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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】防護工及び防護工を構築する方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20240426BHJP
   E01F 15/02 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
E01F7/04
E01F15/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020047302
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021147824
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】山口 聖勝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一雄
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-141568(JP,A)
【文献】特開2008-101467(JP,A)
【文献】特開2012-052383(JP,A)
【文献】特開2016-160616(JP,A)
【文献】特開2007-023682(JP,A)
【文献】特開平03-084119(JP,A)
【文献】特開2004-156336(JP,A)
【文献】特開2020-016070(JP,A)
【文献】特開2004-011388(JP,A)
【文献】特開2005-282317(JP,A)
【文献】特開2006-057442(JP,A)
【文献】特開2006-052540(JP,A)
【文献】特開平03-076917(JP,A)
【文献】特開平11-172632(JP,A)
【文献】特開平11-029920(JP,A)
【文献】実開平07-031914(JP,U)
【文献】実開昭53-047724(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0224021(US,A1)
【文献】特開2018-204341(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0157045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 3/00-8/02
E01F 13/00-15/14
E01F 1/00
E02D 5/00-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予想される土石流の流れに対向するように構築された防護工であって、
前記土石流の流れ方向に交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に埋め込まれた管状の杭部材を有する基礎と、
前記杭部材から立設する柱部材及び前記流れ方向において上流側で前記柱部材間に架け渡された梁部材を有し、前記基礎に対して位置固定されていて前記土石流中の物体を捕捉する捕捉体と、
を備え、
前記柱部材の一端が前記杭部材内で固定されていて、前記基礎に対して前記捕捉体は連結され、
前記杭部材は、地中に打ち込まれた際に当該地中の土が内部に入り込んだ土石部および当該土石部の上に設けられたコンクリート部を有し、
前記コンクリート部の内部にはコンクリートに埋設され、前記柱部材の一端をその内側に配置したスパイラル鉄筋が設けられており、
前記基礎は、前記流れ方向において前記杭部材に対して下流側で所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に埋め込まれた第2杭部材を有し、
前記捕捉体は、一端が前記第2杭部材で固定され、他端が前記柱部材に連結された第2柱部材を有し、
前記第2柱部材の一端が前記第2杭部材内で固定されており、
前記柱部材の一端は、前記柱部材で固定されている連結部材により形成されており、
前記第2柱部材の一端は、前記第2柱部材で固定されている第2連結部材により形成されており、
前記柱部材は、挿入部と立設部を有しており、
前記挿入部は、前記杭部材の延在方向に沿うように前記杭部材と連結されており、
前記立設部は、上方に向かうにつれて下流側に向かって斜めに延びており、
前記第2柱部材は、第2挿入部と第2立設部を有しており、
前記第2挿入部は、前記杭部材の延在方向に沿うように前記杭部材と連結されており、
前記第2立設部は、上方に向かうにつれて前記柱部材に向かって斜めに延びている
ことを特徴とする防護工。
【請求項2】
前記梁部材は、前記柱部材に対して着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の防護工。
【請求項3】
前記土石流が発生した災害発生現場に構築されていることを特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載の防護工。
【請求項4】
予想される土石流の流れ方向に交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に管状の杭部材を埋め込んで基礎を設けるステップと、
前記杭部材の間隔に対応した間隔をあけた柱部材と、該柱部材間に架け渡された梁部材とを有する捕捉体のうち、前記杭部材内に対してスパイラル鉄筋が設けられた前記柱部材の一端を挿入するステップと、
前記部材を地中に打ち込む際に入り込んだ土石部の一部を除去するステップと、
前記杭部材内において前記土石部の一部が除去された空間に硬化可能な材料を充填して、前記材料を硬化させて前記柱部材の一端が前記スパイラル鉄筋と共に前記杭部材内で固定することにより、前記基礎に対して前記捕捉体を連結するステップと、
を含むことを特徴とする防護工を構築する方法。
【請求項5】
予想される土石流の流れ方向に交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に管状の杭部材を埋め込んで基礎を設けるステップと、
前記杭部材内に対してスパイラル鉄筋が設けられた柱部材の一端を挿入するステップと、
