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特許7479134有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物
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  • 特許-有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20240426BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240426BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C07F5/02 A CSP
H05B33/14 B
C09K11/06 660
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019201721
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2020075922
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】10-2018-0135437
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】早野 哲二
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181188(WO,A1)
【文献】特表2021-523567(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235402(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/022751(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/138526(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/022770(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式2で表される多環化合物。
【化1】

・・・(化学式2)
(前記化学式2において、
~X10はそれぞれ独立して炭素または窒素であり、
~Rは、それぞれ独立して重水素原子、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
~Rは、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
aは0以上4以下の整数であり、
cは0以上3以下の整数であり、
d及びeはそれぞれ独立して0以上5以下の整数であり、
Ar~Arはそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
fは0以上3以下の整数であり、
~X10がいずれも炭素であれば、R~Rのうち少なくとも一つは無置換の環形成炭素数2以上30以下のNを含むヘテロアリール基である。)
【請求項2】
前記化学式1で表される化合物は、下記第1化合物群に示した化合物のうちいずれか一つである請求項1に記載の多環化合物。
[第1化合物群]
【化6】

【請求項3】
前記化学式1で表される化合物は、下記第2化合物群に示した化合物のうちいずれか一つである請求項1に記載の多環化合物。
[第2化合物群]
【化7】
【請求項4】
第1電極と、
前記第1電極の上に配置された正孔輸送領域と、
前記正孔輸送領域の上に配置され、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の多環化合物を含む発光層と、
前記発光層の上に配置される電子輸送領域と、
前記電子輸送領域の上に配置される第2電極と、
を含み、
前記第1電極及び前記第2電極はそれぞれ独立して、Ag,Mg,Cu,Al,Pt,Pd,Au,Ni,Nd,Ir,Cr,Li,Ca,LiF/Ca,LiF/Al,Mo
,Ti,In,Sn及びZnからなる群から選択される一つ、これらの中から選択される複数を含む化合物、これらに中から選択される複数を含む混合物、又はこれらの中から選択される1つ以上の酸化物を含む、有機電界発光素子。
【請求項5】
前記発光層はホスト及びドーパントを含む遅延蛍光発光層であり、
前記ドーパントは前記多環化合物である請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記発光層は、青色光を放出する熱活性遅延蛍光発光層である請求項4に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子及びそれに使用される多環化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、映像表示装置として、有機電界発光表示装置(Organic Electroluminescence Display)の開発が盛んに行われている。有機電界発光表示装置は液晶表示装置などとは異なって、第1電極及び第2電極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることで、発光層において有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型表示装置である。
【0003】
有機電界発光素子を表示装置に応用するに当たっては、有機電界発光素子の低駆動電圧化、高発光効率化及び長寿命化が要求されており、これを安定的に実現し得る有機電界発光素子用材料の開発が持続的に要求されている。
【0004】
特に、最近は高効率の有機電界発光素子を実現するために三重項状態のエネルギーを利用するりん光発光や、三重項励起子の衝突によって一重項励起子が生成される現象(Triplet-triplet annihilation、TTA)を利用した遅延蛍光発光に関する技術が開発されており、遅延蛍光現象を利用した熱活性遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence、TADF)材料に関する開発が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の一つは、長寿命、高効率の有機電界発光素子及びそれに使用される多環化合物を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、熱活性遅延蛍光発光材料を含む有機電界発光素子及び熱活性遅延蛍光発光材料として使用される多環化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によるとは、第1電極、第1電極の上に設けられた正孔輸送層、正孔輸送層の上に設けられた発光層、発光層の上に設けられた電子輸送層、及び電子輸送層の上に設けられた第2電極を含み、発光層は下記化学式1で表される多環化合物を含む有機電界発光素子が提供される。
【化1】
・・・(化学式1)
化学式1において、X~X10は、それぞれ独立して炭素または窒素であり、R~Rは、それぞれ独立して重水素原子、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、R~Rは、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、a及びbは0以上4以下の整数であり、cは0以上3以下の整数であり、d及びeはそれぞれ独立して0以上5以下の整数であり、X~X10がいずれも炭素であれば、R及びRのうち少なくとも一つは置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0008】
発光層は、遅延蛍光を放出する有機電界発光素子である。
【0009】
発光層はホスト及びドーパントを含む遅延蛍光発光層であり、前記ドーパントは前記多環化合物を含む有機電界発光素子である。
【0010】
発光層は、青色光を放出する熱活性遅延蛍光発光層である有機電界発光素子である。
化学式1は下記化学式2で表される。
【化2】
・・・(化学式2)
化学式2において、Ar~Arはそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、fは0以上3以下の整数であり、X~X10、R~R、a及びc~eは化学式1で定義した通りである。
【0011】
化学式1は下記化学式3で表される。
【化3】
・・・(化学式3)
