(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】造形装置、造形方法、及び造形プログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240426BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20240426BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240426BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240426BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240426BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/112
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/00
(21)【出願番号】P 2020108936
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】八角 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】原山 健次
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-026092(JP,A)
【文献】特開2017-113986(JP,A)
【文献】特開2016-215577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像データに基づいて光反射材料と着色材料とを吐出ヘッドから吐出して層体を積層し、内部を着色した立体的な造形物を形成する造形装置であって、
前記造形物の内部の着色領域において、単位容積毎の予め定められた位置に光反射材料が配置され、前記光反射材料の周囲に前記カラー画像データに基づいて着色材料が配置されるように、前記光反射材料及び前記着色材料の配置位置を決定する決定手段を備え、
前記単位容積の設定位置は、一つの前記単位容積の一面に当接する他の前記単位容積が複数の前記単位容積であるように設定され
、
前記造形物の表面から内部へ向かう法線方向に対する所定厚さは、前記光反射材料を配置しない光反射材料非配置領域として設定され、
前記決定手段は、前記光反射材料非配置領域に前記カラー画像データに基づいて前記着色材料を配置し、前記光反射材料非配置領域に接する前記造形物の内部領域に対して、前記光反射材料を相対的に多く配置する、造形装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記着色領域において前記単位容積の設定位置又は前記光反射材料の配置位置に制限されず前記カラー画像データに基づいて前記着色材料を配置する、請求項1記載の造形装置。
【請求項3】
前記造形物の内部における前記カラー画像データの色が、周辺の色より高い明度又は低い彩度の色である場合、前記着色材料の配置領域に透明材料を配置する、請求項1
又は請求項2記載の造形装置。
【請求項4】
前記光反射材料の色は、白色である、請求項1から請求項
3の何れか1項記載の造形装置。
【請求項5】
前記着色材料の配置位置は、前記カラー画像データに対して中間調処理が行われて決定される、請求項1から請求項
4の何れか1項記載の造形装置。
【請求項6】
前記着色材料の色は、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンであり、
前記造形物は、減法混色法によって着色される、請求項1から請求項
5の何れか1項記載の造形装置。
【請求項7】
前記光反射材料及び前記着色材料は、紫外線硬化型の樹脂である、請求項1から請求項
6の何れか1項記載の造形装置。
【請求項8】
カラー画像データに基づいて光反射材料と着色材料とを吐出ヘッドから吐出して層体を積層し、内部を着色した立体的な造形物を形成する造形方法であって、
前記造形物の内部の着色領域において、単位容積毎の予め定められた位置に光反射材料が配置され、前記光反射材料の周囲に前記カラー画像データに基づいて着色材料が配置されるように、前記光反射材料及び前記着色材料の配置位置を決定し、
前記単位容積の設定位置は、一つの前記単位容積の一面に当接する他の前記単位容積が複数の前記単位容積であるように設定され
、
前記造形物の表面から内部へ向かう法線方向に対する所定厚さは、前記光反射材料を配置しない光反射材料非配置領域として設定され、
前記光反射材料非配置領域に前記カラー画像データに基づいて前記着色材料を配置し、前記光反射材料非配置領域に接する前記造形物の内部領域に対して、前記光反射材料を相対的に多く配置する、造形方法。
【請求項9】
カラー画像データに基づいて光反射材料と着色材料とを吐出ヘッドから吐出して層体を積層し、内部を着色した立体的な造形物を形成する造形装置のコンピュータを、
前記造形物の内部の着色領域において、単位容積毎の予め定められた位置に光反射材料が配置され、前記光反射材料の周囲に前記カラー画像データに基づいて着色材料が配置されるように、前記光反射材料及び前記着色材料の配置位置を決定する決定手段、
として機能させ、
前記単位容積の設定位置は、一つの前記単位容積の一面に当接する他の前記単位容積が複数の前記単位容積であるように設定され
、
前記造形物の表面から内部へ向かう法線方向に対する所定厚さは、前記光反射材料を配置しない光反射材料非配置領域として設定され、
前記決定手段は、前記光反射材料非配置領域に前記カラー画像データに基づいて前記着色材料を配置し、前記光反射材料非配置領域に接する前記造形物の内部領域に対して、前記光反射材料を相対的に多く配置する、造形プログラム。
【請求項10】
カラー画像データに基づいて光反射材料と着色材料とを吐出ヘッドから吐出して層体を積層し、内部を着色した立体的な造形物を形成する造形装置であって、
前記造形物の内部の着色領域において、単位容積毎の予め定められた位置に光反射材料が配置され、前記光反射材料の周囲に前記カラー画像データに基づいて着色材料が配置されるように、前記光反射材料及び前記着色材料の配置位置を決定する決定手段を備え、
