(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】クロマトグラフィーにおけるバイオバーデンを低減するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/18 20060101AFI20240426BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20240426BHJP
B01D 15/38 20060101ALI20240426BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20240426BHJP
A61L 101/02 20060101ALN20240426BHJP
A61L 101/34 20060101ALN20240426BHJP
A61L 101/36 20060101ALN20240426BHJP
【FI】
A61L2/18
B01D15/00 G
B01D15/38
A61K39/395 K
A61L101:02
A61L101:34
A61L101:36
(21)【出願番号】P 2019540624
(86)(22)【出願日】2018-01-29
(86)【国際出願番号】 US2018015764
(87)【国際公開番号】W WO2018140887
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-11-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-09
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マオ, ネイサン エル.
(72)【発明者】
【氏名】チー, ウェンビン
(72)【発明者】
【氏名】シリング, バーンハード
(72)【発明者】
【氏名】カーバー, スコット
【合議体】
【審判長】亀ヶ谷 明久
【審判官】関根 裕
【審判官】瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-538320号公報(JP,A)
【文献】特表2007-528989号公報(JP,A)
【文献】特表2003-511468号公報(JP,A)
【文献】特表2010-518376号公報(JP,A)
【文献】特表2015-520667号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/18
B01D15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを組成物と接触させるステップを含み、前記組成物が、
(a)0.4M~0.7Mの酢酸、
(b)0.4M~0.7Mの酢酸およびベンジルアルコール、
(c)0.1M~0.5Mの酢酸および1%ベンジルアルコール、または
(d)0.5M~1.0Mの酢酸および1%~2%ベンジルアルコール、
からなり、前記接触させるステップが1時間~4時間行われ、前記方法は、前記クロマトグラフィーマトリックスを水酸化ナトリウム溶液に接触させる工程を含まない、方法。
【請求項2】
前記接触させるステップが4時間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物(a)が、0.5Mの酢酸からなり、前記接触させるステップが4時間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを組成物と接触させるステップを含み、前記組成物が、
(a)0.4M~0.7Mの酢酸、
(b)0.4M~0.7Mの酢酸およびベンジルアルコール、
(c)0.1M~0.5Mの酢酸および1%ベンジルアルコール、または
(d)0.5M~1.0Mの酢酸および1%~2%ベンジルアルコール、
からなり、前記クロマトグラフィーマトリックスにおいて、胞子形成細菌の量の少なくとも3log
10の低減、グラム陽性細菌の量の少なくとも5log
10の低減、およびグラム陰性細菌の量の少なくとも5log
10の低減のうちの1つまたは複数をもたらし、前記方法は、前記クロマトグラフィーマトリックスを水酸化ナトリウム溶液に接触させる工程を含まない、方法。
【請求項5】
前記接触させるステップが、前記クロマトグラフィーマトリックスにおいて、(1)生物濾過アッセイ、(2)顕微鏡細菌染色、(3)IR/FTIR分光法、(4)無菌試験法、および(5)細菌同定試験からなる群から選択されるアッセイによる決定で検出限界未満までの、胞子形成細菌、グラム陽性細菌、およびグラム陰性細菌のうちの1つまたは複数の量の低減をもたらす、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記胞子形成細菌がBacillus pseudofirmusであり、前記グラム陽性細菌がMicrobacterium spp.であり、前記グラム陰性細菌がStenotrophomonas maltophiliaである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が2~約3の間のpHを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記接触させるステップが15℃~30℃の間温度で実行される、請求項1に記載の方
法。
【請求項9】
前記接触させるステップが20℃~25℃の間温度で実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記クロマトグラフィーマトリックスが支持体に連結されたタンパク質性リガンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
タンパク質の精製のために、前記タンパク質を含む組成物をアプライする前に微生物負荷を低減させる方法であって、
クロマトグラフィー
マトリックスを提供する工程、
請求項1に記載の方法を行う工程、
タンパク質の精製のために、前記タンパク質を含む組成物を、前記クロマトグラフィーマトリックスにアプライする工程
を含む、方法。
【請求項12】
前記組成物が、0.4M~0.7Mの酢酸からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、0.4M~0.7Mの酢酸およびベンジルアルコールからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、0.4M~0.5Mの酢酸からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、0.1M~0.5Mの酢酸および1%のベンジルアルコールからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、0.5M~1.0Mの酢酸および1%~2%のベンジルアルコールからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、
(a)0.4M~0.7Mの酢酸、
(b)0.4M~0.7Mの酢酸およびベンジルアルコール、または
(c)0.5M~1.0Mの酢酸および1%~2%ベンジルアルコール
からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、
(a)0.4M~0.7Mの酢酸、
(b)0.4M~0.7Mの酢酸およびベンジルアルコール、または
(c)0.5M~1.0Mの酢酸および1%~2%ベンジルアルコール
からなる、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年1月30日に出願された,米国仮出願番号第62/452,140号に基づく優先権を主張しており、その開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、大規模なプロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーカラムの状況におけるバイオバーデンの低減を含む、様々なクロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
抗体薬物は、最も普及したバイオ医薬製品である。例えば、天然のまたは操作されたStaphylococcusプロテインAリガンドを用いて行われるアフィニティークロマトグラフィーは、抗体薬物の製造プロセスにおいて不純物および汚染物を除去するための捕捉方法として広く使用されている。プロテインAは抗体のFc領域に結合し、プロテインAカラムはモノクローナル抗体の精製について選択的であると考えられる。プロテインAを用いるアフィニティークロマトグラフィーは、典型的に、沈殿または変性した物質などのカラムに結合した不純物を洗浄および除去するために定置洗浄(clean-in-place)(CIP)ステップを伴う。CIPは、通常、水酸化ナトリウム溶液を用いて行われる。
【0004】
洗浄に加えて、プロテインAクロマトグラフィーマトリックスまたはカラム中の微生物の数を低減させるために、水酸化ナトリウム溶液、またはベンジルアルコールを含むリン酸溶液が使用される。モノクローナル抗体産生細胞を培養するために使用される培地、ならびに関連する宿主細胞のタンパク質およびDNAからの細菌は、使用中にプロテインAカラムのバイオバーデンを急速に増加させ得る。そのような細菌および微生物としてのバイオバーデンの増加はカラム上に蓄積する。カラム性能は、一般に、バイオバーデンが増加するにつれて劣化する。そのような劣化の徴候としては、製造物純度の減少、カラムパッキングの悪化、およびバックプレッシャーの増加が挙げられる。
【0005】
プロテインAカラムは非常に高価であり、そのような親和性カラムのパッキングおよびアンパッキングは労働集約的であるので、プロテインAカラム上の微生物バイオバーデンの管理および低減は重要である。プロテインAカラムを交換しまたはプロテインAカラム精製の上流に処理ステップを加える費用を回避するために、プロテインAの構造および機能に負に影響することなくカラムから迅速に大量のバイオバーデンを除去し、下流への効果をほとんど有しない薬剤を発見する必要がある。
【0006】
微生物バイオバーデンの低減の重要性はプロテインAクロマトグラフィーマトリックスに限定されず、支持体に連結されたタンパク質性リガンドを用いる他のクロマトグラフィーマトリックス、およびタンパク質性リガンドを伴わないマトリックス、例えば、様々なイオン交換クロマトグラフィーマトリックス、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)マトリックス、ミックスモードクロマトグラフィーマトリックス、サイズ排除クロマトグラフィーマトリックスなども包含される。
【0007】
クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減は、医薬品適正製造基準(GMP)、または現行医薬品適正製造基準(CGMP)の状況において特に重要である。そのような基準は、米国食品医薬品局などの規制機関の要件を満たすように製造ステップおよび製造物の品質の一貫性を提供しなければならない。GMPおよびCGMPは、製造プロセスにおける高い程度の予測可能性および標準化、特に、ヒト患者において使用される製造される治療用生体分子の純度を確実にすることを必要とする。生体分子を製造するための培養物の生育に関与する労働力と共に、失敗が起こった時に大きな費用が発生する。過度のバイオバーデンはカラム性能を減少させることがあり、それは標準化されかつ予測可能な方式での製造物の精製に干渉することがあり、また他の失敗点の誘発を引き起こす可能性がある。
【0008】
バイオバーデンを低減させるための当該技術分野において現在公知の剤は、負の下流の効果を有する。例えば、水酸化ナトリウムに基づく溶液、およびベンジルアルコールを含むリン酸に基づく溶液は、微生物の殺滅に効果的なことがあるが、タンパク質性(proteinaceious)リガンド(例えば、プロテインA)を変性させ、それらの機能に負に影響する傾向もある。
【0009】
さらに、酸化剤およびそのような溶液の他の成分は、精製されたモノクローナル抗体と共に残存することがあり、下流でそれらをさらに劣化させる可能性がある。
【0010】
したがって、クロマトグラフィーマトリックス、特にタンパク質性リガンドを有するマトリックス、例えばプロテインAクロマトグラフィーマトリックスにおいてバイオバーデンを低減させることは難しいことを当業者は理解している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要旨
上に明記した通り、様々なクロマトグラフィーマトリックス、特に、プロテインAなどのタンパク質性リガンドを伴うクロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンを低減させるために大規模なGMPおよびCGMPの状況で使用できる新規の効果的な方法の必要性が存在する。本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための組成物および方法を提供することによりこの必要性および他の必要性に対処する。
【0012】
一態様では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約0.1M~約0.5Mの酢酸を含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約2時間行われる、方法を提供する。
【0013】
関連する態様では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約0.5M~約1.0Mの酢酸を含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約1時間行われる、方法を提供する。
【0014】
関連する態様では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、前記クロマトグラフィーマトリックスを約0.1M~約1.0Mの酢酸を含む組成物と接触させるステップを含み、前記接触させるステップが、前記クロマトグラフィーマトリックスにおいて、胞子形成細菌の量の少なくとも3log10の低減、グラム陽性細菌の量の少なくとも5log10の低減、およびグラム陰性細菌の量の少なくとも5log10の低減のうちの1つまたは複数をもたらす、方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約4.0M~約12.0Mの尿素を含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約30分間行われる、方法を提供する。
