポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。隠蔽率97.7%。
【0084】
(A2)厚みを90μmに変更したこと以外は、上記(A1)と同様にして得たポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。隠蔽率96.5%。
【0085】
(A3)塩化ビニル単独重合体(重合度800)100質量部、フタル酸ジ(2‐エチルヘキシル)3質量部、酸化チタン(白色顔料)12質量部、及びメチル錫メルカプト系安定剤3質量部を含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用いたこと以外は、上記(A1)と同様にして得た厚み120μmのポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。隠蔽率98.4%。
【0086】
(A4)塩化ビニル単独重合体(重合度1050)100質量部、フタル酸ジ(2‐エチルヘキシル)32質量部、酸化チタン(白色顔料)12質量部、及びバリウム亜鉛複合塩系安定剤2質量部を含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用いたこと以外は、上記(A1)と同様にして得た厚み120μmのポリ塩化ビニル系樹脂フィルム。隠蔽率97.6%。
【0087】
(A5)イーストマン ケミカル カンパニーの非晶性芳香族ポリエステル系樹脂「KODAR PETG GS1(商品名)」(融解熱量0J/g(DSCセカンド融解曲線に明瞭な融解ピークなし)、ガラス転移温度81℃)100質量部と酸化チタン(白色顔料)12質量部を含む樹脂組成物を用い、押出機、Tダイ、及び引巻取装置を備える製膜装置を使用し、ダイス出口樹脂温度230℃、引巻取速度60m/分の条件で製膜した、厚さ120μmの非晶性芳香族ポリエステル系樹脂フィルム。隠蔽率98.5%。
【0088】
(A6)株式会社プライムポリマーのポリプロピレン系樹脂「プライムポリプロF‐730NV(商品名)」100質量部と酸化チタン(白色顔料)12質量部を含む樹脂組成物を用い、押出機、Tダイ、及び引巻取装置を備える製膜装置を使用し、ダイス出口樹脂温度230℃、引巻取速度60m/分の条件で製膜した、厚さ120μmのポリプロピレン系樹脂フィルム。隠蔽率98.8%。
【0089】
(B)インク(活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインク):
(B1)活性エネルギー線硬化性樹脂(1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート(分子量226)16質量%、トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量296)4質量%、フェニルセロソルブアクリレート(分子量192)21質量%、テトラヒドロフルフリルアクリレート(分子量156質量部)21質量%、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート(分子量188)38質量%からなる活性エネルギー線硬化性樹脂)100質量部;光重合開始剤(ジフェニル‐2,4,6‐トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド)10質量部;並びに顔料からなるインク。
【0090】
(B2)活性エネルギー線硬化性樹脂(1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート(分子量226)12質量%、トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量296)3質量%、フェニルセロソルブアクリレート(分子量192)22.5質量%、テトラヒドロフルフリルアクリレート(分子量156質量部)22.5質量%、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート(分子量188)40質量%からなる活性エネルギー線硬化性樹脂)100質量部;光重合開始剤(ジフェニル‐2,4,6‐トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド)10質量部;並びに顔料からなるインク。
【0091】
(B3)活性エネルギー線硬化性樹脂(1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート(分子量226)24質量%、トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量296)6質量%、フェニルセロソルブアクリレート(分子量192)18質量%、テトラヒドロフルフリルアクリレート(分子量156質量部)18質量%、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート(分子量188)34質量%からなる活性エネルギー線硬化性樹脂)100質量部;光重合開始剤(ジフェニル‐2,4,6‐トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド)10質量部;並びに顔料からなるインク。
【0092】
(B4)活性エネルギー線硬化性樹脂(1,6‐ヘキサンジオールジアクリレート(分子量226)12質量%、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート(分子量742)4質量%、トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量296)4質量%、フェニルセロソルブアクリレート(分子量192)21質量%、テトラヒドロフルフリルアクリレート(分子量156質量部)21質量%、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート(分子量188)38質量%からなる活性エネルギー線硬化性樹脂)100質量部;光重合開始剤(ジフェニル‐2,4,6‐トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド)10質量部;並びに顔料からなるインク。
【0093】
例1
1.化粧板の製造:
