(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/10 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
A47K13/10
(21)【出願番号】P 2020052401
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】小手川 誠
(72)【発明者】
【氏名】竹下 幸一
(72)【発明者】
【氏名】木全 淳
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 康智
(72)【発明者】
【氏名】内山 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】古谷 保行
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-201646(JP,A)
【文献】特開2001-263767(JP,A)
【文献】特開2002-017613(JP,A)
【文献】特開2018-130138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源から電力を供給しつつ、出力電圧が目標電圧になるようにフィードバック制御する電源装置と、
開閉体としての便蓋及び便座のうち、少なくともいずれかを開閉駆動させるモータと、
前記電源装置からの電力を前記モータに供給可能な駆動回路と、
前記電源装置から電力を受給し、前記駆動回路を制御することで前記モータを回転させる制御装置と、
を備え、
前記電源装置は、前記フィードバック制御により、前記出力電圧が目標電圧を超えると前記商用電源からの電力供給を停止し、
前記制御装置は、前記開閉体が手動操作され
ることによって前記出力電圧が前記目標電圧を超えた場合には、前記商用電源からの電力供給が停止してから所定時間が経過した後に、前記モータを回転
させ、
前記所定時間は、少なくとも前記商用電源からの電力供給が停止してから復帰するまでの時間以上である、
トイレ装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記開閉体の開方向又は閉方向に移動した速度を検出する速度検出部と、
前記速度検出部が検出した前記速度が閾値以上の場合には、前記商用電源からの電力供給が停止したと判定する判定部と、
を備える、
請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記判定部は、第1判定部であり、
前記制御装置は、
前記開閉体の位置を検出する位置検出部と、
前記開閉体が手動により開方向に動作した場合において、前記速度が前記閾値未満であるときに、前記位置検出部で検出された前記位置が所定位置に到達したか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部によって前記位置が所定位置に到達したと判定された場合には、前記駆動回路を制御することで前記開閉体を開方向に動作させる駆動制御部と、
を備える、
請求項
2に記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、便座及び便蓋のいずれかの開閉体をモータの回転によって開閉駆動させる便座装置が開示されている。前記便座装置は、電源装置、駆動回路及び制御装置を備えている。
【0003】
前記電源装置は、商用電源から電力供給を行い、所定の電圧(以下、出力電圧)を出力する。前記電源装置は、前記出力電圧が目標電圧になるようにフィードバック制御している。前記駆動回路は、前記電源装置からの電力をモータに供給する。前記制御装置は、前記電源装置からの電力により動作する。前記制御装置は、手動によって開閉体が閉から開へ操作されると、駆動回路を制御してモータを回転させて、開閉体を閉方向から開方向へ駆動させる。これによって、前記制御装置は、開閉体の閉状態から開方向への手動操作をアシストするアシスト制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開閉体が手動によって開閉されると前記モータにおいて逆起電圧が発生する。前記出力電圧は、この逆起電圧によって上昇する。前記電源装置は、前記出力電圧が目標電圧以上の所定値よりも上昇すると、前記フィードバック制御により商用電源からの電力供給を停止する。この状態において、前記制御装置がアシスト制御を行うと、前記電源装置は前記モータ駆動回路を介した前記モータへの電力供給を正常に出来なくなり、前記出力電圧が低下する。その結果、前記制御装置に対する電力供給が正常にできなくなり、前記制御装置の誤動作が発生する場合がある。
【0006】