【0016】
関連する態様では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約4.0M~約12.0Mの尿素を含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、胞子形成細菌の量の少なくとも2log10の低減、グラム陽性細菌の量の少なくとも5log10の低減、およびグラム陰性細菌の量の少なくとも5log10の低減のうちの1つまたは複数をもたらす、方法を提供する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、MabSelect(商標) Xtraクロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約0.5Mの酢酸から本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約4時間行われる、方法を提供する。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、MabSelect(商標) Xtraクロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約0.1Mの酢酸および約20%のエタノールから本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約4時間行われる、方法を提供する。
【0019】
さらなる実施形態では、本発明は、MabSelect(商標) Xtraクロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約8Mの尿素から本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約1時間行われる、方法を提供する。
【0020】
さらに別の実施形態では、本発明は、MabSelect(商標) Xtraクロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約8Mの尿素および約20%のエタノールから本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約1時間行われる、方法を提供する。
【0021】
一実施形態では、本発明は、医薬物質を含む組成物を精製のためにアプライする前に微生物負荷を低減させる方法であって、(a)クロマトグラフィーマトリックスを提供するステップ、(b)本発明の上記の方法のいずれかを行うステップ、および(c)医薬物質を含む組成物をクロマトグラフィーマトリックスにアプライするステップを含む、方法を提供する。
【0022】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の説明、特許請求の範囲および図面において当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、0.5Mの酢酸を含む溶液でのスパイク試験の結果を示すグラフである。細菌殺滅の程度を、クロマトグラフィーマトリックスなしで溶液中で測定する。黒のバーは、0.5Mの酢酸への曝露前(T=0)および酢酸への曝露の1時間後(T=1時間)のMabSelect(商標) XtraカラムにおけるBacillus psuedofirmusの量を表し、斜線のバーはMicrobacterium speciesの量を表す。
【0024】
【
図2】
図2は、Bacillus pseudofirmusで溶液をスパイクし、かつ細菌力価を測定することによる、クロマトグラフィーマトリックスなしでの溶液中のBacillus psuedofirmusの殺滅の結果を示すグラフである。以下の剤を別々の溶液に加えた:(a)注射水(WFI)、(b)8Mの尿素、(c)8Mの尿素および20%のエタノール、(d)6Mの塩酸グアニジン、(e)塩酸グアニジンと20%のエタノール。それぞれについて、PBS中でのスパイク確認測定、ならびに0分、30分、および60分の時点での測定を行った。黒のバーはWFI、水平線のバーは8Mの尿素、白のバーは8Mの尿素と20%のエタノール、斜線のバーは6Mの塩酸グアニジン、網掛けのバーは6Mの塩酸グアニジンおよび20%のエタノールである。
【0025】
【
図3】
図3は、Bacillus pseudofirmusで溶液をスパイクし、かつ細菌力価を測定することによる、クロマトグラフィーマトリックスなしでの溶液中のMicrobacterium speciesの殺滅の結果を示すグラフである。以下の剤を加えた:(a)注射水(WFI)、(b)8Mの尿素、(c)8Mの尿素および20%のエタノール、(d)6Mの塩酸グアニジン、(e)塩酸グアニジンと20%のエタノール。PBS中でのスパイク確認測定、ならびに0分、30分、および60分の時点での測定を行った。黒のバーはWFI、水平線のバーは8Mの尿素、白のバーは8Mの尿素および20%のエタノール、斜線のバーは6Mの塩酸グアニジン、網掛けのバーは6Mの塩酸グアニジンおよび20%のエタノールである。
【0026】
【
図4】
図4は、Bacillus pseudofirmusで溶液をスパイクし、かつ細菌力価を測定することによる、クロマトグラフィーマトリックスなしでの溶液中のStenotrophomonas maltophiliaの殺滅の結果を示すグラフである。以下の剤を加えた:(a)注射水(WFI)、(b)8Mの尿素、(c)8Mの尿素および20%のエタノール、(d)6Mの塩酸グアニジン、(e)塩酸グアニジンと20%のエタノール。PBS中でのスパイク確認測定、ならびに0分、30分、および60分の時点での測定を行った。黒のバーはWFI、水平線のバーは8Mの尿素、白のバーは8Mの尿素および20%のエタノール、斜線のバーは6Mの塩酸グアニジン、網掛けのバーは6Mの塩酸グアニジンおよび20%のエタノールである。
【0027】
【
図5】
図5は、異なる期間にわたり0.5Mの酢酸に曝露したプロテインA含有樹脂(MabSelect(商標) XtraおよびMabSelect(商標) SuRe)に対して行った様々な製造物品質試験の結果を示す図である。黒丸は、0.5Mの酢酸に375時間曝露した、または全く曝露しなかったMabSelect(商標) Xtraについての値を示す。バツ印は、0.5Mの酢酸に5、10、25、200もしくは400時間曝露しなかった、または全く曝露しなかったMabSelect(商標) SuReについての値を示す。
【
図6】
図6は、異なる期間にわたり0.5Mの酢酸に曝露したプロテインA含有樹脂(MabSelect(商標) XtraおよびMabSelect(商標) SuRe)に対して行った様々な製造物品質試験の結果を示す図である。黒丸は、0.5Mの酢酸に375時間曝露した、または全く曝露しなかったMabSelect(商標) Xtraについての値を示す。バツ印は、0.5Mの酢酸に5、10、25、200もしくは400時間曝露しなかった、または全く曝露しなかったMabSelect(商標) SuReについての値を示す。
【
図7】
図7は、異なる期間にわたり0.5Mの酢酸に曝露したプロテインA含有樹脂(MabSelect(商標) XtraおよびMabSelect(商標) SuRe)に対して行った様々な製造物品質試験の結果を示す図である。黒丸は、0.5Mの酢酸に375時間曝露した、または全く曝露しなかったMabSelect(商標) Xtraについての値を示す。バツ印は、0.5Mの酢酸に5、10、25、200もしくは400時間曝露しなかった、または全く曝露しなかったMabSelect(商標) SuReについての値を示す。
【
図8】
図8は、異なる期間にわたり0.5Mの酢酸に曝露したプロテインA含有樹脂(MabSelect(商標) XtraおよびMabSelect(商標) SuRe)に対して行った様々な製造物品質試験の結果を示す図である。黒丸は、0.5Mの酢酸に375時間曝露した、または全く曝露しなかったMabSelect(商標) Xtraについての値を示す。バツ印は、0.5Mの酢酸に5、10、25、200もしくは400時間曝露しなかった、または全く曝露しなかったMabSelect(商標) SuReについての値を示す。
【
図9】
図9は、異なる期間にわたり0.5Mの酢酸に曝露したプロテインA含有樹脂(MabSelect(商標) XtraおよびMabSelect(商標) SuRe)に対して行った様々な製造物品質試験の結果を示す図である。黒丸は、0.5Mの酢酸に375時間曝露した、または全く曝露しなかったMabSelect(商標) Xtraについての値を示す。バツ印は、0.5Mの酢酸に5、10、25、200もしくは400時間曝露しなかった、または全く曝露しなかったMabSelect(商標) SuReについての値を示す。
【0028】
【
図10】
図10は、MabSelect(商標) XtraプロテインA樹脂に対して行った様々な製造物品質試験のANOVA分析を示す図である。酸処理後の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への375時間の曝露の表1からの値を反映する。酸処理前の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への0時間の曝露の表1からの値を反映する。菱形は、95%信頼区間に基づく範囲を指し示す。酸処理後の範囲の全ては酸処理前の範囲と重なり合う。ANOVA分析は、0.5Mの酢酸への樹脂の長期の曝露からのタンパク質の品質に対する統計的に有意な負の効果を示さない。
【
図11】
図11は、MabSelect(商標) XtraプロテインA樹脂に対して行った様々な製造物品質試験のANOVA分析を示す図である。酸処理後の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への375時間の曝露の表1からの値を反映する。酸処理前の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への0時間の曝露の表1からの値を反映する。菱形は、95%信頼区間に基づく範囲を指し示す。酸処理後の範囲の全ては酸処理前の範囲と重なり合う。ANOVA分析は、0.5Mの酢酸への樹脂の長期の曝露からのタンパク質の品質に対する統計的に有意な負の効果を示さない。
【
図12】
図12は、MabSelect(商標) XtraプロテインA樹脂に対して行った様々な製造物品質試験のANOVA分析を示す図である。酸処理後の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への375時間の曝露の表1からの値を反映する。酸処理前の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への0時間の曝露の表1からの値を反映する。菱形は、95%信頼区間に基づく範囲を指し示す。酸処理後の範囲の全ては酸処理前の範囲と重なり合う。ANOVA分析は、0.5Mの酢酸への樹脂の長期の曝露からのタンパク質の品質に対する統計的に有意な負の効果を示さない。
【
図13】
図13は、MabSelect(商標) XtraプロテインA樹脂に対して行った様々な製造物品質試験のANOVA分析を示す図である。酸処理後の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への375時間の曝露の表1からの値を反映する。酸処理前の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への0時間の曝露の表1からの値を反映する。菱形は、95%信頼区間に基づく範囲を指し示す。酸処理後の範囲の全ては酸処理前の範囲と重なり合う。ANOVA分析は、0.5Mの酢酸への樹脂の長期の曝露からのタンパク質の品質に対する統計的に有意な負の効果を示さない。
【
図14】
図14は、MabSelect(商標) XtraプロテインA樹脂に対して行った様々な製造物品質試験のANOVA分析を示す図である。酸処理後の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への375時間の曝露の表1からの値を反映する。酸処理前の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への0時間の曝露の表1からの値を反映する。菱形は、95%信頼区間に基づく範囲を指し示す。酸処理後の範囲の全ては酸処理前の範囲と重なり合う。ANOVA分析は、0.5Mの酢酸への樹脂の長期の曝露からのタンパク質の品質に対する統計的に有意な負の効果を示さない。
【0029】
【
図15】
図15は、MabSelect(商標) SuReプロテインA樹脂に対して行った様々な製造物品質試験のANOVA分析を示す図である。酸処理後の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への400時間の曝露の表1からの値を反映する。酸処理前の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への0時間の曝露の表1からの値を反映する。菱形は、95%信頼区間に基づく範囲を指し示す。範囲は、統計的に有意な程度まで酸への曝露後により大きい。
【
図16】
図16は、MabSelect(商標) SuReプロテインA樹脂に対して行った様々な製造物品質試験のANOVA分析を示す図である。酸処理後の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への400時間の曝露の表1からの値を反映する。酸処理前の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への0時間の曝露の表1からの値を反映する。菱形は、95%信頼区間に基づく範囲を指し示す。酸処理前の範囲は酸処理後の範囲と重なり合う。ANOVA分析は、0.5Mの酢酸への樹脂の長期の曝露からのタンパク質の品質に対する統計的に有意な負の効果を示さない。
【
図17】