前記部材を地中に打ち込む際に入り込んだ土石部の一部を除去するステップと、
前記杭部材内において前記土石部の一部が除去された空間に硬化可能な材料を充填して、前記材料を硬化させて前記柱部材の一端が前記スパイラル鉄筋と共に前記杭部材内で固定することにより、前記基礎に対して前記柱部材を連結するステップと、
前記柱部材間に梁部材を架け渡して捕捉体を形成するステップと、
を含むことを特徴とする防護工を構築する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護工及び防護工を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、山間部の居住地域に近接する小渓谷に設置されている防護柵が知られている。防護柵は、降雨等によって斜面が崩壊した際に落石や流木等を含んだ土石流が小渓谷に流れ込むことを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
防護柵は、コンクリートによって構築された土台(基礎)と、鋼材により構成された捕捉体と、を備える。土台は、地盤に打設して固化したコンクリートによって構築されている。捕捉体は、谷の地盤に立設された複数の柱部材と、柱部材に設けられた複数の梁部材とにより構成されている。捕捉体の柱部材は、土台に下端部が埋設されて固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-141568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、土砂災害により土砂や流木が氾濫した地域の復旧活動等の実施を行うに当たり、土砂災害発生後の土砂・流木流出による2次災害を防止する対策を講じる必要がある。
【0006】
例えば、コンクリートを基礎に用いる防護工を設置することが検討される。しかしながら、コンクリートの基礎を設置する際には、地盤を掘削する工程、型枠を設置する工程、型枠にコンクリートを打設する工程、コンクリートを養生する工程、そして型枠を外す工程がある。このように複数の工程を経て構築された基礎に捕捉体を設置する。
【0007】
2次災害を防止する観点から対策工(防護工)の施工は、緊急であり、迅速に行う必要がある。しかしながら、基礎にコンクリートを使用する場合、防護工を完成させるまでに時間がかかる。そのため、被災地における復旧活動のための安全確保の早期化、という課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、災害発生後の被災地に高強度の緊急対策工を迅速に施工する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る防護工は、予想される土石流の流れに対向するように構築されており、前記土石流の流れ方向に交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に埋め込まれた管状の杭部材を有する基礎と、前記杭部材から立設する柱部材及び前記流れ方向において上流側で前記柱部材間に架け渡された梁部材を有し、前記基礎に対して位置固定されていて前記土石流中の物体を捕捉する捕捉体と、を備え、前記柱部材の一端が前記杭部材内で固定されていて、前記基礎に対して前記捕捉体は連結されていることを特徴とする。
【0010】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る防護工は、予想される土石流の流れに対向するように構築されており、前記土石流の流れ方向に交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に埋め込まれた管状の杭部材を有する基礎と、前記杭部材から立設する柱部材及び前記流れ方向において上流側で前記柱部材間に架け渡された梁部材を有し、前記基礎に対して位置固定されていて前記土石流中の物体を捕捉する捕捉体と、前記基礎に対して前記捕捉体を連結する連結部材と、を備え、前記連結部材は、一端が前記杭部材内で固定されていて、他端が柱部材に連結されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記基礎は、前記流れ方向において前記杭部材に対して下流側で所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に埋め込まれた第2杭部材を有し、前記捕捉体は、一端が前記第2杭部材に着脱自在に連結され、他端が前記柱部材に連結された第2柱部材を有し、前記第2柱部材の一端が前記杭部材内で固定されていてもよい。
【0012】
また、前記第2柱部材の一端は、前記第2柱部材に着脱自在に連結されている第2連結部材により形成されていてもよい。
【0013】
また、前記柱部材は、上方に向かうにつれて下流側に向かって斜めに延びており、前記第2柱部材は、上方に向かうにつれて前記柱部材に向かって斜めに延びていてもよい。
【0014】
また、前記梁部材は、前記柱部材に対して着脱自在に取り付けられていてもよい。
【0015】
また、本発明に係る防護工は、前記土石流が発生した災害発生現場に構築されていてもよい。
【0016】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る防護工を構築する方法は、予想される土石流の流れ方向に交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に管状の杭部材を埋め込んで基礎を設けるステップと、前記杭部材の間隔に対応した間隔をあけた柱部材と、該柱部材間に架け渡された梁部材とを有する捕捉体のうち、前記杭部材内に前記柱部材の一端を挿入するステップと、前記杭部材内に硬化可能な材料を充填して、前記材料を硬化させて前記基礎に対して前記捕捉体を連結するステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る防護工を構築する方法は、予想される土石流の流れ方向に交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に管状の杭部材を埋め込んで基礎を設けるステップと、前記杭部材内に柱部材を挿入するステップと、前記杭部材内に硬化可能な材料を充填して、前記材料を硬化させて前記基礎に対して前記柱部材を連結するステップと、前記柱部材間に梁部材を架け渡して捕捉体を形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る防護工を構築する方法は、予想される土石流の流れ方向に交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に管状の杭部材を埋め込んで基礎を設けるステップと、前記杭部材内に連結部材を設置するステップと、前記基礎の前記杭部材内に硬化可能な材料を充填し、前記材料を硬化させるステップと、前記連結部材の一端に、前記杭部材の間隔に対応した間隔をあけた柱部材と、該柱部材間に架け渡された梁部材とを有する捕捉体を連結するステップと、を含むことを特徴とする。
