(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】画像記録装置および画像記録方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240426BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/21
B41J2/01 129
B41J2/01 209
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2020052412
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】谷 和真
(72)【発明者】
【氏名】清水 圭吾
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-028432(JP,A)
【文献】特開2016-185673(JP,A)
【文献】特開2013-230649(JP,A)
【文献】特開2016-013681(JP,A)
【文献】特開2019-142129(JP,A)
【文献】特開2003-211770(JP,A)
【文献】特開2021-084318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01ー2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を有する媒体を前記長手方向に沿った搬送方向に向かって搬送しながら前記媒体上に画像を繰り返し記録する画像記録装置であって、
前記画像の第1部分を前記媒体上に記録する第1記録ヘッドと、
前記搬送方向において前記第1記録ヘッドよりも下流側に配置され、前記媒体上に記録された前記画像の前記第1部分を
仮硬化するためのエネルギー線を前記媒体へ照射する
仮硬化照射
器と、
前記搬送方向において前記
仮硬化照射
器よりも下流側に配置され、前記画像の第2部分を前記媒体上に記録する第2記録ヘッドと、
前記搬送方向において前記
仮硬化照射
器よりも下流側に配置され、前記媒体上に設けられた少なくとも1つのマークを検出する検出部と、
前記検出部が前記少なくとも1つのマークを検出するタイミングに基づいて、前記第1記録ヘッドが前記画像の前記第1部分を記録するタイミングと、前記第2記録ヘッドが前記画像の前記第2部分を記録するタイミングとの差異を設定するタイミング設定部と、
前記画像の前記第1部分および前記第2部分を本硬化するためのエネルギー線を前記媒体へ照射する本硬化照射器と、
を備え
、
前記媒体は樹脂フィルムであり、
前記検出部は前記第2記録ヘッドよりも下流側、かつ、前記本硬化照射器よりも上流側に位置している画像記録装置。
【請求項2】
長手方向を有する媒体を前記長手方向に沿った搬送方向に向かって搬送しながら前記媒体上に画像を繰り返し記録する画像記録装置であって、
前記画像の第1部分を前記媒体上に記録する第1記録ヘッドと、
前記搬送方向において前記第1記録ヘッドよりも下流側に配置され、前記媒体上に記録された前記画像の前記第1部分を硬化するためのエネルギー線を前記媒体へ照射する照射部と、
前記搬送方向において前記照射部よりも下流側に配置され、前記画像の第2部分を前記媒体上に記録する第2記録ヘッドと、
前記搬送方向において前記照射部よりも下流側に配置され、前記媒体上に設けられた少なくとも1つのマークを検出する検出部と、
前記検出部が前記少なくとも1つのマークを検出するタイミングに基づいて、前記第1記録ヘッドが前記画像の前記第1部分を記録するタイミングと、前記第2記録ヘッドが前記画像の前記第2部分を記録するタイミングとの差異を設定するタイミング設定部と、
を備え
、
前記検出部は前記第1記録ヘッドよりも下流側であって、前記第2記録ヘッドよりも上流側に配置されている画像記録装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の画像記録装置であって、
前記少なくとも1つのマークは、前記第1記録ヘッドが前記媒体上に記録する前記画像の前記第1部分に対して前記媒体上において所定の相対的位置に配置される第1マークを含む、画像記録装置。
【請求項4】
長手方向を有する媒体を前記長手方向に沿った搬送方向に向かって搬送しながら前記媒体上に画像を繰り返し記録する画像記録装置であって、
前記画像の第1部分を前記媒体上に記録する第1記録ヘッドと、
前記搬送方向において前記第1記録ヘッドよりも下流側に配置され、前記媒体上に記録された前記画像の前記第1部分を硬化するためのエネルギー線を前記媒体へ照射する照射部と、
前記搬送方向において前記照射部よりも下流側に配置され、前記画像の第2部分を前記媒体上に記録する第2記録ヘッドと、
前記搬送方向において前記照射部よりも下流側に配置され、前記媒体上に設けられた少なくとも1つのマークを検出する検出部と、
前記検出部が前記少なくとも1つのマークを検出するタイミングに基づいて、前記第1記録ヘッドが前記画像の前記第1部分を記録するタイミングと、前記第2記録ヘッドが前記画像の前記第2部分を記録するタイミングとの差異を設定するタイミング設定部と、
を備え
、
前記少なくとも1つのマークは、前記第1記録ヘッドが前記媒体上に記録する前記画像の前記第1部分に対して前記媒体上において所定の相対的位置に配置される第1マークを含み、
前記タイミング設定部は、前記少なくとも1つのマークのうち前記第1マークのみを参照する画像記録装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の画像記録装置であって、
前記検出部は前記第2記録ヘッドよりも下流側に配置されている、画像記録装置。
【請求項6】
請求項
3から5のいずれか1項に記載の画像記録装置であって、
前記第1マークは前記第1記録ヘッドによって記録される、画像記録装置。
【請求項7】
請求項
3から6のいずれか1項に記載の画像記録装置であって、
前記少なくとも1つのマークは、前記第2記録ヘッドが前記媒体上に記録する前記画像の前記第2部分に対して前記媒体上において所定の相対的位置に配置される第2マークを含む、画像記録装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の画像記録装置であって、
前記第2マークは前記第2記録ヘッドによって記録される、画像記録装置。
【請求項9】