図17は、MabSelect(商標) SuReプロテインA樹脂に対して行った様々な製造物品質試験のANOVA分析を示す図である。酸処理後の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への400時間の曝露の表1からの値を反映する。酸処理前の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への0時間の曝露の表1からの値を反映する。菱形は、95%信頼区間に基づく範囲を指し示す。酸処理前の範囲は酸処理後の範囲と重なり合う。ANOVA分析は、0.5Mの酢酸への樹脂の長期の曝露からのタンパク質の品質に対する統計的に有意な負の効果を示さない。
【
図18】
図18は、MabSelect(商標) SuReプロテインA樹脂に対して行った様々な製造物品質試験のANOVA分析を示す図である。酸処理後の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への400時間の曝露の表1からの値を反映する。酸処理前の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への0時間の曝露の表1からの値を反映する。菱形は、95%信頼区間に基づく範囲を指し示す。酸処理前の範囲は酸処理後の範囲と重なり合う。ANOVA分析は、0.5Mの酢酸への樹脂の長期の曝露からのタンパク質の品質に対する統計的に有意な負の効果を示さない。
【
図19】
図19は、MabSelect(商標) SuReプロテインA樹脂に対して行った様々な製造物品質試験のANOVA分析を示す図である。酸処理後の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への400時間の曝露の表1からの値を反映する。酸処理前の欄において、黒丸は、0.5Mの酢酸への0時間の曝露の表1からの値を反映する。菱形は、95%信頼区間に基づく範囲を指し示す。酸処理前の範囲は酸処理後の範囲と重なり合う。ANOVA分析は、0.5Mの酢酸への樹脂の長期の曝露からのタンパク質の品質に対する統計的に有意な負の効果を示さない。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
一態様では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約0.1M~約0.5Mの酢酸を含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約2時間行われる、方法を提供する。様々な実施形態では、接触させるステップは、2~5時間、2~10時間、2~25時間、2~200時間、2~375時間、または2~400時間行われる。一実施形態では、接触させるステップは少なくとも約4時間行われる。様々な実施形態では、接触させるステップは、4~5時間、4~10時間、4~25時間、4~200時間、4~375時間、または4~400時間行われる。一実施形態では、組成物は約0.1Mの酢酸を含み、接触させるステップは少なくとも約4時間行われる。一実施形態では、組成物は約0.5Mの酢酸を含み、接触させるステップは少なくとも約4時間行われる。様々な実施形態では、組成物は約0.5Mの酢酸を含み、接触させるステップは、4~5時間、4~10時間、4~25時間、4~200時間、4~375時間、または4~400時間行われる。
【0031】
一実施形態では、組成物はアルコールをさらに含む。使用できるアルコールの非限定的な例としては、エタノール(例えば、約20%)およびベンジルアルコール(例えば、約1%~約2%)が挙げられる。1つの特定の実施形態では、組成物は、約0.1Mの酢酸および約20%のエタノールから本質的になる。
【0032】
一実施形態では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約0.1M~約0.5Mの酢酸から本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約2時間行われる、方法を提供する。1つの特定の実施形態では、接触させるステップは少なくとも約4時間行われる。様々な実施形態では、接触させるステップは、4~5時間、4~10時間、4~25時間、4~200時間、4~375時間、または4~400時間行われる。1つの特定の実施形態では、組成物は約0.1Mの酢酸から本質的になり、接触させるステップは少なくとも約4時間行われる。別の特定の実施形態では、組成物は約0.5Mの酢酸から本質的になり、接触させるステップは少なくとも約4時間行われる。様々な実施形態では、組成物は約0.5Mの酢酸を含み、接触させるステップは、4~5時間、4~10時間、4~25時間、4~200時間、4~375時間、または4~400時間行われる。
【0033】
関連する態様では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約0.5M~約1.0Mの酢酸を含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約1時間行われる、方法を提供する。様々な実施形態では、接触させるステップは、1~5時間、1~10時間、1~25時間、1~200時間、1~375時間、1~400時間、4~5時間、4~10時間、4~25時間、4~200時間、4~375時間、または4~400時間行われる。一実施形態では、組成物は約0.5Mの酢酸を含み、接触させるステップは少なくとも約1時間行われる。様々な実施形態では、組成物は約0.5Mの酢酸を含み、接触させるステップは、1~5時間、1~10時間、1~25時間、1~200時間、1~375時間、1~400時間、4~5時間、4~10時間、4~25時間、4~200時間、4~375時間、または4~400時間行われる。
【0034】
一実施形態では、組成物はアルコールをさらに含む。使用できるアルコールの非限定的な例としては、エタノール(例えば、約20%)およびベンジルアルコール(例えば、約1%~約2%)が挙げられる。1つの特定の実施形態では、組成物は、約0.5Mの酢酸および約20%のエタノールから本質的になる。
【0035】
一実施形態では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約0.5M~約1.0Mの酢酸から本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約1時間行われる、方法を提供する。様々な実施形態では、組成物は約0.5M~約1.0Mの酢酸から本質的になり、接触させるステップは、1~5時間、1~10時間、1~25時間、1~200時間、1~375時間、1~400時間、4~5時間、4~10時間、4~25時間、4~200時間、4~375時間、または4~400時間行われる。1つの特定の実施形態では、組成物は約0.5Mの酢酸から本質的になり、接触させるステップは少なくとも約1時間行われる。様々な実施形態では、組成物は約0.5Mの酢酸から本質的になり、接触させるステップは、1~5時間、1~10時間、1~25時間、1~200時間、1~375時間、1~400時間、4~5時間、4~10時間、4~25時間、4~200時間、4~375時間、または4~400時間行われる。
【0036】
関連する態様では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約0.1M~約1.0Mの酢酸を含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、胞子形成細菌(例えば、Bacillus pseudofirmus)の量の少なくとも3log10の低減、グラム陽性細菌(例えば、Microbacterium spp.)の量の少なくとも5log10の低減、およびグラム陰性細菌(例えば、Stenotrophomonas maltophilia)の量の少なくとも5log10の低減のうちの1つまたは複数をもたらす、方法を提供する。1つの特定の実施形態では、接触させるステップは、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、例えば、(1)生物濾過アッセイ、(2)顕微鏡細菌染色(microscopic bacterial staining)、(3)IR/FTIR分光法、(4)無菌試験、または(5)細菌同定試験などのアッセイによる決定で検出限界未満までの、胞子形成細菌(例えば、Bacillus pseudofirmus)、グラム陽性細菌(例えば、Microbacterium spp.)、およびグラム陰性細菌(例えば、Stenotrophomonas maltophilia)のうちの1つまたは複数の量の低減をもたらす。様々な実施形態では、接触させるステップは、少なくとも約1時間、1~5時間、1~10時間、1~25時間、1~200時間、1~375時間、1~400時間、少なくとも約4時間、4~5時間、4~10時間、4~25時間、4~200時間、4~375時間、または4~400時間行われる。
【0037】
一実施形態では、組成物はアルコールをさらに含む。使用できるアルコールの非限定的な例としては、エタノール(例えば、約20%)およびベンジルアルコール(例えば、約1%~約2%)が挙げられる。1つの特定の実施形態では、組成物は、約0.1Mの酢酸および約20%のエタノールから本質的になる。1つの特定の実施形態では、組成物は、約0.5Mの酢酸および約20%のエタノールから本質的になる。
【0038】
一実施形態では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約0.1M~約1.0Mの酢酸から本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、胞子形成細菌(例えば、Bacillus pseudofirmus)の量の少なくとも3log10の低減、グラム陽性細菌(例えば、Microbacterium spp.)の量の少なくとも5log10の低減、およびグラム陰性細菌(例えば、Stenotrophomonas maltophilia)の量の少なくとも5log10の低減のうちの1つまたは複数をもたらす、方法を提供する。1つの特定の実施形態では、接触させるステップは、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、例えば、(1)生物濾過アッセイ、(2)顕微鏡細菌染色、(3)IR/FTIR分光法、(4)無菌試験、または(5)細菌同定試験などのアッセイによる決定で検出限界未満までの、胞子形成細菌(例えば、Bacillus pseudofirmus)、グラム陽性細菌(例えば、Microbacterium spp.)、およびグラム陰性細菌(例えば、Stenotrophomonas maltophilia)のうちの1つまたは複数の量の低減をもたらす。様々な実施形態では、接触させるステップは、少なくとも約1時間、1~5時間、1~10時間、1~25時間、1~200時間、1~375時間、1~400時間、少なくとも約4時間、4~5時間、4~10時間、4~25時間、4~200時間、4~375時間、または4~400時間行われる。
【0039】
本発明の上記の方法のいずれかの一実施形態では、組成物は酢酸塩をさらに含む。
【0040】
本発明の上記の方法のいずれかの一実施形態では、組成物は約2~約3の間のpHを有する。
【0041】
別の態様では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約4.0M~約12.0Mの尿素を含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約30分間行われる、方法を提供する。一実施形態では、接触させるステップは少なくとも約1時間行われる。一実施形態では、組成物は約8Mの尿素を含む。
【0042】
一実施形態では、組成物はアルコールをさらに含む。使用できるアルコールの非限定的な例としては、エタノール(例えば、約20%)およびベンジルアルコール(例えば、約1%~約2%)が挙げられる。1つの特定の実施形態では、組成物は約8Mの尿素および約20%のエタノールから本質的になる。
【0043】
一実施形態では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約4.0M~約12.0Mの尿素から本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約30分間行われる、方法を提供する。1つの特定の実施形態では、接触させるステップは少なくとも約1時間行われる。1つの特定の実施形態では、組成物は8Mの尿素から本質的になる。
【0044】
関連する態様では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約4.0M~約12.0Mの尿素を含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、胞子形成細菌(例えば、Bacillus pseudofirmus)の量の少なくとも2log10の低減、グラム陽性細菌(例えば、Microbacterium spp.)の量の少なくとも5log10の低減、およびグラム陰性細菌(例えば、Stenotrophomonas maltophilia)の量の少なくとも5log10の低減のうちの1つまたは複数をもたらす、方法を提供する。1つの特定の実施形態では、接触させるステップは、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、例えば、(1)生物濾過アッセイ、(2)顕微鏡細菌染色、(3)IR/FTIR分光法、(4)無菌試験、または(5)細菌同定試験などのアッセイによる決定で検出限界未満までの、胞子形成細菌(例えば、Bacillus pseudofirmus)、グラム陽性細菌(例えば、Microbacterium spp.)、およびグラム陰性細菌(例えば、Stenotrophomonas maltophilia)のうちの1つまたは複数の量の低減をもたらす。
【0045】
一実施形態では、組成物はアルコールをさらに含む。使用できるアルコールの非限定的な例としては、エタノール(例えば、約20%)およびベンジルアルコール(例えば、約1%~約2%)が挙げられる。1つの特定の実施形態では、組成物は約8Mの尿素および約20%のエタノールから本質的になる。
【0046】