前記決定手段は、前記着色領域において前記単位容積の設定位置又は前記光反射材料の配置位置に制限されず前記カラー画像データに基づいて前記着色材料を配置し、
前記造形物の表面から内部へ向かう法線方向に対する所定厚さは、前記光反射材料を配置しない光反射材料非配置領域として設定され、
前記決定手段は、前記光反射材料非配置領域に前記カラー画像データに基づいて前記着色材料を配置し、前記光反射材料非配置領域に接する前記造形物の内部領域に対して、前記光反射材料を相対的に多く配置する、造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置、造形方法、及び造形プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクを吐出して造形物を形成する造形装置(3Dプリンタ)の利用が進んでいる。さらに、特許文献1や特許文献2に開示されているように、造形物の表面と共に内部の色を表現する造形装置も開発されている。
【0003】
特許文献1に開示されている造形装置は、造形物の内部に加飾用材料と白色材料とを混在させて造形物を形成する。この造形物は、加飾用材料を通過した光がその周囲の白色材料で光反射されて、あるいは白色材料で光反射された光が加飾用材料を通過することで内部を発色させる。
【0004】
特許文献2には、造形物の内部に着色された領域である着色領域を備え、着色領域における着色の単位として予め設定されたカラーセルを複数個並べることで造形物を形成する造形装置が開示されている。上記カラーセルは、その内部において白色等の光反射性の材料で形成される部分である光反射核と、光反射核の周囲を囲む部分である外周部とを有し、造形装置は、着色領域を形成する動作において、光反射性の材料を吐出することでそれぞれのカラーセルにおける光反射核を形成し、着色用の材料を吐出することでそれぞれのカラーセルにおける外周部を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6510322号公報
【文献】特開2020-026092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に開示されているように、光の光反射材料として白色材料を用いることで、造形物の切断面において光反射材料である白色材料の色が強く表れる場合があった。具体的には、切断面の着色が白くぼやけた色(いわゆる、白ぼけ)となったり、切断面の着色部分に白いラインが生じたりする。これにより、造形物の内部の色表現が十分に高いものとならない場合があった。
【0007】
そこで本発明は、高い色表現で造形物の内部を形成できる、造形装置、造形方法、及び造形プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の造形装置は、カラー画像データに基づいて光反射材料と着色材料とを吐出ヘッドから吐出して層体を積層し、内部を着色した立体的な造形物を形成する造形装置であって、前記造形物の内部の着色領域において、単位容積毎の予め定められた位置に光反射材料が配置され、前記光反射材料の周囲に前記カラー画像データに基づいて着色材料が配置されるように、前記光反射材料及び前記着色材料の配置位置を決定する決定手段を備え、前記単位容積の設定位置は、一つの前記単位容積の一面に当接する他の前記単位容積が複数の前記単位容積であるように設定される。
【0009】
本構成によれば、造形物の内部の着色領域において、光反射材料の周囲に着色材料を配置することで造形物の内部の着色を可能とする。光反射材料は、単位容積の予め定められた位置毎に配置され、光反射材料の色は一例として白色である。ここで、光反射材料の位置に偏りがあると、造形物の切断面において光反射材料の色が強く表れる場合がある。
【0010】
そこで、本構成の単位容積の設定位置は、一つの単位容積の一面に当接する他の単位容積が複数の単位容積であるように設定される。これにより、光反射材料の配置位置が偏ることなく分散して配置されるので、造形物の切断面において光反射材料の色が強く表れることを抑制できる。従って、本構成によれば、高い色表現で造形物の内部を形成できる。
【0011】
上記の造形装置において、前記決定手段は、前記着色領域において前記単位容積の設定位置又は前記光反射材料の配置位置に制限されず前記カラー画像データに基づいて前記着色材料を配置してもよい。本構成によれば、着色材料の配置位置を単位容積で制限しないので、カラー画像データに基づく造形物の色をよりなめらかに表現できる。
【0012】
本発明の一態様の造形装置は、カラー画像データに基づいて光反射材料と着色材料とを吐出ヘッドから吐出して層体を積層し、内部を着色した立体的な造形物を形成する造形装置であって、前記造形物の内部の着色領域において、前記カラー画像データに基づいて前記造形物の最小構成単位で前記着色材料の配置位置を決定し、前記着色領域において分散して配置されるように前記光反射材料の配置位置を決定する決定手段、を備える。
【0013】
本構成によれば、造形物の内部における着色材料の配置位置を造形物の最小構成単位で決定する。これにより、カラー画像データに基づく造形物の色をよりなめらかに表現できる。また、光反射材料は、着色領域において分散して配置されるので、造形物の切断面において光反射材料の色が強く表れることが抑制される。従って、本構成によれば、高い色表現で造形物の内部を形成できる。
【0014】
上記の造形装置において、前記光反射材料は、前記着色領域において所定割り合いで非周期的に分散して配置されてもよい。本構成によれば、造形物の切断面において光反射材料の色が強く表れることを抑制できる。
【0015】
上記の造形装置において、前記造形物の内部における前記カラー画像データの色が、周辺の色より高い明度又は低い彩度の色である場合、前記着色材料の配置領域に透明(クリア)材料を配置してもよい。本構成によれば、色調を維持したまま明るい色や薄い色を表現すると共に、造形物の形状を維持できる。
【0016】
上記の造形装置において、前記造形物の表面から内部へ向かう法線方向に対する所定厚さは、前記光反射材料を配置しない光反射材料非配置領域として設定され、前記決定手段は、前記光反射材料非配置領域に前記カラー画像データに基づいて前記着色材料を配置してもよい。本構成によれば、造形物の表面に光反射材料の色が浮き出ないため、造形物の表面に対してコントラストの良い色表現を可能とする。