前記媒体を案内する搬送機構をさらに備え、前記搬送機構は、前記媒体を巻き出す巻出部と、前記媒体を巻き取る巻取部と、一対のローラと、案内部と、を含み、
前記一対のローラは、回転可能な部材であり、前記巻出部と巻取部との間で前記媒体を案内し、
前記案内部は、前記一対のローラの間に配置されるとともに、前記媒体を案内する案内面を有し、
前記第1記録ヘッド、前記第2記録ヘッド、および前記検出部は、前記案内面の直上に位置する、請求項1から3のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項10】
長手方向を有する媒体を前記長手方向に沿った搬送方向に向かって搬送しながら前記媒体上に画像を繰り返し記録する画像記録方法であって、
a)第1記録ヘッドによって、前記画像の第1部分を前記媒体上に記録することと、
b)前記搬送方向において前記第1記録ヘッドよりも下流側に配置された
仮硬化照射
器によって、前記媒体上に記録された前記画像の前記第1部分を
仮硬化するためのエネルギー線を前記媒体へ照射することと、
c)前記搬送方向において前記
仮硬化照射
器よりも下流側に配置された第2記録ヘッドによって、前記画像の第2部分を前記媒体上に記録することと、
d)前記搬送方向において前記
仮硬化照射
器よりも下流側に配置された検出部によって、前記媒体上に設けられた少なくとも1つのマークを検出することと、
e)前記検出部が前記少なくとも1つのマークを検出するタイミングに基づいて、前記第1記録ヘッドが前記画像の前記第1部分を記録するタイミングと、前記第2記録ヘッドが前記画像の前記第2部分を記録するタイミングとの差異を設定することと、
f)本硬化照射器によって、前記媒体上に記録された前記画像の前記第1部分および前記第2部分を本硬化するためのエネルギー線を前記媒体へ照射することと、
を備え
、
前記媒体は樹脂フィルムであり、
前記検出部は前記第2記録ヘッドよりも下流側、かつ、前記本硬化照射器よりも上流側に位置している画像記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置および画像記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2014-028432号公報(特許文献1)は、インクジェットプリンタにおける画像形成処理を開示している。このインクジェットプリンタによれば、ヘッドユニットに対して基材が走査方向に移動させられる。この画像形成処理の一例においては、ホワイトのインクを吐出するヘッドアッセンブリにより基材上にW(ホワイト)の画像が形成される。その後、走査方向において当該ヘッドアッセンブリに隣接する出射部アッセンブリからの紫外線によりWのインクが仮硬化される。続いて、K(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のインクを吐出する4個のヘッドアッセンブリにより基材上にK、C、M、Yのカラー画像が形成される。その後、紫外線を出射する硬化部によってインクが本硬化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特開2014-028432号公報の技術の一例によれば、Wのインクの仮硬化のための紫外線(エネルギー線)が基体(媒体)へ照射された後に、K、C、M、Yの画像が形成される。この照射に起因して基体が次第に収縮することがある。よって当該照射後に、W、K、C、M、Yの画像を精確に重ね合わせるためには(言い換えれば、見当合わせ(register)のためには)、仮硬化に起因しての媒体の収縮を考慮した印刷が必要である。より一般的にいえば、画像の一部を記録するために印刷されたインクの硬化のためにエネルギー線が照射された後、当該照射に起因して媒体が収縮している際に画像の他部を記録するための印刷がなされる場合において、画像を精確に重ね合わせるためには、当該収縮の影響が考慮される必要がある。上記公報の技術においては、このような考慮がなされていない。
【0005】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、画像の一部および他部を互いに精確に重ね合わせることができる画像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、長手方向を有する媒体を前記長手方向に沿った搬送方向に向かって搬送しながら前記媒体上に画像を繰り返し記録する画像記録装置であって、前記画像の第1部分を前記媒体上に記録する第1記録ヘッドと、前記搬送方向において前記第1記録ヘッドよりも下流側に配置され、前記媒体上に記録された前記画像の前記第1部分を硬化するためのエネルギー線を前記媒体へ照射する照射部と、前記搬送方向において前記照射部よりも下流側に配置され、前記画像の第2部分を前記媒体上に記録する第2記録ヘッドと、前記搬送方向において前記照射部よりも下流側に配置され、前記媒体上に設けられた少なくとも1つのマークを検出する検出部と、前記検出部が前記少なくとも1つのマークを検出するタイミングに基づいて、前記第1記録ヘッドが前記画像の前記第1部分を記録するタイミングと、前記第2記録ヘッドが前記画像の前記第2部分を記録するタイミングとの差異を設定するタイミング設定部と、を備える。
【0007】
第2の態様は、第1の態様の画像記録装置であって、前記検出部は前記第2記録ヘッドよりも下流側に配置されている。
【0008】
第3の態様は、第1の態様の画像記録装置であって、前記検出部は前記第1記録ヘッドよりも下流側であって、第2記録ヘッドよりも上流側に配置されている。
【0009】
第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様の画像記録装置であって、前記少なくとも1つのマークは、前記第1記録ヘッドが前記媒体上に記録する前記画像の前記第1部分に対して前記媒体上において所定の相対的位置に配置される第1マークを含む。
【0010】
第5の態様は、第4の態様の画像記録装置であって、前記第1マークは前記第1記録ヘッドによって記録される。
【0011】
第6の態様は、第4または第5の態様の画像記録装置であって、前記少なくとも1つのマークは、前記第2記録ヘッドが前記媒体上に記録する前記画像の前記第2部分に対して前記媒体上において所定の相対的位置に配置される第2マークを含む。
【0012】
第7の態様は、第6の態様の画像記録装置であって、前記第2マークは前記第2記録ヘッドによって記録される。
【0013】
