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特許7479150被検者が睡眠セッション中の治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを決定するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】被検者が睡眠セッション中の治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを決定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/38 20210101AFI20240426BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20240426BHJP
   A61M 21/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A61B5/38
A61B5/16 130
A61M21/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019534794
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2017084594
(87)【国際公開番号】W WO2018122226
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】62/439,544
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア モリナ ゲイリー ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッサプラガダ ヴェンカタ サティヤ スーリヤ スブラマニヤ スリーラム
(72)【発明者】
【氏名】プファンドナー ステファン
(72)【発明者】
【氏名】トソネバ トスヴェトミラ キロバ
(72)【発明者】
【氏名】マハデバン アナンディ
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/166202(WO,A1)
【文献】特表2016-518910(JP,A)
【文献】国際公開第2015/118415(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05- 5/0538
5/24- 5/398
A61B 5/06- 5/22
A61M 21/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠セッション中に被検者に与えられる治療レベルの刺激によって前記被検者が妨げられる可能性が高いか否かを決定するシステムであって、前記システムは、
前記睡眠セッション中に前記被検者に刺激を与える1つ又は複数の刺激装置と、
前記睡眠セッション中の前記被検者の脳活動に関する情報を伝える出力信号を生成する1つ又は複数のセンサと、
前記1つ又は複数の刺激装置及び前記1つ又は複数のセンサと動作的に通信する1つ又は複数のハードウェアプロセッサとを備え、
前記1つ又は複数の刺激装置は、トーン生成装置を含み、前記1つ又は複数のセンサは、1つ又は複数の脳波(EEG)出力信号を生成する1つ又は複数のEEG電極を含み、
前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサは、機械可読命令によって、
(1)参照睡眠セッション中に前記被検者に、前記被検者の脳活動に影響を与えるが前記被検者の睡眠を妨げない強度の刺激として30~40デシベルの音量を有する低強度刺激を与えるように前記1つ又は複数の刺激装置を制御するか、又は、
(2)前記参照睡眠セッション中に前記被検者に、前記被検者の微小覚醒が引き起こされる強度の刺激である高強度刺激を与えるように前記1つ又は複数の刺激装置を制御し、
さらに、
前記参照睡眠セッション中の前記出力信号に基づき、前記低強度刺激又は前記高強度刺激に対応する前記被検者の脳活動パラメータであって、前記被検者に前記低強度刺激又は前記高強度刺激のいずれが与えられるかに依存して異なる、当該脳活動パラメータを決定し、前記脳活動パラメータを、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示す対応する脳活動パラメータ閾値と比較し、前記脳活動パラメータが前記脳活動パラメータ閾値に違反することに応じて、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いと決定
前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサは、(3)前記参照睡眠セッション中に前記被検者に刺激を与えないように前記1つ又は複数の刺激装置を制御するようにさらに構成され、前記被検者の前記脳活動パラメータは、前記被検者に前記低強度刺激若しくは前記高強度刺激のいずれが与えられるか、又は刺激が与えられないかに依存して異なり、
ここで、
(a)前記低強度刺激を提供するように前記1つ又は複数の刺激装置を制御することに応じて、前記脳活動パラメータは、前記低強度刺激によって引き起こされるEEGデルタ出力レベルの変化を含み、前記脳活動パラメータ閾値は、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示すデルタ出力の変化のための閾値レベルであり、
(b)前記高強度刺激を提供するように前記1つ又は複数の刺激装置を制御することに応じて、前記脳活動パラメータは、前記被検者の自動検出された微小覚醒の量に関するパラメータを含み、前記脳活動パラメータ閾値は、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示す前記微小覚醒の量に関するパラメータの閾値であり、又は、
(c)刺激を提供しないように前記1つ又は複数の刺激装置を制御することに応じて、前記脳活動パラメータはEEGアルファ出力レベルを含み、前記脳活動パラメータ閾値は、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示すNREM睡眠中のアルファ出力のための閾値レベルである、システム。
【請求項2】
前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサは、同じ参照睡眠セッション中の異なる時間において前記低強度刺激及び前記高強度刺激を提供するように前記1つ又は複数の刺激装置を制御する、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサは、前記微小覚醒の量に関するパラメータが、前記高強度刺激によって引き起こされる微小覚醒の量と、自発的微小覚醒の量との比を含み、前記脳活動パラメータ閾値は、前記高強度刺激によって引き起こされる微小覚醒の量と前記自発的微小覚醒の量との比についての閾値であるように構成される、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ又は複数の刺激装置及び前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサは、前記低強度刺激が、5~30秒の範囲内のランダム化されたトーン間間隔を有する5つ以下のトーンブロックとしてのトーンを含むように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
睡眠セッション中に被検者に与えられる治療レベルの刺激によって前記被検者が妨げられる可能性が高いか否かを決定するシステムであって、前記システムは、
前記睡眠セッション中に前記被検者に刺激を与えるための手段と、
前記睡眠セッション中の前記被検者の脳活動に関する情報を伝える出力信号を生成するための手段と、
参照睡眠セッション中に前記被検者に、前記被検者の脳活動に影響を与えるが前記被検者の睡眠を妨げない強度の刺激として30~40デシベルの音量を有する低強度刺激を与えるように前記与えるための手段を制御するための手段、又は、
前記参照睡眠セッション中に前記被検者に、前記被検者の微小覚醒が引き起こされる強度の刺激である高強度刺激を与えるように前記与えるための手段を制御するための手段と、
前記参照睡眠セッション中の前記出力信号に基づき、前記低強度刺激又は前記高強度刺激に対応する前記被検者の脳活動パラメータを決定し、前記脳活動パラメータを、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示す脳活動パラメータ閾値と比較し、前記脳活動パラメータが前記脳活動パラメータ閾値に違反することに応じて、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いと決定するための手段とを含
前記与えるための手段は、トーン生成装置を含み、前記生成するための手段は、1つ又は複数の脳波(EEG)出力信号を生成する1つ又は複数のEEG電極を含み、