本開示は、開閉体の手動操作をアシストする場合において、制御装置の誤動作を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、商用電源から電力を供給しつつ、出力電圧が目標電圧になるようにフィードバック制御する電源装置と、開閉体としての便蓋及び便座のうち、少なくともいずれかを開閉駆動させるモータと、前記電源装置からの電力を前記モータに供給可能な駆動回路と、前記電源装置から電力を受給し、前記駆動回路を制御することで前記モータを回転させる制御装置と、を備え、前記電源装置は、前記フィードバック制御により、前記出力電圧が目標電圧を超えると前記商用電源からの電力供給を停止し、前記制御装置は、前記開閉体が手動操作されることによって前記出力電圧が前記目標電圧を超えた場合には、前記商用電源からの電力供給が停止してから所定時間が経過した後に、前記モータを回転させ、前記所定時間は、少なくとも前記商用電源からの電力供給が停止してから復帰するまでの時間以上である、トイレ装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るトイレシステムの構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る制御装置の構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る電源装置の構成例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る制御部の構成例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係るアシスト制御のフロー図である。
【
図6】従来のアシスト制御のフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係るアシスト制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、トイレシステム1は、遠隔制御装置2及びトイレ装置3を備える。
遠隔制御装置2は、トイレ装置3に対して有線又は無線で接続されている。遠隔制御装置2は、トイレ装置3と情報を送受する。遠隔制御装置2は、トイレ装置3を制御する。遠隔制御装置2は、トイレ空間の所定位置に設置されている。この所定位置とは、例えば、トイレ空間の壁面である。遠隔制御装置2は、操作部100を備えている。操作部100は、使用者によって操作される。例えば、操作部100は、一つ以上の押しボタンを備えていればよい。遠隔制御装置2は、操作部100が操作された場合には、その操作に応じた情報を有線又は無線で送信する。
【0010】
トイレ装置3は、便器4及び便座装置5を備える。便器4は、トイレ空間内の床面に設置されている。便器4の上部には、便座装置5が設置されている。便座装置5は、トイレ空間内に設けられた便器4上に設置されている。便座装置5は、本体カバー6、便座7及び便蓋8を備える。ただし、便座装置5は、便蓋8を備えなくてもよい。
【0011】
本体カバー6は、便器4の後部かつ便器4の上部に載置されている。本体カバー6は、駆動装置9を収容する。便座7は、本体カバー6に支持されている。便座7は、本体カバー6に対して回転する。便蓋8は、本体カバー6に支持されている。便蓋8は、本体カバー6に対して回転する。
【0012】
駆動装置9は、本体カバー6に支持されている開閉体の回転動作を制御する。前記開閉体は、便座7及び便蓋8の少なくともいずれかである。前記開閉体は、便座7であってもよいし、便蓋8であってもよい。前記開閉体は、便座7及び便蓋8の両方であってもよい。
【0013】
駆動装置9は、電源装置10、複数のモータ11、複数の駆動回路12、及び制御装置13を備える。
【0014】
電源装置10は、商用電源(コンセント等)から電力を供給し、出力電圧Voutを出力する。電源装置10は、後述する電圧検出回路24により出力電圧Voutを検出し、出力電圧Voutが後述する目標電圧Vthになるように出力電圧Voutの電圧をフィードバック制御する。電源装置10は、出力電圧Voutが目標電圧Vthを超えると商用電源からの電力供給を停止する。
【0015】
例えば、電源装置10は、実用新案登録第3111439号に記載されている電源回路であってもよい。一例として、電源装置10は、
図3に示すようなスイッチング電源である。例えば、電源装置10は、整流回路20、トランス21、スイッチング素子22、交直変換回路23、電圧検出回路24及び電源IC25を備える。
【0016】
整流回路20は、外部から供給された交流電圧を全波整流する。整流回路20は、整流した電圧である入力電圧Vinをトランス21の一次側に供給する。トランス21は、一次側巻線21a及び二次側巻線21bを備える。
【0017】
一次側巻線21aの第1端部には、整流回路20が接続されている。一次側巻線21aの第2端部には、スイッチング素子22が接続されている。
