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  • 特許-工作機械、およびテレスコカバー 図1
  • 特許-工作機械、およびテレスコカバー 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】工作機械、およびテレスコカバー
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20240426BHJP
   B23B 25/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
B23Q11/08 A
B23B25/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020017559
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021122890
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山浦 充瑠
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-297510(JP,A)
【文献】特開平10-058276(JP,A)
【文献】実開平06-085749(JP,U)
【文献】実開平07-003945(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/08
B23B 25/00
B23B 29/24 - 29/34
B24B 55/00 - 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク加工領域内に設けられたワークを把持する主軸および刃物台を備え、前記ワーク加工領域を形成するカバー支持壁に、前記ワークを加工する際の前記主軸又は前記刃物台の移動に連携して伸縮動作によって前記カバー支持壁に形成された開口を閉塞するテレスコカバーを設置し、前記テレスコカバーが、一部が重なり合うようにスライド自在な複数のカバー部材からなり、各前記カバー部材に前記スライドの範囲を規制するストッパーが設けられた工作機械であって、
前記カバー部材のそれぞれに前記主軸又は前記刃物台の一部が収容されるように凹んだ切り欠き部を設け、
前記ストッパーを前記切り欠き部の側方に配置し、
前記カバー支持壁の開口に前記テレスコカバーの伸縮動作に連携して前記ストッパーが順次収容される収納部が形成されている、工作機械。
【請求項2】
記収納部が、前記刃物台と前記主軸との接近の際に前記ストッパーに当接して前記カバー部材の移動を止める規制面を有している、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
各前記カバー部材が、重ね合わせた状態で配置されて、外側に配置されるカバー本体と内側に配置されるカバー本体とからなり、前記主軸と前記刃物台とが最も近づいた際に各前記切り欠き部の底位置が揃っている、請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
各前記ストッパーの先端位置が揃っている、請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
記刃物台が、前記主軸に対して前記テレスコカバーの伸縮方向に移動する移動機構を有し、
各前記カバー部材が前記移動機構をカバーする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項6】
ワーク加工領域内に設けられたワークを把持する主軸および刃物台を備えた工作機械の前記ワーク加工領域を形成するカバー支持壁に設置され、前記ワークを加工する際の前記主軸又は前記刃物台の移動に連携して伸縮動作によって前記カバー支持壁に形成された開口を閉塞するテレスコカバーであって、
前記テレスコカバーが、一部が重なり合うようにスライド自在な複数のカバー部材からなり、
各前記カバー部材に前記スライドの範囲を規制するストッパーが設けられ、
前記カバー部材のそれぞれに前記主軸又は前記刃物台の一部が収容されるように凹んだ切り欠き部を設け、
前記ストッパーを前記切り欠き部の側方に配置し、
