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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/284 20210101AFI20240426BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20240426BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240426BHJP
   H01M 10/6235 20140101ALI20240426BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20240426BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20240426BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240426BHJP
【FI】
H01M50/284
H01M50/50 101
H01M10/613
H01M10/6235
H01M10/6554
H01M10/633
H01M50/204 401H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020054847
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021157888
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】行田 稔
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0366697(US,A1)
【文献】特開2011-055680(JP,A)
【文献】特開2017-174683(JP,A)
【文献】特開2016-217829(JP,A)
【文献】特開2014-079093(JP,A)
【文献】特開2017-016969(JP,A)
【文献】特開2014-160677(JP,A)
【文献】特開2019-185846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-298
H01M 50/50-598
H01M 10/613
H01M 10/6235
H01M 10/6554
H01M 10/633
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
第1の面と、前記第1の面の裏側の第2の面と、を有するプリント基板と、
前記第1の面上に設けられ、電動作業機に接続されるように構成された第1接続端子と、
前記第1の面上に前記第1接続端子から離れて設けられ、前記バッテリに接続された第2接続端子と、
前記プリント基板上に設けられ、前記バッテリの放電を制御するように構成された制御回路と、
前記プリント基板上において、前記第1接続端子と前記第2接続端子との間の放電経路に設けられ、第1の立ち上がり部と、第2の立ち上がり部と、非接触部と、を有するバスバーと、を備え、
前記第1の立ち上がり部及び前記第2の立ち上がり部は、前記第1の面から立ち上がり、
前記非接触部は、前記第1の立ち上がり部と前記第2の立ち上がり部とを繋ぎ、前記非接触部は、前記第1の面の上部に配置され、前記第1の面から隙間によって離間している、
バッテリパック。
【請求項2】
前記プリント基板上において、前記放電経路に設けられた抵抗成分を有する素子を更に備える、
請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項3】
前記バスバーは、シャント抵抗器を含む、
請求項1又は2に記載のバッテリパック。
【請求項4】
前記バッテリ及び前記プリント基板を収納するケースと、
前記ケースの内面と前記バスバーの表面とに接触するように設けられた放熱シートと、を備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載のバッテリパック。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第1の面上に設けられている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のバッテリパック。
【請求項6】
前記プリント基板は、長辺と短辺とを有し、