【0018】
スイッチング素子22は、電源IC25によりオン状態又はオフ状態に制御される。トランス21は、スイッチング素子22のスイッチングに伴い、一次側巻線21aから二次側巻線21bに交流電圧Vxを誘起させる。
【0019】
二次側巻線21bは、一次側巻線21aと磁気結合している。二次側巻線21bには、交直変換回路23が接続されている。
【0020】
交直変換回路23は、二次側巻線21bに誘起された交流電圧Vxを直流電圧である出力電圧Voutに変換する。交直変換回路23は、出力電圧Voutを出力する。交直変換回路23は、ダイオード及びコンデンサを備える。交直変換回路23の前記ダイオードは、交流電圧Vxを整流する。交直変換回路23の前記コンデンサは、前記ダイオードで整流された電圧を平滑する。
【0021】
電圧検出回路24は、従来技術であるシャントレギュレータ及びフォトカプラ24aを有している。前述の目標電圧Vthは、従来技術の通り、電圧検出回路24が有するシャントレギュレータの出力側抵抗分圧比によって決められる。電圧検出回路24は、検出した出力電圧Voutと、目標電圧Vthとの電圧差を、フォトカプラ24aを介して電源IC25のVDD端子にフィードバックする。
【0022】
電源IC25は、電圧検出回路24によるフィードバックに基づいて、出力電圧Voutが目標電圧Vthになるようにスイッチング素子22のオン状態及びオフ状態を制御し、商用電源からの電力供給を行う。例えば、電源IC25は、VDD端子の電圧が目標電圧Vthに相当する電圧になるように、一定のスイッチング周波数(Hレベル及びLレベルの周波数)において、OUT端子のHレベルの割合を制御することで、スイッチング素子22のオンとなる割合を制御する(以下、「スイッチング動作」という。)。これによって、商用電源からの電力供給が制御され、出力電圧Voutは、目標電圧Vthに制御される。
【0023】
電源IC25は、出力電圧Voutが目標電圧Vthを超えた場合には、スイッチング素子22のスイッチング動作を停止し、商用電源からの電力供給を停止させる。例えば、電源IC25は、OUT端子にLレベル出力して、スイッチング素子22をオフにして、スイッチング素子22のスイッチング動作を停止させる。これによって、電源IC25は、商用電源からの電力供給を停止させる。
【0024】
モータ11は、便座7及び便蓋8のうち、少なくともいずれかの開閉体を開閉駆動させる。本実施形態の駆動装置9は、2つのモータ11である第1モータ11a及び第2モータ11bを備える。ただし、駆動装置9は、1つのモータ11のみを備えてもよい。モータ11は、交流モータであってもよいし、直流モータであってもよい。
【0025】
第1モータ11aは、便座7を回転駆動させる。例えば、第1モータ11aは、正転することで便座7を開方向に動作させる。第1モータ11aは、逆転することで便座7を閉方向に動作させる。
【0026】
第2モータ11bは、便蓋8を回転駆動させる。例えば、第2モータ11bは、正転することで便蓋8を開方向に動作させる。第2モータ11bは、逆転することで便蓋8を閉方向に動作させる。
【0027】
駆動回路12は、電源装置10に接続されている。駆動回路12は、出力電圧Voutを交流電圧に変換してモータ11に供給する。例えば、駆動回路12は、スイッチング素子121、スイッチング素子122、スイッチング素子123、スイッチング素子124及び複数のダイオードDを備える。駆動回路12は、モータ11を駆動する回路であればよく、例えば、Hブリッジ回路である。
【0028】
スイッチング素子121は、電源装置10とグランドとの間に接続されている。スイッチング素子121は、スイッチング素子122に対して直列に接続されている。例えば、スイッチング素子121は、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。本実施形態のスイッチング素子121は、P型のMOSFETである。スイッチング素子121は、N型のMOSFETであってもよい。
【0029】
スイッチング素子121のソース端子は、電源装置10に接続されている。スイッチング素子121のドレイン端子は、スイッチング素子122のドレイン端子及びモータ11の第1端子に接続されている。スイッチング素子121のゲート端子は、制御装置13に接続されている。
【0030】
スイッチング素子122は、電源装置10とグランドとの間に接続されている。例えば、スイッチング素子122は、MOSFET又はIGBTである。本実施形態では、スイッチング素子122は、P型のMOSFETである。スイッチング素子122は、N型のMOSFETであってもよい。スイッチング素子122のソース端子は、グランドに接続されている。スイッチング素子122のゲート端子は、制御装置13に接続されている。
【0031】