前記参照睡眠セッション中に前記被検者に刺激を与えないように前記与えるための手段を制御するための手段をさらに含み、前記被検者の前記脳活動パラメータは、前記低強度刺激、前記高強度刺激、又は刺激なしに対応し、
ここで、
(a)前記低強度刺激を提供するように前記与えるための手段を制御することに応じて、前記脳活動パラメータは、前記低強度刺激によって引き起こされるEEGデルタ出力レベルの変化を含み、前記脳活動パラメータ閾値は、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示すデルタ出力の変化のための閾値レベルであり、
(b)前記高強度刺激を提供するように前記与えるための手段を制御することに応じて、前記脳活動パラメータは、前記被検者の自動検出された微小覚醒の量に関するパラメータを含み、前記脳活動パラメータ閾値は、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示す前記微小覚醒の量に関するパラメータの閾値であり、又は、
(c)刺激を提供しないように前記与えるための手段を制御することに応じて、前記脳活動パラメータはEEGアルファ出力レベルを含み、前記脳活動パラメータ閾値は、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示すNREM睡眠中のアルファ出力のための閾値レベルである、システム。
【請求項6】
同じ参照睡眠セッション中の異なる時間において前記低強度刺激及び前記高強度刺激を提供するように前記与えるための手段を制御するための手段をさらに含む、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記微小覚醒の量に関するパラメータは、前記高強度刺激によって引き起こされる微小覚醒の量と、自発的微小覚醒の量との比を含み、前記脳活動パラメータ閾値は、前記高強度刺激によって引き起こされる微小覚醒の量と前記自発的微小覚醒の量との比についての閾値である、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記低強度刺激は、5~30秒の範囲内のランダム化されたトーン間間隔を有する5つ以下のトーンブロックとしてのトーンを含む、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01]本開示は、睡眠セッション中に被検者に与えられる治療レベルの刺激によって被検者が妨げられる可能性が高いか否かを決定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[02]睡眠を監視するためのシステムが知られている。睡眠の回復的価値は、深い睡眠中に適切なタイミングで聴覚的刺激を与えて睡眠徐波を増強することで向上させることができる。典型的なシステムは、睡眠セッション中に被検者に与えられる治療レベルの刺激によって被検者が妨げられる可能性が高いか否かを自動的に決定しない。
【発明の概要】
【0003】
[03]したがって、本開示の1つ又は複数の側面は、睡眠セッション中に被検者に与えられる治療レベルの刺激によって被検者が妨げられる可能性があるか否かを決定するように構成されたシステムに関する。前記システムは、前記睡眠セッション中に前記被検者に刺激を与える1つ又は複数の刺激装置と、前記睡眠セッション中の前記被検者の脳活動に関する情報を伝える出力信号を生成する1つ又は複数のセンサと、前記1つ又は複数の刺激装置及び前記1つ又は複数のセンサと動作的に通信する1つ又は複数のハードウェアプロセッサとを備える。前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサは、機械可読命令によって、(1)参照睡眠セッション中に前記被検者に低強度刺激を与えるように前記1つ又は複数の刺激装置を制御し、ここで、前記低強度刺激は、前記参照睡眠セッション中に前記被検者に睡眠妨害を引き起こさない刺激を含み、又は、(2)前記参照睡眠セッション中に前記被検者に高強度刺激を与えるように前記1つ又は複数の刺激装置を制御するように構成され、ここで、前記高強度刺激は、前記参照睡眠セッション中に前記被検者に睡眠妨害を引き起こす刺激を含む。前記1つ又は複数のハードウェアプロセッサはさらに、前記参照睡眠セッション中の前記出力信号に基づき、前記低強度刺激又は前記高強度刺激に対応する前記被検者の脳活動パラメータを決定し、前記脳活動パラメータを、前記被検者が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示す脳活動パラメータ閾値と比較し、前記脳活動パラメータが前記脳活動パラメータ閾値に違反することに応じて、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いと決定するように構成される。
【0004】
[04]本開示の他の側面は、睡眠セッション中に被検者に与えられる治療レベルの刺激によって前記被検者が妨げられる可能性が高いか否かを決定システムを用いて決定するための方法に関する。前記システムは1つ又は複数の刺激装置、1つ又は複数のセンサ、及び1つ又は複数のハードウェアプロセッサを含む。方法は、前記睡眠セッション中に前記1つ又は複数の刺激装置を用いて前記被検者に刺激を与えるステップと、前記1つ又は複数のセンサを用いて、前記睡眠セッション中の前記被検者の脳活動に関する情報を伝える出力信号を生成するステップとを含む。方法はさらに、(1)前記1つ又は複数のプロセッサを用いて、参照睡眠セッション中に前記被検者に低強度刺激を与えるように前記1つ又は複数の刺激装置を制御するステップであって、前記低強度刺激は、前記参照睡眠セッション中に前記被検者に睡眠妨害を引き起こさない刺激を含む、ステップ、又は、(2)前記1つ又は複数のプロセッサを用いて、前記参照睡眠セッション中に前記被検者に高強度刺激を与えるように前記1つ又は複数の刺激装置を制御するステップであって、前記高強度刺激は、前記参照睡眠セッション中に前記被検者に睡眠妨害を引き起こす刺激を含む、ステップを含む。方法はさらに、前記1つ又は複数のプロセッサを用いて、前記参照睡眠セッション中の前記出力信号に基づき、前記低強度刺激又は前記高強度刺激に対応する前記被検者の脳活動パラメータを決定し、前記脳活動パラメータを、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示す脳活動パラメータ閾値と比較し、前記脳活動パラメータが前記脳活動パラメータ閾値に違反することに応じて、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いと決定するステップを含む。
【0005】
[05]本開示の他の側面は、睡眠セッション中に被検者に与えられる治療レベルの刺激によって前記被検者が妨げられる可能性が高いか否かを決定するためのシステムに関する。前記システムは、前記睡眠セッション中に前記被検者に刺激を与えるための手段と、前記睡眠セッション中の前記被検者の脳活動に関する情報を伝える出力信号を生成するための手段とを含む。前記システムはさらに、参照睡眠セッション中に前記被検者に低強度刺激を与えるように前記与えるための手段を制御するための手段であって、前記低強度刺激は、前記参照睡眠セッション中に前記被検者に睡眠妨害を引き起こさない刺激を含む、手段、又は、前記参照睡眠セッション中に前記被検者に高強度刺激を与えるように前記与えるための手段を制御するための手段であって、前記高強度刺激は、前記参照睡眠セッション中に前記被検者に睡眠妨害を引き起こす刺激を含む、手段を含む。前記システムはさらに、前記参照睡眠セッション中の前記出力信号に基づき、前記低強度刺激又は前記高強度刺激に対応する前記被検者の脳活動パラメータを決定し、前記脳活動パラメータを、前記被検者が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示す脳活動パラメータ閾値と比較し、前記脳活動パラメータが前記脳活動パラメータ閾値に違反することに応じて、前記被検者が前記治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いと決定するための手段を含む。
【0006】
[06]本開示の上記及び他の目的、特徴、及び特性、並びに関連する構造要素の動作方法及び機能、部品の組み合わせ、製造の経済性は、以下の記載及び添付の特許請求の範囲を添付図面を参照しながら考察することでより明らかになるであろう。これらはいずれも本明細書の一部を形成し、各図において類似する参照番号は対応する部分を表す。しかし、図面は例示及び説明のみを目的としており、本開示の範囲を定めるものではないことを明確に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】[07]図1は、睡眠セッション中に被検者に与えられる治療レベルの刺激によって被検者が妨げられる可能性が高いか否かを決定するためのシステムを示す。
図2】[08]図2は、システムによって実行される睡眠療法動作の例示的な図である。
図3】[09]図3は、治療レベルの刺激によって引き起こされる睡眠妨害を示す。
図4】[10]図4は、参照睡眠セッション中に刺激が送られるシステムの例示的実施形態を示す。