前記カバー支持壁の開口に形成された収納部に前記テレスコカバーの伸縮動作に連携して前記ストッパーが順次収容される、テレスコカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工領域内の同一壁に設けた主軸およびタレット刃物台の少なくとも一方が相対的に移動してワークを加工する工作機械、およびテレスコカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、ワークの加工時に生じる切粉や切削液が主軸や刃物台の移動機構に付着するのを防止する必要がある。このため、例えば、特許文献1には、ワークの加工領域と移動機構の配置領域とを仕切るテレスコカバー(テレスコピックカバーともいう)の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-95891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主軸と刃物台が並んで設けられており、例えば刃物台が主軸に接近してからワークを加工する構造では、刃物台が主軸にできるだけ接近して加工したい要望があった。
【0005】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、刃物台と主軸とがより接近することが可能な工作機械、およびテレスコカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1に、ワーク加工領域内に設けられたワークを把持する主軸および刃物台を備え、前記ワーク加工領域を形成するカバー支持壁に、前記ワークを加工する際の前記主軸又は前記刃物台の移動に連携して伸縮動作によって前記カバー支持壁に形成された開口を閉塞するテレスコカバーを設置し、前記テレスコカバーが、一部が重なり合うようにスライド自在な複数のカバー部材からなり、各前記カバー部材に前記スライドの範囲を規制するストッパーが設けられた工作機械であって、前記カバー部材のそれぞれに前記主軸又は前記刃物台の一部が収容されるように凹んだ切り欠き部を設け、前記ストッパーを前記切り欠き部の側方に配置し、前記カバー支持壁の開口に前記テレスコカバーの伸縮動作に連携して前記ストッパーが順次収容される収納部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
第2に、前記収納部が、前記刃物台と前記主軸との接近の際に前記ストッパーに当接して前記カバー部材の移動を止める規制面を有していることを特徴とする。
【0008】
第3に、各前記カバー部材が、重ね合わせた状態で配置されて、外側に配置されるカバー本体と内側に配置されるカバー本体とからなり、前記主軸と前記刃物台とが最も近づいた際に各前記切り欠き部の底位置が揃っていることを特徴とする。
【0009】
第4に、各前記ストッパーの先端位置が揃っていることを特徴とする。
【0010】
第5に、前記刃物台が、前記主軸に対して前記テレスコカバーの伸縮方向に移動する移動機構を有し、各前記カバー部材が前記移動機構をカバーすることを特徴とする。
【0011】
第6に、ワーク加工領域内に設けられたワークを把持する主軸および刃物台を備えた工作機械の前記ワーク加工領域を形成するカバー支持壁に設置され、前記ワークを加工する際の前記主軸又は前記刃物台の移動に連携して伸縮動作によって前記カバー支持壁に形成された開口を閉塞するテレスコカバーであって、前記テレスコカバーが、一部が重なり合うようにスライド自在な複数のカバー部材からなり、各前記カバー部材に前記スライドの範囲を規制するストッパーが設けられ、前記カバー部材のそれぞれに前記主軸又は前記刃物台の一部が収容されるように凹んだ切り欠き部を設け、前記ストッパーを前記切り欠き部の側方に配置し、前記カバー支持壁の開口に形成された収納部に前記テレスコカバーの伸縮動作に連携して前記ストッパーが順次収容されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以下の効果を得ることができる。
各カバー部材が切り欠き部を有することによって、刃物台と主軸とをより近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械を示す図である。
図2】タレット刃物台の原点位置を説明する図である。
図3図2のテレスコカバーおよび収納室を説明する図である。
図4A図3のカバー部材を説明する図である。
図4B図3のカバー部材を説明する図である。
図4C図3のカバー部材を説明する図である。
図5A図3のA-A線矢視断面図である。
図5B図3のB-B線矢視断面図である。
図6】タレット刃物台の前進位置を説明する図である。
図7図6のテレスコカバーおよび収納室を説明する図である。
図8A図6のA-A線矢視断面図である。
