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  • 特許-筆記具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-25
(45)【発行日】2024-05-08
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 3/00 20060101AFI20240426BHJP
   B43K 24/08 20060101ALI20240426BHJP
   B43K 3/04 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
B43K3/00 H
B43K24/08 150
B43K3/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020111843
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010999
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山城 聖美
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-173174(JP,A)
【文献】特開2008-044338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00-8/24
21/00-21/26
24/00-24/18
27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、前記軸筒内に進退可能に収容された筆記芯と、前記筆記芯を後方へ付勢する圧縮コイルバネとを備え、前記筆記芯を前記圧縮コイルバネの付勢力に抗して前進させ前記軸筒の前端側から突出させるようにした筆記具において、前記軸筒内には、前記圧縮コイルバネの一端部を挿入して受ける凹状受部が設けられ
前記凹状受部の端縁の厚みが、前記圧縮コイルバネの線径の1/2よりも小さいことを特徴とする筆記具。
【請求項2】
軸筒と、前記軸筒内に進退可能に収容された筆記芯と、前記筆記芯を後方へ付勢する圧縮コイルバネとを備え、前記筆記芯を前記圧縮コイルバネの付勢力に抗して前進させ前記軸筒の前端側から突出させるようにした筆記具において、前記軸筒内には、前記圧縮コイルバネの一端部を挿入して受ける凹状受部が設けられ
前記軸筒内には、前後方向へわたる筒状支持部材が設けられ、
前記凹状受部は、前記筒状支持部材の一端部に設けられ、
前記軸筒の内周面には、該内周面を前後方向において部分的に縮径する縮径部が設けられ、前記縮径部は、前記筒状支持部材の外周面に接するとともに、前記筒状支持部材の前記一端部を前後方向に跨るようにして延設されていることを特徴とする筆記具。
【請求項3】
前記凹状受部の内周面が、凹状部分の底側へ向かって縮径する傾斜面状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具。
【請求項4】
前記凹状受部の傾斜面状の前記内周面が、前記圧縮コイルバネの外周面に接触又は近接していることを特徴とする請求項記載の筆記具。
【請求項5】
前記縮径部の後端縁には、前方に向かって徐々に縮径する傾斜面部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒後端側のノック操作により軸筒前端から筆記部を出没させるようにした筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の筆記具には、例えば特許文献1に記載されるように、軸筒と、この軸筒内に進退可能に収容されるとともに後端部を軸筒後端から後方へ突出したノック部と、軸筒内に進退可能に収容されるとともに前記ノック部に押されて前進することで前端の筆記部を軸筒の前端から突出させるリフィールと、このリフィールに環状に装着されて該リフィールを後方へ付勢するリターンスプリングとを備えたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-43478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術によれば、外部から受ける衝撃等によりリターンスプリング(圧縮コイルバネ)が径方向移動したりばたついたりし易く、このような場合には、異音を発生したり、ノック操作性が損なわれたりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
軸筒と、前記軸筒内に進退可能に収容された筆記芯と、前記筆記芯を後方へ付勢する圧縮コイルバネとを備え、前記筆記芯を前記圧縮コイルバネの付勢力に抗して前進させ前記軸筒の前端側から突出させるようにした筆記具において、前記軸筒内には、前記圧縮コイルバネの一端部を挿入して受ける凹状受部が設けられ
前記凹状受部の端縁の厚みが、前記圧縮コイルバネの線径の1/2よりも小さいことを特徴とする筆記具。
また、以下の構成を具備するものである。
軸筒と、前記軸筒内に進退可能に収容された筆記芯と、前記筆記芯を後方へ付勢する圧縮コイルバネとを備え、前記筆記芯を前記圧縮コイルバネの付勢力に抗して前進させ前記軸筒の前端側から突出させるようにした筆記具において、前記軸筒内には、前記圧縮コイルバネの一端部を挿入して受ける凹状受部が設けられ、
前記軸筒内には、前後方向へわたる筒状支持部材が設けられ、
前記凹状受部は、前記筒状支持部材の一端部に設けられ、