図5】[11]図5は、参照睡眠セッション中に刺激が送られないシステムの例示的実施形態を示す。
図6】[12]図6は、EEG反応を誘発するのに十分に高いが、刺激が睡眠を妨げないように十分に低い低強度刺激の例を示す。
図7】[13]図7は、上記システムを使用して決定された実験結果の例を示し、ここで、システムは低強度刺激を提供する。
図8】[14]図8は、高強度刺激及び自発的微小覚醒によって引き起こされる15~30Hz帯域におけるEEG出力に関する閾値及び/又は8~12Hz周波数帯域におけるEEG出力に関する閾値を用いて自動検出された微小覚醒を示す。
図9】[15]図9は、治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が低い被検者と比較して、刺激によって妨げられる被検者が通常の治療睡眠セッション中及び/又は参照睡眠セッション中により短い刺激ブロックを有し、また、最大強度がより低い刺激を与えられることを示す。
図10】[16]図10は、敏感ではない被検者及び敏感な被検者についての熟睡脳波の例におけるアルファ活動の違いを示す。
図11】[17]図11は、システムによって生成された、10人の被検者に関する実験的アルファ出力データを示す。
図12】[18]図12は、睡眠セッション中に被検者に与えられる治療レベルの刺激によって被検者が妨げられる可能性が高いか否かを、決定システムを用いて決定するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[19]本明細書で使用されるとき、単数形は、コンテキスト上明らかに矛盾しない限り、複数への言及を含む。本明細書で使用される場合、2つ以上の部分又は構成要素が「結合されている」という記述は、部分が直接的又は(リンクが生じる限り)間接的に、すなわち1つ又は複数の中間部分又は要素を介して、互いに結合され又はともに動作することを意味する。本明細書で使用されるとき、「直接結合された」とは、2つの要素が互いに直接接触していることを意味する。本明細書で使用されるとき、「固定的に結合された」又は「固定された」とは、2つの構成要素が、互いに対して一定の向きを維持しながら一体的に動くように結合されていることを意味する。
【0009】
[20]本明細書で使用されるとき、「単一の」との用語は、構成要素が単一の部品又はユニットとして作成されることを意味する。つまり、別々に作成されてから1つのユニットとして結合された複数の部品を含む構成要素は「単一の」構成要素又はボディではない。本明細書で使用されるとき、2つ以上の部品又は構成要素が互いに「係合する」という表現は、それらの部品が直接、又は1つ以上の中間部品又は構成要素を介して互いに対して力を及ぼすことを意味する。本明細書で使用されるとき、「数」との用語は、1以上の整数(すなわち複数)を意味する。
【0010】
[21]本明細書で使用される方向的表現、例えば、これらに限定されないが、上、下、左、右、上方、下方、前、後、及びこれらの派生語などは、図面に示される要素の向きに関し、特に明記されない限り特許請求の範囲を限定しない。
【0011】
[22]図1は、睡眠セッション中に被検者12に与えられる治療レベルの刺激によって被検者12が妨げられる可能性が高いか否かを決定するように構成されたシステム10を示す。睡眠徐波は、非急速眼球運動(NREM)睡眠中に送られる刺激によって増強され得る。睡眠徐波の増強は睡眠の回復価値を高める。睡眠徐波を増強する及び/又は睡眠の回復価値を高める刺激及び/又は他の刺激は治療刺激であり得る。システム10は、そのような治療刺激を被検者12に送るように構成される(例えば、後述の制御要素30によって制御される)。
【0012】
[23]図2には、システム10(図1にも示されている)によって実行される睡眠療法動作200の例示的な説明図が示されている。図2に示されるように、脳波(EEG)電極はEEG信号204を生成する(202)。(微小)覚醒を表すEEGパターン(アルファ8~12Hz及び/又はベータ15~30Hz帯域における高出力)の存在が、システム10によって評価される(206)。刺激中にEEGにおいて覚醒と思われる活動が検出された場合(208)、刺激は停止するように制御される(210)。覚醒と思われる活動が刺激期間外に検出された場合(212)、次の刺激の開始は遅延される(214)。覚醒と思われる活動が検出されない場合(216)、システム10は、徐波活動帯域(0.5~4Hz)における出力、検出された徐波の時間密度、及び/又は他の情報に基づいて熟睡を検出することを試みる(218)。十分に深い睡眠の検出に応じて(220)、システム10は、(図2に示される例のように(ただし、これに限定されない))聴覚的刺激が送られる(222)ように構成される。システム10は、(例えば)聴覚的刺激の(例えば)音量が、出力比の和(デルタ出力/アルファ出力+デルタ出力/ベータ出力)を考慮した睡眠深度のリアルタイムEEGベース推定によって変更されるように構成される。したがって、睡眠が深ければ深いほど、刺激の音量は大きくなる。一部の実施形態では、システム10は、刺激の治療レベルが、上記動作中に被検者12に提供される刺激の強度、持続時間などを含むように構成される。
【0013】
[24]無視できない割合のユーザ(例えば、約3分の1)は、上記治療刺激を受ける上で、低強度(例えば、音量)の聴覚的及び/又は他の刺激に対してさえ敏感すぎる(刺激の治療レベルによって妨げられる可能性が高い)。例えば、図3は、刺激の治療レベルによって引き起こされる睡眠妨害を示す。図3には、35dBでの刺激による妨害が示されており、ここで、EEG信号300は、大きなゆっくりとした振動によって特徴づけられる熟睡の期間302(例えば、時間T=27秒まで)が、(例えば)音響305刺激306によって引き起こされる覚醒状態304に遷移することを示す(例えば、時間T=18秒で開始する)。個々の刺激308のタイミングが音響信号305内に示されている。また、ベータ(例えば、15~30Hz)帯域310内のEEG出力が示されている。二乗平均平方根(RMS)単位でのベータ出力は、熟睡から覚醒への移行時に増加する312ことがわかる。典型的には、(治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高い)敏感なユーザとしてのユーザの分類は、典型的には、刺激を伴う睡眠セッションの後の睡眠データが利用可能になった後に起こる。
【0014】
[25]図1に戻り、システム10は、アルファ/ベータ帯域の出力、微小覚醒の量、及び/又は他のパラメータに対して閾値を使用することで、上記治療刺激中の覚醒状態をもたらす覚醒活動を検出するように構成される。典型的なシステムでは、そのような閾値は、覚醒が覚醒状態に移行する前に刺激が停止するように設定される。しかしながら、典型的なシステムを用いる敏感なユーザでは、典型的な睡眠治療中の睡眠妨害を防ぐために、追加の強度(例えば、音量)調整動作(例えば、熟睡検出後、刺激が始まる前により長い時間待つ、検出された徐波の所与の位相において刺激を送る、及び/又は他の動作)が必要である。システム10は、これらの追加の調整動作が不要であるように構成される。
【0015】
[26]システム10は、刺激を伴わない、又は本明細書に記載されるような低い及び/又は高い強度(例えば音量)の刺激を伴う参照睡眠セッション(例えば、睡眠夜、昼寝、睡眠周期など)からの情報に基づいて、潜在的に睡眠を妨げる刺激を経験する前に敏感なユーザを識別する。システム10は、そのような情報に基づいて、所与のユーザ(例えば、被検者12)が聴覚的及び/又は他の刺激に対して敏感である可能性を決定する。
【0016】
[27]図4は、(図1に示され、以下でさらに述べられる)システム10の例示的実施形態を示し、ここで、刺激は参照睡眠セッション中に送られる。信号400及び402は熟睡のEEG信号404、及び、対応する(この例では)聴覚的刺激408の複数のインスタンス406を示す。この例では、システム10は、刺激410を伴う参照睡眠セッション中、(A)睡眠妨害は引き起こさないが、被検者12(図1)の脳活動に影響を与えて効果がEEG信号において観察され得る(例えば、後述するように、デルタ出力(0.5~4Hz)における上昇)ように(414)、刺激が低強度/ソフトな音量(例えば、最大約35dB)で送られ(412)、かつ/又は、(B)刺激に対する被検者12の感度の決定(418)を助けるために妨害を引き起こし得るように、刺激が高強度/より大きい音量(例えば、最大約60dB)で送られる(416)ように構成される。被検者12及び/又は他のユーザが治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを決定する(420)ために、(例えば、後述するように)様々な閾値が使用される。
【0017】