【0017】
上記の造形装置において、前記決定手段は、前記光反射材料非配置領域に接する前記造形物の内部領域に対して、前記光反射材料を相対的に多く配置してもよい。本構成によれば、造形物の表面に対してよりコントラストの良い色表現を可能とする。
【0018】
上記の造形装置において、前記光反射材料の色は、可視光を反射する白色材料であって、例えば酸化チタンなどの無機顔料を含む材料がよい。
【0019】
上記の造形装置において、前記着色材料の配置位置は、前記カラー画像データに対して中間調処理が行われて決定されてもよい。
【0020】
上記の造形装置において、前記着色材料の色は、少なくともイエロー、マゼンタ、シアンによる減法混色法によって着色されてもよい。
【0021】
上記の造形装置において、前記光反射材料及び前記着色材料は、紫外線硬化型の樹脂でもよい。
【0022】
本発明の一態様の造形方法は、カラー画像データに基づいて光反射材料と着色材料とを吐出ヘッドから吐出して層体を積層し、内部を着色した立体的な造形物を形成する造形方法であって、前記造形物の内部の着色領域において、単位容積毎の予め定められた位置に光反射材料が配置され、前記光反射材料の周囲に前記カラー画像データに基づいて着色材料が配置されるように、前記光反射材料及び前記着色材料の配置位置を決定し、前記単位容積の設定位置は、一つの前記単位容積の一面に当接する他の前記単位容積が複数の前記単位容積であるように設定される。
【0023】
本発明の一態様の造形プログラムは、カラー画像データに基づいて光反射材料と着色材料とを吐出ヘッドから吐出して層体を積層し、内部を着色した立体的な造形物を形成する造形装置のコンピュータを、前記造形物の内部の着色領域において、単位容積毎の予め定められた位置に光反射材料が配置され、前記光反射材料の周囲に前記カラー画像データに基づいて着色材料が配置されるように、前記光反射材料及び前記着色材料の配置位置を決定する決定手段、として機能させ、前記単位容積の設定位置は、一つの前記単位容積の一面に当接する他の前記単位容積が複数の前記単位容積であるように設定される。
【0024】
本発明の一態様の造形方法は、カラー画像データに基づいて光反射材料と着色材料とを吐出ヘッドから吐出して層体を積層し、内部を着色した立体的な造形物を形成する造形方法であって、前記造形物の内部の着色領域において、前記カラー画像データに基づいて前記造形物の最小構成単位で前記着色材料の配置位置を決定し、前記着色領域において分散して配置されるように前記光反射材料の配置位置を決定する。
【0025】
本発明の一態様の造形プログラムは、カラー画像データに基づいて光反射材料と着色材料とを吐出ヘッドから吐出して層体を積層し、内部を着色した立体的な造形物を形成する造形装置のコンピュータを、前記造形物の内部の着色領域において、前記カラー画像データに基づいて前記造形物の最小構成単位で前記着色材料の配置位置を決定し、前記着色領域において分散して配置されるように前記光反射材料の配置位置を決定する決定手段、として機能させる。
【0026】
本発明の一態様の造形装置は、カラー画像データに基づいて光反射材料と着色材料とを吐出ヘッドから吐出して層体を積層し、内部を着色した立体的な造形物を形成する造形装置であって、前記造形物の内部の着色領域において、単位容積毎の予め定められた位置に光反射材料が配置され、前記光反射材料の周囲に前記カラー画像データに基づいて着色材料が配置されるように、前記光反射材料及び前記着色材料の配置位置を決定する決定手段を備え、前記決定手段は、前記着色領域において前記単位容積の設定位置又は前記光反射材料の配置位置に制限されず前記カラー画像データに基づいて前記着色材料を配置する。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、高い色表現で造形物の内部を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態の3Dプリンタの概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の3Dプリンタで形成される造形物の概略図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の光反射材料と着色材料との配置位置を示す模式図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の着色材料の配置位置が単位容積で制限されない場合における光反射材料と着色材料との配置位置を示す模式図である。
【
図5】本発明の第1実施形態の減法混色法による着色材料の配置位置を示す模式図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の明るい色を表現する場合における着色材料、クリアインク、及びホワイトインクの配置を示す模式図である。
【
図7】本発明の第1実施形態の3Dプリンタの造形処理に関する機能ブロック図である。
【
図8】本発明の第1実施形態の造形処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】本発明の第2実施形態の光反射材料と着色材料との配置位置を示す模式図である。
【
図10】本発明の第2実施形態の造形処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第3実施形態の造形物の表面近辺における光反射材料と着色材料との配置位置を示す模式図である。
【
図12】本発明の第3実施形態の造形物の表面近辺における光反射材料と着色材料との配置位置を示す模式図である。
【
図13】本発明の実施形態における光反射材料と着色材料との配置位置の関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態の造形装置、造形方法、及び造形プログラムについて、図面を参照しながら説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の3Dプリンタ10の概略構成図である。本実施形態の3Dプリンタ10は、記録ユニット12、走査駆動部14、造形台16、積層方向可動部18、及び制御装置20を備え、材料であるインク滴を記録ユニット12から吐出し、固めて積層することで立体的な造形物22を形成するインクジェット方式の造形装置である。
【0031】