前記軸筒の内周面には、該内周面を前後方向において部分的に縮径する縮径部が設けられ、前記縮径部は、前記筒状支持部材の外周面に接するとともに、前記筒状支持部材の前記一端部を前後方向に跨るようにして延設されていることを特徴とする筆記具。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、圧縮コイルバネの移動に伴う不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る筆記具の一例を示す全断面図である。
図2】同筆記具の要部拡大断面図であり、圧縮コイルバネが凹状受部に挿入される前と後の状態を(a)と(b)に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、軸筒と、前記軸筒内に進退可能に収容された筆記芯と、前記筆記芯を後方へ付勢する圧縮コイルバネとを備え、前記筆記芯を前記圧縮コイルバネの付勢力に抗して前進させ前記軸筒の前端側から突出させるようにした筆記具において、前記軸筒内には、前記圧縮コイルバネの一端部を挿入して受ける凹状受部が設けられている(図1及び図2参照)。
【0009】
第2の特徴は、前記凹状受部の内周面が、凹状部分の底側へ向かって縮径する傾斜面状に形成されている(図2参照)。
【0010】
第3の特徴は、前記凹状受部の傾斜面状の前記内周面が、前記圧縮コイルバネの外周面に接触又は近接している(図2参照)。
【0011】
第4の特徴は、前記凹状受部の端縁の厚みが、前記圧縮コイルバネの線径の1/2よりも小さい(図2参照)。
【0012】
第5の特徴は、前記軸筒内には、前後方向へわたる筒状支持部材が設けられ、前記凹状受部は、前記筒状支持部材の一端部に設けられ、前記軸筒の内周面には、該内周面を前後方向において部分的に縮径する縮径部が設けられ、前記縮径部は、前記筒状支持部材の外周面に接するとともに、前記筒状支持部材の前記一端部を前後方向に跨るようにして延設されている(図2参照)。
【0013】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。本明細書中、軸方向とは、軸筒10の中心線の延びる方向を意味する。また、「前」とは、前記軸方向の一方側であって筆記芯の先方向を意味する。また、「後」とは、前記一方側に対する逆方向側を意味する。
【0014】
筆記具1は、軸筒10と、軸筒10内に進退可能に収容されるとともに前進した際に前端側の筆記部21を軸筒10の前端から突出させる筆記芯20と、軸筒10の前端側に進退可能に内在されるとともに筆記芯20を挿通した筒状のスライダー30と、スライダー30を軸筒10に対し後方へ付勢する第一の圧縮コイルバネ40と、軸筒10内の軸方向中央寄りに固定された筒状支持部材50と、筒状支持部材50の後側で筆記芯20の後端側に接続される支持回転子60と、筆記芯20及び支持回転子60を後方へ付勢する第二の圧縮コイルバネ70と、外力により前進して支持回転子60を押動するノック部80とを具備する。
この筆記具1は、ノック部80がノック操作された際に、筆記芯20を第二の圧縮コイルバネ70の付勢力に抗して前進させ、軸筒10の前端側から突出させる。
【0015】
軸筒10は、前後方向へわたる長尺筒状の後軸部11と、後軸部11の前側に、筒状支持部材50を介して回転可能に接続された回転筒部12とを備える。
【0016】
後軸部11は、軸筒10の後半部を形成する円筒状の部材であり、図示例によれば筒状支持部材50の後半部側の外周に螺合接続されている。
【0017】
この後軸部11の内周面には、該内周面を前後方向において部分的に縮径した円筒状の縮径部11aが設けられる。
この縮径部11aは、筒状支持部材50の後端側の外周面に接する。この接触には、周方向において部分的に接触する態様や、全周にわたって接触する態様を含む。
【0018】
そして、この縮径部11aは、筒状支持部材50の後端部を前後方向に跨るようにして所定量延設されている。
この縮径部11aは、筒状支持部材50の後端部よりも後方へ延設された部分の長さx1(図2参照)を、少なくとも第二の圧縮コイルバネ70の線径よりも大きく設定している
【0019】
縮径部11aが後軸部11内周面から径方向内側へ突出する寸法x2は、第二の圧縮コイルバネ70の線径の1/2よりも小さく設定される。
縮径部11aの後端縁には、前方へ向かって徐々に縮径する傾斜面部11a1が設けられる。
これらの構成によれば、軸筒10内に後方から挿入される第二の圧縮コイルバネ70を、傾斜面部11a1及び縮径部11a内周面に摺接して、凹状受部51内へ滑らかに導くことができる。
【0020】
また、縮径部11aの前端縁にも、後方へ向かって徐々に縮径する傾斜面部11a2が設けられる。この傾斜面部11a2は、後軸部11内に筒状支持部材50を組付ける際に、筒状支持部材50の後端縁が縮径部11aに引っかかるのを防いで製造性を良好にするとともに、後軸部11に対する筒状支持部材50の同芯度を向上する。
【0021】
なお、図中符号11a3は、後軸部11の外周面に一体的に設けられたクリップである。
また、図中符号11bは、筒状支持部材50外周の環状鍔部54と後軸部11の間に挟持された筒状のスリーブである。このスリーブ11bは、後軸部11と一体に構成して省くことも可能である。
【0022】
また、回転筒部12は、前後方向へわたる長尺円筒状の部材である。
この回転筒部12は、筒状支持部材50の前端側に、回転可能かつ進退不能に嵌め合わせられる。この回転筒部12は、外部操作による回転運動を、カム機構を介してスライダー30に伝達し、このスライダー30を前進させたり後退させたりする。
【0023】