前記非接触部は、前記長辺に沿って延伸する細長い形状を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のバッテリパックは、マイコン、放電端子、充電端子、負極端子等を搭載した多層基板を備える。上記バッテリパックは、負極端子を多層導体パターンでバッテリセルの負極電極に接続することによって電流容量を増大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6095502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
負極端子及び多層導体パターンに電流が流れると、負極端子及び多層導体パターンが発熱して熱を生じる。電流容量が増大すると、負極端子及び多層導体パターンの発熱によって生じる熱量が増加する。負極端子及び多層導体パターンは、マイコン等の電子部品と同じ基板に搭載されているため、負極端子及び多層導体パターンが発熱して生じた熱は、マイコン等の電子部品に伝わる。電流容量が増大すると電子部品に伝わる熱量が大きくなり、電子部品が熱の影響を受ける可能性がある。
【0005】
本開示の1つの局面は、バッテリパック内の基板上の電子部品への熱の影響を抑制可能なバッテリパックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面は、バッテリパックであって、バッテリと、基板と、第1接続端子と、第2接続端子と、制御回路と、バスバーと、を備える。第1接続端子は、基板上に設けられ、電動作業機に接続されるように構成される。第2接続端子は、基板上に設けられ、バッテリと接続される。制御回路は、基板上に設けられ、バッテリの放電を制御するように構成される。バスバーは、基板上において、第1接続端子と第2接続端子との間の放電経路に設けられる。
【0007】
本開示の1つの局面によれば、第1接続端子と第2接続端子との間の放電経路にバスバーが設けられ、バスバーに放電電流が流れるとともに、第1接続端子が発生した熱がバスバーへ伝わる。バスバーは、導体パターンと比べて、断面積が大きく抵抗値が小さいため、電流が流れることによる発熱量が抑制される。また、バスバーは、導体体積が大きく、導体パターンよりも蓄熱性が高い。また、バスバーを実装することにより導体パターンを省くことができ、発熱部品から導体パターンを介しての電子部品への熱伝導を抑制することができる。したがって、放電経路にバスバーを設けたことにより、制御回路等の電子部品への熱の伝達量を低減して、制御回路等の電子部品への熱の影響を抑制することができる。また、バスバーは基板よりも強度が高い部材である。そのため、基板上にバスバーを設けたことにより、基板のたわみを抑制し、基板の構造を強化することができる。
【0008】
また、基板上において、放電経路に設けられた抵抗成分を有する素子を更に備えてもよい。
放電電流が流れることによって抵抗成分を有する素子が発生した熱が、バスバーへ伝わりバスバーから放熱される。よって、抵抗成分を有する素子が発生する熱が、制御回路等の電子部品へ伝わることを好適に抑制できる。
【0009】
また、バスバーは、基板から立ち上がった複数の立ち上がり部と、複数の立ち上がり部を繋ぐ非接触部であって、基板と非接触部との間に隙間が設けられる非接触部と、を含んでもよい。
バスバーの非接触部が基板に接触していないことにより、バスバーから制御回路等への熱の伝達をより抑制することができる。
【0010】
また、バスバーは、シャント抵抗器を含んでもよい。
バスバーがシャント抵抗器を含むことにより、基板上の部品数を低減することができる。ひいては、基板の小型化を図ることができる。
【0011】
また、ケースと、放熱シートと、を備えてもよい。ケースは、バッテリ及び基板を収納する。放熱シートは、ケースの内面とバスバーの表面とに接触するように設けられる。
放熱シートを設けたことにより、ケースに加わった衝撃が基板へ伝達することを抑制しつつ、バスバーからの放熱をより促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るバッテリパックと電動作業機とを備えるバッテリシステムを示す側面図である。
図2】本実施形態に係る電動作業機の作業機接続部を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係るバッテリパックのバッテリ接続部を示す斜視図である。
図4】本実施形態に係るバッテリパックの上ケースを外した平面図である。
図5】本実施形態に係るバッテリパックの基板を示す平面図である。
図6】本実施形態に係るバッテリパックの基板を示す側面図である。
図7】本実施形態に係るバッテリパックの回路構成を示す図である。
図8】他の実施形態に係るバッテリパックの基板を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。
<1.バッテリシステムの構成>