一実施形態では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約4.0M~約12.0Mの尿素から本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、胞子形成細菌(例えば、Bacillus pseudofirmus)の量の少なくとも2log10の低減、グラム陽性細菌(例えば、Microbacterium spp.)の量の少なくとも5log10の低減、およびグラム陰性細菌(例えば、Stenotrophomonas maltophilia)の量の少なくとも5log10の低減のうちの1つまたは複数をもたらす、方法を提供する。1つの特定の実施形態では、接触させるステップは、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、例えば、(1)生物濾過アッセイ、(2)顕微鏡細菌染色、(3)IR/FTIR分光法、(4)無菌試験、または(5)細菌同定試験などのアッセイによる決定で検出限界未満までの、胞子形成細菌(例えば、Bacillus pseudofirmus)、グラム陽性細菌(例えば、Microbacterium spp.)、およびグラム陰性細菌(例えば、Stenotrophomonas maltophilia)のうちの1つまたは複数の量の低減をもたらす。
【0047】
さらなる態様では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約4.0M~約12.0Mの塩酸グアニジンを含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約30分間行われる、方法を提供する。一実施形態では、接触させるステップは少なくとも約1時間行われる。一実施形態では、組成物は約6Mの塩酸グアニジンを含む。
【0048】
一実施形態では、組成物はアルコールをさらに含む。使用できるアルコールの非限定的な例としては、エタノール(例えば、約20%)およびベンジルアルコール(例えば、約1%~約2%)が挙げられる。1つの特定の実施形態では、組成物は約6Mの塩酸グアニジンおよび約20%のエタノールから本質的になる。
【0049】
一実施形態では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約4.0M~約12.0Mの塩酸グアニジンから本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約30分間行われる、方法を提供する。1つの特定の実施形態では、接触させるステップは少なくとも約1時間行われる。1つの特定の実施形態では、組成物は約6Mの塩酸グアニジンから本質的になる。
【0050】
関連する態様では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約4.0M~約12.0Mの塩酸グアニジンを含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、胞子形成細菌(例えば、Bacillus pseudofirmus)の量の少なくとも2log10の低減、グラム陽性細菌(例えば、Microbacterium spp.)の量の少なくとも4log10の低減、およびグラム陰性細菌(例えば、Stenotrophomonas maltophilia)の量の少なくとも2log10の低減のうちの1つまたは複数をもたらす、方法を提供する。1つの特定の実施形態では、接触させるステップは、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、例えば、(1)生物濾過アッセイ、(2)顕微鏡細菌染色、(3)IR/FTIR分光法、(4)無菌試験、または(5)細菌同定試験などのアッセイによる決定で検出限界未満までの、胞子形成細菌(例えば、Bacillus pseudofirmus)、グラム陽性細菌(例えば、Microbacterium spp.)、およびグラム陰性細菌(例えば、Stenotrophomonas maltophilia)のうちの1つまたは複数の量の低減をもたらす。
【0051】
一実施形態では、組成物はアルコールをさらに含む。使用できるアルコールの非限定的な例としては、エタノール(例えば、約20%)およびベンジルアルコール(例えば、約1%~約2%)が挙げられる。1つの特定の実施形態では、組成物は約6Mの塩酸グアニジンおよび約20%のエタノールから本質的になる。
【0052】
一実施形態では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約4.0M~約12.0Mの塩酸グアニジンから本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、胞子形成細菌(例えば、Bacillus pseudofirmus)の量の少なくとも2log10の低減、グラム陽性細菌(例えば、Microbacterium spp.)の量の少なくとも4log10の低減、およびグラム陰性細菌(例えば、Stenotrophomonas maltophilia)の量の少なくとも2log10の低減のうちの1つまたは複数をもたらす、方法を提供する。1つの特定の実施形態では、接触させるステップは、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、例えば、(1)生物濾過アッセイ、(2)顕微鏡細菌染色、(3)IR/FTIR分光法、(4)無菌試験、または(5)細菌同定試験などのアッセイによる決定で検出限界未満までの、胞子形成細菌(例えば、Bacillus pseudofirmus)、グラム陽性細菌(例えば、Microbacterium spp.)、およびグラム陰性細菌(例えば、Stenotrophomonas maltophilia)のうちの1つまたは複数の量の低減をもたらす。
【0053】
一態様では、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約0.5M~約1.0Mの酢酸ならびに(i)約4.0M~約12.0Mの尿素および/または(ii)約4.0M~約12.0Mの塩酸グアニジンを含む組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約1時間行われる、方法を提供する。1つの特定の実施形態では、組成物はアルコールをさらに含む。使用できるアルコールの非限定的な例としては、エタノール(例えば、約20%)およびベンジルアルコール(例えば、約1%~約2%)が挙げられる。
【0054】
本発明の上記の方法のいずれかの一実施形態では、接触させるステップは15℃~30℃の間の温度で実行される。1つの特定の実施形態では、接触させるステップは20℃~25℃の間の温度で実行される。
【0055】
本発明の上記の方法のいずれかの一実施形態では、組成物は実質的に酸化剤を含まない。
【0056】
本発明の上記の方法のいずれかの一実施形態では、組成物はペルオキシ酸を含まない。
【0057】
本発明の上記の方法のいずれかの一実施形態では、組成物は過酸化物を含まない。
【0058】
本発明の上記の方法のいずれかの一実施形態では、組成物はNaOHを含まない。
【0059】
本発明の上記の方法のいずれかの一実施形態では、接触させるステップは少なくとも1回繰り返される。
【0060】
本発明の上記の方法のいずれかの一実施形態では、クロマトグラフィーマトリックスはクロマトグラフィーカラム中に詰め込まれる。1つの特定の実施形態では、クロマトグラフィーカラムは、0.5cm~1.5cmの間の内径および15cm~30cmの間の床高さを有する。1つの特定の実施形態では、クロマトグラフィーカラムは、約1cmの内径および約20cmの床高さを有する。1つの特定の実施形態では、クロマトグラフィーカラムは、40cm~1.6メートルの間の内径および15cm~30cmの間の床高さを有する。1つの特定の実施形態では、クロマトグラフィーカラムは、約1.4メートルの内径および約20cmの床高さを有する。
【0061】
本発明の上記の方法のいずれかの一実施形態では、クロマトグラフィーマトリックスは、支持体に連結されたタンパク質性リガンドを含む。1つの特定の実施形態では、タンパク質性リガンドは、1つまたは複数の免疫グロブリン結合ドメインを含む。1つの特定の実施形態では、タンパク質性リガンドは、プロテインAまたはその断片もしくは誘導体である。1つの特定の実施形態では、タンパク質性リガンドは、StaphylococcusのプロテインA、PeptostreptococcusのプロテインL、StreptococcusのプロテインG、StreptococcusのプロテインA、ならびにこれらの断片および誘導体からなる群から選択される。1つの特定の実施形態では、クロマトグラフィーマトリックスが、MabSelect(商標)、MabSelect(商標) Xtra、MabSelect(商標) SuRe、MabSelect(商標) SuRe pcc、MabSelect(商標) SuRe LX、MabCapture(商標) A、nProtein A Sepharose 4 Fast Flow、Protein A Sepharose 4 Fast Flow、Protein A Mag Sepharose、Protein A Sepharose CL-4B、rmp Protein A Sepharose Fast Flow、rProtein A Sepharose 4 Fast Flow、Capto(商標) L、ProSep(商標)-A、ProSep Ultra Plus、AbSolute(商標)、CaptivA(商標) PriMab(商標)、Protein A Diamond、Eshmuno(商標) A、Toyopearl(商標) AF-rProtein A、Amsphere(商標) Protein A、KanCapA(商標)、Protein G Mag Sepharose Xtra、およびProtein G Sepharose 4 Fast Flowからなる群から選択される。1つの特定の実施形態では、クロマトグラフィーマトリックスは、MabSelect(商標)、MabSelect(商標) Xtra、MabSelect(商標) SuRe、MabSelect(商標) SuRe PCC、およびMabSelect(商標) SuRe LXからなる群から選択される。1つの特定の実施形態では、タンパク質性リガンドは、本方法が行われた後に、測定できる程度には変性しない。
【0062】
一実施形態では、本発明は、MabSelect(商標) Xtraクロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約0.5Mの酢酸から本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約4時間行われる、方法を提供する。
【0063】
別の実施形態では、本発明は、MabSelect(商標) Xtraクロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約0.1Mの酢酸および約20%のエタノールから本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約4時間行われる、方法を提供する。様々な実施形態では、接触させるステップは、少なくとも約1時間、1~5時間、1~10時間、1~25時間、1~200時間、1~375時間、1~400時間、少なくとも約4時間、4~5時間、4~10時間、4~25時間、4~200時間、4~375時間、または4~400時間行われる。
【0064】
さらなる実施形態では、本発明は、MabSelect(商標) Xtraクロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約8Mの尿素から本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約1時間行われる、方法を提供する。
【0065】
さらに別の実施形態では、本発明は、MabSelect(商標) Xtraクロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約8Mの尿素および約20%のエタノールから本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約1時間行われる、方法を提供する。
【0066】
さらなる実施形態では、本発明は、MabSelect(商標) Xtraクロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約6Mの塩酸グアニジンから本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約1時間行われる、方法を提供する。
【0067】
別の実施形態では、本発明は、MabSelect(商標) Xtraクロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、クロマトグラフィーマトリックスを約6Mの塩酸グアニジンおよび約20%のエタノールから本質的になる組成物と接触させるステップを含み、接触させるステップが少なくとも約1時間行われる、方法を提供する。
【0068】
一実施形態では、本発明は、医薬物質を含む組成物を精製のためにアプライする前に微生物負荷を低減させる方法であって、(a)クロマトグラフィーマトリックスを提供するステップ、(b)本発明の上記の方法のいずれかを行うステップ、および(c)医薬物質を含む組成物をクロマトグラフィーマトリックスにアプライするステップを含む、方法を提供する。
【0069】
本発明は、記載される特定の方法および実験条件に限定されず、そのような方法および条件は変更され得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される学術用語は特定の実施形態を記載する目的のものに過ぎず、限定的であることは意図されず、本発明の範囲は特許請求の範囲によって定義されることも理解されるべきである。
【0070】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを規定しない限り、複数への言及を含む。したがって、例えば、「方法(a method)」への言及は、本明細書に記載される種類のおよび/または本開示を読んだ当業者に明らかになるであろう1つもしくは複数の方法、および/またはステップを含む。
【0071】