【0019】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る防護工を構築する方法は、予想される土石流の流れ方向に交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に管状の杭部材を埋め込んで基礎を設けるステップと、前記杭部材内に連結部材を設置するステップと、前記基礎の前記杭部材内に硬化可能な材料を充填し、前記材料を硬化させるステップと、前記連結部材の一端に柱部材を連結し、該柱部材間に梁部材を架け渡して捕捉体を形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、災害発生地に高強度の緊急対策工を迅速に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】災害発生地に設置された複数の防護工を示す概略図である。
図2】第1の実施の形態に係る防護工を上流側から見た斜視図である。
図3】第1の実施の形態に係る防護工の側面図である。
図4】保持具の構成を説明するための斜視図である。
図5】地中に基礎を形成する工程(第1ステップ)を示す図である。
図6】流杭部材及び下流杭部材内から土石等を除去する工程を示す図である。
図7】基礎に捕捉体を連結する工程(第2ステップ)を示す図であり、(a)は、基礎に捕捉体を接近させる状態を示す図であり、(b)は、コンクリート内に挿入部を挿入して基礎に捕捉体を挿入させた状態を示す図である。
図8】流杭部材及び下流杭部材にコンクリートを充填する工程(第3ステップ)を示す図である。
図9】変形例1に係る梁部材を示す図である。
図10】変形例2に係る梁部材を示す図である。
図11】第2の実施の形態に係る防護工の斜視図である。
図12】第3の実施の形態に係る防護工の斜視図である。
図13】第3の実施の形態に係る防護工の側面図である。
図14】上流柱部材とアンカーボルトとの関係を説明するための図であり、(a)は、上流柱部材における横断面図であり、(b)は、上流柱部材及びアンカーボルトの側面図である。
図15】下流柱部材とアンカーボルトとの関係を説明するための図であり、(a)は、下流柱部材における横断面図であり、(b)は、下流柱部材及びアンカーボルトの側面図である。
図16】杭部材にアンカーボルトを挿入する工程(第3ステップ)を示す図である。
図17】アンカーボルトに捕捉体を連結する工程(第4ステップ)を示す図であり、(a)は、基礎内に捕捉体を接近させる状態を示す図であり、(b)は、コンクリート内に挿入されたアンカーボルトに捕捉体を連結させた状態を示す図である。
図18】第4の実施の形態に係る防護工の斜視図である。
図19】柱部材とアンカーボルトとの関係を説明するための図であり、(a)は、柱部材における横断面図であり、(b)は、柱部材及びアンカーボルトの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
<第1の実施の形態>
本実施の形態に係る防護工1は、例えば、土砂災害発生後の被災地において復旧活動を行うために緊急に構築された緊急対策工である。図1は、災害発生地Xに設置された複数の防護工1を示す概略図である。防護工1が構築される場所等は限定されないが、例えば、本実施の形態に係る防護工1は、図1に示すような山間部の災害発生地Xに設置されている。つまり、防護工1は、例えば、一度、土石流が発生し、再度、土石流の発生が予想される場所に予想される土石流の流れに対向するように構築されている。
【0024】
なお、説明の便宜上、予想される土石流の流れ方向を「F」とし、上流側を「F1」、下流側を「F2」とする。また、土石流の流れ方向Fに交差する方向を防護工1の幅方向として「W」とする。
【0025】
図面においては5つの防護工1が災害発生地Xで幅方向Wに並んで構築されている。防護工1は、土石流が発生した災害発生地Xに対して下流側F2に設置されている。本実施の形態に係る防護工1は、予想される土石流の流れに対向するように構築された防護工であって、土石流の流れ方向Fに交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に埋め込まれた管状の杭部材11,13を有する基礎10と、杭部材11,13から立設する柱部材21,23及び流れ方向Fにおいて上流側F1で柱部材21,23間に架け渡された梁部材25を有し、基礎10に対して位置固定されていて土石流中の物体を捕捉する捕捉体20と、を備え、柱部材21,23の一端が杭部材11,13内で固定されていて、基礎10に対して捕捉体20は連結されている。以下、防護工1の構成について具体的に説明する。
【0026】
図2は、第1の実施の形態に係る防護工1を上流側F1から見た斜視図である。図3は、第1の実施の形態に係る防護工1の側面図である。防護工1は、基礎10と、捕捉体20と、を備える。基礎10は、鋼管により形成された複数の杭部材11,13を有する。本実施の形態において杭部材11,13の数は4本であるが、特定の数に限定されない。
【0027】
杭部材11,13は、その延在方向に沿って地盤Gに埋め込まれている。基礎10は、2本の上流杭部材(杭部材)11及び2本の下流杭部材(第2杭部材)13を含む。
【0028】
上流杭部材11及び下流杭部材13は、それぞれ幅方向Wにおいて所定の間隔をあけて地盤Gに埋め込まれている。下流杭部材13は、流れ方向Fにおいて所定の間隔をあけて上流杭部材11に対して下流側F2に設けられている。
【0029】