スイッチング素子123は、電源装置10とグランドとの間に接続されている。スイッチング素子123は、スイッチング素子124に対して直列に接続されている。例えば、スイッチング素子123は、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。本実施形態のスイッチング素子123は、P型のMOSFETである。スイッチング素子123は、N型のMOSFETであってもよい。
【0032】
スイッチング素子123のソース端子は、電源装置10に接続されている。スイッチング素子123のドレイン端子は、スイッチング素子124のドレイン端子及びモータ11の第2端子に接続されている。スイッチング素子123のゲート端子は、制御装置13に接続されている。
【0033】
スイッチング素子124は、電源装置10とグランドとの間に接続されている。例えば、スイッチング素子124は、MOSFET又はIGBTである。本実施形態では、スイッチング素子124は、P型のMOSFETである。スイッチング素子124は、N型のMOSFETであってもよい。スイッチング素子124のソース端子は、グランドに接続されている。スイッチング素子124のゲート端子は、制御装置13に接続されている。
【0034】
ダイオードDは、スイッチング素子121、スイッチング素子122、スイッチング素子123、スイッチング素子124のそれぞれに対して並列に接続されている。
【0035】
駆動回路12は、複数のモータ11のそれぞれに対応して設けられている。第1モータ11aに対応して設けられている駆動回路12は、第1駆動回路12aである。第2モータ11bに対応して設けられている駆動回路12は、第2駆動回路12bである。
【0036】
制御装置13は、出力電圧に基づいて動作する。制御装置13の電源は、出力電圧から生成される電圧である。制御装置13は、複数の駆動回路12の動作を制御することで複数のモータ11を回転させる。制御装置13は、モータ11を停止させている時に、後述する回転センサ15によって、開閉体の閉から開位置への移動を検出した場合、開閉体の移動を補助するアシスト制御を実行する。この場合、制御装置13は、アシスト制御において、モータ11を閉から開方向へ回転(正転)させる。以下において、制御装置13の構成例を説明する。制御装置13は、変換部14、複数の回転センサ15及び制御部16を備える。
【0037】
変換部14は、電源装置10に接続されている。変換部14は、例えば、レギュレータであり、電源装置10の出力電圧Voutを降圧する。変換部14は、降圧した電圧である電源電圧Vyを制御部16に出力する。この電源電圧Vyは、制御装置13に供給される電源である。
【0038】
複数の回転センサ15は、モータ11の回転を検出する。回転センサ15は、検出した回転に応じたパルス信号を制御装置13に出力する。例えば、回転センサ15は、ロータリエンコーダを備えてもよい。前記ロータリエンコーダは、モータ11の回転軸に設けられている。例えば、パルス信号は、A相のパルス信号及びB相のパルス信号を備える。回転センサ15は、第1モータ11a及び第2モータ11bのそれぞれに対応して設けられている。第1モータ11aに対応して設けられている回転センサ15は、第1回転センサ15aである。第2モータ11bに対応して設けられている回転センサ15は、第2回転センサ15bである。
【0039】
制御部16は、変換部14から供給される電源電圧Vyが制御部16の電源電圧Vdである場合には正常に動作する。制御部16は、電源電圧Vyが電源電圧Vdよりも低い電圧まで低下すると制御部16は動作できなくなる。
【0040】
制御部16は、速度検出部30、位置検出部31、第1判定部32、第2判定部33及び駆動制御部34を備える。速度検出部30は、開閉体をモータ11により動作させていない場合において、開閉体の移動速度Rを検出する。制御部16は、速度検出部30が開閉体の移動速度Rを検出した場合には、開閉体が手動により開閉動作したと判定してもよい。移動速度Rは、開閉体が閉方向又は開方向に移動した場合の速度である。速度検出部30は、パルス信号に基づいて、移動速度Rに加え、移動方向を検出する。移動方向とは、開方向及び閉方向のいずれかである。本実施形態では、速度検出部30は、便座7の移動速度R1及び移動方向を検出する。速度検出部30は、便蓋8の移動速度R2及び移動方向を検出する。
【0041】
例えば、制御部16は、図示しないタイマを有する。速度検出部30は、回転センサ15によって検出された開閉体の移動量を、タイマによって計測された開閉体の移動にかかった時間で除算することで開閉体の移動速度Rを算出する。移動速度Rは、所定時間当たりの移動量であってもよい。
【0042】