別段の定義がなければ、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0072】
「約(about)」および「およそ(approximately)」という用語は、統計的に意味のある値の範囲内を意味するために交換可能に使用される。そのような範囲は、所与の値または範囲の50%以内、より好ましくは20%以内、さらにより好ましくは10%以内、よりいっそう好ましくは5%以内であり得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「微生物(microbe)」または「微生物(microorganism)」という用語は、細菌および古細菌などの原核生物、および真菌などの真核生物を包含する。これらの用語は、生細胞および胞子(胞子形成生物の場合)の両方、ならびに微生物産物、例えばエンドトキシンを包含する。
【0074】
本明細書で使用される「微生物バイオバーデンの低減(microbial bioburden reduction)」および「微生物バイオバーデンの低減(microbe bioburden reduction)」という用語は、微生物の殺滅および微生物とクロマトグラフィーマトリックスとの間の相互作用への何らかの干渉を組み合わせる。本発明による微生物バイオバーデンの低減は、クロマトグラフィーカラムまたはマトリックス上に存在する可能性がある微生物の本質的に全て、または少なくとも99%を殺滅するように設計されたあらゆる以前に開示された消毒プロセスと同じではない。
【0075】
むしろ、本発明は、非胞子形成微生物の80%未満、70%未満、60%未満、または40~60%を殺滅することができる方法を含む。そのような実施形態では、カラム上の胞子形成微生物、例えばBacillusの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満もしくは10%未満、または10~20%が本発明の方法により殺滅される。
【0076】
本発明は、カラム上の細菌の全てを殺滅しない方法を含むが、生物濾過アッセイ、または本明細書に開示されるおよび当該技術分野において公知の任意の他の微生物学的アッセイにより検出できる生存可能な微生物の少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、約98%、約99%または約100%が処理後にクロマトグラフィーマトリックスから除去される。本発明の一部の実施形態では、微生物バイオバーデンのレベルは、使用前のフラッシュ試料中、平衡試料中、ロード試料中、またはその実行後に採取したロードからの全てのGMP試料中でGMP許容レベル未満に低減される。微生物の全てを殺滅することさえなく、本発明は、特許請求される発明の方法中にも起こる微生物とクロマトグラフィーマトリックスとの間の相互作用への干渉により、微生物バイオバーデンをGMP警告レベル未満に低減させることができる。この干渉は、微生物とクロマトグラフィーマトリックスとの間の親和性、結合、または任意の他の相互作用の低減などの機序を伴い得るがこれらに限定されない。そのような機序は、クロマトグラフィーカラム上でカラムからの宿主細胞タンパク質およびDNAなどの不純物に使用される一般的なストリップステップに類似している。したがって、この干渉は、生物学的医薬品のGMP製造の要件に合致するレベルまで微生物バイオバーデンが低減された時に、微生物の全てを殺滅しない本発明の方法の使用後に検出され得る。カラム上の微生物の全てを殺滅するようには設計されていない本発明の方法の1つを使用することにより、試薬は必ずしも苛酷なものでなく、したがって、プロセスおよび製造物を市場に承認すべき規制機関、例えばFDAまたはEMAからの承認のためにより好都合である。好ましくは、生物学的医薬のGMP製造の間にクロマトグラフィーカラムに使用される同じストリップ緩衝剤成分または少なくとも活性剤(酢酸が一般的である)を使用して、より高い濃度(例えば、10X、15X、または20X)およびより長いコントラクト時間(例えば、3X、4X、または5X)でアプライされた時に微生物バイオバーデンを低減させることができる。さらに、より長い時間にわたりより高い濃度で同じストリップ緩衝剤を使用することが微生物バイオバーデンを低減させるためにより効率的なことがある。
【0077】
本明細書に記載される任意の方法、態様、および実施形態は、医薬品適正製造基準(GMP)、または現行医薬品適正製造基準(CGMP)の部分として使用することができる。そのような基準は、規制機関、例えば米国食品医薬品局の要件を満たすように製造ステップおよび製造物の品質において一貫性を提供しなければならない。GMPおよびCGMPは、典型的に、製造プロセスに高い程度の予測可能性および標準化を必要とし、特に、ヒト患者において使用される製造される治療用生体分子の純度を確実にすることを必要とする。プロセスの停止および/または製造バッチの廃棄を必要とするパラメーターが検出される多くの失敗点がGMPまたはCGMP中にある。生体分子を製造するための培養物の生育に関与する労働力と共に、失敗が起こった時に大きな費用が発生する。
【0078】
バイオバーデンまたは微生物負荷がクロマトグラフィーカラム、または分離において使用されるマトリックスにおいて高くなり過ぎた場合、様々な予測できないかつ/または望ましくない効果が発生し得る。微生物で汚染された製造物が同定され、さらに製造されないように、プロセスを停止するように失敗点が誘発され得る。失敗点を防止するために、10mL当たり少なくとも5CFUのバイオバーデンの検出により警告が誘発され得る。10mL当たり少なくとも10CFUのバイオバーデンはアクションを誘発することができ、該アクションは、本明細書に記載される方法または実施形態のうちの1つまたは複数を単独でまたは組合せで行ってバイオバーデンを低減させることを含むことができる。
【0079】
例えば、微生物が製造物中に導入されて、製造物を治療的使用のために許容できないものとすることがある。過度のバイオバーデンはまた、カラム性能を減少させることがあり、それが標準化された予測可能な方式での製造物の精製に干渉することがあり、また他の失敗点の誘発を引き起こし得る。したがって、バイオバーデンを低減させる本明細書に記載される態様および実施形態を前もって使用して、GMPまたはCGMPへの準拠を確実にし、失敗点の誘発、ならびに関連するトラブルシューティングおよびダウンタイムを最小化することが望ましい。
【0080】
本明細書に記載される任意の態様または実施形態は、接触させるステップ後の精製のために低分子含有または生体分子含有(例えば、モノクローナル抗体含有)調製物をアプライするステップをさらに含んでもよい。精製のために低分子含有または生体分子含有(例えば、モノクローナル抗体含有)調製物をアプライする前の微生物負荷の低減のための方法は、本明細書に記載される任意の微生物バイオバーデンの低減の方法のステップを含み得る。あるいは、生体分子を精製する方法は、本明細書に記載される任意の方法のステップを実行するステップ、およびその後にクロマトグラフィーマトリックスに生体分子を含む調製物をアプライするステップを含み得る。
【0081】
本明細書に記載される任意の態様または実施形態は、クロマトグラフィーマトリックスが貯蔵から取り出された後に、精製のために薬物含有、生体分子含有、またはモノクローナル抗体含有調製物をアプライする前に、行われてもよい。長期貯蔵の間に、クロマトグラフィーマトリックスまたはカラム中に存在する小量の細菌が増殖してバイオバーデンを増加させることがある。
【0082】
本明細書に記載される任意の態様または実施形態は、無菌化技術の部分として、または無菌化技術を支持するために使用されてもよい。クロマトグラフィーマトリックスにおけるバイオバーデンの結果として得られた低減は、無菌化技術のために十分なものであり得るか、または無菌化技術における他のステップの前もしくは後に使用され得る。バイオバーデンを低減させる記載された方法は、無菌化技術の失敗点が誘発される見込みを低減させることができ、差し迫った失敗点の誘発への応答において使用することができる。
【0083】
別の態様では、MabSelect(商標) Xtraクロマトグラフィーマトリックスは、該マトリックスを約0.5Mの酢酸から本質的になる組成物と少なくとも4時間接触させることにより微生物バイオバーデンの低減を受ける。様々な実施形態では、接触させるステップは、4~5時間、4~10時間、4~25時間、4~200時間、4~375時間、または4~400時間行われる。別の態様では、MabSelect(商標) Xtraクロマトグラフィーマトリックスは、該マトリックスを0.1Mの酢酸および約20%のエタノールから本質的になる組成物と少なくとも4時間接触させることにより微生物バイオバーデンの低減を受ける。
【0084】
様々なクロマトグラフィーマトリックスを使用することができる。クロマトグラフィーマトリックスは、支持体に連結されたタンパク質性リガンドを含んでもよい。次いで、タンパク質性リガンドは、1つまたは複数の免疫グロブリン結合ドメインを含んでもよい。他の有用なクロマトグラフィーマトリックスとしては、様々なイオン交換クロマトグラフィーマトリックス、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)マトリックス、ミックスモードクロマトグラフィーマトリックス、およびサイズ排除クロマトグラフィーマトリックスが挙げられるがこれらに限定されない。
【0085】
クロマトグラフィーマトリックスのタンパク質性リガンドは、プロテインAまたはその断片もしくは誘導体であってもよい。例示的なタンパク質性リガンドとしては、StaphylococcusのプロテインA、PeptostreptococcusのプロテインL、StreptococcusのプロテインG、StreptococcusのプロテインA、ならびにStaphylococcusのプロテインA、PeptostreptococcusのプロテインL、StreptococcusのプロテインG、StreptococcusのプロテインAのいずれかの断片および誘導体が挙げられる。
【0086】
StaphylococcusのプロテインAは、細菌Staphylococcus aureusの細胞壁上に見出すことができる。プロテインAは、CH2ドメインとCH3ドメインとの間でFc領域において抗体に結合し得る。プロテインAは、Staphylococcus aureus中で培養されてもよく、または他の細菌、例えば、E. coliもしくはBrevibacillus中で組換えにより産生されてもよい。StaphylococcusのプロテインAの断片または誘導体もまた、CH2ドメインとCH3ドメインとの間でFc領域において抗体に結合し得る。
【0087】
PeptostreptococcusのプロテインLは、Peptostreptococcus magnusの表面上に見出すことができ、抗体軽鎖との相互作用を介して抗体に結合することができる。プロテインAとは異なり、プロテインLは、単鎖可変断片(scFv)およびFab断片に結合し得る。プロテインLの断片または誘導体もまた、抗体の軽鎖、単鎖可変断片(scFv)およびFab断片に結合し得る。
【0088】
StreptococcusのプロテインGは、群G Streptococcus株の細胞壁上に見出すことができる。プロテインGは、FabおよびFc領域において抗体に結合し得る。プロテインGは、他の細菌、例えばE. coli中で組換えにより産生されてもよい。プロテインGの断片または誘導体もまた、FabおよびFc領域において抗体に結合し得る。
【0089】
クロマトグラフィーマトリックスは、カラムの部分である樹脂であってもよい。1つの好適な樹脂はGE Healthcare製のMabSelect SuRe(商標)である。小規模精製のために好適な例示的なカラムは、MabSelect SuRe(商標)を詰め込まれており、約1.0cmの直径、および約20cmの長さである。1.4m×20cmなどのより大きいカラムを製造スケールの精製のために使用することができる。
【0090】
より一般に、本発明の方法は、実験室スケール、大きい処理スケール、および非常に大きい処理スケールなどの様々なサイズのクロマトグラフィーカラムのために使用することができる。一部の実施形態では、クロマトグラフィーカラムは、0.5cm~1.5cmの間の内径および15~30cmの間(例えば、20cm)の床高さを有してもよい。内径は、0.7~1.2cmの間、あるいは0.9~1.4cm、1.2~1.5cm、1.0~1.2cm、または約1cmであってもよい。一部の実施形態では、クロマトグラフィーカラムは、40cm~1.6メートルの間(例えば、60cm、80cm、1.0メートル、1.2メートル、または1.4メートル)の内径を有してもよい。クロマトグラフィーカラムは、15~30cm(例えば、20cm)の間の床高さを有してもよい。
【0091】
例示的なクロマトグラフィーマトリックスとしては、MabSelect(商標)、MabSelect(商標) Xtra、MabSelect(商標) SuRe、MabSelect(商標) SuRe pcc、MabSelect(商標) SuRe LX、nProtein A Sepharose 4 Fast Flow、Protein A Sepharose 4 Fast Flow、Protein A Mag Sepharose、Protein A Sepharose CL-4B、rmp Protein A Sepharose Fast Flow、rProtein A Sepharose 4 Fast Flow、Capto(商標) L、ProSep(商標)-A、ProSep Ultra Plus、AbSolute(商標)、CaptivA(商標) PriMab(商標)、Protein A Diamond、Eshmuno(商標) A、Toyopearl(商標) AF-rProtein A、Amsphere(商標) Protein A、KanCapA(商標)、Protein G Mag Sepharose Xtra、およびProtein G Sepharose 4 Fast Flowが挙げられる。
【0092】
MabSelect(商標)、MabSelect(商標) Xtra、MabSelect(商標) SuRe、およびMabSelect(商標) SuRe LXは、高度に架橋されたアガロースマトリックスに取り付けられたE. coli中で製造された組換えプロテインAリガンドを有する。
【0093】