図8B図6のB-B線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の工作機械1や、この工作機械1に用いるテレスコカバー40について説明する。図1に示すように、工作機械1は主軸20およびタレット刃物台30を備えている。主軸20は、チャックを介して加工対象となるワークを把持(保持)することができる。ワークは丸棒状に形成され、バーフィーダ等によって主軸20の後方からワーク加工領域P内に供給される。
【0015】
主軸20は、Z軸方向を軸線として主軸台に回転自在に支持され、主軸台に設けられた主軸モータの動力によって回転駆動される。
タレット刃物台30は、刃物台本体31とタレット32とを有する。刃物台本体31は、主軸20に対して接近/離間できるように、移動機構を介してベッドに搭載されている。タレット32は、刃物台本体31の端部側に配置され、Z軸方向を軸線として刃物台本体31に旋回可能に支持されている。タレット32は、正面視で多角形状に形成され、その外周面(タレット面)には、ワークを切削加工するエンドミルやバイト等の工具が装着されている。タレット32の割り出し旋回によって、工具は旋回してワークに対応する加工位置に選択される。タレット刃物台30が主軸20に接近した後、主軸20に把持されたワークは、加工位置に選択された工具によって加工される。
【0016】
図2に示すように、主軸20およびタレット刃物台30は、主軸20の軸線とタレット刃物台30の軸線とが並列配置された状態で、区画壁10に並んで設けられている。区画壁10は、ワーク加工領域Pと主軸台やタレット刃物台30の移動機構の配置領域とを区画している。区画壁10は、略中央位置にカバー支持壁11を有し、カバー支持壁11にテレスコカバー40が載置されている。
なお、図1では、カバー支持壁11とテレスコカバー40との境界付近を覆う化粧板60を示している。しかし、図2以降では、カバー支持壁11やテレスコカバー40の構造を説明しやすくするために、化粧板60の記載を省略している。
【0017】
カバー支持壁11は正面視で略矩形状に形成され、主軸台の一部を覆うとともに、図2,3に示すように、カバー支持壁11の一端側が主軸20に向けて突出しており、主軸20の外周面を部分的に囲んでいる。
カバー支持壁11の中央には、主軸20に向けて移動可能なタレット刃物台30を配置させるための開口を有している。この開口の周囲には、ストッパー用の収納室12が設けられている。収納室12は、例えば、ワーク加工領域Pから離れるように凹んでおり、主軸20の近傍位置から、タレット刃物台30に対して主軸20とは反対側の位置までに亘って形成されている。
【0018】
収納室12には、主軸20寄りの位置(具体的には、カバー支持壁11の幅方向で見て主軸20を挟んだ両位置)に、後述するツールカバー41aの前ストッパー45,47の外面にそれぞれ当接可能な規制壁面13を有する。これら規制壁面13は、例えば、正面視した主軸20の外周面を形成する円に2点で交わる一直線上に配置されている。一方、収納室12には、主軸20とは反対側の位置に、このツールカバー41aの後ストッパー49の外面に当接可能な規制壁面14を有している。
【0019】
テレスコカバー40は、主軸20とタレット刃物台30との間を伸縮自在に構成され、例えば、タレット刃物台30の移動機構を覆う複数(一例として11枚)のツールカバー41a~41kからなる。ツールカバーが本発明のカバー部材に相当する。
各ツールカバー41a~41kは、金属製であり、大きさがそれぞれ異なる重ね置き構造で構成され、内側から外側に順次重ね合わせた状態で配置される。各ツールカバー41a~41kのうち、図4Cに示すツールカバー41kが最も内側に配置される。このツールカバー41kの内側には、枠部材61が設けられている。枠部材61は、刃物台本体31に固定されており、テレスコカバー40の裏側で主軸20とタレット刃物台30との間に配置されたレールに載置されている。
【0020】
この最も内側に配置されるツールカバー41kには、図3に示すツールカバー41jが重ねられ、このツールカバー41jには、ツールカバー41iが重ねられる。以降、ツールカバー41h、ツールカバー41g、中央に配置されるツールカバー41f(図4Bに示す)、ツールカバー41e、ツールカバー41d、ツールカバー41c、ツールカバー41b、最も外側に配置されるツールカバー41a(図4Aに示す)の順に重ねられて配置される。
【0021】
詳しくは、最も外側に配置されるツールカバー41aは、図4Aに示すように、例えば枠状に形成されたカバー本体42を有する。カバー本体42には、刃物台本体31の周囲を囲む中央開口43が設けられている。また、カバー本体42は、テレスコカバー40の伸縮方向(主軸20とタレット刃物台30とを結ぶ方向と同じ)で見た主軸20寄りの前端44に、前ストッパー45,47および切り欠き部46を有する。前ストッパー45,47が本発明のストッパーに相当する。
