IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 能美防災株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-炎検知システム 図1
  • 特許-炎検知システム 図2
  • 特許-炎検知システム 図3
  • 特許-炎検知システム 図4
  • 特許-炎検知システム 図5
  • 特許-炎検知システム 図6
  • 特許-炎検知システム 図7
  • 特許-炎検知システム 図8
  • 特許-炎検知システム 図9
  • 特許-炎検知システム 図10
  • 特許-炎検知システム 図11
  • 特許-炎検知システム 図12
  • 特許-炎検知システム 図13
  • 特許-炎検知システム 図14
  • 特許-炎検知システム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】炎検知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240426BHJP
   G08B 17/12 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
G08B17/00 L
G08B17/12 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020060259
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021157743
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔
(72)【発明者】
【氏名】山本 博明
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-158291(JP,U)
【文献】特開平01-217595(JP,A)
【文献】特開2002-131127(JP,A)
【文献】特開平11-064107(JP,A)
【文献】特開2009-281863(JP,A)
【文献】特開2017-126812(JP,A)
【文献】特開2018-169893(JP,A)
【文献】特開昭60-118999(JP,A)
【文献】特開2019-74837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C2/00-99/00
G01J1/00-1/60
5/00-5/90
11/00
G08B17/00-17/12
23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサにより光の強度を測定する測定部と、
前記測定部により測定された光の強度に基づき炎を検知する炎検知部と、
前記測定部の測定結果に影響を与える環境要因が安定している期間を特定する安定期間特定部と、
前記安定期間特定部が特定した期間中に前記測定部が測定した光の強度を示すデータを、ノイズを示すデータとして記憶する記憶部と
を備える炎検知システム。
【請求項2】
前記安定期間特定部は、前記測定部の測定結果に基づき、環境要因が安定している期間を特定する
請求項1に記載の炎検知システム。
【請求項3】
前記センサを第1のセンサとするとき、周囲の物理量を測定する前記第1のセンサとは異なる第2のセンサを備え、
前記安定期間特定部は、前記第2のセンサの測定結果に基づき、環境要因が安定している期間を特定する
請求項1に記載の炎検知システム。
【請求項4】
前記第2のセンサは、前記測定部から所定距離の範囲内に配置された前記測定部と同種の装置が備えるセンサである
請求項3に記載の炎検知システム。
【請求項5】
温度を測定する温度計と、
前記安定期間特定部が特定した期間中に前記測定部が測定した光の強度を、前記温度計により測定された温度に基づき補正する補正部と
を備え、
前記記憶部は、前記補正部による補正後の強度を示すデータを、ノイズを示すデータとして記憶する
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の炎検知システム。
【請求項6】
前記記憶部が記憶しているデータが示すノイズの経時変化に基づき、前記測定部の劣化度を判定する劣化度判定部
を備える請求項1乃至5のいずれか1項に記載の炎検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎検知システムの保守のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
防災システムが劣化により正しく動作しなくなる場合がある。そのような不都合を防止するための様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、火災を検知した場合に火災信号を防災受信盤に対し出力する端末装置と防災受信盤とを接続している信号回線に流れる電流値を監視し、その電流値が大きく変化した場合に、信号回線の絶縁劣化等に起因した故障の予兆と判定し、予兆警報を出力する機能を備えた防災システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-67032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炎が発する光に感応するセンサにより炎を検知する炎検知システムがある。そのような炎検知システムの不具合の原因の一つとして、センサにより光の強度を測定する測定部の部品の劣化がある。例えば、炎検知システムが備える測定部のセンサが劣化すると、センサから出力される信号の振幅値が光の有無とは無関係に不規則な変動を示す場合がある。また、センサが生成する信号を増幅するアンプが劣化すると、アンプにより増幅されたセンサからの信号の振幅値が光の有無とは無関係に定常的に高い値を示す場合がある。
