(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】電気制御車両
(51)【国際特許分類】
A61H 3/04 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
A61H3/04
(21)【出願番号】P 2019235274
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩明
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/188726(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0236208(US,A1)
【文献】特開2016-137135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/04
B62B 1/00-5/08
A61G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた車輪に制動力を付与するブレーキと、
前記車体の傾斜角度を取得する傾斜角度取得部と、
前記傾斜角度と前記制動力との相関関係を記憶した記憶部と、
前記相関関係と取得した前記傾斜角度とに基づいて前記ブレーキに付与する前記制動力を電気的に制御するブレーキ制御部と、
を備え、
前記ブレーキ制御部は、
前記車体が下り傾斜を進行中に前記傾斜角度取得部が取得した傾斜角度が一定である場合、前記相関関係に基づいて前記取得した傾斜角度に対応する前記制動力を求め、
前記車体が下り傾斜を進行中に前記傾斜角度取得部が取得する傾斜角度が減少した場合、単位時間当たりの制動力の減少量を
前記相関関係に基づいて求められる
前記取得した傾斜角度に対応する単位時間当たりの前記制動力の減少量よりも減少させる、電気制御車両。
【請求項2】
前記傾斜角度取得部が取得した傾斜角度を記憶する傾斜角度記憶部を備え、
前記ブレーキ制御部は、前記傾斜角度記憶部が記憶している傾斜角度の変化履歴に基づいて傾斜角度が減少したと決定する、請求項1に記載の電気制御車両。
【請求項3】
前記ブレーキ制御部は、
前記車体が下り傾斜を進行中に前記取得した傾斜角度が増加した場合、単位時間当たりの制動力の
増加量を
前記相関関係に基づいて求められる
前記取得した傾斜角度に対応する単位時間当たりの前記制動力の
増加量よりも
減少させ、
前記ブレーキ制御部は、傾斜角度が減少するときの単位時間当たりの前記制動力の変化量の絶対値が、傾斜角度が増加するときの単位時間当たりの前記制動力の変化量の絶対値よりも大きくなるように前記ブレーキを作動させる、請求項1又は2に記載の電気制御車両。
【請求項4】
車体に設けられた車輪に制動力を付与するブレーキと、
前記ブレーキに付与する前記制動力を電気的に制御するブレーキ制御部と、
前記車体のピッチ角度を検出するピッチ角センサとを備え、
前記ブレーキ制御部は、前記ピッチ角センサの検出値に対して時定数の異なる2つの遅延フィルタを適用し得られた2つの値のうち小さい方の値に基づいて前記制動力を決定する、電気制御車両。
【請求項5】
前記車体の旋回を検知する旋回検知部を備え、
前記ブレーキ制御部は、前記ピッチ角センサの検出値及び前記旋回検知部の検知結果に基づき車体の下り傾斜に向けた旋回を検知した場合に前記小さい方の値に基づいて決定された制動力よりも強い制動力を発生させる、請求項4に記載の電気制御車両。
【請求項6】
前記車体の旋回を検知する旋回検知部を備え、
前記ブレーキ制御部は、前記ピッチ角センサの検出値及び前記旋回検知部の検知結果に基づき車体の下り傾斜に向けた旋回を検知した場合に予め定められた時間だけ前記小さい方の値に基づいて決定された制動力を作用させるタイミングを早める、請求項4に記載の電気制御車両。
【請求項7】
車体のロール角度を検出するロール角センサを備え、
前記ブレーキ制御部は、前記ロール角センサの検出値が前記ピッチ角センサの検出値よりも所定量以上大きい場合、前記決定された制動力に関わらず前記決定された制動力を作用させない、請求項4に記載の電気制御車両。
【請求項8】
前記ブレーキ制御部は、下り傾斜を進行中に前記車体に進行方向後方へ力が加えられた場合、前記制動力を弱める、請求項4に記載の電気制御車両。
【請求項9】
車体に設けられた車輪に制動力を付与するブレーキと、
前記車体のピッチ角度を検出するピッチ角センサと、
前記ピッチ角度と前記制動力との相関関係を記憶した記憶部と、
前記ブレーキに付与する前記制動力を電気的に制御するブレーキ制御部と、
を備え、
前記ブレーキ制御部は、前記相関関係に基づいて求めた前記ピッチ角センサの検出結果に対応する制動力の値に対して時定数の異なる2つの遅延フィルタを適用して得られた値のうち大きい方の値を制動力に決定する、電気制御車両。
【請求項10】
車体に設けられた車輪に制動力を付与するブレーキと、
前記車体の傾斜角度を取得する傾斜角度取得部と、
前記傾斜角度と前記制動力との相関関係を記憶した記憶部と、
前記相関関係と取得した前記傾斜角度とに基づいて前記ブレーキに付与する前記制動力を電気的に制御するブレーキ制御部と、
を備え、
前記ブレーキ制御部は、
前記車体が下り傾斜を進行中に前記傾斜角度取得部が取得する傾斜角度が一定である場合、前記相関関係に基づいて前記取得した傾斜角度に対応する前記制動力を求め、
前記車体が下り傾斜を進行中に前記傾斜角度取得部が取得する傾斜角度が減少した場合、単位時間当たりの制動力の減少量を
前記相関関係に基づいて求められる
前記取得した傾斜角度に対応する単位時間当たりの前記制動力の減少量よりも減少させ、且つ進行方向後方へ力が加えられた場合、前記制動力を弱める、電気制御車両。
【請求項11】
車体に設けられた車輪に制動力を付与し、かつ前記車輪にアシスト力を付与する電動機と、
前記車体の傾斜角度を取得する傾斜角度取得部と、
前記傾斜角度と前記制動力との相関関係を記憶した記憶部と、
前記相関関係と取得した前記傾斜角度とに基づいて前記電動機に付与する前記制動力を電気的に制御し、前記車体が下り傾斜を進行中に前記傾斜角度取得部が取得した傾斜角度が一定である場合、前記相関関係に基づいて前記取得した傾斜角度に対応する前記制動力を求め、前記車体が下り傾斜を進行中に前記傾斜角度取得部が取得する傾斜角度が減少した場合に単位時間当たりの制動力の減少量を
前記相関関係に基づいて求められる
前記取得した傾斜角度に対応する単位時間当たりの前記制動力の減少量よりも減少させるブレーキ制御部と、
前記車体が上り傾斜を進行中に前記傾斜角度取得部の検出値に対して時定数の異なる2つの遅延フィルタを適用して得られた値のうち小さい方の値に基づいて決定したアシスト力で前記電動機を駆動させるアシスト制御部とを備える、電気制御車両。
【請求項12】