前記化学式3において、R~Rはそれぞれ独立して重水素原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、R及びRのうち少なくとも一つは置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のNを含むヘテロアリール基であり、R~R、a~eは化学式1で定義した通りである。
【0012】
化学式3は下記化学式4で表される。
【化4】
・・・(化学式4)
化学式4において、Y~Yはそれぞれ独立して炭素または窒素であり、Y~Yのうち少なくとも一つは窒素であり、Rは水素原子、重水素原子置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下ヘテロアリール基であり、gは0以上4以下の整数であり、hは5-n(nは、Y~Yにおける窒素の数)の整数であり、R~R、a~c及びeは化学式3で定義した通りである。
【0013】
化学式4は化学式5で表される。
【化5】
・・・(化学式5)
化学式5において、Ar~Arはそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、fは0以上3以下の整数であり、R~R、Y~Y、a、c、e、g、及びhは化学式4で定義した通りである。
【0014】
化学式1は下記化学式6で表される。
【化6】
・・・(化学式6)
化学式6において、X~Xはそれぞれ独立して炭素または窒素であり、X~Xのうち少なくとも一つは窒素であり、Rは重水素原子、置換若しくは無置換のアミン基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、gは0以上4以下の整数であり、R~R、a~c及びeは化学式1で定義した通りである。
【0015】
化学式6は下記化学式7で表される。
【化7】
・・・(化学式7)
化学式7において、Ar~Arはそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、fは0以上3以下の整数であり、X~X、R~R、a、c、e、及びgは化学式6で定義した通りである。
【0016】
化学式7において、X~Xのうち2つは窒素である。
【0017】
化学式1で表される化合物は、下記第1化合物群に示した化合物のうちいずれか一つである。
[化合物群1]
【化8】
【0018】
化学式1で表される化合物は、下記第2化合物群に示した化合物のうちいずれか一つである。
[化合物群2]
【化9】
【0019】
本発明の一実施形態によると、化学式1で表される多環化合物が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態による有機電界発光素子は、高効率及び長寿命を得ることができる。
【0021】
本発明の一実施形態による多環化合物は、有機電界発光素子の寿命と効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるゆえ、以下では特定の実施形態を図面に例示し、本文に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定な開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物又は代替物を含むと理解すべきである。
【0024】
各図面の説明において、類似した参照符号を類似した構成要素に対して使用している。添付した図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際より拡大して示している。第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用されるが、構成要素は用語に限定されない。用語は一つの構造要素を他の構成要素から区別する目的のためにのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない限り、第1構成要素は第2構成要素と称されてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素と称されてもよい。単数の表現は、文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。
【0025】
本出願において、「含む」または「有する」などの用語は明細書の上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを意図するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解すべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるとする場合、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。
【0026】
本明細書において、-*は結合位置を意味する。
【0027】
本明細書において、「置換若しくは無置換の」とは重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、シリル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、及びヘテロ環基で形成される群から選択される一つ以上の置換基に置換される若しくは無置換であることを意味する。また、前記例示された置換基それぞれは、置換若しくは無置換であってもよい。例えば、ビフェニリル基はアリール基と解釈されてもよく、フェニル基に置換されたフェニル基と解釈されてもよい。
【0028】
本明細書において、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。
【0029】
本明細書において、アルキル基は直鎖、分枝鎖、または環状である。アルキル基の炭素数は、1以上50以下、1以上30以下、1以上20以下、1以上10以下、または1以上6以下である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、2-エチルブチル基、3、3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-t-ブチルシクロヘキシル基、n-ヘプチル基、1-メチルペプチル基、2、2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、tーオクチル基、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3、7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、2-エチルデシル基、2-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルドデシル基、2-ブチルドデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-オクチルデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキサデシル基、2-ブチルヘキサデシル基、2-ヘキシルヘキサデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、2-エチルイコシル基、2-ブチルイコシル基、2-ヘキシルイコシル基、2-オクチルイコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、及びn-トリアコンチル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0030】
本明細書において、アリール基は、芳香族炭化水素環から誘導された任意の作用基または置換基を意味する。アリール基は、単環式アリール基または多環式アリール基である。アリール基の環形成炭素数は、6以上30以下、6以上20以下、または6以上15以下である。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クォーターフェニリル基、クインクフェニリル基、セクシフェニリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0031】
本明細書において、フルオレニル基は置換され、2つの置換基が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。フルオレニル基が置換される場合の例示は以下のようである。但し、これに限らない。
【化10】
【0032】