【0005】
上記のような部品の劣化に伴い、炎検知システムが行う炎検知の判定の精度が下がる。従って、測定部の劣化度を知ることができれば、部品の交換等により、炎検知システムに求められる炎検知の判定の精度を維持することができる。
【0006】
このような事情に鑑みて、本発明は、炎検知システムの測定部の劣化度を知ることを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、センサにより光の強度を測定する測定部と、前記測定部により測定された光の強度に基づき炎を検知する炎検知部と、前記測定部の測定結果に影響を与える環境要因が安定している期間を特定する安定期間特定部と、前記安定期間特定部が特定した期間中に前記測定部が測定した光の強度を示すデータを、ノイズを示すデータとして記憶する記憶部とを備える炎検知システムを第1の態様として提供する。
【0008】
第1の態様に係る炎検知システムによれば、記憶されるデータが示すノイズにより炎検知システムの測定部の劣化度が分かる。
【0009】
第1の態様に係る炎検知システムにおいて、前記安定期間特定部は、前記測定部の測定結果に基づき、環境要因が安定している期間を特定する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0010】
第2の態様に係る炎検知システムによれば、環境要因が安定している期間を特定するために別途、センサを設ける必要がない。
【0011】
第1の態様に係る炎検知システムにおいて、前記センサを第1のセンサとするとき、周囲の物理量を測定する前記第1のセンサとは異なる第2のセンサを備え、前記安定期間特定部は、前記第2のセンサの測定結果に基づき、環境要因が安定している期間を特定する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0012】
第3の態様に係る炎検知システムによれば、第2のセンサを備えることで、第1のセンサに外乱光が安定的に照射されている期間を、環境要因が安定している期間から除外することができるため、第2のセンサを備えない場合と比較し、記憶されるノイズを示すデータの信頼性が高い。
【0013】
第3の態様に係る炎検知システムにおいて、前記第2のセンサは、前記測定部から所定距離の範囲内に配置された前記測定部と同種の装置が備えるセンサである、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0014】
例えば、車両の走行方向に沿って間隔を空けて配置されている複数の同種の測定部を備える既存の炎検知システムがある場合、或る測定部の環境要因が安定している期間を、その測定部の近くに配置されている他の測定部のセンサを用いて特定することによって、既存の炎検知システムに物理的変更を行うことなく、第4の態様に係る炎検知システムが実現される。
【0015】
第1乃至第4のいずれかの態様に係る炎検知システムにおいて、温度を測定する温度計と、前記安定期間特定部が特定した期間中に前記測定部が測定した光の強度を、前記温度計により測定された温度に基づき補正する補正部とを備え、前記記憶部は、前記補正部による補正後の強度を示すデータを、ノイズを示すデータとして記憶する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0016】
第5の態様に係る炎検知システムによれば、測定部が測定する光の強度が温度の影響により誤差を生じる場合であっても、ノイズを示すデータの信頼性が保たれる。
【0017】
また、本発明は、第1乃至第5のいずれかの態様に係る炎検知システムにおいて、前記記憶部が記憶しているデータが示すノイズの経時変化に基づき、前記測定部の劣化度を判定する劣化度判定部を備える、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0018】
第6の態様に係る炎検知システムによれば、炎検知システムの測定部の劣化度が判定される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、炎検知システムの測定部の劣化度を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係る炎検知システムの全体構成を示した図。
図2】一実施形態に係る炎検知器のハードウェア構成を模式的に示した図。
図3】一実施形態に係る炎検知器の機能構成を模式的に示した図。
図4】一実施形態に係る測定値ログテーブルの構成を例示した図。
図5】一実施形態に係る温度補正定数テーブルの構成を例示した図。
図6】一実施形態に係る安定期間特定部が安定期間を特定する方法を説明するためのグラフ。
図7】一実施形態に係る防災受信盤のハードウェア構成を模式的に示した図。
図8】一実施形態に係る防災受信盤の機能構成を模式的に示した図。
図9】一実施形態に係る暗視ノイズテーブルの構成を例示した図。
図10】一実施形態に係る劣化度判定装置が劣化度の判定及び劣化している部品の推定を行う方法を説明するためのグラフ。
図11】一実施形態に係る劣化度判定装置が劣化度の判定及び劣化している部品の推定を行う方法を説明するためのグラフ。
図12】一実施形態に係る劣化診断結果テーブルの構成を例示した図。
図13】一実施形態に係る端末装置が表示する劣化診断画面を例示した図。
図14】一変形例に係る炎検知器のハードウェア構成を模式的に示した図。