前記ブレーキ制御部は、低速領域及び高速領域で前記電動機を逆転させて制動力を発生させ、中速領域では前記電動機の回生ブレーキによる制動力を発生させることで前記電気制御車両のバッテリを充電する、請求項11に記載の電気制御車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気制御車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老人や脚力の弱い人の歩行を補助するために、電気制御車両が知られている。電気制御車両は、歩行時に歩行者(使用者)と一体となって使用される。一部の電気制御車両は、モータのトルクブレーキを利用して下り傾斜を走行するときに車体と使用者が離れすぎないようにしている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、モータのトルクブレーキによる制動力は、下り傾斜の角度に対応付けて決定されている。従って、例えば下り傾斜角度が急激に減少した場合のように傾斜角度が急激に変化すると、制動力も急激に変化してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、車体に設けられた車輪に制動力を付与するブレーキと、ブレーキに付与する制動力を電気的に制御するブレーキ制御部と、車体の傾斜角度を取得する傾斜角度取得部とを備え、ブレーキ制御部は、車体が下り傾斜を進行中に傾斜角度取得部が取得する傾斜角度が減少した場合に単位時間当たりの制動力の減少量を減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施の形態による歩行車の斜視図である。
【
図4】使用者が歩行車を押しながら下り坂を歩く様子を模式的に示す図である。
【
図6】下り傾斜を走行するときのピッチ角度θの経時的な変化を示すグラフである。
【
図7】下り傾斜を走行するときのピッチ角度θの経時的な変化を示すグラフである。
【
図8】下り傾斜を走行するときのピッチ角度θの経時的な変化を示すグラフである。
【
図9】使用者が歩行車を押しながら下り斜面に向けて旋回する様子を模式的に示す。
【
図10】ピッチ角度θの経時的な変化を示すグラフである。
【
図11】傾斜面を横切るように使用者が歩行車を押しながら歩く様子を模式的に示す。
【
図12】更なる実施形態による歩行車の制御系統のブロック図である。
【
図13】使用者が歩行車を押しながら上り坂を歩く様子を模式的に示す図である。
【
図15】上り傾斜を走行するときのピッチ角度θの経時的な変化を示すグラフである。
【
図16】ピッチ角度θの経時的な変化を示すグラフである。
【
図17】ピッチ角度θの経時的な変化を示すグラフである。
【
図18】回生ブレーキを駆動したときモータの回転速度と制動力の関係を示すグラフである。
【
図19】回生ブレーキと逆転ブレーキを組み合わせたときのモータの回転速度と制動力の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態による電気制御車両ついて説明する。以下の説明では、同一の構成には同一の符号を付し、それらについての繰り返しの説明は省略する。以下の実施形態では電気制御車両として、例えば高齢者の歩行を補助する歩行車を例示する。しかしながら電気制御車両としては、少なくとも電力によりブレーキを制御するあらゆる車両を採用できる。電気制御車両は、使用者が押す等して車両に入力された力を主原動力として車輪を回転させ駆動する。このような電気制御車両の一例としては歩行車の他に車椅子、ベビーカー、荷を搬送するための台車などがある。
【0008】
以下の説明を明確化するために、まずは以下の説明で用いられる用語の意味を説明する。本明細書においてブレーキとは、機械的ブレーキ及び電気的ブレーキを含む。機械的ブレーキは、車輪又は車軸に対して使用者の意図的操作によりブレーキシュー等の摩擦要素を接触させて車輪の回転数を低下させる。電気的ブレーキは、使用者の意図的操作によらず電気的な制御により車輪の回転で生じる運動エネルギーを回収して車輪の回転数を低下させる。また電気的ブレーキは、モータを通常の駆動方向とは逆方向に回転駆動させて車輪の回転数を低下させるブレーキも含む。また本明細書において電気制御車両とは、少なくとも電気的ブレーキを備える車両を意味する。したがって、車両全体において電気で制御される要素が電気的ブレーキのみであっても電気制御車両に含まれる。また本明細書において方向を示す用語として、前方向及び後方向を用いることがある。前方向とは、車両の通常の使用状態において車両を前進させる方向を意味し、後方向とは車両の通常の使用状態において車両を前進させる方向を意味する。また本明細書において車体の姿勢を示す用語として「ピッチ角度」、「ロール角度」、及び「ヨー角度」を用いることがある。ピッチ角度とは、車幅方向に延びる軸(ピッチ軸)周りにおける角度を意味する。ロール角度とは、車体の前後方向に延びる軸(ロール軸)周りにおける角度を意味する。ヨー角度とは、車体の上下方向に延びる軸(ヨー軸)周りにおける角度を意味する。また、ピッチング、ローリング、及びヨーイングとは、それぞれの対応する軸周りにおける回転運動を意味する。また路面の傾斜角度とは、車体の走行面の傾斜角度を意味する。路面の傾斜角度は、実質的には車体の傾斜角度と同一であると推定され、ピッチ軸若しくはロール軸周りの角度、又はピッチ軸及びロール軸周りの角度の組み合わせによって示される。
【0009】
図1は、本発明の一実施の形態による歩行車の斜視図である。
図2は、
図1の歩行車100の側面図である。
図1及び
図2に示すように、歩行車100は、車体を構成する本体フレーム11と、本体フレーム11に設けられた一対の前輪12及び一対の後輪13と、本体フレーム11に設けられた支持パッド(身体支持部)14とを備えている。歩行車100は、老人や脚力の弱い人の歩行を補助する。使用者は、歩行車100の使用時に支持パッド14に前腕や肘を載せて、支持パッド14に体重(荷重)をかけた状態で、ハンドルバー15とブレーキレバー16とをつかみながらハンドルバー15を押して使用者が歩行車100に力を付与し歩行動作を行う。従ってハンドルバー15が使用者からの力を受ける受け部となり、歩行車100は受け部で受けた力で移動する。
【0010】
本体フレーム11は、歩行車100の設置面に垂直な方向から所定の角度だけ傾斜する一対の支持フレーム21を備えている。支持フレーム21は、一例としてパイプ状部材により構成される。支持フレーム21の下端側には、一対の下段フレーム51が水平に配設されている。下段フレーム51の前端側には、一対の前輪12が取り付けられている。下段フレーム51の後端側には、一対のリンク機構55が設けられている。
【0011】
一対の下段フレーム51の上方には、一対の上段フレーム54が設けられている。上段フレーム54の後端側には、一対の後輪フレーム57の一端側が軸56を介して回動可能に結合されている。後輪フレーム57の他端側には、一対の後輪13がそれぞれ設けられている。
【0012】
一対の支持フレーム21の上端部には、それぞれ一対のハンドル24が設けられている。一対のハンドル24は、歩行車100の設置面に対して概ね水平に設けられる。一対のハンドル24は、一例としてパイプ状部材により構成される。一対のハンドル24には、着座時に使用者が姿勢を安定させるためにつかまるグリップ部23(
