(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】ダイオード
(51)【国際特許分類】
H01L 29/872 20060101AFI20240426BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240426BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20240426BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/86 301E
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/44 Y
H01L29/48 F
H01L29/48 D
(21)【出願番号】P 2020013984
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆司
(72)【発明者】
【氏名】永岡 達司
(72)【発明者】
【氏名】市川 周平
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103956388(CN,A)
【文献】特表2017-503353(JP,A)
【文献】特開2015-073018(JP,A)
【文献】特開2012-204579(JP,A)
【文献】特開2014-236171(JP,A)
【文献】特表2016-502270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/872
H01L 29/06
H01L 29/41
H01L 29/47
H01L 21/329
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層の表面に配置される表面電極と、
前記半導体層の表面から裏面に向かって延びる複数のトレンチと、
前記複数のトレンチの内壁面を覆う絶縁膜と、
前記トレンチに充填されるとともに、前記表面電極に接触する導電部と、
前記半導体層の裏面に配置される裏面電極と、を備え、
前記複数のトレンチのうちの隣り合う2個のトレンチでは、前記半導体層の前記裏面側に位置する裏面側端部近傍における間隔が、前記半導体層の前記表面側に位置する表面端における間隔よりも小さく、
前記複数のトレンチのうちの少なくとも一部のトレンチの前記裏面側端の前記半導体層の前記裏面側に位置する前記半導体層は、前記半導体層の他の部分よりも不純物濃度が低い低濃度領域を有する、ダイオード。
【請求項2】
前記表面電極は、金属電極であり、
前記表面電極と前記半導体層とは、ショットキー接触している、請求項1に記載のダイオード。
【請求項3】
前記複数のトレンチよりも前記半導体層の外周側において前記複数のトレンチを一巡しており、前記半導体層の前記表面から前記裏面に向かって延びる終端側トレンチと、
前記終端側トレンチに充填される絶縁層と、をさらに備え、
前記表面電極と前記絶縁層とは、互いに接触することによって、フィールドプレート構造を構成している、請求項1または2に記載のダイオード。
【請求項4】
前記複数のトレンチのうちの隣り合う2個のトレンチの間隔は、前記表面端から前記裏面端に向かって徐々に小さくなる、請求項1から3のいずれか一項に記載のダイオード。
【請求項5】
前記複数のトレンチのうち、前記ダイオードの終端側に配置される2個以上の端側トレンチの前記表面端の間隔は、前記複数のトレンチのうち、前記端側トレンチよりも前記ダイオードの中央側に配置される2個以上の中央側トレンチの前記表面端の間隔よりも小さい、請求項1から4のいずれか一項に記載のダイオード。
【請求項6】
ダイオードであって、
半導体層と、
前記半導体層の表面に配置される表面電極と、
前記半導体層の表面から裏面に向かって延びる複数のトレンチと、
前記複数のトレンチの内壁面を覆う絶縁膜と、
前記トレンチに充填されるとともに、前記表面電極に接触する導電部と、
前記半導体層の裏面に配置される裏面電極と、を備え、
前記複数のトレンチのうちの隣り合う2個のトレンチでは、前記半導体層の前記裏面側に位置する裏面側端部近傍における間隔が、前記半導体層の前記表面側に位置する表面端における間隔よりも小さく、