図15】一変形例に係る炎検知器の機能構成を模式的に示した図。
【0021】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態に係る炎検知システム1を説明する。図1は炎検知システム1の全体構成を示した図である。炎検知システム1はトンネルTNで発生する炎を検知するシステムである。
【0022】
炎検知システム1は、トンネルTNの内部に車両の走行方向に沿って概ね等間隔に設置されているn個の炎検知器、すなわち、炎検知器11(1)、11(2)、11(3)、・・・、11(n)を備える。以下、これらn個の炎検知器を炎検知器11と総称する。
【0023】
炎検知器11の各々には、実質的に2つの炎検知器が統合されている。具体的には、炎検知器11には、炎検知器11から見て右側の所定領域を監視領域とする炎検知器(以下、「右側炎検知器」という)と、左側の所定領域を監視領域とする炎検知器(以下、「左側炎検知器」という)が統合されている。
【0024】
トンネルTNは監視領域A(1)、A(2)、A(3)、・・・、A(n-1)に区分されている。以下、これら(n-1)個の監視領域を監視領域Aと総称する。監視領域Aの各々は、隣り合う2つの炎検知器11により重複して監視される。例えば、監視領域A(1)は、炎検知器11(1)の左側炎検知器と、炎検知器11(2)の右側炎検知器により監視される。そのため、仮に隣り合う2つの炎検知器11のいずれか一方が故障しても、他方が同時に故障しない限り、監視領域Aに対する監視が途絶えることはない。
【0025】
炎検知システム1は、炎検知器11に加え、炎検知器11の各々と通信接続された防災受信盤12と、防災受信盤12と通信接続されたサーバ装置13と、サーバ装置13と通信可能な端末装置14を備える。
【0026】
図2は、炎検知器11のハードウェア構成を模式的に示した図である。炎検知器11はコンピュータ101と、コンピュータ101に接続された4つのセンサ、すなわち、センサ111R、センサ112R、センサ111L、センサ112Lと、4つのセンサの各々に応じた4つのアンプ、すなわち、アンプ113R、アンプ114R、アンプ113L、アンプ114Lと、コンピュータ101に接続された温度計115を備える。
【0027】
センサ111Rとセンサ112Rは炎検知器11から見て右側の監視領域Aを監視するための光センサである。センサ111Lとセンサ112Lは炎検知器11から見て左側の監視領域Aを監視するための光センサである。
【0028】
センサ111Rとセンサ111Lは、炎(熱源)が発する長波長側の波長帯に高い感度で応答する長波長側光センサである。センサ111Rとセンサ111Lとしては、例えば、焦電素子を用いた光センサが採用される。以下、センサ111Rとセンサ111Lをセンサ111と総称する。
【0029】
センサ112Rとセンサ112Lは、炎(熱源)が発する短波長側の波長帯に高い感度で応答する短波長側光センサである。センサ112Rとセンサ112Lとしては、例えば、フォトダイオードを用いた光センサが採用される。以下、センサ112Rとセンサ112Lをセンサ112と総称する。
【0030】
アンプ113Rはコンピュータ101とセンサ111Rの間に接続され、センサ111Rが光に感応して生成する信号を増幅する。アンプ114Rはコンピュータ101とセンサ112Rの間に接続され、センサ112Rが光に感応して生成する信号を増幅する。アンプ113Lはコンピュータ101とセンサ111Lの間に接続され、センサ111Lが光に感応して生成する信号を増幅する。アンプ114Lはコンピュータ101とセンサ112Lの間に接続され、センサ112Rが光に感応して生成する信号を増幅する。
【0031】
センサ111Rと、アンプ113Rと、それらを接続する配線及び接点と、アンプ113Rとコンピュータ101を接続する配線及び接点は、1つの測定部を構成する。また、センサ112Rと、アンプ114Rと、それらを接続する配線及び接点と、アンプ114Rとコンピュータ101を接続する配線及び接点は、1つの測定部を構成する。また、センサ111Lと、アンプ113Lと、それらを接続する配線及び接点と、アンプ113Lとコンピュータ101を接続する配線及び接点は、1つの測定部を構成する。また、センサ112Lと、アンプ114Lと、それらを接続する配線及び接点と、アンプ114Lとコンピュータ101を接続する配線及び接点は、1つの測定部を構成する。
【0032】
以下の説明において、センサ111又はセンサ112から出力された信号、という場合、特に断らない限り、センサ111又はセンサ112から出力され、アンプ113又はアンプ114により増幅された信号を意味する。
【0033】
温度計115は炎検知器11の筐体内の温度を測定し、測定した温度を示す温度データをコンピュータ101に出力する。
【0034】
コンピュータ101は、プログラムに従いデータ処理を行うプロセッサ1011と、プログラムを含む各種データを記憶するメモリ1012と、4つのアンプを介して4つのセンサから信号の入力を受けるとともに温度計115から温度データの入力を受ける入出力インタフェース1013と、防災受信盤12との間でデータ通信を行う通信インタフェース1014を備える。
【0035】
なお、炎検知器11は、図2に示す構成部に加え、4つのセンサが出力したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器等の構成部を備えるが、それらは本発明の特徴と無関係であるため、図2において省略されており、以下の説明においてもそれらの説明は省略する。
【0036】