[28]図5は、(図1に示され、以下でさらに述べられる)システム10の例示的実施形態を示し、ここで、刺激は参照睡眠セッション501中に送られる。図5に示されるように、システム10は、自動的に検出されるNREM睡眠(例えば、以下でさらに説明されるようにN3睡眠)中に、EEG502のスペクトル特性500を分析するように構成される。睡眠セッション中に刺激が送られない実施形態では、敏感なユーザ(例えば、被検者12)の熟睡中のEEGは、アルファ(8~12Hz)及び/又はベータ(15~30Hz)帯域において通常よりも(例えば、年齢及び/又は性別が合致するユーザのそれと比較して)高いスペクトル活動を示す。アルファ帯域及びベータ帯域におけるスペクトル特性に加えて、システム10は、検出されたNREM睡眠についての紡錘波(spindle)密度を使用して(504)、治療レベルの刺激によって被検者12が妨げられる可能性が高いか否かを決定するように構成され得る。紡錘波は、例えば、騒音などの妨害に対する睡眠の強固さに関連付けられ得る。刺激が被検者12に提供される参照睡眠セッション(例えば、図4に関して上記したように)と同様に、被検者12及び/又は他のユーザが治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを決定する510ために、スペクトル活動、紡錘波、及び/又は他のパラメータについての様々な閾値が使用される。
【0018】
[29]図1に戻り、一部の実施形態では、システム10は、刺激装置16、センサ18、プロセッサ20、電子記憶装置22、ユーザインターフェース24、外部リソース26、及び/又は他の構成要素のうちの1つ又は複数を含む。
【0019】
[30]刺激装置16は、被検者12に電気的、磁気的、感覚的、及び/又は他の刺激を提供するように構成される。刺激装置16は、睡眠セッションの前、睡眠セッションの間、及び/又は他の時間において、被検者12に電気的、磁気的、感覚的、及び/又は他の刺激を提供するように構成される。例えば、刺激装置16は、より深い睡眠段階への移行、より軽い睡眠段階への移行を促すために、特定の段階で睡眠を維持するために、及び/又は他の目的のために、睡眠セッション中に被検者12に刺激を与えるように構成され得る。一部の実施形態では、刺激装置16は、より深い睡眠段階とより軽い睡眠段階との間の移行を促すことが、被検者12の睡眠徐波を減少させることを含み、また、より軽い睡眠段階とより深い睡眠段階との間の移行を促すことが、睡眠徐波を増加させることを含むように構成され得る。
【0020】
[31]刺激装置16は、非侵襲的脳刺激及び/又は他の方法によって、睡眠段階間の移行を促し、かつ/又は特定の段階に睡眠を維持するように構成される。刺激装置16は、電気的、磁気的、及び/又は感覚的な刺激を用いた非侵襲的脳刺激によって、睡眠段階間の移行を促し、かつ/又は特定の段階に睡眠を維持するように構成され得る。前記電気的刺激、磁気的刺激、及び/又は感覚的刺激は、聴覚的刺激、視覚的刺激、体性感覚的刺激、電気的刺激、磁気的刺激、複数の異なる種類の刺激の組み合わせ、及び/又は他の刺激を含み得る。前記電気的、磁気的、及び/又は感覚的刺激は匂い、音、視覚的刺激、物理的接触、味、体性感覚的刺激、触覚的、電気的、磁気的、及び/又は他の刺激を含む。例えば、睡眠段階間の移行を促すために、及び/又は特定の段階に睡眠を維持するために、音響トーンが被検者12に提供され得る。刺激装置16の例は、音発生装置、スピーカ、音楽プレーヤー、トーン発生装置、被検者12の頭皮上の1つ以上の電極、振動刺激を送るための振動装置(例えば圧電部材など)、大脳皮質を直接刺激するために磁場を発生させるコイル、1つ以上の光発生装置又はランプ、芳香ディスペンサー、及び/又は他の装置のうちの1つ又は複数を含み得る。一部の実施形態では、刺激装置16は、被検者12に提供される刺激の強度、タイミング、及び/又は他のパラメータを調整するように構成される。
【0021】
[32]センサ18は、脳活動、中枢神経系の活動、末梢神経系の活動、及び/又は被検者12における他の活動に関する情報を伝える出力信号を生成するように構成される。一部の実施形態では、脳活動に関連する情報は、中枢神経系に関連する情報、末梢神経系の活動に関連する情報、及び/又は他の情報を含む。一部の実施形態では、センサ18は、被検者12の徐波活動に関する情報を伝える出力信号を生成するように構成される。一部の実施形態では、脳活動、中枢神経系の活動、末梢神経系の活動、及び/又は他の被検者12における活動に関する情報は、徐波活動に関する情報である。一部の実施形態では、センサ18は、睡眠セッション中に被験者12に提供される刺激に関する情報を伝達する出力信号を生成するように構成される。
【0022】
[33]一部の実施形態では、被検者12の徐波活動は、被検者12の睡眠段階に対応し得る。被検者12の睡眠段階は、急速眼球運動(REM)睡眠、NREM睡眠、及び/又は他の睡眠に関連づけられ得る。被検者12の睡眠段階は、NREM段階N1、段階N2、段階N3、又は段階N4の睡眠、REM睡眠、及び/又は他の睡眠段階のうちの1つ又は複数であり得る。一部の実施形態では、NREM段階3及び/又は4は徐波(例えば、深い)睡眠であり得る。センサ18は、そのようなパラメータを直接測定する1つ又は複数のセンサを含み得る。例えば、センサ18は、被検者12の脳内で流れる電流から生じる被検者12の頭皮沿いの電気的活動を検出するように構成されたEEG電極を含み得る。センサ18は、被検者12の脳活動に関する情報を間接的に伝える出力信号を生成する1つ又は複数のセンサを含み得る。例えば、1つ又は複数のセンサ18は、被検者12の心拍数に基づいて出力を生成する心拍数センサ(例えば、センサ18は、被検者12の胸部に配置され得る、及び/又は、被検者12の手首にブレスレットとして構成され得る、及び/又は、被検者12の別の肢に配置され得る心拍数センサであり得る)、被検者12の動きに基づき出力を生成するセンサ(例えば、センサ18は、アクティグラフィー信号を用いて睡眠を分析することができるよう、装着可能な、例えば被検者12の手首及び/又は足首のまわりに装着可能な加速度計を含み得る)、被検者12の呼吸に基づいて出力を生成するセンサ、及び/又は、被検者12の他の特徴に基づいて出力を生成するセンサを含み得る。
【0023】
[34]一部の実施形態では、1つ又は複数のセンサは、EEG電極、眼電図(EOG)電極、アクティグラフィーセンサ、心電図(EKG)電極、呼吸センサ、圧力センサ、バイタルサインカメラ、フォトプレチスモグラム(PPG)センサ、機能的近赤外センサ(fNIR)、温度センサ、マイクロフォン、及び/又は被検者12に与えられる刺激に関連する出力信号(例えば、刺激の量、周波数、強度、及び/又は他の特性)を生成するよう構成された他のセンサ、及び/又は他のセンサのうちの1つ又は複数を含む。センサ18は被検者12の近く単一の場所に示されているが、これは限定的であることを意図しない。センサ18は複数の場所に配置された複数のセンサ、例えば、被検者12の衣服と(着脱可能な方法で)結合された感覚的刺激装置16内に配置されたもの(又はこれと通信するもの)、被検者12が着用するもの(例えば、ヘッドバンド、リストバンドなど)、被検者12が眠っている間に被検者12に向けられるよう配置されたもの(例えば、被検者12の動きに関連する出力信号を伝達するカメラ)、被検者12が眠っているベッド及び/又は他の家具と結合されたもの、及び/又は他の場所に配置されたものを含み得る。
【0024】
[35]プロセッサ20は、システム10において情報処理能力を提供するように構成される。したがって、プロセッサ20は、デジタルプロセッサ、アナログプロセッサ、情報を処理するように設計されたデジタル回路、情報を処理するように設計されたアナログ回路、状態機械、及び/又は情報を電子的に処理する他の機構のうちの1つ又は複数を含み得る。図1ではプロセッサ20は単一のエンティティとして示されているが、これは例示目的に過ぎない。一部の実施形態では、プロセッサ20は複数の処理ユニットを含み得る。これらの処理ユニットは物理的に同じ装置(例えば、感覚的刺激装置16、ユーザインターフェース24など)内に配置されてもよく、又はプロセッサ20は協力して動作する複数の装置の処理機能を表してもよい。一部の実施形態では、プロセッサ20は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、サーバ、及び/又は他の計算装置などの計算装置であり得る、及び/又は、に含まれ得る。そのような計算装置は、システム10とのユーザインタラクションを容易にするように構成されたグラフィカルユーザインターフェースを有する1つ又は複数の電子アプリケーションを実行し得る。
【0025】
[36]図1に示されるように、プロセッサ20は、1つ又は複数のコンピュータプログラム要素を実行するように構成される。コンピュータプログラム要素は、例えば、プロセッサ20内にコード化された及び/又は他の態様で埋め込まれたソフトウェアプログラム及び/又はアルゴリズムを含み得る。1つ又は複数のコンピュータプログラム要素は、制御要素30、パラメータ要素32、妨害判定要素34、及び/又は他の要素のうちの1つ又は複数を含むことができる。プロセッサ20は、要素30、32、及び/又は34をソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、及び/又は、ソフトウェア、ハードウェア、及び/又はファームウェアの組み合わせ、及び/又は、プロセッサ20上に処理能力を構成するための他の機構によって実行するように構成されてもよい。
【0026】