第8の態様は、長手方向を有する媒体を前記長手方向に沿った搬送方向に向かって搬送しながら前記媒体上に画像を繰り返し記録する画像記録方法であって、a)第1記録ヘッドによって、前記画像の第1部分を前記媒体上に記録することと、b)前記搬送方向において前記第1記録ヘッドよりも下流側に配置された照射部によって、前記媒体上に記録された前記画像の前記第1部分を硬化するためのエネルギー線を前記媒体へ照射することと、c)前記搬送方向において前記照射部よりも下流側に配置された第2記録ヘッドによって、前記画像の第2部分を前記媒体上に記録することと、d)前記搬送方向において前記照射部よりも下流側に配置された検出部によって、前記媒体上に設けられた少なくとも1つのマークを検出することと、e)前記検出部が前記少なくとも1つのマークを検出するタイミングに基づいて、前記第1記録ヘッドが前記画像の前記第1部分を記録するタイミングと、前記第2記録ヘッドが前記画像の前記第2部分を記録するタイミングとの差異を設定することと、を備える。
【0014】
第9の態様は、第8の態様の画像記録方法であって、前記媒体は樹脂フィルムである。
【発明の効果】
【0015】
上記各態様によれば、画像の第1部分を記録するタイミングと、画像の前記第2部分を記録するタイミングとの差異が、検出部がマークを検出するタイミングに基づいて設定される。これにより、画像の第1部分を硬化するためのエネルギー線が照射されることに起因しての媒体の収縮の程度に変動があっても、当該変動を相殺するように、画像の第1部分を記録するタイミングと、画像の前記第2部分を記録するタイミングとの差異を調整することができる。よって画像の第1および第2部分を互いに精確に重ね合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態1における画像記録装置の構成を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1の画像記録装置によって画像およびマークが記録された媒体の構成を概略的に示す平面図である。
【
図3】
図2の構成のうち、媒体上の、画像のホワイト部分と、ホワイトマークとのみを示す平面図である。
【
図4】
図2の構成のうち、媒体上の、画像のシアン部分と、シアンマークとのみを示す平面図である。
【
図5】
図2の構成のうち、媒体上の、画像のマゼンダ部分と、マゼンダマークとのみを示す平面図である。
【
図6】
図2の構成のうち、媒体上の、画像のイエロー部分と、イエローマークとのみを示す平面図である。
【
図7】
図2の構成のうち、媒体上の、画像のブラック部分と、ブラックマークとのみを示す平面図である。
【
図8】媒体の特定箇所の位置と、時間およびパルスの各々との関係について、媒体の収縮がないと仮定した場合の例を破線で、媒体の収縮がある場合の例を実線で示すグラフ図である。
【
図9】実施の形態1における、媒体上の、画像のホワイト部分とブラック部分との間(ホワイトマークとブラックマークとの間)での重ね合わせずれを示す平面図である。
【
図10】画像記録装置の変形例の構成を概略的に示す側面図である。
【
図11】実施の形態2における、画像のホワイト部分およびホワイトマークが検出部に達するタイミングの、媒体の収縮に起因しての遅延を示す平面図である。
【
図12】
図1の画像記録装置の変形例によって画像およびマークが記録された媒体の構成を概略的に示す平面図である。
【
図13】
図1の画像記録装置が有する制御部の構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図面に示されているX軸、Y軸およびZ軸は互いに直交する。
【0018】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態1におけるプリンタ101(画像記録装置)の構成を概略的に示す側面図である。プリンタ101は、長手方向を有する樹脂フィルム9(媒体)を長手方向に沿った搬送方向FRに向かって搬送しながら、樹脂フィルム9上で印刷を行う。樹脂フィルム9は、連続シート状の形状を有しており、例えばシュリンクフィルムであってよい。シュリンクフィルムは、熱収縮性、すなわち熱処理によって収縮する性質、を有する。プリンタ101は、搬送機構MTと、制御部90と、印刷機構MPとを有する。
【0019】
搬送機構MTは、巻出部11(供給部)と、巻取部12(回収部)と、ローラ13と、案内部18と、エンコーダ60とを有する。巻出部11は、樹脂フィルム9を巻き出すことによって樹脂フィルム9を供給する。巻取部12は、樹脂フィルム9を巻き取ることによって樹脂フィルム9を回収する。ローラ13は、回転可能な部材であり、巻出部11と巻取部12との間で樹脂フィルム9を案内する。案内部18は、巻出部11と巻取部12との間で樹脂フィルム9を案内する案内面(図中、上面)を有し、樹脂フィルム9の当該案内面上の部分に対して印刷が行われる。案内部18の案内面上において樹脂フィルム9は搬送方向FRに沿って搬送される。案内部18の案内面は曲面および平面のいずれであってもよい。
【0020】
エンコーダ60は、巻出部11と案内部18との間に配置されており、エンコーダ60が配置された箇所における樹脂フィルム9の移動速度を検出してその情報を制御部90へ送る。例えば、エンコーダ60は、樹脂フィルム9の移動速度に比例して回転するロータリローラであり、ロータリローラの回転角度に応じたパルス数でパルス信号を制御部90へ送る。よって制御部90はパルス数の情報に基づいて、エンコーダ60が配置された箇所における樹脂フィルム9の移動量を把握することができる。本実施の形態においては、エンコーダ60が巻出部11と印刷機構MPとの間に配置されているので、当該移動量は、印刷機構MPへ供給された樹脂フィルム9の長さに対応する。本実施の形態においては、巻出部11および巻取部12の動作を調整することによってパルス信号の周波数を一定とする制御が行われ、よってパルス数の増大と時間の経過とが対応している。
【0021】
印刷機構MPは、ホワイト記録ヘッド31W(本実施の形態における第1記録ヘッド)と、シアン記録ヘッド32Cと、マゼンダ記録ヘッド32Mと、イエロー記録ヘッド32Yと、ブラック記録ヘッド32K(本実施の形態における第2記録ヘッド)と、仮硬化照射器51(照射部)と、本硬化照射器52と、マークセンサ70(検出部70)とを有している。ホワイト記録ヘッド31W、シアン記録ヘッド32C、マゼンダ記録ヘッド32M、イエロー記録ヘッド32Yおよびブラック記録ヘッド32Kのそれぞれは、樹脂フィルム9上で、ホワイトインク、シアンインク、マゼンダインク、イエローインクおよびブラックインクによる記録を行う。各記録ヘッドは、案内部18の案内面上の樹脂フィルム9へ向けてインクを吐出するインクジェットヘッドであってよい。上記の各記録ヘッドが樹脂フィルム9上へ供給するインクは、本実施の形態においては紫外線硬化性を有する。