図3は、炎検知器11の機能構成を模式的に示した図である。すなわち、コンピュータ101のプロセッサ1011が本実施形態に係るプログラムに従う処理を実行することにより、図3に符号116で示される判定装置を備える炎検知器11が実現される。以下、判定装置116の機能構成を説明する。
【0037】
判定装置116はセンサ111Rとセンサ112Rから出力される信号を用いて炎検知の判定を行う判定装置116Rと、センサ111Lとセンサ112Lから出力される信号を用いて炎検知の判定を行う判定装置116Lを備える。判定装置116Rと判定装置116Lの構成は共通しているため、以下、例として、判定装置116Rの構成を説明し、判定装置116Lの構成の説明は省略する。
【0038】
判定装置116Rは、記憶部1161R、取得部1162R、補正部1163R、安定期間特定部1164R、炎検知部1165R、送受信部1166R、計時部1167Rを備える。
【0039】
記憶部1161Rはプロセッサ1011の制御下で動作するメモリ1012により実現される。記憶部1161Rは各種データを記憶する。記憶部1161Rが記憶するデータには、測定値ログテーブル、温度補正定数テーブル、定常補正定数データが含まれる。
【0040】
図4は、測定値ログテーブルの構成を例示した図である。測定値ログテーブルはセンサ111R及びセンサ112Rの各々に応じて準備されている。測定値ログテーブルには、「時刻」欄、「温度」欄、「強度(実測)」欄、「強度(温度補正後)」欄、「強度(定常補正後)」欄が設けられている。「時刻」欄には、センサから信号が出力されたときに計時部1167Rが測定した時刻が格納される。「温度」欄には、センサから信号が出力されたときに温度計115が測定した温度が格納される。「強度(実測)」欄には、センサから出力された信号の振幅値が格納される。「強度(温度補正後)」欄には、補正部1163Rが後述する温度補正定数を用いて「強度(実測)」欄に格納されている振幅値を補正した値が格納される。「強度(定常補正後)」欄には、補正部1163Rが後述する定常補正定数を用いて「強度(温度補正後)」欄に格納されている振幅値を補正した値が格納される。
【0041】
図5は、温度補正定数テーブルの構成を例示した図である。温度補正定数テーブルはセンサ111R及びセンサ112Rの各々に応じて準備されている。温度補正定数テーブルには、「温度」及び「温度補正定数」の欄が設けられている。「温度」欄には様々な温度が格納されている。「温度補正定数」欄には、「温度」欄に格納されている温度に応じた温度補正定数が格納されている。センサ111R及びセンサ112Rが生成する信号の振幅値には、温度の影響によるバイアスがかかっている。温度補正定数は、センサ111R又はセンサ112Rが生成する信号の振幅値から減じることで温度の影響によるバイアスをキャンセルするための値であり、予めセンサ111R又はセンサ112Rを用いた実験により測定された値である。
【0042】
定常補正定数データは、定常補正定数を示すデータである。センサ111R及びセンサ112Rが生成する信号の振幅値には、上述した温度の影響によるバイアスに加え、温度とは無関係なバイアスもかかっている。定常補正定数は、センサ111R又はセンサ112Rが生成する信号の振幅値から減じることで温度とは無関係なバイアスをキャンセルするための値である。本実施形態においては、後述する暗視ノイズデータが示す振幅値の平均値が定常補正定数として用いられる。
【0043】
炎検知器11の機能構成(図3)の説明を続ける。取得部1162Rはプロセッサ1011の制御下で動作する入出力インタフェース1013により実現される。取得部1162Rは、センサ111Rから出力された信号と、センサ112Rから出力された信号を継続的に取得する。取得部1162Rにより取得されたそれらの信号の振幅値は、その時点における時刻及び温度と共に測定値ログテーブルに格納される。
【0044】
補正部1163Rはプロセッサ1011により実現される。補正部1163Rは、測定値ログテーブルの「時刻」欄、「温度」欄及び「強度(実測)」欄に新たなデータが格納されると、温度補正定数テーブルを参照して、「温度」欄に格納されている温度に応じた温度補正定数を特定し、「強度(実測)」欄に格納されている振幅値から温度補正定数を減じた値を「強度(温度補正後)」欄に格納する。続いて、補正部1163Rは、「強度(温度補正後)」欄に格納した値から定常補正定数を減じた値を「強度(定常補正後)」欄に格納する。
【0045】
安定期間特定部1164Rはプロセッサ1011により実現される。安定期間特定部1164Rは、センサ111Rとセンサ112Rの各々に関し、それらのセンサに応じた測定値ログテーブルに格納されているデータに基づき、それらのセンサの測定結果に影響を与える環境要因が安定している期間(以下、「安定期間」という)を特定する。
【0046】
図6は、安定期間特定部1164Rが安定期間を特定する方法を説明するためのグラフである。図6のグラフは、例えばセンサ111に応じた測定値ログテーブルの「強度(実測)」欄に格納されている振幅値が示す、光の強度の経時変化を示している。なお、図6のグラフは数分程度の短期間に関するグラフであるため、「強度(実測)」欄に格納されている振幅値に代えて、「強度(温度補正後)」欄又は「強度(定常補正後)」欄に格納されている値が用いられてもよい。
【0047】
安定期間特定部1164Rは、測定値ログテーブルに格納されているデータに基づき、継続して強度の変動が所定の閾値以内である状態が所定時間(例えば、1分)以上継続している期間を安定期間と特定する。図6のグラフの例による場合、安定期間特定部1164Rは期間Q1を安定期間と特定する。
【0048】