上流杭部材11及び下流杭部材13はそれぞれその内部に、土石部15と、コンクリート部16と、を有する。土石部15は、上流杭部材11及び下流杭部材13をそれぞれ地盤Gに打ち込む際に上流杭部材11及び下流杭部材13内にそれぞれに入り込んだ土石等により形成されている。土石部15は、上流杭部材11及び下流杭部材13の延在方向において下端部側に位置する。
【0030】
土石部15が上流杭部材11及び下流杭部材13内部を占める割合は、上流杭部材11及び下流杭部材13の長さの約70~80%である。コンクリート部16は、コンクリートを養生して硬化させることにより形成されている。コンクリート部16は、上流杭部材11及び下流杭部材13の上端部側に位置する。コンクリート部16内にはスパイラル鉄筋17が埋設されている。
【0031】
捕捉体20は、地盤G上に設置されており、柱部材21,23と、梁部材25と、を有する。本実施の形態に係る防護工1は、4本の柱部材21,23と、7本の梁部材25と、を有する。柱部材21,23及び梁部材25の数は、特定の数に限定されない。
【0032】
柱部材21,23は、H形鋼により形成されている。柱部材21,23は、各杭部材11,13に連結されている。4本の柱部材21,23は、2本の上流柱部材(柱部材)21及び2本の下流柱部材(第2柱部材)23である。上流柱部材21はそれぞれ、上流杭部材11に連結されて地盤Gから立設している。下流柱部材23はそれぞれ、下流杭部材13に連結されて地盤Gから立設している。
【0033】
上流柱部材21は、挿入部21aと、立設部21bと、を有する。挿入部21aは、H形鋼により形成されている。挿入部21aは、上流杭部材11のコンクリート部16内で固定されている。挿入部21aは、コンクリート部16内でスパイラル鉄筋17の内側に位置している。立設部21bは、H形鋼により形成されている。立設部21bは、地上に露出している。挿入部21a及び立設部21bは、互いに溶接により直接的に固定されて一体となって上流柱部材21を形成している。
【0034】
下流柱部材23は、挿入部23aと、立設部23bと、を有する。挿入部23aは、H形鋼により形成されている。挿入部23aは、下流杭部材13のコンクリート部16内で固定されている。挿入部23aは、コンクリート部16内でスパイラル鉄筋17の内側に位置している。立設部23bは、H形鋼により形成されている。立設部23bは、地上に露出している。挿入部23a及び立設部23bは、互いに溶接により直接的に固定されて一体となって下流柱部材23を形成している。
【0035】
上流柱部材21の立設部21bは、上流杭部材11(地盤G)から上方に向かうにつれて下流側F2に向かって斜めに延びている。下流柱部材23の立設部23bは、下流杭部材13(地盤G)から上方に向かうにつれて上流側F1に向かって斜めに延びている。上流柱部材21の立設部21b及び下流柱部材23の立設部23bはそれぞれ、上方に向かうにつれて互いに近づいていく。下流柱部材23の立設部23bは、その上端において上流柱部材21の立設部21bの上端近傍に連結されている。捕捉体20は、防護工1を側方から見た場合、上流柱部材21の立設部21b及び下流柱部材23の立設部23bがλ形状に組まれている。
【0036】
上流柱部材21及び下流柱部材23は、H形鋼を形成するフランジ22aが上流側F1及び下流側F2に面するように設けられている。上流側F1に面する上流柱部材21のフランジ22aには、後述する保持具50が上流柱部材21の延在方向に沿って所定の間隔をあけて取り付けられている。
【0037】
梁部材25は、上流柱部材21において上流側F1に面するフランジ22aに保持具50によって取り付けられている。梁部材25は、鋼管により形成されている。梁部材25は、上流柱部材21の延在方向に沿って、所定の間隔をあけて上流柱部材21間に架け渡されている。梁部材25はそれぞれ、延在方向が互いにほぼ平行になっている。梁部材25の延在方向における両端部は、上流柱部材21からそれぞれ延出している。
【0038】
保持具50は、上流側F1に面する上流柱部材21のフランジ22aにおいて上流柱部材21の延在方向に沿って所定の間隔をあけて締結具(例えば、ボルト及びナット)により着脱自在に取り付けられている。
【0039】
図4は、保持具50の構成を説明するための斜視図である。保持具50は、例えば、鋼材により形成されている。保持具50は、底板51と、保持板52と、を有する。底板51は、上流柱部材21のフランジ22aに固定される。底板51は、フランジ22aからはみ出さない程度に形成されており、締結具によって上流柱部材21に固定されている。
【0040】
保持板52は、底板51に上流側F1に向かって立設されており、梁部材25を保持する。保持板52は、底板51の表面に溶接等によって接合された鋼板である。保持板52には、梁部材25を挿通する円形状の孔53が形成されている。この孔53に梁部材25を挿通し、孔53の位置で梁部材25を保持板52に溶接することにより、梁部材25は上流柱部材21に保持される。
【0041】
なお、保持具50に対する梁部材25の固定は、溶接による固定に限定されず、例えば、ボルト等を用いてもよい。この場合、2本の上流杭部材11を上流側F1から見て、各上流杭部材11の保持具50の保持板52に対して幅方向Wにおいて外側及び内側の少なくとも一方の側で梁部材25にボルトが取り付けられている。これにより、梁部材25の幅方向Wにおける動きを制限することができ、梁部材25が保持具50の孔53から抜け落ちることが防がれる。
【0042】
次に、図5乃至図8を用いて防護工1を構築する方法について説明する。防護工1を構築する方法は、予想される土石流の流れ方向Fに交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に杭部材11,13を埋め込んで基礎10を設ける第1ステップと、杭部材11,13の間隔に対応した間隔をあけた柱部材21,23と、柱部材21,23間に架け渡された梁部材25とを有する捕捉体20のうち、杭部材11,13内に柱部材21,23の一端を挿入する第2ステップと、杭部材11,13内に硬化可能な材料Mを充填して、材料Mを硬化させて基礎10に対して捕捉体20を連結する第3ステップと、を含む。以下、防護工1を構築する方法について具体的に説明する。
【0043】
図5は、地中に基礎10を形成する工程(第1ステップ)を示す図である。まず、土砂災害発生地Xを重機により整地する。整地した地盤Gに、上流杭部材11及び下流杭部材13を打ち込んで基礎10を形成する。