【0022】
図2は、プリンタ101(
図1)によって画像21および見当マーク(register mark)22が記録された媒体の構成を概略的に示す平面図である。
図3~
図7は、後述する説明の便宜上、
図2の構成を部分的に抜き出した図である。なお、
図2~
図7には、図を見やすくするためのハッチングが付されている。
【0023】
図2に示されているように、プリンタ101(
図1)は、樹脂フィルム9の長手方向に沿って樹脂フィルム9上に画像21を繰り返し記録する印刷を行う。この印刷において、画像21に加えて、少なくとも1つの見当マーク22(本実施の形態においては、詳しくは後述する複数の見当マーク22)も記録される。複数の見当マーク22W、22C、22M、22Y、22Kは搬送方向FRについて同一位置に位置し、Y軸方向(すなわち樹脂フィルム9の横幅方向)について異なる位置に位置している。
【0024】
図3は、
図2の構成のうち、樹脂フィルム9上にホワイト記録ヘッド31Wによって記録される、画像21のホワイト部分21W(本実施の形態における第1部分)と、見当マーク22のホワイトマーク22Wとのみを示す平面図である。ホワイトマーク22Wは、画像21のホワイト部分21Wに対して樹脂フィルム9上において所定の相対的位置に配置される。
図4は、
図2の構成のうち、樹脂フィルム9上にシアン記録ヘッド32Cによって記録される、画像21のシアン部分21Cと、見当マーク22のシアンマーク22Cとのみを示す平面図である。シアンマーク22Cは、画像21のシアン部分21Cに対して樹脂フィルム9上において所定の相対的位置に配置される。
図5は、
図2の構成のうち、樹脂フィルム9上にマゼンダ記録ヘッド32Mによって記録される、画像21のマゼンダ部分21Mと、見当マーク22のマゼンダマーク22Mとのみを示す平面図である。マゼンダマーク22Mは、画像21のマゼンダ部分21Mに対して樹脂フィルム9上において所定の相対的位置に配置される。
図6は、
図2の構成のうち、樹脂フィルム9上にイエロー記録ヘッド32Yによって記録される、画像21のイエロー部分21Yと、見当マーク22のイエローマーク22Yとのみを示す平面図である。イエローマーク22Yは、画像21のイエロー部分21Yに対して樹脂フィルム9上において所定の相対的位置に配置される。
図7は、
図2の構成のうち、樹脂フィルム9上にブラック記録ヘッド32Kによって記録される、画像21のブラック部分21K(本実施の形態における第2部分)と、見当マーク22のブラックマーク22Kとのみを示す平面図である。ブラックマーク22Kは、画像21のブラック部分21Kに対して樹脂フィルム9上において所定の相対的位置に配置される。
【0025】
仮硬化照射器51は、搬送方向FRにおいてホワイト記録ヘッド31Wよりも下流側(
図1における右側)に配置されている。仮硬化照射器51は、樹脂フィルム9上に記録された画像21のホワイト部分21Wを硬化するための紫外線(エネルギー線)を樹脂フィルム9へ照射する。この硬化は仮硬化(precure)であってよい。仮硬化照射器51は、搬送方向FRにおいてブラック記録ヘッド32Kよりも上流側(
図1における左側)に配置されている。言い換えれば、ブラック記録ヘッド32Kは、搬送方向FRにおいて仮硬化照射器51よりも下流側に配置されている。
【0026】
本硬化照射器52は、搬送方向FRにおいてブラック記録ヘッド32Kよりも下流側に配置されている。本硬化照射器52は、樹脂フィルム9上に記録されたインクを本硬化するための紫外線(エネルギー線)を樹脂フィルム9へ照射する。
【0027】
マークセンサ70は、搬送方向FRにおいて仮硬化照射器51よりも下流側に配置されており、かつブラック記録ヘッド32K(本実施の形態における第2記録ヘッド)よりも下流側に配置されている。マークセンサ70は、例えば、カメラまたは赤外線センサである。マークセンサ70は、樹脂フィルム9上に設けられた少なくとも1つの見当マーク22を検出する。本実施の形態においてはマークセンサ70はホワイトマーク22Wおよびブラックマーク22Kを検出する。マークセンサ70はY軸方向に離隔したホワイトマーク22Wとブラックマーク22Kとを個別に検出する。
【0028】
制御部90は、タイミング設定部90Tと、画像発生部90Gとを有する。画像発生部90Gは、ホワイト記録ヘッド31Wと、シアン記録ヘッド32Cと、マゼンダ記録ヘッド32Mと、イエロー記録ヘッド32Yと、ブラック記録ヘッド32Kとのそれぞれへ信号を送ることによって、ホワイト記録ヘッド31Wと、シアン記録ヘッド32Cと、マゼンダ記録ヘッド32Mと、イエロー記録ヘッド32Yと、ブラック記録ヘッド32Kとを駆動する。なおタイミング設定部90Tの詳細については後述する。
【0029】
図8は、樹脂フィルム9の特定箇所の位置と、時間およびパルス数の各々との関係について、樹脂フィルム9の収縮がないと仮定した場合の例を破線で、樹脂フィルム9の収縮がある場合の例を実線で示すグラフ図である。グラフの縦軸において、ホワイト記録ヘッド31W、仮硬化照射器51、シアン記録ヘッド32C、マゼンダ記録ヘッド32M、イエロー記録ヘッド32Y、ブラック記録ヘッド32Kおよびマークセンサ70のそれぞれが配置された位置が、L
W、L
R、L
C、L
M、L
Y、L
KおよびL
Dで示されている。
【0030】
グラフにおける時間を表す横軸において、特定箇所の位置がLWおよびLRのそれぞれにあるときの時間がtWおよびtRで示されている。またグラフにおけるパルス数を表す横軸において、パルス数は、時間tWを基準として(言い換えれば、時間tWを原点として)表されている。時間tRにおいて位置LRに達した特定箇所には、仮硬化照射器51によって紫外線が照射される。この照射の影響がなかったと仮定すると、特定箇所は、時間tR以降、図中破線で示されるように変位し、時間tKaおよびtDaのそれぞれ(言い換えれば、パルス数eKaおよびeDaのそれぞれ)において、ブラック記録ヘッド32Kの位置LKおよびマークセンサ70の位置LDに達する。しかしながら実際の記録処理においては、図中、実線で示されるように、仮硬化照射器51によって紫外線が照射される時間tR以降、樹脂フィルム9の収縮が特定箇所の変位に影響する。この影響の程度は、画像記録装置の動作状態(典型的には動作時間など)に依存して変動する。