なお、本実施形態の3Dプリンタ10は、詳細を後述するように、カラー画像データに基づいて光反射材料と着色材料とを記録ユニット12(インクジェットヘッド)から吐出して層体を積層し、表面と共に内部を着色した立体的な造形物22を形成する。なお、光反射材料は、可視光を反射する白色材料であって、例えば酸化チタンなどの無機顔料を含む材料がよい。
【0032】
記録ユニット12は、主走査方向であるY走査方向に沿って
図1の紙面左右方向に往復移動しながら造形物22の材料を吐出し、造形物22を構成する層を1層ずつ積層して造形台16上で造形物22を形成する。より具体的には、記録ユニット12は、造形物22の材料となる各種インク、造形物22の外形を支持するサポート材料を含むインク滴を造形台16に向けて吐出するインクジェットヘッド30(30S,30W,30C,30T)、造形台16に着弾したインク滴によって形成される層へ所定の波長の光(一例として紫外線)を照射して硬化させる光源32A及び光源32B、造形物22の造形中に形成される積層上面を平坦化する平坦化ローラー34を有している。なお、光源32Aと光源32Bとを区別しない場合には、単に光源32という。
【0033】
本実施形態のインクジェットヘッド30は、サポート材料(S)を吐出するサポート材料用ヘッド30S、光反射材料である白色顔料を含むホワイトインク(W)を吐出するホワイトインク用ヘッド30W、着色顔料を含むカラーインクを吐出するカラーインク用ヘッド30C、及び顔料を含まず透明であるクリアインク(T)を吐出するクリアインク用ヘッド30Tを備える。なお、本実施形態のカラーインク用ヘッド30Cは、一例として、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)各々のインクを吐出する吐出ヘッドによって構成される。すなわち、本実施形態の3Dプリンタ10によって形成される造形物22は、減法混色法によって着色される。なお、本実施形態の全てのインクは紫外線硬化型の樹脂であるが、サポートインクのみ更に水溶性であり、造形動作が後に水洗いによって溶解除去が可能とされている。
【0034】
Y走査方向を基準にして記録ユニット12が備える各構成の配置位置を説明すると、インクジェットヘッド30に対して向かって左側に光源32Aが配置され、インクジェットヘッド30に対して向かって右側に光源32Bが配置される。そして、クリアインク用ヘッド30Tに隣接して平坦化ローラー34が配置され、光源32Bとインクジェットヘッド30との間に平坦化ローラー34が配置される。
【0035】
走査駆動部14は、造形物22に対して記録ユニット12を相対的に移動(走査動作)させる駆動部であり、走査動作として、主走査動作(Y走査)及び副走査動作(X走査)を記録ユニット12に行わせる。
【0036】
走査駆動部14は、キャリッジ36及びガイドレール38を有する。キャリッジ36は、記録ユニット12を造形台16と対向させて保持する保持部である。すなわち、キャリッジ36は、インク滴の吐出方向が造形台16へ向かう方向になるように、記録ユニット12を保持する。また、主走査動作時において、キャリッジ36は記録ユニット12を保持した状態でガイドレール38に沿って移動する。ガイドレール38は、キャリッジ36の移動をガイドするレール状部材であり、主走査動作時において制御装置20の指示に応じてキャリッジ36を移動させる。
【0037】
積層方向可動部18は、記録ユニット12と造形台16との距離を可変とする。すなわち、造形台16は、積層方向可動部18によって上面を上下方向(
図1のZ方向)へ移動可能とされる。これにより、形成途中の造形物22における積層上面と、記録ユニット12との間の距離(ギャップ)を適宜調整する。
【0038】
なお、主走査動作における記録ユニット12の移動は、造形物22に対する相対的な移動であればよく、例えば、記録ユニット12の位置を固定して、造形台16を移動させることによって造形物22を移動させてもよい。また、記録ユニット12と造形台16のZ方向への相対的な上下動は、例えば記録ユニット12をZ方向へ移動させることで行われてもよい。
【0039】
制御装置20は、3Dプリンタ10を制御するものであり、造形物22の断面を示すスライスデータ(造形データ及びカラー画像データ)に基づいて3Dプリンタ10の各部を制御することにより、3Dプリンタ10の造形処理を実行させる。
【0040】
なお、スライスデータは、3Dモデルデータ等の造形ジョブに基づいて生成され、造形物22の各位置の断面に対応するデータであり、例えば、3Dプリンタ10に接続された他の情報処理装置によって生成される。3Dモデルデータは、造形物22の形状及びその表面色等を示すデータであり、例えば、3DCADデータや製造すべき造形物22を撮影した外観のデータ等に基づいて作成される。
【0041】
次に、本実施形態の3Dプリンタ10による造形処理の概要について説明する。
【0042】
まず、3Dプリンタ10は、記録ユニット12を造形物22に対して相対的に右方向へY走査しながら、造形データ及びカラー画像データに基づいてインクを吐出する(第1工程)。この際、平坦化ローラー34は、Z軸の上方向に移動(図示せぬ移動機構)しており、平坦化ローラー34の下端は造形物22の上面に接触しない位置とされる。
【0043】
なお、本実施形態では、1回のY走査での形成される層の厚さを約20μmとする。また、造形部分に対するサポート層(S)の一部として、サポート材インク以外に、カラーインク(Y,M,C,K)、白インク、及びクリア(透明)インクの何れかのインクが一種類以上含まれてもよい。
【0044】
次に第2工程として3Dプリンタ10は、記録ユニット12を造形物22に対して相対的に左方向へY走査しながら、スライスデータに基づいてインクを吐出する。この際、平坦化ローラー34はZ軸の下方向に移動して時計回り方向に回転しており、平坦化ローラー34の下端は造形物22の上面に接触する位置とされる。これにより、平坦化ローラー34は、例えば、2回分のY走査(左右の1往復)で吐出された層の厚さ約40μmの上面の未硬化の積層上面を約8μm掻き上げて平坦化し、層の厚さを約32μmとする。また、光源32Bが点灯することで、記録ユニット12から吐出されて層形成され、かつ平坦化された造形物22の最上層のインクが硬化される。
【0045】