図2参照)がそれぞれ設けられている。また、一対のハンドル24の前方側には、ハンドル24と一体なパイプ状のハンドルバー15が形成されている。ハンドルバー15の一端は一対のハンドル24のうちの一方のハンドル24に結合され、ハンドルバー15の他端は他方のハンドル24に結合されている。なお、ハンドルバー15が、ハンドル24とは別部材により構成されてもよい。
【0013】
一対の後輪13の外周には、機械的に接触可能な一対のブレーキシュー25(
図1において省略、
図2参照)が設けられている。ブレーキシュー25は、本体フレーム11内に配設されたブレーキワイヤー(図示せず)の一端に接続される。ワイヤーの他端は、ハンドルバー15の両側に設けられた一対のブレーキユニット61のワイヤー接続機構に連結される。なお、ワイヤーは本体フレーム11内に格納されているが、ワイヤーを本体フレームの外側に配設して、外観上、使用者から見えるような構成にしてもよい。
【0014】
ハンドルバー15の前下方向には、ハンドルバー15に対向するようにブレーキレバー16が配置されている。ブレーキレバー16の両端部はそれぞれ、一対のブレーキユニット61に連結されている。ブレーキレバー16の両端部は、巻きばね等の付勢手段を介してブレーキユニット61に取り付けられている。使用者は、ブレーキレバー16を手前に(
図2の矢印R1の方向に)引くことで、ワイヤアクションにより、機械的なブレーキをかけることができる。すなわち、ブレーキレバー16の操作によりブレーキシュー25を制御できる。
【0015】
使用時には使用者は、ブレーキレバー16を手前側に(ハンドルバー15に近づける方向に)ブレーキ作動位置まで引く。ブレーキレバー16と連結されたワイヤーのアクションによって、ブレーキシュー25が移動してブレーキシュー25が後輪13の外周を押圧する。これによって、機械的なブレーキが行われる。使用者がブレーキレバー16から手を離すと、ブレーキレバー16は元の位置(通常位置)に戻る。これに伴って、ブレーキシュー25も後輪13から離れ機械的なブレーキが解除される。また、ブレーキレバー16は矢印R1の反対方向(下側)に降ろすことができるようになっている。ブレーキレバー16をパーキング位置まで降ろすことで、ワイヤアクションを介してブレーキシュー25で後輪13を押圧した状態を維持するパーキングブレーキがかけられる。
【0016】
一対のハンドル24の上方に、一対のハンドル24にまたがるようにして、上述した支持パッド14が搭載されている。支持パッド14は、使用者の身体の一部を支持する身体支持部の一形態である。本実施の形態では、使用者の前腕または肘またはこれらの両方を支持する使用形態を想定する。ただし、あご、手、または胸など、別の部位を支持する使用形態も可能である。
【0017】
ハンドル24と支持パッド14との間には、使用者により歩行車100が歩行に使用されているかを検出するための検出機構71(
図2参照)が設けられている。具体的には、検出機構71は、支持パッド14に使用者から荷重(体重)がかけられているか、又は使用者が支持パッド14に接触しているかを検出する。
【0018】
支持パッド14の形状は、一例として馬蹄状であるが、これに限定されず、他の任意の形状でもよい。支持パッド14は、一例として、スポンジまたはゴム製素材のようなクッション材を、木板または樹脂板などの板材の上に置き、樹脂性や布製の任意の被覆材で被覆したものとして構成される。ただし、この構成に限定されず、他の任意の構成でもよい。
【0019】
支持パッド14の下面の左右両側には、一対のアーム部材26の一端側が固定されている。アーム部材26の他端側は、一対のハンドルバー15の外側にそれぞれ回動可能に取り付けられている。使用者は、支持パッド14を上方に押し上げる(跳ね上げる)ことで、支持パッド14が
図2の矢印R2の方向に回動し、所定位置(退避位置)で固定される(
図2の仮想線参照)。シート部37上には、使用者の上半身を収容する空間が確保される。この状態で使用者は、一対のグリップ部23を両手でつかみながら支持パッド14を背中側にしてシート部37に着座できる。グリップ部23をつかむことで、使用者は、着座の際に自身の姿勢を安定させられる。このように、支持パッド14は、押し上げられる前の位置(通常位置)において歩行車のシート部37に使用者が着座することを阻害し、押し上げられた後の位置(退避位置)において、シート部37に使用者が着座することを許容する。
【0020】
ここでは、使用者が手動で支持パッド14を押し上げる構成を示したが、別の例として、図示しないロック機構を設け、ロック機構により固定を解除することで、自動的に支持パッド14が押し上げられる構成でもよい。または、アーム部材26を回動させる電動機構(モータ等)を設け、電動機構をスイッチ起動により作動させることで、支持パッド14を押し上げる構成でもよい。
【0021】
一対の上段フレーム54の間には、収容部27(
図2参照)が吊り下げられるように設けられている。収容部27は、上方が開口した袋形状を有し、内部に荷を収容できる。収容部27は、樹脂性でもよく、布製であってもよい。収容部27の蓋部として、上述した着座用のシート部37が設けられている。
【0022】
収容部27の後ろ側に、一対の上段フレーム54から下方向に延在したレバー28が設けられている。レバー28は、使用者がレバー28を脚で踏みつけることが可能な位置に配設されている。使用者がレバー28を下げることで一対の後輪フレーム57および一対の後輪13が、一対の前輪12に近づくようにリンク機構55が折り畳まれる。その結果、歩行車100を折畳める。
【0023】
図3は、制御系統のブロック図である。歩行車100は制御部101と、センサ群103と、電動機としてのモータ105と、バッテリ107とを備える。歩行車100は、センサ群103で検知された各種情報を制御部101に供給する。制御部101は、センサ群103から供給された情報を処理しモータ105を制御する。制御部101、モータ105、センサ群103、及びバッテリ107は、1つの筐体内に収容され、制御対象となる後輪13と一体的に設けられてもよい。この場合、一対の後輪13の各々に制御部101、モータ105、センサ群103、及びバッテリ107を収容した筐体を取り付けてもよい。また、センサ群103のうち後輪13の回転数を検出するセンサ及びモータを一対の後輪の各々に対応させて配置し、それ以外の制御部とバッテリを収容部27内に収容してもよい。また、一対の後輪13の各々に制御部101、バッテリ107、後輪13の回転数を検出するセンサ、及び傾斜角を検出するセンサを収容した筐体を取り付けてもよい。
【0024】
〔モータ〕
モータ105は、後輪13の車軸と接続されており制御部101による制御のもと後輪13の回転数を制御する。より具体的にはモータ105は、後輪13の回転数を抑制する電気式ブレーキとして機能する。モータ105は、後輪13の回転により生じた運動エネルギーにより回転する。モータ105が回転することで運動エネルギーが回収され後輪13の回転数が抑制され、モータ105が後輪13に対する制動力を発生させる。モータ105が回収した運動エネルギーはバッテリ107に蓄えられる。したがってモータ105は、回生ブレーキ又は発電ブレーキとして機能する。なお、バッテリ107が外部電源を用いて充電可能な場合には、モータ105によってバッテリ107を充電する必要はなく、電気式ブレーキとして渦電流ブレーキや電磁式リターダのような運動エネルギーを回収して消費するブレーキを用いてもよい。回生ブレーキとして用いられるモータ105としては、サーボモータ、ステッピングモータ、ACモータ、DCモータ等がある。