炎検知器11の機能構成(図3)の説明を続ける。炎検知部1165Rはプロセッサ1011により実現される。炎検知部1165Rは、測定値ログテーブルを参照し、センサ111Rから出力された信号の振幅値(「強度(定常補正後)」欄の値)と、センサ112Rから出力された信号の振幅値(「強度(定常補正後)」欄の値)とが所定の条件を満たすと判定した場合、炎が検知されていることを示すデータを記憶部1161Rに記憶させる。また、炎検知部1165Rは、その条件が満たされないと判定した場合、炎が検知されていないことを示すデータを記憶部1161Rに記憶させる。
【0049】
炎検知部1165Rが炎検知の判定のために用いる条件の例を以下に示す。
(条件1)センサ111Rから出力された信号の振幅値が閾値T1以上である。
(条件2)センサ112Rから出力された信号の振幅値が閾値T2以上である。
(条件3)センサ112Rから出力された信号の振幅値に対するセンサ111Rから出力された信号の振幅値の比率が閾値T3以上、かつ、閾値T4以下(ただし、T3<T4)である。
【0050】
炎検知部1165Rは、上記の条件1~3の全てが、過去の所定時間長(例えば10秒間)の期間内に所定回数以上、満たされた場合、炎が発生していると判定する。
【0051】
送受信部1166Rはプロセッサ1011の制御下で動作する通信インタフェース1014により実現される。送受信部1166Rは、記憶部1161Rに炎が検知されていることを示すデータが格納されている間、防災受信盤12に対し、炎検知信号を継続的に出力する。また、送受信部1166Rは、測定値ログテーブルに格納されているデータのうち、安定期間特定部1164Rにより特定された安定期間中のデータを、ノイズを示すデータ(以下、「暗視ノイズデータ」という)として防災受信盤12に出力する。
【0052】
また、送受信部1166Rは、防災受信盤12から送信されてくる定常補正定数データを受信する。送受信部1166Rが受信した定常補正定数データは、既に記憶部1161Rに記憶されている定常補正定数データに上書きされる。
【0053】
計時部1167Rはプロセッサ1011により実現される。計時部1167Rは基準時刻からの経過時間を継続的に計測し、現在時刻を特定し、特定した現在時刻を示す時刻信号を生成する。
【0054】
炎検知システム1を構成する防災受信盤12(図1)は、トンネルTN内に設置され、炎検知器11から炎検知信号を受信した場合、表示や発音により周りの人々に警報を行うとともに、サーバ装置13に炎が検知された旨の通知を送信する装置である。防災受信盤12は、そのような一般的な防災受信盤の機能に加え、炎検知器11から出力される暗視ノイズデータに基づき、炎検知器11の劣化度を判定する機能を備える。
【0055】
図7は、防災受信盤12のハードウェア構成を模式的に示した図である。防災受信盤12はコンピュータ102と、コンピュータ102に接続されたディスプレイ121及び操作ユニット122を備える。
【0056】
コンピュータ102は、プログラムに従いデータ処理を行うプロセッサ1021と、プログラムを含む各種データを記憶するメモリ1022と、ディスプレイ121及び操作ユニット122との間で信号の入出力を行う入出力インタフェース1023と、n個の炎検知器11及びサーバ装置13との間でデータ通信を行う通信インタフェース1024を備える。
【0057】
図8は、防災受信盤12の機能構成を模式的に示した図である。すなわち、コンピュータ102のプロセッサ1021が本実施形態に係るプログラムに従う処理を実行することにより、図8に符号123で示される劣化度判定装置を備える防災受信盤12が実現される。以下、劣化度判定装置123の機能構成を説明する。
【0058】
劣化度判定装置123は、記憶部1231、取得部1232、劣化度判定部1233、送信部1234、表示制御部1235、操作受付部1236を備える。
【0059】
記憶部1231はプロセッサ1021の制御下で動作するメモリ1022により実現され、各種データを記憶する。例えば、炎検知器11から送信され取得部1232が取得した暗視ノイズデータは記憶部1231に記憶される。図9は、記憶部1231が暗視ノイズデータを格納するために記憶しているテーブル(以下、「暗視ノイズテーブル」という)の構成を例示した図である。記憶部1231には、複数の炎検知器11の各々に関し、4つのセンサの各々に応じた暗視ノイズテーブルが記憶される。
【0060】
暗視ノイズテーブルには「日時」欄、「暗視ノイズデータ」欄、「平均値」欄、「標準偏差」欄、「データ異常」欄という項目が設けられている。「日時」欄には、例えば、暗視ノイズデータが示す暗視期間の最初の日時が格納される。また、「暗視ノイズデータ」欄には、暗視ノイズデータが格納される。なお、個々の暗視ノイズデータは、測定値ログテーブル(図4)から一部を抜き出したデータであるため、複数のレコードを含む。「平均値」欄には暗視ノイズデータの「強度(温度補正後)」欄に格納されている値の平均値が格納される。「標準偏差」欄には暗視ノイズデータの「強度(温度補正後)」欄に格納されている値の標準偏差が格納される。「データ異常」欄には「暗視ノイズデータ」欄に格納されている暗視ノイズデータが異常なデータであるか否かを示すデータが格納される。
【0061】
防災受信盤12の機能構成(図8)の説明に戻る。取得部1232はプロセッサ1021の制御下で動作する通信インタフェース1024により実現される。取得部1232はn個の炎検知器11の各々から炎検知信号と暗視ノイズデータを取得する。取得部1162により取得された暗視ノイズデータは暗視ノイズテーブルに格納される。
【0062】