【0022】
前ストッパー45,47は、前端44の両端付近にそれぞれ設けられ、いずれも前端44から折れ曲がり、カバー支持壁11に向けて延びている。前ストッパー45,47の奥行き(前端44からカバー支持壁11に向けて延びた長さ)は、いずれも同じ値Daに設定されている。
切り欠き部46は、例えば前ストッパー45と前ストッパー47との間に配置される。切り欠き部46は、テレスコカバー40の伸縮方向に沿って切り欠かれており(前端44から中央開口43に向けて凹んでおり)、タレット刃物台30が主軸20に近づいた際に、切り欠き部46の底位置が主軸20の外周面に対峙する。切り欠き部46の高さ(テレスコカバー40の伸縮方向で見た長さ)はHaに設定されている。
【0023】
一方、カバー本体42は、前端44の反対側に後端48を有し、この後端48には、後ストッパー49が設けられている。後ストッパー49は、後端48からカバー支持壁11に向けて折れ曲がっている。
また、カバー本体42は、前端44と後端48を前後方向で連結する側端50をそれぞれ有する。各側端50には、カバー支持壁11に向けて折れ曲がった支持脚51がそれぞれ設けられ、支持脚51の先端がカバー支持壁11に当接することにより、ツールカバー41aがカバー支持壁11の収納室12に支持される。なお、図4Aで説明したツールカバー41aは最も外側に配置されるので、例えば、片方の支持脚51は、さらに内側に折り曲げて断面L字状に形成してもよい。この断面L字状の内部に、後述するツールカバー41b~41kの支持脚51を収容すれば、ツールカバー41a~41kの移動が安定する。
【0024】
次に、例えば、中央に配置されるツールカバー41fは、図4Bに示すように、中央開口43が形成されたカバー本体42を有する。このカバー本体42は、ツールカバー41fよりも1つ外側に配置されるツールカバー41eのカバー本体42に比べて、ひと回り程度小さく形成されている。図4Bに示すツールカバー41fもまた、テレスコカバー40の伸縮方向で見た主軸20寄りの前端44に、前ストッパー45,47および切り欠き部46を有している。
【0025】
前ストッパー45,47は、上記ツールカバー41aと同様に、いずれも前端44から折れ曲がってカバー支持壁11に向けて延びており、切り欠き部46を挟んで形成されている。
この中央に配置されるツールカバー41fにおいて、各前ストッパー45,47の奥行きDfは、タレット刃物台30が主軸20に近づいた際に各前ストッパー45,47が収納室12に納まるように、図4Aで説明したツールカバー41aの前ストッパー45,47の奥行きDa(より具体的には、ツールカバー41fよりも1つ外側に配置されるツールカバー41eの前ストッパー45,47の奥行きDe)に比べて短く形成されている。なお、これら奥行きDeと奥行きDfとの差は、ツールカバー41eのカバー本体42の厚さ分に相当する。
【0026】
切り欠き部46は、上記ツールカバー41aと同様に、前ストッパー45と前ストッパー47との間に配置され、テレスコカバー40の伸縮方向に沿って切り欠かれている。
この中央に配置されるツールカバー41fにおいて、切り欠き部46の高さHfは、タレット刃物台30が主軸20に近づけるように、図4Aで説明したツールカバー41aの切り欠き部46の高さHa(より具体的には、ツールカバー41fよりも1つ外側に配置されるツールカバー41eの切り欠き部46の高さHe)に比べて短く形成されている。なお、これら高さHeと高さHfとの差は、ツールカバー41eの前ストッパー45,47の厚さ分に相当する。
【0027】
なお、この中央に配置されるツールカバー41fにも、上記ツールカバー41aと同様に、カバー本体42の後端48には、後ストッパー49が設けられ、また、各側端50には、カバー支持壁11に向けて折れ曲がった支持脚51がそれぞれ設けられている。
続いて、最も内側に配置されるツールカバー41kは、図4Cに示すように、中央開口43が形成されたカバー本体42を有する。このカバー本体42は、ツールカバー41kよりも1つ外側に配置されるツールカバー41jのカバー本体42に比べて、ひと回り程度小さく形成されている。
【0028】
ツールカバー41kもまた、テレスコカバー40の伸縮方向で見た主軸20寄りの前端44に、前ストッパー45,47および切り欠き部46を有する。
前ストッパー45,47は、上記ツールカバー41a,41fと同様に、いずれも前端44から折れ曲がってカバー支持壁11に向けて延びており、切り欠き部46を挟んで形成されている。
【0029】