次に、造形物22のX方向の寸法が、各インクヘッドのX方向のノズル列の長さよりも大きい場合には、第1工程と第2工程とが終了した後に、記録ユニット12又は造形物22が造形物22のX方向の寸法に応じた所定量でX方向へ移動される(第3工程)。
【0046】
上記第1工程から第3工程を繰り返すことで、造形物22のX方向及びY方向の寸法に応じたインクの吐出を行うことで、造形物22の一層分が完成する。
【0047】
次に第4工程として3Dプリンタ10は、造形台16を所定の高さだけZ方向に下げる。造形台16を下げる高さは、例えば、32μmとする。この32μmという値は、1回のY走査での形成される層の厚さを20μmとし、2回分のY走査によって2層重ねた層の厚さ40μmに対して8μmの厚さバラツキ(表面の凹凸)がある場合を想定したものである。なお、層を平坦化する際の平坦化ローラー34の下端におけるZ方向の位置は毎回一定であり、造形台16の高さを下げることにより、結果として32μmの層厚さで毎回平坦化することになる。
【0048】
そして3Dプリンタ10は、造形物22のZ方向の寸法に応じた積層が完了するまで第1工程から第4工程を繰り返す。
【0049】
図2は、本実施形態の3Dプリンタ10によって形成される造形物22の例を示す模式図である。本実施形態の3Dプリンタ10は、上述のように、
図2(A)に示す造形物22の表面のみならず、
図2(B)に示すように造形物22の内部に対しても着色を行う。このため、造形物22を切断した場合、着色された切断面22Aが表れる。なお、
図2では、造形物22の周囲にサポート層Sが存在するが、上述のようにサポート層Sは水によって溶解される。
【0050】
ここで、本実施形態の3Dプリンタ10は、造形物22の内部にホワイトインクを光反射材料として用い、ホワイトインクとカラーインクとを混在させることによって、カラーインクを通過した光がその周囲のホワイトインクで光反射されて、あるいはホワイトインクで光反射された光がカラーインクを通過することで、減法混色法により発色させる。
【0051】
ところが、ホワイトインクである光反射材料の位置に偏りがあると、造形物22の切断面22Aにおいてホワイトインクの色が強く表れる場合があった。具体的には、切断面22Aの色が白くぼやけた色(いわゆる、白ぼけ)となったり、切断面22Aの着色部分に白いラインが生じたりする。これにより、造形物22の内部の色の表現性が十分に高いものとならない場合があった。
【0052】
そこで、本実施形態の3Dプリンタ10は、
図3に示されるように、造形物22の1
層、すなわち
図1の積層上面であり、
図2(B)の切断面22Aの着色領域において、単位容積42毎の予め定められた位置に光反射材料Wを配置し、光反射材料Wの周囲にカラー画像データに基づいて着色材料Cdを配置し、単位容積42の設定位置は、一つの単位容積42の一面に当接する他の単位容積42が複数の単位容積42であるように設定される。なお、単位容積42において、複数の他の単位容積42が当接する面は、全ての面である必要はなく、詳細を後述するように一つの面以上であればよい。また、以下の説明では、光反射材料Wとして用いられるホワイトインクを白色材料ともいう。
【0053】
図3において光反射材料W及び着色材料Cdの一つずつが、造形物22の最小構成単位であるボクセル40であり、インクジェットヘッド30から吐出されて硬化したインク滴と考えることができる。さらに複数のボクセル40で構成される領域が単位容積42とされる。本実施形態の単位容積42は、一例として、12個(3×4)のボクセル40で構成されるが、単位容積42は2個以上のボクセル40で構成されていればよく、8個以上のボクセル40で構成されることが好ましい。また、
図3では、単位容積42をXY平面で表しているが、Z方向にも二層以上の大きさを有する立体形状としてもよいし、単位容積42は必ずしも矩形状でなくてもよい。また、
図3以降の断面図にも便宜上XYZの方向を示しているが、これに限定されず、3つの方向を任意に入れ替えてもよい。
【0054】
そして、
図3の例では、光反射材料Wは単位容積42の中央部分においてX方向に2個配置され、その周囲に着色材料Cdが配置される。この光反射材料Wの配置位置や配置方向は一例であり、単位容積42に含まれる光反射材料Wの数は2個に限定されるものではなく、1個以上で、かつ単位容積42内を全て満たさないように配置されればよく、光反射材料Wの数は単位容積42毎に異なってもよい。また、単位容積42がZ方向に二層以上で構成される場合には、光反射材料Wも二層以上とされてもよいし、一層のみとされてもよい。さらに、光反射材料Wは、単位容積42内で複数が分散して配置されてもよく、光反射材料Wの分散した配置(光反射材料Wの並びの向き)は単位容積42毎に異なってもよい。
【0055】
また、
図3の例では、単位容積42は、所定方向であるX方向に対して単位容積42の対向する側面で2つ、両側面で計4つの他の単位容積42と当接する。このように、本実施形態の単位容積42は、所定方向において単位容積42の配列をずらす、換言すると単位容積42が所定方向で当接する他の単位容積42に対して互い違いとなる設定される。なお、単位容積42はZ方向に対しても当接する他の単位容積42に対して互い違いとなるように設定されてもよい。
【0056】
このように、本実施形態の3Dプリンタ10は、造形物22の内部の着色領域において、単位容積42毎に光反射材料Wの周囲に着色材料Cdを配置し、この単位容積42を単位容積42の両側面で複数の他の単位容積42と当接するように設定する。これにより、光反射材料Wの配置位置が偏ることなく分散(離散)して配置されるので、造形物22の切断面22Aにおいて光反射材料Wの色が強く表れることを抑制できる。これにより、本実施形態の3Dプリンタ10は、高い色表現で造形物22の内部を形成できる。
【0057】
また、本実施形態では、造形物22の内部の着色領域において、単位容積42の設定位置に制限されずカラー画像データに基づいて着色材料Cdを配置する。
図4,5を参照して、本実施形態の着色材料Cdの配置について説明する。
【0058】
図4は、本実施形態の着色材料Cdの配置位置が単位容積42で制限されない場合における光反射材料Wと着色材料Cdとの配置位置を示す模式図である。また、
図5は、本実施形態の減法混色法による着色材料Cdの配置位置を示す模式図である。
【0059】