前記複数のトレンチのうち、前記ダイオードの終端側に配置される2個以上の端側トレンチの前記表面端の間隔は、前記複数のトレンチのうち、前記端側トレンチよりも前記ダイオードの中央側に配置される2個以上の中央側トレンチの前記表面端の間隔よりも小さい、ダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ダイオードに関する。本明細書は、特に、半導体層の表面にトレンチを有するダイオードに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、トレンチMOS型ショットキーバリアダイオードが開示されている。ショットキーバリアダイオードは、半導体基板と、エピタキシャル層と、ショットキーメタルと、電極メタルと、を備える。エピタキシャル層は、半導体基板の表面上に配置されている。エピタキシャル層の表面には、複数の内側トレンチが形成されている。ショットキーメタルは、内側トレンチの内壁面を含むエピタキシャル層に対向するように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイオードの信頼性を確保するために、逆方向電圧が印加されている間の耐圧性能が求められる。本明細書は、逆方向電圧が印加されている間の耐圧を向上させる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示の技術は、ダイオードに関する。ダイオードは、半導体層と、前記半導体層の表面に配置される表面電極と、前記半導体層の表面から裏面に向かって延びる複数のトレンチと、前記複数のトレンチの内壁面を覆う絶縁膜と、前記トレンチに充填されるとともに、前記表面電極に接触する導電部と、前記半導体層の裏面に配置される裏面電極と、を備え、前記複数のトレンチのうちの隣り合う2個のトレンチでは、前記半導体層の前記裏面側に位置する裏面側端部近傍における間隔が、前記半導体層の前記表面側に位置する表面端における間隔よりも小さくてもよい。
【0006】
この構成では、逆方向電圧が印加されている間、トレンチ周辺に空乏層が発生する。隣り合う2個のトレンチでは、半導体層の裏面側に位置する裏面側端部近傍における間隔が比較的に小さい。このため、裏面側端部近傍では、隣り合う2個のトレンチのそれぞれから延びる空乏層が連結され得る。この結果、逆方向電圧の印加時の耐圧を向上させることができる。一方、隣り合う2個のトレンチでは、半導体層の表面側に位置する表面端における間隔は比較的に大きい。このため、隣り合う2個のトレンチの間隔が、半導体層の裏面側に位置する裏面側端部近傍における間隔で一定に形成されている場合と比較して、表面電極と半導体層との接触面積が広い。これにより、順方向電圧が印加されている場合のオン抵抗が高くなることを抑制することができる。
【0007】
前記表面電極は、金属電極であってもよい。前記表面電極と前記半導体層とは、ショットキー接触していてもよい。この構成によれば、ショットキーバリアダイオードにおいて、逆方向電圧が印加されている間の耐圧を向上させることができる。
【0008】
前記複数のトレンチのうちの少なくとも一部のトレンチの前記裏面側端の前記半導体層の前記裏面側に位置する前記半導体層は、前記半導体層の他の部分よりも不純物濃度が低い低濃度領域を有していてもよい。この構成によれば、電界集中が発生するトレンチの裏面側端近傍の不純物濃度を低くすることによって、空乏層を広がり易くすることができる。これにより、逆方向電圧の印加時の耐圧を向上させることができる。
【0009】
ダイオードは、前記複数のトレンチよりも前記半導体層の外周側において前記複数のトレンチを一巡しており、前記半導体層の前記表面から前記裏面に向かって延びる終端側トレンチと、前記終端側トレンチに充填される絶縁層と、をさらに備えていてもよい。前記表面電極と前記絶縁層とは、互いに接触することによって、フィールドプレート構造を構成していてもよい。この構成によれば、ダイオードの終端部に配置される絶縁層を終端側トレンチに埋め込むことができる。これにより、ダイオードの表面を平坦化することができる。この結果、ダイオードが搭載される装置を小型化することができる。
【0010】
前記複数のトレンチのうちの隣り合う2個のトレンチの間隔は、前記表面端から前記裏面端に向かって徐々に小さくなっていてもよい。この構成によれば、隣り合う2個のトレンチの半導体層の表面側に位置する表面端における間隔が大きく裏面側端における間隔が小さい構造を容易に形成することができる。
【0011】