【0044】
幅方向Wにおける上流杭部材11同士の間隔及び下流杭部材13同士の間隔、並びに流れ方向Fにおける上流杭部材11と下流杭部材13との間隔は、予め設定されており、幅方向Wにおける捕捉体20の上流柱部材21同士の間隔及び下流柱部材23同士の間隔、並びに流れ方向Fにおける上流柱部材21と下流柱部材23との間隔にそれぞれ相当する。
【0045】
図6は、上流杭部材11及び下流杭部材13内から土石等を除去する工程を示す図である。鋼管により形成された上流杭部材11及び下流杭部材13を地盤Gに打ち込むことにより、鋼管内には、地盤Gの土が入り込む。上流杭部材11及び下流杭部材13の土石部15を一部除去する。なお、杭部材11,13を打ち込む位置を予め掘り起こしておいてもよい。この場合、地盤Gに打ち込まれた杭部材11,13内に充填する、硬化可能な材料であるコンクリートMの分だけ空間を残し、土を充填する。
【0046】
図7は、基礎10に捕捉体20を連結する工程(第2ステップ)を示す図であり、(a)は、基礎10に捕捉体20を接近させる状態を示す図であり、(b)は、コンクリートM内に挿入部21a,23aを挿入して基礎10に捕捉体20を連結させた状態を示す図である。
【0047】
次いで、工場で予め製造され被災地に搬送されてきた捕捉体20をクレーン等により吊り上げて基礎10に接近させる。捕捉体20が基礎10の上方に来ると、捕捉体20を徐々に降下させ、上流柱部材21の挿入部21aを上流杭部材11内に挿入し、下流柱部材23の挿入部23aを下流杭部材13内に挿入する。スパイラル鉄筋17は、上流柱部材21の挿入部21a及び下流柱部材23の挿入部23aにそれぞれ溶接等により予め仮止めされている。なお、上流柱部材21及び下流柱部材23は、例えば、所定の仮止め部材(図示せず)により上流杭部材11及び下流杭部材13に対して仮に位置決めされる。
【0048】
図8は、上流杭部材11及び下流杭部材13にコンクリートMを充填する工程(第3ステップ)を示す図である。土の除去後、上流杭部材11及び下流杭部材13内に硬化可能な材料としてコンクリートMを充填する。
【0049】
コンクリートMが硬化するとコンクリート部16が形成され、上流柱部材21及び下流柱部材23はそれぞれ、挿入部21a,23aにおいて上流杭部材11及び下流杭部材13内で位置固定された状態になる。これにより、捕捉体20が基礎10に連結された防護工1が構築される。
【0050】
なお、防護工1は、他のステップを含む方法により構築することもできる。防護工1を構築する他の方法は、予想される土石流の流れ方向Fに交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に管状の杭部材11,13を埋め込んで基礎10を設けるステップと、杭部材11,13内に柱部材21,23を挿入するステップと、杭部材11,13内に硬化可能な材料(コンクリート)Mを充填して、材料Mを硬化させて基礎10に対して柱部材21,23を連結するステップと、柱部材21,23間に梁部材25を架け渡して捕捉体20を形成するステップと、を含んでいてもよい。以下、防護工1を構築する他の方法について説明する。
【0051】
なお、以下の説明においては上記の方法とは異なる部分について主に説明する。上記の方法では、捕捉体20は、予め工場で製作されていたが、防護工1を構築する現場で捕捉体20を形成してもよい。
【0052】
基礎10の形成後、上流杭部材11に上流柱部材21の挿入部21aを挿入し、下流杭部材13に下流柱部材23の挿入部23aを挿入する。この状態において、上流柱部材21及び下流柱部材23の位置は、例えば、所定の仮止め部材(図示せず)によりを仮決めされる。ここで、下流柱部材23を上流柱部材21に連結する。
【0053】
次いで、上流杭部材11及び下流杭部材13にコンクリートMを充填する。コンクリートMが硬化してコンクリート部16が形成されると、互いに連結された上流柱部材21及び下流柱部材23は、基礎10に対して連結される。
【0054】
次いで、上流柱部材21間に梁部材25を架け渡す。梁部材25は、予め保持具50に溶接されている。上流側F1の上流柱部材21のフランジ22aに保持具50を取り付けることにより梁部材25が架け渡される。これにより、捕捉体20が防護工1の構築現場で形成される。以上により防護工1が構築される。
【0055】
以上のように構築された防護工1によれば、地盤Gに直接打ち込まれた上流杭部材11及び下流杭部材13を基礎10として使用している。捕捉体20の上流柱部材21及び下流柱部材23は、上流杭部材11及び下流杭部材13に対してコンクリート部16内で位置固定されているが、使用するコンクリートの量は、コンクリート基礎を形成するために打設する量に比べて著しく少なくすることができる。これによりコンクリート部16の養生に要する時間を大幅に減じることができ、防護工1の構築に要する構築時間も大幅に減じることができる。コンクリート基礎を必要としないので、特に災害発生地X付近で復旧作業を行う場所の安全確保の早期化を図ることができる。さらに、捕捉体20は、上流柱部材21及び下流柱部材23の一端が杭部材11,13内に挿入されており、基礎10に対してコンクリート部16内で位置固定されているので、防護工1全体としての強度は高くなる。
【0056】
また、防護工1は、上流柱部材21に対して下流柱部材23を斜めに連結してλ型に構成されており、現地の土石流の荷重に応じて最適な形状とすることができる。つまり、防護工1をλ型に構成することにより、土石流の水平荷重を上流柱部材21に対して平行な成分と、直角な成分とに分解することができる。
【0057】
また、基礎10に鋼管による上流杭部材11及び下流杭部材13を用いており、また、捕捉体20は、予め工場で製作されているので、在庫として保管することができるので、必要な際に短期間で防護工1の施工現場に搬送することができる。
【0058】
また、防護工1は、土石流が発生した場合に土石流に含まれる物体(土石等)が有するエネルギを梁部材25の変形及びたわみによって吸収するとともに、その反力をH形鋼の上流柱部材21及び下流柱部材23により支える構造であるため、防護工1全体としての変形を抑制することができる。梁部材25は、保持具50を介して上流柱部材21に着脱自在に取り付けられている。そのため、変形した梁部材25を簡単に取り外して新たな梁部材25と交換することができる。