[37]図1では、要素30、32、及び34は単一の処理ユニット内に共配置されているものとして示されているが、プロセッサ20が複数の処理ユニットを備える実施形態では、要素30、32、及び/又は34のうちの1つ又は複数が他の要素から離れて配置されてもよいことを理解されたい。以下に記載される異なる要素30、32、及び/又は34によって提供される機能の説明は例示目的のためのものであり限定を意図せず、要素30、32、及び/又は34のいずれかが、記載よりも多くの又は少ない機能を提供し得る。例えば、要素30、32、及び/又は34のうちの1つ又は複数が除去されてもよく、その機能の一部又は全部が、他の要素30、32、及び/又は34によって提供され得る。別の例として、プロセッサ20は、以下において要素30、32、及び/又は34のうちの1つに付与される機能の一部又は全部を実行し得る1つ又は複数の追加要素を実行するように構成され得る。
【0027】
[38]制御要素30は、睡眠セッション中に被検者12に刺激を与えるように1つ又は複数の刺激装置16を制御するように構成される。一部の実施形態では、1つ又は複数の刺激装置16は、(例えば、上記の図2に示されるように)所定の治療計画に従って刺激を提供するように制御される。睡眠徐波は、NREM睡眠中に送られる(例えば、末梢聴覚、磁気、電気、及び/又は他の)刺激によって強化され得る。制御要素30は、センサ18の出力信号(例えばEEGに基づく)及び/又は睡眠セッション中の他の情報に基づいて被検者12の脳活動を監視し、被検者12の徐波活動を制御するために刺激装置16による刺激(例えば聴覚及び/又は他の刺激)の伝達を制御する。一部の実施形態では、制御要素30(及び/又は以下で説明する他のプロセッサ要素のうちの1つ又は複数)は、いずれも参照によりその全体が個別に組み込まれる米国特許出願14/784782(タイトル“System and Method for Sleep Session Management Based on Slow Wave Sleep Activity in a Subject”)、14/783114(タイトル“System and Method for Enhancing Sleep Slow Wave Activity Based on Cardiac Activity”)、14/784746(タイトル“Adjustment of Sensory Stimulation Intensity to Enhance Sleep Slow Wave Activity”)、15/101008(タイトル“System and Method for Determining Sleep Stage Based on Sleep Cycle”)、及び/又は15/100435(タイトル“System and Method for Facilitating Sleep Stage Transitions”)に記載の動作と同様の及び/又は同じ1つ又は複数の動作を実行する。
【0028】
[39]一部の実施形態では、制御要素30は、低強度の刺激を提供するように、高強度の刺激を提供するように、及び/又は被検者12に全く刺激を提供しないように、参照睡眠セッション中に刺激装置16を制御するように構成される。一部の実施形態では、刺激装置16は、(例えば、上記の図4に示されるように)同じ参照睡眠セッション中の異なる時間において低強度刺激及び高強度刺激を提供するように制御される。一部の実施形態では、制御要素30は、参照睡眠セッションが夜の睡眠、昼寝、睡眠サイクル、及び/又は他の睡眠セッションを含むように構成される。一部の実施形態では、参照睡眠セッションは被検者12及び/又は他のユーザによって事前に計画されてもよく、かつ/又は他の特性を有してもよい。一部の実施形態では、参照睡眠セッションは、低強度刺激、高強度刺激を提供するように、及び/又は被検者12に刺激を提供しないように制御要素30が刺激装置16を制御する任意の睡眠セッションを含む。
【0029】
[40]一部の実施形態では、制御要素30は、ユーザインターフェース24及び/又はシステム10の他の要素を用いた情報の入力及び/又は選択を介して、参照睡眠セッションのユーザ(例えば、被検者12、及び/又は医師、看護師、介護者、家族、研究者などの他のユーザ)指示(例えば、いつ睡眠セッションが起こるべきか、及び/又は、どのタイプの刺激及び/又は刺激の欠如を使用すべきか)を容易にするように構成される。一部の実施形態では、制御要素30は、外部騒音及び対応する睡眠妨害に対する感度に関するユーザからの(例えば主観的な)入力を容易にするように構成される。一部の実施形態では、制御要素30は、適用される必要がある刺激(もしあれば)の性質(例えば、より強い/弱い)を決定するために聴覚検査からの結果も使用できるように構成される。
【0030】
[41]一部の実施形態では(例えば、参照睡眠セッション中にシステム10が被検者12に低強度刺激を与えるべきであると被検者12及び/又は他のユーザが指定することに応じて)、制御要素30は、低強度刺激が、参照睡眠セッション中に被検者12に睡眠妨害を引き起こさない刺激を含むように構成される。一部の実施形態では、低強度刺激は、EEG反応を誘発するのに十分に高いが、刺激が睡眠を妨げないように十分に低い刺激を含む。一部の実施形態では、低強度刺激は、約30~約40デシベルの音量及び/又は他の音量のトーンを含む。一部の実施形態では、低強度刺激は最大5つのトーンブロック及び/又は他のブロックを含む。一部の実施形態では、低強度刺激は、約5~約30秒の範囲及び/又は他の範囲内のランダム化されたトーン間間隔を含む。これは限定を意図しない。例えば、より騒々しい環境では、低強度刺激は、上述の例示的低強度刺激よりも強い場合がある。
【0031】
[42]図6には、EEG反応を誘発するのに十分に高いが、刺激が睡眠を妨げないように十分に低い低強度刺激の例を示す。図6は、EEG信号600、EEGデルタ帯域における出力602、及び刺激フラグ604を示す。刺激フラグ604は、被検者12(図1)に提供される聴覚的刺激のタイミング及び強度(例えば、33dB)を示す。図6に示されるように、聴覚的刺激は5トーンブロック606として起こった。低強度刺激の結果として、EEGデルタ帯域の出力602は約1μV(デルタRMS)610だけ増加した(608)。
【0032】
[43]低強度刺激の実施形態では、制御要素30は、5つ(又は例えばそれ以下)の(例えば)トーンを含む刺激の複数のブロック606が刺激装置16(図1)を介して送られることで、被検者12(図1)の刺激に対する脳の反応を反映するEEG反応を決定する(例えば、パラメータ要素32及び/又は後述する他の要素を介して)ように構成され得る。制御要素30は、ブロック間インターバル期間が約5~約30秒の範囲内でランダム化されるように構成され得る。一部の実施形態では、(後述される)パラメータ要素32は、刺激に対するEEG反応が、EEGデルタ(例えば、0.5~4Hz)出力における瞬間的な増加に基づいて決定されるように構成される。図6の例は、33dBの刺激(刺激フラグ604によって示される)が開始した瞬間からデルタ出力が1mVより大きい量だけ増加する608ことを示す。一部の実施形態では、デルタ出力の増加は、刺激開始(図6では時間=0と呼ばれる)前の(この例では)2秒間の期間を基準とするパーセンテージとして特徴付けられる。
【0033】
[44]図7には、システム10を使用して決定された実験結果の例を示し、ここで、システム10は低強度刺激を提供する。実験結果の例は、刺激に対する感度が知られている5人の被検者に基づいてシステム10を使用して決定された。図7に示されるように、デルタ増加曲線700は、(刺激開始702後の)ソフト(例えば<35dB)で短い(例えば4トーン)刺激704に応じたデルタ出力増加701が、ソフトなトーンによって睡眠が妨げられるユーザに関してより高いことを示す。例えば、40dBトーン(刺激704)によって睡眠が妨げられるユーザのデルタ増加は、刺激開始702から3秒後において30%より高い値(例えば、30%増加701)に達する。さらに、65dB以下のトーン(刺激706)で睡眠が妨げられないユーザについては、刺激開始702から4秒後であっても、デルタ増加は10%(例えば、10%増加701)にほとんど達しない。刺激708は、刺激704の反応と刺激706の反応との間の反応を生じる。したがって、例えば20%のデルタ増加に閾値を設定することで(例えば、後述の妨害決定要素34によって)、治療レベルの刺激によって妨害される可能性が高いユーザ(例えば、被検者12)の識別が容易になる。この例ではデルタ帯域の出力が使用されたが、ソフトかつ/又は短い聴覚的刺激に対するEEG反応の(時間-周波数)分析が、刺激への感度を特徴づけるためにさらに及び/又は代わりに使用される他の周波数帯域を示してもよいことを理解されたい。また、デルタ出力に対する20%増加閾値の説明は限定を意図しない。他の閾値も考えられる。
【0034】