本明細書において、ヘテロアリール基はヘテロ元素としてO、N、P、Si、及びSのうち一つ以上を含むヘテロアリール基である。ヘテロアリール基の環形成炭素数は、2以上30以下、または2以上20以下である。ヘテロアリール基は、単環式ヘテロアリール基または多環式ヘテロアリール基であってもよい。多環式ヘテロアリール基は、例えば2環または3還構造を有するものであってもよい。ヘテロアリール基の例としては、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジニル基、ビピリジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、アクリジニル基、ピリダジニン基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フェノキサジニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリニル基、インドリル基、カルバゾリル基、N-アリルカルバゾリル基、N-ヘテロアリルカルバゾリル基、N-アルキルカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾフラニル基、フェナントロリニル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基、ジベンゾシロール基、及びジベンゾフラニル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0033】
本明細書において、アミノ基の炭素数は特に限らないが、1以上30以下である。アミノ基は、アルキルアミノ基及びアリールアミノ基を含む。アミノ基の例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、9-メチル-アントラセニルアミノ基、トリフェニルアミノ基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0034】
以下、図1図3を参照して本発明の一実施形態による有機電界発光素子について説明する。
【0035】
図1図3を参照すると、本発明の一実施形態による有機電界発光素子10は、順次に積層された第1電極EL1、正孔輸送領域HTR、発光層EML、電子輸送領域ETR、及び第2電極EL2を含む。
【0036】
第1電極EL1及び第2電極EL2は互いに対向して配置され、第1電極EL1と第2電極EL2との間には複数の有機層が配置される。複数の有機層は正孔輸送領域HTR、発光層EML、及び電子輸送領域ETRを含む。一実施形態に係る有機電界発光素子10は、発光層EMLに上述した一実施形態に係る多環化合物を含む。
【0037】
一方、図2図1とは異なり、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL及び電子輸送層ETLを含む一実施形態に係る有機電界発光素子10の断面図を示す。また、図3図1とは異なり、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL、電子輸送層ETL、及び正孔阻止層HBLを含む一実施形態に係る有機電界発光素子10の断面図を示す。
【0038】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、第1電極EL1は導電性を有する。第1電極EL1は、金属合金または導電性化合物からなる。第1電極EL1はアノード(anode)である。
【0039】
第1電極EL1は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第1電極EL1が透過型電極であれば、第1電極EL1は透明金属酸化物、例えば、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)などからなる。第1電極EL1が半透過型電極または反射型電極であれば、第1電極EL1はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの合金)を含む。また、前記例示された物質からなる反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる透明導電膜を含む複数の層構造であってもよい。例えば、第1電極EL1はITO/Ag/ITOの複数の層を含むものであってもよい。
【0040】
正孔輸送領域HTRは第1電極EL1の上に設けられる。正孔輸送領域HTRは、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、正孔バッファ層、及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを含む。
【0041】
正孔輸送領域HTRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0042】
例えば、正孔輸送領域HTRは正孔注入層HILまたは正孔輸送層HTLの単一層の構造を有してもよく、正孔注入物質と正孔輸送物質からなる単一構造を有してもよい。また、正孔輸送領域HTRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層の構造を有してもよく、第1電極EL1から順番に積層された正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL、正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/正孔バッファ層、正孔注入層HIL/正孔バッファ層、正孔輸送層HTL/正孔バッファ層、または正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/正孔阻止層EBLの構造を有してもよいが、本実施形態はこれらに限らない。
【0043】
正孔輸送領域HTRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などのような多様な方法を利用して形成される。
【0044】
一実施形態に係る有機電界発光素子10の正孔注入層HILは、公知の正孔注入材料を含む。例えば、正孔注入層HILは、トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(TPAPEK)、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(PPBI)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-フェニル-4,4’-ジアミン(DNTPD)、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPB)、N,N’-ビス(1-ナフチル)N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)、4,4’,4”-トリス{N,Nジフェニルアミノ}トリフェニルアミン(TDATA)、4,4’,4”-トリス(N,N-2-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2-TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(PANI/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホナート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(PANI/CSA)、ポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホナート)(PANI/PSS)、またはHAT-CN(ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2、3、6、7、10、11-ヘキサカルボニトリル)などを含んでもよい。しかし、本実施形態はこれらに限らない。
【0045】
一実施形態に係る有機電界発光素子10の正孔輸送層HTLは、公知の正孔輸送材料を含む。例えば、正孔輸送層HTLは、1,1-ビス[(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TPD)、4,4’,4”-トリス(Nーカルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、またはN,N’-ジ(1-ナフチル)-N.N’-ジフェニルベンジジン(NPB)、N,N’-ビス(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)などを含んでもよい。しかし、本実施形態はこれらに限らない。