【0031】
図9は、樹脂フィルム9上の、画像21のホワイト部分21Wとブラック部分21Kとの間(ホワイトマーク22Wとブラックマーク22Kとの間)での重ね合わせずれを示す平面図である。上述した収縮の影響の結果、時間t
Ka(パルス数e
Ka)において、特定箇所(
図9においては、ホワイトマーク22Wの右端)は、ブラック記録ヘッド32Kの位置L
Kまで距離ΔL
Kを残している。パルス数e
Kaのタイミングが、画像21のブラック部分21Kおよびブラックマーク22Kを記録するタイミングとされると、ブラック記録ヘッド32Kの印刷時に、
図9に示すようにΔL
Kの見当ずれが発生する。そして特定位置は、時間t
Ka(パルス数e
Ka)よりも後の時間t
Kb(パルス数e
Kb)においてブラックマーク22Kの位置L
Kに達する。よってこの見当ずれは、パルス数の差異Δe
K=e
Kb-e
Kaに相当する。
【0032】
上記照射の影響がなかったと仮定すると、特定箇所は、図中破線で示されるように、時間tDa(言い換えればパルス数eDa)においてマークセンサ70の位置に達する。しかしながら、上述した収縮の影響の結果、時間tDa(言い換えればパルス数tDa)において、特定箇所は、マークセンサ70の位置LDまで距離ΔLDを残している。そして特定位置は、時間tDa(パルス数eDa)よりも後の時間tDb(パルス数eDb)においてマークセンサ70の位置LDに達する。よって上記距離ΔLDは、パルス数の差異ΔeD=eDb-eDaに相当する。
【0033】
タイミング設定部90Tは各画像21の記録に関して、ホワイト記録ヘッド31Wと、シアン記録ヘッド32Cと、マゼンダ記録ヘッド32Mと、イエロー記録ヘッド32Yと、ブラック記録ヘッド32Kとの各々が駆動されるタイミングを設定する。その目的でタイミング設定部90Tは各画像21の記録に関して、上記タイミング間の差異を管理する。この管理は、ホワイト記録ヘッド31Wが駆動されるタイミングを基準として、他の記録ヘッドが駆動されるタイミングを相対的に制御することによって行われる。この相対的タイミングは典型的には、ホワイト記録ヘッド31Wが駆動される時間tWからのパルス数によって設定される。
【0034】
具体的には、ホワイト記録ヘッド31Wが駆動されるタイミングを基準として(言い換えれば、当該タイミングを原点として)、ブラック記録ヘッド32Kが駆動される相対的タイミングを表すパルス数eKが、
eK = AK + uK(t)
のように設定される。ここでAKは定数であり、ホワイト記録ヘッド31Wからのブラック記録ヘッド32Kの距離をパルス数に換算した値であってよい。またuK(t)は、eKに関して時間tにおいて適用される補正値である。
【0035】
補正値uK(t)は、マークセンサ70によるホワイト部分21Wとブラック部分21Kとの間の見当ずれの検出結果を表すパルス数ΔeWKに基づいて調整される。言い換えれば、補正値uK(t)は、ホワイトマーク22Wの検出タイミングとブラックマーク22Kの検出タイミングとの間のパルス数ΔeWKに基づいて調整される。この調整は、ΔeWKの目標値を0とするPID制御(Proportional-Integral-Derivative control)によって行われることが好ましい。その場合、補正値uK(t)は、PID制御におけるP項、I項およびD項によって、
uK(t) = P項 + I項 + D項
と表され、P項は、
P項 = BK×ΔeWK
のように表される。ここでBKはΔeWKをP項に換算するために適宜決定される比例ゲインである。
【0036】
上記方法によりタイミング設定部90Tは、ΔeWK(マークセンサ70がホワイトマーク22Wおよびブラックマーク22Kを検出するタイミングの差異の情報)に基づいて、eK(ホワイト記録ヘッド31Wが画像21のホワイト部分21Wを記録するタイミングと、ブラック記録ヘッド32Kが画像21のブラック部分21Kを記録するタイミングとの差異)を設定し直す。例えば、初期状態がeK=eKaである場合、画像21の記録が繰り返されることでPID制御が適切に進行することによって、パルス数eKはeKaからekbへと近づき、それにより画像21のホワイト部分21Wとブラック部分21Kとの間の見当ずれは抑制されていく。
【0037】
さらに、本実施の形態においてはタイミング設定部90Tは、ホワイトマーク22Wおよびブラックマーク22Kの検出結果に基づいて、イエロー記録ヘッド32Y、マゼンダ記録ヘッド32M、シアン記録ヘッド32Cのタイミングも設定する。具体的には、ブラック記録ヘッド32Kのタイミングを最適化するために算出された上記補正値uK(t)に基づいて、イエロー記録ヘッド32Y、マゼンダ記録ヘッド32M、シアン記録ヘッド32Cのタイミングも設定される。より具体的には、ホワイト記録ヘッド31Wが駆動されるタイミングを基準として、イエロー記録ヘッド32Y、マゼンダ記録ヘッド32M、シアン記録ヘッド32Cのそれぞれが駆動される相対的タイミングを表すパルス数eY、eM、eCが、
eY = AY + FY × uK(t)
eM = AM + FM × uK(t)
eC = AC + FC × uK(t)
のように設定される。ここでAY、AM、ACは定数でありそのそれそれは、イエロー記録ヘッド32Y、マゼンダ記録ヘッド32M、シアン記録ヘッド32Cの、ホワイト記録ヘッド31Wからの距離をパルス数に換算した値であってよい。またFY、FM、FCは定数であり、そのそれぞれは、前述した補正値uK(t)が、イエロー記録ヘッド32Y、マゼンダ記録ヘッド32M、シアン記録ヘッド32Cのタイミングに対してどの程度の割合で適用されるかを表す。
【0038】
図1に示された構成において、上述した式の組み合わせの具体例を挙げれば、
e
K = 1000 + u
K(t)
e
Y = 800 + 0.8 × u
K(t)
e
M = 600 + 0.6 × u
K(t)
e
C = 400 + 0.2 × u
K(t)
である。
【0039】
上記構成を有するプリンタ101(
図1)によって、長手方向を有する樹脂フィルム9を長手方向に沿った搬送方向FRに向かって搬送しながら樹脂フィルム9上に画像21(
図2)を繰り返し記録する画像記録方法が実行される。具体的には、搬送される樹脂フィルム9の特定箇所(ある画像21が記録されることになる箇所)に対して、以下の工程が行われる。
【0040】
