(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】ブラックマトリックス用顔料分散組成物、およびブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240426BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20240426BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240426BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
G02B5/20 101
C09D17/00
G03F7/004 501
G03F7/004 505
G03F7/027
(21)【出願番号】P 2020081875
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 康人
(72)【発明者】
【氏名】中川 朋樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓也
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-079245(JP,A)
【文献】特開2015-161815(JP,A)
【文献】国際公開第2018/038083(WO,A1)
【文献】特表2016-519173(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180548(WO,A1)
【文献】特開2019-081831(JP,A)
【文献】特開2019-086781(JP,A)
【文献】特開2020-060617(JP,A)
【文献】特開2010-129344(JP,A)
【文献】特開2010-039060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09D 17/00
G03F 7/004
G03F 7/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック、シリカ、塩基性基含有顔料分散剤、アルカリ可溶性樹脂、ならびに溶剤を含むブラックマトリックス用顔料分散組成物であって、
前記シリカは、
平均一次粒子径が30nm以上であり、かつヘキサメチルシラザンで表面処理され
、有機粒子を複合させたシリカ
粒子であり、
前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック100質量部に対して、前記シリカが
5質量部以上40質量部以下であることを特徴とするブラックマトリックス用顔料分散組成物。
【請求項2】
請求項1記載のブラックマトリックス用顔料分散組成物、光重合性化合物、および光重合開始剤を含むことを特徴とするブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物。
【請求項3】
前記ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物の固形分中、前記シリカの割合が1質量%以上15質量%以下であることを特徴とする請求項2記載のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物。
【請求項4】
バンク材として用いられることを特徴とする請求項2または3記載のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラックマトリックス用顔料分散組成物、およびブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック、塩基性基含有顔料分散剤、アルカリ可溶性樹脂、ならびに溶剤を含むブラックマトリックス用顔料分散組成物と、当該ブラックマトリックス用顔料分散組成物、光重合性化合物、および光重合開始剤を含むブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物が知られている(特許文献1-6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-102346号公報
【文献】国際公開第2015/056688号
【文献】特開2016-79245号公報
【文献】特開2019-81831号公報
【文献】特開2019-81857号公報
【文献】特開2019-82533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機ELディスプレイでは、有機EL画素を区画するためのバンク材料は、外光反射を抑制して黒色を際立たせるために、透明バンク材料から黒色バンク材料への移行がなされており、黒色バンク材料として、上記のようなブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物が採用されている。このような黒色バンク材料では、より外光反射を抑制する観点から、低反射率を有するブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物が求められている。
【0005】
また、一般的に、ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物は、塗工直前に、ブラックマトリックス用顔料分散組成物と、光重合性化合物および光重合開始剤等と混合して調製されるため、ブラックマトリックス用顔料分散組成物は、保管時の分散安定性が求められる。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、低反射率を有するブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物が得られる、分散安定性に優れたブラックマトリックス用顔料分散組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック、シリカ、塩基性基含有顔料分散剤、アルカリ可溶性樹脂、ならびに溶剤を含むブラックマトリックス用顔料分散組成物であって、前記シリカは、ヘキサメチルシラザンで表面処理されたシリカであり、前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック100質量部に対して、前記シリカが40質量部以下であるブラックマトリックス用顔料分散組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物、光重合性化合物、および光重合開始剤を含むブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、バンク材として用いられる前記ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定されない。
【0011】
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック、シリカ、塩基性基含有顔料分散剤、アルカリ可溶性樹脂、ならびに溶剤を含むブラックマトリックス用顔料分散組成物であって、前記シリカは、ヘキサメチルシラザンで表面処理されたシリカであり、前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック100質量部に対して、前記シリカが40質量部以下である。本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラックに対する前記シリカが一定以下であるため、分散安定性に優れ、また、前記シリカは、未処理のシリカと比べて、表層に存在するヘキサメチルシラザン層によって、反射率が小さくなることにより、低反射率を有するブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物が得られると推定される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のブラックマトリックス用顔料分散組成物は、カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック、シリカ、塩基性基含有顔料分散剤、アルカリ可溶性樹脂、ならびに溶剤を含み、前記シリカは、ヘキサメチルシラザンで表面処理されたシリカである。
【0013】
<シリカ>