この最も内側に配置されるツールカバー41kにおいて、各前ストッパー45,47の奥行きDkは、タレット刃物台30が主軸20に近づいた際に各前ストッパー45,47が収納室12に納まるように、図4Bで説明したツールカバー41fの前ストッパー45,47の奥行きDf(より具体的には、ツールカバー41kよりも1つ外側に配置されるツールカバー41jの前ストッパー45,47の奥行きDj)に比べて短く形成されている。なお、これら奥行きDjと奥行きDkとの差は、ツールカバー41jのカバー本体42の厚さ分に相当する。
【0030】
切り欠き部46は、上記ツールカバー41a,41fと同様に、前ストッパー45と前ストッパー47との間に配置され、テレスコカバー40の伸縮方向に沿って切り欠かれている。
この最も内側に配置されるツールカバー41kにおいて、切り欠き部46の高さHkは、タレット刃物台30が主軸20に近づけるように、図4Bで説明したツールカバー41fの切り欠き部46の高さHf(より具体的には、ツールカバー41kよりも1つ外側に配置されるツールカバー41jの切り欠き部46の高さHj)に比べて短く形成されている。なお、これら高さHjと高さHkとの差は、ツールカバー41jの前ストッパー45,47の厚さ分に相当する。
【0031】
なお、この最も内側に配置されるツールカバー41kにも、上記ツールカバー41a,41fと同様に、カバー本体42の後端48には、後ストッパー49が設けられており、また、各側端50には、カバー支持壁11に向けて折れ曲がった支持脚51がそれぞれ設けられている。
このように、大きさの異なる枠状のツールカバー41a~41kを11枚重ね合わせて、各ツールカバー41a~41kを主軸20に向けて、もしくは主軸20から離れるように移動させることにより、タレット刃物台30の位置を容易に変えることができる。
【0032】
そして、各ツールカバー41a~41kは、各前端44の前ストッパー45,47の先端位置が揃うように、内側に配置するに連れて前ストッパー45,47の奥行きDを短くするので、後述のように、各ツールカバー41a~41kのいずれの前ストッパー45,47も、カバー支持壁11の収納室12内に収まり、ワーク加工領域Pに突出しない。
また、切り欠き部46の高さHについても、各ツールカバー41a~41kが主軸20に最も近づいた際に各切り欠き部46の底位置が揃うように、内側に配置するツールカバーほど短くしているため、ツールカバー41a~41kの前端44と主軸20の外周面との接触を防ぐことができる。
【0033】
図2図3で説明したような、タレット刃物台30が主軸20から最も離れた位置(タレット刃物台30の原点位置)にある場合、各ツールカバー41a~41kは、タレット刃物台30と主軸20との間では拡張するのに対し、タレット刃物台30を挟んで主軸20とは反対側では縮小する。
詳しくは、図5A図5Bに示すように、各ツールカバー41a~41kは、カバー支持壁11のうち主軸20の近傍では、各前端44を一部分重ねた状態でテレスコカバー40の伸縮方向にずれて並んでいる。
【0034】
これに対し、各ツールカバー41a~41kの後端48では、例えば、最も外側に配置されるツールカバー41aの後ストッパー49の外面が規制壁面14に接触するとともに、また、このツールカバー41aの後ストッパー49の内面が、1つ内側に配置されるツールカバー41bの後ストッパー49の外面に接触しており、ツールカバー41aの後ストッパー49とツールカバー41bの後ストッパー49とが重なり合っている。そして、最も内側に配置されるツールカバー41kについても、このツールカバー41kの後ストッパー49の外面が、1つ外側に配置されるツールカバー41jの後ストッパー49の内面に接触しており、ツールカバー41kの後ストッパー49とツールカバー41jの後ストッパー49とが重なり合っている。
【0035】
一方、タレット刃物台30が主軸20に向けて前進した場合、図6図7に示すように、各ツールカバー41a~41kは、タレット刃物台30と主軸20との間では縮小するのに対し、タレット刃物台30を挟んで主軸20とは反対側では拡張する。
具体的には、タレット刃物台30が、図2で説明した原点位置から主軸20に向けて前進すると、最も内側に配置されるツールカバー41kの後ストッパー49の外面が、1つ外側に配置されるツールカバー41jの後ストッパー49の内面から離れる。次に、タレット刃物台30が主軸20に向けて前進して、最も内側に配置されるツールカバー41kの前ストッパー45,47の外面が、1つ外側に配置されるツールカバー41jの前ストッパー45,47の内面に接触すると、ツールカバー41kの前端44とツールカバー41jの前端44が重なり、ツールカバー41kの切り欠き部46の上にツールカバー41jの切り欠き部46が重ねられた状態で前進する。
【0036】