ホワイト記録ヘッド31W(本実施の形態における第1記録ヘッド)によって、画像21のホワイト部分21Wが樹脂フィルム9上に記録される。次に、搬送方向FRにおいてホワイト記録ヘッド31Wよりも下流側に配置された仮硬化照射器51によって、樹脂フィルム9上に記録された画像21のホワイト部分21Wを硬化するための紫外線が樹脂フィルム9へ照射される。次に、搬送方向FRにおいて仮硬化照射器51よりも下流側に配置された、シアン記録ヘッド32C、マゼンダ記録ヘッド32M、イエロー記録ヘッド32Y、ブラック記録ヘッド32Kのそれぞれによって、画像21のシアン部分21C、マゼンダ部分21M、イエロー部分21Y、ブラック部分21Kが、この順に樹脂フィルム9上に記録される。
【0041】
次に、搬送方向FRにおいて仮硬化照射器51よりも下流側に配置されたマークセンサ70によって、樹脂フィルム9上に設けられたホワイトマーク22Wおよびブラックマーク22K(より一般的にいえば、少なくとも1つの見当マーク22)が検出される。
【0042】
そして前述したように、ΔeWK(ホワイトマーク22Wおよびブラックマーク22Kが検出されるタイミングの差異)に基づいて、パルス数eK(ホワイト記録ヘッド31Wが画像21のホワイト部分21Wを記録するタイミングと、ブラック記録ヘッド32Kが画像21のブラック部分21Kを記録するタイミングとの差異)が設定される。
【0043】
また、ΔeWKに基づいて、前述したようにパルス数eY(ホワイト記録ヘッド31Wが画像21のホワイト部分21Wを記録するタイミングと、イエロー記録ヘッド32Yが画像21のイエロー部分21Yを記録するタイミングとの差異)が設定される。またΔeWKに基づいて、前述したようにパルス数eM(ホワイト記録ヘッド31Wが画像21のホワイト部分21Wを記録するタイミングと、マゼンダ記録ヘッド32Mが画像21のマゼンダ部分21Mを記録するタイミングとの差異)が設定される。またΔeWKに基づいて、前述したようにパルス数eC(ホワイト記録ヘッド31Wが画像21のホワイト部分21Wを記録するタイミングと、シアン記録ヘッド32Cが画像21のシアン部分21Cを記録するタイミングとの差異)が設定される。
【0044】
上記のようにパルス数eK、eY、eM、eCが更新された後、これら更新されたパルス数を用いて、さらなる画像21の記録が開始される。
【0045】
また、シアン記録ヘッド32C、マゼンダ記録ヘッド32M、イエロー記録ヘッド32Y、ブラック記録ヘッド32Kよりも搬送方向FRにおいて下流側に配置された本硬化照射器52によって、樹脂フィルム9上に記録された画像21を本硬化するための紫外線が樹脂フィルム9へ照射される。
【0046】
以上により、樹脂フィルム9上に画像21が繰り返し記録される。
【0047】
本実施の形態によれば、パルス数eK(画像21のホワイト部分21Wを記録するタイミングと、画像21のブラック部分21Kを記録するタイミングとの差異)が、ΔeWK(マークセンサ70がホワイトマーク22Wおよびブラックマーク22Kを検出するタイミングの差異の情報)に基づいて設定される。これにより、画像21のホワイト部分21Wを仮硬化するための紫外線が照射されることに起因しての樹脂フィルム9の収縮の程度に変動があっても、当該変動を相殺するように、パルス数eKを調整することができる。よって画像21のホワイト部分21Wとブラック部分21Kとを互いに精確に重ね合わせることができる。
【0048】
マークセンサ70はブラック記録ヘッド32Kよりも下流側に配置されている。これにより、ホワイト記録ヘッド31Wとブラック記録ヘッド32Kとの間にマークセンサ70を挿入する配置を避けることができる。
【0049】
見当マーク22はホワイトマーク22Wを含む。このホワイトマーク22Wは、ホワイト記録ヘッド31Wが樹脂フィルム9上に記録する画像21のホワイト部分21Wに対して樹脂フィルム9上において所定の相対的位置に配置されている。これにより、ホワイト記録ヘッド31Wが画像21のホワイト部分21Wを記録するタイミングを見当マーク22へ反映させることができる。具体的には、ホワイトマーク22Wはホワイト記録ヘッド31Wによって記録される。これにより、ホワイトマーク22Wを記録するための手段と、画像21のホワイト部分21Wを記録するための手段とを共通化することができる。
【0050】
見当マーク22はブラックマーク22Kを含む。このブラックマーク22Kは、ブラック記録ヘッド32Kが樹脂フィルム9上に記録する画像21のブラック部分21Kに対して樹脂フィルム9上において所定の相対的位置に配置されている。これにより、ブラック記録ヘッド32Kが画像21のブラック部分21Kを記録するタイミングを見当マーク22へ反映させることができる。具体的には、ブラックマーク22Kはブラック記録ヘッド32Kによって記録される。これにより、ブラックマーク22Kを記録するための手段と、画像21のブラック部分21Kを記録するための手段とを共通化することができる。
【0051】
プリンタ101による記録が行われる媒体が樹脂フィルム9(例えばシュリンクフィルム)である場合、仮硬化照射器51によるエネルギー線の照射に起因して媒体が収縮しやすいことがある。本実施の形態によれば、この収縮に起因しての重ね合わせずれを効果的に抑制することができる。
【0052】
なお本実施の形態においては、前述したように、ホワイトマーク22Wおよびブラックマーク22Kが検出されるタイミングの差異に基づいて補正値uK(t)が算出され、この補正値uK(t)を用いて、ホワイト記録ヘッド31Wが駆動されるタイミングを基準として、ブラック記録ヘッド32K、イエロー記録ヘッド32Y、マゼンダ記録ヘッド32M、シアン記録ヘッド32Cのそれぞれが駆動される相対的タイミングを表すパルス数eK、eY、eM、eCが設定される。変形例として、ホワイトマーク22Wと他の複数のマークとが検出されるタイミングの差異に基づいて複数の補正値が算出され、これらの補正値を用いて、ホワイト記録ヘッド31Wが駆動されるタイミングを基準として、ブラック記録ヘッド32K、イエロー記録ヘッド32Y、マゼンダ記録ヘッド32M、シアン記録ヘッド32Cのそれぞれが駆動される相対的タイミングを表すパルス数eK、eY、eM、eCが設定されてよい。
【0053】
例えば、ホワイトマーク22Wおよびブラックマーク22Kに加えてイエローマーク22Yも検出される場合、ホワイトマーク22Wに対するイエローマーク22Yの見当ずれの情報も得られる。この場合、ブラック記録ヘッド32Kが駆動されるタイミングを表すパルス数eKを、