まず、本実施形態に係るバッテリシステムの構成について、図1~3を参照して説明する。本実施形態に係るバッテリシステムは、バッテリパック100と、電動作業機500と、を備える。バッテリパック100は、電動作業機500へ電力を供給する。電動作業機500は、バッテリパック100から電力の供給を受けて作動する。
【0014】
本実施形態では、電動作業機500はインパクトドライバであるが、電動作業機500はインパクトドライバに限らない。電動作業機500は、インパクトドライバ、ハンマドリルなどの電動工具や、草刈機、ヘッジトリマなどの園芸工具、レーザ墨出し器、ライトなど、バッテリパック100から電力供給を受けて作動する作業機であれば特に限定されるものではない。
【0015】
電動作業機500は、使用者が把持するグリップの下に、バッテリパック100が接続される作業機接続部50を備える。図2に示すように、作業機接続部50は、直方形状の接続面からバッテリパック100に向って突出する4つの端子を備える。4つの端子は、金属製の板状の端子であり、作業機接続部50の長手方向に延伸している。具体的には、作業機接続部50は、作業機正極端子51と、作業機第1通信端子53と、作業機第2通信端子54と、作業機負極端子52と、を備える。作業機正極端子51、作業機第1通信端子53、作業機第2通信端子54、作業機負極端子52は、この順に作業機接続部50の短手方向に並べて配置されている。作業機正極端子51及び作業機負極端子52は、作業機第1通信端子53及び作業機第2通信端子54よりも長い。
【0016】
バッテリパック100は、上ケース120と、下ケース130と、を備える。上ケース120は、開放された下面を有するトレー形状のケースである。下ケース130は、開放された上面を有する直方形状のケースである。上ケース120は、下ケース130の開放された上面を覆い、上ケース120と下ケース130とが組み合わさって一つのケースを構成する。上ケース120と下ケース130の内部には、後述する基板10と、バッテリ60とが収納されている。
【0017】
上ケース120は、上面に、作業機接続部50に接続されるバッテリ接続部110を備える。図3に示すように、バッテリ接続部110は、作業機接続部50の4つの端子が挿入される4つの挿入口を備える。4つの挿入口は、上ケース120の長手方向に延伸している。具体的には、バッテリ接続部110は、第1挿入口111、第3挿入口113、第4挿入口114及び第2挿入口112を備える。第1挿入口111、第3挿入口113、第4挿入口114及び第2挿入口112は、この順に上ケース120の短手方向に並べて配置されている。
【0018】
第1挿入口111には、後述する金属製のバッテリ正極端子11が配置されており、作業機正極端子51が挿入される。第2挿入口112には、後述する金属製のバッテリ負極端子12が配置されており、作業機負極端子52が挿入される。第3挿入口113には、後述する金属製の充電端子13及び第1通信端子14が配置されており、作業機第1通信端子53が挿入される。第4挿入口114には、後述する金属製のシリアル通信端子15及び第2通信端子16が配置されており、作業機第2通信端子54が挿入される。
【0019】
作業機接続部50とバッテリ接続部110とを対向させた状態で、バッテリパック100に対して電動作業機500をスライドさせることにより、作業機接続部50がバッテリ接続部110に接続される。これにより、作業機正極端子51がバッテリ正極端子11に接続され、作業機負極端子52がバッテリ負極端子12に接続される。また、作業機第1通信端子53が第1通信端子14に接続され、作業機第2通信端子54が第2通信端子16に接続される。ひいては、バッテリパック100から電動作業機500へ電力供給が可能になるとともに、バッテリパック100と電動作業機500との間で通信が可能になる。この状態で、使用者が電動作業機500のトリガスイッチを引くと、電動作業機500が作動する。
【0020】
<2.バッテリパックの基板>
<2-1.基板の全体構成>
次に、バッテリパック100の基板10の全体構成について、図4図7を参照して説明する。図4は、バッテリパック100から上ケース120を取り外した状態を示す。図5及び図6は、バッテリパック100から取り出した基板10を示す。図7は、バッテリパック100の回路構成を示す。
【0021】
図4に示すように、バッテリパック100の上ケース120の下方には基板10が配置されている。そして、基板10と下ケース130との間の空間には、バッテリ60が収納されている。バッテリ60は、複数の直列に接続されたバッテリセルを含む、例えば、リチウムイオンバッテリであり、放電及び充電可能なバッテリである。
【0022】