例えば、速度検出部30は、第1回転センサ15aから出力されるパルス信号に基づいて便座7の移動速度R1及び移動方向を検出する。移動速度R1は、第1モータ11aの回転速度と同義である。便座7の移動方向は、第1モータ11aの正転又は逆転のいずれかの回転方向である。例えば、速度検出部30は、第2回転センサ15bから出力されるパルス信号に基づいて便蓋8の移動速度R2及び移動方向を検出する。移動速度R2は、第2モータ11bの回転速度と同義である。便蓋8の移動方向は、第2モータ11bの正転又は逆転のいずれかの回転方向である。
【0043】
位置検出部31は、開閉体の位置Pを検出する。例えば、位置Pは、開閉体の閉状態を基準とした場合における開閉体の回転角度を示す。本実施形態では、位置検出部31は、便座7の位置P1及び便蓋8の位置P2を検出する。例えば、位置検出部31は、第1回転センサ15aから出力されるパルス信号のカウント数に基づいて便座7の位置P1を検出する。位置P1は、第1モータ11aの回転位置であってもよい。位置検出部31は、第2回転センサ15bから出力されるパルス信号のカウント数に基づいて便蓋8の位置P2を検出する。位置P2は、第2モータ11bの回転位置であってもよい。位置検出部31は、検出した位置P1及び位置P2を第2判定部33に出力する。
【0044】
第1判定部32は、開閉体をモータ11により動作させていない場合において、電源装置10が商用電源からの電力供給を停止したか否かを判定する第1判定処理を実行する。例えば、第1判定部32は、速度検出部30が検出した移動速度Rが第1閾値Rth1以上の場合には、商用電源からの電力供給が停止したと判定する。一般的に、モータ11の回転速度(開閉体の移動速度R)が速いほど、モータ11の逆起電圧が大きくなり、
図6に示すように、出力電圧Voutが目標電圧Vthよりも上昇しやすくなる。目標電圧Vthよりも上昇すると、スイッチング素子22のスイッチング動作が停止される。よって、トランス21の一次側(商用電源)から二次側への電力供給が停止される。
【0045】
ただし、第1判定部32は、これに限定されず、電源装置10が商用電源からの電力供給を停止したか否かを判定できれば、どのような方法であってもよい。例えば、開閉体をモータ11により動作させていない場合において、回転センサ15により、手動操作(例えば、開閉体を閉状態から開方向への移動)を検出することで、電源装置10が商用電源からの電力供給を停止した判定してもよい。これは、モータ11が動作しない場合、手動操作させると、モータ逆起電圧が発生し、出力電圧Voutが目標電圧Vthよりも上昇しやすくなるためである。第1判定部32は、商用電源からの電力供給が停止したと判定した場合には、その判定結果を示す第1信号を駆動制御部34に出力する。第1判定部32は、移動速度R1及び移動速度R2の少なくともいずれかに対して第1判定処理を実行する。
【0046】
第2判定部33は、開閉体が手動により開方向に動作した場合において、移動速度Rが第1閾値Rth未満である場合には、位置検出部31で検出された開閉体の位置Pが第2閾値Pthに到達したか否かを判定する第2判定処理を実行する。第2判定部33は、位置P1及び移動速度R2の少なくともいずれかに対して第2判定処理を実行する。第2判定部33は、開閉体の位置Pが所定位置Pthに到達したと判定した場合には、その判定結果を示す第2信号を駆動制御部34に出力する。例えば、第2閾値Pthは、開閉体の回転角度であって、開閉体の閉状態よりも開状態に近い角度である。
【0047】
駆動制御部34は、開閉体が手動操作された場合には、駆動回路12を制御することでその手動操作をアシストするアシスト制御を実行する。駆動制御部34は、第1判定部32から第1信号を取得した場合には、その第1信号を取得してから所定時間Txが経過した後に、手動操作がされた開閉体に対応するモータ11を回転させるアシスト制御を実行する。所定時間Txは、少なくとも商用電源からの電力供給が停止してからその出力が復帰するまでの時間以上である。ここで、商用電源からの電力供給が停止してから復帰するまでの時間は、電源IC25の部品特性及び電源IC25の周辺回路定数によって決まる。具体的には、
図3に示す電源IC25のVIN端子からVCC端子への充電電流、電源IC25のVCC端子に接続された電界コンデンサ容量、及びスイッチング素子22のスイッチング動作に必要なVCC端子電圧によって決まる。
【0048】
駆動制御部34は、第2信号を受信した場合には、アシスト制御を実行する。ただし、駆動制御部34は、第1信号を受信した場合には、第2信号を受信したか否かにかかわらず、所定時間Tx後にアシスト制御を実行する。例えば、駆動制御部34は、第1信号を受信していない場合であって、第2信号を受信した場合には開閉体を開方向に動作させるアシスト制御を実行する。
【0049】
以下において、開閉体が開方向に手動操作された場合のアシスト制御の動作の流れについて、
図5を用いて説明する。
図5に示す例では、開閉体は便蓋8である。開閉体は、便座7であってもよい。
【0050】