劣化度判定部1233はプロセッサ1021により実現される。劣化度判定部1233は、いずれかの暗視ノイズテーブルに新しい暗視ノイズデータが格納されると、その暗視ノイズデータの「強度(温度補正後)」欄に格納されている値の平均値と標準偏差を算出し、暗視ノイズテーブルの該当する欄に格納する。また、劣化度判定部1233は、暗視ノイズテーブルに格納されている暗視ノイズデータのうち、平均値又は標準偏差が前後の他の暗視ノイズデータの平均値又は標準偏差から所定の閾値以上に乖離しているものを異常なデータと判定し、「データ異常」欄にその判定結果を示すデータを格納する。
【0063】
また、劣化度判定部1233は、複数の炎検知器11の各々の4つのセンサの各々に関し、それらのセンサに応じた暗視ノイズテーブルに格納されているデータ(「データ異常」欄にデータが異常であることを示すデータが格納されているレコードのデータを除く)に基づき、以下の判定及び推定を行う。
【0064】
(1)直近の暗視ノイズデータが示す強度の平均値が所定の閾値A1以上であれば、部品の交換が必要である、と判定する。また、アンプを交換すべき部品として推定する。
(2)直近の暗視ノイズデータが示す強度の標準偏差が所定の閾値B1以上であれば、部品の交換が必要である、と判定する。また、センサを交換すべき部品として推定する。
(3)過去の所定期間における、暗視ノイズデータが示す強度の平均値の経時変化に基づき推定される、強度の平均値が所定の閾値A1に達する日が現在から所定日数以内であれば、近々、部品の交換が必要となる、と判定する。また、アンプを交換すべき部品として推定する。
(4)過去の所定期間における、暗視ノイズデータが示す強度の標準偏差の経時変化に基づき推定される、強度の標準偏差が所定の閾値B1に達する日が現在から所定日数以内であれば、近々、部品の交換が必要となる、と判定する。また、センサを交換すべき部品として推定する。
【0065】
図10及び図11は、劣化度判定装置123が上記の判定及び推定を行う方法を説明するためのグラフである。図10(a)及び図11(a)のグラフは、暗視ノイズテーブルの「日時」欄と「平均値」欄の値に応じた点を近似する曲線である。なお、曲線のうち実線の部分は現在までの平均値の推移を示し、一点鎖線の部分は将来予測される平均値の推移を示している。
【0066】
図10(b)及び図11(b)のグラフは、暗視ノイズテーブルの「日時」欄と「標準偏差」欄の値に応じた点を近似する曲線である。なお、曲線のうち実線の部分は現在までの標準偏差の推移を示し、一点鎖線の部分は将来予測される標準偏差の推移を示している。
【0067】
図10(a)のグラフは、現在の日時d1において、暗視ノイズデータが示す強度の平均値が閾値A1に達していないことを示している。また、図10(b)のグラフは、現在の日時d1において、暗視ノイズデータが示す強度の標準偏差が閾値B1に達していないことを示す。従って、これらのデータに基づく場合、劣化度判定部1233はこれらのデータに応じたセンサ又はそのセンサに接続されているアンプに関し、交換不要と判定する。
【0068】
また、図10(a)のグラフは、現在の日時d1から所定日数D1以内の日時d2において、暗視ノイズデータが示す強度の平均値が閾値A1に達すると推定されることを示している。また、図10(b)のグラフは、現在の日時d1から所定日数D1以内には、暗視ノイズデータが示す強度の標準偏差が閾値B1に達しないと推定されることを示している。従って、これらのデータに基づく場合、劣化度判定部1233はこれらのデータに応じたセンサ又はそのセンサに接続されているアンプに関し、近々、交換が必要になる、と判定し、その場合、交換すべき部品はアンプである、と推定する。
【0069】
図11(a)のグラフは、現在の日時d1において、暗視ノイズデータが示す強度の平均値が閾値A1に達していないことを示している。また、図11(b)のグラフは、現在の日時d1において、暗視ノイズデータが示す強度の標準偏差が閾値B1に達していることを示す。従って、これらのデータに基づく場合、劣化度判定部1233はこれらのデータに応じたセンサ又はそのセンサに接続されているアンプに関し、交換が必要と判定し、交換すべき部品はセンサである、と推定する。
【0070】
劣化度判定部1233は、上記のように行う判定及び推定の結果を示すデータを記憶部1231に記憶させる。図12は、劣化度判定部1233が行った判定及び推定の結果を示すデータを格納するためのテーブル(以下、「劣化診断結果テーブル」という)の構成を例示した図である。劣化診断結果テーブルには、「装置ID」欄、「右側長波長」欄、「右側短波長」欄、「左側長波長」欄、「左側短波長」欄が設けられている。「装置ID」欄には炎検知器11の識別情報が格納される。「右側長波長」欄、「右側短波長」欄、「左側長波長」欄、「左側短波長」欄は各々、センサ111R、センサ112R、センサ111L、センサ112Lに応じた欄であり、それらのセンサに関し、例えば、以下の(a)~(c)のいずれかの形式に従ったデータが格納される。
【0071】
(a)「正常」:現在、部品の交換が不要であり、かつ、今から所定日数D1以内にも部品の交換が不要であることを示す。
(b)「要交換(##)」:現在、部品の交換が必要であり、「##」に示される部品(センサとアンプのいずれか一方、又は、両方)の交換が必要と推定されることを示す。
(c)「近々要交換(##)(○○月○○日)」:○○月○○日頃に部品の交換が必要となると推定され、その場合、「##」に示される部品(センサとアンプのいずれか一方、又は、両方)の交換が必要となると推定されることを示す。
【0072】