基板10は、長方形状のプリント基板である。図4及び図5に示すように、基板10上には、バッテリ正極端子11、バッテリ負極端子12、充電端子13、第1通信端子14、シリアル通信端子15、第2通信端子16、Analog Front End(以下、AFE)610、Micro Processing Unit(以下、MPU)620、Self Control Protector(以下、SCP)回路81、シャント抵抗器67、及びバスバー18が搭載されている。さらに、基板10上には、図7に示すように、電流検出回路63と、パック電圧検出部66と、電源回路70と、サブプリント回路基板制御部(以下、サブPCB制御部)90と、が搭載されている。また、基板10には、正極タブ60aと負極タブ60bとが設けられている。
【0023】
充電端子13は、バッテリパック100に充電器が接続された場合に、充電器へ充電許可信号又は充電禁止信号を出力する。充電許可信号は、バッテリ60への充電を許可する信号である。充電禁止信号は、バッテリ60への充電を禁止する信号である。第1通信端子14は、バッテリパック100に電動作業機500が接続された場合に、電動作業機500からトリガスイッチ情報が入力される。トリガスイッチ情報は、電動作業機500のトリガスイッチがオンかオフかを示す情報である。シリアル通信端子15は、バッテリパック100に充電器が接続された場合に、充電器とシリアル通信するための端子である。
【0024】
第2通信端子16は、バッテリパック100に電動作業機500が接続された場合に、電動作業機500へ放電許可信号又は放電禁止信号を出力する。放電許可信号は、バッテリ60からの放電を許可する信号である。放電禁止信号は、バッテリ60からの放電を禁止する信号である。また、第2通信端子16は、MPU620のシャットダウン時においてバッテリパック100に充電器が接続された場合に、充電器から補助電源が入力される。
【0025】
図7に示すように、バッテリ正極端子11は、正極ライン101を介して正極タブ60aに接続されている。正極タブ60aは、バッテリ60の正極61aに接続されている。また、バッテリ負極端子12は、負極ライン102を介して負極タブ60bに接続されている。負極タブ60bは、バッテリ60の負極61bに接続されている。
【0026】
MPU620は、CPU、ROM、RAM及びI/O等を備えたマイクロコンピュータを含み、バッテリ60の放電制御及び充電制御を含む各種制御を実行する。MPU620は、第2通信端子16を介して、電動作業機500のトリガスイッチ情報を取得する。MPU620は、トリガスイッチがオンである情報を取得した場合には、ウェイクアップし、トリガスイッチがオフである情報を取得した場合には、所定の条件を満たすとスリープモードへ移行する。
【0027】
AFE610は、アナログ回路であり、下記(1)~(6)の検出や処理の少なくとも1つを行うことができるように構成されている。
(1)MPU620からの指令に従いバッテリ60に含まれる各バッテリセルのセル電圧を検出する。
(2)サーミスタ68を介して少なくとも1つのバッテリセルのセル温度を検出する。
(3)複数のバッテリセルの残容量を均等化させるセルバランス処理を実行する。
(4)サーミスタ65を介して基板温度を検出する。
(5)シャント抵抗器67を介して、バッテリ60へ流れ込む充電電流及びバッテリ60から流れ出る放電電流を検出する。
(6)検出したセル電圧、セル温度、基板温度、及び充放電電流の検出値をデジタル信号に変換し、変換した各デジタル信号をMPU620へ出力する。
【0028】
MPU620は、入力された各種信号に基づいてバッテリ60の状態を判定する。そして、MPU620は、判定したバッテリ60の状態に基づいて、バッテリ60への充電を許可するか禁止するかを判定し、充電許可信号又は充電禁止信号を生成して充電端子13へ出力する。また、MPU620は、判定したバッテリ60の状態に基づいて、バッテリ60からの放電を許可するか禁止するかを判定し、放電許可信号又は放電禁止信号を生成して第2通信端子16へ出力する。
【0029】
電流検出回路63は、シャント抵抗器67を介してバッテリ60から流出入する電流を検出する。パック電圧検出部66は、バッテリ60の両端子間の電圧であるパック電圧を検出し、検出したパック電圧をMPU620へ出力する。MPU620は、パック電圧検出部66により検出されたバッテリ電圧と、AFE610により検出されたセル電圧の合計とが一致するか否か判定する。
【0030】
電源回路70は、スイッチ72とレギュレータ73とを備える。レギュレータ73は、MPU620がシャットダウンしているとき、第2通信端子16を介して充電器から補助電源の供給を受け、内部回路駆動用の電源電圧VDDを生成する。バッテリパック100は、過放電状態になるとシャットダウンする。MPU620は、レギュレータ73によって生成された電源電圧VDDの供給を受けると、シャットダウン状態から起動しバッテリが充電可能な状態であれば充電許可信号を充電器に出力する。バッテリ電圧が所定の電圧に到達すると、スイッチ72をオンにする。スイッチ72がオンになると、レギュレータ73は、バッテリ60から電源供給を受けて、電源電圧VDDを生成する。