筆記芯20は、インク管内のインクを前方へ導いてチップ前端の転写ボールにより被筆記面に転写するようにしたボールペン用リフィールである。
この筆記芯20は、シャープペンシル用リフィールや、電子ペン用リフィール等、図示例以外の筆記芯に置換することが可能である。
【0024】
スライダー30は、図示例によれば前後の2部材から構成され、第一の圧縮コイルバネ40の付勢力に抗して前進することで筆記芯20を傾動しないように支持する固定支持状態になり、第一の圧縮コイルバネ40の付勢力により後退することで筆記芯20を傾動可能に支持する傾動可能支持状態になる。
【0025】
第一の圧縮コイルバネ40は、前端部を回転筒部12内面の段部に掛止するとともに後端部をスライダー30外周面の段部に掛止して、回転筒部12に対しスライダー30を後方へ付勢している。
【0026】
筒状支持部材50は、後軸部11の前端側に回転不能かつ進退不能に固定されるとともに、回転筒部12から後軸部11に跨って内在する長尺円筒状の部材である。
この筒状支持部材50の前端部は、凹状に形成され、スライダー30の後端部を進退可能に嵌め合わせている。
【0027】
この筒状支持部材50の後半部側には、後軸部11に螺合接続されるオネジ部52と、オネジ部52よりも後側で上述した縮径部11aに接する円筒部53とが設けられる。
さらに、筒状支持部材50の最後端部には、第二の圧縮コイルバネ70の前端部を挿入して受ける凹状受部51が設けられる。
【0028】
凹状受部51は、前側を底部51aにして後方を開口した略有底円筒状に形成される。筒状支持部材50中心部の貫通孔55が、凹状受部51の底部51aに開口している。
凹状受部51の内周面51bは、底部51a側へ向かって徐々に縮径する傾斜面状に形成され、第二の圧縮コイルバネ70の外周面に接触又は近接している。
【0029】
凹状受部51の後端縁の厚みtは、第二の圧縮コイルバネ70の線径の1/2よりも小さく且つゼロよりも大きく設定される(図2参照)。
凹状受部51の径方向片半部の幅wは、少なくとも第二の圧縮コイルバネ70の線径の1/2よりも大きく、図2に示す一例によれば、第二の圧縮コイルバネ70の線径以上に設定される。
また凹状受部51の深さ寸法dは、第二の圧縮コイルバネ70の線径よりも大きく設定される。
【0030】
第二の圧縮コイルバネ70は、前端部を凹状受部51の底部51aに当接するとともに後端部を支持回転子60に当接して支持回転子60を後方へ付勢している。
【0031】
支持回転子60は、前後方向へわたる略円筒状の部材であり、その前端側に、筆記芯20を支持する支持筒部61と、第二の圧縮コイルバネ70の後端部を受けるバネ受部62とを有する(図1参照)。
【0032】
支持筒部61は、その内周面に設けられた突起を筆記芯20の外周面に圧接して筆記芯20を進退不能かつ回転不能に支持する。また、この支持筒部61の外周部には、第二の圧縮コイルバネ70が環状に装着される。
【0033】
バネ受部62は、径方向外側へ突出するとともに周方向へ連続する環状の突起であり、第二の圧縮コイルバネ70の後端部を受ける。
【0034】
また、支持回転子60には、その後端側に、突条63が周方向に間隔を置いて複数設けられ、これら突条63よりもさらに後端側には、ノック部80が環状に装着される。支持回転子60は、ノック部80に対し回転自在に支持される。
ノック部80は、後端部を閉鎖した有底筒状の部材であり、後軸部11の内周面に対し進退可能かつ回転不能に掛合している。
【0035】
ノック部80の前端部には、カム斜面81が設けられる。このカム斜面81は、前進した際に、支持回転子60における突条63の後端部に摺接して、支持回転子60を回転させて後軸部11内周面の被係止部(図示せず)に係止させる。
なお、ノック部80のノック操作により支持回転子60を前進及び回転させたり係止したりする機構は、例えば、特開2004-209881号公報に記載されたリフィ-ル進退ユニットの構造を適用することが可能である。
【0036】
よって、上記構成の筆記具1によれば、第二の圧縮コイルバネ70の前端側が凹状受部51に嵌り合うとともに、凹状受部51の傾斜面状の内周面51bによって調芯されるため、第二の圧縮コイルバネ70が径方向へばたついて異音が発生したり、第二の圧縮コイルバネ70が径方向へ偏心してノック操作性を損ねたりするのを防ぐことができる。
また、当該筆記具1の製造時においては、第二の圧縮コイルバネ70の前端部が筒状支持部材50の後端縁に引っ掛かるのを防ぎ、この第二の圧縮コイルバネ70の前端側を、縮径部11a等に沿わせて滑らかに凹状受部51内へ導くことができる。
【0037】
<変形例>
なお、上記実施態様によれば、第二の圧縮コイルバネ70の前端をその前方側の凹状受部51により受けるようにしたが、他例としては、支持回転子60の前端部に、凹状受部51と略同様の凹状受部を設け、この凹状受部によって第二の圧縮コイルバネ70の後端を受けるようにすることも可能である。
さらに、他例としては、第一の圧縮コイルバネ40の前端部又は後端部を受ける部分を、凹状受部51と同様に形成することも可能である。
【0038】
また、上記実施態様では、回転筒部12の回転操作により筆記部21のしなり加減を切替えられるようにしたが、他例としては、軸筒10前端側の構成を適宜に省いて、前記切替えが不能な一般的な出没式筆記具を構成することも可能である。
【0039】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:筆記具
10:軸筒
11:後軸部
11a:縮径部
20:筆記芯
50:筒状支持部材
51:凹状受部
51a:底部
51b:内周面
60:支持回転子
70:第二の圧縮コイルバネ
図1
図2