[45]図1に戻り、一部の実施形態では(例えば、参照睡眠セッション中にシステム10が被検者12に高強度刺激を与えるべきであると被検者12及び/又は他のユーザが指定することに応じて)、制御要素30は、高強度刺激が、参照睡眠セッション中に被検者に睡眠妨害を引き起す刺激を含むように構成される。一部の実施形態では、引き起こされる睡眠妨害の程度は、検出された微小覚醒及び/又は他の覚醒の増加(例えば、所定の閾値を上回るベータRMSにおける増加によって特徴づけられる)に基づいて(例えば、後述のパラメータ要素32及び/又は妨害決定要素34によって)決定される。微小覚醒及び/又は他の覚醒は、被検者(例えば被検者12)が敏感である(例えば、治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高い)か否かを判断するために使用される。これは以下にさらに説明される。
【0035】
[46]パラメータ要素32は、被検者12についての1つ又は複数の脳活動パラメータを決定するように構成される。1つ又は複数の脳活動パラメータは、出力信号及び/又は他の情報に基づいて決定される。一部の実施形態では、1つ又は複数の脳活動パラメータを決定することは、被検者12の睡眠セッション中にEEGを生成及び/又は監視することを含み得る。EEGは、例えばユーザインターフェース24によって表示されてもよい。一部の実施形態では、パラメータ要素32は、1つ又は複数の脳活動パラメータが周波数、振幅、位相;紡錘波、Kコンプレックス、又は睡眠徐波、アルファ波などの特定の睡眠パターンの存在;及び/又はEEG信号の他の特性であるように及び/又はこれらに関連するように構成される。一部の実施形態では、1つ又は複数の脳活動パラメータは、周波数、振幅、及び/又はEEG信号の他の特徴に基づいて決定される。一部の実施形態では、決定された脳活動パラメータ及び/又はEEGの特性は、上述のREM及び/又はNREM睡眠段階に対応する睡眠段階であり得る及び/又はこれらを示し得る。
【0036】
[47]例えば、NREM睡眠中の典型的なEEG特性は、睡眠段階N1についてのアルファ波(例えば、約8~12Hz)からシータ波(例えば、約4~7Hz)への遷移、睡眠段階N2についての睡眠紡錘波(例えば、約11~16Hz)及び/又はKコンプレックス(例えば、睡眠徐波に類似)の存在、睡眠段階N3及び/又はN4についてのピーク間振幅が約75μVより大きいデルタ波(例えば、約0.5~2Hz)(睡眠徐波とも呼ばれる)の存在、軽い睡眠及び/又は覚醒の存在、及び/又は他の特徴を含む。一部の実施形態では、軽い睡眠は、アルファ活動(例えば、8~12Hz帯域のEEG出力)がもはや存在せず、徐波活動が存在しないという事実によって特徴付けられてもよい。さらに、紡錘波活動(11~16 Hz帯域のEEG出力)が高くてもよい。熟睡は、デルタ活動(例えば、0.5~4Hz帯域のEEG出力)が支配的であるという事実によって特徴付けられ得る。例えば、一部の実施形態では、パラメータ要素32は、低強度刺激によって引き起こされるEEGデルタ出力レベル、被検者12の微小覚醒の量、EEGアルファ出力レベル、及び/又は他のパラメータにおける変化を決定するように構成される。一部の実施形態では、微小覚醒の量は、自発的微小覚醒の量に対する、高強度刺激によって引き起こされる微小覚醒の量の比を含む。
【0037】
[48]一部の実施形態では、パラメータ要素32は、被検者12に提供される刺激についての刺激細分化(fragmentation)パラメータを決定するように構成される。一部の実施形態では、刺激細分化パラメータは、刺激ブロックの長さ、最大及び/又は最小刺激音量、及び/又は他の刺激細分化パラメータを含む。一部の実施形態では、刺激細分化パラメータは、センサ18からの出力信号、被検者12に提供される刺激、及び/又は他の情報に基づいて決定される。
【0038】
[49]一部の実施形態では、パラメータ要素32は、1つ又は複数の脳活動パラメータ、刺激細分化パラメータ、及び/又は他のパラメータを、所定の時間(例えば間隔)において、実質的に連続的に、及び/又は他の時間において決定するように構成される。一部の実施形態では、脳活動パラメータは、EEG信号、心電図(ECG)信号、アクティグラフィー信号、体温信号、電気皮膚反応(GSR)信号;及び/又は被検者12の脳、中枢及び/又は末梢神経系、及び/又は被検者12の他の生物学的システムに関連する情報に基づいて決定され得る。
【0039】
[50]妨害決定要素34は、治療レベルの刺激によって被検者12が妨げられる可能性が高いか否かを決定するように構成される。一部の実施形態では、被検者12が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを判断することは、被検者が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示す1つ又は複数の決定された脳活動パラメータの閾値レベルを取得及び/又は決定することを含む。閾値レベルを取得及び/又は決定することは、被検者12の過去の睡眠セッションからの情報に基づいて閾値レベルを決定すること、ユーザインターフェース24を介して被検者12及び/又は他のユーザ(例えば医師、看護師、介護者、家族、研究者等)からの閾値レベルの入力及び/又は選択を促すこと、外部リソース26に含まれる1つ又は複数のソースから電子的に送信された閾値レベルを受け取ること、及び/又は他の取得及び/又は決定を含み得る。一部の実施形態では、閾値レベルは、被検者12についての年齢及び/又は性別が一致した(例えば、外部リソース26からの)情報に基づいて決定される。
【0040】
[51]妨害決定要素34は、決定された脳活動パラメータのうちの1つ又は複数を、対応する脳活動パラメータについての閾値レベルと比較するように構成される。一部の実施形態では、比較は、パラメータが対応する閾値レベルに違反するか否かを判断することを含む。違反は、閾値レベルを超えるレベルへの増加、閾値レベルを下回るレベルへの減少、閾値レベルとの合致、及び/又は他の違反を含むことができる。脳活動パラメータが脳活動パラメータ閾値に違反することに応じて、妨害決定要素34は、被検者12が治療レベルの刺激によって妨害される可能性が高いと判定するように構成される。
【0041】
[52]例えば、一部の実施形態では、制御要素30が参照睡眠セッション中及び/又は参照睡眠セッションの一部の間に低強度刺激を提供するように刺激装置16を制御することに応じて、パラメータ要素32は、脳活動パラメータが低強度刺激によって引き起こされたEEGデルタ出力レベルの変化を含むように構成される。そのような実施形態では、妨害決定要素34は、閾値が、被検者12が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性があるか否かを示すデルタ出力における変化のための閾値レベルであるように構成される。例えば、図7に関連して上記した実施形態において、例えば20%のデルタ出力増加に閾値を設定することで、治療レベルの刺激によって妨害される可能性が高いユーザ(例えば、被検者12)の識別が容易になる。
【0042】
[53]他の例として、一部の実施形態では、制御要素30が参照睡眠セッション中及び/又は参照睡眠セッションの一部の間に高強度刺激を提供するように刺激装置16を制御することに応じて、パラメータ要素32は、脳活動パラメータが高強度刺激中の被検者12における微小覚醒の量を含むように構成される。そのような実施形態では、妨害決定要素34は、閾値が、被検者12が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示す微小覚醒の量の閾値であるように構成される。一部の実施形態では、微小覚醒の量は、高強度刺激によって引き起こされる微小覚醒の量と、自発的微小覚醒の量との比を含み、閾値は、高強度刺激によって引き起こされる微小覚醒と自発的覚醒についての閾値比である。一部の実施形態では、妨害決定要素34は、対応する刺激インスタンスに対する1つ又は複数の微小覚醒の(時間的)近さに基づいて、被検者12が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを決定するように構成される。
【0043】
[54]非限定的な例として、図8は、高強度刺激801によって引き起こされた微小覚醒800と自発的微小覚醒802を示す。図8に示されるように、刺激801によって引き起こされた(EEG850に基づいて)検出された微小覚醒800と自発的な微小覚醒802との比は、刺激に対して敏感ではない(治療レベルの刺激によって妨害される可能性が低い)被検者(図8(a))と比較して、刺激に対して敏感な(治療レベルの刺激によって妨害される可能性が高い)被検者(図8(b))において高い。一部の実施形態では、閾値レベルは刺激の持続時間に依存する。例えば、そのような閾値についての基準レベルは、敏感な被検者については、刺激によって引き起こされる覚醒/刺激の持続時間=1/5(例えば、敏感な被検者は5つのトーンごとに1つの誘引覚醒を有する)を含み得る。敏感でない被検者では、<1/60未満であり得る(例えば、60秒間の刺激ごとに1未満の覚醒を検出)。自発的覚醒の場合、<1覚醒/検出された60秒間のN3睡眠。他の閾値レベルも考えられる。
【0044】