前記シリカは、ヘキサメチルシラザンで表面処理されたシリカである。前記シリカは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
前記シリカは、平均一次粒子径が、低反射率を有するブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を得る観点から、20nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、そして、顔料分散組成物やレジスト組成物におけるシリカ沈降防止の観点から、300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。通常、平均一次粒子径は、電子顕微鏡観察による算術平均径の値であるが、市販品の場合、カタログ値を参考とする。
【0015】
前記シリカは、BET比表面積が、低反射率を有するブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を得る観点から、15m2/g以上であることが好ましく、30m2/g以上であることがより好ましく、そして、顔料分散組成物やレジスト組成物の粘度を適正にする観点から、300m2/g以下であることが好ましく、150m2/g以下であることがより好ましい。通常、BET比表面積は、JIS Z8830:2013等の方法によって測定するが、市販品の場合、カタログ値を参考とする。
【0016】
前記シリカは、シリカに有機粒子を複合させたシリカ(シリカ複合体粒子)も使用可能である。市販品としては、ATLAS100(キャボット社製、平均一次粒子径100nm)が挙げられる。
【0017】
前記シリカは、前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック100質量部に対して、40質量部以下である。前記シリカは、低反射率を有するブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を得る観点から、前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック100質量部に対して、2質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、そして、分散安定性を向上させる観点から、35質量部以下であることが好ましく、32質量部以下であることがより好ましい。
【0018】
<カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック>
前記カーボンブラックは、ブラックマトリックス用顔料分散組成物に使用される公知のカーボンブラックを使用でき、例えば、中性カーボンブラック、酸性カーボンブラック等が挙げられる。また、前記カーボンブラックは、平均一次粒子径が20~60nm程度であることが好ましい。また、前記ラクタムブラックとしては、例えば、下記構造を有する化合物が挙げられる。前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラックは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化1】
【0019】
前記中性カーボンブラックは、pHが8~10の範囲であることが好ましい。前記中性カーボンブラックの市販品としては、例えば、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製のプリンテックス25(平均一次粒子径56nm、pH9.5)、プリンテックス35(平均一次粒子径31nm、pH9.5)、プリンテックス65(平均一次粒子径21nm、pH9.5)、三菱化学社製のMA#20(平均一次粒子径40nm、pH8.0)、MA#40(平均一次粒子径40nm、pH8.0)、MA#30(平均一次粒子径30nm、pH8.0)等が挙げられる。
【0020】
前記酸性カーボンブラックは、pHが2~4の範囲であることが好ましい。前記酸性カーボンブラックの市販品としては、コロンビアケミカルズ社製のRaven1080(平均一次粒子径28nm、pH2.4)、Raven1100(平均一次粒子径32nm、pH2.9)、三菱化学社製のMA-8(平均一次粒子径24nm、pH3.0)、MA-100(平均一次粒子径22nm、pH3.5)、MA#70(平均一次粒径24nm、pH3.0)、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製のスペシャルブラック250(平均一次粒子径56nm、pH3.0)、スペシャルブラック350(平均一次粒子径31nm、pH3.0)、スペシャルブラック550(平均一次粒子径25nm、pH4)、NEROX2500(平均一次粒子径56nm、pH3.0)、NEROX3500(平均一次粒子径31nm、pH3.0)等が挙げられる。
【0021】
なお、通常、pHは、炭酸を除いた蒸留水(pH7.0)20mLに、カーボンブラック1gを添加してマグネチックスターラーで混合して水性懸濁液を調製し、ガラス電極を使用して25℃で測定する(ドイツ工業品標準規格 DIN ISO 787/9)。また、通常、平均一次粒子径は、電子顕微鏡観察による算術平均径の値である。ただし、上記の市販品のカーボンブラックのpHと平均一次粒子径はカタログ値である。
【0022】
前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラックは、前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物中、ブラックマトリックスを形成した場合の遮光性が高める観点から、3質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、そして、顔料分散の観点から、70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
<塩基性基含有顔料分散剤>
前記塩基性基含有顔料分散剤は、前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラックを分散できればよく、ブラックマトリックス用顔料分散組成物に使用される公知の塩基性基含有顔料分散剤を使用でき、例えば、アニオン性界面活性剤、塩基性基含有ポリエステル系顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系顔料分散剤、塩基性基含有ウレタン系顔料分散剤、塩基性基含有カルボジイミド系顔料分散剤等が挙げられる。前記塩基性基としては、1級、2級または3級アミノ基が、特に分散性に優れる観点から好ましい。前記塩基性基含有顔料分散剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
前記塩基性基含有顔料分散剤は、良好な顔料分散性が得られる点から、高分子型の塩基性基含有顔料分散剤が好ましい。前記高分子型の塩基性基含有顔料分散剤としては、例えば、塩基性基含有ウレタン系高分子顔料分散剤、塩基性基含有ポリエステル系高分子顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系高分子顔料分散剤等が挙げられる。これらの中でも、塩基性基含有ウレタン系高分子顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系高分子顔料分散剤が好ましい。前記塩基性基含有ウレタン系高分子顔料分散剤は、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、およびポリカーボネート鎖よりなる群から選択される少なくとも1種を有する塩基性基含有ウレタン系高分子顔料分散剤がより好ましい。
【0025】
前記塩基性基含有顔料分散剤は、前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、2~50質量部であることがより好ましい。
【0026】
<アルカリ可溶性樹脂>
前記アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像液に溶解できるものであれば特に制限はないが、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基(-P(=O)(OH2))等のアニオン性基の1種または2種以上を含有する樹脂が好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