前記複数のトレンチのうち、前記ダイオードの終端側に配置される2個以上の端側トレンチの前記表面端の間隔は、前記複数のトレンチのうち、前記端側トレンチよりも前記ダイオードの中央側に配置される2個以上の中央側トレンチの前記表面端の間隔よりも小さくてもよい。この構成によれば、ダイオードに逆方向電圧が印加されている場合において、中央側トレンチが配置されている領域の耐圧を、端側トレンチが配置されている領域の耐圧よりも低くすることができる。この結果、L負荷スイッチングのオフ動作実行時にダイオードに逆方向電圧が印加される場合、端側トレンチが配置されている領域よりも中央側トレンチが配置されている領域において電界強度が高くなり、中央側トレンチが配置されている領域で電流が流れやすくなる。この結果、電流がダイオードの終端部付近に集中することを緩和することができる。これにより、L負荷スイッチング時のアバランシェ破壊に対する耐性を向上させることができる。
【0012】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施例のダイオードの要部断面図である。
【
図2】第1実施例のトレンチの側壁の傾斜角θと耐圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1~
図2を参照して実施例のダイオード100を説明する。
図1にダイオード100の要部断面図を示す。ダイオード100は、トレンチMOS領域を有する縦型のショットキーダイオードであり、いわゆるトレンチMOS型ショットキーバリアダイオードである。
【0015】
ダイオード100は、半導体層12と、アノード電極30と、カソード電極10と、絶縁膜21、31と、絶縁層22と、導電部32と、を備える。半導体層12は、基板14と、基板14の表面にエピタキシャル成長によって堆積されるエピタキシャル層16と、を備える。
【0016】
基板14とエピタキシャル層16とは、n型不純物を含む酸化ガリウム(Ga2O3)を材料としている。n型不純物の例としては、シリコン(Si)が挙げられる。基板14の不純物濃度は、エピタキシャル層16の不純物濃度よりも高い。基板14の不純物濃度は、例えば5×1018cm-3であり、エピタキシャル層16の不純物濃度は、例えば2×1016cm-3である。
【0017】
基板14の裏面側(
図1の下面側)には、カソード電極10が配置されている。カソード電極10は、基板14とオーミック接触する金属(例えば、ニッケル(Ni)シリサイド、コバルト(Co)シリサイド)で形成されている。
【0018】
エピタキシャル層16の表面(
図1の上面)には、中央部に複数のトレンチ18a、18b、18cが配置されている。なお、
図1では、3本のトレンチ18a、18b、18cが配置されているが、トレンチの本数は、これに限定されない。複数のトレンチ18a、18b、18cは、エピタキシャル層16の表面からエピタキシャル層16を掘り下げることによって形成されている。複数のトレンチ18a、18b、18cは、ドライエッチングによって形成される。
【0019】
複数のトレンチ18a、18b、18cのそれぞれでは、半導体層12の表面から裏面側に向かって(
図1の上側から下方に向かって)、トレンチ18a、18b、18cの側面が傾斜することによって、トレンチ18a、18b、18cの幅が徐々に広がっている。この結果、複数のトレンチ18a、18b、18cのうち、隣り合うトレンチ(例えば、トレンチ18aとトレンチ18b)において、半導体層12の裏面側の端における間隔L2は、半導体層12の表面側の端における間隔L1よりも小さい。また、隣り合うトレンチ(例えば、トレンチ18aとトレンチ18b)の間隔は、半導体層12の表面側の端で最も大きい。
【0020】
また、エピタキシャル層16の表面(
図1の上面)には、複数のトレンチ18a、18b、18cよりも、ダイオード100の終端側に、終端側トレンチ20が配置されている。終端側トレンチ20は、半導体層12の外周に沿って、複数のトレンチ18a、18b、18cの外側を一巡して囲んでいる。終端側トレンチ20は、エピタキシャル層16の表面からエピタキシャル層16を掘り下げることによって形成されている。終端側トレンチ20は、トレンチ18a、18b、18cと同様に、ドライエッチングによって形成される。
【0021】
終端側トレンチ20は、複数のトレンチ18a、18b、18cと同様に、半導体層12の表面から裏面側に向かって(
図1の上側から下方に向かって)、側面が傾斜することによって、幅が徐々に広がっている。複数のトレンチ18a、18b、18cと終端側トレンチ20とは、反応性ドライエッチングにおいて、イオンのエピタキシャル層16の表面に対して傾斜して入射させることによって形成される。複数のトレンチ18a、18b、18c及び終端側トレンチ20が形成されることによって、複数のトレンチ18a、18b、18c及び終端側トレンチ20の間の半導体層12には、メサ部12aが形成される。