図4の例では、楕円形状の破線領域Aが緑色(G)の着色領域とされ、矩形状の破線領域Bが黒色の着色領域とされ、その他の領域が赤色(R)の着色領域とされる。この着色領域で示されるように、カラー画像データの分解能(解像度)は、単位容積42で制限されることなく、ボクセル40がカラー画像データの最小単位となる。なお、光反射材料Wの配置位置は、予め決定されている。
【0060】
そして、
図5に示されるように、破線領域Aに着色材料Cdとしてイエロー(Y)とシアン(C)とが光反射材料Wを囲んで配置されて緑色の着色領域となる。破線領域Bではブラック(K)が光反射材料Wを囲んで配置されて黒色の着色領域となる。その他の領域では、イエロー(Y)とマゼンタ(M)とが光反射材料Wを囲んで配置されて赤色の着色領域となる。
【0061】
このように本実施形態の3Dプリンタ10は、単位容積42の三次元方向の大きさや配列、光反射材料Wの配置に制限されることなく、換言すると単位容積42に無関係に、カラー画像データに基づいて着色材料Cdを配置する。これにより、3Dプリンタ10は、カラー画像データに基づく造形物22の色をよりなめらかに表現できる。
【0062】
なお、着色材料Cdの配置位置は、カラー画像データに対して中間調処理が行われて決定される。中間調処理は、カラー画像データを濃度に対応して2値化した画素に変換して、カラー画像の階調を記録ユニット12によって再現できるようにする処理である。具体的には、中間調処理は、カラー画像データの各層の画像データを画素に変換すると共に、例えば、入力されたRGBの画像データから着色材料Cdの色であるCMYKの画像データに変換する。中間調処理は、例えば、ディザ法や誤差拡散法、FM(Frequency Modulation)スクリーン法等であり、特に限定されない。
【0063】
次に、カラー画像データが明るい色又は薄い色である場合における着色材料Cdの配置について説明する。
【0064】
カラー画像データが明るい色又は薄い色である場合には、例えば、着色材料Cdの配置領域内に着色材料Cdを配置しない空き領域を設けることが考えられる。しかしながら、造形物22の内部に空き領域を設けると、造形物22の形状を維持できない可能性が生じる。
【0065】
そこで、本実施形態の3Dプリンタ10は、造形物22の内部におけるカラー画像データの色が、例えば、周辺の色より比較的に高い明度である明るい色又は、例えば、周辺の色より比較的に低い彩度である薄い色や透明である場合、着色材料Cdの量が少なく、そのままでは空き領域ができて造形の形状が崩れてしまうので、着色材料Cdの空き領域に透明材料であるクリアインクを配置(補填)する。すなわち、この透明材料は、上記空き領域に配置されることで、カラー画像データにより示される色を表現すると共に、造形物22の形状を維持するための補填材料として用いられる。このような構成により、色調を維持したまま明るい色や薄い色を表現すると共に、造形物22の形状を維持できる。
【0066】
なお、補填材料としては、白色材料が用いられてもよいが、白色材料は隠ぺい力が強いため、白色材料よりも奥側(造形物22の内部側)の層の色が視認され難くなる。このため、補填材料として透明材料及び白色材料の何れを用いるかは、表現する色に応じて適宜選択される。
【0067】
図6は、明るい色又は薄い色を表現する場合における着色材料Cd及び補填材料としてのクリアとホワイトの配置を示す模式図である。なお、
図6において、補填されるホワイトは、光反射材料Wとしての白色材料と区別するために、“W”を円で囲んで示している。
図6の例では、破線領域Cには着色材料Cdとしてイエロー(Y)が配置されて黄色の領域となる。破線領域Dではブラック(K)とホワイト(W)が配置されて薄い黒色、すなわち灰色の領域となる。その他の領域では、シアン(C)とマゼンタ(M)とクリア(T)が配置されて明るい青色の領域となる。なお、黒色の薄い色として灰色を表現する場合には、ホワイトを補填材料として用いずに、クリアを用いてもよい。
【0068】
図7は、実施形態の3Dプリンタ10によって実行される造形処理に関する機能ブロック図である。3Dプリンタ10が備える制御装置20は、演算部50、記憶部60、及びデータ送受信部70を備える。
【0069】
演算部50は、CPU(Central Processing Unit)等のコンピュータであり、中間調処理部52、材料配置位置決定部54、走査制御部56、及びインク吐出制御部58を備える。なお、材料配置位置決定部54、走査制御部56、及びインク吐出制御部58の各機能は、記憶部60に記憶されたプログラムを演算装置が実行することによって実現されてもよい。また、これに限らず、演算部50が備えるASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の個別のハードウェアを備え、このハードウェアによって各機能の一部又は全部が実現されてもよい。
【0070】
中間調処理部52は、他の情報処理装置から受信したカラー画像データ(スライスデータ)に対して中間調処理を行う。
【0071】
材料配置位置決定部54は、中間調処理が行われたカラー画像データに基づいて光反射材料W及び着色材料Cdの配置位置を決定し、インク吐出データを生成する。本実施形態の材料配置位置決定部54は、上述のように、造形物22の内部の着色領域において、単位容積42毎の予め定められた位置に光反射材料Wが配置され、光反射材料Wの周囲にカラー画像データに基づいて着色材料Cdが配置されるように、光反射材料W及び着色材料Cdの配置位置を決定することで、インク吐出データを生成する。なお、材料配置位置決定部54による光反射材料W及び着色材料Cdの配置位置の決定方法は、
図3~6を用いて説明した方法である。
【0072】
走査制御部56は、材料配置位置決定部54によって生成されたインク吐出データ等に基づいて、記録ユニット12が主走査方向(Y方向)及び副走査方向(X方向)に移動すると共に、造形台16が上下方向(Z方向)に移動するように、走査駆動部14及び積層方向可動部18の駆動を制御する。
【0073】
インク吐出制御部58は、インク吐出データ等に基づいて、インク滴を吐出するようにインクジェットヘッド30を制御する。
【0074】
記憶部60は、他の情報処理装置等から送信されたスライスデータや、制御装置20で実行される各種プログラム等を記憶する記憶媒体である。なお、記憶部60は、一例として、半導体記憶装置であるが、これに限られない。
【0075】