【0025】
〔バッテリ〕
バッテリ107は、制御部101に電気的に接続され制御部101が駆動するための電力を供給する。また、バッテリ107をセンサ群103の各センサと電気的に接続しセンサ群103を駆動するための電力を供給してもよい。バッテリ107としてはリチウムイオン電池のような二次電池又はキャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。バッテリ107は、外部電源を用いて充電可能なものであってもよいし、モータ105で回収した電気エネルギーのみによって充電されるものであってもよい。
【0026】
〔センサ群〕
センサ群103は、単数又は複数のセンサを備え各センサの検出結果を制御部101に送信する。センサ群103は、ピッチ軸、ロール軸、及びヨー軸周りの車両の角速度を検出する角速度センサ111と、ピッチ軸、ロール軸、及びヨー軸周りの車両の加速度を検出する加速度センサ113と、後輪13の回転数及び回転方向を検出する速度センサ115とを備える。角速度センサ111及び加速度センサ113として、これらを組み合わせた6軸慣性センサを用いてもよい。また、例えばヨー軸周りの角速度及び加速度を検出する必要がない場合には、少なくともピッチ軸及びロール軸周りの角速度及び加速度を検出可能な4軸慣性センサを用いてもよい。速度センサ115としてはホール素子を用いてもよいし、モータ105の逆起電力から速度を算出してもよい。また加速度センサの代わりに地磁気センサを用いてもよい。各センサの検出結果は、有線方式又は無線方式で信号として制御部101に送信される。
【0027】
また、センサ群103は車両のピッチ軸又はピッチ軸周りの水平面に対する傾斜角度を検出する傾斜センサを備えていてもよい。また、ロール角を検出する必要がない場合には、ピッチ軸周りの角速度及びロール軸方向の加速度を検出可能なセンサを用いてもよい。またピッチ角又はロール軸周りの回転を検出するためには加速度だけを検出できればよく、必ずしも角速度は必要ではない。また、水平面に対する傾斜角度又は傾斜の有無を検出するために加速度センサ113の検出値の履歴又は経時的な変化を用いてもよく、この場合には傾斜センサ117は不要である。また速度を検出するために加速度センサ113の検出値を積分してもよく、この場合には速度センサ115は不要である。また前後方向の加速度を検出する加速度センサ113を設けずに、速度センサ115の検出値を微分して前後方向の加速度を算出してもよい。このように速度、及び加速度の取得は、加速度センサ113、及び速度センサ115の何れか1つを用いれば実現可能である。
【0028】
〔制御部〕
制御部101は、モータ105を制御することにより制動力を制御するブレーキ制御部として機能する。制御部101は、MPU(Micro Processing Unit)のような各種演算処理を行うプロセッサ、情報及び命令を格納するメモリ、プロセッサによる演算の際に用いられる一時メモリのようなハードウェアにより構成される。制御部101はバッテリ107と電気的に接続され各ハードウェアを駆動するための電力はバッテリ107から供給される。制御部101は、各センサから得られた検出結果を利用してモータ105による制動力を制御する。具体的には制御部101は、各センサから得られた検出結果を利用して制動力の強さを演算し、制動力を発生させるために必要な抵抗値をモータ105に送信することで制動力を制御する。
【0029】
以下、制御部による具体的なモータ105の制御プロセスについて説明する。以下の説明において制御部101が主体的に行う動作は、プロセッサがメモリに格納された命令及び情報を参照し一時メモリ上で演算を実行することで実現される。
【0030】
〔下り傾斜における制御〕
図4は、使用者が歩行車100を押しながら下り坂を歩く様子を模式的に示す図である。制御部101は、走行面が平地から下り傾斜に変化するとき(
図4の領域A)、角度変化の無い下り傾斜を走行している間(
図4の領域B)、走行面が下り傾斜から平地に変化するとき(
図4の領域C)、走行面が下り傾斜から平地に変化してから一定期間(
図4の領域D)の各々の場面で制動力を変化させる。
【0031】
制御部101は、ピッチ角度θと制動力Fbとの相関関係を示すブレーキ情報を有している。ピッチ角度θの決定方法については後述する。ブレーキ情報は、特定のピッチ角度θに対しては特定の制動力Fbを付与すべきことを示す情報であり、予め作成されてメモリ内に格納されている。したがって制御部101は、ブレーキ情報を参照しピッチ角度θに対応する制動力Fbを読み出し、読み出した制動力Fbの値に基づいてモータ105を制御する。
【0032】
図5はブレーキ情報の一例を示すグラフである。
図5において縦軸は制動力Fbを示し、横軸はピッチ角度θを示す。なおピッチ角度θは、水平面(0度)に対する角度を示す。また、上述したように車体のピッチ角度θは実質的に走行している路面の傾斜角度に相当すると推定されるため、ここではピッチ角度θは実質的に路面の傾斜角度を示していると考えてもよい。従って、ピッチ角度θが小さくなるほど急な下り坂を走行していることを意味する。
【0033】
図5に示すように、ピッチ角度θが値0以下、θ1以上の場合、制御部101は制動力Fbを発生させない。微小な傾斜は路面の凹凸であることが考えられ、微小な凹凸が発生する度に制動力Fbを作用させないためである。ピッチ角度θが値θ1度未満、値θ2度以上の場合、制御部101はピッチ角度θが減少するにつれて制動力Fbを強くする。ピッチ角度θが値θ2未満の場合、制動力Fbは一定の値(最大値)となる。制動力Fbに最大値を設けることで、後輪13のロックを防止する。これにより、後輪13が滑ったり、後輪13が停止して下り坂を下りられなくなったりするのを防げる。なお、
図5の例ではピッチ角度が0以下、θ1以上の場合、制動力Fbを発生させないこととするが必要に応じて弱い制動力Fbを発生させてもよい。
【0034】
図6は、歩行車が下り傾斜を走行するときのピッチ角度θの経時的な変化を示すグラフである。より具体的には
図6は、歩行車100が
図4に示すような下り傾斜を走行している間のピッチ角度θの実測値の経時的な変化を示す。ピッチ角度θの実測値は、傾斜センサから得られる実測値であっても良いし、加速度センサ113の検出結果から算出される算出値であってもよい。