微生物バイオバーデンの低減は、交換するよりはむしろ追加の精製のために使用できるようにクロマトグラフィーマトリックスの性能を回復させることができる。したがって、本明細書に記載される任意の方法において、微生物バイオバーデンの低減は、クロマトグラフィーマトリックスが使用された後に実行することができる。そのような場合、目的のモノクローナル抗体を含む細胞培養ブロスからクロマトグラフィーマトリックス中に導入され得る細菌および他の微生物を除去することができる。タンパク質性リガンド、例えばプロテインAを含むクロマトグラフィーマトリックスを使用した時に、大きな費用を節約することができる。
【0094】
さらには、通常使用される水酸化ナトリウム含有溶液の代わりに酢酸含有溶液を使用することにより、タンパク質リガンドのより少ない変性およびクロマトグラフィーマトリックスへのより小さい損傷をもたらすことができる。タンパク質リガンドの変性および/またはクロマトグラフィーマトリックスへの損傷は、クロマトグラフィーマトリックスの様々な性能的特徴をアッセイすることにより、例えば、マトリックスから溶出する製造物の純度および量をアッセイすることによりおよびマトリックスの成分(例えば、プロテインA)の残留溶出をアッセイすることにより、間接的に測定することができる。例えば、タンパク質性リガンドがプロテインAの場合、モノクローナル抗体の純度および量がアッセイされる。例示的なアッセイとしては、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、SE-HPLCおよびSE-UPLC)、キャピラリー電気泳動(例えば、CE-SDS)、任意選択で全カラムイメージングを含み得るキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)が挙げられる。また、カラムからの残留プロテインAは、(例えば、ELISAを含むアッセイにより)測定することができる。
【0095】
本明細書に記載される方法にしたがって行われる微生物バイオバーデンの低減は、プロテインAを損傷させることなく細菌を除去することにより、プロテインAまたは他のタンパク質性リガンドを含むカラムの性能を維持するための費用効果の高い方式であり得る。例えば、375または400時間にわたる酢酸含有溶液(例えば、0.5Mの酢酸)へのプロテインA含有マトリックスの曝露は、プロテインAを含むカラムの性能のいかなる統計的に有意な損失にも繋がらない。例えば、実施例6、表10および
図5~19を参照。例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、還元もしくは非還元条件下でのキャピラリー電気泳動、またはキャピラリー等電点電気泳動により溶出するモノクローナル抗体の純度の統計的に有意な損失はない。
【0096】
本明細書に記載される方法による微生物バイオバーデンの低減は、細菌の全てを殺滅することなく細菌のほぼ全てを除去することができる。理論に縛られることを望まないが、酢酸は、細菌とタンパク質性リガンド、例えばプロテインAとの間の親和性に干渉し得る。微生物汚染マトリックスまたはカラムは、微生物と樹脂との間の相互作用を破壊することにより本明細書に記載される方法にしたがって低減された微生物を有し得る。細菌は酢酸含有溶液中に残存する傾向がある。細菌の除去は、酢酸との接触させるステップを繰り返すことによりまたは酢酸含有溶液を用いるクロマトグラフィーマトリックスの追加のフラッシングを行うことによりさらに増進され得る。
【0097】
一部の実施形態では、本方法は、クロマトグラフィーマトリックスから胞子形成細菌を除去する。胞子形成細菌は、内生胞子形態に切り替わる能力を有する。内生胞子形態は、細菌がそれ自身を該形態に低減させることができる、必要最低限の、休眠状態の形態である。内生胞子の形成は、通常、栄養分の欠如または苛酷な条件、例えば酸性または塩基性環境により誘発される。内生胞子により、細菌は、不都合な条件においてさえ長期間休眠状態でいることができる。環境がより好都合なものになると、内生胞子は生長可能な状態に再活性化することができる。内生胞子を形成できる細菌の例としては、BacillusおよびClostridiumが挙げられる。これらの胞子形成細菌は、製造プロセスにおけるこれらの胞子形成細菌にとって不都合な条件の存在によりクロマトグラフィー精製プロセスにおける通常の作業条件下で内生胞子を形成できると考えられる。胞子形成細菌を検出するために使用できる多くの方法があり、顕微鏡細菌染色法、IR/FTIR分光法、無菌試験、および細菌同定試験(例えば、生化学反応、16S rRNA配列決定、または分類群特異的配列決定)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0098】
一部の実施形態では、本方法は、クロマトグラフィーマトリックスからグラム陽性細菌を除去する。一部の実施形態では、本方法は、クロマトグラフィーマトリックスからグラム陰性細菌を除去することができる。一部の実施形態では、本方法は、クロマトグラフィーマトリックスから胞子形成細菌、グラム陽性細菌およびグラム陰性細菌を除去する。接触させるステップは、クロマトグラフィーマトリックスにおいて、(1)生物濾過アッセイ、(2)顕微鏡細菌染色、(3)IR/FTIR分光法、(4)無菌試験、および(5)細菌同定試験(例えば、生化学反応、16S rRNA配列決定、または分類群特異的配列決定)からなる群から選択されるアッセイの検出限界未満までの、胞子形成細菌、グラム陽性細菌、およびグラム陰性細菌のうちの1つまたは複数の量の低減をもたらし得る。生物濾過アッセイは、米国薬局方第71章、タイトル「Sterility Tests」に記載されている。生物濾過アッセイにおいて、カラムからの溶出液は、細菌に選択的に結合するフィルターを通過する。次に、細菌を生育させるために適切な培地を含む寒天上にフィルターを置き、インキュベートし、細菌を計数する。カラム溶出液の希釈を必要に応じて行うことができる。
【0099】
顕微鏡細菌染色は、米国薬局方第61章、タイトル「Microbial examination of nonsterile products: microbial enumeration tests」に記載されている。IR/FTIR分光法は、BRUKER Application Note AN#405 Current Research, Technology and Education Topics in Applied Microbiology Biotechnology A. Mendez-Vilas(編)に記載されている。微生物学的試験は、Reynolds, J.ら、「Differential staining of bacteria: endospore stain」、Curr Proc. Microbiol. 2009年、補遺3:補遺3Jに記載されている。
【0100】
一部の実施形態では、組成物中の酢酸の濃度は約0.1M~約1.0Mである。一部の実施形態では、組成物中の酢酸の濃度は約0.2M~約0.8Mである。一部の実施形態では、組成物中の酢酸の濃度は約0.4M~約0.7Mである。一部の実施形態では、組成物中の酢酸の濃度は約0.5Mである。一部の実施形態では、組成物中の酢酸の濃度は約0.1M~約0.5Mである。一部の実施形態では、組成物中の酢酸の濃度は約0.1Mである。
【0101】
一部の実施形態では、組成物中の尿素の濃度は約4M~約12Mである。一部の実施形態では、組成物中の尿素の濃度は約6M~約10Mである。一部の実施形態では、組成物中の尿素の濃度は約6M~約8Mである。一部の実施形態では、組成物中の尿素の濃度は約8Mである。
【0102】
一部の実施形態では、組成物中の塩酸グアニジンの濃度は約3M~約10Mである。一部の実施形態では、組成物中の塩酸グアニジンの濃度は約4M~約8Mである。一部の実施形態では、組成物中の塩酸グアニジンの濃度は約5M~約7Mである。一部の実施形態では、組成物中の塩酸グアニジンの濃度は約6Mである。
【0103】
一部の実施形態では、組成物中の塩酸グアニジンの濃度は約3M~約10Mである。一部の実施形態では、組成物中の塩酸グアニジンの濃度は約4M~約8Mである。一部の実施形態では、組成物中の塩酸グアニジンの濃度は約5M~約7Mである。一部の実施形態では、組成物中の塩酸グアニジンの濃度は約6Mである。
【0104】
一部の実施形態では、溶液のpHは少なくとも2.0である。pHは2.0~7.0であってもよい。pHは、2.5~6.5、3.0~6.0、4.0~7.0、2.0~5.0、3.5~5.5、3.0~4.0、または約4.0であってもよい。pHは、おおよそ以下のもののいずれかであってもよい:2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、または7.0。
【0105】
一部の実施形態では、組成物はエタノールを含む。組成物は、1~40%のエタノール、5~35%のエタノール、10~25%のエタノール、15~30%のエタノール、18~24%のエタノール、約20%のエタノール、または20%のエタノールを含んでもよい。一部の実施形態では、組成物は約0.1Mの酢酸および約20%のエタノールを含む。一部の実施形態では、組成物は、約0.1Mの酢酸および約20%のエタノールから本質的になる。ベンジルアルコールの存在から生じ得るヒトにおける毒性、またはヒトにおける有害効果により、使用されるベンジルアルコールの量を最小化し、またはベンジルアルコールを回避しながら、エタノールを使用することは利点がある。
【0106】
一部の実施形態では、組成物は酢酸塩をさらに含む。酢酸塩は、酢酸を含む組成物のための緩衝剤として働き得る。例えば、組成物は、組成物が緩衝液であるように、酢酸に加えて酢酸ナトリウムを含んでもよい。組成物は、0.1Mの酢酸ナトリウムから1.0Mの酢酸ナトリウム、0.2~0.8Mの酢酸ナトリウム、0.4~0.7Mの酢酸ナトリウム、約0.5Mの酢酸ナトリウム、または0.5Mの酢酸ナトリウムを含んでもよい。酢酸ナトリウムまたは別の酢酸塩を用いて酢酸を緩衝化することは、クロマトグラフィーマトリックス中で溶液のpHを維持するために効果的であり得る。pHは、少なくとも2.0、約2~3、2.0~3.0、2.0~7.0、2.5~6.5、3.0~6.0、4.0~7.0、2.0~5.0、3.5~5.5、3.0~4.0、または約4.0であってもよい。pHは、おおよそ以下のもののいずれかであってもよい:2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、または7.0。
【0107】
組成物が酢酸を含む一部の実施形態では、接触させるステップは、少なくとも1時間、あるいは1~4時間、あるいは少なくとも2時間行われる。一部の実施形態では、接触させるステップは2~4時間行われる。一部の実施形態では、接触させるステップは少なくとも4時間行われる。様々な実施形態では、接触させるステップは、90分~6時間、2時間~5時間、4時間~5時間、4時間~6時間、90分~3時間、5時間~6時間、4時間~10時間、4時間~25時間、4時間~200時間、4時間~375時間、または4時間~400時間行われる。
【0108】
組成物が尿素を含む一部の実施形態では、接触させるステップは、少なくとも30分間、あるいは少なくとも1時間、あるいは少なくとも2時間行われる。一部の実施形態では、接触させるステップは1~2時間行われる。一部の実施形態では、接触させるステップは少なくとも2時間行われる。様々な実施形態では、接触させるステップは、30分~4時間、1時間~3時間、または90分~2時間行われる。
【0109】
組成物が塩酸グアニジンを含む一部の実施形態では、接触させるステップは、少なくとも30分間、あるいは少なくとも1時間、あるいは少なくとも2時間行われる。一部の実施形態では、接触させるステップは1~2時間行われる。一部の実施形態では、接触させるステップは少なくとも2時間行われる。様々な実施形態では、接触させるステップは、30分~4時間、1時間~3時間、または90分~2時間行われる。
【0110】
組成物が尿素または塩酸グアニジンを含む一部の実施形態では、接触させるステップは、少なくとも30分間、あるいは少なくとも約1時間、あるいは1~4時間、あるいは少なくとも2時間行われる。
【0111】
一部の実施形態では、接触させるステップを繰り返すことができる。例えば、接触させるステップは、約1時間行われた後、複数回繰り返されてもよい。一部の実施形態では、接触させるステップは、2、3、4、5、または6回繰り返される。微生物バイオバーデンの低減を繰り返すことにより、カラムは追加の酢酸に曝露されることがあり、それが、クロマトグラフィーマトリックスからの細菌および微生物の追加の破壊をもたらし得る。接触させるステップを繰り返すことにより、クロマトグラフィーマトリックス、例えば、プロテインAリガンド、およびカラムからの細菌および微生物のより多くのフラッシング、または除去に繋がり得る。微生物バイオバーデンの低減プロセスは、複数回連続して実行された時に、バイオバーデンをより多く低減させ得る。
【0112】
本明細書に記載される任意の微生物バイオバーデンの低減方法の有効性は、任意の数のバイオバーデンアッセイを使用することによりモニタリングすることができる。1つのそのようなアッセイは濾過アッセイであり、該アッセイでは、多量の溶出液をフィルター膜に通過させ、フィルター膜が溶出液中に存在する細菌を捕捉する。細菌力価は、フィルター膜上の細菌がプレート上でコロニーを形成するようにフィルター膜を寒天プレート上に置くことにより決定することができる。寒天プレートはトリプチケースソイ寒天(TSA)を含有してもよい。培養は3~7日間、25℃~37℃の間の温度で行うことができる。次に、コロニーの数が計数される。形成されるコロニーが多すぎる場合、溶出液の希釈を行うことができる。
【0113】
一部の実施形態では、胞子形成細菌の量の少なくとも1.5log10の低減がある。例えば、クロマトグラフィーマトリックスがBacillus pseudofirmusで汚染されている場合、そのようなマトリックスを8Mの尿素溶液、8Mの尿素/20%のエタノール溶液、6Mの塩酸グアニジン溶液、または6Mの塩酸グアニジン/20%のエタノール溶液と少なくとも1時間接触させることにより、BacillusBacillus pseudofirmusの数を少なくとも1.5log10低減させることができる。
【0114】