【0046】
正孔輸送領域HTRは電子阻止層EBLを更に含んでもよく、電子阻止層EBLは正孔輸送層HTLと発光層EMLの間に配置されてもよい。電子阻止層EBLは、電子輸送領域ETRから正孔輸送領域HTRへの電子の注入を防止する役割をする層である。
【0047】
電子阻止層EBLは、該当技術分野で知られている一般的な材料を含む。電子阻止層EBLは、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系誘導体、フルオレン系誘導体、TPD(N、N’-ビス(3-メチルフェニル)-N、N’-ジフェニル-[1、1-ビフェニル]-4、4’-ジアミン)、TCTA(4、4’、4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)などのようなトリフェニルアミン系誘導体、NPD(N、N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N、N’-ジフェニル-ベンジジン)、TAPC(4、4’-シクロへキシリデンビス[N、N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])、HMTPD(4、4’-ビス[N、N’-(3-トリル)アミノ]-3、3’-ジメチルビフェニル)、またはmCPなどを含んでもよい。また、電子阻止層EBLは、本発明の一実施形態による多環化合物を含んでもよい。
【0048】
正孔輸送領域HTRの厚さは、約10nm~約1000nm、例えば約10nm~約500nmであってもよい。正孔注入層HILの厚さは、例えば約3nm~約100nmであり、正孔輸送層HTLの厚さは、約3nm~約100nmであってもよい。例えば、電子阻止層EBLの厚さは、約1nm~約100nmであってもよい。正孔輸送領域HTR、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLの厚さが上述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な正孔輸送特性が得られる。
【0049】
正孔輸送領域HTRは、上述した物質以外に、導電性を向上するために電荷生成物質を更に含んでもよい。電荷発生物質は、正孔輸送領域HTR内に均一にまたは不均一に分散されている。電荷発生物質は、例えば、p-ドーパント(dopant)である。p-ドーパントはキノン誘導体、金属酸化物、及びシアノ基含有化合物のうちいずれか一つであってもよいが、これらに限らない。例えば、p-ドーパントの非制限的な例としては、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)及びF4-TCNQ(2、3、5、6-テトラフルオロ-テトラシアノキノジメタン)などのようなキノン誘導体、タングステン酸化物、及びモリブデン酸化物のような金属酸化物などが挙げられるが、これらに限らない。
【0050】
上述したように、正孔輸送領域HTRは、正孔輸送層HTL及び正孔注入層HIL以外に、正孔バッファ層及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを更に含んでもよい。正孔バッファ層は、発光層EMLから放出される光の波長による共振距離を補償して光放出効率を増加させる。正孔バッファ層に含まれる物質としては、正孔輸送領域HTRに含まれ得る物質を使用することができる。
【0051】
発光層EMLは正孔輸送領域HTRの上に設けられる。発光層EMLの厚さは、例えば、10nm以上60nm以下であってもよい。発光層EMLは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0052】
発光層EMLは、赤色光、緑色光、青色光、白色光、黄色光、シアン光のうち一つを発光するものであってもよい。発光層EMLは、蛍光発光物質またはりん光発光物質を含んでもよい。
【0053】
一実施形態において、発光層EMLは蛍光発光層である。例えば、発光層EMLから放出された光のうち一部は熱活性遅延蛍光発光によるものであってもよい。詳しくは、発光層EMLは熱活性遅延蛍光発光する発光成分を含み、一実施形態において、発光層EMLは、青色光を放出する熱活性遅延蛍光発光する発光層である。
【0054】
本発明の一実施形態によると、下記化学式1で表される多環化合物が提供される。また、一実施形態に係る有機電界発光素子10おいて、発光層EMLは化学式1で表される多環化合物を含む。
【化11】
・・・(化学式1)
【0055】
化学式1において、X1~10はそれぞれ独立して炭素または窒素であり、化学式1において、R~Rは、それぞれ独立して重水素原子、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。化学式1において、R~Rは、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0056】
~Rはアルキル基を含まず、特に環状アルキル基を含まない。R~Rがアルキル基を含んでしまうと、ヘテロアリール基を置換基として保有する場合であっても、多重共鳴効果(Multiple resonance effect)によってHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)とLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)の軌道分離が不十分なため、素子に適用される場合、発光層の半値幅が30nm以下になり、三重項エネルギー準位T1が単一項エネルギー準位S1に転換される逆系間交差(Reverse intersystem crossing、RISC)の速度も不十分である。
【0057】
化学式1において、a及びbはそれぞれ独立して0以上4以下の整数である。一方、aが2以上であれば複数のRは互いに同じであっても異なっていてもよく、bが2以上であれば複数のRは互いに同じであってもよく異なっていてもよい。
【0058】
化学式1において、cは0以上3以下の整数である。一方、cが2以上であれば、複数のRは互いに同じであってもよく異なっていてもよい。
【0059】
化学式1において、d及びeはそれぞれ独立して0以上5以下の整数である。一方、dが2以上であれば複数のRは互いに同じであるか異なっていてもよく、eが2以上であれば複数のRは互いに同じであるか異なっていてもよい。
【0060】
化学式1において、X~X10がいずれも炭素であれば、R~Rのうち少なくとも一つは置換の環形成炭素数2以上30以下ヘテロアリール基である。この場合、d及びeは同時に0ではない。
【0061】
【0062】
一実施形態において、化学式1はアリールアアミノ基を置換基として含む。この場合、化学式1は化学式2で表される。
【化12】
・・・(化学式2)
【0063】
化学式2において、Ar~Arはそれぞれ独立して、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0064】
化学式2において、fは0以上3以下の整数である。一方、fが2以上であれば、複数のRは互いに同じであってもよく異なっていてもよい。
【0065】
化学式2において、X~X10、R~R、a及びc~eは、化学式1で定義した通りである。
【0066】
一実施形態において、化学式1のX~X10はいずれも炭素である。この場合、化学式1は下記化学式3で表される。
【化13】
・・・(化学式3)
【0067】
化学式3において、R~Rはそれぞれ独立して重水素原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、R及びRのうち少なくとも一つは置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のNを含むヘテロアリール基である。この場合、d及びeは同時に0ではない。
【0068】
化学式3において、R~R、a~eは化学式1で定義した通りである。
【0069】
一実施形態において、多環化合物は電子供与部のNに結合する電子受容部がNを含むヘテロアリール基を含む。
【0070】
一実施形態において、化学式3のRがNを含むヘテロアリール基であれば、化学式3は下記化学式4で表される。
【化14】
・・・(化学式4)
【0071】
化学式4において、Y~Yはそれぞれ独立して炭素または窒素であり、Y~Yのうち少なくとも一つは窒素である。
【0072】