データ送受信部70は、他の情報処理装置等との間で、有線通信又は無線通信により各種データの送受信を行う。
【0076】
図8は、本実施形態の造形処理の流れを示すフローチャートであり、他の情報処理装置からスライスデータが送信された場合に実行される。
【0077】
まず、ステップS100では、中間調処理部52が記憶部60に一時的に記憶されたスライスデータであるカラー画像データを読み込む。
【0078】
次のステップS102では、中間調処理部52がカラー画像データに対して中間調処理を行う。
【0079】
次のステップS104では、材料配置位置決定部54が、単位容積42毎の光反射材料Wの配置位置を決定する。
【0080】
次のステップS106では、材料配置位置決定部54が、中間調処理が行われたカラー画像データに基づいて、造形物22の内部の着色領域において光反射材料Wの周囲に着色材料Cdが配置されるように着色材料Cdの配置位置を決定し、インク吐出データを生成する。
【0081】
次のステップS108では、インク吐出データに基づいて、走査制御部56及びインク吐出制御部58が記録ユニット12を走査してインクを吐出するように制御することで、造形物22の形成を行う。
【0082】
なお、
図8に示した造形処理では、光反射材料Wの配置位置を先に決定した後に、着色材料Cdの配置位置を決定したが、これに限らず、光反射材料Wの配置位置に制限されず、着色材料Cdの配置位置を先に決定してから光反射材料Wの配置位置を決定してもよい。具体的には、着色材料Cdの配置位置を決定した後に、光反射材料Wに重なるボクセル40における着色材料Cdのデータを光反射材料Wのデータに置き換える。
【0083】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る3Dプリンタ10の構成は、
図1に示す第1実施形態に係る3Dプリンタ10の構成と同様である。
【0084】
本実施形態では、第1実施形態で説明したような単位容積42の概念はなく、材料配置位置決定部54が、造形物22の内部の着色領域において、カラー画像データに基づいて造形物22の最小構成単位であるボクセル単位で着色材料Cdの配置位置を決定する。また、材料配置位置決定部54は、着色領域において分散して配置されるように光反射材料Wの配置位置を決定する。なお、本実施形態の光反射材料Wは、着色領域において所定割り合いで非周期的に分散して配置される。
【0085】
図9は、本実施形態の光反射材料Wと着色材料Cdとの配置位置を示す模式図である。
図9に示されるように、光反射材料Wは、少なくともX方向及びY方向において所定数のボクセル40に対して、所定割り合いで非周期的に分散して配置される。
図9の例では、60個(X方向に6個×Y方向に10個)のボクセル40に対して10個の光反射材料Wが配置される。すなわち、着色材料Cdに対して巨視的に17%の割り合いで光反射材料Wが分散して配置される。なお、光反射材料Wは、Z方向に分散して配置されてもよい。
【0086】
図10は、本実施形態の造形処理の流れを示すフローチャートであり、他の情報処理装置からスライスデータが送信された場合に実行される。
【0087】
まず、ステップS200では、中間調処理部52が記憶部60に一時的に記憶されたスライスデータであるカラー画像データを読み込む。
【0088】
次のステップS202では、中間調処理部52がカラー画像データに対して中間調処理を行う。
【0089】
次のステップS204では、材料配置位置決定部54が、中間調処理が行われたカラー画像データに基づいて、造形物22の内部の着色領域においてボクセル単位で着色材料Cdの配置位置を決定する。なお、ステップS204では次ステップでの光反射材料Wの配置位置は無視して全着色領域のボクセル40に対して着色材料Cdの配置位置を決定しても良い。その場合、次のステップS206では光反射材料Wの配置を優先する必要がある。
【0090】
次のステップS206では、材料配置位置決定部54が、光反射材料Wの配置位置を決定し、インク吐出データとする。光反射材料Wの配置位置は、着色領域において光反射材料Wが所定割り合いとなるようにランダムに決定され、決定された位置における着色材料Cdのデータが光反射材料Wのデータに置き換えられる。
【0091】
次のステップS208では、インク吐出データに基づいて、走査制御部56及びインク吐出制御部58が記録ユニット12を走査してインクを吐出するように制御することで、造形物22の形成を行う。
【0092】
このように本実施形態の3Dプリンタ10によれば、造形物22のボクセル単位で造形物22の内部における着色材料Cdの配置位置を決定する。これにより、カラー画像データに基づく造形物22の色をよりなめらかに表現できる。また、光反射材料Wは、着色領域において所定割り合いで非周期的に分散して配置されるので、造形物22の切断面22Aにおいて光反射材料Wの色が強く表れることが抑制される。従って、本実施形態の3Dプリンタ10によれば、高い色表現で造形物22の内部を形成できる。
【0093】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、3Dプリンタ10によって形成される造形物22の表面近辺における材料の配置について説明する。
【0094】
図11は、本実施形態の造形物22の表面近辺における光反射材料Wと着色材料Cdとの配置位置を示す模式図である。
【0095】
図11に示されるように、造形物22の表面から内部へ向かう法線方向Nに対する所定厚さは、光反射材料Wを配置しない光反射材料非配置領域80に設定される。そして、材料配置位置決定部54は、光反射材料非配置領域80にカラー画像データに基づいて着色材料Cdを配置する。なお、
図11では、上記所定厚さを2個のボクセル40分の厚みとするが、これは一例であり、厚さは3個のボクセル40以上としてもよいし、1個のボクセル40としてもよい。なお、所定厚さを2個のボクセル40以上とすることで、造形物22の表面の色をYMCによる二次色で表現可能となる。
【0096】
このように、光反射材料非配置領域80に着色材料Cdのみを配置することで、造形物22の表面に光反射材料Wの色が浮き出ないため、造形物22の表面に対してコントラストの良い色表現を可能とする。
【0097】
また、
図12は、本実施形態の造形物22の表面近辺における光反射材料Wと着色材料Cdとの配置位置の他の例を示す模式図である。