一部の実施形態では、微生物バイオバーデンの低減のための方法が行われる時に、クロマトグラフィーマトリックスの結合能力は、10サイクルまたはそれより多くのサイクルにわたって保存される。他の実施形態では、結合能力は、50サイクルまたはそれより多くのサイクルにわたって保存される。一部の他の実施形態では、結合能力は、100サイクルまたはそれより多くのサイクルにわたって保存される。一部の実施形態では、結合能力は、200サイクルまたはそれより多くのサイクルにわたって保存される。
【0115】
一部の実施形態では、組成物への曝露が、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも25時間、少なくとも200時間、少なくとも375時間、または少なくとも400時間である、接触させるステップの間にまたは複数の接触させるステップにわたって、クロマトグラフィーマトリックスの実質的な分解はない。一部の実施形態では、組成物への曝露が、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも25時間、少なくとも200時間、少なくとも375時間、または少なくとも400時間である、接触させるステップの間にまたは複数の接触させるステップにわたって、クロマトグラフィーマトリックスの測定可能な分解はない。一部の実施形態では、クロマトグラフィーマトリックスの分解は、マトリックスに結合するタンパク質(例えば、プロテインAマトリックスに結合するモノクローナル抗体)のタンパク質の品質により測定される。
【0116】
一部の実施形態では、タンパク質性リガンドは、測定できる程度には変性しない。変性は、例えば、カラム性能、製造物の収率および/または品質、マトリックスから浸出可能なタンパク質性リガンド、タンパク質性リガンドの変性の測定などの機能アッセイを使用して決定することができる。
【0117】
一部の実施形態では、接触させるステップの間にまたは複数の接触させるステップにわたって、タンパク質性リガンド、またはプロテインAの測定可能な浸出はない。一部の実施形態では、5時間、10時間、25時間、200時間、375時間または400時間にわたる組成物(例えば、0.5Mの酢酸)へのクロマトグラフィーマトリックスの曝露後にタンパク質性リガンド、またはプロテインAの統計的に有意な測定可能な浸出はない。プロテインAの浸出の測定は、1つのそのような例示的なアッセイである。プロテインAの変性は、それがもはやクロマトグラフィーマトリックス中のビーズまたは他の固相支持体と相互作用しないようにその確認を変化させ得る。その後、変性プロテインAはビーズまたは固体支持体から浸出して液相に入る。親和性カラムの溶出液または液相中のタンパク質性リガンド、またはプロテインAの検出は、したがって、測定可能な変性を指し示し得る。プロテインAの他に、他のタンパク質性リガンドの変性もまた、クロマトグラフィーマトリックスからのそれらの浸出に繋がり得る。一部の実施形態では、プロテインAおよび/または他のタンパク質性リガンドの浸出の測定はELISAを含む。例示的なアッセイは、実施例6ならびに
図8、13および18に記載されている。
【実施例】
【0118】
以下の実施例は、上記される様々な態様および実施形態を記載する。しかしながら、これらおよび本明細書中のいずれかの場所にある他の例の使用は説明的なものに過ぎず、本開示のいずれかまたは任意の例示される事項の範囲および意味を決して限定しない。同様に、任意の特許請求の範囲の主題は、本明細書に記載されるいかなる特定の好ましい実施形態にも限定されない。実際、多くの改変およびバリエーションが本明細書を読んだ当業者に明らかとなり得、そのようなバリエーションは、本明細書に開示される態様および実施形態の精神または範囲から離れることなく実施することができる。したがって、任意の特許請求の範囲の主題は、添付の特許請求の範囲に付与される均等物の全範囲と共に、それらの特許請求の範囲の事項によってのみ限定される。
(実施例1)
酢酸溶液はプロテインAカラム中のバイオバーデンを低減させる
【0119】
カラムを特定の細菌でスパイクした後、および0.5Mの酢酸溶液で微生物を低減させた後に再びバイオバーデンを測定することにより、3つの詰め込まれた1cmのMabSelect(商標) Xtraカラムにおける微生物の低減を評価した。
【0120】
最初に、カラムを2カラム体積の注射水(WFI)でフラッシュした。20mLの試料を回収し、これをカラム中の細菌の量に関する陰性対照とした。
【0121】
3つのMabSelect(商標) Xtraカラムのそれぞれにおいて、微生物をWFIに加えてスパイクされたWFIを形成させることにより代表的な微生物をカラムに加え、微生物はおよそ105cfu/mLの力価で存在する。1つのカラムを胞子形成細菌、特にBacillus psuedofirmusでスパイクした。1つのカラムをグラム陽性細菌、特にMicrobacterium spp.でスパイクした。第3のカラムをグラム陰性細菌、特にStenotrophomonas maltophiliaでスパイクした。
【0122】
次に、スパイクされた各WFIを各カラムにロードした。次に、カラムを14カラム体積のWFIを用いて229cm/時でフラッシュし、それを回収した。各カラムを1時間保持した後、スパイクしたWFIで再びフラッシュした。20mLの試料を各カラムから陽性対照として回収し、試料中のグラム陰性細菌、グラム陽性細菌および胞子形成細菌のそれぞれの量をその後にアッセイした。
【0123】
次に、2カラム体積の0.5Mの酢酸の微生物低減溶液を229cm/時で各カラムにアプライした。各カラムを1時間保持した後、2カラム体積のWFIを用いて229cm/時でフラッシュした。Microbacterium spp.およびStenotrophomonas maltophiliaについて、1.5カラム体積のWFIをカラムに通してフラッシュした後、1.5カラム体積の排出液を回収した。Bacillus psuedofirmusについて、2カラム体積の平衡緩衝液(10mMのリン酸ナトリウム、500mMの塩化ナトリウム、pH7.2)をカラムに通してフラッシュした後、1.5カラム体積の排出液を回収した。
【0124】
0.5Mの酢酸の微生物低減溶液をカラムにアプライした後に1時間の代わりに4時間カラムを保持して、上記の実験を繰り返した。
【0125】
濾過ベースのバイオバーデンアッセイを行った。TSA培地を有する寒天プレートを調製する。
【0126】
クロマトグラフィーカラムからの上記試料の全てをコニカルチューブに入れ、10回反転させた後、0.45ミクロンのフィルター膜を有する無菌の使い捨てフィルターファンネルに接続されたフィルターマニホールド、または0.45ミクロンのフィルター膜を有するMilliflex(登録商標)フィルターファンネルユニットを有するMilliflex(登録商標)プラスポンプに通過させた。クロマトグラフィー試料中に見られない追加の細菌を導入しないように、フィルターマニホールドまたはフィルターファンネルユニットの取扱いにおいて無菌技術を使用した。次に、TSA培地を用いて調製された寒天プレートの上に各膜を置いた。プレートを5~7日間30~35℃でインキュベートした。次に、コロニー形成単位の数を計数し、記録した。
【0127】
0.45ミクロンのフィルター膜を有する別々のフィルターマニホールドまたはフィルターファンネルユニットに100mLの無菌のPBSを通過させることにより陰性対照プレートを調製する。次に、TSA培地を用いて調製された寒天プレートの上に各膜を置いた。プレートを5~7日間30~35℃でインキュベートした。次に、コロニー形成単位の数を計数し、log10の形式で表した。
【0128】
以下の表は、3つの細菌種類のそれぞれについて低減前および低減後のコロニー形成単位を示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0129】
Bacillus pseudofirmusについて、0.5Mの酢酸の微生物バイオバーデン低減溶液をカラム中に1時間保持した時に0.4log10の低減が観察された。0.5Mの酢酸の微生物バイオバーデン低減溶液をカラム中に4時間保持した時に3.4log10の低減が観察された。
【0130】
Microbacterium spp.細菌について、0.5Mの酢酸の微生物バイオバーデン低減溶液をカラム中に1時間保持した時に1.4log10の低減が観察され、4時間保持した時に5.6log10の低減が観察された。
【0131】
Stenotrophomonas maltophila細菌について、0.5Mの酢酸の微生物バイオバーデン低減溶液をカラム中に1時間保持した時に5.5log10の低減が観察され、4時間保持した時に6.2log10の低減が観察された。
【0132】
0.5Mの酢酸は、プロテインAカラム中に4時間保持された時に、胞子形成細菌を含む広範な微生物を除去するために効果的である。
(実施例2)
酢酸/エタノール溶液はプロテインAカラム中のバイオバーデンを低減させる
【0133】
0.5Mの酢酸の代わりに0.1Mの酢酸および20%のエタノールの溶液を使用した以外は、上記の実施例1のステップを行った。実施例1と同様に、0.1Mの酢酸および20%のエタノール溶液を1セットの実験では1時間、別のセットの実験では4時間保持した。以下の結果もまた、微生物バイオバーデン低減溶液をカラム中に1時間または4時間保持した後の細菌の量の大幅な減少を示す。
【表4】
【表5-1】
【表5-2】
【表6】
【0134】
Bacillus pseudofirmusについて、0.1Mの酢酸および20%のエタノールの微生物バイオバーデン低減溶液をカラム中に1時間保持した時に0.4log10の低減が観察された。0.1Mの酢酸および20%のエタノールの微生物バイオバーデン低減溶液をカラム中に4時間保持した時に2.5log10の低減が観察された。
【0135】
Microbacterium spp.細菌について、0.1Mの酢酸および20%のエタノールの微生物バイオバーデン低減溶液をカラム中に1時間保持した時に4.5log10の低減が観察され、4時間保持した時に5.1log10の低減が観察された。
【0136】
Stenotrophomonas maltophila細菌について、0.1Mの酢酸および20%のエタノールの微生物バイオバーデン低減溶液をカラム中に1時間保持した時に5.3log10の低減が観察され、4時間保持した時に5.1log10の低減が観察された。
(実施例3)
尿素溶液はプロテインAカラム中のバイオバーデンを低減させる
【0137】
0.5Mの酢酸の代わりに、8Mの尿素の溶液および8Mの尿素/20%のエタノールの溶液を使用し、1時間の保持のみを測定した以外は、上記の実施例1のステップを行った。以下の表7の結果は、微生物バイオバーデン低減溶液をカラム中に1時間保持した後の細菌の大幅な減少を示す。特にわずか1時間の処理後の、胞子形成B. psuedofirmusの低減は大規模かつ予想外であった。
【表7】
(実施例4)
塩酸グアニジン溶液はプロテインAカラム中のバイオバーデンを低減させる
【0138】
0.5Mの酢酸の代わりに、6Mの塩酸グアニジンの溶液および6Mの塩酸グアニジン/20%のエタノールの溶液を使用し、1時間の保持のみを測定した以外は、上記の実施例1のステップを行った。以下の表8の結果は、微生物バイオバーデン低減溶液をカラム中に1時間保持した後の細菌の大幅な減少を示す。特にわずか1時間の処理後の、胞子形成B. psuedofirmusの低減は大規模かつ予想外であった。
【表8】
(実施例5)
溶液中の微生物バイオバーデン低減剤の試験
【0139】
0.5Mの酢酸を使用して溶液スパイク試験を行い、Bacillus psuedofirmusおよびMicrobacterium speciesの殺滅の程度をクロマトグラフィーマトリックスなしで溶液中で測定した。データを
図1に示す。1時間後にBacillus psuedofirmusの殺滅はほとんど観察されなかったが、Microbacterium speciesのある程度の殺滅があった。0.5Mの酢酸でのクロマトグラフィーマトリックス上のこれらの細菌の微生物バイオバーデンの低減には殺滅のみが関与するものではないことをこれらのデータは示す。クロマトグラフィーマトリックスとBacillus psuedofirmusとMicrobacterium speciesとの間の相互作用の破壊は、殺滅から予想されるよりもバイオバーデンの低減の増加に繋がる。
【0140】
他の剤を使用して追加の溶液スパイク試験を行い、Bacillus psuedofirmus、Microbacterium species、およびStenotrophomonas maltophiliaの殺滅の程度を溶液中で測定した。以下の剤を加えた:(a)注射水(WFI)、(b)8Mの尿素、(c)8Mの尿素および20%のエタノール、(d)6Mの塩酸グアニジン、(e)6Mの塩酸グアニジンと20%のエタノール。PBS中でのスパイク確認測定、ならびに0分、30分、および60分の時点での測定を行った。データを
図2~4に示し、青のバーはWFI、黄色のバーは8Mの尿素、灰色のバーは8Mの尿素および20%のエタノール、赤のバーは6Mの塩酸グアニジン、緑のバーは6Mの塩酸グアニジンおよび20%のエタノールである。
【0141】
Bacillus pseudofirmusについて、少なくとも以下の溶液:0.5Mの酢酸、8Mの尿素および8Mの尿素/20%のエタノール、6Mの塩酸グアニジンおよび6Mの塩酸グアニジン/20%のエタノールで、殺滅および微生物とクロマトグラフィー樹脂との間の相互作用の破壊の組合せにより、バイオバーデンの低減が達成される。
【0142】
Microbacterium speciesについて、Microbacterium speciesの100%を殺滅できない溶液である8Mの尿素および0.5Mの酢酸について、殺滅と相互作用の破壊との組合せによりバイオバーデンの低減が起こり得る。しかしながら、溶液中のMicrobacteriumの100%を殺滅することが観察された8Mの尿素/20%のエタノール、6Mの塩酸グアニジンおよび6Mの塩酸グアニジン/20%のエタノールでのバイオバーデンの低減には殺滅が概ね関与し得る。同様に、Stenotrophomonas maltophiliaについて、8Mの尿素、8Mの尿素/20%のエタノールは、溶液中のStenotrophomonas maltophiliaの100%を殺滅することができた。
【0143】