eK = AK + uK(t)
のように設定するとともに、同様の方法によって、イエロー記録ヘッド32Yが駆動されるタイミングを表すパルス数eYを、
eY = AY + uY(t)
のように設定することができる。ここでuY(t)は、イエロー記録ヘッド32Yのために適用される補正値である。
【0054】
この場合、イエロー記録ヘッド32Yの駆動タイミングeYが、当該イエロー記録ヘッド32Yによって記録されていたイエローマーク22Yの検出結果を用いて再設定される。よって、画像21のホワイト部分21Wに対してイエロー部分21Yをより精確に重ね合わせることができる。この場合、マゼンダ記録ヘッド32Mの駆動タイミングeMと、シアン記録ヘッド32Cの駆動タイミングeCとは、補正値uK(t)およびuY(t)と、定数FKM、FYM、FKC、FYCとを用いて、
eM = AM + FKM × uK(t) + FYM × uY(t)
eC = AC + FKC × uK(t) + FYC × uY(t)
のように設定されてよい。このように複数の補正値を用いることによって、より精確な重ね合わせが可能となる。
【0055】
さらなる変形例として、ホワイトマーク22W、ブラックマーク22K、イエローマーク22Yに加えて、マゼンダマーク22Mおよびシアンマーク22Cも検出される場合、補正値uM(t)およびuC(t)も算出することによって、タイミングeMおよびeCが、
eM = AM + uM(t)
eC = AC + uC(t)
のように設定されてよい。
【0056】
また本実施の形態においては、媒体が樹脂フィルム9である場合について説明したが、媒体は樹脂フィルム9に限定されるものではなく、ホワイト記録ヘッド31W(本実施の形態における第1記録ヘッド)による記録後における仮硬化照射器51のエネルギー線の照射に起因して収縮する性質を有する他の媒体であってもよい。また、エネルギー線としての紫外線が、紫外線に対する硬化性を有するインクへ照射される場合について説明したが、他のエネルギー線(例えば、赤外線または電子線)が、当該エネルギー線に対する硬化性を有するインクへ照射されてもよい。また第1および第2記録ヘッドのそれぞれがホワイト記録ヘッド31Wおよびブラック記録ヘッド32Kの場合について説明したが、第1および第2記録ヘッドのインク色はこれらに限定されるものではない。またエンコーダ60のパルス信号の周波数が一定である場合について説明したが、パルス信号の周波数は必ずしも一定でなくてよい。
【0057】
またプリンタ101(
図1)においてはマークセンサ70が搬送方向FRにおいて本硬化照射器52の上流側に配置されている。これによりマークセンサ70は、仮硬化照射器51に起因しての樹脂フィルム9の収縮状態を、本硬化照射器52の影響を受けることなく、検出することができる。なおマークセンサ70の配置はこれに限定されるものではない。変形例のプリンタ102(
図10)においてはマークセンサ70が搬送方向FRにおいて本硬化照射器52の下流側に配置されている。この変形例においても、PID制御等の適切な制御アルゴリズムの適用によって、本実施の形態とおおよそ同様に、検討ずれを抑制することができる。
【0058】
<実施の形態2>
図11は、本実施の形態2における、画像21(
図2)のホワイト部分21Wおよびホワイトマーク22Wがマークセンサ70に達するタイミングの、樹脂フィルム9の収縮に起因しての遅延を示す平面図である。図中、仮想ホワイト部分21Wiおよび仮想ホワイトマーク22Wiは、樹脂フィルム9の収縮がなかったと仮定した場合の様子を示している。樹脂フィルム9の収縮がなかったと仮定した場合にホワイトマーク22Wがマークセンサ70に達する時間t
Daにおいて、ホワイトマーク22Wはマークセンサ70の位置まで距離ΔL
Diを残している。言い換えれば、ホワイト記録ヘッド31Wが記録を開始したタイミングからパルス数e
Da後において、ホワイトマーク22Wはマークセンサ70の位置まで距離ΔL
Dを残している。この時点を基準として、ホワイトマーク22Wが実際にマークセンサ70の位置に達した時点までのパルス数Δe
Dが計測される。
【0059】
ここで、樹脂フィルム9の収縮について予め予測がなされており、予測通りの収縮の場合のパルス数ΔeDの値がΔeDiであるとする。その場合、ブラック記録ヘッド32K、イエロー記録ヘッド32Y、マゼンダ記録ヘッド32M、シアン記録ヘッド32Cのそれぞれが駆動される相対的タイミングを表すパルス数eK、eY、eM、eCが、
eK = AK + FK × (ΔeD - ΔeDi)
eY = AY + FY × (ΔeD - ΔeDi)
eM = AM + FM × (ΔeD - ΔeDi)
eC = AC + FC × (ΔeD - ΔeDi)
のように設定される。本実施の形態においては、定数AK、AY、AM、ACのそれぞれは、樹脂フィルム9が予測通りに収縮する場合に最適化された、ブラック記録ヘッド32K、イエロー記録ヘッド32Y、マゼンダ記録ヘッド32M、シアン記録ヘッド32Cの駆動タイミングである。またFK、FY、FM、FCは定数でありそのそれぞれは、差異ΔeD - ΔeDiが、ブラック記録ヘッド32K、イエロー記録ヘッド32Y、マゼンダ記録ヘッド32M、シアン記録ヘッド32Cのタイミング補正に対してどの程度の割合で適用されるかを表す。
【0060】
上述した式の組み合わせの具体例を挙げれば、
e
K = 1000 + 1.0 × (Δe
D - Δe
Di)
e
Y = 800 + 0.8 × (Δe
D - Δe
Di)
e
M = 600 + 0.6 × (Δe
D - Δe
Di)
e
C = 400 + 0.2 × (Δe
D - Δe
Di)
である。さらに、例えば、Δe
Di=300の場合に、ΔL
D(
図11)に対応してパルス数Δe
D=200が検出されたときは、樹脂フィルム9が予測よりも収縮しておらず、それに対応して、以下の設定、
e
K = 1000 + 1.0 × (200 - 300) = 900
e
Y = 800 + 0.8 × (200 - 300) = 720
e
M = 600 + 0.6 × (200 - 300) = 540
e
C = 400 + 0.2 × (200 - 300) = 380
が行われる。
【0061】