前記アルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ現像性の観点から、10mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0028】
前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、レジスト膜の形成性の観点から、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、アルカリ現像液への溶解性を高める観点から、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましい。
【0029】
前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED-D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0030】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、縮重合反応によって得られるポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、現像性、分子設計の幅、及びコストの観点から、アクリル系共重合樹脂が好ましい。
【0031】
前記アルカリ可溶性樹脂は、前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック100質量部に対して、20~90質量部であることが好ましく、40~80質量部であることがより好ましい。
【0032】
<溶剤>
前記溶剤は、ブラックマトリックス用顔料分散組成物に使用される公知の溶剤を使用できる。前記溶剤は、顔料を安定的に分散させ、前記塩基性基含有顔料分散剤や前記アルカリ可溶性樹脂を十分に溶解させることができる観点から、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、エーテルエステル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、含窒素系溶剤等が好ましい。前記溶剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
前記エステル系溶剤としては、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エステル、蟻酸n-アミル等が挙げられる。前記エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等が挙げられる。前記エーテルエステル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。前記ケトン系溶剤としては、例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、δ-ブチロラクトン等が挙げられる。前記芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アルキルナフタレン等が挙げられる。前記含窒素系溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0034】
前記溶剤の割合は、前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物中、工程性の観点から、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、そして、分散安定性の観点から、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
<酸性基を有する顔料分散助剤>
前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物は、顔料の分散性をより改善する目的で酸性基を有する顔料分散助剤を含有してもよい。前記酸性基を有する顔料分散助剤は、例えば、ラクタムブラック、ペリレン系化合物、ジケトピロロピロール系化合物、アゾナフトール系化合物、ジオキサジン系化合物、キナクリドン系化合物、フタロシアニン系化合物及びその金属錯体、アントラキノン、ナフタレン、アクリドン、またはトリアジン等の色素に、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性基が導入された化合物(酸性基を有する色素誘導体)や、それらを有機アミン等で中和した化合物が挙げられる。前記酸性基を有する色素誘導体としては、カーボンブラックの分散性が良好である観点から、スルホン酸基を有するフタロシアニン系色素誘導体が好ましい。前記色素誘導体は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
前記酸性基を有する顔料分散助剤は、前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラック100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
【0037】
前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物中、前記カーボンブラック、前記シリカ、前記塩基性基含有顔料分散剤、前記アルカリ可溶性樹脂、および前記溶剤の合計の割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。また、酸性基を有する顔料分散助剤を使用する場合、前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物中、前記カーボンブラック、前記シリカ、前記塩基性基含有顔料分散剤、前記アルカリ可溶性樹脂、前記溶剤および前記酸性基を有する顔料分散助剤の合計の割合は、75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0038】
前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物は、上記の各成分をロールミル、ニーダー、高速攪拌機、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、高圧分散装置等を用いて、分散処理して調製すればよい。また、前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物は、前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラックを分散させた組成物と、前記シリカを分散させた組成物を混合して調製してもよい。
【0039】
<ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物>
本発明のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物は、前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物、光重合性化合物、および光重合開始剤を含む。なお、前記カーボンブラックおよび/またはラクタムブラックの割合は、前記ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物の固形分中、30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。また、前記シリカの割合は、前記ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物の固形分中、顔料やシリカの分散安定性を向上させ、さらに、レジスト膜の光学濃度(OD値)を高める観点から、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
<光重合性化合物>
前記光重合性化合物は、ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物に使用される公知の光重合性化合物を使用でき、例えば、光重合性不飽和結合を有するモノマー、オリゴマー等が挙げられる。前記光重合性化合物は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