(1)有限会社徳永NCの表面の平滑なMDF「MDF加工品(商品名)」を、縦300mm、横200mm、厚み18mmにカットし、平面と前面、左側面、右側面、及び背面とのなす角に曲面加工(3~10R)を施し、更に平面に装飾の溝を彫り込み、基材を得た。得られた基材の写真を
図1に示す。
(2‐1)上記工程(1)で得た基材の平面、前面、左側面、右側面、及び背面にKLEIBERIT社の接着剤「630.2(商品名)」をスプレー塗布した。
(2‐2)WEMHONER社のメンブレンプレス成型機「PRESSEN KT-M-139/280-24(商品名)」の所定の位置に、縦290mm、横180mm、厚み18mmの表面の平滑なMDF製の台座を置き、該台座の上に、上記工程(2‐1)で接着剤をスプレー塗布した上記基材を、その底面が台座側となるように、上記台座の縦方向と上記基材の縦方向とが一致するように、及び上記台座の縦横面の対角線の交点と上記被基材の縦横面の対角線の交点とが一致するように置き、更にその上に、マシン方向450mm、横方向350mmの大きさに裁断した上記樹脂フィルム(A1)を、上記基材の縦方向と上記樹脂フィルム(A1)のマシン方向とが一致するように、及び上記基材の縦横面の対角線の交点と上記裁断した樹脂フィルムの縦横面の対角線の交点とが一致するように載せた。
(2‐3)上記メンブレンプレス成型機を、そのメンブレンゴムの表面温度が80℃となるように予熱した後、圧力0.39MPa、押圧時間60秒の条件で、メンブレンプレス成型を行い、上記基材の面の上に、その形状に合わせて、上記樹脂フィルム(A1)を被着した。
(3)上記工程(2‐3)において得た被着体(上記基材の面の上に上記樹脂フィルム(A1)が被着された被着体)の上記樹脂フィルム(A1)の平面、前面、左側面、右側面、及び背面の上に、丸仲商事株式会社のインクジェット印刷機「FINE-JET M-2613(商品名)」を使用し、上記インク(B1)を用い、インクジェット印刷により加飾層を形成し、化粧板を得た。
【0094】
2.評価:
基材の面の上に、その形状に合わせて、樹脂フィルムを被着した後、該樹脂フィルムの面の上に加飾層を形成する前に、上記試験(イ)を行った。得られた化粧板について、上記試験(ロ)~(ハ)を行った。結果を表1に示す。
【0095】
例2~4
インク(活性エネルギー線硬化性樹脂を含むインク)として上記インク(B1)の替わりに、表1に示すインクを使用したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0096】
例5~例9
樹脂フィルムとして上記樹脂フィルム(A1)の替わりに、表1に示す樹脂フィルムを使用したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0097】
例10
1.化粧板の製造:
(1)有限会社徳永NCの表面の平滑なMDF「MDF加工品(商品名)」を、縦300mm、横200mm、厚み18mmにカットし、平面と前面、左側面、右側面、及び背面とのなす角に曲面加工(3~10R)を施し、更に平面に装飾の溝を彫り込み、基材を得た。得られた基材の写真を
図1に示す。
(2)上記工程(1)で得た基材の平面と前面、左側面、右側面、及び背面の上に、丸仲商事株式会社のインクジェット印刷機「FINE-JET M-2613(商品名)」を使用し、上記インク(B1)を用い、インクジェット印刷により加飾層を形成し、化粧板を得た。
【0098】
2.評価:
得られた化粧板について、上記試験(ロ)~(ハ)を行った。結果を表1に示す。
【0099】
例11
1.化粧板の製造:
(1)上記樹脂フィルム(A1)の一方の面の上に、丸仲商事株式会社のインクジェット印刷機「FINE-JET M-2613(商品名)」を使用し、上記インク(B1)を用い、インクジェット印刷により加飾層を形成した。
(2)有限会社徳永NCの表面の平滑なMDF「MDF加工品(商品名)」を、縦300mm、横200mm、厚み18mmにカットし、平面と前面、左側面、右側面、及び背面とのなす角に曲面加工(3~10R)を施し、更に平面に装飾の溝を彫り込み、基材を得た。得られた基材の写真を
図1に示す。
(3‐1)上記工程(2)で得た基材の平面、前面、左側面、右側面、及び背面にKLEIBERIT社の接着剤「630.2(商品名)」をスプレー塗布した。
(3‐2)WEMHONER社のメンブレンプレス成型機「PRESSEN KT-M-139/280-24(商品名)」の所定の位置に、縦290mm、横180mm、厚み18mmの表面の平滑なMDF製の台座を置き、該台座の上に、上記工程(3‐1)で接着剤をスプレー塗布した上記基材を、その底面が台座側となるように、上記台座の縦方向と上記基材の縦方向とが一致するように、及び上記台座の縦横面の対角線の交点と上記被基材の縦横面の対角線の交点とが一致するように置き、更にその上に、マシン方向450mm、横方向350mmの大きさに裁断した工程(1)で得た積層体(上記樹脂フィルム(A1)の一方の面の上に加飾層を有する積層体)を、上記基材の縦方向と上記積層体のマシン方向とが一致するように、上記積層体の加飾層形成面とは反対側の面が上記基材側になるように、及び上記基材の縦横面の対角線の交点と裁断した上記積層体の縦横面の対角線の交点とが一致するように載せた。
(3‐3)上記メンブレンプレス成型機を、そのメンブレンゴムの表面温度が80℃となるように予熱した後、圧力0.39MPa、押圧時間60秒の条件で、メンブレンプレス成型を行い、上記基材の面の上に、その形状に合わせて、上記積層体を被着し、化粧板を得た。
【0100】
2.評価:
得られた化粧板について、上記試験(ロ)~(ハ)を行った。結果を表1に示す。
【0101】
【0102】
本発明の製造方法により製造された化粧板は、三次元形状を有し、良好な外観を有していた。また本発明の好ましい製造方法により製造された化粧板は、更に耐擦傷性に優れ、加飾層の密着強度も良好であった。そのため、本発明の製造方法により製造された化粧板は、家具の部材や建築物の内装部材として良好に用いることができると考えられる。
【0103】
本発明の製造方法により製造される化粧板は、上述の通り、好ましい特性を有するものであるから、本発明の製造方法は、上記基材として、板の替わりにフィルム又はシートを用いることにより、化粧シートや加飾フィルムの製造にも良好に適用できることを、当業者はたちどころに理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0104】