化学式4において、Rはそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0073】
化学式4において、gは0以上4以下の整数であり、一方、gが2以上であれば、複数のRは互いに同じであってもよく異なっていてもよい。
【0074】
化学式4において、hは5-n(nは、Y~Yにおける窒素の数)の整数である。hが2以上であれば、複数のRは互いに同じであってもよく異なっていてもよい。
【0075】
化学式4において、R~R、a~c及びeは化学式3で定義した通りである。
【0076】
一実施形態において、化学式4はアリールアミノ基を置換基として含む。この場合、化学式4は下記化学式5で表される。
【化15】
・・・(化学式5)
【0077】
化学式5において、Ar~Arはそれぞれ独立して、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0078】
化学式5において、fは0以上3以下の整数であり、一方、fが2以上であれば、複数のRは互いに同じであってもよく異なっていてもよい。
【0079】
化学式5において、R~R、Y~Y、a、c、e、g、及びhは化学式4で定義した通りである。
【0080】
一実施形態において、多環化合物は電子受容部としてピリジニル基を含んでもよく、この場合、化学式4または化学式5のY~Yのうち一つは窒素である。
【0081】
一実施形態において、化学式1のX~X10はいずれも炭素である。この場合、化学式1は下記化学式6で表される。
【化16】
・・・(化学式6)
【0082】
化学式6において、X~Xはそれぞれ独立して炭素または窒素であり、X~Xのうち少なくとも一つは窒素である。
【0083】
化学式6において、gは0以上5以下の整数であり、一方、gが2以上であれば、複数のRは互いに同じであってもよく異なっていてもよい。
【0084】
化学式6において、R~R、a~c及びeは化学式1で定義した通りである。
【0085】
一実施形態において、化学式6はアリールアミノ基を置換基として含む。この場合、化学式6は下記化学式7で表される。
【化17】
・・・(化学式7)
【0086】
化学式7において、Ar~Arはそれぞれ独立して、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0087】
化学式7において、fは0以上3以下の整数であり、一方、fが2以上であれば、複数のRは互いに同じであってもよく異なっていてもよい。
【0088】
化学式7において、X~X、R~R、a、c、e、及びgは、化学式6で定義した通りである。
【0089】
一実施形態において、多環化合物は電子供与部のNに電子受容部としてピリミジニル基が結合される。この場合、化学式7においてX~Xのうち2つは窒素である。
【0090】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、遅延蛍光発光材料である。
【0091】
例えば、化学式1で表される多環化合物は一重項エネルギー準位S1と三重項エネルギー準位T1の差が小さく、熱活性遅延蛍光発光材料として使用されてもよい。詳しくは、化学式1で表される多環化合物は、熱活性遅延蛍光発光する青色光発光材料として使用される。但し、本実施形態はこれに限らず、一実施形態に係る多環化合物は、緑色光または赤色光を発光する熱活性遅延蛍光材料であってもよい。
【0092】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、下記第1化合物群に示した化合物のうちいずれか一つで表される。
[第1化合物群]
【化18】
【0093】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、下記第2化合物群に示した化合物のうちいずれか一つで表される。
[第2化合物群]
【化19】
【0094】
上述した化学式1で表される多環化合物は、一実施形態に係る有機電界発光素子10に使用されて有機電界発光素子の効率及び寿命を改善させる。詳しくは、上述した化学式1で表される多環化合物は、一実施形態に係る有機電界発光素子10の発光層EMLに使用されて有機電界発光素子の発光効率及び寿命を改善させる。
【0095】
一実施形態において、発光層EMLはホスト及びドーパントを含み、ホストは遅延蛍光発光用ホストであり、ドーパントは遅延蛍光発光用ドーパントである。化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、発光層EMLのドーパント材料として含まれる。例えば、化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、TADFドーパントとして使用されてもよい。
【0096】
一方、発光層EMLは公知のホスト材料を含む。例えば、一実施形態において、発光層EMLはホスト材料として、Alq(トリス(8-ヒドロキシキノリノ)アルミニウム)、CBP(4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)、PVK(ポリ(n-ビニルカルバゾール)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン)、TPBi(1,3,5-トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン)、TBADN(3-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン)、DSA(ジスチリルアリレン)、CDBP(4,4’-ビス(9-カルバゾリル)-2,2’-ジメチル-ビフェニル)、MADN(2-メチル-9,10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、CP1(ヘキサフェニルシクロトリホスファゼン)、UGH2(1、4-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン)、DPSiO(ヘキサフェニルシクロトリシロキサン)、DPSiO(オクタフェニルシクロテトラシロキサン)、またはPPF(2、8-ビス(ジフェニルホスフォリル)ジゼンゾフラン)などを含んでもよい。しかし、これに限らず、上記ホスト材料以外にも公知の遅延蛍光発光用ホスト材料が含まれてもよい。
【0097】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは公知のドーパント材料を更に含んでもよい。一実施形態において、発光層MELは、ドーパントとして、スチリル誘導体(例えば、1,4-ビス[2-(3-N-エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン(BCzVB)、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-[(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]スチルベン(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン-2-イル)ビニル)フェニル)-N-フェニルベンゼンアミン(N-BDAVBi)、ぺリレン及びその誘導体(例えば、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルぺリレン(TBP))、ピレン及びその誘導体(例えば、1,1-ジピレン、1,4-ジピレニルベンゼン、1,4-ビス(N、N-ジフェニルアミノ)ピレン)などを含んでもよい。
【0098】
更に図1図3を参照すると、一実施形態に係る有機電界発光素子10において、電子輸送領域ETRは発光層EMLの上に設けられる。電子輸送領域ETRは電子阻止層、電子輸送層ETL、及び電子注入層のEILうち少なくとも一つを含むが、これらに限らない。
【0099】
電子輸送領域ETRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0100】
例えば、電子輸送領域ETRは電子注入層のEILまたは電子輸送層ETLの単一層の構造を有してもよく、電子注入物質と電子輸送物質からなる単一層構造を有してもよい。また、電子輸送領域ETRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層の構造を有するか、第1電極EL1から順番に積層された電子輸送層ETL/電子注入層EIL、正孔素子層/電子輸送層ETL/電子注入層EILの構造を有してもよいが、これらに限らない。電子輸送領域ETRの厚さは、例えば、約10nm~約150nmであってもよい。