要約すると、実施例1~5は、0.5Mの酢酸は4時間の保持、8Mの尿素は1時間の保持、8Mの尿素/20%のエタノールは1時間の保持、6Mの塩酸グアニジンは1時間の保持、6Mの塩酸グアニジン/20%のエタノールは1時間の保持で、詰め込まれたMabSelect(商標) Xtraカラムの製造における効果的な微生物バイオバーデンの低減方法であることが発見された。実施例1~5に記載されるように、これらの剤は、微生物の殺滅および微生物とクロマトグラフィー樹脂との間の相互作用の破壊との組合せを通じて、または100%微生物の殺滅を通じて効果的である。
【0144】
さらに、MabSelect(商標) Xtra樹脂の0.5Mの酢酸への曝露は、プロテインA樹脂に対して最小の影響力をもたらした。
(実施例6)
親和性カラムは酢酸への長期の曝露後に性能を維持する
【0145】
2つの異なるクロマトグラフィー親和性樹脂、MabSelect(商標) XtraおよびMabSelect(商標) SuReの性能的特徴を、樹脂を様々な期間0.5Mの酢酸に浸した後に評価した。具体的には、MabSelect(商標) Xtra(mAb Aを捕捉するために使用)の一部を0.5Mの酢酸中に375時間浸した。陰性対照として、MabSelect(商標) Xtraの別の部分を0.5Mの酢酸中に浸さなかった。MabSelect(商標) SuRe(mAb Bを捕捉するために使用)の5つの異なる部分を0.5Mの酢酸中にそれぞれ5時間、10時間、25時間、200時間、または400時間浸した。対照として、MabSelect(商標) SuReの別の部分を0.5Mの酢酸中に浸さなかった。
【0146】
次いで、上記の各部分に対して5つの異なる実験を実行して性能を評価した。サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLCおよびSE-UPLC)を行って、上記の各クロマトグラフィー親和性樹脂の精製後のmAb純度を評価した。
【表9】
【0147】
2つの異なるキャピラリー電気泳動実験を行った。CE-SDSをmAb Aについて実行し、PICO Microchip CE-Electrophoresis(PICO MCE-SDS)をmAb Bについて実行した。キャピラリー電気泳動をSDS含有ゲル充填キャピラリー(CE-SDS)中で実行して、モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の分子量分布および相対量を測定した。これらのタンパク質をサイズおよび電気泳動モビリティに基づいて分離した。全軽鎖および重鎖の相対量は、還元および非還元条件下で実行した。Bare Fused Silica Capillary(キャピラリー長57cm、有効長さ50cm)を有するIgG Purity Analysis Kit(Beckman Coulter、A10663)を使用してCE-SDSを行った。Protein Express LabChip、LabChip(登録商標) GXII、またはLabChip(登録商標) GXII Touch HT(Perkin Elmer、760499または760528)を使用してPICO MCE-SDSを行った。内部標準を使用して相対泳動時間を軟正した。
【0148】
プロテインA含有マトリックスに対する酢酸の効果をアッセイするために、ハイスループットELISAによりMabSelect(商標) XtraおよびMabSelect(商標) SuReカラムからの溶出液に対して残留プロテインAの分析を行い、定量化した。
【0149】
全カラムイメージング(iCIEF)を伴うキャピラリー等電点電気泳動を行って、モノクローナル抗体試料中の相補性決定領域2(CDR2)の量を定量化した。観察された各試料由来等電点(パイ)分布ピーク下の面積を積分し、CDR2に帰せられるパーセンテージを算出することにより、各電気泳動図においてCDR2の相対量を算出した。報告するiCIEF領域2は中性種の主要なピークであり、内部参照標準における最大のタンパク質ピークに対応する。
【0150】
上記の各分析の結果を以下の表10に示す。
【表10-1】
【表10-2】
【0151】
上記の表からのデータを
図5~9のそれぞれに示す。これらの図の目視検査は、性能的特徴と0.5Mの酢酸への曝露期間との間の負の相関を示さない。
【0152】
製造物品質データの分散分析(ANOVA)を行って、樹脂条件当たり3回のクロマトグラフィーの実行を使用した0.5Mの酢酸への長期曝露の前および後の樹脂間の統計的有意差を評価した。
図10~14は、MabSelect Xtra精製後に得られたmAb Aプールのタンパク質の品質を示す。
【0153】
図15~19は、MabSelect SuRe精製後に得られたmAb Bプールのタンパク質の品質を示す。タンパク質の品質のANOVA分析は、mAb B MabSelect SuReプールのSE-UPLCパーセント純度における以外に統計的有意性を示さない(p<0.05)。しかしながら、酸処理後プール純度は酸処理前プール純度より高い。したがって、0.5Mの酢酸への長期曝露を有するMabSelect SuReでの精製後のmAb Bプールに対する負の効果はない。
特許請求の範囲の主題は、本明細書に記載される特定の実施形態により範囲を限定されない。実際、本明細書に記載されるものに加えて、特許請求の範囲の主題の様々な改変が前述の記載から当業者に明らかとなるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
本明細書に引用される全ての特許、出願、刊行物、試験方法、文献、および他の資料は、本明細書中に物理的に存在するかのように、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、前記クロマトグラフィーマトリックスを約0.1M~約0.5Mの酢酸を含む組成物と接触させるステップを含み、前記接触させるステップが約1時間~約4時間行われる、方法。
(項目2)
前記接触させるステップが少なくとも約4時間行われる、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記組成物が約0.1Mの酢酸を含み、前記接触させるステップが少なくとも約4時間行われる、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記組成物が約0.5Mの酢酸を含み、前記接触させるステップが少なくとも約4時間行われる、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記組成物がアルコールをさらに含む、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記アルコールがエタノールまたはベンジルアルコールである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記組成物が約20%のエタノールを含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記組成物が約1%~約2%のベンジルアルコールを含む、項目6に記載の方法。
(項目9)
クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、前記クロマトグラフィーマトリックスを約0.1M~約1.0Mの酢酸を含む組成物と接触させるステップを含み、前記接触させるステップが、前記クロマトグラフィーマトリックスにおいて、胞子形成細菌の量の少なくとも3log
10
の低減、グラム陽性細菌の量の少なくとも5log
10
の低減、およびグラム陰性細菌の量の少なくとも5log
10
の低減のうちの1つまたは複数をもたらす、方法。
(項目10)
前記組成物がアルコールをさらに含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記アルコールがエタノールまたはベンジルアルコールである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記組成物が約20%のエタノールを含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記組成物が約1%~約2%のベンジルアルコールを含む、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記接触させるステップが、前記クロマトグラフィーマトリックスにおいて、(1)生物濾過アッセイ、(2)顕微鏡細菌染色、(3)IR/FTIR分光法、(4)無菌試験法、および(5)細菌同定試験からなる群から選択されるアッセイによる決定で検出限界未満までの、胞子形成細菌、グラム陽性細菌、およびグラム陰性細菌のうちの1つまたは複数の量の低減をもたらす、項目9に記載の方法。
(項目15)
前記胞子形成細菌がBacillus pseudofirmusであり、前記グラム陽性細菌がMicrobacterium spp.であり、前記グラム陰性細菌がStenotrophomonas maltophiliaである、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記組成物が酢酸塩をさらに含む、項目1または9に記載の方法。
(項目17)
前記組成物が約2~約3の間のpHを有する、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、前記クロマトグラフィーマトリックスを約4.0M~約12.0Mの尿素を含む組成物と接触させるステップを含み、前記接触させるステップが少なくとも約30分間行われる、方法。
(項目19)
前記接触させるステップが少なくとも約1時間行われる、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記組成物が約8Mの尿素を含む、項目18または項目19に記載の方法。
(項目21)
前記組成物がアルコールをさらに含む、項目18から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記アルコールがエタノールまたはベンジルアルコールである、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記組成物が約20%のエタノールを含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記組成物が約1%~約2%のベンジルアルコールを含む、項目22に記載の方法。
(項目25)
クロマトグラフィーマトリックスの微生物バイオバーデンの低減のための方法であって、前記クロマトグラフィーマトリックスを約4.0M~約12.0Mの尿素を含む組成物と接触させるステップを含み、前記接触させるステップが、前記クロマトグラフィーマトリックスにおいて、胞子形成細菌の量の少なくとも2log
10
の低減、グラム陽性細菌の量の少なくとも5log
10
の低減、およびグラム陰性細菌の量の少なくとも5log
10
の低減のうちの1つまたは複数をもたらす、方法。
(項目26)
前記組成物がアルコールをさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記アルコールがエタノールまたはベンジルアルコールである、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記組成物が約20%のエタノールを含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記組成物が約1%~約2%のベンジルアルコールを含む、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記接触させるステップが、前記クロマトグラフィーマトリックスにおいて、(1)生物濾過アッセイ、(2)顕微鏡細菌染色、(3)IR/FTIR分光法、(4)無菌試験法、および(5)細菌同定試験からなる群から選択されるアッセイによる決定で検出限界未満までの、胞子形成細菌、グラム陽性細菌、およびグラム陰性細菌のうちの1つまたは複数の量の低減をもたらす、項目25に記載の方法。
(項目31)
前記胞子形成細菌がBacillus pseudofirmusであり、前記グラム陽性細菌がMicrobacterium spp.であり、前記グラム陰性細菌がStenotrophomonas maltophiliaである、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記接触させるステップが15℃~30℃の間の温度で実行される、項目1から31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記接触させるステップが20℃~25℃の間の温度で実行される、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記クロマトグラフィーマトリックスが、MabSelect(商標)、MabSelect(商標) Xtra、MabSelect(商標) SuRe、MabSelect(商標) SuRe pcc、MabSelect(商標) SuRe LX、MabCapture(商標) A、nProtein A Sepharose 4 Fast Flow、Protein A Sepharose 4 Fast Flow、Protein A Mag Sepharose、Protein A Sepharose CL-4B、rmp Protein A Sepharose Fast Flow、rProtein A Sepharose 4 Fast Flow、Capto(商標) L、ProSep(商標)-A、ProSep Ultra Plus、AbSolute(商標)、CaptivA(商標) PriMab(商標)、Protein A Diamond、Eshmuno(商標) A、Toyopearl(商標) AF-rProtein A、Amsphere(商標) Protein A、KanCapA(商標)、Protein G Mag Sepharose Xtra、およびProtein G Sepharose 4 Fast Flowからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目35)
医薬物質を含む組成物を精製のためにアプライする前に微生物負荷を低減させる方法であって、
クロマトグラフィーマトリックスを提供するステップ、
項目1に記載の方法を行うステップ、および
前記医薬物質を含む前記組成物を前記クロマトグラフィーマトリックスにアプライするステップ
を含む、方法。