光重合性不飽和結合を1個有するモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアルキルメタクリレートまたはアクリレート;ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルメタクリレートまたはアクリレート;ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレートまたはアクリレート;N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルメタクリレートまたはアクリレート;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル;ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアリールエーテルのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル;イソボニルメタクリレートまたはアクリレート;グリセロールメタクリレートまたはアクリレート;2-ヒドロキシエチルメタクリレートまたはアクリレート等が挙げられる。
【0042】
光重合性不飽和結合を2個以上有するモノマーとしては、例えば、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
【0043】
光重合性不飽和結合を有するオリゴマーとしては、例えば、前記モノマーを適宜重合させて得られたものが挙げられる。
【0044】
前記光重合性化合物は、前記ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物の固形分中、2~20質量%であることが好ましく、4~15質量%であることがより好ましい。
【0045】
前記光重合開始剤は、ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物に使用される公知の光重合開始剤を使用でき、例えば、ベンゾフェノン、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロル-2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、トリアジン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤等が挙げられる。前記光重合開始剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
前記光重合開始剤は、前記ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物の固形分中、0.1~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
【0047】
前記ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物は、アルカリ現像液による現像性の観点から、上記のアルカリ可溶性樹脂をさらに添加してもよい。また、前記アルカリ可溶性樹脂の合計は、前記ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物の固形分中、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。また、前記ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物は、塗装性を向上させる観点から、上記の溶剤をさらに添加してもよい。前記溶剤の合計の割合は、前記ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0048】
前記ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物には、さらに、必要に応じて、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤等の添加剤を添加してもよい。
【0049】
前記ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物は、前記ブラックマトリックス用顔料分散組成物、光重合性化合物、および光重合開始剤等の各成分を、攪拌装置等を用いて、攪拌混合して調製すればよい。
【実施例】
【0050】
以下に本発明を実施例等によって説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。
【0051】
<調製例1~5、比較調製例1~3>
<ブラックマトリックス用顔料分散組成物の調製>
表1に示す各種原料を、表1に示す配合組成(質量%)となるように混合した後、ビーズミルで練肉し、各調製例および比較調製例のブラックマトリックス用顔料分散組成物を調製した。
【0052】
<分散安定性の評価>
上記の各ブラックマトリックス用顔料分散組成物をそれぞれガラス瓶に採り、密栓して室温で7日間保存した後の状態を下記評価基準に従って評価した。Aを合格基準とした。結果を表1に示す。
A:増粘、沈降物が共に認められない。
B:軽く振ると元に戻る程度の増粘や沈降物が認められる。
C:強く振っても元に戻らない程度の増粘や沈降物が認められる。
【0053】
<実施例1~5、比較例1~3>
<ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物の調製>
表2に示す各種原料を、表2に示す配合組成(質量%)となるように、高速撹拌機を用いて混合した後、孔径0.5μmのフィルターで濾過し、各実施例および比較例のブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物を調製した。
【0054】
<反射率の評価>
上記の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板上に塗布し、100℃で3分間プレベークした後、高圧水銀灯で露光し、更に230℃で3時間ポストベークを行い、ベタ部のみで形成されたブラックレジスト膜を得た。得られた各ベタ部のブラックレジスト膜面での波長360nm~740nmの反射率(単位は%)を反射率計(大塚電子社製、photal MC―7300:SC)で最小値および平均値を測定した。最小値および平均値が小さいほど好ましい。
【0055】
<光学濃度の評価>
上記で得られた各ベタ部のブラックレジスト膜の光学濃度(OD値)をマクベス濃度計(TD-931、商品名、マクベス社製)で測定した。
【0056】
【0057】
【0058】
表1および表2中、Raven1080は、カーボンブラック(平均一次粒子径28nm、pH2.4、コロンビアケミカルズ社製);
Iragaphor Black S 0100 CFは、ラクタムブラック(BASF社製)
ATLAS100は、ヘキサメチルシラザンで表面処理されたシリカ(平均一次粒子径100nm、BET比表面積60m2/g、キャボット社製);
KE-P10は、低級アルコールが吸着したシリカ(平均一次粒子径100nm、日本触媒社製);
KE-S10は、高純度シリカ(平均一次粒子径100nm、日本触媒社製);
ソルスパーズ5000は、スルホン酸基を有するフタロシアニン系色素誘導体(ルブリゾール社製);
BYK-167は、ポリエステル鎖を有するアミノ基含有ポリウレタン系高分子分散剤(ビックケミー社製、固形分52質量%);
BYK-LPN-22329は、アミノ基含有アクリル系高分子顔料分散剤(ビックケミー社製、固形分58%);
BYK-LPN-22102は、アミノ基含有アクリル系高分子顔料分散剤(ビックケミー社製、固形分40%);
BzMA/MAAは、BzMA(ベンジルメタクリレート)/MAA(メタクリル酸)共重合体(酸価100mgKOH/g、重量平均分子量30,000);
PGMEAは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;を示す。
【0059】
表2中、DPHAは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;
イルガキュア OXE02は、オキシムエステル系光重合開始剤(BASFジャパン社製);
メガファックF554は、含フッ素基・親油性基含有オリゴマー(DIC社製、固形分100質量%);を示す。