[55]図1に戻り、一部の実施形態では、妨害決定要素34は、刺激細分化を使用して被検者12の感度(被検者12が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性)を決定するように構成される。例えば、刺激によって妨げられる被検者(例えば被検者12)は、通常の治療睡眠セッション中に(例えば、図2に示されるように)及び/又は参照睡眠セッションにおいてより短い刺激ブロックを有し、また、治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が低い被検者と比較して、より低い最大強度(例えば音量)の刺激が(例えば、制御要素30によって制御される刺激装置16によって)提供される。これは図9に示されている。図9に示されるように、刺激ブロック900の長さ及び最大刺激音量902は、(例えば、矢印で示されるように)敏感な被検者904では、刺激に対して敏感でない(治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が低い)被検者906と比べて概して低い。
【0045】
[56]図1に戻り、一部の実施形態では、制御要素30が参照睡眠セッション中及び/又は参照睡眠セッションの一部の間に刺激を提供しないように刺激装置16を制御することに応じて、パラメータ要素32は、脳活動パラメータが非刺激中のEEGアルファ出力レベルを含むように構成される。そのような実施形態では、妨害決定要素34は、閾値が、被検者が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示すアルファ出力のための閾値レベルであるように構成される。刺激に対して敏感である(治療レベルによって妨げられる可能性が高い)被検者(例えば被検者12)は、熟睡(例えばN3)EEGにおいて(敏感でない被検者と比較して)より高いアルファ(8~12Hz)活動レベルを示す。例えば、そのような実施形態では、1つの可能な閾値レベル(他にもある)は、1.3の検出されたN3睡眠中のアルファ帯域における平均RMS(二乗平均平方根)出力についての閾値を含む。
【0046】
[57]これは図10に示されている。図10は、敏感でない1002及び敏感な1004被検者1006(敏感でない)、1008(敏感でない)、1010(敏感でない)、1012(敏感)、及び1014(敏感)についてのN3 EEGの例1000におけるアルファ活動の違いを示す。図10に示されるように、高周波数(例えば、アルファ)EEG活動は、被検者1012及び1014においてより顕著である。例えば、N3睡眠中のアルファ(8~12Hz)帯域における出力について、出力(RMS値)が1.3を超える場合、熟睡におけるアルファが存在すると見なすことができる。ただし、これらの被検者は必ずしも深い睡眠(慢性疼痛又は落ち着かない睡眠などの病状を示すアルファ/デルタ睡眠としても知られる)におけるアルファ介入現象を示さないことに留意されたい。
【0047】
[58]図11は、システム10(図1)によって生成された10人の被検者(1102~1120)についての実験的アルファ出力データ1100を示す。熟睡中のアルファ出力のレベル1101のレベルが、被検者1102~1120について、いくつかの睡眠セッションにおいて分析された(例えば、図1に示される妨害決定要素34及び/又はシステム10の他の要素によって)。図11では、アルファ出力に対する1.3の閾値(これは限定を意図しない)に基づいて、敏感な被検者1102、1110、1112、及び1114が識別された。この例では、深い眠りにおけるアルファレベル出力に1.3の閾値を使用することで100%の感度が得られたが、50%の特異度であった(例えば、6人の敏感でない被検者のうち3人が深い眠りで比較的高いアルファを有する)。アルファ出力に対する他の閾値レベル(例えば、100%の感度及びより高いレベルの特異度を促す閾値レベル)が考えられる。また、他の周波数帯域(例えば、紡錘波11~16Hz帯域)に対する閾値レベルが考えられる。例えば、紡錘波11~16Hz帯域及び/又は他の帯域は、聴覚的刺激によって引き起こされる睡眠妨害を示すので、これらが使用され得る。有利なことに、上述のようにこの実施形態では、睡眠セッション中に被検者(例えば、図1に示す被検者12)に刺激を与える必要がない。一部の実施形態では、刺激装置16(図1)は、同じ参照睡眠セッション中の異なる時間(例えば、異なる睡眠サイクル中)において低強度刺激、高強度刺激、及び無刺激を提供するように制御要素30(図1)によって制御される。
【0048】
[59]図1に戻り、電子記憶装置22は、情報を電子的に記憶する電子記憶媒体を含む。電子記憶装置22の電子記憶媒体は、システム10と一体的に(すなわち、実質的に取り外し不可能に)提供されるシステムストレージ及び/又は例えばポート(例えば、USBポート、ファイヤーワイヤーポートなど)若しくはドライブ(例えば、ディスクドライブなど)を介してシステム10に取り外し可能に接続可能なリムーバブルストレージの一方又は両方を含み得る。電子記憶装置22は、光学的に読み取り可能な記憶媒体(例えば、光ディスクなど)、磁気的に読み取り可能な記憶媒体(例えば、磁気テープ、磁気ハードドライブ、フロッピードライブなど)、電荷ベースの記憶媒体(例えば、EPROM、RAMなど)、固体記憶媒体(例えば、フラッシュドライブなど)、及び/又は他の電子的に読み取り可能な記憶媒体のうちの1つ又は複数を含み得る。電子記憶装置22は、ソフトウェアアルゴリズム、プロセッサ20によって決定された情報、ユーザインターフェース24及び/又は外部コンピューティングシステムを介して受信された情報、及び/又はシステム10が適切に機能することを可能にする他の情報を記憶し得る。例えば、電子記憶装置22は、本明細書に記載される閾値、睡眠セッション中に被検者に与えられる治療レベルの刺激によって被検者12が妨げられる可能性が高いか否かを決定するために使用されるアルゴリズム、及び/又は他の情報を記憶し得る。電子記憶装置22は、(全体的に又は部分的に)システム10内の別個の構成要素であってもよいし、又は、電子記憶装置22は、(全体的に又は部分的に)システム10の1つ又は複数の他の構成要素(例えば、プロセッサ20)と一体的に提供され得る。
【0049】
[60]ユーザインターフェース24は、システム10と被検者12及び/又は他のユーザとの間のインターフェースを提供するように構成され、このインターフェースを介して、被検者12及び/又は他のユーザはシステム10と情報を交換し得る。これにより、「情報」と総称されるデータ、キュー、結果、及び/又は命令、並びに他の任意の伝達可能なアイテムを、ユーザ(例えば、被検者12)と、感覚的刺激装置16、センサ18、プロセッサ20、及び/又はシステム10の他の構成要素のうちの1つ又は複数との間で伝達することができる。例えば、EEG、閾値レベル、及び/又は他の情報がユーザインターフェース24を介して被検者12及び/又は他のユーザ(例えば医師、看護師、介護者、家族、研究者など)に表示され得る。ユーザインターフェース24に含めるのに適したインターフェース装置の例は、キーパッド、ボタン、スイッチ、キーボード、ノブ、レバー、ディスプレイスクリーン、タッチスクリーン、スピーカ、マイクロフォン、表示灯、可聴アラーム、プリンタ、触覚フィードバック装置、及び/又は他のインターフェース装置を含む。
【0050】
[61]一部の実施形態では、ユーザインターフェース24は複数の別個のインターフェースを含む。一部の実施形態では、ユーザインターフェース24は、プロセッサ20及び/又はシステム10の他の構成要素と一体的に提供される少なくとも1つのインターフェースを含む。一部の実施形態では、ユーザインターフェース24は、プロセッサ20及び/又はシステム10の他の構成要素と無線通信するように構成される。一部の実施形態では、後述するように、ユーザインターフェース24は、センサ18、刺激装置16、プロセッサ20、電子記憶装置22、及び/又はシステム10の他の構成要素と共に単一の装置に含まれてもよい。一部の実施形態では、ユーザインターフェース24は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、及び/又は他の計算装置などの計算装置であり得る、及び/又は、に含まれ得る。そのような計算装置は、ユーザに情報を送るように及び/又はユーザから情報を受け取るように構成されたグラフィカルユーザインターフェースを有する1つ又は複数の電子アプリケーションを実行し得る。
【0051】
[62]ハードワイヤード又はワイヤレスのいずれであろうと、他の通信技術もまたユーザインターフェース24として本開示によって考えられることを理解されたい。例えば、本開示は、ユーザインターフェース24が電子記憶装置22によって提供されるリムーバブルストレージインターフェースと統合され得ることを考慮する。この例では、ユーザがシステム10の実装をカスタマイズすることを可能にするリムーバブルストレージ(例えば、スマートカード、フラッシュドライブ、リムーバブルディスクなど)からシステム10内に情報がロードされ得る。ユーザインターフェース24としてシステム10と共に使用するのに適した他の例示的な入力装置及び技術は、限定はされないが、RS-232ポート、RFリンク、IRリンク、モデム(電話、ケーブル等)を含む。要するに、システム10と情報を通信するための任意の技術が、本開示によってユーザインターフェース24として考慮される。
【0052】