【0101】
電子輸送領域ETRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法などのような多様な方法を利用して形成される。
【0102】
電子輸送領域ETRが電子輸送層ETLを含む場合、例えば、電子輸送領域ETRは、Alq(トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、2,4,6-トリス(3’-ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-(N-フェニルベンゾイミダゾリル-1-イルフェニル)-9,10-ジナフチルアントラセン、TPBi(1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ベンゼン)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、TAZ(3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-テルト-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール)、NTAZ(4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール)、tBu-PBD(2-(4-ビフェニルイル)-5-(4-テルトーブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1’-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム)、Bebq(ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラト)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、及びこれらの混合物を含んでもよいが、これらに限らない。
【0103】
電子輸送領域ETRが電子輸送層ETLを含む場合、電子輸送層ETLの厚さは、約10nm~約100nm、例えば約15nm~約50nmであってもよい。電子輸送層HTLの厚さが上述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な電子輸送特性が得られる。
【0104】
電子輸送領域ETRが電子注入層EILを含む場合、電子輸送領域ETRは、例えば、LiF、LiQ(Lithum quinolate)、LiO、BaO、NaCl、CsF、Ybのようなランタノイド族金属、またはRbCl、Rbl、Klのようなハロゲン化金属などが使用されてもよいが、これらに限らない。電子注入層EILはまた、電子輸送物質と絶縁性の有機金属塩(organo metal slat)が混合された物質からなる。有機金属塩は、エネルギーバンドギャップ(energy band gap)が約4eV以上の物質である。例えば、有機金属塩は、酢酸金属塩(metal acetate)、安息香酸塩金属塩(metal benzoate)、アセト酢酸金属塩(metal acetoacetate)、金属アセチルアセトナート(metal acetylacetonate)、または金属ステアレート(stearate)を含む。
【0105】
電子輸送領域ETRが電子注入層ETLを含む場合、電子注入層ETLの厚さは、約0.1nm~約10nm、約0.3nm~約9nmであってもよい。電子注入層EILの厚さが上述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な程度の電子注入特性が得られる。
【0106】
電子輸送領域ETRは、上述したように、正孔阻止層を含んでもよい。正孔阻止層は、例えば、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、及びBphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)のうち少なくとも一つを含んでもよいが、これらに限らない。
【0107】
第2電極EL2は、電子輸送領域ETRの上に設けられる。第2電極EL2は導電性を有する。第2電極EL2は、金属合金または導電性化合物からなる。第2電極層EL2はカソード(cathode)である。第2電極EL2は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第2電極EL2が透過型電極であれば、第2電極EL2は透明金属酸化物、例えば、ITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる。
【0108】
第2電極EL2が半透過型電極または反射型電極であれば、第2電極EL2はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの合金)を含む。また、前記例示された物質からなる反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる透明導電膜を含む複数の層構造であってもよい。
【0109】
図示していないが、第2電極EL2は補助電極と接続されてもよい。第2電極EL2が補助電極と接続されれば、第2電極EL2の抵抗を減少させることができる。
【0110】
有機電解発光素子10において、第1電極EL1と第2電極EL2にそれぞれ電圧が印加されることで、第1電極EL1から注入された正孔(hole)は正孔輸送領域HTRを介して発光層EMLに移動し、第2電極EL2から注入された電子は電子輸送領域ETRを経て発光層EMLに移動する。電子と正孔は発光層EMLで再結合して励起子(exciton)を生成し、励起子が励起状態から基底状態に落ちる際に発光する。
【0111】
有機電界発光素子10が前面発光型であれば、第1電極EL1は反射型電極であって、第2電極はEL2は透過型電極または半透過型電極であってもよい。有機電界発光素子10が背面発光型であれば、第1電極EL1は透過型電極または半透過型電極であって、第2電極はEL2は反射型電極であってもよい。
【0112】
本発明一実施形態に係る有機電界発光素子10は、上述した多環化合物を発光層材料として使用することで、改善された発光効率及び寿命特性を示す。
【実施例
【0113】
以下、具体的な実施例及び比較例を介して本発明をより詳細に説明する。下記実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0114】
1.多環化合物の合成
まず、本実施形態による多環化合物の合成方法について、化合物A-1、化合物A-2、及び化合物A-3の合成方法を例示して詳しく説明する。また、以下で説明する多環化合物の合成法は一例であって、本発明の実施形態による多環化合物の合成法は下記実施例に限らない。
【0115】
(化合物A-1の合成)
一実施形態に係る多環化合物A-1は、例えば、下記反応式によって合成される。
【化20】
【0116】
3-ニトロアニリン(25g)、ヨードベンゼン(81.2g)、炭酸カリウム(150g)、及びヨウ化銅(6.9g)を含むo-ジクロロベンゼン(300ml)溶液を8時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体1を51.0g(収率97%)得た。
【0117】
中間体1(51g)と鉄粉(30g)、及び塩化アンモニウム(29g)を含むエタノール(120ml)と水(60ml)の混合溶液を、オイルバス加熱条件下で4時間加熱還流した。室温まで冷却し、反応溶液をろ過しエタノールを流去した後、目的物を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体2を42.5g(収率93%)得た。
【0118】
得られた中間体2(42.5g)とブロモベンゼン(25.2g)、ナトリウムブトキシド(31g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd(dba))(2.1g)、及びトリ-tert-ブチルホスフィン(PH(tBu))/BF(2.6g)を含むトルエン(570ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で3時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体3を52g(収率95%)得た。
【0119】