図6に示すように時刻t1において走行路面が平地から下り傾斜に変化すると、ピッチ角度θの実測値が減少し始める。時刻t2~時刻t3にかけて歩行車100が角度変化の無い傾斜を走行している間は、ピッチ角度θの実測値は一定である。時刻t4において走行路面が下り傾斜から平地に変化すると、ピッチ角度θの実測値が増加し始める。時刻t4以降、歩行車100が平地を走行している間はピッチ角度θの実測値は一定である。仮に、ここでピッチ角度θの変化にあわせてそのままブレーキ情報を適用すると、時刻t1、時刻t3において制動力Fbの急激な変化が発生する。また、時刻t4において走行路面が下り傾斜から平地に変化したときに制動力Fbが突然解除(Fb=0)されてしまう。制動力Fbが突然解除されると、歩行車100が急加速することが考えられる。これらを防止するために、制御部101は、制動力Fbを決定するときにピッチ角度θの実測値ではなく、ピッチ角度θの補正値を用いる。
【0035】
制御部101は、時定数の異なる2種類の遅延フィルタをピッチ角度θの実測値に適用し、2つの補正値を算出する。制御部101は、算出された2つの補正値のうち小さい方の値をピッチ角度θの補正値とする。次いで制御部101は、ブレーキ情報を参照しピッチ角度θの補正値に対応する制動力Fbの値を読み出す。読み出された値は、モータ105に送信される制動力Fbとなる。遅延フィルタとしては、例えば移動平均又は平滑化平均を用いたローパスフィルタを用いることができる。指数化平均を用いたローパスフィルタの一例を以下の数式1及び数式2に示す。
【数1】
【数2】
ここで、値θ
slow-1は1つ前のθslowの算出値を示し、値θ
fast-1は1つ前のθ
fastの算出値を示す。また、数式1及び数式2においては時定数α<時定数βである。時定数αは、実質的に走行路面の傾斜角度が減少したときの反応速度を表す。時定数βは、実質的に走行路面の傾斜角度が増加したときの速度の回復速度を表す。
【0036】
図7及び
図8は、ピッチ角度θの経時的な変化を示すグラフである。より具体的には
図7は、
図6に上記数式1及び数式2で算出された値θ
slow及び値θ
fastを加えたグラフである。
図7に示すように、ローパスフィルタを適用したピッチ角度θ
slow及びピッチ角度θ
fastは、ピッチ角度の実測値θに対して遅延している。ピッチ角度θ
slowの遅延量は、ピッチ角度θ
fastの遅延量よりも大きい。制御部101は、数式1及び数式2によって得られたピッチ角度θ
slow及びピッチ角度θ
fastのうち各時刻において値が小さい方のピッチ角度θ
minを、ピッチ角度θの補正値とする。ピッチ角度θの補正値は、制御部101がブレーキ情報を参照するときに使用するピッチ角度θの値である。従って制御部101は、ピッチ角度θの補正値に対応する制動力Fbをブレーキ情報から読み出し、読み出した制動力Fbをモータに送信する。なお、算出されたピッチ角度θ
fast及びピッチ角度θ
slowはメモリに格納され変化履歴として管理される。格納された値は、次回のピッチ角度θ
fast+1及びピッチ角度θ
slow+1を算出するときに使用される。
【0037】
図8は、
図6に上記ピッチ角度θの補正値を加えたグラフである。
図8に示すように、時刻t1から時刻t3の間では、ピッチ角度θ
fastの値がピッチ角度θの補正値とされる。時刻t3以降はピッチ角度θ
slowの値がピッチ角度θの補正値とされる。換言すれば、走行路面が平地から下り傾斜に変化するときは時定数が小さいピッチ角度θ
fastの値がピッチ角度θの補正値として使用される。これにより、制動力Fbを急激に強めたい場面では遅延が少ないピッチ角度θの値を使用できる。また、走行路面が下り傾斜から平地に変化するときは時定数が大きいピッチ角度θ
slowの値がピッチ角度θの補正値として使用される。これにより、制動力Fbをゆっくり弱められる。
【0038】
時刻t3以降のピッチ角度θの補正値に着目すると、ピッチ角度θの補正値の増加量が変曲点以降、緩やかになっている(傾きが減少している)ことが分かる。
図5に示すブレーキ情報を参照すると、ピッチ角度θの補正値の増加量が緩やかになることは、制動力Fbの減少量を経時的に減少させることを意味する。従って、ピッチ角度θの補正値を用いることにより、単位時間当たりの制動力Fbの減少量を減少させられる。これにより、領域Cの後半から領域Dの間では制動力Fbはすぐに解除されず(Fb=0にはならず)、徐々に減少する。これにより時刻t3以降、特に時刻t4における歩行車100の急加速を防止できる。
【0039】
また、領域Aにおけるピッチ角度θの補正値、及び領域Cから領域Dにかけてのピッチ角度の補正値に着目すると、後者の方が変化量の絶対値が大きいことが分かる。ここでいう変化量の絶対値とは、ピッチ角度θの実測値に対する遅延量(横軸に沿ってずれる量)を意味する。このような遅延量の大小関係により、走行路面の傾斜角度が減少して歩行車10を減速させるために制動力Fbが必要となる場面では、急速に制動力Fbを大きくできる。また走行路面の傾斜角度が増加して歩行車100を減速させる必要がなくなった場面では、徐々に制動力Fbを弱くできる。制御部101は、時定数の異なる2種類のローパスフィルタを用い連続的な制御により、走行路面の傾斜角度に対応させた適切な制動力Fbを提供し、かつ制動力Fbを変化させられる。
【0040】
また2つのローパスフィルタを用いることにより、制動力Fbを制御する間、走行路面の傾斜角度の変化履歴を参照し続ける必要がない。換言すれば、制御部101において走行路面の傾斜角度が増加しているのか、又は減少しているのかということを検出し判断する必要がない。これは、2つのローパスフィルタを用いることで、ピッチ角度θの変化量の絶対値が実質的に走行路面の状況を反映しているからである。領域Aに関連して上述したように、走行路面の傾斜角度が減少している場合、ピッチ角度θの変化量の絶対値が相対的に小さくなる。また領域C及び領域Dに関連して上述したように、走行路面の傾斜角度が増加している場合、ピッチ角度θの変化量の絶対値が相対的に大きくなる。したがって、制御部101は、走行路面の傾斜角度の増減を検出し判断することなく走行路面の傾斜角度に対応させた適切な制動力Fbを算出できる。また、ピッチ角度θの補正値は連続した値をとるため制動力Fbの急激な増加及び低下を抑制できる。
【0041】
上述したように遅延フィルタは、必ずしも指数化平均を用いたローパスフィルタでなくてもよく他のフィルタを用いてもよい。この場合、遅延フィルタは異なる2種類の時定数として、異なる2種類の遅延量を有する。
【0042】
また上述したローパスフィルタは、ピッチ角度θの補正値を算出するものであるが、制動力Fbを補正する遅延フィルタを用いてもよい。この場合、制御部101は、ピッチ角度θの実測値からブレーキ情報に基づいて制動力Fbを決定する。制御部101は決定した制動力Fbに対して時定数の異なる2つの遅延フィルタを適用する。制御部101は、遅延フィルタを適用することで得られた2つの制動力Fbの補正値の小さい方を制動力Fbとしてモータに送信する。このような方法によっても、ピッチ角度θを補正するのと同様の効果を得られる。
【0043】
〔傾斜面における急旋回時の制御〕
使用者が歩行車100を押しながら下り傾斜に向けて旋回した場合の制御を説明する。なお、以下の説明では、下り傾斜に向けて旋回した場合の制御を、ピッチ角度θを補正するローパスフィルタを用いた歩行車100に適用した例を説明する。以下の制御は制動力Fbを補正するローパスフィルタを用いた歩行車10についても適用可能である。
【0044】