[63]外部リソース26は、情報ソース(例えば、データベース、ウェブサイトなど)、システム10に参加している外部エンティティ(例えば、医療提供者の医療記録システム)、システム10と通信するように及び/又はシステム10によって制御されるように構成された医療機器及び/又は他の機器(例えば、ランプ及び/又は他の照明装置、サウンドシステム、音響及び/又は視覚的記録装置など)、システム10の外部にある1つ又は複数のサーバ、ネットワーク(例えば、インターネット)、電子記憶装置、Wi-Fi技術に関連する機器、Bluetooth(登録商標)技術に関連する機器、データ入力装置、センサ、スキャナ、個々のユーザに関連づけられた計算装置、及び/又は他のリソースを含む。一部の実装形態では、本明細書で外部リソース26に起因する機能のうちの一部又は全てが、システム10に含まれるリソースによって提供され得る。外部リソース26は、プロセッサ20、ユーザインターフェース24、センサ18、電子記憶装置22、感覚的刺激装置16、及び/又はシステム10の他の構成要素と、有線及び/又は無線接続を介して、ネットワーク(例えばローカルエリアネットワーク及び/又はインターネット)を介して、セルラー技術を介して、Wi-Fi技術を介して、及び/又は他のリソースを介して通信するように構成され得る。
【0053】
[64]図1では、感覚的刺激装置16、センサ18、プロセッサ20、電子記憶装置22、及びユーザインターフェース24は別々のエンティティとして示されている。これは限定を意図しない。システム10の構成要素のうちの一部及び/又は全て、及び/又は他の構成要素が、1つ又は複数の単一の装置内にまとめられ得る。例えば、これらの構成要素は、睡眠中に被検者12が着用するヘッドセット及び/又は他の衣服に組み込まれてもよい。
【0054】
[65]図12は、睡眠セッション中に被検者に与えられる治療レベルの刺激によって被検者が妨げられる可能性が高いか否かを、決定システムを用いて決定するための方法1200を示す。決定システムは、1つ又は複数の刺激装置、1つ又は複数のセンサ、1つ又は複数のハードウェアプロセッサ、及び/又は他の構成要素を含む。1つ又は複数のハードウェアプロセッサは、コンピュータプログラム要素を実行するように構成される。コンピュータプログラム要素は、制御要素、パラメータ要素、妨害決定要素、及び/又は他の要素を含む。以下に提示される方法1200の動作は例示に過ぎない。一部の実施形態では、方法1200は、説明されていない1つ又は複数の追加動作を用いて、及び/又は説明されている1つ又は複数の動作を用いずに達成され得る。また、図12に示されており、後述される方法1200の動作の順序は限定的ではない。
【0055】
[66]一部の実施形態では、方法1200は1つ又は複数の処理装置において実装され得る(例えば、デジタルプロセッサ、アナログプロセッサ、情報を処理するように設計されたデジタル回路、情報を処理するように設計されたアナログ回路、状態機械、及び/又は情報を電子的に処理する他の機構)。1つ又は複数の処理装置は、電子記憶媒体に電子的に記憶された命令に応じて、方法1200の動作のうちの一部又は全てを実行する1つ又は複数の装置を含み得る。1つ又は複数の処理装置は、方法1200の1つ又は複数の動作の実行のために特定的に設計されるハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアによって構成された1つ又は複数の装置を含み得る。
【0056】
[67]動作1202において、睡眠セッション中に被検者に刺激を与えるように1つ又は複数の刺激装置が制御される。一部の実施形態では、1つ又は複数の刺激装置はトーン生成装置及び/又は他の刺激装置を含む。一部の実施形態では、動作1202は、(図1に示され本明細書において説明される)制御要素30と同じ又は類似のプロセッサ要素によって実行される。
【0057】
[68]動作1204において、睡眠セッション中の被検者の脳活動に関する情報を伝える出力信号が生成される。一部の実施形態では、1つ又は複数のセンサは、脳波(EEG)センサ、及び/又は被検者の脳活動に関する情報を伝えるEEG出力信号を生成するように構成された他のセンサを含む。一部の実施形態では、1つ又は複数のセンサは、(例えば)マイクロフォン、及び/又は被検者に提供される刺激に関する情報を伝える出力信号を生成するように構成された他のセンサを含む。一部の実施形態では、動作1204は、(図1に示され本明細書において説明される)センサ18と同じ又は類似の1つ又は複数のセンサによって実行される。
【0058】
[69]動作1206において、1つ又は複数の刺激装置は、参照睡眠セッション中に被検者に低強度刺激を提供する(動作1206(a))ように、高強度刺激を提供する(動作1206(b))ように、又は刺激を一切提供しない(動作1206(c))ように制御される。一部の実施形態では、1つ又は複数の刺激装置は、同じ参照睡眠セッション中の異なる時間において低強度刺激及び高強度刺激を提供するように制御される。低強度刺激は、参照睡眠セッション中に被検者に睡眠妨害を引き起こさない刺激を含む。一部の実施形態では、低強度刺激は、5~30秒の範囲内のランダム化されたトーン間間隔を有する5つ以下のトーンブロックとして、30~40デシベルの音量のトーンを含む。高強度刺激は、参照睡眠セッション中に被検者に睡眠妨害を引き起こす刺激を含む。一部の実施形態では、動作1206は、(図1に示され本明細書において説明される)制御要素30と同じ又は類似のプロセッサ要素によって実行される。
【0059】
[70]動作1208において、出力信号及び/又は他の情報に基づいて脳活動パラメータが決定され、脳活動パラメータは、被検者が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示す閾値と比較され、そして、この比較に基づいて被検者が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かが決定される。脳活動パラメータが脳活動パラメータ閾値に違反することに応じて、被検者が治療レベルの刺激によって妨害される可能性が高いと決定される。
【0060】
[71]低強度刺激を提供するように1つ又は複数の刺激装置を制御することに応じて、脳活動パラメータは、低強度刺激によって引き起こされるEEGデルタ出力レベルの変化を含み、閾値は、被検者が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示すデルタ出力の変化のための閾値レベルである。高強度刺激を提供するように1つ又は複数の刺激装置を制御することに応じて、脳活動パラメータは、被検者の微小覚醒の量を含み、閾値は、被検者が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示す微小覚醒の量の閾値である。一部の実施形態では、微小覚醒の量は、高強度刺激によって引き起こされる微小覚醒の量と、自発的微小覚醒の量との比を含み、閾値は、高強度刺激によって引き起こされる微小覚醒と自発的覚醒とについての閾値比である。刺激を提供しないように1つ又は複数の刺激装置を制御することに応じて、脳活動パラメータはEEGアルファ出力レベルを含み、閾値は、被検者が治療レベルの刺激によって妨げられる可能性が高いか否かを示すアルファ出力のための閾値レベルである。一部の実施形態では、動作1208は、(図1に示され本明細書において説明される)パラメータ要素32及び/又は妨害決定要素34と同じ又は類似のプロセッサ要素によって実行される。
【0061】
[72]上記で提供された説明は、現在最も実用的で好ましい実施形態であると考えられているものに基づき、説明を目的として詳細を提供するが、かかる詳細はもっぱら説明のためであり、本開示は明示される実施形態に限定されないことを理解されたい。反対に、本開示は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲に含まれる変形形態及び等価構成をカバーするものとする。例えば、本開示は、可能な範囲で、任意の実施形態の1つ又は複数の特徴が、任意の他の実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせられ得ることを考慮することを理解されたい。
【0062】
[73]特許請求の範囲において、括弧間に置かれた参照符号は、請求項を限定するものとして解釈されるべきではない。「備える」又は「含む」という用語は、請求項に列挙された要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。いくつかの手段を列挙する装置クレームにおいて、これらの手段のうちのいくつかは、同一のハードウェアアイテムによって具現化されてもよい。単数形の要素は、複数のかかる要素の存在を排除するものではない。いくつかの手段を列挙する装置クレームにおいて、これらの手段のうちのいくつかは、同一のハードウェアアイテムによって具現化されてもよい。複数の要素が互いに異なる従属請求項に記載されているからといって、これらの要素の組み合わせを使用することができないとは限らない。
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