得られた中間体3(52g)と1-ブロモ-2,3-ジクロロベンゼン(34.9g)、ナトリウムブトキシド(34g)、Pd(dba)(3.2g)、及びPH(tBu)/BF(4.1g)を含むトルエン(350ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で3時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体4を67g(収率90%)得た。
【0120】
得られた中間体4(6.7g)と3-アミノビフェニル(2.3g)、ナトリウムブトキシド(2.4g)、Pd(dba)(0.22g)、及びPH(tBu)/BF(0.29g)を含むトルエン(50ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で4時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体5を7.7g(収率90%)得た。
【0121】
得られた中間体5(7.7g)とNaH(0.7g)を含むDMF(75ml)溶液を氷冷した。ここに臭化ベンジル(2.1ml)を加え、氷冷下で2時間撹拌した。TLCで原料の消失を確認した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体6を7.7g(収率69%)得た。
【0122】
得られた中間体6(7.7g)を含むt-ブチルベンゼン(60ml)溶液を、-78℃まで冷却した。ここにt-BuLi/ペンテン溶液(13.8ml)を加え、60℃で2時間撹拌した。その後、溶液を-35℃まで冷却し、1MのBBrへプテン溶液(22ml)を滴下した後、室温で3時間撹拌した。更に溶液を-40℃まで冷却し、ジイソプロピルエチルアミン(3.8ml)を滴下し、165℃で8時間加熱撹拌した後、反応混合物を室温まで戻して重曹水に注いだ。目的物を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体7を1.7g(収率20%)得た。
【0123】
得られた中間体7(1.5g)を含むジクロロメタン(30ml)溶液を氷冷し、ここにクロロギ酸1‐クロロエチル(0.4ml)を滴下した。室温で2時間撹拌した後、原料の消失を確認してから、溶媒を流去した。ここにMeOH(30ml)を加えて1時間加熱還流した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体8を0.5g(収率58%)得た。
【0124】
得られた中間体8(0.5g)とは別に調製した中間体10(0.3g)、ナトリウムブトキシド(0.2g)、Pd(dba)(0.02g)、及びPH(tBu)/BF(0.03g)を含むトルエン(10ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で4時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、目的物であるA-1を0.56g(収率80%)得た。また、FAB-MS測定によって、目的物の分子量が817であることを確認した。得られた化合物A-1は、追加的に昇華精製を実施し、評価資料として使用した。
【0125】
(化合物A-2の合成)
一実施形態に係る多環化合物A-2は、例えば、下記反応式によって合成される。
【化21】
【0126】
中間体2までの合成は、化合物A-1の合成における中間体2までの合成と同様に実施した。
【0127】
中間体2(40g)を含むアセトニトリル溶液(500ml)に4-メトキシベンジルブロミド(37.1g)及びDIPEA(25.8g)を加え、オイルバス加熱条件下で1時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体3を47g(収率80%)得た。
【0128】
得られた中間体3(47g)と1-ブロモ-2,3-ジクロロベンゼン(29.3g)、ナトリウムブトキシド(17.8g)、Pd(dba)(3.2g)、及びPH(tBu)/BF(4.1g)を含むトルエン(350ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で3時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体4を58g(収率90%)得た。
【0129】
得られた中間体4(7.3g)と3-アミノビフェニル(2.3g)、ナトリウムブトキシド(2.4g)、Pd(dba)(0.22g)、及びPH(tBu)/BF(0.29g)を含むトルエン(50ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で4時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体5を8.2g(収率90%)得た。
【0130】
得られた中間体5(8.2g)とNaH(0.7g)を含むDMF(75ml)溶液を氷冷した。ここに臭化ベンジル(2.1ml)を加え、氷冷下で2時間撹拌した。TLCで原料の消失を確認した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体6を7g(収率75%)得た。
【0131】
得られた中間体6(7g)を含むt-ブチルベンゼン(60ml)溶液を、-78℃まで冷却した。ここにt-BuLi/ペンテン溶液(13.8ml)を加え、60℃で2時間撹拌した。その後、溶液を-35℃まで冷却し、1MのBBrへプテン溶液(22ml)を滴下した後、室温で3時間撹拌した。更に溶液を-40℃まで冷却し、ジイソプロピルエチルアミン(3.8ml)を滴下し、165℃で8時間撹拌還流した後、反応混合物を室温まで戻して重曹水に注いだ。目的物を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体7を1.9g(収率28%)得た。
【0132】
得られた中間体7(1.9g)を含むジクロロメタン-水(20:1)の混合溶媒(30ml)を氷冷し、ここに2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(DDQ)(1.1当量)を加えた。常温で2時間撹拌させた後、原料の消失を確認し、反応溶液を水に注いだ。目的物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、目的物である中間体8を1.35g(収率85%)得た。
【0133】
得られた中間体8(1.35g)と4-(3-ヨードフェニル)ピリジン(0.76g)、ナトリウムブトキシド(0.33g)、Pd(dba)(0.04g)、及びPH(tBu)/BF(0.06g)を含むトルエン(20ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で4時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、目的物である中間体9を1.36g(収率80%)得た。
【0134】
得られた中間体9(1.36g)を含むジクロロメタン(30ml)溶液を氷冷し、ここにクロロギ酸1‐クロロエチル(0.4ml)を滴下した。室温で2時間撹拌した後、原料の消失を確認してから、溶媒を流去した。ここにMeOH(30ml)を加えて1時間加熱還流した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体10を0.84g(収率70%)得た。
【0135】
得られた中間体10(0.84g)とは別に調製した中間体11(0.54g)、ナトリウムブトキシド(0.2g)、Pd(dba)(0.02g)、及びPH(tBu)/BF(0.03g)を含むトルエン(10ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で4時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、目的物であるA-2を0.86g(収率76%)得た。また、FAB-MS測定によって、目的物の分子量が893であることを確認した。得られた化合物A-2は、追加に昇華精製を実施し、評価資料とした。また、素子発光スペクトル測定から、化合物A-2の半値幅は65nmと推定した。
【0136】
(化合物A-3の合成)
一実施形態に係る多環化合物A-3は、例えば、下記反応式によって合成される。
【化22】
【0137】
中間体3までの合成は、化合物A-1の合成における中間体3までの合成と同様に実施した。
【0138】