【0031】
サブPCB制御部90は、LED及びスイッチを備える。MPU620は、スイッチが押されたことを検出すると、電池残容量に応じてLEDを点灯させる。電池残容量は、前記バッテリ電圧から算出してもよいし、電流の積算から算出してもよいし、両方を用いて算出してもよい。
【0032】
SCP回路81は、第1SCP回路81aと第2SCP回路81bの2つの回路を含み、正極ライン101上に設けられている。第1SCP回路81aは、抵抗器及びヒューズを含む。第2SCP回路81bは、第1SCP回路81aと同様に構成されている。SCP回路81は、第1SCP回路81a及び第2SCP回路81bのいずれか一方のみを備えていてもよいし、3個以上のSCP回路を備えていてもよい。
【0033】
MPU620は、充電禁止信号を出力しても充電が止まらない場合、及び、バッテリパック100から放電禁止信号を出力しても放電が止まらない場合に、安全を確保するために、第1SCP回路81a及び第2SCP回路81bの抵抗器に電流を流して、ヒューズを溶断させる。これにより、正極ライン101が断線して、バッテリ60は、充電及び放電が不可能な状態になる。すなわち、バッテリ60は、再利用不可能な状態になる。SCP回路81は、バッテリ60の過充電状態及び過放電状態に対して二重に安全を確保するための回路である。
【0034】
バスバー18及びシャント抵抗器67は、負極ライン102上に設けられている。シャント抵抗器67は、第1抵抗器67a、第2抵抗器67b、第3抵抗器67cを備える。第1抵抗器67a、第2抵抗器67b及び第3抵抗器67cは、互いに並列に接続されている。すなわち、本実施形態では、充電電流及び放電電流を、3個の抵抗器67a,67b,67cに分けて流して検出している。シャント抵抗器67は、1個の抵抗器、又は互いに並列に接続された2個の抵抗器を備えていてもよいし、互いに並列に接続された4個以上の抵抗器を備えていてもよい。
【0035】
<2-2.基板上の部品の配置>
次に、基板10上の主な部品の配置について説明する。以下では、図4における紙面の上下を上下と称し、紙面の左右を左右と称する。基板10は、右端部が、左側よりも幅が広く構成されている。電動作業機500は、左から右へスライドして、バッテリパック100に装着される。
【0036】
正極タブ60aは、基板10の下端において左端に設けられている。負極タブ60bは、基板10の下端において右端に設けられている。
SCP回路81に含まれる第1SCP回路81a及び第2SCP回路81bは、基板10の左端の上部に設けられている。第1SCP回路81a及び第2SCP回路81bは、上下に並べて配置されている。
【0037】
バッテリ正極端子11、バッテリ負極端子12、充電端子13、第1通信端子14、シリアル通信端子15、及び、第2通信端子16は、正極タブ60aの右側に、上下に並べて設けられている。
【0038】
具体的には、バッテリ正極端子11は、基板10の上端に、左右方向に延伸して設けられている。充電端子13及び第1通信端子14は、バッテリ正極端子11の下に、左右に並べて設けられている。充電端子13は右側に設けられており、第1通信端子14は左側に設けられている。シリアル通信端子15及び第2通信端子16は、充電端子13及び第1通信端子14の下に、左右に並べて設けられている。シリアル通信端子15は左側に設けられており、第2通信端子16は右側に設けられている。バッテリ負極端子12は、シリアル通信端子15及び第2通信端子16の下であって、基板10の下端に、左右方向に延伸して設けられている。
【0039】
シャント抵抗器67に含まれる第1抵抗器67a、第2抵抗器67b及び第3抵抗器67cは、基板10の右部分において、負極タブ60bの上方に、上下方向に並べて設けられている。
【0040】
バスバー18は、バッテリ負極端子12と、シャント抵抗器67との間に設けられている。図6に示すように、バスバー18は、2つの立ち上がり部18aと、非接触部18bとを備える。各立ち上がり部18aは、基板10から垂直方向に立ち上がっている。各立ち上がり部18aの第1端は、基板10にはんだ付けされている。2つの立ち上がり部18aのうちの一方は、バッテリ負極端子12の近くに配置されている。2つの立ち上がり部18aのうちの他方は、シャント抵抗器67の近くに配置されている。
【0041】