図9は、使用者が歩行車を押しながら下り斜面に向けて旋回する様子を模式的に示す。より具体的には
図9は使用者が斜面の途中で下り斜面に向けて旋回する様子を示す。歩行車100が下り斜面に向けて旋回した場合、
図5に関連して説明したようにピッチ角度θの補正値がθ1度未満になったときに下り傾斜を進行中であるものとして制動力Fbを発生させる。ピッチ角度θの補正値は遅延を含む連続値である。従って、下り傾斜に向けて旋回する直前の走行路面の状況によっては、下り傾斜に向けて旋回したときのピッチ角度θの補正値が、正の値を示している場合が想定される。ピッチ角度θの補正値が正の値を示している場合としては、走行路面の凹凸が大きい場合、及び斜面を登っているときに例えば180°旋回して斜面を下り始める場合がある。ピッチ角度θの補正値が0より大きい正の値を示している状態からθ1度未満になるまでにかかる時間は、ピッチ角度θが0を示している状態からθ1度未満になるまでにかかる時間よりも長くなる。これは制動力Fbが発生するまでの時間が遅れることを意味する。
【0045】
制動力Fbの発生の遅れを抑制するために、制御部101は斜面の途中で下り斜面に向けて旋回されたと判断された場合に上述したローパスフィルタを用いた制動力Fbの制御に関わらず制動力Fbの大きさ又は制動力Fbを適用するタイミングを補正する。制御部101は、歩行車100が旋回し、かつ旋回した先の走行路面が下り傾斜である場合に、斜面の途中で下り斜面に向けて旋回されたと判断する。歩行車100が旋回したか否かの判断は、制御部101が各後輪13の速度センサ115の検出値を参照し、一方の後輪13の速度が他方の後輪13の速度よりも所定以上速いか否かを判断して実行される。従って、制御部101及び各後輪13に設けられた2つの速度センサが旋回検知部に相当する。また、歩行車100がヨー角センサを備えている場合には、制御部101がヨー角センサの検出値に基づいて旋回の有無を判断してもよい。この場合、制御部101及びヨー角センサが旋回検知部に相当する。旋回の有無の判断の精度を上げるためにロール角度の変化履歴を参照してもよい。旋回した先の走行路面が下り傾斜であるか否かの判断は、ピッチ角度θfastとピッチ角度θslowとを比較することに基づく。ピッチ角度θfastがピッチ角度θslowよりも小さい場合、旋回した先の走行路面が下り傾斜であると判断される。
【0046】
制御部101が、斜面の途中で下り斜面に向けて旋回されたと判断した場合、制御部101は制動力Fbを強めるか、制動力Fbを適用するタイミングを早めるか、その両方を同時に行う。制動力Fbを強める場合、制御部101は予め決定された制動力Fbの補正値をモータ105に送信する。制動力Fbの補正値は例えば制動力Fbの最大値(
図5参照)のように、旋回した瞬間にローパスフィルタを適用することで得られるであろう制動力Fbの算出値よりも大きい値とされる。制動力Fbを適用するタイミングを早める場合、制御部101は予め決定された時間だけ制動力Fbを適用するタイミングを早めローパスフィルタを適用したことによる遅延を打ち消す。この場合、制御部101はピッチ角度θ
fastが値θ1を下回っているか否かに関わらず制動力Fbを作用させる。また、下り傾斜に旋回するときに使用されるピッチ角度θの補正値は実質的に時定数が小さいピッチ角度θ
fastの値となる。従って、数式2の値βよりもさらに小さい時定数のローパスフィルタを使用することも考えられる。
【0047】
また別の態様として、ピッチ角度θの補正値θ
revを算出し、補正値θ
revに基づいてブレーキ情報を参照して制動力Fbを決定してもよい。
図10は、ピッチ角度θの経時的な変化を示すグラフである。
図10に示すように、ピッチ角度θの補正値θ
revは、ピッチ角度θの実測値に対して遅延し、ピッチ角度θの最小値θ
minとして扱われるピッチ角度θfastよりも遅延量が少ない値とされる。このような補正値θ
revに基づいてブレーキ情報を参照して制動力Fbを読み出すことで、遅延量を減らせる。従って、より速いタイミングでより強い制動力Fbを得られる。これにより歩行車100が斜面の途中で下り斜面に向けて旋回したときに適切な制動力Fbを得られる。
【0048】
〔後退時の制動力解除〕
下り傾斜を走行しており制動力Fbが強められている間に、歩行車100を後退させたい場合がある。制動力Fbが強められていると後輪の順回転に対してのみならず逆回転に対しても抵抗となるため、歩行車100を後退させるときの抵抗となる。制御部101は、このような場合に制動力Fbを弱め、後退し易くする。制動力Fbを弱める制御は、他の制御に基づいて算出された制動力Fbを適用することに優先して実行される。
【0049】
制御部101は、制動力Fbが強められている状態で歩行車100が使用者によって引っ張られたとき、ブレーキ情報に基づく制動力Fbの値に関わらず制動力Fbを弱める。このとき制動力Fbを値0にするのが好ましい。具体的には制御部101は、加速度センサ113の検出値に基づいて進行方向とは逆向きの力が加えられたと判断したとき、又は速度センサ115の検出値に基づいて後進したと判断したとき歩行車100が使用者によって引っ張られたと判断する。その後制御部101は、モータに対して制動力Fbを弱める信号を送信する。
【0050】
〔後退時の制動力増加〕
上述の制動力を解除する制御とは別に、水平な走行面又は上り傾斜を走行している間に使用者が歩行車を引っ張ったときに、制動力を強めてもよい。この場合、電気的ブレーキを作動させてもよいし、構造上可能であれば制御部101によりブレーキシュー等の摩擦要素を作動させて後輪13に押し当て制動力を強めてもよい。具体的には制御部101は、水平な走行面を走行中に使用者が歩行車を引っ張ったときに制動力Fbを強める。制御部101は、加速度センサ113の検出値を参照し進行方向とは逆向きの力が加えられたと判断したとき、又は速度センサ115の検出値に基づいて後進したと判断したときに歩行車が使用者によって引っ張られたか、重力により上り傾斜を後進したと判断する。このとき作用させる制動力Fbは、予め決定された値であり走行している路面の傾斜に応じて制動力Fbを変えることが好ましい。水平な走行面を走行している場合には、旋回動作等の使用者の意図的な操作を妨げないように制動力Fbを
図5に示す制動力の最大値よりも小さい値とするのがよい。上り傾斜を走行している場合には、歩行車100の更なる後進を抑制するために、
図5に示す制動力Fbの最大値よりも更に大きい値とするのがよい。
【0051】
制御部101は、歩行車100が再び使用者によって進行方向に向けて押されるまで制動力Fbを保持させてもよい。このように制動力Fbを保持することにより、例えば使用者が着座している状態から立ち上がるときに歩行車100を補助として使用できる。また、制御部101は、制動力Fbを作用させて歩行車100が停止したときすぐに制動力Fbを解除させてもよい。歩行車100が停止したか否かは加速度センサ113の検出値を参照して判断される。このように制動力Fbをすぐに解除することにより、例えば歩行車100が停止している状態から歩行車100を旋回させる操作が容易になる。
【0052】