得られた中間体3(52g)と1-ブロモ-2,3-ジクロロベンゼン(47g)、ナトリウムブトキシド(34g)、Pd(dba)(3.2g)、及びPH(tBu)/BF(4.1g)を含むトルエン(350ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で3時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体4を78g(収率90%)得た。
【0139】
得られた中間体4(7.8g)と3-アミノビフェニル(2.3g)、ナトリウムブトキシド(2.4g)、Pd(dba)(0.22g)、及びPH(tBu)/BF(0.29g)を含むトルエン(50ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で4時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体5を8.2g(収率85%)得た。
【0140】
得られた中間体5(8.2g)とNaH(0.7g)を含むDMF(75ml)溶液を氷冷した。ここに臭化ベンジル(2ml)を加え、氷冷下で2時間撹拌した。TLCで原料の消失を確認した後、反応溶液を水に注いだ。目的物をトルエンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体6を6.5g(収率70%)得た。
【0141】
得られた中間体6(6.5g)を含むt-ブチルベンゼン(60ml)溶液を、-78℃まで冷却した。ここにt-BuLi/ペンテン溶液(13.8ml)を加え、60℃で2時間撹拌した。その後、溶液を-35℃まで冷却し、1MのBBrへプテン溶液(22ml)を滴下した後、室温で3時間撹拌した。更に溶液を-40℃まで冷却し、ジイソプロピルエチルアミン(3.8ml)を滴下し、165℃で8時間加熱撹拌した後、反応混合物を室温まで戻して重曹水に注いだ。目的物を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体7を1.6g(収率25%)得た。
【0142】
得られた中間体7(1.6g)を含むジクロロメタン(30ml)溶液を氷冷し、ここにクロロギ酸1‐クロロエチル(0.4ml)を滴下した。室温で2時間撹拌した後、原料の消失を確認してから、溶媒を流去した。ここにMeOH(30ml)を加えて1時間加熱還流した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、中間体8を0.9g(収率65%)得た。
【0143】
得られた中間体8(0.9g)とは別に調製した中間体9(0.3g)、ナトリウムブトキシド(0.2g)、Pd(dba)(0.02g)、及びPH(tBu)/BF(0.03g)を含むトルエン(10ml)溶液を、オイルバス加熱条件下で4時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を水に注いだ。目的物を酢酸エチルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、目的物であるA-3を0.91g(収率75%)得た。また、FAB-MS測定によって、目的物の分子量が892であることを確認した。得られた化合物は、追加に昇華精製を実施し、評価資料とした。また、素子の発光スペクトル測定から、化合物A-3の半値幅は58nmと推定した。
【0144】
1.多環化合物を含む有機電界発光素子の製作及び評価
(有機電界発光素子の製作)
多環化合物を発光層に含む一実施例の有機電界発光素子を下記方法で製造した。上述した化合物A-1、化合物A-2、及び化合物A-3の多環化合物を発光層材料として使用し、実施例1~実施例3の有機電界発光素子を製作した。また、比較例化合物X-1~化合物X-5を発光層材料として使用し、比較例1~比較例5の有機電界発光素子を製作した。下記では、実施例1~実施例3、及び比較例1~比較例5において、発光層に使用された化合物を示した。
[実施例化合物]
【化23】

[比較例化合物]
【化24】
【0145】
実施例及び比較例の有機電界発光素子は、以下の方法で作製した。
【0146】
ガラス基板の上に150nmの厚さでITOをパターニングした後、超純水で洗浄し、UVオゾン処理を10分間実施した。次に、10nmの厚さでHAT-CNを蒸着し、α-NPDを厚さ80nmで蒸着し、mCPを5nmの厚さで蒸着して、正孔輸送領域を形成した。
【0147】
次に、発光層を形成する際、一実施形態に係る多環化合物(化合物A-1~化合物A-3)または比較例化合物X-1~比較例化合物X-5とDPEPOとを6:94の割合で共蒸着し、厚さ20nmの層を形成した。次に、DPEPOを利用して10nm厚さの層を形成した。つまり、共蒸着して形成された発光層は、実施例1~実施例3では、それぞれ化合物A-1、A-2、及びA-3をDPEPOと混合して蒸着し、比較例1~比較例5では、比較例化合物X-1、X-2、X-3、X-4、及びX-5をDPEPOと混合して蒸着した。
【0148】
発光層の上にTPBiで厚さ30nmの層を形成し、LiFで厚さ0.5nmの層を形成して、電子輸送領域を形成した。次に、アルミニウム(Al)で厚さ100nmの第2電極を形成した。
【0149】
実施例において、正孔輸送領域、発光層、電子輸送領域、及び第2電極は、真空蒸着装置を利用して形成した。
【0150】
(有機電界発光素子の特性評価)
実施例及び比較例による有機電界発光素子の特性を評価するために、最大発光波長(nm)及び外部量子効率(%)を測定した。浜松ホトニクス社製C9920-11輝度配向特性測定装置を利用して測定した。尚、素子寿命については、比較例1の有機電界発光素子の素子寿命を100%として、実施例1~3及び比較例2~4の有機電界発光素子の素子寿命を相対的に示した。
【表1】
【0151】
表1を参照すると、一実施形態に係る多環化合物を発光層のドーパント物質として使用した実施例1~実施例3の有機電界発光素子は、比較例1~比較例5に比べRISC速度定数kRISCが大きいことが分かる。また、一実施形態に係る多環化合物を発光層のドーパント物質として使用した実施例1~実施例3の有機電界発光素子は、比較例1~比較例5に比べ素子寿命が向上されたことが分かる。
【0152】
実施例に用いた多環化合物は30nm~100nmの半値幅、具体的には、50nm~70nmの半値幅を有し、分子内でHOMO-LUMOの電荷が分離された構造を取ることでRISC速度が向上され、素子の寿命を向上させることができるため、高効率の熱活性遅延蛍光材料として使用され得ることが分かる。
【0153】
一実施形態に係る有機電界発光素子は、上述した一実施形態に係る多環化合物を発光層に含むことにより、比較例に比べて半値幅が向上され、RISC速度定数kRISCが上がることで、素子の長寿命化が可能になる。
【0154】
実施例に比べ、比較例化合物X-1及びX-2は、電子供与部に電子受容部が結合された構造を有さない。よって、比較例1及び2の有機電界発光素子は、実施例に比べ半値幅が小さく、RISC速度定数kRISCが小さく、素子の寿命が相対的に低くなっている。
【0155】
比較例3に使用された比較例化合物X-3は、ピリジニル基を電子受容部として含んでいるが、比較例3の有機電界発光素子は、実施例に比べ低い外部量子効率を示している。これは、比較例化合物X-3がO-B-Oを含む電子供与部を含むことにより多重共鳴効果が発生し、分子内で電子の偏在化がうまく行われていないと判断される。
【0156】
比較例4に使用された比較例化合物X-4は、N-Bを含む3つの環が縮合されている形態を有するため、比較例4の有機電界発光素子は実施例に比べ小さい半値幅を有し、RISC速度定数kRISCが小さく、素子の寿命が相対的に低く示されている。
【0157】
また、比較例5の有機電界発光素子は、実施例に比べ小さい半値幅を有し、RISC速度定数kRISCが小さく、素子の寿命が相対的に低く示されている。これは、比較例5に使用された比較例化合物X-5が環状アルキル基を置換基として含むことで、分子内で電子の偏在化がうまく行われていないと判断される。
【0158】
これまで本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、該当技術分野における熟練した当業者または該当技術分野における通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更し得ることを理解できるはずである。
【0159】
よって、本発明の技術的範囲は明細書の詳細な説明に記載されている内容に限らず、特許請求の範囲によって決められるべきである。
【符号の説明】
【0160】
10:有機電界発光素子 EL1:第1電極
EL2:第2電極 HTR:正孔輸送領域
EML:発光層 ETR:電子輸送領域
図1
図2
図3