非接触部18bは、2つの立ち上がり部18aの第2端を繋ぎ、基板10の左右方向に延伸している。詳しくは、非接触部18bは、延伸方向が、基板10の下側の辺に平行になるように配置されている。非接触部18bは、基板10から浮いており、基板10に接触していない。すなわち、非接触部18bと基板10との間には、立ち上がり部18aの長さに相当する隙間が設けられている。立ち上がり部18aは、基板10を上ケース120で覆った場合に、非接触部18bと上ケース120との間に隙間が設けられるような長さに構成されている。非接触部18bと上ケース120との間に隙間が設けられることにより、上ケース120が物体に接触した場合に、非接触部18bひいては基板10に、衝撃が伝わることが抑制される。
【0042】
MPU620は、充電端子13及びシリアル通信端子15から所定の距離を空けて右側に設けられているとともに、バスバー18から所定の距離を空けて上側に設けられている。AFE610は、MPU620から所定の距離を空けて右側に設けられているとともに、バスバー18から所定の距離を空けて上側に設けられている。
【0043】
また、左右方向において、MPU620及びAFE610は、非接触部18bの左端部と右端部の間に配置されている。すなわち、MPU620の左端部は、非接触部18bの左端部よりも右側に配置されている。AFE610の右端部は、非接触部18bの右端部よりも左側に配置されている。
【0044】
さらに、図5に示すように、上下方向において、MPU620は、センターラインCLを跨ぐように配置されている。AFE610は、センターラインCLよりも上側に配置されており、バスバー18は、センターラインCLよりも下側に配置されている。センターラインCLは、基板10の上下方向の中央を通るラインである。
【0045】
バッテリ接続部110に作業機接続部50が接続されると、正極タブ60aから、SCP回路81を介して、バッテリ正極端子11へ放電電流が流れる。そして、バッテリ正極端子11から、電動作業機500を介してバッテリ負極端子12へ放電電流が流れる。さらに、バッテリ負極端子12から、バスバー18及びシャント抵抗器67を介して、負極タブ60bへ放電電流が流れる。
【0046】
ここで、抵抗成分を有する素子(以下、発熱素子と称する)に電流が流れると、素子が発熱する。特に、放電電流は、充電電流よりも1桁以上電流値が大きいため、素子の発熱量が大きくなる。基板10上の部品では、バッテリ正極端子11、バッテリ負極端子12、SCP回路81、シャント抵抗器67、及びバスバー18が発熱素子に相当する。
【0047】
電動作業機500の内部には、冷却用のファンが設けられていることが多い。そのため、電動作業機500では、発熱素子が発生した熱が制御回路等の電子部品に影響を与える可能性は低い。
【0048】
これに対して、バッテリパック100では、発熱素子が、MPU620及びAFE610と同じ基板10に搭載されている。また、バッテリパック100を小型化するため、バッテリパック100の内部には、冷却用のファンは設けられていない。そのため、基板10上のMPU620及びAFE610は、発熱素子が発生する熱の影響を受けやすい。MPU620及びAFE610の温度が、熱の影響を受けて許容温度値を超えると、MPU620及びAFE610の動作に支障が生じる可能性がある。
【0049】
MPU620及びAFE610は、特に、MPU620及びAFE610の近くに配置される発熱素子からの熱の影響を受ける。本実施形態では、MPU620及びAFE610の近くに配置される発熱素子は、バッテリ負極端子12をシャント抵抗器67との間を繋ぐ配線である。
【0050】
銅パターンは薄く断面積が小さいため抵抗成分が比較的大きく、発熱量が比較的大きい。よって、上記配線を導体パターン(具体的には、銅パターン)で構成した場合、バッテリ負極端子12、シャント抵抗器67及び銅パターンにおいて発生した発熱量は比較的大きくなる。
【0051】
さらに、銅パターンは、比較的熱伝導率が高いため、バッテリ負極端子12、シャント抵抗器67による発熱影響を受け易い。そのため、MPU620及びAFE610の近くに、銅パターンの配線を配置すると、バッテリ負極端子12、シャント抵抗器67及び銅パターンにおいて発生した比較的大きい発熱量の熱が、あまり放熱されずに、銅パターンからMPU620及びAFE610へ伝達される。その結果、MPU620及びAFE610へ伝達する熱量が大きくなる。
【0052】
これに対して、本実施形態では、バッテリ負極端子12をシャント抵抗器67とバスバー18を介して接続している。そして、MPU620及びAFE610の近くにバスバー18を配置している。バスバー18は、銅パターンと比べて、厚く断面積が大きいため抵抗成分が比較的小さく、発熱量が比較的小さくなる。
【0053】
さらに、バスバー18を実装することで銅パターンを省くことができ、バッテリ負極端子12やシャント抵抗器67による熱が、銅パターンを介してMPU620及びAFE610に伝達されることを抑制することができる。また、バスバー18の非接触部18bは、基板10に接触しておらず、非接触部18bと基板10との間に隙間が設けられている。そのため、バスバー18の全体が基板10と接触している場合よりも、バスバー18からMPU620及びAFE610までの熱の伝達距離が長くなる。よって、バスバー18の全体が基板10と接触している場合よりも、熱がMPU620及びAFE610に伝わりづらい。