【0059】
また、捕捉した土石や流木を取り除く場合、例えば、上方から順に梁部材25を上流柱部材21から取り外すことにより、除去作業がより容易になる。なお、梁部材25の取外しは、高さ方向においていずれの梁部材25から始めてもよい。
【0060】
さらに、複数の防護工1が幅方向Wに並んで構築されている場合、例えば、一方の端に位置する防護工1の捕捉体20における外側の上流柱部材21及び下流杭部材23を、梁部材25を含み基礎10から取り外すことができれば、重機等を土石や流木が堆積した場所に進入させることができる。これにより、重機等による土石や流木の除去作業が容易になる。
【0061】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。
【0062】
例えば、杭部材11,13の延在方向における途中に蓋を設けてもよい。これにより、杭部材11,13を地盤Gに打ち込む際に、鋼管内に、土石等が入り込まない空間を確保することができる。これにより、土石を除去する工程を省くことができる。
【0063】
また、上記の実施の形態において梁部材25は、断面視円形の鋼管により形成されていたがこれに限定されない。図9は、変形例1に係る梁部材125を示す図である。変形例1に係る梁部材125は、断面視四角形の鋼管により形成されている。梁部材125を保持する保持具140に形成された孔は、梁部材125の断面形状に対応した形状を有する。つまり、孔は、四角形状に形成されている。
【0064】
図10は、変形例2に係る梁部材225を示す図である。変形例2に係る梁部材225は、H形鋼により形成されている。梁部材225は、下流側F2のフランジ225aにおいて柱部材21の上流側F1のフランジ22aにボルト等により直接的に取り付けられている。
【0065】
<第2の実施の形態>
以下、防護工1Aついて説明する。図11は、第2の実施の形態に係る防護工1Aの斜視図である。なお、以下の説明においては上記の実施の形態に係る防護工1と異なる部分について主に説明し、同じ部分については同じ名称又は符号を用いてその説明を省略する。
【0066】
本実施の形態に係る防護工1Aは、基礎10Aと、捕捉体20Aと、を備える。基礎10Aは、2本の杭部材11により構成されている。捕捉体20Aは、地盤Gに設置されている。捕捉体20Aは、2本の柱部材21Aと、7本の梁部材25と、を有する。本実施の形態に係る防護工1Aは、2本の柱部材21Aを備えるが、柱部材21A及び梁部材25の数は、特定の数に限定されない。
【0067】
柱部材21Aは、挿入部21Aaと、立設部21Abと、を有する。第2の実施の形態において、挿入部21Aaは、捕捉体20Aの柱部材21Aのうちコンクリート部16内に埋設されている部分であり、立設部21Abは、地上に露出している部分である。
【0068】
第2の実施の形態において、柱部材21Aは、1つのH形鋼により形成されている。柱部材21Aの延在方向は、直線状であり、地盤Gに対して略垂直方向に延びている。挿入部21Aaは、スパイラル鉄筋17の内側に位置する。
【0069】
防護工1Aを構築する方法は、防護工1を構築する方法とほぼ同じである。
【0070】
<第3の実施の形態>
以下、防護工1Bついて説明する。図12は、第3の実施の形態に係る防護工1Bの斜視図である。図13は、防護工1Bの側面図である。なお、以下の説明においては上記の実施の形態に係る防護工1と異なる部分について主に説明し、同じ部分については同じ名称又は符号を用いてその説明を省略する。
【0071】
本実施の形態に係る防護工1Bは、予想される土石流の流れに対向するように構築された防護工1Bであって、土石流の流れ方向Fに交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に埋め込まれた管状の杭部材11,13を有する基礎10と、杭部材11,13から立設する柱部材21B,23B及び流れ方向Fにおいて上流側F1で柱部材21B間に架け渡された梁部材25を有し、基礎10に対して位置固定されていて土石流中の物体を捕捉する捕捉体20Bと、基礎10に対して捕捉体20Bを連結する連結部材30Bと、を備え、連結部材30Bは、一端が杭部材11,13内で固定されていて、他端が柱部材21,23に連結されている。以下、防護工1Bの構成について具体的に説明する。
【0072】
防護工1Bは、基礎10と、捕捉体20Bと、複数の棒状等の連結部材30Bと、を備える。基礎10は、4本の杭部材11,13により構成されている。捕捉体20Bは、地盤Gに設置されている。捕捉体20Bは、4本の柱部材21B,23Bと、7本の梁部材25と、を有する。本実施の形態に係る防護工1Bは、4本の柱部材21B,23Bを備えるが、柱部材21B,23B及び梁部材25の数は、特定の数に限定されない。
【0073】
上流柱部材21B及び下流柱部材23Bは、H形鋼により形成されている。柱部材21B,23Bは、各杭部材11,13に連結されている。4本の柱部材21B,23Bはそれぞれ、2本の上流柱部材(柱部材)21B及び2本の下流柱部材(第2柱部材)23Bである。上流柱部材21Bは、上流杭部材11に連結されて地盤Gから立設している。下流柱部材23Bは、下流杭部材13に連結されて地盤Gから立設している。
【0074】
連結部材30Bは、アンカーボルトにより形成されている(以下、「アンカーボルト30B」ともいう)。アンカーボルト30Bは地中側の一端部側で、上流杭部材11及び下流杭部材13のコンクリート部16内で固定されている。アンカーボルト30Bは地上側の他端部側で地上に露出している。なお、本実施の形態においてスライラル鉄筋は、必須の構成要件ではないが、スパイラル鉄筋を設けた場合、アンカーボルト30Bは、コンクリート部16内でスパイラル鉄筋の内側に位置している。
【0075】
上流柱部材21B及び下流柱部材23Bはそれぞれ、ベースプレート40Bを有する。図14は、上流柱部材21Bとアンカーボルト30Bとの関係を説明するための図であり、(a)は、上流柱部材における横断面図であり、(b)は、上流柱部材及び連結部材の側面図である。図15は、下流柱部材23Bとアンカーボルト30Bとの関係を説明するための図であり、(a)は、下流柱部材における横断面図であり、(b)は、下流柱部材及び連結部材の側面図である。ベースプレート40Bは、平面視円形の鋼板である。なお、ベースプレート40Bは、平面視矩形の鋼板であってもよい。