防災受信盤12の機能構成(図8)の説明に戻る。送信部1234はプロセッサ1021の制御下で動作する通信インタフェース1024により実現される。送信部1234は暗視ノイズテーブルと劣化診断結果テーブルをサーバ装置13に送信する。また、送信部1234は、例えば定期的に、暗視ノイズテーブルの直近のレコード(「データ異常」欄にデータが異常であることを示すデータが格納されているレコードを除く)の「平均値」欄の値を示すデータを、定常補正定数データとして炎検知器11に送信する。
【0073】
表示制御部1235はプロセッサ1021により実現される。表示制御部1235はディスプレイ121に各種画像を表示させるための制御を行う。例えば、いずれかの炎検知器11から炎検知信号を受信すると、表示制御部1235は「炎検知 エリア##」という文字を表す画像データを生成し、ディスプレイ121にその画像データが表す画像を表示させる。ここで、「エリア##」は炎を検知した炎検知器11の右側炎検知器又は左側炎検知器に応じた監視領域Aの識別情報である。
【0074】
操作受付部1236はプロセッサ1021の制御下で動作する入出力インタフェース1023により実現される。操作受付部1236は保守員等のユーザが操作ユニット122に対し行う操作を受け付ける。なお、ユーザが操作ユニット122を用いて防災受信盤12に対し行う操作には、例えば、炎検知時に防災受信盤12が制御する消火装置の動作開始を指示するための操作等が含まれる。
【0075】
以上が防災受信盤12の説明である。サーバ装置13(図1参照)は、Webサーバ機能を備える一般的なサーバ装置であるため、そのハードウェア構成及び機能構成の説明を省略する。
【0076】
端末装置14(図1参照)は、保守員により用いられる端末装置である。端末装置14はWebブラウザ機能を備える一般的な端末装置であるため、そのハードウェア構成及び機能構成の説明を省略する。
【0077】
サーバ装置13は、防災受信盤12から暗視ノイズテーブルと劣化診断結果テーブルを受信し、受信したそれらのデータを記憶する。また、サーバ装置13は、端末装置14からの要求に応じて、図13に示すような画面(以下、「劣化診断画面」という)の表示を指示する表示指示データ(例えば、HTMLデータ)を生成し、端末装置14に送信する。端末装置14は、サーバ装置13から送信されてくる表示指示データに従い劣化診断画面を表示する。
【0078】
劣化診断画面には、現在、部品の交換を要する炎検知器11に関する情報を表示するテーブルと、近々、部品の交換が必要になると推定される炎検知器11に関す情報を表示するテーブルが含まれる。保守員は、劣化診断画面を見て、保守作業の必要な炎検知器11を容易に知ることができる。
【0079】
また、保守員が劣化診断画面の表のいずれかの行に対しタッチ操作又はクリック操作を行うと、端末装置14はその行に対応するセンサの識別情報を含む要求をサーバ装置13に送信する。サーバ装置13は端末装置14からの要求に応じて、要求に含まれる識別情報により識別されるセンサに関するグラフを含む画面(以下、「グラフ表示画面」という)の表示を指示する表示指示データを生成し、端末装置14に送信する。グラフ表示画面に含まれるグラフとは、図10又は図11に示したようなグラフである。端末装置14は、サーバ装置13から送信されてくる表示指示データに従いグラフ表示画面を表示する。保守員は、グラフ表示画面を見て、部品の交換が現在又は近い将来に必要とされる炎検知器11の劣化の状態を確認することができる。
【0080】
[変形例]
上述の実施形態は本発明の一具体例であって、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形可能である。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0081】
(1)上述した炎検知システム1が備える炎検知器11の安定期間特定部1164は、センサ111又はセンサ112の測定結果に基づき安定期間を特定する。安定期間特定部1164が安定期間を特定する方法はこれに限られない。例えば、炎検知器11が周囲の物理量を測定するセンサ(センサ111及びセンサ112と異なるセンサ)を備え、安定期間特定部1164がそのセンサの測定結果に基づき安定期間を特定してもよい。
【0082】
図14は、この変形例に係る炎検知器21のハードウェア構成を模式的に示した図である。炎検知器21は、上述した実施形態に係る炎検知器11(図2参照)が備える構成部に加え、コンピュータ101に接続されたセンサ117(第2のセンサの一例)を備える。センサ117は光学カメラであり、継続的に炎検知器11の周囲を撮影した画像を生成し、生成した画像を表す画像データを出力する。
【0083】
図15は、炎検知器21の機能構成を模式的に示した図である。すなわち、炎検知器21が備えるコンピュータ101のプロセッサ1011が本変形例に係るプログラムに従う処理を実行することにより、図15に符号116で示される判定装置を備える炎検知器21が実現される。炎検知器21が備える判定装置116の取得部1162は、センサ117から出力される画像データを取得する。
【0084】
炎検知器21が備える判定装置116の安定期間特定部1164は、取得部1162により継続的に取得されている画像データが表す画像を時系列上隣り合う画像間で比較して、例えば変化している画素の数が所定の閾値未満である場合はそれらの画像間に変化がない、と判定する。続いて、安定期間特定部1164は、画像間に変化がない状態が所定時間(例えば、1分)以上継続していた期間を安定期間と特定する。
【0085】
炎検知器21によっても、測定値ログテーブルから安定期間のデータが暗視ノイズデータとして取り出され、防災受信盤12に出力される。
【0086】