【0054】
そのため、本実施形態では、導体パターンによる発熱影響を抑制できるとともに、バッテリ負極端子12およびシャント抵抗器67による発熱がMPU620及びAFE610へ伝達されることを抑制できる。
【0055】
また、バスバー18は、基板10よりも強度が高い部材で構成されており、基板10の長手方向に延伸している。そのため、バスバー18の搭載により、基板10のたわみが抑制され、基板10の構造が強化される。
【0056】
また、バスバー18は、シャント抵抗器67と同じ板厚で一体的に構成されていてもよい。すなわち、バスバー18が、シャント抵抗器67を含んでいてもよい。
<3.効果>
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0057】
(1)バッテリ負極端子12と負極タブ60bとの間の放電経路にバスバー18が設けたことにより、MPU620及びAFE610への熱の伝達量を低減して、MPU620及びAFE610への熱の影響を抑制することができる。また、基板10上にバスバー18を設けたことにより、基板10のたわみを抑制し、基板10の構造を強化することができる。
【0058】
(2)バッテリ負極端子12と負極タブ60bとの間の放電経路にシャント抵抗器67を設けたことにより、シャント抵抗器67が発生した熱が、バスバー18へ伝わりバスバー18から放熱される。よって、シャント抵抗器67が発生する熱が、MPU620及びAFE610へ伝わることを好適に抑制できる。
【0059】
(3)バスバー18の非接触部18bが、基板10に接触していないことにより、バスバー18からMPU620及びAFE610への熱の伝達をより抑制することができる。
【0060】
(4)バスバー18をシャント抵抗器67と一体で構成した場合、基板10上の部品数を低減することができる。ひいては、基板10の小型化を図ることができる。
(他の実施形態)
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0061】
(a)上記実施形態では、バスバー18の表面と上ケース120との間に隙間を設けていたが、本開示は、これに限定されるものではない。図8に示すように、バスバー18の上に放熱シート185を設けてもよい。放熱シート185は、バスバー18の表面と上ケース120の内面とに接触するように設けられる。放熱シート185は、例えば、シリコンで構成されている。上ケース120に加わった衝撃は、放熱シート185により吸収され、基板10に衝撃が伝達することを抑制できる。また、放熱シート185により、バスバー18からの放熱をより促進することができる。
【0062】
(b)上記実施形態では、抵抗成分を有する素子として、基板10上に、各種端子と、SCP回路81と、シャント抵抗器67が設けられていたが、抵抗成分を有する素子はこれに限定されない。例えば、抵抗成分を有する素子として、電界効果トランジスタ(以下、FET)が、基板10上に設けられていてもよい。FETは、正極ライン101及び/又は負極ライン102に、充電電流又は放電電流を遮断するために設けられてもよい。
【0063】
(c)上記実施形態では、負極ライン102上にバスバー18が設けられていたが、正極ライン101上にバスバー18が設けられていてもよいし、負極ライン102上及び正極ライン101上の双方にバスバー18が設けられてもよい。基板10上の部品の配置に応じて、MPU620及びAFE610の近くに配置されるライン上にバスバー18を設ければよい。
【0064】
(d)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…基板、11…バッテリ正極端子、12…バッテリ負極端子、13…充電端子、14…第1通信端子、15…シリアル通信端子、16…第2通信端子、18…バスバー、18a…立ち上がり部、18b…非接触部、60…バッテリ、60a…正極タブ、60b…負極タブ、67…シャント抵抗器、67a…第1抵抗器、67b…第2抵抗器、67c…第3抵抗器、81…SCP回路、81a…第1SCP回路、81b…第2SCP路、100…バッテリパック、101…正極ライン、102…負極ライン、110…バッテリ接続部、111…第1挿入口、112…第2挿入口、113…第3挿入口、114…第4挿入口、120…上ケース、130…下ケース、185…放熱シート、500…電動作業機、610…AFE、620…MPU。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8