【0076】
ベースプレート40Bは、上流柱部材21B及び下流柱部材23Bよりも大きく形成されている。ベースプレート40Bは、上流柱部材21B及び下流柱部材23Bそれぞれの一端に溶接により取り付けられている。
【0077】
上流柱部材21B及び下流柱部材23Bから径方向に延出したベースプレート40Bの部分は、フランジ部40Baである。フランジ部40Baには周方向において複数の孔(図示せず)が形成されている。
【0078】
フランジ部40Baには周方向において複数の孔が形成されている。孔は、上流柱部材21B及び下流柱部材23Bの2つのフランジ22Baを繋ぐウェブ22Bbの延長線上に1つと、この延長線に対して直交する線上に2つ設けられ、さらに、これら3つの孔に対して等角度をおいて4つの孔が設けられている。なお、フランジ部40Baにおける孔の数は、特に限定されない。また、フランジ部40Baにおける孔の形状は、特に限定されず、円形、長円形、楕円形等であってよい。
【0079】
上流柱部材21Bのベースプレート40Bは、延長線上の孔が上流側F1に面する側に位置するように取り付けられている。下流杭部材13のベースプレート40Bは、延長線上の孔が下流側F2に面する側に位置するように取り付けられている。
【0080】
上流柱部材21B及び下流柱部材23Bにおいて、フランジ部40Baの孔に、上流杭部材11及び下流杭部材13の側からアンカーボルト30Bが挿通されていて、ベースプレート40Bから突出したアンカーボルト30Bの部分に上流柱部材21B及び下流柱部材23Bの側からナットNが締め付けられている。これにより、上流柱部材21B及び下流柱部材23Bは、連結部材30Bを介し、基礎10Bに対して着脱自在に連結されている。つまり、捕捉体20Bは、基礎10Bに対して着脱自在である。
【0081】
次に、防護工1Bを構築する方法について説明する。防護工1Bを構築する方法は、予想される土石流の流れ方向Fに交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に管状の杭部材11,13を埋め込んで基礎10を設ける第1ステップと、杭部材11,13内に基礎10と捕捉体20Bとを連結するアンカーボルト30Bを挿入する第2ステップと、基礎10の杭部材11,13内にコンクリートMを充填し、コンクリートMを硬化させる第3ステップと、アンカーボルト30Bの一端に、杭部材11,13の間隔に対応した間隔をあけた柱部材21B,23Bと、柱部材21B間に架け渡された梁部材25とを有する捕捉体20Bを連結する第4ステップと、を含む。以下、防護工1Bを構築する方法について具体的に説明する。
【0082】
まず、土砂災害発地Xを重機により整地する。整地した地盤Gに、上流杭部材11及び下流杭部材13を打ち込んで基礎10を形成する(第1ステップ)。
【0083】
幅方向Wにおける上流杭部材11同士の間隔及び下流杭部材13同士の間隔、並びに流れ方向Fにおける上流杭部材11と下流杭部材13との間隔は、予め設定されており、幅方向Wにおける捕捉体20Bの上流柱部材21B同士の間隔及び下流柱部材23B同士の間隔、並びに流れ方向Fにおける上流柱部材21Bと下流柱部材23Bとの間隔にそれぞれ相当する。
【0084】
次いで、上流杭部材11及び下流杭部材13の土石部15を一部除去する。
【0085】
図16は、杭部材11,13にアンカーボルト30Bを挿入する工程(第2ステップ)を示す図である。上流杭部材11及び下流杭部材13のそれぞれにアンカーボルト30Bをセットする。アンカーボルト30Bは、上流柱部材21B及び下流柱部材23Bにおけるベースプレート40Bのフランジ部40Baに形成された孔の位置を考慮して、例えば、鋼製のテンプレート(図示せず)により上流杭部材11及び下流杭部材13に対して仮に位置決めされる。
【0086】
アンカーボルト30Bの設置後、上流杭部材11及び下流杭部材13内に硬化可能な材料としてコンクリートMを充填し、コンクリートMを硬化させる(第3ステップ)。なお、スパイラル鉄筋を設置する場合、コンクリートMを充填する前に、上流杭部材11及び下流杭部材13内に設置する。
【0087】
コンクリートMが硬化するとコンクリート部16が形成され、アンカーボルト30Bは、上流杭部材11及び下流杭部材13内で位置固定される。
【0088】
なお、アンカーボルト30Bは、テンプレートではなくベースプレート40Bと同様の形状を有する他のベースプレート(図示せず)を介して上流杭部材11及び下流杭部材13に対して仮に位置決めされていてもよい。他のベースプレートは、上流杭部材11及び下流杭部材13の地面側の端部に載置される。他のベースプレートには少なくとも1つの孔が形成されている。この孔を通じてコンクリートMが上流杭部材11及び下流杭部材13内に充填される。
【0089】
図17は、アンカーボルト30Bに捕捉体20を連結する工程(第4ステップ)を示す図であり、(a)は、基礎10内に捕捉体20を接近させる状態を示す図であり、(b)は、コンクリートM内に挿入されたアンカーボルト30Bに捕捉体20を連結させた状態を示す図である。次いで、工場で予め製造され被災地に搬送されてきた捕捉体20Bをクレーン等により吊り上げて基礎10に接近させる。捕捉体20Bが基礎10の上方に来ると、捕捉体20Bを徐々に降下させる。捕捉体20Bを上流柱部材21B及び下流柱部材23Bのベースプレート40Bに、アンカーボルト30Bを挿通させる。
【0090】
上流柱部材21B及び下流柱部材23Bの各フランジ部40Baから突出したアンカーボルト30Bの部分に上流柱部材21B及び下流柱部材23Bの側からナットNを締め付ける。これにより捕捉体20Bは、基礎10に対してアンカーボルト30Bを介して連結され、防護工1Bが完成する。
【0091】
なお、防護工1Bは、他のステップを含む方法により構築することもできる。防護工1Bを構築する他の方法は、予想される土石流の流れ方向Fに交差するように所定の間隔をあけて、延在方向に沿って地中に管状の杭部材11,13を埋め込んで基礎10を設けるステップと、杭部材11,13内にアンカーボルト30Bを設置するステップと、基礎10の杭部材11,13内にコンクリートMを充填し、コンクリートMを硬化させるステップと、アンカーボルト30Bの一端に、柱部材21B,23Bを連結し、柱部材21B間に梁部材25を架け渡して捕捉体20Bを形成するステップと、を含んでいてもよい。以下、防護工1Bを構築する他の方法について説明する。