水平な走行面又は上り傾斜を走行している間に使用者が歩行車100を引っ張ったときに制動力Fbを作用させることで、安全性を高められる。具体的には水平な走行面を走行中に制動力Fbを作用させることで、惰性により歩行車100が前進するのを抑制できる。また上り傾斜を走行中に制動力Fbを強めることで、歩行車100が後退するのを抑制できる。
【0053】
〔片傾斜走行〕
図11は、傾斜面を横切るように使用者が歩行車を押しながら歩く様子を模式的に示す。傾斜面を横切るとは傾斜に従わずに走行している状態をいい、傾斜面を走行中にロール角センサが0°以外の値を検出している状態をいう。傾斜面を横切りながら歩行車100を走行させる場合、傾斜面の影響により歩行車100が特に下り傾斜方向に向けて蛇行し易くなる。この状態で、上述したローパスフィルタを適用した下り傾斜における制御を実行すると、蛇行する度に制動力Fbが強められることがある。したがって制御部101は、傾斜面を横切って走行している場合、ロール角度がピッチ角度よりも所定量以上大きい場合には、ローパスフィルタを適用して得られた制動力Fbの値に関わらず、制動力Fbを作用させない。ロール角度がピッチ角度よりも所定量以上大きい場合とは、ロール角センサによって検出されたロール角度の絶対値と、ピッチ角センサによって検出されたピッチ角度の絶対値とを比較した結果、ロール角度の絶対値が所定量以上大きい場合をいう。「所定量」とは、任意に設定される値であり、例えば2倍、3倍等の倍数を用いても良いし、任意で定めた角度としてもよい。この制御によれば、
図11に示すブレーキ領域BAに向けて旋回したときのみ、ブレーキ情報に基づく制動力Fbが作用する。また例えばロール角度がピッチ角度の2倍以上大きい場合は、片傾斜を走行していると考えられる。歩行車100が片傾斜走行をしている間は少し蛇行するだけでピッチ角が頻繁に変化し、制御が不安定になる。したがって、歩行車100が片傾斜走行をしている間に下り傾斜を検知したとしても、制動力Fbを強めないことが好ましい。これにより蛇行する度に制動力Fbが強まるのを抑制できる。
【0054】
次に本発明の更なる実施形態について説明する。本実施形態では、歩行車の走行時にモータを駆動させて歩行のアシストを行う歩行車について説明する。
【0055】
図12は、歩行車の制御系統のブロック図である。
図12に示すように歩行車120の制御部121は、上述した実施形態の制御部101に相当するブレーキ制御部123に加えてアシスト制御部125を備える。また、モータ105は、回生ブレーキとしての作用に加えて後輪にアシスト力を付与する電動機としても作用する。
【0056】
〔アシスト制御〕
アシスト制御部125は、加速度センサ113で検出された歩行車の前進方向への加速度に基づいてアシスト力を算出する。アシスト制御部125はモータ105にアシスト力を送信する。モータ105は受信したアシスト力に基づいて後輪13にアシスト力を付与し、歩行車120に前進力を付与する。アシスト制御部125は、ピッチ角センサの検出値に基づく上り傾斜の有無、走行抵抗の推定値等に基づいてアシスト力を増減させてもよい。
【0057】
このようなアシスト機能を有する歩行車120に対しても、上述した〔下り傾斜における制御〕、〔傾斜面における急旋回時の制御〕、〔後退時の制動力解除〕、〔後退時の制動力増加〕、及び〔片傾斜走行〕の制御を適用できる。
【0058】
また、アシスト制御部125が上り傾斜におけるアシスト力を決定するにあたり、時定数の異なる2種類のローパスフィルタを用いてもよい。
【0059】
図13は、使用者が歩行車120を押しながら上り坂を歩く様子を模式的に示す図である。アシスト制御部125は、走行面が平地から上り傾斜に変化するとき(
図13の領域E)、角度変化の無い上り傾斜を走行している間(
図13の領域F)、走行面が上り傾斜から平地に変化するとき(
図13の領域G)、走行面が上り傾斜から平地に変化してから一定期間(
図13の領域H)の各々の場面でアシスト力を変化させる。
【0060】
アシスト制御部125は、ピッチ角度θとアシスト力との相関関係を示すアシスト情報を有している。アシスト情報は、特定のピッチ角度θに対しては特定のアシスト力を付与すべきことを示す情報であり、予め作成されてメモリ内に格納されている。したがってアシスト制御部125は、アシスト情報を参照しピッチ角度θに対応するアシスト力を読み出し、読み出したアシスト力の値に基づいてモータ105を制御する。
【0061】
図14はアシスト情報の一例を示すグラフである。
図14において縦軸はアシスト力Asを示し、横軸はピッチ角度θを示す。なおピッチ角度θは、水平面(0度)に対する角度を示す。また、上述したようにピッチ角度は実質的に走行している路面の傾斜角度に相当すると推定されるため、ここではピッチ角度θは実質的に路面の傾斜角度を示していると考えてもよい。従って、ピッチ角度θが小さくなるほど急な下り坂を走行していることを意味する。
【0062】
図14に示すように、ピッチ角度θが値0以下、θ11以上の場合、アシスト制御部125はアシスト力Asを発生させない。微小な傾斜は路面の凹凸であることが考えられ、微小な凹凸が発生する度にアシスト力Asを作用させないためである。ピッチ角度θが値θ11度未満、値θ12度以上の場合、アシスト制御部125はピッチ角度θが増加するにつれてアシスト力Asを大きくする。ピッチ角度θが値θ12未満の場合、アシスト力Asは一定の値(最大値)となる。アシスト力Asに最大値を設けることで、歩行車120が使用者から離れるのを防止する。なお、
図14の例ではピッチ角度が0以上、θ11以下の場合、アシスト力Asを発生させないこととするが必要に応じて弱いアシスト力Asを発生させてもよい。
【0063】
図15は、上り傾斜を走行するときのピッチ角度θの経時的な変化を示すグラフである。より具体的には
図15は、
図13に示すような上り傾斜を走行している間のピッチ角度θの実測値の経時的な変化を示す。ピッチ角度θの実測値は、傾斜センサから得られる実測値であっても良いし、加速度センサ113の検出結果から算出される算出値であってもよい。
図15に示すように時刻t11において走行路面が平地から上り傾斜に変化すると、ピッチ角度θの実測値が増加し始める。時刻t12~時刻t13にかけて歩行車120が角度変化の無い傾斜を走行している間は、ピッチ角度θの実測値は一定である。時刻t14において走行路面が上り傾斜から平地に変化すると、ピッチ角度θの実測値が増加し始める。時刻t14以降、平地を走行している間はピッチ角度θの実測値は一定である。仮に、ここでピッチ角度θの変化にあわせてそのままアシスト情報を適用すると、時刻t11、時刻t13においてアシスト力Asの急激な変化が発生する。また、時刻t11において走行路面が平地から上り傾斜に変化したときにアシスト力Asが突然作用してしまう。アシスト力Asが突然作用すると、歩行車120が急加速することが考えられる。これらを防止するために、アシスト制御部125は、アシスト力Asを決定するときにピッチ角度θの実測値ではなく、ピッチ角度θの補正値を用いる。
【0064】