【0022】
複数のトレンチ18a、18b、18cのそれぞれの底面(即ち
図1の下面)に接するエピタキシャル層16には、n型不純物濃度が周りよりも低い低濃度領域40が配置されている。低濃度領域40は、トレンチ18a、18b、18cと略等しい幅を有している。低濃度領域40の高さ(即ち
図1の上下方向の長さ)は、例えば、エピタキシャル層16の高さの0.01倍~0.2倍である。終端側トレンチ20の底面(即ち
図1の下面)に接するエピタキシャル層16にも、複数のトレンチ18a、18b、18cの底面に接するエピタキシャル層16と同様に、n型不純物濃度が周りよりも低い低濃度領域40が配置されている。
【0023】
複数のトレンチ18a、18b、18cのそれぞれの底面及び側面には、絶縁膜31が配置されている。同様に、終端側トレンチ20の底面及び側面には、絶縁膜21が配置されている。絶縁膜21、31は、エピタキシャル層16の表面に、例えば酸化ハフニウム(HfO2)等の絶縁材料を堆積させ、トレンチ18a、18b、18c及び終端側トレンチ20以外のエピタキシャル層16の表面に堆積された酸化ハフニウムを、化学機械研磨によって除去することによって形成される。
【0024】
終端側トレンチ20には、絶縁膜21を介して、絶縁層22が充填されている。絶縁層22は、絶縁膜21、31が堆積された後、終端側トレンチ20内のみに酸化ハフニウム(HfO2)をさらに堆積させることによって形成される。絶縁層22の表面は、エピタキシャル層16、即ち半導体層12の表面と一致している。
【0025】
複数のトレンチ18a、18b、18cには、絶縁膜31を介して、導電部32が充填されている。導電部32は、例えば、チタン(Ti)等の導電材料を、トレンチ18a、18b、18cに堆積することによって形成される。これにより、導電部32は、絶縁膜31を挟んで、エピタキシャル層16、即ち、半導体層12と対向して配置されている。
【0026】
導電部32の上端、即ち、複数のトレンチ18a、18b、18cの上端には、アノード電極30が配置されている。アノード電極30は、半導体層12の表面に平板上に形成されている。アノード電極30は、複数のトレンチ18a、18b、18cの上端において、導電部32と接触している。アノード電極30は、導電部32と一体的に形成されている。即ち、アノード電極30は、導電部32に連続して導電材料を堆積することによって形成されている。アノード電極30は、メタル電極であり、複数のトレンチ18a、18b、18c及び終端側トレンチ20との間に挟まれる半導体層12、即ち、半導体層12のメサ部12aの表面において、半導体層12とショットキー接触している。
【0027】
アノード電極30が絶縁層22の表面に接触することによって、フィールドプレート構造が構成されている。
【0028】
ダイオード100では、逆方向電圧が印加されている間、複数のトレンチ18a、18b、18cの底面及び側面に隣接する半導体層12に空乏層が発生する。隣り合う2個のトレンチ(即ち、トレンチ18aとトレンチ18b、トレンチ18bとトレンチ18c)では、半導体層12の裏面側(
図1の下端)において、トレンチ18a、18b、18cの間隔L2が比較的に狭い。このため、隣り合う2個のトレンチ18a、18b、18cのそれぞれから延びる空乏層が互いに連結される。この結果、逆方向電圧の印加時に、トレンチ18a、18b、18cの下端部における空乏層の広がりによって、耐圧を向上させることができる。
【0029】
また、隣り合う2個のトレンチ18a、18b、18cでは、半導体層12の表面側の端における間隔L1は比較的に大きい。即ち、間隔L2を小さくしつつ、ショットキー接触する部分の間隔L1を小さくせずに済む。これにより、順方向電圧が印加されている場合のオン抵抗が高くなることを抑制することができる。
【0030】
ダイオード100では、複数のトレンチ18a、18b、18cの下端近傍に、低濃度領域40を配置することによって、逆方向電圧が印加されている間に、空乏層を広がり易くすることができる。これにより、逆方向電圧の印加時の耐圧を向上させることができる。
【0031】
ダイオード100では、絶縁層22が終端側トレンチ20に埋め込まれている。これにより、フィールドプレート構造を配置するための絶縁層を、半導体層12の表面上に配置せずに済む。これにより、ダイオード100の表面を平坦化することができる。この結果、ダイオード100の表面の凸形状を考慮せずに、ダイオード100が搭載される装置を設計することができる。これにより、ダイオード100を搭載する装置を小型化することができる。