なお、炎検知器21が備えるセンサ117の種類は光学カメラに限られない。例えば、周囲の音を拾音するマイクがセンサ117として採用されてもよい。この場合、安定期間特定部1164は、センサ117が測定した音の振幅値が所定の閾値以下である状態が所定時間以上継続していた期間を安定期間と特定する。
【0087】
また、周囲の動く物体を検知する物体検知センサがセンサ117として採用されてもよい。この場合、安定期間特定部1164は、センサ117が所定時間以上継続して何も物体を検知しなかった期間を安定期間と特定する。
【0088】
また、振動を検知する振動センサがセンサ117として採用されてもよい。この場合、安定期間特定部1164は、センサ117が測定した振動の振幅値が所定の閾値以下である状態が所定時間以上継続していた期間を安定期間と特定する。
【0089】
また、センサ117は炎検知器11が備えるものでなくてもよい。例えば、センサ117が、炎検知器11から所定距離の範囲内に配置され、炎検知器11と無線又は有線で接続された炎検知器11とは別体の装置であってもよい。
【0090】
また、或る炎検知器11に関し、その炎検知器11から所定距離の範囲内に配置されている他の炎検知器11のセンサ111又はセンサ112がセンサ117として用いられてもよい。例えば、炎検知器11(2)が、炎検知器11(2)の隣に設置されている炎検知器11(1)又は炎検知器11(3)のセンサ111又はセンサ112から出力された信号の振幅値を示すデータを取得し、炎検知器11(2)の安定期間特定部1164がそのデータに基づき、安定期間を特定してもよい。
【0091】
(2)上述した炎検知システム1が備える炎検知器11は二波長式炎検知器であるが、炎検知システム1が備える炎検知器が炎の検知に用いる波長帯の数は3以上であってもよい。
【0092】
(3)上述した炎検知システム1において防災受信盤12が行うものとした処理の一部が炎検知器11、サーバ装置13、又は端末装置14により行われてもよい。例えば、炎検知器11が劣化度判定部1233を備えてもよい。また、上述した炎検知システム1において炎検知器11が行うものとした処理の一部が防災受信盤12、サーバ装置13、又は端末装置14により行われてもよい。
【0093】
(4)上述した炎検知システム1が備える炎検知器11はトンネルTN内の空間を監視するものとしたが、炎検知システム1が監視の対象とする領域はトンネル内に限られない。例えば、炎の発生の危険性がある工場内の空間が炎検知器11により監視されてもよい。
【0094】
(5)上述した炎検知システム1が備える炎検知器11は右側炎検知器と左側炎検知器を備えるが、炎検知器11が1つの領域のみを監視対象とする単眼の炎検知器であってもよい。
【0095】
(6)上述した炎検知システム1において、炎検知器11は防災受信盤12からの要求を待たずに暗視ノイズデータを防災受信盤12に送信するものとしたが、炎検知器11が防災受信盤12からの要求に応じて暗視ノイズデータを防災受信盤12に送信してもよい。
【0096】
(7)上述した炎検知システム1において、図10及び図11のグラフを用いて説明した炎検知器11の劣化度の判定の方法は一例であって、他の様々な方法が採用されてよい。例えば、暗視ノイズデータに含まれる振幅値のばらつきを示す指標として標準偏差の代わりに、分散や変動係数、振幅値の最大値と最小値の差等が用いられてもよい。また、図10及び図11に例示したようなグラフの形状に基づき、劣化度の判定や交換すべき部品の推定等が行われてもよい。例えば、過去の保守作業において交換した部品の種類とその部品の劣化度を目的変数とし、その部品に応じた交換直前の暗視ノイズデータを説明変数とする多数の教師データを用いて機械学習により学習モデルを生成し、運用中の炎検知器11から出力された暗視ノイズデータをその学習モデルに入力して、学習モデルから、交換すべき部品の種類とその部品の劣化度を出力させてもよい。
【0097】
(8)上述した炎検知システム1において、劣化度判定部1233が判定する劣化度とは、(a)現在、部品の交換が必要、(b)近々、部品の交換が必要、(c)正常、という3段階のいずれかである。劣化度判定部1233がこれとは異なる表現形式の劣化度を判定してもよい。例えば、閾値A1に対する、暗視ノイズデータに含まれる振幅値の平均値の比率や、閾値B1に対する、暗視ノイズデータに含まれる振幅値の標準偏差の比率が、炎検知器11の劣化度として用いられてもよい。
【0098】
(9)上述した炎検知システム1において、炎検知器11の部品のうち劣化する可能性のあるものはセンサ及びアンプであるものとしたが、劣化する可能性のある部品はこれらに限られない。例えば、配線や接点等の劣化が疑われてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…炎検知システム、11…炎検知器、12…防災受信盤、13…サーバ装置、14…端末装置、21…炎検知器、101…コンピュータ、102…コンピュータ、111…センサ、112…センサ、113…アンプ、114…アンプ、115…温度計、116…判定装置、117…センサ、121…ディスプレイ、122…操作ユニット、123…劣化度判定装置、1011…プロセッサ、1012…メモリ、1013…入出力インタフェース、1014…通信インタフェース、1021…プロセッサ、1022…メモリ、1023…入出力インタフェース、1024…通信インタフェース、1161…記憶部、1162…取得部、1163…補正部、1164…安定期間特定部、1165…炎検知部、1166…送受信部、1167…計時部、1231…記憶部、1232…取得部、1233…劣化度判定部、1234…送信部、1235…表示制御部、1236…操作受付部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15