【0092】
なお、以下の説明においては上記の方法とは異なる部分について主に説明する。上記の方法では、捕捉体20Bは、予め工場で製作されていたが、防護工1Bを構築する現場で捕捉体20Bを形成してもよい。
【0093】
基礎10の形成後、上流杭部材11及び下流杭部材13にそれぞれアンカーボルト30Bを挿入する。この状態において、アンカーボルト30Bの位置は、例えば、鋼製のテンプレート(図示せず)により仮決めされる。
【0094】
次いで、上流杭部材11及び下流杭部材13にコンクリートMを充填する。コンクリートMが硬化してコンクリート部16が形成されると、アンカーボルト30Bは、基礎10に対して連結される。
【0095】
次いで、上流柱部材21B及び下流柱部材23Bにおけるベースプレート40Bのフランジ部40Baの孔にアンカーボルト30Bを挿通させナットNを締め付ける。これにより、上流柱部材21B及び下流柱部材23Bは、アンカーボルト30Bを介して基礎10に連結される。ここで、下流柱部材23Bを上流柱部材21Bに連結する。
【0096】
次いで、上流柱部材21間に梁部材25を架け渡す。梁部材25は、予め保持具50に溶接されている。上流側F1の上流柱部材21Bのフランジ22Baに保持具50を取り付けることにより梁部材25が架け渡される。これにより、捕捉体20Bが防護工1Bの構築現場で製造される。以上により防護工1Bが構築される。
【0097】
以上のように構築された防護工1Bによれば、少なくとも防護工1と同様の効果を奏することができる。さらに、上流柱部材21B及び下流柱部材23Bはそれぞれ、ベースプレート40Bを有しているので、アンカーボルト30Bをフランジ部40Baの孔に挿通させナットNを締め付けるだけで、基礎10B及び捕捉体20Bを互いにアンカーボルト30Bを介して迅速にかつ簡単に連結することができる。
【0098】
また、捕捉体20Bは、予め工場において製作することができるので、施工現場での防護工1Bの施工期間を短縮することができる。
【0099】
さらに、複数の防護工1Bが幅方向Wに並んで構築されている場合、例えば、一方の端に位置する防護工1Bの捕捉体20Bにおける外側の上流柱部材21B及び下流杭部材23Bを、梁部材25を含み基礎10Bから取り外すことで、重機等を土石や流木が堆積した場所に進入させることができる。これにより、重機等による土石や流木の除去作業が容易になる。
【0100】
さらに、土石流に対する恒久的な対策が講じられた場合には、上流柱部材21B及び下流柱部材23Bとアンカーボルト30Bとの連結を簡単に解除することができ、基礎10から捕捉体20Bを撤去することができる。撤去された捕捉体20Bは、その状態によっては再度、利用することもできる。
【0101】
<第4の実施の形態>
図18は、第4の実施の形態に係る防護工1Cの斜視図である。以下、防護工1Cついて説明する。なお、以下の説明においては上記の実施の形態に係る防護工1Bと異なる部分について主に説明し、同じ部分については同じ名称又は符号を用いてその説明を省略する。
【0102】
本実施の形態に係る防護工1Cは、基礎10と、捕捉体20Cと、複数の棒状等の連結部材30Cと、を備える。基礎10は、2本の杭部材11により構成されている。捕捉体20Cは、地盤Gに設置されている。捕捉体20Cは、2本の柱部材21Cと、7本の梁部材25と、を有する。本実施の形態に係る防護工1Cは、2本の柱部材21Cを備えるが、柱部材21C及び梁部材25の数は、特定の数に限定されない。
【0103】
捕捉体20Cは、地盤Gに設置されており、柱部材30Cと、梁部材25と、を有する。本実施の形態に係る防護工1Cは、2本の柱部材30Cを備える。柱部材30Cの数は、特定の数に限定されない。
【0104】
連結部材30Cは、アンカーボルトにより形成されている(以下、「アンカーボルト30C」ともいう)。アンカーボルト30Cは地中側の一端部側で、上流杭部材11のコンクリート部16内で固定されている。アンカーボルト30Cは地上側の他端部側で地上に露出している。なお、本実施の形態においてスライラル鉄筋は、必須の構成要件ではないが、スパイラル鉄筋を設けた場合、アンカーボルト30Cは、コンクリート部16内でスパイラル鉄筋の内側に位置している。
【0105】
柱部材21Cは、ベースプレート40Cを有する。図17は、連結部材30Cとベースプレート40Cとの関係を説明するための図である。ベースプレート40Cは、平面視円形の鋼板である。なお、ベースプレート40Cは、平面視矩形の鋼板であってもよい。ベースプレート40Cは、柱部材21Cよりも大きく形成されている。
【0106】
柱部材21Cから延出したベースプレート40Cの部分は、フランジ部40Caである。フランジ部40Caには周方向において複数の孔が形成されている。孔は、柱部材21Cの2つのフランジ22Caを繋ぐウェブ22Cbの延長線上に2つと、この延長線に対して直交する線上に2つ設けられ、さらに、これら4つの孔に対して等角度をおいて4つの孔が設けられている。なお、フランジ部40Caにおける孔の数は、特に限定されない。また、フランジ部40Caにおける孔の形状は、特に限定されず、円形、長円形、楕円形等であってよい。
【0107】
柱部材21Cは、ベースプレート40Cのフランジ部40Caにおいてアンカーボルト30Cと連結されている。柱部材21Cの延在方向は、杭部材11の延在方向と同じである。つまり、柱部材21Cは、連結部材30Cと直線をなすように連結されている。
【0108】
防護工1Cを構築する方法は、防護工1Bを構築する方法とほぼ同じである。
【0109】
<その他>
上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、上記実施の形態の各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 防護工
10 基礎
11 上流杭部材(杭部材)
13 下流杭部材(第2杭部材)
20 捕捉体
21 上流柱部材(柱部材)
21a 挿入部(一端)
23 下流柱部材(第2柱部材)
23a 挿入部(一端)
25 梁部材
30B,30C アンカーボルト(連結部材)
図1
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