【0032】
複数のトレンチ18a、18b、18cの側面は、半導体層12の表面の垂直方向に対して傾斜することによって、隣り合う2個のトレンチ18a、18b、18cの間隔が、半導体層12の表面12b側から裏面12c側に向かって、線形的に広がっている。この構成によれば、隣り合う2個のトレンチ18a、18b、18cの表面12b側に位置する表面端における間隔L1が大きく裏面12c側に位置する裏面端における間隔L2が小さい構造を容易に形成することができる。
【0033】
図2は、間隔L1が一定である場合において、複数のトレンチ18a、18b、18cの側面の底面(即ち、半導体層12の表面12b)に対する傾斜角θとダイオード100の耐圧との関係を示すグラフである。
図2では、横軸が傾斜角θを表し、縦軸が耐圧を表す。ダイオード100では、傾斜角θが小さいほど、即ち、間隔L2が小さいほど、耐圧が上昇する。
【0034】
(第2実施例)
図4、
図5を参照して、本実施例のダイオード200について第1実施例と異なる点を説明する。本実施例では、隣り合う2個のトレンチ18の間隔が、第1実施例の隣り合うトレンチ18の間隔と異なる。なお、第1実施例と同様の構成は、同様の符号を付している。なお、図面上では、トレンチ18の本数は異なるが、第1実施例及び第2実施例では、トレンチ18の本数に制限はない。そのため、本実施例では、トレンチ18の本数の相違点については、説明を省略する。
【0035】
トレンチ18は、端側トレンチ18aと、中央側トレンチ18bと、に分類される。
図4に示すように、端側トレンチ18aは、複数のトレンチ18a、18bのうち、ダイオード200の端縁側に配置されているトレンチである。本実施例では、端側トレンチ18aは、複数のトレンチ18のうち、複数のトレンチ18の延伸方向(即ち
図4の上下方向)に垂直な方向(即ち
図4の左右方向)の両端のそれぞれに配置されている3個のトレンチである。なお、端側トレンチ18aの個数は、2個であってもよいし、4個以上であってもよい。
【0036】
一方、中央側トレンチ18bは、複数のトレンチ18のうち、端側トレンチ18a以外のトレンチであり、ダイオード100の両端に配置された端側トレンチ18aの間に配置される複数のトレンチである。中央側トレンチ18bが配置されている領域を中央領域200bと呼び、端側トレンチ18aが配置されている領域を端部領域200aと呼ぶ。中央領域200bは、2個の端部領域200aの間に挟まれている。
【0037】
複数のトレンチ18は、互いに同一形状を有する。隣り合う2個の中央側トレンチ18bの表面12b側の間隔L1は、隣り合う2個の端側トレンチ18aの表面12b側の間隔L3よりも大きい。例えば、間隔L1は、間隔L2の2倍である。なお、複数の中央側トレンチ18bでは、2個の中央側トレンチ18bの間隔L1は、同一である。同様に、複数の端側トレンチ18aでは、2個の端側トレンチ18aの間隔L3は、同一である。また、同様に、隣り合う2個の中央側トレンチ18bの表面12bと反対側の間隔L2は、隣り合う2個の端側トレンチ18aの表面12bと反対側の間隔L4よりも大きい。また、複数のトレンチ18の長手方向(
図4の上下方向)における端縁から終端側トレンチ20までの間隔L5は、複数のトレンチ18において等しく、また、間隔L3に等しい。
【0038】
ダイオード200でも、ダイオード100と同様の効果を奏することができる。
【0039】
また、ダイオード200では、逆方向電圧が印加されている場合、トレンチ18a、18bの間隔が小さいほど、隣り合うトレンチ18a、18bの周辺に発生する空乏層が広がり易い。即ち、中央側トレンチ18bの間隔よりも端側トレンチ18aの間隔の方が小さい。このため、端部領域200aの方が、中央領域200bよりも空乏層が広がり易い。これにより、中央領域200bの耐圧を、端部領域200aの耐圧よりも低くすることができる。この結果、L負荷スイッチングのオフ動作実行時にダイオード200に逆方向電圧が印加される場合、端部領域200aよりも中央領域200bにおいて電界強度が高くなり、中央領域200bで電流が流れやすくなる。このため、電流がダイオード200の端部領域200a付近に集中することを緩和することができる。これにより、ダイオード200において、L負荷スイッチング時のアバランシェ破壊に対する耐性を向上させることができる。
【0040】
なお、第2実施例の変形例では、