制御部16は、開閉体の手動操作が行われたか否かを判定する(ステップS101)。例えば、制御部16は、モータ11を動作させていない状態において、速度検出部30が開閉体の移動速度Rを検出した場合には、開閉体が手動により開閉動作したと判定する。第1判定部32は、開閉体が手動により開方向に動作した判定された場合には、速度検出部30が検出した移動速度Rが第1閾値Rth以上か否かを判定する(ステップS102)。
【0051】
駆動制御部34は、速度検出部30が検出した移動速度Rが第1閾値Rth以上であると判定された場合には、計時を開始する。速度検出部30が検出した移動速度Rが第1閾値Rth以上であると判定された場合とは、商用電源からの電力供給が停止された場合である。
【0052】
駆動制御部34は、計時した時間が所定時間Txに到達したか否かを判定する(ステップS104)。駆動制御部34は、計時した時間が所定時間Txに到達していない場合には、計時を計測する(ステップS105)。駆動制御部34は、計時した時間が所定時間Txに到達した場合には、駆動回路12を制御してモータ11を正転させる。これにより、駆動制御部34は、ユーザによる手動操作をアシストする。計時した時間が所定時間Txに到達した場合には、商用電源からの電力供給は、停止から復帰している。
【0053】
第2判定部33は、ステップS102において、移動速度Rが第1閾値Rth未満であると判定された場合には、位置検出部31で検出された開閉体の位置Pが第2閾値Pthに到達したか否かを判定する(ステップS107)。開閉体の位置Pが第2閾値Pthに到達していない場合には、制御部16は、ステップS102の処理に戻る。駆動制御部34は、ステップS107において、開閉体の位置Pが第2閾値Pthに到達したと判定された場合には、所定時間Txにかかわらず、駆動回路12を制御してモータ11を正転させる(ステップS108)。これにより、駆動制御部34は、ユーザによる手動操作をアシストする。
【0054】
以下において、本実施形態の作用効果について、
図6及び
図7を用いて説明する。
【0055】
開閉体が手動操作されていない場合では、出力電圧Voutは目標電圧Vthと同一の電圧値である。出力電圧Voutは時刻t1において開閉体が手動によって開閉されるとモータ11において逆起電圧が発生する。この逆起電圧は、駆動回路12を介して電源装置10に印加される。よって、出力電圧Voutは、この逆起電圧によって目標電圧Vthよりも上昇する場合がある。電源装置10は、出力電圧Voutが目標電圧Vthよりも上昇すると、スイッチング素子22のスイッチング動作を停止する。よって、トランス21の一次側(商用電源)から二次側(制御装置13)への電力供給が停止される。この電力供給が停止された状態の所定の時刻t2においてアシスト制御が実行されると、モータ11に対して供給される電力は、交直変換回路23のコンデンサに蓄えられている電力のみとなる。したがって、
図6に示すように、アシスト制御が実行されると、出力電圧Voutが所定電圧Vlを下回り、時刻t3において電源電圧Vyも低下する。その結果、制御部16は、制御部16内のメモリのデータをリセットしてしまい、誤操作する場合がある。なお、
図6及び
図7において、電源IC25のVCC端子電圧が0Vである場合には、商用電源からの電力共有が不可能であることを示す。
図6及び
図7において、電源IC25のVCC端子電圧が所定の電圧Vkである場合には、商用電源からの電力共有が不可能であることを示す。
【0056】
本実施形態の制御装置13は、スイッチング素子22のスイッチング動作が停止している期間においてアシスト制御を実行しない。
図7に示す例では、制御装置13は、時刻t1から時刻t4の期間においてアシスト制御を実行しない。制御装置13は、スイッチング素子22がスイッチング動作を再開した場合においてアシスト制御を実行する。具体的には、制御装置13は、スイッチング素子22のスイッチング動作が停止してから所定時間Txが経過した時刻t4以降においてアシスト制御を実行する。これによって、アシスト制御が実行された場合には、トランス21の一次側からの電力がモータ11に供給される。したがって、出力電圧Voutが所定電圧Vlを下回ることがなく、電源電圧Vyは低下しない。その結果、制御部16の誤動作は抑制される。
【0057】
上記制御装置13は、商用電源からの電力供給が停止していない場合において、開閉体の位置Pが手動操作によって第2閾値Pthに到達した場合には、アシスト制御を実行してもよい。これによって、制御装置13は、ギアの破損及び制御装置13の誤動作を防止することができる。
【0058】
ギアの破損とは、開閉体を電動で開閉するためのギアが破損すことである。開閉体の回転角度が小さい場合においてアシスト制御が開始されると、アシスト制御が実行されている途中において、開閉体を手動で止めやすい状況となる。アシスト制御が実行されている途中において、開閉体が手動で停止されると開閉体を電動で開閉するためのギアが破損してしまう。本実施形態の制御装置13は、第2閾値Pthを閉状態ではなく開状態に近い回転角度に設定することで、ギアの破損を防止することができる。