次いで、タレット刃物台30が主軸20に向けてさらに前進し、ツールカバー41jの前ストッパー45,47の外面が、1つ外側に配置されるツールカバー41iの前ストッパー45,47の内面に接触すると、ツールカバー41k,41jの前端44とツールカバー41iの前端44が重なり、ツールカバー41jの切り欠き部46の上にツールカバー41iの切り欠き部46が重ねられた状態で前進する。
【0037】
その後、タレット刃物台30が主軸20に向けてさらに前進することにより、ツールカバー41k,41j,41i、・・・41bの前端44が重なった状態で前進し、ツールカバー41bの前ストッパー45,47の外面が、最も外側に配置されるツールカバー41aの前ストッパー45,47の内面に接触すると、ツールカバー41k,41j,41i、・・・41bの前端44とツールカバー41aの前端44が重なり、ツールカバー41bの切り欠き部46の上にツールカバー41aの切り欠き部46が重ねられた状態になる。
【0038】
そして、図7図8Aに示すように、各ツールカバー41a~41kの切り欠き部46が重なった状態で主軸20に最も接近し、図8Bに示すように、最も外側に配置されるツールカバー41aの前ストッパー45,47の外面が収納室12の規制壁面13に当接すると、ツールカバー41a~41kの前進が止まる。これにより、図6に示すように、タレット刃物台30が主軸20に最も近づいた位置(タレット刃物台30の前進位置)に到達する。
【0039】
このように、各ツールカバー41a~41kが切り欠き部46をそれぞれ有することによって、タレット刃物台30を主軸20により近づけることができる。
また、カバー支持壁11の一端側が主軸20に向けて突出しており、主軸20の外周面を部分的に囲んでいることによって、前ストッパー45,47が収納室12の規制壁面13に当接するまで移動して、主軸20を切り欠き部46に受け入れ可能であることから、主軸20に対するタレット刃物台30の位置を正確に設定できる。
【0040】
上記の実施例では、主軸20に対してタレット刃物台30が移動する例を挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこの例に限定されない。例えば、タレット刃物台30に対して主軸20が移動することもできる。詳しくは、主軸20に、ツールカバー41a~41kで囲まれたタレット刃物台30が接近して、主軸20が切り欠き部46に収まる構造のほか、このタレット刃物台30に主軸20が接近して、主軸20が切り欠き部46に収まる構造であってもよい。もしくは、タレット刃物台30に、ツールカバーで囲まれた主軸20が接近して、タレット刃物台30が切り欠き部46に収まる構造や、この主軸20にタレット刃物台30が接近して、タレット刃物台30が切り欠き部46に収まる構造にしてもよい。あるいは、主軸20およびタレット刃物台30の双方が移動してもよい。これらいずれの場合にも、主軸20が切り欠き部46に受け入れられるまで、もしくはタレット刃物台30が切り欠き部46に受け入れられるまで、タレット刃物台30と主軸20とをより近づけることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 ・・・ 工作機械
10 ・・・ 区画壁(壁)
11 ・・・ カバー支持壁
12 ・・・ 収納室(収納部)
13 ・・・ 規制壁面(規制面)
14 ・・・ 規制壁面
20 ・・・ 主軸
30 ・・・ タレット刃物台(刃物台)
31 ・・・ 刃物台本体
32 ・・・ タレット
40 ・・・ テレスコカバー
41a ・・・ ツールカバー(カバー部材)
41b ・・・ ツールカバー(カバー部材)
41c ・・・ ツールカバー(カバー部材)
41d ・・・ ツールカバー(カバー部材)
41e ・・・ ツールカバー(カバー部材)
41f ・・・ ツールカバー(カバー部材)
41g ・・・ ツールカバー(カバー部材)
41h ・・・ ツールカバー(カバー部材)
41i ・・・ ツールカバー(カバー部材)
41j ・・・ ツールカバー(カバー部材)
41k ・・・ ツールカバー(カバー部材)
42 ・・・ カバー本体
43 ・・・ 中央開口
44 ・・・ 前端
45 ・・・ 前ストッパー(ストッパー)
46 ・・・ 切り欠き部
47 ・・・ 前ストッパー(ストッパー)
48 ・・・ 後端
49 ・・・ 後ストッパー
50 ・・・ 側端
51 ・・・ 支持脚
60 ・・・ 化粧板
61 ・・・ 枠部材
P ・・・ ワーク加工領域(加工領域)
Ha~Hk・・・ 切り欠き部の高さ
Da~Dk・・・ 前ストッパーの奥行き
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B