図6に示すように、ダイオード300の端部領域300aでは、隣り合う2個の端側トレンチ18aの表面12b側の間隔L3は、ダイオード200の終端側に近づくのに従って、徐々に小さくなっていてもよい。隣り合う2個の端側トレンチ18aの表面12bと反対側の間隔も同様に、ダイオード200の終端側に近づくのに従って、徐々に小さくなっていてもよい。なお、中央領域300aは、中央領域200aと同様の複数の中央側トレンチ18bを備えていてもよい。あるいは、中央領域300aは、互いに間隔が異なる複数の中央側トレンチ18bを備えていてもよい。なお、複数のトレンチ18の長手方向(
図4の上下方向)における端縁から終端側トレンチ22までの間隔L5は、第2実施例の間隔L3、L5と同一であってもよいし、本変形例の複数の間隔L3のうちのいずれかの間隔L3であってもよい。
【0041】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0042】
(1)上記した実施例では、トレンチ18a、18b、18cの側面が底面の垂直方向に対して傾斜することによって、間隔L1を小さくすることなく間隔L2が小さくされている。しかしながら、トレンチの形状は、トレンチ18a等の形状に限定されない。例えば、
図3に示すように、トレンチ218a、218b、218cは、半導体層12の表面12bから裏面12c側に向かって、一定の幅が維持され、裏面12c側の端部において、幅が拡大している形状を有していてもよい。この構成では、裏面12c側の近傍の隣り合う2個のトレンチ218a、218b、218cの間隔L3は、間隔L1よりも小さい。この構成では、隣り合う2個のトレンチ218a、218b、218cの間隔が最も小さい位置は、トレンチ218a、218b、218cの裏面12c側の端よりも若干表面12b側にであってもよい。この場合、終端側トレンチ20は、実施例と同様であってもよい。あるいは、終端側トレンチ20の側面が底面に対して垂直方向に配置されていてもよいし、トレンチ218a等と同様の構成を有していていもよい。
【0043】
(2)上記した実施例では、トレンチ18a、18b、18cの側面は、平面形状を有している。しかしながら、トレンチ18a、18b、18cの側面は、例えば円弧状に湾曲していてもよい。これにより、間隔L1から間隔L2まで、トレンチ18a、18b、18cの間隔が徐々に小さくなっていてもよい。
【0044】
(3)上記の技術は、酸化ガリウム以外の例えばシリコンカーバイド(SiC)等のワイドギャップ半導体にも適用可能である。また、ダイオード100は、ショットキーダイオード以外に、PNダイオードにも適用可能である。
【0045】
(4)上記した各実施例では、終端側トレンチ20では、トレンチ18a、18b、18cと同様に、側面が底面に対して垂直方向から傾斜している。しかしながら、終端側トレンチ20の側面は、底面に対して垂直方向に配置されていてもよいし、トレンチ18a、18b、18cの側面の傾斜角θと異なる傾斜角で底面に対して傾斜していてもよい。
【0046】
(5)上記した各実施例及び変形例(1)では、低濃度領域40は、終端側トレンチ20の下方にも配置されている。しかしながら、終端側トレンチ20の下方には、低濃度領域40が配置されていなくてもよい。この場合、終端側トレンチ20の下方の半導体層12は、その他の半導体層12と同等の不純物濃度を有していてもよい。
【0047】
(6)上記した各実施例では、ダイオード100の終端部には、終端側トレンチ20が配置され、終端側トレンチ20に絶縁層22が埋め込まれている。アノード電極30は、絶縁層22の表面に接触することによって、フィールドプレート構造が構成されている。しかしながら、ダイオード100の終端部には、トレンチが配置されていなくてもよい。この場合、ダイオード100の終端部は、半導体層12の表面12bと同一の平面形状を有していてもよい。さらに、ダイオード100の終端部の平面上に、絶縁膜が配置されていてもよい。絶縁膜は、絶縁膜31と連結していてもよい。アノード電極30が絶縁膜と接触することによって、フィールドプレート構造が構成されていてもよい。
【0048】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0049】
10:カソード電極、12:半導体層、12a:メサ部、12b:表面、12c:裏面、14:基板、16:エピタキシャル層、18a、18b、18c:トレンチ、20:終端側トレンチ、21:絶縁膜、22:絶縁層、30:アノード電極、31:絶縁膜、32:導電部、40:低濃度領域、100:ダイオード