アシスト制御部125は、時定数の異なる2種類の遅延フィルタをピッチ角度θの実測値に適用し、2つの補正値を算出する。アシスト制御部125は、算出された2つの補正値のうち小さい方の値をピッチ角度θの補正値とする。次いでアシスト制御部125は、アシスト情報を参照しピッチ角度θの補正値に対応するアシスト力Asの値を読み出す。読み出された値は、モータに送信されるアシスト力Asとなる。遅延フィルタとしては、例えば移動平均又は平滑化平均を用いたローパスフィルタを用いることができる。指数化平均を用いたローパスフィルタの一例をとして、上述した数式1及び数式2を利用できる。
【0065】
図16及び
図17は、ピッチ角度θの経時的な変化を示すグラフである。より具体的には
図16は、
図15に上記数式1及び数式2で算出された値θ
slow及び値θ
fastを加えたグラフである。
図16に示すように、ローパスフィルタを適用したピッチ角度θ
slow及びピッチ角度θ
fastは、ピッチ角度 の実測値θに対して遅延している。ピッチ角度θ
slowの遅延量は、ピッチ角度θ
fastの遅延量よりも大きい。アシスト制御部125は、数式1及び数式2によって得られたピッチ角度θ
slow及びピッチ角度θ
fastのうち各時刻において値が小さい方のピッチ角度θ
minを、ピッチ角度θの補正値とする。ピッチ角度θの補正値は、アシスト制御部125がアシスト情報を参照するときに使用するピッチ角度θの値である。従ってアシスト制御部125は、ピッチ角度θの補正値に対応するアシスト力Asをアシスト情報から読み出し、読み出したアシスト力Asをモータに送信する。なお、算出されたピッチ角度θ
fast及びピッチ角度θ
slowはメモリに格納され変化履歴として管理される。格納された値は、次回のピッチ角度θ
fast+1及びピッチ角度θ
slow+1を算出するときに使用される。
【0066】
図17は、
図15に上記ピッチ角度θの補正値を加えたグラフである。
図17に示すように、時刻t11から時刻t13の間では、ピッチ角度θ
slowの値がピッチ角度θの補正値とされる。時刻t13以降はピッチ角度θ
fastの値がピッチ角度θの補正値とされる。換言すれば、走行路面が平地から上り傾斜に変化するときは時定数が大きいピッチ角度θ
slowの値がピッチ角度θの補正値として使用される。これにより、アシスト力Asを徐々に増加させ体場面では遅延が大きいピッチ角度θの値を使用できる。また、走行路面が上り傾斜から平地に変化するときは時定数が小さいピッチ角度θ
fastの値がピッチ角度θの補正値として使用される。これにより、傾斜の頂に到達したときにアシスト力Asをすぐに弱められる。
【0067】
時刻t13以前のピッチ角度θの補正値に着目すると、ピッチ角度θの補正値の増加量が変曲点以前は緩やかになっている(緩やかに傾きが増加している)ことが分かる。
図14に示すアシスト情報を参照すると、ピッチ角度θの補正値の増加量が緩やかになることは、アシスト力Asの増加量を経時的に増加させることを意味する。従って、ピッチ角度θの補正値を用いることにより、単位時間当たりのアシスト力Asの増加量を増加させられる。これにより、領域Aから領域Bの前半の間ではアシスト力は徐々に増加する。これにより時刻t13以前、特に時刻t11における歩行車10の急加速を防止できる。
【0068】
以上のようにアシスト制御部125は、時定数の異なる2種類のローパスフィルタを用い連続的な制御により、走行路面の傾斜角度に対応させた適切なアシスト力Asを提供できる。
【0069】
また2つのローパスフィルタを用いることにより、アシスト力Asを制御する間、走行路面の傾斜角度の変化履歴を参照し続ける必要がない。換言すれば、アシスト制御部125において走行路面の傾斜角度が増加しているのか、又は減少しているのかということを検出し判断する必要がない。これは、2つのローパスフィルタを用いることで、ピッチ角度θの変化量の絶対値が実質的に走行路面の状況を反映しているからである。したがって、アシスト制御部125は、走行路面の傾斜角度の増減を検出し判断することなく走行路面の傾斜角度に対応させた適切なアシスト力Asを算出できる。また、ピッチ角度θの補正値は連続した値をとるためアシスト力Asの急激な増加及び低下を抑制できる。
【0070】
上述したように遅延フィルタは、必ずしも指数化平均を用いたローパスフィルタでなくてもよく他のフィルタを用いてもよい。この場合、遅延フィルタは異なる2種類の時定数として、異なる2種類の遅延量を有する。
【0071】
また上述したローパスフィルタは、ピッチ角度θの補正値を算出するものであるが、アシスト力Asを補正する遅延フィルタを用いてもよい。この場合、アシスト制御部は、ピッチ角度θの実測値からアシスト情報に基づいてアシスト力Asを決定する。アシスト制御部は決定したアシスト力Asに対して時定数の異なる2つの遅延フィルタを適用する。アシスト制御部は、遅延フィルタを適用することで得られた2つのアシスト力Asの補正値の小さい方をアシスト力Asとしてモータに送信する。このような方法によっても、ピッチ角度θを補正するのと同様の効果を得られる。
【0072】
〔逆転ブレーキと回生ブレーキの併用〕
歩行車がアシスト機能を有する場合、下り傾斜を走行する際の電気的ブレーキとしてモータによる回生ブレーキに加え、モータをアシスト時とは逆回転させる逆転ブレーキを利用できる。
【0073】
図18は、回生ブレーキを駆動したときモータの回転速度と制動力の関係を示すグラフである。
図18に示すように低速領域(例えば500r/min以下)では、ピークコイル電流の値が小さいため回生制動力(ブレーキトルク)が弱い。また、高速領域(例えば1800r/min以上)では、モータのコイルインダクタンスによりインピーダンスが低下する。これによりピークコイル電流が流れにくくなり、回生制動力が弱くなる。従って、ブレーキ制御部は、モータの回転速度に応じて使用するブレーキの種類(モータの制御方法)を変えて、得られる制動力が回転速度に比例して直線状に増加するように制御する。
【0074】
図19は、回生ブレーキと逆転ブレーキを組み合わせたときのモータの回転速度と制動力の関係を示すグラフである。
図19に示すようにブレーキ制御部は、モータの回転数に応じて制動力Fbを強める方法を切り替える。ブレーキ制御部123は、中速領域においては回生ブレーキにより制動力Fbを強める。これにより制動力Fbを強めながら、バッテリを充電できる。またブレーキ制御部123は、低速領域及び高速領域においてはモータ105を逆転させる逆転ブレーキにより制動力Fbを強める。このような制御により、制動力を回転速度に比例させられる。
【0075】
また回生ブレーキにより制動力Fbを作用させている間はバッテリを充電できる。従って、このような制御によりバッテリ107の充電量を維持できる。
【0076】
本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、実施形態の各構成は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
101 制御部、 103 センサ群、 105 モータ、 111 角速度センサ、 113 加速度センサ、 120 歩行車、 121 制御部、 123 ブレーキ制御部、 125 アシスト制御部