本実施の形態によれば、前述した実施の形態1とは異なり、見当マーク22のうちホワイトマーク22Wのみを参照してのタイミング設定が可能である。なお、本実施の形態では、マークセンサ70を仮硬化照射器51の直後であってシアン記録ヘッド32Cの前に配置してもよい。よって本実施の形態においては、マークセンサ70と、シアン記録ヘッド32C、マゼンダ記録ヘッド32M、イエロー記録ヘッド32Yおよびブラック記録ヘッド32Kの各々と、の相対的位置関係は任意である。また、見当マーク22は、シアンマーク22C、マゼンダマーク22M、イエローマーク22Yおよびブラックマーク22Kを含んでいなくてよい。
【0062】
<変形例>
図12は
図1の画像記録装置の変形例によって画像21およびマーク22が記録された樹脂フィルム9の構成を概略的に示す平面図である。
【0063】
実施の形態1および2では、複数の見当マーク22W、22C、22M、22Y、および22KをY軸方向(樹脂フィルム9の横幅方向)について異なる位置であって搬送方向FRについて同一の位置に配置したが、
図12に示すようにY軸方向について同一の位置であって搬送方向FRについて異なる位置に配置してもよい。この変形例は、各色の見当マーク22と画像21における対応色部分との相互の位置関係が搬送方向FRの下流側に1色ずつ一定間隔でずれていく状態が得られたときに画像21における各色部分間の色ずれが無くなるように設計されている。これを実現するため、各色の見当マーク22と画像21における対応色部分との搬送方向FRにおける印刷タイミングずれ量が、色番号(W:1番、C:2番、M:3番、Y:4番、K:5番)の整数倍ずつ増加するように設定されている。例えば、ホワイトマーク22Wと対応画像(ホワイト部分21W)との搬送方向FRの駆動タイミングずれ量をXパルスとすると、シアンマーク22Cと対応画像(シアン部分21C)との搬送方向FRの駆動タイミングずれ量は2Xパルス数であり、マゼンダマーク22Mと対応画像(マゼンダ部分21M)との搬送方向FRの駆動タイミングずれ量は3Xパルス数であり、イエローマーク22Yと対応画像(イエロー部分21Y)との搬送方向FRの駆動タイミングずれ量は4Xパルス数であり、ブラックマーク22Kと対応画像(ブラック部分21K)との搬送方向FRの駆動タイミングずれ量は5Xパルス数である。
【0064】
この変形例においては、ホワイト記録ヘッド31Wが駆動されるタイミングを基準として、ブラック記録ヘッド32Kが駆動される相対タイミングパルス数ekが、
ek= Ak+Uk(t)+Ck
のように設定される。ここで、Ckは、ホワイトマーク22Wと対応画像(ホワイト部分21W)との駆動タイミングずれ量Xパルスと、ブラックマーク22Kと対応画像(ブラック部分21K)との駆動タイミングずれ量5Xパルスとの差分(5X-X)パルスである。
【0065】
上記実施の形態1および2と同様に、印刷を行いながらホワイトマーク22Wおよびブラックマーク22Kをマークセンサ70で検出する。マークセンサ70がホワイトマーク22Wおよびブラックマーク22Kを検出したタイミングに基づいて、タイミング設定部90Tが補正値Uk(t)を調整することによって、画像21におけるホワイト部分21Wとブラック部分21Kとの色ずれを抑制することができる。
【0066】
なお、この変形例において、マークセンサ70は複数の見当マーク22W、22C、22M、22Y、22Kを識別する必要がある。したがって、マークセンサ70はこれらの見当マーク22の色の違いが識別できるカラーセンサであることが望ましい。複数の見当マーク22を濃度または模様が異なるように印刷し、濃度または模様の差異に基づいてマークセンサ70が複数の見当マーク22を識別するようにしてもよい。あるいは、複数の見当マーク22をそれぞれの想定位置に基づいて識別するようにしてもよい。
【0067】
なお上記実施の形態1および2並びに変形例において、制御部90(
図1または
図10)は、電気回路を有する一般的なコンピュータによって構成されていてよい。具体的には、制御部90は、
図13に示されているように、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、記憶装置94、入力部96、表示部97および通信部98と、これらを相互接続するバスライン95とを有していてよい。ROM92は基本プログラムを格納している。RAM93は、CPU91が所定の処理を行う際の作業領域として供される。記憶装置94は、フラッシュメモリまたはハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって構成されている。入力部96は、各種スイッチまたはタッチパネル等により構成されており、オペレータから処理レシピ等の入力設定指示を受ける。表示部97は、例えば液晶表示装置およびランプ等により構成されており、CPU91による制御の下、各種の情報を表示する。通信部98は、LAN(Local Area Network)等を介してのデータ通信機能を有している。記憶装置94には、プリンタ101(
図1)を構成する各機構の制御についての複数のモードが予め設定されている。CPU91が処理プログラム94Pを実行することによって、上記複数のモードのうちの1つのモードが選択され、該モードによって各機構が制御される。また、処理プログラム94Pは、記録媒体に記憶されていてもよい。この記録媒体を用いれば、制御部90に処理プログラム94Pをインストールすることができる。また制御部90が実行する機能の一部または全部は、必ずしもソフトウェアによって実現される必要は無く、専用の論理回路などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0068】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0069】
9 :樹脂フィルム(媒体)
21 :画像
21C :シアン部分
21K :ブラック部分(第2部分)
21M :マゼンダ部分
21W :第1部分(ホワイト部分)
21Y :イエロー部分
22 :見当マーク
22C :シアンマーク
22K :ブラックマーク
22M :マゼンダマーク
22W :ホワイトマーク
22Y :イエローマーク
31W :ホワイト記録ヘッド(第1記録ヘッド)
32C :シアン記録ヘッド
32K :ブラック記録ヘッド(第2記録ヘッド)
32M :マゼンダ記録ヘッド
32Y :イエロー記録ヘッド
51 :照射部(仮硬化照射器)
52 :本硬化照射器
60 :エンコーダ
70 :マークセンサ(検出部)
90 :制御部
90G :画像発生部
90T :タイミング設定部
101,102:プリンタ(画像記録装置)