【0059】
ユーザが開閉体を手動で閉じた時の勢いが強い場合には、開閉体が開方向に跳ね返ってしまう場合がある。この場合には、開閉体は、閉状態から所定の角度だけ開いた状態となる。モータ11の動力を開閉体に伝達する開閉ユニットは、経年劣化や繰り返し動作によって開閉体を完全に閉状態にすることができない場合がある。この場合には、開閉体は、閉状態から所定の角度だけ開いた状態となる。開閉体を閉状態にする手動操作に起因して開閉体が閉状態から所定の角度だけ開いてしまった場合には、制御装置13は、誤ってアシスト制御を開始してしまう場合がある。本実施形態の制御装置13は、第2閾値Pthを閉状態ではなく開状態に近い回転角度に設定することで、誤ってアシスト制御を開始することを防止する。
【0060】
上記実施形態の制御装置13は、出力電圧Voutを検出する電圧検出部を備えてもよい。第1判定部32は、前記電圧検出部で検出した出力電圧Voutが目標電圧Vthを超えたか否かを判定してもよい。第1判定部32は、前記電圧検出部で検出した出力電圧Voutが目標電圧Vthを超えた場合には、商用電源からの電力供給が停止したと判定してもよい。
【0061】
上記実施形態の制御装置13は、電源IC25と有線又は無線で通信してもよい。電源IC25は、商用電源からの電力供給を停止した場合には、その旨を制御装置13に通知してもよい。第1判定部32は、商用電源からの電力供給が停止された通知を電源IC25から受け取った場合には、商用電源からの電力供給が停止したと判定してもよい。
【0062】
上記実施形態の制御部16は、開閉体が手動により開閉動作されたことをパルス信号に基づいて検出してもよいし、その他の方法で検出してもよい。
【0063】
第1判定部32は、回転センサ15によって便蓋8又は便座7の全閉状態から全開状態への移動を検出した場合には、商用電源からの電力供給が停止したことを判定してもよい。
例えば、手動操作により、開閉体を全閉状態から全開方向へ移動させると、
図7に示すように、回転センサ15から出力される電圧(回転センサ電圧)は、全閉から全開を示す出力電圧へ変化する。第1判定部32は、回転センサ電圧によって便蓋8又は便座7の全閉状態から全開状態への移動を検出した場合には、商用電源からの電力供給が停止したことを判定してもよい。駆動制御部34は、第1判定部32による判定結果から所定時間Tx後にアシスト制御を実行する。これにより、手動操作によって全閉状態から全開状態へ移動した開閉体が、全開状態から跳ね返って全閉状態まで戻ってくることを防止できる。
【0064】
例えば、制御部16は、プロセッサを備える。例えば、プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)及びMPU(Micro Processing Unit)である。例えば、制御部16は、マイクロコントローラであってもよい。制御部16は、不揮発性の半導体及び揮発性の半導体の少なくともいずれか一方を備えもてよい。制御部16は、プロセッサがプログラムを実行することによって実現されてもよい。制御部16の構成要素のうち少なくとも一部は、ハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0065】
例えば、上記ハードウェアは、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、及びGPU(Graphics Processing Unit)の少なくともいずれかである。上記プログラムは、予め記憶装置に格納されていてもよい。前記記憶装置は、非一過性の記憶媒体である。例えば、前記記憶装置は、HDD(Hard Disk Drive)及びフラッシュメモリの少なくともいずれかである。前記プログラムは、着脱可能な記憶媒体に格納されてもよい。この場合には、前記プログラムは、記憶媒体がドライブ装置に装着されることによって前記記憶装置にインストールされてもよい。前記記憶媒体は、非一過性の記憶媒体である。例えば、前記記録媒体は、DVD及びCD-ROMのいずれかである。
【0066】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「備える」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【符号の説明】
【0067】
1…トイレシステム、2…遠隔制御装置、3…トイレ装置、7…便座、8…便蓋、10…電源装置、11…モータ、12…駆動回路、13…制御装置、16…制御部、30…速度検出部、31…位置検出部、32…第1判定部、33…第2判定部、34…駆動制御部