図12に示されるように、材料配置位置決定部62は、光反射材料非配置領域80に接する造形物22の内部領域に対して、光反射材料Wを相対的に多く配置してもよい。これにより、造形物22の表面に対してよりコントラストの良い色表現が可能とされる。
【0098】
なお、
図12の例では、光反射材料非配置領域80の内側における1個分のボクセル40に光反射材料Wを配置するが、これは一例であり、2個分以上のボクセル40に光反射材料Wが配置されてもよい。
【0099】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0100】
ここで
図13は、光反射材料Wと着色材料Cdの配置に関する実施パターンを示す模式図である。
図13における“単位容積”との記載は、光反射材料W又は着色材料Cdの配置位置が単位容積42毎に決定されることを示している。また、
図13における“ボクセル”との記載は、光反射材料W又は着色材料Cdの配置位置がボクセル単位で決定されることを示す。
【0101】
実施パターン1及び実施パターン2は、光反射材料Wを単位容積42毎に配置するものであり、実施パターン1では着色材料Cdの配置位置は単位容積42で制限される一方、実施パターン2では着色材料Cdの配置位置はボクセル単位で決定されるので、単位容積42で制限されない。
【0102】
また、実施パターン2と共に実施パターン4は、着色材料Cdの配置位置はボクセル単位で決定され、一例として、先に着色材料Cdの配置位置が決定された後に、光反射材料Wの配置位置が決定される。なお、実施パターン4における光反射材料Wの配置位置はボクセル単位で決定される。すなわち、実施パターン4では、単位容積42という概念はない。
【0103】
実施パターン3では、光反射材料Wがボクセル単位で決定され、着色材料Cdの配位置は単位容積42毎に決定される。すなわち、着色材料Cdの配置位置は単位容積42で制限されるものの、光反射材料Wの配置位置は単位容積42で制限されない。
【0104】
なお、実施パターン1,2は、第1実施形態に相当し、実施パターン4は第2実施形態に相当する。
【0105】
また、本実施形態では、YMCK色のカラーインクを吐出する形態にていて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。YMCK色の炎色や、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーインク、さらにメタリック(銀色)インク等が吐出されてもよい。
【0106】
(実施形態の効果)
(1)本実施形態の3Dプリンタ10は、カラー画像データに基づいて光反射材料Wと着色材料Cdとをインクジェットヘッド30から吐出して層体を積層し、内部を着色した立体的な造形物22を形成する造形装置であって、造形物22の内部の着色領域において、単位容積42毎の予め定められた位置に光反射材料Wが配置され、光反射材料Wの周囲にカラー画像データに基づいて着色材料Cdが配置されるように、光反射材料W及び着色材料Cdの配置位置を決定する材料配置位置決定部62を備え、単位容積42の設定位置の設定位置は、一つの単位容積42の一面に当接する他の単位容積42が複数の単位容積42であるように設定される。これにより、光反射材料Wの配置位置が偏ることなく分散して配置されるので、造形物22の切断面22Aにおいて光反射材料Wの色が強く表れることを抑制できる。従って、本実施形態によれば、高い色表現で造形物22の内部を形成できる。
【0107】
(2)本実施形態の材料配置位置決定部62は、造形物22の内部の着色領域において、単位容積42の設定位置又は光反射材料Wの配置位置に制限されずカラー画像データに基づいて着色材料Cdを配置する。本実施形態によれば、着色材料Cdの配置位置を単位容積42で制限しないので、カラー画像データに基づく造形物22の色をよりなめらかに表現できる。
【0108】
(3)本実施形態の3Dプリンタ10は、カラー画像データに基づいて光反射材料Wと着色材料Cdとをインクジェットヘッド30から吐出して層体を積層し、内部を着色した立体的な造形物22を形成する造形装置であって、造形物22の内部の着色領域において、カラー画像データに基づいて造形物22のボクセル単位で着色材料Cdの配置位置を決定し、着色領域において分散して配置されるように光反射材料Wの配置位置を決定する材料配置位置決定部62、を備える。これにより、カラー画像データに基づく造形物22の色をよりなめらかに表現できる。また、光反射材料Wは、着色領域において分散して配置されるので、造形物22の切断面22Aにおいて光反射材料Wの色が強く表れることが抑制される。従って、本実施形態によれば、高い色表現で造形物22の内部を形成できる。
【0109】
(4)本実施形態の光反射材料Wは、造形物22の内部の着色領域着色領域において所定割り合いで非周期的に分散して配置される。本実施形態によれば、造形物22の切断面22Aにおいて光反射材料Wの色が強く表れることを抑制できる。
【0110】
(5)本実施形態の3Dプリンタ10は、造形物22の内部におけるカラー画像データの色が、周辺の色より高い明度又は低い彩度の色である場合、着色材料Cdの配置領域に透明材料を配置する。本実施形態によれば、色調を維持したまま明るい色や薄い色を表現すると共に、造形物22の形状を維持できる。
【0111】
(6)本実施形態の3Dプリンタ10は、造形物22の表面から内部へ向かう法線方向に対する所定厚さを、光反射材料Wを配置しない光反射材料非配置領域80として設定し、材料配置位置決定部62は、光反射材料非配置領域80にカラー画像データに基づいて着色材料Cdを配置する。本実施形態によれば、造形物22の表面に光反射材料Wの色が浮き出ないため、造形物22の表面に対してコントラストの良い色表現を可能とする。
【0112】
(7)本実施形態の材料配置位置決定部62は、光反射材料非配置領域80に接する造形物22の内部領域に対して、光反射材料Wを相対的に多く配置する。本実施形態によれば、造形物22の表面に対してよりコントラストの良い色表現を可能とする。
【符号の説明】
【0113】
10 3Dプリンタ(造形装置)
22 造形物
22A 切断面
30 インクジェットヘッド(吐出ヘッド)
42 単位容積
54 材料配置位置決定部(決定手段)
80 光反射材料非配置領域
Cd 着色材料
W 光反射材料